以下、図面等を参照して、本開示のパネル容器および運搬用台車の一例について説明する。ただし、本開示のパネル容器および運搬用台車は、この例や後述する実施形態に限定されない。
なお、以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略する。本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
また、以下の実施形態において、X方向とは、運搬用台車が配置される床面に平行な面内の、運搬用台車の長手方向に平行な方向であり、Y方向とは、運搬用台車が配置される床面に平行な面内の、X方向に直交する方向である。Z方向とはX方向およびY方向に直交する方向、すなわち鉛直方向である。
運搬用台車にパネル容器を組み立てたときに、パネル容器に通常、積載物を出し入れするための、Z方向に平行な主面を有するパネルが配置される側をX方向における+X方向、当該パネルと対向するパネルが配置される側を−X方向とも称し、Z方向における床面側を−Z方向、−Z方向の反対側を+Z方向とも称する。また、Z方向を上下方向、+Z方向を上方側、−Z方向を下方側と称することもある。+X方向側から向かって、床面側に−Z方向を見る向きにおける、右手側をY方向における+Y方向、+Y方向と反対側を−Y方向とも称する。また、XY平面に沿った向きを水平方向、横方向または左右方向等と称することもある。
運搬用台車またはパネル容器において、+X方向から見たX方向に垂直な平面を正面、−X方向から見たX方向に垂直な平面を背面とも称する。+Y方向から見たY方向に垂直な平面を側面または右面、−Y方向から見たY方向に垂直な平面を側面または左面とも称する。ただし正面および背面を側面と称する場合もある。+Z方向から見たZ方向に垂直な平面を天面、−Z方向から見たZ方向に垂直な平面を底面とも称する。
パネル容器を構成する各パネルを構成する6つの面のうち、最も広い互いに反対側を向く一対の面を主面とする。パネル容器が組み立てられた状態における断熱空間側の各パネルの主面を内表面とし、断熱空間とは反対側の各パネルの主面を外表面とする。また、各パネルにおいて、パネルの主面以外の面を端面とする。
1.第1実施形態
(a)運搬用台車の構成
本開示の第1実施形態の運搬用台車の構成について、図1〜図3に基づき説明する。図1は、本開示の第1実施形態の運搬用台車10であって、台車本体50の床面の上方側にパネル容器30が搭載され、当該パネル容器30の正面パネル12が開けられた状態となっている斜視図である。図2は、第1実施形態の運搬用台車10の斜視図であって、図1に対して、パネル容器30の正面パネル12が閉じた状態となっている点のみが異なる図である。図3は台車本体50の斜視図である。
図1〜図3に示すとおり、第1実施形態の運搬用台車10は、台車本体50と、台車本体50の床面の上方側に搭載されたパネル容器30とを備えている。パネル容器30は、台車本体50に対して搭載されているが、パネル容器30を使用しない場合には、当該パネル容器30ごと台車本体50から降ろすこともできる。パネル容器30は、台車本体50に単に載せただけでもよく、運搬用台車10の運搬時の振動等によりパネル容器30が台車本体50からずり落ちることを防止するために、面ファスナー等の着脱可能な係合手段によってパネル容器30と台車本体50とを係合してもよい。また、パネル容器30は、台車本体50に対して着脱不可能に固着されていてもよい。
運搬用台車10は、例えば店舗、工場、物流過程等において、保冷または保温が必要な積載物を保管したり搬送したりする際に使用される。このような運搬用台車10は、積載物を収納することが可能な収容空間20がパネル容器30を構成する6つのパネル11〜16によって取り囲まれ、断熱空間を形成していることにより、運搬用台車10の内部の温度変化が極力抑制されるように構成されている。一方、運搬用台車10を使用しない場合には、例えばパネル容器30を台車本体50から取り外した上で、他の同一の運搬用台車10の台車本体50とネスティングしたり、台車本体50自体を折り畳むことにより、複数の運搬用台車10の台車本体50どうしをコンパクトに収納しておくことが可能である。
なお、本開示では説明の便宜上、運搬用台車の台車本体として、一対の側枠、連結部材、および6個の車輪を有するいわゆる6輪カートまたは6輪台車と称されるものを例示しているが、本開示の運搬用台車はこれに限るものではなく、パネル容器が搭載できるスペースを有する台車であれば、例えば車輪が4個のカートや一般的な手押しタイプの台車、または、左右の一対の側枠に加えて背面にも枠を有するいわゆるカゴ台車、もしくは、JIS Z0610等で規定されるロールボックスパレット等についても適用可能である。
運搬用台車10のパネル容器30の内部には、上下方向の略中間の高さにおいて、左右方向に延びる棚板91が配置され、収容空間20が上下に仕切られている。棚板91は、その両端がパネル容器30の内部の上下方向に延びる一対の梯子状の棚板保持具81によって保持されている。当該棚板保持具81は、その上端および下端をパネル容器30に圧接することにより固定されているが、詳細は後述する。これにより、パネル容器30の内部には、床面側に搭載した荷物N2とは別に、これとは上下方向に離隔した配置である棚板91の上に荷物N1を搭載することができる。
また、パネル容器30の内部には、パネルの内表面に沿って蓄熱材収納部70を設けている。蓄熱材収納部70は、内部に所定温度に冷却または加温された蓄熱材が入れられており、収納空間20の空気を所定温度に冷却また加温する機能を有する。蓄熱材収納部70は、収納した蓄熱材が落下しないようにチャックや面ファスナーなどで蓋を閉じられる構造を備えていてもよい。また、蓄熱材収納部70は、蓄熱材からの冷気や熱を収容空間20に伝えやすくするため、隙間が多数設けられた布地、不織布、メッシュ構造材、金網構造材等により形成されていてもよい。
次に、図3に基づいて、台車本体50の構成を説明する。台車本体50は第1側枠51と、第2側枠52と、第1側枠51と第2側枠52とを互いに連結する連結部材53とを備えている。連結部材53は、6個の車輪61〜66を備えており、車輪61〜66は連結部材53の下方側に向けて取り付けられている。
第1側枠51は、台車本体50の−Y方向側に設けられており、連結部材53から+Z方向側に向けて突設されている。第1側枠は梯子状に形成されており、一対の支柱55と、当該一対の支柱55の間でそれぞれX方向に伸びる複数の横桟56とを有している。複数の横桟56は、上下方向に沿って、互いに略等間隔を空けて配置されている。第1側枠51の下方側に2輪の車輪61、62が設けられている。
一対の支柱55は、車輪取付フレーム67に直接連結されている。なお、一対の支柱55のうち+X方向側の支柱55を車輪取付フレーム67に直接連結させ、−X方向側の他方の支柱55を車輪取付フレーム67に直接連結させず、車輪取付フレーム67から離隔する構造としてもよい。こうすることにより、ネスティング時に他の運搬用台車10の中央フレーム57が支柱55と干渉しないようにすることができる。
第2側枠52は、台車本体50の+Y方向側である長手方向の他端部に設けられており、連結部材53から上方側に向かって突設されている。第2側枠52の構成は、第1側枠51の構成と略同一であり、当該第2側枠52の下方側には2輪の車輪65、66が設けられている。なお、一対の支柱55のうち−X方向側の支柱55を車輪取付フレーム67に直接連結させ、+X方向側の他方の支柱55を車輪取付フレーム67に直接連結させず、車輪取付フレーム67から離隔する構造として、第2側枠52を、第1側枠51と平面視で点対称となるように配置してもよい。こうすることにより、台車本体50の向きを気にすることなく、ネスティングを効率的に行うことができる。
連結部材53は、台車本体50の長手方向であるY方向に伸びる中央フレーム57と、中央フレーム57にそれぞれ連結した、X方向に伸びる3つの車輪取付フレーム67〜69を有している。車輪取付フレーム67〜69は、中央フレーム57の下方側に、それぞれが相互に離隔するように配置されている。中央フレーム57は、Y方向において台車本体50の略中央に配置されている。
車輪取付フレーム67〜69は、第1側枠51側に配置される第1車輪取付フレーム67と、第1側枠51と第2側枠52との間に配置される第2車輪取付フレーム68と、第2側枠52側に配置される第3車輪取付フレーム69と、から構成される。
第1車輪取付フレーム67と第2車輪取付フレーム68とのY方向の間隔と、第2車輪取付フレーム68と第3車輪取付フレーム69とのY方向の間隔とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
第1車輪取付フレーム67は、中央フレーム57の−Y方向側端部に設けられ、第1車輪取付フレーム67の+X方向側端部および−X方向側端部には、それぞれ第1車輪61および第2車輪62が取り付けられている。同様に、第2車輪取付フレーム68は、中央フレーム57のY方向の略中央部に設けられ、第2車輪取付フレーム68の+X方向側端部および−X方向側端部には、それぞれ第3車輪63および第4車輪64が取り付けられている。また、第3車輪取付フレーム69は、中央フレーム57の+Y方向側端部に設けられ、第3車輪取付フレーム69の+X方向側端部および−X方向側端部には、それぞれ第5車輪65および第6車輪66が取り付けられている。
