JP2020043625A - モータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】制御軸設定制御の実施中に取得されるq軸電流成分にノイズ成分が重畳している場合であっても、位相差を、「0°」近傍の値又は「180°」近傍の値にしやすくするモータ制御装置を提供すること。【解決手段】モータ制御装置10は、推定d軸の方向に電圧ベクトルが発生するようにブラシレスモータ100に給電しているときに発生する電流ベクトルのうちのq軸電流成分を取得する取得部162と、推定d軸の方向を実d軸の方向に近づけるべくq軸電流成分に応じて推定d軸の方向を修正する修正部163と、制御軸設定制御を開始してから初めて、修正部163による推定d軸の方向の修正によってq軸電流成分の大きさが閾値未満になったと判定したときに、又は、制御軸設定制御の開始時にq軸電流成分の大きさが閾値未満であると判定したときに、推定d軸の方向を規定角変更する制御軸変更部164とを備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、突極性を有するブラシレスモータを制御するモータ制御装置に関する。
ブラシレスモータのロータ位置を推定するときには、例えば特許文献1に記載されるように、ベクトル制御の回転座標における推定d軸上に電圧ベクトルが発生するようにブラシレスモータに給電が行われる。推定d軸とは、回転座標の制御軸のうち、d軸として推定されている軸のことであり、回転座標の制御軸のうちの推定d軸と直交する軸のことを推定q軸という。このような給電が行われているときに推定q軸の方向に流れる電流成分であるq軸電流成分を基に、ロータ位置が推定される。
推定d軸上に電圧ベクトルが発生するようにブラシレスモータに給電が行われている状況下で推定d軸の方向を連続的に変化させると、図3に示すようにq軸電流成分を示す値である推定q軸高周波電流Iqhが変化する。そのため、推定d軸の方向を実d軸の方向に近づける場合、推定q軸高周波電流Iqhが正の値であるときには、推定q軸高周波電流Iqhのq軸電流成分の向きが正向きであると判断できるため、図3における第1の方向C1に制御軸(すなわち、推定d軸及び推定q軸)の向きが修正される。一方、推定q軸高周波電流Iqhが負の値であるときには、推定q軸高周波電流Iqhのq軸電流成分の向きが負向きであると判断できるため、図3において第1の方向C1の反対方向である第2の方向C2に推定d軸の向きが修正される。
特開2014−50121号公報
推定d軸上に電圧ベクトルが発生するようにブラシレスモータに給電が行われている場合、図4に示すように、取得される推定q軸高周波電流Iqhには高周波のノイズ成分が重畳されることがある。この場合、位相差Δθが「+90°」となる近傍、及び、位相差Δθが「−90°」となる近傍であるときに制御軸の向きを変化させると、ノイズ成分が重畳されているq軸電流成分の向きが、正向きになったり負向きになったりする。その結果、q軸電流成分の向きに応じた方向に制御軸の方向を修正する場合、制御軸の方向の修正方向が頻繁に切り替わってしまい、「+90°」の近傍、又は、「−90°」の近傍から位相差Δθを離間させることができないおそれがある。
上記課題を解決するためのモータ制御装置は、ブラシレスモータをベクトル制御するに際し、ベクトル制御の回転座標のd軸として推定される軸である推定d軸の方向を、回転座標の実際のd軸である実d軸の方向に近づける制御軸設定制御を実施する装置である。このモータ制御装置は、回転座標のq軸として推定される軸を推定q軸とした場合、制御軸設定制御によって推定d軸の方向に電圧ベクトルが発生するようにブラシレスモータに給電しているときに回転座標で発生する電流ベクトルのうち、推定q軸の方向の電流成分であるq軸電流成分を取得する取得部と、制御軸設定制御の実施中に推定d軸の方向を実d軸の方向に近づけるべく、取得部によって取得されるq軸電流成分に応じて推定d軸の方向を修正する修正部と、制御軸設定制御の実施中に、当該制御軸設定制御を開始してから初めて、修正部による推定d軸の向きの修正によって取得部によって取得されるq軸電流成分の大きさが閾値未満になったと判定したときに、又は、制御軸設定制御の開始時に取得部によって取得されたq軸電流成分の大きさが閾値未満であると判定したときに、推定d軸の方向を規定角変更する制御軸変更部と、を備える。
上記構成によれば、制御軸設定制御の実施中に位相差が「+90°」近傍の値、又は、位相差が「−90°」近傍の値になったときに、推定d軸の方向を規定角変更させることができる。このように推定d軸の方向を変更した上で修正部による推定d軸の方向の修正が行われる。すなわち、位相差を「+90°」から離間させた上で当該修正を継続させたり、位相差を「−90°」から離間させた上で当該修正を継続させたりすることができる。そのため、位相差が「+90°」の近傍の値、又は、位相差が「−90°」の近傍の値である状態で、制御軸の方向の修正が完了してしまいにくくなる。すなわち、制御軸設定制御の実施中に取得されるq軸電流成分にノイズ成分が重畳している場合であっても、制御軸設定制御の実施によって、位相差を「0°」近傍の値、又は、位相差を「180°」近傍の値としやすくなる。
なお、取得部によって取得されるq軸電流成分にはノイズ成分が含まれることが想定される。
