JP2004218130A - 防湿積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】古紙として再利用可能な(水離解性を有する)防湿紙において低塗工量における防湿性に優れ、防湿の滑り性を改善した防湿積層体を提供する。
【解決手段】紙支持体の少なくとも片面に合成樹脂と膨潤性無機層状化合物とタルクを含む防湿積層体。合成樹脂とタルクの質量比が95/5〜30/70である前述の防湿積層体。
膨潤性無機層状化合物とタルクの質量比が70/30〜5/95である前述の防湿積層体。防湿層中に含窒素化合物が含まれる前述の防湿積層体。防湿面どうしの静摩擦係数が0.80以下、0.40以上であり、かつ、動摩擦係数が0.70以下、0.35以上の前述の防湿積層体。
【解決手段】紙支持体の少なくとも片面に合成樹脂と膨潤性無機層状化合物とタルクを含む防湿積層体。合成樹脂とタルクの質量比が95/5〜30/70である前述の防湿積層体。
膨潤性無機層状化合物とタルクの質量比が70/30〜5/95である前述の防湿積層体。防湿層中に含窒素化合物が含まれる前述の防湿積層体。防湿面どうしの静摩擦係数が0.80以下、0.40以上であり、かつ、動摩擦係数が0.70以下、0.35以上の前述の防湿積層体。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、古紙として再利用可能な(水離解性を有する)防湿紙に関するものであり、さらに詳述すれば、防湿紙に要求される防湿性を従来品と比べて飛躍的に高めることを可能とし、低塗工量における防湿性及び防湿面の滑り性が適度であり、包装適性に優れ、なおかつ離解性に優れた防湿積層体を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より上質紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、各種の塗工紙などの巻取及び上質紙や塗工紙の平判紙の包装には、製品の吸湿を防ぐために、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系の高分子化合物を紙に塗工、ラミネート又は内部添加した耐湿性、耐水性を有する包装紙をロール状に巻き取った包装紙ロールをそのままの形状で、あるいは望みの大きさにカットして使用している。また、セメント袋、樹脂袋、塩袋、砂糖袋、飼料袋、肥料袋、ゴミ袋などの重袋用原紙では、製袋して袋詰めした後に、中身の吸湿、吸水を防止しながら重量物を搬送するために防湿性と強度が要求され、ポリエチレン、ポリプロピレンなどをクラフト紙にラミネートしたポリオレフィンラミネート紙(以下ポリラミ紙と称す)とクラフト紙を重ねたものが使用されている。さらには段ボール用のライナ原紙に防湿層を形成させたもので段ボールを耐水化、防湿化することも行われているが、このようなライナもポリラミ紙の場合が多い。
【0003】
しかしながら、これらポリラミ紙は、使用後に古紙として再使用するため回収しても水に十分に離解せず、古紙として再使用できないので問題となっている。また、使用済みポリラミ紙は廃棄するにしても、処分としては焼却や埋め立てによるしかないため環境汚染となる懸念があり、多くの問題を抱えているのが現状である。即ち、従来の防湿紙にはいずれにも問題点があり、これらに代わる防湿紙の開発が急がれている。
【0004】
防湿紙を改良するための技術の一つとしてブタジエン系ラテックス100重量部にワックスを5〜200重量部ブレンドした配合物を塗工し防湿紙を得る技術が提案されている(特公昭55−22597号公報)。
【0005】
しかしこの技術はワックスを用いるため、防湿紙を重ねておく際に生ずる「すべり」の問題や防湿紙へ印刷する際の印刷適性の問題がある。また防湿性についても低塗工量での紙への塗布ではポリエチレンラミネート紙に匹敵する防湿性を得ることが困難である。また、特定の融点を有するパラフィンワックス、マレイン化もしくはフマル化ロジンと多価アルコールとのエステル化物、液状ポリブテン及びロジンなどを主成分とするワックスエマルジョン、あるいは前記ワックスエマルジョンと合成ゴム系ラテックスとの混合物を上質紙、クラフト紙などの繊維質基材表面に塗布し、加温下に乾燥する防湿紙の製造方法も提案されている(特開昭61−47896号公報)。
【0006】
しかし、この方法で得られる防湿紙をロール状とした場合、支持体の裏面は防湿層の含有するワックス成分の一部が僅かながら浸出するため滑りやすく、防湿包装紙により包装された高重量のロール状巻取紙を搬入、搬出、あるいは搬送する際に、包装紙とその内容物との間にずれを生じたり、ひどい時には包装紙の破れやそれに伴う内容物の落下などという重大問題が発生する。さらに、このようなワックスを含む防湿層の表面にはラベルを貼付してもすぐに剥がれるなどの問題がある。さらに、包装時に通常用いられるような接着剤でも接着不良となる。特に汎用で使用される酢ビエマルジョン系接着剤がはじきのため塗工できないか、塗工できても接着性が全くない。従って、常温で液状の強い接着力を持つホットメルト接着剤のように非常に限定された接着剤を用いなくてはならない。
【0007】
しかしこのようなホットメルト接着剤は常温でのべたつきがひどいことや大きなブロック状のものしかないため作業性が悪く、またコスト高になるという問題もある。また、粘着テープを使用して接着する方法もあるが、接着剤による接着に比べ、粘着テープを使用する場合は、包装時の作業性が大幅に劣るという重大な欠点があり、特定の用途にしか用いられないのが現状である。
【0008】
そこで、これらの問題を解決するために、支持体裏面に両性化合物よりなる防滑層を設けた防湿紙が提案されている(特公昭56−18712号公報)。しかし、支持体表面に防湿層、裏面に防滑層を設けた防湿積層体のシートを巻取として仕上げた場合、その巻き圧が高くなると、防滑層顔料が防湿層表面に損傷を与え防湿性能の劣化が発生する。このため巻き圧を低くする必要があるが、巻き圧の低下は巻き取り時の巻き滑り発生による長尺巻取の製造を不可能としたり、巻き取り側面の不揃いによる後工程での大幅な作業性の低下などが付随するという問題を有している。
【0009】
以上のように、離解性を有し、プラスチックフイルムに勝る防湿性をもったワックスを含んだ防湿紙で、包装物の滑りによる問題を発生させない防湿紙はいまだ存在していないのが現状である。
【0010】
また、ワックスを用いない防湿紙としては、本発明者等が紙支持体上に平板状顔料と合成樹脂ラテックスとからなる防湿層を設けた防湿積層体(特開平9−21096号公報)を提案した。この発明においては、それ自体は水蒸気を通さないと思われる顔料、例えば白雲母のような平板状顔料を合成樹脂ラテックスなどの重合体と混合して防湿層を形成させるものである。その防湿メカニズムは、平面的には水蒸気の透過面積が小さくなること、また厚み方向では平板状顔料が防湿層表面に対して平行に配列して積層するため、防湿層中の水蒸気はこの平板状顔料を迂回しながら透過することから(曲路効果)、水蒸気の透過距離が長くなり、結果として大幅に防湿性能が向上するものである。
【0011】
しかしながら、この発明は塗工量30g/m2で透湿度15〜60g/m2・24hrの範囲の防湿紙を製造するには非常に有効であるが、塗工量を少なくすると防湿性は低下し、塗工量10g/m2以下になると透湿度が60〜200g/m2・24hr以上となって、防湿紙としての実用が困難になる。逆に、防湿性を向上させるため塗工量を多くすると防湿紙における防湿層の割合が大きくなり古紙としての価値も低下するといった問題点がある。このことからも塗工量は少ないことが好ましい。
【0012】
また、高膨潤性粘土鉱物と合成樹脂水性分散体からなる防湿性被覆組成物より形成された防湿層を有する防湿性紙(特開2000−303026号公報、2000−290895号公報)が提案されているが、塗工量を10g/m2という低塗工量の防湿性は不十分であり、防湿面(防湿塗工層を形成した面)の摩擦係数が高すぎるといった問題がある。
防湿面の摩擦係数が高いと、例えばPPC用紙やインクジェット用紙などのような小判断裁紙を包装する場合、防湿面を包装の内側になるように印刷するのが通常である。この場合、中味の小判断裁紙を包装する時、包装機械によっては防湿面の上を滑りながら小判断裁紙を包装のためにセットすることがある。防湿面の紙に対する摩擦係数が高いと、小判断裁紙がうまく滑らず荷崩れを起こしたり、包装が乱れるといった問題がある。
包装されたコート紙やアート紙などの印刷用の平判紙を開封する場合、自動で包装紙を開封する機械で開封する場合、防湿面と印刷用の平判紙の摩擦係数が高すぎると開封した後に包装紙が取り除けず破れたり、中味の平判紙がずれたりしてしまうといった問題がある。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−303026号(請求項1)
【特許文献2】
特開2000−290895号(請求項1)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、古紙として再利用可能な(水離解性を有する)防湿紙において低塗工量における防湿性に優れ、防湿の滑り性を改善した防湿積層体を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために以下の方法をとる。
【0016】
本発明の第1は、紙支持体の少なくとも片面に合成樹脂と膨潤性無機層状化合物とタルクを含むことを特徴とする防湿積層体。
【0017】
本発明の第2は、合成樹脂とタルクの質量比が95/5〜30/70であることを特徴とする本発明の第1に記載の防湿積層体である。
【0018】
本発明の第3は、膨潤性無機層状化合物とタルクの質量比が70/30〜5/95であることを特徴とする本発明の第1〜2のいずれかに記載の防湿積層体である。
【0019】
本発明の第4は、防湿層中に含窒素化合物が含まれることを特徴とする本発明の第1〜3のいずれかに記載の防湿積層体である。
【0020】
本発明の第5は、防湿面どうしの静摩擦係数が0.80以下、0.40以上であり、かつ、動摩擦係数が0.70以下、0.35以上である本発明の第1〜4のいずれかに記載の防湿積層体である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明者等は、合成樹脂と膨潤性無機層状化合物からなる防湿層によって防湿性を発揮させることを検討した。
その結果、特定の組成を有する合成樹脂のエマルジョンが防湿性が良好であること、あるいは、カチオン化度が一定の範囲に入る含窒素化合物を合成樹脂と膨潤性無機層状化合物を併用することで防湿性が向上することを見出した。
【0023】
ところが、さらに検討を続けると、合成樹脂と膨潤性無機層状化合物を含む防湿層は防湿面どうし、あるいは防湿層と紙製品との摩擦係数が非常に高いことが判明した。防湿面の摩擦係数、即ち防湿面の滑り性について鋭意検討したところ、合成樹脂と膨潤性無機層状化合物を含む防湿面は粘着性があるために、滑り性が悪い(摩擦係数が高い)ことを見出した。膨潤性無機層状化合物は非常に薄いため、少ない配合量で防湿性を発揮するため、合成樹脂に対する配合量は白雲母や金雲母のような非膨潤性無機層状化合物に比較して非常に少ない(1/5〜1/10の量)で良い。しかし、配合量が少ないため、防湿層表面に存在する無機層状化合物の量が少なく、また、厚さが非常に薄いため、防湿層表面に無機層状化合物が表面に出ていないため、合成樹脂の粘着性がそのまま防湿面の粘着性となったものと推定される。防湿面の粘着性を低下させるために、顔料を添加する方法があるが、種々の顔料で試みたところ、タルクのみが防湿性を損なわず、適度な摩擦係数を付与することを見出した。
【0024】
タルクのみが適度な滑り性を付与する要因として、タルク表面が非常に疎水性であることが挙げられる。合成樹脂は水性エマルジョンのため親水性成分が含まれている。そのため防湿面表面は比較的親水性になっていると推定される。実際、合成樹脂単独被膜の水の接触角は60〜90度である。しかし、合成樹脂中にタルクが分散されると、防湿面表面が疎水性の部分と親水性の部分が形成されると考えられる。そのため、防湿面どうしでの摩擦係数は、親水部と疎水部が反発しあい、適度な摩擦係数を付与できるものと考えられる。
【0025】
また、タルクが疎水性のため、合成樹脂エマルジョンと膨潤性無機層状化合物の分散混合液の中で、凝集せずに分散できることも、タルクが適度な滑り性を付与できる要因であるとも考えられる。防湿性の面においても分散性が良好なためタルクを添加しても防湿性を低下させることはないものと考えられる。
【0026】
本発明で使用できるタルクは別名滑石と呼ばれ、理論的には含水珪酸マグネシウム(組成式:3MgO・4SiO2・H2O、示性式:Si2O5・(OH)Mg(OH)・SiO2)より成る。一般に蛇紋岩や緑泥石を伴うため、酸化鉄やアルミナを多少含んでいる。タルクとしては、酸化鉄(Fe2O3+FeO)1.5%以下、アルミナ(Al2O3)4%以下、酸化カルシウム(CaO)1.5%以下が好ましい。酸化鉄やアルミナがこれを越えて含まれると、摩擦係数が高くなったり、硬度が硬くなり被包装物を傷つける可能性があり好ましくない。また、タルクは軟らかくて脂肪感に富んでいるのが特徴であるがモース硬度は1のものが好ましい。
タルクは白色で平板状の顔料であるが、防湿性の面からなるべく厚さが薄く平板性のものが好ましい。
タルクの粒子径は特に限定されないが、粒子径が20μを越えると石英などの不純物を含んで硬度が高くなり、被包装物を傷つける可能性があるので好ましくない。また、粒子径が0.1μm未満のタルクは粉砕により微粒子化されたものだが、機械的エネルギーが非常にかかっているため、タルクの結晶構造を破壊するため好ましくない。そのため、好ましい粒子径としては、0.1μm以上、20μ以下であり、より好ましくは0.5μm以上、15μ以下、さらに好ましくは1μm以上10μm以下である。
タルクは八面体シートを2つの四面体シートからなる2:1層の積み重なりからなり、電気的にはほぼ中性の粘土鉱物である(詳細な構造は粘土ハンドブック第二版 1987年発行 日本粘土学会編 P1〜329参照)。同じような構造、外観、性状を有するパイロフィライト(葉蝋石)も本発明においてはタルクに含まれる。
パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)は石英、絹雲母(セリサイト)、カオリンを伴う場合が多いがなるべく不純物が少なくモース硬度が2未満のものが好ましい。
また、タルクは、層状鉱物であり、層間が容易に壁開するため、湿式粉砕や高圧分散、あるいはタルクの層間に珪フッ化ソーダをインターカレートし壁開したような合成タルクも本発明のタルクの範疇に入る。
タルク以外の顔料、例えば、カオリン、クレー、炭酸カルシウムなどは、摩擦係数を下げる効果が小さく、また、多量に添加すると防湿性が悪化するため本発明においては塗料の粘度調整や固形分調整、あるいは増量剤として少量の添加しかできない。
本発明で使用できる合成樹脂とはそれ自体で成膜性があり耐水性を示すものであれば特に制限はない。耐水性の指標としては、樹脂単独の被膜を作製し(ガラス板状に合成樹脂の溶液(水溶液あるいはアルカリ性水溶液)あるいはエマルジョンなどを、乾燥後の厚さが50μm〜100μmになるように塗布し、110℃、5分間乾燥後、乾燥剤の入ったデシケーター中で40℃24時間乾燥させる)、その被膜を23℃の水(サンプル質量に対して100倍以上の質量の水)の中に24時間、浸漬し(攪拌子でゆっくりとかき混ぜる)、被膜を取り出して乾燥させ(乾燥条件:110℃、5分間乾燥後、乾燥剤の入ったデシケーター中で40℃24時間乾燥させる)、その重量減が10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。
