以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る光走査装置を備えた画像形成装置について説明する。なお、以下の説明では、まず本発明の実施形態に係る光走査装置を備えた画像形成装置を例示して説明し、次いで前記画像形成装置における光走査装置について説明する。次いで前記光走査装置に組み付ける偏向器について説明する。
[画像形成装置]
まず図10を用いて画像形成装置110について説明する。図10は本実施形態に係る光走査装置101を備えた画像形成装置110の模式断面図である。
画像形成装置110は、光走査装置101を備え、光走査装置101により像担持体としての感光ドラムを走査し、この走査された画像に基づいて記録紙等の記録材Pに画像形成を行う。ここでは、画像形成装置としてレーザビームプリンタを例示して説明する。
図10に示すように、画像形成装置(プリンタ)110は、画像情報に基づいたレーザ光を露光手段としての光走査装置101から出射し、プロセスカートリッジ102に内蔵された像担持体である感光ドラム103上に照射する。感光ドラム103上にレーザ光が照射され、露光されることで感光ドラム103上に潜像が形成される。感光ドラム103に形成された潜像は、現像剤としてのトナーによりトナー像として顕像化される。なお、プロセスカートリッジ102とは、感光ドラム103と、感光ドラム103に作用するプロセス手段として、帯電手段や現像手段等を一体的に有し、画像形成装置に対して着脱可能なものである。
一方、記録材積載板104に収容された記録材Pは、給送ローラ105によって1枚ずつ分離されながら給送され、搬送ローラ106によって、さらに下流側に搬送される。搬送された記録材P上には、感光ドラム103上に形成されたトナー像が転写ローラ107によって転写される。この未定着のトナー像が形成された記録材Pは、さらに下流側に搬送され、内部に加熱体(ヒータ)を有する定着器108によりトナー像が記録材Pに定着される。その後、記録材Pは、排出ローラ109によって機外に排出される。
なお、本実施形態では感光ドラム103に作用するプロセス手段としての前記帯電手段及び前記現像手段をプロセスカートリッジ102中に感光ドラム103と一体的に有することとした。しかし、これに限定されるものではなく、各プロセス手段を感光ドラム103と別体に構成することとしてもよい。
[光走査装置]
次に図1を用いて、前記画像形成装置における光走査装置について説明する。図1は本実施形態に係る光走査装置の斜視図である。図1に示す矢印Zは、図2に示す回転軸10の軸方向(軸線方向)である。矢印Xは矢印Zと直交する方向であり、矢印Yは矢印Zおよび矢印Xと直交する方向である。
図1に示すように、光走査装置101は、以下の光学部材を有している。光走査装置101は、半導体レーザユニット1、複合アナモフィックコリメータレンズ2を有している。半導体レーザユニット1は、レーザ光Lを出射する光源である。複合アナモフィックコリメータレンズ2は、コリメータレンズとシリンドリカルレンズの機能を併せ持ったアナモフィックコリメータレンズと、同期信号検知用レンズ(BDレンズ)とを一体に成形したレンズである。さらに光走査装置101は、開口絞り3、回転多面鏡4を回転駆動させる偏向器5、出力部としての同期信号検知センサ(BDセンサ)6、fθレンズ(走査レンズ)7を有している。光走査装置101は、上記の光学部材を光学箱8に収容している。
上記構成において、半導体レーザユニット1から出射したレーザ光Lは、複合アナモフィックコリメータレンズ2によって主走査方向では略平行光または収束光とされ、副走査方向では収束光とされる。次にレーザ光Lは、開口絞り3を通ってレーザ光幅が制限されて、回転多面鏡4の反射面上において主走査方向に長く伸びる焦線状に結像する。そして、このレーザ光Lは回転多面鏡4を回転させることによって偏向走査され、複合アナモフィックコリメータレンズ2のBDレンズに入射する。BDレンズを通過したレーザ光Lは、同期信号検知センサ6に入射する。すなわち、同期信号検知センサ6は、回転多面鏡4の各反射面によって反射されたレーザ光Lを受光する。このとき、同期信号検知センサ6で同期信号(BD信号)を検知し、このタイミングを主走査方向の書き出し位置の同期検知タイミングとする。同期信号(BD信号)は、回転多面鏡4の各面での主走査方向における画像書き出し位置の同期をとるための信号である。そして、同期信号検知センサ6は、前記信号(BD信号)を後述する面識別信号生成部300(図3参照)に出力する。次にレーザ光Lは、fθレンズ7に入射する。fθレンズ7は、レーザ光を感光ドラム上にスポットを形成するように集光し、かつスポットの走査速度が等速に保たれるように設計されている。このようなfθレンズ7の特性を得るために、fθレンズ7は非球面レンズで形成されている。fθレンズ7を通過したレーザ光Lは、光学箱8の出射口から出射し、感光ドラム上に結像走査される。
回転多面鏡4の回転によってレーザ光を偏向走査し、感光ドラム上でレーザ光による感光ドラムの軸線方向に主走査が行われ、また感光ドラムがその円筒の軸線まわりに回転駆動することによって副走査が行われる。この感光ドラムの軸線方向に走査する方向を主走査方向とし、この感光ドラムが軸線まわりに回転することによって走査する方向を前記主走査方向と直交する副走査方向とする。このようにして感光ドラムの表面には静電潜像が形成される。
[偏向器]
次に、図2を用いて前記光走査装置における偏向器について説明する。図2は本実施形態に係る偏向器の部分断面図である。
図2に示すように、偏向器5は、回転多面鏡4を含むロータ20、軸受15、ステータコア16、ステータコイル17、回路基板18、回路基板上に半田付けされたホール素子(磁気センサ)19などを有している。ロータ20は、回転多面鏡4の他に、回転軸10、ロータボス11、ロータフレーム12、ロータマグネット13、回転多面鏡4の固定具14とから構成される。回転多面鏡4の材質は、ポリカーボネート樹脂やシクロオレフィン樹脂等の樹脂材料としてのプラスチックである。
