JP2020076762A - 細胞に結合可能な担体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 複数種の細胞を含む溶液から標的細胞と特異的に結合することで当該標的細胞を分離可能な担体を製造する方法、特に前記溶液に含まれる希少細胞をロスせず標的細胞を分離可能な担体を製造する方法を提供すること。【解決手段】 担体が有する官能基を用いて標的細胞に結合可能な物質を修飾させる工程と、残存した前記官能基をブロッキング剤で、当該ブロッキング剤が有する官能基と担体が有する官能基との静電相互作用によりブロッキングする工程(ただし、ブロッキング剤または担体が有する官能基の水中におけるpKa値が5以下)とを含む方法により、標的細胞に結合可能な担体を製造することにより、前記課題を解決する。【選択図】 なし

Description

本発明は、細胞に結合することで溶液中に含まれる当該細胞を分離可能な担体を製造する方法に関する。特に本発明は、複数種の細胞を含む溶液から標的細胞を特異的に分離可能な担体を製造する方法に関する。
近年、血液などの体液や、臓器などの組織を溶液に懸濁または分散して得られる組織標本試料や、細胞培養液などから細胞を選択的に分離回収し、当該分離回収した細胞を基礎研究や臨床診断、治療へ応用する研究が進められている。例えば、がん患者より採取した血液から腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell、以下CTC)を採取し、当該細胞について形態学的分析、組織型分析や遺伝子分析を行ない、これら分析により得られた知見に基づき治療方針を判断する研究が進められている。一方、CTCは血球細胞10から10個あたり数個と、血液中に極めて少量しか存在していない。そのため、がん患者より採取した血液からCTCを確実に採取するためには不要な血球細胞とCTCとを分離する必要がある。
従来より血液試料中に含まれる血球細胞とCTCとの分離に、標的細胞(例えば、白血球やCTC)が有する表面抗原と特異的に結合可能な抗体を修飾した磁性粒子が用いられている。しかしながら、血液試料中に共存する前記表面抗原以外のタンパク質や前記表面抗原を有さない細胞なども、前記磁性粒子に非特異的に吸着するため、CTCの回収率の低下や、多数の不要細胞の混入につながるおそれがあった。
これまでに知られている磁性粒子などの担体表面への非特異吸着を抑制するための方法として、ウシ血清アルブミン(BSA)などの親水性タンパク質ならびに、ポリエチレングリコール(PEG)および2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)ポリマーなどの親水性高分子からなる非特異吸着抑制高分子を、前記担体表面に修飾する方法がある。一例として特許文献1には、非特異吸着抑制高分子として末端にアミノ基やチオール基などの反応性官能基を有するポリエチレングリコールを用いた方法が開示されている。しかし特許文献1に記載の方法で非特異吸着を抑制した磁性粒子を用いても、血液試料中に含まれるCTCなどの希少細胞を高効率に分離回収するのは困難であった。
WO2005/010529号
本発明の課題は、複数種の細胞を含む溶液から標的細胞と特異的に結合することで当該標的細胞を分離可能な担体を製造する方法、特に前記溶液に含まれる希少細胞をロスせず標的細胞を分離可能な担体を製造する方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち本発明の第一の態様は、
担体が有する官能基とブロッキング剤が有する官能基とを静電相互作用させる工程を含む、担体をブロッキング剤でブロッキングする方法であって、
ブロッキング剤または担体が有する官能基が、水中におけるpKa値5以下の官能基である、方法である。
また本発明の第二の態様は、担体が有する官能基を用いて標的細胞に結合可能な物質を修飾させる工程と、残存した前記官能基を請求項1に記載の方法によりブロッキングする工程とを含む、標的細胞に結合可能な担体を製造する方法である。
また本発明の第三の態様は、ブロッキング剤または担体が有する官能基がスルホ基である、前記第一または第二の態様に記載の方法である。
また本発明の第四の態様は、標的細胞に結合可能な物質が標的細胞が有する表面抗原に特異的に結合可能な抗体である、前記第二または第三の態様に記載の方法である。
また本発明の第五の態様は、ブロッキング剤がポリエチレングリコールおよび担体が有する官能基と静電相互作用可能な官能基を少なくとも含む化合物である、前記第一から第四のいずれかに記載の方法である。
また本発明の第六の態様は、粒子が磁性粒子である、前記第一から第五のいずれかに記載の方法である。
また本発明の第七の態様は、標的細胞が白血球であり、標的細胞に結合可能な物質が白血球が有する表面抗原に特異的に結合可能な抗体である、前記第四から第六のいずれかに記載の方法である。
さらに本発明の第八の態様は、(1)から(3)に示す工程を含む、血液試料中に含まれる希少細胞の検出方法である。
(1)血液試料中に含まれる赤血球を破砕または除去する工程
(2)前記(1)の工程後の溶液から、前記第七の態様に記載の方法で製造した白血球に結合可能な担体を用いて、白血球を除去する工程、
(3)(2)の工程後の溶液に含まれる希少細胞を光学的に検出する工程
さらに本発明の第九の態様は、採取手段で前記第八の態様に記載の方法で検出した希少細胞を採取する工程をさらに含む、血液試料中に含まれる希少細胞の採取方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における担体は親水性または疎水性の水不溶性物質であればよく、具体的にはアガロース系、デキストラン系、キトサン系やセルロース系などの多糖類、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルピロリドン系、ポリアクリロニトリル系、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリスチレン系、アクリル酸エステル系、メタクリル酸エステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリ四フッ化エチレン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリフッ化ビニリデン系、ポリビニルホルマール系、ポリアリレート系やポリエーテルスルホン系などの有機合成高分子、ガラス系、チタン系、活性炭系、アルミナ、シリカもしくはヒドロキシアパタイトなどのセラミックス系や酸化鉄もしくは金などの金属系などの無機物があげられる。また担体の形態も特に限定はなく、粒子状、繊維状、中空糸状、膜状、平板状など、公知の形状を用いることができる。中でも表面積が大きい点、均一かつ効率的に標的細胞に結合できる点、細胞に物理的な損傷を与えにくい点、損傷が生じにくい点、均一な担体が得やすい点などから、粒子状のものが好ましく、特に球形(真球のみならずほぼ球形を含む)の担体が好ましい。
本発明において担体の結合対象である標的細胞の一例として、未分化細胞、分化細胞、リンパ球、顆粒球、血液試料中に含まれる白血球や腫瘍細胞(CTCなど)があげられる。
本発明において担体に修飾させる標的細胞に結合可能な物質は、標的細胞表面(標的細胞膜も含む)のタンパク質などと結合する物質のことをいい、一例として、前記物質と結合可能な抗体、レクチン、ペプチド、脂質があげられる。中でも、前記物質(表面抗原)と特異的に結合可能な抗体が特異性の点で好ましい。標的細胞に結合可能な物質として、表面抗原と特異的に結合可能な抗体を用いる場合、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよいが、得られる結果の安定性の点でモノクローナル抗体の方が好ましい。また特定の抗原と結合する抗体フラグメント(Fab、F(ab’)、scFvなど)であってもよく、特定の抗原と結合する二重特異性抗体であってもよい。
