JP2020007387A - 多孔質成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]平均粒径が5μm以上100μm以下であり、示差走査熱量計で測定される融点Tm1が250℃以上300℃以下であるポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を用いてなり、空孔率が20%以上60%以下である、多孔質成形体。
[2]ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の動的画像解析法で測定される平均円形度が0.70以上1.00以下である、[1]に記載の多孔質成形体。
[3]ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の、示差走査熱量計で測定される融点Tm1よりも30℃高いシリンダー温度及びせん断速度1200sec−1で測定した溶融粘度が、25Pa・s以上5000Pa・s以下である、[1]又は[2]に記載の多孔質成形体。
[4]ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の最大粒径と平均粒径との比(最大粒径/平均粒径)が、6.5以下である、[1]から[3]のいずれかに記載の多孔質成形体。
[5]周波数1MHzにおける比誘電率が1.0以上2.5以下である、[1]から[4]のいずれかに記載の多孔質成形体。
[6][1]から[5]のいずれかに記載の多孔質成形体の製造方法であって、平均粒径が5μm以上100μm以下であり、示差走査熱量計で測定される融点Tm1が250℃以上300℃以下であるポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を含有する粉体材料を、(融点Tm1−15)℃以上(融点Tm1+15)℃以下の温度、及び0.1MPa以上30MPa以下の圧力でプレス成形する工程を有する、製造方法。
本発明者は、研究の過程で、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の平均粒径、及び示差走査熱量計で測定される融点Tm1を所定の範囲にすることで、ポリアリーレンサルファイド樹脂微粒子同士の密着性を高めることができるとともに、低誘電率を有する多孔質成形体を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本実施形態に係る多孔質成形体は、ポリアリーレンサルファイド樹脂微粒子で構成されているポリアリーレンサルファイド樹脂粉体(以下、「樹脂粉体」ともいう。)を用いて形成された多孔質成形体である。本明細書において、「微粒子」との用語は、0.1μm〜1000μm程度の平均粒径を有する粒子のことをいい、「平均粒径」とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法による体積基準の算術平均粒子径を意味する。平均粒径は、例えば、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用いて測定することができる。
−(Ar−S)− ・・・(I)
(但し、Arは、アリーレン基を示す。)
粉粒状充填剤としては、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、ウォラストナイト等の硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナ等の金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
板状充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク、タルク、各種の金属箔等が挙げられる。
これらの無機及び有機充填剤は一種又は二種以上併用することができる。
なお、融点Tm1は、JIS K−7121(1999)に基づいた方法により、室温から10℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される1stRUNの吸熱ピークにおけるピークトップの温度とする。
円形度=(4×π×A)/P2 ・・・(II)
多孔質成形体は、上記したポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を用いて形成されているので、優れた強度及び耐熱性を有する。多孔質成形体は、空孔率が、20%以上60%以下であり、25%以上55%以下であることが好ましい。空孔率が20%以上60%以下であるので、高い強度を維持しつつ、優れた誘電特性、通気性及び透過性を達成することができる。空孔率の調整は、プレス成形する工程における温度及び圧力を所定の範囲にするにより行うことができる。
空孔率(%)=(1−(見掛け比重)/(真比重))×100・・・(III)
本実施形態に係る多孔質成形体の製造方法は、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を含有する粉体材料を、プレス成形する工程を有する。
プレス成形工程では、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を含有する粉体材料を、(融点Tm1−15)℃以上(融点Tm1+15)℃以下の温度、好ましくは(融点Tm1−10)℃以上(融点Tm1+15)℃以下の温度、及び0.1MPa以上30MPa以下の圧力、好ましくは0.1MPa以上20MPa以下の圧力でプレス成形する工程を有する。なお、融点Tm1は、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の上記融点Tm1である。プレス成形工程により、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体は、ポリアリーレンサルファイド樹脂微粒子同士が重なり合う界面に空隙を維持したまま部分的に溶着されて多孔質成形体を形成する。温度が上記範囲に満たない場合は、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体中の樹脂微粒子間の密着性が悪く多孔質成形体が破壊されやすい。
