JP7279542B2 - 試料中に含まれる目的細胞の定量方法 - Google Patents

試料中に含まれる目的細胞の定量方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7279542B2
JP7279542B2 JP2019120731A JP2019120731A JP7279542B2 JP 7279542 B2 JP7279542 B2 JP 7279542B2 JP 2019120731 A JP2019120731 A JP 2019120731A JP 2019120731 A JP2019120731 A JP 2019120731A JP 7279542 B2 JP7279542 B2 JP 7279542B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
sample
contained
blood
target cells
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019120731A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021006774A (ja
Inventor
泰之 秋山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tosoh Corp
Original Assignee
Tosoh Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tosoh Corp filed Critical Tosoh Corp
Priority to JP2019120731A priority Critical patent/JP7279542B2/ja
Publication of JP2021006774A publication Critical patent/JP2021006774A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7279542B2 publication Critical patent/JP7279542B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Description

本発明は、血液試料中に含まれる目的細胞の定量方法に関する。特に本発明は、検出した目的細胞の数を、当該検出前に実施する前処理工程で喪失した目的細胞を考慮して補正し、定量する方法であり、かつ前記補正にあたり、新たに補正のための粒子を添加することなく、より正確に目的細胞の数を定量できる方法に関する。
近年、血液などの体液や、臓器などの組織を溶液に懸濁もしくは分散して得られる組織標本試料などから細胞を選択的に分離回収し、当該分離回収した細胞を基礎研究や臨床診断、治療へ応用する研究が進められている。例えば、がん患者より採取した血液から腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell、以下CTC)を採取し、当該細胞について形態学的分析、組織型分析や遺伝子分析を行ない、これら分析により得られた知見に基づき治療方針を判断する研究が進められている。
がん患者より得られる血液試料中に含まれるCTC数は、赤血球や白血球などの血球細胞と比較して非常に少ない。そのためCTC数を定量するには、前記血球細胞を除去する前処理が必須である。しかしながら当該前処理により、目的細胞であるCTCの一部は喪失してしまう。したがって、血液試料中に含まれるCTC数を定量するには、検出したCTC数を、前記喪失したCTCを考慮して補正する必要がある。
特許文献1には、試料中に含まれる目的細胞の数を補正する方法として、血液試料に既知の数の樹脂粒子を添加し、密度勾配遠心法による前処理後に得られる、赤血球以外の細胞が多く含まれる層に含まれる前記樹脂粒子の数および前記目的細胞の数を計数し、当該計数した樹脂粒子の数を基に目的細胞の数を校正する方法が開示されている。しかしながら特許文献1の方法は、目的細胞数の補正のために樹脂粒子を添加する必要があり、かつ前処理後の試料に含まれる粒子数は前記樹脂粒子の分、増えてしまう。したがって、試料中に含まれるすべての粒子に対する目的細胞の割合が低下するため、試料中に含まれる目的細胞の検出精度が低下するおそれがあった。
WO2013/105612号
夾雑物除去や溶液置換などの前処理を伴う、血液試料中に含まれる目的細胞の定量方法において、前記目的細胞の検出数を補正するための粒子を新たに添加することなく、前記前処理による目的細胞の喪失を考慮した、前記目的細胞の検出数の補正を行ない、定量する方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち本発明の第一の態様は、