標的細胞が血液試料中に含まれる白血球の場合、標的細胞に結合可能な物質の好ましい例として、白血球表面に発現し、かつ血液試料中に含まれる他の細胞表面には発現しない抗原(白血球特異的抗原)に特異的に結合可能な抗体があげられる。白血球特異的抗原の一例としては、CD1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD13、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD22、CD23、CD33、CD34、CD36、CD41、CD42、CD45、CD45RA、CD45RO、CD56、CD66bがあげられる。中でも効果的に白血球と結合できる点から、CD45やCD15が好ましい。
標的細胞に結合可能な物質を担体に修飾させるには、当該担体が有する官能基と共有結合や静電相互作用、好ましくはイオン結合で結合させればよい。
本発明は、標的細胞に結合可能な担体を製造する際、標的細胞に結合可能な物質の担体への修飾、および、当該担体に残存した官能基とブロッキング剤が有する官能基との静電相互作用による前記残存した官能基のブロッキングを行ない、かつ担体が有する(前記残存した)官能基またはブロッキング剤が有する官能基の水中におけるpKa値が5以下であることを特徴としている。
本発明の製造方法で得られた担体を、血液試料中に含まれる希少細胞を検出するための前処理用途に用いる場合、前記担体は血液試料中に含まれる夾雑細胞とは結合する一方、希少細胞とは結合しない担体とする必要がある。しかしながら従来の方法で(例えば、夾雑細胞に結合可能な物質を担体に修飾後、BSAでブロッキングして)製造した担体を用いて、血液試料中に含まれる夾雑細胞の除去を試みたところ、血液試料中に共存する他の細胞やタンパク質などが前記担体に非特異吸着したため、希少細胞の検出が困難となった。
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、担体に残存した官能基とブロッキング剤が有する官能基との静電相互作用でブロッキングを行ない、かつ担体またはブロッキング剤が有する官能基の水中におけるpKa値が5以下とすることで、前記非特異吸着が抑制され、試料中に含まれる標的細胞の回収/除去効率が向上することを見出した。
ブロッキング剤が静電相互作用により担体を修飾(ブロッキング)すると、当該ブロッキング剤は修飾後であっても担体表面を移動できる状態であるため、より多くのブロッキング剤を担体表面に修飾でき、高密度な修飾が可能となる。一方、ブロッキング剤を担体に共有結合させて修飾(ブロッキング)する場合は、ブロッキング剤の結合に伴い立体障害が大きくなる。そのためブロッキング効率が低下し、ブロッキング剤が高密度に修飾されず、非特異吸着を効果的に抑制できない。
pKaは、酸から水素イオンが放出される解離反応の平行定数Kaの負の常用対数として定義され、pKaが小さいほど酸性度が強いことを意味する。また酸性度が強いとは、共役塩基の電子親和力が大きく共役塩基が安定していることを意味する。一般的に電子親和力が大きいほど電気陰性度も大きくなる傾向があるため、官能基のpKaが小さいほど共役塩基の電気陰性度が大きく、静電相互作用が強くなることが推定される。担体またはブロッキング剤が有する官能基の水中におけるpKa値を5以下にすると、担体とブロッキング剤とが強く静電相互作用し、担体表面のブロッキング剤を維持できるため、非特異吸着が効果的に抑制される。一方、担体およびブロッキング剤が有する官能基の水中におけるpKa値が5を超える場合、担体表面へのブロッキング剤の高密度修飾は可能であるものの、担体表面が有する官能基とブロッキング剤が有する結合部位との静電相互作用がpKa値が5以下のときより弱くなるため、担体表面にブロッキング剤が維持できず、効果的に非特異吸着を抑制できなくなる。本明細書において、特に規定していない時のpKa値は25℃、水中での値とする。
また、担体とブロッキング剤との静電相互作用の強さは、溶液中の担体の表面電荷を意味するゼータ電位からも推定することができる。ゼータ電位の絶対値が大きいほど担体の有する電荷が大きく、ブロッキング剤と強く静電相互作用できると想定される。担体表面の官能基が酸性の官能基の場合、担体のゼータ電位は−25mV以下が好ましく、−30mV以下がより好ましく、−35mV以下がさらに好ましい。なお、本明細書における担体のゼータ電位の値は、担体が粒子状の場合、当該担体を濃度2×10個/mLで超純水に分散して得られた懸濁液での測定値としている。
本発明において担体およびブロッキング剤が有する官能基は、水中で電荷を有し、互いに静電相互作用可能な基のことをいう。担体が有する官能基とブロッキング剤が有する官能基は、互いに反対の荷電を有し、かついずれかの官能基の水中におけるpKa値が5以下であれば特に限定はない。水中におけるpKa値が5以下の官能基の例として、酸性の官能基である、カルボキシ基(−COOH)(pKa4.76(参考として酢酸のpKa値))、ホスホン基(−PO(OH))(pKa1.5(参考としてホスホン酸のpKa値))、ホスフィン基(−PO(OH))(pKa1.1(参考としてホスフィン酸のpKa値))、リン酸基(−OPO(OH))(pKa2.15(参考としてリン酸のpKa値))、スルホ基(−SOH)(pKa−6.62(参考として硫酸のpKa値))があげられる。中でも水中でのpKa値が2以下であるとより好ましく、pKa値が低いスルホ基は特に好ましい。なお、参考としていくつかの官能基のpKa値をあげたが、pKa値は当該官能基を有する化合物の構造、担体表面への化合物の修飾密度などで変動し得る。それらの変動を考慮したうえで、当該担体のブロッキングの際、もしくは標的細胞と当該担体を結合させる際に、当該担体表面に存在する官能基またはブロッキング剤が有する官能基のpKaが5以下となればよい。水中におけるpKa値が5以下の官能基を有した担体(またはブロッキング剤)と静電相互作用可能なブロッキング剤(または担体)が有する官能基は塩基性の官能基が好ましく、一例として、アミノ基(−NH3)、イミノ基(−NH−)、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピロリル基、イミダゾール基などの複素環からなる基などがあげられる。中でもアミノ基またはイミノ基が好ましい。
本発明におけるブロッキング剤は、前述した担体が有する官能基と静電相互作用可能な官能基と親水性高分子とを少なくとも含んでいればよい。親水性高分子の一例として、ポリエチレングリコール(PEG)、フィコール(商品名)、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアスパルトアミド、多糖類、合成ポリアミノ酸があげられる。中でも免疫原性や細胞毒性が少なく、柔軟性が高いポリエチレングリコールが好ましい。本発明におけるブロッキング剤の好ましい一例として、タンパク質低吸着ポリマーであるBlockmaster(JSRライフサイエンス社製)があげられる。
ブロッキング剤を構成する親水性高分子の長さは、担体に修飾させる標的細胞に結合可能な物質の大きさを考慮して適宜決定すればよい。例えば親水性高分子がPEGであって、標的細胞に結合可能な物質が標的物質が有する表面抗原に特異的に結合可能なIgG抗体である場合、PEGの分子量は数平均分子量として600以上であればよく、好ましくは600から10万までの間とすると好ましく、600から1万までの間とするとより好ましく、600以上5000未満とするとさらに好ましい。また親水性高分子がPEGであって、標的細胞に結合可能な物質が標的物質が有する表面抗原に特異的に結合可能なIgM抗体である場合、PEGの分子量としては、数平均分子量として600以上であればよく、600から50万までの間とすると好ましく、600から10万までの間とするとより好ましく、600から5万までの間とするとさらに好ましい。親水性高分子としてPEG以外の高分子を用いる場合、上記PEGの分子量に相当する長さを有していればよい。