そのため、閾値を、想定されるノイズ成分の大きさ以上の値に設定することが好ましい。この構成によれば、制御軸設定制御の実施中において、位相差が「+90°」近傍の値、又は、位相差が「−90°」近傍の値になったときには、取得されるq軸電流成分の大きさが閾値未満となりやすくなる。そのため、推定d軸の方向を規定角変更させることにより、位相差を「+90°」から離間させたり、位相差を「−90°」から離間させたりし、その上で修正部による推定d軸の方向の修正が行われる。そのため、位相差が「+90°」の近傍の値である状態で、又は、位相差が「−90°」の近傍の値である状態で、当該修正を完了させにくくすることができる。
また、規定角を、想定されるノイズ成分の大きさに基づいて設定することが好ましい。
例えば、取得部によって取得される、ノイズ成分を含むq軸電流成分の大きさが閾値未満となり得る位相差の領域を所定領域とした場合、所定領域は、想定されるノイズ成分の大きさが大きいほど広くなりやすい。そして、上記構成によれば、所定領域が広いほど規定角を大きくすることができる。その結果、制御軸変更部が実行する処理によって、位相差を所定領域の外の値とすることが可能となる。そして、当該処理の実行後では、修正部による推定d軸の方向の修正を実行させることによって、「0°」又は「180°」に位相差を接近させることができる。
上記モータ制御装置において、制御軸変更部は、q軸電流成分の大きさが閾値未満であると判定したときの制御軸設定制御を開始してからの経過時間が規定時間未満であることを条件に、推定d軸の方向を規定角変更することが好ましい。この場合、規定時間は、例えば、制御軸設定制御の開始から終了までの時間よりも短いようにしてもよい。
q軸電流成分の大きさが閾値未満であると判定したときの制御軸設定制御を開始してからの経過時間がある程度長い状態で推定d軸の方向を規定角変更した場合、制御軸設定制御の終了までに残された時間が短いことがある。その結果、推定d軸の方向を規定角変更した後に修正部によって推定d軸の方向を修正しても、位相差を「0°」近傍の値又は「180°」近傍の値に収束できないおそれがある。この点、上記構成によれば、q軸電流成分の大きさが閾値未満であると判定したときの制御軸設定制御を開始してからの経過時間が規定時間未満であることを条件に、推定d軸の方向を規定角変更する処理が実行される。この場合、推定d軸の方向を規定角変更する処理を実行した後でも、制御軸設定制御の終了までに残された時間が短くない。そのため、修正部による推定d軸の方向の修正によって、位相差を「0°」近傍の値又は「180°」近傍の値に収束させることができる。
実施形態のモータ制御装置と、同モータ制御装置によって制御されるブラシレスモータとを示す概略構成図。 実d軸と推定d軸とがずれている状況下で推定d軸に電圧ベクトルを発生させた際に、同電圧ベクトルと電流ベクトルとがずれている様子を示すグラフ。 ベクトル制御の回転座標における制御軸を連続的に変化させた際における推定q軸高周波電流の推移を示すグラフ。 ノイズ成分が重畳した推定q軸高周波電流の推移を示すグラフ。 実d軸の方向に推定d軸の方向を接近させる際に実行される処理ルーチンを説明するフローチャート。 同処理ルーチンの実行に伴う位相差の推移を示すタイミングチャート。 同処理ルーチンの実行に伴う位相差の推移を示す作用図。 推定ロータ速度を算出するための演算回路を示すブロック図。 変更例において、実d軸の方向に推定d軸の方向を接近させる際に実行される処理ルーチンの一部を説明するフローチャート。
以下、モータ制御装置の一実施形態を図1〜図7に従って説明する。
図1には、本実施形態のモータ制御装置10と、モータ制御装置10によって制御されるブラシレスモータ100とが図示されている。ブラシレスモータ100は、車載のブレーキ装置におけるブレーキ液の吐出用の動力源として用いられる。ブラシレスモータ100は、永久磁石埋込型同期モータである。ブラシレスモータ100は、複数の相(U相、V相及びW相)のコイル101,102,103と、突極性を有するロータ105とを備えている。ロータ105としては、例えば、N極とS極とが一極ずつ着磁されている2極ロータを挙げることができる。
モータ制御装置10は、ベクトル制御によってブラシレスモータ100を駆動させる。このようなモータ制御装置10は、指令電流算出部11、指令電圧算出部12、2相/3相変換部13、インバータ14、3相/2相変換部15及びロータ位置推定部16を有している。
指令電流算出部11は、ブラシレスモータ100に対する要求トルクTR*に基づき、d軸指令電流Id*及びq軸指令電流Iq*を算出する。d軸指令電流Id*は、ベクトル制御の回転座標におけるd軸の方向の電流成分の指令値である。q軸指令電流Iq*は、回転座標におけるq軸の方向の電流成分の指令値である。d軸及びq軸は、回転座標上で互いに直交している。
指令電圧算出部12は、d軸指令電流Id*と、d軸電流Idとに基づいたフィードバック制御によって、d軸指令電圧Vd*を算出する。d軸電流Idとは、ブラシレスモータ100の各コイル101〜103への給電によって回転座標上で発生した電流ベクトルのうちの推定d軸の方向の電流成分を示す値である。また、指令電圧算出部12は、q軸指令電流Iq*と、q軸電流Iqとに基づいたフィードバック制御によって、q軸指令電圧Vq*を算出する。q軸電流Iqとは、各コイル101〜103への給電によって回転座標上で発生した電流ベクトルのうちの推定q軸の方向の電流成分を示す値である。
