JP2019207229A - 血液試料保存剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】血液試料を振動下および/または血液試料が凍らない低温下で保存しても、安定に保存可能な血液試料の作製方法を提供する。【解決手段】目的細胞、抗血小板剤及び抗凝固剤を含む、血液試料の作製方法。ホルムアルデヒドドナー化合物をさらに含む、方法。抗血小板剤と抗凝固剤とを血液試料に添加した後、低温において保存する工程を含む、方法。親水性高分子化合物を血液試料に添加する工程をさらに含む、方法。水溶性ビタミンE類似物質を血液試料に添加する工程をさらに含む、方法。抗凝固剤がキレート剤である、方法。抗血小板剤が血小板GPIIb/IIIa受容体に対する阻害剤である、方法。【選択図】なし

Description

本発明は、安定に保存可能な血液試料の作製方法に関する。特に本発明は、血液試料が凍らない低温から室温環境下で、振動や温度変化などに対して安定に保存可能な血液試料の作製方法に関する。
近年、血液などの体液や、臓器などの組織を溶液に懸濁もしくは分散して得られる組織標本試料や、細胞培養液などから細胞を選択的に分離回収し、当該分離回収した細胞を基礎研究や臨床診断、治療へ応用する研究が進められている。例えば、がん患者より採取した血液から腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell、以下CTC)を採取し、当該細胞について形態学的分析、組織型分析や遺伝子分析を行ない、これら分析により得られた知見に基づき治療方針を判断する研究が進められている。
しかしながらがん患者より血液を採取してから前述した細胞の分離回収を実施するまでに長い時間を要することがある。分離回収を実施するまでの時間が長いと、溶液中に含まれる細胞が劣化し、当該細胞の形状崩壊ならびにそれに伴う当該細胞内の核酸およびタンパク質が放出するおそれがあり、そのような現象が生じると、溶液中に含まれる目的細胞の回収率の低下や、目的細胞中に含まれる核酸やタンパク質の解析能力の低下につながるおそれがあった。
また、試料を採取する場所と試料に含まれる細胞の分離回収および検出を行なう場所とが異なる場合、当該試料の輸送が求められるが、輸送の際、前述した作業(すなわち試料採取や、細胞の分離回収および検出)を行なう施設で一般的に保たれている温度環境下(25℃近傍)とは異なる環境下となる可能性があり、かつ振動も加わる。従って、溶液中に含まれる細胞の劣化のおそれがさらに高まる。
これまでに知られている血液試料を保存するための保存剤および方法として、特許文献1には、ホルムアルデヒドドナーを含む安定化剤と抗凝固剤とを含む保存剤を開示しており、当該保存剤を希少細胞を含む血液試料に添加することで、長期間保管した血液試料中に含まれる希少細胞の分離回収を実現している。しかしながら特許文献1に記載の方法を用いても、振動下および/または血液試料が凍らない低温下(例えば0℃から20℃)で保存すると、前述した作業を行なう際は、目的細胞の高効率な分離回収が困難であった。
特表2005−501236号公報
本発明の課題は、血液試料を振動下および/または血液試料が凍らない低温下で保存しても、安定に保存可能な血液試料、その作製方法、および保存剤を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は以下の通り例示できる。
[1]
目的細胞、抗血小板剤及び抗凝固剤を含む、血液試料の作製方法。
[2]
ホルムアルデヒドドナー化合物をさらに含む、[1]に記載の方法。
[3]
抗血小板剤と抗凝固剤とを血液試料に添加した後、低温において保存する工程を含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]
親水性高分子化合物を血液試料に添加する工程をさらに含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
水溶性ビタミンE類似物質を血液試料に添加する工程をさらに含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
抗凝固剤がキレート剤である、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
抗血小板剤が血小板GPIIb/IIIa受容体に対する阻害剤である、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
ホルムアルデヒドドナー化合物が、イミダゾリジニル尿素、ベンジルヘミホルマール(フェニルメトキシメタノール)、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、ブロノポール(2−ブロモ−2−ニトロプロペイン−1,3−ジオール)、ジアゾリジニル尿素、DMDMヒダントイン(1,3−ジメチロール−5,5−ジメチルヒダントイン)、メセナミン(ヘキサメチレンテトラミン)、クオタニウム−15(メセナミン 3−クロロアリロクロリド)、ヒドロキシメチルグリシンナトリウム、アミンやアミドのメチロール、ヒドロキシメチル誘導体、メチロール、及びメテンアミンの中から選ばれる一以上の化合物である、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]
親水性高分子化合物がポリエチレングリコールである、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10]
低温が、0℃以上25℃未満である、[3]に記載の方法。
[11]
以下の(1)〜(3)に示す工程を含む、血液試料中に含まれる目的細胞の検出方法。
(1)[1]〜[10]のいずれかに記載の方法で血液試料を作製する工程、
(2)得られた血液試料中に含まれる赤血球を破砕または除去する工程、
(3)(2)の工程を行なった後の血液試料から目的細胞を検出する工程
[12]
[11]に記載の方法で目的細胞を検出した後、当該検出した細胞を採取する、血液試料中に含まれる目的細胞の採取方法。
[13]
目的細胞、抗血小板剤、および抗凝固剤を含む、血液試料。
[14]
ホルムアルデヒドドナー化合物をさらに含む、請求項13に記載の血液試料。
[15]
抗血小板剤、抗凝固剤を含む、低温保存用の血液試料保存剤。
[16]
ホルムアルデヒドドナー化合物をさらに含む、[15]に記載の血液試料保存剤。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において血液試料とは、目的細胞並びに血小板および/または血小板から放出された細胞外小胞を少なくとも含んだ試料のことをいい、具体的には、血液(全血)、希釈血液、血清、血漿、髄液、臍帯血、成分採血液などの試料や、尿、唾液、精液、糞便、痰、羊水、腹水などの血液由来成分を含み得る試料や、肝臓、肺、脾臓、腎臓、皮膚、腫瘍、リンパ節などの組織の一片を懸濁させた組織懸濁液や、前述した試料または組織懸濁液より分離して得られる、試料または組織由来の細胞を含む画分、などがあげられる。このうち試料または組織由来の細胞を含む画分の一例として、試料や組織懸濁液を密度勾配形成用媒体の上に重層後、密度勾配遠心することで得られる画分があげられる。本発明における目的細胞は、血中に存在し得る細胞が好ましい。血中に存在し得る細胞とは、元来血液に含まれる細胞だけでなく、他の組織から血液に混入しうる細胞も含む。本発明における目的細胞の一例としては、血液循環腫瘍細胞(CTC)などの腫瘍細胞、循環血液内皮細胞(CEC)、循環血管内皮細胞(CEP)、循環胎児細胞(CFC)、各種幹細胞があげられる。
本発明の一実施態様に係る血液試料は、目的細胞と抗血小板剤と抗凝固剤とを少なくとも含むことが好ましい。血液試料を、当該試料の採取や、当該試料中に含まれる目的細胞の分離回収もしくは検出を行なう際の温度環境である、25℃近傍で保存する場合は、血液試料に特許文献1に例示される保存剤を添加することで安定に保存できた。しかしながら、特許文献1に例示される保存剤を添加した血液試料を、当該試料が凍らない低温下(例えば15℃近傍)で保存するとゲル状物質が生成し、当該試料中に含まれる目的細胞の分離回収が困難となった。そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、血液試料に抗血小板剤および抗凝固剤を添加することで前記ゲル状物質の生成が抑制され、当該試料中に含まれる目的細胞の分離回収効率が向上することを見出した。