本発明において、標的細胞に結合可能な物質を修飾させる工程と、ブロッキング剤によりブロッキングする工程は、修飾工程の後にブロッキング工程を行なってもよいし、修飾工程とブロッキング工程とを同時に行なってもよいが、修飾工程の後にブロッキング工程を行なう方が好ましい。
本発明の製造方法で得られる標的細胞を結合可能な担体は、標的細胞を含む溶液に添加することで当該標的細胞と結合し、結果、前記標的細胞を溶液から分離させることができる。標的細胞と結合可能な担体が粒子状である場合、前記溶液からの標的細胞と結合した担体の分離方法としては、前記担体と結合していない細胞とのサイズの違いを利用して分離するフィルター法や、前記担体と結合していない細胞との比重差を利用して分離する比重法が例示できる。
フィルター法は、試料をフィルターに通すことで担体と結合していない細胞をフィルター通過させ、担体と結合した細胞をフィルターに捕捉し、分離する方法である。フィルターに形成する貫通孔は、使用用途によって適宜調整することができるが、開口部は円形となるものが好ましく、貫通孔の数や配置については特に制限はないが、多数の貫通孔を設けることが担体分離効率を向上する上で好ましい。多数の貫通孔を設ける場合、貫通孔間の距離(ある貫通孔の開口部の中心から、他の貫通孔の開口部の中心点までの距離)をなど間隔とすることが好ましい。貫通孔間の距離は貫通孔の孔径を考慮して適宜決定することができる。
比重法は、標的細胞と結合した担体と前記担体と結合していない細胞との比重差を用いて分離する方法である。具体的には、密度勾配溶液が入った遠沈管に生物試料を重層した後、遠心分離操作をすることで、標的細胞と結合した担体と前記担体と結合していない細胞とを比重差に基づき分離させればよい。密度勾配溶液は、それ自身で又は遠心分離によって密度勾配を形成する液体状の物質であり、担体の密度(比重)を特定し、その分離に適当なものを選択して使用すればよい。具体的にはショ糖、グリセロール、デキストラン、メトリザミド、イオディキサノール、ショ糖とエピクロロヒドリンの共重合体、ポリビニルピロリドンの被膜をもつコロイド状シリカ粒子、スクロースポリマー、ジアトリゾ酸、イオヘキソール、ニコデンツ(商品名、Abbott Diagnostics Technologies AS社製)などのイオン性又は非イオン性のものが例示できる。市販されている密度勾配溶液として、GEヘルスケア バイオサイエンス社製のFicoll(フィコール)、Ficoll−Paque及びPercoll(いずれも商品名)、Axis−Shield PoC AS社製のLymphoprep、Polymorphprep及びOptiPrep(いずれも商品名)が例示できる。
なお標的細胞と結合可能な担体が磁性粒子の場合、磁力によって当該担体を捕捉し、分離する方法が利用できる。本方法は分離操作が容易かつ短時間である点、高精度に細胞を分離できる点で好ましい。
前述した方法で、溶液から分離した、標的細胞を結合した担体は、その後前記結合を切断することで標的細胞を回収してもよく、前記担体を系外に排出することで標的細胞を除去してもよい。
本発明の製造方法で得られた担体は例えば、血液試料中に含まれる特定細胞の回収または除去に利用可能である。血液試料の具体例としては、血液(全血)、希釈血液、血清、血漿、髄液、臍帯血、成分採血液などの試料や、尿、唾液、精液、糞便、痰、羊水、腹水などの血液由来成分を含み得る試料や、肝臓、肺、脾臓、腎臓、皮膚、腫瘍、リンパ節などの組織の一片を懸濁させた組織懸濁液や、前述した試料または組織懸濁液より分離して得られる、試料または組織由来の細胞を含む画分、などがあげられる。このうち試料または組織由来の細胞を含む画分の一例として、試料や組織懸濁液を密度勾配形成用媒体の上に重層後、密度勾配遠心することで得られる画分があげられる。
特に本発明の製造方法で得られた担体は、血液試料中に含まれる希少細胞を検出するための前処理、すなわち血液試料中に含まれる夾雑細胞を除去するのに好ましい担体である。前記夾雑細胞の一例としては、血液試料中に多く含まれる白血球(好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球)、赤血球、血小板があげられる。このうち前記夾雑細胞として最も好ましいのは白血球である。赤血球は塩化アンモニウムなどで容易に破砕(溶血)でき、血小板は核を有しておらず核染色試薬で容易に検出対象から除外できるからである。前記希少細胞の一例としては、血液循環腫瘍細胞(CTC)などの腫瘍細胞、循環血液内皮細胞(CEC)、循環血管内皮細胞(CEP)、循環胎児細胞(CFC)、各種幹細胞があげられる。
本発明の製造方法で得られた担体を用いることで、血液試料中に含まれる希少細胞を少ないロスで検出できる。具体的には、
血液試料中に含まれる赤血球を破砕(溶血)または除去する工程と、
前記赤血球の破砕/除去工程後の溶液から、本発明の方法で製造した白血球に結合可能な担体を用いて、白血球を除去する工程と、
白血球除去工程後の溶液に含まれる希少細胞を光学的に検出する工程と、
を含む方法で行なえばよい。
赤血球の破砕/除去工程は、その後の効率的な白血球除去および希少細胞の明瞭な検出のために実施する工程である。赤血球を破砕(溶血)する場合は、例えば、血液試料に塩化アンモニウム、界面活性剤、低張溶液などを添加して行なえばよい。中でも塩化アンモニウムを用いた破砕は希少細胞に対する損傷が少ない点で好ましい。赤血球を除去する場合は、赤血球と他の細胞とのサイズの違いを利用した濾過や、比重の違いを利用した分離などにより除去すればよい。
希少細胞を光学的に検出する工程は、例えば、スライドに塗布したり、顕微鏡や光学検出器などで観察したり、フローサイトメトリーを用いたりして検出すればよい。なお顕微鏡や光学検出器などで観察して希少細胞の検出を行なう場合、前記細胞を含む懸濁液を、前記細胞を保持可能な保持部を有した細胞保持手段に導入し、前記保持部に前記細胞を保持した後、顕微鏡や光学検出器などで観察するとよい。保持部の例として、前記細胞を収納可能な孔や、前記細胞を固定可能な材料(例えば、ポリ−L−リジン)で覆われた面があげられる。なお保持部の大きさを前記細胞を一つだけ保持可能な大きさとすると、特定細胞の採取および解析(形態学的分析、組織型分析、遺伝子分析など)が容易に行なえる点で好ましい。また細胞を保持部に保持させる際、誘電泳動力を用いると、保持部に細胞を効率的に保持できる点で好ましい。誘電泳動力を用いる場合、具体的には、交流電圧を印加することで誘電泳動を発生させ、保持部内へ細胞を導入すればよい。印加する交流電圧は、保持部内の細胞の充放電が周期的に繰り返される波形を有した交流電圧であると好ましく、周波数を100kHzから3MHzの間とし、電界強度を1×10から5×10V/mの間とすると特に好ましい(WO2011/149032号および特開2012−013549号公報参照)。
以下、本発明の製造方法により得られた担体を利用した、血液試料中に含まれる希少細胞の検出および採取方法の一例として、血液試料中に含まれる腫瘍細胞(CTC)を検出および採取する方法を用いて詳細に説明するが、本発明は本説明の内容に限定されるものではない。
(1)がんの疑いのある患者から血液試料を採取する。なお血液試料を採取する際、クエン酸やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤に代表される抗凝固剤を添加すると好ましい。