なお、推定d軸とは、回転座標のd軸と推定される軸のことである。回転座標の実際のd軸のことを実d軸という。また、回転座標の実際のq軸のことを実q軸といい、回転座標のq軸と推定される軸のことを推定q軸という。
2相/3相変換部13は、ロータ105の位置(すなわち、回転角)であるロータ回転角θを基に、d軸指令電圧Vd*及びq軸指令電圧Vq*を、U相指令電圧VU*と、V相指令電圧VV*と、W相指令電圧VW*とに変換する。U相指令電圧VU*は、U相のコイル101に印加する電圧の指令値である。V相指令電圧VV*は、V相のコイル102に印加する電圧の指令値である。W相指令電圧VW*は、W相のコイル103に印加する電圧の指令値である。
インバータ14は、複数のスイッチング素子を有している。インバータ14は、2相/3相変換部13から入力されたU相指令電圧VU*と、スイッチング素子のオン/オフ動作によってU相信号を生成する。また、インバータ14は、入力されたV相指令電圧VV*と、スイッチング素子のオン/オフ動作によってV相信号を生成する。また、インバータ14は、入力されたW相指令電圧VW*と、スイッチング素子のオン/オフ動作によってW相信号を生成する。すると、U相信号がブラシレスモータ100のU相のコイル101に入力され、V相信号がV相のコイル102に入力され、W相信号がW相のコイル103に入力される。
3相/2相変換部15には、ブラシレスモータ100のU相のコイル101に流れた電流であるU相電流IUが入力され、V相のコイル102に流れた電流であるV相電流IVが入力され、W相のコイル103に流れた電流であるW相電流IWが入力される。そして、3相/2相変換部15は、ロータ回転角θを基に、U相電流IU、V相電流IV及びW相電流IWを、d軸の方向の電流成分であるd軸電流Id及びq軸の方向の電流成分であるq軸電流Iqに変換する。
ロータ位置推定部16は、ロータ回転角θを推定する。こうしたロータ位置推定部16は、推定d軸の方向を実d軸の方向に近づける制御軸設定制御の実施を通じ、実d軸の向きと推定d軸の向きとの位相差Δθをほぼ「0°」又はほぼ「180°」とする。ここでいう位相差Δθとは、推定d軸の向きから実d軸の向きを引いた値である。こうしたロータ位置推定部16は、制御軸設定制御を実施するための機能部として、交流電圧発生部161、取得部162、修正部163及び制御軸変更部164を有している。
交流電圧発生部161は、実d軸の方向に推定d軸の方向を接近させる際に、高周波で電圧を振動させる外乱電圧信号Vdh*を生成して第1の加算器17に出力する外乱出力処理を実行する。外乱出力処理が交流電圧発生部161によって実行されている場合、指令電圧算出部12によって算出されたd軸指令電圧Vd*に外乱電圧信号Vdh*が加算され、加算後のd軸指令電圧Vd*が2相/3相変換部13に入力される。
取得部162は、制御軸設定制御を実施しているときに回転座標上で発生する電流ベクトルのうち、推定q軸の方向の電流成分であるq軸電流成分を取得する。本実施形態では、取得部162は、当該q軸電流成分を数値化した推定q軸高周波電流Iqhを取得する。すなわち、取得部162は、3相/2相変換部15から入力されたq軸電流Iqをバンドパスフィルタに通すことにより、q軸電流Iqの高周波成分である推定q軸高周波電流Iqhを取得する。
修正部163は、推定d軸の方向を実d軸の方向に近づけるべく、取得部162によって取得される推定q軸高周波電流Iqhに応じて推定d軸の方向を修正する修正処理を実施する。
なお、ブラシレスモータ100のロータ105が突極性を有しているため、q軸の方向のインダクタンスがd軸の方向のインダクタンスよりも大きいことがある。この場合、推定d軸の方向と実d軸の方向とが異なっていると、推定d軸の方向に電圧ベクトルを発生させたときに電圧ベクトルに対して実d軸側に偏角した電流ベクトルが発生する。
詳しくは、図2に示すように、推定d軸が実d軸に対して偏角する場合、推定d軸の方向に電圧ベクトルが発生するようにブラシレスモータ100に給電が行われると、回転座標上では、推定d軸に対して実d軸側に偏角して電流ベクトルが発生する。このため、推定d軸が実d軸に対して偏角している場合、推定q軸の方向の電流成分である推定q軸高周波電流Iqhが生じる。推定q軸高周波電流Iqhは、推定q軸の方向に発生する電流ベクトルである。すなわち、推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が、推定q軸の方向の電流成分の大きさに相当する。また、推定q軸高周波電流Iqhの正負が、推定q軸の方向の電流成分の向き、すなわち正向き又は負向きを表している。
一方、推定d軸の方向が実d軸の方向と一致する場合、推定d軸の方向に電圧ベクトルが発生するようにブラシレスモータ100に給電が行われると、回転座標上で発生する電流ベクトルが推定d軸に対して偏角しない。よって、推定d軸が実d軸に対して傾いていない場合、推定q軸の方向に電流が流れない。すなわち、推定q軸高周波電流Iqhの大きさが「0」となる。
図3には、推定d軸上に電圧ベクトルを発生させつつ、推定d軸と実d軸との位相差Δθを連続的に変化させた場合における推定q軸高周波電流Iqhの推移が図示されている。図3に示すように、位相差Δθの変化に応じて、推定q軸高周波電流Iqhの正負、すなわち推定q軸の方向の電流成分の向きが変化したり、推定q軸高周波電流Iqhの絶対値、すなわち推定q軸の方向の電流成分の大きさが変化したりする。
