<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施の形態に係る空気圧工具について、図1乃至図11に基づき説明する。図1に示される空気圧工具1は、ハウジング2を外郭とし、圧縮空気により作動してビット部1Aで止具であるネジ1B(図3)を締結する工具である。空気圧工具1は、ハウジング2と、作動部3と、ノーズ部9と、マガジン10を有する。ビット部1Aは、先端にネジ1Bと螺合するビットを有する長尺円柱状に構成されている。
ハウジング2は、作動部3を収容する作動部ハウジング21とハンドル22とを有している。作動部ハウジング21の一端側には、前述のノーズ部9が装着されている。この作動部ハウジング21からノーズ部9に向かう方向を下方として上下方向を定義する。
作動部ハウジング21の上下方向の略中間位置から、ハンドル22が上下方向と交差する方向に延出している。ハンドル22は、作業者が把持する把持部22Aと、反作動部ハウジング21側の端部に位置する後端部22Bとを有している。作動部ハウジング21側を前側、後端部22B側を後側として前後方向を定義する。後端部22Bには、圧縮空気吸気口22aを有する接続部22Cが設けられている。接続部22Cには減圧弁23が設けられ、後端部22Bのうち減圧弁23の上方には圧縮空気排気口22bが形成されている。圧縮空気吸気口22aは、図示せぬ潤滑油の給油口としても用いられる。
また、ハンドル22内には、把持部22Aから後端部22Bに向かって延び、後述の排気室21eと圧縮空気排気口22bとを連通する排気管24が設けられている。すなわち、排気管24は、作動部3と圧縮空気排気口22bとの間に設けられている。排気管24は、その外側を蓄圧室22c、内側を排気通路22dとしてハンドル22(把持部22A)内の空間を区画している。つまり、蓄圧室22c及び排気管24の少なくとも一部は把持部22A内に設けられており、排気通路22dは蓄圧室22cと隣接して画成されている。すなわち、蓄圧室22cは、圧縮空気吸入口22aと作動部3との間に位置し、排気管24に隣接するように画成されている。蓄圧室22cは、減圧弁23を介して圧縮空気吸気口22aと接続されており、圧縮空気吸気口22aから流入する空気を内部に蓄えることができる。具体的には、接続部22Cがコンプレッサ等の図示せぬ圧縮空気供給源に接続されると、圧縮空気吸気口22aから流入した圧縮空気が減圧弁23によって減圧された後蓄圧室22c内に取り入れられ貯留される。
排気管24は、筒状のケーシングに相当し、圧縮空気が流入される流入部24Aと、流入部24Aと連通し流入部24Aの内径よりも小さい内形を有する絞り部24Bと、絞り部24Bと連通し絞り部24Bの内径よりも大きい内径を有する大径部24Cと、絞り部24B内の空間と後述のドレン室22eとを連通する循環径路24Dとを有している。流入部24Aは、後述の排気室21eと連通している。作動部3を通過した圧縮空気は、大径部24Cを通過する際に膨張して流速が低下する。大径部24Cは膨張室に相当する。循環径路24Dは、ドレン室22eと絞り部24Bとを連通孔24Iで接続することにより、絞り部24Bを高速で通過する圧縮空気の負圧でドレン室22e内の気圧を大径部24C内の気圧よりも低くして、循環させる。
図2(a)に示されるように、大径部24C内には、作動部3を通過した圧縮空気からドレンを分離するドレンセパレータ24Eが設けられている。具体的には、大径部24Cは段差部24Fを有し、ドレンセパレータ24Eは段差部24Fに嵌め込まれて固定されている。排気管24及びドレンセパレータ24Eは分離手段に相当する。
ドレンセパレータ24Eは、図示せぬ複数の貫通孔を有する円板状の基部24Gと、基部24Gから排気管24の径方向外側に向けて斜め後方に突出する複数の羽根部(フィン構造)24Hとを有する。ドレンセパレータ24Eは、一枚の金属製の円板を折曲げ加工したものであって、図示せぬ複数の貫通孔が60°おきに放射状に形成されている。具体的には、図2(b)に示されるように、円板材料に対し、破線で示される部分は切断せず実線で示される部分のみを切断して、破線で示される部分で折り曲げることによって、基部24G、図示せぬ貫通孔、略扇形の板状の羽根部24Hを形成している。羽根部24Hは、図示せぬ貫通孔を通過した圧縮空気を円周方向及び径方向外側、すなわち、遠心方向に案内する。圧縮空気が通過する際に羽根部24Hに衝突することによって、通過抵抗と遠心力によって圧縮空気とドレンとが分離される。羽根部24Hは邪魔板と言い換えることもできる。また、羽根部24Hは、ドレン分離後の圧縮空気が羽根部24Hに沿って円周方向に流れ、分離されたドレンが羽根部24Hを伝って大径部24Cの側壁に流れ、付着するように構成されている。
また、ハンドル22の後端部22Bは、圧縮空気排気口22bからドレンセパレータ24Eに向かう方向に突出する筒状の区画壁22Dを有している。区画壁22Dは前端部分が大径部24C内に位置するように突出して設けられている。このような配置により、後端部22B及び排気管24は、ドレン室22eと、流路22fと、風路22gとを画成している。ドレン室22eは、貯蔵部に相当し、ドレンセパレータ24Eによって分離されたドレンを貯蔵する空間である。ドレン室22eは、ハンドル22内に設けられ、作動部3よりも圧縮空気排気口22b側に位置する。具体的には、区画壁22Dの外側であり排気管24と対向しない部分であって、把持部22Aと圧縮空気排気口22bとの間に画成されている。流路22fは、排気管24の後端部分と、区画壁22Dのうち排気管24の後端部分に対向する前端部分との間に画成されている。風路22gは、区画壁22Dの内側の空間であって、排気管24と圧縮空気排気口22bとの間を連通する。風路22gは排気通路22dの一部である。以上のように、区画壁22Dは、風路22gとドレン室22eとを区画している。