上述の構成において、ステータコイル17に電流が供給されるとロータマグネット13との間で電磁力が発生し、軸受15に軸支されている回転軸10を中心にロータ20が回転する。ホール素子19はステータコイル17に電流を流すタイミング(整流タイミング)を決めるための磁気センサであり、ロータマグネット13の下に配置されており、ロータマグネット13の磁極(N、S)を検知している。
[回転多面鏡4の温度変化に応じた各反射面の主走査方向の位置ずれの補正]
次に図を用いて、回転多面鏡4の温度変化に応じた各反射面の主走査方向のジッター量(各反射面の主走査方向の走査線の位置ずれ)の補正方法について説明する。図3は本実施形態に係る主走査方向の走査線の位置ずれ量補正のための機構を示すブロック図である。図4は面IDと走査周期測定部で測定したBD周期βとの対応付けの一例を時系列で示す図である。図5(a)は本実施形態に係る補正データ記憶部に格納された、回転数と回転多面鏡の各反射面のBD周期と補正データの具体例を示す図である。図5(b)は回転多面鏡の反射面のBD周期とそれに対応する補正データを測定するための構成を示す模式図である。図6(a)は補正データ記憶部に格納されているBD周期αと、それに対応する反射面と、補正データとの一例を示す図である。図6(b)は測定され走査周期記憶部に格納されたBD周期βと、反射面の面IDとの一例を示す図である。図7はパターンマッチに成功した場合の、面識別信号生成部における面ID及びBD周期βと補正データ記憶部のBD周期αとの対応関係の一例を示す概念図である。図8は面IDと走査周期測定部で測定したBD周期βと補正データ記憶部に記憶されている補正データとの対応付けの一例を時系列で示す図である。
図3に示すように、この機構には、面識別信号生成部300、主走査位置ずれ補正部301、画像信号生成部305、温度検知部308が含まれる。
まず図10を用いて本実施形態における温度検知部308について説明する。本実施形態の画像形成装置は、画像形成装置110の内部に設けられ、回転多面鏡が設置された装置内部の空間の温度を検知する温度検知部308を有する。従来、温度検知部は装置の立ち上がり時間の予測や定着器108の制御のために設置されている。温度検知部308は、一般に制御基板や定着器108から離れた装置筐体近傍に設置される。この温度検知部308の検知結果を主走査方向の走査線の位置ずれ補正に用いる。温度検知部308の検知手段としては、例えば温度センサである。
図3に示すように、主走査倍率ずれ補正部301は、制御に係る補正データ制御部と面特定部(補正データ制御部+面特定部303)を有する。面特定部303aは、面識別信号生成部300から情報を受け、回転多面鏡の特定の面を特定する面特定部である。補正データ制御部303bは、面識別信号生成部300から情報を受け、特定された特定面の補正データをもとに、レーザ光変調部(画像クロック発生部)304を介してレーザ駆動部306の駆動を制御する。また本実施例においては、この補正データ制御部と面特定部とは、装置の動作を制御する制御部であるCPUが担っている。画像信号生成部305は画像信号を生成し、レーザ駆動部306に供給する。レーザ駆動部306は、供給された画像信号と後述する補正データ(主走査位置ずれ補正部301で生成された画像クロック)とに従い、半導体レーザユニット1からレーザ光を出力する。半導体レーザユニット1から射出されたレーザ光は、回転する回転多面鏡4の反射面で反射され、反射されたレーザ光はBDセンサ6で検知された後、感光ドラム103上を走査する。ここで、レーザ光がBDセンサ6で検知された際、BD信号が生成、出力される。
なお、前記特定された特定面の補正データは、常温での各反射面の主走査位置ずれ補正データである。後述するが、補正データ制御部303bは、温度変化に応じた温度補正データを用いて前記特定された特定面の補正データを補正する。温度変化に応じて補正データを補正する温度補正データについては後述する。
面識別信号生成部300は、図示しない走査周期測定部、走査周期記憶部、面識別信号部を有する。回転多面鏡4が安定して等速回転し、面IDを付与する処理が開始される。すると、面識別信号部では、現在の反射面に対して面識別信号である面IDをBD周期に対して割り当て、以降BD信号が入力される度にBD周期に対応した面IDを更新して次の反射面に割り当てる。
「現在の反射面」とは、直前に出力されたBD信号の元となる反射光を供給した反射面である。回転多面鏡4が1回転する毎、すなわち、BD信号が反射面の数(4つ)と同じ数だけ出力される毎に同じ反射面が反射光の供給元となる。この例では、4回に1回出力される各BD信号が、ある1つの反射面に対応する。従って、面IDは、各反射面を特定するための情報であると同時に回転多面鏡4の1回転における各BD信号を識別するものでもある。
走査周期測定部では、内部のカウンタで、BD信号の出力間隔である「BD周期」を反射面毎の出力間隔として検出する。従って、BD周期を回転多面鏡4の面数分測定する。そして、走査周期記憶部に、測定した順番に各反射面のBD周期を格納する。この走査周期記憶部に格納される各反射面のBD周期は、走査周期測定部によって反射面毎の出力間隔として測定した測定データである。最初に測定されるBD周期の開始側のBD信号に対応する反射面は、定まっているものではなく、毎回異なり得る。
例えば、図4に示すように、回転多面鏡4が4つの反射面を有する場合において、面IDを割り付ける工程を開始後、最初のBD信号が出力された直後にレーザ光を反射する位置に位置する反射面が第1面とする。この場合、面識別信号部では、第1面に対して面IDを「ID1」と割り当てる。次の(2番目の)BD信号が入力されると、最初のBD信号との間隔を、走査周期測定部で測定し、それを第1面のBD周期(例えばβ1)として走査周期記憶部に格納する。