(1)血液試料から夾雑物を除去する工程と、
(2)夾雑物除去後の試料を溶液置換する工程と、
(3)溶液置換後の試料中に含まれる目的細胞を検出する工程と、
を含む、血液試料中に含まれる目的細胞を定量する方法において、
前記(3)の工程で検出した目的細胞数を、前記(1)の工程後の試料中に含まれる白血球数(W)を前記(2)の工程後の試料中に含まれる白血球数(W)で除して得られる補正係数(W/W)で乗じて、前記検出した目的細胞数を補正することで、血液試料中に含まれる目的細胞を定量する、前記方法である。
また本発明の第二の態様は、夾雑物が赤血球および/または白血球である、前記第一の態様に記載の方法である。
また本発明の第三の態様は、目的細胞が血液試料中に含まれる希少細胞である、前記第一または第二の態様に記載の方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における血液試料は、後述する目的細胞ならびに赤血球や白血球などの血液成分を少なくとも含む試料であればよく、具体的には、血液(全血)、希釈血液、血清、血漿、髄液、臍帯血、成分採血液などの試料や、尿、唾液、精液、糞便、痰、羊水、腹水などの血液由来成分を含み得る試料や、肝臓、肺、脾臓、腎臓、皮膚、腫瘍、リンパ節などの組織の一片を懸濁させた組織懸濁液や、前述した試料または組織懸濁液より分離して得られる、試料または組織由来の細胞を含む画分、などがあげられる。このうち試料または組織由来の細胞を含む画分の一例として、試料や組織懸濁液を密度勾配形成用媒体の上に重層後、密度勾配遠心することで得られる画分があげられる。
本発明の方法では、血液試料として、保存剤を添加して保存処理した血液試料を用いてもよい。臨床現場では、血液試料の採取から前処理(夾雑物除去工程や溶液置換工程)を実施するまでに、長い時間を要することがある。その場合、試料中に含まれる細胞が劣化し、当該細胞の形状崩壊ならびにそれに伴う当該細胞内の核酸およびタンパク質が放出するおそれがある。そのような現象が生じると、血液試料中に含まれる目的細胞の検出率が低下するおそれがある。そこで目的細胞を安定化させるための保存剤を、目的細胞を含む血液試料に含ませることで、当該目的細胞由来の核酸やタンパク質が不溶化および/または不活性化し、当該目的細胞が安定化するため、目的細胞の劣化を長時間抑制できる。
本発明の方法で補正する目的細胞は、前述した血液試料中に含まれる細胞であれば特に限定はない。目的細胞の一例として、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球などの白血球や、血液循環腫瘍細胞(CTC)などの腫瘍細胞、循環血液内皮細胞(CEC)、循環血管内皮細胞(CEP)、循環胎児細胞(CFC)、各種幹細胞、B細胞などの血液試料中に含まれる希少細胞があげられる。中でも、CTCに代表される、前述した血液試料中に含まれる希少細胞は、血球細胞に対して極めて少ない数しか前記血液試料中に存在しないため、本発明の方法で定量する目的細胞として好ましい細胞といえる。
本発明における夾雑物とは、目的細胞以外の血球細胞を含めた血液試料の含有物を示す。例えば目的細胞がCTCである場合、夾雑物として赤血球や白血球などがあげられる。前記夾雑物を除去する方法は、夾雑物を完全に除去する方法に限らず、夾雑細胞の存在割合を低下させる方法も含む。例としては、赤血球の破砕(溶血)、密度勾配遠心法による比重に基づく血球細胞の分離、フィルターによる細胞のサイズによる分離、細胞の種類に依存して特異的に結合可能な固相担体を用いた免疫沈降による分離、細胞の種類に依存して特異的に結合可能な抗体と結合した磁気ビーズを用いた分離等があげられるが、この限りではない。夾雑物の除去により、前記試料中に含まれる全粒子に対する目的細胞の割合が上がり、目的細胞を良好に検出できる。
前記夾雑物を除去する工程を行なった後、目的細胞を含む試料の溶液置換を行なう。溶液置換の一例として、前記目的細胞を検出するにあたり好適な溶液への置換や、前記目的細胞を特異的に標識する物質を含む溶液への置換があげられる。置換溶液はその目的に合致したものであれば特に制限はなく、一例として、有機溶媒や細胞を化学固定するための化合物、界面活性剤、緩衝液、糖溶液、染色試薬があげられる。
