JP2020049914A - 印刷物及びその製造方法 - Google Patents

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Takamitsu Shimizu
隆光 清水
佳輝 峯村
Yoshiteru Minemura
佳輝 峯村
典秀 遠藤
Norihide Endo
典秀 遠藤
智隆 吉川
Tomotaka Yoshikawa
智隆 吉川
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Abstract

【課題】金属蒸着膜よりも意匠性に優れる印刷物及び該印刷物の製造方法を提供する。【解決手段】基材10上の任意の箇所に形成されたハードコート層20と、該ハードコート層20上の任意の箇所に形成された光沢印刷層30とを有し、ハードコート層20が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、光沢印刷層30が金属鱗片を含み、光沢印刷層30が形成された領域の任意の箇所に、それぞれ異なる傾斜面を有するパターンで構成された複数の絵柄画像が組み合わされて形成されており、前記複数の絵柄画像の前記傾斜面は、互いに異なる傾斜角度であり、基材10の角度を変えることにより絵柄画像が交互に視認される印刷物100。【選択図】図1

Description

本発明は、印刷物及び該印刷物の製造方法に関する。
従来から、各種の印刷物では、その意匠性を向上させるために、金属光沢を付与することが求められる場合がある。
金属光沢を付与する一手段として、金属光沢を有するフィルムが用いられている。例えば、紙基材上に金属光沢を有するフィルムを貼り合せて金属光沢を有する基体を作製し、さらに該基体上に絵柄層等を印刷することにより、金属光沢を有する印刷物が作製されている。
しかし、金属光沢を有するフィルムは、フィルム上に金属蒸着膜を形成してなるものであるため、コストを要し、廉価な印刷物には適さない。さらに、紙基材上に金属光沢を有するフィルムを貼り合わせた基体は、紙とフィルムとの収縮率の違いによりカールが発生し、その後の工程(例えば、基体への印刷工程、印刷物を容器に加工する工程)の精度を低下させ、歩留まりが低下するという問題がある。
上記問題を解決するために、特許文献1のように、紙基材上にハードコート層及び金属薄膜細片を含む光沢印刷層を有する印刷物が提案されている。
また、紙やフィルム等の被加工物の表面に所定の凹凸形状で形成された画像を転写するエンボス加工が知られている。この場合、金属蒸着膜を有するフィルムなどの金属箔を積層させて加熱押圧し、箔部分に凹凸画像パターンを形成しながら被加工物の表面に箔を接着することも行われている。特許文献2及び特許文献3には、転写箔部分に凹凸パターンを形成して、照明の方向や見る角度によって複数の画像のうち1つのみが見えるチェンジング画像を形成する技術が開示されている。
特開2016−88098号公報 実用新案登録第3140937号公報 特開2015−120326号公報
特許文献1のような印刷物であれば、ハードコート層上に光沢印刷層を形成することにより、金属薄膜細片を層上部に偏析させることができるので、一定レベルの金属光沢を得ることができる。一般的には金属箔を用いる方が高い金属光沢を有するので意匠性が高いとされている。
一方で、転写箔部分にエンボス加工によりチェンジング画像を設けた場合、2つの画像が同時に見える場合があることが問題となっていた。
本発明は、基材上に光沢印刷層を有する構成において、金属蒸着膜よりも意匠性に優れる印刷物及び該印刷物の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供する。
[1]基材上の任意の箇所に形成されたハードコート層と、該ハードコート層上の任意の箇所に形成された光沢印刷層とを有する印刷物であって、前記ハードコート層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、前記光沢印刷層が金属鱗片を含み、前記光沢印刷層が形成された領域の任意の箇所に、それぞれ異なる傾斜面を有するパターンで構成された複数の絵柄画像が組み合わされて形成されており、前記複数の絵柄画像の前記傾斜面は、互いに異なる傾斜角度であり、前記基材の角度を変えることにより前記絵柄画像が交互に視認される印刷物。
[2]前記光沢印刷層が形成された領域の任意の箇所に、互いに平行な複数の溝部と、該溝部の間に位置する平坦部とが設けられ、前記絵柄画像は、前記溝部の稜線に設けられた切り欠き形状の複数の画素部で構成され、前記画素部は前記平坦部に対して傾斜した傾斜面を有し、一の前記絵柄画像を構成する前記画素部の前記傾斜面は、他の前記絵柄画像を構成する前記画素部の前記傾斜面と異なる傾斜角度を有する上記[1]に記載の印刷物。
[3]一の前記絵柄画像を構成する画素部は、前記溝部の同じ側の前記稜線に設けられている上記[2]に記載の印刷物。
[4]前記光沢印刷層が形成された領域の任意の箇所に、互いに平行な複数の凸状線部と、該凸状線部の間に位置する平坦部とが設けられ、前記絵柄画像は、前記凸状線部の稜線から前記平坦部の側に突出し、前記平坦部に対して傾斜する傾斜面を有する複数の画素部で構成され、一の前記絵柄画像を構成する前記画素部の前記傾斜面は、他の前記絵柄画像を構成する前記画素部の前記傾斜面と異なる傾斜角度を有する上記[1]に記載の印刷物。
[5]前記金属鱗片が前記光沢印刷層の前記ハードコート層と反対側の表面近傍に偏在する上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の印刷物。
[6]前記基材が紙である上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の印刷物。
[7]上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の印刷物の製造方法であって、前記基材上の任意の箇所に、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、該組成物を硬化させて前記ハードコート層を形成する工程と、前記ハードコート層上の任意の箇所に、前記金属鱗片を含むインキを塗布し、該インキを乾燥させて前記光沢印刷層を形成する工程と、前記光沢印刷層が形成された領域の任意の箇所に対して、前記光沢印刷層側からエンボス加工を施し、少なくとも前記光沢印刷層に前記絵柄画像を形成する工程と、を含む印刷物の製造方法。
本発明によれば、金属光沢性を有するとともに、金属箔を用いる場合よりもチェンジング画像の明瞭性及び区別性に優れた意匠性の高い印刷物を得ることができる。
本発明の印刷物の一実施形態を示す断面図である。 本発明の印刷物の他の実施形態を示す断面図である。 本発明の印刷物の一実施形態に係る絵柄画像を説明するための断面図であり、(a)は本発明の絵柄画像が形成された領域の断面拡大斜視図であり、(b)は絵柄画像が形成された領域の拡大平面図であり、(c)はA−A’断面図の一例であり、(d)はA−A’断面図の別の例である。 本発明の印刷物の他の実施形態に係る絵柄画像を説明するための断面図であり、(a)は画像が形成された領域の断面拡大斜視図であり、(b)は画像が形成された領域の拡大平面図であり、(c)は図4(b)のA−A’断面図である。