【0027】
また、本発明の合成樹脂単独被膜の防湿性は厚さ20μ換算で透湿度が800g/m2・24hr以下、好ましくは600g/m2・24hr以下、より好ましくは400g/m2・24hr以下である。具体的な測定方法は、上記耐水性の指標と同様に合成樹脂被膜を形成し、JIS−Z−0208(カップ法)B法(40℃90%RH)で透湿度を測定し、該合成樹脂被膜の厚さを測定し、20μ換算の透湿度を求める。この時、透湿度は厚さに反比例すると仮定する。
【0028】
防湿層を形成する合成樹脂は水性のエマルジョン(ラテックス、乳化物、マイクロエマルジョン、分散物などもエマルジョンに含まれるとする)あるいはアルカリ水に溶解させたものが好ましい。水溶性あるいは熱水可溶性(水あるいは熱水に対する溶解度が5%以上)の合成樹脂は防湿性が上述した透湿度よりはるかに大きいため好ましくない。例えばポリビニルアルコール(PVA)は水に対する溶解度が5%〜30%の範囲にあるが(溶解度は分子量あるいはケン化度に依存する)、その単独被膜(20μm)の透湿度は上述した条件化で1000g/m2・24hrを越えるため本発明では使用できない。
【0029】
合成樹脂としては、芳香族ビニル系単量体、脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体、不飽和脂肪酸系単量体、αオレフィン系単量体及びその他の共重合可能な単量体の中から1種又は2種以上を乳化重合したものが挙げられる。具体的には、芳香族ビニル系単量体と脂肪族共役ジエン系単量体から乳化重合によって得られるスチレン−ブタジエン系共重合体(SBR)、エチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体と脂肪族共役ジエン系単量体から乳化重合によって得られるメチルメタクリレート−ブタジエン系共重合体(MBR)、芳香族ビニル系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体から乳化重合によって得られるスチレン−アクリル系共重合体、αオレフィン系単量体と不飽和脂肪酸系単量体の乳化重合から得られるエチレン−アクリル酸系共重合体、1種類あるいは2種類以上のエチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体の乳化重合から得られるアクリルエステル系重合体などが挙げられる。これら共重合体は他の単量体と共重合させて使用してもかまわない。
【0030】
単量体について詳述する。芳香族ビニル系単量体は合成樹脂に耐水性と適度な硬さを付与させるもので、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−t−ブチルスチレン、クロロスチレンなどがあり、スチレンが好適に使用される。
【0031】
脂肪族共役ジエン系単量体は合成樹脂に柔軟性を付与させるもので、具体的には、ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、1,3−ブタジエンが好適に使用される。
【0032】
エチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体は合成樹脂に耐水性を付与させるとともに、合成樹脂の硬さやガラス転移温度(Tg)、最低造膜温度(MFT)を調整させるもので、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体などが挙げられる。
【0033】
不飽和脂肪酸単量体は、合成樹脂の成膜性を向上させるとともに、共重合体の水中でのコロイドとしての安定性を高めるもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和多価カルボン酸;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどの、少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和ポリカルボン酸アルキルエステル;アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩などの不飽和スルホン酸及びその塩が挙げられる。アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸が好適に使用される。
【0034】
αオレフィン系単量体は合成樹脂に耐水性と柔軟性を付与させるもので具体的にはエチレン、プロピレンなどが挙げられる。
【0035】
上述した単量体と共重合可能な他の単量体は、合成樹脂の耐水性を高めたり、カチオン基を導入して接着性を高めたり、架橋性の官能基を導入して強度を高めたりするもので、具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル; アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル及びメタクリル酸β−ヒドロキシエチルなどのエチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル; アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド及びジアセトンアクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸アミド及びその誘導体; アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル; アクロレイン及びアリルアルコール等のビニル化合物などが挙げられる。
【0036】
合性成樹脂エマルジョンは、上記した各単量体を用いて公知の乳化重合法により製造することができる。即ち、所望の単量体を混合し、これに乳化剤、重合開始剤等を加えて水系で乳化重合を行えばよく、一括して仕込み重合する方法、各成分を連続供給しながら重合する方法などの各種の方法が適用できる。
【0037】
乳化重合用の乳化剤としてはアルキル又はアルキルアリル硫酸塩、アルキル又はアルキルアリルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル又はアルキルアリルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル等のノニオン性乳化剤などが例示される。乳化剤の使用量はエマルジョンに対して要求される性質に応じて変わりうるが、一般に重合安定性を向上させる目的やエマルジョンの機械的、化学的安定性を良好にする目的には乳化剤の使用量は多いことが望ましく、乾燥皮膜の耐水性を向上させるためには逆に使用量が少ない方が望ましく、通常は単量体の合計量100重量部に対して0.1〜5重量部程度の範囲内から目的に応じて使用量が決められる。
【0038】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩等の水溶性タイプ、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性タイプなどが用いられる。またさらに必要に応じ、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、L−アスコルビン酸、糖類、アミン類などの還元剤を併用したレドックス系も使用することができる。それらのの使用量は単量体の合計量100重量部に対して0.01〜3重量部程度とすればよい。重合反応は通常35〜90℃程度で行えばよく、反応時間は通常3〜10時間程度とすればよい。
【0039】
なお、乳化重合の開始時あるいは終了後に塩基性物質を加えてpHを調整することにより、エマルジョンの重合安定性、凍結安定性、機械的安定性、化学的安定性等を向上させることができる。特に膨潤性無機層状化合物との配合安定性を得るためには、得られるエマルジョンのpHが5以上となるように調整することが好ましい。膨潤性無機層状化合物の水分散液は通常アルカリ性(pH7〜11)を示すため、混和性の面から合成樹脂のエマルジョンはアルカリ性(pH7以上)がより好ましい。塩基性物質としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、苛性ソーダ、苛性カリ等を使用することができる。特にアンモニアが防湿性の面で好ましい。合成樹脂水性分散体の粒子径は一般に100nm〜300nmであるが、粒子径150nm以下、特に60〜100nm程度の小さい粒子径の水性分散体を使用すると成膜性が向上し欠陥の少ない膜ができるため好ましい。
【0040】
また、合成樹脂としてはポリエステル系樹脂、生分解性樹脂(ポリ乳酸、ポリ酪酸、ポリカプロラクタムなど、また、天然系生分解性樹脂も含まれる)、ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂なども使用することができる。
【0041】
合成樹脂のガラス転移温度(Tg)、最低増膜温度(MFT)、ゲル分率(トルエンに対する不溶分)などには特に制限はないが、Tgは−30℃〜60℃、より好ましくは−20℃〜50℃、さらに好ましくは−10℃〜40℃である。MFTは70℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下が好ましい。ゲル分率は20%〜99%が好ましく、より好ましくは30%〜95%、さらに好ましくは40%〜90%である。Tgが−30℃より小さいと防湿面の粘着性が強くブロッキングを生じ易くなり、Tgが60℃を越えて大きくなると成膜性が低下して防湿性が悪くなる。MFTが70℃より大きいと成膜性が低下して防湿性が悪くなる。ゲル分率が20%未満になるとブロッキングを生じ易くなり、また、99%を越えて大きいと成膜性が低下して防湿性が悪くなる。
【0042】
また、本発明の合成樹脂はエマルジョンあるいはラテックスの形態で使用されるが、合成樹脂のエマルジョンあるいはラテックスはアニオン性のものが好ましい。アニオン性にするためにはカルボン酸やスルホン酸基を有するモノマーを共重合させた合成樹脂を使用することが好ましい。合成樹脂がアニオン性を示すと、無機層状化合物に吸着した含窒素化合物と強い総合作用、含窒素化合物中のアミノ基やアミド基と合成樹脂中のカルボン酸基やスルホン酸基が強いイオン結合あるいは、乾燥過程で脱水反応を起こし共有結合を形成し、耐水性が向上し、その結果防湿性が向上する。
合成樹脂とタルクの質量比は95/5〜30/70が好ましく、より好ましくは90/10〜35/65、さらに好ましくは85/15〜40/60である。合成樹脂とタルクの質量比が95/5より越えて大きくなると(合成樹脂の質量比がこれより大きくなると)タルクによる滑り性の効果がほとんどなくなって好ましくない。合成樹脂とタルクの質量比が30/70より小さくなると(合成樹脂の質量比がこれより小さくなると)防湿性が急激に悪くなり好ましくない。
【0043】
膨潤性無機層状化合物の具体例としては、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、粘土系鉱物、合成マイカ、合成スメクタイト等を挙げることができる。
【0044】
グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物は、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有する化合物ないし物質であり、ここで層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス力等の弱い結合力によって略平行に積み重なった構造をいう。
【0045】
「カルコゲン化物」とは、IV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)及び/又はVI族(Mo,W)元素のジカルコゲン化物であって、式MX2(Mは上記元素、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を示す。)で表わされるものをいう。
【0046】
粘土系鉱物は、一般に、シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を両側から狭んでなる3層構造を有するタイプに分類される。前者の2層構造タイプとしては、カオリナイト族、アンチゴライト族等を挙げることができ、後者の3層構造タイプとしては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。
【0047】
これらの粘土系鉱物としては、スメクタイト族、バーミキュライト族などの粘土鉱物を挙げることができる。より具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、マーガライト、タルク、バーミキュライト、ザンソフィライト、緑泥石等を挙げることができる。また、白水晴雄著、「粘土鉱物学」、1988年、(株)朝倉書店 などの文献を参照することができる。特にスメクタイトが好ましく、スメクタイトにはモンモリロナイト、ハイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどを挙げることができる。
【0048】
これら膨潤性無機層状化合物は天然品(粘土性鉱物)以外にも、合成品、加工処理品(例えばシランカップリング剤の表面処理品)のいずれであってもよく、合成スメクタイトとしては、式Na0.1 〜 1.0Mg2.4 〜 2.9Li0.0 〜 0.6Si3.5 〜 4.0O9.0 〜 10.6(OH及び/又はF)1.5 〜 2.5で示されるものが挙げられる。合成スメクタイトや合成マイカの製造方法には、水熱反応法(特開平6−345419号公報)、固相反応法、熔融法(特開平5−270815号公報参照)の3つの合成方法がある。
【0049】
水熱反応法は、珪酸塩、マグネシウム塩、アルカリ金属イオン、アルカリ金属塩、フッ素イオンなど各種原料を含んだ水溶液あるいは水性スラリーをオートクレーブやパイプリアクターの中で100〜400℃の高温、高圧化のもとで反応させ合成させる方法である。水熱反応法では、結晶の成長が遅いため一般に大きな粒子のものが得られなく、一般に粒子径が10〜100nmのものがほとんどである。もちろん、水熱反応においても、低濃度、低温、長時間の条件で合成すれば粒子径が1μm以上の大きな粒子を製造することは可能だが、製造コストが極端に高くなるといった問題がある。
【0050】
固相反応法はタルクと珪フッ化アルカリと他の原料とともに400℃〜1000℃の範囲で数時間反応させ、合成マイカを製造する方法である。固相反応は原料のタルクの構造を残したまま元素移動を起こしマイカが生成する(トポタキシー)ため、得られる合成マイカの品質が原料のタルク物性やその不純物に依存したり、元素移動を完全にコントロールできないため合成マイカの純度や結晶化度が低いといった問題がある。
【0051】