溶液置換後の試料中に含まれる目的細胞の検出は、例えばスライドに塗布して顕微鏡や光学検出器などで観察したり、フローサイトメトリーを用いて行なえばよい。なお顕微鏡や光学検出器などで観察して目的細胞を検出する場合、前記細胞を含む懸濁液を、前記細胞を保持可能な保持部を有した細胞保持手段に導入し、前記保持部に前記細胞を保持した後、顕微鏡や光学検出器などで観察するとよい。保持部の例として、前記細胞を収納可能な孔や、前記細胞を固定可能な材料(例えば、ポリ-L-リジン)で覆われた面があげられる。なお保持部の大きさを前記細胞を一つだけ保持可能な大きさとすると、特定細胞の採取および解析(形態学的分析、組織型分析、遺伝子分析など)が容易に行なえる点で好ましい。また細胞を保持部に保持させる際、誘電泳動力を用いると、保持部に細胞を効率的に保持できる点で好ましい。誘電泳動力を用いる場合、具体的には、交流電圧を印加することで誘電泳動を発生させ、保持部内へ細胞を導入すればよい。印加する交流電圧は、保持部内の細胞の充放電が周期的に繰り返される波形を有した交流電圧であると好ましく、周波数を100kHzから3MHzの間とし、電界強度を1×10から5×10V/mの間とすると特に好ましい(WO2011/149032号および特開2012-013549号公報参照)。
本発明は、血液試料中に含まれる目的細胞を、あらかじめ前処理(前述した夾雑物除去工程および溶液置換工程)を行なってから検出し定量する際、前記検出した目的細胞数を、夾雑物除去工程後の試料中に含まれる白血球数(W)を溶液置換工程後の試料中に含まれる白血球数(W)で除して得られる補正係数(W/W)で乗じて、前記検出した目的細胞数を補正することで、定量することを特徴としている。ここで白血球とは血液試料に含まれる有核細胞のことをいい、具体的には好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球が例示できる。夾雑物除去工程後の試料中に含まれる白血球数(W)は、能動的に夾雑物を除去する工程がすべて完了した後に計数した値を用いる。例えば、密度勾配遠心後に溶血処理を行なう場合、密度勾配遠心後の試料中に含まれる白血球数を計数するのではなく、溶血処理後の試料中に含まれる白血球数の計数結果を、夾雑物除去工程後の試料中に含まれる白血球数(W)として扱う。本発明の補正方法は、未処理または夾雑物除去途中の工程における試料中に含まれる白血球ではなく、夾雑物除去後の試料中に含まれる白血球が、その後行なう溶液置換工程における前記試料中に含まれる目的細胞の喪失の度合いと相関することを見出した点に本質がある。本発明の方法により、補正のための粒子を加えることなく、溶液置換により喪失した目的細胞数を、溶液置換工程前に本来含まれていた目的細胞数に補正できる。
以下、本発明の方法を利用した、血液試料中に含まれる目的細胞の定量方法の一例として、血液試料中に含まれる腫瘍細胞(CTC)の定量方法を用いて詳細に説明するが、本発明は本説明の内容に限定されるものではない。
(1)がんの疑いのある患者から血液試料を採取する。なお血液試料を採取する際、クエン酸やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤に代表される抗凝固剤を添加すると好ましく、CTCを安定化させるための保存剤を添加するとさらに好ましい。
(2)保存剤を添加した血液試料(保存処理した血液試料)に含まれる夾雑物である、赤血球および/または白血球を、前述した除去方法により除去する(夾雑物除去工程)。この操作により、CTCが濃縮され、夾雑物の混入量が低減されるため、CTCの検出が夾雑物除去前と比較して容易となる。
(3)夾雑物除去工程後に、白血球数(W)を計数する。白血球数はチュルク液などの染色試薬により白血球の核を染色して計数してもよく、染色せず、白血球の大きさなどの物性に基づき計数してもよい。
(4)夾雑物除去工程後の試料に対し溶液置換を行なう(溶液置換工程)。例えば、回収した細胞を誘電泳動を用いて細胞を操作する場合、置換する溶液として、キシリトールなど糖を含む溶液を用いるとよい。またCTCや夾雑細胞で発現するタンパク質に対する標識抗体で細胞を染色し当該染色結果に基づき前記細胞を検出する場合、置換する溶液として、細胞の膜透過試薬や固定試薬、ブロッキング試薬、染色試薬などを用いて細胞と反応する試薬、前記試薬の洗浄試薬のうち、少なくともいずれか一つの試薬を含む溶液を用いるとよい。前記染色試薬としては、サイトケラチンやEpCAM(Epithelial Cell Adhesion Molecule)などCTCで発現するタンパク質に対する標識抗体および/もしくは夾雑細胞で発現するタンパク質(夾雑細胞が白血球の場合はCD45など)に対する標識抗体、細胞核に対する標識試薬(DAPI(4’,6-DiAmidino-2-PhenylIndole)など)で細胞を染色するとよい。
(5)溶液置換工程後に、白血球数(W)を計数する。溶液置換工程後の白血球数は、目的細胞であるCTC検出前後に計数してもよく、CTC検出時に合わせて計数してもよい。
(6)(5)で得られたCTCを含む細胞懸濁液を、前記細胞を保持可能な保持部を有した細胞保持装置(例えば、図1および2に示す装置)に導入し、前記保持部に前記細胞を保持した後、顕微鏡や光学検出器などで観察し、血液試料中に含まれるCTCを検出して計数する。CTCの検出は、例えば、明視野像によるCTCと夾雑細胞(例えば、白血球などの血液成分)との大きさや形状の違いに基づき検出してもよく、染色試薬で細胞を染色し当該染色結果に基づき検出してもよい。