図3を参照し、修正処理の一例について説明する。外乱出力処理が実行されると、推定d軸上には、外乱電圧信号Vdh*に基づいた電圧ベクトルが発生する。すると、回転座標には、電流ベクトルが発生する。この電流ベクトルのうちの推定q軸の方向の電流成分が、推定q軸高周波電流Iqhである。
図3に示すように、修正部163は、修正処理では、取得部162によって取得される推定q軸高周波電流Iqhが正の値である場合、推定q軸高周波電流Iqhの推定q軸の方向の電流成分の向きが正向きであるため、推定d軸を進角させる方向である図中の第1の方向C1に推定d軸の方向を修正する。一方、修正部163は、修正処理では、取得部162によって取得される推定q軸高周波電流Iqhが負の値である場合、推定q軸高周波電流Iqhの推定q軸の方向の電流成分の向きが負向きであるため、推定d軸を遅角させる方向である図中の第2の方向C2に推定d軸の方向を修正する。すなわち、修正部163は、推定q軸高周波電流Iqhの推定q軸の方向の電流成分の向きに応じた方向に推定d軸の向きを修正する。そして、取得部162によって取得される推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が所定の閾値以下になるなどして終了条件が成立すると、修正部163は、修正処理を終了し、外乱出力処理の停止を交流電圧発生部161に指示する。
図1に戻り、制御軸変更部164は、規定の実行条件が成立しているとの判定をなすときに、推定d軸の向きを規定角θA変更する変更処理を実行する。制御軸変更部164は、以下に示す2つ条件のうち、何れか一方が成立しているときに、規定の実行条件が成立しているとの判定をなす。
(条件1)制御軸修正制御を開始してから初めて、修正部163による修正処理の実行に伴う推定d軸の向きの修正によって取得部162によって取得される推定q軸高周波電流Iqhの大きさが閾値IqhTh未満になったと判定されること。
(条件2)制御軸設定制御の開始時に取得部162によって取得される推定q軸高周波電流Iqhの大きさが閾値IqhTh未満であると判定されること。
図4に示すように、取得部162によって取得される推定q軸高周波電流Iqhには、高周波のノイズ成分Iqnが重畳されることがある。このように推定q軸高周波電流Iqhにノイズ成分Iqnが重畳される場合、推定d軸の方向を連続的に変化させると、位相差Δθが「+90°」の近傍の領域、及び、位相差Δθが「−90°」の近傍の領域で推定q軸高周波電流Iqhが「0」を挟んで振動することとなる。このように位相差Δθが「+90°」の近傍で推定q軸高周波電流Iqhが「0」を挟んで振動する位相差Δθの領域、及び、位相差Δθが「−90°」の近傍で推定q軸高周波電流Iqhが「0」を挟んで振動する位相差Δθの領域のことを、図6に示す「所定領域RA」という。
推定q軸高周波電流Iqhに重畳されるノイズ成分Iqnの大きさ、及び、所定領域RAの広さは、実験やシミュレーションなどによって予め予測することができる。所定領域RAの広さとは、所定領域RAの下限となる位相差Δθと、所定領域RAの上限となる位相差Δθとの差分である。そして、上記の閾値IqhTh及び規定角θAは、ノイズ成分Iqnの大きさに基づいてそれぞれ設定されている。
閾値IqhThは、想定されるノイズ成分Iqnの大きさ以上の値に設定されている。具体的には、所定領域RA内で推移するノイズ成分Iqnを含む推定q軸高周波電流Iqhのうち、絶対値が最大となる値のことを最大電流Iqhmaxとした場合、閾値IqhThは、最大電流Iqhmaxの絶対値よりも大きい値に設定されている。
規定角θAは、想定される所定領域RAの広さの半分の値よりも大きい値に設定されている。そのため、上記の変更処理を実行することにより、推定q軸高周波電流Iqhの絶対値、すなわち推定q軸の方向の電流成分の大きさを閾値IqhThよりも大きい値とすることができる。ちなみに、変更処理は、位相差Δθが「0°」近傍の値である場合、位相差Δθが「180°」近傍の値である場合、位相差Δθが「+90°」近傍の値である場合、及び、位相差Δθが「−90°」近傍の値である場合に実行され得る。そして、何れの場合であっても変更処理の実行によって、位相差Δθが「0°」近傍の値になったり、位相差Δθが「180°」近傍の値になったり、位相差Δθが「+90°」近傍の値になったり、位相差Δθが「−90°」近傍の値になったりしないように、規定角θAが設定されている。
例えば、規定角θAは、「30°」以上の値であって且つ「60°」未満の値に設定されている。規定角θAをこのような範囲の値に設定することにより、変更処理の実行によって位相差Δθが「+90°」近傍の値になったり、位相差Δθが「−90°」近傍の値になったりすることはなくなる。なお、本実施形態では、規定角θAは「45°」に設定されているものとする。
次に、図5を参照し、制御軸設定制御の実施を実現するためにロータ位置推定部16によって実行される処理ルーチンについて説明する。なお、本処理ルーチンの実行は、ブラシレスモータ100の駆動の開始時に開始される。そして、本処理ルーチンの実行が開始されてからの経過時間が位置推定時間TMTh1に達すると、本処理ルーチンの実行が終了される。すなわち、位置推定時間TMTh1が、制御軸設定制御の開始から終了までの時間に相当する。