また、圧縮空気排気口22bと風路22gとの間には、膨張空間22hが画成されている。つまり、膨張空間22hは、圧縮空気排気口22bと排気管24との間に画成されている。膨張空間22hは、風路22gの断面積よりも大きな断面積を有しており、風路22gから流入する空気を膨張させる膨張室である。膨張空間22hには、吸音材が挿入され、排気音を低減するマフラー22Eとなっている。
以上の構成により、ドレンセパレータ24Eを通過した圧縮空気は、風路22g内を流れ、マフラー22Eを通過した後、圧縮空気排気口22bから大気中に排気される。一方、ドレンセパレータ24Eにより分離されたドレンは、羽根部24Hから大径部24Cの側壁に付着し、大径部24Cの側壁を伝って流路22fを通り、ドレン室22e内に貯留される。なお、ドレン室22eは循環径路24D,連通孔24Iを介して絞り部24Bに接続されているので、ドレン室22e内の気圧は大径部24C内の気圧よりも低くなるように設定されている。これにより、ドレンセパレータ24Eにより圧縮空気から分離されたドレンを、ドレン室22eに引込んで貯蔵することができる。
さらに、ハンドル22のうち上側の部分であってドレン室22eの側壁となる部分には、ハウジング2の外部とドレン室22eとを連通するドレン排出孔22jが形成されている。ドレン排出孔22jは、透明なドレンボルト24Jで密封されている。ドレンボルト24Jが透明なため、ドレンの貯留状態を外部から容易に確認でき、任意にドレンボルト24Jを外してドレンを排出することができる。ドレンボルト24Jはツールレスで外せる(手回しの)ボルトにしてもよい。また、別実施形態として、ドレンの漏れが実用上十分に少ない時には、空気圧工具1が駆動しない状態であって空気圧工具1を上下逆転させた状態において、ドレンを外部に排出することができると共に、空気圧工具1の駆動時には表面張力によってドレンが漏れ出さない程度の小径に形成された孔のみの構成としてもよい。
図3に示されるように、作動部ハウジング21のうちハンドル22の根元周辺位置には、操作弁25及びトリガ26が設けられると共に、操作弁25に連通・接続される第一空気通路21bと、後述のスリーブバルブ43を上下動可能に内蔵する溝21aとが形成されている。操作弁25は、第一空気通路21bと外気との間の連通を制御しており、操作弁25が動作されていない状態で、第一空気通路21bと外気とを遮断し、第一空気通路21bと蓄圧室22cが連通している。操作弁25が動作された状態で第一空気通路21bと外気とを連通し、第一通路21bと蓄圧室22cが遮断されている。トリガ26は、後述のプッシュレバー91(図1)と協働して操作弁25を動作可能に構成されており、制御部の一例である。
溝21aは、後述のスピンドル41の周囲であってスピンドル41の上下方向略中間位置に形成されており、溝21aの下側において第一空気通路21bと連通し、上側では遮断している。
また、作動部ハウジング21には、溝21aの上部及び蓄圧室22cに連通する第二空気通路21cと、後述のシリンダ51内と後述のエアモータ31との間を連通させる第三空気通路21d(図4)と、エアモータ31及び排気通路22dと連通する排気室21eと、第一空気通路21bの近傍に位置し溝21a及び排気通路22dと連通する第四空気通路21fとが画成されている。
作動部ハウジング21内には、作動部3が支持されている。作動部3は、圧縮空気吸気口22aから流入する圧縮空気により作動し、ねじ1Bを打撃する、又は、ねじ1Bを回転させる機構であって、エアモータ31と、遊星歯車機構32と、回転体4と、シリンダ部5とを有している。エアモータ31は、作動部ハウジング21内の最上端位置に上下方向を出力軸方向として回転可能に支持されており、圧縮空気により回転する公知の装置である。エアモータ31は、第三空気通路21d(図4)を介して後述のシリンダ室5aと連通すると共に、排気室21eを介して排気通路22dと連通している。
遊星歯車機構32は、後述のスピンドル41を遊星キャリアとする構成であって、エアモータ31の出力軸と同軸一体回転する太陽ギア32Aと、太陽ギア32Aと噛合する複数の公転ギア32Bと、作動部ハウジング21に固定され公転ギア32Bと噛合するリングギア32Cと、を有している。公転ギア32Bは後述のスピンドル41の上部に回転可能に装着されている。
回転体4及びシリンダ部5について説明する。回転体4は、スピンドル41と、スライダ42と、副ピストン部6と、主ピストン部7とを備える。スピンドル41は、上端が閉塞し下端が開放した筒体であり、作動部ハウジング21に回転可能に保持され、その上部に複数の公転ギア32Bを回転可能に保持している。このような構成により、スピンドル41が遊星歯車機構32の遊星キャリアの役割を果たし、スピンドル41にエアモータ31の回転が減速して伝達される。
スピンドル41の側壁には筒吸気孔41a及び筒排気孔41bが形成されており、筒吸気孔41a及び筒排気孔41bは溝21aに連通可能な位置に形成されている。作動部ハウジング21の溝21a内には、上下動可能な円筒状のスリーブバルブ43がバネ44により上方に付勢されて設けられている。スリーブバルブ43は、主弁通気孔43aを有していると共に、上端、下端側の側面がシールされている。スリーブバルブ43は、溝21aの上端側に位置するときには、スリーブバルブ43と作動部ハウジング21との隙間からスピンドル41内に圧縮空気が流入しないように、筒吸気孔41aを閉塞し、かつ、スピンドル41内と排気通路22dが連通している。一方、スリーブバルブ43が溝21aの下端側に位置する際(図5)には、第二空気通路21cを介して筒吸気孔41aと蓄圧室22cとが連通し、かつ、スピンドル41内と排気通路22dは遮断している。
