詳細な説明
ジメチル化抗原に特異的に結合する抗体であって、ジメチル化抗原がジメチル化リシン残基を含むヒストンH1.0ペプチドまたはヒストンH1.0タンパク質であり、リシン残基がヒトヒストンH1.0タンパク質のK180に対応し、ジメチル化リシン残基が結合するのに必要である抗体(H1.0K180me2抗体)が本明細書において提供される。
ジメチル化リシン残基を含むヒストンH1.0ペプチド、またはジメチル化リシン残基を含むヒストンH1.0タンパク質であって、ジメチル化リシン残基がヒトヒストンH1.0タンパク質のK180に対応するヒストンH1.0ペプチドまたはヒストンH1.0タンパク質(H1.0K180me2ペプチドおよびH1.0K180me2タンパク質)も本明細書において提供される。
これらのH1.0K180me2抗体、H1.0K180me2ペプチド、およびH1.0K180me2タンパク質は、治療および診断用途のために本明細書において提供される。これらのH1.0K180me2抗体、H1.0K180me2タンパク質、およびH1.0K180me2ペプチドは、個体のメチル化H1.0関連疾患または状態の処置において使用してもよい。これらのH1.0K180me2抗体、H1.0K180me2タンパク質、およびH1.0K180me2ペプチドは、複製老化、DNA損傷、遺伝毒性ストレス、放射線曝露、アルツハイマー病を検出し、治療レジメン、患者の階層化、薬物スクリーニングをモニタリングするために使用されてもよく、系内の生物学的老化のマーカーとしての役割を果たす場合がある。
これらおよび関連する組成物および方法が本明細書に記載されている。
I.ジメチル化タンパク質およびペプチド
A.ジメチル化H1.0K180me2タンパク質およびペプチド
用語「ペプチド」、「タンパク質」、および「ポリペプチド」は、本明細書で使用する場合、アミノ酸の高分子を指し、他に明示されていなければ、天然に存在するアミノ酸と同様の方式で機能する異常アミノ酸を含む。
ジメチル化リシン残基を含むヒストンH1.0タンパク質およびヒストンH1.0ペプチドであって、リシン残基がヒトヒストンH1.0タンパク質のK180に対応するタンパク質およびペプチドが、本明細書において提供される。ヒトH1.0タンパク質のK180に対応する残基にジメチル化リシンを含むヒストンH1.0タンパク質は、本明細書において、「H1.0K180me2タンパク質」と称される。ヒトH1.0タンパク質のK180に対応する残基にジメチル化リシンを含むヒストンH1.0ペプチドは、本明細書において、「H1.0K180me2ペプチド」と称される。これらは、単に、「H1.0K180me2」と総称する場合もある。
本明細書で議論されるH1.0タンパク質の残基の位置は、参照アミノ酸配列に関して特定される。残基の位置を特定するために使用されるヒトH1.0ヒストンタンパク質は、NCBI参照配列:NP_005309.1であり、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_005309.1でアクセスすることができる。この場合には、「H1.0残基リシン180」または「H1.0K180」または「K180」への言及は、ヒトヒストンH1.0において、メチオニンが最初の残基であるN末端から180番目のアミノ酸である残基を特定する。180番目の残基は、ヒトH1.0のリシン(K)である。当業者は、K180残基は、異なる種に由来するH1タンパク質または異なるアイソフォームにおいて、異なる位置を有する場合があることを認識する。
本明細書において、用語「K180」の使用は、ヒトH1.0タンパク質のK180に対応する残基を指す。同様に、用語「K172」は、ヒトH1.0タンパク質などのK172に対応する残基を指す。
表1は、連続して1〜194と付番した全長ヒトH1.0タンパク質の194−アミノ酸配列(NCBI参照配列:NP_005309.1)を提供する。K180残基はK
*として示される。
表2は、連続して1〜194と付番したK180でジメチル化された全長ヒトH1.0タンパク質の194−アミノ酸配列を提供する。K180me2残基はK(me2)として示される。
ある特定の実施形態では、ジメチル化H1.0K180me2ペプチド(本明細書において提供されるH1.0K180me2抗体によって認識されるK180me2エピトープを含む)は、表3Aに提示される配列から選択されるアミノ酸配列を含む。
本明細書のH1.0K180me2タンパク質およびペプチドは、種々の目的で、例えば、これらに限定されないが、治療、検出、診断、可視化、定量化、選別において使用するため、およびこれらの治療用途に関する生物学的アッセイにおいて使用するためにさらにコンジュゲートされていてもよい。
一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質およびペプチドは、標識、例えば、検出可能な標識、スピン標識、比色標識、放射性標識、酵素標識、蛍光標識、または磁気標識を含む(例えば、標識にコンジュゲートされている)。例示的実施形態では、H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、ビオチン化されている。一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、固体表面、例えば、ビーズ(例えば、磁気、ガラスまたはプラスチックビーズ)、カラム、樹脂、またはマイクロプレートにコンジュゲートされているかまたは付着されている。一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、マイクロプレート上にコーティングされている。一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、エフェクター分子、例えば、これらに限定されないが、放射性核種、細胞毒素、化学療法剤、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、イムノモジュレーター、アポトーシス促進剤、サイトカイン、ホルモン、オリゴヌクレオチド、アンチセンス分子、siRNA、および二次抗体にコンジュゲートされているかまたはこれらを含んでいる。
一部の実施形態では、アミノ酸配列は、例えば、コンジュゲーションを目的として、追加の末端残基をさらに含む。一部の実施形態では、アミノ酸配列は、C末端残基をさらに含む。このような実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、アミノ酸配列CAKPVKASKPKKAKPVKPK(配列番号36)、CAKPVKASKPKKAKPVKPKC(配列番号37)、AKPVKASKPKKAKPVKPKC(配列番号38)、CAKPVKASKPKKAKPVK(me2)PK(配列番号39)、CAKPVKASKPKKAKPVK(me2)PKC(配列番号40)、またはAKPVKASKPKKAKPVK(me2)PKC(配列番号41)を含んでもよい。一部の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、本明細書において提供されるH1.0K180me2ペプチドのうちのいずれか1つの断片を含む。一部の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、OVA(卵白アルブミン)、BC(バクテリアセルロース)またはBSA(ウシ血清アルブミン)にコンジュゲートされている。
本明細書において提供されるH1.0K180me2タンパク質およびペプチドは、病態生理の検出において、またH1.0K180me2の存在の定量的評価を組み込む方法において参照標準として含めるのにも有用である。
タンパク質またはペプチドのin vitroでのメチル化は、従来より、特異性(例えば、メチル化される基質に対する特異性、およびその制御)を課題とする。G9AメチルトランスフェラーゼまたはGLPメチルトランスフェラーゼを使用するH1.0タンパク質(またはそのペプチド断片)のK180残基の選択的ジメチル化を可能とする方法が本明細書に記載されている。
ヒストンH1.0タンパク質をリシン残基180(K180)で特異的にジメチル化すること(K180me2を有するH1.0)およびヒストンH1.0タンパク質のペプチド断片をK180に対応するリシンで特異的にジメチル化することに関する組成物および方法が本明細書において提供される。
B.H1.0K180me2ペプチドの生成
H1.0K180me2ペプチドは、病態生理の間接的検出において、またこれらに限定されないが(1)少なくともDNA損傷、遺伝毒性ストレス(例えば、環境曝露に関連する)、放射線曝露、化学療法およびDNA損傷ペイロードを有する抗体を用いる免疫療法、放射線療法およびアルツハイマー病の分子診断、(2)治療レジメンおよび患者の階層化のモニタリング、(3)薬物スクリーニングならびに(4)治療用途を含む方法におけるデータの定量化のための参照標準として含めるのにも有用である。
本明細書において提供されるH1.0K180me2ペプチドは、5〜193アミノ酸(aa)長の範囲である。種々の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドの長さは、5aa、6aa、7aa、8aa、9aa、10aa、11aa、12aa、13aa、14aa、15aa、16aa、17aa、18aa、19aa、20aa、21aa、22aa、23aa、24aa、25aa、26aa、27aa、28aa、29aa、または30aaである。ある特定の例示的実施形態では、H1.0K180me2ペプチドの長さは、15aa、16aa、17aa、18aa、19aa、または20aaである。
本明細書に記載されている方法および組成物を使用して合成により生成することができる例示的H1.0K180me2ペプチドが表3Aに列挙されている。一部の実施形態では、本発明のH1.0K180me2ペプチドは、表3Aに提示されているものから選択される配列のうちの1つを含む。一部の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、表3Aに提示されているものから選択される配列のうちの1つからなる。例示的実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、配列番号3、配列番号4、または配列番号5の配列を含む。例示的実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、配列番号3、配列番号4、または配列番号5の配列からなる。表3Aにおいて提供されるペプチドは、標識、例えば、ビオチンをさらに含む場合がある。
H1.0K180me2ペプチドのin vitroでの生成(合成により生成したH1.0K180me2ペプチド)のための方法が本明細書において提供される。一般的に、方法は、ヒストンH1.0タンパク質のK180に対応するリシン残基の特異的ジメチル化(in vitroでのメチル化)を可能にする条件下で、基質ペプチドをG9Aメチルトランスフェラーゼ酵素またはG9A様タンパク質(GLP)メチルトランスフェラーゼ酵素およびメチルドナーと接触させるステップを含む。種々の実施形態では、基質H1.0ペプチドは、表3Bに提示される配列の群から選択される配列を含む。関連する実施形態では、ペプチドは、表3Bに提示される配列の群から選択される配列である。
メチル化のために使用されるペプチドは、合成により生成されうるかまたは当業者が精通する方法を使用して生成されうる。
一般的に、ヒストンH1.0ペプチドをジメチル化するための方法は、特異的にジメチル化されたペプチドを生成する条件下で、ペプチドをメチルトランスフェラーゼ酵素およびメチルドナーと接触させるステップであって、ペプチドが、ヒトヒストンH1.0タンパク質のK180に対応するリシン残基で特異的にジメチル化され、メチルトランスフェラーゼ酵素がG9AメチルトランスフェラーゼまたはGLPメチルトランスフェラーゼであるステップを含む。
H1.0K180me2ペプチドのin vitroでの生成のための方法の実施形態では、G9Aメチルトランスフェラーゼは、組換えG9Aメチルトランスフェラーゼ、精製G9A哺乳動物メチルトランスフェラーゼ、ヒトG9Aメチルトランスフェラーゼ、マウスG9Aメチルトランスフェラーゼなどであってもよい。G9Aメチルトランスフェラーゼは、酵素として活性なオルソログ、キメラおよび酵素ドメインを含有する人工的にまたは天然に生成されたアイソフォームを含む。
H1.0K180me2ペプチドのin vitroでの生成のための方法の実施形態では、GLPメチルトランスフェラーゼは、組換えGLPメチルトランスフェラーゼ、精製GLP哺乳動物メチルトランスフェラーゼ、ヒトGLPメチルトランスフェラーゼ、マウスGLPメチルトランスフェラーゼなどであってもよい。GLPメチルトランスフェラーゼは、酵素として活性なオルソログ、キメラおよび酵素ドメインを含有する人工的にまたは天然に生成されたアイソフォームを含む。
H1.0K180me2ペプチドのin vitroでの生成のための方法の実施形態では、メチルドナーは、S−アデノシル−L−メチオニン(SAM)であってもよい。
H1.0K180me2ペプチドのin vitroでの生成のための方法の実施形態では、接触させるステップは、メチル化緩衝液中でなされてもよい。
H1.0K180me2ペプチドのin vitroでの生成のための方法の実施形態では、ペプチドは、メチル化に先立って、標識(例えば、ビオチン)を含んでもよい。
H1.0K180me2ペプチドのin vitroでの生成のための方法の実施形態では、ペプチドは、メチル化後に、標識(例えば、ビオチン)にコンジュゲートされていてもよい。
H1.0K180me2ペプチド基質のin vitroでのメチル化のための方法の実施形態では、生成物の50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、またはさらに99.9%超は、K180me2を含む。同様に、H1.0K180me2ペプチドのin vitroでの生成のための方法の実施形態において、種々の実施形態では、生成物の50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%未満、または0.35%未満は、他のメチル化残基(例えば、K172me1、K172me2、K172me3、K174me1、K174me2、K174me3、K175me1、K175me2、K175me3、K177me1、K177me2、K177me3、K166me1、K166me2、K166me3、K180me1、および/またはK180me3)も含有する。例示的実施形態では、K180me2を有する生成物の0.35%未満は、K174me3、K175me3、およびK177me1も含み、K180me2を有する生成物の1.25%未満は、K166me1も含み、K180me2を有する生成物の1.04%未満は、K174me1およびK180me3を含む。
一部の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、H1.0K180me2抗原に特異的である抗体(H1.0K180me2抗体)に結合する。ジメチル化抗原に特異的に結合する抗体であって、ジメチル化抗原がジメチル化リシン残基を含むヒストンH1.0ペプチドであり、リシン残基がヒトヒストンH1.0タンパク質のK180に対応する抗体が本明細書において提供される。
ある特定の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、約0.0001nM〜約1μMの解離定数(Kd)でH1.0K180me2抗体に結合する。例えば、ペプチドのKdは、約1μM、約100nM、約50nM、約10nM、約5nM、約1nM、約0.5nM、約0.1nM、約0.05nM、約0.01nM、約0.005nM、約0.001nM、約0.0005nM、またはさらに約0.0001nMであってもよい。
一部の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、抗ヒトH1.0K180me2抗体に特異的である。一部の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、他の種由来のH1.0K180me2抗体と交差反応性である。
一部の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、H1.0K180me2抗体に対して選択的であり、H1.0K180me1またはH1.0K180me3抗体に対してほとんどまたは全く結合性を示さない。
一部の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドのH1.0K180me2抗体に対する結合優先性(例えば、親和性)は、一般的に、非特異的標的抗体(例えば、無作為に生じた抗体)に対して、少なくとも約2倍、約5倍、または少なくとも約10、20、50、102、103、104、105、もしくは106倍である。
H1.0K180me2ペプチドは、ペイロード(例えば、これらに限定されないが、放射性核種、細胞毒素、化学療法剤、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、イムノモジュレーター、アポトーシス促進剤、サイトカイン、ホルモン、アンタゴニスト、アゴニストまたは受容体デコイを含む)を有する抗体に等しく特異的/選択的でありうる。
本明細書において提供されるH1.0K180me2ペプチドは、種々の目的で、例えば、これらに限定されないが、検出、診断、可視化、定量化、選別、治療において使用するため、および生物学的アッセイにおいて使用するためにさらにコンジュゲートされていてもよい。
一部の実施形態では、H1.0ペプチドまたはH1.0K180me2ペプチドは、標識(例えば、メチル化の前または後のいずれかにコンジュゲートされた)、例えば、検出可能な標識、スピン標識、比色標識、放射性標識、酵素標識、蛍光標識、磁気標識などを含む。
一部の実施形態では、ヒストンH1.0ペプチドおよびメチルトランスフェラーゼ酵素を含む複合体であって、in vitro中(例えば、試験管、チューブ、反応チャンバー、反応容器など)にある複合体が本明細書において提供される。一部の実施形態では、H1.0ペプチドは、配列番号42〜74からなる群から選択される配列を含む。一部の実施形態では、メチルトランスフェラーゼ酵素は、G9Aメチルトランスフェラーゼ酵素である。一部の実施形態では、メチルトランスフェラーゼ酵素は、GLPメチルトランスフェラーゼ酵素である。
C.H1.0K180me2タンパク質の生成
本明細書に記載されている全長H1.0K180me2タンパク質は、病態生理の検出において、またこれらに限定されないが(1)少なくともDNA損傷、遺伝毒性ストレス(例えば、環境曝露に関連する)、放射線曝露、化学療法およびDNA損傷ペイロードを有する抗体を用いる免疫療法、放射線療法、およびアルツハイマー病の分子診断、(2)治療レジメンおよび患者の階層化のモニタリング、(3)薬物スクリーニングならびに(4)治療薬としての使用を含む方法において参照標準として含めるのにも有用である。
一部の実施形態では、特異的にジメチル化されたタンパク質を生成する条件下で、タンパク質をメチルトランスフェラーゼ酵素およびメチルドナーと接触させるステップを含む、ヒストンH1.0タンパク質をジメチル化するためのin vitro方法であって、タンパク質がヒトヒストンH1.0タンパク質のK180に対応するリシン残基で特異的にジメチル化され、メチルトランスフェラーゼ酵素がG9AメチルトランスフェラーゼまたはGLPメチルトランスフェラーゼである方法が本明細書において提供される。
一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質のin vitroでの生成のための方法が本明細書において提供される。一実施形態では、方法は、K180残基の特異的ジメチル化を可能とする条件下で、全長H1.0タンパク質をG9Aメチルトランスフェラーゼ酵素およびメチルドナーと接触させるステップを含む。G9Aメチルトランスフェラーゼは、酵素として活性なオルソログ、キメラおよび酵素ドメインを含有する人工的にまたは天然に生成されたアイソフォームを含む。
一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質のin vitroでの生成のための方法が本明細書において提供される。一実施形態では、方法は、K180残基の特異的ジメチル化を可能とする条件下で、全長H1.0タンパク質をGLPメチルトランスフェラーゼ酵素およびメチルドナーと接触させるステップを含む。GLPメチルトランスフェラーゼは、酵素として活性なオルソログ、キメラおよび酵素ドメインを含有する人工的にまたは天然に生成されたアイソフォームを含む。
in vitroでのメチル化のために使用される全長H1.0非メチル化タンパク質基質は、当業者が精通する方法を使用して、単離、合成により生成、または組換えにより生成されてもよい。H1.0K180me2タンパク質をコードする核酸が本明細書において提供される。本明細書において提供されるH1.0K180me2タンパク質をコードする核酸のいずれかを含むベクターも本明細書において提供される。
H1.0K180me2タンパク質のin vitroでのメチル化またはin vitroでの生成のための方法の一部の実施形態では、G9Aメチルトランスフェラーゼは組換えG9Aメチルトランスフェラーゼ、精製G9A哺乳動物メチルトランスフェラーゼ、ヒトG9Aメチルトランスフェラーゼ、マウスG9Aメチルトランスフェラーゼなどであってもよい。
H1.0K180me2タンパク質のin vitroでのメチル化またはin vitroでの生成のための方法の一部の実施形態では、GLPメチルトランスフェラーゼは、組換えGLPメチルトランスフェラーゼ、精製GLP哺乳動物メチルトランスフェラーゼ、ヒトGLPメチルトランスフェラーゼ、またはマウスGLPメチルトランスフェラーゼであってもよい。
H1.0K180me2タンパク質のin vitroでの生成のための方法の一部の実施形態では、タンパク質は、メチル化に先立って、標識(例えば、ビオチン)を含んでもよい。
H1.0K180me2タンパク質のin vitroでの生成のための方法の一部の実施形態では、タンパク質は、メチル化後に、標識(例えば、ビオチン)にコンジュゲートされていてもよい。
H1.0K180me2タンパク質のin vitroでのメチル化またはin vitroでの生成のための方法の一部の実施形態では、メチルドナーは、S−アデノシル−L−メチオニンである。
H1.0K180me2タンパク質のin vitroでの生成のための方法の一部の実施形態では、接触させるステップは、メチル化緩衝液中でなされる。
H1.0K180me2タンパク質基質のin vitroでのメチル化のための方法の実施形態では、生成物の50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはさらに99.9%超は、K180me2を含んでもよい。同様に、H1.0K180me2タンパク質のin vitroでの生成のための方法の一部の実施形態では、生成物の50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%未満、または0.35%未満は、他のメチル化残基(例えば、K172me1、K172me2、K172me3、K174me1、K174me2、K174me3、K175me1、K175me2、K175me3、K177me1、K177me2、K177me3、K166me1、K166me2、K166me3、K180me1、および/またはK180me3)も含有する。例示的実施形態では、K180me2を有する生成物の0.35%未満は、K174me3、K175me3、およびK177me1も含み、K180me2を有する生成物の1.25%未満は、K166me1も含み、ならびに/またはK180me2を有する生成物の1.04%未満は、K174me1およびK180me3を含む。
ジメチル化抗原に特異的に結合する抗体であって、ジメチル化抗原がジメチル化リシン残基を含むヒストンH1.0タンパク質に見られ、リシン残基がヒトヒストンH1.0タンパク質のK180に対応する抗体が本明細書において提供される。
一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質は、H1.0K180me2に特異的である抗体(H1.0K180me2抗体)に対して選択的である。一部の実施形態では、ペプチドは、H1.0K180me2に非特異的である抗体に結合する。
ある特定の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質は、約0.0001nM〜約1μMの解離定数(Kd)でH1.0K180me2抗体に結合する。例えば、Kdは、約1μM、約100nM、約50nM、約10nM、約5nM、約1nM、約0.5nM、約0.1nM、約0.05nM、約0.01nM、約0.005nM、約0.001nM、約0.0005nM、またはさらに約0.0001nMであってもよい。
一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質は、抗ヒトH1.0K180me2抗体に特異的である。一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質は、他の種由来のH1.0K180me2抗体と交差反応性である。
一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質は、H1.0K180me2抗体に対して選択的であり、H1.0K180me1またはH1.0K180me3抗体に対してほとんどまたは全く結合性を示さない。
一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質のH1.0K180me2抗体に対する結合優先性(例えば、親和性)は、一般的に、非特異的標的抗体(例えば、無作為に生じた抗体)に対して、少なくとも約2倍、約5倍、または少なくとも約10、20、50、102、103、104、105、もしくは106倍である。
本明細書において提供されるH1.0K180me2タンパク質は、種々の目的で、例えば、これらに限定されないが、検出、診断、可視化、定量化、選別、治療において使用するため、および生物学的アッセイにおいて使用するためにさらにコンジュゲートされていてもよい。
一部の実施形態では、H1.0タンパク質(H1.0基質)またはH1.0K180me2タンパク質は、標識(メチル化の前または後のいずれかに)、例えば、検出可能な標識、スピン標識、比色標識、放射性標識、酵素標識、蛍光標識、磁気標識などにコンジュゲートされている。
II.ジメチル化ヒストンH1.0タンパク質およびペプチドに結合する抗体
A.H1.0K180me2抗体
ジメチル化抗原に特異的に結合する抗体であって、ジメチル化抗原がジメチル化リシン残基を含むヒストンH1.0ペプチドまたはヒストンH1.0タンパク質であり、リシン残基がヒトヒストンH1.0タンパク質のK180に対応する抗体が本明細書において提供される。このジメチル化抗原は、H1.0K180me2抗原であり、H1.0K180me2エピトープとも称される。これらの抗体は、H1.0K180me2タンパク質およびH1.0K180me2ペプチドのH1.0K180me2エピトープに特異的に結合する。これらの抗体は、ジメチル化抗原に特異的に結合し(H1.0K180me2エピトープに特異的に結合し)、結合するのにK180にジメチル基の存在を必要とする。用語「抗H1.0K180me2」または「H1.0K180me2抗体」または「抗H1.0K180me2抗体」は、互換的に、これらの抗体を指す。
用語「抗体」は、本明細書全体を通して使用する場合、最も広い意味においてであり、これらに限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、非ヒト抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、多機能抗原結合性断片(例えば、Fab断片、Fab’2断片、CDRまたはScFv)、抗体−薬物コンジュゲート、およびH1.0K180me2抗原に対する特異性を保持する他の抗体断片を含む。一部の実施形態では、抗体は、H1.0K180me2抗原に対する特異性を保持する単鎖抗体である。
H1.0K180me2抗体の模式的結合が図5Aに示されている。
一部の実施形態では、本明細書において提供されるH1.0K180me2抗体は、診断抗体である。
一部の実施形態では、本明細書において提供されるH1.0K180me2抗体は、治療用抗体である。
一部の実施形態では、H1.0K180me2抗体は、高力価で存在する。
一部の実施形態では、H1.0K180me2抗体は、親和性精製抗体である。