(7)(3)および(5)で計数した白血球数から得られる補正係数(W/W)で、(6)で検出したCTC数を乗じることで、補正する。なお(6)で検出したCTCは、採取手段で採取してもよい。採取手段の一例として、ノズルによる吸引吐出により採取する手段があげられ、具体例として特開2016-142616号に開示の装置があげられる。
本発明は、血液試料中に含まれる目的細胞の定量を、当該血液試料の前処理(夾雑物除去および溶液置換)を行なってから定量する場合、前記細胞の検出数を、前記夾雑物除去後の試料中に含まれる白血球数(W)を前記溶液置換後の試料中に含まれる白血球数(W)で除して得られる補正計数(W/W)で乗じて補正し、前記試料中に含まれる目的細胞数を定量することを特徴としている。
本発明により、血液試料中に含まれている目的細胞を定量する際に、溶液置換による前記目的細胞の喪失を考慮した検出数の補正が行なえるため、前記試料中に含まれる目的細胞を正確に定量できる。
また本発明の方法は、血液試料中に含まれる目的細胞の検出数を補正するための粒子を新たに添加することなく補正できる点に特徴がある。補正のための粒子を添加すると、細胞懸濁液中に含まれる粒子の数が増大し、目的とする細胞の前記懸濁液に含まれるすべての粒子に対する割合が低下するため、前記目的とする細胞の検出精度が低下するおそれがある。一方、本発明の方法は前記おそれが発生し得ない点で好ましい方法といえる。さらに本発明の方法は、前記粒子の調製が不要であり、より簡便に目的細胞検出数の補正が行なえる点で好ましい方法といえる。
溶液置換における目的細胞の喪失は、溶媒置換操作時において、過度に溶液を除去したり、過度な速さで溶液を吸引除去したりするときに発生し得る。本発明により、前記喪失を考慮した、目的細胞検出数の補正が行なえるため、実験操作を行なう熟練度に依存せず正確に、試料中に含まれる目的細胞数を定量できる効果もある。
一例として、本発明を血液中に含まれる腫瘍細胞(CTC)の検出に適用する場合、本発明の方法により、CTCの定量結果に対する信頼性が向上するため、精度高く、がんを診断できる。
本発明の検出方法で利用可能な、細胞保持装置の一例を示す図である。 図1に示す装置の正面図である。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。
実施例1
(1)イミダゾリジニル尿素(保存剤)2.3g、分子量6000のポリエチレングリコール(PEG)2.3g、チロフィバン(抗血小板剤)1.2mgおよびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)(抗凝固剤)30mgを、溶液として30mLになるよう、超純水で溶解した。
(2)ヒト肺がん細胞(PC9細胞)を、5%CO環境下、10%FBS(ウシ胎児血清)を含むRPMI-1640培地を用いて37℃で24から96時間培養後、0.25%トリプシン/1mM EDTAを用いて培地から細胞を剥離し、蛍光染色色素であるCFSE(5- or 6-(N-Succinimidyloxycarbonyl)fluorescein 3’,6’-diacetate、同仁化学研究所社製)およびPKH67(Sigma社製)で標識した。蛍光標識されたPC9細胞を目的とするがん細胞とした。
(3)インフォームドコンセントを得た健常人からEDTA-2K採血管(VP-DK050K、テルモ社製)に3mL採血後、(1)で調製した溶液0.45mLおよび(2)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、希釈血液試料を調製した。
(4)(3)で調製した希釈血液試料に、0.9%(w/v)塩化アンモニウムと0.1%(w/v)炭酸水素カリウムとを含む溶血液で45mLまでメスアップ後、5分間放置して溶血し、900×gで5分間、25℃で遠心分離した。当該操作により赤血球が破壊(溶血)される。
(5)遠心後の上清を除去後、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)を1mL添加し血球細胞のペレットを再懸濁した。当該細胞懸濁液を夾雑物除去後の試料とした。
(6)(5)で得られた夾雑物除去後の試料に含まれる残存白血球数(W)を、チュルク液で有核細胞を染色後、血球計算盤で計測した。
(7)白血球数計測後、(5)で得られた試料を300×gで5分間、25℃で遠心分離し、遠心後の上清を除去後、再度PBSを1mL添加しペレットを再懸濁した。上記操作を計7回行なうことで、溶液を置換した。
(8)(7)で得られた溶液置換後の試料に含まれる残存白血球数(W)およびがん細胞数を計測した。白血球はチュルク液で染色し、がん細胞は(2)で染色した蛍光色を目印に計測した。計測したがん細胞数を、(3)で添加したがん細胞数で除することで、がん細胞回収率[%]を算出し、(6)で計測した夾雑物除去後の試料に含まれる残存の白血球数(W)を溶液置換後の試料に含まれる残存の白血球数(W)で除することで、補正係数(W/W)を算出した。さらに、がん細胞回収率を前記補正係数で乗じることで補正後のがん細胞回収率[%]を算出した。