熔融法は、無水珪酸、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、珪フッ化カリウム、炭酸カリウム、その他の原料をマイカの熔融点(例えば1500℃)以上で熔融後、徐冷結晶化し、合成マイカや合成スメクタイトを製造する方法である。また、加熱方法の違いにより、外熱式熔融法と内熱式熔融法がある。外熱式熔融法は原料を入れたるつぼを熔融点以上の温度の室に入れて昇温後、熔融点以下の温度の室に移動させて製造する方法であるがルツボの費用が高いといった問題点がある。内熱式熔融法は黒鉛(炭素)電極や金属電極を備えてた容器中で通電により原料を加熱熔融させた後、冷却させる方法であり、熔融合成法においては内熱式熔融法が一般的である。熔融合成法は冷却結晶化した塊を粉砕、粉級することにより粒子径をコントロールした合成品を製造することができる。熔融合成法は原料として純度が高い原料を使用することができ、熔融化するため原料が均一に混合できるため、結晶化度が高く、粒子径が大きく、純度の高い合成マイカや合成スメクタイトを製造することができるといった利点がある。
【0052】
合成膨潤性無機層状化合物としては、フッ素金雲母(KMg3AlSi3O10F、熔融法又は固相反応法)、カリウム四珪素雲母(KMg2.5Si4O10F2、熔融法)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg2.5Si4O10F2、熔融法)、ナトリウムテニオライト(NaMg2LiSi4O10F2、熔融法)、リチウムテニオライト(LiMg2LiSi4O10F2、熔融法)などの合成マイカ、ナトリウムヘクトライト(Na0. 33Mg2. 67Li0.33Si4.0O10(OH又はF)2、水熱反応法又は熔融法)、リチウムヘクトライト(Na0. 33Mg2. 67Li0.33Si4.0O10(OH又はF)2、水熱反応法又は熔融法)、サポナイト(Na0. 33Mg2. 67AlSi4.0O10(OH)2、水熱反応法)などの合成スメクタイトが挙げられる。
【0053】
粘土鉱物の市販品としては、一般にナトリウムベンナイトと呼ばれる天然のベントナイトや、クニピア(天然モンモリロナイト、クニミネ工業製)、スメクトン(水熱反応法合成スメクタイト、クニミネ工業社製)、ビーガム(商標:バンダービルト社製)、ラポナイト(商標:ラポルテ社製)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts(熔融法合成スメクタイト、あるいは熔融法合成ナトリウム四珪素雲母、商標:トピー工業製)、ベンゲル(商標:豊順洋行社製)、ソマシフME−100(固相反応法合成マイカ、商標:コープケミカル)等を挙げることができ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いることもできる。
【0054】
本発明にとり好ましいものは、水中で容易に膨潤、壁開及び分散する膨潤性無機層状化合物である。膨潤性無機層状化合物の溶媒への「膨潤・へき開」性の程度は、以下の「膨潤・へき開」試験により評価することができる。該膨潤性無機層状化合物の膨潤性は、下記膨潤性試験において約5mL以上(より好ましくは約20mL以上)の程度であることが好ましい。膨潤性の具体的なものとしては、上記クニピア(膨潤力:65ml/2g以上)、スメクトン(膨潤力:60ml/2g以上)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts(膨潤力:30ml/2g以上)、ME−100(商標:コープケミカル社製、膨潤力:20ml/2g以上)及びベンゲル(膨潤力:38ml/2g以上)等である。
【0055】
一方、該膨潤性無機層状化合物のへき開性は、下記へき開性試験において約5mL以上(より好ましくは約20mL以上)の程度であることが好ましい。これらの場合、溶媒としては、膨潤性無機層状化合物の密度より小さい密度を有する溶媒を用いる。該溶媒としては、水を用いることが好ましい。
【0056】
膨潤性試験を詳述する。膨潤性無機層状化合物2gを溶媒100mLにゆっくり加える(100mLメスシリンダーを容器とする)。静置後、23℃、24hr後の膨潤性無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から前者(膨潤性無機層状化合物分散層)の体積を読む。この数値が大きい程、膨潤性が高い。
【0057】
へき開性試験を詳述する。膨潤性無機層状化合物30gを溶媒1500mLにゆっくり加え、分散機(浅田鉄工(株)製、デスパーMH−L、羽根径52mm、回転数3100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて周速8.5m/secで90分間分散した後(23℃)、分散液100mLをとりメスシリンダーに入れ60分静置後、上澄みとの界面から、膨潤性無機層状化合物分散層の体積を読む。
【0058】
また、本発明で使用するのに好ましい膨潤性無機層状化合物としては、陽イオン交換容量が100gあたり、30〜300meq、より好ましくは50〜250meq、特に好ましくは60〜200meqである。陽イオン交換容量が30meq/100g未満だと含窒素化合物との効果が小さくなり防湿性に優れない。また、300meq/100gを越えて大きいと塗料が凝集しやすくなり好ましくない。一般に、天然及び合成スクメタイトは85〜130meq/100gの陽イオン交換容量を有するもので本発明にとり特に好ましいものである。
【0059】
陽イオン交換容量の測定は一般にアルコール洗浄法(Schollenberger法あるいはその改良法、和田光史(1981)粘土科学21,160−163参照)と呼ばれる測定方法で行う。膨潤性無機層状化合物の粉末0.2〜1.0gあるいは約1〜3%水分散液を約10〜30mlを100ml容量の遠心分離管に採取する。1Nの酢酸アンモニウム(CH3COONH4)液(pH7)を加えて約80mlとして、十分に振とうした後、遠心沈降させ上澄みを捨てる(遠沈洗浄)。遠沈洗浄を4回繰り返した後、遠心分離管に残っている余剰の塩を取り除くため80%エタノール水溶液(pH7)で遠沈洗浄を3回行う。次に10%のNaCl水溶液を用いて遠沈洗浄を4回繰り返し、遠心管の上澄み液をすべて集めて抽出液とする。抽出液のNH4を蒸留法で定量し、試料の乾燥質量(100g)あたりのミリグラム当量数(meq)を陽イオン交換容量(cation exchange capacity, CEC)の値とする。なお測定は23℃の環境下で行う。また、測定は7点行い、最大値と最小値を除いた5点の平均を測定値とした。
【0060】
膨潤性無機層状化合物としては、そのアスペクト比が50〜5000のものが好ましい。アスペクト比(Z)とはZ=L/aなる関係で示されるものであり、Lは膨潤性無機層状化合物の水中での平均粒子径(レーザー回折法で測定。堀場製作所LA−910.屈折率1.3、体積分布50%のメジアン径)であり、aは膨潤性無機層状化合物の厚みであり。厚みは、防湿層の断面をSEMやTEMによる写真観察によって求めた値である。平均粒子径は0.1μm〜100μmが好ましく、とりわけ0.5μm〜50μmが好ましい。粒子径が0.1μm未満になるとアスペクト比が小さくなる上、防湿層中で防湿面に対して平行に並びにくくなり、防湿効果が不十分になる。粒子径が100μmを越えて大きくなると防湿層から膨潤性無機層状化合物が突き出てしまい好ましくない。
【0061】
これら膨潤性無機層状化合物の中でも、ナトリウム四珪素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライト、ナトリウムヘクトライト、リチウムヘクトライト、サポナイト、天然スメクタイト(モンモリロナイト)が好ましい。これらの中でも、粒子径、アスペクト比、結晶性の面からから熔融合成法で製造されたナトリウム四珪素雲母(トピー工業製、DMA350)やタルクにフッ化ケイ素をインターカレートし約800℃で焼成して得られる膨潤性フッ素マイカが特に好ましい。
膨潤性無機層状化合物とタルクの質量比は70/30〜5/95が好ましく、より好ましくは65/35〜10/90であり、さらに好ましくは60/40〜15/90である。質量比が70/30より大きいと(膨潤性無機層状化合物の質量比がこれより大きいと)タルクによる滑り性の効果がほとんどなくなり好ましくない。また、5/95より小さいと(膨潤性無機層状化合物の質量比がこれより小さいと)防湿性が悪化し好ましくない。
【0062】
合成樹脂と膨潤性無機層状化合物の配合比(質量基準)は30/70〜99.9/0.1が好ましく、より好ましくは50/50〜99.5/0.5、さらに好ましくは70/30〜99/1である。膨潤性無機層状化合物が70部より大きいと防湿性向上効果が頭打ちとなるばかりか、合成樹脂が膨潤性無機層状化合物を完全に覆うことができなくなり、ピンホールが発生し防湿性が悪くなる可能性がある。また、膨潤性無機層状化合物が0.1未満だと防湿性向上効果が非常に小さくなる。
【0063】
本発明で使用できる含窒素化合物は、水溶液中でカチオン性を示す化合物であれば特に制限はないが、カチオン化度が0.1〜10meq/gのものが好ましく、0.2〜7meq/gがさらに好ましく、0.5〜5meq/gが特に好ましい。カチオン化度が0.1meq/g未満だと、カチオン性が弱く、無機層状化合物への吸着力が弱くなるため防湿性が悪くなり、9meq/gを越えて大きいと、塗料が凝集しやすくなり取扱いが困難となるばかりでなく、防湿性も悪化する。
【0064】
含窒素化合物を具体的に挙げると、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミド化合物、ポリアミドアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、及びポリアミドアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素化合物、ポリアミンポリ尿素化合物、ポリアミドアミンポリ尿素化合物及びポリアミドアミン化合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、アミノ変性アクリルアミド系化合物、ポリビニルアミン、ポリビニルアミンなどがある。また、含窒素化合物は特開平9−291499号公報に記載の含窒素化合物も使用できる。
【0065】
さらに、含窒素化合物としてはイミン化合物やアミン化合物と称せられる物が代表である。これらのうちイミン化合物としてはポリアルキレンイミンが代表であり、ポリエチレンイミン、アルキルあるいはシクロペンチル変性ポリエチレンイミン、エチレン尿素のイミン付加物、ポリ(エチレンイミン−尿素)及びポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、又は、これらのアルキル変性体、アルケニル変性体、ベンジル変性体、もしくは、脂肪族環状炭化水素変性体、ポリアミドイミド、ポリイミドワニス、からなる群より選ばれたポリイミン系化合物がある。
【0066】
また、アミン化合物としてはポリアルキレンポリアミンがある。例えばポリエチレンポリアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの化合物である。また同様の効果を示す物としては、ポリアミドのポリエチレンイミド付加物などの化合物などのポリアミド、ヒドラジン化合物、ポリアミンポリアミドのエピクロロヒドリン付加物(炭素数3〜10の飽和二塩基性カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとからポリアミドをエピクロルヒドリンと反応させて得られる水溶性で陽イオン性の熱硬化性樹脂)などのポリアミンアミド化合物、4級窒素含有アクリルポリマー、4級窒素含有ベンジルポリマー、ウレタン、カルボン酸アミン塩基を有する化合物、メチロール化メラミン、カチオン性ポリウレタンなどの化合物などの含窒素4級塩化合物がある。また、カチオン変性ポリウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、第3級窒素含有アクリル系樹脂等などのカチオン樹脂が挙げられる(カチオン樹脂については特開平8−90898号公報、特開昭63−162275号公報、特開昭62−148292号公報を参照されたい)。さらに、尿素、チオ尿素、グアニル尿素、メチル尿素、ジメチル尿素などの尿素化合物やジシアンジアミド誘導体なども本発明の範疇である。
【0067】
含窒素化合物の添加量は、膨潤性無機層状化合物の陽イオン交換容量と配合量及び含窒素化合物のカチオン化度で決定される。無機層状化合物の表面部はアニオン性であり、表面部にカチオン交換能があるといわれている。また、含窒素化合物のカチオン化度によって膨潤性無機層状化合物の平面部への吸着能力が異なるものと推定される。本発明者等は膨潤性無機層状化合物の陽イオン交換容量A(meq/100g)と含窒素化合物のカチオン化度B(meq/g)及び膨潤性無機層状化合物と含窒素化合物の質量比C/D(膨潤性無機層状化合物の添加量/含窒素化合物の添加量)が次の関係を満たしている時に防湿性が優れていることを見出した。
10≦(A×C)/(B×D)≦1000
ここでは(A×C)/(B×D)の値をカチオン比と呼ぶ。カチオン比が10未満だと、含窒素化合物による無機層状化合物の被覆が不十分(含窒素化合汚物のカチオン化度が弱く無機層状化合物に吸着していない、無機層状化合物の陽イオン交換容量が小さすぎる、含窒素化合物の添加量が少なすぎるため、の少なくとも一つが理由として挙げられる)なため防湿性が不十分となる。またカチオン比が1000より越えて大きいと塗料が凝集しやすくなり好ましくない。
【0068】
含窒素化合物のカチオン化度の測定方法を詳述する。含窒素化合物を濃度が0.4g/l(1リットル中に含窒素化合物が固形分として0.4g含まれる)の水溶液になるようにイオン交換水で調整する。得られた含窒素化合物水溶液10mlにトルイジンブルー指示薬を2滴添加する。次に、1/400N(0.0025mol/リットル)のポリビニル硫酸カリウム(PVSK,ファクター1.108)溶液で滴定を行い、溶液が青色から赤紫色に変色した滴定量を読み、下記計算式から含窒素化合物のカチオン化度を求めた。
カチオン化度(meq/g)=1/400×ファクター(1.108)×滴定量(ml)÷{0.4(g/l)×10(ml)}
測定は7点行い、最大値と最小値を除いた5点の平均を測定値とした。また、測定は23℃50%RHの環境下で行った。
防湿積層体の防湿層中に含まれる無機層状化合物の量及び陽イオン交換容量の測定方法は次ののとおりである。まず防湿層をカミソリ刃で一定量削り取りその重量を測定する。削り取った防湿層を550℃3時間加熱し灰化する。灰化した重量を測定するとともにIR、X線回折、電子顕微鏡写真などで無機層状化合物であることを確認する。得られた無機層状化合物の陽イオン交換量を前述の方法で測定する。また、粒子径の測定及び電顕写真観察により後述のアスペクト比も測定できる。
防湿積層体の防湿層中に含まれる含窒素化合物の添加量及びカチオン化度は次のように測定する。防湿層をカミソリ刃で一定量削り取り、これを水によるソックスレー抽出により抽出する。抽出液の水を除去し得られた固形分の重量を測定する。この固形分のIR、NMR、DSC、質量分析などのような分析手法を用いて含窒素化合物の量を定量する。また、得られた含窒素化合物のカチオン化度は前記の方法で測定する。
