JP2017523432A - 全血サンプルの安定化 - Google Patents

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Abstract

血液サンプル、例えば、臨床血液サンプルを、使用の前に貯蔵または輸送のために安定化する方法。例示的適用として、それだけには限らないが、サイトカインおよびイムノアッセイのためのT細胞または好中球などの白血球サブタイプの濃縮;移植のための臍帯血または末梢血からの前駆体細胞の単離、診断のための母体血からの胎児細胞の単離、および癌検出および療法のための循環腫瘍細胞の選別が挙げられる。

Description

優先権の主張
本願は、2014年8月15日に出願された米国仮特許出願番号第62/037,632号および2014年8月7日に出願された第62/034,481号の利益を主張する。前記のものの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
合衆国政府の助成による研究または開発
本発明は、米国国立衛生研究所によって拠出された助成金第EB002503号および同EB012493号のもと、政府の助成を受けて行われた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
本発明は、貯蔵のために、血液サンプル、例えば、臨床血液サンプルを安定化するための方法に関する。
末梢血は、診療所において最も頻繁に入手される組織であり、血液由来細胞の単離は、血液学、輸血、免疫学、再生医療および腫瘍学において広く臨床的および科学的に重要なものである。マイクロエンジニアリングにおける最近の進歩は、細胞の純粋な集団を単離することおよびハイスループット多次元アッセイを実施することにおける可能性を大きく前進させた(1)。血液チップ(blood-on-a-chip)技術の急速に成長している分野は、HIV疾患モニタリングのためのT細胞単離(2)およびサイトカイン分泌の多重化検出(3);外傷および火傷患者における好中球の遺伝子発現プロファイリング(4);CD34+造血幹細胞の濃縮(5);母体血からの有核赤血球(RBC)の、最小限の侵襲性での検出(6)ならびに癌診断のための稀な循環腫瘍細胞(7)および新薬の開発につながるような突然変異の同定(8)にわたる適用に拡大した。
しかし、任意の組織と同様に、全血(WB)は、ex vivoでは急速に劣化する。栄養分欠乏、酸化ストレス、浸透圧およびpHの変化ならびに毒性代謝副産物の蓄積などの分解事象が、迅速に始まる。数時間以内に、好中球が活性化、酸化バーストならびに壊死およびアポトーシスを起こす。血液沈殿は、物理的ストレスを引き起こし、付随的損傷および交差活性化を加速する限定空間中に壊死細胞を機械的に圧縮することによって分解を増悪する。血液サンプルの輸送は、制御されない振盪をもたらし、これは、溶血および血小板活性化を誘導する。これらの損傷は、サンプル中の対象の細胞の生存力および機能性に影響を及ぼすだけでなく、広範囲の適用において濃縮技術に非常に影響を与える。例えば、表面抗原の脱落は、抗体ベースの選別を無効にする。赤血球の連銭形成によって、稀な細胞が捕捉されてしまうことがある。特に、効率的な細胞選別に必須である微小流体選別技術は、棘状赤血球(棘を形成する老化赤血球)、血小板活性化および凝固ならびに細胞凝集によって損なわれる。
全血のさらなる複雑な保存戦略のために、別の方法で生化学的反応および分解プロセスを効率的に抑制し得る低体温温度範囲は、主に、低温誘導性血小板活性化のために不適合であると考えられてきた。したがって、現代の輸血医学では、全血は、通常、室温で保存され、24時間以内に特殊化された貯蔵のために種々の成分に分けられる(9)。配列決定および発現プロファイリングなどの多数の臨床上関連するアッセイが、大きな医療センターまたは診断検査施設において最良に実施されることを考えると、血液貯蔵および輸送のロジスティックの不足が、次世代血液ベース医療技術の普及に厳しい制限を課す。
全血の保存の改善から非常に恩恵を受けるであろう多数の適用の中に、固形腫瘍から脱落し、血液を介して転移を広げることができる循環腫瘍細胞(CTC)の単離がある。先端的微小流体技術は、癌患者の末梢血サンプルからのこれらの極端に稀な細胞(10億個の血液細胞中に1個)の単離を可能にし、これらの細胞および診断、予後のためのその分子指標の使用、新薬の開発につながるような突然変異の同定ならびに薬物スクリーニングのための患者特異的モデルの作製において相当な進歩があった。しかし、これらの下流アッセイは、分子情報および細胞機能を保持する、生存可能な、固定されていないCTCの単離に決定的に依存する。血液の分解は、CTCの分子解析を制限するだけでなく、これらの極端に稀な細胞の正確な微小流体単離を妨げる。