本発明の一実施態様に係る血液試料に含まれる抗血小板剤は、血小板および血小板から放出された細胞外小胞の凝集を抑制する物質のことをいい、血小板ADP受容体を遮断し、血小板セロトニン2受容体を遮断し、血小板シクロオキシゲナーゼを阻害し、または血小板GPIIb/IIIa受容体を遮断することにより、血小板機能に直接の影響を与えて、血小板の凝集を阻害する物質が挙げられる。血小板ADP受容体を遮断し、血小板セロトニン2受容体を遮断し、血小板シクロオキシゲナーゼを阻害する阻害剤は、主に血小板膜表面の受容体を阻害、または受容体からのシグナル経路の阻害剤として働き、血小板凝集に関わる血小板GPIIb/IIIa受容体の発現に寄与している血小板内のカルシウムイオン濃度の上昇を抑制するために適用される。一方、血小板GPIIb/IIIa受容体に対する阻害剤は、von Willebrand因子や、フィブリノーゲンなどを介した、血小板間の血小板膜表面に発現した血小板GPIIb/IIIa受容体同士の結合による凝集を抑制する働きを有する。中でも、様々な経路で血小板内のカルシウム濃度が上昇することから、血小板凝集に直接作用する血小板GPIIb/IIIa受容体に対する阻害剤を抗血小板剤として用いるとよい。血小板GPIIb/IIIa受容体に対する阻害剤の一例として、チロフィバン(tirofiban)、アブシキシマブ(abciximab)、エプチフィバチド(eptifibatide)があげられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の保存剤に含まれる抗血小板剤として、血小板GPIIb/IIIa阻害剤であるチロフィバンを用いる場合は、保存剤添加後の血液試料の終濃度として0.24μg/mL以上となるよう、本発明の保存剤に含ませることができ、終濃度として24μg/mL以上となるよう、本発明の保存剤に含ませるとより好ましい。
本発明の一実施態様に係る血液試料には、血小板に発現しているインテグリンの一種であるGPIIb/IIIa以外に対するインテグリン阻害剤をさらに添加してもよい。インテグリン阻害剤とは、インテグリン発現細胞および当該細胞から放出された細胞外小胞の凝集を抑制する物質のことをいい、細胞膜表面に存在するインテグリンに結合可能な物質が挙げられる。当該インテグリンの種類に限定は無いが、インテグリンは大別してラミニン結合性インテグリン、コラーゲン結合性インテグリン、RGD配列認識インテグリンおよびLDV配列認識インテグリンが挙げられ、それぞれに結合可能な物質をインテグリン阻害剤として添加するとよい。例えばがん患者血液試料には血管新生やがん組織の増殖時に発現量が増えるインテグリンαvβ3を代表とするRGD配列認識インテグリンを細胞膜上に保有する細胞外小胞が多く存在するため、当該インテグリンを阻害すると当該細胞外小胞の凝集を抑制することができる。RGD配列認識インテグリンの阻害剤としては、アミノ酸配列としてRGDを少なくとも含むペプチドもしくは当該インテグリンに結合可能な小分子化合物を用いるとよい。
本発明の一実施態様に係る血液試料に含まれる抗凝固剤の一例として、血液凝固の要因となるカルシウムイオンを配位することで前記血液凝固を抑制するキレート剤や、血液凝固の要因となるトロンビン活性を抑制するヘパリンを含む抗トロンビン剤があげられる。中でもキレート剤が好ましく、その具体例として、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、DCTA(1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸)、EGTA(エチレングリコールビス−2−アミノエチルエーテル四酢酸)、クエン酸、シュウ酸、フッ化ナトリウム、ACD(Acid Citrate Dextrose Solution)があげられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一実施態様に係る血液試料には、ホルムアルデヒドドナー化合物をさらに含ませてもよい。ホルムアルデヒドドナー化合物は、それ自体は直接細胞に作用しないが、分解を受けることでホルムアルデヒドを放出し、細胞を安定化させることが可能な化合物のことをいう。ホルムアルデヒドドナー化合物の具体例として、イミダゾリジニル尿素、ベンジルヘミホルマール(フェニルメトキシメタノール)、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、ブロノポール(2−ブロモ−2−ニトロプロペイン−1,3−ジオール)、ジアゾリジニル尿素、DMDMヒダントイン(1,3−ジメチロール−5,5−ジメチルヒダントイン)、メセナミン(ヘキサメチレンテトラミン)、クオタニウム−15(メセナミン 3−クロロアリロクロリド)、ヒドロキシメチルグリシンナトリウム、アミンやアミドのメチロール、ヒドロキシメチル誘導体、メチロール、メテンアミン、パラホルムアルデヒドがあげられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でもパラホルムアルデヒドよりもホルムアルデヒドを緩慢に放出できる安定化剤が好ましく、具体的には、イミダゾリジニル尿素、ベンジルヘミホルマール(フェニルメトキシメタノール)、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、ブロノポール(2−ブロモ−2−ニトロプロペイン−1,3−ジオール)、ジアゾリジニル尿素、DMDMヒダントイン(1,3−ジメチロール−5,5−ジメチルヒダントイン)、メセナミン(ヘキサメチレンテトラミン)、クオタニウム−15(メセナミン 3−クロロアリロクロリド)、ヒドロキシメチルグリシンナトリウム、アミンやアミドのメチロール、ヒドロキシメチル誘導体、メチロール、メテンアミン、があげられるがこれらに限定されない。特にイミダゾリジニル尿素が最も好ましい安定化剤の一つといえる。
本発明の一実施態様に係る保存剤に含まれるホルムアルデヒドドナー化合物の濃度は、当該化合物が有する、血液試料中に含まれる目的細胞の固定化強度や固定化速度を考慮して適宜決定すればよい。例えばホルムアルデヒドドナー化合物として、イミダゾリジニル尿素を用いる場合は、保存剤添加後の血液試料の終濃度として0.01%(w/v)から10%(w/v)の間であってよく、0.25%(w/v)から2%(w/v)の間とすると好ましく、0.3%(w/v)から1.5%(w/v)の間とするとさらに好ましく、0.5%(w/v)から1%(w/v)の間とするとさらにより好ましい。
なお本発明の一実施態様に係る保存剤は、前述したホルムアルデヒドドナー化合物、抗血小板剤および抗凝固剤に加え、親水性高分子化合物をさらに含ませてもよい。親水性高分子化合物は電荷を持たない親水性高分子であるとよく、一例としてポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(ヒドロキシアルキル)メタクリレート、ポリアクリルアミド、ホスホリルコリン基を側鎖に有するポリマー、多糖類、ポリペプチドがあげられ、特にポリエチレングリコールが親水性が高く好ましい。本発明の保存剤に含ませる親水性高分子化合物としてポリエチレングリコールを用いた場合の濃度は、保存剤添加後の血液試料の終濃度として0.001%(w/v)から10%(w/v)の間であってよく、0.01%(w/v)から1%(w/v)の間とすると好ましく、0.01%(w/v)から0.25%(w/v)の間とするとさらに好ましく、0.02%(w/v)から0.2%(w/v)の間とするとさらにより好ましい。さらに、本発明の保存剤に含ませるポリエチレングリコールの分子量としては、平均分子量として100以上であればよく、200から2万の間とすると好ましく、600から2000の間とするとさらに好ましい。親水性高分子化合物は細胞の安定性向上のために添加するが、親水性高分子化合物を血液試料に添加することにより、前記試料内のエントロピーが低下することで、血液試料に含まれる細胞外小胞を含む粒子の分散安定性が低下して凝集を引き起こす要因となる。特に低温においては系内のエントロピーが低下し、ゲル状物質を含む凝集体が形成されやすいため、親水性高分子化合物添加によるエントロピーの低下を抑えることができる低分子量の当該化合物を用いることが好ましい。
本発明の一実施態様に係る保存剤の浸透圧を、あらかじめ任意の値に調製してもよい。生理的浸透圧よりも高い浸透圧に調製することで、細胞が収縮することにより、保存処理後の遠心など細胞と溶液との比重の違いに基づく分離濃縮を行う際の、細胞の当該分離濃縮効率が向上するためよい。なお、生理的浸透圧より非常に高い浸透圧に調製した保存剤を用いると、細胞に対する損傷や構造の崩壊が発生することで細胞の前記分離濃縮効率が低下する。ここで生理的浸透圧とは、浸透圧調整前の目的細胞を含む溶液(例えば血液試料など)が有する浸透圧のことをいい、一般的には260mOsm/kg・HOから300mOsm/kg・HOまでの範囲に入る。保存剤を添加した血液試料の浸透圧は、生理的浸透圧に対し0mOsm/kg・HOから100mOsm/kg・HOまでの範囲であればよく、0mOsm/kg・HOから60mOsm/kg・HOまでの範囲であればさらに好ましく、10mOsm/kg・HOから30mOsm/kg・HOまでの範囲であればさらにより好ましい。例えば、血液試料に添加する保存剤の添加量が150μl/ml血液試料の場合、保存剤の浸透圧は、生理的浸透圧に対し0mOsm/kg・HOから900mOsm/kg・HOまでの範囲であればよく、0mOsm/kg・HOから600mOsm/kg・HOまでの範囲であればさらに好ましく、50mOsm/kg・HOから400mOsm/kg・HOまでの範囲であれば特に好ましい。