さらに次の(3番目の)BD信号が入力されると、直前の(2番目の)BD信号との間隔を次の第2面のBD周期として測定し、BD周期(例えばβ2)を走査周期記憶部に格納すると共に、第2面に対して面IDとして「ID2」を割り当てる。このような処理を、回転多面鏡4の面数分行う。そして、各反射面のBD周期β(β1〜β4)を走査周期記憶部に格納するのと同時に面ID(ID1〜ID4)を割り付ける。図6(b)に、走査周期記憶部に格納されたBD周期βと面識別信号部で生成された面IDの対応関係を示す。BD周期βは、面識別信号生成部300の走査周期測定部によって反射面毎の出力間隔として測定した測定データであり、出力の順番を面IDに割り付けて対応づけられた周期データである。
主走査位置ずれ補正部301は、記憶部である補正データ記憶部302、特定の反射面を特定するための面特定部303aと、データを読み出し補正制御を行う補正データ制御部303bと、レーザ光変調部(画像クロック発生部)304と、を有する。なお、本実施例では、補正データ制御部と面特定部とをCPUが担っているが、各部の構成はこれに限定されるものではない。主走査位置ずれ補正部301を構成する各部は、ASICなど専用の回路によって実現されてもよいし、CPU、ROM、RAMおよびコンピュータプログラムにより実現されてもよい。ここでは、前述したように、面特定部303aと補正データ制御部303bの役目を担うCPUが、面識別信号生成部300から情報を受け、回転多面鏡の面を特定し、レーザ光変調部(画像クロック発生部)304を介してレーザ駆動部306の駆動を制御する。補正データ記憶部302は、図6(a)に示すように、予め組立工程などで測定された回転多面鏡4の各反射面のBD周期とそれに対応するずれ補正データとを対応づけて格納している。なお、ここでは複数の反射面を有する回転多面鏡として、図3に示すように4つの反射面A〜Dを有する回転多面鏡4を例示している。
図6(a)に示すように、補正データ記憶部302には、各反射面A〜Dのそれぞれに対応するBD周期αと、常温における各反射面A〜Dのそれぞれに対応するずれ補正データdataと、補正パラメータと、が予め格納されている。ここでは、各反射面A〜Dのそれぞれに対応づけたBD周期αが、識別データである。
また、各反射面A〜Dに対応する識別データ(BD周期α)と、常温における各反射面A〜Dのそれぞれに対応するずれ補正データdata及び補正パラメータは、前記補正データ記憶部302に予め格納されている。即ち、補正データ記憶部302は、回転多面鏡4の各反射面A〜DのBD周期α(α1からα4)と、常温における各反射面A〜Dに対応する主走査位置ずれ補正データ(dataL1からdataL4)及び補正パラメータx,zを予め記憶している。
また、前記主走査位置ずれ補正データは、常温における各反射面A〜Dに対応するずれ補正データであるため、回転多面鏡が設置された空間の温度変化に応じて補正する必要がある。本例では、補正データ記憶部302に格納されたずれ補正データを、温度変化に応じて補正するために、回転多面鏡が設置された装置内部の装置設置空間温度と偏向器の稼働率とを用いている。補正パラメータx(x1、x2、x3、x4)は、前記装置設置空間温度を温度補正データとして用いるためのパラメータである。補正パラメータz(z1、z2、z3、z4)は、偏向器の稼働率を温度補正データとして用いるためのパラメータである。ここでは、常温を25℃としている。また、装置設置空間温度は、常温からの温度差である。そのため、補正データ記憶部302に予め格納された各反射面に対応するずれ補正データは、常温(25℃)時に取得した値なので、装置設置空間温度は0℃となる。また、補正データ記憶部302に予め格納された各反射面に対応するずれ補正データの取得時の偏向器稼働率は0%としている。この補正パラメータx,zを用いて、各反射面A〜Dに対応したずれ補正データを補正する温度補正データは、次式で求められる。
〔式1〕
温度補正データ=(x1、x2、x3、x4)×装置設置空間温度+(z1、z2、z3、z4)×偏向器稼働率
図5(a)に示す温度補正データは、装置設置空間温度を常温(ここでは25℃)からの温度差である30℃、偏向器稼働率を50%とした場合、各反射面の各補正パラメータx,zを用いて上記式1により求めた値である。例えば、反射面Aの温度補正データは、0.52×30+3.3×0.5≒17.3となる。その他の反射面B,C,Dの温度補正データについても、上記式1により同様に求めることができる。
なお、回転多面鏡が設置された装置内部の装置設置空間温度は、画像形成装置の内部に設けた温度検知部308により検出する。偏向器の稼働率は、補正データ制御部303bがBDセンサからのBD信号を受信する時間をカウントし、所定の時間における偏向器が稼働している時間の割合を検出する。
図6(a)に示す各反射面のBD周期αと、それに対応する主走査位置ずれ補正データdataは、予め組立工程で治工具を用いて測定される。また、補正パラメータx,zは、組立工程内ではなく予め実験等により前記治工具等を用いて各温度における測定を行った上で決定する。この回転多面鏡の各反射面の主走査方向の位置ずれを測定する治工具等については、特許文献2において光走査装置の部分倍率を測定する治工具等が例示されている。特許文献2では、BDセンサ(同期信号検知センサ)を除くと走査位置検出センサが6個の例が示されている。これに対し、本実施形態では、BDセンサ以外に3個の走査位置検知センサで、感光ドラム103の主走査方向の3箇所(画像書き出し部と画像中心部と画像書き終わり部)の位置ずれを補正する補正データを取得している。測定したBD周期と、それに対応する補正データと補正パラメータの具体例を図5(a)に示す。