ex vivoでの全血の迅速な分解は、種々の次世代医療技術における血液由来細胞の利用にロジスティックな制限を課す。いくつかの方法が本明細書において記載され、その各々は、多数の臨床適用のために全血サンプルを保存するために単一でまたは組み合わせて使用され得る。例示的適用として、それだけには限らないが、サイトカインおよびイムノアッセイのためのT細胞または好中球などの白血球サブタイプの濃縮;移植のための臍帯血または末梢血からの前駆体細胞の単離、診断のための母体血からの胎児細胞の単離、および癌検出および療法のための循環腫瘍細胞の選別が挙げられる。
したがって、本発明は、全血のサンプルを安定化するための方法を提供する。本方法は、対象から全血のサンプルを得るステップ、およびサンプルにフィコール70を導入して、サンプルにおいて2〜20%(w/v)フィコール70を生ずるステップを含む。
また、全血のサンプルを安定化するための方法も提供される。本方法は、対象から全血のサンプルを得るステップ、ならびにサンプルにカスパーゼ阻害剤および任意選択で、保存料製剤を導入するステップを含む。
また、全血のサンプルを安定化するための方法も提供される。本方法は、対象から全血のサンプルを得るステップ、およびサンプルに保存料製剤を導入するステップを含み、ここで、保存料製剤は、48mMのHEPES、0.44mMのアデニン、6.75mMのマンニトール、0.77mMのN−アセチル−L−システインおよび8.5mMのNaClを含む。
また、全血のサンプルを安定化する方法も提供される。本方法は、対象から全血のサンプルを得るステップ、およびサンプルに血小板凝集抑制剤(PI)を導入するステップを含む。
また、全血のサンプルを安定化するための方法であって、対象から全血のサンプルを得るステップ、ならびにサンプルに、サンプルにおいて2〜20%(w/v)フィコール70を生ずるためのフィコール70、カスパーゼ阻害剤、48mMのHEPES、0.44mMのアデニン、6.75mMのマンニトール、0.77mMのN−アセチル−L−システインおよび8.5mMのNaClを含む保存料製剤および/または血小板凝集抑制剤(PI)のうちの1種または複数を導入するステップを含む方法も提供される。
いくつかの実施形態では、フィコール70は、サンプルにおいて少なくとも10%フィコール70を生ずるために添加される。
いくつかの実施形態では、カスパーゼ阻害剤は、Q−VD−OPh((3S)−5−(2,6−ジフルオロフェノキシ)−3−[[(2S)−3−メチル−2−(キノリン−2−カルボニルアミノ)ブタノイル]アミノ]−4−オキソペンタン酸)、Z−VAD−FMK(メチル(3S)−5−フルオロ−3−[[(2S)−2−[[(2S)−3−メチル−2−(フェニルメトキシカルボニルアミノ)ブタノイル]アミノ]プロパノイル]アミノ]−4−オキソペンタノエート)、Q−VD(OMe)−OPh((S)−メチル5−(2,6−ジフルオロフェノキシ)−3−((S)−3−メチル−2−(キノリン−2−カルボキサミド)ブタンアミド)−4−オキソペンタノエート)、またはBoc−D−fmk(メチル5−フルオロ−3−[(2−メチルプロパン−2−イル)オキシカルボニルアミノ]−4−オキソペンタノエート)である。いくつかの実施形態では、サンプルに、2〜10μM、例えば、約5μMの最終濃度を達成するように十分なカスパーゼ阻害剤が添加される。
いくつかの実施形態では、保存料製剤は、24〜48mMのHEPES、0.11〜0.44mMのアデニン、2.25〜6.75mMのマンニトール、0.39〜1.54mMのN−アセチル−L−システイン、0〜13.5mMのデキストロースおよび0〜17mMのNalを含む。いくつかの実施形態では、保存料製剤は、48mMのHEPES、0.44mMのアデニン、6.75mMのマンニトール、0.77mMのN−アセチル−L−システインおよび8.5mMのNaClを含む。
いくつかの実施形態では、血液は、20〜25℃で貯蔵のために安定化される。
いくつかの実施形態では、血液は、例えば、20〜25℃で72〜96時間維持または貯蔵される。
いくつかの実施形態では、PIは、チカグレロル、シロスタゾール、プラスグレル、ジピリダモール、プラスグレル、チロフィバン、エプチフィバチド、クロピドグレルまたはKF38789である。
いくつかの実施形態では、PIは、0.01〜100μg/mL、例えば、0.01〜1μg/ml、例えば、0.01〜0.5μg/mLの最終濃度を達成するようにサンプルに添加される。