[印刷物]
本発明の印刷物は、基材上の任意の箇所に形成されたハードコート層と、該ハードコート層上の任意の箇所に形成された光沢印刷層とを有する印刷物であって、ハードコート層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、光沢印刷層が金属鱗片を含み、光沢印刷層が形成された領域の任意の箇所に、それぞれ異なる傾斜面を有するパターンで構成された複数の絵柄画像が組み合わされて形成されており、複数の絵柄画像の傾斜面は、互いに異なる傾斜角度であり、基材の角度を変えることにより絵柄画像が交互に視認されるものである。
本発明の印刷物は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むハードコート層上に、金属鱗片を含む光沢印刷層に対していわゆるチェンジング画像が描画されたものである。ハードコート層が下地となっているために、乾燥時に溶剤の揮発とともに金属鱗片が上部に偏在しながら整然と配列して光沢印刷層が形成される。このような光沢印刷層に傾斜角度の異なる傾斜面で構成される絵柄画像を形成した場合、反射光がある程度拡散する。このため、観察者が「落ち着いた光沢感」であると感じることができる。
また、印刷物の角度を変えて観察すると、複数の絵柄画像が同時に見える角度が存在する場合がある。これは、ある絵柄画像部分に1回反射した光だけでなく、角度の異なる傾斜面で構成されるパターン内での多重反射の過程で別の絵柄画像部分で反射した光も、観察者が感知するためと推測される。本発明の印刷物では、1回反射の絵柄画像のエッジが明確に視認できる一方で、光沢印刷層で反射光の一部が拡散されるために多重反射光の強度が大幅に低下し、多重反射の絵柄画像がぼやけて見える。結果として、多重反射に基づく絵柄画像はぼやけるため、2つの絵柄画像を同時に視認し難くなる。更に、印刷物の角度を変えると絵柄画像が連続的に変化するように見え、意匠性に優れる印刷物となる。
一方、熱可塑性樹脂からなる層を形成した場合には、光沢印刷層の形成の際に溶剤の一部が熱可塑性樹脂層に移行する。つまり、溶剤の揮発量が少なくなり金属鱗片が上部に移行しにくいため、金属鱗片が層上部に偏在しにくく、また鱗片がランダムに傾いた状態で硬化する。従って、下地層に熱可塑性樹脂層を形成した印刷物では、金属光沢が不十分である。金属光沢が不十分であると正反射光強度が弱く拡散が強くなるので、1回反射により観察される絵柄画像でもエッジがぼやけたり画像のコントラストが低下するなど、絵柄画像が不明瞭となる。
また、基材に積層させた金属蒸着膜等の金属箔に上記絵柄画像を形成した場合、正反射が強いために絵柄画像が明瞭である一方で、観察者が「ギラツキ」を感じる。また、金属箔を用いる場合は反射光の拡散がほとんど起こらないために、1回反射による光の正反射強度と、多重反射した光の正反射強度との差が小さい。このため、絵柄画像のエッジは鮮明ではあり、1回反射の絵柄画像と多重反射による絵柄画像とが同時にはっきり視認される。結果として、観察者は違和感を感じるので意匠性が悪い印刷物となる。
図1は、本発明の印刷物の一実施形態を示す概略図であって、印刷物の断面拡大図である。図1の印刷物100は、基材10上にハードコート層20と光沢印刷層30とを有している。また、図1の印刷物100は、再表層に表面保護層40を有していても良い。
図2は、本発明の印刷物の他の実施形態を示す概略図であって、印刷物の断面拡大図である。図2の印刷物100はさらに印刷絵柄層が形成されている。印刷絵柄層としては、基材10と光沢印刷層30との間に設けられる印刷絵柄層(図2中符号50)、光沢印刷層30と表面保護層40との間に設けられる印刷絵柄層がある。
図1及び図2の印刷物100の光沢印刷層30が形成されている領域に、後述する絵柄画像が形成されている。
[基材]
基材の材料は、従来からの印刷物に用いられている材料であれば特に限定されず、上質紙、中質紙、コート紙、合成紙、含浸紙、ラミネート紙、印刷用塗布紙、記録用塗布紙等の紙、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、あるいはこれらの複合体等を用いることができる。
基材の厚みは特に限定されないが、紙基材の場合は、通常は坪量150〜550g/m程度であり、プラスチックフィルム基材の場合は、通常は9〜50μm程度である。
[ハードコート層]
本発明では、基材と光沢印刷層との間にハードコート層を介在させることにより、光沢印刷層の金属光沢を十分高くすることを可能としている。この理由は以下のように考えられる。
まず、ハードコート層は光沢印刷層用インキの溶剤を浸透しにくい。このため、ハードコート層上に光沢印刷層用インキを塗布、乾燥する際に、溶剤は、光沢印刷層の下方に流れにくい。その一方で、溶剤は、乾燥過程で溶剤が揮発する際に、光沢印刷層の上方に流れやすくなる。そして、溶剤の流れとともに金属鱗片が光沢印刷層の上方に浮かび上がり、光沢印刷層の上部に金属鱗片が偏在化され、光沢印刷層の金属光沢を十分に高くできると考えられる。
また、上述した基材は、種類により程度の違いはあるが、表面が荒れている。例えば、紙は繊維に起因して表面が荒れている。このように基材表面が荒れている場合に、光沢印刷層を形成した場合、光沢印刷層の表面も荒れてしまい、金属光沢を十分に高くすることができないが、ハードコート層により基材表面の荒れを緩和することにより、光沢印刷層の表面が荒れることを抑制して、金属光沢を十分に高くできると考えられる。
また、基材の表面が傷ついた場合、傷の凹凸が光沢印刷層の表面に反映されることにより、光沢印刷層の金属光沢が低下してしまう。しかし、基材及びハードコート層からなる基体は表面が傷つきにくいため、光沢印刷層の表面に傷による凹凸が反映されることを抑制し、光沢印刷層の金属光沢を十分に高くできると考えられる。
ハードコート層は基材上の任意の箇所に設けられていれば良く、少なくとも、後述する光沢印刷層を形成する箇所に対応する箇所に形成することが好ましい。また、ハードコート層と光沢印刷層との位置合わせの煩雑を解消する観点から、ハードコート層は基材の光沢印刷層を形成する領域の全面に設けることが好ましい。ただし、基材及びハードコート層からなる基体の物性を均一化して、基体の変形等を抑制する観点からは、ハードコート層は基材の全面に形成することもできる。
ハードコート層の表面(ハードコート層の基材とは反対側の表面)は平滑化されていることが好ましい。ハードコート層の表面が荒れている場合、ハードコート層の表面積が増え、光沢印刷層を形成する際に溶剤が浸透しやすくなる。一方、ハードコート層の表面が平滑化されていると、ハードコート層に溶剤が浸透しにくいため、光沢印刷層の上部に金属鱗片を偏在化させやすくなり、光沢印刷層の金属光沢を十分に高くできる。また、ハードコート層の表面が荒れている場合、ハードコート層の凹凸が光沢印刷層にも反映され、光沢印刷層の表面も荒れてしまう。一方、ハードコート層の表面が平滑化されていると、光沢印刷層の表面も平滑化され、光沢印刷層の金属光沢を十分に高くできる。
ハードコート層の表面の平滑化の指標としては、JIS Z8741:1997の鏡面光沢度や、JIS B0601:2001の算術平均粗さRaが挙げられる。