図6(a)および図5(a)において、BD周期とは、回転多面鏡の1面でBD信号1を取得し、その次の面でBD信号2を取得した時のBD信号1からBD信号2までの時間間隔である。例えば、図3に示す回転多面鏡4の反射面AのBD信号をBDセンサ6によりBD信号1として取得する。次いで、前記反射面Aに隣接する回転方向の次の面である反射面BのBD信号をBDセンサ6によりBD信号2として取得する。このBD信号1を取得してからBD信号2を取得するまでの時間間隔が、BD周期である。すなわち、BDセンサ6により出力された信号の出力間隔が、BD周期である。他の反射面間のBD周期(時間間隔)も同様に取得する。また、各反射面と各BD周期との対応関係は、1つのBD周期のうち、先の信号であるBD信号1を取得した時の面を、BD信号1からBD信号2までの時間間隔(BD周期)と対応付けしている。例えば、BDセンサ6により取得した反射面AのBD信号1から、反射面BのBD信号2までの時間間隔(BD周期)は、先の信号であるBD信号1の反射面Aと対応付けしている。他の反射面とBD周期との対応付けも同様である。
一方、ずれ補正データとは、常温における回転多面鏡の各反射面によって反射されるレーザ光Lの主走査方向の位置ずれ(基準となる理想位置からの主走査方向への位置ずれ量)を補正するためのデータである。この各反射面によって反射されるレーザ光Lの主走査方向の位置ずれとは、主走査方向において走査開始位置から画像領域(画像書き出し部の位置から画像書き終わり部の位置までの領域)までの距離のずれのことである。ここで、距離の換算として、時間を用いても良い。本実施例では、図5(b)に示すようにBDセンサ6以外に3個の走査位置検知センサS1,S2,S3で、感光ドラム103の主走査方向の3箇所(画像書き出し部と画像中心部と画像書き終わり部)の位置ずれを補正するずれ補正データを取得している。図5(b)に示すように、走査開始位置には、BDセンサ6が配置されている。感光ドラムの主走査方向における前記3箇所の位置には、画像書き出し部の位置にセンサS1、画像中心部の位置にセンサS2、画像書き終わり部の位置にセンサS3がそれぞれ配置されている。主走査方向において、符号aは走査開始位置から画像書き出し部の位置までの距離、符号bは走査開始位置から画像中心部の位置までの距離、符号cは走査開始位置から画像書き終わり部の位置までの距離である。ずれ補正データとしては、主走査方向における前記3箇所の理想位置からの主走査方向のずれ量が格納される。すなわち、各距離a,b,cを測定し、測定した各距離a,b,cの基準となる理想距離からの主走査方向のずれ量が、ずれ補正データとして図3に示す補正データ記憶部302に予め格納される。なお、前記治工具による測定において、BDセンサ以外の走査位置検出センサの配置や数は、これに限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定すべきものである。
ここで、BD周期αは、A面〜D面の各反射面を特定して予め測定されたものであり、BD周期βに相当するパラメータである。ただし、BD周期βが、各々、どの反射面に対応するのかは、毎回の面特定において変化し得るため、反射面を特定したBD周期αの各々がどのBD周期βに対応するのかは、後述する反射面特定の処理を経ないと決定されない。
BD周期αの測定は、BD周期βと同じ手法で可能であるが、測定手法は問わない。すなわち、本画像形成装置の出荷前の段階で測定されることが想定されるものであるので、回転多面鏡4を回転させて実際に走査を行うような動作を行わせることは必須でない。主走査位置ずれ補正データdata(以下、単に「補正データdata」とも記す)は、予め測定された主走査方向の走査線のずれ量を、画像形成時に補正するためのデータである。このデータも、装置の出荷前の段階で測定されることが想定される。
補正パラメータは、組立工程内ではなく予め実験等により前記のような治工具を用いて各温度における測定を行った上で決定し、前記補正データ記憶部302に格納しておく。尚、温度変化により生じる回転多面鏡の各反射面によって反射されるレーザ光の主走査方向の位置ずれを補正するための、各反射面に対応した主走査倍率ずれ補正値は次式で求められる。
〔式2〕
主走査位置ずれ補正値=温度補正データ+主走査位置ずれ補正データ
補正データ制御部303bは、面識別信号生成部300で生成された面IDに応じて、補正データ記憶部302に対して読み出しアドレスadrsを出力する。読み出しアドレスadrsに格納されているずれ補正データdataと補正パラメータx,zを補正データ記憶部302から受け取る。前記補正パラメータx,zと装置設置空間温度および偏向器稼働率を用いて温度補正データを算出する。算出した温度補正データと前記ずれ補正データdataを用いて回転多面鏡4の各面ごとの主走査位置ずれ補正値を算出する。すなわち、主走査位置ずれ補正値は、温度変化に応じて算出した温度補正データを用いて前記ずれ補正データdataを補正した補正データである。温度に応じて補正された補正データである前記主走査位置ずれ補正値をレーザ光変調部(画像クロック発生部)304へ出力する。
なお、補正データ記憶部302に予め格納された各反射面に対応するずれ補正データdataは、常温(25℃)、偏向器稼働率0%の時に取得した値である。そのため、常温、偏向器稼働率0%の時は、温度補正データはゼロとなる。それ以外の条件では、補正データ記憶部302に予め格納された各反射面に対応するずれ補正データに、温度変化に応じた温度補正データが加算された値が、補正された補正データである主走査位置ずれ補正値となる。