車輪61〜66は、上述のとおり、第1車輪61、第2車輪62、第3車輪63、第4車輪64、第5車輪65および第6車輪66から構成されている。このうち、第1車輪61、第2車輪62、第5車輪65および第6車輪66は自在輪となっており、それぞれ水平面(XY平面)と平行な車軸に沿って回転することと、上下方向軸(Z軸)回りに旋回することとが可能である。一方、第3車輪63、第4車輪64は固定輪となっており、それぞれ水平面(XY平面)と平行な車軸に沿って回転することは可能であるが、上下方向軸(Z軸)回りに旋回することは不可能である。
なお。車輪61〜66は、運搬用台車10に積載物を載せて走行する際には、安定して直進走行できるように、中央の固定輪(第3車輪63および第4車輪64)と前後いずれか一方の自在輪(第1車輪61と第2車輪62、または第5車輪65と第6車輪66)との2輪を組み合わせて、接地するようにしてもよい。
また、運搬用台車10に積載物を載せない場合には、切り回しやネスティングをし易くし、小回りを利き易くするため、中央の固定輪(第3車輪63と第4車輪64)を接地させずに、前後両方の自在輪(第1車輪61、第2車輪62、第5車輪65および第6車輪66)のみを接地させるようにしてもよい。この場合は、走行適性を確保するため、第1車輪61と第2車輪62、または第5車輪65と第6車輪66、の前後いずれかの二つの車輪は、自在輪から固定輪へと切り替わる構造を有することができる。なお、これに限らず、台車本体50は、4輪の車輪61、62、65、66を有し、第2車輪取付フレーム68と第3車輪63および第4車輪64とを有していなくてもよい。
連結部材53の上方側には、折り畳みが可能な底板58が設けられている。底板58は略直方体形状であり、Y方向に沿って第1側枠51と第2側枠との間に伸びて配置され、X方向において、第1側枠51および第2側枠52と略同一の長さを有している。底板58は、運搬用台車10の積載物の荷重を保持できるだけの十分な強度を有している。なお、運搬用台車10に、底板58は必ずしも必要ではなく、中央フレーム57の上に直接パネル容器30を搭載する構造であってもよい。
底板58は、連結部材53に対してX方向の回転軸回りに回転移動が可能であり、図示しないが、連結部材53の上方側に配置された組み立て状態と、底板58の+Y方向側端部付近を回転軸として連結部材53に対して持ち上げられ、第2側枠52に隣接する位置に折り畳まれた状態とをとることができる。すなわち、パネル容器30を運搬用台車10に搭載する場合には、底板58は水平面に配置され、パネル容器30を台車本体50から取り外した場合には、底板58は上方側に回転移動し、第2側枠52に隣接する位置に配置される。
(b)パネル容器の構成
図1〜図3を参照して、パネル容器30およびパネル11〜16の構成について説明する。
本実施形態におけるパネル容器30は、パネル11〜16が、内部に断熱空間を形成する略直方体形状に組み立てられたものであり、各パネルどうしの隣接部分は、パネル容器としての気密性を確保するために接着剤等により固着されており、個々のパネルごとの状態に分解することはできない。ただし、パネル容器30への物品の出し入れの便宜のため、正面パネル12のみが開閉可能となっている。図1は、パネル容器30が台車本体50に搭載され、正面パネル12が開いた状態となっている運搬用台車10であり、図2は正面パネル12が閉じられ、パネル容器30が略直方体形状となり、収容空間20が断熱空間となっている運搬用台車10である。
図1に示すように、パネル容器30のパネル11〜16は、開いた正面パネル12を除くと略直方体形状を形成し、天面パネル11、正面パネル12、背面パネル13、左面パネル14、右面パネル15および底面パネル16を含んでいる。天面パネル11、正面パネル12、背面パネル13、左面パネル14、右面パネル15および底面パネル16は、その主面がそれぞれ略長方形形状である。また、正面パネル12と背面パネル13とは、それぞれの主面が互いに略同一の大きさを有し、左面パネル14と右面パネル15とは、それぞれの主面が互いに略同一の大きさを有している。各パネル11〜16は、それぞれが剛性を有する板状の部材から構成され、使用時に柔軟に変形しないようになっている。
パネル容器30を組み立て状態にしたとき、6つのパネル11〜16が、積載物を収容する収容空間20を取り囲むことにより、収容空間20に断熱空間を形成することが可能である。6つのパネル11〜16は、それぞれの端面が他のいずれかのパネル11〜16の主面または端面と密着するようになっており、これにより収容空間20の密閉性を確保している。断熱空間は、周囲が断熱材で囲まれている場合には、外部との熱の流入や流出が制限され、良好な断熱性を維持することができる。
運搬用台車10に温度管理の必要な荷物を積載して使用しない場合には、パネル容器30を台車本体50から分離して保管することができ、台車本体50どうしは、部分的に折り畳んだり、他の運搬用台車10とネスティングすることが可能となる。
(c)パネルの内部構造
パネル11〜16の構造について説明する。図4は、各パネル11〜16の断熱部40を示す断面図であり、図5(a)、(b)は、断熱部40に含まれる真空断熱材41を示す断面図である。
図4に示すとおり、各パネル11〜16の断熱部40は、真空断熱材41、発泡断熱材42、断熱外囲部43、断熱材保護部材44および遮熱シート45を有している。
真空断熱材41は、発泡断熱材42に取り付けられている。この真空断熱材41は、芯材41aと、芯材41aの周囲に設けられた外装材41bとから構成されている。真空断熱材41の収容空間20側(図4の下方側)には、発泡断熱材42が配置されている。これにより、収容空間20に収納した積載物がパネル11〜16にぶつかった場合に、発泡断熱材42が、ぶつかった際の衝撃を吸収するため、真空断熱材41が破損する危険性を低減することができる。
発泡断熱材42は、真空断熱材41の少なくとも収容空間20側に隣接して配置することができ、例えばポリウレタン発泡体やポリスチレン発泡体、またはこれらの両方を使用することもできる。
断熱外囲部43は、真空断熱材41を取り囲むように配置されている。断熱外囲部43は、発泡断熱材42の一部に隣接して配置され、発泡断熱材42に固定されている。断熱外囲部43が真空断熱材41を取り囲むように配置されていることにより、断熱外囲部43が配置されていない場合と比べて、断熱性能が向上する。また、真空断熱材41を発泡断熱材42と略同一断面積とし、断熱外囲部43を使用しないパネル構成をとってもよい。
断熱材保護部材44は、断熱外囲部43と部分的に隣接するような配置に設けられ、主として真空断熱材41を保護する役割を果たす。断熱材保護部材44としては、例えば有機高分子製の保護材を使用することができる。
遮熱シート45は、真空断熱材41、発泡断熱材42、断熱外囲部43および断熱材保護部材44の外周全体を包含するように形成されている。遮熱シート45は、真空断熱材41と発泡断熱材42との全体を被覆して配置することができる。遮熱シート45としては、例えば金属箔を含む多層シートや、樹脂シートの片面に蒸着層が形成された蒸着シート等があげられる。
図5(a)に示すように、真空断熱材41は、芯材41aと、ガスバリア性を有する外装材41bとから構成されており、外装材41bの内部を減圧して得られる断熱材である。図5(b)は真空断熱材41の他の一例である。図5(a)では、真空断熱材41の内部の両端に空隙が形成されているが、図5(b)では、空隙が形成されていない。空隙は、真空断熱材41の製造方法の違いによって発生する場合と発生しない場合とがある。
芯材41aは、従来から使用される公知の真空断熱材の芯材に用いられる材料を使用することができ、例えば、シリカ等の紛体、ウレタンポリマー等の発泡体、グラスウール等の繊維体等の多孔質体を使用してもよい。
外装材41bは、芯材41aの外周を被覆する部材であり、芯材41aから熱溶着層、ガスバリア層がこの順に積層された可撓性を有するシートを使用してもよい。ガスバリア層は、金属箔、樹脂シートの片面に蒸着層が形成された蒸着シート等を使用してもよい。金属箔は、例えばアルミニウムを使用することができる。蒸着層は、例えば、アルミニウム、アルミニウム酸化物、ケイ素酸化物を使用することができる。
(d)各パネルの構造
正面パネル12、背面パネル13、左面パネル14、右面パネル15、天面パネル11および底面パネル16について説明する。
(i)正面パネル
図2に示すとおり、正面パネル12は、パネル容器30の最も+X方向側に配置されているパネルであり、積載物の出し入れを行うために、頻繁にパネルの開閉が想定されているパネルである。正面パネル12は、天面パネル11よりも下方側、かつ、底面パネル16の上方側であって、正面パネル12の主面がZ方向に平行になる向きで配置されている。正面パネル12の主面は、天面パネル11の主面と略直交しており、かつ、底面パネル16の主面とも略直交している。また、正面パネル12は、左面パネル14と右面パネル15の間に配置され、正面パネル12の主面は、左面パネル14の主面と略直交しており、かつ、右面パネルの主面とも略直交している。正面パネル12は、背面パネル13よりも+X方向側に配置され、正面パネル12の主面は、背面パネル13の主面と略平行となっている。