いくつかの実施形態では、血液は、2〜25℃で貯蔵のために安定化される。いくつかの実施形態では、4℃で貯蔵のために安定化される。いくつかの実施形態では、本方法は、サンプルを4℃で維持するステップを含む。サンプルが、2〜25℃で少なくとも24、36、48、72または96時間維持または貯蔵される、請求項4、5または13〜16の方法。例えば、サンプルは、72時間(好中球安定化のために)および少なくとも96時間(赤血球安定化のために)保持され得る。
本明細書において使用される場合、語句「サンプルに導入する」とは、サンプルに何かを添加するまたはサンプルを何かに添加すること(例えば、サンプルを、添加剤をすでに含むチューブ中に入れること)を意味し得る。
本方法は、全血の微小流体評価および免疫系の機能を示し得る好中球遊走アッセイ(例えば、敗血症の診断における)などの臨床および実験室診断のためにサンプルにとって特に有用である。
特定の状況において使用するために本明細書に記載されるどの方法を選択するかは、いくつかの因子に応じてなされ得る。例えば、患者サンプルを別の場所に、例えば、臨床検査室に輸送することが望ましい場合には、冷蔵は選択肢ではなく、任意選択のカスパーゼ阻害剤とともに最適化された保存料が選択され得る。輸送後に微小流体デバイスを使用して評価されるサンプルには、任意選択のカスパーゼ阻害剤とともに最適化された保存料が選択され得、血小板凝集抑制剤も含まれる。
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるような同一の意味を有する。本発明において使用するための方法および材料は、本明細書に記載され、当技術分野で公知のその他の適した方法および材料も使用され得る。材料、方法および実施例は、単に例示であって、制限であると意図されるものではない。本明細書に記載される、すべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリーおよびその他の参考文献は、その全文が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めた本明細書が支配する。
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面から、および特許請求の範囲から明らかとなる。
図1A〜B.(A)全血(左)および10%F70を含有する血液(右)での赤血球沈殿速度(ESR)の測定を示す代表的画像を示す図である。(B)72時間にわたる、全血(WB)および種々のF70濃度を有する血液における血液サンプルのESR(WB、n=11;0%F70、n=9;5%F70、n=8;10%F70、n=11;15%F70、n=9)。0%F70は、F70を含まないRPMI培地で処理された対照条件を表す。エラーバーは、平均の95%信頼区間(CI)を表す。 図2A〜G.(A)せん断速度の関数としての血液サンプルの粘度(WB、n=5;5%F70、n=4;10%F70、n=5;15%F70、n=5)を示す図である。(B)種々のF70濃度の存在下での血液サンプルの密度を示す図である。(C)サンプルが20分間乱されないままであった場合、全血(WB)中のRBCは、自発的に凝集塊を形成する。RBC凝集は、5%F70の存在下で大きく阻害され、10%および15%F70の存在下で完全に防止される。スケールバーは、10μmを表す。(D)沈殿速度から算出した推定ESR値を示す図である。ここで、RBCは、4μmの半径(R)および1.1g/cmの密度を有する球形であると推定し、流体密度および粘度は、それぞれのF70条件における測定値を使用した。単細胞としての沈殿は、培地に関わらず極めて遅い(WB、10%F70および15%F70)。しかし、細胞凝集は、粒子の半径を効率的に増大し(すなわち、R×2、R×3など)、それによって、沈殿の速度を大幅に増大する。(E)バルク濃度の範囲でのフィコール70kDaまたは400kDaポリマーの存在下でのRBCの表面上の枯渇層の計算された厚みを示す図である。(F)バルク濃度の範囲のフィコール400kDaの最小相互作用エネルギーを示す図である。負のエネルギーは、RBC凝集を引き起こす引力を示す。フィコール70kDaによる相互作用エネルギーは、普遍的に、負ではなく、したがって示されていない。(G)RBCは、5%フィコール400kDaの存在下で直ちに凝集した。スケールバーは、10μmを表す。 図3A〜B.(A)最大72時間WB中または10%F70中で貯蔵されたRBCの代表的な位相差画像を示す図である。棘状赤血球は、棘形成を含有するRBCである。スケールバーは、10μmを表す。(B)72時間にわたって種々のF70濃度中の貯蔵された血液サンプル中の棘状赤血球のパーセンテージ(WB、n=9;0%F70、n=8;5%F70、n=6;10%F70、n=7;15%F70、n=6)。エラーバーは、平均の95%信頼区間(CI)を表す。 図4A〜F.