従って、装置設置空間温度が常温(ここでは25℃)からの温度差である30℃、偏向器稼働率が50%である場合、各反射面に対応する主走査位置ずれ補正値は、上記式2により、以下のように求めることができる。装置設置空間温度および偏光器稼働率が上記条件の場合、反射面Aの温度補正データは17.3である(図5(a)参照)。そのため、反射面Aにおけるずれ補正データdataは、前記温度補正データを用いて、それぞれ画像書き出し部は30.3、画像中心部は79.3、画像書き終わり部は128.3に補正される。すなわち、補正された補正データである主走査位置ずれ補正値は、画像書き出し部は30.3、画像中心部は79.3、画像書き終わり部は128.3となる。その他の反射面B,C,Dにおいても同様に求めることができる。
次に、面識別信号生成部300で生成された面IDと補正データ記憶部401に記憶された読み出しアドレスadrsの対応付け方法を説明する。
CPUは、面識別信号生成部300の走査周期記憶部からBD周期β(β1〜β4)を読み出すと共に、補正データ記憶部302からBD周期α(α1〜α4)を読み出す。そして、それぞれ読み出したBD周期βとBD周期αとを比較して、回転多面鏡4の各反射面の面IDに対して、補正データ記憶部302におけるずれ補正データdataの読み出しアドレスadrsを設定する。
例えば、回転多面鏡4が4面構成の場合、以下のように4種類の組み合わせパターンのそれぞれについて、BD周期(β1〜β4)とBD周期(α1〜α4)の差の二乗和をとる。まず、面特定の処理において最初にBD信号が出力されたときに、レーザ光を反射する位置にある反射面が任意に定まる。この任意に定まる反射面を第1面(面ID=ID1)として回転多面鏡4の回転方向に沿って登場する順に順番付けられる各反射面と、予めA面から順に順番付けられた各反射面とをそれぞれ順番に沿って組み合わせて1つ目の組み合わせパターンとする。
この1つ目の組み合わせパターンにおける各組(ここでは、第1面とA面の組、第2面とB面の組、第3面とC面の組、第4面とD面の組)について、BD周期βとBD周期αとの差の二乗を算出する処理を実行する。そして、予め順番付けられた反射面を1つずつずらすことで組み合わせパターンを変更していくと、組み合わせパターンは4種類(回転多面鏡が有する反射面の面数分)となる。これら4つ全ての組み合わせパターンにおける各組について、上記の差の二乗を算出する処理を行う。例えば、2つ目の組み合わせパターンにおいては、第1面とB面の組、第2面とC面の組、第3面とD面の組、第4面とA面の組について算出される。3つ目の組み合わせパターンにおいては、第1面とC面の組、第2面とD面の組、第3面とA面の組、第4面とB面の組について算出される。4つ目の組み合わせパターンにおいては、第1面とD面の組、第2面とA面の組、第3面とB面の組、第4面とC面の組について算出される。
そして、全ての組み合わせパターンについて、各組の差の二乗の総和(すなわち、差の二乗和)を求め、それらを差分値とする。組み合わせパターン1〜4の差分値1〜4は、具体的に次の算出式で算出される。
パターン1:(β1−α1)2+(β2−α2)2+(β3−α3)2+(β4−α4)2=差分値1
パターン2:(β1−α2)2+(β2−α3)2+(β3−α4)2+(β4−α1)2=差分値2
パターン3:(β1−α3)2+(β2−α4)2+(β3−α1)2+(β4−α2)2=差分値3
パターン4:(β1−α4)2+(β2−α1)2+(β3−α2)2+(β4−α3)2=差分値4
なお、組み合わせパターンを変える際、BD周期αとBD周期βとの組み合わせを変える順番は問わない。例えば、上記算出式では、BD周期βに対して、BD周期αを1つずつずらしたが、これに限定されるものではなく、BD周期αに対して、BD周期βを1つずつずらしていってもよい。
図6(a)は、補正データ記憶部302に予め格納されているBD周期(α1〜α4)の一例を示す図である。図6(b)は、測定されて面識別信号生成部300の走査周期記憶部に格納されたBD周期(β1〜β4)の一例を示す図である。
ここで、4つの組み合わせパターンのうち、差分値が最小となる組み合わせパターンによって、面識別信号生成部300の走査周期記憶部の各BD周期βに対する、補正データ記憶部302の各BD周期αの対応が決定される。その際、ある閾値を設定し、「最小の差分値が閾値以下で且つ、それ以外の差分値のすべてが閾値より大きい」というマッチング条件の充足を判別する。そしてこのマッチング条件を満たす場合に限り、面識別信号生成部300の走査周期記憶部の各BD周期βに対する、補正データ記憶部302の各BD周期αの対応付け(パターンマッチ)が成功したと判断する。
ここで、面識別信号生成部300において面IDとBD周期βとは対応付けられている(図6(b)参照)。補正データ記憶部302において、ずれ補正データdataが格納されている読み出しアドレスadrsとBD周期αとは対応付けられている。また、読み出しアドレスadrsを通じて、BD周期αと補正データdataおよび補正パラメータとも対応関係を有している(図6(a)参照)。なお、図7では、前述した4つの組み合わせパターンのうち、差分値4が最小となる組み合わせパターンの場合の対応関係を例示している。
パターンマッチが成功した場合は、その組み合わせパターンにおけるBD周期βとBD周期αとの1対1の対応関係に基づき、補正データ記憶部302に記憶したもののうち、各反射面の面IDに対応したものを主走査位置ずれ補正に使用する。ここで、補正データ記憶部302に記憶したものはずれ補正データdataおよび補正パラメータであり、補正データdataおよび補正パラメータのうち、各反射面の面IDに対応したものを主走査位置ずれ補正に使用する。すなわち、面ID→BD周期β→BD周期α→読み出しアドレスadrsという順で、面IDに対応する読み出しアドレスadrsを取得する(図7参照)。そして、この読み出しアドレスadrsに格納されているずれ補正データdataおよび補正パラメータを主走査位置ずれ補正に使用する補正データとして読み出す。