プッシュレバー91及びトリガ26を操作しない状態では、溝21aの上部は第二空気通路21cを介して蓄圧室22cと連通しており、溝21aの下部は第一空気通路21b及び操作弁25を介して蓄圧室22cと連通している。よって、第一空気通路21b及び第2空気通路21c内には圧縮空気が満たされている。このため、スリーブバルブ43は、バネ44、及び、蓄圧室22cからの圧縮空気により上方に付勢され、かつ、第一空気通路21b内の圧縮空気によって押し上げられて、溝21a内において上端側に位置しており、筒吸気孔41aと蓄圧室22cとの連通を遮断している。
また、スピンドル41の内面には、上下方向に延びる一対の凹部41Cが形成されている。
スライダ42は、スピンドル41内に配置され、凹部41Cと係合する凸部42Aを有し、スピンドル41に対して回転不能かつ上下動可能に構成されている。またスライダ42において凸部42A下端位置には、後述のプレート部52と面当接してスライダ42の上下空間を遮断するエア遮断面42Bが規定されている。
シリンダ部5は、内部にシリンダ室5aが画成され、シリンダ51と、プレート部52と、ピストンバンパ53とから主に構成されている。シリンダ51は、筒状に構成されており、作動部ハウジング21内において、スピンドル41の下方に配置されて作動部ハウジング21に固定されている。シリンダ51の外部であって作動部ハウジング21との間には戻し空気室5bが画成される。シリンダ51において下方位置には、シリンダ51から戻し空気室5bへの圧縮空気の流出を許容し、戻し空気室5bからシリンダ空間5aへの圧縮空気の流出を遮断する逆止弁54が設けられた圧縮空気流出孔51aが形成されている。シリンダ51において、圧縮空気流出孔51aの下方には、戻し空気室5bからシリンダ51への圧縮空気の流入を許容する圧縮空気流入孔51bが形成されている。
プレート部52は、シリンダ51とスピンドル41との間に位置しており、シリンダ51と協働して主ピストン部7が収容されるシリンダ室5aを画成している。プレート部52には、シリンダ室5a及び第三空気通路21d(図4)と連通する通気孔52aが形成されている。よって、シリンダ室5a内に流入した圧縮空気は、通気孔52aから第三空気通路21dを介してエアモータ31に供給される。また、プレート部52の上面はエア遮断面42Bと面当接するように平面状に構成されている。よって、スライダ42が下死点側へと移動しエア遮断面42Bがプレート部52と当接した状態では、スライダ42とプレート部52とが密着した状態になり、スライダ42とプレート部52との間から圧縮空気がシリンダ室5a内に流入することは抑制される。
ピストンバンパ53はゴム等の弾性体であり、シリンダ室5a内においてシリンダ51の下端位置に配置されている。ピストンバンパ53には、上下方向を貫通方向とする貫通孔53aが形成されており、貫通孔53a内にはOリング53Aが配置されている。ピストンバンパ53に上方から衝撃が加えられた場合、ピストンバンパ53の弾性によりその衝撃を緩衝することができる。
図3に示されるように、副ピストン部6は、シャフト61と、ドライバビット装着部62と、副ピストン63と、鍔部64とが一体成形されて構成されている。
シャフト61は、副ピストン部6において上端に位置し、上下方向に延びる長尺円筒状に構成されスライダ42に装着されている。シャフト61において、上端側には、スライダ42の上部でスピンドル41内に開口する空気供給孔61aが形成され、下側には、後述の上部中空空間71a内に開口すると共に空気供給孔61aに連通する空気吐出孔61bが形成されている。
ドライバビット装着部62は副ピストン部6において下端に位置し、ビット部1Aが装着可能であると共に、上下方向と直交する外径が、Oリング53Aに嵌合可能な程度の径になるように構成されている。
副ピストン63は、シャフト61の下方に位置し、シャフト61と一体に構成されており、外径がシャフト61より大径になるように構成されている。副ピストン63の外周にはOリング63Aが装着されている。
鍔部64は、副ピストン63とドライバビット装着部62との間に位置しており、副ピストン63の外径より小径であってドライバビット装着部62の外径より大径になるように構成されている。鍔部64は、ドライバビット装着部62がピストンバンパ53の貫通孔53a内に挿入された時に、ピストンバンパ53の上面と当接するように構成されている。
主ピストン部7は、主に主ピストン71から構成されている。主ピストン71は、外径がシリンダ室5a内径より小径に構成された円筒状に構成されると共に、内部に副ピストン部6が内蔵された状態でシリンダ室5a内に配置されている。主ピストン71において筒状を成す内部には、上部中空空間71aと下部中空空間71bとが上下に連通し並んで形成されている。上部中空空間71aはその内径がシャフト61の外径より僅かに大きくなると共に副ピストン63の外径より小さくなるように形成されており、シャフト61との間の隙間を埋めるようにOリング72が装着されている。下部中空空間71bは、その内径が副ピストン63の外径より僅かに大径になるように構成されており、Oリング63Aが下部中空空間71b内の壁面に当接して摺動可能に構成されている。上部中空空間71aと下部中空空間71bとは、上述のように上部中空空間71aの内径よりも下部中空空間71bの内径の方が大きいため、上部中空空間71aと下部中空空間71bとの境界位置に段差71Aが画成される。
主ピストン71には、下部中空空間71b内に開口すると共に主ピストン71外周に開口する連通孔71cが段差71A近傍位置に形成されている。また主ピストン71の外周面には、それぞれOリング73、74が装着されている。Oリング73は、図9に示されるように主ピストン71が下死点位置に移動した状態、即ちピストンバンパ53と当接した状態において、圧縮空気流出孔51aと圧縮空気流入孔51bとの間に位置するように配置されている。Oリング74は、連通孔71cの上方位置に形成されている。