また、含窒素化合物はカチオン性を示すために、無機層状化合物のアニオン部分やアニオン性の合成樹脂エマルジョンと混合した時にショック(塗料凝集)を起こすことがある。このようなショックを防止するために塩基性物質を含窒素化合物、無機層状化合物の水溶液や合成樹脂エマルジョン中に加えてアルカリ側(pH7〜10が好ましい)に調整した方が好ましい。特に含窒素化合物に塩基性化合物を添加する方法がショック防止の効果が大きい。塩基性物質としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、苛性ソーダ、苛性カリ等を使用することができる。特にアンモニアが防湿性の面で好ましい。
【0069】
本発明においては、膨潤性無機層状化合物の分散剤としてイオン界面活性剤を使用しても良い。
本発明で使用できるイオン界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩などが例示されるが、このうち特にカルボン酸塩が好ましい。カルボン酸塩は泡が出難く、コーティング性能が特に向上する。陽イオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などは膨潤性無機層状珪酸塩と凝集を起こしやすく、コーティング剤に適度な粘性と膨潤性無機層状珪酸塩の分散性を付与できない場合が多く好ましくない。
【0070】
カルボン酸塩としては、脂肪酸のナトリウム、カリウム塩、ヤシ油脂肪酸のナトリウム、カリウム塩、トール油脂肪酸のナトリウム、カリウム塩、アミン塩、N−ラウロイルサルコシン、アシル化ポリペプチド等が例示され、またスルホン酸塩としては直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルキルベンゼンスルホン酸塩、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、石油スルホン酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩、n−パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、イセチオン酸塩などが例示され、硫酸エステル塩としては直鎖第1級アルコール硫酸塩、ポリオキシエチレン付加直鎖アルコール硫酸塩、硫酸化油等が例示され、リン酸エステル塩、ポリリン酸エステル塩としてはポリオキシエチレン付加直鎖アルコールリン酸塩等が例示され、その他にフッ化炭化水素基含有の陰イオン界面活性剤なども使用し得る。
【0071】
なお、陰イオン界面活性剤の配合量は、膨潤性無機層状化合物に対して陰イオン界面活性剤を重量換算で0.01%〜10%が好ましい。0.01%よりも小さく、あるいは10%より大きいとむしろ分散性、コーティング性も不良となる。
【0072】
また、膨潤性無機層状化合物の分散は、各種形状を有するプロペラによる攪拌やホモジナイザーでの攪拌でもかまわないが、膨潤性無機層状化合物を水中で十分に分散させるために、ヘンシェルミキサー(三井鉱山製)、スーパーミキサー、高圧ホモジナイザー、高圧分散機、超音波分散機で分散する方が好ましい。
【0073】
膨潤性の面から高圧分散機が特に好ましい。高圧分散機とは、分散させるべき粒子と溶媒等の媒体を混合した組成物を複数本の細管中に高速通過させ衝突させることにより、高剪断や高圧状態などの特殊な条件下を作り出す装置である。例えば、組成物を管径1〜1000μmの細管中を通過させることが好ましく、該組成物には最大圧力条件が100kgf/cm2以上の圧力がかかることが好ましく、500kgf/cm2以上がより好ましい。また組成物が高圧分散装置内を通過する際、組成物の最高到達速度が100m/sec以上に達するものが好ましく、また伝熱速度は100kcal/hr以上のものが好ましい。
【0074】
かかる高圧分散装置としては、例えばMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザーがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザー、日本ビーイーイー製超高圧ジェット流反転型乳化装置等が挙げられる。
【0075】
また、本発明における防湿塗料には 防湿層の塗工量は特に制限はないが、0.1〜20g/m2が好ましく、より好ましくは1〜15g/m2、最も好ましくは3〜10g/m2である。
【0076】
防湿層塗工量が0.1g/m2未満であると、防湿性が悪く好ましくない。また塗工量が20g/m2を越えると、防湿性は頭打ちとなるため不経済であり、また防湿層の割合が大きくなることで古紙としての価値が低下する。
【0077】
本発明の防湿塗料に必要とあらば、ポリカルボン酸などの分散剤、シリコーン系などの消泡剤、界面活性剤、保水剤、色合い調成剤、膨潤性無機層状化合物以外の顔料(炭酸カルシウム、クレー、カオリン、マイカ)などを添加したりすることができる。
【0078】
以上で述べたような防湿塗料を紙支持体に塗工して防湿層を形成する。塗工設備として特に限定はしないが、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーターなどの方式が好ましい。特に防湿層形成にはブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーターなどの塗工表面をスクレイプするコーターが平板状顔料の配向を促すという点で好ましい。
【0079】
また本発明に用いられる基材は、機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とするものであれば特に制限はないが、一般的に用いられている晒または未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)、又は段ボール用、建材用、白ボ−ル用、チップボ−ル用などに用いられる板紙などが好適であり、さらに好ましくはヤンキ−ドライヤ−などで強制乾燥がなされた片ツヤ紙、又はカレンダ−処理が施された晒/未晒クラフト紙などであり、このような紙基材を用いた場合は、その高平滑な基材表面より、防湿層の厚さ方向における平板状顔料の配向性は、塗工面に対して乱れることなく均一に、平行に配列しやすくなるため、防湿性能も格段に向上する。
また、基材と防湿層の間に防湿層の塗工適性や塗工量減のためにアンカー層を用いたり、ヒートシール性を付与するためにオーバーコート層を設けても良い。
【0080】
本発明の防湿積層体は、紙製品の巻取や平判の包装紙、PPC用紙やインクジェット用紙などの小判断裁紙用の包装紙、お菓子箱や粉末洗剤箱などの各種紙器用の原紙(板紙)、段ボール用のライナ及び中芯、クラフト袋やクラフト多層袋(重袋)などの袋用原紙、液体用容器の原紙などに使用することができる。
本発明における防湿積層体の防湿面どうしの摩擦係数は、防湿面を被包装物に接するような場合は自動包装における包装適性に影響を与える。また、防湿面を外側にして包装する場合は、包装物を積み重ねた時に荷崩れを起こしたり作業性に悪影響を与えたりする。
本発明者らが検討したところ、防湿面どうしの静摩擦系異数と動摩擦係数が一定の範囲に入れば、いかなる包装形態においても、適度な滑り性であることを見出した。即ち、防湿面どうしの静摩擦係数が0.80以下、0.40以上であり、かつ、動摩擦係数が0.70以下、0.35以上であれば、適度な滑り性を有し好ましく、より好ましくは、防湿面どうしの静摩擦係数が0.75以下、0.45以上であり、かつ、動摩擦係数が0.65以下、0.40以上であり、さらに好ましくは、防湿面どうしの静摩擦係数が0.70以下、0.50以上であり、かつ、動摩擦係数が0.60以下、0.45以上である。
静摩擦係数が0.80を越えて大きいあるいは動摩擦係数が0.70が越えて大きいと、滑り性が悪すぎるため、自動包装適性や包装物の作業性が低下する。また、静摩擦係数が0.40未満あるいは動摩擦係数が0.35未満になると、滑りすぎるために、自動包装時に紙製品が乱れたり、所定の位置に止まらなかったり、包装物どうしが滑りすぎて荷崩れを起こしてしまう。
【0081】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を限定するものではない。また、特に断らない限り実施例中の部は質量部を示す。
<実施例1>
水36部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これにタルク(含水珪酸マグネシウム、組成式 3MgO・4SiO2・H2O、粒子径9.5μm、モース硬度1、商標クラウンタルクPP、松村産業製)17.5部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分35%、pH8.2、粘度50cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/35/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0082】
<実施例2>
水34部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これにタルク(含水珪酸マグネシウム、組成式 3MgO・4SiO2・H2O、粒子径9.5μm、モース硬度1、商標クラウンタルクPP、松村産業製)7.5部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分32%、pH8.2、粘度28cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/15/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0083】
<実施例3>
水36部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これにタルク(含水珪酸マグネシウム、組成式 3MgO・4SiO2・H2O、粒子径9.5μm、モース硬度1、商標クラウンタルクPP、松村産業製)2.5部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分30%、pH8.1、粘度18cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/5/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0084】
<実施例4>
水37部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これにタルク(含水珪酸マグネシウム、組成式 3MgO・4SiO2・H2O、粒子径9.5μm、モース硬度1、商標クラウンタルクPP、松村産業製)25部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分37%、pH8.2、粘度120cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/50/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0085】
<実施例5>
水40部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これにタルク(含水珪酸マグネシウム、組成式 3MgO・4SiO2・H2O、粒子径9.5μm、モース硬度1、商標クラウンタルクPP、松村産業製)50部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分43%、pH8.2、粘度350cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/100/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
<実施例6>
水33部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これにタルク(含水珪酸マグネシウム、組成式 3MgO・4SiO2・H2O、粒子径9.5μm、モース硬度1、商標クラウンタルクPP、松村産業製)75部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)67部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分47%、pH8.4、粘度960cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/150/8である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0086】
<比較例1>
水36部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これに膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分35%、pH8.2、粘度50cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/0/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0087】
<比較例2>
水36部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これに炭酸カルシウム(沈降炭酸カルシウムCaCO3、粒子径4.0μm、商標 PCX、白石カルシウム製)17.5部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分35%、pH8.2、粘度50cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/35/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0088】
<試験方法>
1)透湿度
JIS−Z−0208(カップ法)B法(40℃90%RH)で防湿塗工面を外側にして測定した。なお、透湿度の基準としては、50g/m2・24時間以下であれば防湿積層体として実用性がある。
2)防湿面どうしの摩擦係数
防湿積層体の防湿面どうしの静摩擦係数及び動摩擦係数を、JIS P8147の方法により測定した。但し、測定スピードは150mm/分であった。上記テストにより測定された静摩擦係数が0.80を越えて大きい場合と0.40より小さい場合は包装時の滑り性が悪く自動包装機での包装が困難となる。また、動摩擦係数が0.70を越えて大きい場合と0.35より小さい場合も、同様に、自動包装機での包装が困難となる。
3)耐ブロッキング性
防湿積層体を、20cm×20cmの寸法に切断し、この防湿積層体の防湿面どうしを重ね合わせて、この積層物を、温度50℃、圧力12kg/cm2の条件下で30分間圧着した。次に、この積層物の接着状態を観察し、下記のように評価した。
○ 両紙が容易に剥離した
△ 両紙を剥離することができたが、バリバリと剥離音が発生した
× 両紙を破断することなく剥離することができなかった
【0089】
【表1】
【0090】
【発明の効果】