本発明の一実施態様に係る保存剤に水溶性ビタミンE類似物質をさらに含ませてもよい。水溶性ビタミンE類似物質とは、ビタミンEの抗酸化作用を有する官能基を含む水溶性の化合物である。前記化合物は、抗酸化作用の他に細胞のアポトーシスの阻害や好中球特有の細胞死(ネトーシス)に対する阻害剤としての機能を有する。当該化合物を添加することにより、血液試料に含まれる細胞、特に白血球の細胞死を抑制することができ、白血球を構成する物質の損傷を防ぐことができるため、白血球に対して特異的に結合可能な物質との結合効率を高めることができる。そのため、当該白血球に対して特異的に結合可能な磁性粒子等を結合させることで、白血球の血液試料からの分離効率が向上する。水溶性ビタミンE類似物質として、トロロックスがあげられる。トロロックスはDMSOなどの有機溶媒に溶解させた後、保存剤に添加するとよく、DMSOの液量は血液試料に対して、10μl/ml血液試料以下であればよく、4μl/ml血液試料以下であれば好ましい。また、トロロックスの添加量は血液試料に対して、10から1000μg/ml血液試料添加すればよく、20から300μg/ml血液試料添加すると好ましく、100から250μg/ml血液試料添加するとさらに好ましい。
本発明の一実施態様に係る保存剤は血液試料に添加する物質のことをいう。本発明の保存剤を血液試料に添加する際は、本発明の保存剤を構成する全ての物質を一度に血液試料に添加する態様でもよく、本発明の保存剤を構成する一部の物質を血液試料に添加後、前記構成する残りの物質を血液試料に添加する態様としてもよい。後者の場合、添加する物質の順に制限はないが、あらかじめ抗凝固剤を血液試料に添加してから他の構成物質(少なくとも、ホルムアルデヒドドナー化合物および抗血小板剤)を血液試料に添加すると、血液試料の凝固を抑制できるため好ましい。前述した抗凝固剤を血液試料に添加する操作の一例として、抗凝固剤が入った採血管(EDTA採血管やクエン酸採血管など)に採血することで抗凝固剤を血液試料に添加する態様があげられる。
本発明の一実施態様に係る保存剤を添加して保存処理をした血液試料(以下単に、保存処理した血液試料ともいう)の保存温度は、当該試料が凍結すると凍結時および解凍時に目的細胞に損傷を与える一方、高温環境下では細胞を構成するタンパク質等の物質が変性されることにより、細胞を標識する際の標的とする物質以外の部位に非特異的に標識物質が結合する非特異吸着の発生頻度が増加するため、血液試料の凍らない低温以上室温未満の温度で保存することが好ましい。ここで血液試料の凍らない低温とは0℃近傍のことをいい、室温とは25℃から40℃までの温度をいう。なお本発明の保存剤を添加した血液試料は、0℃から37℃の温度環境下で保存すると好ましく、0℃から20℃の温度環境下で保存するとより好ましく、4℃近傍の温度環境下で保存するとさらにより好ましい。
保存処理した血液試料は、静置して保存してもよく、振動を与えて保存してもよい。振動とは、回転撹拌、振幅撹拌、輸送による上下往復動撹拌および不規則的な撹拌も含む。
保存処理した血液試料から目的細胞を分離回収および検出する場合、あらかじめ前記血液試料中に含まれる(または含まれ得る)赤血球を破砕もしくは除去すると、目的細胞の効率的な分離回収および明瞭な検出ができるためよい。赤血球を破砕する場合には、塩化アンモニウム、界面活性剤、低張溶液などを用いて破砕すればよいが、中でも塩化アンモニウムを用いた破砕は目的細胞に対する損傷が少ないためよい。また、赤血球を除去する場合には、赤血球と細胞とのサイズの違いを利用した濾過や、比重の違いを利用した分離などにより除去すればよい。
保存処理した血液試料(または前述した赤血球の破砕/除去処理をした血液試料)に含まれる目的細胞の検出は、例えば、スライドに塗布して顕微鏡や光学検出器などで観察したり、フローサイトメトリーを用いたりして検出すればよい。なお顕微鏡や光学検出器などで観察して目的細胞の検出を行なう場合、前記細胞を含む懸濁液を、前記細胞を保持可能な保持部を有した細胞保持手段に導入し、前記保持部に前記細胞を保持した後、顕微鏡や光学検出器などで観察するとよい。保持部の例として、前記細胞を収納可能な孔や、前記細胞を固定可能な材料(例えば、ポリ−L−リジン)で覆われた面があげられる。なお保持部の大きさを前記細胞を一つだけ保持可能な大きさとすると、特定細胞の採取および解析(形態学的分析、組織型分析、遺伝子分析など)が容易に行なえる点で好ましい。また細胞を保持部に保持させる際、誘電泳動力を用いると、保持部に細胞を効率的に保持できる点で好ましい。誘電泳動力を用いる場合、具体的には、交流電圧を印加することで誘電泳動を発生させ、保持部内へ細胞を導入すればよい。印加する交流電圧は、保持部内の細胞の充放電が周期的に繰り返される波形を有した交流電圧であると好ましく、周波数を100kHzから3MHzの間とし、電界強度を1×10から5×10V/mの間とすると特に好ましい(WO2011/149032号および特開2012−013549号公報参照)。
以下、本発明の一実施態様に係る保存剤を利用した、血液試料中に含まれる目的細胞の検出および採取方法の一例として、血液試料中に含まれる腫瘍細胞(CTC)を検出および採取する方法を用いて詳細に説明するが、本発明は本説明の内容に限定されるものではない。
(1)がんの疑いのある患者から血液試料を採取する。なお血液試料を採取する際、クエン酸やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤に代表される抗凝固剤を添加すると好ましい。
(2)(1)で採取した血液試料(または希釈した血液試料)に、CTCを安定化させるための保存剤であるホルムアルデヒドドナー化合物、抗血小板剤を添加する。なお、(1)で抗凝固剤を添加せずに血液試料を採取した場合は抗凝固剤も添加する。前記添加の際、本発明の保存剤を構成する全ての物質を一度に添加してもよく、各成分を含む溶液をそれぞれ添加してもよい。また、血液保存剤として、ポリエチレングリコールをさらに入れるとCTCの形体安定化に寄与するためよい。さらに(1)で抗凝固剤が添加される状態で血液試料を採取し、本工程でホルムアルデヒドドナー化合物および抗血小板剤を含む溶液を血液試料に添加する場合、血液試料中に含まれる抗凝固剤の濃度を維持するために、本工程で抗凝固剤を追加してもよい。血液試料への保存剤の添加量は、血液試料1mLあたり0.01mLから10mLの間であればよく、0.04mLから2mLの間であればより好ましい。アルデヒドドナー化合物、抗血小板剤および抗凝固剤を添加した血液試料は、低温から室温で少なくとも7日間は安定に保存が可能である。
(3)血液保存剤を添加した血液試料(保存処理した血液試料)に含まれる赤血球を、塩化アンモニウムを用いて破砕する。塩化アンモニウムでの赤血球の破砕は、赤血球と他の細胞とのイオン取り込み能の違いを利用した破砕方法であり、他の細胞への損傷を抑えながら赤血球を破砕できるため、好ましい赤血球破砕方法である。
(4)赤血球破砕処理後、遠心分離することで血液成分を除去し、血液試料中に含まれるCTCをペレット状にした後、適切な溶液を用いてCTCを懸濁させる。なおCTCを懸濁させる溶液に、親水性高分子を結合したタンパク質(例えば、ポリエチレングリコールを結合したBSA)を含ませてもよい。当該タンパク質を含ませるとCTCの回収効率が向上するため好ましい。親水性高分子を結合したタンパク質の濃度は、懸濁液でのタンパク質の終濃度として、0.01%(w/v)から25%(w/v)の間であればよく、0.02%(w/v)から5%(w/v)の間であれば好ましく、0.05%(w/v)から2%(w/v)の間であればより好ましい。
(5)(4)で調製したCTCを含む懸濁液を再度遠心分離し、CTCを含むペレットを回収する。なお必要に応じ、前記回収したペレットを親水性高分子を結合したタンパク質を含む溶液に再度懸濁させ、遠心分離する工程を追加してもよい。
(6)(5)で得られたCTCを含む細胞懸濁液を、前記細胞を保持可能な保持部を有した細胞保持手段に導入し、前記保持部に前記細胞を保持した後、顕微鏡や光学検出器などで観察することで血液試料中に含まれるCTCを検出する。CTCの検出は、例えば、明視野像によるCTCと夾雑細胞(例えば、白血球などの血液成分)との大きさや形状の違いに基づき検出してもよく、サイトケラチン(CK)やEpCAM(Epithelial Cell Adhesion Molecule)などCTCで発現するタンパク質に対する標識抗体および/または夾雑細胞で発現するタンパク質(夾雑細胞が白血球の場合はCD45など)に対する標識抗体で細胞を染色し当該染色結果に基づき検出してもよい。
(7)(6)で検出したCTCを採取手段で採取する。採取手段の一例として、ノズルによる吸引吐出により採取する手段があげられ、具体例として特開2016−142616号に開示の装置があげられる。
本発明は、抗血小板剤と抗凝固剤とを少なくとも含む、血液試料を作製する方法を特徴としている。本発明により、作製した血液試料を振動および/または血液試料の凍らない低温条件下で保存しても血液試料を安定に保存することができる。また本発明の血液試料は、室温環境下においても血液試料を安定に保存できる。したがって本発明の血液試料の保存方法は、特に振動や保存温度環境が変化する血液試料の輸送時において有用な方法である。また本発明の保存方法は、血液試料に含まれる目的細胞量が非常に少ない場合にも有用な方法である。さらに、本発明の方法では、低温において細胞を標識する際の非特異的な結合を抑制することができるため、細胞を精度よく検出する上で有用な方法である。
一例として本発明を、血液中に含まれる腫瘍細胞(CTC)の分離回収に適用することで、安定にまた高効率にCTCを分離回収できるため採血量を少なくすることができ、患者への負担を低減させることができる。また、がんの診断をCTCの存在により行なう場合、CTCの有無の判断結果に対する信頼性が向上するため、精度高くがんを診断することができる。