(2)(1)で採取した血液試料(または希釈した血液試料)に、CTCを安定化させるための保存剤であるホルムアルデヒドドナー化合物、抗血小板剤を添加する。なお、(1)で抗凝固剤を添加せずに血液試料を採取した場合は抗凝固剤も添加する。前記添加の際、本発明の保存剤を構成する全ての物質を一度に添加してもよく、各成分を含む溶液をそれぞれ添加してもよい。また、血液保存剤として、ポリエチレングリコールをさらに入れるとCTCの形体安定化に寄与するためよい。さらに(1)で抗凝固剤が添加される状態で血液試料を採取し、本工程でホルムアルデヒドドナー化合物および抗血小板剤を含む溶液を血液試料に添加する場合、血液試料中に含まれる抗凝固剤の濃度を維持するために、本工程で抗凝固剤を追加してもよい。血液試料への保存剤の添加量は、血液試料1mLあたり0.01mLから10mLの間であればよく、0.04mLから2mLの間であればより好ましい。アルデヒドドナー化合物、抗血小板剤および抗凝固剤を添加した血液試料は、室温で少なくとも5日間は安定に保存が可能である。
(3)血液保存剤を添加した血液試料(保存処理した血液試料)に含まれる赤血球を、塩化アンモニウムを用いて破砕する。塩化アンモニウムでの赤血球の破砕は、赤血球と他の細胞とのイオン取り込み能の違いを利用した破砕方法であり、他の細胞への損傷を抑えながら赤血球を破砕できるため、好ましい赤血球破砕方法である。
(4)赤血球破砕処理後、遠心分離することで血液成分を除去し、血液試料中に含まれるCTCを含む細胞をペレット状にした後、適切な溶液を用いて当該細胞を懸濁させる。なお前記細胞を懸濁させる溶液に、親水性高分子を結合したタンパク質(例えば、ポリエチレングリコールを結合したBSA)を含ませてもよい。当該タンパク質を含ませるとCTCの回収効率が向上するため好ましい。親水性高分子を結合したタンパク質の濃度は、懸濁液でのタンパク質の終濃度として、0.01%(w/v)から25%(w/v)の間であればよく、0.02%(w/v)から5%(w/v)の間であれば好ましく、0.05%(w/v)から2%(w/v)の間であればより好ましい。
(5)(4)で調製したCTCを含む細胞懸濁液に、本発明の製造方法で得られた白血球に結合可能な磁性粒子(例えば、抗CD45抗体または抗CD15抗体を修飾した磁性粒子)を添加し、当該磁性粒子を分散させた後、前記磁性粒子を磁力で回収する。本操作により、前記懸濁液中に含まれるCTCのロスを最小限にしつつ、白血球を分離回収できる。
(6)磁性粒子を除去したCTCを含む細胞懸濁液を再度遠心分離し、CTCを含む細胞ペレットを回収する。なお必要に応じ、前記回収したペレットを親水性高分子を結合したタンパク質を含む溶液に再度懸濁させ、遠心分離する工程を追加してもよい。
(7)(6)で得られたCTCを含む細胞懸濁液を、前記細胞を保持可能な保持部を有した細胞保持手段に導入し、前記保持部に前記細胞を保持した後、顕微鏡や光学検出器などで観察することで血液試料中に含まれるCTCを検出する。CTCの検出は、例えば、明視野像によるCTCと夾雑細胞(例えば、白血球などの血液成分)との大きさや形状の違いに基づき検出してもよく、サイトケラチンやEpCAM(Epithelial Cell Adhesion Molecule)などCTCで発現するタンパク質に対する標識抗体および/または夾雑細胞で発現するタンパク質(夾雑細胞が白血球の場合はCD45など)に対する標識抗体で細胞を染色し当該染色結果に基づき検出してもよい。
(8)(7)で検出したCTCを採取手段で採取する。採取手段の一例として、ノズルによる吸引吐出により採取する手段があげられ、具体例として特開2016−142616号公報に開示の装置があげられる。
本発明は、担体が有する官能基を用いて標的細胞に結合可能な物質を修飾させる工程と残存した前記官能基をブロッキング剤によりブロッキングする工程とを含む標的細胞に結合可能な担体を製造する方法において、担体が有する官能基のブロッキング剤によるブロッキングを当該ブロッキング剤が有する官能基と担体が有する官能基との静電相互作用により行ない、ブロッキング剤または担体が有する官能基が水中におけるpKa値5以下の官能基であることを特徴としている。
本発明により、ブロッキング剤が粒子に高密度かつ強い結合力で修飾され、担体の標的細胞以外への非特異吸着を抑制できる。また本発明の製造方法で得られた担体は、高密度に修飾したブロッキング剤による、修飾した標的細胞に結合可能な物質(例えば、標的細胞が有する表面抗原に特異的に結合可能な抗体)の配向性制御により、結合した前記物質の標的細胞への結合能が向上する。したがって前記担体を用いた標的細胞の分離方法は、特に複数種の細胞を含む血液試料から標的細胞を分離する場合において有用な方法である。また前記細胞分離方法を利用することで、血液試料中に含まれる希少細胞を少ないロスで検出できる。
一例として本発明を、血液中に含まれる腫瘍細胞(CTC)の検出に適用することで、高効率に夾雑細胞(白血球など)を分離除去し、CTCを高精度に検出できるため、患者への採血量を少なくすることができ、患者への負担を低減させることができる。また、がんの診断をCTCの存在により行なう場合、CTCの有無の判断結果に対する信頼性が向上するため、がんを精度高く検出できる。
実施例6で使用した細胞保持装置を示す図である。 図1に示す装置の正面図である。 スルホ基を有した担体(実施例8)、カルボキシ基を有した担体(実施例9)、およびヒドロキシ基を有した担体(比較例3)を、超純水にそれぞれ分散して得た懸濁液(担体濃度として2×10個/mL)のゼータ電位測定結果(n=3測定の平均値)を示す図である。なおエラーバーは±SDを意味する。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。
実施例1
(1) BSA修飾磁性粒子の作製(その1)
(1−1)表面にカルボキシ基を有した磁性粒子溶液(Magnosphere MS300/Carboxyl、1.0%スラリー、JSRライフサイエンス社製)450μLを0.01M MES(2−Morpholinoethanesulfonic acid)バッファー(pH6.0)550μLに添加した。
(1−2)当該磁性粒子溶液を磁石に近づけて3分放置後、溶液を除去し、0.01M MESバッファー1mLを添加して磁性粒子を再懸濁する洗浄操作を2回行なった後、磁性粒子を0.01M MESバッファー450μLに再懸濁した。
(1−3)10mg/mL EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩)を含む0.01M MESバッファー50μLを添加し、37℃で1時間振とうすることで磁性粒子表面のカルボキシ基にEDCを結合させた。当該操作により、磁性粒子表面のカルボン酸とタンパク質などが有するアミノ基とのEDCを介した共有結合が可能となる。
(1−4)EDCを結合させた磁性粒子を0.01M MESバッファー1mLで1回洗浄し、0.01M MESバッファー180μLに再懸濁後、10μg/100μLウシ血清アルブミン(BSA)水溶液20μLを添加し、37℃で3時間振とうすることでEDCを介してBSAと磁性粒子とを共有結合させた(すなわち磁性粒子にBSAを修飾させた)。
(1−5)BSA修飾反応終了後、500mMタウリンを含む0.01M MESバッファー50μLを添加し、37℃で1時間振とうすることで、磁性粒子表面に残存したEDCにタウリンを結合させ、スルホ基に変換した。振とう後は、0.4M塩化ナトリウムを含む0.01M MESバッファー1mLで1回洗浄を行なった。
(1−6)BSAを修飾し残存カルボキシ基をスルホ基に変換した磁性粒子に、下記に示すいずれかの溶液を用いてブロッキングを行なった。ブロッキングは以下に示すいずれかの溶液1mLで2回洗浄後、当該溶液500μLで再懸濁し、37℃で一晩(17から24時間)振とうすることで行なった。なおこれら溶液によるブロッキングは、磁性粒子が有するスルホ基とタンパク質低吸着ポリマーが有するアミノ基との静電相互作用によるブロッキングである。