本発明によって、古紙として再利用可能な(水離解性を有する)防湿紙であって、低塗工量における防湿性に優れ、自動包装に適した適度な滑り性を有する防湿積層体を提供することが可能である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、古紙として再利用可能な(水離解性を有する)防湿紙に関するものであり、さらに詳述すれば、防湿紙に要求される防湿性を従来品と比べて飛躍的に高めることを可能とし、低塗工量における防湿性及び防湿面の滑り性が適度であり、包装適性に優れ、なおかつ離解性に優れた防湿積層体を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より上質紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、各種の塗工紙などの巻取及び上質紙や塗工紙の平判紙の包装には、製品の吸湿を防ぐために、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系の高分子化合物を紙に塗工、ラミネート又は内部添加した耐湿性、耐水性を有する包装紙をロール状に巻き取った包装紙ロールをそのままの形状で、あるいは望みの大きさにカットして使用している。また、セメント袋、樹脂袋、塩袋、砂糖袋、飼料袋、肥料袋、ゴミ袋などの重袋用原紙では、製袋して袋詰めした後に、中身の吸湿、吸水を防止しながら重量物を搬送するために防湿性と強度が要求され、ポリエチレン、ポリプロピレンなどをクラフト紙にラミネートしたポリオレフィンラミネート紙(以下ポリラミ紙と称す)とクラフト紙を重ねたものが使用されている。さらには段ボール用のライナ原紙に防湿層を形成させたもので段ボールを耐水化、防湿化することも行われているが、このようなライナもポリラミ紙の場合が多い。
【0003】
しかしながら、これらポリラミ紙は、使用後に古紙として再使用するため回収しても水に十分に離解せず、古紙として再使用できないので問題となっている。また、使用済みポリラミ紙は廃棄するにしても、処分としては焼却や埋め立てによるしかないため環境汚染となる懸念があり、多くの問題を抱えているのが現状である。即ち、従来の防湿紙にはいずれにも問題点があり、これらに代わる防湿紙の開発が急がれている。
【0004】
防湿紙を改良するための技術の一つとしてブタジエン系ラテックス100重量部にワックスを5〜200重量部ブレンドした配合物を塗工し防湿紙を得る技術が提案されている(特公昭55−22597号公報)。
【0005】
しかしこの技術はワックスを用いるため、防湿紙を重ねておく際に生ずる「すべり」の問題や防湿紙へ印刷する際の印刷適性の問題がある。また防湿性についても低塗工量での紙への塗布ではポリエチレンラミネート紙に匹敵する防湿性を得ることが困難である。また、特定の融点を有するパラフィンワックス、マレイン化もしくはフマル化ロジンと多価アルコールとのエステル化物、液状ポリブテン及びロジンなどを主成分とするワックスエマルジョン、あるいは前記ワックスエマルジョンと合成ゴム系ラテックスとの混合物を上質紙、クラフト紙などの繊維質基材表面に塗布し、加温下に乾燥する防湿紙の製造方法も提案されている(特開昭61−47896号公報)。
【0006】
しかし、この方法で得られる防湿紙をロール状とした場合、支持体の裏面は防湿層の含有するワックス成分の一部が僅かながら浸出するため滑りやすく、防湿包装紙により包装された高重量のロール状巻取紙を搬入、搬出、あるいは搬送する際に、包装紙とその内容物との間にずれを生じたり、ひどい時には包装紙の破れやそれに伴う内容物の落下などという重大問題が発生する。さらに、このようなワックスを含む防湿層の表面にはラベルを貼付してもすぐに剥がれるなどの問題がある。さらに、包装時に通常用いられるような接着剤でも接着不良となる。特に汎用で使用される酢ビエマルジョン系接着剤がはじきのため塗工できないか、塗工できても接着性が全くない。従って、常温で液状の強い接着力を持つホットメルト接着剤のように非常に限定された接着剤を用いなくてはならない。
【0007】
しかしこのようなホットメルト接着剤は常温でのべたつきがひどいことや大きなブロック状のものしかないため作業性が悪く、またコスト高になるという問題もある。また、粘着テープを使用して接着する方法もあるが、接着剤による接着に比べ、粘着テープを使用する場合は、包装時の作業性が大幅に劣るという重大な欠点があり、特定の用途にしか用いられないのが現状である。
【0008】
そこで、これらの問題を解決するために、支持体裏面に両性化合物よりなる防滑層を設けた防湿紙が提案されている(特公昭56−18712号公報)。しかし、支持体表面に防湿層、裏面に防滑層を設けた防湿積層体のシートを巻取として仕上げた場合、その巻き圧が高くなると、防滑層顔料が防湿層表面に損傷を与え防湿性能の劣化が発生する。このため巻き圧を低くする必要があるが、巻き圧の低下は巻き取り時の巻き滑り発生による長尺巻取の製造を不可能としたり、巻き取り側面の不揃いによる後工程での大幅な作業性の低下などが付随するという問題を有している。
【0009】
以上のように、離解性を有し、プラスチックフイルムに勝る防湿性をもったワックスを含んだ防湿紙で、包装物の滑りによる問題を発生させない防湿紙はいまだ存在していないのが現状である。
【0010】
また、ワックスを用いない防湿紙としては、本発明者等が紙支持体上に平板状顔料と合成樹脂ラテックスとからなる防湿層を設けた防湿積層体(特開平9−21096号公報)を提案した。この発明においては、それ自体は水蒸気を通さないと思われる顔料、例えば白雲母のような平板状顔料を合成樹脂ラテックスなどの重合体と混合して防湿層を形成させるものである。その防湿メカニズムは、平面的には水蒸気の透過面積が小さくなること、また厚み方向では平板状顔料が防湿層表面に対して平行に配列して積層するため、防湿層中の水蒸気はこの平板状顔料を迂回しながら透過することから(曲路効果)、水蒸気の透過距離が長くなり、結果として大幅に防湿性能が向上するものである。
【0011】
しかしながら、この発明は塗工量30g/m2で透湿度15〜60g/m2・24hrの範囲の防湿紙を製造するには非常に有効であるが、塗工量を少なくすると防湿性は低下し、塗工量10g/m2以下になると透湿度が60〜200g/m2・24hr以上となって、防湿紙としての実用が困難になる。逆に、防湿性を向上させるため塗工量を多くすると防湿紙における防湿層の割合が大きくなり古紙としての価値も低下するといった問題点がある。このことからも塗工量は少ないことが好ましい。
【0012】
また、高膨潤性粘土鉱物と合成樹脂水性分散体からなる防湿性被覆組成物より形成された防湿層を有する防湿性紙(特開2000−303026号公報、2000−290895号公報)が提案されているが、塗工量を10g/m2という低塗工量の防湿性は不十分であり、防湿面(防湿塗工層を形成した面)の摩擦係数が高すぎるといった問題がある。
防湿面の摩擦係数が高いと、例えばPPC用紙やインクジェット用紙などのような小判断裁紙を包装する場合、防湿面を包装の内側になるように印刷するのが通常である。この場合、中味の小判断裁紙を包装する時、包装機械によっては防湿面の上を滑りながら小判断裁紙を包装のためにセットすることがある。防湿面の紙に対する摩擦係数が高いと、小判断裁紙がうまく滑らず荷崩れを起こしたり、包装が乱れるといった問題がある。
包装されたコート紙やアート紙などの印刷用の平判紙を開封する場合、自動で包装紙を開封する機械で開封する場合、防湿面と印刷用の平判紙の摩擦係数が高すぎると開封した後に包装紙が取り除けず破れたり、中味の平判紙がずれたりしてしまうといった問題がある。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−303026号(請求項1)
【特許文献2】
特開2000−290895号(請求項1)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、古紙として再利用可能な(水離解性を有する)防湿紙において低塗工量における防湿性に優れ、防湿の滑り性を改善した防湿積層体を提供するものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために以下の方法をとる。
【0016】
本発明の第1は、紙支持体の少なくとも片面に合成樹脂と膨潤性無機層状化合物とタルクを含むことを特徴とする防湿積層体。
【0017】
本発明の第2は、合成樹脂とタルクの質量比が95/5〜30/70であることを特徴とする本発明の第1に記載の防湿積層体である。
【0018】
本発明の第3は、膨潤性無機層状化合物とタルクの質量比が70/30〜5/95であることを特徴とする本発明の第1〜2のいずれかに記載の防湿積層体である。
【0019】
本発明の第4は、防湿層中に含窒素化合物が含まれることを特徴とする本発明の第1〜3のいずれかに記載の防湿積層体である。
【0020】
本発明の第5は、防湿面どうしの静摩擦係数が0.80以下、0.40以上であり、かつ、動摩擦係数が0.70以下、0.35以上である本発明の第1〜4のいずれかに記載の防湿積層体である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明者等は、合成樹脂と膨潤性無機層状化合物からなる防湿層によって防湿性を発揮させることを検討した。
その結果、特定の組成を有する合成樹脂のエマルジョンが防湿性が良好であること、あるいは、カチオン化度が一定の範囲に入る含窒素化合物を合成樹脂と膨潤性無機層状化合物を併用することで防湿性が向上することを見出した。
【0023】
ところが、さらに検討を続けると、合成樹脂と膨潤性無機層状化合物を含む防湿層は防湿面どうし、あるいは防湿層と紙製品との摩擦係数が非常に高いことが判明した。防湿面の摩擦係数、即ち防湿面の滑り性について鋭意検討したところ、合成樹脂と膨潤性無機層状化合物を含む防湿面は粘着性があるために、滑り性が悪い(摩擦係数が高い)ことを見出した。膨潤性無機層状化合物は非常に薄いため、少ない配合量で防湿性を発揮するため、合成樹脂に対する配合量は白雲母や金雲母のような非膨潤性無機層状化合物に比較して非常に少ない(1/5〜1/10の量)で良い。しかし、配合量が少ないため、防湿層表面に存在する無機層状化合物の量が少なく、また、厚さが非常に薄いため、防湿層表面に無機層状化合物が表面に出ていないため、合成樹脂の粘着性がそのまま防湿面の粘着性となったものと推定される。防湿面の粘着性を低下させるために、顔料を添加する方法があるが、種々の顔料で試みたところ、タルクのみが防湿性を損なわず、適度な摩擦係数を付与することを見出した。
【0024】
タルクのみが適度な滑り性を付与する要因として、タルク表面が非常に疎水性であることが挙げられる。合成樹脂は水性エマルジョンのため親水性成分が含まれている。そのため防湿面表面は比較的親水性になっていると推定される。実際、合成樹脂単独被膜の水の接触角は60〜90度である。しかし、合成樹脂中にタルクが分散されると、防湿面表面が疎水性の部分と親水性の部分が形成されると考えられる。そのため、防湿面どうしでの摩擦係数は、親水部と疎水部が反発しあい、適度な摩擦係数を付与できるものと考えられる。
【0025】
また、タルクが疎水性のため、合成樹脂エマルジョンと膨潤性無機層状化合物の分散混合液の中で、凝集せずに分散できることも、タルクが適度な滑り性を付与できる要因であるとも考えられる。防湿性の面においても分散性が良好なためタルクを添加しても防湿性を低下させることはないものと考えられる。
【0026】
本発明で使用できるタルクは別名滑石と呼ばれ、理論的には含水珪酸マグネシウム(組成式:3MgO・4SiO2・H2O、示性式:Si2O5・(OH)Mg(OH)・SiO2)より成る。一般に蛇紋岩や緑泥石を伴うため、酸化鉄やアルミナを多少含んでいる。タルクとしては、酸化鉄(Fe2O3+FeO)1.5%以下、アルミナ(Al2O3)4%以下、酸化カルシウム(CaO)1.5%以下が好ましい。酸化鉄やアルミナがこれを越えて含まれると、摩擦係数が高くなったり、硬度が硬くなり被包装物を傷つける可能性があり好ましくない。また、タルクは軟らかくて脂肪感に富んでいるのが特徴であるがモース硬度は1のものが好ましい。
タルクは白色で平板状の顔料であるが、防湿性の面からなるべく厚さが薄く平板性のものが好ましい。
タルクの粒子径は特に限定されないが、粒子径が20μを越えると石英などの不純物を含んで硬度が高くなり、被包装物を傷つける可能性があるので好ましくない。また、粒子径が0.1μm未満のタルクは粉砕により微粒子化されたものだが、機械的エネルギーが非常にかかっているため、タルクの結晶構造を破壊するため好ましくない。そのため、好ましい粒子径としては、0.1μm以上、20μ以下であり、より好ましくは0.5μm以上、15μ以下、さらに好ましくは1μm以上10μm以下である。
タルクは八面体シートを2つの四面体シートからなる2:1層の積み重なりからなり、電気的にはほぼ中性の粘土鉱物である(詳細な構造は粘土ハンドブック第二版 1987年発行 日本粘土学会編 P1〜329参照)。同じような構造、外観、性状を有するパイロフィライト(葉蝋石)も本発明においてはタルクに含まれる。
パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)は石英、絹雲母(セリサイト)、カオリンを伴う場合が多いがなるべく不純物が少なくモース硬度が2未満のものが好ましい。
また、タルクは、層状鉱物であり、層間が容易に壁開するため、湿式粉砕や高圧分散、あるいはタルクの層間に珪フッ化ソーダをインターカレートし壁開したような合成タルクも本発明のタルクの範疇に入る。
タルク以外の顔料、例えば、カオリン、クレー、炭酸カルシウムなどは、摩擦係数を下げる効果が小さく、また、多量に添加すると防湿性が悪化するため本発明においては塗料の粘度調整や固形分調整、あるいは増量剤として少量の添加しかできない。
本発明で使用できる合成樹脂とはそれ自体で成膜性があり耐水性を示すものであれば特に制限はない。耐水性の指標としては、樹脂単独の被膜を作製し(ガラス板状に合成樹脂の溶液(水溶液あるいはアルカリ性水溶液)あるいはエマルジョンなどを、乾燥後の厚さが50μm〜100μmになるように塗布し、110℃、5分間乾燥後、乾燥剤の入ったデシケーター中で40℃24時間乾燥させる)、その被膜を23℃の水(サンプル質量に対して100倍以上の質量の水)の中に24時間、浸漬し(攪拌子でゆっくりとかき混ぜる)、被膜を取り出して乾燥させ(乾燥条件:110℃、5分間乾燥後、乾燥剤の入ったデシケーター中で40℃24時間乾燥させる)、その重量減が10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。
【0027】
また、本発明の合成樹脂単独被膜の防湿性は厚さ20μ換算で透湿度が800g/m2・24hr以下、好ましくは600g/m2・24hr以下、より好ましくは400g/m2・24hr以下である。具体的な測定方法は、上記耐水性の指標と同様に合成樹脂被膜を形成し、JIS−Z−0208(カップ法)B法(40℃90%RH)で透湿度を測定し、該合成樹脂被膜の厚さを測定し、20μ換算の透湿度を求める。この時、透湿度は厚さに反比例すると仮定する。
【0028】
防湿層を形成する合成樹脂は水性のエマルジョン(ラテックス、乳化物、マイクロエマルジョン、分散物などもエマルジョンに含まれるとする)あるいはアルカリ水に溶解させたものが好ましい。水溶性あるいは熱水可溶性(水あるいは熱水に対する溶解度が5%以上)の合成樹脂は防湿性が上述した透湿度よりはるかに大きいため好ましくない。例えばポリビニルアルコール(PVA)は水に対する溶解度が5%〜30%の範囲にあるが(溶解度は分子量あるいはケン化度に依存する)、その単独被膜(20μm)の透湿度は上述した条件化で1000g/m2・24hrを越えるため本発明では使用できない。