本明細書において提供されるH1.0K180me2抗体は、種々の目的で、例えばこれらに限定されないが、検出、診断、可視化、定量化、選別、治療において使用するため、および生物学的アッセイにおいて使用するためにさらにコンジュゲートされていてもよい。
一部の実施形態では、H1.0K180me2抗体は、標識、例えば、検出可能な標識、スピン標識、比色標識、放射性標識、酵素標識、蛍光標識、または磁気標識を含む(例えば、標識にコンジュゲートされている)。
一部の実施形態では、抗体は、固体表面、例えば、ビーズ(例えば、磁気、ガラスまたはプラスチックビーズ)、カラム、樹脂またはマイクロプレートにコンジュゲートされているかまたは付着されている。一部の実施形態では、抗体は、マイクロプレートにコーティングされている。
一部の実施形態では、抗体は、エフェクター分子、例えば、これらに限定されないが、放射性核種、細胞毒素、化学療法剤、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、イムノモジュレーター、アポトーシス促進剤、サイトカイン、ホルモン、オリゴヌクレオチド、アンチセンス分子、siRNA、および二次抗体にコンジュゲートされているかまたはこれらを含んでいる。
H1.0K180me2バイオマーカーは、クロマチン結合される場合があるか、またはクロマチンから核、細胞質、もしくは細胞外のスペースへと放出される場合があることが認識される。本明細書において提供される抗体は、細胞外H1.0K180me2および/または細胞内H1.0K180me2に結合することができる。細胞内である場合、H1.0K180me2抗原は、クロマチンにさらに結合されるか、または核中で放出されるか、核から細胞質スペースへと放出されるか、もしくは細胞質の下位構造中にさらに局在化してもよい。
一部の実施形態では、抗体(例えば、治療用抗体)は中和抗体であり、抗体はH1.0K180me2の1種または複数の生体活性を中和する。例えば、抗体は、細胞外H1.0K180me2に結合し、抗体が有しうるあらゆる結合またはシグナル伝達活性を中和する。
本明細書において提供される抗体は、IgG、IgA、IgE、IgD、またはIgMなどの任意の免疫グロブリンタイプのものであってもよい。一部の実施形態では、抗体はIgGサブタイプのものであり、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、またはIgG4抗体であってもよい。
任意の種に由来するH1.0K180me2に特異的な抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態では、H1.0K180me2抗体は、ヒトH1.0K180me2に特異的である。一部の実施形態では、H1.0K180me2抗体は、他の種に由来のH1.0K180me2と交差反応性である。
本明細書において提供される抗体は、H1.0K180me2と特異的に結合する。一部の実施形態では、これらの抗体は、H1.0K180me2と特異的かつ選択的に結合する。
本明細書において提供される抗体は、ジメチル化抗原に特異的に結合し、ジメチル化H1.0抗原はジメチル化リシン残基を含み、リシン残基はヒトヒストンH1.0タンパク質のK180に対応し(H1.0K180me2抗原)、一部の実施形態では、ジメチル化抗原は、メチル化されたいずれの他のリシン残基も含まない。
一部の実施形態では、抗原がジメチル化リシン残基を含む場合、H1.0K180me2抗体は結合しないか、または最小限に結合するにすぎず、リシン残基はヒトヒストンH1.0タンパク質のK166、K172、K174、K175、および/またはK177に対応する。
一部の実施形態では、H1.0K180me2抗体は、以下の残基:K172me1、K172me2、K172me3、K174me1、K174me2、K174me3、K175me1、K175me2、K175me3、K177me1、K177me2、K177me3、K166me1、K166me2、K166me3、K180me1、および/またはK180me3の1つまたは複数を含む抗原に結合しないか、または最小限に結合するにすぎない。
一部の実施形態では、H1.0K180me2抗体は、ジメチル化K180残基を含むが、以下の残基:K172me1、K172me2、K172me3、K174me1、K174me2、K174me3、K175me1、K175me2、K175me3、K177me1、K177me2、K177me3、K166me1、K166me2、K166me3、K180me1、および/またはK180me3の1つまたは複数も含む抗原に結合しないか、または最小限に結合するにすぎない。
一部の実施形態では、抗原が、ヒトヒストンH1.0タンパク質のK166、K172、K174、K175、K177、および/またはK180に対応するリシン残基においてモノメチル化リシン残基を含む場合、H1.0K180me2抗体は結合しないか、または最小限に結合するにすぎない。
一部の実施形態では、抗原が、ヒトヒストンH1.0タンパク質のK166、K172、K174、K175、K177、および/またはK180に対応するリシン残基においてトリメチル化リシン残基を含む場合、H1.0K180me2抗体は結合しないか、または最小限に結合するにすぎない。
一部の実施形態では、H1.0K180me2抗体は、残基K180におけるジメチル化に対して選択的であり、H1.0K180me1エピトープまたはH1.0K180me3エピトープについてほとんどまたは全く結合性を示さない。
H1.0K180me2抗体は、任意の培地で、H1.0K180me2エピトープに結合する。
一部の実施形態では、H1.0K180me2抗体は、K180のモノメチル化抗原(H1.0K180me1抗原)よりも、K180のジメチル化抗原(H1.0K180me2抗原)に対して、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、2.7倍、5倍、またはさらに10倍高い特異性(結合優先性、親和性)を呈する。(図3D)一部の実施形態では、H1.0K180me2抗原に対する特異性は、一般的に、非特異的標的分子(例えば、特異的に認識される部位を欠く、無作為に生じた分子)に対して、モノメチル化K180残基に対して、トリメチル化K180残基に対して、または任意の他の残基でメチル化されたH1.0タンパク質に対して、少なくとも約2倍、約5倍、または少なくとも約10、20、50、102、103、104、105、もしくは106倍である。
一部の実施形態では、H1.0K180me2抗体の結合効率は、ELISAアッセイによってモニターされる。一部の実施形態では、抗体は、H1.0K180me1ペプチドよりも、H1.0K180me2ペプチドに少なくとも2.7倍効率的に結合する。一部の実施形態では、抗体1分子は、H1.0K180me2ペプチドの117分子のうちの1つを認識するが、H1.0K180me1ペプチドの316分子のうちの1つしか認識しない。
ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗体は、0.0001nM〜1μMの範囲の解離定数(Kd)を有する。例えば、抗体のKdは、約1μM、約100nM、約50nM、約10nM、約5nM、約1nM、約0.5nM、約0.1nM、約0.05nM、約0.01nM、約0.005nM、約0.001nM、約0.0005nM、またはさらに約0.0001nMであってもよい。
B.H1.0K180me2抗体の生成
様々なイムノアッセイフォーマットを使用して、H1.0K180me2と特異的に免疫反応性である抗体を選択してよい。例えば、固相ELISAイムノアッセイを使用して、H1.0K180me2に特異的なモノクローナル抗体を選択してよい(例えば、特異的な免疫反応性を決定するために使用されてよいイムノアッセイフォーマットおよび条件についての記載として、HarlowおよびLane(1988年)Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Publications、New Yorkを参照のこと)。
本明細書において提供される抗体の産生は、当業者に公知の任意の方法によるものであってもよい。例えば、一部の実施形態では、抗体は、所望の抗体の所望のVH、VLおよび定常ドメインを発現するよう工学的に操作された組換え細胞によって産生される。一部の実施形態では、抗体は、ハイブリドーマによって産生される。
一部の実施形態では、任意選択で免疫原性担体に連結したH1.0K180me2抗原を含む任意のペプチドが、標準プロトコールを使用して免疫化に使用される。一部の実施形態では、任意選択で免疫原性担体に連結した表3Aに提示したものに由来する配列を含むペプチドが、標準プロトコールを使用して免疫化に使用される。例示的実施形態では、任意選択で免疫原性担体に連結したAKPVKASKPKKAKPVKme2PK(配列番号3)を含むペプチドが、標準プロトコールを使用して免疫化に使用される。生じた抗体の質および力価は、当業者に公知の技術を使用して評価されてよい。
本明細書に記載されている本発明の組成物は、抗体をコードする核酸、抗体をコードする核酸のいずれかを含むベクター、およびいずれかのこのようなベクターを含む宿主細胞も含む。
当業者が容易に認識するように、抗体は、いくつかの商用サービスのいずれかによって調製することもできる。
III.診断
A.H1.0K180me2の直接的および間接的検出
本明細書において提供されるH1.0K180me2抗体、H1.0K180me2タンパク質、およびH1.0K180me2ペプチドは、種々の診断目的に有用である。
H1.0K180me2の濃度の直接的および間接的検出および定量化の両方に対するアッセイが本明細書において提供される。このような定量化は、複製老化、DNA損傷、遺伝毒性ストレス、放射線曝露、アルツハイマー病、および生物学的老化を検出するのに有用である場合がある。定量化は、治療レジメン、薬物スクリーニング、ならびに細胞生存率を回復させ、DNA損傷を予防し、細胞代謝およびオートファジーを増加させ、細胞老化を阻害し、かつ細胞の細胞質における不溶性タンパク質老廃物の蓄積をブロックすることを目的とする薬物処置に対するレスポンダーまたは非レスポンダーとしての患者の階層化をモニタリングするのにも有用である場合がある。用途に応じて、H1.0K180me2は、in vivo、in vitro、ex vivo、in situ、または無細胞系で検出および定量化されてもよい。
H1.0K180me2の直接的検出は、H1.0K180me2抗体を使用してH1.0K180me2を検出することを含む。
H1.0K180me2の間接的検出は、H1.0K180me2抗原の存在に応答して生じる自己抗体に結合するH1.0K180me2タンパク質またはH1.0K180me2ペプチドを使用することを含む。この文脈では、H1.0K180me2タンパク質は、H1.0K180me2自己抗体結合タンパク質と称することができ、H1.0K180me2ペプチドはH1.0K180me2自己抗体結合ペプチドと称することができる。
H1.0K180me2は、当業者に周知の任意の数の方法によって検出されてもよい。本明細書において提供されるH1.0K180me2抗体、H1.0K180me2タンパク質およびH1.0K180me2ペプチドは、様々なイムノアッセイにおいて容易に使用される。これらのイムノアッセイとして、これらに限定されないが、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)、フローサイトメトリー、ラテラルフローイムノアッセイ、スロットブロット、磁気イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、間接免疫蛍光測定法、直接免疫蛍光測定法、周囲光ファイバーイムノアッセイ(SOFIA)、分光光度法、X線撮影法、電気泳動法、免疫電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高拡散クロマトグラフィー、流体またはゲル沈降反応、免疫拡散、分光法、質量分析法、定量的質量分析法、あらゆるタイプの多重アッセイ、およびあらゆるタイプの微小流体アッセイが挙げられる。
本明細書において提供されるH1.0K180me2抗体およびH1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、標識、例えば、検出可能な標識、スピン標識、比色標識、放射性標識、酵素標識、蛍光標識、または磁気標識を含んでもよい(例えば、標識にコンジュゲートされていてもよい)。
本明細書において提供されるH1.0K180me2抗体ならびにH1.0K180me2タンパクおよびペプチドは、検出可能な標識を含んでもよい。検出可能な群は、検出可能な物理的または化学的特性を有する、例えば、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、蛍光的、電気的、光学的または化学的方法によって検出可能な任意の材料であってもよい。本発明において有用な標識として、これらに限定されないが、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、レッド、ローダミンなど)、放射標識(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、マーカー遺伝子産物としてまたはELISAにおいてのいずれかで、通常検出可能な酵素として使用されるLacZ、CAT、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、ビオチン、アビジン、またはストレプトアビジンおよびコロイダルゴールド着色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズ、およびナノ粒子などの比色標識が挙げられる。例示的実施形態では、ビオチンは標識である。
本明細書において提供される標識は、当技術分野で周知の方法に従うアッセイの所望の成分に直接的または間接的にカップリングしてもよい。上記で示したように、必要とされる感度、化合物のコンジュゲーションの容易性、安定性要件、利用可能な器具類、および使い捨て設備(disposal provision)に応じて標識を選択して、幅広い標識を使用してもよい。標識は、間接的な方法によって付着されることが多い。一般的に、リガンド分子(例えば、ビオチン)は、分子に共有結合される。次いで、リガンドは、本質的に検出可能であるかまたは検出可能な酵素、蛍光化合物、もしくは化学発光化合物などのシグナル系に共有結合されるかのいずれかである抗リガンド(例えば、ストレプトアビジン)分子に結合する。いくつかのリガンドおよび抗リガンドを使用してもよい。リガンドが、天然の抗リガンド、例えば、ビオチンを有する場合、リガンドは、標識された天然に存在する抗リガンドと併せて使用されてもよい。あるいは、任意のハプテンまたは抗原性化合物は、抗体と組み合わせて使用されてもよい。成分はまた、例えば、酵素またはフルオロフォアとのコンジュゲーションによって、シグナル生成化合物に直接コンジュゲートされうる。標識としての目的の酵素として、これらに限定されないが、加水分解酵素、ホスファターゼ、エステラーゼ、グリコシダーゼ、またはoxitranscription factoreductase、およびペルオキシダーゼが挙げられる。蛍光化合物として、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが挙げられる。化学発光化合物として、ルシフェリン、および2,3−ジヒドロフタラジンジオン、例えば、ルミノールが挙げられる。
標識を検出する方法は当業者に周知である。したがって、例えば、標識が放射性標識である場合、検出のための方法は、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーにおけるような写真フィルムを含む。標識が蛍光標識である場合、標識は、蛍光色素を適当な光の波長で励起させ、例えば、顕微鏡検査によって、目視検査によって、写真フィルムによって、電荷結合素子(CCD)または光電子増倍管などの電子検出器の使用によって、得られた蛍光を検出することによって検出されてもよい。同様に、酵素標識は、酵素に適当な基質を提供し、得られた反応生成物を検出することによって検出してもよい。最後に、簡単な比色標識は、標識に関連する色を単に観察することによって検出されてもよい。このように、種々のディップスティックアッセイでは、様々なコンジュゲートしたビーズはビーズの色に見えるが、コンジュゲートしたゴールドはピンクに見えることが多い。
H1.0K180me2に特異的な自己抗体を検出するイムノアッセイでは、特異的な二次抗体を利用して、IgG、IgM、IgA、IgE、およびIgD自己抗体タイプ間を識別することができる。
検出の際に、特定の画分におけるH1.0K180me2の濃度が定量化されてもよく、例えば、細胞内画分における、可溶性かつクロマチン結合画分における、または細胞質画分におけるH1.0K180me2の定量化がある。例えば、細胞質画分におけるH1.0K180me2の濃度の上昇は、細胞の老化状態を示す。一部の実施形態では、インタクト細胞、培養中の細胞、または切片培養における細胞を画像化して、H1.0K180me2の局在を可視化する。例えば、H1.0K180me2の核外での細胞内局在の増大は、老化状態を示す。一部の実施形態では、H1.0K180me2の細胞質ゾルまたは細胞外マトリックスへの放出は、老化状態を示す。
検出は、任意の生体試料に関して行われてもよい。生体試料としては、これらに限定されないが、個体に由来する全血、血漿、血清、唾液、尿、糞便、滑液、脳脊髄液、気管支洗浄、腹水液、骨髄穿刺液、胸水、組織、細胞、生検材料、間質液、リンパ液、またはそれらの画分が挙げられる。一部の実施形態では、生体試料は細胞を含み、細胞は、培養中、懸濁液中、スライド上、インタクト組織中、またはFAC分析用に準備された調製物中にある。
生体試料は、個体から得られる。本明細書で使用する場合、個体は、ヒト、飼育動物および家畜、ならびに動物園の動物、スポーツ用動物、または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどを含む哺乳動物として分類される任意の動物を指す。個体は、雄であっても雌であってもよい。一実施形態では、個体は雌である。一実施形態では、個体は雄である。
一部の実施形態では、個体は、50歳を超える。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、個体は、50歳未満である。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、個体は、少なくとも50歳であり、少なくとも55歳であり、少なくとも60歳であり、少なくとも65歳であり、少なくとも70歳であり、少なくとも75歳であり、または少なくとも80歳である。例示的実施形態では、個体は、少なくとも60歳である。
生体試料は、当業者に周知の標準方法によって得られる。試料は、所望の場合、適当な緩衝溶液中での希釈または濃縮によって、必要な場合、任意選択で前処置される。生理学的pHで、リン酸塩、トリスなどの様々な緩衝液のうちの1つを用いるいくつかの標準緩衝水溶液のいずれかを使用してもよい。
本明細書に記載されている直接的検出方法を使用して、生体試料中のH1.0K180me2の濃度を定量化してもよい。一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、例えば、陽性対照としてまたは競合イムノアッセイの競合者として、協力して使用してもよく、実行されるアッセイのフォーマットに応じて標識されてもされなくてもよい。
本明細書に記載されている間接的検出方法を使用して、生体試料中のH1.0K180me2自己抗体の濃度を定量化してもよい。一部の実施形態では、H1.0K180me2抗体は、例えば、陽性対照としてまたは競合イムノアッセイの競合者として、協力して使用してよく、実行されるアッセイのフォーマットに応じて標識されてもされなくてもよい。
当業者は、一部の実施形態では、H1.0K180me2抗原または自己抗体の決定された濃度を対照(すなわち、参照対照)と比較することが必要でありうることを認識する。相対比較により、例えば、個体が疾患(例えば、アルツハイマー病)を有するか、もしくは発症するリスクがあるかどうか、または個体が特定の処置(例えば、アルツハイマー病処置またはラパログによる処置)に応答性であるか、もしくは応答性である場合があるかどうかの決定が可能となる場合がある。対照は、年齢を一致させた対照、性別を一致させた対照、年齢および性別を一致させた対照、健康な対照、操作されていない対照、または諸参照標準を集めたものに相当する参照標準であってもよい。例えば、処置(例えば、アルツハイマー病処置またはラパログによる処置での)に先立って、または遺伝毒性物質、DNA損傷剤、もしくは放射線への曝露に先立って、同一個体由来の試料と比較することもできる。罹患していない領域、例えば、罹患していない組織に由来する同一個体由来の試料と比較することもできる。
当業者は、イムノアッセイにおいて、および分析物の検出の間に、非特異的結合を低減することが望ましいことが多いことを認識する。アッセイが、固体基質に固定されたH1.0K180me2抗体またはH1.0K180me2タンパク質およびペプチドに関する場合、基質への非特異的結合量を最小限にすることが望ましい場合がある。このような非特異的結合を低減する方法は、当業者に公知である。典型的には、これは、タンパク性組成物で基質をコーティングするステップを含む。一部の実施形態では、ウシ血清アルブミン(BSA)、脱脂粉乳、およびゼラチンなどのタンパク質組成物が利用されてもよい。
感度、特異性、陽性および陰性適中率(PPVおよびNPV)ならびに陽性および陰性尤度比(PLRおよびNLR)を各診断試験設計について計算することができる。統計方法は、患者の疾患の有無を予測する助けとなる。
感度は、一般的に、疾患が存在する場合に試験結果が陽性となる確率(有病正診率)である。
特異性は、一般的に、疾患が存在しない場合に試験結果が陰性となる確率(無病正診率)である。
陽性適中率(PPV)は、一般的に、試験が陽性である場合に疾患が存在する確率であり、疾患の試験前有病率を説明する(例えば、アルツハイマー病に対する試験前有病率は10%である)。
陰性適中率(NPV)は、一般的に、試験が陰性である場合に疾患が存在しない確率であり、ADの試験前有病率が10%であることを説明する(Prince, M. J.、Am J Epidemiol、1996年)。
陽性尤度比(LR+またはPLR)は、一般的に、疾患試験陽性を有さないヒトの確率で割った疾患試験陽性を有するヒトの確率である。陽性尤度比(PLR)は、一般的に、試験が陽性である場合、疾患の確率がどの程度増加するかを示す。PLRが1より大きいことは、標的障害が存在する確率の増加を示し、PLRが1より小さいことは、標的障害が存在する確率の低下を示し、PLRが1であることは、試験によって疾患の確率が変化しないことを意味する。
陰性尤度比(LR−またはNLR)は、一般的に、疾患試験陰性を有さないヒトの確率で割った疾患試験陰性を有するヒトの確率である。陰性尤度比(NLR)は、一般的に、試験が陰性である場合、疾患の確率がどの程度低下するかを示す。
一部の実施形態では、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値レベルに対する比較がなされる。ROC曲線、閾値および曲線下面積(AUC)は、本明細書において提供される試験設計のそれぞれに対して示される。
一部の実施形態では、本明細書において提供される診断方法は、例えば、個体が疾患、例えば、アルツハイマー病を有することを最終的に確認するために、確認試験として使用されてもよい。
他の実施形態では、本明細書において提供される診断方法は、例えば、個体が疾患、例えば、アルツハイマー病を発症する可能性を決定するために、その予測値として(試験、スクリーニングのための)使用されてもよい。このような実施形態では、診断は尤度比の計算を含む場合がある。
他の実施形態では、本明細書において提供される診断方法は、コンパニオン診断として使用されてもよい。このような実施形態では、診断は、陽性適中率(PPV)および陰性適中率(NPV)の計算を含む場合がある。
一部の実施形態では、本明細書において提供される診断方法を使用して、診断オッズ比(OR)を確立してもよい。このような実施形態では、診断は、感度および特異性の計算を含んでいてもよく、診断試験の有効性の尺度である。
B.診断のためのH1.0K180me2抗体 − H1.0K180me2の直接的検出および定量化
診断に有用な、H1.0K180me2抗原に特異的に結合する抗体が本明細書において提供される。本明細書において提供されるH1.0K180me2抗体は、結合するためにK180残基のジメチル化を必要とする。
一部の実施形態では、H1.0K180me2抗体は、標識、例えば、検出可能な標識、スピン標識、比色標識、放射性標識、酵素標識、蛍光標識、または磁気標識を含む(例えば、標識にコンジュゲートされている)。
一部の実施形態では、抗体は、固体表面、例えば、ビーズ(例えば、磁気、ガラスまたはプラスチックビーズ)、カラム、樹脂またはマイクロプレートにコンジュゲートされているかまたは付着されている。一部の実施形態では、抗体は、マイクロプレート上にコーティングされている。
H1.0K180me2抗体は、先行するセクションIIでより詳細に議論されている。
直接的検出は、図5Aに模式的に示されている。
C.診断のためのH1.0K180me2タンパク質およびペプチド − H1.0K180me2の間接的検出および定量化
試料中の天然に存在するH1.0k180me2自己抗体の検出のためのH1.0k180me2タンパク質およびH1.0k180me2ペプチドが本明細書において提供される。
ある特定の刺激に応答する生物におけるH1.0K180me2抗原の産生は、抗原に特異的な、天然に存在する自己抗体の生成を生じさせる場合があることが認識される。したがって、本発明の一部の実施形態では、H1.0K180me2に対するこれらの天然に存在する自己抗体についてのアッセイが望ましい場合がある。自己抗体の検出および測定によって、H1.0K180me2の生成に対する代替測定が提案される。
H1.0K180me2抗原に特異的な天然に存在する自己抗体の検出および測定のための方法および組成物が本明細書において提供される。本明細書で使用する場合、H1.0K180me2タンパク質またはその断片に特異的な自己抗体は、互換的に、H1.0K180me2自己抗体と称される場合がある。
測定される自己抗体は、IgG、IgM、IgE、IgD、またはIgAなどの任意の免疫グロブリンタイプのものであってもよい。一部の実施形態では、H1.0K180me2に対するIgG自己抗体が測定される。一部の実施形態では、H1.0K180me2に対するIgM自己抗体が測定される。一部の実施形態では、H1.0K180me2に対する1種を超える自己抗体が測定され、例えば、一部の実施形態では、H1.0K180me2に対するIgGおよびIgM自己抗体が測定される。一部の実施形態では、H1.0K180me2に対する1種を超える自己抗体が測定され、比が計算され、例えば、一部の実施形態では、H1.0K180me2に対するIgGおよびIgM自己抗体が測定され、H1.0K180me2に対するIgG自己抗体:H1.0K180me2に対するIgM自己抗体の比が計算される。他の実施形態では、H1.0K180me2 IgM自己抗体:総IgM(例えば、血清IgM)の比が測定される。他の実施形態では、H1.0K180me2 IgM自己抗体:総IgM(例えば、血清IgM)の比が測定され、関数としてH1.0K180me2 IgG自己抗体:総IgG(例えば、血清IgG)の比に関連付けられる。一部の実施形態では、H1.0K180me2に対する1種を超える自己抗体が測定され、トランスフェリン、フェリチンまたは血清アルブミン含量と比較される。他の実施形態では、H1.0K180me2に対する1種を超える自己抗体が測定され、試料中のタンパク質の総量に対して正規化されるか、または試料の体積に対して正規化される。
例示的実施形態では、アルツハイマー病に対するスクリーニング試験は、H1.0K180me2 IgM自己抗体:総IgMの比を測定することを含む(図17)。別の例示的実施形態では、アルツハイマー病に対するスクリーニング試験は、H1.0K180me2 IgG自己抗体:総IgGの比を測定することを含む(図17)。一部の実施形態では、これらを互いに比較して、患者集団を階層化する。(図17)。