比較例1
(1)実施例1(1)から(3)に記載と同様な方法で希釈血液試料を調製し、前記試料に含まれる白血球数(C個)を計数後、実施例1(4)から(7)に記載と同様な方法で夾雑物除去および溶液置換を行なった。
(2)補正係数として、(1)で計数した白血球数(C個)を溶液置換後の試料に含まれる残存の白血球数(W)で除して得た値(C/W)を用いた他は、実施例1(8)と同様な方法で補正後のがん細胞回収率[%]を算出した。
実施例1および比較例1の結果をまとめて表1に示す。実施例1では、計測したがん細胞数から算出したがん細胞回収率[%]を、夾雑物除去後の試料中に含まれる残存白血球数(W)を溶液置換後の試料中に含まれる残存白血球数(W)で除して得られる補正係数(W/W)で乗じて補正した結果、補正後のがん細胞回収率は91.7%から110.4%と、理にかなった結果となった。一方、比較例1では、計測したがん細胞数から算出したがん細胞回収率[%]を、夾雑物除去前の血液試料に含まれる白血球数(C)を溶液置換後の試料に含まれる残存の白血球数(W)で除して得られる補正係数(C/W)で乗じて補正した結果、補正後のがん細胞回収率は122.5%から140.2%と誤差が大きくなった。
以上の結果から、試料中に含まれる目的細胞(本例では、がん細胞)の定量を、検出した目的細胞数から、前処理(夾雑物除去や溶液置換)による目的細胞の喪失を考慮して補正し、行なう場合、当該補正に用いる補正係数として、夾雑物除去後の試料に含まれる残存白血球数(W)を溶液置換後の試料に含まれる残存白血球数(W)で除した値(W/W)を用いると、精度高く定量できることがわかる。
Figure 0007279542000001
実施例2
(1)インフォームドコンセントを得た健常人からEDTA-2K採血管(VP-DK050K、テルモ社製)に3mL採血後、実施例1(2)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、希釈血液試料を調製した。
(2)調製した希釈血液試料を、密度1.091g/mLの密度勾配溶液に重層し、2000×gで10分間、室温にて遠心後、上清を回収した。
(3)回収した上清液を、PBSで30mLまでメスアップした後、600×gで5分間、25℃で遠心分離した。
(4)遠心後の上清を除去した後、0.9%(w/v)塩化アンモニウムと0.1%(w/v)炭酸水素カリウムとを含む溶血液で30mLまでメスアップ後、600×gで5分間、25℃で遠心分離した。当該操作により残存した赤血球が破壊(溶血)される。
(5)実施例1(7)において、溶液置換操作を計9回行なった他は、実施例1(5)から(8)と同様な方法で補正後のがん細胞回収率[%]を算出した。
参考例1
(1)実施例2(1)から(4)と同様な方法で希釈血液試料の調製および溶血処理を行なった。
(2)(1)の遠心後の上清を除去後、PBSを1mL添加し血球細胞のペレットを再懸濁した。当該細胞懸濁液に含まれるがん細胞数を計数し、計測したがん細胞数を希釈血液試料中に含まれるがん細胞数で除することで、補正後のがん細胞回収率[%]の予想値を算出した。
実施例2および参考例1の結果をまとめて表2に示す。実施例2では、計測したがん細胞数から算出したがん細胞回収率[%]を、夾雑物除去後の試料に含まれる残存の白血球数(W)を溶液置換後の試料に含まれる残存の白血球数(W)で除して得られる補正係数(W/W)で乗じて補正した結果、補正後のがん細胞回収率は95.0%から108.1%となった。一方、補正後のがん細胞回収率の予想値は97.8%(参考例1)であり、両者の差は約3%から10%に収まった。
以上の結果から、がん細胞数の補正に用いる、夾雑物除去後の試料として、比重差分離および溶血処理を行なった後の試料を用いても、精度高く定量できることがわかる。
Figure 0007279542000002
実施例3
(1)一方の末端がメトキシ基であり、もう一方の末端がN-ヒドロオキシスクシンイミドエステル基である、分子量5000のポリエチレングリコール(mPEG-NHS)と、ウシ血清アルブミン(BSA)(300mg、0.3mmol)とを、炭酸水素ナトリウム緩衝液(0.1M、15mL)に溶解させ、当該溶液を25℃近傍で3時間撹拌することでポリエチレングリコールを結合したBSA(PEG-BSA)を調製した。なお調製する際、mPEG-NHSとBSAとのモル比(mPEG-NHS/BSA)を2となるようにした。調製後、分画分子量10000の透析膜を用いて、純水への溶液置換を3日間行なった。
(2)実施例1(1)から(4)と同様な方法で希釈血液試料を調製し、溶血処理した。