図1に示されるように、ノーズ部9は作動部ハウジング21の下側に位置し、ビット部1Aが通過すると共にねじ1B(図4)がマガジン10から供給される射出通路9aと、ノーズ部9の下端に位置しねじが打ち出される射出孔9bとが形成されている。またノーズ部9には、プッシュレバー91と、ねじ送り部92とが設けられている。プッシュレバー91は、射出孔91b近傍に上下動可能に設けられており、操作弁25と連動している。ねじ送り部92は、マガジン10から供給される図示せぬねじを射出通路9aに供給している。
マガジン10は、ノーズ部9に装着され、内部に複数のねじ1B(図4)が図示せぬ連結バンドにより結合された状態で内蔵している。
以上のように構成された空気圧工具1の動作について、図4〜図11を参照して説明する。なお、図4〜図11において、圧縮空気の流れが矢印で示されている。また、動作を適切に説明するため、図1乃至図3にて付した符号のうち一部を省略するとともに、第三空気通路21dを概念的に二点鎖線で示した。
まず、接続部22Cに図示せぬコンプレッサに接続すると、圧縮空気吸気口22a及び減圧弁23を介して圧縮空気は蓄圧室22c及び操作弁25内に流入する。さらに、蓄圧室22cに連通する第二空気通路21c、及び、操作弁25に連通する第一空気通路21bにも圧縮空気が流入する。これにより、スリーブバルブ43は、上側から第二空気通路21c内の圧縮空気に押圧され、下側からも第一空気通路21bの圧縮空気及びバネ44の付勢力によって押圧されるので、図3に示されるように溝21a内の上端側の位置に保持される。このとき、スリーブバルブ43は、溝21aの上端側に位置し、筒吸気孔41aと第二空気通路21cとを遮断している。
図4に示される初期状態から、プッシュレバー91を被締結材の表面1Cに押し当ててトリガ26を操作すると、操作弁25が作動し、空気圧工具1の駆動が開始される。なお、トリガ26を引きながらプッシュレバー91を被締結材の表面1Cに押し当てた場合も同様に操作弁25が作動し、空気圧工具1の駆動が開始される。操作弁25を作動させると、第一空気通路21bが操作弁25を介して外気と連通され、スリーブバルブ43の下端側の圧力がスリーブバルブ43の上端側の圧力より低下する。この圧力差によってスリーブバルブ43は、バネ44の付勢力に抗して溝21aの下端側に移動する。スリーブバルブ43が溝21aの下端側へ移動したことにより、図5に示されるように、筒吸気孔41aが第二空気通路21cを介して蓄圧室22cと連通し、スピンドル41内に蓄圧室22c内の圧縮空気が流入する。
圧縮空気がスピンドル41内に流入すると、図6に示されるように、主ピストン71の上面に空気圧が加わり、主ピストン部7が押し下げられて下降を開始する。その後、副ピストン63の上面にも空気供給孔61a及び空気吐出孔61bを通過した圧縮空気及び連通孔71cを通過した圧縮空気の空気圧が加わり、副ピストン部6も下方に押し下げられる。
図7に示されるように、主ピストン部7が所定距離下降してOリング74が通気孔52aを通過すると、スピンドル41内及びシリンダ室5aと通気孔52aとが連通し、スピンドル41内から流入した圧縮空気の一部が第三空気通路21dを通ってエアモータ31に供給される。エアモータ31は排気通路22dにも連通されているので、圧縮空気を、排気通路22dを介して大気中に吐出することにより、エアモータ31を圧縮空気により回転駆動することができる。そして、エアモータ31を通過した圧縮空気は、排気室21e、排気通路22dを流れ、排気管24のドレンセパレータ24Eを通ってドレンと圧縮空気とに分離される。ドレン分離後の圧縮空気は、風路22g内を流れ、マフラー22Eを通った後、圧縮空気排気口22bから大気中に排気される。一方、分離されたドレンは、大径部24Cの側壁を伝って流路22fを通り、ドレン室22e内に貯留される。なお、ドレン室22eは循環径路24D及び連通孔24Iを介して絞り部24Bに接続されているので、ドレン室22e内の気圧は大径部24C内の気圧よりも低くなっている。これにより、ドレンセパレータ24Eにより分離されたドレンをドレン室22eに引込むことができる。
エアモータ31の回転は、遊星歯車機構32を介してスピンドル41に伝達される。スピンドル41が回転することにより、凹部41Cに嵌合された凸部42Aを介して、スライダ42がスピンドル41と共に回転する。また、シャフト61及びビット部1Aも、スピンドル41と一体的に回転する。これにより、副ピストン部6及びビット部1Aは一体的に回転しながら下降してねじ1Bを締結部材に締め込む。
副ピストン部6が回転しながらさらに下降して、図8に示されるように、主ピストン71が下死点に到達する直前にOリング73が圧縮空気流出孔51aを通過すると、空気供給孔61a、空気吐出孔61b、連通孔71cを経由し、シリンダ室5aの圧縮空気の一部が圧縮空気流出孔51aより戻し空気室5bに供給される。
主ピストン71が下死点に到達して停止すると、図9に示されるように、副ピストン部6が主ピストン71内を摺動しながら下降する。よって、副ピストン部6だけの推力によりビット部1Aは下降し、ねじ1Bを被締結材に締め込む。このとき、主ピストン71の底面とピストンバンパ53との当接、及び、逆止弁54によって、戻し空気室5bと副ピストン63下部に位置する下部中空空間71b内とは遮断されている。よって、戻し空気室5bの圧縮空気は副ピストン63の下部に流入しない。
その後、ねじ1Bが所定の深さまで締められると、スライダ42のエア遮断面42Bがプレート部52に突き当たって密着することにより、スライダ42の下降を停止させると共にスピンドル41内とシリンダ室5aとの連通を遮断して通気孔52aへの圧縮空気供給を停止し、ほぼ同時に鍔部64がピストンバンパ53に当接しエアモータ31の回転が停止してねじ締めが完了する。
ねじ締め完了後、プッシュレバー91を被締結部材の表面1Cから離間させる、又は、トリガ26をオフにすると、操作弁25が初期位置に戻る。すなわち、プッシュレバー91及びトリガ26の少なくとも一方を初期状態に戻すと、操作弁25が初期位置に戻る。よって、ねじ締め完了後には、トリガ26をオフにした後プッシュレバー91を離間させてもよいし、トリガ26をオフにした後プッシュレバー91を離間させてもよい。