図2に示すように、第1正面部分パネル12a、第2正面部分パネル12bおよび第3正面部分パネル12cは、正面パネル12が閉じられた状態において、ともに上下方向に平行な向きに配置される。一方、正面パネル12を開いた状態においては、図1に示すように、第3正面部分パネル12cは、左面パネル14の+X方向側に配置される。第1正面部分パネル12aと第2正面部分パネル12bとは、互いに重なるように折り畳まれ、それぞれが、第1正面ヒンジ部材22aと第2正面ヒンジ部材22bとを基準としてZ軸方向を回転軸にして回転し、左面パネル14の−Y方向側に配置される。このとき、第1正面部分パネル12aと第2正面部分パネル12bとは、折り重なって第1側枠51の外側周囲に配置され、左面パネル14と略平行な状態となる。
このように、折り畳み状態で、第2正面部分パネル12bおよび第3正面部分パネル12cを第1側枠51よりも外側すなわち−Y方向側に配置することにより、積載物を収納する収容空間20を広く確保することができる。
なお、パネル容器30を組み立て状態としているときの、第3正面部分パネル12cのY方向の幅は、第1正面部分パネル12aおよび第2正面部分パネル12bのY方向の幅よりも短く、第1正面部分パネル12aのY方向の幅は、第2正面部分パネル12bのY方向の幅と略同一である。また、第1正面部分パネル12aおよび第2正面部分パネル12bのY方向の幅は、第1側枠51のX方向の幅と略同一か、第1側枠51のX方向の幅よりも長くなっている。
正面パネル12は、上方側に隣接する天面パネル11に対して、図示しない着脱部材によって着脱自在に連結されている。具体的には、第1正面部分パネル12aおよび第2正面部分パネル12bは天面パネル11に対して着脱部材によって着脱自在に連結されている。
また、正面パネル12は、下方側に隣接する底面パネル16に対して、図示しない着脱部材によって着脱自在に連結されている。具体的には、第1正面部分パネルおよび第2正面部分パネル12bは底面パネル16に対して、着脱部材によって着脱自在に連結されている。さらに、正面パネル12は、+Y方向側に隣接する右面パネル15に対して、図示しない着脱部材によって着脱自在に連結されている。
(ii)背面パネル
背面パネル13は、パネル容器30の天面パネル11、正面パネル12、左面パネル14、右面パネル15および底面パネル16よりも−X方向側に配置されているパネルである。背面パネル13は、正面パネル12と同様に、天面パネル11よりも下方側、かつ、底面パネル16の上方側であって、背面パネル13の主面がZ方向に平行になる向きで配置されている。背面パネル13は、隣接する天面パネル11、底面パネル16、左面パネル14および右面パネル15と折り畳み不可能に連結されており、正面パネル12を閉じたときの収容空間20の気密性を確保している。
(iii)左面パネル
左面パネル14は、第1側枠51に隣接し、第1側枠51の+Y方向側に配置されるパネルである。左面パネル14は、正面パネル12や背面パネル13と同様に、天面パネル11よりも下方側、かつ、底面パネル16の上方側であって、左面パネル14の主面がZ方向に平行になる向きで配置されている。左面パネル14は、1枚の板状の部材から構成される。左面パネル14は、第1側枠51に対して着脱可能に係合されていてもよく、または着脱不可能な態様で固着されていてもよい。左面パネル14は、正面パネル12を除く隣接する天面パネル11、底面パネル16および背面パネル13と折り畳み不可能に連結されており、正面パネル12を閉じたときの収容空間20の気密性を確保している。
(iv)右面パネル
右面パネル15は、第2側枠52に隣接し、第2側枠52の+Y方向側に配置されるパネルである。右面パネル15も、左面パネル14と同様に、天面パネル11よりも下方側、かつ、底面パネル16の上方側であって、右面パネル15の主面がZ方向に略平行になる向きで配置されている。右面パネル15は、左面パネル14と同様に、1枚の板状の部材から構成される。右面パネル15が、第2側枠52に対して着脱可能に係合され、または、着脱不可能な態様で固着されてもよいことは、左面パネル14と共通する。右面パネル15は、正面パネル12を除く隣接する天面パネル、底面パネル16および背面パネル13と折り畳み不可能に連結されており、正面パネル12を閉じたときの収納空間20の気密性を確保している。なお、左面パネル14および右面パネル15は、いずれか一方を第1側面パネル、他方を第2側面パネルと称することができる。
(v)天面パネル
図1に示すとおり、天面パネル11は、パネル容器30において、正面パネル12、背面パネル13、左面パネル14および右面パネル15よりも上方側に配置されているパネルであり、天面パネル11の主面が水平面と略平行になる向きで配置されている。天面パネル11は、正面パネル12を除く隣接する左面パネル14、右面パネル15および底面パネル16と折り畳み不可能に連結されており、正面パネル12を閉じたときの収納空間20の気密性を確保している。
(vi)底面パネル
底面パネル16は、正面パネル12、背面パネル13、左面パネル14および右面パネル15よりも下方側に配置されているパネルである。底面パネル16は、底面パネル16の主面が水平面に略平行となる向きで、台車本体50の底板58の上方側、かつ、第1側枠51と第2側枠52との間に配置されている。底面パネル16は、1枚の板状の部材から構成され、正面パネル12を除く隣接する左面パネル14、右面パネル15および背面パネル13と折り畳み不可能に連結されており、正面パネル12を閉じたときの収納空間20の気密性を確保している。なお、底面パネル16は、荷物や棚板保持具81が直接当接したり圧接することにより、他のパネルよりも荷重負荷を受けやすいため、底面パネル16上に適度な強度を有する補強板を敷いてもよい。これには、例えばプラスチックダンボール等があげられる。
(e)棚板および棚板保持具の構成
図1に示すとおり、棚板保持具81は、上下方向に延びる一対の保持具支柱101と、これらをX方向に連結する横桟102から構成される梯子状構造体109を二組備え、それぞれの梯子状構造体109のうち、一方は図1の−Y方向側の左面パネル14の内表面に近接して配置され、他方は図示しないが、右面パネル15の内表面に近接して配置されている。これらの二組の梯子状構造体109をそれぞれ、第1棚板保持具および第2棚板保持具と称することもできる。また、棚板91は、金属板または樹脂板のような剛性のある板状構造が好ましいが、例えば、金属線または樹脂線を織り込んだメッシュ構造であってもよく、両端がしっかりと梯子状構造体109に係合できる場合には布地等の可撓性のある部材から構成されてもよい。
棚板保持具81および棚板91の構成の詳細を図6および図7に基づき説明する。図6は、パネル容器30の内部について、棚板保持具81の配置を示す側面図および正面図である。図6(a)は、パネル容器30を、Y方向の略中央付近でY軸に垂直な平面で切った断面を+Y方向側から見た断面図である。図6(b)は、パネル容器30を、正面パネル12を外した状態で+X方向側から見た正面図である。また、図7は、図6(b)の梯子状構造体109と棚板91との当接部であるA部を拡大した図である。
図6(a)、(b)に示すとおり、棚板保持具81は、同一構造の二組の梯子状構造体109が、左面パネル14側と、右面パネル15側にそれぞれ近接した位置において、上下方向に延びた状態でパネル容器30の天面パネル11および底面パネル16と当接して固定されている。二組の梯子状構造体109は、それぞれが同一構造ではなくてもよいが、同一構造である場合には、梯子状構造体109のそれぞれを逆向きに配置しても対称形であるために不具合が生じ難く、運用面や量産面で有利である。
梯子状構造体109は、図6(a)に示すように、上下方向に延びる一対の保持具支柱101を備え、それぞれの上端および下端には、幅広の面積を有する固定板104を備えている。これは、保持具支柱101が天面パネル11および底面パネル16と当接する部分の接触面積を少しでも大きくすることにより、天面パネル11および底面パネル16に局所的な集中荷重が掛かることを避け、パネルの変形や損傷を抑制するためである。
本実施形態では、固定板104の平面形状を正方形としているが、パネルとの接触面積を増やすことさえできれば、平面形状は長方形、円形、三角形等の任意の形状をとることができる。また、固定板104がパネルと当接する主面は、保持具支柱101の軸線に対して略垂直方向になるように配置されているが、当該軸線に垂直な平面に対し、微小角度だけ傾けることが可能な構造としている。こうすることにより、保持具支柱101の軸線と、天面パネル11および底面パネル16のパネル面とが厳密に直交していない場合でも、固定板104が傾くことにより、当該固定板104の主面が当該パネルの主面と略平行に当接することができ、当該パネルに集中荷重が掛かることを極力抑制することができる。
また、梯子状構造体109の保持具支柱101の上端の固定板104との間には、アジャスタ103が設けられている。アジャスタ103は、保持具支柱101の下端の固定板104から上端の固定板104までの高さを調整する機能を有しており、保持具支柱101とアジャスタ103とが、それぞれネジ構造のボルトおよびナットに相当する構造を有することにより、一方を他方に対して回転させることによって、梯子状構造体109の高さを伸ばしたり縮めたりすることができる。このような構造とすることにより、パネル容器30の内部の高さが異なる場合においても、梯子状構造体109の高さを任意に調整して、棚板保持具81がパネル容器30に対して安定して固定できるよう、適切な圧縮荷重を天面パネル11および底面パネル16に掛けることができる。
ただし、梯子状構造体109の高さを調整するアジャスタ103の構造は上記に限るものではなく、空気圧または油圧により高さを調整する機構であってもよい。また、保持具支柱101の軸方向に高さを増減させるための断片的な付加部材をネジ式または嵌合接続方式等で必要数、付加または除去する方式としてもよい。
