JP2020000187A - アルコール飲料 - Google Patents

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Abstract

【課題】少ない発酵香気、及び無色透明な外観を有し、ビールと同様な泡特性を有するアルコール飲料を提供すること。【解決手段】起泡剤としてアルギン酸エステル及びコラーゲンペプチドを含有し、3.0EBC以下の色度を有するビール酵母発酵液を含有する、アルコール飲料。【選択図】なし

Description

本発明はアルコール飲料に関し、特に醸造酒に関する。
アルコール飲料とはエチルアルコールを実質的な量で含有する飲料をいう。日本の酒税法では、体積アルコール度数1%以上の飲料を酒類としている。この酒類はアルコール飲料の一例である。本願明細書において、文言「アルコール」はエチルアルコールを意味する。
従来のアルコール飲料は、その製法から大きく醸造酒、蒸留酒、調合酒に分類される。醸造酒はビール・ワイン・日本酒などであり、比較的アルコールが低い濃度でも深い味わいや飲み応えがある。
醸造酒の香味を決定する重要な要素に、発酵中に生成する香気成分がある。香気成分は酵母の代謝産物であり、その種類及び生成量は発酵前液がどのように発酵するかに依存して決定される。発酵前液の発酵状態は、酵母の種類、酵母に与える栄養の種類及び量、発酵温度、発酵時間、酸素量等の発酵条件に依存して変化する。尚、香味とは香りと一体となった味を意味し、香気とは香りを意味する。
醸造酒の一種であるビールは麦芽、ホップ及び水などを原料として、ビール酵母を使用してこれらを発酵させて得られる飲料である。ビールは、麦芽香気、発酵香気及び酸味、ホップ香気及び苦味、適度なアルコール刺激を有し、嗜好性に優れた飲料である。しかしながら、ビールの香気を好まない消費者も存在し、ビールの中でも香気が少ないものに対する需要が増大する傾向にある。
特開2017−63726号公報
本発明者らは、ビール酵母を使用してアルコール発酵を行う際に、炭素源を含み、窒素源がほぼ存在しない発酵前液を使用することで、発酵香気が少なく、軽く爽やかな香気を呈し、無色透明なアルコール飲料が得られることを見出した。以下、かかるアルコール飲料を「低窒素ビール酵母発酵液」という。
また、本発明者らは、低窒素ビール酵母発酵液にアルギン酸エステル及びコラーゲンペプチドを配合することで、グラス等に注いだ際にキメ細かい泡を形成し、液面に泡を維持できる時間が伸びることを見出した。
特許文献1には、未発酵のビールテイストアルコール飲料の起泡成分として、キラヤサポニン、アルギン酸類、大豆多糖、加工デンプン及び小麦ペプチド等が記載されている。一般に、ビールテイスト飲料は高い麦芽香気及び発酵香気を有し、琥珀色に着色した外観を有する。そのため、起泡成分が有する着色性や香気はビールテイスト飲料の香味にあまり影響を与えない。ビールテイストアルコール飲料に使用される特許文献1の起泡成分も着色性又は香気を有するものを含んでいる。
低窒素ビール酵母発酵液は、従来のビールテイスト飲料とは異なり、少ない発酵香気、及び無色透明な外観を有する。低窒素ビール酵母発酵液に着色性又は香気を有する起泡成分を使用すると、外観及び香気に悪影響を被る可能性が高く、従来の起泡成分を使用することは好ましくない。
本発明の目的は、少ない発酵香気、及び無色透明な外観を有し、ビールと同様な泡特性を有するアルコール飲料を提供することにある。
本発明は、アルギン酸エステル及びコラーゲンペプチドを含有し、3.0EBC以下の色度を有するビール酵母発酵液を含有する、アルコール飲料を提供する。
ある一形態においては、上記アルコール飲料のアルギン酸エステルの濃度が3〜15mg/100mlである。
ある一形態においては、上記アルコール飲料のコラーゲンペプチドの濃度が40〜120mg/100mlである。
ある一形態においては、上記アルコール飲料は0.3mg/100ml以下のアミノ態窒素の濃度を有する。
ある一形態においては、上記アルコール飲料は色素を含有しない。
ある一形態においては、上記アルコール飲料は更に蒸留酒を含有する。
本発明によれば、少ない発酵香気、及び無色透明な外観を有し、ビールと同様な泡特性を有するアルコール飲料が提供される。ここでいう泡特性とは、例えば、アルコール飲料をグラスに注いだ際に、液面に形成される泡の量、泡のキメ細かさ、及び泡持ち等をいう。泡持ちとは、液面に形成された泡が消えずに長時間維持されることをいう。