【0029】
合成樹脂としては、芳香族ビニル系単量体、脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体、不飽和脂肪酸系単量体、αオレフィン系単量体及びその他の共重合可能な単量体の中から1種又は2種以上を乳化重合したものが挙げられる。具体的には、芳香族ビニル系単量体と脂肪族共役ジエン系単量体から乳化重合によって得られるスチレン−ブタジエン系共重合体(SBR)、エチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体と脂肪族共役ジエン系単量体から乳化重合によって得られるメチルメタクリレート−ブタジエン系共重合体(MBR)、芳香族ビニル系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体から乳化重合によって得られるスチレン−アクリル系共重合体、αオレフィン系単量体と不飽和脂肪酸系単量体の乳化重合から得られるエチレン−アクリル酸系共重合体、1種類あるいは2種類以上のエチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体の乳化重合から得られるアクリルエステル系重合体などが挙げられる。これら共重合体は他の単量体と共重合させて使用してもかまわない。
【0030】
単量体について詳述する。芳香族ビニル系単量体は合成樹脂に耐水性と適度な硬さを付与させるもので、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−t−ブチルスチレン、クロロスチレンなどがあり、スチレンが好適に使用される。
【0031】
脂肪族共役ジエン系単量体は合成樹脂に柔軟性を付与させるもので、具体的には、ブタジエン、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、1,3−ブタジエンが好適に使用される。
【0032】
エチレン性不飽和カルボン酸エステル系単量体は合成樹脂に耐水性を付与させるとともに、合成樹脂の硬さやガラス転移温度(Tg)、最低造膜温度(MFT)を調整させるもので、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体などが挙げられる。
【0033】
不飽和脂肪酸単量体は、合成樹脂の成膜性を向上させるとともに、共重合体の水中でのコロイドとしての安定性を高めるもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和多価カルボン酸;イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどの、少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和ポリカルボン酸アルキルエステル;アクリルアミドプロパンスルホン酸、アクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩などの不飽和スルホン酸及びその塩が挙げられる。アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸が好適に使用される。
【0034】
αオレフィン系単量体は合成樹脂に耐水性と柔軟性を付与させるもので具体的にはエチレン、プロピレンなどが挙げられる。
【0035】
上述した単量体と共重合可能な他の単量体は、合成樹脂の耐水性を高めたり、カチオン基を導入して接着性を高めたり、架橋性の官能基を導入して強度を高めたりするもので、具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル; アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル及びメタクリル酸β−ヒドロキシエチルなどのエチレン性不飽和カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル; アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド及びジアセトンアクリルアミドなどのエチレン性不飽和カルボン酸アミド及びその誘導体; アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル; アクロレイン及びアリルアルコール等のビニル化合物などが挙げられる。
【0036】
合性成樹脂エマルジョンは、上記した各単量体を用いて公知の乳化重合法により製造することができる。即ち、所望の単量体を混合し、これに乳化剤、重合開始剤等を加えて水系で乳化重合を行えばよく、一括して仕込み重合する方法、各成分を連続供給しながら重合する方法などの各種の方法が適用できる。
【0037】
乳化重合用の乳化剤としてはアルキル又はアルキルアリル硫酸塩、アルキル又はアルキルアリルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル又はアルキルアリルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル等のノニオン性乳化剤などが例示される。乳化剤の使用量はエマルジョンに対して要求される性質に応じて変わりうるが、一般に重合安定性を向上させる目的やエマルジョンの機械的、化学的安定性を良好にする目的には乳化剤の使用量は多いことが望ましく、乾燥皮膜の耐水性を向上させるためには逆に使用量が少ない方が望ましく、通常は単量体の合計量100重量部に対して0.1〜5重量部程度の範囲内から目的に応じて使用量が決められる。
【0038】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩等の水溶性タイプ、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性タイプなどが用いられる。またさらに必要に応じ、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、L−アスコルビン酸、糖類、アミン類などの還元剤を併用したレドックス系も使用することができる。それらのの使用量は単量体の合計量100重量部に対して0.01〜3重量部程度とすればよい。重合反応は通常35〜90℃程度で行えばよく、反応時間は通常3〜10時間程度とすればよい。
【0039】
なお、乳化重合の開始時あるいは終了後に塩基性物質を加えてpHを調整することにより、エマルジョンの重合安定性、凍結安定性、機械的安定性、化学的安定性等を向上させることができる。特に膨潤性無機層状化合物との配合安定性を得るためには、得られるエマルジョンのpHが5以上となるように調整することが好ましい。膨潤性無機層状化合物の水分散液は通常アルカリ性(pH7〜11)を示すため、混和性の面から合成樹脂のエマルジョンはアルカリ性(pH7以上)がより好ましい。塩基性物質としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、苛性ソーダ、苛性カリ等を使用することができる。特にアンモニアが防湿性の面で好ましい。合成樹脂水性分散体の粒子径は一般に100nm〜300nmであるが、粒子径150nm以下、特に60〜100nm程度の小さい粒子径の水性分散体を使用すると成膜性が向上し欠陥の少ない膜ができるため好ましい。
【0040】
また、合成樹脂としてはポリエステル系樹脂、生分解性樹脂(ポリ乳酸、ポリ酪酸、ポリカプロラクタムなど、また、天然系生分解性樹脂も含まれる)、ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂なども使用することができる。
【0041】
合成樹脂のガラス転移温度(Tg)、最低増膜温度(MFT)、ゲル分率(トルエンに対する不溶分)などには特に制限はないが、Tgは−30℃〜60℃、より好ましくは−20℃〜50℃、さらに好ましくは−10℃〜40℃である。MFTは70℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下が好ましい。ゲル分率は20%〜99%が好ましく、より好ましくは30%〜95%、さらに好ましくは40%〜90%である。Tgが−30℃より小さいと防湿面の粘着性が強くブロッキングを生じ易くなり、Tgが60℃を越えて大きくなると成膜性が低下して防湿性が悪くなる。MFTが70℃より大きいと成膜性が低下して防湿性が悪くなる。ゲル分率が20%未満になるとブロッキングを生じ易くなり、また、99%を越えて大きいと成膜性が低下して防湿性が悪くなる。
【0042】
また、本発明の合成樹脂はエマルジョンあるいはラテックスの形態で使用されるが、合成樹脂のエマルジョンあるいはラテックスはアニオン性のものが好ましい。アニオン性にするためにはカルボン酸やスルホン酸基を有するモノマーを共重合させた合成樹脂を使用することが好ましい。合成樹脂がアニオン性を示すと、無機層状化合物に吸着した含窒素化合物と強い総合作用、含窒素化合物中のアミノ基やアミド基と合成樹脂中のカルボン酸基やスルホン酸基が強いイオン結合あるいは、乾燥過程で脱水反応を起こし共有結合を形成し、耐水性が向上し、その結果防湿性が向上する。
合成樹脂とタルクの質量比は95/5〜30/70が好ましく、より好ましくは90/10〜35/65、さらに好ましくは85/15〜40/60である。合成樹脂とタルクの質量比が95/5より越えて大きくなると(合成樹脂の質量比がこれより大きくなると)タルクによる滑り性の効果がほとんどなくなって好ましくない。合成樹脂とタルクの質量比が30/70より小さくなると(合成樹脂の質量比がこれより小さくなると)防湿性が急激に悪くなり好ましくない。
【0043】
膨潤性無機層状化合物の具体例としては、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、粘土系鉱物、合成マイカ、合成スメクタイト等を挙げることができる。
【0044】
グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物は、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有する化合物ないし物質であり、ここで層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス力等の弱い結合力によって略平行に積み重なった構造をいう。
【0045】
「カルコゲン化物」とは、IV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)及び/又はVI族(Mo,W)元素のジカルコゲン化物であって、式MX2(Mは上記元素、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を示す。)で表わされるものをいう。
【0046】
粘土系鉱物は、一般に、シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を両側から狭んでなる3層構造を有するタイプに分類される。前者の2層構造タイプとしては、カオリナイト族、アンチゴライト族等を挙げることができ、後者の3層構造タイプとしては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。
【0047】
これらの粘土系鉱物としては、スメクタイト族、バーミキュライト族などの粘土鉱物を挙げることができる。より具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、マーガライト、タルク、バーミキュライト、ザンソフィライト、緑泥石等を挙げることができる。また、白水晴雄著、「粘土鉱物学」、1988年、(株)朝倉書店 などの文献を参照することができる。特にスメクタイトが好ましく、スメクタイトにはモンモリロナイト、ハイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどを挙げることができる。
【0048】
これら膨潤性無機層状化合物は天然品(粘土性鉱物)以外にも、合成品、加工処理品(例えばシランカップリング剤の表面処理品)のいずれであってもよく、合成スメクタイトとしては、式Na0.1 〜 1.0Mg2.4 〜 2.9Li0.0 〜 0.6Si3.5 〜 4.0O9.0 〜 10.6(OH及び/又はF)1.5 〜 2.5で示されるものが挙げられる。合成スメクタイトや合成マイカの製造方法には、水熱反応法(特開平6−345419号公報)、固相反応法、熔融法(特開平5−270815号公報参照)の3つの合成方法がある。
【0049】
水熱反応法は、珪酸塩、マグネシウム塩、アルカリ金属イオン、アルカリ金属塩、フッ素イオンなど各種原料を含んだ水溶液あるいは水性スラリーをオートクレーブやパイプリアクターの中で100〜400℃の高温、高圧化のもとで反応させ合成させる方法である。水熱反応法では、結晶の成長が遅いため一般に大きな粒子のものが得られなく、一般に粒子径が10〜100nmのものがほとんどである。もちろん、水熱反応においても、低濃度、低温、長時間の条件で合成すれば粒子径が1μm以上の大きな粒子を製造することは可能だが、製造コストが極端に高くなるといった問題がある。
【0050】
固相反応法はタルクと珪フッ化アルカリと他の原料とともに400℃〜1000℃の範囲で数時間反応させ、合成マイカを製造する方法である。固相反応は原料のタルクの構造を残したまま元素移動を起こしマイカが生成する(トポタキシー)ため、得られる合成マイカの品質が原料のタルク物性やその不純物に依存したり、元素移動を完全にコントロールできないため合成マイカの純度や結晶化度が低いといった問題がある。
【0051】
熔融法は、無水珪酸、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、珪フッ化カリウム、炭酸カリウム、その他の原料をマイカの熔融点(例えば1500℃)以上で熔融後、徐冷結晶化し、合成マイカや合成スメクタイトを製造する方法である。また、加熱方法の違いにより、外熱式熔融法と内熱式熔融法がある。外熱式熔融法は原料を入れたるつぼを熔融点以上の温度の室に入れて昇温後、熔融点以下の温度の室に移動させて製造する方法であるがルツボの費用が高いといった問題点がある。内熱式熔融法は黒鉛(炭素)電極や金属電極を備えてた容器中で通電により原料を加熱熔融させた後、冷却させる方法であり、熔融合成法においては内熱式熔融法が一般的である。熔融合成法は冷却結晶化した塊を粉砕、粉級することにより粒子径をコントロールした合成品を製造することができる。熔融合成法は原料として純度が高い原料を使用することができ、熔融化するため原料が均一に混合できるため、結晶化度が高く、粒子径が大きく、純度の高い合成マイカや合成スメクタイトを製造することができるといった利点がある。
【0052】