(3)遠心後の上清を除去後、血球細胞のペレットを、(1)に記載の方法で調製したPEG-BSA(BSAとして0.1%(w/v))を含むPBS(リン酸緩衝生理食塩水)30mLで再懸濁した。
(4)再懸濁液を600×gで5分間、25℃で遠心分離後、上清を除去した。その後、抗CD45抗体修飾磁性粒子(Dynabeads CD45、Thermo Fisher Scientific社製)を添加し、磁石を用いてCD45を発現している白血球を除去した。得られた細胞懸濁液を、以降、夾雑物除去後の試料とした。
(5)実施例1(6)から(8)と同様な方法で、補正後のがん細胞回収率[%]を算出した。
実施例4
(1)実施例3(1)から(4)と同様な方法で、希釈血液試料の調製、溶血処理、および磁性粒子による白血球除去を行なった(夾雑物除去後の試料の調製)。
(2)(1)で得られた夾雑物除去後の試料に含まれる残存白血球数(W)を計測した。
(3)白血球数計測後、(1)で得られた試料を300×gで5分間、25℃で遠心分離し、遠心後の上清を除去後、50%(v/v)エタノールと1%(w/v)ホルムアルデヒドを含む水溶液(以下、細胞膜透過試薬)1mLを添加し、10分間静置することで、細胞膜を透過させ、タンパク質を固定化した。
(4)固定処理後、300×gで5分間、25℃で遠心分離し、遠心後の上清を除去後、PBSを1mL添加しペレットを再懸濁した。上記操作を計2回行なうことで、溶液を置換した。
(5)(4)で得られた試料を300×gで5分間、25℃で遠心分離し、遠心後の上清を除去後、3%(w/v)BSAを含むPBSを1mL添加し、10分間静置することで、抗体標識時の非特異吸着抑制のためのブロッキング処理を行なった。
(6)ブロッキング処理後、300×gで5分間、25℃で遠心分離し、遠心後の上清を除去後、蛍光標識した抗サイトケラチン抗体および抗CD45抗体、ならびに細胞核を標識する蛍光試薬を含む水溶液(以下、標識試薬)1mLを導入し、30分間静置した。なお抗サイトケラチン抗体はがん細胞を、抗CD45抗体は白血球を、それぞれ染色するために添加している。
(7)標識処理後、300×gで5分間、25℃で遠心分離し、遠心後の上清を除去後、実施例3(1)に記載の方法で調製したPEG-BSA(BSAとして0.1%(w/v))を含むキシリトール溶液1mLを添加しペレットを再懸濁した。上記操作を計2回行なうことで、溶液を置換した。
(8)(7)で得られた、溶液置換後の細胞懸濁液を、図1および2に示す細胞保持装置100に導入し、信号発生器50から電極基板31・32に交流電圧(1MHz、20Vp-p)を3分間印加することで前記装置が有する保持部60に細胞を保持させた。本実施例で用いた細胞保持装置100は、直径30μmの貫通孔12aを複数有した絶縁体12と直径30μmの貫通孔11aを複数有した遮光性のクロム膜(遮光部材11)と電極基板31とを上から絶縁体12-遮光部材11-電極基板31の順に密着して設け、さらに絶縁体12の上面に試料の導入口21、排出口22および貫通部23を有する厚さ1mmのスペーサー20を、スペーサー20の上面に電極基板32を、それぞれ密着して設けてなる装置である。なお貫通孔11a/12aおよび電極基板31により、直径30μm、深さ30μmからなる細胞70を保持可能な保持部60が形成されている。
(9)保持部60に保持されたがん細胞数および溶液置換後の試料に含まれる白血球数(W)を計測し、実施例1(8)に記載と同様な方法で、補正後のがん細胞回収率[%]を算出した。
参考例2
(1)実施例3(1)から(4)と同様な方法で希釈血液試料の調製、溶血処理、および磁性粒子による白血球除去を行なった(夾雑物除去後の試料の調製)。
(2)(1)の白血球除去後に得られた細胞懸濁液に含まれるがん細胞数を計数し、計測したがん細胞数を希釈血液試料中に含まれるがん細胞数で除することで、補正後のがん細胞回収率[%]の予想値を算出した。
実施例3および実施例4、参考例2の結果をまとめて表3に示す。実施例3および4では、計測したがん細胞数から算出したがん細胞回収率[%]を、夾雑物除去後の試料に含まれる残存の白血球数(W)を溶液置換後の試料に含まれる残存の白血球数(W)で除して得られる補正係数(W/W)で乗じて補正した結果、補正後のがん細胞回収率は82.6%から96.9%となった。一方、補正後のがん細胞回収率の予想値は90.2%(参考例2)であり、両者の差は10%以下に収まった。以上の結果から、がん細胞数の補正に用いる、夾雑物除去後の試料として、溶血処理および磁性粒子による白血球除去後の試料を用いても、また溶液置換後の試料として、細胞の固定化および標識を行なった後の試料を用いても、それぞれ精度高く定量できることがわかる。
Figure 0007279542000003
100:細胞保持装置
11:遮光部材
12:絶縁体
11a・12a:貫通孔
20:スペーサー
21:導入口
22:排出口
23:貫通部
31・32:電極基板
40:導線
50:信号発生器
60:保持部
70:細胞