略図に目を向けると、図4および14Cは、H1.0K180me2レベルを間接的に測定する方法を示す。図4および図14Cが例示するように、標識したH1.0K180me2ペプチドを試料と接触させ、H1.0K180me2に応答して生じた試料中の自己抗体を標識したペプチドに結合させ、二次的に標識した抗体を添加して試料中の自己抗体に結合させ、続いて検出および定量化を行う。図4では、試料中の自己抗体は任意のタイプ(IgG、IgM、IgE、IgD、またはIgA)のものでありうる。このアッセイでは、自己抗体に結合させるために使用した二次抗体は、IgG、IgM、IgE、IgD、およびIgA抗体の間で識別することができ、その結果、各タイプは、そのように望まれる場合、独立に定量化することができる。一部の実施形態では、二次抗体は抗IgG抗体であり、アッセイを使用してH1.0K180me2に対するIgG自己抗体を定量化する。一部の実施形態では、二次抗体は抗IgM抗体であり、アッセイを使用してH1.0K180me2に対するIgM自己抗体を定量化する(図14C)。一部の実施形態では、2種の二次抗体を利用して、1種を超える自己抗体を定量化し、例えば、一部の実施形態では、抗IgGおよび抗IgM二次抗体の両方を利用して、アッセイを使用してH1.0K180me2に対するIgGおよびIgM自己抗体を定量化する。
一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、表3A(配列番号3〜35)に提供されるものから選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、アミノ酸配列AKPVKASKPKKAKPVK(me2)PK(配列番号3)を含む。一部の実施形態では、アミノ酸配列は、例えば、コンジュゲーションを目的として、追加の末端残基をさらに含む。一部の実施形態では、アミノ酸配列は、C末端残基をさらに含む。このような実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、アミノ酸配列CAKPVKASKPKKAKPVKPK(配列番号36)、CAKPVKASKPKKAKPVKPKC(配列番号37)、AKPVKASKPKKAKPVKPKC(配列番号38)、CAKPVKASKPKKAKPVK(me2)PK(配列番号39)、CAKPVKASKPKKAKPVK(me2)PKC(配列番号40)、またはAKPVKASKPKKAKPVK(me2)PKC(配列番号41)を含んでもよい。一部の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、本明細書において提供されるH1.0K180me2ペプチドのうちのいずれか1つの断片を含む。一部の実施形態では、H1.0K180me2ペプチドは、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、OVA(卵白アルブミン)、BC(バクテリアセルロース)またはBSA(ウシ血清アルブミン)にコンジュゲートされている。
一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、合成であり、例えば、K180残基の特異的ジメチル化(本明細書に記載されている)を可能にする条件下で、G9Aメチルトランスフェラーゼ酵素またはG9A様タンパク質(GLP)メチルトランスフェラーゼ酵素を使用する、例えば、in vitroメチル化の産物である。
本明細書において提供されるH1.0K180me2タンパク質およびペプチドは、様々な目的、例えば、これらに限定されないが、検出、診断、可視化、定量化、選別、治療、および生物学的アッセイにおいて使用するためにさらにコンジュゲートされていてもよい。一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、標識、例えば、検出可能な標識、スピン標識、比色標識、放射性標識、酵素標識、蛍光標識、または磁気標識を含む(例えば、標識にコンジュゲートされている)。例示的実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、ビオチン化されている。一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、固体表面、例えば、ビーズ(例えば、磁気、ガラスまたはプラスチックビーズ)、カラム、またはマイクロプレートにコンジュゲートされているかまたは付着される。一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、マイクロプレートにコーティングされている。一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、これらに限定されないが、放射性核種、細胞毒素、化学療法剤、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、イムノモジュレーター、アポトーシス促進剤、サイトカイン、ホルモン、オリゴヌクレオチド、アンチセンス分子、siRNA、および二次抗体を含むエフェクター分子にコンジュゲートされているか、またはこれを含む。
一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、H1.0K180me2に対して特異的である自己抗体に対して選択的である。一部の実施形態では、タンパク質またはペプチドは、H1.0K180me2に対して非特異的である自己抗体に結合する。
ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるH1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、標的自己抗体に結合し、0.0001nM〜1μMの範囲の解離定数(Kd)を有する。例えば、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドのKdは、約1μM、約100nM、約50nM、約10nM、約5nM、約1nM、約0.5nM、約0.1nM、約0.05nM、約0.01nM、約0.005nM、約0.001nM、約0.0005nM、またはさらに約0.0001nMであってもよい。
一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、ヒトH1.0K180me2自己抗体に特異的である。一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、他の種由来のH1.0K180me2自己抗体と交差反応性である。
一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、H1.0K180me2自己抗体に対して選択的であり、H1.0K180me1またはH1.0K180me3自己抗体に対してほとんどまたは全く結合性を示さない。一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、H1.0K180me2自己抗体に結合するが、H1.0K180me1および/または抗H1.0K180me3自己抗体に対しても結合性を示す。
一部の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドのH1.0K180me2自己抗体に対する結合優先性(例えば、親和性)は、一般的に、非特異的自己抗体(例えば、別の標的を対象とする自己抗体)に対して、少なくとも約2倍、約5倍、または少なくとも約10、20、50、102、103、104、105、もしくは106倍である。
当業者が精通する方法を使用して、H1.0K180me2自己抗体タンパク質またはペプチドがH1.0K180me2抗体に対して特異性および/または選択性を有するかどうかを決定するために、H1.0K180me2自己抗体タンパク質またはペプチドを評価することも可能である。
本明細書に記載されているH1.0K180me2タンパク質およびペプチドをコードする核酸が本明細書において提供される。本明細書に記載されているH1.0K180me2タンパク質およびペプチドをコードする核酸のいずれかを含むベクターも本明細書において提供される。
D.アルツハイマー病の検出
アルツハイマー病に対する個体のスクリーニングにおいて使用するため、個体がアルツハイマー病を発症するリスクがあるかどうかを特定するのに使用するため、個体がアルツハイマー病を発症するかどうかの可能性を推定するのに使用するため、アルツハイマー病の診断に使用するため、アルツハイマー病の早期検出において使用するため、アルツハイマー病の予後において使用するため、アルツハイマー病薬もしくはレジメンによるアルツハイマー病処置に応答する可能性がある個体を選択するため、アルツハイマー病と診断されたものに対する処置選択/処置選択肢の決定において使用するため、アルツハイマー病と診断され、アルツハイマー病薬もしくはレジメンによる進行中の処置を受けているものの処置をモニタリングするのに使用するため、またはアルツハイマー病薬およびレジメンに対するスクリーニングに使用するためのH1.0K180me2抗体(H1.0K180me2レベルを決定するため)ならびにH1.0K180me2タンパク質およびペプチド(H1.0K180me2自己抗体レベルを決定するため)が本明細書において提供される。
患者を別個の集団へと階層化するのに使用するためのH1.0K180me2タンパク質およびペプチドも本明細書において提供される(抗または自己抗H1.0K180me2 IgGおよび抗 自己抗H1.0K180me2 IgMとも称されるH1.0K180me2 IgGおよびH1.0K180me2 IgM自己抗体レベルを決定するため)。一実施形態では、これらの別個の集団は、アルツハイマー病の免疫療法に基づく処置に応答する可能性が低いかまたは全く有さないものに対して、アルツハイマー病の免疫療法に基づく処置に応答する可能性が高いものであってもよい。
図17は、抗H1.0K180me2 IgGおよび抗H1.0K180me2 IgM自己抗体レベルを同時に測定することにより、患者血清中の総IgMによって正規化した抗H1.0K180me2 IgMと総IgGによって正規化した抗H1.0K180me2 IgGとの間の相関に基づく、アルツハイマー病を有するものの別個の亜集団への階層化が可能となることを実証する。
これらの使用は、H1.0K180me2に対するH1.0K180me2 IgG自己抗体およびH1.0K180me2に対するH1.0K180me2 IgM自己抗体のレベルが、アルツハイマー病を有する患者において変化するという観察に基づいて提供される(図12A〜12C、図13B、図14A〜14E、および図15A〜15B)。
アルツハイマー病患者は、健康な、年齢を一致させた健康な対照よりも低いH1.0K180me2の濃度を示し、H1.0K180me2の濃度によって、アルツハイマー病を有する患者を健康な個体から有効に分離できることを示す(図12A)。H1.0K180me2の血清濃度は、アルツハイマー病患者の特定に十分であったが、総IgG(図12B)または総タンパク質(図12C)による血清試料の正規化を使用することによって、血清を得るために使用されるプロトコール、操作者の変化、患者の水分補給状態および患者の活動状態などの、全体の血清濃度を変える可能性がある変数にかかわらず、個体間の直接的な比較を可能とした。例えば、H1.0K180me2血清レベルは、健康な若齢個体に対して健康な老齢個体において上昇し、一方、アルツハイマー病を有する患者は、健康な老齢個体(60歳を超える)に対して有意により低い、正規化したH1.0K180me2の血清レベルを示したことが観察された(図12B、12C)。
アルツハイマー病患者は、年齢を一致させた健康な対照と比較して、H1.0K180me2自己抗体のレベルの変化も示し、抗H1.0K180me2 IgGおよび/またはIgM血清濃度(H1.0K180me2 IgGおよび/またはIgM自己抗体の濃度)によって、アルツハイマー病を有する患者を健康な個体から有効に分離できることを示す。アルツハイマー病患者は、健康な、年齢を一致させた対照よりも高濃度の血清抗H1.0K180me2 IgGを示した(図13、14A〜E、15A、15B)。ヒト血清中の抗H1.0K180me2 IgGおよびIgMレベルは、ビオチン化H1.0K180me2捕捉ペプチド(H1.0K180me2ペプチド)、それに続く適当な二次抗体(IgGまたはIgM抗体のいずれかを対象とする)を使用する間接的ELISA分析によって定量化した。30〜40歳(n=7)のまたは60歳を超える(n=9)健康な個体、および60歳を超える臨床的に診断されたアルツハイマー病を有する個体(n=10)に由来する等しい体積の血清を分析した。
図13Bは、アルツハイマー病患者および年齢を一致させた対照における間接的ELISAによって決定した抗H1.0K180me2 IgGレベルの定量化を示す。各血清試料中の抗H1.0K180me2 IgGの濃度は、ELISA実験に含まれるH1.0K180me2特異的抗体の連続希釈で作成した標準曲線を使用して計算した。
図14Eは、アルツハイマー病(ADの存在)患者および年齢を一致させた対照(ADの非存在、神経学的対照)における間接的ELISAによって決定した、生の正規化していない抗H1.0K180me2 IgMレベルの定量化を示す。
図15AおよびBは、アルツハイマー病患者(ADの存在)および年齢を一致させた対照(ADの非存在、神経学的対照)における間接的な血清学的ELISAによって決定した、正規化した抗H1.0K180me2 IgMレベルの定量化を示す。図15Bは、診断特性が、異なる操作者および実験室設定にかかわらず変化しないことを実証した。
例示的方法、H1.0K180me2レベル:より具体的には、一実施形態では、H1.0K180me2抗体を使用して、アルツハイマー病に対して個体をスクリーニングするため、個体がアルツハイマー病を発症するリスクがあることを特定するため、個体がアルツハイマー病を発症するかどうかの可能性を推定するため、個体がアルツハイマー病を有するかどうかを決定するため、個体におけるアルツハイマー病の早期徴候を検出するため、および個体におけるアルツハイマー病の予後に使用するための、H1.0K180me2レベルを決定する方法であって、(a)個体由来の生体試料をH1.0K180me2抗体と接触させるステップと、(b)抗体に結合する試料中のH1.0K180me2の濃度を決定するステップとを含み、対照に対する濃度の低下が、個体がアルツハイマー病を有するか、アルツハイマー病を発症するリスクがあるか、またはアルツハイマー病を発症するより大きな可能性を有することを示し、対照に対する濃度の上昇または濃度の変化がないことが、個体がアルツハイマー病を有さないか、アルツハイマー病を発症するリスクがないか、またはアルツハイマー病を発症するより大きな可能性を有さないことを示す場合がある方法が本明細書において提供される。対照として、これらに限定されないが、健康な対照(例えば、年齢を一致させた、性別を一致させた)、健康な対照を集めたものに相当する参照標準、または早期に単離された同一個体由来の対照試料が挙げられる。一部の実施形態では、循環H1.0K180me2の濃度が決定される。一部の実施形態では、濃度の変化は、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値に対するものである。一部の実施形態では、方法は、個体がアルツハイマー病を有するか、または発症するリスクがあると決定された場合、個体をアルツハイマー病薬またはレジメンで処置するステップをさらに含む。
方法を実践する一実施形態では、血清中のH1.0K180me2の5.61nmol/ml未満またはこれに等しい濃度は、個体がアルツハイマー病を有するか、または発症する可能性があることを示す。一実施形態では、血清中のH1.0K180me2の5.61nmol/ml未満またはこれに等しい濃度は、個体がアルツハイマー病を有するか、または78%の特異性、80%の感度および3.6の陽性尤度比でアルツハイマー病を発症する可能性があることを示す。一実施形態では、これは、試験前の確率と比較して、アルツハイマー病の確率(試験後の確率)の24%の増加を表す。試験後の確率は、以下の式:試験前オッズ×LR/(1+試験前オッズ×LR)(式中、試験前オッズは、試験前の疾患の存在の臨床上の疑いである)に基づいて計算される。試験後の確率は、通常、Likelihood Ratio NomogramまたはFagan Nomogram(NEJM 1975年;293巻:257頁)から計算される。
方法を実践する別の実施形態では、血清中の総タンパク質に対するH1.0K180me2の4.76×10−4未満またはこれに等しい比は、個体がアルツハイマー病を有するか、または発症する可能性があることを示す。一実施形態では、血清中の総タンパク質に対するH1.0K180me2の4.76×10−4未満またはこれに等しい濃度は、個体がアルツハイマー病を有するか、または70%の特異性、90%の感度および3.00の陽性尤度比でアルツハイマー病を発症する可能性があることを示す。一実施形態では、これは、試験前の確率と比較して、アルツハイマー病の確率の14.8%の増加を表す。
例示的方法、H1.0K180me2自己抗体レベル:別の実施形態では、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドを使用して、アルツハイマー病に対して個体をスクリーニングするため、個体がアルツハイマー病を発症するリスクがあることを特定するため、個体がアルツハイマー病を発症するかどうかの可能性を推定するため、個体がアルツハイマー病を有するかどうかを決定するため、個体におけるアルツハイマー病の早期徴候を検出するため、および個体におけるアルツハイマー病の予後に使用するための(H1.0K180me2自己抗体レベル、例えば、IgG自己抗体レベルまたはIgM自己抗体レベルを決定する)方法であって、(a)個体由来の生体試料をH1.0K180me2タンパク質またはペプチドと接触させるステップと、(b)ペプチドに結合する試料中の自己抗体の濃度を決定するステップとを含み、対照に対する濃度の上昇が、個体がアルツハイマー病を有するか、または発症するリスクがあることを示し、対照に対する濃度の低下または濃度の変化がないことが、個体がアルツハイマー病を有さないか、または発症するリスクがないことを示す場合がある方法が本明細書において提供される。対照として、これらに限定されないが、健康な対照(例えば、年齢を一致させた、性別を一致させた)、健康な対照を集めたものに相当する参照標準、または早期に単離された同一個体由来の対照試料を挙げることができる。一部の実施形態では、濃度の変化は、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値に対するものである。一部の実施形態では、方法は、個体がアルツハイマー病を有するか、または発症するリスクがあると決定された場合、個体をアルツハイマー病薬またはレジメンで処置するステップをさらに含む。
一実施形態では、血清中のH1.0K180me2に対するIgG自己抗体の9.69ug/ml(総IgGレベルに対して正規化した)より高いまたはこれに等しい濃度は、個体がアルツハイマー病を有するか、または発症する可能性があることを示す。一実施形態では、血清中のH1.0K180me2 IgG自己抗体の9.69ug/mlより高いまたはこれに等しい濃度は、個体がアルツハイマー病を有するか、または89%の特異性、60%の感度および5.4の陽性尤度比でアルツハイマー病を発症する可能性があることを示す。一実施形態では、これは、試験前の確率と比較して、アルツハイマー病の確率の30%の増加を表す。
一部の実施形態では、IgG自己抗体の血清濃度が、血清体積に対して正規化して8.23ug/mlより高いかまたはこれに等しい場合、個体はアルツハイマー病を有するか、または発症するリスクがある。一部の実施形態では、IgM自己抗体の血清濃度が、血清体積に対して正規化して、409fMol/mlより高いかまたはこれに等しい場合、個体はアルツハイマー病を有するか、または発症するリスクがある。一部の実施形態では、総IgM濃度に対するIgM自己抗体の濃度の比が、26.6×10−6より大きい場合、個体はアルツハイマー病を有するか、または発症するリスクがある。一実施形態では、PLR(LR+)がIgG自己抗体に対して2.4もしくはこれより大きいか、またはPLR(LR+)がIgM自己抗体に対して3.5もしくはこれより大きい場合、個体はアルツハイマー病を有するか、または発症するリスクがある。
関連する実施形態では、本明細書において提供される方法は、観察研究において使用される。観察研究の例として、これらに限定されないが、(a)横断的研究(単一時点研究(single time-point design)または遅延断面(delayed cross-sectional))−単一時点で採取した患者当たり1または数種の検体/試料についての試験、(b)縦断的研究−長期間(例えば、数週間、数カ月、数年)にわたって採取した患者当たりの複数の検体/試料についての試験、(c)遡及的研究−研究の開始に先立って、分析物のステータスおよび患者の臨床ステータスが知られている、以前に採取した検体(特徴付けられた検体)についての試験、(d)前向き研究−分析物のステータスおよび患者の臨床ステータスの両方が研究中に確立されることを除き、研究前または研究中に採取した検体についての試験、ならびに(e)前向き−遡及的研究−臨床ステータスが知られているが、分析物のステータスが知られておらず研究中に確立されることになる、以前に採取した検体についての試験が挙げられる。
関連する実施形態では、本明細書において提供される方法は、アルツハイマー病の診断を意図するものであり、唯一の決定要因として、患者の臨床状態を決定し、検証し、または確認するために使用されてもよい。これらの実施形態では、この種の試験はまた、唯一の確認アッセイ(以前の試験結果を検証するため)および唯一の排除アッセイ(特定の条件を除外するため)を含む。
関連する実施形態では、本明細書において提供される方法は、アルツハイマー病の「診断への助け(aid-to-diagnostic)」を提供することを意図し、患者の臨床ステータスの決定または検証を援助する追加情報を提供するために使用されてもよい。この試験は、必ずしも唯一の決定要因ではないが、患者の現在の状態を評価するために使用されてもよい。
関連する実施形態では、本明細書において提供される方法は、アルツハイマー病のスクリーニングを意図するものであり、無症状の個体の疾患、障害、または他の生理学的状態のステータスを決定するために使用されてもよい。状態および標的患者集団の性質に応じて、スクリーニング方法は、日常的に使用されてもよく、または「リスクがある」患者に制限されてもよい。この文脈では、本明細書に記載されている方法は、患者の現在の状態を評価するために使用される。
関連する実施形態では、本明細書において提供される方法は、アルツハイマー病の素質を決定することを意図し、本明細書に記載されている方法を使用して、症状が出る前の患者の疾患発生の可能性を決定してもよく(例えば、将来、疾患を発症するリスクを評価すること)、十分なリスクがある患者(試験結果によって決定される)に対しては、予防的介入がとられてもよい。
関連する実施形態では、本明細書において提供される方法は、アルツハイマー病の予後を意図し、本明細書に記載されている方法を使用して、処置と無関係に、臨床帰結に関連する因子を測定してもよい。本明細書に記載されている方法を使用して、疾患の自然進行(例えば、処置がない場合の帰結)を推定してもよく、または本明細書に記載されている方法は、患者の将来の状態を評価するために設計される。
関連する実施形態では、本明細書において提供される方法は、老齢集団の生理学的ステータス(「老化時計」)の決定を意図するものであり、本明細書に記載されている方法を使用して、老化についてのヒトの状態もしくは特徴、または老化に伴うアルツハイマー病のリスクを特定することを目的として、個体の生理学的状態を評価してもよい。
関連する実施形態では、H1.0K180me2抗原の定量化および/またはH1.0K180me2自己抗体の定量化を使用して、アルツハイマー病のスクリーニング、診断、または検出の信頼度を増加させてもよい。
関連する実施形態では、H1.0K180me2抗原の定量化および/またはH1.0K180me2自己抗体の定量化を、これらに限定されないが、Aβ42、T−tau、p−tau、Aβ42/T−tau比、およびAβ42/p−tauの測定を含む他の脳脊髄液(CSF)試験と併せて使用してもよい。
関連する実施形態では、H1.0K180me2抗原の定量化および/またはH1.0K180me2自己抗体の定量化を、認知ステータス試験、例えば、MMSE(ミニメンタルステート検査)、GDS(グローバル劣化率(global deterioration rate))、およびCDR(臨床的認知症尺度)試験の評価と併せて使用してもよい。
関連する実施形態では、H1.0K180me2抗原の定量化および/またはH1.0K180me2自己抗体の定量化を、神経画像処理と併せて使用してもよい。
本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、H1.0K180me2のレベルは、生体試料中の総IgGに対して正規化されるか、または生体試料中の総タンパク質に対して正規化されてもよい。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、H1.0K180me2の濃度は、メチル化されていない、標識された、合成H1.0ペプチドに対する相対比として決定されてもよい。
本明細書に記載されている方法の実施形態では、個体は50歳を超えている。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、個体は50歳未満である。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、個体は少なくとも50歳であるか、少なくとも55歳であるか、少なくとも60歳であるか、少なくとも65歳であるか、少なくとも70歳であるか、少なくとも75歳であるか、または少なくとも80歳である。例示的実施形態では、個体は少なくとも60歳である。
E.アルツハイマー病のコンパニオン診断
アルツハイマー病薬もしくはレジメンによるアルツハイマー病処置に応答する可能性がある個体を選択するための方法において使用するため、アルツハイマー病と診断されたものに対する処置選択/処置選択肢の決定において使用するため、アルツハイマー病と診断され、アルツハイマー病薬もしくはレジメンによる進行中の処置を受けているものの処置のモニタリングにおいて使用するため、またはアルツハイマー病薬およびレジメンに対するスクリーニングにおいて使用するためのH1.0K180me2抗体(H1.0K180me2レベルを決定するため)ならびにH1.0K180me2タンパク質およびペプチド(H1.0K180me2自己抗体のレベル、例えば、IgG自己抗体のレベルまたはIgM自己抗体のレベルを決定するため)も本明細書において提供される。
これらの実施形態では、これらのアルツハイマー病薬およびレジメン/処置として、これらに限定されないが、APP合成阻害剤、ベータ−セクレターゼ阻害剤、ガンマ−セクレターゼ阻害剤およびモジュレーター、Aβ凝集阻害剤、Aβ免疫療法、コレステロール降下薬、抗タウ薬、コリンエステラーゼ阻害剤、N−メチルD−アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト、非定型抗精神病薬、タンパク質のS−ニトロシル化のブロッカー、グルカゴン様ペプチド1受容体アゴニスト、ラパマイシン、ラパログ、内在性カンナビノイド、カンナビノイド、神経保護物質、カルシウム流入を制御する分子、抗酸化剤、抗炎症薬、グルタミン酸ホメオスタシスの制御を制御する薬物、オートファジー誘導物質、ホルモン、ホルモン調節剤、スタチン、インスリン、インスリン担体、多機能ナノキャリア、ビタミン、栄養補助剤、小RNA分子、ペプチド、または超音波療法による処置が挙げられる。より具体的には、APP合成阻害剤(+フェンセリン)、ベータ−セクレターゼ阻害剤(MK−8931、E2609、LY2811376、LY2886721、PF−05297909)、ガンマ−セクレターゼ阻害剤およびモジュレーター(セマガセスタットLY450139、アバガセスタットBMS−708163、PF−3084014、ELND006、タレンフルルビル、CHF5074)、Aβ凝集阻害剤(トラミプロセート(3APS)、クリオキノール(PBT1)、PBT2、ELND005(scyllo−イノシトール)、PQ912)、Aβ免疫療法(GSK933776、AN1802+QS21、ACC−001、アルツハイマー病−106、バピネオズマブ、ソラネズマブ、ガンテネルマブ(RO4909832)、ポネズマブ(PF−04360365)、MABT5102A(クレネズマブ)、BAN2401、静注用免疫グロブリン、ガンテネルマブ(R1450またはRO4909832))、抗タウ薬(リチウム、タイドグルーシブ(NP031112)、LMTX(メチレンブルー))、コリンエステラーゼ阻害剤(Razadyne(登録商標)(ガランタミン)、Exelon(登録商標)(リバスチグミン)、およびAricept(登録商標)(ドネペジル))、N−メチルD−アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト(Aricept(登録商標)およびNamzaric(登録商標)、Namenda(登録商標)とドネペジルの組合せ)、非定型抗精神病薬(オランザピン、クエチアピン、リスペリドン)、タンパク質のS−ニトロシル化のブロッカー、グルカゴン様ペプチド1受容体のアゴニスト、ラパマイシンおよびラパログ、内在性カンナビノイドおよびカンナビノイド、神経保護物質、カルシウム流入を制御する分子、抗酸化剤(ビタミンE、ビタミンC、α−リポ酸、コエンザイムQ)、抗炎症分子および薬、グルタミン酸ホメオスタシスの制御を制御する薬物、オートファジー誘導物質、ホルモンおよびホルモン調節剤、スタチン、インスリンおよび鼻腔内インスリン、長時間作用型インスリンおよびサリドマイドを含むインスリン担体、ラミプリル、レスベラトロール、多機能ナノキャリア、ビタミンおよび栄養補助剤、小RNA分子、ペプチド、ならびに超音波療法。一部の実施形態では、アルツハイマー病薬およびレジメンは、FDA承認が未決定であり、米国食品医薬品局のワールドワイドウェブアドレスで入手できる薬物承認のためのFDA登録臨床試験のリストから選択される。