[a]1.8%(w/v)タンパク質低吸着ポリマー(Blockmaster CE510、分子量5000、JSRライフサイエンス社製)を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)
[b]1.2%(w/v) Blockmaster CE510を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)
[c]0.6%(w/v) Blockmaster CE510を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)
[d]0.2%(w/v) Blockmaster CE510を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)
[e]1.8%(w/v)タンパク質低吸着ポリマー(Blockmaster CE210、分子量2000、JSRライフサイエンス社製)を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)
[f]0.9%(w/v) Blockmaster CE210を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)
[g]0.45%(w/v) Blockmaster CE210を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)
(1−7)ブロッキング終了後、以下に示すいずれかの保存液を用いてBSA修飾磁性粒子を保存した。保存は以下に示すいずれかの保存液1mLで1回洗浄後、当該保存液184μLで再懸濁した。
[a]から[d]0.2%(w/v) Blockmaster CE510を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)
[e]から[g]0.2%(w/v) Blockmaster CE210を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)
(2)BSA修飾磁性粒子への非特異吸着の検討
(2−1)以下に示す方法により、本検討に用いる試料を調製した。
(2−1−1)インフォームドコンセントを取得した健常者血液3mLに安定化剤0.45mLを添加し、室温で10分以上放置した。なお前記安定化剤は、イミダゾリジニル尿素2.3g、分子量6000のポリエチレングリコール(PEG)2.3g、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)30mgを、溶液として30mLになるよう、超純水で溶解することで調製した。
(2−1−2)前記放置後の試料に対して、0.9%(w/v)塩化アンモニウムと0.1%(w/v)炭酸水素カリウムとを含む溶血液で90mLまでメスアップ後、900×gで10分間、25℃で遠心分離した。当該操作により赤血球が破壊(溶血)される。(2−1−3)遠心後の上清を除去した後、細胞を含むペレットを、ポリエチレングリコールを結合したBSA(PEG−BSA)(BSAとして0.1%(w/v))を含むPBS(リン酸緩衝生理食塩水)30mLで再懸濁した。なお前記PEG−BSAは、一方の末端がメトキシ基であり、もう一方の末端がN−ヒドロオキシスクシンイミドエステル基である、分子量5000のポリエチレングリコール(mPEG−NHS)と、ウシ血清アルブミン(BSA)(300mg、0.3mmol)とを、炭酸水素ナトリウム緩衝液(0.1M、15mL)に溶解させ、当該溶液を25℃近傍で3時間撹拌し、分画分子量10000の透析膜を用いて、純水への溶液置換を3日間行なうことで調製した。なお前記調製の際、mPEG−NHSとBSAとのモル比(mPEG−NHS/BSA)を2となるようにした。
(2−1−4)再懸濁液を600×gで5分間、25℃で遠心分離後、上清を除去し、PEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))を含むPBSで懸濁することで、本検討に用いる試料を得た。試料中に含まれる白血球数は、白血球数算定用染色液(チュルク染色液、ナカライテスク社製)を用いて算出した。
(2−2)白血球数が200万個となるよう、(2−1)で調製した試料を採取し、(1)で作製したBSA修飾磁性粒子12μLをそれぞれ添加後、5分間転倒撹拌した。
(2−3)磁石に近づけることで、添加したBSA修飾磁性粒子と結合した白血球を除去し、残存試料を回収した。
(2−4)残存試料中の白血球数を、チュルク染色液を用いて算定し、BSA修飾磁性粒子と混合した白血球数(200万個)で除することで白血球の残存率を算出した。
比較例1
(1)BSA修飾磁性粒子の作製(その2)
(1−1)実施例1の(1−1)から(1−3)に記載の方法で調製したEDCを結合させた磁性粒子を0.01M MESバッファー1mLで1回洗浄し、0.01M MESバッファー180μLに再懸濁後、10μg/100μLウシ血清アルブミン(BSA)水溶液20μLを添加し、37℃で3時間振とうすることでEDCを介してBSAと磁性粒子とを共有結合させた(すなわち磁性粒子にBSAを修飾させた)。
(1−2)BSAを修飾した磁性粒子に、以下に示すいずれかの溶液を用いてブロッキングを行なった。ブロッキングは以下に示すいずれかの溶液1mLで2回洗浄後、当該溶液500μLで再懸濁し、37℃で一晩(17から24時間)振とうすることで行なった。
[h]2.0%(w/v) BSAを含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)(磁性粒子にBSAが物理吸着することでブロッキング)
[i]1.8%(w/v) Blockmaster CE510を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)(磁性粒子に残存しているEDCがTris−HClバッファーによりヒドロキシ基に変換され、当該ヒドロキシ基とCE510が有するアミノ基との静電相互作用によりブロッキング)
[j]1.8%(w/v) Blockmaster CE510および2.0%(w/v)BSAを含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)(前記[h]と[i]とが合わさったブロッキング)
[k]1.8%(w/v) Blockmaster CE510を含む0.01M MESバッファー(磁性粒子に残存しているEDCとCE510が有するアミノ基との共有結合によりブロッキング)
[l]0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)(ブロッキングなし)
(1−3)ブロッキング終了後、以下に示すいずれかの保存液を用いてBSA修飾磁性粒子を保存した。保存は以下に示すいずれかの保存液1mLで1回洗浄後、当該保存液184μLで再懸濁した。
[h]0.2%(w/v) BSAを含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)
[i]から[k]0.2%(w/v) Blockmaster CE510を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)
[l]0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)
(2)BSA修飾磁性粒子への非特異吸着の検討
実施例1(2−1)に記載の方法で調製した試料を、実施例1(2−2)から(2−4)に記載と同様な方法で白血球の残存率を算出した。