図10に示されるように、操作弁25が初期位置に戻ることにより、第一空気通路21b内に圧縮空気が流入し、スリーブバルブ43は溝21aの上端側に押し上げられる。スリーブバルブ43が上端側に押し上げられると、スリーブバルブ43の主弁通気孔43aと筒排気孔41bとが連通し、スピンドル41内の空間が第四空気通路21f及び排気室21eを介して排気通路22dと連通する。これにより、スピンドル41内及びシリンダ室5aの圧縮空気が排気通路22dへ排出される。具体的には、スピンドル41内から排出された圧縮空気は、エアモータ31から排出された圧縮空気と同様に、排気室21e及び排気通路22dを流れ、排気管24のドレンセパレータ24Eによってドレンと圧縮空気とに分離される。ドレン分離後の圧縮空気は、風路22g内を流れ、マフラー22Eを通った後、圧縮空気排気口22bから大気中に排気される。一方、分離されたドレンは、大径部24Cの側壁を伝って流路22fを通り、ドレン室22e内に貯留される。
スピンドル41内及びシリンダ室5aから圧縮空気が排気されて内部の圧力が低下すると、図11に示されるように、主ピストン部7が引き上げられ、戻し空気室5b内の圧縮空気が圧縮空気流入孔51bを通って主ピストン71の下部に流入する。戻し空気室5bから流入した圧縮空気により、主ピストン71はさらに押し上げられて初期位置に戻る。同時に、主ピストン71が移動したことで主ピストン71とピストンバンパ53による空気の遮断がなくなり副ピストン63の下部にも戻し空気室5b内の圧縮空気が流入し、スライダ42、副ピストン部6、主ピストン部7、及び、ビット部1Aが押し上げられて初期位置(図4)に戻る。また、戻し空気室5bに蓄えられていた圧縮空気のうち、主ピストン部7及び副ピストン部6の押上げ後の余剰空気は、ピストンバンパ53の貫通孔53aから外部へ排気される。同時にねじ送り部92により次の図示せぬねじが射出通路9aに送られて初期状態に戻る。
以上の空気圧工具1によれば、潤滑油と汚れや水分が混ざって発生したドレンを、圧縮空気から分離してドレン22eに貯蔵することができる。すなわち、ドレンが圧縮空気の排気と共に圧縮空気排気口22bから外部へ排出されて周囲に飛散することを防止できる。このため、作業者にドレンがかかることを防止したり、石膏ボード等の汚れを嫌う材質の部材を用いる作業現場において当該部材の保護を簡略化することができる。よって、高効率で、作業性及び環境性の高い空気圧工具を提供することができる。
また、排気管24が作動部3を通過した圧縮空気を膨張させるための大径部24Cを有するので、膨張により圧縮空気の流速を低下させることができる。よって、圧縮空気とドレンとを効率よく分離することができる。
また、ドレン室22eが作動部3よりも圧縮空気排気口22b側に位置しているので、分離されたドレンが作動部3内に再度侵入することを確実に防止できる。
また、ハウジング2は、圧縮空気吸気口22aと作動部3との間に位置し排気管24に隣接するように画成され、圧縮空気吸気口22aから流入する圧縮空気を蓄える蓄圧室22cを有しているので、圧縮空気を蓄圧室22cから作動部3へ安定して供給することができる。
また、ハウジング2は把持部22Aを有し、蓄圧室22c及び排気管24のうち少なくとも一部は把持部22A内に設けられるので、把持部22A内の空間を有効に活用することができ、空気圧工具の小型化を実現することができる。
また、ドレン室22eは、把持部22Aと圧縮空気排気口22bとの間に設けられるので、圧縮空気の流れの上流側から把持部22A、ドレン室22e、圧縮空気排気口22bの順に並ぶので、把持部22A内に配置された排気管24及びドレンセパレータ24Eによって圧縮空気からドレンを分離し、分離したドレンをドレン室22eへ貯蔵し、ドレンを除いた圧縮空気を圧縮空気排気口22bから排気することを効率よく行える。
また、ハウジング2は、排気管24と圧縮空気排気口22bとの間に画成され圧縮空気を膨張させる膨張空間22hを有するので、排気管24及びドレンセパレータ24Eによってドレンが分離された後の空気の流速を低下させて、緩やかに排気を行うことができる。よって、空気圧工具使用時の排気音や排気圧を低減することができる。
また、排気管24によれば、流入部24Aに流入した圧縮空気は、絞り部24Bで一旦絞られることにより流速が上がり、大径部24Cで再度膨張することにより流速が低下する。ドレンセパレータ24Eを大径部24Cに設けた断熱膨張に伴う結露により、効率よく圧縮空気とドレンとを分離することができる。
また、連通孔24Iを有する循環径路24Dを設けたことにより、絞り部24Bの圧縮空気の流速を利用してドレン室22eの気圧を大径部24Cの気圧よりも低くすることができる。これにより、ドレンセパレータ24Eによって分離されたドレンをドレン室22eへ引込むことができる。よって、ドレン室22eに真空ポンプ等の排気装置を接続する必要がなく、簡易な構成によってドレンをドレン室22eに引込むことができる。
また、ドレンセパレータ24Eを用いることにより、簡易な構成によって圧縮空気からドレンを分離することができる。
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態にかかる空気圧工具101について、図12を参照して説明する。空気圧工具101は、排気管24に代えて排気管124を有する点、ドレンセパレータ24Eに代えてフィルタ124Eを有する点、及び、マフラー22Eに代えてマフラー122Eを有する点を除き、第1の実施の形態にかかる空気圧工具1と同一の構成である。同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
