JP7036104B2 - ガスバリア性積層体 - Google Patents
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Description
以下、本実施形態のガスバリア性積層体を構成する各層について説明する。
本実施形態に用いられる紙支持体は、植物由来のパルプを主成分として一般的に用いられている紙であれば特に制限はない。具体的には、晒または未晒クラフト紙、上質紙、板紙、ライナー紙、塗工紙、片艶紙、グラシン紙、グラファン紙等を挙げることができる。機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とする紙であることが好ましい。
水蒸気バリア層は、水蒸気の透過を阻止する機能を有する層であり、層状無機化合物、カチオン性樹脂およびアニオン性バインダーを含有している。
層状無機化合物の形態は、平板状である。層状無機化合物とバインダーとの混合溶液を作成し、紙支持体上に塗工すると、水蒸気バリア層が形成される。水蒸気バリア層内においては、平板状の層状無機化合物が紙支持体の平面(表面)とほぼ平行に積層した状態に配列する。そうすると、平面方向では層状無機化合物が存在していない面積が小さくなることから、水蒸気の透過が抑制される。また、厚さ方向では平板状の層状無機化合物が紙支持体平面に対して平行に配列して存在するため、層中の水蒸気は層状無機化合物を迂回しながら透過することとなり、水蒸気の透過が抑制される。その結果、水蒸気バリア層は優れた水蒸気バリア性を発現することができる。
本発明者らは、層状無機化合物を含有する水蒸気バリア層にカチオン性樹脂を添加することによって、水蒸気バリア性が大きく向上することを見出した。
本発明者らは、さらに、バインダーがアニオン性を示す方が、水蒸気バリア性がより向上することも見出した。前記したように、層状無機化合物の平面部分はアニオン性であるが、カチオン性樹脂が吸着すると表面がカチオン性になる。そのため、アニオン性であるバインダーとの親和性が高まることとなる。
ガスバリア層は、主として酸素ガスの透過を阻止する機能を有する層であり、水溶性高分子を含有している。
水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプンおよびその誘導体、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ウレタン系樹脂、ポリアクリル酸およびその塩、カゼイン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
(製造方法)
ガスバリア性積層体は、紙支持体上に、まず水蒸気バリア層形成用塗工液を塗工して、水蒸気バリア層を形成した後、ガスバリア層形成用塗工液を塗工して、ガスバリア層を形成することにより、製造することができる。各層は、塗工液を逐次塗工および乾燥させて形成してもよく、同時多層塗工した後に乾燥させて形成してもよい。
ガスバリア性積層体は、紙支持体の少なくとも一方の面上に水蒸気バリア層およびガスバリア層をこの順に有しているが、さらに、当該ガスバリア性積層体の少なくとも一方の最外層にシーラント層を形成してもよい。すなわち、シーラント層は、水蒸気バリア層およびガスバリア層を形成した側の当該ガスバリア層の上に形成してもよいし、水蒸気バリア層およびガスバリア層を形成していない側の紙支持体の上に形成してもよいし、両方の上に形成してもよい。
(1)紙支持体
晒クラフト紙:坪量70g/m2、厚さ100μm
(2)層状無機化合物
マイカ:膨潤性マイカ、粒子径6.3μm、アスペクト比約1000、厚さ約5nm、固形分6%、製品名:NTO-05、トピー工業社製
ベントナイト:膨潤性ベントナイト、粒子径300nm、アスペクト比300、厚さ約1nm、固形分100%、製品名:クニピアF、クニミネ工業社製
カオリン:エンジニアードカオリン、粒子径9.0μm、アスペクト比80~100、厚さ約0.1μm、固形分100%、製品名:バリサーフHX、イメリスミネラルズ社製
金雲母:粒子径20μm、アスペクト比20~30、厚さ約1μm、固形分100%、製品名:AB32、株式会社山口雲母工業製
(3)カチオン性樹脂
変性ポリアミド系樹脂:固形分53%、製品名:SPI203(50)、田岡化学工業社製、表面電荷0.4meq/g
(4)アニオン性バインダー
酸変性SBRラテックス:固形分47.3%、製品名:LX407S12、日本ゼオン社製
酸変性SBRラテックス:固形分50.5%、製品名:LX407BP-6、日本ゼオン社製
スチレンアクリル系樹脂エマルジョン:固形分53.8%、製品名:ハービルC-3、第一塗料製造所製
オレフィン・不飽和カルボン酸系樹脂エマルジョン:固形分29.0%、製品名:ザイクセンAC、住友精化株式会社製
(5)水溶性高分子
ポリビニルアルコール:完全ケン化型ポリビニルアルコール、製品名:ポバールPVA117、クラレ社製
(6)シーラント
低密度ポリエチレン:LDPE、製品名:サンテックL4490、旭化成株式会社製
ポリ乳酸フィルム:PLA、製品名:エコロージュ、三菱ケミカル株式会社製
ポリブチレンサクシネート:PBS、製品名:Bio PBS FZ71、三菱ケミカル株式会社製
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)47.3部に、攪拌しながらアニオン性バインダーとして酸変性SBRラテックス(LX407S12)90.0部及び酸変性SBRラテックス(LX407BP-6)9.4部を加え、攪拌した。これに、カチオン性樹脂として変性ポリアミド系樹脂(SPI203(50))を4.5部加え、攪拌した。さらに、25%アンモニア水溶液を0.6部加え攪拌した。さらに、希釈水を加え、固形分濃度32%とし、水蒸気バリア層の塗工液とした。
水溶性高分子としてポリビニルアルコール(PVA、ポバールPVA117)の固形分濃度10%水溶液を調製し、ガスバリア層の塗工液とした。
変性ポリアミド樹脂の添加量を0.1部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
変性ポリアミド樹脂の添加量を3.8部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
変性ポリアミド樹脂の添加量を11.3部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