例示的方法、H1.0K180me2レベル:一実施形態では、アルツハイマー病と診断され、進行中の処置を受けている個体が、進行中の処置から利益を得るかまたは利益を得続けるかどうかを決定するためのH1.0K180me2抗体を使用する方法であって、(a)進行中の処置を受けている個体由来の生体試料を準備するステップと、(b)生体試料をH1.0K180me2抗体と接触させるステップと、(c)抗体に結合する試料中のH1.0K180me2の濃度を決定するステップと、(d)処置から利益を得るかまたは利益を得続ける個体を選択するステップとを含み、対照に対する濃度の上昇が、個体が処置から利益を得るかまたは利益を得続けることを示し、対照に対する濃度の低下または濃度の変化がないことが、個体が処置から利益を得る傾向にないかもしくは利益を受け続けないか、または処置に応答性でないことを示す場合がある方法が本明細書において提供される。対照として、これらに限定されないが、アルツハイマー病を有し処置を受けていない個体由来の試料、または処置開始に先立って早期に単離された同一個体由来の対照試料が挙げられる。一部の実施形態では、循環H1.0K180me2の濃度が決定される。一部の実施形態では、濃度の変化は、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値に対するものである。
アルツハイマー病と診断された個体に対する処置選択において使用するため、アルツハイマー病と診断された個体に対する処置選択肢を決定するため、およびどの個体が特定の処置から利益を得る可能性があるのかを決定するための、H1.0K180me2抗体を使用する方法も本明細書において提供される。一実施形態では、方法は、(a)個体がアルツハイマー病に対して処置される前に、個体由来の生体試料を準備するステップと、(b)生体試料を候補処置と接触させるステップと、(c)生体試料をH1.0K180me2抗体と接触させるステップと、(d)抗体に結合する試料中のH1.0K180me2の濃度および/または細胞内局在を決定するステップと、(e)処置から利益を得る可能性がある個体を選択するステップとを含み、対照に対する濃度の上昇、または細胞質への細胞内局在の低下は、個体が処置から利益を得る可能性があることを示し、対照に対する濃度の低下もしくは濃度の変化がないこと、または細胞質への細胞内局在の増加もしくは細胞内局在の変化がないことは、個体が処置から利益を得ないことを示す場合がある。別の実施形態では、方法は、(a)個体に候補処置を投与するステップと、(b)処置の投与後に、個体由来の生体試料を準備するステップと、(c)生体試料をH1.0K180me2抗体と接触させるステップと、(d)抗体に結合する試料中のH1.0K180me2の濃度および/または細胞内局在を決定するステップと、(e)処置から利益を得る可能性がある個体を選択するステップとを含み、対照に対する濃度の上昇、または細胞質への細胞内局在の低下は、個体が処置から利益を得る可能性があることを示し、対照に対する濃度の低下もしくは濃度の変化がないこと、または細胞質への細胞内局在の増加もしくは細胞内局在の変化がないことは、個体が処置から利益を得ないことを示す場合がある。対照として、これらに限定されないが、健康な個体由来の試料、または生体試料をプラセボ処置と接触させることを含むことができる。一部の実施形態では、循環H1.0K180me2の濃度が決定される。一部の実施形態では、濃度の変化は、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値に対するものである。
例示的方法、H1.0K180me2自己抗体レベル:別の実施形態では、アルツハイマー病と診断され、進行中の処置を受けている個体が、進行中の処置から利益を得るかまたは利益を得続けるかどうかを決定するためのH1.0K180me2タンパク質またはペプチドを使用する方法であって、(a)個体由来の生体試料を準備するステップと、(b)生体試料をH1.0K180me2タンパク質またはペプチドと接触させるステップと、(c)タンパク質またはペプチドに結合する試料中の自己抗体の濃度を決定するステップと、(d)処置から利益を得るかまたは利益を得続ける個体を選択するステップとを含み、対照に対する自己抗体の濃度の低下が、個体が処置から利益を得るかまたは利益を得続けることを示し、対照に対する自己抗体の濃度の変化がないことまたは濃度の上昇が、個体が処置から利益を得ないかまたは利益をもはや得続けないことを示す可能性がある方法が本明細書において提供される。対照として、これらに限定されないが、アルツハイマー病を有し処置を受けていない個体由来の試料、または処置開始に先立って早期に単離された同一個体由来の対照試料が挙げられる。一部の実施形態では、濃度の変化は、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値に対するものである。一部の実施形態では、抗H1.0K180me2 IgG自己抗体の濃度が決定される。一部の実施形態では、抗H1.0K180me2 IgM自己抗体の濃度が決定される。一部の実施形態では、抗H1.0K180me2 IgGおよびIgM自己抗体の濃度が決定される。
アルツハイマー病と診断された個体に対する処置選択において使用するため、アルツハイマー病と診断された個体に対する処置選択肢を決定するため、および個体が特定の処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定するための、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドを使用する方法も本明細書において提供される。一実施形態では、方法は、(a)個体に候補処置を投与するステップと、(b)投与後に、個体由来の生体試料を準備するステップと、(c)試料をH1.0K180me2タンパク質またはペプチドと接触させるステップと、(d)タンパク質またはペプチドに結合する試料中の自己抗体の濃度を決定するステップと、(e)処置から利益を得る可能性がある個体を選択するステップとを含んでもよく、対照に対する自己抗体の濃度の低下は、個体が特定の処置から利益を得ることを示し、対照に対する自己抗体の濃度の変化がないことまたは濃度の上昇は、個体が特定の処置から利益を得ないことを示す可能性がある。参照対照として、これらに限定されないが、健康な個体由来の試料、または生体試料をプラセボ処置と接触させることを挙げることができる。一部の実施形態では、濃度の変化は、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値に対するものである。一部の実施形態では、抗H1.0K180me2 IgG自己抗体の濃度が決定される。一部の実施形態では、抗H1.0K180me2 IgM自己抗体の濃度が決定される。一部の実施形態では、抗H1.0K180me2 IgGおよびIgM自己抗体の濃度が決定される。
アルツハイマー病患者を別個の群:任意のタイプのアルツハイマー病処置に応答する傾向にある1つの群と任意のタイプのアルツハイマー病処置に応答しない傾向にある1つの群(おそらく、より限定的である)へと階層化するのに使用するための、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドを使用する方法も本明細書において提供される。一実施形態では、任意のタイプのアルツハイマー病処置に応答する傾向にある群は、アルツハイマー病に対する免疫療法および非免疫療法に基づく処置の両方に応答する場合がある。一実施形態では、任意のタイプのただのアルツハイマー病処置に応答する傾向にない群は、アルツハイマー病に対する非免疫療法に基づく処置にのみ応答する場合がある。一部の実施形態では、本明細書において提供される場合、このような階層化は、抗H1.0K180me2 IgG抗体の濃度と抗H1.0K180me2 IgM抗体の濃度の比を計算するおよび/またはこれらを相互に関連付けて、統計モデルにフィットさせることによって行ってもよい。このような方法は、アルツハイマー病と診断された個体に対し、および個体が特定の処置から利益を得る可能性があるかどうかを決定するために、実行可能な処置の選択肢を提供することができる。一実施形態では、方法は、(a)個体由来の生体試料を準備するステップと、(b)試料をH1.0K180me2タンパク質またはペプチドと接触させるステップと、(c)タンパク質またはペプチドに結合する試料中のIgGおよびIgM自己抗体の濃度を決定するステップと、(d)アルツハイマー病に対する免疫療法に基づく処置から利益を得る可能性がある個体を選択するステップとを含んでもよい。
関連する実施形態では、本明細書において提供される方法は、H1.0K180me2またはH1.0K180me2自己抗体レベルが、生理学的レベル内または確立された治療薬の範囲内にあることを保証するのに有用である。
関連する実施形態では、本明細書において提供される方法は、アルツハイマー病のモニタリングに有用であり、記載されている方法を使用して、必要に応じて処置/介入を調整することを目的として、H1.0K180me2またはH1.0K180me2自己抗体レベルを測定してもよい。関連する実施形態では、本明細書において提供される方法は、このような処置を受けている個体における、アルツハイマー病薬もしくは栄養レジメンの効果または生活様式の調整をモニタリングするのに有用である。
関連する実施形態では、本明細書において提供される方法は、アルツハイマー病に対する任意の観察または介入臨床研究における臨床成績をモニタリングするのに有用であり、(a)観察研究は、研究中に得られた試験結果が患者の管理に使用されず、処置の決定に影響を与えない研究であり、(b)介入研究は、研究中に得られた試験結果が患者の管理の決定に影響を及ぼしてもよく、処置を導くのに使用されてもよい研究である。
関連する実施形態では、本明細書において提供される方法は、一連の測定に有用であり、それによって、多数の決定が経時的に得られる。これらのタイプのモニタリング方法を、疾患進行/退行の検出/評価、疾患の再発、最小残存疾患、処置への応答/抵抗性、および/または処置による有害作用に対して使用してもよい。これらのタイプのモニタリング方法は、個体の状態の変化を評価するために設計してもよい。
関連する実施形態では、本明細書において提供される方法は、アルツハイマー病処置への応答または反応の予測に有用であり、本明細書に記載されている方法を使用して、特定の療法に対する患者の応答または有害反応の可能性を決定する因子を測定してもよい。特にコンパニオン診断として使用するために設計された予測方法が本明細書に記載されている。
本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、H1.0K180me2のレベルは、生体試料における総IgGに対して正規化してもよく、または生体試料における総タンパク質に対して正規化してもよい。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、H1.0K180me2の濃度は、メチル化されていない、標識された、合成H1.0ペプチドに対する相対比として決定されてもよい。
本明細書に記載されている方法の実施形態では、個体は50歳を超えている。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、個体は50歳未満である。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、個体は少なくとも50歳であるか、少なくとも55歳であるか、少なくとも60歳であるか、少なくとも65歳であるか、少なくとも70歳であるか、少なくとも75歳であるか、または少なくとも80歳である。例示的実施形態では、個体は少なくとも60歳である。
関連する実施形態では、方法は、新たなアルツハイマー病薬およびレジメンに対するスクリーニングに使用されてもよい。
F.老化の検出
老化を検出するのに使用するための、H1.0K180me2抗体およびH1.0K180me2タンパク質およびペプチドが本明細書において提供される。本明細書において提供される場合、老化は、複製老化(REP−SEN)、遺伝毒性ストレスに誘導される老化および放射線に誘導される老化に関連する。
一般的に、老化の検出のための方法は、H1.0K180me2の直接的検出またはH1.0K180me2の間接的検出を含む。H1.0K180me2の直接的検出として、方法は、一般的に、(a)個体由来の生体試料をH1.0K180me2抗体と接触させるステップと、(b)抗体に結合する試料中のH1.0K180me2抗原の濃度を決定するステップとを含み、対照に対する濃度の上昇は、生体試料が老化細胞を含むことを示す。H1.0K180me2の間接的検出として、方法は、一般的に、(a)個体由来の生体試料をH1.0K180me2タンパク質またはペプチドと接触させるステップと、(b)ペプチドに結合する試料中のH1.0K180me2抗原の濃度を決定するステップとを含み、対照に対する濃度の上昇は、生体試料が老化細胞を含むことを示す。一部の実施形態では、濃度の変化は、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値に対するものである。
一部の実施形態では、方法は、遺伝毒性物質によって誘導される老化を経験した個体を特定するために使用されてもよい。一部の実施形態では、遺伝毒性ストレスに誘導される老化は、個体のDNA損傷剤、薬物または毒素、例えば、放射線、UV光、ブレオマイシンおよび、これらに限定されないが、トラゾドン、Etotifen、セファレキシン、ニソルジピン(Nisoldipme)、CGS 15943、クロトリマゾール、5−ノニルトリプタミン、ドキセピン、ペルゴリド、パロキセチン、レスベラトロール、ケルセチン、ホノキオール、7−ニトロインダゾール、メゲストロール、フルボキサミン、エトポシド、ベリパリブ、ルカパリブ、オラパリブ、カンプトテシン、またはテルビナフィンを含む任意の他の遺伝毒性薬および一般的な化学療法薬への曝露の結果である。
一部の実施形態では、方法は、化学療法が有効であることを保証するために、化学療法処置を受けている個体における老化を特定するのに有用である。これらの実施形態における化学療法剤は、アレムツズマブ(Campath)、アリトレチノイン(Panretin)、アロプリノール(Zyloprim)、アルトレタミン、(Hexalen)、アミホスチン(Ethyol)、アナストロゾール(Arimidex)、亜ヒ酸(Trisenox)、アスパラギナーゼ(Elspar)、BCG Live(TICE BCG)、ベキサロテン(Targretin)、ブレオマイシン(Blenoxane)、静脈内ブスルファン(Busulfex)、経口ブスルファン(Myleran)、カルステロン(Methosarb)、カペシタビン(Xeloda)、ストレプトゾシン(Zanosar)、テール(Sclerosol)、タモキシフェン(Nolvadex)、テモゾロミド(Temodar)、テニポシド、VM−26(Vumon)、テストラクトン(Teslac)、チオグアニン、6−TG(Thioguanine)、チオテパ(Thioplex)、およびトポテカン(Hycamtin)からなる群から選択されてもよい。
G.DNA損傷の検出
DNA損傷、例えば、急性DNA損傷を検出するのに使用するための、H1.0K180me2抗体ならびにH1.0K180me2タンパク質およびペプチドが本明細書において提供される。
一般的に、DNA損傷の検出のための方法は、H1.0K180me2の直接的検出またはH1.0K180me2の間接的検出を含む。H1.0K180me2の直接的検出として、方法は、一般的に、(a)個体由来の生体試料をH1.0K180me2抗体と接触させるステップと、(b)抗体に結合する試料中のH1.0K180me2抗原の濃度を決定するステップとを含み、対照に対する濃度の上昇は、生体試料がDNA損傷を受けたことを示す。H1.0K180me2の間接的検出として、方法は、一般的に、(a)個体由来の生体試料をH1.0K180me2タンパク質またはペプチドと接触させるステップと、(b)ペプチドに結合する試料中のH1.0K180me2抗原の濃度を決定するステップとを含み、対照に対する濃度の上昇は、生体試料がDNA損傷を受けたことを示す。一部の実施形態では、濃度の変化は、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値に対するものである。
一部の実施形態では、DNA損傷は、細胞または個体のDNA損傷剤、薬物または毒素、例えば、放射線、ブレオマイシンまたは他のDNA損傷剤(例えば、上記された化学療法薬)への曝露の結果である。
一部の実施形態では、方法は、遺伝毒性物質またはDNA損傷剤へのこのような曝露から5分、10分、15分、20分、25分、30分、45分、60分、75分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、24時間、48時間、3日、4日、または最長5日以内にDNA損傷を決定するのに有用である。
一部の実施形態では、DNA損傷の検出のためのポータブルな装置が本明細書において提供される。装置は、試料採取装置、読み取り機、およびH1.0K180me2抗体を含むアッセイモジュールを含むことができる。装置は、試料採取装置、読み取り機、およびH1.0K180me2タンパク質またはペプチドを含むアッセイモジュールも含むことができる。
H.放射線曝露の検出
放射線曝露を検出するのに使用するためのH1.0K180me2抗体ならびにH1.0K180me2タンパク質およびペプチドが本明細書において提供される。
一般的に、放射線曝露の検出のための方法は、H1.0K180me2の直接的検出またはH1.0K180me2の間接的検出を含む。H1.0K180me2の直接的検出として、方法は、一般的に、(a)個体由来の生体試料をH1.0K180me2抗体と接触させるステップと、(b)抗体に結合する試料中のH1.0K180me2抗原の濃度を決定するステップとを含み、対照に対する濃度の上昇は、放射線曝露が生じたことを示す。H1.0K180me2の間接的検出として、方法は、一般的に、(a)個体由来の生体試料をH1.0K180me2タンパク質またはペプチドと接触させるステップと、(b)ペプチドに結合する試料中のH1.0K180me2抗原の濃度を決定するステップとを含み、対照に対する濃度の上昇は、放射線曝露が生じたことを示す。一部の実施形態では、濃度の変化は、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値に対するものである。例示的な一実施形態では、7GyのX線曝露の後の2時間後のH1.0K170me2抗原の濃度の変化は、12umol/Lから21umol/Lまで、48時間後では26umol/Lから35umol/Lまでである。
一部の実施形態では、方法は、このような曝露から5分、10分、15分、20分、25分、30分、45分、60分、75分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、24時間、48時間、3日、4日、または最長5日以内に放射線曝露を決定するのに有用である。
一部の実施形態では、方法は、野外の状況下、例えば戦闘区域で、軍人が、このような曝露を決定するのに有用である。
一部の実施形態では、放射線損傷の検出のためのポータブルな装置が本明細書において提供される。装置は、試料採取装置、読み取り機、およびH1.0K180me2抗体を含むアッセイモジュールを含むことができる。装置は、試料採取装置、読み取り機、およびH1.0K180me2タンパク質またはペプチドを含むアッセイモジュールも含むことができる。
I.H1.0K180me2およびラパログ
ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)は、有望な治療標的として出現した。ラパマイシンおよびいくつかのラパマイシン誘導体、ラパマイシン類似体、および他のmTOR阻害剤は、ある特定の疾患状態の処置のためにFDAに承認された薬物である。
本発明者らは、H1.0K180me2の検出が、「ラパログ」と総称されるラパマイシン、ラパマイシン誘導体、ラパマイシン類似体、および他のmTOR阻害剤に対する個体の応答性のスクリーニングに有用である可能性があり、ラパログをベースとする治療レジメンをモニタリングするのに有用である可能性があることを見出した。本発明者らは、H1.0K180me2の検出が、薬物スクリーニングを目的として、追加のラパログのスクリーニングに有用である可能性があることも見出した。具体的には、ラパマイシン誘導体および免疫抑制剤、エベロリムスは、DNA損傷の際のH1.0K180me2の出現をブロックすることが、ここで示される(図18)。遺伝毒性ストレスへの曝露に先立つ、またはそれと並行したラパログによる処置が、H1.0K180me2の濃度および/または細胞内局在の変化によって証明されるように、遺伝毒性ストレス要因の作用を低減させる可能性があることも観察された。
本明細書で使用する場合、ラパログは、FDAに承認されたラパログおよび現在臨床試験が進行中のラパログを含む。FDAに承認されたラパログとして、ラパマイシン、シロリムス、ラパミューン、エベロリムス、RAD001、アフィニトール、Zortress、テムシロリムス、CCI−779、トーリセル、リダフォロリムス、AP23573、MK−8669、デフォロリムス、ゾタロリムス、およびABT−578が挙げられる。他のラパログとして、AZD8055、AZD2014、OSI−027、MLN0128、WYE−132、Torin1、PI−103、P7170、PF−04691502、PF−05212384、PKI−587、GNE477、PKI−180、WJD008、XL765、SAR245409、NVP−BEZ235、BGT226、SF1126、GSK2126458、Ku−0063794、WYE−354、NVP−BEZ235、PF−05212384、XL765、Torin 2、WYE−125132、およびOSI−027が挙げられる。
一般的に、がん、免疫不全、糖尿病、関節炎、アルツハイマー病および他の神経変性疾患、心血管疾患、自己免疫疾患、および他の年齢に関連する病理と診断された個体において進行中のラパログベースの処置の効果をモニタリングするための方法が本明細書において提供される。
したがって、一実施形態では、ラパログによる処置を受けている個体がこのような処置に応答性であるかどうかを決定する方法であって、(a)個体由来の生体試料をH1.0K180me2抗体と接触させるステップと、(b)抗体に結合する試料中のH1.0K180me2の濃度および/または局在を決定するステップと、(c)個体が処置に応答性であるかどうかを決定するステップとを含み、対照に対する確立された濃度の低下または局在の変化が、個体がラパログに応答性であることを示す方法が本明細書において提供される。一部の実施形態では、対照に対するH1.0K180me2の細胞外濃度の上昇が存在する場合、ラパログによる処置は有効でないか、または修正される必要があることが決定される。一部の実施形態では、対照に対するH1.0K180me2の細胞質局在の増加が存在する場合、ラパログによる処置は有効でないか、または修正される必要があることが決定される。一部の実施形態では、低下は、ラパログが投与されている関連疾患と診断されていない、年齢を一致させた対照に対するものである。一部の実施形態では、対照に対するH1.0K180me2タンパク質の細胞外または細胞質濃度の低下が存在する場合、処置は有効であり、継続されるべきであることが決定される。一部の実施形態では、方法は、処置のタイプ、過程、期間、および/または投薬量を修正する情報を使用するステップをさらに含む。一部の実施形態では、循環H1.0K180me2の濃度が決定される。一部の実施形態では、濃度の変化は、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値に対するものである。
同様に、H1.0K180me2に対する自己抗体が測定に使用される場合、方法は、(a)個体由来の生体試料をH1.0K180me2タンパク質またはペプチドと接触させるステップと、(b)タンパク質またはペプチドに結合する自己抗体の濃度を決定するステップと、(c)個体が処置に応答性であるかどうかを決定するステップとを含み、対照に対する自己抗体の濃度の変化が、個体がラパログに応答性であることを示す。一部の実施形態では、対照に対するH1.0K180me2自己抗体の濃度の変化が存在しない場合、ラパログによる処置は有効でないか、または修正される必要があることが決定される。一部の実施形態では、低下は、ラパログが投与されている関連疾患と診断されていない、年齢を一致させた対照に対するものである。一部の実施形態では、対照に対するH1.0K180me2自己抗体の濃度の変化が存在する場合、処置は有効であり、継続されるべきであることが決定される。一部の実施形態では、濃度の変化は、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値に対するものである。
一部の実施形態では、がん、免疫不全、糖尿病、アルツハイマー病または他の神経変性疾患、心血管疾患、自己免疫疾患、関節炎、および他の年齢に関連する病理と診断されたか、またはこれらを有する疑いがあり、ラパログによる処置から利益を得る可能性がある個体を選択するため、すなわち、個体がラパログによる処置に応答する可能性があるかどうかを決定するための方法が本明細書において提供される。一部の実施形態では、この方法は、個体由来の生体試料を準備するステップと、試料を、in vitroで、ex vivoで、切片培養で、または組織培養で、ラパログにより処置するステップと、試料中のH1.0K180me2の濃度および/または細胞内局在を決定するステップとを含む。一部の実施形態では、H1.0K180me2の濃度は、H1.0K180me2抗体を使用して試料中のH1.0K180me2の濃度を測定することによって決定される。一部の実施形態では、H1.0K180me2の濃度は、試料中の抗H1.0K180me2自己抗体の濃度を測定することによって決定される。一部の実施形態では、対照に対するH1.0K180me2の細胞質内または細胞外濃度の上昇が存在する場合、ラパログによる処置が有効でない可能性があることが決定される。一部の実施形態では、対照に対するH1.0K180me2の細胞質内局在の増加が存在する場合、ラパログによる処置が有効でない可能性があることが決定される。一部の実施形態では、低下は、個体がラパログによる処置を受ける可能性がある疾患と診断されていない、年齢を一致させた対照に対するものである。一部の実施形態では、対照に対するH1.0K180me2タンパク質の細胞質内または細胞外濃度の低下が存在する場合、処置は有効である可能性があることが決定される。一部の実施形態では、濃度の変化は、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値に対するものである。
一部の実施形態では、本明細書において提供される方法は、処置のタイプ、過程、期間、および/または投薬量を修正する情報を使用するステップをさらに含む。
他の実施形態では、特定される新たなラパログの能力をモニターするためのH1.0K180me2の検出の使用(薬物スクリーニング用途)が本明細書において提供される。
J.生物学的老化の検出