梯子状構造体109の一対の保持具支柱101どうしは、複数の横桟102によって水平方向に連結されている。横桟102は、保持具支柱101どうしを連結し、強度を向上させるとともに、二組の梯子状構造体109の同一高さの横桟102どうしをまたぐように棚板91を載せることにより、棚板91を安定して支持する役割を果たしている。本実施形態では、横桟102は、上下方向に等間隔となるように配置しているが、高さ方向の間隔は同じである必要はない。また、横桟の個数についても、想定される棚板の設置位置、設置数等を考慮して適宜決めることができる。なお、本実施形態では、保持具支柱101および横桟102は、断面が円形のパイプ状構造物により構成されているが、これに限定するものではなく、断面が長方形形状の角パイプ構造であってもよく、その他の断面形状であってもよい。
梯子状構造体109が棚板91を支持する部分の構造を図7(a)、(b)に示す。図7(a)に示すように、棚板91の−Y方向側の先端には、棚板91の主面と直交する棚板フック105が取り付けられており、棚板フック105の先端がさらに鉤状に折れ曲がった構造となっている。この棚板フック105は、棚板91の反対側の先端にも取り付けられている。棚板91の本体は、梯子状構造体109の横桟102の上に載せられるとともに、先端の棚板フック105が、横桟102を囲むような配置となることにより、例えば棚板91がY方向に沿ってずれようとした場合にも、棚板フック105が横桟102に引っ掛かり、ストッパーとしての役割を果たすため、棚板91が不用意に梯子状構造体109から脱落することを抑制することができる。
また、このような棚板フック105が取り付けられている場合には、図7(b)のように、棚板91を使用しない場合に、棚板91の主面が上下方向に沿うように、すなわち90度傾けて横桟102に引っ掛けて保持することができ、不使用時の棚板を紛失する等のリスクを低減できる。ただし、棚板91の先端構造はこのような棚板フック105を有しないものであってもよく、後述する変形例のように、異なる配置や形状の棚板フックまたはその他の固定手段を有していてもよい。例えば、簡易的には面ファスナーにより着脱可能に固定してもよい。この場合、荷物の荷重負荷は梯子状構造体109の横桟102によって支えられるため、面ファスナー自体に強力な係合力を持たせる必要はない。
このように、第1実施形態の運搬用台車10では、台車本体50の一対の側枠である第1側枠51と正面パネル12との間に左面パネル14が、第2側枠52と正面パネル12との間に右面パネル15が配置されるように、パネル容器30が配置されている。当該パネル容器30の内部には、棚板保持具81を構成する、互いに分離した二組の棚板保持具である梯子状構造体109が、それぞれ、左面パネル14付近および右面パネル15付近に、底面パネル16から天面パネル11に至るまで延び、かつ、当該両パネルに先端部を圧接させることにより、パネル容器30に着脱可能に固定されている。また、二組の棚板保持具である梯子状構造体109の横桟102どうしをまたぐように、棚板91が水平方向に渡されて棚板保持具81によって支持されている。
上記により、パネル容器30の内部の収納空間20には、床面、すなわち底面パネル16の上に荷物を直接載せるスペースがないときでも、高さ方向の中間位置に設けられた棚板91の上に、追加の荷物を積載することができるため、荷物の収納効率が上がる。特に、荷物が直方体形状ではない場合、または、荷物自体が柔らかくて変形しやすい場合等に有効である。また、他の荷物よりも低温で保管したい荷物を収納する場合、蓄熱材の冷気は上方から下方に向かって流れるため、荷物をより上方に収納する方が有利であり、この場合にも、パネル容器30内部に棚板91を設けることにより、特定の荷物をパネル容器30内部の、より高い位置に収納することが容易に行える。
また、棚板91は、側面のパネルに面ファスナー等の微弱な係合手段で係合するのではなく、天面パネル11および底面パネル16の双方に圧接された二組の梯子状構造体109から構成される棚板保持具81によって支持されるため、より重量の大きい荷物を棚板に積載することができる。さらに、当該棚板保持具81は、棚板91を直接支持する複数の横桟102が異なる高さに配置されているため、棚板91を配置する高さを変更したり、複数の棚板91を複数の高さにおいて同時に配置することができ、収納効率を一層向上させることができる。
一方、棚板91を使用しない場合には、棚板保持具81から棚板91だけを外してパネル容器30を使用することができ、また、棚板保持具81は、天面パネル11および底面パネル16への圧接を解除することにより、例えば本実施形態では、保持具支柱101とアジャスタ103とのネジ構造の調整によって高さを縮めることにより、容易にパネル容器30の本体から取り外すことが可能である。さらに、二組の梯子状構造体109は互いに分離した構造であることから、収納スペースも小さくすることができる。
2.第2実施形態
(a)運搬用台車の構成
次に、本開示の第2実施形態の運搬用台車の構成について、図8〜図10に基づき説明する。図8は、本開示の第2実施形態の運搬用台車10Aであって、台車本体50の上方側にパネル容器30Aが搭載され、当該パネル容器30Aの正面パネル12が開放された状態となっている斜視図である。図9は、第2実施形態の運搬用台車10Aの斜視図であって、図8に対して、パネル容器30Aの正面パネル12に加え、天面パネル11、底面パネル16および背面パネル13が開いた状態となっている図である。図10は、パネル容器30Aおよび台車本体50の側枠の一部についての平面図および正面図である。
第2実施形態の運搬用台車10Aは、第1実施形態と同様の台車本体50と、台車本体50の上部に搭載されたパネル容器30Aとを備えている。図9に示すように、パネル容器30Aは第1実施形態のパネル容器30とは異なり、正面パネル12以外にも天面パネル11、底面パネル16および背面パネル13を、それぞれ開くことができる。また、図8に示すとおり、パネル容器30の内部には、左面パネル14の内表面から右面パネル15の内表面に至るY方向に延びる棚板保持具82と、当該棚板保持具82に支持された棚板92とが配置されている。
(b)パネル容器の構成
本実施形態の運搬用台車10Aに用いられるパネル容器30Aは、正面パネル12だけでなく、底面パネル16、天面パネル11および背面パネル13が折り畳める点で、第1実施形態のパネル容器30と異なる。正面パネル12、左面パネル14および右面パネル15は、第1実施形態と同様であるため、その他のパネルについて説明する。
(i)背面パネル
パネル容器30Aの背面パネル13は、図9に示すとおり、−Y方向側から順に、Y方向の幅が比較的狭い第3背面部分パネル13cと、Y方向の幅が比較的広い第2背面部分パネル13bと、第1背面部分パネル13aとを備えている。また、第3背面部分パネル13cと第2背面部分パネル13bとの間、および、第2背面部分パネル13bと第1背面部分パネル13aとの間には、それぞれ、第2背面ヒンジ部材23bおよび第1背面ヒンジ部材23aとが配置されている。これらの配置により、+Z方向から見たときに、第1背面部分パネル13aは第2背面部分パネル13bに対して反時計回りに、第2背面部分パネル13bは第3背面部分パネル13cに対して反時計回りに、それぞれ回転させて折り曲げることができる。折り畳んだ第1背面部分パネル13aおよび第2背面部分パネル13bは、正面パネル12と同様に、左面パネル14の外側、すなわち−Y方向側に重ねて配置することができる。
(ii)天面パネル
天面パネル11は、図8、図9に示すとおり、−Y方向側から順に、Y方向の幅が比較的狭い第1天面部分パネル11aと、Y方向の幅が比較的広い第2天面部分パネル11bとを備えている。また、第2天面部分パネル11bは、第1天面部分パネル11aと第2天面部分パネル11bとを回転自在に結合する第1天面ヒンジ部材21aを基準として+X方向側から見て時計回りに倒すことができ、その結果、図9のように、後述する折り畳んだ底面パネル16に近接して天面パネル11を折り畳むことができる。このように、天面パネル11が開閉可能であることにより、荷物や蓄熱材の出し入れが正面以外からでもできるようになり、運搬用台車10Aの周囲に作業スペースが十分に確保できない場合にも作業性を向上させることができる。
(iii)底面パネル
また、図9に示すように、パネル容器30Aの底面パネル16は、左面パネル14との接合部である図示しないヒンジ構造部を基準として、+X方向側から見たときに反時計回りに持ち上げることができ、その結果、底面パネル16は、左面パネル14の主面に当該底面パネル16の主面を接する状態で折り畳むことができる。このように、正面パネル12だけでなく、底面パネル16、天面パネル11および背面パネル13が折り畳めることにより、パネル容器30を使用しない場合には、パネル容器30自体を台車本体50から取り外すだけでなく、パネル容器30を折り畳むことによっても、運搬用台車10Aの中間のスペースを確保することができる。これにより、運搬用台車10Aに温度管理の必要のない荷物等を積載したり、運搬用台車10Aの構造によっては、複数台車どうしをネスティングしたりすることにより、不使用時にパネル容器30Aを取り付けたままで省スペース化を図ることができる。
(c)棚板および棚板保持具の構成