BD周期βとBD周期αとの対応関係が判明することから、現在、レーザ光を反射している反射面が、実際にはどの反射面であるのかが判明することにもなる。すなわち、面特定の完了前の段階では、回転多面鏡4の各反射面に面IDが割り当てられているだけで、実際には各反射面の絶対的な位置はわからない。しかし、面特定の完了後には、回転多面鏡4の複数の反射面の各々が特定されることになる。そのため、BD信号との対応関係から、各反射面が、レーザ光を反射している反射面であるか、あるいはその反射面に対してどの相対的位置にある反射面であるのかの特定結果が得られる。本実施例では、このマッチング処理を面特定部で行っており、面特定部での処理で回転多面鏡の反射面4面を特定することが可能であるが、反射面の特定方法はこの方法に限られない。反射面の一面だけを特定することができれば、その特定の面に対して補正データで主走査方向のずれを補正することは可能である。
なお、パターンマッチに失敗した場合は、補正データ記憶部302の補正データを設定しない。ここでは、パターンマッチに失敗した場合は、補正データを設定しない処理を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、パターンマッチに失敗した場合であっても、補正データ記憶部302の補正データdataの平均値を、共通の補正データとしてすべての反射面に対して設定しても良い。ここで、同一の補正データは、上記平均値ではなく、予め定めたものであってもよい。
パターンマッチが成功した場合、最小の差分値は限りなく0に近づく。そこで、上記マッチング条件における閾値Tの決め方としては、パターンマッチが成功した場合において、回転多面鏡4の回転ジッタ等から算出される誤差の値を設定するのが望ましい。
例えば、最小の差分値である差分値4が閾値T以下で且つ、最小の差分値4以外の差分値1、差分値2、差分値3がいずれも閾値Tより大きい場合は、パターンマッチが成功したものとみなす。
一方、すべての差分値が閾値Tより大きくなってしまう場合は、パターンマッチが失敗したものとみなす。これは、BD信号にノイズが入る等の原因で、面識別信号生成部300の走査周期記憶部において、ある反射面のBD周期が正確に測定できなかった場合等に生じ得る。
例えば、差分値4にて最小値をとり、パターンマッチに成功した場合、図7に示すように、面識別信号生成部300の走査周期記憶部のBD周期β1に対応する補正データ記憶部302のBD周期はBD周期α4となる。図6(b)のBD周期β1に対応する反射面(面IDがID1の面)を起点とするBD周期βの推移のパターンと、図6(a)のBD周期α4に対応する反射面(D面)を起点とするBD周期αの推移のパターンとが最も近似することがわかる。結局、パターンマッチは、BD周期βの推移のパターンとBD周期αの推移のパターンとが一致するような、BD周期の起点同士を特定することでもある。
この場合は、図7に示すようにBD周期β1に対応する面IDであるID1に対して、主走査位置ずれ補正部301の補正データ記憶部302における読み出しアドレスadrsとして「adrs4」を設定する。位置ずれ補正においては、読み出しアドレスadrs4に格納されているずれ補正データdataL4および補正パラメータx4,z4を読み出して補正データとして用いる。
このように、面IDと補正データ記憶部302における読み出しアドレスadrsの対応が決定すれば、各面IDに応じて、回転多面鏡4の現在の反射面に対応するずれ補正データdataおよびパラメータx,zを読み出して用いることが可能である。図8に差分値4の場合のBD信号、面ID、補正データの対応関係を示す。位置ずれ補正においては、レーザ駆動部306において、読み出したずれ補正データdataおよび補正パラメータx,zに応じてレーザ光の射出を制御する。即ち、CPUが、読み出したずれ補正データdataおよび温度変化に応じた補正パラメータx,zに応じて、レーザ駆動部306を介して光源である半導体レーザユニット1によるレーザ光の出射を制御する。これにより、回転多面鏡の温度変化により生じる各反射面によって反射されるレーザ光の主走査方向の位置ずれを確実に補正することができ、前記位置ずれによる画像品質の劣化を抑制することができる。
次に、面特定部303aと補正データ制御部303bとの役目を担うCPUによる反射面の特定と、特定した反射面の主走査方向の位置ずれ補正の制御処理について説明する。図9は、反射面の特定・主走査位置ずれ補正の処理のフローチャートである。
まず、ステップS101において、CPUは、画像形成開始か否かを判別し、画像形成開始となればステップS102に処理を進める。ステップS102では、CPUは、面識別信号生成部300により回転多面鏡4の各反射面のBD周期β(β1からβ4)を測定すると共に、測定したBD周期βを走査周期記憶部に格納するよう制御する。そして、回転多面鏡4の全ての反射面につきBD周期β1の測定が完了したら、CPUは、ステップS103に処理を進める。ステップS103では、CPUは、面識別信号生成部300の走査周期記憶部から回転多面鏡4の各反射面のBD周期βを読み出す。
次に、ステップS104において、CPUは、補正データ記憶部302から回転多面鏡4の各反射面のBD周期α(α1からα4)を読み出す。次に、ステップS105で、CPUは、上記読み出した各反射面のBD周期βとBD周期αとから、回転多面鏡4の面数分の各組み合わせパターンにおける差分値を算出する。例えば、回転多面鏡4が4面の場合、BD周期の組合せが4パターンあるので、差分値1〜差分値4が算出される。
次に、ステップS106において、CPUは、上述したマッチング条件に従って、BD周期αとBD周期βとのパターンマッチを行うと共に、パターンマッチが成功したか否かを判別する。その結果、パターンマッチが成功した場合は、CPUは、処理をステップS107に進める。