排気管124は、流入部124Aと、流入部124Aの内径よりも小さい内径を有する絞り部124Bと、絞り部124Bの内径よりも大きい内径を有する大径部124Cと、絞り部124B内の空間とドレン室22eとを連通する循環径路124Dとを有している。流入部124Aは排気室21e(図1)と連通している。循環径路124Dは、循環径路24Dと同様に、絞り部124Bとドレン室22eとを連通する空間であるが、循環径路24Dがドレン室22eの下側とのみ連通する構成であったのに対し、循環径路124Dは区画壁22Dの径方向外側を取り囲むように環状に形成されている点で異なる。また、連通孔124Iは、区画壁22Dの径方向に延びるように形成されている。ドレン室22eが循環径路124D及び連通孔124Iによって絞り部124Bに接続されることにより、ドレン室22e内の気圧を大径部124C内の気圧よりも低くすることができる。循環径路124D及び連通孔124Iは負圧手段の一例である。
大径部124Cは、大径部24Cと同様に段差部24Fを有し、大径部124C内には圧縮空気からドレンを分離するフィルタ124E及び空気から粉塵等を除去するマフラー122Eが設けられている。具体的には、フィルタ124Eは段差部24Fに嵌め込まれて固定されている。フィルタ124Eは油分離フィルタであって、ドレンを含む圧縮空気を圧縮空気とドレンとに分離することができる。フィルタ124Eは、大径部124Cの内径とほぼ同一の外径を有する円柱形状であって、くさび型の凹部124aが形成されている。凹部124aの最深部は大径部124Cの軸上に配置されている。マフラー122Eは、フィルタ124Eよりも目の細かいフィルタであって、ドレンは通過できずに空気のみが通過可能に構成されている。マフラー122Eは、フィルタ124Eの凹部124aに嵌合する形状であって、その後端部を区画壁22Dによって固定されている。
このような構成によれば、圧縮空気がフィルタ124E及びマフラー122Eを通過することにより、圧縮空気に含まれるドレンはフィルタ124Eによって分離・回収される。分離されたドレンは、マフラー122Eの表面に沿って案内され、ドレン室22eへ貯蔵される。
以上より、第2の実施の形態にかかる空気圧工具101によれば、フィルタ124Eを用いる簡易な構成のフィルタ124Eの空気抵抗によって、圧縮空気からドレンを分離して貯蔵することができる。
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態にかかる空気圧工具201について、図13を参照して説明する。空気圧工具201は、排気管24に代えて排気管224を有する点、及び、ドレンセパレータ24Eを備えない点を除き、空気圧工具1と同一の構成である。同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
排気管224は、排気管24と同様に、流入部24Aと、絞り部24Bと、循環径路24Dと、絞り部24Bの内径よりも大きい径を有する大径部224Cと、を有する。大径部224Cの内周面には、複数の邪魔板225が設けられている。より詳細には、図13(c)に示される上側邪魔板225Aと、図13(b)に示される下側邪魔板225Bとが、前後方向から見て一部重なるように交互に配置されている。上側邪魔板225Aは、大径部224Cの前後方向中央付近から後方斜め上側に向かって傾斜しており、大径部224C内の空間のうち上側部分を塞いでいる。下側邪魔板225Bは、大径部224Cの上下方向中央付近から後方斜め下側に向かって傾斜しており、大径部224C内の空間のうち下側部分を塞いでいる。上側邪魔板225A及び下側邪魔板225Bは、前後方向から見て大径部224Cの上下方向中央付近において一部重なるように配置されている。
このような構成によれば、絞り部24Bから大径部224Cに流入した圧縮空気は、複数の上側邪魔板225A及び複数の下側邪魔板225Bに衝突しながら後方へ流れる。速度が低下した圧縮空気が邪魔板225に衝突することにより、圧縮空気からドレンが分離される。分離されたドレンは、邪魔板225上を流れ、大径部224Cの側壁、流路22fを伝って、ドレン室22e内に貯留される。
以上より、第3の実施の形態にかかる空気圧工具201によれば、複数の邪魔板225を設けるという簡易な構成の邪魔板225の抵抗や遠心力によって、圧縮空気からドレンを分離して貯蔵することができる。
本発明による電動工具は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
<変形例>
例えば、第1乃至第3の実施の形態では、ハウジング2の後端部22Bに区画壁22Dを有する構成であったが、区画壁22Dに代えて、図14に示されるように、圧縮空気排気口22bから排気管24に向けて突出する円筒状の壁部222Aと、壁部222Aの前端部(排気管24側端部)から周方向外側に向けて突出する端部222Bとを有する区画壁222を設けてもよい。このような構成によれば、区画壁222に端部222Bが設けられていることによって、ドレン室22e内に貯蔵されたドレンの量が増えた場合や作業者が空気圧工具の姿勢を変えた場合であっても、ドレンが区画壁222を越えて風路22g内に侵入することを抑制することができる。
また、別の変更例として、第1乃至第3の実施の形態にかかる空気圧工具において、図15に示されるように、ドレン排出孔22jにドレン室22e内のドレンを外部へ排出可能なコック式の排出弁22Gを設けてもよい。図15に示される変更例によれば、ドレン排出孔22jにドレンボルト24J又は排出弁22Gを設けたことにより、ドレン排出孔22jからドレンが漏洩することをより確実に抑制することができる。また、作業者がドレンボルト24Jを外す又は排出弁22Gを操作することによりドレン室22eから外部へドレンを排出できるので、ドレン室22eの容量を超えて貯蔵できなくなったドレンが圧縮空気の排気と共に圧縮空気排気口22bから排出してしまうことを抑制することができる。