本発明の検出方法で利用可能な、細胞保持装置の一例を示す図である。 図1に示す装置の正面図である。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。
実施例1
(1)一方の末端がメトキシ基であり、もう一方の末端がN−ヒドロオキシスクシンイミドエステル基である、分子量5000のポリエチレングリコール(mPEG−NHS)と、ウシ血清アルブミン(BSA)(300mg、0.3mmol)とを、炭酸水素ナトリウム緩衝液(0.1M、15mL)に溶解させ、当該溶液を25℃近傍で3時間撹拌することでポリエチレングリコールを結合したBSA(PEG−BSA)を調製した。なお調製する際、mPEG−NHSとBSAとのモル比(mPEG−NHS/BSA)を2となるようにした。調製後、分画分子量10000の透析膜を用いて、純水への溶液置換を3日間行なった。
(2)イミダゾリジニル尿素2.3g、分子量6000のポリエチレングリコール(PEG)2.3g、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)30mgを、溶液として30mLになるよう、超純水で溶解した。
(3)ヒト肺がん細胞(PC9細胞)を、5%CO環境下、10%FBS(ウシ胎児血清)を含むRPMI−1640培地を用いて37℃で24から96時間培養後、0.25%トリプシン/1mM EDTAを用いて培地から細胞を剥離し、蛍光染色色素(CFSE、同仁化学研究所社製)で標識した。蛍光標識されたPC9細胞を目的とする細胞とした。
(4)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に(2)で調製した溶液0.75mL、(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個、および0.5mg/mLチロフィバン水溶液240μLを添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(5)希釈血液試料を25℃または15℃で5日間放置した。
(6)放置後の希釈血液試料のうち、血液3mLに相当する懸濁液に対して、0.9%(w/v)塩化アンモニウムと0.1%(w/v)炭酸水素カリウムとを含む溶血液で90mLまでメスアップ後、900×gで10分間、25℃で遠心分離した。当該操作により赤血球が破壊され、分離回収したPC9細胞の観察が良好になる。
(7)遠心後の上清を除去した後、PC9細胞を含むペレットを、(1)に記載の方法で調製したPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))を含むPBS(リン酸緩衝生理食塩水)30mLで再懸濁した。
(8)再懸濁液を600×gで5分間、25℃で遠心分離後、上清を除去し、抗CD45抗体修飾磁性粒子(Dynabeads CD45、Thermo Fisher Science社製)を添加後、磁石を用いてCD45を発現している白血球を除去した。
(9)(8)で白血球を除去したPC9細胞を含む懸濁液を、(1)に記載の方法で調製したPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および280mMスクロースを含む溶液30mLで再懸濁した。
(10)再懸濁液を600×gで5分間、25℃で遠心分離後、上清を除去し、再度、PC9細胞を含むペレットを、PEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および300mMスクロースを含む溶液30mLで再懸濁した。当該操作は、血小板を含む血液成分を除去し、目的とするPC9細胞を濃縮するための操作である。
(11)再懸濁液を600×gで5分間、25℃で遠心分離後、上清を除去したPC9細胞を含む懸濁液を図1および2に示す細胞保持装置100に導入し、信号発生器50から電極基板31・32に交流電圧(1MHz、20Vp−p)を3分間印加することで前記装置が有する保持部60にPC9細胞を保持させた。本実施例で用いた細胞保持装置100は、直径30μmの貫通孔12aを複数有した絶縁体12と直径30μmの貫通孔11aを複数有した遮光性のクロム膜(遮光部材11)と電極基板31とを上から絶縁体12−遮光部材11−電極基板31の順に密着して設け、さらに絶縁体12の上面に試料の導入口21、排出口22および貫通部23を有する厚さ1mmのスペーサー20を、スペーサー20の上面に電極基板32を、それぞれ密着して設けてなる装置である。なお貫通孔11a/12aおよび電極基板31により、直径30μm、深さ30μmからなる細胞70を保持可能な保持部60が形成されている。
(12)保持部60に保持されたPC9細胞数を計測し、(4)で添加したPC9細胞数で除することで回収率を算出した。
比較例1
(1)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(2)希釈血液試料を25℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
比較例2
(1)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に実施例1(2)で調製した溶液0.75mL、および実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(2)希釈血液試料を25℃または15℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例1ならびに比較例1および2での回収率の結果をまとめて表1に示す。目的細胞の分離回収工程において、ホルムアルデヒドドナー化合物(イミダゾリジニル尿素)、抗血小板剤(チロフィバン)および抗凝固剤(EDTA)を添加し5日間保存した血液試料(実施例1)を用いたときのPC9細胞の回収率は、保存温度25℃で89.1%、保存温度15℃で85.4%であり、保存温度による影響を受けず高い回収率を示した。一方、抗凝固剤を添加しホルムアルデヒドドナー化合物および抗血小板剤は添加せずに25℃で保存した血液試料(比較例1)を用いたときのPC9細胞の回収率は、2日間放置しただけで33.0%と実施例1と比較し大幅に低下した。またホルムアルデヒドドナー化合物および抗凝固剤を添加し抗血小板剤は添加せずに2日間保存した血液試料(比較例2)を用いたときのPC9細胞の回収率は、保存温度25℃では76.7%と比較例1よりは向上したが、保存温度15℃では1.5%と殆ど回収できなかった。なお比較例2では、15℃で2日間保存後の血液試料においてゲル状物質が発生しており、塩化アンモニウムでの赤血球破砕処理や溶液置換操作において、当該ゲル状物質内に細胞が入り込み、PC9細胞の回収が妨げられたと考えられる。一方、ホルムアルデヒドドナー化合物、抗血小板剤および抗凝固剤を添加し保存した血液試料(実施例1)では、ゲル状物質の発生が大幅に抑えられており、結果、PC9細胞の回収率が向上していると考えられる。
実施例2
(1)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に4mL採血後、前記採血管に実施例1(2)で調製した溶液0.6mL、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個、および0.5mg/mLチロフィバン水溶液192μLを添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(2)希釈血液試料を神奈川県から山口県までの約1000kmを陸路で往復輸送した。当該輸送により希釈血液試料には振動が与えられており、希釈血液試料の温度は、最低7.6℃、最高26.8℃、平均14.5℃であった。
(3)希釈血液試料を(2)の輸送を含め5日間保存後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例3
インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に4mL採血後、前記採血管に実施例1(2)で調製した溶液0.6mL、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個、0.5mg/mLチロフィバン水溶液192μL、および3.6mg/mLヘパリンPBS溶液74μLを添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした他は、実施例2と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
比較例3
インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に10mL採血後、前記採血管に実施例1(2)で調製した溶液1.5mL、および実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした他は、実施例2と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例2および3ならびに比較例3での回収率の結果をまとめて表2に示す。目的細胞の分離回収工程において、ホルムアルデヒドドナー化合物(イミダゾリジニル尿素)、抗血小板剤(チロフィバン)および抗凝固剤を添加し保存した血液試料(実施例2および3)を用いたときのPC9細胞の回収率は、70.5%(実施例2)および37.1%(実施例3)と、ホルムアルデヒドドナー化合物および抗凝固剤を添加し抗血小板剤は添加せずに保存した血液試料(比較例3)を用いたとき(3.6%)と比較し、向上した。したがって、血液試料にホルムアルデヒドドナー化合物、抗血小板剤および抗凝固剤を添加することで、輸送時の振動および温度変化(7.6から26.8℃まで)による、血液試料中に含まれる目的細胞回収への影響が抑えられることがわかる。なお抗凝固剤としてEDTAおよびヘパリンを添加した血液試料(実施例3)では、抗凝固剤としてEDTAのみを添加した血液試料(実施例2)と比較し、PC9細胞の回収率が低下した(実施例2:70.5%、実施例3:37.1%)ことから、抗凝固剤を添加する際、EDTAなど血液試料中のカルシウムイオンをキレートできる物質(キレート剤)のみを添加したほうが好ましいことがわかる。なお比較例3の条件で保存した血液試料は、比較例2において15℃で保存した血液試料と比較してゲル状の物質が多く生成していた。一方、ホルムアルデヒドドナー化合物、抗血小板剤および抗凝固剤を添加し保存した血液試料(実施例2および3)では、ゲル状物質の発生が抑えられており、結果、PC9細胞の回収率が向上していると考えられる。
実施例4
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、分子量6000のPEG2.3g、EDTA30mg、および以下の(a)から(e)に示すいずれかの重量のチロフィバンを、溶液として30mLになるよう、超純水で溶解した。
(a)9.6mg
(b)4.8mg
(c)2.4mg
(d)0.12mg
(e)0.048mg
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に(1)で調製した(a)から(e)いずれかの溶液0.75mL、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を15℃で5日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
比較例4
実施例4(1)においてチロフィバンを添加しなかった他は、実施例4と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例4ならびに比較例4での回収率の結果をまとめて表3に示す。チロフィバンの添加量を0.048mgから9.6mgへと増やすことでがん細胞回収率が7.4%から85.2%へと向上した。保存処理後の血液試料において、チロフィバンの添加量0.048mgから0.12mgではゲル状物質の発生が確認でき、2.4mgでは小さいもののゲル状物質の発生が確認でき、4.8mg以上のチロフィバン添加量においてはゲル状物質の形成は確認されなかったことから、ゲル状物質の形成ががん細胞回収率低下の要因になっていると考えられる。チロフィバン添加量0.048mgにおいてゲル状物質の形成が認められたものの、がん細胞回収率はチロフィバン未添加(0%)と比較して高い値を示していたことから、ゲル状物質が形成されてもチロフィバンを添加することでがん細胞回収率が向上することがわかる。さらに、ゲル状物質の形成が確認されなかったチロフィバン添加量4.8mg(70.8%)と9.6mgのがん細胞回収率を比較すると、添加量の多い方が前記回収率が向上しており、ゲル状物質の形成抑制以外にもチロフィバンが前記回収率向上に寄与していることがわかる。
実施例5
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、分子量2000のPEG0.23g、EDTA30mg、および以下の(a)から(c)に示すいずれかの抗血小板剤を、溶液として30mLになるよう、PBSで溶解した。
(a)チロフィバン9.6mg
(b)エプチフィバチド4mg
(c)エプチフィバチド0.4mg
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に(1)で調製した(a)から(c)いずれかの溶液0.75mL、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
比較例5
実施例5(1)において抗血小板剤を添加しなかった他は、実施例5と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例5ならびに比較例5での回収率の結果をまとめて表4に示す。抗血小板剤であるチロフィバンおよびエプチフィバチドを添加することで、未添加時(62.9%)と比較してがん細胞回収率が約85%と向上した。このことから、チロフィバンとエプチフィバチドはがん細胞回収率向上にどちらも効果があることがわかる。
実施例6
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、分子量6000のPEG0.23g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および以下の(a)から(c)に示すいずれかの量のホルマリンを、溶液として30mLになるよう、超純水で溶解した。
(a)56μl
(b)5.6μl
(c)未添加
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に(1)で調製した(a)から(c)いずれかの溶液0.75mL、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例6での回収率の結果を表5に示す。ホルマリンを入れなかった(c)の回収率(73.6%)と比較して、ホルマリンを添加した(a)および(b)の回収率はそれぞれ17.1%、69.1%と低下した。このことから、ホルムアルデヒドを保存剤に添加するとがん細胞回収率が低下することがわかる。
実施例7
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および以下の(a)から(f)に示すいずれかの量の分子量6000のPEGを、溶液として30mLになるよう、超純水で溶解した。
(a)2.3g
(b)1.15g
(c)0.575g
(d)0.23g
(e)0.023g
(f)未添加
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に(1)で調製した(a)から(f)いずれかの溶液0.75mL、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例7での回収率の結果を表6に示す。PEGを高濃度で添加した(a)および(b)では、ゲル状物質が形成したことでがん細胞回収率が10%以下となった。一方、(b)より少ないPEG添加量である(c)および(d)では、ゲル状物質は形成せずがん細胞回収率はそれぞれ66.7%および78.6%を示した。さらに、(d)より少ないPEG添加量である(e)では、ゲル状物質は形成しないもののがん細胞回収率は19.9%となり(c)および(d)と比較して低下した。PEGを添加しなかった(f)では、ゲル状物質は形成しないもののがん細胞回収率は8.5%となり、(e)と比較して低い値となった。この結果から、PEGの添加がゲル状物質の形成に関与していることがわかり、高濃度の添加はがん細胞回収率を低下させるが、一方でPEGの添加量が少ないもしくは添加しないとゲルの形成とは異なった要因によりがん細胞回収率が低下することもわかる。PEGは細胞の安定化剤の役割をしており、一定量入れることで細胞の保存安定性が上がりがん細胞回収率が向上すると考えられる。
実施例8
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および分子量6000のPEG2.3gを、溶液として30mLになるよう、超純水で溶解した。
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に(1)で調製した溶液0.75mL、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4、10、25、37℃でそれぞれ5日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例9
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および分子量6000のPEG0.23gを、溶液として30mLになるよう、超純水で溶解した。
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に(1)で調製した溶液0.75mL、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4、25℃でそれぞれ2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例8および9での回収率の結果をまとめて表7に示す。PEG添加量2.3gの場合、保存温度10から37℃においてはゲル状物質の形成はなく、保存温度10℃ではがん細胞回収率62.8%と保存温度25℃および37℃での回収率89%と比較してわずかに低いものの回収できることが確認された。保存温度4℃ではゲルの形成が確認され、がん細胞回収率も2.3%と保存温度10℃以上での回収率と比較して低い値となった。一方、PEG添加量0.23gの場合、保存温度4℃から25℃では回収率は約80%となり、温度に依存せず安定して回収できることがわかった。