多孔質成形体の製造方法は、上記したプレス成形工程における温度及び圧力の範囲を広げるために、プレス成形工程の前に、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を熱処理する工程を有していてもよい。熱処理条件としては、例えば、酸素雰囲気下180℃以上で熱処理することができる。180℃以上で熱処理することで、部分不融化を促進することができ、プレス成形工程の温度及び圧力の範囲を、例えば、(融点Tm1−15)℃以上(融点Tm1+30)℃以下の温度、及び0MPa以上50MPa以下の圧力広げることが可能となる。
実施例及び比較例で用いたポリアリーレンサルファイド樹脂は、以下のとおりである。
PPS1:ポリフェニレンサルファイド樹脂、株式会社クレハ製「フォートロンKPS」、(溶融粘度:30Pa・s(剪断速度:1216sec−1、310℃))
PPS2:ポリフェニレンサルファイド樹脂、株式会社クレハ製「フォートロンKPS」、(溶融粘度:130Pa・s(剪断速度:1216sec−1、310℃))
PPS1を気流式ジェットミル(株式会社セイシン企業製、縦型ジェット粉砕機SKジェット・オー・ミル)を用いて、乾式粉砕処理してポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を得た。この樹脂粉体の融点Tm1、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに平均円形度、を、後述の方法で測定した。結果を表1に示した。
得られたポリアリーレンサルファイド樹脂粉体3gを、直径40mmのアルミニウム製リングに充填して、熱プレス成形機(株式会社東洋精機製作所製「Mini Test Press−10」)を用いて、温度290℃、圧力0.1MPaの条件で、多孔質成形体を製造した。この多孔質成形体の空孔率、強度、比誘電率について後述の方法で評価した。結果を表1に示した。
PPS1に替えてPPS2を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を得た。実施例1と同様にして、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の融点Tm1、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに平均円形度、を測定した。結果を表1及び表2に示した。得られたポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を使用して、温度及び圧力の条件を表1に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にして多孔質成形体を製造した。実施例1と同様にして、多孔質成形体の空孔率、強度、比誘電率を評価した。結果を表1及び表2に示した。なお、比較例2については、多孔質成形体の強度が低く、測定時に破損する不具合があり比誘電率は測定不可であった。
実施例2で得られたポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を空気循環式乾燥機(エスペック株式会社製「HIGH−Temp.OVEN PHH−201」)を用いて、温度240℃で8時間加熱処理してポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を得た。実施例1と同様にして、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の融点Tm1、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに平均円形度を測定した。結果を表1に示した。得られたポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を使用して、温度及び圧力の条件を表1に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にして多孔質成形体を製造した。実施例1と同様にして、多孔質成形体の空孔率、強度、比誘電率を評価した。結果を表1に示した。
実施例2で得られたポリアリーレンサルファイド樹脂粉体50質量%と実施例3で得られたポリアリーレンサルファイド樹脂粉体50質量%とをドライブレンドして、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を得た。実施例1と同様にして、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の融点Tm1、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに平均円形度を測定した。結果を表1に示した。得られたポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を使用して、温度及び圧力の条件を表1に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にして多孔質成形体を製造した。実施例1と同様にして、多孔質成形体の空孔率、強度、比誘電率を評価した。結果を表1に示した。
PPS2を粉砕処理せずに使用して、温度及び圧力の条件を表1に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にしてポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を得た。実施例1と同様にして、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の融点Tm1、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに平均円形度を測定した。結果を表2に示した。この樹脂粉体を用いて、実施例1と同様に多孔質成形体の製造を試みたが、粒子間の接着が不十分であり成形不可であった。