図10(a)は、パネル容器30Aおよび台車本体50の側枠の一部を示す、天面パネルを取り外した状態における平面図である。図10(b)は、正面パネル12を外した状態における、パネル容器30Aおよび台車本体50の側枠の一部を示す正面図である。
図10(a)、(b)に示すとおり、棚板保持具82は、水平方向すなわちY方向に延びる一対の保持具横梁111と、これらをX方向に連結する横梁連結桟112、および、一対の保持具横梁111の先端に配置される広幅の平面形状を有する固定板114を備えている。また、保持具横梁111の一端と固定板114との間には、アジャスタ115が設けられている。アジャスタ115は、保持具横梁111の一方の先端の固定板114から他方の先端の固定板114までの幅を調整する機能があり、保持具横梁111とアジャスタ115とが、それぞれネジ構造のボルトおよびナットに相当する構造を有することにより、一方を他方に対して回転させることによって、棚板保持具82の幅方向の長さを伸ばしたり縮めたりすることができる。このような構造とすることにより、パネル容器30の内部の幅が異なる場合においても、棚板保持具82の幅方向の長さを任意に調整して、棚板保持具82がパネル容器30に対して安定して固定できるよう、適切な圧縮荷重を左面パネル14および右面パネル15に掛けることができる。
固定板114は、第1実施形態の保持具支柱101の先端に設けられた固定板104と同様に、左面パネル14および右面パネル15と当接する部分の接触面積を少しでも大きくするために設けられている。左面パネル14および右面パネル15に対する局所的な集中荷重が掛かることを避け、パネルの変形や損傷を抑制するためである。また、固定板114の形状や、保持具横梁の軸線に対して傾斜が可能な点等については、第1実施形態の説明と同様である。
また、当該棚板保持具82の上方には、板状の棚板92が支持されるが、当該棚板92の2本の保持具横梁111のそれぞれの+X方向側および−X方向側には、幅方向ガイド113が隣接して設けられている。これにより、棚板92がX方向にずれようとしたときに、当該幅方向ガイド113が棚板保持具82のいずれかの保持具横梁111と当接し、ずれることが抑制され、棚板92が棚板保持具82から不用意に脱落する可能性を低減できる。
また、棚板保持具82の保持具横梁111の先端部である固定板114は、左面パネル14および右面パネル15を、それぞれパネル容器30の外側に向けて、すなわち左面パネル14を−Y方向側、右面パネル15を+Y方向側に押し出す向きに荷重負荷を掛けることになる。このとき、左面パネル14の−Y方向側および右面パネル15の+Y方向側には、それぞれ台車本体50の第1側枠51および第2側枠52が隣接しているため、パネル容器30の内部から外側に向けて押し出す力を支えることができる。このため、棚板保持具82が左面パネル14および右面パネル15を押す力が強まった場合であっても、当該パネルが外側に膨らむ方向に変形してしまうことを抑制することができる。
本実施形態の運搬用台車10Aは、天面パネル11が開閉可能であり、第1実施形態のように棚板保持具81を天面パネル11と底面パネル16に圧接して固定することが困難な場合に適している。また、本実施形態では、左面パネル14および右面パネル15に圧接して固定できる棚板保持具82と、この上に載せて支持することができる棚板92を用いることにより、第1実施形態と同様、パネル容器30の内部の収納空間20の床面に荷物を載せるスペースがない場合でも、高さ方向の中間位置に設けられた棚板92の上に、追加の荷物を積載することができる。このため、荷物の収納効率が向上する。さらには、棚板92を使用しながら天面パネル11を開閉することも可能であり、作業性が一層向上する。
また、本実施形態は、棚板92を側面のパネルに面ファスナー等の微弱な係合手段で係合するのではなく、左面パネル14および右面パネル15の双方に圧接された棚板保持具82によって保持されるため、より重い荷物を棚板に積載することができる。さらに、当該棚板保持具82の高さ方向の配置位置は任意に変えることができ、複数の棚板保持具82およびこれに対応する複数の棚板92を、それぞれ異なる高さに配置できることにより、収納効率を一層向上させることができる。
なお、棚板92を使用しない場合には、容易に棚板保持具82と棚板92とを外してパネル容器30を使用することができる。棚板保持具82は、左面パネル14および右面パネル15への圧接を解除することにより、例えば本実施形態では、保持具横梁111とアジャスタ115とのネジ構造の調整によって幅方向の長さを縮めることにより、容易にパネル容器30の本体から取り外すことが可能である。
3.第3実施形態
(a)運搬用台車の構成
ついで、本開示の第3実施形態の運搬用台車の構成について、図11、図12に基づき説明する。図11は、本開示の第3実施形態の運搬用台車10Bであって、台車本体50の上方側にパネル容器30Bが搭載され、当該パネル容器30Bの正面パネル12と、天面パネル11の前方の半分とが開いた状態となっている斜視図である。図12は、パネル容器30Bおよび台車本体50の側枠の一部についての平面図および正面図である。
第3実施形態の運搬用台車10Bは、第1、第2実施形態と同様の台車本体50と、台車本体50の上部に搭載されたパネル容器30Bとを備えている。図11に示すように、パネル容器30Bは、左面パネル14の上端に引っ掛けられ、吊り下げれて支持されている板状の棚板保持具83を備えている。棚板保持具83は可撓性のあるフィルム状の部材であってもよい。また、右面パネル15の上端部にも、対称的に一対となる棚板保持具83が引っ掛けられ、吊り下げれて支持されている。さらには、棚板保持具83の高さ方向に数か所開けられている位置調整スリット123のいずれかに、棚板93の端部が、連結シート125を介して取り付けられていることにより、当該棚板93が棚板保持具83およびパネル容器30Bに対して支持されている。なお、これらの一対となる棚板保持具83をそれぞれ、第1棚板保持具および第2棚板保持具と称することもできる。
(b)パネル容器の構成
本実施形態の運搬用台車10Bに用いられるパネル容器30Bは、第1実施形態に対して、正面パネル12だけでなく、天面パネル11が開くように構成されている。ただし、天面パネル11の構造は、第2実施形態とは若干異なる。よって、天面パネル11についてのみ説明する。
(i)天面パネル
パネル容器30Bの天面パネル11は、図11に示すとおり、X方向の奥行きの略中間部を境に+X方向側の第3天面部分パネル11c、および、−X方向側の第4天面部分パネル11dを備えるとともに、両パネルを回転自在に連結する第2天面ヒンジ部材21bを備えている。これにより、天面パネル11は手前側の第3天面部分パネル11cを、第2天面ヒンジ部材21bを回転軸として、第4天面部分パネル11dに対して+Y方向側から見たときに時計回りに回転して半分だけ開くことができる。
奥側に配置される第4天面部分パネル11dは開閉できない構造である。しかしながら、奥側の第4天面部分パネル11dを、第2天面ヒンジ部材21bを回転軸として、第3天面部分パネル11cに対して+Y方向側から見たときに反時計回りに回転して半分だけ開けるようにし、手前側または奥側のいずれについても半分だけ開くことができる構造としてもよい。このような構造とすることにより、荷物や蓄熱材の出し入れが正面以外からでもできる上に、正面パネル12と併せて天面パネル11の手前側が開放できることにより、広い収納空間の開放領域を確保できる。よって、運搬用台車10Bの周囲に作業スペースが十分に確保できない状況における作業性の向上に一層有利となる。
(c)棚板および棚板保持具の構成
図12(a)は、パネル容器30Bおよび台車本体50の側枠の一部を示す、天面パネルを取り外した状態における平面図である。図12(b)は、正面パネル12を外した状態におけるパネル容器30Bおよび台車本体50の側枠の一部を示す正面図である。
図12(a)、(b)に示すとおり、棚板保持具83は、−Y方向側の左面パネル14および+Y方向側の右面パネル15のそれぞれに沿って、それらの上端を覆うようにフックが引っ掛けられ、吊り下げられた形態をとっている。左面パネル14に沿った棚板保持具83は、鉤形状のパネル固定用フック部121と、当該パネル固定用フック部121と連結したフィルム状または板状の棚板保持シート122とを備え、パネル固定用フック部121が、左面パネル14の上端に引っ掛けられて固定され、棚板保持シート122が左面パネル14の内表面に沿って、吊り下げられている。棚板保持具83は、右面パネル15に対しても同様の構成として設けられている。
本実施形態では、パネル固定用フック部121は、棚板保持シート122の先端に当該棚板保持シート122と同一材料で一体的に形成されている。しかしながら、パネル固定用フック部121および棚板保持シート122は、同一材料であってもよく、異なる材料であってもよい。例えば、金属板、樹脂板、樹脂フィルムを用いてもよく、金属、樹脂、繊維等から構成されたメッシュ構造の部材であってもよい。具体的には、剛性のある部材とする場合は、曲げ強度や耐久性の高いものとして、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等の硬質樹脂、繊維強化樹脂等や、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等の錆びにくい金属が挙げられる。また、シート状、フィルム状部材とする場合は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド等を挙げることができる。