ハードコート層表面のJIS Z8741:1997の60度における鏡面光沢度は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
本発明におけるハードコート層は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物層(以下、「硬化物層」と称する場合がある。)である。電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物層は、平滑性、傷つき防止性及び浸透防止性をより良好にする。
さらに、ハードコート層を電離放射線硬化性樹脂組成物から形成する場合、電離放射線の照射によりハードコート層を瞬時に硬化することができるため、ハードコート層の形成過程で、ハードコート層の表面形状が基材の高周波成分の凹凸に追従されることを抑制できる。言い換えると、ハードコート層を電離放射線硬化性樹脂組成物から形成する場合、ハードコート層により基材の高周波成分の凹凸を緩和できる。その一方、ハードコート層が硬化するまでの間(乾燥過程の間)に、ハードコート層の表面形状は基材の低周波成分の凹凸に適度に追従する。つまり、ハードコート層を電離放射線硬化性樹脂組成物から形成する場合、ハードコート層の表面を、高周波成分の凹凸を抑制しつつ、適度な低周波成分の凹凸を有する形状とすることができ、上述した効果(ハードコート層への溶剤の浸透抑制、基材の風合いの維持等)を発揮しやすくできる。
[硬化物層]
硬化物層を形成するための電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。電離放射線硬化性化合物(紫外線硬化の場合、「紫外線硬化性化合物」と称する場合もある。)としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができるが、高い架橋密度により、傷つき防止性及び浸透防止性をより良好にする観点から、モノマーが好適である。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーのうち、2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリレート系モノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は、2〜6が好ましく、2〜3がより好ましい。
また、多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
また、好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
上記電離放射線硬化性化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。電離放射線硬化性化合物中には、多官能性(メタ)アクリレートモノマーを50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性組成物(紫外線硬化性樹脂組成物)は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物中には、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤等の添加剤を含有していてもよい。
なお、電離放射線硬化性樹脂組成物中には、電離放射線硬化性化合物以外の樹脂成分(熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂)を含有してもよい。ただし、上述した効果を達成しやすくするために、電離放射線硬化性樹脂組成物の全樹脂成分に占める電離放射線硬化性化合物の割合が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。
硬化物層は、基材の平滑化及び傷つき防止の観点から、厚みが2μm以上であることが好ましい。なお、硬化物層が厚すぎる場合、加工性が低下することから、硬化物層の厚みは、3〜20μmであることがより好ましく、4〜10μmであることがさらに好ましく、5〜7μmであることがよりさらに好ましい。
硬化物層は、電離放射線硬化性樹脂組成物、及び必要に応じて添加する溶剤を含む硬化物層用インキを、基材上に塗布、乾燥、電離放射線照射することにより形成できる。なお、硬化物層用インキ中に溶剤を含まない場合は、乾燥は不要である。
[光沢印刷層]
光沢印刷層は、ハードコート層上に位置する層であり、光沢印刷層用インキを印刷することにより形成される。このように金属光沢を付与する層を蒸着ではなく印刷により形成することにより、コストを低減するとともに、カールの発生を抑制できる。本発明の印刷物は、チェンジング画像の下地として、金属鱗片を含む光沢印刷層及びハードコート層を有するため、絵柄画像が明瞭になるとともに、意匠性に優れる画像とすることができる。
光沢印刷層は、ハードコート層上に接して形成されることが好ましい。意匠性の観点からハードコート層上の任意の箇所に所望のパターンで設けられていれば良い。光沢印刷層のパターンは例えば、文字、数字、図形、記号、風景、人物、動物、キャラクター等の絵柄などである。また、光沢印刷層は、ハードコート層上の全部の領域に形成してもよい。
本発明では、光沢印刷層中に金属鱗片を含み、かつ光沢印刷層の上部(光沢印刷層のハードコート層とは反対側)に金属鱗片が偏在化してなることを要する。金属鱗片が光沢印刷層の上部に偏在化することにより、金属光沢を高くできるとともに、光沢印刷層とハードコート層との密着性を向上することができる。
金属鱗片は、光沢印刷層を形成する過程で、光沢印刷層の上部に偏在化させることができる。より詳しくは、光沢印刷層の加熱乾燥過程で、光沢印刷層用インキの溶剤が揮発する際に、溶剤が上方に向って流れる。そして、溶剤の流れとともに金属鱗片が浮かび上がり、光沢印刷層の上部に金属鱗片が偏在すると考えられる。特に、本発明では、光沢印刷層の下層に溶剤が浸透しにくいハードコート層が位置するため、溶剤が下方に向う流れを抑制でき、溶剤はほとんど上方に向って流れるため、光沢印刷層の上部に金属鱗片を偏在させやすいと考えられる。特に、ハードコート層を電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物層とした際に、金属鱗片の偏在をより顕著にすることができると考えられる。
金属鱗片の偏在の程度は、印刷物の断面を電子顕微鏡で撮像し、撮像した写真の光沢印刷層内の濃度差により確認できる。より詳しくは、金属鱗片の偏在箇所は電子の反射が顕著であるため白く観察され、金属鱗片を実質的に含有しない箇所はグレー調に観察される。
光沢印刷層中における金属鱗片の偏在領域の厚みの割合[(金属鱗片の偏在領域の厚み/光沢印刷層の全厚み)]は、金属光沢と密着性のバランスの観点から、10〜60%であることが好ましく、20〜50%であることがより好ましく、25〜45%であることがさらに好ましい。
金属鱗片は、以下の条件(1)を満たすことが好ましい。
金属鱗片の平均厚み/金属鱗片の平均長さ≦0.010 (1)