実施例1および比較例1の結果をまとめて表1に示す。ブロッキングを、磁性粒子に残存する官能基とブロッキング剤が有する官能基との静電相互作用により行なった場合([a]から[g]および[i]から[j])は、白血球残存率が約90%以上と高く、BSA修飾磁性粒子への白血球の非特異吸着が高効率に抑制できることが確認された。さらに、白血球残存率は、磁性粒子が有するスルホ基とタンパク質低吸着ポリマー(Blockmaster CE510)が有するアミノ基との静電相互作用によりブロッキングを行なったBSA修飾磁性粒子([a])の方が、磁性粒子が有するヒドロキシ基とBlockmaster CE510が有するアミノ基との静電相互作用によりブロッキングを行なったBSA修飾磁性粒子([i])よりも高かった。この理由として、磁性粒子が有するスルホ基とBlockmaster CE510が有するアミノ基との静電相互作用によりブロッキングを行なったBSA修飾磁性粒子([a])では、磁性粒子が有するスルホ基の水中でのpKa値が−6.62と低く、ブロッキングの際、Blockmaster CE510と強く静電相互作用できたため、BSA修飾磁性粒子への白血球の非特異吸着がより高効率に抑制できたと考えられる。一方、磁性粒子が有するヒドロキシ基とBlockmaster CE510が有するアミノ基との静電相互作用によりブロッキングを行なったBSA修飾磁性粒子([i])では、磁性粒子が有するヒドロキシ基のpKa値が15.74と高く、ブロッキングの際、タンパク質低吸着ポリマーと強く静電相互作用できなかったため、わずかに非特異吸着が生じたと考えられる。一方、BSA修飾磁性粒子への物理吸着([h])または共有結合([k])でブロッキングを行なった場合は、静電相互作用でブロッキングを行なった場合と比較し、低下しており、BSA修飾磁性粒子への白血球の非特異吸着が示唆された。物理吸着の場合、ブロッキング剤として用いたBSAの表面電荷が負であるため、表面がヒドロキシ基の磁性粒子と静電反発し、ブロッキング効果が低くなったことが考えられる。共有結合の場合、BSA修飾磁性粒子表面にタンパク質低吸着ポリマーが結合されるにつれて立体障害が大きくなり、前記粒子表面をブロッキング剤で完全に覆うことができなかったため、非特異吸着の抑制効果が低下したと考えられる。
実施例2
(1)実施例1(1−1)から(1−3)に記載の方法で作製したEDCを結合させた磁性粒子を、0.01M MESバッファー1mLで1回洗浄し、MESバッファー180μLに再懸濁後、白血球が有する表面抗原であるCD15に対する抗体(IgM、BioLegend社製)を2μg(10μg/100μL水溶液として20μL)を添加し、37℃で3時間振とうすることでEDCを介して前記抗体と磁性粒子とを共有結合させた(すなわち磁性粒子に前記抗体を修飾させた)。
(2)抗体修飾反応終了後、500mMタウリンを含む0.01M MESバッファー50μLを添加し、37℃で1時間振とうすることで、磁性粒子表面に残存したEDCにタウリンを結合させ、スルホ基に変換した。振とう後は、0.4M塩化ナトリウムを含む0.01M MESバッファー1mLで1回洗浄を行なった。
(3)抗CD15抗体を修飾し残存カルボキシ基をスルホ基に変換した磁性粒子に、1.8%(w/v) Blockmaster CE510(タンパク質低吸着ポリマー、JSRライフサイエンス社製)を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)1mLで2回洗浄後、当該溶液500μLで再懸濁し、37℃で一晩(17から24時間)振とうすることでブロッキングを行なった。
(4)ブロッキング終了後、保存液(0.2%(w/v) Blockmaster CE510を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0))1mLで1回洗浄を行ない、保存液184μLに再懸濁した。
(5)実施例1(2−1)に記載の方法で調製した試料を、実施例1(2−2)から(2−4)に記載と同様な方法で白血球の残存率を算出した。
比較例2
(1)実施例2(1)に記載の方法で磁性粒子に抗CD15抗体を修飾させた後、1.8%(w/v) Blockmaster CE510および2.0%(w/v)BSAを含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)1mLで2回洗浄(本操作により磁性粒子に残存したEDCはヒドロキシ基に変換される)後、当該溶液500μLで再懸濁し、37℃で一晩(17から24時間)振とうすることでブロッキングを行なった。
(2)ブロッキング終了後、保存液(0.2%(w/v) Blockmaster CE510を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0))1mLで1回洗浄を行ない、保存液184μLに再懸濁した。
(3)実施例1(2−1)に記載の方法で調製した試料を、実施例1(2−2)から(2−4)に記載と同様な方法で白血球の残存率を算出した。
実施例2および比較例2の結果をまとめて表2に示す。実施例2および比較例2で作製した抗CD15抗体修飾磁性粒子を用いることで白血球残存率が低下したことから、これら例で作製した抗体修飾磁性粒子は共に白血球に結合可能な粒子であることが確認された。一方、白血球の残存率は、磁性粒子が有するスルホ基とタンパク質低吸着ポリマーが有するアミノ基との静電相互作用でブロッキングして得られた抗体修飾磁性粒子(実施例2、残存率57.0%)の方が、磁性粒子が有するヒドロキシ基とタンパク質低吸着ポリマーが有するアミノ基との静電相互作用およびBSAの物理吸着でブロッキングして得られた抗体修飾磁性粒子(比較例2、残存率64.5%)よりも低かった(すなわち抗体修飾磁性粒子への白血球の結合率が高かった)。この理由として、タンパク質低吸着ポリマー(Blockmaster CE510)が高密度に修飾されたことで、磁性粒子表面の抗CD15抗体の配向性(すなわち抗原認識部位の抗原への露出の度合い)が改善し、抗原認識能が高くなったため、抗体修飾磁性粒子への白血球の結合率が向上したと考えられる。一方、比較例2では、物理吸着したBSAにより抗体修飾磁性粒子表面のBlockmaster CE510の密度が低下し、磁性粒子表面の抗CD15抗体の配向性が効果的に制御できなかったため、実施例2と比較して抗体修飾磁性粒子への白血球の結合率が低くなったことが考えられる。
以上の結果から、標的細胞に結合可能な担体を製造する際、当該担体の官能基のブロッキングをタンパク質低吸着ポリマーで行なうことで、当該担体に修飾した標的細胞に結合可能な物質の配向性を制御でき、前記担体の標的細胞への結合率が向上することがわかる。
実施例3
実施例2(1)で添加する抗体として、白血球が有する表面抗原であるCD45に対する抗体(IgG、Miltenyi Biotech社製)を20μg(100μg/100μL水溶液として20μL)を、実施例2(3)でブロッキングに用いる溶液として、0.9%(w/v) Blockmaster CE210(タンパク質低吸着ポリマー、JSRライフサイエンス社製)を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)を、実施例2(4)で用いる保存液として、0.2%(w/v) Blockmaster CE210を含む0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)を、それぞれ用いた以外は、実施例2と同様の方法で抗CD45抗体修飾磁性粒子を作製し、白血球の残存率を算出した。
実施例4
実施例2(1)で添加する抗体として、実施例3で用いた抗CD45抗体(IgG、Miltenyi Biotech社製)20μg(100μg/100μL水溶液として20μL)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で抗CD45抗体修飾磁性粒子を作製し、白血球の残存率を算出した。