合成膨潤性無機層状化合物としては、フッ素金雲母(KMg3AlSi3O10F、熔融法又は固相反応法)、カリウム四珪素雲母(KMg2.5Si4O10F2、熔融法)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg2.5Si4O10F2、熔融法)、ナトリウムテニオライト(NaMg2LiSi4O10F2、熔融法)、リチウムテニオライト(LiMg2LiSi4O10F2、熔融法)などの合成マイカ、ナトリウムヘクトライト(Na0. 33Mg2. 67Li0.33Si4.0O10(OH又はF)2、水熱反応法又は熔融法)、リチウムヘクトライト(Na0. 33Mg2. 67Li0.33Si4.0O10(OH又はF)2、水熱反応法又は熔融法)、サポナイト(Na0. 33Mg2. 67AlSi4.0O10(OH)2、水熱反応法)などの合成スメクタイトが挙げられる。
【0053】
粘土鉱物の市販品としては、一般にナトリウムベンナイトと呼ばれる天然のベントナイトや、クニピア(天然モンモリロナイト、クニミネ工業製)、スメクトン(水熱反応法合成スメクタイト、クニミネ工業社製)、ビーガム(商標:バンダービルト社製)、ラポナイト(商標:ラポルテ社製)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts(熔融法合成スメクタイト、あるいは熔融法合成ナトリウム四珪素雲母、商標:トピー工業製)、ベンゲル(商標:豊順洋行社製)、ソマシフME−100(固相反応法合成マイカ、商標:コープケミカル)等を挙げることができ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いることもできる。
【0054】
本発明にとり好ましいものは、水中で容易に膨潤、壁開及び分散する膨潤性無機層状化合物である。膨潤性無機層状化合物の溶媒への「膨潤・へき開」性の程度は、以下の「膨潤・へき開」試験により評価することができる。該膨潤性無機層状化合物の膨潤性は、下記膨潤性試験において約5mL以上(より好ましくは約20mL以上)の程度であることが好ましい。膨潤性の具体的なものとしては、上記クニピア(膨潤力:65ml/2g以上)、スメクトン(膨潤力:60ml/2g以上)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts(膨潤力:30ml/2g以上)、ME−100(商標:コープケミカル社製、膨潤力:20ml/2g以上)及びベンゲル(膨潤力:38ml/2g以上)等である。
【0055】
一方、該膨潤性無機層状化合物のへき開性は、下記へき開性試験において約5mL以上(より好ましくは約20mL以上)の程度であることが好ましい。これらの場合、溶媒としては、膨潤性無機層状化合物の密度より小さい密度を有する溶媒を用いる。該溶媒としては、水を用いることが好ましい。
【0056】
膨潤性試験を詳述する。膨潤性無機層状化合物2gを溶媒100mLにゆっくり加える(100mLメスシリンダーを容器とする)。静置後、23℃、24hr後の膨潤性無機層状化合物分散層と上澄みとの界面の目盛から前者(膨潤性無機層状化合物分散層)の体積を読む。この数値が大きい程、膨潤性が高い。
【0057】
へき開性試験を詳述する。膨潤性無機層状化合物30gを溶媒1500mLにゆっくり加え、分散機(浅田鉄工(株)製、デスパーMH−L、羽根径52mm、回転数3100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて周速8.5m/secで90分間分散した後(23℃)、分散液100mLをとりメスシリンダーに入れ60分静置後、上澄みとの界面から、膨潤性無機層状化合物分散層の体積を読む。
【0058】
また、本発明で使用するのに好ましい膨潤性無機層状化合物としては、陽イオン交換容量が100gあたり、30〜300meq、より好ましくは50〜250meq、特に好ましくは60〜200meqである。陽イオン交換容量が30meq/100g未満だと含窒素化合物との効果が小さくなり防湿性に優れない。また、300meq/100gを越えて大きいと塗料が凝集しやすくなり好ましくない。一般に、天然及び合成スクメタイトは85〜130meq/100gの陽イオン交換容量を有するもので本発明にとり特に好ましいものである。
【0059】
陽イオン交換容量の測定は一般にアルコール洗浄法(Schollenberger法あるいはその改良法、和田光史(1981)粘土科学21,160−163参照)と呼ばれる測定方法で行う。膨潤性無機層状化合物の粉末0.2〜1.0gあるいは約1〜3%水分散液を約10〜30mlを100ml容量の遠心分離管に採取する。1Nの酢酸アンモニウム(CH3COONH4)液(pH7)を加えて約80mlとして、十分に振とうした後、遠心沈降させ上澄みを捨てる(遠沈洗浄)。遠沈洗浄を4回繰り返した後、遠心分離管に残っている余剰の塩を取り除くため80%エタノール水溶液(pH7)で遠沈洗浄を3回行う。次に10%のNaCl水溶液を用いて遠沈洗浄を4回繰り返し、遠心管の上澄み液をすべて集めて抽出液とする。抽出液のNH4を蒸留法で定量し、試料の乾燥質量(100g)あたりのミリグラム当量数(meq)を陽イオン交換容量(cation exchange capacity, CEC)の値とする。なお測定は23℃の環境下で行う。また、測定は7点行い、最大値と最小値を除いた5点の平均を測定値とした。
【0060】
膨潤性無機層状化合物としては、そのアスペクト比が50〜5000のものが好ましい。アスペクト比(Z)とはZ=L/aなる関係で示されるものであり、Lは膨潤性無機層状化合物の水中での平均粒子径(レーザー回折法で測定。堀場製作所LA−910.屈折率1.3、体積分布50%のメジアン径)であり、aは膨潤性無機層状化合物の厚みであり。厚みは、防湿層の断面をSEMやTEMによる写真観察によって求めた値である。平均粒子径は0.1μm〜100μmが好ましく、とりわけ0.5μm〜50μmが好ましい。粒子径が0.1μm未満になるとアスペクト比が小さくなる上、防湿層中で防湿面に対して平行に並びにくくなり、防湿効果が不十分になる。粒子径が100μmを越えて大きくなると防湿層から膨潤性無機層状化合物が突き出てしまい好ましくない。
【0061】
これら膨潤性無機層状化合物の中でも、ナトリウム四珪素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライト、ナトリウムヘクトライト、リチウムヘクトライト、サポナイト、天然スメクタイト(モンモリロナイト)が好ましい。これらの中でも、粒子径、アスペクト比、結晶性の面からから熔融合成法で製造されたナトリウム四珪素雲母(トピー工業製、DMA350)やタルクにフッ化ケイ素をインターカレートし約800℃で焼成して得られる膨潤性フッ素マイカが特に好ましい。
膨潤性無機層状化合物とタルクの質量比は70/30〜5/95が好ましく、より好ましくは65/35〜10/90であり、さらに好ましくは60/40〜15/90である。質量比が70/30より大きいと(膨潤性無機層状化合物の質量比がこれより大きいと)タルクによる滑り性の効果がほとんどなくなり好ましくない。また、5/95より小さいと(膨潤性無機層状化合物の質量比がこれより小さいと)防湿性が悪化し好ましくない。
【0062】
合成樹脂と膨潤性無機層状化合物の配合比(質量基準)は30/70〜99.9/0.1が好ましく、より好ましくは50/50〜99.5/0.5、さらに好ましくは70/30〜99/1である。膨潤性無機層状化合物が70部より大きいと防湿性向上効果が頭打ちとなるばかりか、合成樹脂が膨潤性無機層状化合物を完全に覆うことができなくなり、ピンホールが発生し防湿性が悪くなる可能性がある。また、膨潤性無機層状化合物が0.1未満だと防湿性向上効果が非常に小さくなる。
【0063】
本発明で使用できる含窒素化合物は、水溶液中でカチオン性を示す化合物であれば特に制限はないが、カチオン化度が0.1〜10meq/gのものが好ましく、0.2〜7meq/gがさらに好ましく、0.5〜5meq/gが特に好ましい。カチオン化度が0.1meq/g未満だと、カチオン性が弱く、無機層状化合物への吸着力が弱くなるため防湿性が悪くなり、9meq/gを越えて大きいと、塗料が凝集しやすくなり取扱いが困難となるばかりでなく、防湿性も悪化する。
【0064】
含窒素化合物を具体的に挙げると、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミド化合物、ポリアミドアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、及びポリアミドアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素化合物、ポリアミンポリ尿素化合物、ポリアミドアミンポリ尿素化合物及びポリアミドアミン化合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、アミノ変性アクリルアミド系化合物、ポリビニルアミン、ポリビニルアミンなどがある。また、含窒素化合物は特開平9−291499号公報に記載の含窒素化合物も使用できる。
【0065】
さらに、含窒素化合物としてはイミン化合物やアミン化合物と称せられる物が代表である。これらのうちイミン化合物としてはポリアルキレンイミンが代表であり、ポリエチレンイミン、アルキルあるいはシクロペンチル変性ポリエチレンイミン、エチレン尿素のイミン付加物、ポリ(エチレンイミン−尿素)及びポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、又は、これらのアルキル変性体、アルケニル変性体、ベンジル変性体、もしくは、脂肪族環状炭化水素変性体、ポリアミドイミド、ポリイミドワニス、からなる群より選ばれたポリイミン系化合物がある。
【0066】
また、アミン化合物としてはポリアルキレンポリアミンがある。例えばポリエチレンポリアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの化合物である。また同様の効果を示す物としては、ポリアミドのポリエチレンイミド付加物などの化合物などのポリアミド、ヒドラジン化合物、ポリアミンポリアミドのエピクロロヒドリン付加物(炭素数3〜10の飽和二塩基性カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとからポリアミドをエピクロルヒドリンと反応させて得られる水溶性で陽イオン性の熱硬化性樹脂)などのポリアミンアミド化合物、4級窒素含有アクリルポリマー、4級窒素含有ベンジルポリマー、ウレタン、カルボン酸アミン塩基を有する化合物、メチロール化メラミン、カチオン性ポリウレタンなどの化合物などの含窒素4級塩化合物がある。また、カチオン変性ポリウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、第3級窒素含有アクリル系樹脂等などのカチオン樹脂が挙げられる(カチオン樹脂については特開平8−90898号公報、特開昭63−162275号公報、特開昭62−148292号公報を参照されたい)。さらに、尿素、チオ尿素、グアニル尿素、メチル尿素、ジメチル尿素などの尿素化合物やジシアンジアミド誘導体なども本発明の範疇である。
【0067】
含窒素化合物の添加量は、膨潤性無機層状化合物の陽イオン交換容量と配合量及び含窒素化合物のカチオン化度で決定される。無機層状化合物の表面部はアニオン性であり、表面部にカチオン交換能があるといわれている。また、含窒素化合物のカチオン化度によって膨潤性無機層状化合物の平面部への吸着能力が異なるものと推定される。本発明者等は膨潤性無機層状化合物の陽イオン交換容量A(meq/100g)と含窒素化合物のカチオン化度B(meq/g)及び膨潤性無機層状化合物と含窒素化合物の質量比C/D(膨潤性無機層状化合物の添加量/含窒素化合物の添加量)が次の関係を満たしている時に防湿性が優れていることを見出した。
10≦(A×C)/(B×D)≦1000
ここでは(A×C)/(B×D)の値をカチオン比と呼ぶ。カチオン比が10未満だと、含窒素化合物による無機層状化合物の被覆が不十分(含窒素化合汚物のカチオン化度が弱く無機層状化合物に吸着していない、無機層状化合物の陽イオン交換容量が小さすぎる、含窒素化合物の添加量が少なすぎるため、の少なくとも一つが理由として挙げられる)なため防湿性が不十分となる。またカチオン比が1000より越えて大きいと塗料が凝集しやすくなり好ましくない。
【0068】
含窒素化合物のカチオン化度の測定方法を詳述する。含窒素化合物を濃度が0.4g/l(1リットル中に含窒素化合物が固形分として0.4g含まれる)の水溶液になるようにイオン交換水で調整する。得られた含窒素化合物水溶液10mlにトルイジンブルー指示薬を2滴添加する。次に、1/400N(0.0025mol/リットル)のポリビニル硫酸カリウム(PVSK,ファクター1.108)溶液で滴定を行い、溶液が青色から赤紫色に変色した滴定量を読み、下記計算式から含窒素化合物のカチオン化度を求めた。
カチオン化度(meq/g)=1/400×ファクター(1.108)×滴定量(ml)÷{0.4(g/l)×10(ml)}
測定は7点行い、最大値と最小値を除いた5点の平均を測定値とした。また、測定は23℃50%RHの環境下で行った。
防湿積層体の防湿層中に含まれる無機層状化合物の量及び陽イオン交換容量の測定方法は次ののとおりである。まず防湿層をカミソリ刃で一定量削り取りその重量を測定する。削り取った防湿層を550℃3時間加熱し灰化する。灰化した重量を測定するとともにIR、X線回折、電子顕微鏡写真などで無機層状化合物であることを確認する。得られた無機層状化合物の陽イオン交換量を前述の方法で測定する。また、粒子径の測定及び電顕写真観察により後述のアスペクト比も測定できる。
防湿積層体の防湿層中に含まれる含窒素化合物の添加量及びカチオン化度は次のように測定する。防湿層をカミソリ刃で一定量削り取り、これを水によるソックスレー抽出により抽出する。抽出液の水を除去し得られた固形分の重量を測定する。この固形分のIR、NMR、DSC、質量分析などのような分析手法を用いて含窒素化合物の量を定量する。また、得られた含窒素化合物のカチオン化度は前記の方法で測定する。
また、含窒素化合物はカチオン性を示すために、無機層状化合物のアニオン部分やアニオン性の合成樹脂エマルジョンと混合した時にショック(塗料凝集)を起こすことがある。このようなショックを防止するために塩基性物質を含窒素化合物、無機層状化合物の水溶液や合成樹脂エマルジョン中に加えてアルカリ側(pH7〜10が好ましい)に調整した方が好ましい。特に含窒素化合物に塩基性化合物を添加する方法がショック防止の効果が大きい。塩基性物質としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、苛性ソーダ、苛性カリ等を使用することができる。特にアンモニアが防湿性の面で好ましい。
【0069】
本発明においては、膨潤性無機層状化合物の分散剤としてイオン界面活性剤を使用しても良い。
本発明で使用できるイオン界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩などが例示されるが、このうち特にカルボン酸塩が好ましい。カルボン酸塩は泡が出難く、コーティング性能が特に向上する。陽イオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などは膨潤性無機層状珪酸塩と凝集を起こしやすく、コーティング剤に適度な粘性と膨潤性無機層状珪酸塩の分散性を付与できない場合が多く好ましくない。
【0070】