[金属鱗片の平均厚み/金属鱗片の平均長さ]を0.010以下とすることにより、光沢印刷層用インキを塗布した時点で、光沢印刷層の水平方向(光沢印刷層の厚み方向と直交する方向)に対して金属鱗片が傾きにくくなる。このため、光沢印刷の乾燥過程で溶剤が光沢印刷層の上方に流れる際に、金属鱗片が溶剤の流れの力を受けやすくなり、光沢印刷層の上部に金属鱗片が偏在化しやすくなるとともに、金属鱗片が平行に配列しやすくなるため、金属光沢を高くしやすくできる。また、金属鱗片が傾くことによる弊害は、金属鱗片の含有量の増加に併せて増加するが、上記条件(1)を満たす場合、金属鱗片が傾きにくいことから金属鱗片の含有量を多くすることができ、金属光沢を高くすることができる。
なお、金属鱗片の平均長さに対して金属鱗片の平均厚みが薄くなり過ぎると、取り扱い性が困難となる。また、金属鱗片が対流することにより、層表面のうねりや凹凸が生じやすくなるため、十分な金属光沢が発現できない可能性がある。
このため、条件(1)は、0.001≦金属鱗片の平均厚み/金属鱗片の平均長さ≦0.010を満たすことが好ましく、0.002≦金属鱗片の平均厚み/金属鱗片の平均長さ≦0.008を満たすことがより好ましく、0.002≦金属鱗片の平均厚み/金属鱗片の平均長さ≦0.005を満たすことがさらに好ましい。
また、光沢印刷層用インキを塗布した時点で、光沢印刷層の水平方向に対して金属鱗片が傾くことをより抑制する観点、及び光沢印刷層の表面から金属鱗片が突出することを抑制するから、金属鱗片の平均長さと、光沢印刷層の厚みとが以下の条件(2)を満たすことが好ましい。
10≦金属鱗片の平均長さ/光沢印刷層の厚み (2)
なお、[金属鱗片の平均長さ/光沢印刷層の厚み]が大きすぎると、光沢印刷層の表面から金属鱗片が突出する場合があることから、条件(2)は、15≦金属鱗片の平均長さ/光沢印刷層の厚み≦60を満たすことがより好ましく、25≦金属鱗片の平均長さ/光沢印刷層の厚み≦50を満たすことがさらに好ましい。
金属鱗片の材質としては、アルミニウム、金、銀、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等の金属や合金が挙げられる。
金属鱗片は、例えば、前記金属や合金をプラスチックフィルム上に真空蒸着してなる金属薄膜をプラスチックフィルムから剥離し、剥離した金属薄膜を粉砕、攪拌することにより得ることができる。
金属鱗片の平均長さは、金属鱗片の分散適性、偏在及び配列の観点から、5.0〜30.0μmであることが好ましく、8.0〜20.0μmであることがより好ましい。
また、金属鱗片の平均厚みは、金属鱗片の偏在及び配列の観点から、0.10μm以下であることが好ましく、0.08μm以下であることがより好ましく、0.06μm以下であることがさらに好ましい。また、金属鱗片の平均厚みは、取り扱い性及び高い金属光沢の観点から、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましい。
金属鱗片の平均長さとは、印刷物の平面方向から光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察した任意の20個の金属鱗片の長さの平均値を言うものとする。なお、1個の金属鱗片の長さは、1個の金属鱗片の平面方向の最大長さを意味する。
金属鱗片の平均厚みは、印刷物の断面を光学顕微鏡又は電子顕微鏡で観察した任意の20個の金属鱗片の厚みの平均値として求められる。なお、1個の金属鱗片の厚みは、1個の金属鱗片の断面像を長さ方向に均等な長さで5つの領域に分割し、各領域の中央部の厚み(t、t、t、t、t)を測定し、t〜tを平均したものを意味する。
光沢印刷層は、さらにバインダー樹脂を含むことが好ましい。
バインダー樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。また、バインダー樹脂として、上述した紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を用いてもよい。
バインダー樹脂と金属鱗片との配合比は、固形分質量比で55:45〜30:70であることが好ましく、50:50〜35:65であることがより好ましい。バインダー樹脂55に対して金属鱗片を45以上とすることにより、十分な金属光沢を得やすくなり、バインダー樹脂30に対して金属鱗片を70以下とすることにより、光沢印刷層の印刷性、印刷物の加工性を良好にしやすくできる。なお、本発明では、光沢印刷層の下方にハードコート層を有することから、上記のように金属鱗片を多量に用いても、光沢印刷層の上部に金属鱗片を偏在化させることができる。
光沢印刷層の厚みは、金属鱗片の偏在及び配列の観点、並びに隠蔽性の観点から、0.15〜1.50μmであることが好ましく、0.20〜1.00μmであることがより好ましいく、0.25〜0.75μmであることがさらに好ましい。
なお、光沢印刷層の厚みは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した断面の画像から20箇所の厚みを測定し、20箇所の値の平均値から算出できる。測定する膜厚がμmオーダーの場合、SEMを用いることが好ましく、nmオーダーの場合、TEM又はSTEMを用いることが好ましい。SEMの場合、加速電圧は1kv〜10kV、倍率は1000〜7000倍とすることが好ましく、TEM又はSTEMの場合、加速電圧は10kv〜30kV、倍率は5万〜30万倍とすることが好ましい。
光沢印刷層以外の層の厚みも上記と同様の手法で測定できる。
光沢印刷層には、光沢印刷層を所望の色にするために、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、酸化鉄、鉄黄、群青、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、染料等の着色剤を含有させてもよい。
光沢印刷層の表面(光沢印刷層のハードコート層側とは反対側の表面)のJIS Z8741:1997の60度における鏡面光沢度は、金属光沢の観点から、150%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、250%以上であることがさらに好ましい。過剰な金属鱗片の添加による分散性、脱溶剤適性、接着性、塗膜強度の低下等を防ぐ観点から、光沢印刷層の表面の鏡面光沢度の上限は500%程度である。
光沢印刷層は、光沢印刷層を形成する成分を溶剤で希釈してなる光沢印刷層用インキを、ハードコート層上に塗布、乾燥し、必要に応じて紫外線照射することにより形成できる。
光沢印刷層用インキは、金属鱗片の偏在及び乾燥効率の両立の観点から、全固形分100質量部に対して、溶剤を600〜1100質量部含有することが好ましい。
ハードコート層の樹脂組成により溶剤の浸透性が異なるため、好適な溶剤の種類は一概には言えないが、例えば、酢酸エチル、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、酢酸ノルマルプロピル(NPAC)やこれらを混合したもの等を用いることができる。
[印刷絵柄層]
印刷絵柄層は、印刷物の意匠性を高めることを目的として、光沢印刷層上及び/又は光沢印刷層より下層で光沢印刷層が形成されていない部分の任意の箇所に形成される。
印刷絵柄層は、通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成できる他、絵柄を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成できる。印刷絵柄層の絵柄は、通常の印刷で用いられる絵柄(例えば、文字、数字、図形、記号、風景、人物、動物、キャラクター等)であれば、特に制限されることなく使用できる。