ステップS107では、CPUは、最小の差分値となる組み合わせパターンを特定し、その組み合わせパターンにおけるBD周期βとBD周期αとの1対1の対応関係を把握する。すなわち、パターンマッチが成功し、最小差分値となる組み合わせパターンが特定されることで、面IDが対応づけられたBD周期βと予め各反射面に対応づけられたBD周期αの対応関係が特定され、回転多面鏡4の各反射面が特定される。そして、CPUは、上述したように、対応関係を辿り、各面IDに対する補正データ記憶部302における読み出しアドレスadrsを設定する(図7参照)。そして、CPUは、各面IDに設定された読み出しアドレスadrsに格納されている補正データ記憶部302からずれ補正データdataおよび補正パラメータx,zを読み出す。
そして、ステップS108では、予め補正データ制御部303bは、温度検知部308より回転多面鏡が設置された装置内部の装置設置空間温度を、さらにBDセンサ6からのBD信号に基づく偏向器の稼働率を取得する。前述したように、偏向器稼働率は、所定の時間における偏向器が稼働している時間の割合である。偏向器稼働率は、補正データ制御部303bが、BDセンサからのBD信号を受信する時間をカウントすることにより検知する。偏向器が稼働して発熱し、回転多面鏡の温度に与える影響を補正するために偏向器稼働率を取得する。この装置設置空間温度および偏向器稼働率を取得するタイミングは、レーザ光が感光ドラムに照射されるタイミングに近いことが好ましい。
そして、ステップS109では、CPUは、前記読み出した補正パラメータx,zおよび前記取得した装置設置空間温度および偏向器稼働率を用いて、上記式1により温度補正データを算出する。さらにステップS110では、CPUは、前記読み出した各反射面のずれ補正データおよび前記算出した反射面の温度変化に応じた温度補正データを用いて、上記式2により各反射面の主走査位置ずれ補正値を算出する。この算出した主走査位置ずれ補正値は、前記マッチングにより特定した特定面に対するレーザ光の主走査方向の位置ずれを補正する補正データである。そして、ステップS111にて、CPUは、各面IDに対する主走査位置ずれ値(補正データ)を設定する。
そして、続くステップS112では、CPUが、温度変化に応じて設定された主走査位置ずれ補正値に基づいて、レーザ駆動部306を介して光源である半導体レーザユニット1によるレーザ光の出射を制御し、画像形成を行う。さらに具体的には、CPUは、算出した主走査位置ずれ補正値をレーザ光変調部(画像クロック発生部)304へ出力するように制御する。
レーザ光変調部(画像クロック発生部)304では、主走査位置ずれ補正値に基づいて、回転多面鏡4の各反射面の走査線毎に画像クロック変調を行い、主走査位置ずれ補正を行う。主走査位置ずれ補正値から画像クロック変調を行う手段の詳細については特許文献2の技術等を用いれば可能であり、説明は省略する。
レーザ光変調部(画像クロック発生部)304は、温度変化に応じて設定された主走査位置ずれ補正値に基づいて変調された画像クロックをレーザ駆動部306へ供給する。画像信号生成部305は画像信号を生成し、レーザ駆動部306に供給する。レーザ駆動部306は、供給された画像信号と主走査位置ずれ補正部301で生成された画像クロックとに従い、半導体レーザユニット1からレーザ光を出力し、画像形成を行う。そして、ステップS113では、CPUは、画像形成が終了したかどうかを判別し、画像形成が終了すると本制御処理を終了する。
一方、前記ステップS106において、パターンマッチに失敗した場合は、CPUは、処理をステップS114に進める。ステップS114では、CPUは、補正データを設定しない。なお、ここでは、パターンマッチに失敗した場合は、補正データを設定しない制御処理を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、パターンマッチに失敗した場合であっても、以下のように制御処理しても良い。すなわち、補正データ記憶部302の補正データdataの平均値を、共通の補正データとしてすべての反射面に対して設定する。そして、回転多面鏡4の各反射面に対するレーザ光に同一の補正を行う。このように制御処理しても良い。
上述した主走査位置ずれ補正を行うことによって、前記主走査方向の位置ずれに起因する画像品質の劣化を抑制することができる。また、前記位置ずれ補正を行うことによって、画像書き出し部と画像中心部と画像書き終わり部とでの理想位置からの最大ずれ量は、各回転数において、所定の値以下(ここでは約5μm以下)にすることができる。また、回転多面鏡4の各反射面の相対的ずれ量としては、約2μm以下にすることが可能である。
また、回転多面鏡4の材質がポリカーボネート樹脂やシクロオレフィン樹脂等の樹脂材料の場合を示したが、これに限定されるものではない。回転多面鏡4の材質がアルミニウムなどの金属材料の場合でも、回転多面鏡4の回転による反射面の変形量が完全にゼロではない。そのため、前述したように、回転多面鏡4の材質が金属材料の場合でも、温度変化に応じて同様の主走査位置ずれ補正値を取得し、温度変化に応じた主走査位置ずれ補正を行ってもよい。
このように、装置設置空間温度、偏向器稼働率に基づいて、主走査方向倍率ずれ補正値を算出することで、回転多面鏡4の温度変化により生じる各反射面によって反射されるレーザ光の主走査方向の位置ずれを確実に補正することができる。したがって、画像形成装置の回転多面鏡が設置されている空間の温度が変わっても画像品質の劣化を生じることがなく、高品質な画像を保持することができる。