実施例3および実施例4の結果をまとめて表3に示す。抗CD15抗体を修飾したとき(実施例2および比較例2)と同様、実施例3および実施例4で作製した抗CD45抗体修飾磁性粒子を用いることで白血球残存率が低下したことから、これら例で作製した抗体修飾磁性粒子も共に白血球に結合可能な粒子であることが確認された。
一方、ブロッキング剤としてBlockmaster CE210(分子量2000)を用いて作製した抗体修飾磁性粒子(実施例3、残存率63.5%)を用いたときの方が、ブロッキング剤としてBlockmaster CE510(分子量5000)を用いて作製した抗体修飾磁性粒子(実施例4、残存率86.0%)を用いたときよりも、白血球残存率が低かった(すなわち抗体修飾磁性粒子への白血球の結合率が高かった)。さらに、ブロッキング剤として同じBlockmaster CE510を用いても、抗CD15抗体を修飾した磁性粒子(実施例2、残存率57.0%)の方が、抗CD45抗体を修飾した磁性粒子(実施例4、残存率86.0%)よりも、白血球残存率が低かった(すなわち抗体修飾磁性粒子への白血球の結合率が高かった)。
実施例3および実施例4で用いた抗CD45抗体はIgG(分子量150kDa)であり、実施例2および比較例2で用いた抗CD15抗体はIgM(分子量900kDa)である。分子量の低い抗体(IgG)に対し、ポリエチレングリコール(PEG)鎖の長いBlockmaster CE510を用いてブロッキングを行なうと、抗体がPEG鎖に埋もれてしまい、抗体が有する抗原認識能が低下するため、白血球の結合率が低下した(残存率が上昇した)と考えられる。一方、ポリエチレングリコール(PEG)鎖の短いBlockmaster CE210を用いてブロッキングを行なう場合は、Blockmaster CE510と比較し、抗体がPEG鎖に埋もれる確率が下がるため、抗体が有する抗原認識能の低下も抑えられ、白血球の結合率が向上した(残存率が低下した)と考えられる。
実施例5
(1)ヒト肺がん細胞(PC9細胞)を、5%CO環境下、10%(v/v)FBS(ウシ胎児血清)を含むRPMI−1640培地を用いて37℃で24から96時間培養後、0.25%トリプシン/1mM EDTAを用いて培地から細胞を剥離した。
(2)(1)で剥離したPC9細胞の懸濁液を、実施例1(2−1−3)に記載の方法で調製したPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))を含むPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で再懸濁し、トリパンブルー染色により細胞数を算定した。
(3)PC9細胞数が200万個となる量の(2)の細胞懸濁液を採取し、実施例3で作製した抗CD45抗体修飾磁性粒子18μLを添加後、5分間転倒撹拌した。
(4)(3)の溶液を磁石に近づけて抗CD45抗体修飾磁性粒子と結合したPC9細胞を除去し、細胞懸濁液を回収した。
(5)(4)で回収した細胞懸濁液中のPC9細胞数を、トリパンブルーを用いて算定し、抗CD45抗体修飾磁性粒子と混合したPC9細胞数(200万個)で除することでPC9細胞の残存率を算出した。
実施例6
磁性粒子として実施例2で作製した抗CD15抗体修飾磁性粒子を用いた以外は、実施例5と同様の方法で、PC9細胞の残存率を算出した。
実施例5および実施例6の結果をまとめて表4に示す。実施例5および実施例6で作製した磁性粒子に修飾した抗体は、いずれも白血球が有する表面抗原(CD15およびCD45)に対する抗体であり、当該表面抗原はPC9細胞には存在しない。したがって、非特異吸着がなければ、PC9細胞の残存率は100%に近い結果となる。今回検討した抗体修飾磁性粒子(実施例5および実施例6)は、いずれもPC9細胞の残存率が約90%以上であり、白血球以外の細胞であるPC9細胞の抗体修飾磁性粒子への非特異吸着を抑制できていることが確認された。なお抗CD15抗体修飾磁性粒子(実施例6)を用いたときの方が、抗CD45抗体修飾磁性粒子(実施例5)を用いたときよりPC9細胞の残存率がやや低下しているが、BSA修飾磁性粒子(実施例1[a]で作製)を用いた同様な試験での結果が残存率100%(表4)であることから、磁性粒子とPC9細胞との非特異吸着ではなく、抗CD15抗体とPC9細胞との非特異反応が原因であると考えられる。
実施例7
(1)ヒト肺がん細胞(PC9細胞)を、5%CO環境下、10%(v/v)FBS(ウシ胎児血清)を含むRPMI−1640培地を用いて37℃で24から96時間培養後、0.25%トリプシン/1mM EDTAを用いて培地から細胞を剥離し、蛍光染色色素(CFSE[5− or 6−(N−Succinimidyloxycarbonyl)fluorescein 3’,6’−diacetate]、同仁化学研究所社製)で標識した。
(2)インフォームドコンセントを取得した健常者血液3mLに、実施例1(2−1−1)に記載の方法で調製した安定化剤0.45mL、および(1)で蛍光標識したPC9細胞約100個を添加し、室温で10分以上放置した。
(3)放置後の試料に対して、0.9%(w/v)塩化アンモニウムと0.1%(w/v)炭酸水素カリウムとを含む溶血液で90mLまでメスアップ後、900×gで10分間、25℃で遠心分離した。当該操作により赤血球が破壊(溶血)され、分離回収したPC9細胞の観察が良好になる。
(4)遠心後の上清を除去した後、PC9細胞を含むペレットを、実施例1(2−1−3)に記載の方法で調製したPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))を含むPBS(リン酸緩衝生理食塩水)30mLで再懸濁した。
(5)再懸濁液を600×gで5分間、25℃で遠心分離後、上清を除去し、以下に示す組成の抗体修飾磁性粒子を添加後、磁石を用いてCD15および/またはCD45を発現している白血球を除去した。
[A]抗CD45抗体修飾磁性粒子(実施例3)1.8×10
[B]抗CD45抗体修飾磁性粒子(実施例3)2.7×10
[C]抗CD45抗体修飾磁性粒子(実施例3)1.8×10個および抗CD15抗体修飾磁性粒子(実施例2)1.2×10
[D]抗CD45抗体修飾磁性粒子(実施例3)2.7×10個および抗CD15抗体修飾磁性粒子(実施例2)0.12×10
[E]抗CD45抗体修飾磁性粒子(実施例3)2.7×10個および抗CD15抗体修飾磁性粒子(実施例2)0.24×10
[F]抗CD45抗体修飾磁性粒子(実施例3)2.7×10個および抗CD15抗体修飾磁性粒子(実施例2)0.60×10
(6)(5)で白血球を除去したPC9細胞を含む懸濁液を、実施例1(2−1−3)に記載の方法で調製したPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および280mMスクロースを含む溶液30mLで再懸濁した。
(7)再懸濁液を600×gで5分間、25℃で遠心分離後、上清を除去し、再度、PC9細胞を含むペレットを、実施例1(2−1−3)に記載の方法で調製したPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および300mMスクロースを含む溶液30mLで再懸濁した。当該操作は、血小板を含む血液成分を除去し、目的とするPC9細胞を濃縮するための操作である。
(8)再懸濁液を600×gで5分間、25℃で遠心分離後、上清を除去したPC9細胞を含む懸濁液を図1および2に示す細胞保持装置100に導入し、信号発生器50から電極基板31・32に交流電圧(1MHz、20Vp−p)を3分間印加することで前記装置が有する保持部60にPC9細胞を保持させた。本実施例で用いた細胞保持装置100は、直径30μmの貫通孔12aを複数有した絶縁体12と直径30μmの貫通孔11aを複数有した遮光性のクロム膜(遮光部材11)と電極基板31とを上から絶縁体12−遮光部材11−電極基板31の順に密着して設け、さらに絶縁体12の上面に試料の導入口21、排出口22および貫通部23を有する厚さ1mmのスペーサー20を、スペーサー20の上面に電極基板32を、それぞれ密着して設けてなる装置である。なお貫通孔11a/12aおよび電極基板31により、直径30μm、深さ30μmからなる細胞70を保持可能な保持部60が形成されている。