印刷絵柄層の形成に用いられるインキとしては、バインダー樹脂に顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
バインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
印刷絵柄層の厚みは、印刷絵柄層の形態と、目的とする意匠性とを考慮して、0.1〜20μm程度の範囲で適宜調整することができる。印刷絵柄層中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有しても良い。
[表面保護層]
本発明の印刷物は、光沢印刷層を有する側の最表面に表面保護層を有することが好ましい。表面保護層を形成することにより、印刷物の耐擦傷性及び耐候性を向上することができる。当該効果のため、表面保護層は、光沢印刷層及び必要に応じて設ける印刷絵柄層の全領域を覆うように形成することが好ましく、さらにハードコート層の全領域を覆うように形成することがより好ましい。
表面保護層は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物又は紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物層を含むことが好ましく、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがより好ましい。
表面保護層が熱硬化性樹脂の硬化物を含むことにより、表面保護層の耐擦傷性及び耐候性を向上しつつ、印刷物の臭気を抑制できる。また、熱硬化性樹脂の硬化物は瞬時に硬化しないため、周波数の大きい凹凸(例えばカットオフ値0.08mmの凹凸)を緩和するのみならず、周波数の小さい凹凸(例えばカットオフ値0.25mmの凹凸)を緩和することができ、条件1及び2を満たしやすくできる。
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
表面保護層を紫外線硬化性樹脂組成物から形成する場合、紫外線の照射により表面保護層を瞬時に硬化することができるため、表面保護層の形成過程で、表面保護層の表面形状が下層(例えば印刷絵柄層等)の高周波成分の凹凸に追従することを抑制し、表面保護層の表面の金属光沢を高くすることができる。その一方、紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射するまでの間(紫外線硬化性樹脂組成物の硬化が始まるまでの間)に、表面保護層の表面形状は下層(例えば光沢印刷層等)の低周波成分の凹凸に基材適度に追従する。このため、表面保護層には少量ながらも低周波成分の凹凸が維持されることになり、表面保護層の表面が過度に平滑化されることにより、正反射方向の反射光が高くなり過ぎ、観察者に不快感を与えることを抑制できる。なお、前記効果をより達成しやすくするために、紫外線硬化性樹脂組成物は溶剤を含まないことが好ましい。
表面保護層を形成する紫外線硬化性樹脂組成物は、光沢印刷層で例示した紫外線硬化性樹脂組成物と同様のものを用いることができる。
表面保護層中には、耐候性を向上するために、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含むことが好ましい。
表面保護層の厚みは、0.5〜5.0μmであることが好ましく、0.8〜1.5μmであることがより好ましい。
表面保護層を形成する際、必要に応じて、熱硬化性樹脂組成物又は紫外線硬化性樹脂組成物と溶媒とを含むインキを用いることができる。例えば、表面保護層が熱硬化系のアクリル樹脂である場合、該樹脂を水系溶媒(水:イソプロピルアルコール=9:1〜1:8の混合溶媒)に分散させたインキ組成物を用いて表面保護層を形成することができる。
[絵柄画像]
本発明の印刷物は、光沢印刷層が形成された任意の箇所にチェンジング画像が描画されている。チェンジング画像とは、角度によって観察者が見える絵柄が変化する画像技術である。本発明では、光沢印刷層が形成された領域の任意の箇所おいて、印刷物の表側(観察者が見る側)になる面に、複数の絵柄画像が重なるように組み合わされて形成されている。絵柄画像はそれぞれ異なる傾斜角度を有する傾斜面によって、パターンが形成されている。「1つの絵柄画像」とは、文字、数字、記号、図形、図画(マーク、風景、人物、動物などの絵)、または、これらの組み合わせである。1つの印刷物に複数の文字、図形等を組み合わせた場合は、観察者が印刷物の表側をいかなる角度から見たときに同時に視認できる画像群を「1つの絵柄画像」と称する。
図3はチェンジング画像の一例を説明するための概略図である。本発明では印刷物の表側面に複数の絵柄画像が描画されている。図3(a)は画像が形成された領域の断面拡大斜視図である。図3(b)は画像が形成された領域の拡大平面図である。図3(c)は図3(a)のA−A’断面図である。以下では、2つの絵柄画像が形成される場合を用いて説明する。
図3(a)〜(b)に示すように、印刷物200の表側面に互いに平行な複数の溝部110が形成されている。溝部110は絵柄画像が形成される領域にわたって連続しているとともに、溝部110の延在方向に直交する方向に所定の間隔を空けて配列されている。溝部110は背景画像を構成する。溝部110の間隔は、加工性、絵柄画像の解像度などの意匠性等を考慮して適宜決定される。例えば、溝部110の間隔は0.3〜1.0mmである。
図3(c)では溝部110の断面形状はV字型であるが、本発明はこれに限定されない。溝部110は、U字型や、四角など任意の形状であっても良い。絵柄画像が形成されていない領域での溝部110の深さや幅は、加工性を考慮して適宜設定される。例えば、溝部110の深さは1.0〜15μmであり、幅は10〜90μmである。
絵柄画像が設けられていない領域において、溝部110間など溝部が設けられていない部分は平坦部120となっている。
溝部110の稜線の一方側(稜線R1)側に、第1画素部130−1が設けられる。複数の第1画素部130−1の集合が1つの絵柄画像を構成する。第1画素部130−1は溝部110の稜線R1の一部を削った切り欠き形状である。絵柄画像に対応する場所に、複数の第1画素部130−1が溝部110の延在方向及び配列方向に配置される。また、絵柄画像に応じて複数の第1画素部130−1の形状は互いに異なっていても良い。図3では、平面で見たときに矩形となる第1画素部と、三角形となる第1画素部とが形成されている。
溝部110の稜線R1に対向する他方の稜線(稜線R2)側に、第2画素部130−2が設けられる。複数の第2画素部130−2の集合が、別の絵柄画像を構成する。第2画素部130−2は稜線R2の一部を削った切り欠き形状である。絵柄画像に対応する場所に、複数の第2画素部130−2が溝部110の延在方向及び配列方向に配置される。第1画素部130−1と同様に、絵柄画像に応じて複数の第2画素部130−2の中で形状が互いに異なっていても良い。
図3(a)及び(b)に示すように、第1画素部130−1及び第2画素部130−2のいくつかは、溝部110の延在方向で重複する位置に配置される。この重複位置は、2つの絵柄画像が重なる位置に対応する。