本処理ルーチンにおいて、はじめのステップS11では、修正部163によって修正処理が開始される。すなわち、修正処理の開始に先立って、修正部163は、外乱出力処理の実行を交流電圧発生部161に指示する。この指示によって外乱出力処理の実行が開始され、外乱電圧信号Vdh*が第1の加算器17に入力されるようになると、修正部163は、修正処理を開始する。なお、修正部163は、例えば、修正処理の開始時における推定d軸の向きを、ブラシレスモータ100の前回の駆動の終了時点での推定d軸の向きと同じとする。
そして、次のステップS12において、修正処理の実行中に取得部162によって取得される推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満であるか否かの判定が行われる。すなわち、修正処理の実行中における推定d軸の方向の電流成分の大きさが閾値IqhTh未満であるか否かの判定が行われる。具体的には、修正処理の実行中において推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満である状態の継続時間が判定継続時間TMTh2に達した場合に、推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満になったとの判定がなされる。なお、判定継続時間TMTh2は、位置推定時間TMTh1よりも短い時間に設定されている。例えば、判定継続時間TMTh2は、位置推定時間TMTh1の半分の時間、又は、位置推定時間TMTh1の半分の時間よりも短い時間に設定されている。
そして、推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満であるとの判定がなされている場合では、規定の実行条件が成立していると判断する。つまり、この場合では、位相差Δθが、「0°」近傍の値、「180°」近傍の値、「+90°」近傍の値及び「−90°」近傍の値の何れかの値になっている。
そのため、推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満になったとの判定がなされていない場合(S12:NO)、規定の実行条件が成立していないため、ステップS12の判定が繰り返される。すなわち、修正処理の実行による推定d軸の方向の修正が継続される。一方、推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満になったとの判定がなされている場合(S12:YES)、規定の実行条件が成立しているため、処理が次のステップS121に移行される。ステップS121において、今回の修正処理の開始時点からの経過時間が規定時間TMTh3以上であるか否かの判定が行われる。すなわち、推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満であると判定したときの制御軸設定制御の開始からの経過時間が規定時間TMTh3以上であるか否かの判定が行われる。規定時間TMTh3は、制御軸設定制御の開始から推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満になったと判定できるまでに要した時間が長かったか否かの判断基準として設定されている。すなわち、規定時間TMTh3は、位置推定時間TMTh1よりも短い時間であればよく、判定継続時間TMTh2と等しくてもよいし、判定継続時間TMTh2よりも長くてもよい。
そのため、制御軸設定制御の開始からの経過時間が規定時間TMTh3以上である場合には、当該経過時間が長いとの判定がなされる。つまり、制御軸設定制御を実施できる残り時間が短いとの判定がなされる。一方、制御軸設定制御の開始からの経過時間が規定時間TMTh3未満である場合には、当該経過時間が長いとの判定がなされない。つまり、制御軸設定制御を実施できる残り時間が短いとの判定がなされない。
そして、制御軸設定制御の開始からの経過時間が規定時間TMTh3以上である場合(S121:YES)、処理が後述するステップS16に移行される。一方、制御軸設定制御の開始からの経過時間が規定時間TMTh3未満である場合(S121:NO)、処理が次のステップS13に移行される。ステップS13において、修正処理の実行が中断される。つまり、修正部163による制御軸の方向、すなわち推定d軸の方向及び推定q軸の方向の修正が中断される。この場合、交流電圧発生部161による外乱出力処理の実行も中断させるようにしてもよい。
続いて、ステップS14では、制御軸変更部164によって変更処理が実行される。そして、変更処理の実行によって、推定d軸の向きが、修正処理の中断直前における向きから規定角θA変更されると、処理が次のステップS15に移行される。ステップS15において、修正部163による修正処理の実行が再開される。なお、修正処理の中断時に外乱出力処理の実行も中断させていた場合、修正部163は、修正処理の再開に先立って外乱出力処理の再開を交流電圧発生部161に指示する。そして、外乱電圧信号Vdh*が第1の加算器17に入力されるようになると、修正部163は、修正処理を再開する。