変性ポリアミド樹脂の添加量を15.1部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)47.3部をベントナイト(膨潤性ベントナイト、クニピアF)12部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)47.3部をカオリン(バリサーフHX)20部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
水蒸気バリア層の塗工液の酸変性SBRラテックス(LX407S12)90.0部及び酸変性SBRラテックス(LX407BP-6)9.4部を、スチレンアクリル系樹脂エマルジョン(ハービルC-3)87.9部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
変性ポリアミド樹脂の添加量を0.1部に変更した以外は、実施例8と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
変性ポリアミド樹脂の添加量を3.8部に変更した以外は、実施例8と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
変性ポリアミド樹脂の添加量を11.3部に変更した以外は、実施例8と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
変性ポリアミド樹脂の添加量を15.1部に変更した以外は、実施例8と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)47.3部をベントナイト(膨潤性ベントナイト、クニピアF)12部に変更した以外は、実施例8と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)47.3部をカオリン(バリサーフHX)20部に変更した以外は、実施例8と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
水蒸気バリア層の塗工液の酸変性SBRラテックス(LX407S12)90部及び酸変性SBRラテックス(LX407BP-6)9.4部を、オレフィン・不飽和カルボン酸系樹脂エマルジョン(ザイクセンAC)162.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
水蒸気バリア層と酸素バリア層を形成したガスバリア性積層体の両面にラミネート方法として低密度ポリエチレン(LDPE)を使用した押出ラミネートによりシーラント層を厚さ30μmで積層する工程を加えたこと以外は、実施例8と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
ラミネート方法をポリ乳酸(PLA)フィルムを使用したドライラミネートに変更し、ラミネート面をガスバリア層側のみに変更した以外は、実施例16と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
ラミネートに使用する樹脂を低密度ポリエチレンに代えてポリブチレンサクシネート(PBS)とした以外は、実施例16と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
水蒸気バリア層の塗工液のスチレンアクリル系樹脂エマルジョン(ハービルC-3)87.9部を、オレフィン・不飽和カルボン酸系樹脂エマルジョン(ザイクセンAC)162.0部に変更した以外は、実施例17と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
水溶性高分子としてポリビニルアルコール(PVA、ポバールPVA117)の固形分濃度10%に代えて12%とした水溶液335部、層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)66.7部、および水40部からなる組成物を混合して、ガスバリア層の塗工液としたこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア積層体を得た。
水溶性高分子としてポリビニルアルコール(PVA、ポバールPVA117)の固形分濃度10%に代えて12%とした水溶液335部、層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)66.7部、および水40部からなる組成物を混合して、ガスバリア層の塗工液としたこと以外は、実施例8と同様にして、ガスバリア積層体を得た。
水溶性高分子としてポリビニルアルコール(PVA、ポバールPVA117)の固形分濃度10%に代えて12%とした水溶液335部、層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)66.7部、および水40部からなる組成物を混合して、ガスバリア層の塗工液としたこと以外は、実施例15と同様にして、ガスバリア積層体を得た。
水溶性高分子としてポリビニルアルコール(PVA、ポバールPVA117)の固形分濃度10%に代えて12%とした水溶液335部、層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)66.7部、および水40部からなる組成物を混合して、ガスバリア層の塗工液としたこと以外は、実施例17と同様にして、ガスバリア積層体を得た。
水溶性高分子としてポリビニルアルコール(PVA、ポバールPVA117)の固形分濃度10%に代えて12%とした水溶液335部、層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)35.0部、および水40部からなる組成物を混合して、ガスバリア層の塗工液としたこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア積層体を得た。
水溶性高分子としてポリビニルアルコール(PVA、ポバールPVA117)の固形分濃度10%に代えて12%とした水溶液335部、層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)90.0部、および水40部からなる組成物を混合して、ガスバリア層の塗工液としたこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア積層体を得た。
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)47.3部をカオリン(バリサーフHX)94.0部に変更した以外は実施例15と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)47.3部をカオリン(バリサーフHX)188.0部に変更した以外は実施例15と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