生物学的老化を検出するのに使用するためのH1.0K180me2抗体ならびにH1.0K180me2タンパク質およびペプチドが本明細書において提供される。本明細書において提供される場合、老化はほとんどの生物の基本的性質であるため、生物学的老化マーカーまたは老化のバイオマーカーは、生物学的調査において多くの用途を見出すことが期待される。
暦年齢と生物学的年齢の間に差が存在しうる。一部の個体はより急速に老化するが、他の個体は、良い習慣、遺伝子および/または環境ストレス要因の欠如により、よりゆっくり老化し、より長く健康かつ「若々しく」する。その生物学的年齢を追跡することができることにより、生活様式を修正するのに役立つか(肥満度指数を追跡することに類似する)、またはアンチエイジングの手順を展開するのに役立つ場合がある。
老化マーカーによる生物学的年齢の正確な測定は、(i)種々の年齢に関連する疾患を診断すること、およびがんのサブタイプを定義するために、(ii)種々の疾患の発生を予測すること/予見すること、ならびに(iii)若返りのアプローチを含む治療介入を評価するための代用マーカーとしての役割を果たすことなどの、生物学的老化についての年齢に関連する疾患の理論を試験するのに有用である。
一般的に、生物学的老化の検出のための方法は、H1.0K180me2の直接的検出またはH1.0K180me2の間接的検出を含む。H1.0K180me2の直接的検出として、方法は、一般的に、(a)個体由来の生体試料をH1.0K180me2抗体と接触させるステップと、(b)抗体に結合する試料中のH1.0K180me2抗原の濃度を決定するステップとを含み、対照に対する濃度の上昇は、生体試料が生物学的老化を経験した個体に由来することを示す。H1.0K180me2の間接的検出として、方法は、一般的に、(a)個体由来の生体試料をH1.0K180me2タンパク質またはペプチドと接触させるステップと、(b)ペプチドに結合する試料中のH1.0K180me2抗原の濃度を決定するステップとを含み、対照に対する濃度の上昇は、生体試料が生物学的老化を経験した個体に由来することを示す。一部の実施形態では、濃度の変化は、最適な特異性および感度に対する受診者動作特性曲線分析によって確立された閾値に対するものである。
K.診断キットおよび製品
H1.0K180me2の検出に有用なキットが本明細書において提供される。一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載されている1種または複数のH1.0K180me2抗体またはH1.0K180me2ペプチドを含む。ある特定の実施形態では、抗体またはペプチドは、標識されている。さらに、キットは、本明細書に記載されている方法のいずれかを実行するための説明材料を任意選択で含むことができる。説明材料は、典型的には、書面または印刷材料を含むが、このようなものに限定されない。このような説明書を保存し、これらをエンドユーザーに伝えることができる任意の媒体が本明細書において企図される。このような媒体として、これらに限定されないが、電子保存媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)などが挙げられる。このような媒体は、このような説明材料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含むことができる。
キットは、キットが設計される特定の適用を容易にするために、さらなる構成成分を含む場合もある。したがって、例えば、キットが標識されている抗H1.0K180me2を含有する場合、キットは、標識を検出するための試薬(例えば、酵素標識のための酵素基質、蛍光標識を検出するためのフィルターセット、適当な二次標識など)をさらに含有してもよい。キットは、特定の方法の実践のために日常的に使用される緩衝液および他の試薬をさらに含んでもよい。
H1.0K180me2抗体に加えて、H1.0K180me2を検出するためのイムノアッセイにおいて有用な例示的キットは、H1.0K180me2タンパク質またはペプチドを含んでもよい。このペプチドは、例えば、陽性対照としてまたは競合イムノアッセイの競合者として用いられてもよく、実行されるアッセイのフォーマットに応じて、標識されてもされなくてもよい。
抗H1.0K180me2ペプチドに加えて、H1.0K180me2を検出するためのイムノアッセイにおいて有用な別の例示的キットは、H1.0K180me2抗体を含むことになる。この抗体は、例えば、陽性対照としてまたは競合イムノアッセイの競合者として用いられてもよく、実行されるアッセイのフォーマットに応じて、標識されてもされなくてもよい。
皮下組織の標的H1.0K180me2タンパク質およびペプチドの濃度を測定するための経皮吸収パッチであって、H1.0K180me2抗体を含む基質、および複数のマイクロニードルを含む経皮吸収パッチが本明細書において提供される。別の実施形態では、H1.0K180me2自己抗体の濃度を測定するための経皮吸収パッチであって、基質、およびH1.0K180me2自己抗体の検出に特異的なH1.0K180me2結合タンパク質またはペプチドを含む経皮吸収パッチが本明細書において提供される。一部の実施形態では、パッチは、経皮マイクロニードルアレイパッチである。一部の実施形態では、パッチの基質は、弾性的に伸縮可能である。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体またはペプチドを含むパッチ、および任意選択で、使用説明書を含むキットが本明細書において提供される。一部の実施形態では、パッチは、複製老化、DNA損傷、遺伝毒性ストレス、放射線曝露、およびアルツハイマー病を検出することを目的として、H1.0K180me2を検出し、その濃度を測定するのに有用であるか、または生体試料中のH1.0K180me2抗体を検出し、その濃度を測定するのに有用であり、治療レジメンをモニタリングするのに有用であり、薬物スクリーニングに有用である。
検出、例えば、DNA損傷または放射線曝露の検出のためのポータブルな装置も本明細書において提供される。装置は、試料採取装置、読み取り機、およびH1.0K180me2抗体を含むアッセイモジュールを含んでもよい。装置は、試料採取装置、読み取り機、およびH1.0K180me2タンパク質またはペプチドを含むアッセイモジュールも含んでもよい。
分析物のラテラルフローアッセイに適するラテラルフロー片または試験片であって、試料受容ゾーンを含み、試料受容ゾーンが、H1.0K180me2抗体または抗H1.0K180me2結合ペプチドのいずれかを含むラテラルフロー片または試験片も本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗体またはペプチドは標識を含む。
IV.治療薬
A.メチル化H1.0関連疾患および状態の処置
メチル化H1.0関連疾患または状態の処置のための、治療用H1.0K180me2抗体、治療用H1.0K180me2タンパク質、および治療用H1.0K180me2ペプチドが本明細書において提供される。
本明細書で使用する場合、「メチル化H1.0関連疾患または状態」は、H1.0K180me2のレベルの上昇、K180のH1.0タンパク質/ペプチド基質の内因性ジメチル化の増加、クロマチンからのH1.0K180me2の放出の増加、核から細胞質へのH1.0K180me2の放出の増加、H1.0K180me2の細胞質内沈着の増加、細胞外スペースにおけるH1.0K180me2のレベルの上昇、体液(例えば、血清、尿、唾液、脳脊髄液など)中のH1.0K180me2の循環レベルの上昇、および/またはH1.0K180me2に特異的な自己抗体のレベルの上昇が存在するものである。
メチル化H1.0関連疾患および状態として、これらに限定されないが、老化細胞の増加が伴う、年齢に関連する病理、アルツハイマー病、放射線曝露、遺伝毒性ストレス要因への曝露、外部および内部ストレス要因に関連する老化細胞の蓄積を含む状態、ならびにH1.0K180me2に対する高レベルの自己抗体に関連する疾患および状態の自己免疫群が挙げられる。
H1.0K180me2に結合して取り除くことによって、個体のメチル化H1.0関連疾患または状態を処置する方法であって、個体に治療有効量の治療用H1.0K180me2抗体を投与するステップを含む方法が本明細書において提供される。
H1.0K180me2自己抗体に結合して取り除くために、個体のメチル化H1.0関連疾患または状態を処置する方法であって、個体に治療有効量の治療用H1.0K180me2タンパク質または治療用H1.0K180me2ペプチドを投与するステップを含む方法が本明細書において提供される。
本明細書で使用する場合、個体は、ヒト、飼育動物および家畜、ならびに動物園の動物、スポーツ用動物、または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、アレチネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどを含む哺乳動物として分類される任意の動物を指す。個体は、雄または雌でありうる。
本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、個体は50歳を超えている。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、個体は50歳未満である。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、個体は少なくとも50歳であるか、少なくとも55歳であるか、少なくとも60歳であるか、少なくとも65歳であるか、少なくとも70歳であるか、少なくとも75歳であるか、または少なくとも80歳である。例示的実施形態では、個体は少なくとも60歳である。
老化の間のメチル化H1.0関連疾患および状態により具体的に目を向けると、ヒトの脳組織における細胞質内H1.0K180me2の蓄積の増加がある 図11B。これらの観察は、血清学試験で観察された循環H1.0K180me2抗原の年齢に関連する増加と相関する(図11C)。
しかし、アルツハイマー病と診断された個体において、対照集団(アルツハイマー病の病理がない)を参照対照(診断されたアルツハイマー病患者)と比較すると(図12A〜12C)、血清学的ELISA試験で観察されたH1.0K180me2抗原の循環レベルの降下が存在する(図11C)。
病理を有さない年齢を一致させた個体と比較した場合、アルツハイマー病群におけるH1.0K180me2抗原の循環レベルのこの降下には、H1.0K180me2エピトープに対するIgGおよびIgM自己抗体のレベルの上昇が伴う(図13B、14B、14D、14E、15A、16A、16B)。
したがって、アルツハイマー病の文脈では、治療有効量のH1.0K180me2抗体(例えば、細胞透過性抗体または細胞除去抗体)による処置が提供される。
さらに、年齢を一致させた対照と比較した場合、H1.0K180me2に応答して生じた天然に存在する血清IgGおよびIgM自己抗体は、アルツハイマー病を有する個体で増加し(図13B、14B、14D、14E、15A、16A、16B)、H1.0K180me2を発現する細胞を攻撃および破壊するという意味で、有害である可能性がある。したがって、この文脈では、タンパク質またはペプチドに結合する(中和する)治療有効量のH1.0K180me2抗体による処置が提供される。
DNA損傷剤の文脈では、H1.0K180のジメチル化(H1.0K180me2)は、化学療法剤であるブレオマイシンによる急性のDNA損傷後にクロマチンで観察される(図7A)。したがって、この文脈では、治療有効量のH1.0K180me2抗体(例えば、細胞透過性抗体または細胞除去抗体)による処置が提供される。さらに、H1.0タンパク質のジメチル化におけるH1.0K180me2の増加に応答して生じた天然に存在する自己抗体は、タンパク質またはペプチドに結合する(中和する)治療有効量のH1.0K180me2抗体による処置にとっての標的となる。
遺伝毒性ストレスの文脈では、H1.0K180me2は、遺伝毒性ストレスに誘導される老化に際して(DNA損傷剤による処置の数日後)クロマチンから放出され(図9A)、細胞から細胞外スペースへと分泌される(図9B)。したがって、この文脈では、治療有効量のH1.0K180me2抗体による処置が提供される。さらに、H1.0K180me2の増加に応答して生じる天然に存在する自己抗体は、タンパク質またはペプチドに結合する(中和する)治療有効量のH1.0K180me2抗体による処置にとっての標的となる。
放射線曝露の文脈では、イオン化放射線への曝露は、血清中の循環H1.0K180me2のレベルの上昇を誘導する(図10Aおよび図10B)。したがって、この文脈では、治療有効量のH1.0K180me2抗体による処置が提供される。さらに、H1.0K180me2の増加に応答して生じる天然に存在する自己抗体は、タンパク質またはペプチドに結合する(中和する)治療有効量のH1.0K180me2抗体による処置にとっての標的となる。
一部の実施形態では、処置される個体が、メチル化H1.0関連疾患または状態に実際に苦しんでいるかどうかを決定するための診断方法が実行される。メチル化H1.0関連疾患または状態を示すH1.0K180me2またはH1.0K180me2抗体の存在、局在、クロマチン画分、細胞質内蓄積、血清レベル、自己抗体レベルについて試験するアッセイは、処置に先立って実行されてもよい。
B.治療用H1.0K180me2抗体
上記セクション(II)(A)において議論されたように、H1.0K180me2エピトープを認識し、これに特異的に結合し、治療のために使用されてもよい抗体が本明細書において提供される。
ジメチル化K180抗原を認識するH1.0K180me2抗体に加えて、一部の実施形態では、治療用抗体は、抗イディオタイプ抗体である。このようなイディオタイプ抗体は、アルツハイマー病を有する患者の疾患関連IgG自己抗体もしくは疾患関連IgM自己抗体、または他のメチル化H1.0関連疾患もしくは状態を認識する。一部の実施形態では、in vitro IgM(IVIgM)はアルツハイマー病患者ドナーの血漿から生じ、アルツハイマー病に対する予防的治療またはワクチン接種として使用されてもよい。このようなIVIgMは、患者の疾患関連自己抗体を認識する抗イディオタイプ抗体を含有してもよい。したがって、一部の実施形態では、IVIgMは、H1.0K180me2に対するIgGおよび/またはIgM自己抗体を不活性化する可能性があるイディオタイプ抗体を有することができる。
本明細書において提供される治療用抗体は、IgG、IgA、IgE、IgD、もしくはIgMなどの任意の免疫グロブリンタイプのものであってもよく、またはIgG、IgA、IgE、IgD、もしくはIgMに対する抗イディオタイプ抗体であってもよい。一部の実施形態では、抗体は、IgGサブタイプのものであり、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、またはIgG4抗体であってもよい。一部の実施形態では、抗体は、IgMサブタイプのものである。
本明細書において提供される抗体は、様々な目的で、例えば、これらに限定されないが、検出、可視化、定量化、選別、治療において使用するため、およびその治療用途に関連する生物学的アッセイにおいて使用するためにさらにコンジュゲートされていてもよい。
一部の実施形態では、治療用抗体は中和抗体であり、抗体は、H1.0K180me2の1種または複数の生物学的活性を中和する。例えば、抗体は、細胞外H1.0K180me2に結合し、それが有する可能性がある任意の結合性またはシグナル伝達活性を中和することができる。一部の実施形態では、抗体は、細胞または試料中のH1.0K180me2を取り除くか、またはブロックする場合がある。一部の実施形態では、抗体は、H1.0K180me2を含む細胞を取り除く場合がある。
一部の実施形態では、治療用抗体は、老化細胞を取り除く場合がある。一部の実施形態では、抗体は、アルツハイマー病の症状を生じさせる細胞/組織またはタンパク質産物を取り除く場合がある。一部の実施形態では、抗体は、放射線による損傷、DNA損傷剤、および他の遺伝毒性物質によって損傷した細胞を取り除く場合がある。一部の実施形態では、抗体は、細胞透過性抗体である。他の実施形態では、罹患細胞の膜が含まれ、本明細書において提供される治療用H1.0K180me2抗体の侵入が可能である。
一部の実施形態では、本明細書において提供される治療用抗体は、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)活性を有する。細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、樹状細胞、または単球を含む、その細胞表面にFcガンマ受容体(FcγRまたはFCGR)を有するエフェクター細胞は、標的細胞に結合した抗体のFc領域を認識し、結合する。このような結合は、細胞死を導く細胞内シグナル伝達経路の活性化を誘発する場合がある。
一部の実施形態では、治療用抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)活性を有する。抗体に誘導されるCDCは、古典的な補体カスケードのタンパク質を介して媒介され、補体タンパク質Clqを抗体に結合させることによって誘発される。Clqに結合する抗体Fc領域は、補体カスケードの活性化を誘導する場合がある。
一部の実施形態では、治療用抗体は、抗体依存性細胞性食作用(ADCP)活性を有する。単球およびマクロファージを含む、その細胞表面にFc受容体を有する食細胞は、標的細胞に結合する抗体のFc領域を認識し、結合する。抗体結合標的細胞に対するFc受容体の結合に際し、標的細胞の食作用が開始される場合がある。
一部の実施形態では、治療用抗体は、免疫複合体を形成してもよい。例えば、免疫複合体は、抗体によって覆われるH1.0K180me2抗原を発現するかまたは出す(extrude)細胞であってもよい。
C.治療用H1.0K180me2タンパク質およびH1.0K180me2ペプチド
メチル化H1.0関連疾患または状態に苦しむ個体のH1.0K180me2抗原の産生は、H1.0K180me2抗原に特異的な天然に存在する自己抗体の生成を生じさせる。したがって、これらの天然に存在する自己抗体に結合し、これらを取り除く治療アプローチが本明細書において提供される。この目的のために、一部の実施形態では、細胞中または循環中のH1.0K180me2エピトープに応答して生じる天然に存在する自己抗体に結合し、それらをさらに中和する可能性がある、K180に対応するジメチル化リシンを保持する治療用H1.0K180me2タンパク質および治療用H1.0K180me2ペプチドが本明細書において提供される。
一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、個体の血清中のH1.0K180me2自己抗体の生体作用をブロックする場合がある。このような自己抗体レベルのブロックは、免疫応答を減らす場合があり、メチル化H1.0疾患または状態の有害症状を軽快させる場合がある。
一実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質は、H1.0K180me2全長タンパク質(配列番号1)である。本明細書において提供される治療用H1.0K180me2ペプチドは、ジメチル化K180残基を保持する全長H1.0K180me2タンパク質の任意の断片であってもよい。一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2ペプチドは、5〜193アミノ酸(aa)長の範囲である。一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2ペプチドの長さは、5aa、6aa、7aa、8aa、9aa、10aa、11aa、12aa、13aa、14aa、15aa、16aa、17aa、18aa、19aa、20aa、21aa、22aa、23aa、24aa、25aa、26aa、27aa、28aa、29aa、またはさらに30aaである。ある特定の例示的実施形態では、治療用H1.0K180me2ペプチドの長さは、15aa、16aa、17aa、18aa、19aa、または20aaである。表3Aは、本明細書において提供される治療用H1.0K180me2ペプチドの例示的配列を提供する。したがって、一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2ペプチドは、表3Aに提示されるものから選択される配列のうちの1つを含む。関連する実施形態では、治療用H1.0K180me2ペプチドは、表3Aに提示されるものから選択される配列のうちの1つからなる。例示的実施形態では、治療用H1.0K180me2ペプチドは、配列番号3、配列番号4、または配列番号5の配列を含む。例示的実施形態では、H1.0K180me2抗体結合ペプチドは、配列番号3、配列番号4、または配列番号5の配列からなる。
一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは合成である。一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質またはペプチドは、例えば、本明細書においてより詳細に説明されている、K180残基の特異的ジメチル化を可能とする条件下で、G9Aメチルトランスフェラーゼ酵素またはG9A様タンパク質(GLP)メチルトランスフェラーゼ酵素を使用する、in vitroメチル化反応の産物である。
セクションIで提供されるように、本明細書において提供される治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、様々な目的のため、例えば、これらに限定されないが、治療において使用するため、およびその治療用途に関連する生物学的アッセイにおいて使用するために、さらにコンジュゲートされていてもよい。
一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、標識、例えば、検出可能な標識、スピン標識、比色標識、放射性標識、酵素標識、蛍光標識、または磁気標識を含む(例えば、標識にコンジュゲートされている)。例示的実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、ビオチン化されている。一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、固体表面、例えば、ビーズ(例えば、磁気、ガラスまたはプラスチックビーズ)、カラム、またはマイクロプレートにコンジュゲートされているかまたは付着されている。一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、マイクロプレートにコーティングされている。一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、これらに限定されないが、放射性核種、細胞毒素、化学療法剤、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、イムノモジュレーター、アポトーシス促進剤、サイトカイン、ホルモン、オリゴヌクレオチド、アンチセンス分子、siRNA、および二次抗体を含むエフェクター分子にコンジュゲートされているか、またはこれを含む。
一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、H1.0K180me2に対して特異的である自己抗体に対して選択的である。一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、H1.0K180me2に対して非特異的である自己抗体に結合する。
ある特定の実施形態では、本明細書において提供される治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、0.0001nM〜1μMの範囲の解離定数(Kd)を有する。例えば、抗H1.0K180me2結合ペプチドのKdは、約1μM、約100nM、約50nM、約10nM、約5nM、約1nM、約0.5nM、約0.1nM、約0.05nM、約0.01nM、約0.005nM、約0.001nM、約0.0005nM、またはさらに約0.0001nMであってもよい。
一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、ヒトH1.0K180me2自己抗体に特異的である。一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、他の種由来のH1.0K180me2自己抗体と交差反応性である。
一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、H1.0K180me2自己抗体に対して選択的であり、H1.0K180me1またはH1.0K180me3に結合する自己抗体に対してほとんどまたは全く結合性を示さない。一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドは、H1.0K180me2自己抗体に結合するが、H1.0K180me1および/またはH1.0K180me3自己抗体に対しても結合性を示す。
一部の実施形態では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドのH1.0K180me2抗体に対する結合優先性(例えば、親和性)は、一般的に、非特異的標的抗体(例えば、無作為に生じた抗体)に対して、少なくとも約2倍、約5倍、または少なくとも約10、20、50、102、103、104、105、もしくは106倍である。
当業者が精通する方法を使用して、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドがH1.0K180me2抗体に対して特異性および/または選択性を有するかどうかを決定するために、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドを評価することも可能である。
本明細書に記載されている治療用H1.0K180me2ペプチドをコードする核酸が本明細書において提供される。本明細書に記載されている治療用H1.0K180me2ペプチドをコードする核酸のいずれかを含むベクターも本明細書において提供される。
D.併用療法
本明細書において提供される治療用H1.0K180me2抗体および治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドのいずれかの投与は、H1.0メチル化に現れる疾患に対する他の公知の薬物/処置と組み合わせて投与してもよい。
アルツハイマー病予防の文脈では、治療用H1.0K180me2抗体のいずれかは、これらに限定されないが、APP合成阻害剤、ベータ−セクレターゼ阻害剤、ガンマ−セクレターゼ阻害剤およびモジュレーター、Aβ凝集阻害剤、Aβ免疫療法、コレステロール降下薬、抗タウ薬、コリンエステラーゼ阻害剤、N−メチルD−アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト、非定型抗精神病薬、タンパク質のS−ニトロシル化のブロッカー、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、ラパマイシン、ラパログ、内在性カンナビノイド、カンナビノイド、神経保護物質、カルシウム流入を制御する分子、抗酸化剤、抗炎症薬、グルタミン酸ホメオスタシスの制御を制御する薬物、オートファジー誘導物質、ホルモン、ホルモン調節剤、スタチン、インスリン、インスリン担体、多機能ナノキャリア、ビタミン、栄養補助剤、小RNA分子、ペプチド、および超音波療法を含むアルツハイマー病予防薬またはレジメンの投与と組み合わせて投与されてもよい。
アルツハイマー病処置の文脈では、治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドのいずれかは、これらに限定されないが、APP合成阻害剤、ベータ−セクレターゼ阻害剤、ガンマ−セクレターゼ阻害剤およびモジュレーター、Aβ凝集阻害剤、Aβ免疫療法、コレステロール降下薬、抗タウ薬、コリンエステラーゼ阻害剤、N−メチルD−アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト、非定型抗精神病薬、タンパク質のS−ニトロシル化のブロッカー、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、ラパマイシン、ラパログ、内在性カンナビノイド、カンナビノイド、神経保護物質、カルシウム流入を制御する分子、抗酸化剤、抗炎症薬、グルタミン酸ホメオスタシスの制御を制御する薬物、オートファジー誘導物質、ホルモン、ホルモン調節剤、スタチン、インスリン、インスリン担体、多機能ナノキャリア、ビタミン、栄養補助剤、小RNA分子、ペプチド、および超音波療法を含むアルツハイマー病薬またはレジメンの投与と組み合わせて投与されてもよい。