Claims (3)

  1. (1)血液試料から夾雑物を除去する工程と、
    (2)夾雑物除去後の試料を溶液置換する工程と、
    (3)溶液置換後の試料中に含まれる目的細胞を検出する工程と、
    を含む、血液試料中に含まれる目的細胞を定量する方法において、
    前記(3)の工程で検出した目的細胞数を、前記(1)の工程後の試料中に含まれる白血球数(W)を前記(2)の工程後の試料中に含まれる白血球数(W)で除して得られる補正係数(W/W)で乗じて、前記検出した目的細胞数を補正することで、血液試料中に含まれる目的細胞を定量する、前記方法。
  2. 夾雑物が赤血球および/または白血球である、請求項1に記載の方法。
  3. 目的細胞が血液試料中に含まれる希少細胞である、請求項1または2に記載の方法。
JP2019120731A 2019-06-28 2019-06-28 試料中に含まれる目的細胞の定量方法 Active JP7279542B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019120731A JP7279542B2 (ja) 2019-06-28 2019-06-28 試料中に含まれる目的細胞の定量方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019120731A JP7279542B2 (ja) 2019-06-28 2019-06-28 試料中に含まれる目的細胞の定量方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021006774A JP2021006774A (ja) 2021-01-21
JP7279542B2 true JP7279542B2 (ja) 2023-05-23