また、棚板保持シート122には、適宜、棚板93の配置高さを変えられるよう、複数の位置調整スリット123が設けられている。棚板93の両端に連結された、可撓性のある部材である連結シート125を介して先端に取り付けられたシート用フック124を当該位置調整スリット123に引っ掛けることにより、棚板93を一定位置に固定することができる。
棚板93が剛体板である場合、シート用フック124の角度を微調整し、適切に棚板保持シート122の位置調整スリット123に引っ掛けることの作業性を考慮すると、棚板93とシート用フック124とを連結する連結シート125は、ある程度の可撓性を有する樹脂基材等で構成されることが好ましい。ただし、このような連結シート125は本実施形態の必須の構成要件ではなく、例えば、棚板93に直接、鉤状のシート用フックが形成されており、これを棚板保持シート122に引っ掛ける構造であってもよく、あるいは、棚板93と棚板保持シート122とを、直接ネジやリベット、その他の任意の接合手段で係合する構造であってもよい。また、棚板保持シート122に位置調整スリット123が形成されていなくてもよく、例えば、二組の棚板保持具83どうしがフィルム等の可撓性のある部材で連結された構造であって、この部材上に棚板を搭載する形態であってもよい。
左面パネル14および右面パネル15と、天面パネル11とは、前述のとおり、内部に断熱材を含むため、これらの当接部に棚板保持具83のパネル固定用フック部121が挟まれていても、パネルの弾性変形範囲内であれば、パネルの形状が挟んだ部材に追従することによってパネル容器30Bの気密性が損なわれ難くすることができる。また、このように、パネル固定用フック部121が隣接パネルどうしに挟まれることによって、棚板保持具83の保持効果が高まるため、パネル容器30Bの気密性を阻害しない範囲で、パネル固定用フック部121が隣接パネルから挟み込む力を受ける状態となることが好ましい。
また、本実施形態では、棚板保持具83が、左面パネル14および右面パネル15のそれぞれの上端にフックによって引っ掛けられている構造としているが、これに限定せず、棚板保持具83の上端部が、当該パネルに接着剤等により固着されていてもよく、または、荷物の耐荷重によっては、面ファスナー等の着脱可能な係合方式により当該パネルに係合されていてもよい。
本実施形態の運搬用台車10Bは、天面パネル11が開閉可能である場合にも適しており、対向配置される左面パネル14、右面パネル15のそれぞれの上端にフック構造を引っ掛けることにより二組の棚板保持具83をそれぞれ吊り下げ、当該棚板保持具83の上に棚板93を載せて支持するものである。このような構成にすることにより、パネルの中で、特に真空断熱材が配置される可能性が低く、強度的にも比較的強い部位であるパネルの端部を利用して棚板93や荷物の負荷を支えることができ、パネルの変形や損傷の危険性を低減することができる。また、棚板保持具83は、単にパネル上端に引っ掛けることにより自重で固定される構造であるため、着脱が極めて容易であり作業性が向上する。さらには、棚板保持具83および棚板93は、パネルに吊り下げられた構造であるため、パネル容器30Bが外部から振動や衝撃を受けた場合にも、棚板保持具83自身が逆方向に振動することによって、これら外部からの振動や衝撃が荷物に伝達することを緩和する効果が期待できる。
4.第4実施形態
(a)運搬用台車の構成
次に、本開示の第4実施形態の運搬用台車の構成について、図13、図14に基づき説明する。図13は、本開示の第4実施形態の運搬用台車10Cであって、台車本体50の上方側にパネル容器30Cが搭載された状態を示す斜視図である。図14は、パネル容器30Cの内部に配置された棚板保持具84を示す斜視図である。
第4実施形態の運搬用台車10Cは、第1、第2および第3実施形態と同様の台車本体50と、台車本体50の上部に搭載されたパネル容器30Cとを備えている。図13、図14に示すように、パネル容器30Cは、複数の円柱型部材の組み合わせによって略直方体形状に構成されたラック構造を有する棚板保持具84を内部に支持している。当該棚板保持具84は、上下方向に延びる2本の保持具支柱131どうしが、その上端および下端において保持具横梁132によって水平に連結され、さらに、高さ方向の中間部分を複数の横梁133によって水平方向に連結された梯子状構造体134を二組有し、当該二組の梯子状構造体134どうしが、その上端および下端において保持具横梁132によって水平に連結された、略直方体形状のラック構造を有している。横梁133は、保持具支柱131どうしを水平方向に連結する機能とともに、棚板94を支持する機能を併せ持つ。
棚板保持具84は、パネル容器30Cの底面パネル16の内表面上に搭載されているだけであり、底面パネル16以外のパネルには荷重負荷が掛からない。また、棚板保持具84は、複数の円柱型部材である4本の保持具横梁132によって広い接触面積で底面パネル16と当接しているため、底面パネル16への荷重の負担が軽減され、底面パネル16の変形や損傷の危険性を低減している。
(b)パネル容器の構成
本実施形態の運搬用台車10Cに用いられるパネル容器30Cは、第3実施形態で説明したパネル容器30Bと、棚板保持具84および棚板94を除いて同一構造であるため、説明を省略する。
(c)棚板および棚板保持具の構成
図14は、パネル容器30Cの内部に配置される棚板保持具84および棚板94の構造を説明する、棚板保持具84の斜視図である。棚板保持具84は、上下方向の保持具支柱131を4本と、その間を連結する水平方向の部材の内、上端および下端に配置される保持具横梁132を8本有することにより略直方体を形成し、さらに、対向する2側面に沿って、複数の横桟133が所定数配されている。
棚板94は板状部材であり、対向する2箇所の横桟133をまたぐように、棚板94の両端部を当接させることにより、棚板94が棚板保持具84に支持され、パネル容器30Cに対して固定されることとなる。棚板94は、複数段に形成された横桟133の任意の位置に、任意の個数配置することができ、不要な棚板をあらかじめ外しておくこともできる。棚板94は単に2箇所の横桟133に搭載されているだけであるが、第1実施形態における棚板91の棚板フック105や、第2実施形態における棚板92の幅方向ガイド113のように、棚板94が棚板保持具84からずれたり脱落しないための構造を棚板94に持たせてもよい。
棚板保持具84を構成する保持具支柱131、保持具横梁132、および、横桟133は、断面形状が円形である円柱部材を用いているが、これに限定する必要はなく、断面が正方形や長方形の角柱部材を用いたり、断面がL型のアングル材を組み合わせたり、内部が中空の丸パイプまたは角パイプを用いたり、これらを組み合わせた部材として構成されていてもよい。
また、棚板保持具84は分解不可能な構造としているが、保持具支柱131、保持具横梁132、および、横桟133の一部または全部が個々に分解できる構造としてもよく、折り畳みが可能な構造としてもよい。棚板保持具84が分解不可能な構造であっても、不使用時には、パネル容器30Cから当該棚板保持具84を外に出すことにより、当該パネル容器30Cや運搬用台車10Cのスペースを占有しないようにすることができるが、棚板保持具84が分解可能または折り畳み可能である場合には、不使用時に棚板保持具84自体をコンパクトに保管することができる。
本実施形態の運搬用台車10Cは、ラック構造を有する棚板保持具84をそのまま、パネル容器30Cの内部に配置することができ、極めて容易に棚板94をパネル容器30Cの内部に固定することができる。構造的にもラック構造は非常に安定しており、荷重負荷によって棚板保持具84が変形、損傷する危険性が少ない。また、棚板保持具84のパネル容器30Cへの固定は、当該棚板保持具84を底面パネル16の上方に搭載するだけであり、かつ、棚板保持具84と底面パネル16とは、4本の保持具横梁132による広い接触面積を有するため、棚板保持具84を安定して固定させることができ、底面パネル16の変形、損傷の危険性を低減することができる。
5.変形例
上述した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本開示の範囲内である。下記に、幾つかの変形例を挙げる。
(a)変形例1
図15は、第1実施形態の変形例1である棚板91A、91Bおよび91Cを示す図であり、図6(b)のA部を拡大した図7(a)と同様の配置を示した拡大図である。棚板を棚板保持具81の横桟102に搭載して固定する際の棚板側の構造は、第1実施形態で説明したもの以外にも種々の構成をとることができる。たとえば、図15(a)に示す棚板91Aは、−Y方向側の先端に棚板91Aの主面と直交する棚板フック106が取り付けられているが、前述の棚板91とは異なり、横桟102よりもパネル容器の内側、すなわち+Y方向側に配置されている。これは、棚板91Aの棚板フック106が、それぞれ棚板91A側から左面パネル14および右面パネル15に向けて、両端の横桟102を押し出す向きに配置していることとなる。
また、図15(b)に示す棚板91Bは、−Y方向側の先端に棚板91Bの主面と直交する棚板フック107が、横桟102を挟むように一つの横桟102に対して2箇所、取り付けられており、棚板保持具81が棚板91Bから離れる方向にずれようとした場合、および、棚板保持具81が棚板91Bに近づく方向にずれようとした場合のいずれについても、ずれの進行を抑制する効果を有する。