続いて、ステップS16では、本処理ルーチンの実行が開始されてからの経過時間が予め設定された位置推定時間TMTh1に達したか否かの判定が行われる。この経過時間は、制御軸設定制御の実施の継続時間でもある。位置推定時間TMTh1は、位相差Δθを「0°」近傍の値又は「180°」近傍の値に収束させるのに十分な長さに設定されている。そのため、経過時間が位置推定時間TMTh1に達している場合、位相差Δθが「0°」近傍の値又は「180°」近傍の値になっており、上記の終了条件が成立しているとの判断がなされる。そして、経過時間が位置推定時間TMTh1に達していない場合(S16:NO)、終了条件が未だ成立していないため、ステップS16の判定が繰り返される。すなわち、修正処理が未だ実行される。
一方、経過時間が位置推定時間TMTh1に達している場合(S16:YES)、終了条件が成立しているため、処理が次のステップS17に移行される。ステップS17において、修正処理が終了される。すなわち、修正部163は、制御軸の方向の修正を終了し、且つ、外乱出力処理の終了を交流電圧発生部161に指示する。そして、外乱電圧信号Vdh*が第1の加算器17に入力されなくなると、本処理ルーチンが終了される。
次に、図6及び図7を参照し、本実施形態の作用及び効果について説明する。
ブラシレスモータ100の駆動開始が指示されると、修正処理が実行される。そして、推定q軸高周波電流Iqhの絶対値、すなわち推定q軸の方向の電流成分の大きさが閾値IqhTh未満になったとの判定がなされると、規定の実行条件が成立したため、修正処理の実行が中断される。このように修正処理の実行が中断されている場合、位相差Δθが所定領域RA内の値になっている可能性がある。図6に示す例は、位相差Δθが、「−90°」を含む所定領域RA内の値である場合の例であり、タイミングt11で推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満になったと判断される。すなわち、規定の実行条件が成立したと判断される。
また、図6に示す例では、タイミングt12が、制御軸設定制御の開始からの経過時間が規定時間TMTh3に達する時点である。本例では、推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満であるとの判定がなされた後に、制御軸設定制御の開始からの経過時間が規定時間TMTh3に達する。
そのため、タイミングt11で修正処理の実行が中断され、変更処理が実行される。すると、推定d軸の向きが規定角θAだけ大きくなる。その結果、図6に示すように位相差Δθを所定領域RA外の値とすることができる。図6に示す例では、変更処理の実行によって、位相差Δθが「−90°」近傍の値である状態から、位相差Δθが「0°」と「−90°」との間の値である状態に移行する。このように変更処理の実行によって位相差Δθが大きく変わると、推定d軸の向きが大きく変わるため、各コイル101〜103に流れる電流IU,IV,IWが変化する。
変更処理の実行によって位相差Δθが変更されると、修正処理が再開される。すると、修正処理の実行によって、推定q軸高周波電流Iqhの正負、すなわち推定q軸の方向の電流成分の向きに応じた方向に推定d軸の方向が修正される。その結果、修正処理の実行によって位相差Δθを「0°」又は「180°」に接近させることができる。
変更処理の開始前では、図7に白抜きの丸で示すように位相差Δθが「−90°」近傍の値である場合、変更処理が実行されると、図7に実線の矢印で示すように位相差Δθが変更される。その結果、位相差Δθは、図7に黒塗りの丸で示すように所定領域RA外の値となる。その後、修正処理が再開されると、図7に破線の矢印で示すように位相差Δθを「0°」に接近させる方向に推定d軸の方向が修正される。図6に示したタイミングt13は修正処理の開始から位置推定時間TMTh1が経過した時刻である。そして、タイミングt13では、修正処理の実行が終了される。すなわち、推定d軸の方向の修正が完了される。したがって、位相差Δθを「0°」近傍の値に収束させることができる。
また、変更処理の開始前では、図7に白抜きの四角で示すように位相差Δθが「+90°」近傍の値であることがある。この場合、変更処理が実行されると、図7に実線の矢印で示すように位相差Δθが変更される。その結果、位相差Δθが「+90°」近傍の値である状態から、図7に黒塗りの四角で示すように位相差Δθが「+90°」と「+180°」との間の値である状態に移行する。すなわち、位相差Δθが所定領域RA外の値となる。その後、修正処理が再開されると、図7に破線の矢印で示すように位相差Δθを「180°」に接近させる方向に推定d軸の方向が修正される。したがって、位相差Δθを「180°」近傍の値に収束させることができる。
すなわち、本実施形態では、位相差Δθが「+90°」の近傍の値、又は、位相差Δθが「−90°」の近傍の値である状態で、推定d軸の方向の修正が完了してしまうことを抑制できる。したがって、推定q軸高周波電流Iqhにノイズ成分Iqnが重畳している場合であっても、制御軸設定制御の実施によって、位相差Δθを「0°」近傍の値、又は、位相差Δθを「180°」近傍の値とすることができる。