本発明のアルコール飲料はアルギン酸エステルを含有する。アルギン酸エステルとは、天然多糖類であるアルギン酸にプロピレングリコールがエステル結合した誘導体をいう。アルギン酸エステルの化合物名は、「アルギン酸プロピレングリコールエステル」である。
アルギン酸エステルは、アルコール飲料中の濃度が3〜15mg/100mlになる量で含有させる。アルギン酸エステルの含有量が3mg/100ml未満であると泡のキメ細かさ、及び泡持ちが不十分になり、15mg/100mlを超えると飲料にとろみが発生する。アルギン酸エステルの含有量は、好ましくは5〜13mg/100ml、より好ましくは7〜11mg/100mlである。
本発明のアルコール飲料はコラーゲンペプチドを含有する。コラーゲンペプチドは、天然コラーゲンを加熱してほぐしてゼラチンを得、ゼラチンを酵素などで分解した物質をいう。コラーゲンペプチドは水に溶けやすく、食品や化粧品分野で広く利用されている。
コラーゲンペプチドは、アルコール飲料中の濃度が40〜120mg/100mlになる量で含有させる。コラーゲンペプチドの含有量が40mg/100ml未満であると泡のキメ細かさ、及び泡持ちが不十分になり、120mg/100mlを超えると飲料に生臭さが発生する。コラーゲンペプチドの含有量は、好ましくは50〜100mg/100ml、より好ましくは60〜80mg/100mlである。
アルギン酸エステル及びコラーゲンペプチドは、本発明で用いられる濃度においては、アルコール飲料にした時に限りなく無色となる。アルギン酸エステルとコラーゲンペプチドを併用することで、アルコール飲料をグラスに注いだ際に、ビールと同様の量、キメ細かさ及び泡持ちを示す泡が形成されやすくなる。
[低窒素ビール酵母発酵液]
低窒素ビール酵母発酵液は、下記条件を充足する発酵前液を使用すること以外は、一般的なビールを製造する際に通常行われる方法及び条件に従って製造される。
(炭素源)
低窒素ビール酵母発酵液の製造に使用する発酵前液は炭素源を含有する。本明細書において炭素源とは、アルコール発酵を行う際に、ビール酵母が摂取してその栄養にする炭水化物をいう。炭素源は、一般に、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース及びマルトトリオース等の単糖類、二糖類及び三糖類である。好ましい炭素源は、グルコース、マルトース及びスクロースである。より好ましい炭素源はスクロースである。使用する炭素源の種類は単一でも複数でもよい。
発酵前液は、炭素源の他にも炭水化物を含有してよい。発酵前液が含有してよい炭水化物としては、例えば、四糖類以上の多糖類、オリゴ糖、デンプン分解物、及び食物繊維等が挙げられる。これらの炭水化物はアルコール発酵を行う際に酵母に摂取されず、アルコール発酵後にも発酵液中に残存し、得られる低窒素ビール酵母発酵液のボディ感又は飲みごたえ感を増強する。
発酵前液に含まれる炭素源の量は、得られるアルコール飲料のアルコール濃度を考慮して適宜決定される。本願発明のアルコール飲料は、アルコール濃度が1〜10%(v/v)である。かかる場合は、発酵前液に含まれる炭素源の量は、2〜20%(w/v)、好ましくは4〜16%(w/v)であり、より好ましくは8〜12%(w/v)である。
(アミノ態窒素)
低窒素ビール酵母発酵液の製造に使用する発酵前液は、アミノ態窒素の濃度が3.0mg/100ml以下に制限される。窒素源がほぼ存在しない状態にて発酵させることで、硫黄臭等の不快な香気が抑制され、軽く爽やかな香気になる。発酵前液中のアミノ態窒素の濃度が3.0〜10mg/100mlの場合、不快な硫黄臭が発生しやすくなる。発酵前液に含まれるアミノ態窒素の量は、好ましくは2.0mg/100ml未満であり、より好ましくは1.0mg/100ml以下である。発酵前液はアミノ態窒素を含有しなくてもよい。
発酵前液に使用しうるアミノ酸は、具体的には、小麦、麦芽、トウモロシ、馬鈴薯、米、大豆等のデンプン質原料に含まれるもの、酵母エキス含まれるもの、タンパク質の酵素分解物に含まれるもの等が挙げられる。
(製造方法)
発酵前液の原料としては、例えば、水溶性炭水化物の水溶液を使用する。水溶性炭水化物の具体例には、糖類、デンプン分解物、及び食物繊維等が挙げられる。香味を付与又は改善することを目的として、アミノ酸及びタンパク質を実質的に含有しないスパイス類、ハーブ類、及び果物等も原料に使用してよい。