実施例10
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および以下の(a)から(d)に示すいずれかの分子量のPEG0.23gを、溶液として30mLになるよう、超純水で溶解した。
(a)分子量2000
(b)分子量4000
(c)分子量6000
(d)分子量20000
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に(1)で調製した(a)から(d)いずれかの溶液0.75mL、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例10での回収率の結果を表8に示す。PEGの分子量を20000、6000、4000、2000と下げていくことでがん細胞回収率がそれぞれ66.0%、73.6%、74.5%、82.7%となり向上していく結果となった。どの分子量でもゲル状物質の形成は確認されず、PEGによる細胞の安定性が向上した結果がん細胞回収率が向上したと考えられる。
実施例11
(1)EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、分子量2000のPEG0.23g、および以下の(a)から(c)に示すいずれかの量のイミダゾリジニル尿素を、溶液として30mLになるよう、超純水で溶解した。
(a)1.15g
(b)2.3g
(c)4.6g
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に(1)で調製した(a)から(c)いずれかの溶液0.75mL、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例11での回収率の結果を表9に示す。イミダゾリジニル尿素添加量が(a)および(b)の時、濃度の高い(c)のがん細胞回収率18.2%と比較して、がん細胞回収率が約60%と高い値を示した。この結果からイミダゾリジニル尿素添加量が多いとがん細胞回収率が低下することがわかる。
実施例12
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および分子量2000のPEG0.23gを、溶液として30mLになるよう、以下の(a)から(d)に示すいずれかの溶媒で溶解した。
(a)超純水
(b)PBS
(c)0.9%塩化ナトリウム(NaCl)を溶解させたPBS
(d)1.8%NaClを溶解させたPBS
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に(1)で調製した(a)から(d)いずれかの溶液0.75mL、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例12での回収率の結果を表10に示す。溶媒を超純水からPBSにすることで、がん細胞回収率が83.9%から94.0%に向上した。一方、PBSにさらにNaClを0.9%および1.8%溶かした溶液を保存剤の溶媒として使用すると、がん細胞回収率がそれぞれ52.8%および9.2%と低下した。この結果から、血液の浸透圧(約280mOsm/kg・HO)に近い(a)よりも、高張である(b)の方ががん細胞回収率が向上し、さらに高い浸透圧である(c)、(d)では細胞質内の浸透圧と大きく異なるため細胞が一部損傷を受けることで回収率が低下したと考えられる。
実施例13
(1)EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および分子量2000のPEG0.23gを、溶液として30mLになるよう、PBSで溶解した。
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に(1)で調製した溶液0.75mL、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
比較例6
実施例13(1)においてチロフィバンを添加しなかった他は、実施例13と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例13ならびに比較例6での回収率の結果をまとめて表11に示す。ホルムアルデヒドドナーを添加しなかった場合、ホルムアルデヒドドナーを添加した実施例12(b)の回収率(94.0%)と比較して、66.4%となり低下した。このことからホルムアルデヒドドナーを添加することで、細胞の保存安定性が向上することがわかる。一方、ホルムアルデヒドドナーを添加せず、さらに抗血小板剤を添加しなかった場合、抗血小板剤を添加した場合のがん細胞回収率(66.4%)と比較して、3.2%と大きく減少し、さらにゲル状物質の形成も確認された。この結果から、ホルムアルデヒドドナーを添加しなかった場合においても抗血小板剤を添加することで、ゲル状物質の形成が抑制され、がん細胞回収率が向上することがわかる。
参考例1
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mgもしくは未添加、および分子量2000のPEG0.23gを、溶液として30mLになるよう、PBSで溶解した。
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、PBS5mLで希釈した前記血液を300×gで10分間、25℃で遠心分離した。上清である血漿1mLをエッペンチューブに回収し、前記エッペンチューブに(1)で調製した溶液0.15mLを添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、ゲル状物質の形成有無を観察した。
チロフィバンを添加した溶液ではゲル状物質の形成は確認されなかったが、一方でチロフィバンを添加しなかった溶液からはゲル状物質の形成が確認された。血漿には細胞および血小板の大部分が含まれていないにも関わらずゲル状物質の形成が確認されたことから、当該ゲル状物質は細胞および血小板の凝集物でないことがわかる。
実施例14
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および分子量2000のPEG0.23gを、溶液として30mLになるよう、PBSで溶解した。
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に、以下の(a)もしくは(b)に示すいずれかの溶液と、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個とを添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(a)(1)で調製した溶液0.75mL
(b)(1)で調製した溶液0.75mLおよびトロロックス0.575mgをDMSO11.5μLで溶解した溶液の混合溶液
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(11)と同様な方法で、懸濁液に含まれる細胞を保持部60に保持させた
(4)保持部60に保持されたPC9細胞数および白血球を計測し、計数したPC9細胞数を(2)で添加したPC9細胞数で除することで回収率を算出し、また計数した白血球数を(2)の血液に含まれる白血球数で除することで白血球残存率を算出した。
実施例14での回収率の結果を表12に示す。トロロックスを添加した場合、トロロックス未添加と比較して、がん細胞回収率はどちらも88%であったのに対して、白血球残存率が7.4%から3.8%へと減少した。白血球残存率の低下は血液処理後のがん細胞の濃縮度が向上していることを意味する。トロロックスは白血球の細胞死を抑制する効果もあるため、白血球に結合して白血球を除去する磁性粒子での処理工程において、白血球の保存安定性が向上したことで、白血球細胞膜表面のタンパク質が保持され、高効率に磁性粒子が白血球と結合できたことで白血球を除去することができたと考えらえる。
実施例15
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および分子量2000のPEG0.23gを、溶液として30mLになるよう、超純水で溶解した。
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に、以下の(a)から(c)に示すいずれかの溶液と、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個とを添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(a)(1)で調製した溶液0.75mL
(b)(1)で調製した溶液0.75mLおよびDMSO11.5μLの混合溶液
(c)(1)で調製した溶液0.75mLおよびDMSO46μLの混合溶液