また、ドレン室22e内に貯蔵されたドレン量を検出する検出部として、ドレン室22e内の様子を外部から目視で確認可能な検出窓を設けてもよい。また、検出窓にドレン量を示す目盛りを付してもよい。このような構成によると、ドレン室22e内に貯蔵されたドレン量を確認し、ドレンの排出及び回収を適切なタイミングで行うことができ、また、ドレンの状態から空気圧工具内部の状況を把握することができる。
また、第1乃至第3の実施の形態では、圧縮空気からドレンを分離する分離手段として、ドレンセパレータ24Eを有する排気管24、フィルタ124E及びマフラー122Eを有する排気管124、及び、複数の邪魔板225を有する排気管224を用いたが、分離手段はこれに限定されない。例えば、排気管24内において、ドレンセパレータ24Eに代えて、フィンを通過する際に遠心力により作動部3を通過した圧縮空気からドレンを分離する遠心フィンを設けてもよい。このような構成によれば、簡易な構成の遠心フィンの遠心力によって圧縮空気からドレンを分離することができる。
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態にかかる空気圧工具301について、図16乃至図22を参照して説明する。空気圧工具301は、空気圧工具1の排気管24に代えて排気管324を有し、新たに排気口カバー329を備える。また、空気圧工具1が有する区画壁22D、ドレンセパレータ24E等の配管内構造物を、空気圧工具301は有しない。なお、空気圧工具1と同一の構成については、同一の符号を付したうえで説明を省略する。
空気圧工具301は、図16に示すように、排気管324内部に挿入されたフィルタ機構327を有する。フィルタ機構327は、排気管324の延びる方向に沿って、作動部3と圧縮空気排気口22b側との間に配置される。
フィルタ機構327は、図17に示すように、フィルタ327A(本発明の油分離フィルタに相当)と支持部材327Bとを有する。支持部材327Bは、図18に示すように前後方向に延びる板状の矩形部材であり、前後方向に等間隔に並ぶ複数の穴327cを形成する。支持部材327Bは、排気管324の内径と略同じ幅であり、排気管324と略同じ長さを有する。フィルタ327Aは、柔軟性を有するひも状の部材であり、図17の如く端部で折り返すことによって、1対のフィルタ327Aとして用いる。なお、折返すのではなく、複数のフィルタ327Aを用いても良い。1対のフィルタ327Aのそれぞれは、複数の穴327cに対して1つおきに編み込まれ、支持部材327Bの左右の面上に交互に現れるように保持される。また、1対のフィルタ327Aのそれぞれは、複数の穴327cのうち同一の穴を通らず、複数の穴327cを交互に通るように固定される(図17(a)、(b))。図17(b)の如く、断面視においてフィルタ327Aそれぞれは連続する波型を形成し、互いに半波長ずつずれて配置される。すなわち、フィルタ327Aは、支持部材327Bの左右面上において起伏し、断面視において半月状のフィルタ327Aが左右それぞれの面上に一列に並ぶように構成される。
フィルタ327Aは、空気を透過するが、油、水分及び粉塵等、即ちドレンを捕集する機能を有する。フィルタ327Aの材質の具体例としては、ナイロン繊維、スポンジ、フェルト、木綿、高分子吸収体などが挙げられ、柔軟性のある素材で構成される。
なお、支持部材327Bは、必ずしも板状である必要はなく、フィルタ327Aを上記形状に保持することが出来ればよい。また、フィルタ327Aは、1対で構成される必要はなく、1本だけで構成されていても良い。また、フィルタ327Aが突出する方向は左右方向である必要はなく、上下に波型を形成してもよい。
排気口カバー329は、図19に示すように、排気管324の後端部かつハンドル22の後端部22Bに設けられる。排気口カバー329は、後端部22Bの後面上部を覆うように構成される。排気口カバー329は、複数の圧縮空気排気口22bを形成することにより、排気管324からの排気を可能とする。複数の圧縮空気排気口22bの総面積は、排気管324中空部分断面積よりも大きい。排気口カバー329は、2つのねじ329Aによって後端部22Bに固定されることにより、作業中の脱落が防止される。なお、図19においては、ねじ329Aとしてプラスねじが示されているが、これらは手回しで着脱可能なねじ等の留め具や、可塑性材料によるはめ込み式であってもよい。
空気圧工具301の作業時において、圧縮空気は排気管324を通り、圧縮空気排気口22bを介して排気される。この過程においてフィルタ機構327は、フィルタ327Aを用いて排気管324を通過する圧縮空気からドレンを分離する。詳細には図17(c)に示すように、圧縮空気の進行方向に対してフィルタ327Aが左右に起伏する波型の形状を形成しているため、圧縮空気は、フィルタ327Aと中空部分とを交互に通過しながら排気管324内を後方に進行する。フィルタ327Aを通過する時に、圧縮空気中のドレンは、フィルタ327Aに吸着等されることにより、捕集される。
上記実施の形態は、ドレンが除去された圧縮空気が圧縮空気排気口22bから排気されるため、ドレンが飛散して周囲を汚損する恐れがなく、高い作業性及び環境性が実現できるという効果を有する。また、フィルタ327Aは、圧縮空気の進行方向(または、支持部材327Bの延出する方向)に対して蛇行し、波型に起伏した形状を有するため、ドレン分離過程において圧縮空気の通過を妨げるほどの強い抵抗を発生させることなく、そのため効率よくドレンを分離することができる。すなわち、より容易にドレンを分離、除去することが可能となる。
さらに、排気口カバー329が後端部22Bに対して着脱可能であるため、フィルタ機構327の交換が可能である。作業者は、フィルタ機構327がドレンを貯蔵できなくなる等、フィルタ機構327のドレン分離機能が劣化した段階で排気口カバー329を外し、後端部22Bを介して新たなフィルタ機構327と交換することで、空気圧工具301のドレン分離機能を回復できる。あるいは、作業者は、フィルタ機構327を取出し、清掃を行って排気管324内に戻すことにより、容易にフィルタ機構327のドレン分離機能を回復させることができる。