Family

ID=74174358

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019120731A Active JP7279542B2 (ja) 2019-06-28 2019-06-28 試料中に含まれる目的細胞の定量方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7279542B2 (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013105612A1 (ja) 2012-01-13 2013-07-18 コニカミノルタ株式会社 血中の目的細胞の定量方法および該細胞を定量するシステムの評価方法
WO2013168767A1 (ja) 2012-05-10 2013-11-14 コニカミノルタ株式会社 赤血球除去方法および採血用遠沈管
US20160223438A1 (en) 2013-09-09 2016-08-04 National Cancer Center Blood cell aggregating agent for preparing paraffin block and method for preparing paraffin block by using same

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013105612A1 (ja) 2012-01-13 2013-07-18 コニカミノルタ株式会社 血中の目的細胞の定量方法および該細胞を定量するシステムの評価方法
WO2013168767A1 (ja) 2012-05-10 2013-11-14 コニカミノルタ株式会社 赤血球除去方法および採血用遠沈管
US20160223438A1 (en) 2013-09-09 2016-08-04 National Cancer Center Blood cell aggregating agent for preparing paraffin block and method for preparing paraffin block by using same

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021006774A (ja) 2021-01-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Coumans et al. Methodological guidelines to study extracellular vesicles
JP6179508B2 (ja) 希少細胞の検出方法
JP6453592B2 (ja) 血液検体の処理方法
JP2005501236A (ja) 分析用の細胞および生物学的検体の安定化
US20130345084A1 (en) Methods and devices for obtaining and analyzing cells
JP6617516B2 (ja) 血液試料中に含まれる目的細胞の検出方法
JP6686768B2 (ja) 細胞の分離回収方法
JP7143678B2 (ja) 標的細胞を検出する方法
JP6617495B2 (ja) 腫瘍細胞の検出方法
US20220128549A1 (en) Method for Magnetically Labeling Particles and Labeling Apparatus
JP7279542B2 (ja) 試料中に含まれる目的細胞の定量方法
CN111751543A (zh) 一种稀有肿瘤细胞富集方法及试剂盒
JP7413692B2 (ja) 細胞を含む試料の前処理方法
JP7062901B2 (ja) 目的細胞の検出方法
JP2018157812A (ja) 試料中に含まれる細胞の検出方法
JP2018028457A (ja) 目的粒子の回収方法および回収装置
JP2020076762A (ja) 細胞に結合可能な担体の製造方法
JP2020074694A (ja) 血液試料からの目的細胞濃縮方法
JP2016106622A (ja) 細胞の分離回収方法
JP7119771B2 (ja) 目的細胞の検出方法
JP6754345B2 (ja) 粒子の磁気標識方法及び標識装置
JP2020096555A (ja) 細胞の採取方法
Yong et al. Types of clinical samples and cellular enrichment strategies
WO2017141789A1 (ja) 血液由来検体の保管方法および希少細胞の判定方法
CN111454906A (zh) 一种从外周血中快速提取循环的非血缘性有核细胞的组合物和试剂盒及其应用

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220517

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230315

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230411

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230424

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7279542

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151