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例15での回収率の結果を表13に示す。血液にDMSOを添加した場合、未添加でのがん細胞回収率(72.8%)と比較して、(c)では6.6%と減少したのに対して(b)では68.5%と未添加時とほぼ差はなかった。この結果から、少量のDMSOを血液に添加してもがん細胞回収率には影響しないことがわかる。
実施例16
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および分子量2000のPEG0.23gを、溶液として30mLになるよう、超純水で溶解した。
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に、以下の(a)から(c)に示すいずれかの溶液と、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個とを添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(a)(1)で調製した溶液0.75mLおよびトロロックス0.144mgをDMSO11.5μLで溶解した溶液の混合溶液
(b)(1)で調製した溶液0.75mLおよびトロロックス0.575mgをDMSO11.5μLで溶解した溶液の混合溶液
(c)(1)で調製した溶液0.75mLおよびトロロックス1.15mgをDMSO11.5μLで溶解した溶液の混合溶液
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例15(a)および16での回収率の結果を表14に示す。トロロックスを0.144mgから1.15mgの範囲で添加したが、がん細胞回収率は未添加時(72.8%)と比較して、69.1%から76.7%となり変化が見られなかった。この結果から、トロロックスの添加はがん細胞回収率に影響を与えないことがわかる。
実施例17
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および分子量2000のPEG0.23gを、溶液として30mLになるよう、超純水で溶解した。
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に、(1)で調製した溶液0.75mLおよびアスコルビン酸0.1mgを超純水10μLで溶解した溶液の混合溶液と、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個とを添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
抗酸化剤であるアスコルビン酸を添加すると、がん細胞回収率は12.9%となり、実施例15(a)の抗酸化剤を添加しなかった結果(72.8%)と比較して、大幅に低下した。この結果から、抗酸化剤の中でもアスコルビン酸はがん細胞回収率低下の要因になるため、血液保存剤として適さないことがわかる。
実施例18
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および分子量2000のPEG0.23gを、溶液として30mLになるよう、PBSで溶解した。
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に、以下の(a)から(c)に示すいずれかの溶液と、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個とを添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(a)(1)で調製した溶液0.75mL(血液保存剤)
(b)(1)で調製した溶液0.75mLおよびトロロックス0.575mgをDMSO11.5μLで溶解した溶液を混合後10分以内の溶液
(c)(1)で調製した溶液0.75mLおよびトロロックス0.575mgをDMSO11.5μLで溶解した溶液を混合後4週間の溶液
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(11)と同様な方法で、懸濁液に含まれる細胞を保持部60に保持させた
(4)保持部60に保持されたPC9細胞数および白血球を計測し、計数したPC9細胞数を(2)で添加したPC9細胞数で除することで回収率を算出し、また計数した白血球数を(2)の血液に含まれる白血球数で除することで白血球残存率を算出した。
実施例18での回収率の結果を表15に示す。トロロックスを血液保存剤に添加した後4週間経った溶液を用いた時のがん細胞回収率および白血球残存率は、当該10分以内の溶液を用いた時と比較して、回収率90%および残存率2.6から2.9%となりほぼ変化はなかった。一方、トロロックス未添加の条件と比較すると、がん細胞回収率に変化はないが、白血球残存率は未添加条件の5.4%からどちらも低下しており、水溶液である血液保存剤にトロロックスを添加してから長時間経っても、血液前処理により白血球除去効率を向上させる効果は維持されていることがわかる。
実施例19
(1)ヒト肺がん細胞(PC9細胞)を、5%CO環境下、10%FBS(ウシ胎児血清)を含むRPMI−1640培地を用いて37℃で24から96時間培養後、0.25%トリプシン/1mM EDTAを用いて培地から細胞を剥離した。剥離したPC9細胞を目的とする細胞とした。
(2)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および分子量2000のPEG0.23gを、溶液として30mLになるよう、PBSで溶解した。
(3)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に、(2)で調製した溶液0.75mLおよびトロロックス0.575mgをDMSO11.5μLで溶解した溶液の混合溶液と、(1)で剥離したPC9細胞約100個とを添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(4)希釈血液試料を4℃で7日間放置後、実施例1(6)から(11)と同様な方法で、懸濁液に含まれる細胞を保持部60に保持させた
(5)実施例1(11)の条件で交流電圧を印加しながら、0.01(w/v)%のポリ−L−リジンを含む300mMマンニトール水溶液を導入し、3分間静置後、前記交流電圧の印加を停止し、前記水溶液を吸引除去した。
(6)50%(v/v)エタノールと1%(w/v)ホルムアルデヒドを含む水溶液(以下、「細胞膜透過試薬」と称する)を導入し、10分間静置することで、細胞膜を透過させ、保持部にCTCを含めた細胞を標本化した。
(7)細胞膜透過試薬を吸引除去し、PBSを導入することで、残留した細胞膜透過試薬を洗浄した。
(8)細胞膜内外のタンパク質と特異的に結合可能な蛍光標識抗体と、細胞核を標識する蛍光試薬(DAPI:4’,6−diamidino−2−phenylindole)を含む水溶液(以下、標識試薬)を導入し、30分間静置した。なお、前記標識された抗体として、白血球表面に発現しているCD45に対する抗体と、PC9細胞の細胞質内で発現しているサイトケラチン(CK)に対する抗体を用いている。
(9)標識試薬を吸引除去し、PBSを導入することで、残留した標識試薬を除去した。
(10)(9)で標識したPC9細胞を含む細胞保持手段を蛍光顕微鏡のステージ上に載置した後、複数の保持孔に捕捉した全ての細胞を観察するために保持部全体の撮像を行った。これにはコンピューター制御式電動ステージ、CMOSカメラ(ORCA−Flash4.0;浜松ホトニクス社製)を装備した蛍光顕微鏡(IX83;オリンパス社製)を用いた。画像取得及び解析ソフトウェアにはLabVIEW(National Instruments社製)を用いた。
(11)(10)で撮像した細胞の中から、細胞核を有していることを示すDAPIで染色されており(DAPI陽性)、白血球で発現しているCD45に対する抗体では染色されず(CD45陰性)、CKに対する抗体で染色されている(CK陽性)細胞を、目的とする細胞(PC9細胞)として検出した。
(12)検出されたPC9細胞数を計測し、(3)で添加したPC9細胞数で除することで検出率を算出した。
PC9細胞の検出率は87.9%となり、抗体による標識を行わなかった実施例18(b)のPC9細胞の回収率90.3%と比較しても、変化は見られなかった。この結果は、7日間保存してもPC9細胞で発現している抗原が安定に保持・保存されていることを示し、抗体等による標識を行う場合でも精度よく目的とする細胞を標識できることがわかる。
実施例20
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン9.6mg、および分子量2000のPEG0.23gを、溶液として30mLになるよう、PBSで溶解した。
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に、(1)で調製した溶液0.75mLおよびトロロックス0.575mgをDMSO11.5μLで溶解した溶液の混合溶液と、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個とを添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を氷冷(0℃)、4、25、37℃でそれぞれ2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例20での回収率の結果を表16に示す。保存温度約0から37℃においてゲル状物質の形成はなく、がん細胞回収率は72.6%から80.5%となり、保存温度に依存せず安定して回収できることがわかる。