第1画素部130−1及び第2画素部130−2は、平坦部120から溝部110に向かって下がる傾斜面(第1傾斜面132−1、第2傾斜面132−2)を有する。図3(c)の例では傾斜面は溝部110の傾斜の途中点Bから開始するが、溝部110の最深部から開始していても良い。
図3(d)に例示するように、傾斜面は上側(基材と反対側の方向)に向かって凸状になっている湾曲面であっても良い。
図3(c)及び(d)では第1傾斜面132−1を例示しているが、第2傾斜面132−2も同様である。
第1画素部130−1と第2画素部130−2とは、互いに異なる傾斜面を有する。傾斜面の「傾斜角度θ」は、平坦部120に垂直な線と傾斜面とのなす角と定義する。
傾斜面が直線状の切り欠きである場合、傾斜角度θを図3(c)に示す。平坦部120に垂直な線に対して稜線R1側への角度を正、稜線R2側への角度を負で表す。本発明において、第1傾斜面132−1の傾斜角度は、第2傾斜面132−2の傾斜角度と異なる。
傾斜部が湾曲面の場合、画素部の断面画像を取得し、傾斜面を等間隔に12等分し、両端を除く10箇所の接線を引き、該接線と、平坦部に垂直な線との成す角度を各箇所の傾斜角として、10箇所の傾斜角の平均値を、湾曲面の「傾斜部の傾斜角度θ」と定義する。第1傾斜面と第2傾斜面の両方が湾曲面であっても良いし、第1傾斜面及び第2傾斜面のいずれかが平面であり、他方が湾曲面であっても良い。 この場合も、第1傾斜面132−1の傾斜角度は、第2傾斜面132−2の傾斜角度と異なる。
第1画素部130−1及び第2画素部130−2はそれぞれ、平坦部120に対する傾斜角度が異なる。従って、平坦部120、第1画素部130−1、及び、第2画素部130−2はそれぞれ正反射方向が異なる。また、平坦部120、第1画素部130−1、及び、第2画素部130−2で、拡散光の拡散方向も異なる。このため、溝部110の延在方向を軸として印刷物を回転させたときに、第1画素部で構成される絵柄画像が視認できる角度と、第2画素部で構成される絵柄画像が視認できる角度とが異なる。結果として、観察者にとっては印刷物の回転角度によって絵柄が変化するように見える。図3に示すパターンでは、第1画素部130−1または第2画素部130−2からの正反射光の方向に観察者がいると、絵柄画像が周囲より明るいポジ画像が観察できる。これに対し、平坦部120からの正反射光の方向に観察者がいると、絵柄画像が周囲より暗いネガ画像が観察できる。
入射角度によっては、例えば、第1画素部130−1で1回反射された光だけでなく、第1画素部が設けられていない溝部110の壁面で反射した拡散光の一部が第2画素部130−2で反射された光も、観察者に到達する場合がある。また、第1画素部130−1で反射した拡散光の一部が、溝部110内での多重反射の過程で第2画素部130−2で反射され、その後観察者に到達する場合がある。このように溝部110内で多重反射が起こることで、2つの絵柄画像が同時に見えることがある。しかし本発明の印刷物では、光沢印刷層を用いていることから、拡散光の強度は正反射光に比べて強度が大幅に低い。このため、2つの絵柄画像が同時に見えたとしても、正反射光の絵柄画像はエッジが明確である一方で、多重反射光による絵柄画像がぼやけて見え、2つの画像を区別して視認することができる。
上記のように第1画素部130−1と第2画素部130−2とで反射方向を異ならせるためには、光沢印刷層内にパターンが形成される。絵柄画像のパターンはハードコート層や基材に到達していても、いなくても良い。
上記のパターンは例示であり、本実施形態はこれに限定されない。例えば、上記では異なる稜線に絵柄画像が描画されている場合を説明したが、同じ稜線側に形成されている態様であっても良い。この場合は、第1画素部及び第2画素部は、互いに重ならないように切り欠き部を設け、切り欠き部の傾斜面の角度や曲率を異なるものとする。
また、上記では平坦部(図3の断面では溝部間は台形形状になっている)を有するパターンとしたが、これに限定されず、溝部間が例えば三角形状のような凸部を有するパターンであっても良い。この場合は、溝部の傾斜角度と凸部の傾斜角度とが異なる必要がある。
3以上の絵柄画像が形成される場合は、それぞれの絵柄画像で画素部の傾斜面の角度や曲率を異ならせる。また、複数の絵柄画像の画素部を溝部の同じ稜線側に形成する場合には、各絵柄画像の画素部が重ならないように切り欠き部を設ける。こうすることにより、絵柄画像の変化を明確にすることができる。
図4はチェンジング画像の別の例を説明するための概略図である。図4(a)は画像が形成された領域の断面拡大斜視図である。図4(b)は画像が形成された領域の拡大平面図である。図4(c)は図4(b)のA−A’断面図である。
印刷物400の表側に、互いに平行な複数の線状凸部310が形成されている。線状凸部310は絵柄画像が形成される領域にわたって連続しているとともに、線状凸部310の延在方向に直交する方向に、所定の間隔を空けて配列されている。線状凸部310の間は、平坦部320である。線状凸部310及び平坦部320は背景画像を構成する。
図4の例において、線状凸部310の頂部312は平坦部320と略平行の平面である。線状凸部310の側面は、後述する画素部が設けられていない箇所では平坦部320に対して略垂直となっている。すなわち、図4の例では、線状凸部310の延在方向に直交する方向の断面は、矩形である。なお本発明の線状凸部310の形状は図4に限定されず、例えば頂部312は三角形状やドーム形状であっても良い。
線状凸部310の幅及び平坦部320の幅は、加工性、絵柄画像の解像度などの意匠性等を考慮して適宜設定される。例えば、線状凸部310の幅は2.0〜50μm、平坦部320の幅は10μm〜1.0mmである。
線状凸部310の一方の側面(第1側面S1)側に、第1画素部330−1が設けられる。複数の第1画素部330−1の集合が1つの絵柄画像を構成する。絵柄画像に対応する場所に、複数の第1画素部330−1が線状凸部310の延在方向及び配列方向に配置される。
第1画素部330−1は、線状凸部310の第1側面S1から平坦部320に向かって突出して形成される。第1画素部330−1は、図4(a)及び(c)に示すように、線状凸部310から離れるに従って下に傾斜する第1傾斜面332−1を有する。第1画素部332−1は平面である。従って、第1画素部の第1傾斜面332−1は、平坦凸部320に対して傾斜している。また、第1傾斜面332−1は、線状凸部310の頂部312に対しても傾斜している。
図4(a)及び(b)では、平面で見たときに第1傾斜面332−1は矩形であり、第1画素部330−1をすべて同じ形状で表したが、本発明はこれに限定されない。絵柄画像に応じて、第1傾斜面332−1は矩形の他、三角形や台形など他の形状であっても良い。
線状凸部310の他方の側面(第2側面S2)側に、第2画素部330−2が設けられる。複数の第2画素部330−2の集合が1つの絵柄画像を構成する。絵柄画像に対応する場所に、複数の第2画素部330−2が線状凸部310の延在方向及び配列方向に配置される。