一方、図15(c)に示す棚板91Cは、棚板91Cの主面と直交する棚板フックは有していないが、棚板91Cの下面側が、横桟102の直径よりもやや大きめの直径の円弧を含んだ凹部を有することにより、棚板91Cのずれを抑制するものである。このような構造である場合、棚板本体にフック等の別の部材を取り付ける必要がなく、構造を単純化することができる。
(b)変形例2
次に、本開示の運搬用台車の変形例2の構成について、図16、図17に基づき説明する。図16は、変形例2の運搬用台車10Dを示す斜視図である。図17は、パネル容器30Dの内部について、棚板保持具85の配置を示す側面図および正面図である。図17(a)は、パネル容器30Dを、Y方向の略中央付近でY軸に垂直な平面で切った断面を+Y方向側から見た断面図である。図17(b)は、パネル容器30Dを、正面パネル12を外した状態で+X方向側から見た正面図である。
図17(a)、(b)に示すとおり、棚板保持具85は、同一構造の二組の梯子状構造体138が、左面パネル14の内表面と、右面パネル15の内表面とにそれぞれ接合され、かつ、底面パネル16と当接して固定されている。これらの二組の梯子状構造体138をそれぞれ、第1棚板保持具および第2棚板保持具と称することもできる。第1実施形態では、棚板保持具が天面パネル11と、底面パネル16とに圧接する構造であったが、本変形例では底面パネル16の上に梯子状構造体138が自重により搭載されていて、天面パネル11とは当接せず、代わりに左面パネル14または右面パネル15と接合されている。
棚板保持具85を構成する各々の梯子状構造体138は、上下方向に延びる一対の保持具支柱135と、当該保持具支柱135どうしを水平方向に連結し、かつ、棚板91を保持する役割を持つ複数の横桟136とを備える。本変形例では、保持具支柱135と横桟136は、断面形状が長方形の角材を組み合わせた構造であるが、断面形状等はこれに限るものではない。ただし、断面形状が長方形または正方形の角材を組み合わせた場合には、円柱材を用いた場合と比べて、保持具支柱135や横桟136と、左面パネル14または右面パネル15との接触面積や、横桟136と底面パネル16との接触面積を大きくすることができるため、パネルへの負荷軽減の観点で有利である。
棚板保持具85と、左面パネル14および右面パネル15とは、接合手段137を介して互いに接合されるが、当該接合手段137としては接着剤等の任意の接合方法が適用できる。この場合、棚板保持具85、棚板91、および棚板91に搭載された荷物の荷重負荷の大半は、底面パネル16で支えることとなるが、一部、左面パネル14および右面パネル15にも分散される。しかしながら、梯子状構造体138と、左面パネル14および右面パネル15との接触面積は広く、左面パネル14および右面パネル15を変形、損傷させるリスクは非常に小さい。また、底面パネル16への荷重も横桟136の接触面積が広いことから分散され、底面パネル16を変形、損傷させるリスクも同様に小さくすることができる。
(c)変形例3
本開示の運搬用台車の変形例3の構成について、図18、図19に基づき説明する。図18は、変形例3の運搬用台車10Eを示す斜視図である。図19は、パネル容器30Eの内部について、棚板保持具86の構造および配置を示す側面図、平面図および正面図である。図19(a)は、棚板保持具86の無負荷状態の側面図である。図19(b)は、パネル容器30Eおよび台車本体50の側枠の一部についての、天面パネルを取り外した状態における平面図である。図19(c)は、正面パネル12を外した状態におけるパネル容器30Eおよび台車本体50の側枠の一部についての正面図である。
変形例3の運搬用台車10Eは、図18に示すように、第2実施形態と同様に、パネル容器30Eの内部には、左面パネル14の内表面から右面パネル15の内表面に至るY方向に延びる棚板保持具86が配置されている。しかし、変形例3の棚板保持具86は、保持具横梁や当該保持具横梁どうしを連結する横梁連結桟等はなく、図19(a)に示すとおり、棚板の機能を兼ね備えた棚板保持具86自体が、無負荷状態では主面の軸線が湾曲した構造となっている。
すなわち、棚板保持具86は、それ自体が棚板としての形状を備えており、所定の荷重負荷によって変形する板バネ状の弾性板部材141を備えている。また、棚板保持具86は、その両端部に、主面に対して垂直な面を有する側面固定具142を備えている。これにより、棚板保持具86は、無負荷状態では湾曲が発生し、パネル容器30E内に固定することが困難であるが、当該棚板保持具86の凸状の面を上向きとして、この上に何らかの荷物を搭載した場合には、湾曲状態が解消され、弾性板部材141に発生する内部応力と、搭載した荷物の荷重とが釣り合い、かつ、当該棚板保持具86の両端部である側面固定具142が、それぞれ左面パネル14および右面パネル15の内表面に押し付けられる。これにより、荷物を搭載した棚板保持具86を、パネル容器30E内の収納空間の最下面以外の任意の位置に固定することができる。
このように、本変形例では、無負荷時に湾曲し、負荷を掛けたときに平面状態に変形するような板バネ構造等の弾性部材から構成される弾性板部材141を用いることにより、簡単に、パネル容器30E内の任意の高さに、棚板としての機能を有する棚板保持具86を固定することができる。
(d)変形例4
本開示の変形例4の運搬用台車の構成について、図20、図21に基づき説明する。図21は、変形例4の運搬用台車10Fを示す斜視図である。図21は、パネル容器30Fおよび台車本体50の側枠の一部についての平面図および正面図である。
本変形例は、第3実施形態の運搬用台車10Bと類似するが、棚板保持具83Aは、第3実施形態の棚板保持具83とは異なり、左面パネル14および右面パネル15の上端に引っ掛けて吊り下げるのではなく、さらにその外方に配置される台車本体50の第1側枠51および第2側枠52に引っ掛けることにより固定されている。具体的には、左面パネル14および右面パネルに沿って吊り下げられる棚板保持シート152の上端には、直接、台車本体50の第1側枠51および第2側枠52に引っ掛けて固定する構造を有する側枠固定用フック部151が取り付けられている。これを第1側枠51および第2側枠52の上端の支柱55等に引っ掛けることにより、棚板保持具83Aはパネル容器30Fに対して固定される。なお、側枠固定用フック部151は、台車本体50の部材に対してであればどの部位に対して固定させてもよく、支柱55以外では横桟56に固定させたり、支柱55または横桟56を介して、連結部材53に固定させてもよい。
その他の、位置調整スリット153、連結シート155、シート用フック154等の構成は、第3実施形態の棚板保持具83における位置調整スリット123、連結シート125、シート用フック124等の構成と同様である。棚板保持シート152や側枠固定用フック部151の材料等についても同様である。なお、第3実施形態の棚板保持具83と同様、これらの一対となる棚板保持具83Aをそれぞれ、第1棚板保持具および第2棚板保持具と称することもできる。
本変形例の運搬用台車10Fは、左面パネル14および右面パネル15の上端ではなく、台車本体50の第1側枠51および第2側枠52に対してフック構造を引っ掛けることにより、二組の棚板保持具83Aをそれぞれ吊り下げ、これに棚板93を固定する。このため、棚板保持具83Aや棚板93の耐荷重性や剛性に問題がなければ、重量物である荷物を棚板93に搭載しても、パネル容器30Fの各パネルにはほとんど荷重負荷を掛けることがなく、パネルの変形や損傷の危険性を著しく低減できる。したがって、パネル容器30Fに対して棚板保持具、棚板、および棚板上の荷物の荷重負荷等を考慮した強度設計をする必要はなく、所定の断熱性を満たす限り大幅な軽量化やパネルの薄型化を図れる等、パネル容器の設計の自由度を広げることが可能である。また、台車本体50とパネル容器30Fとは、一体の運搬用台車10Fとして移動、保管されるため、パネル容器30Fに対する棚板保持具83Aや棚板93の相対的な位置が移動や保管中に変動するおそれもない。
(e)変形例5
次に、本開示の変形例5の運搬用台車の構成について、図22、図23に基づき説明する。図22は、変形例5の運搬用台車10Gを示す斜視図である。図23は、パネル容器30Gおよび台車本体50の側枠の一部についての平面図および正面図である。
本変形例は、前述の変形例4の運搬用台車10Fと類似するが、棚板保持具83Bは、変形例4の棚板保持具83Aとは異なり、台車本体50の第1側枠51および第2側枠52の上端付近に設置された側枠ピン166に対して、紐状部材である側枠固定紐部材161が引っ掛けられて、または結び付けられ、当該側枠固定紐部材161と連結した棚板保持シート162が左面パネル14および右面パネル15に沿って吊り下げられて固定されている。紐状部材としては、可撓性が高く、引張り伸びが小さい部材として、ターポリン部材、綿や化学繊維等の織物系部材があげられ、強度を上げるためには、ピアノ線等の金属ワイヤやPET樹脂等の樹脂ワイヤが挙げられるが、これらには限定されない。
その他の、位置調整スリット163、連結シート165、シート用フック164等の構成は、第3実施形態の棚板保持具83における位置調整スリット123、連結シート125、シート用フック124等の構成と同様である。棚板保持シート162の材料等についても同様である。なお、変形例4の棚板保持具83Aと同様、これらの一対となる棚板保持具83Bをそれぞれ、第1棚板保持具および第2棚板保持具と称することもできる。