E.治療用H1.0K180me2抗体および治療用抗H1.0K180me2結合タンパク質/ペプチドの投与
本明細書に記載されている治療用H1.0K180me2抗体および治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドのin vivo投与は、静脈内に、筋肉内に、皮下に、局所に、経口的に、経皮的に、腹腔内に、眼窩内に、移植により、吸入により、髄腔内に、脳質内に、または鼻腔内に実行されてもよい。治療の有効量は、H1.0メチル化において出現する疾患もしくは状態、またはH1.0K180me2自己抗体レベルの上昇を現す疾患もしくは状態の処置のために投与されてもよい。治療の適当な投薬量は、処置される疾患または状態のタイプ、治療用抗体、タンパク質、またはペプチドのタイプ、疾患または状態の重症度および過程、個体の臨床状態、処置への個体の臨床歴および応答、ならびに担当医の裁量に基づいて決定されてもよい。
本明細書に記載されている治療用H1.0K180me2抗体および治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドのin vivo投与として、通常の投与量は、投与経路に応じて、1日当たり、個体の体重の約1ng/kgから約1000mg/kgまたはそれより多い量まで変更してもよい。数日またはそれより長い日数にわたる繰り返し投与として、処置されるメチル化H1.0関連疾患または状態の重症度に応じて、症状の所望の抑制が達成されるまで処置が持続されてもよい。医師が達成することを望む薬物動態学的崩壊のパターンに応じて、投薬レジメンが有用である場合がある。例えば、個体に1週間に1から21回まで投与することが本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、投与頻度は、1日に3回、1日に2回、1日に1回、1日おきに1回、週に1回、2週毎に1回、4週毎に1回、5週毎に1回、6週毎に1回、7週毎に1回、8週毎に1回、9週毎に1回、10週毎に1回、または月に1回、2カ月毎に1回、3カ月毎に1回、もしくはそれより長い間隔である。治療の進行は、従来の技術およびアッセイによりモニターされてもよい。投与レジメンは、使用される用量とは独立して、経時的に変更してもよい。
F.医薬組成物
本出願は、本明細書に記載されている治療用抗体、タンパク質またはペプチドの任意の1種または複数と、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を含む、治療用H1.0K180me2抗体および治療用H1.0K180me2タンパク質/ペプチドを含む組成物を提供する。一部の実施形態では、組成物は無菌である。医薬組成物は、一般的に、有効量の治療用抗体、タンパク質、またはペプチドを含む。
G.キットおよび製品
本出願は、本明細書に記載されている治療用H1.0K180me2抗体、治療用H1.0K180me2タンパク質、および治療用H1.0K180me2ペプチド組成物を含むキットを提供する。一部の実施形態では、キットは、二次抗体、免疫組織化学分析用の試薬、薬学的に許容される賦形剤および取扱説明書ならびにそれらの任意の組合せのいずれかから選択される構成成分をさらに含有する。一実施形態では、キットは、本明細書に記載されている治療用組成物の任意の1種または複数と、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む。
本出願は、本明細書に記載されている治療用組成物またはキットのいずれか1つを含む製品も提供する。製品の例としてバイアル(密封バイアルを含む)が挙げられる。
以下の例は、例示的目的で含まれ、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
(実施例1)
材料および方法
以降の実施例で使用される材料および方法がここで提供される。
H1.0タンパク質およびペプチドのin vitroメチル化 − 放射標識in vitroメチル化アッセイ
in vitroでG9AメチルトランスフェラーゼによるH1.0ペプチドのメチル化を可視化するために、オートラジオグラフィー曝露後にゲル上にメチル化ペプチドの可視化を可能とする、放射標識されたメチルドナーを組み入れるメチル化アッセイを実施した。以下のメチル化反応を1.5mlチューブ中においてセットアップした:1× HMT反応緩衝液(50mMのTris−HCl、5mMのMgCl2、4mMのジチオトレイトール、pH9.0)、10UのG9Aメチルトランスフェラーゼ(NEB、M0235S、ロット番号0031201)、3.2mMのアデノシル−L−メチオニン、S−[メチル−3H](Perkin Elmer、NET155H、ロット番号1664720)、10μgのH1.0ペプチド(ThermoFisher Scientific、ビオチン−AKPVKASKPKKAKPVKPK(配列番号75))、最終体積10μl。H1.0ペプチドを含まない点以外は上記と同様の対照反応液も創出した。反応液をサーモサイクラー中で、37℃で1時間インキュベートした。氷上で5分間インキュベートすることにより反応を停止させ、次に、16.5%のトリシンゲル(BioRad、4563063)上で分離した。ゲルを30%のメタノール、5%のグリセロールに30分間浸漬した後、室温で24時間真空乾燥した。次いで、ホスホイメージャー(Molecular Dynamics)を用いて乾燥ゲルのオートラジオグラフィー分析を実施し、G9Aメチルトランスフェラーゼによるメチル−3H基を有するH1.0ペプチドの有効なメチル化を評価した。
液体クロマトグラフィーおよび高分解能質量分析(LC−MS)
ヒストンH1.0におけるG9AおよびGLPメチルトランスフェラーゼによるメチル化の正確な部位を特定するために、in vitroメチル化アッセイを実施し、次に、液体クロマトグラフィーおよび高分解能質量(LC−MS)分析によって分析した。G9Aメチルトランスフェラーゼ(NEB、M0235S、ロット番号0031201)またはGLPメチルトランスフェラーゼ(Cayman Chemical、10755)のいずれかを使用してメチル化反応をセットアップした。各反応のメチルドナーは、標識されていないS−アデノシル−L−メチオニン(NEB、B9003S)であった。各反応のH1.0基質は、ビオチン(ThermoFisher Scientific、ビオチン−AKPVKASKPKKAKPVKPK(配列番号75))、ジメチル化H1.0ペプチド(ThermoFisher Scientific、ビオチン−AKPVKASKPKKAKPVK(me2)PK(配列番号76))、または全長組換えヒトH1.0(NEB、M2501S)で標識した非修飾H1.0ペプチドのいずれかであった。メチル化反応を以下のように各条件に対して三連でセットアップした:1× HMT反応緩衝液(50mMのTris−HCl、5mMのMgCl2、4mMのジチオトレイトール、pH9.0);10UのG9AもしくはGLPメチルトランスフェラーゼ;3.2mMのS−アデノシル−L−メチオニン;500ngの非修飾もしくは修飾H1.0ペプチド、または1μgの全長タンパク質;最終体積10μl。対照として、いずれのメチルトランスフェラーゼも存在しないが上記のような反応液をセットアップした。すべての反応液をサーモサイクラー中で、37℃で1時間インキュベートし、次に、氷上で5分間インキュベートすることにより停止させた。試料は、LC−MS分析に先立って−80℃で凍結させた。
液体クロマトグラフィーおよび高分解能質量分析(LC−MS)による分析のために、試料を上述のように調製し、約1μgの生成物を、10cm×100umのトラップカラムおよび25cm×100umのID分解カラムで構成されたThermo Scientific Easy nLCシステムに注入した。緩衝液Aは、98%の水、2%のメタノール、および0.2%のギ酸であった。緩衝液Bは、10%の水、10%のイソプロパノール、80%のアセトニトリル、および0.2%のギ酸であった。試料を4uL/分で10分間ローディングし、375nL/分で0〜45%のBの勾配を130分間かけて実行し、実行時間の合計は150分間であった(再生および試料のローディングを含む)。より高い切替限界値(20K)を使用して、MS2がフルスキャンデューティーサイクルを妨害しないことを保証したこと以外は標準Top−10データ依存構造で、Thermo Scientific LTQ Orbitrap Velos質量分析計を実行した。これにより、定量化のための最適なフルスキャンデータが保証された。イオントラップ質量分析計でMS2の断片化および分析を実施した。試料は三連で実行した。
LC−MSデータ分析
RefSeqHuman配列データベースを使用し、Thermo Scientific Proteome Discovererバージョン1.4(SequestおよびPercolatorのアルゴリズムを含む)を使用して、タンパク質の特定を実施した。これらの検索は、いずれのメチルトランスフェラーゼ酵素も欠く対照反応液に関して実施した。Percolatorのペプチド信頼度フィルターを「高」に設定した。Pinpointバージョン1.4ソフトウェアを使用して、タンパク質の定量化を実施した。Pinpoint定量化ワークフローには、スペクトルライブラリーとしてProteome Discoverer.msfファイルをインポートすることが含まれた。次に、特定されたペプチドを、Pinpointピーク検出、クロマトグラムのアラインメントおよび面積計算アルゴリズムを使用するMS.rawファイルで定量化した。
非修飾H1.0ペプチド(AKPVKASKPKKAKPVKPK(配列番号42))でのG9Aメチル化の正確な位置を特定するために、メチル化反応をセットアップし、生成物をLC−MSにより特定した。メチル化反応は、組換えG9A、標識されていないメチルドナー(S−アデノシル−L−メチオニン)、および非修飾H1.0ペプチドを含んだ。次に、メチル化反応をLC−MSによって分析し、各スペクトルピーク(最終反応におけるペプチド種に対応する)を特定し、スペクトルカウントを使用して定量化した。図22Aにおける「me」の円の数は、リシン残基のメチル化状態(モノ−、ジ−、またはトリ−メチル化)を表す。図22Aは、非メチル化H1.0ペプチドの存在下で、G9Aが特異的かつ多量にH1.0K180をジメチル化する(すべてのペプチドの99.9%)ことを示す。
hADSCの培養
ヒト脂肪細胞由来間葉系幹細胞(hADSC)は、Life Technologies(R7788−115)およびAmerican Type Culture Collection、ATCC(PCS−500−011)から商業的に入手した。すべての細胞株は、日常的に脂肪吸引法を受けている年齢が38、45および49歳の3名の健康な成人女性白色人種ドナーから得られたヒト脂肪組織から単離した。フローサイトメトリー分析および免疫染色分析により確認された細胞は、CD29、CD44、CD73、CD90、CD105、およびCD166に対して陽性であり、CD14、CD31、CD34、およびCD45に対して陰性であった。細胞株は、in vitro条件下で、脂肪生成、軟骨形成および骨形成分化が可能であることが確認された。
単離された脂肪由来幹細胞株は、10%(v/v)のウシ胎仔血清(FBS)および50U/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM/F12培地(Life Technologies、11330−057)中にて、37℃/5%のCO2で増殖させた。累積集団倍加(PD)を、培養における増殖日数の関数として、複数継代にわたって、PD=log(N/N0)×3.33(式中、N0はフラスコにプレーティングされた細胞数であり、Nはこの継代で回収された細胞数である)として計算した。自己再生集団(SR)に対するhADSCのPD4〜10および複製老化集団(REP−SEN)に対するPD41〜46をすべての実験で使用した。
老化の誘導および評価
複製老化として、複製枯渇に達するまでhADSCを培養中で増殖させた(PD41〜46)。急性DNA損傷条件として、SR hADSC(PD4〜10)を、増殖培地において、50μg/mlの硫酸ブレオマイシンで2時間処理した(Cayman Chemical、13877)。遺伝毒性ストレスに誘導される老化として、SR hADSC(PD4〜10)を、増殖培地において、50μg/mlの硫酸ブレオマイシン(Cayman Chemical、13877)で2時間処理し、次いで、PBSで洗浄し、ブレオマイシンを含まない新鮮な増殖培地に与えた。次いで、採取前に、細胞を3日間増殖させた。
細胞の老化を評価するために、細胞を、増殖停止、SA−β−gal活性、および持続性のDNA損傷フォーカスの存在を含む老化マーカーに対して採点した。pH依存性老化関連β−ガラクトシダーゼ活性(SA−β−Gal)の発現をモニタリングするためのアッセイを、製造業者のキット(BioVision)に記載されているように実施した。培養したhADSCを固定溶液で、室温で15分間固定させ、PBSで2回洗浄し、染色サプリメントを含有するX−Galを用いて37℃で終夜染色した。細胞をPBSで2回洗浄し、光学顕微鏡法(Leica、DMiL)を使用して画像を取り込んだ。DNA損傷フォーカスを、以下に記載するように、γH2A.Xフォーカスに対する免疫染色によって評価した。γH2A.Xフォーカスの出現は、DNAの二重鎖切断またはDNA損傷を示す。γH2A.Xフォーカスは、二重鎖切断の広く受け入れられている分子マーカーである。
抗体
使用した一次抗体:抗H1.0K180me2、1:100希釈、ウサギポリクローナル、Aviva Systems Biology。抗H1.0全体、1:500希釈、EMD Millipore MABE446。抗γH2A.X(Ser139Ph)、1:500〜1000希釈、EMD Millipore 05−636。抗ベータ−アクチン、1:2000、Abcam ab6276。抗ポリ−(ADP)−リボース、1:500、Enzo Life Sciences ALX−804−220−R100。抗G9A、1:500、Bethyl Laboratories A300−933A。抗GLP、1:500、Bethyl Laboratories A301−643A。抗H3K9me2、1:1000、Abcam A301−643A。
二次抗体:ヤギ−抗マウス−HRP、1:4000、Biorad 1706516。ヤギ−抗ウサギ−HRP、1:4000、Biorad 1706515。ヤギ−抗ヒト−HRP、1:4000、Biorad 1721050、AlexaFluor−488−ロバ抗マウス、1:5000、Life Technologies A−21202、AlexaFluor−488−ロバ抗ウサギ、1:5000、Life Technologies A−21206、AlexaFluor−555−ロバ抗マウス、1:5000、Life Technologies A−31570、AlexaFluor−555−ロバ抗ウサギ、1:5000、Life Technologies A−31572、および抗IgM HRP(ウサギ抗ヒトIgM(Mu鎖)(HRP−Conjugate)(Abcam、ab97210、ロット番号GR169227−10))。
ELISA
以下のプロトコールは、血清H1.0K180me2 IgGレベルの直接的または間接的検出に対する一般化された酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)について記載する。
図4は、血清H1.0K180me2レベルの間接的検出に対する(例えば、IgGまたはIgMレベルの間接的検出に対する)サンドイッチELISAの使用を示す。ELISAは、体液試料中のH1.0K180me2ペプチドエピトープに対する抗体の検出のために使用される。以下のプロトコールは、血清試料中の特異的抗体を捕捉するためにビオチン化ペプチドを使用する、一般化された酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)(血清H1.0K180me2 IgGまたはIgMレベルの間接的検出のための)と、それに続く、HRPにコンジュゲートされた二次抗体による検出、およびテトラメチルベンジジン(TMB)とのインキュベーションについて記載する。ストレプトアビジンでコーティングしたマイクロプレートのウェル(ThermoFisher、15501)を洗浄緩衝液(Trisで緩衝された生理食塩水(25mMのTris、150mMのNaCl;pH7.6)と0.1%のBSAおよび0.05%のTween−20)で3回洗浄した。50pmolのカスタムビオチン化H1.0K180me2ペプチド(ThermoFisher)を洗浄緩衝液中で希釈し、穏やかに振盪しながら各ウェルに室温で2時間結合させた。結合していないペプチドを洗浄緩衝液で3回洗浄して洗い流した。洗浄緩衝液におけるH1.0K180me2抗体の連続希釈液を標準液として創出した(1:25000、1:50000、1:100000、1:200000、1:400000、保存濃度0.54mg/ml)。血清試料を洗浄緩衝液中で希釈した(1:1000)。100μLの標準液および試料を二連でウェルに添加した。穏やかに振盪しながらウェルを室温で1時間インキュベートした。結合していない標準液または試料を洗浄緩衝液で3回洗浄して洗い流した。HRPにコンジュゲートした二次抗体(抗IgG二次抗体または抗IgM二次抗体のいずれか)を洗浄緩衝液中で希釈した(1:1000)(血清試料として、ヤギ−抗ヒト−HRP、Biorad 1721050;標準液として、ヤギ−抗ウサギ−HRP、BioRad 1706515)。100μLの二次抗体希釈液をウェルに添加した。穏やかに振盪しながらウェルを室温で1時間インキュベートした。結合していない二次抗体を洗浄緩衝液で3回洗浄して洗い流した。100μLのTMB溶液(PeproTech)を各ウェルに添加し、穏やかに振盪しながら室温で15分間インキュベートした。100μLのストップ溶液(0.18MのH2SO4)を各ウェルに添加し、穏やかに振盪しながら室温で5分間インキュベートした。酸化すると、TMBは、650nmで分光光度的に測定される可能性がある水溶性の青色反応生成物を形成する。ストップ溶液で酸性化すると、反応生成物は、450nmに吸光度のピークを有する黄色となる。各ウェルの吸光度をプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて450nmで測定した。各試料中のH1.0K180me2 IgGまたはIgMの濃度は、標準曲線から外挿法によって決定し、以下にさらに記載した。図14Cは、体液中の自己抗H1.0K180me2 IgMレベルの間接的検出に対するELISAの使用を示す。
図5Aは体液試料中のH1.0K180me2ペプチドエピトープの直接的検出に対するサンドイッチELISAの使用を示す。一般的に、H1.0K180me2エピトープに特異的な抗体が提供され、マイクロプレートに固定されている(コーティングされている)。定量化のためにH1.0K180me2エピトープを含有する臨床試料が提供される。試料をマイクロプレートに添加し、H1.0K180me2エピトープは固定した抗体に結合する。結合していない材料を洗い流す。次いで、検出抗体、例えば、HRPまたは任意の他の標識抗体を添加する。これらの検出抗体は捕捉エピトープに結合する。結合していない検出抗体を洗い流す。検出基質溶液を添加し、フルオロフォアまたは色の変化を測定する。次いで、これを、標準曲線に対して定量化し、臨床試料中のH1.0K180me2エピトープのレベルを報告する。
図5Bは、H1.0K180me2抗原のサンドイッチELISA試験に対する標準曲線を示す。in vitroでメチル化された全長H1.0K180me2を、50ng/mlから3.125ng/mlの2倍希釈系列の標準として使用した。標準濃度を450nmで測定したO.D.に対してプロットする。線形の傾向線は、検出限界を超える点の間でプロットし、直線の方程式を計算した(プロットで示される)。挿入は生データを示す。ELISAは二連で実施し、平均O.D.値は曲線作成のために使用した。
ウエスタンブロット
ウエスタンブロット分析のための材料(培養細胞または組織)を、氷冷したRIPA溶解緩衝液(Thermo Scientific 89900)に溶解し、Covaris S2超音波処理器を使用して超音波処理した(10%のデューティーサイクル、強度5、1分当たりのバースト100、120秒)。各試料中の総タンパク質濃度を、製造業者のプロトコールに従い、Quick Start Bradford 1倍染色試薬(BioRad、5000205)を使用して定量化した。次いで、試料をNuPAGE LDS試料ローディング緩衝液(ThermoFisher、NP0007)およびNuPAGE試料還元緩衝液(ThermoFisher、NP0004)と混合し、70℃で10分間加熱変性させた。タンパク質は、電気泳動により、4〜12%のプレキャストポリアクリルアミドゲル(ThermoFisher、NP0321)上で分離し、0.45μmのニトロセルロース膜に移した。膜は、PBS−T中の5%の無脂肪乳で、室温で30分間ブロックし、次いで、上記一次抗体で、4℃にて終夜、免疫ブロットした。タンパク質を、上記に列挙したHRP二次抗体で、室温で1時間、続いて、製造業者の説明書を使用してECL Western Blotting Substrate(ThermoFisher、32106)で検出した。ステップ間のすべての洗浄は、PBS−Tを用いた。膜は、Omega LUM−C imaging system(Gel Company)で画像化した。
免疫蛍光法
免疫蛍光法として、細胞を培養し、チャンバースライドにおいて処理し、中性の10%のホルマリンで固定し、0.5%のTriton X−100を含有するPBSで透過処理した。洗浄後、スライドを、1%のBSAおよび4%のロバ血清を含有するPBSを使用してブロックした。洗浄後、スライドを、上記に列挙した一次抗体とインキュベートし、再度洗浄し、上記に列挙したAlexaFluor二次抗体と共にインキュベートし、DAPIを含有するスローフェードゴールド(Molecular Probes)をマウントした(核を可視化するため)。細胞は、蛍光顕微鏡法で観察し、Spotfireソフトウェア(Diagnostics Instruments)を使用する分析のためにイメージを獲得した。
スロットブロット分析
0.5μlの血清試料または既知の量の合成ペプチドを200μlのTBS中で希釈した。次いで、試料を70℃で10分間熱変性させた後、真空マニフォールドスロットブロット装置(BioRad、1706542)を使用してニトロセルロース膜に移した。膜は、PBS−T中の5%の無脂肪乳で、室温で30分間ブロックし、次いで、上記一次抗体で、4℃にて終夜、免疫ブロットした。タンパク質を、上記に列挙したHRP二次抗体で、室温で1時間、続いて、製造業者の説明書を使用してECL WESTERN BLOTTING SUBSTRATE(ThermoFisher、32106)で検出した。ステップ間のすべての洗浄は、PBS−Tを用いた。膜は、Omega LUM−C imaging system(Gel Company)で画像化した。次いで、各試料に対するスロットブロットバンドを、ImageJを使用して定量化した。
RNAseqの分析
全RNAを、製造業者のプロトコールに従って、TRIzol試薬(Invitrogen)を使用して自己複製および複製老化細胞培養試料から単離した。2種の異なるhADSC細胞株由来の試料を関連がある条件に対して一緒に合わせ、RNA HSアッセイキット(Invitrogen、Life technologies)を使用するQubit 2.0蛍光光度計で、RNA濃度を測定した。ERCC RNA Spike−In Control mix(Ambion、Life Technologies)を、品質管理分析のために全RNAに添加した。次に、rRNA枯渇をLow Input Ribominus Eukaryote System v2(Ambion、Life technologies)を用いて実施した。cDNAライブラリーをIon total RNA−seq kit v2(Ambion、Life technologies)を用いて構築し、Ion Xpress RNA−seq barcode(Ambion、Life technologies)を用いてバーコードを付けた。ライブラリーのサイズ分布および定量化は、Bioanalyzer 2100(Agilent Technologies)で、DNA HSバイオアナライザーキットを用いて実施した。P1チップ(Life Technologies)を有するIon Proton Systemで、ライブラリーのシークエンシングを実施し、各ライブラリーを3回シークエンシングした。
個々のIon Proton Systemによるシークエンシングの実行からのRNAseqのリードを各ライブラリーのために組み合わせた。Torrent Mapping Alignment Program(TMAP、Life technologies)を使用する参照ヒトゲノムアッセンブリーhg19(GRCh37)に対して、配列リードをマッピングした。各条件に対するRNAseq実行の品質は、製造業者のウェブサイトから得られた、ERCC spike−in RNA配列の予測カウントを同じ配列にマッピングするRNAseqタグの実測カウントに対して比較することによって評価した。初期の遺伝子発現レベルは、個々のNCBI RefSeq遺伝子モデル(c)に対するエクソンにマッピングしたリードの合計として得て、あまり発現しなかった遺伝子(百万当たりのリードカウント<1)は次の分析から除去された。各ライブラリーについて、個々の遺伝子発現レベルは、各遺伝子当たりのベータ−アクチン(ACTB)発現レベル(cACTB)およびエクソンの長さの合計lを使用して正規化した。ライブラリーjについて、ベータ作用正規化因子sjは、
のように計算した。
ライブラリーjにおける遺伝子iに対する最終正規化発現値は、
のように計算した。
薬物処置
ブレオマイシン処理:細胞増殖培地に、50μg/mlのブレオマイシン(Cayman Chemical 13877)を2時間補充し、DNA二重鎖切断を誘導した。細胞は、ブレオマイシン処理の直後に採取したか(急性DNA損傷)、またはブレオマイシン処理後3日間増殖させた(遺伝毒性ストレスに誘導される老化)。PARP−1阻害剤:細胞増殖培地に、1μMの有効なPARP−1阻害剤 AG14361(Selleckchem S2178)を下流分析に先立って24時間補充した。ラパマイシン処置:細胞増殖培地に、500nMのラパマイシン(Cayman Chemical 11346)を下流の分析または処置に先立って24時間補充した。エベロリムス処置:細胞増殖培地に、500nMのエベロリムス(Cayman Chemical 11597)を下流の分析または処置に先立って24時間補充した。テモゾロミド処置:細胞増殖培地に、50μg/mlのテモゾロミド(Cayman Chemical 14163)を下流分析に先立って2時間補充した。
照射後のマウスにおけるH1.0K180me2の分析
血液を、頬穿刺により、2頭の13カ月齢のマウスから採取し、血清を、SST Serum Separator(BD、365956)を有するMicrotainer Tubes(登録商標)を使用して分離した。次いで、同一のマウスを7Gyのイオン化放射線(X線の形態で)に曝露した。血液を、照射の2時間後に一方のマウスから、照射の48時間後に他方のマウスから再度抜き取った。Microtainer Tubes(登録商標)を使用して、血清を血液から再度分離した。次いで、照射前後の各マウス由来の血清を、スロットブロットおよびウエスタンブロットによって分析した。
マウスからの脂肪由来幹細胞(ADSC)の単離
マウスの脂肪由来幹細胞を、野生型マウスから単離した。皮下または腎周囲の白色脂肪組織を採取し、ハンクス緩衝塩溶液(HBSS)、3.5%のウシ血清アルブミン(BSA)、1%のコラゲナーゼ、II型(Sigma)中に、1:3w/vの比で懸濁させ、37℃で50分間振盪した。細胞を、70μmメッシュの細胞ストレーナー(BD Falcon 番号352350)を通して濾過し、赤血球溶解緩衝液(150mMのNH4Cl、10mMのKHCO3、0.1mMのEDTA、pH7.3)で処理し、DMEM/F12完全培地(DMEM/F12、10%のFBS、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、2.5μg/mlのアンホテリシンB;Invitrogen)中、10%のCO2にて37℃でex vivoに拡大し、80%のコンフルエンシーで継代し、72〜96時間毎に培地を変えた。次いで、細胞を、他の場所で記載されているように、ウエスタンブロット分析に使用した。
(実施例2)
老化におけるH1.0K180me2ペプチドの発見