前述した実施形態では、温度検知部308を画像形成装置の内部において制御基板や定着器108から離れた装置筐体近傍に設置したが、温度検知部の設置位置はこれに限定されるものではない。図11に示すように、光走査装置の光学箱の内部に設けてもよい。図11及び図12を用いて前述した実施形態の変形例について説明する。図11は前述した実施形態の変形例に係る光走査装置の斜視図である。図12は前述した実施形態の変形例に係る反射面の特定・主走査倍率ずれ補正の処理のフローチャートである。
なお、本例に係る画像形成装置の概略構成は前述した実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。また光走査装置の構成も、温度検知部の配置以外は同様であるため、同等の機能を有する部材には同一符号を付し、説明を省略する。
本例では、図11に示すように、偏向器5は回転多面鏡4の近傍に温度検知部309を有している。更に具体的には、温度検知部309は、偏向器5を構成する回路基板18(図2参照)上の、回転多面鏡4の近傍に配置されている。このように温度検知部390を光学箱8の内部に配置することにより、回転多面鏡4の温度をより直接的に検知することができ、より正確に主走査位置ずれ補正が可能となる。
前述した実施形態と同様に、補正データ記憶部に記憶された主走査位置ずれ補正データは、常温における各反射面A〜Dに対応するずれ補正データであるため、回転多面鏡が設置された空間の温度変化に応じて補正する必要がある。補正パラメータは、常温における各反射面A〜Dに対応するずれ補正データを、回転多面鏡が設置された空間の温度変化に応じて補正するためのパラメータである。本例では、補正データ記憶部302に格納されたずれ補正データを、温度変化に応じて補正するために、偏向器が設置された光走査装置内部の偏向器温度と偏向器の稼働率とを用いている。補正パラメータy(y1、y2、y3、y4)は、前記偏向器温度を温度補正データとして用いるためのパラメータである。補正パラメータz(z1、z2、z3、z4)は、偏向器の稼働率を温度補正データとして用いるためのパラメータである。この補正パラメータy,zを用いて、各反射面A〜Dに対応したずれ補正データを補正する温度補正データは、次式で求められる。
〔式3〕
温度補正データ=(y1、y2、y3、y4)×偏向器温度+(z1、z2、z3、z4)×偏向器稼働率
尚、温度変化により生じる回転多面鏡の各反射面によって反射されるレーザ光の主走査方向の位置ずれを補正するための、各反射面に対応した主走査倍率ずれ補正値は、前述した式2で求められる。
補正データ記憶部に記憶されたずれ補正データdataおよび温度変化に応じた補正パラメータy,zに基づいて、光源である半導体レーザユニット1によるレーザ光の出射を制御する。
ここで、面特定部303aと補正データ制御部303bとの役目を担うCPUによる反射面の特定と、特定した反射面の主走査方向の位置ずれ補正の制御処理について説明する。図12は、反射面の特定・主走査位置ずれ補正の処理のフローチャートである。
図12において、ステップS201〜S206、ステップS212〜S214の動作は、図9を用いて説明したステップS101〜S106、ステップS112〜S114の動作と同様であるため、ここでは説明を省略する。
ステップS207では、CPUは、最小の差分値となる組み合わせパターンを特定し、その組み合わせパターンにおけるBD周期βとBD周期αとの1対1の対応関係を把握する。すなわち、パターンマッチが成功し、最小差分値となる組み合わせパターンが特定されることで、面IDが対応づけられたBD周期βと予め各反射面に対応づけられたBD周期αの対応関係が特定され、回転多面鏡4の各反射面が特定される。そして、CPUは、上述したように、対応関係を辿り、各面IDに対する補正データ記憶部302における読み出しアドレスadrsを設定する。そして、CPUは、各面IDに設定された読み出しアドレスadrsに格納されている補正データ記憶部302からずれ補正データdataおよび補正パラメータy,zを読み出す。
そして、ステップS208では、予め補正データ制御部303bは、温度検知部309より偏向器が設置された光走査装置内部の偏向器温度を、さらにBDセンサ6からのBD信号に基づく偏向器の稼働率を取得する。この偏向器温度および偏向器稼働率を取得するタイミングは、レーザ光が感光ドラムに照射されるタイミングに近いことが好ましい。
そして、ステップS209では、CPUは、前記読み出した補正パラメータy,zおよび前記取得した偏向器温度および偏向器稼働率を用いて、上記式3により温度補正データを算出する。さらにステップS210では、CPUは、前記読み出した各反射面のずれ補正データおよび前記算出した反射面の温度変化に応じた温度補正データを用いて、上記式2により各反射面の主走査位置ずれ補正値を算出する。この算出した主走査位置ずれ補正値は、前記マッチングにより特定した特定面に対するレーザ光の主走査方向の位置ずれを補正する補正データである。そして、ステップS211にて、CPUは、各面IDに対する主走査位置ずれ値(補正データ)を設定する。
このように設定した補正データに基づいて、光源である半導体レーザユニット1によるレーザ光の出射を制御する。
なお、本例では、偏向器5が温度検知部309を支持している構成を例示したが、温度検知部309は、偏向器5との間に遮蔽物がなく、回転多面鏡4近傍に設置されていれば他の部材から支持してもよい。例えば光学箱8から支持してもよい。
このように、回転多面鏡4の近傍にある温度検知部309の検出温度に応じて、主走査方向倍率ずれ補正値を算出することで、回転多面鏡4の温度変化により生じる各反射面によって反射されるレーザ光の主走査方向の位置ずれを確実に補正することができる。したがって、偏向器温度、偏向器稼働率が変わっても、前記位置ずれによる画像品質の劣化を低減し、高品質な画像を保持することができる。
なお、前述した実施形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。