本変形例の運搬用台車10Gは、棚板保持具83Bの台車本体50への取り付け部分がフック構造ではなく、紐状部材となっているため、棚板保持具83Bの構造が簡単となり、台車本体50への取り付け箇所、取り付け方法の選択肢が多いという利点を有する。本変形例では、第1側枠51および第2側枠52の上端付近に側枠ピン166を設置してこれに対して棚板保持具83Bの紐状部材である側枠固定紐部材161を引っ掛ける態様としているが、側枠ピン166を設けずに、何らかの側枠の突起物等を利用して引っ掛けることも可能である。また、このような突起物が存在しない場合でも、棚板保持具83Bの紐状部材を、直接、支柱55や横桟56に結び付けて固定してもよい。
(f)変形例6
次に、本開示の変形例6の運搬用台車の構成について、図24、図25に基づき説明する。図24は、変形例6の運搬用台車10Hを示す斜視図である。図25は、パネル容器30Hの内部に配置された棚板保持具84Aを説明するための斜視図である。
第4実施形態の運搬用台車10Cでは、パネル容器30C内部に、複数の円柱型部材の組み合わせによって略直方体形状に構成されたラック構造を有する棚板保持具84を内部に支持していた。一方、本変形例の運搬用台車10Hは、図24および図25に示すとおり、パネル容器30Hの内部に、主面が上下方向に延びる一対の側面板171と、これらの一対の側面板171の上端および下端どうしを水平方向に連結する天面板172および底面板173を備えた板状部材で構成された枠状構造の内部に、複数の高さで複数の棚板94A、94B、94Cおよび94Dを同時に取り付けたり取り外したりすることができるラック構造を有する棚板保持具84Aを備えている。
棚板保持具84Aの一対の側面板171の内側の面、すなわち、一方の側面板の他方側に向いた面には、棚板を支持するための突起である棚板支持部174が当該側面板171の高さ方向に沿って複数配置されている。これにより、棚板94A、94B、94C、94Dを、所定の高さに対応する棚板支持部174の上にスライドして差し込みことにより、棚板保持具84Aの内部に複数の棚板を配置させることができる。また、棚板の数を減らしたい場合、または、高さのある荷物を棚板に載せたい場合は、必要に応じて不要な棚板を外して使用することができる。
本変形例の運搬用台車10Hは、ラック構造を有する棚板保持具84Aが、一対の側面および上端面、下端面をそれぞれ、板状構造物である側面板171、天面板172および底面板173で構成しているため、荷物を搭載したときの耐荷重性が良好であり、重量物を安定して積載することが可能である。また、棚板保持具84Aのパネル容器30Hへの固定は、当該棚板保持具84Aを底面パネル16の上方に搭載するだけであり、かつ、棚板保持具84Aと底面パネル16とは、底面板173全体で接触し、極めて広い接触面積を有するため、棚板保持具84Aを安定固定させることができるとともに、底面パネル16の変形、損傷の危険性を一層低減することができる。
(g)変形例7
ついで、本開示の変形例7の運搬用台車の構成について、図26、図27に基づき説明する。図26は、変形例7の運搬用台車10Iを示す斜視図である。図27は、パネル容器30Iの内部に配置された棚板保持具84Bを説明するための斜視図である。
本変形例も変形例6と部分的に類似しているが、運搬用台車10Iは、図26および図27に示すとおり、パネル容器30Iの内部に、主面が上下方向に延びる一対の側面板181と、これらの一対の側面板181の上端どうしを水平方向に連結する天面板182と、当該一対の側面板181と当該天面板182とを回転自在に連結する連結具183と、を有する棚板保持具84Bを備えている。
棚板保持具84Bは、一対の側面板181を開いた状態、すなわち図27(a)のように一対の側面板181が、天面板182に対して互いの主面が略直交する状態である場合、これをパネル容器30Iの内部の底面パネル16の上に搭載するだけで、当該天面板182を棚板保持具84Bの中間棚であるとみなして、当該天面板182の下方側、すなわち底面パネル16の上と、当該天面板182の上とに、それぞれ離隔して荷物を搭載することができる。また、棚板保持具84Bの不使用時には、そのまま棚板保持具84Bをパネル容器30Iの外部に取り出してもよいが、図27(b)に示すように、一対の側面板181を、連結具183を介して折り曲げることにより、当該一対の側面板181が、天面板182と互いの主面が略平行となるように、すなわち1枚の板状に折り畳むことができ、コンパクトに収納することができる。
本変形例の運搬用台車10Iの棚板保持具84Bは、構造が簡単であり、組み立ておよび折り畳みも容易であり、かつ、折り畳んだ時に平面状にコンパクトに収納できる。このため、棚板保持具84Bは、不使用時にも折り畳んだ状態で、パネル容器30Iの底面パネル16の上に収納しておくことができる。この場合、棚板が必要となった場合に、即座に組み立てて使用することができるため、作業性が良く、利便性が向上する。さらに、棚板保持具84Bおよび搭載した荷物の重量は、一対の側面板181を通じて底面パネル16で支えることとなり、側面板181の接触面積が比較的広いことにより、荷重負荷が分散され、底面パネル16の変形や損傷の危険性を低減することができる。
(h)変形例8
次に、本開示の変形例8の運搬用台車の構成について、図28、図29に基づき説明する。図28は、変形例8の運搬用台車10Jを示す斜視図である。図29は、パネル容器30Jおよび台車本体50の側枠の一部についての平面図および正面図である。
本変形例は変形例6と部分的に類似しているが、運搬用台車10Jは、図28および図29に示すとおり、パネル容器30Jの内部に、主面が上下方向に延びる一対の側面板184と、これらの一対の側面板184の下端どうしを水平方向に連結する底面板185と、これらを天面パネル11の対向する2辺に沿った一対の端部に引っ掛けて固定するための天面パネル固定用フック部187とを備えた棚板保持具84Cを備えている。
棚板保持具84Cの一対の側面板184の内側の面、すなわち、一方の側面板の他方側に向いた面には、変形例6の棚板保持具84Aと同様、棚板を支持するための突起である棚板支持部186が当該側面板184の高さ方向に沿って複数配置されている。これにより、棚板94E、94Fを、所定の高さに対応する棚板支持部186の上にスライドして差し込みことにより、棚板保持具84Cの内部に複数の棚板を配置させることができる。
本変形例では、棚板保持具84Aが、天面パネル11の2箇所の端部にフックによって引っ掛けられている構造としているが、これに限定せず、棚板保持具84Aの上端部が、当該パネルに接着剤等により固着されていてもよく、または、荷物の耐荷重によっては、面ファスナー等の着脱可能な係合方式により当該パネルに係合されていてもよい。
本変形例の運搬用台車10Jの棚板保持具84Cは、安定した耐荷重性を有するラック構造である棚板保持具84Cを、天面パネル11に対して引っ掛けて吊り下げることにより、棚板保持具84Cや搭載した荷物の重量による荷重負荷を、天面パネル11および、これが端面上に搭載される左面パネル14、右面パネル15、正面パネル12および背面パネル13に、均等に分散させることができ、天面パネル11にはある程度の強度が必要とされるものの、それ以外の特定のパネルに荷重が集中することがなく、パネル容器30J全体としての剛性を保持しやすい利点を有する。また、天面パネル11全体が、蓋構造として着脱できるように構成しておけば、天面パネルを外すことによって、棚板保持具84Cが一緒に外せるため、荷物を出し入れする際の作業性が向上する。
また、図示しないが、棚板保持具84Cのラック構造を、例えば、第3実施形態の棚板保持具83で使用する棚板保持シート122、パネル固定用フック部121、位置調整スリット123、連結シート125、シート用フック124等を有する構成に置き換えてもよい。
(i)変形例9
最後に、本開示の変形例9の運搬用台車の構成について、図30に基づき説明する。図30は、変形例9の運搬用台車10Kを示す斜視図である。なお、説明の便宜のため、天面パネル11を省略している。
本変形例の運搬用台車10Kのパネル容器30Kは、第3実施形態の運搬用台車10Bのパネル容器30Bと類似するが、右面パネル15に引っ掛けられていた棚板保持具83が、右面パネル15に対してではなく、背面パネル13に対して引っ掛けられ、吊り下げられて支持されており、棚板93がY方向の対向する両端ではなく、−Y方向側と−X方向側の互いに対向しない端部でそれぞれの棚板保持具83に支持されている点が異なっている。この場合、搭載する荷物の重量にもよるが、棚板93はパネル容器30Kの収容空間の水平方向であるY方向全域に延びて配置されている必要はなく、図30のように−Y方向側だけに偏在させることもできる。こうすることにより、例えば複数の荷物の中に一部、背の高い荷物がある場合においても、棚板が当該荷物の搭載を阻害することなく、これらの荷物を収納することができる。当然ながら棚板93をY方向全域に渡るように配置することもできる。
また、第3実施形態のパネル容器30Bの棚板保持具83、変形例4のパネル容器30Fの棚板保持具83Aおよび変形例5のパネル容器30Gの棚板保持具83Bにおいて、追加の棚板保持具が背面パネル13に引っ掛けられて支持されるようにし、棚板を左面パネル14と右面パネル、あるいは、第1側枠51と第2側枠52、だけではなく、背面パネル13側からも追加で支持する構造としてもよい。こうすることにより、他のパネルや台車に掛かる荷重負荷を軽減し、棚板自体の破損や変形を一層、抑制することができる。