水蒸気バリア層と酸素バリア層を形成したガスバリア性積層体の両面にラミネート方法としてポリブチレンサクシネート(PBS)を使用した押出ラミネートによりシーラント層を厚さ30μmで積層する工程を加えたこと以外は、実施例26と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
変性ポリアミド樹脂を水蒸気バリア層の塗工液に含まないこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)47.3部をカオリン(バリサーフHX)20部に変更したことと、変性ポリアミド樹脂を水蒸気バリア層の塗工液に含まないこと以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
変性ポリアミド樹脂を水蒸気バリア層の塗工液に含まないこと以外は、実施例8と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)47.3部をカオリン(バリサーフHX)20部に変更したことと、変性ポリアミド樹脂を水蒸気バリア層の塗工液に含まないこと以外は、実施例8と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)47.3部を金雲母(AB32)20部に変更したこと以外は、実施例8と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
層状無機化合物の水分散液(膨潤性マイカ、NTO-05)47.3部を金雲母(AB32)20部に変更したことと、変性ポリアミド樹脂を水蒸気バリア層の塗工液に含まないこと以外は、実施例8と同様にして、ガスバリア性積層体を得た。
JIS-Z-0208(カップ法)B法(40℃±0.5℃,90%±2%RH)で、水蒸気バリア層を内側にして測定した。なお、水蒸気透過度の基準としては、50g/m2・24h以下であれば、水蒸気バリア層として実用性がある。
酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/20)を使用し、23℃,50%RH条件にて測定した。なお、酸素透過度の基準として、10cc/m2・24h以下であれば、ガスバリア層として実用性がある。
ガスバリア性積層体の断面を顕微鏡拡大写真(電子顕微鏡写真)により目視にて観察し、下記の基準で評価し、◎と○のときを合格と判定した。特に断面写真における空隙は、周囲が輝度ムラとして判別され、膜構造の厳密な評価ができる。
◎:水蒸気バリア層が均一で緻密性は高く、バリア性が高い。
○:水蒸気バリア層の層状無機化合物が目立つが稠密性は高く、バリア性が高い。
△:水蒸気バリア層の稠密性はあるが、バリア性が低い。
×:水蒸気バリア層の稠密性は著しく低く、バリア性が低い。
Claims (10)
- 紙支持体の少なくとも一方の面上に水蒸気バリア層およびガスバリア層をこの順に有するガスバリア性積層体であって、
前記水蒸気バリア層が層状無機化合物、カチオン性樹脂およびアニオン性バインダーを含有し、
前記層状無機化合物がマイカおよびベントナイトから選ばれる少なくとも1種であり、
前記層状無機化合物のアスペクト比が80以上であり、
前記層状無機化合物の厚さが100nm以下であり、
前記層状無機化合物の含有量が前記アニオン性バインダー100質量部に対して0.1~800質量部であり、
前記アニオン性バインダーがエチレン・アクリル酸共重合体であり、
前記ガスバリア層が水溶性高分子を含有することを特徴とするガスバリア性積層体。 - 前記カチオン性樹脂の含有量が前記アニオン性バインダー100質量部に対して0.1~20質量部である請求項1に記載のガスバリア性積層体。
- 前記カチオン性樹脂は表面電荷が0.1~10meq/gである請求項1または請求項2に記載のガスバリア性積層体。
- 前記水溶性高分子がポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールである請求項1~3のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 前記ガスバリア層が前記層状無機化合物を含有する請求項1~4のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- カチオン性樹脂が、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミド化合物、ポリアミドアミン-エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミン-エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素-エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミンポリ尿素-エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドアミンポリ尿素-エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素化合物、ポリアミンポリ尿素化合物、ポリアミドアミンポリ尿素化合物及びポリアミドアミン化合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、アミノ変性アクリルアミド系化合物、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドから選ばれるいずれかである請求項1~5のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 前記カチオン性樹脂の含有量が、層状無機化合物100質量部に対して、1~300質量部である、請求項1~6のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- さらに、少なくとも一方の最外層にシーラント層を有する請求項1~7のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
- 前記シーラント層が生分解性樹脂を含有する請求項8に記載のガスバリア性積層体。
- 包装用材料である請求項1~9のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
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