カルボン酸塩としては、脂肪酸のナトリウム、カリウム塩、ヤシ油脂肪酸のナトリウム、カリウム塩、トール油脂肪酸のナトリウム、カリウム塩、アミン塩、N−ラウロイルサルコシン、アシル化ポリペプチド等が例示され、またスルホン酸塩としては直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルキルベンゼンスルホン酸塩、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、石油スルホン酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩、n−パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、イセチオン酸塩などが例示され、硫酸エステル塩としては直鎖第1級アルコール硫酸塩、ポリオキシエチレン付加直鎖アルコール硫酸塩、硫酸化油等が例示され、リン酸エステル塩、ポリリン酸エステル塩としてはポリオキシエチレン付加直鎖アルコールリン酸塩等が例示され、その他にフッ化炭化水素基含有の陰イオン界面活性剤なども使用し得る。
【0071】
なお、陰イオン界面活性剤の配合量は、膨潤性無機層状化合物に対して陰イオン界面活性剤を重量換算で0.01%〜10%が好ましい。0.01%よりも小さく、あるいは10%より大きいとむしろ分散性、コーティング性も不良となる。
【0072】
また、膨潤性無機層状化合物の分散は、各種形状を有するプロペラによる攪拌やホモジナイザーでの攪拌でもかまわないが、膨潤性無機層状化合物を水中で十分に分散させるために、ヘンシェルミキサー(三井鉱山製)、スーパーミキサー、高圧ホモジナイザー、高圧分散機、超音波分散機で分散する方が好ましい。
【0073】
膨潤性の面から高圧分散機が特に好ましい。高圧分散機とは、分散させるべき粒子と溶媒等の媒体を混合した組成物を複数本の細管中に高速通過させ衝突させることにより、高剪断や高圧状態などの特殊な条件下を作り出す装置である。例えば、組成物を管径1〜1000μmの細管中を通過させることが好ましく、該組成物には最大圧力条件が100kgf/cm2以上の圧力がかかることが好ましく、500kgf/cm2以上がより好ましい。また組成物が高圧分散装置内を通過する際、組成物の最高到達速度が100m/sec以上に達するものが好ましく、また伝熱速度は100kcal/hr以上のものが好ましい。
【0074】
かかる高圧分散装置としては、例えばMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザーがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザー、日本ビーイーイー製超高圧ジェット流反転型乳化装置等が挙げられる。
【0075】
また、本発明における防湿塗料には 防湿層の塗工量は特に制限はないが、0.1〜20g/m2が好ましく、より好ましくは1〜15g/m2、最も好ましくは3〜10g/m2である。
【0076】
防湿層塗工量が0.1g/m2未満であると、防湿性が悪く好ましくない。また塗工量が20g/m2を越えると、防湿性は頭打ちとなるため不経済であり、また防湿層の割合が大きくなることで古紙としての価値が低下する。
【0077】
本発明の防湿塗料に必要とあらば、ポリカルボン酸などの分散剤、シリコーン系などの消泡剤、界面活性剤、保水剤、色合い調成剤、膨潤性無機層状化合物以外の顔料(炭酸カルシウム、クレー、カオリン、マイカ)などを添加したりすることができる。
【0078】
以上で述べたような防湿塗料を紙支持体に塗工して防湿層を形成する。塗工設備として特に限定はしないが、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーターなどの方式が好ましい。特に防湿層形成にはブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーターなどの塗工表面をスクレイプするコーターが平板状顔料の配向を促すという点で好ましい。
【0079】
また本発明に用いられる基材は、機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とするものであれば特に制限はないが、一般的に用いられている晒または未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)、又は段ボール用、建材用、白ボ−ル用、チップボ−ル用などに用いられる板紙などが好適であり、さらに好ましくはヤンキ−ドライヤ−などで強制乾燥がなされた片ツヤ紙、又はカレンダ−処理が施された晒/未晒クラフト紙などであり、このような紙基材を用いた場合は、その高平滑な基材表面より、防湿層の厚さ方向における平板状顔料の配向性は、塗工面に対して乱れることなく均一に、平行に配列しやすくなるため、防湿性能も格段に向上する。
また、基材と防湿層の間に防湿層の塗工適性や塗工量減のためにアンカー層を用いたり、ヒートシール性を付与するためにオーバーコート層を設けても良い。
【0080】
本発明の防湿積層体は、紙製品の巻取や平判の包装紙、PPC用紙やインクジェット用紙などの小判断裁紙用の包装紙、お菓子箱や粉末洗剤箱などの各種紙器用の原紙(板紙)、段ボール用のライナ及び中芯、クラフト袋やクラフト多層袋(重袋)などの袋用原紙、液体用容器の原紙などに使用することができる。
本発明における防湿積層体の防湿面どうしの摩擦係数は、防湿面を被包装物に接するような場合は自動包装における包装適性に影響を与える。また、防湿面を外側にして包装する場合は、包装物を積み重ねた時に荷崩れを起こしたり作業性に悪影響を与えたりする。
本発明者らが検討したところ、防湿面どうしの静摩擦系異数と動摩擦係数が一定の範囲に入れば、いかなる包装形態においても、適度な滑り性であることを見出した。即ち、防湿面どうしの静摩擦係数が0.80以下、0.40以上であり、かつ、動摩擦係数が0.70以下、0.35以上であれば、適度な滑り性を有し好ましく、より好ましくは、防湿面どうしの静摩擦係数が0.75以下、0.45以上であり、かつ、動摩擦係数が0.65以下、0.40以上であり、さらに好ましくは、防湿面どうしの静摩擦係数が0.70以下、0.50以上であり、かつ、動摩擦係数が0.60以下、0.45以上である。
静摩擦係数が0.80を越えて大きいあるいは動摩擦係数が0.70が越えて大きいと、滑り性が悪すぎるため、自動包装適性や包装物の作業性が低下する。また、静摩擦係数が0.40未満あるいは動摩擦係数が0.35未満になると、滑りすぎるために、自動包装時に紙製品が乱れたり、所定の位置に止まらなかったり、包装物どうしが滑りすぎて荷崩れを起こしてしまう。
【0081】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を限定するものではない。また、特に断らない限り実施例中の部は質量部を示す。
<実施例1>
水36部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これにタルク(含水珪酸マグネシウム、組成式 3MgO・4SiO2・H2O、粒子径9.5μm、モース硬度1、商標クラウンタルクPP、松村産業製)17.5部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分35%、pH8.2、粘度50cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/35/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0082】
<実施例2>
水34部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これにタルク(含水珪酸マグネシウム、組成式 3MgO・4SiO2・H2O、粒子径9.5μm、モース硬度1、商標クラウンタルクPP、松村産業製)7.5部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分32%、pH8.2、粘度28cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/15/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0083】
<実施例3>
水36部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これにタルク(含水珪酸マグネシウム、組成式 3MgO・4SiO2・H2O、粒子径9.5μm、モース硬度1、商標クラウンタルクPP、松村産業製)2.5部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分30%、pH8.1、粘度18cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/5/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0084】
<実施例4>
水37部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これにタルク(含水珪酸マグネシウム、組成式 3MgO・4SiO2・H2O、粒子径9.5μm、モース硬度1、商標クラウンタルクPP、松村産業製)25部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分37%、pH8.2、粘度120cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/50/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0085】
<実施例5>
水40部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これにタルク(含水珪酸マグネシウム、組成式 3MgO・4SiO2・H2O、粒子径9.5μm、モース硬度1、商標クラウンタルクPP、松村産業製)50部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分43%、pH8.2、粘度350cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/100/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
<実施例6>
水33部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これにタルク(含水珪酸マグネシウム、組成式 3MgO・4SiO2・H2O、粒子径9.5μm、モース硬度1、商標クラウンタルクPP、松村産業製)75部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)67部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分47%、pH8.4、粘度960cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/150/8である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0086】
<比較例1>
水36部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これに膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分35%、pH8.2、粘度50cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/0/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0087】
<比較例2>
水36部に25%アンモニア水溶液を0.40部加え攪拌し、含窒素化合物(カチオン化度2.5meq/g、変性ポリアミド系樹脂、pH7.2、固形分50%、商標:SPI203(50)、住友化学製)4.5部を攪拌しながら加えた。さらに、攪拌しながら酸変性SBRラテックス(固形分50%、スチレン単量体47部、ブタジエン単量体38部、メタクリル酸15部、ガラス転移温度15℃、ゲル分率80%、粒子径80nm、pH7.0、商標HOJ4097、日本ゼオン製)100部を加え攪拌した。これに炭酸カルシウム(沈降炭酸カルシウムCaCO3、粒子径4.0μm、商標 PCX、白石カルシウム製)17.5部を加え攪拌し、膨潤性無機層状化合物(粒子径6.3μm、陽イオン交換容量100meq/100g、6%水分散液、商標:NTO−5、トピー工業製)50部を攪拌しながら添加して防湿塗料とした。防湿塗料は固形分35%、pH8.2、粘度50cpsであった。また、合成樹脂とタルクと膨潤性無機層状化合物の固形分比は100/35/6である。得られた防湿塗料を未晒クラフト紙(坪量70g/m2、厚さ100μm)に防湿層の塗工量が固形分で12g/m2になるようにメイヤーバーで塗工した後、熱風乾燥機を用いて110℃1分間乾燥して防湿積層体を得た。
【0088】
<試験方法>
1)透湿度
JIS−Z−0208(カップ法)B法(40℃90%RH)で防湿塗工面を外側にして測定した。なお、透湿度の基準としては、50g/m2・24時間以下であれば防湿積層体として実用性がある。
2)防湿面どうしの摩擦係数
防湿積層体の防湿面どうしの静摩擦係数及び動摩擦係数を、JIS P8147の方法により測定した。但し、測定スピードは150mm/分であった。上記テストにより測定された静摩擦係数が0.80を越えて大きい場合と0.40より小さい場合は包装時の滑り性が悪く自動包装機での包装が困難となる。また、動摩擦係数が0.70を越えて大きい場合と0.35より小さい場合も、同様に、自動包装機での包装が困難となる。
3)耐ブロッキング性
防湿積層体を、20cm×20cmの寸法に切断し、この防湿積層体の防湿面どうしを重ね合わせて、この積層物を、温度50℃、圧力12kg/cm2の条件下で30分間圧着した。次に、この積層物の接着状態を観察し、下記のように評価した。
○ 両紙が容易に剥離した
△ 両紙を剥離することができたが、バリバリと剥離音が発生した
× 両紙を破断することなく剥離することができなかった
【0089】
【表1】
【0090】
【発明の効果】
本発明によって、古紙として再利用可能な(水離解性を有する)防湿紙であって、低塗工量における防湿性に優れ、自動包装に適した適度な滑り性を有する防湿積層体を提供することが可能である。
Claims (5)
- 紙支持体の少なくとも片面に合成樹脂と膨潤性無機層状化合物とタルクを含むことを特徴とする防湿積層体。
- 合成樹脂とタルクの質量比が95/5〜30/70であることを特徴とする請求項1に記載の防湿積層体。
- 膨潤性無機層状化合物とタルクの質量比が70/30〜5/95であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の防湿積層体。
- 防湿層中に含窒素化合物が含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防湿積層体。
- 防湿面どうしの静摩擦係数が0.80以下、0.40以上であり、かつ、動摩擦係数が0.70以下、0.35以上である請求項1〜4のいずれかに記載の防湿積層体。
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