自己再生(SR)hADSCおよび複製老化(REP−SEN)hADSCを、実施例1に記載されている方法に従って入手した。ヒストンの新たな老化に関連する翻訳後修飾(PTM)を特定するために、SRおよびREP−SEN hADSC由来の溶解物を、図1Aの発見パイプラインに従って、M/Z Pair Tag LC−MSによって評価した。自己再生および複製老化hADSC溶解物の5回の技術的反復注入を、フルスキャン最適化設定で処理した。最適なフルスキャン定量的測定のためのクロマトグラフィーおよび機器による方法は、最適な断片化スキャンの方法と競合することが決定された。したがって、質量分析計の正確な質量および広いダイナミックレンジの能力を、データ測定の2つの別個のパスを分析に組み入れることによって利用した。第1のパスは、妥協せず、最適化したフルスキャン(MS)データを、再現性の高い定量化のために獲得することに焦点を当てた。この第1のフルスキャン定量的パスを使用して、潜在的に興味深い特徴の包含リストを作成した。次いで、包含リストを、データ試料のサブセットとして、第2のパスの間に、標的とした断片化スキャンの獲得のために使用した。図1Bに示すように、質量スペクトルによって、SR hADSCの非修飾(AKPVKASKPKKAKPVKPK(配列番号42))ペプチドおよびREP−SEN hADSCのジメチル化(AKPVKASKPKKAKPVKme2PK(配列番号3))ペプチドが明らかとなった。
SRとREP−SENのhADSCの発現プロファイルを比較するRNAseq実験を、実施例1に記載されている方法に従って実行した。図2Aに示されるように、SR(黒いバー)およびREP−SEN(灰色のバー)のhADSCの両方には、ヒストンH1の6個の別個のバリアント:H1.0、H1.1、H1.2、H1.3、H1.4、およびH1.5が存在する。y軸の値は、各試料における相対的なベータ−アクチンの発現によって正規化され、各遺伝子に対するエクソンの全長によってさらに正規化された、各遺伝子に対するエクソンのマッピングされたリードの合計を表す。ヒストンH1.0は、遺伝子発現レベルで、H1の4番目に多いバリアントであることが見出された。H1.0mRNAは、SR hADSCにおけるH1発現全体の8%およびREP−SEN hADSCにおけるH1発現全体の14%に相当したのである。しかし、他のバリアントと異なり、その発現は、複製老化の間一定のままである。RNAseq分析によって特定されたヒストンH1.0遺伝子に対するすべてのリードの特有のマッピングのゲノムブラウザ図(図2B)は、REP−SEN hADSC(下のトラック)におけるよりもSR hADSC(上のトラック)において高いH1.0の発現を示した。リードカウントは、各試料の相対的なベータ−アクチン発現によって正規化した。
公知のメチル化リシン残基を中心とする種々のペプチド配列のアラインメントにより、H1.0K180の周囲のアミノ酸配列が特有であり、他のメチル化リシン残基と類似していないことが明らかとなった(図3A)。
(実施例3)
H1.0K180me2抗体
H1.0K180me2抗原に特異的なポリクローナル抗体は、以下のように作製した:2頭のニュージーランドウサギを抗体産生のために免疫化した。H1.0K180me2ペプチド(ペプチド:CAKPVKASKPKKAKPVK(me2)PK(配列番号39))にコンジュゲートしたキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)のエマルジョンとして、注射を皮下に(SQ)投与した;コンジュゲートしたペプチド:(KLH−CAKPVKASKPKKAKPVK(me2)PK(配列番号77))、ここで、C末端のCは、KLHに対する共有結合による連結を生成するために、完全フロイントアジュバント(CFA)または不完全フロイントアジュバント(IFA)中で、ペプチドの配列に人工的に加えた。CFA中0.5mgの抗原を用いて、10SQ部位で、初期免疫化を実施した。6回のその後の追加免疫化を、7〜8週の期間にわたって、日常的な間隔で実施した。ブースターは、4SQ部位で、IFA中0.25mgの抗原からなった。ウサギは、5週目(ウサギ1頭当たり約25mlの血液)および8週目(ウサギ1頭当たり約50mlの血液)に採血した。免疫の力価は、免疫化の前後の血液を比較することによって、ELISAを使用して評価した。次いで、抗原アフィニティークロマトグラフィーを使用して、抗体を精製した。精製に使用した抗原は、ビオチンまたはウシ血清アルブミン(BSA)がコンジュゲートしたH1.0K180me2ペプチド(ビオチン−CAKPVKASKPKKAKPVK(me2)PK(配列番号78))またはBSA−CAKPVKASKPKKAKPVK(me2)PK(配列番号79))のいずれかであった。本明細書において提供されるin vitroメチル化方法を使用して、ペプチドをジメチル化した。
H1.0K180me2抗体を以下のように試験した。H1.0K180me2抗体の特異性をチェックするために、K172、K174、K175、K177、またはK180でメチル化されたヒストンH1.0ペプチドを、希釈系列で真空マニフォールドスロットブロットを使用して膜に移した。次いで、H1.0K180me2抗体を使用して膜を免疫ブロットし、他のメチル−リシン基との潜在的な交差反応性を特定した。H1.0K180me2抗体は、低濃度においても、H1.0K180me2に対して非常に特異的である(図3B)。H1.0K180me2抗体の特異性をさらにチェックするために、K4、K9、K27、K36またはK79でメチル化されたヒストンH3ペプチドを、希釈系列で真空マニフォールドスロットブロットを使用して膜に移した。次いで、H1.0K180me2抗体を使用して膜を免疫ブロットし、他のメチル−リシン基との潜在的な交差反応性を特定した。この抗体は、分析したいずれのメチル化H3ペプチドとも交差反応性を示さなかった(図3C)。実施例1に記載した方法に従って、スロットブロット分析プロトコールを実行した。
ウサギ抗H1.0K180me2 IgG抗体の特異性は、抗H1.0K180me2 IgG ELISA試験を使用して決定した。6.25pmolから781fmolの2倍希釈系列で、H1.0K180me2ペプチド、H1.0K180me1ペプチド、または非修飾ペプチドのいずれかで、ウェルをコーティングした。100ulの緩衝液中6.67fmolのウサギ抗H1.0K180me2 IgG抗体を各ウェルに添加し、抗体結合の効率をELISAによってモニターした。450nmで測定したO.D.に対するペプチド量をプロットすることにより、各ペプチドに対する曲線を作成した。ELISAの生データは、2回繰り返した実験について、表と図に示す(図3D)。
ウサギ抗H1.0K180me2 IgG抗体は、H1.0K180me1ペプチドよりもH1.0K180me2ペプチドに、2.7倍効率的に結合する。最適な線形範囲内で、ウサギ抗H1.0K180me2 IgG抗体1分子は、117分子のH1.0K180me2ペプチドのうちの1つを認識するが、316分子のH1.0K180me1ペプチドのうちの1つしか認識しない。非修飾ペプチドは、この範囲で認識されない。
ヒストンH1バリアントタンパク質配列のClustalW2アラインメントにより、H1.0K180は、他のH1バリアントに存在しないアミノ酸の特有の配列に埋め込まれることが明らかとなった(図3E)。初期発見実験で特定したペプチドを灰色で強調する。3つのα−ヘリックスを含む球状ドメイン領域も示す。
(実施例4)
ELISAにおいてH1.0K180me2ペプチドを使用する血清H1.0K180me2 IgGおよびH1.0K180me2 IgM自己抗体レベルの間接的検出
血清H1.0K180me2 IgG自己抗体の間接的検出
以下の例は、血清試料中の特異的自己抗体を捕捉するためにビオチン化された治療用H1.0K180me2ペプチドを使用する酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)と、それに続く、HRPにコンジュゲートされた二次抗体による検出、およびテトラメチルベンジジン(TMB)によるインキュベーションについて記載する。ストレプトアビジンでコーティングしたマイクロプレート(ThermoFisher、15501)のウェルを、洗浄緩衝液(Tris緩衝生理食塩水(25mMのTris、150mMのNaCl;pH7.6)と0.1%のBSAおよび0.05%のTween−20)で3回洗浄した。50pmolのカスタムビオチン化H1.0K180me2ペプチド(ThermoFisher)を洗浄緩衝液中で希釈し、穏やかに振盪しながら各ウェルに室温で2時間結合させた。結合していないペプチドを洗浄緩衝液で3回洗浄して洗い流した。洗浄緩衝液におけるH1.0K180me2抗体の連続希釈液を標準液として創出した(1:25000、1:50000、1:100000、1:200000、1:400000、保存濃度0.54mg/ml)。血清試料を洗浄緩衝液中で希釈した(1:1000)。100μLの標準液および試料を二連でウェルに添加した。穏やかに振盪しながらウェルを室温で1時間インキュベートした。結合していない標準液または試料を洗浄緩衝液で3回洗浄して洗い流した。HRPにコンジュゲートした二次抗体(図4のステップ3に示した二次標識抗体)を洗浄緩衝液中で希釈した(1:1000)(血清試料として、ヤギ−抗ヒト−HRP、Biorad 1721050;標準液として、ヤギ−抗ウサギ−HRP、Biorad 1706515)。100μLの二次抗体希釈液をウェルに添加した。穏やかに振盪しながらウェルを室温で1時間インキュベートした。結合していない二次抗体を洗浄緩衝液で3回洗浄して洗い流した。100μLのTMB溶液(PeproTech)を各ウェルに添加し、穏やかに振盪しながら室温で15分間インキュベートした。100μLのストップ溶液(0.18MのH2SO4)を各ウェルに添加し、穏やかに振盪しながら室温で5分間インキュベートした。酸化すると、TMBは、650nmで分光光度的に測定される可能性がある水溶性の青色反応生成物を形成する。ストップ溶液で酸性化すると、反応生成物は、450nmに吸光度のピークを有する黄色となる。各ウェルの吸光度をプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて450nmで測定した。各試料中のH1.0K180me2 IgGの濃度は、標準曲線から外挿法によって決定した。
ELISAを使用する血清H1.0K180me2 IgGレベルの間接的検出は、一般的に、図4に示す。
血清H1.0K180me2 IgM自己抗体の間接的検出
血清H1.0K180me2 IgM自己抗体の検出は、3つのステップを含んだ。試験は、市販のサンドイッチELISAキットを使用する患者の血清中の総IgMの測定(ステップ1)、それに続く、間接的ELISAアッセイを使用する同一試料中の抗H1.0K180me2 IgMの測定(ステップ2)を含む。最終ステップとして、抗H1.0K180me2 IgMレベルを試料中の総IgMによって正規化した(ステップ3)。
ステップ1:患者の血清中の総ヒトIgMを、Affymetrix eBioscienceから購入した市販のサンドイッチELISAキット(ヒトIgM ELISA Ready−SET−Go!、パーツ番号88−50620、ロット番号123620111)を使用して測定した。
ステップ2:カスタマイズした間接的ELISAアッセイを使用する患者の血清中の抗H1.0K180me2 IgMの測定。ビオチン標識したH1.0K180me2捕捉ペプチドを96ウェルのストレプトアビジンをコーティングしたマイクロプレート(ThermoFisher、15501、ロット番号QH218700)にコーティングした。過剰な遊離ペプチドを洗浄緩衝液(Tris緩衝生理食塩水(25mMのTris、150mMのNaCl;pH7.6)と0.1%のBSAおよび0.05%のTween−20)で洗い流した。マイクロプレートの非特異的結合部位をd−ビオチン(VWR、97061−444、ロット番号1405C080;プレート表面上の結合していないストレプトアビジンをブロックするため)を含有するブロッキング緩衝液(Thermo Scientific、37536、ロット番号QJ222191)を使用してブロックし、バックグラウンドノイズを低減した。希釈した患者の血清を、三連でマイクロプレートウェルに添加した。患者の試料中の抗H1.0K180me2自己抗体は、プレート表面の捕捉ペプチドを認識し、結合した。並行して、抗H1.0K180me2 IgG抗体標準液の希釈系列を同一のプレートで処理した。次いで、ウェルを洗浄緩衝液で洗浄し、結合していない試料または標準液を除去した。次いで、結合した抗H1.0K180me2 IgM自己抗体は、各試料ウェルに添加した抗IgM HRP検出抗体(図4、ステップ3に示される二次標識抗体;ウサギ抗ヒトIgM(Mu鎖)(HRPコンジュゲート)(Abcam、ab97210、ロット番号GR169227−10))を使用して検出した。標準液は、各標準液ウェルに添加した抗IgG HRP検出抗体(ヤギ抗ウサギIgG(H+L)(HRPコンジュゲート)(BioRad、1706515、ロット番号350003080))を使用して検出した。次いで、過剰な、結合していない検出抗体を洗浄緩衝液で洗い流した。次いで、結合したHRPの活性を、テトラメチルベンジジン(TMB)基質(KPL、52−00−01、ロット番号10164336)をウェルに添加することによって決定した。この反応は、ストップ溶液((0.18MのH2SO4)(KPL、50−85−04、ロット番号10164328))を添加して停止させ、ウェルの内容物の吸光度を450nmで読み取った。吸光度は、試料中の抗H1.0K180me2 IgMの濃度に直接比例する。次いで、各試料中の抗H1.0K180me2 IgMのモル濃度を、標準曲線からの外挿法および最初の希釈係数による乗算によって決定した。
標準曲線は、抗H1.0K180me2ウサギポリクローナルIgG抗体を利用した。この抗体は、H1.0K180me2に非常に特異的であることを確認した。この抗体は、H1.0の任意の他のリシンのメチル化を認識せず、メチル化の程度に特異的であり、例えば、リシンK180のモノ(me1)、ジ(me2)、およびトリ(me3)の間を識別することができる(図3A)。この抗体は、他の一般のヒストンタンパク質のメチル化部位と交差反応しない(図3A)。標準曲線は、固定濃度のビオチン化エピトープ(合成ペプチドAKPVKASKPKKAKPVKme2PK(配列番号3))または固定量の二次抗IgM抗体をそれぞれ用いて、この抗H1.0K180me2 IgGの希釈系列(72、36、18、12、9、4.5fmol/ml)または総IgM抗体の希釈系列(556、444、222、111、56、28、18または0fmol/ml)から作成した。各試料中の抗H1.0K180me2 IgMのモル濃度は、抗H1.0K180me2 IgGのモル濃度の曲線から推測した。
ステップ3:総IgM血清濃度による抗H1.0K180me2 IgM血清濃度の正規化。患者の血清中の総IgMの測定を三連で実施した。次いで、各試料中の総IgM濃度の平均を3回の繰り返しから計算した。患者の血清中の抗H1.0K180me2 IgMの測定を三連で実施した。次いで、各試料中の抗H1.0K180me2 IgM濃度の平均を3回の繰り返しから計算した。最終試験値を得るために、抗H1.0K180me2 IgM濃度の平均を、各患者の試料に対する総IgM濃度の平均で割った。
ELISAを使用する血清H1.0K180me2 IgMレベルの間接的検出は、一般的に、図4に示す。
患者の血清中の抗H1.0(非修飾H1.0)IgMレベルの測定
手順は、抗H1.0K180me2 IgMに対する間接的ELISAと同一であったが、捕捉ペプチドは異なった。この場合には、ペプチドは、K180me2を欠く非修飾ペプチド(非修飾H1.0)であった。また、使用した標準物質は、非修飾ペプチドに対して生じたウサギポリクローナルIgGであった(図16B、右のパネル)。
(実施例5)
H1.0K180me2抗体の使用は、H1.0K180me2が急性DNA損傷に関連することを示す
図6は、実施例1に記載した方法に従って、H1.0mRNAの発現が、DNA損傷および遺伝毒性ストレスに誘導される老化後に増加することを示す。ヒストンH1.0のmRNA発現のRT−PCR分析を、自己複製hADSC、ブレオマイシンで2時間処理したhADSC(急性DNA損傷)およびブレオマイシンで処理して3日間老化させたhADSC(遺伝毒性ストレスに誘導される老化)に由来する総RNAに関して実施した。H1.0mRNA発現は、急性DNA損傷後に2倍を超えて増加し、遺伝毒性ストレスに誘導される老化後、高いままである(SRに対して1.5倍)。
H1.0K180のメチル化とDNA損傷の間の関係を評価するために、DNA損傷剤であるブレオマイシンで2時間処理した(実施例1に記載した方法に従って)SR hADSCおよびhADSCを溶解させ、分画して、クロマチン結合画分を得た。α−H1.0K180me2抗体を用いるウエスタンブロット分析(実施例1に記載した方法に従って実施した)は、DNA損傷の際のクロマチンのH1.0K180のメチル化を示す(図7A)。DNAの二重鎖切断を誘導するブレオマイシンによるSR hADSCの処理に際して(実施例1に記載した方法に従って)、H1.0K180me2は細胞質に局在した。
スロットブロットイムノアッセイにより、H1.0K180me2の存在が、ブレオマイシンによって課された遺伝毒性傷害の後に、時間経過に依存する様式で、hADSCの馴化培地中で検出されたことが見出され、H1.0K180me2の分泌の最大値は48時間以内に検出された(図7B)。これは、細胞からの分泌を示す。GSI−SENに関するDNA断片化因子(DFFB/DFF40/CAD)の分泌の増加は、処置の48時間後に開始するH1.0K180me2と同様の様式で見られた(図7B)。タンパク質は、急性DNA損傷(ADD)の発生に際して、測定可能な量で分泌されない。
(実施例6)
H1.0K180のメチル化は、DNA損傷修復経路のタンパク質PARP−1活性と無関係であり、その上流で生じる
H1.0K180のメチル化がDNA損傷修復経路のタンパク質PARP−1活性に依存するかどうかをさらに評価するために、実施例1に記載した方法に従ってウエスタンブロット分析を実施し、ブレオマイシンによる処理の際のクロマチン結合H1.0K180me2およびγH2A.Xを調査した。DNA損傷応答経路の早期プレーヤーであるPARP−1は、実施例1に記載した方法に従って、有効な阻害剤であるAG14361を使用して阻害された。図8Aに示すように、H1.0K180me2はDNA損傷の際にクロマチンに出現し、その出現はPARP−1活性とは無関係であった。実際に、PARP−1の阻害は、H1.0K180me2およびγH2A.Xの蓄積の増加をもたらした(図8A)。細胞溶解物全体におけるPARP−1阻害活性のウエスタンブロット分析により、ブレオマイシンによる処理に際し、PARP−1活性は細胞内のポリ−(ADP)−リボース(PAR)レベルの上昇をもたらしたことが明らかになり、これはPARP−1阻害剤により消失し、効率的なPARP−1阻害を示唆した(図8B)。したがって、H1.0K180のメチル化は、DNA損傷修復経路のタンパク質PARP−1活性と無関係であることが決定された。
(実施例7)
H1.0K180me2抗体の使用は、遺伝毒性ストレスに誘導される老化に際して、H1.0K180me2がクロマチンから放出され、細胞外マトリックスへと分泌されることを示す
SR hADSC、ブレオマイシンで2時間処理したhADSC(急性DNA損傷)およびブレオマイシンで処理して3日間老化させたhADSC(遺伝毒性ストレスに誘導される老化)を溶解させ、可溶性およびクロマチン結合画分に分画した。次いで、これらの画分をLC−MS/MS分析に供した。ペプチドの発現レベルは、LC−MS/MSの相対強度曲線下の総面積として得て、個々のペプチドは、Pinpointソフトウェア、バージョン1.4(Thermo Scientific)を使用してタンパク質へと明確に割り当てた。個々のタンパク質に割り当てたすべてのペプチドの面積を合計して、タンパク質発現レベルを得て、これを、各試料に対する総タンパク質ライブラリーサイズに対して正規化した。各細胞画分に対して、H1.0ペプチドの存在量を、各条件で観察された総H1.0ペプチドのパーセンテージとして表す。各画分におけるH1.0ペプチドレベルの正規化した絶対値も示した。図9Aに示すように、クロマチンに結合したH1.0は、SRおよび急性DNA損傷における合計の約60%から遺伝毒性ストレスに誘導される老化の際の合計の約30%まで低下した。ブレオマイシンで処理したSR hADSC由来の培養培地を、α−H1.0およびα−H1.0K180me2抗体を用いるスロットブロット分析のために採取して、H1.0の細胞外マトリックス(ECM)への分泌を評価した。実施例1に記載した方法に従って、実験を実行した。分泌されたH1.0は、細胞培養培地中で検出可能であり、ブレオマイシン処理の24時間後に、分泌されたH1.0K180me2も容易に検出された(図9B)。これらの結果により、メチル化H1.0K180は、遺伝毒性ストレスに誘導される老化の際にクロマチンから放出され、ECMへと分泌されることが確認された。
(実施例8)
H1.0K180me2抗体の使用はイオン化放射線への曝露が血清中のH1.0K180me2のレベルの上昇を誘導することを示す
血清中のH1.0K180me2レベルに関するイオン化放射線の効果を調査した。実施例1に記載した方法に従って、7Gyのイオン化放射線への曝露前および2時間後または48時間後のいずれかに、血清を野生型マウスから採取した。照射の2時間後(マウス1)または48時間後(マウス2)のH1.0K180me2の血清レベルを、α−H1.0K180me2抗体を用いるスロットブロットおよび免疫ブロットを使用して処置前の初期レベルと比較した(図10A)。各血清試料中のH1.0K180me2の濃度を、各分析に含まれるH1.0K180me2ペプチドの標準曲線を使用して計算した。ローディング対照としてマウス血清アルブミンを使用した。H1.0K180me2のドットブロットバンドを定量化し、血清アルブミンによって正規化した。照射後のH1.0K180me2の相対的増加を示す(図10B)。α−H1.0K180me2抗体を有するマウス血清の等しい体積のウエスタンブロット分析により、照射後のH1.0K180me2の増加も示された(図10C)。
(実施例9)
H1.0K180me2抗体および標識したH1.0K180me2ペプチドの使用は、脳および血清中のH1.0K180me2レベルがアルツハイマー病の指標であることを示す
1カ月(若齢)および24カ月(老齢)のマウス由来のマウス脳試料の細胞溶解物全体を、実施例1に記載した方法に従って、α−H1.0K180me2、α−H1.0、α−γH2A.Xおよびα−β−アクチン抗体を用いるウエスタンブロット分析によって比較した。H1.0K180me2レベルは、24カ月のマウスで上昇し、γH2A.Xレベルの上昇と相関した(図11A)。
さらなる研究をヒトの臨床試料で実行した。
Cooperative Human Tissue Network(CHTN)およびNuclea Biotechnologies(NCB)からヒト血清を入手した。血清は3つの群に由来した:1)重要な医学的状態を有さない中年の健康なドナー(n=7、年齢の範囲=32〜38歳) 2)重要な医学的状態を有さない老齢の健康なドナー(n=9、年齢の範囲=63〜76歳) 3)臨床的に診断されたアルツハイマー病を有する老齢ドナー(n=10、年齢の範囲=75〜103歳)。各ドナーのさらなる詳細は表4にある。
23歳(若齢)および/または60歳を超える(老齢)健康な個体由来のヒト脳試料の細胞溶解物全体も、上述の抗体および方法を用いてウエスタンブロットにより分析した。表4は、脳組織ドナーの特性を提供する。図11Bに示すように、年齢の高い個体はH1.0K180me2の発現の増加を示す。これらの結果は、生物年齢と共にH1.0K180me2が増加することを示した。
この研究の目的は、アルツハイマー病の予測性能のバイオマーカーとしての、血清H1.0K180me2の測定値および/またはH1.0K180me2に対する血清抗体の測定値の有用性を実証することであった。新たな診断バイオマーカーの正しい予測能を保証するために、患者の階層化方法を開発し、その診断精度について試験した。試験の性能は、登録された参照標準(例えば、ADの確定診断のために、アメリカ国立老化研究所(National Institute of Aging)−アルツハイマー病協会(Alzheimer’s Association)(NIA−AA)によって推奨されるいくつかの試験の組合せ)と比較することによって評価した。この研究は、Standards for Reporting of Diagnostic Accuracy(STARD)に従って設計し、実行した。統計分析は、診断精度パラメーター、交差検定、およびYouden指数の最適化を含んだ。患者の階層化戦略に従い、かつ分析の予測力を用いて、患者は、アルツハイマー病の発症の可能性を有する患者のカテゴリーとして階層化されうる。感度、特異性、陽性および陰性適中率(PPVおよびNPV)ならびに陽性および陰性尤度比(PLRおよびNLR)を各試験設計について示す。図12A〜12C、図13B、図14B、図14E、図15Aおよび図15Bにおいて、ボックスプロットの中心線はメジアンを示し;ボックスの端はRソフトウェアにより決定した25および75パーセンタイルを示し;ひげは25および75パーセンタイルから四分位範囲の1.5倍伸び、外れ値はドットで表し;データ点を白丸でプロットする。破線は、ROC曲線(受診者動作特性曲線)分析によって計算される閾値を示す。感度、特異性、陽性および陰性適中率(PPVおよびNPV)ならびに陽性および陰性尤度比(PLRおよびNLR)を各試験設計について示す。統計方法は、患者の疾患の有無を予測する助けとなる。試験結果が疾患の試験前の確率を修正する程度は、ベイズの定理に基づく「尤度比」によって表現される。陽性尤度比(PLR)は、試験が陽性である場合、疾患の確率がどの程度増加するかを表す。陰性尤度比(NLR)は、試験が陰性である場合、疾患の確率がどの程度低下するかを表す。PLRが1より大きいことは、標的障害が存在する確率の増加を示し、PLRが1より小さいことは、標的障害が存在する確率の低下を示し、PLRが1であることは、試験によって疾患の確率が変化しないことを意味する。ROC曲線、閾値および曲線下面積(AUC)は、試験設計のそれぞれに対して示される。2×2マトリックス(TP、FN、FP、TN)における0という値は、比の計算を不可能にする可能性がある。これを制御するために0.5の「疑似カウント」を加えた。「疑似カウント」はどの値にも加えるため、相対値に影響を与えない。図12A〜12C、図13B、図14B、図14E、図15Aおよび図15Bのボックスプロットの中心線はメジアンを示し;ボックスの端はRソフトウェアにより決定した25および75パーセンタイルを示し;ひげは25および75パーセンタイルから四分位範囲の1.5倍伸び、外れ値はドットで表し;データ点を白丸でプロットする。
H1.0K180me2レベルがアルツハイマー病の診断指標としての役割を果たすことができるかどうかを試験するために、ヒト血清中のH1.0K180me2レベルを、実施例1に記載した方法に従って、α−H1.0K180me2抗体を使用するスロットブロット分析によって定量化した。30〜40歳の(n=7)または60歳を超える(n=9)健康な個体、および臨床的に診断されたアルツハイマー病を有する60歳を超える個体(n=10)由来の等しい体積の血清を分析した(表4は血清ドナーの特性を提供する)。
H1.0K180me2レベル
図12A〜Cは、ヒト血清におけるH1.0K180me2抗原の検出(図12A、12B、12C)、天然に存在するH1.0K180me2 IgG自己抗体の検出(図13B)、および天然に存在するH1.0K180me2 IgM自己抗体の検出(図14A〜E、図15A〜B)が、アルツハイマー病の早期診断に対するツールとして作用する可能性があることを示す。
図12Aは、アルツハイマー病患者および年齢を一致させた対照における、スロットブロット分析によって決定したH1.0K180me2レベルの定量化を示す。H1.0K180me2レベルの定量化は、アルツハイマー病患者および年齢を一致させた対照においてスロットブロット分析によって決定した。各血清試料中のH1.0K180me2の濃度を、各分析に含まれるH1.0K180me2ペプチドの標準曲線を使用して計算した。図12Aに示すように、アルツハイマー病患者は、健康な、年齢を一致させた対照よりも血清H1.0K180me2の低い濃度を示し、H1.0K180me2の血清濃度は、健康な個体からアルツハイマー病を有する患者を有効に分離する可能性があり、アルツハイマー病検出の診断ツールとして作用できることを示した。表5に示すように、5.61nmol/mlまたはそれ未満の血清中のH1.0K180me2抗原の濃度の測定値は、試験前の確率と比較して、24%の可能性で疾患の存在を示し、陽性尤度比(PLRまたはLR+)は3.6である。試験後の確率は、以下の式に基づいて計算される:試験前オッズ×LR/(1+試験前オッズ×LR)(式中、試験前オッズは、試験前の疾患の存在の臨床上の疑いである)。試験後の確率は、通常、Likelihood Ratio NomogramまたはFagan Nomogram(NEJM 1975年;293巻:257頁)から計算される。