実施例21
(1)実施例19(3)においてPC9細胞を添加せず、実施例19(4)の保存条件を氷冷(0℃)、4、15、20、25、37℃でそれぞれ2日間放置した他は、実施例19(2)から(10)と同様な方法で標識した細胞を撮像した。
(2)(1)で撮像した細胞の中から、細胞核を有していることを示すDAPIで染色されており(DAPI陽性)、白血球で発現しているCD45に対する抗体で染色された(CD45陽性)細胞を白血球として検出した。
(3)検出された白血球に対して、CK抗体の非特異吸着による当該白血球への標識の程度を、CK抗体に修飾された蛍光色素により得られた輝度を256階調において検出し、約300個の白血球を対象として平均CK抗体輝度を求めた。
実施例21での回収率の結果を表17に示す。保存温度約0℃から4℃では白血球へのCK抗体結合による輝度は約10であるのに対して、10℃から20℃においては前記輝度が約13、25℃から37℃においては前記輝度が約15となり、保存温度が上がるに従い白血球へのCK抗体の結合が増加する傾向が得られた。白血球はCK抗原を発現していないため、CK抗体の白血球への結合量の増加は抗体の非特異吸着量の増加である。一般的な実験室の温度(約25℃)より低い保存温度(<25℃)であれば、細胞への非特異吸着を低下させることができるため、抗体の特異的な結合と非特的な結合との差が広がり特定の細胞の検出精度を向上させることが可能となる。
実施例22
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン19.2mg、および分子量2000のPEG0.23gを、溶液として30mLになるよう、PBSで溶解した。
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に、(1)で調製した溶液0.75mLおよびトロロックス0.575mgをDMSO11.5μLで溶解した溶液の混合溶液と、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個とを添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
チロフィバン19.2mgを添加した実施例22のがん細胞回収率は90.7%となり、チロフィバンを9.6mg添加した実施例18(b)のがん細胞回収率(90.3%)と比較して変わらない結果となり、さらにどちらもゲル状物質の形成は確認されなかった。この結果から、高い濃度のチロフィバンを添加してもがん細胞回収率およびゲル状物質の形成には影響を与えないことがわかる。
実施例23
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン19.2mg、および以下の(a)から(c)に示すいずれかの分子量のPEG0.23gもしくは(d)エチレングリコール0.23gを、溶液として30mLになるよう、PBSで溶解した。
(a)分子量1540
(b)分子量600
(c)分子量200
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に(1)で調製した(a)から(d)いずれかの溶液0.75mLおよびトロロックス0.575mgをDMSO11.5μLで溶解した溶液の混合溶液と、実施例1(3)で蛍光標識したPC9細胞約100個とを添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置後、実施例1(6)から(12)と同様な方法で、PC9細胞の分離回収および回収率の算出を行なった。
実施例23での回収率の結果を表18に示す。PEGの分子量を1540、600、200およびエチレングリコールと添加物を変えることで、がん細胞回収率はそれぞれ92.0%、90.3%、53.8%、46.0%となり、実施例18(b)のPEGの分子量2000を添加した条件でのがん細胞回収率(90.3%)と比較してPEGの分子量1540および600では変わらない結果となった。一方で、PEGの分子量200およびエチレングリコールではがん細胞回収率の低下が確認された。PEGは細胞の安定性向上のために添加しているが、PEGの分子量600未満およびエチレングリコールでは当該安定性維持の効果が低下するため、がん細胞回収率が低下したと考えられる。
実施例24
(1)イミダゾリジニル尿素2.3g、EDTA30mg、チロフィバン19.2mg、分子量2000のPEG0.23g、および以下のRGD配列を含むペプチド13.3mgを、溶液として30mLになるよう、PBSで溶解した。
(a)GRGDNP配列のペプチド
(b)環状RGD配列のペプチドであるCilengitide
(c)未添加
(2)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に5mL採血後、前記採血管に(1)で調製した溶液0.75mLおよびトロロックス0.575mgをDMSO11.5μLで溶解した溶液の混合溶液を添加し、得られた溶液を希釈血液試料とした。
(3)希釈血液試料を4℃で2日間放置し、血液試料の流動性を確認した後、実施例1(6)と同様な方法で、溶血を行いゲルの形成の有無を確認した。
実施例24を行った結果、RGDペプチド未添加の(c)と比較して、RGDペプチドを添加した(a)および(b)では、血液試料の流動性が低下し、粘性の増加が確認された。一方、(a)から(c)のどの条件でも溶血後のゲルの形成は確認されなかった。この結果から、RGDペプチドを添加することで当該ペプチドと結合可能なインテグリンの働きが阻害され、血液試料の物性が変化したことがわかる。

100:細胞保持装置
11:遮光部材
12:絶縁体
11a・12a:貫通孔
20:スペーサー
21:導入口
22:排出口
23:貫通部
31・32:電極基板
40:導線
50:信号発生器
60:保持部
70:細胞

Claims (16)

  1. 目的細胞、抗血小板剤及び抗凝固剤を含む、血液試料の作製方法。
  2. ホルムアルデヒドドナー化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 抗血小板剤と抗凝固剤とを血液試料に添加した後、低温において保存する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 親水性高分子化合物を血液試料に添加する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 水溶性ビタミンE類似物質を血液試料に添加する工程をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 抗凝固剤がキレート剤である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 抗血小板剤が血小板GPIIb/IIIa受容体に対する阻害剤である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. ホルムアルデヒドドナー化合物が、イミダゾリジニル尿素、ベンジルヘミホルマール(フェニルメトキシメタノール)、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、ブロノポール(2−ブロモ−2−ニトロプロペイン−1,3−ジオール)、ジアゾリジニル尿素、DMDMヒダントイン(1,3−ジメチロール−5,5−ジメチルヒダントイン)、メセナミン(ヘキサメチレンテトラミン)、クオタニウム−15(メセナミン 3−クロロアリロクロリド)、ヒドロキシメチルグリシンナトリウム、アミンやアミドのメチロール、ヒドロキシメチル誘導体、メチロール、及びメテンアミンの中から選ばれる一以上の化合物である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 親水性高分子化合物がポリエチレングリコールである、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 低温が、0℃以上25℃未満である、請求項3に記載の方法。
  11. 以下の(1)〜(3)に示す工程を含む、血液試料中に含まれる目的細胞の検出方法。
    (1)請求項1〜10のいずれかに記載の方法で血液試料を作製する工程、
    (2)得られた血液試料中に含まれる赤血球を破砕または除去する工程、
    (3)(2)の工程を行なった後の血液試料から目的細胞を検出する工程
  12. 請求項11に記載の方法で目的細胞を検出した後、当該検出した細胞を採取する、血液試料中に含まれる目的細胞の採取方法。
  13. 目的細胞、抗血小板剤、および抗凝固剤を含む、血液試料。
  14. ホルムアルデヒドドナー化合物をさらに含む、請求項13に記載の血液試料。
  15. 抗血小板剤、抗凝固剤を含む、低温保存用の血液試料保存剤。
  16. ホルムアルデヒドドナー化合物をさらに含む、請求項15に記載の血液試料保存剤。
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