ところで、ブラシレスモータ100の駆動開始の指示によって修正処理が開始されると、位相差Δθが「0°」近傍の値になることがある。すなわち、変更処理の開始前では図7に白抜きの三角で示すように位相差Δθが「0°」近傍の値である場合、変更処理が実行されると、図7に実線の矢印で示すように位相差Δθが変更される。その結果、位相差Δθは、図7に黒塗りの三角で示すように「0°」から一旦離間される。ただし、この場合であっても、位相差Δθが所定領域RA内の値となることはない。その後、修正処理が再開されると、図7に破線の矢印で示すように位相差Δθを「0°」に接近させる方向に推定d軸の方向が修正される。その結果、位相差Δθを「0°」近傍の値に収束させることができる。
また、変更処理の開始前では、位相差Δθが「180°」近傍の値であることがある。この場合、変更処理の実行によって位相差Δθが変更されると、位相差Δθは「180°」から一旦離間される。ただし、この場合であっても、位相差Δθが所定領域RA内の値となることはない。その後、修正処理が再開されると、位相差Δθを「180°」に接近させる方向に推定d軸の方向が修正される。その結果、位相差Δθを「180°」近傍の値に収束させることができる。
なお、本実施形態では、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(1)本実施形態では、制御軸設定制御の開始からの経過時間が規定時間TMTh3に達する時点以降に、推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満であるとの判定がなされたときに変更処理を実行した場合、変更処理の実行後に修正処理を再開しても位相差Δθを「0°」又は「180°」近傍の値に収束させることができないことがある。これは、修正処理が再開されてから、制御軸設定制御が終了されるまでの時間が短いためである。この点、本実施形態では、制御軸設定制御の開始からの経過時間が規定時間TMTh3に達する時点以降に、推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満であるとの判定がなされた場合には、変更処理を実行せず、修正処理の実行を継続するようにしている。これにより、制御軸設定処理の実施によって、位相差Δθを「0°」近傍の値又は「180°」近傍の値に収束させやすくなる。
(2)本実施形態では、推定q軸高周波電流Iqhに重畳されるノイズ成分Iqnの大きさの想定値を基に、閾値IqhTh及び規定角θAがそれぞれ設定されている。そのため、位相差Δθが所定領域RA内の値であるときに変更処理を実行させると、位相差Δθを所定領域RA外の値とすることができる。
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・図5に示す一連の処理において、ステップS121の判定処理を省略してもよい。この場合、ステップS121の判定処理を省略しない場合と比較し、位置推定時間TMTh1を長くすることが好ましい。
・規定角θAを、「30°」以上の値であって且つ「60°」未満の値であれば、「45°」以外の任意の値(例えば、55°)に設定してもよい。
・変更処理の実行によって位相差Δθが「+90°」近傍の値になったり、位相差Δθが「−90°」近傍の値になったりすることがないのであれば、規定角θAを、「30°」以上の値であって且つ「60°」未満の範囲外の値としてもよい。例えば、「−30°」以上の値であって且つ「−60°」未満の範囲内の任意の値を規定角θAとしてもよい。
・修正処理は、実d軸の方向に推定d軸の方向を接近させることができるのであれば、上記実施形態で説明した内容とは異なる内容の処理であってもよい。
・上記実施形態では、変更処理では、図6に示したように位相差Δθを一気に規定角θA変更するようにしている。しかし、変更処理の実行によって位相差Δθを規定角θA変更することができるのであれば、位相差Δθを複数段(例えば、2段、3段)に分けて目標位相角に向けて変更するようにしてもよい。ここでいう目標位相角とは、変更処理の開始前の位相差Δθに規定角θAを加算した値のことである。
・変更処理の実行後に再開された修正処理を、位相差Δθが「0°」近傍の値又は「180°」近傍の値に収束していると判断できるときには、上記の経過時間が位置推定時間TMTh1に達する前に終了するようにしてもよい。
・図5に示す一連の処理において、ステップS12の判定が「YES」になることを、規定の実行条件が成立したというものとする。規定の実行条件が成立したか否かの判定を、上記実施形態で説明した方法以外の他の方法で行ってもよい。例えば、ロータ105の回転角の推定値である推定ロータ位置θdcの変動量が閾値θdcTh未満になったと判定できた場合に、規定の実行条件が成立していると判定するようにしてもよい。
例えば、推定ロータ位置θdcは、図8に示すように算出することができる。すなわち、推定ロータ位置θdcは、第1の演算器31によって推定q軸高周波電流Iqhを比例積分演算することで推定ロータ速度ωdcを求め、第2の演算器32によって推定ロータ速度ωdcを更に積分することで求めることができる。
推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満である状態が継続されている場合、推定ロータ位置θdcはあまり変化しない。そのため、推定q軸高周波電流Iqhの絶対値が閾値IqhTh未満である状態の継続時間が判定継続時間TMTh2以上であることと、推定ロータ位置θdcの変動量が閾値θdcTh未満であることとは同義であるということができる。そのため、推定ロータ位置θdcの変動量が閾値θdcTh未満になったときに規定の実行条件が成立したと判定し、その後の処理を実行することも、本発明の解釈に含まれる。