なお、上記実施の形態においてフィルタ327Aは蛇行し、波型に起伏した形状であったが、本発明はこの形状に限定されない。フィルタの形状を、圧縮空気の進行方向、または支持部材327Bの延出する方向に対して螺旋形状を形成するように構成した場合においても、上記と同様の効果を得ることが可能である。
<第4の実施の形態に係る第1変形例>
なお、フィルタ機構327の構成は上記の構成に限られない。図20には、第4の実施の形態の第1変形例であるシリンダ型のフィルタ328を示す。フィルタ328は、柔軟性を有する円筒形状の部材によって形成される。フィルタ328の外径は、排気管324の内径と略等しい。フィルタ328は、空気を透過させるがドレンを捕集する機能を有する。フィルタ328の具体的な材質の具体例としては、ナイロン繊維、スポンジ、フェルト、木綿、高分子吸収体などが挙げられる。なお、フィルタ328は、本発明のフィルタ機構及び油分離フィルタに相当する。
フィルタ328を、フィルタ機構327の代わりに排気管324内部に配置して作業を行った場合でも、フィルタ機構327と同様にドレンの分離が可能である。圧縮空気が排気管324を通過する際、フィルタ328を通過した圧縮空気からドレンが分離されることにより、ドレンが除去された圧縮空気が圧縮空気排気口22bから排気される。このため、ドレンが飛散して空気圧工具301の周囲を汚損する恐れがなく、高い作業性及び環境性が実現される。また、フィルタ328の交換または清掃により、空気圧工具301のドレン分離機能の容易な回復が可能となる。
なお、フィルタ機構の形状は上記構成に限られず、圧縮空気排気口22bを覆うように構成されても良い。具体例として、第4の実施の形態の第2変形例を図21に示す。
<第4の実施の形態に係る第2変形例>
第2の変形例においては、図21に示すように、排気管324の後方かつ排気口カバー329の前方において、フィルタ室324aが画成される。フィルタ室324aの外周は、前後方向視において排気口カバー329の外周と略同一の形状を有し、フィルタ室324aの前後方向視面積は、排気管324の中空部断面より大きい。フィルタ室324aの内部にはフィルタ330が配置される。フィルタ330は、前方視において圧縮空気排気口22bを全て覆うように構成される。また、フィルタ330の前後方向の厚みは、フィルタ室324aの前後方向内寸よりも空隙dだけ短い。なお、フィルタ330は、本発明におけるフィルタ機構及び油分離フィルタに相当する。
作業時に圧縮空気が排気管324を通過してフィルタ室324aに到達すると、フィルタ330は圧縮空気の圧力によって後方に移動し、排気口カバー329に当接する。フィルタ330が排気孔カバー329に当接すると、フィルタ室324a内部であってフィルタ330の前方には、空隙dが発生する。圧縮空気は、この空隙dを通過して後方へ移動する。フィルタ室324aの断面が排気管324の中空部断面より大きいため、フィルタ室324aに入った圧縮空気は膨張し、その流速及び圧力を低下させる。圧力が低下した圧縮空気は、断熱減圧(断熱膨張)によって結露を発生させる。排気口カバー329に当接したフィルタ330が圧縮空気排気口22bを全て覆うため、圧縮空気は、圧縮空気排気口22bを介して排気される前に必ずフィルタ330を通過する。圧縮空気がフィルタ330を通過するときに、圧縮空気に含まれるドレンは、或いは結露したドレンは、フィルタ330によって圧縮空気から分離、除去される。
上記第2変形例の構成においても、第4の実施の形態と同様の効果を得られる。それらの効果に加えて第2変形例では、フィルタ室324aの内部で、圧縮空気の流速及び圧力が低下するため、圧縮空気の排気音及び排気圧が低減されるという効果を有する。また、フィルタ室324aの内部で発生する断熱減圧によってドレンが結露することにより、フィルタ330によるドレンの分離はより容易になる。換言すれば、フィルタ室324aは膨張室としての機能も有する。また、排気管324よりも断面の大きなフィルタ330を用いるため、効率よくドレンを分離することができる。また、排気口カバー329の付近にフィルタ330が配置されるため、作業者は、フィルタ330の交換または清掃をより簡易に実施することが可能である。
上記第4の実施の形態及び各変形例で用いたフィルタ機構及びフィルタの使用形態は、上記実施の形態に限定されない。第1乃至第3の各実施の形態または変形例等と組み合わせて用いることも可能である。
<第1及び第4の実施の形態共通の変形例>
一例として、第4の実施の形態及び第1の実施の形態の更なる変形例である空気圧工具401を図22に示す。空気圧工具401は、第1の実施の形態である空気圧工具1の内部に、第4の実施の形態で用いたフィルタ機構327を配置したものである。詳細には、フィルタ327は、排気管24内部に配置される。その他の構成は、第1の実施の形態の構成と同一である。
上記構成においては、分離手段であるフィルタ機構327及び排気管24がドレンの分離を行うと共に、ドレン室22eにおいてドレンを貯蔵することが可能である。したがって、第1実施の形態だけでなく、第4の実施の形態による発明の効果も得ることができ、効率よく圧縮空気中のドレンを分離し、貯蔵することができる。なお、フィルタ機構327を風路22g等の貯蔵部や、排気口カバー329近傍に配置することも可能である。
また、上記実施の形態にかかる空気圧工具1、101、201、301、401は、圧縮空気により作動し止具であるねじ1Bを打撃し回転させて締めこむ作動部3を有するねじ打ち機であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の空気圧工具は、圧縮空気により止具である釘を打込む釘打機であってもよいし、圧縮空気により打撃を行わずにねじを回転させるのみのねじ締機であってもよい。