第2画素部330−2は、線状凸部310の第2側面S2から平坦部320に向かって突出して形成される。第2画素部330−2は、図4(a)及び(c)に示すように、線状凸部310から離れるに従って下に傾斜する第2傾斜面332−2を有する。第2画素部332−2は矩形の平面である。従って、第2画素部の第2傾斜面332−2は、平坦凸部320に対して傾斜している。また、第2傾斜面332−2は、線状凸部310の頂部312に対しても傾斜している。
第2画素部330−2の第2傾斜面332−2の形状は図4に示したものに限定されない。第1画素部の場合と同様に、絵柄画像に応じて第2傾斜面332−2の形状を変えることができる。
図4は3つの絵柄画像を設ける例であり、第3画素部330−3が設けられる。第3画素部330−3は第1側面S1から平坦部320に向かって突出して形成されている。第3画素部330−3の傾斜面330−3は、線状凸部310から離れるに従って下に傾斜する。第1画素部332−3は矩形の平面である。ここでは第1側面S1側に第3画像330−3を形成したが、第2側面S2側に形成しても良い。
第3画素部330−3の第3傾斜面332−3の形状は図4に示したものに限定されない。第1画素部の場合と同様に、絵柄画像に応じて第3傾斜面332−3の形状を変えることができる。
傾斜面の傾斜角度は、傾斜面の線状凸部310と反対側の端部の位置によって決まる。第1画素部330−1を例にして説明すると、線状凸部310と端部Eとの距離d、及び、平坦部320からの端部Eの高さhによって、第1傾斜面332−1の傾斜角度θ(第1画素部の場合、θ1と表記)を変えることができる。第3画素部330−3のように、傾斜面の端部が平坦部320面内に位置しても良い。ここで、傾斜角度θは、平坦部320に垂直な線と傾斜面とのなす角と定義する。平坦部320に垂直な線に対して第1側面S1側への角度を正、第2側面S2側への角度を負で表す。
図4(a)及び(c)に示すように、第1傾斜面332−1の傾斜角度θ1は、第2傾斜面332−2の傾斜角度θ2及び第3傾斜面332−3の傾斜角度(θ3、ただし図4では示さず)と異なる。第2傾斜面332−2は第3傾斜面332−3と異なる傾斜角度を有する。
従って、平坦部320、線状凸部310の頂部312、第1画素部330−1、第2画素部330−2、及び、第3画素部はそれぞれ正反射方向が異なる。また、平坦部320、線状凸部310の頂部312、第1画素部330−1、第2画素部330−2、及び、第3画素部330−3で、拡散光の拡散方向も異なる。このため、線状凸部310の延在方向を軸として印刷物を回転させたときに、各画素部で視認できる角度が、それぞれ異なる。結果として、観察者にとっては印刷物の回転角度によって絵柄が変化するように見える。3以上の絵柄画像を設ける場合には、同じ側面に形成される画素部の傾斜角度の差を大きくすれば、異なる絵柄画像が同時にはっきり視認することを避けることができる。このように各画素部での反射方向を異ならせるためには、少なくとも光沢印刷層内にパターンが形成されていれば良い。
各画素部330−1〜330−3からの正反射光の方向に観察者がいると、絵柄画像が周囲より明るいポジ画像が観察できる。一方、平坦部320及び線状凸部310からの正反射光の方向に観察者がいると、絵柄画像が周囲より暗いネガ画像が観察できる。
図4のパターンにおいても、入射角度によってはパターン内での多重反射が起こる。2つの絵柄画像が同時に見えることがある。しかし本発明の印刷物では、光沢印刷層を用いていることから、拡散光の強度は正反射光に比べて強度が大幅に低い。このため、2つの絵柄画像が同時に見えたとしても、正反射光の絵柄画像はエッジが明確である一方で、多重反射光による絵柄画像がぼやけて見え、2つの画像を区別して視認することができる。
図4では傾斜面は平面であるとして説明したが、第1傾斜部〜第3傾斜部の全部が、上側(基材と反対側の方向)に向かって凸状になっている湾曲面であっても良い。あるいは、第1傾斜部〜第3傾斜部のいずれかが湾曲面であり、他の傾斜部が平面であっても良い。いずれの場合でも、第1傾斜面、第2傾斜面及び第3傾斜面は互いに異なる傾斜角度を有する。
[印刷物の製造方法]
本発明の印刷物は、まず上記した方法により、基材上にハードコート層、光沢印刷層、表面保護層を順次形成する。必要に応じて印刷絵柄層を形成する。表面保護層を形成した後の積層体(被加工物)に対してエンボス加工を施す。なお、本発明における「エンボス加工」との表現には、被加工物に凸部を設けるエンボス加工と、凹部を設けるデボス加工との両方を含むものとする。
エンボス加工の方法としては、押圧転写盤の間に挟んで押圧する方法や、凸部を有するロールと受け板との間に挟んで押圧する方法などがある。例えば、図3のパターンの場合には、一方の押圧転写盤の表面に、溝部及び画素部に対応する形状を有し、押圧転写盤の押圧方向に突出する凸部が形成されている。溝部に対応する凸部の傾斜面と画素部に対応する突出部の傾斜面とは異なる角度を有している。また、第1画素部に対応する突出部の傾斜面と第2画素部に対応する突出部の傾斜面とは互いに異なる角度を有している。押圧転写盤表面の隣接する凸部の間は、平坦部に対応する。他方の押圧転写盤は平坦でも良いし、凸部が設けられてもいても良い。
光沢印刷層が形成された面(表側面)が、凸部が形成された押圧転写盤に対向するように被加工物を配置して、被加工物を2つの押圧転写盤の間に挟む。この後、2つの押圧転写盤で被加工物を押圧する。この工程により、被印刷物の光沢印刷層側の面に絵柄画像を構成する画素部(第1画素部及び第2画素部)、溝部、及び、平坦部が同時に形成される。
例えば、図4のパターンの場合には、一方の押圧転写盤の表面に、平坦部及び画素部に対応する形状を有し、押圧転写盤の押圧方向に突出する複数の凸部が形成される。この凸部の各画素面に対応する部分は、各画素部の傾斜角度に倣った角度を有している。押圧転写盤表面の隣接する凸部の間は、線状凸部に対応する。
光沢印刷層が形成された面(表側面)が、凸部が形成された押圧転写盤に対向するように被加工物を配置して、被加工物を2つの押圧転写盤の間に挟む。この後、2つの押圧転写盤で被加工物を押圧する。この工程により、被印刷物の光沢印刷層側の面に絵柄画像を構成する画素部、線状凸部、及び、平坦部が同時に形成される。
上記実施形態のチェンジング画像はシンプルなパターンであるから、金型の製造が容易であるという利点がある。また、転写性の良い金型であるため、パターンの再現性に優れるという利点もある。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
印刷物の作製
[実施例1]
基材(坪量215g/mの片面アイボリー紙)のコート面側の全面に、下記処方のハードコート層用インキを乾燥後の厚みが6μmとなるように塗布、乾燥、紫外線照射して、ハードコート層(電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物層)を形成した。
次いで、基材の全面に、下記処方の光沢印刷層用インキを乾燥後の厚みが0.30μmとなるように塗布、乾燥して、光沢印刷層を形成した。なお、実施例1の光沢印刷層の金属鱗片が実質的に存在しない領域の厚みは0.20μm、金属鱗片偏在領域の厚みは0.10μmであった。
次いで、光沢印刷層側の全面を覆うように、グラビア印刷により下記処方の表面保護層用インキを乾燥後の平均厚みが1.0μmとなるように塗布、乾燥し、表面保護層(熱硬化性樹脂組成物の硬化物層)を形成し、実施例1の印刷物を得た。