図12Bは、総IgG血清レベルによって正規化したヒト血清中のH1.0K180me2レベルを示す。ヒト血清中のH1.0K180me2レベルを総IgG血清レベルによって正規化するために、総IgGレベルを、ヤギ抗ヒトIgG二次抗体を使用して、各血清試料についてスロットブロット分析によって決定した。H1.0K180me2の濃度は、各試料において実測したIgGレベルによって正規化した。図12Bにおいて示すように、H1.0K180me2レベルは、健康な若齢個体(30〜40歳)に対して、健康な60歳を超える個体で上昇したが、アルツハイマー病を有する患者は、健康な老齢個体(60歳を超える)に対して、有意に低いH1.0K180me2の正規化レベルを示す。箱グラフの左の部分は、前駆アルツハイマー病の診断または軽度認知障害(MCI)を有さない患者である。箱グラフの右の部分は、アルツハイマー病病理の死亡後の確認を有する患者を示す。表6は、ROC分析に由来する値を示す。
図12Cは、総タンパク質レベルによって正規化したヒト血清中のH1.0K180me2レベルを示す。ヒト血清中のH1.0K180me2レベルを総タンパク質レベルによって正規化するために、Qubit(Invitrogen)を使用して、各試料について、総血清タンパク質を測定した。次いで、H1.0K180me2の濃度を、各試料中の測定したタンパク質濃度によって正規化した。図12Cに示すように、H1.0K180me2レベルは、健康な60歳を超える老齢個体で上昇したが、アルツハイマー病を有する患者は、健康な老齢個体(60歳を超える)に対して、有意に低いH1.0K180me2の正規化レベルを示した。図12Cは、血清の総タンパク質組成に対するH1.0K180me2抗原の血清学的定量化を示す。表7は、4.76×10
−4未満の血清中の総タンパク質に対するH1.0K180me2抗原の比が、試験前の確率と比較して、24.8%の可能性で疾患の存在を示し、PLRは3.00である。
H1.0K180me2の血清濃度は、アルツハイマー病患者の特定に十分であるが、総IgG(図12B)または総タンパク質(図12C)による血清試料の正規化の使用は、血清を得るために使用されるプロトコール、操作者の変化、患者の水分補給状態および患者の活動状態などの、全体の血清濃度を変える可能性がある変数にかかわらず、個体間の直接的な比較を可能とする。IgGはヒト血清中に非常に豊富に存在し、血清タンパク質の約11%に相当する。したがって、IgGは、血清濃度の指標として作用することができ、患者間を正規化するために使用されてもよい。総血清タンパク質は、血清濃度の直接的指標を与え、患者間のH1.0K180me2の濃度を正規化するために使用されてもよい。それぞれの例では、正規化したH1.0K180me2レベルが、健康に老化すると(60歳を超える)増加することが観察された。アルツハイマー病の血清H1.0K180me2レベルは、年齢を一致させた対照よりも有意に低く、通常の正規化手順を用いると、観察される傾向は変わらないが、血清採取および処理の手順、または患者の血清の基礎濃度レベルの差異にかかわらず、患者間のH1.0K180me2レベルの直接的な比較が可能となることが示された。
抗H1.0K180me2 IgG(H1.0K180me2 IgG自己抗体)レベル
図13Aは、ヒト抗H1.0K180me2 IgGが、間接的ELISA法を使用して様々なヒトの生体液中で検出される可能性があることを示す。ヒトの血漿、尿、および唾液は、それぞれ、間接的ELISA試験および標識したH1.0K180me2ペプチドを使用して、H1.0K180me2 IgG自己抗体に対して試験した。血漿濃度と450nmで測定したO.D.の間の線形関係を、血漿をローディング緩衝液中で500倍、1000倍、および2000倍に希釈した際に検出した。同様に、尿および唾液の濃度と450nmで測定したO.D.の間の線形関係を、これらの流体をローディング緩衝液中で80倍および160倍に希釈した際に検出した。このことは、抗H1.0K180me2 IgGの間接的ELISA試験が多様なヒトの生体液中の抗H1.0K180me2 IgGを検出する有用性を有することを示唆する。
関連する実験では、ヒト血清中の抗H1.0K180me2 IgGレベルを、ビオチン化H1.0K180me2捕捉ペプチド(H1.0K180me2自己抗体結合ペプチド)、続いて、IgG自己抗体に特異的な二次抗体を使用する間接的ELISA分析によって定量化した。30〜40歳の(n=7)または60歳を超える(n=9)健康な個体、および60歳を超える、臨床的に診断されたアルツハイマー病を有する個体(n=10)由来の等しい体積の血清を分析した(図13B)。
図13Bは、アルツハイマー病患者および年齢を一致させた対照における間接的ELISAによって決定した自己抗H1.0K180me2 IgGレベルの定量化を示す。各血清試料中の抗H1.0K180me2 IgGの濃度(間接的ELISAによって決定した自己抗体IgGレベル)を、図12Eに示すELISA実験に含まれるH1.0K180me2特異的抗体の連続希釈により作成した標準曲線を使用して計算した。アルツハイマー病患者は、健康な、年齢を一致させた対照よりも血清抗H1.0K180me2 IgGの高い濃度を示す。抗H1.0K180me2 IgGの血清濃度は、健康な個体からアルツハイマー病を有する患者を有効に分離する可能性があり、アルツハイマー病検出の診断ツールとして作用できる。表8に示すように、8.23ug/mlに等しいまたはそれより高い濃度の自己抗H1.0K180me2抗体の測定値は、試験前の確率と比較して、30%の可能性で疾患の存在を示し、PLRは5.4である。図13Bは、ヒト血清中のH1.0K180me2自己抗体の定量化のための標準曲線を示す。総血清タンパク質は、ブラッドフォードアッセイを使用して各試料について測定した。抗H1.0K180me2 IgG濃度は、各試料中の測定したタンパク質濃度によって正規化した。抗H1.0K180me2 IgGレベルは、健康な若齢個体(30〜40歳)に対して、健康な60歳を超える個体で低下する。アルツハイマー病を有する患者は、健康な老齢個体(60歳を超える)に対して、抗H1.0K180me2 IgGの正規化レベルの上昇を示す。
抗H1.0K180me2 IgM(H1.0K180me2 IgM自己抗体)レベル
別の関連する実験では、ヒト血清中の抗H1.0K180me2 IgMレベルを、ビオチン化H1.0K180me2捕捉ペプチド(H1.0K180me2自己抗体結合ペプチド)、続いて、IgM抗体に特異的な二次抗体を使用する間接的ELISA分析によって定量化した(体積によって正規化した)。60歳を超える健康な個体(n=9)、および60歳を超える、臨床的に診断されたアルツハイマー病を有する個体(n=10)由来の等しい体積の血清を分析した(図14Eの生データ;図15Aの総IgMレベルに対して正規化したデータ)。
以下の表9は、間接的ELISA分析に由来し、図14D〜14Eでさらに分析された生データを示す。ELISAは、各患者試料について三連で実施した。抗H1.0K180me2 IgM濃度を、図14Dに示す標準曲線から、各複製について計算した。各試料に対する抗H1.0K180me2 IgMの濃度の平均は、3つの技術的複製から計算した。3つの技術的複製間の試料の標準偏差も計算した。複製間の実施形態の係数は、CV%=標準偏差/平均×100%として計算した。
抗H1.0K180me2の標準曲線は利用可能でなかったため、抗H1.0K180me2 IgG抗体を使用して標準曲線を創出した(図14D)。抗H1.0K180me2 IgGのモル濃度を、450nmでODに対してプロットした。次いで、曲線を使用して、各試料中の抗H1.0K180me2 IgMのモル濃度を推測した。
図14Eは、アルツハイマー病のバイオマーカーとしてのH1.0K180me2に対するIgG自己抗体の測定値の有用性を実証する(図は生データを示す)。左のパネルは、全体的な予測性能を評価し、最適閾値のカットオフ値を選ぶために使用して、陽性および陰性の試験結果を区別するROC曲線分析を示す。各可能な閾値におけるパーセント特異性と感度の間の関係を示すようにプロットして、経験上のROC曲線(実線)を創出する。経験上のROC曲線を使用して、右のパネルに描写した最適閾値のカットオフ値を計算した。最適閾値は、経験上のROC曲線に灰色のドットとして示す。図14Eの右のパネルは、アルツハイマー病を有する患者と有さない患者(神経学的対照)の抗H1.0K180me2 IgMの濃度のボックスプロット分布を示す。すべての試料に対する個々の測定値をドットで示し、ボックスプロットは、上位四分位数、下位四分位数、ならびに上位四分位数および下位四分位数から、外れ値でない最大および最小の点までの距離と共に、それぞれの分布について示されている。閾値のカットオフ(破線)より上の試料は、試験に対して陽性であるとみなされる。閾値のカットオフより下の試料は、試験に対して陰性であるとみなされる。図14Eの下の2×2のマトリックスは、分布が4つの群に分割される場合があることを示す:真の陽性(TP;指数が正であり、ADが存在する);偽陽性(FP;指数が正であるが、ADは存在しない);真の陰性(TN;指数が負であり、ADが存在しない);および偽陰性(FN;指数が負であるが、ADが存在する)。各群内にある試料数を2×2マトリックスにプロットした。
以下の表10は、抗H1.0K180me2 IgMの試験性能の評価を生データとして示す。
以下の表11は、間接的ELISA分析に由来し、図15A、図15Bでさらに分析された正規化データ(総IgMレベルによって正規化した抗H1.0K180me2 IgM)を示す。ELISAは、各患者の試料に対して三連で実施した。抗H1.0K180me2 IgMの濃度を、図14Dに示す標準曲線から各複製について計算し、試料中で測定した総IgM濃度の平均によって正規化した(図14B)。各試料に対する平均の、正規化した抗H1.0K180me2 IgMの濃度は、3つの技術的複製から計算した。3つの技術的複製の間の試料の標準偏差も計算した。複製間の実施形態の係数は、CV%=標準偏差/平均×100%として計算した。
図15Aは、アルツハイマー病のバイオマーカーとしてのH1.0K180me2に対するIgM自己抗体の測定値の有用性を実証する(図は正規化したデータを示す)。左のパネルは、全体的な予測性能を評価し、最適閾値のカットオフ値を選ぶために使用して、陽性および陰性の試験結果間を区別するROC曲線分析を示す。各可能な閾値におけるパーセント特異性と感度の間の関係を示すようにプロットして、経験上のROC曲線(実線)を創出する。経験上のROC曲線を使用して、右のパネルに描写した最適閾値のカットオフ値を計算した。最適閾値は、経験上のROC曲線に灰色のドットとして示す。図15Aの右のパネルは、アルツハイマー病を有する患者および有さない患者(神経学的対照)の正規化した抗H1.0K180me2 IgMの濃度のボックスプロット分布を示す。すべての試料に対する個々の測定値をドットで示し、ボックスプロットを各分布について示す。ボックスプロットは、上位四分位数、下位四分位数、ならびに上位四分位数および下位四分位数から、外れ値でない最大および最小の点までの距離と供に、中央値を示す。閾値のカットオフ(破線)より上の試料は、試験に対して陽性であるとみなされる。閾値のカットオフより下の試料は、試験に対して陰性であるとみなされる。図15Aの下の2×2のマトリックスは、分布が4つの群に分割される場合があることを示す:真の陽性(TP;指数が正であり、ADが存在する);偽陽性(FP;指数が正であるが、ADは存在しない);真の陰性(TN;指数が負であり、ADが存在しない);および偽陰性(FN;指数が負であるが、ADが存在する)。各群内にある試料数を2×2マトリックスにプロットした。図15Bは、試験の特徴が、実験室の設定および異なる操作者によって変動しないことを実証する。
以下の表12は、抗H1.0K180me2 IgM/総IgMの試験性能の評価を示す。
この試験の結果は、疾患の確率を、試験前の10%から試験後の63%まで修正する。陽性尤度比(LR+)は15.0(95%CI:0.98、229)であり、陽性適中率(PPV)は94%(95%CI:53、100)である。陰性尤度比(LR−)は0.26(95%CI:0.09、0.78)であり、陰性適中率は79%(95%CI:47、95)である。
対照
図14Bは、標準曲線を示す:ヒトIgG希釈系列のモル濃度を、450nmのODに対してプロットした。次いで、曲線を使用して、各試料中の総IgMのモル濃度を外挿法により推定した。
以下の表13は、総IgMのELISAからのデータを示す。ELISAは、各患者の試料に対して三連で実施した。総IgMのモル濃度は、図14Bに示した標準曲線から、各複製について計算した。各試料に対する総IgMのモル濃度の平均を3つの技術的複製から計算した。3つの技術的複製の間の試料の標準偏差も計算した。複製間の実施形態の係数は、CV%=標準偏差/平均×100%として計算した。
図14Bは、総IgMレベルが、アルツハイマー病を有する個体と有さない個体を識別しないことを実証する。すべての試料に対する個々の測定値をドットで示し、ボックスプロットは各分布について示す。ボックスプロットは、上位四分位数、下位四分位数、ならびに上位四分位数および下位四分位数から、外れ値でない最大および最小の点までの距離と共に、中央値を示す。
図16Aは、患者の試料中の総IgMレベルと抗H1.0K180me2 IgMレベルの間に相関がないことを実証する。すべての患者の試料を、測定した総IgM濃度に対する測定した抗H1.0K180me2 IgM濃度に基づく散布図に分布させた。抗H1.0K180me2 IgMレベルは、低いR2値によって証明されるように、患者の血清中の総IgMレベルに影響されない。
図16Bは、総非修飾H1.0タンパク質レベル(左のグラフ)と総抗H1.0 IgMレベルがアルツハイマー病を有する個体と有さない個体を識別しないことを実証する。左のパネルでは、カスタム化学発光スロットブロットイムノアッセイを使用して、アルツハイマー病および対照患者の血清試料における総H1.0(非修飾)レベルを測定した。右のパネルでは、間接的ELISAを使用して、患者の血清中のH1.0の非修飾ペプチドに対するIgM自己抗体を測定した。非修飾H1.0ペプチドに対するIgM自己抗体のレベルに統計的に有意な差は存在せず(p=0.72)、アルツハイマー病に対する診断の有用性が、患者の血清中の抗H1.0K180me2 IgMに特有であることを示した。すべての試料に対して、両方のパネルに対する相対的な測定値をドットで示し、ボックスプロットは各分布について示す。ボックスプロットは、上位四分位数、下位四分位数、ならびに上位四分位数および下位四分位数から、外れ値でない最大および最小の点までの距離と共に、中央値を示す。
抗H1.0K180me2 IgGおよびIgMレベルの相関
図17は、H1.0K180me2 IgGおよびIgM自己抗体を測定することにより、アルツハイマー病を有する患者を別個の集団へと階層化できることを実証する。抗H1.0K180me2 IgGレベルをアルツハイマー病患者の試料中で測定し、これらを総IgGレベルによって正規化した。次いで、散布図によって、アルツハイマー病患者の試料中の正規化した抗H1.0K180me2 IgMレベルの、これらの正規化した抗H1.0K180me2 IgGレベルとの相関を調べた。この分析により、アルツハイマー病患者を別個の集団へと階層化することが可能となる。図17で75、77、94、および78とマークした患者は、任意のアルツハイマー病処置に応答する傾向がある。図17で90、91、93、83、および103とマークした患者は、特定のアルツハイマー病処置にのみ、例えば、非免疫調節性アルツハイマー病処置にのみ応答する傾向がある。
(実施例10)
ラパマイシンおよびその誘導体が、DNA損傷後の細胞質内におけるH1.0K180me2の蓄積をブロックする
ラパマイシン誘導体がDNA損傷の際のH1.0K180me2の出現をブロックする可能性があるかどうかを試験するために、SR hADSCを、ラパマイシンまたはエベロリムス(ラパマイシンの誘導体)による24時間の前処理ありまたはなしで、ブレオマイシンで2時間処理した。次いで、実施例1に記載した方法に従って、細胞を溶解させて、H1.0K180me2、γH2A.Xおよびβ−アクチンについてウエスタンブロットにより分析した。図18に示すように、ラパマイシンとエベロリムスの両方がブレオマイシン処理の際のH1.0K180me2の出現を低減し、エベロリムスもDNA損傷の際のH1.0K180me2の出現をブロックする可能性があることを示唆する。
SR hADSCを、塩基除去修復経路を誘発する化合物である、ブレオマイシンまたはテモゾロミドにより2時間処理した。次いで、細胞を溶解させて、H1.0K180me2、γH2A.Xおよびβ−アクチンについてウエスタンブロットにより分析した。図19に示すように、ブレオマイシンとテモゾロミドの両方が、H1.0K180me2のメチル化を誘導することができた。
(実施例11)
mTORおよびPI3K阻害剤は、DNA損傷後のH1.0K180me2の蓄積をブロックする
図20は、H1.0K180me2動態に対するmTORおよびPI3K阻害剤の効果を示す。SR hADSCを、化学阻害剤であるmTOR1、mTOR2および/またはPI3Kによる24時間の前処理ありまたはなしで、ブレオマイシンで2時間処理した。細胞を溶解させ、H1.0K180me2、H1.0全体、γH2A.XおよびヒストンH4全体についてのウエスタンブロットによる分析のためにクロマチン抽出した。使用した薬物濃度、および各薬物に対する特異的な阻害標的を薬物名の次に与える。試験したすべての阻害剤は、ブレオマイシン処理の際のH1.0K180me2の出現を低減することができた。
(実施例12)
in vitroでのG9Aによるメチル化および生成物の分析
図21A〜21Bは、このin vitroG9Aメチル化アッセイの結果を示す。
H1.0ペプチドをメチル化することができるG9Aメチルトランスフェラーゼ(図21A)。次に、メチル化反応をゲル上で分解し、オートラジオグラフィーにより可視化した。4kDaでのバンドの出現は、トリチウム標識したメチル基がペプチドに移行することにより、G9AメチルトランスフェラーゼがH1.0ペプチドをメチル化でき、これにより可視化が可能となることを示す。H1.0ペプチドを欠く対照反応は、トリチウム標識した生成物を生じなかった。
全長組換えH1.0をメチル化することができるG9Aメチルトランスフェラーゼ(図21B)。G9Aの量の増加を伴う組換え全長ヒストンH1.0のin vitroメチル化アッセイを図21Bに示す。G9Aは、K180において全長H1.0をジメチル化することができる。
非修飾H1.0ペプチド(AKPVKASKPKKAKPVKPK(配列番号36))に関するG9Aメチル化の正確な位置を特定するために、メチル化反応をセットアップし、LC−MSにより生成物を特定した。メチル化反応は、組換えG9A、標識されていないメチルドナー(S−アデノシル−L−メチオニン)、および非修飾H1.0ペプチドを含んだ。次に、メチル化反応をLC−MSにより分析し、各スペクトルピーク(最終反応のペプチド種に対応する)を特定し、スペクトルカウントを使用して定量化した。図22Aにおける「me」の円の数は、リシン残基のメチル化状態(モノ−、ジ−、またはトリ−メチル化)を表す。図22Aは、非メチル化H1.0ペプチドの存在下で、G9Aが特異的かつ多量にH1.0K180をジメチル化する(すべてのペプチドの99.9%)ことを示す。
より具体的には、データは、G9Aは、リシンK180をジメチル化するが、同一のペプチド断片に存在する他のリシン(K166、K174、K175またはK177)をジメチル化しないことを実証し、メチル化の効率は約99%と推定された(図22Aおよび図22B)。H1.0ペプチドのリシン180に対する、G9Aによるメチル化の感受性および特異性をさらに対象とするために、K180me2ペプチド(H1.0 AA165〜182)を、同様のin vitroでのメチル化実験の基質として使用した。図22B、図23に示すように、さらにメチル化されたペプチドはごくわずかの量しか検出されなかった:H1.0K166me1K180me2(反応における全ペプチドの1.27%)、H1.0K174me1K180me3(反応における全ペプチドの1.06%)およびH1.0K174me3K175me3K177me1K180me2(反応における全ペプチドの0.35%)。
全長H1.0タンパク質に関するG9Aメチル化の正確な位置を特定するために、メチル化反応をセットアップし、LC−MSにより生成物を特定した。メチル化反応は、組換えG9A、標識されていないメチルドナー(S−アデノシル−L−メチオニン)、および組換えヒトH1.0タンパク質を含んだ。次に、メチル化反応をLC−MSにより分析し、メチル化の部位を特定した。図24における「me」の円の数は、リシン残基のメチル化状態(モノ−、ジ−、またはトリ−メチル化)を表す。図24は、組換え全長H1.0の存在下で、G9Aが、H1.0K180me2を含むC末端リシン残基をメチル化することを示す。
(実施例13)
in vitroでのGLPによるメチル化および生成物の分析
非修飾H1.0ペプチド(AKPVKASKPKKAKPVKPK(配列番号36))でのGLPメチル化の正確な位置を特定するために、メチル化反応をセットアップし、生成物をLC−MSにより特定した。メチル化反応は、組換えGLP、標識されていないメチルドナー(S−アデノシル−L−メチオニン)、および非修飾H1.0ペプチドを含んだ。次に、メチル化反応をLC−MSによって分析し、各スペクトルピーク(最終反応におけるペプチド種に対応する)を特定し、スペクトルカウントを使用して定量化した。図25における「me」の円の数は、リシン残基のメチル化状態(モノ−、ジ−、またはトリ−メチル化)を表す。図25は、非メチル化H1.0ペプチドの存在下で、GLPがH1.0K180を特異的にジメチル化する(すべてのペプチドの96.6%)ことを示す。
K180ジメチル化H1.0ペプチド(AKPVKASKPKKAKPVK(me2)PK(配列番号3))でのGLPメチル化の正確な位置を特定するために、メチル化反応をセットアップし、生成物をLC−MSにより特定した。メチル化反応は、組換えGLP、標識されていないメチルドナー(S−アデノシル−L−メチオニン)、およびH1.0K180me2ペプチドを含んだ。次に、メチル化反応をLC−MSによって分析し、各スペクトルピーク(最終反応におけるペプチド種に対応する)を特定し、スペクトルカウントを使用して定量化した。図26における「me」の円の数は、リシン残基のメチル化状態(モノ−、ジ−、またはトリ−メチル化)を表す。図26は、K180ジメチル化H1.0ペプチドの存在下で、GLPはH1.0K180およびH1.0K174をさらにメチル化するだけであり、さたその効率は非常に低い(ペプチドの1.02%がさらにメチル化される)ことを示す。
全長H1.0タンパク質でのGLPメチル化の正確な位置を特定するために、メチル化反応をセットアップし、生成物をLC−MSにより特定した。メチル化反応は、組換えGLP、標識されていないメチルドナー(S−アデノシル−L−メチオニン)、および組換えヒトH1.0タンパク質を含んだ。次に、メチル化反応をLC−MSによって分析し、メチル化の部位を特定した。図27における「me」の円の数は、リシン残基のメチル化状態(モノ−、ジ−、またはトリ−メチル化)を表す。図27は、組換え全長H1.0の存在下で、本明細書に記載されている条件下で、GLPが全長H1.0をメチル化しないことを示す。GLPは、本明細書において提供される条件下で、G9Aの特異性を欠く、H1.0のC末端テールの多数のリシン残基をメチル化する。
(実施例14)
hADSCにおけるG9AのsiRNAノックダウン
siRNAのトランスフェクション
G9Aを標的とするよう設計したsiRNAプールはQiagen(GS10919)から入手し、無作為にスクランブルしたsiRNAプールはThermoFisher Scientific(4390843)から入手した。siRNAプールは、製造業者のプロトコールに従い、Lipofectamine 3000(Life Technologies)を使用して、自己複製hADSCにトランスフェクトした。siRNAのトランスフェクションの24時間後に細胞を採取し、qPCRまたはウエスタンブロットによって分析した。
qPCR
細胞培養物をTrizol(Invitrogen)中でホモジナイズし、RNeasyキット(Qiagen)を使用して全RNAを単離した。RNAはQubit(Invirtogen)で定量化し、製造業者のプロトコール(Invitrogen)に従って、SuperScript IIIを使用して逆転写した。定量的PCR分析を、製造業者のプロトコール(Applied Biosystems)に従い、約5ngのcDNA、1μMの指定されたプライマー対およびFast−SYBR Green PCR masterミックスを用いて、Applied Biosystems 7700配列検出器を使用して三連で実施した。プライマー対は以下に列挙する。各遺伝子に対する平均サイクル閾値(Ct)を、同一試料中のベータ−アクチンのレベル(デルタCt)に対して正規化した。対合していない2つの試料のt検定を使用して、処置群間の平均デルタCt値の差を決定した。該当する場合、デルタ−デルタCt方法により倍数変化を計算した(倍数=2ΔΔCt)。
結果
自己再生(SR)ヒト脂肪由来幹細胞(hADSC)にスクランブルした対照siRNAまたはG9Aを標的とするsiRNAのいずれかをトランスフェクトした。次いで、細胞を2時間のブレオマイシン処理に供した。ウエスタンブロット分析により、in vivoでのG9AノックダウンによりDNA損傷の際のH1.0K180me2の出現の低減が生じることが示された。G9Aの公知のメチル化生成物であるH3K9me2を使用して、ノックダウンの際のG9A活性の損失をモニターした(図28A)
hADSCにおけるG9AのsiRNAノックダウンにより、G9Aによってもたらされる公知のPTMであるH3K9me2の低減に付随して、2時間のブレオマイシン処理の際(ADD)のH1.0K180me2レベルの有意な低減がもたらされた(図28B)。
(実施例15)
バルクでのin vitroでメチル化されたH1.0K180me2タンパク質またはペプチドの生成
図21Bおよび図24で観察されたように、G9Aは、全長組換えヒトH1.0のK180を効率的かつ特異的にジメチル化することができる。生体試料におけるH1.0K180me2の検出のための参照標準として、ELISAキット(例えば、サンドイッチELISAキット)に組み込むことができる多量のH1.0K180me2全長タンパク質を創出するために、このプロセスを利用してもよい。このプロセスは、1×HMT反応緩衝液(50mMのTris−HCl、5mMのMgCl2、4mMのジチオトレイトール、pH9.0)、組換えヒトまたはマウスG9Aメチルトランスフェラーゼ、3.2mMのS−アデノシル−L−メチオニン、およびN末端タグ(HA、His、GST、FLAGまたは下流での精製に適切な他のタグ)で標識した組換え全長ヒトH1.0を含むバルクメチル化反応をセットアップすることを含む場合がある。反応は、G9Aにより媒介されるH1.0K180me2のメチル化が可能となるように、37℃で1時間インキュベートされうる。
次いで、K180me2を含有する全長H1.0は、1または2ステッププロセスで濃縮され、精製される。第1に、反応におけるすべての全長組換えH1.0種は、N末端タグを利用して、親和性精製により、反応混合物から精製される。一例では、H1.0はHAタグで標識され、カラムまたは樹脂に固定されたHA抗体で精製されうる。精製後、必要であれば、タンパク質分解による切断を介して、タグを除去できる。このプロセスは、最終生成物中の全長H1.0K180me2のみを濃縮し、捕捉および検出エピトープの両方が存在したことを保証する。第2のステップは、H1.0K180me2を含有する全長H1.0種のみをさらに精製するために、カラムまたは樹脂に固定されたH1.0K180me2抗体を利用する。次いで、この最終生成物を濃縮し(例えば、凍結乾燥を使用して)、定量化して、参照標準としてELISAキットに含めるか、または治療薬として使用することができる。H1.0K180me2抗体の精製のみを利用するワンステップ精製アプローチで十分な場合もある。