PPS2を空気循環式乾燥機(エスペック株式会社製「HIGH−Temp.OVEN PHH−201」)を用いて、温度240℃で4時間加熱処理してポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を得た。実施例1と同様にして、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の融点Tm1、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに平均円形度を測定した。結果を表2に示した。得られたポリアリーレンサルファイド樹脂を粉砕処理せずに使用して、温度及び圧力の条件を表1に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にして多孔質成形体を製造した。実施例1と同様にして、多孔質成形体の空孔率、強度、比誘電率を評価した。結果を表2に示した。
PPS1を空気循環式乾燥機(エスペック株式会社製「HIGH−Temp.OVEN PHH−201」)を用いて、温度240℃で8時間加熱処理してポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を得た。実施例1と同様にして、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の融点Tm1、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに平均円形度を測定した。結果を表2に示した。得られたポリアリーレンサルファイド樹脂を粉砕処理せずに使用して、温度及び圧力の条件を表1に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にして多孔質成形体を製造した。実施例1と同様にして、多孔質成形体の空孔率、強度、比誘電率を評価した。結果を表2に示した。
(融点Tm1)
示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7000X)を用いて、室温から10℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される吸熱ピークにおけるピークトップの温度を融点Tm1として測定した。
キャピラリー式レオメーター(株式会社東洋精機製作所製キャピログラフ1D:ピストン径10mm)を用いて、融点Tm1よりも30℃高いシリンダー温度及びせん断速度1200sec−1の条件で、ISO 11443に準拠し、見かけの溶融粘度を測定した。測定には、内径1mm、長さ10mmのオリフィスを用いた。
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA−920)を用いて、平均粒径及び最大粒径を測定した。なお、平均粒径は、体積基準の算術平均粒子径である。得られた平均粒径及び最大粒径から、最大粒径/平均粒径を算出した。
動的画像解析法/粒子状態分析計(株式会社セイシン企業製、PITA−3)を用いて、ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体中の4500粒の微粒子について、面積Aと周囲長Pから円形度を以下の式(II)から算出し、その平均値を樹脂粉体の平均円形度とした。なお、表1中の「円形度」は平均円形度を示す。
円形度=(4×π×A)/P2 ・・・(II)
実施例及び比較例で得られた多孔質成形体について、以下の方法で空孔率、強度及び比誘電率を評価した。結果を表1に示した。
空孔率は、見かけ比重と真比重から下記式(III)により求めた。なお、見掛け比重は、比重計(ミラージュ社製、「電子比重計SD−120L」)を用いて測定した。真比重は無孔の成形体を射出成形により作製して同じ比重計で測定した。
空孔率=(1−(見掛け比重)/(真比重))×100・・・(III)
バーコル硬度計(Barber Colman Company社)を用いて、多孔質成形体の上に直径40mm×厚さ3mmのガラス板を載せた状態で、80Nの荷重を加えた。多孔質体の強度を、以下の基準に従って評価した。
良:破壊が認められない
不良:破壊が認められる
誘電率測定装置(Novocontrol Technologies社製、Concept42)を用いて、1MHzでの比誘電率を測定した。
Claims (6)
- 平均粒径が5μm以上100μm以下であり、示差走査熱量計で測定される融点Tm1が250℃以上300℃以下であるポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を用いてなり、空孔率が20%以上60%以下である、多孔質成形体。
- ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の動的画像解析法で測定される平均円形度が0.70以上1.00以下である、請求項1に記載の多孔質成形体。
- ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の、示差走査熱量計で測定される融点Tm1よりも30℃高いシリンダー温度及びせん断速度1200sec−1で測定した溶融粘度が、25Pa・s以上5000Pa・s以下である、請求項1又は2に記載の多孔質成形体。
- ポリアリーレンサルファイド樹脂粉体の最大粒径と平均粒径との比(最大粒径/平均粒径)が、6.5以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の多孔質成形体。
- 周波数1MHzにおける比誘電率が1.0以上2.5以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の多孔質成形体。
- 請求項1から5のいずれか一項に記載の多孔質成形体の製造方法であって、
平均粒径が5μm以上100μm以下であり、示差走査熱量計で測定される融点Tm1が250℃以上300℃以下であるポリアリーレンサルファイド樹脂粉体を含有する粉体材料を、(融点Tm1−15)℃以上(融点Tm1+15)℃以下の温度、及び0.1MPa以上30MPa以下の圧力でプレス成形する工程を有する、製造方法。
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