<ハードコート層用インキ>
・電離放射線硬化性化合物 70部
(DICグラフィックス社製、商品名:UVTクリヤー)
・溶剤(酢酸エチル、イソプロピルアルコール) 30部
<光沢印刷層用インキ>
・バインダー樹脂(硝化綿及び合成樹脂を含む)/アルミニウム鱗片
(DICグラフィックス社製、商品名:スーパーメタリックシルバー)
・溶剤(酢酸エチル、NPAC) 88部
<表面保護層用インキ>
アクリル系熱硬化性樹脂組成物を水系溶媒(水及びイソプロピルアルコールの9:1混合溶媒)に分散してなるインキ組成物。
[比較例1]
実施例1のハードコート層に変えて、下記処方のアンカーコート層用インキを乾燥後の平均厚みが1.0μmとなるように塗布、乾燥し、アンカーコート層を形成した比較例1の被加工物を得た。比較例1の被加工物は、アンカーコート層以外は実施例1と同じ構成である。なお、比較例1の光沢印刷層の金属鱗片が実質的に存在しない領域の厚みは0.10μm、金属鱗片偏在領域の厚みは0.20μmであった。
<アンカーコート層用インキ>
熱可塑性樹脂を、溶剤(酢酸エチル、メチルエチルケトン及び酢酸n−プロピルの4:4:2混合溶剤)で希釈してなるインキ組成物。
[比較例2]
厚み12μmの二軸延伸PETフィルム上に厚さ50nmのアルミニウム蒸着膜を形成した蒸着フィルムを準備した。実施例1と同じ基材のコート面側の面と、蒸着フィルムのPETフィルム側の面とを、サンドラミネート法を用いて低密度ポリエチレン(LDPE)を厚みが15μmとなるように押し出しながら貼り合わせた被加工物を得た。
<エンボス加工>
実施例1、比較例1及び比較例2の被加工物に対し、同じ押圧転写盤を用いて光沢印刷層が形成された領域に対し、エンボス加工を施した。押圧転写盤として、溝部に対応する凸部と、2つの異なる絵柄画像を構成する画素部に対応する突出部とが形成されているものを用いた。なお、突出部は、エンボス加工後の被加工物において平坦部に対する第1傾斜面の角度及び第2傾斜面の角度はそれぞれ15°、−15°となるように形成されていた。
<評価>
蛍光灯の照明下で、実施例及び比較例のエンボス加工品を光沢印刷層側または蒸着膜側から観察し、光沢感、2つの絵柄画像の明瞭性及び区別性を目視で評価した。
光沢感について、金属光沢が良好なものを3点、どちらともいえないものを2点、金属光沢が十分でないものを1点として、20人の被験者が評価し、平均点を算出した。平均点が2.5以上のものを「A」、平均点が1.5以上2.5未満のものを「B」、平均点が1.5未満のものを「C」とした。また、ギラツキを感じた被験者数をカウントした。
明瞭性について、印刷物を様々な角度で観察した際に、異なる2つの絵柄画像のエッジが明確に認識できたものを3点、どちらともいえないものを2点、絵柄画像のエッジが明確に認識できないものを1点として、20人の被験者が評価し、平均点を算出した。平均点が2.5以上のものを「A」、平均点が1.5以上2.5未満のものを「B」、平均点が1.5未満のものを「C」とした。
区別性として、印刷物を様々な角度で観察した際に、2つの絵柄画像を同時にはっきり視認できた被験者数をカウントした。
表1の結果によると、実施例1の印刷物は光沢感、明瞭性、及び区別性ともに高い良好な評価を得た。
比較例1は光沢度が低かった。また、2つの絵柄画像がぼやけて見えたり、絵柄画像が暗く見えたと感じた被験者が多く、明瞭性の評価点が低い結果となった。一方で、2つの絵柄画像が同時に見えると判定した被験者がいなかった。
比較例2について、光沢感を感じたもののギラツキを感じる被験者が多かった。また、絵柄画像の明瞭性は良好であったが、すべての被験者が2つの絵柄画像を同時にはっきり見えると評価した。
本発明の印刷物は、観察者に「落ち着いた光沢感」との印象を与えるとともに、重ね合わせた画像をはっきり区別することができる。このため、意匠性に優れた印刷物であるという点で有益である。
10:基材
20:ハードコート層
30:光沢印刷層
40:表面保護層
50:絵柄印刷層
100,200,400:印刷物
110:溝部
120,320:平坦部
130−1,330−1:第1画素部
130−2,330−2:第2画素部
132−1,332−1:第1傾斜部
132−2,332−2:第2傾斜部
310:線状凸部
312:線状凸部の頂部
330−3:第3画素部
332−3:第3傾斜部

Claims (7)

  1. 基材上の任意の箇所に形成されたハードコート層と、該ハードコート層上の任意の箇所に形成された光沢印刷層とを有する印刷物であって、
    前記ハードコート層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、前記光沢印刷層が金属鱗片を含み、
    前記光沢印刷層が形成された領域の任意の箇所に、それぞれ異なる傾斜面を有するパターンで構成された複数の絵柄画像が組み合わされて形成されており、前記複数の絵柄画像の前記傾斜面は、互いに異なる傾斜角度であり、
    前記基材の角度を変えることにより前記絵柄画像が交互に視認される印刷物。
  2. 前記光沢印刷層が形成された領域の任意の箇所に、互いに平行な複数の溝部と、該溝部の間に位置する平坦部とが設けられ、
    前記絵柄画像は、前記溝部の稜線に設けられた切り欠き形状の複数の画素部で構成され、前記画素部は前記平坦部に対して傾斜した傾斜面を有し、
    一の前記絵柄画像を構成する前記画素部の前記傾斜面は、他の前記絵柄画像を構成する前記画素部の前記傾斜面と異なる傾斜角度を有する請求項1に記載の印刷物。
  3. 一の前記絵柄画像を構成する画素部は、前記溝部の同じ側の前記稜線に設けられている請求項2に記載の印刷物。
  4. 前記光沢印刷層が形成された領域の任意の箇所に、互いに平行な複数の凸状線部と、該凸状線部の間に位置する平坦部とが設けられ、
    前記絵柄画像は、前記凸状線部の稜線から前記平坦部の側に突出し、前記平坦部に対して傾斜する傾斜面を有する複数の画素部で構成され、
    一の前記絵柄画像を構成する前記画素部の前記傾斜面は、他の前記絵柄画像を構成する前記画素部の前記傾斜面と異なる傾斜角度を有する請求項1に記載の印刷物。
  5. 前記金属鱗片が前記光沢印刷層の前記ハードコート層と反対側の表面近傍に偏在する請求項1乃至請求項4の何れかに記載の印刷物。
  6. 前記基材が紙である請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の印刷物。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の印刷物の製造方法であって、
    前記基材上の任意の箇所に、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し、該組成物を硬化させて前記ハードコート層を形成する工程と、
    前記ハードコート層上の任意の箇所に、前記金属鱗片を含むインキを塗布し、該インキを乾燥させて前記光沢印刷層を形成する工程と、
    前記光沢印刷層が形成された領域の任意の箇所に対して、前記光沢印刷層側からエンボス加工を施し、少なくとも前記光沢印刷層に前記絵柄画像を形成する工程と、
    を含む印刷物の製造方法。
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