具体的に、図9を参照し、推定ロータ位置θdcの変動量を用いて制御軸設定制御を実施する際の処理ルーチンについて説明する。この場合の処理ルーチンと図5における処理ルーチンとの相違は、ステップS12の判定処理の代わりにステップS12Aの処理及びステップS12Bの処理を実行することである。すなわち、ステップS121以降の各処理は同じである。
図9に示すように、ステップS11において修正処理が開始されると、次のステップS12Aでは、修正処理の実行中に取得部162によって取得される推定q軸高周波電流Iqhを基に、推定ロータ位置θdcが算出される。そして、ステップS12Bにおいて、推定ロータ位置θdcの変動量が閾値θdcTh未満になったか否かの判定が行われる。具体的には、推定ロータ位置θdcの変動量が閾値θdcTh未満である状態の継続時間が判定継続時間TMTh2に達した場合に、推定ロータ位置θdcの変動量が閾値θdcTh未満になったとの判定がなされる。推定ロータ位置θdcの変動量は、例えば、初回に取得した推定ロータ位置θdcと初回以降に取得した推定ロータ位置θdcとの差分から算出することができる。
そして、推定ロータ位置θdcの変動量が閾値θdcTh未満になったとの判定がなされていない場合(S12B:NO)、処理が前述したステップS12Aに移行される。一方、推定ロータ位置θdcの変動量が閾値θdcTh未満になったとの判定がなされている場合(S12B:YES)、規定の実行条件が成立したと判定できる。そのため、処理が次のステップS121に移行される。
なお、規定の実行条件が成立しているか否かの判定中、すなわちステップS12Aの処理及びステップS12Bの処理が実行されているときに、推定ロータ位置θdcの変動量が1度でも閾値θdcTh以上であると判定された場合には、規定の実行条件が成立しないと判定するようにしてもよい。このように規定の実行条件が成立しないと判定された場合には、処理がステップS16に移行される。
・モータ制御装置10は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
・ブラシレスモータ100に適用されるロータ105は、2極ロータではなく、4極ロータであってもよい。
・モータ制御装置10が適用されるブラシレスモータは、車載のブレーキ装置とは別のアクチュエータの動力源であってもよい。
10…モータ制御装置、16…ロータ位置推定部、162…取得部、163…修正部、164…制御軸変更部、100…ブラシレスモータ、101〜103…コイル。

Claims (4)

  1. ブラシレスモータをベクトル制御するに際し、前記ベクトル制御の回転座標のd軸として推定される軸である推定d軸の方向を、前記回転座標の実際のd軸である実d軸の方向に近づける制御軸設定制御を実施するモータ制御装置において、
    前記回転座標のq軸として推定される軸を推定q軸とした場合、前記制御軸設定制御によって前記推定d軸の方向に電圧ベクトルが発生するように前記ブラシレスモータに給電しているときに前記回転座標で発生する電流ベクトルのうち、前記推定q軸の方向の電流成分であるq軸電流成分を取得する取得部と、
    前記制御軸設定制御の実施中に前記推定d軸の方向を前記実d軸の方向に近づけるべく、前記取得部によって取得される前記q軸電流成分に応じて前記推定d軸の方向を修正する修正部と、
    前記制御軸設定制御の実施中に、当該制御軸設定制御を開始してから初めて、前記修正部による前記推定d軸の方向の修正によって前記取得部によって取得される前記q軸電流成分の大きさが閾値未満になったと判定したときに、又は、前記制御軸設定制御の開始時に前記取得部によって取得された前記q軸電流成分の大きさが前記閾値未満であると判定したときに、前記推定d軸の方向を規定角変更する制御軸変更部と、を備える
    ことを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記取得部によって取得される前記q軸電流成分にはノイズ成分が含まれることが想定され、
    前記閾値は、想定される前記ノイズ成分の大きさ以上の値に設定されている
    請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記取得部によって取得される前記q軸電流成分にはノイズ成分が含まれることが想定され、
    前記規定角は、想定される前記ノイズ成分の大きさに基づいて設定されている
    請求項1又は請求項2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記制御軸変更部は、前記q軸電流成分の大きさが前記閾値未満であると判定したときの前記制御軸設定制御を開始してからの経過時間が規定時間未満であることを条件に、前記推定d軸の方向を前記規定角変更するようになっており、
    前記規定時間は、前記制御軸設定制御の開始から終了までの時間よりも短い
    請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載のモータ制御装置。
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