飲用水に上記水溶性炭水化物を溶解し、要すれば、アミノ酸含有原料を添加する。その際に、炭素源及びアミノ態窒素の濃度が上記条件を充足するように、使用する原料の種類及び量を調節する。
得られた水溶液は、ビールを製造する際に通常行われる方法及び条件に従って、煮沸する。例えば、水溶液を煮沸釜に移し、ホップを加えて煮沸する。ホップは、煮沸開始から煮沸終了前であればどの段階で混合してもよい。煮沸した水溶液を、ワールプールと呼ばれる沈殿槽に移し、煮沸により生じたホップ粕や不溶物等を除去した後、プレートクーラーにより適切な発酵温度まで冷却する。上記煮沸の操作により、発酵前液が得られる。
発酵前液は、次いで、発酵させる。発酵の操作は常法に従って行えばよい。例えば、冷却した糖化液にビール酵母を接種して、発酵タンクに移し、発酵を行う。発酵前液に摂取する酵母の種類は目的とする香味を考慮して選択する。
発酵前液に接種する酵母の量は発酵条件に依存して変化するが、発酵前液1ml当たり5×10〜50×10個、好ましくは10×10〜45×10個、より好ましくは15×10〜40×10個の範囲から選択される。
発酵温度は発酵条件に依存して変化するが、0〜25℃、好ましくは5〜20℃、より好ましくは10〜15℃の範囲から選択される。得られるアルコール飲料の香気は発酵温度が高いほど増加する。発酵温度が25℃を越えると、使用する酵母の種類に依存して発酵が正常に進行しない場合がある。
発酵期間は発酵条件に依存して変化するが、1〜20日、好ましくは2〜10日、より好ましくは3〜6日の範囲から選択される。
さらに、熟成工程として、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させる。次いで濾過工程として、熟成後の発酵液を濾過することにより酵母等を除去して、低窒素ビール酵母発酵液が得られる。
低窒素ビール酵母発酵液は、1〜10%、好ましくは2〜8%、より好ましくは4〜6%のアルコール濃度を有する。
低窒素ビール酵母発酵液は、不快な香りを出さずに発酵香気が抑制され、醸造由来の深い味わいや飲み応えを有している。
発酵前液に含まれるアミノ体窒素は酵母によって資化されるため、低窒素ビール酵母発酵液中のアミノ体窒素濃度が発酵前液中のアミノ体窒素濃度を上回ることはない。アミノ態窒素濃度は、例えば、ニンヒドリン法(ビール酒造組合:ビール分析法、8.18(1990))により測定することができる。
また、低窒素ビール酵母発酵液は3.0EBC以下、好ましくは2.0EBC以下、より好ましくは1.0EBC以下の色度を有する。色度は、EBC(European Brewery Convention)のAnalytica−EBC標準法、又はこれに準じた方法により測定できる。EBCとは、ビールの分析での色度の単位で、ビールの色の濃淡を数値(EBC色度の9つのガラスディスクを持ったコンパレーターにより目視で測定する、若しくは波長430nmでの吸光度を基に算出する。)であらわしたものである。
[アルコール飲料]
本発明のアルコール飲料は、低窒素ビール酵母発酵液とアルギン酸エステルとコラーゲンペプチドとを混合することで製造される。本発明のアルコール飲料には、更に必要に応じて、甘味料、酸味料、ビタミン類、アミノ酸、水溶性食物繊維、香料、安定化剤、乳化剤及び消泡剤等の、アルコール飲料の分野で通常用いられている添加剤を用いてもよい。但し、これらの添加剤は低窒素ビール酵母発酵液の抑制された香味、色度が低い外観に影響を与えないことが好ましい。
しかしながら、低窒素ビール酵母発酵液が醸造由来の深い味わいや飲み応えを有することは、飲みやすさの側面からはマイナス要因にもなる。一方で、例えば、蒸留酒は原料や工程由来の香りのみを有する飲料の為、飲みやすくはあるが飲み応えに劣るものである。
低窒素ビール酵母発酵液は、蒸留酒と混合することで、醸造由来の飲み応えを有しながらも後半の味感が軽く、飲みやすく、これまでの酒類に存在しなかった香味を実現することができる。
低窒素ビール酵母発酵液と混合する蒸留酒としては、アルコールを含むものであれば特に限定されるものではなく、例えば、原料用アルコールであってもよく、スピリッツ、ウイスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎等の蒸留酒であってもよい。本発明に用いられる蒸留酒としては、本発明の飲料の呈味性に対してあまり影響を与えることなくアルコール濃度を高められることから、原料用アルコールや、ウオッカ等の特徴的な香味が少ない蒸留酒が好ましく、原料用アルコールがより好ましい。