(9)保持部60に保持されたPC9細胞数を計測し、(2)で添加したPC9細胞数で除することで回収率を算出した。
(10)健常者血液3mL中の白血球数および(8)で上清を除去した後のPC9細胞を含む懸濁液中の白血球数を、白血球数算定用染色液(チュルク染色液、ナカライテスク社製)を用いて算定し、懸濁液中の白血球数を健常者血液3mL中の白血球数で除することで白血球の残存率を算出した。
結果を表5に示す。白血球の残存率は4.9%([F])から25.1%([A])であり、本発明の方法で製造した抗体修飾磁性粒子(実施例2および実施例3)により白血球が概ね除去(すなわち、大部分の白血球が抗体修飾磁性粒子に結合)されていることがわかる。なお、抗体修飾磁性粒子を組み合わせて添加する([C]から[F])および/または抗体修飾磁性粒子量を増やす([B]、[E]および[F])ことで白血球の残存率が減少(抗体修飾磁性粒子への白血球の結合率が向上)することがわかる。
PC9細胞の残存率は今回検討したいずれの系でも約70%以上を示し、本発明の方法で製造した抗体修飾磁性粒子(実施例2および実施例3)の白血球以外の細胞(PC9細胞)への非特異吸着は少ないことがわかる。なお、[C]の系でPC9細胞の残存率が比較的低い(69.7%)結果となったが、これは実施例6の結果と同様、抗CD15抗体とPC9細胞との非特異結合が原因と考えられる。
以上の結果から、本発明の方法で製造した標的細胞(白血球)に結合可能な担体を用いることで、複数種の細胞を含む溶液から、存在量の少ない希少細胞(PC9細胞)をロスせず標的細胞(白血球)を選択的に回収できることが確認された。
実施例8
(1)実施例1(1−1)から(1−3)に記載の方法で作製したEDCを結合させた磁性粒子を、0.01M MESバッファー(pH6.0)1mLで1回洗浄し、MESバッファー(pH6.0)200μLに再懸濁後、500mMタウリンを含む0.01M MESバッファー(pH6.0)50μLを添加し、37℃で1時間振とうすることで、タウリンと磁性粒子とを共有結合させ、磁性粒子表面のカルボキシ基をスルホ基に変換した。
(2)磁性粒子表面のカルボキシ基をスルホ基に変換後、超純水1mLで3回洗浄を行ない、2×10個/mLの濃度となるよう超純水に再懸濁した。
(3)(2)で得た磁性粒子を2×10個/mLの濃度となるよう超純水に懸濁後、ゼータ電位測定装置(大塚電子社製ELSZ)の標準セルに導入し、25℃におけるゼータ電位を測定した。なお磁性粒子のゼータ電位は、当該粒子について測定を3回行ない、得られたゼータ電位の平均値とした。
実施例9
表面にカルボキシ基を有した磁性粒子溶液(Magnosphere MS300/Carboxyl、1.0%スラリー、JSRライフサイエンス社製)450μLを、超純水1mLで3回洗浄を行ない、2×10個/mLの濃度となるよう超純水に再懸濁後、実施例8(3)と同様な方法でゼータ電位を測定した。
比較例3
(1)実施例1(1−1)から(1−3)に記載の方法で作製したEDCを結合させた磁性粒子を、0.1M Tris−HClバッファー(pH8.0)1mLで1回洗浄し、Tris−HClバッファー(pH8.0)200μLに再懸濁後、37℃で1時間振とうすることで、Trisと磁性粒子とを共有結合させ、磁性粒子表面のカルボキシ基をヒドロキシ基に変換した。
(2)磁性粒子表面のカルボキシ基をヒドロキシ基に変換後、超純水1mLで3回洗浄を行ない、2×10個/mLの濃度となるよう超純水に再懸濁した。
(3)(2)で得た磁性粒子を実施例8(3)と同様な方法でゼータ電位を測定した。
実施例8、実施例9および比較例3の結果をまとめて表6ならびに図3に示す。各粒子のゼータ電位は、表面がスルホ基の磁性粒子(実施例8)で−37.28mV、表面がカルボキシ基の磁性粒子(実施例9)で−28.52mV、表面がヒドロキシ基の磁性粒子(比較例3)で−23.99mVと、官能基のpKaが低いほど、ゼータ電位も低くなった。ゼータ電位の大きさは表面電荷の強さに対応しているため、この結果から、磁性粒子表面の官能基のpKaを下げることで磁性粒子とブロッキング剤であるアミノ基を有するタンパク質低吸着ポリマー(Blockmasuter CE510またはBlockmaster CE210)とがより強く静電相互作用できることがわかる。
表面がヒドロキシ基の磁性粒子(比較例1)よりも、表面がスルホ基の磁性粒子(実施例1)の方が白血球との非特異吸着が少ないことが示されている(表1)。表1および表6に示す結果から、磁性粒子と細胞との非特異吸着の程度は粒子のゼータ電位から予測でき、磁性粒子のゼータ電位が低いほど、前記非特異吸着が低減することが推測できる。したがって、表面がヒドロキシ基の磁性粒子(比較例3)よりもゼータ電位が低い、表面がカルボキシ基の磁性粒子(実施例9)は、表面がヒドロキシ基の磁性粒子(比較例3)よりも標的細胞との非特異吸着が少なくなることが示唆される。
なおカルボキシ基のpKaは4.76(酢酸のpKa)であることから、pKaが5以下の官能基を表面に有する担体のゼータ電位は−25mV程度となることが予想される。そのため、担体のゼータ電位を静電相互作用の強さの指標とする場合は、−25mV以下かどうかを確認すればよい。
100:細胞保持装置
11:遮光部材
12:絶縁体
11a・12a:貫通孔
20:スペーサー
21:導入口
22:排出口
23:貫通部
31・32:電極基板
40:導線
50:信号発生器
60:保持部
70:細胞

Claims (9)

  1. 担体が有する官能基とブロッキング剤が有する官能基とを静電相互作用させる工程を含む、担体をブロッキング剤でブロッキングする方法であって、
    ブロッキング剤または担体が有する官能基が、水中におけるpKa値5以下の官能基である、方法。
  2. 担体が有する官能基を用いて標的細胞に結合可能な物質を修飾させる工程と、残存した前記官能基を請求項1に記載の方法によりブロッキングする工程とを含む、標的細胞に結合可能な担体を製造する方法。
  3. ブロッキング剤または担体が有する官能基がスルホ基である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 標的細胞に結合可能な物質が標的細胞が有する表面抗原に特異的に結合可能な抗体である、請求項2または3に記載の方法。
  5. ブロッキング剤がポリエチレングリコールおよび担体が有する官能基と静電相互作用可能な官能基を少なくとも含む化合物である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 担体が磁性粒子である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. 標的細胞が白血球であり、標的細胞に結合可能な物質が白血球が有する表面抗原に特異的に結合可能な抗体である、請求項4から6のいずれかに記載の方法。
  8. 以下の(1)から(3)に示す工程を含む、血液試料中に含まれる希少細胞の検出方法。
    (1)血液試料中に含まれる赤血球を破砕または除去する工程
    (2)前記(1)の工程後の溶液から、請求項7に記載の方法で製造した白血球に結合可能な担体を用いて、白血球を除去する工程、
    (3)(2)の工程後の溶液に含まれる希少細胞を光学的に検出する工程
  9. 採取手段で請求項8に記載の方法で検出した希少細胞を回収する工程をさらに含む、血液試料中に含まれる希少細胞の採取方法。
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