低窒素ビール酵母発酵液と蒸留酒との混合割合は、目的とする香味を考慮して適宜調節すればよいが、例えば、アルコール濃度を等しく調整した状態の体積比で、1/9〜9/1、好ましくは2/8〜8/2、より好ましくは4/6〜6/4である。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
飲用水にショ糖及び酵母エキスを添加することにより、12%(w/w)のエキス濃度を有し、0.1mg/100mlのアミノ態窒素濃度を有する糖液を作製した。
得られた糖液に所定量のホップを添加した後、煮沸した。次いで、糖液を沈降槽に移して沈殿物を分離、除去した後、約8℃に冷却した。200L容の発酵槽に糖液を添加し、30×10個/mlになるよう下面発酵ビール酵母を接種し、10℃で7日間発酵させた。ショ糖及びホップの量、及び発酵条件を調節することで、得られた低窒素ビール酵母発酵液は20B.U.の苦味価及び5%のアルコール濃度を有していた。
ニンヒドリン法(ビール酒造組合:ビール分析法、8.18(1990))により、低窒素ビール酵母発酵液のアミノ態窒素濃度を測定した。結果は0.1mg/100mlであった。
EBC(European Brewery Convention)のAnalytica−EBC標準法により、低窒素ビール酵母発酵液の色度を測定した。結果は0.6EBCであった。
低窒素ビール酵母発酵液にアルギン酸エステル(商品名「キミロイドBF」、株式会社キミカ製)、及びコラーゲンぺプチド(商品名「イクオスHDL−30DR」、新田ゼラチン株式会社製)を所定量添加した。得られた試験品を20℃に冷却し、NIBEM−Tを用いた泡持ち測定法(日本醸造協会誌第103巻、第11号、p872−874)で使用する標準グラス(内径60mm、高さ120mm)に注いだ。グラスの上部に生成した泡の起泡状態を、よく訓練されたビール専門パネリスト4名により目視で評価した。評価基準は次の通りとした。
(泡のキメ細かさ)
5:大変キメ細か
4:キメ細か
3:ある程度キメ細か
2:やや粗い
1:粗い
尚、市販のビールに相当する泡のキメ細かさを、5点とした。
(泡持ち)
5:とても泡持ちが良い
4:泡持ちが良い
3:ある程度泡持ちが良い
2:やや泡持ちが悪い
1:泡持ちが悪い
尚、市販のビールに相当する泡持ちを、5点とした。
次いで、各試験品の香味に関し、よく訓練されたビール専門パネリスト4名により、アルギン酸エステル及びコラーゲンペプチドのいずれか一以上の添加による香味変化の有無を評価した。評価基準は次の通りとした。
(香味変化)
5:大変強い
4:強い
3:ある程度強い
2:やや弱い
1:弱い
起泡状態及び官能の評価結果を以下に示す。















[表1]
Figure 2020000187
アルギン酸エステルの添加量が3〜15mg/100ml、コラーゲンペプチドの添加量が40〜120mg/100mlの試験品において、アルギン酸エステル及びコラーゲンペプチドのいずれか一以上由来の香味変化がなく、泡のキメ細かさ及び泡持ちがよい結果が得られた。

Claims (6)

  1. アルギン酸エステル及びコラーゲンペプチドを含有し、3.0EBC以下の色度を有するビール酵母発酵液を含有する、アルコール飲料。
  2. アルギン酸エステルの濃度が3〜15mg/100mlである請求項1に記載のアルコール飲料。
  3. コラーゲンペプチドの濃度が40〜120mg/100mlである請求項1又は2に記載のアルコール飲料。
  4. 0.3mg/100ml以下のアミノ態窒素の濃度を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
  5. 色素を含有しない、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
  6. 更に蒸留酒を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
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