(A)新鮮血液(0時間)および全血として、または10%F70中で72時間貯蔵された血液中の染色された好中球の高性能(100×)顕微鏡画像を示す図である。新鮮な好中球の核は、別個の分割された多葉性形態(0時間)を示し、これは、WBよりも10%F70において良好に提示される。スケールバーは、10μmを表す。(B)WBまたは10%F70中で72時間貯蔵した後の、Sytox Blueについて陽性に染まる(すなわち、膜が損なわれている)白血球または好中球のパーセンテージを示す図である。(C)WBまたは10%F70中で72時間貯蔵した後の、カスパーゼ−3/7活性について陽性に染まった白血球または好中球のパーセンテージを示す図である。(D)細胞質レムナントを伴う高度に分散された核材料が、貯蔵された血液において見られた。スケールバーは、10μmを表す。(E)好中球エラスターゼおよびヒストン−DNA複合体およびDAPIに対する抗体を用いて染色された健常な好中球(上部の列)および好中球細胞外トラップ(NET;下部の列)の免疫蛍光画像。明視野画像において単一RBCと比較してNETの大きな領域を注記する。スケールバーは、10μmを表す。(F)72時間貯蔵された血液サンプル中の好中球エラスターゼの定量化を示す図である。新鮮な血液サンプルでは、好中球エラスターゼが、37.8±16.5mU/1mLの血液のレベルで検出された(n=7)。陽性対照としての、酢酸ミリスチン酸ホルボール(NETの強力なインデューサー;n=7)を用いて刺激された新鮮全血は、レベルを81.4±64.4mU/mLに増大した。 WBまたは10%F70において24、48および72時間貯蔵した後の、Sytox Blueについて陽性に染まる白血球のパーセンテージを示す図である(WB、n=10;10%F70、n=10)。48時間(p<0.05)および72時間(p<0.001)でのボンフェローニポストテストを用いる2元配置分散分析法で、WB中の白血球は、10%F70よりも有意に少なく生存可能であった。 図6A〜C.(A)全血中の周囲条件下で貯蔵された赤血球の画像は、棘状赤血球(球形と推測される細胞)の形成を示す図である。(B)24〜96時間の貯蔵期間後、サンプルは、棘状赤血球の数を低減し、本質的に赤血球を再生するために、2mMのアデノシンの存在下で37℃で4時間インキュベートされ得る。(C)患者全血中の赤血球の分解が、経時的に観察される図である(n=5)。CS−オリジナル製剤の有効性は、対照とほぼ同一であり、再生された赤血球を支持する能力が制限されている。改変タグチ表で条件18から製造された製剤は、72時間貯蔵した後に赤血球再生を支持する優れた能力を示し、これでは赤血球の96±1%は健常と思われる。 図6A〜C.(A)全血中の周囲条件下で貯蔵された赤血球の画像は、棘状赤血球(球形と推測される細胞)の形成を示す図である。(B)24〜96時間の貯蔵期間後、サンプルは、棘状赤血球の数を低減し、本質的に赤血球を再生するために、2mMのアデノシンの存在下で37℃で4時間インキュベートされ得る。(C)患者全血中の赤血球の分解が、経時的に観察される図である(n=5)。CS−オリジナル製剤の有効性は、対照とほぼ同一であり、再生された赤血球を支持する能力が制限されている。改変タグチ表で条件18から製造された製剤は、72時間貯蔵した後に赤血球再生を支持する優れた能力を示し、これでは赤血球の96±1%は健常と思われる。 側方散乱v CD45散布図における白血球の分布が、予測される通りであり、細胞の各集団間で明確な区別を有することを示す図である。しかし、72時間周囲貯蔵した後、白血球集団は、シフトした。シフトされた細胞の大部分は、アポトーシスの/死滅した好中球であると後に決定された。 図8A〜I.好中球を、新鮮な健常ドナー血液から単離し、培養培地(IMDM、20%FBS)に添加したことを示す図である。対照(培養培地のみ)および処理された(アポトーシス/壊死阻害剤+培養培地)。0、24、48、72および96時間、周囲貯蔵した後にサンプルを調べた。(A)新鮮好中球(B)96時間対照好中球および(C)96時間Q−VD−OPh処理した好中球の側方散乱対CD45発現。(D)対照および処理されたサンプルを、経時的にモニタリングして、CD45発現の変化を測定し、各条件下で、(E)死滅数および(F)アポトーシス好中球を同定する。96時間の貯蔵後に(G)新鮮好中球、(H)対照好中球から、および(I)96時間の貯蔵後にQ−VD−OPh処理した好中球から、Wright−Giemsa染色したスメアから明視野画像を撮像した。 図8A〜I.好中球を、新鮮な健常ドナー血液から単離し、培養培地(IMDM、20%FBS)に添加したことを示す図である。対照(培養培地のみ)および処理された(アポトーシス/壊死阻害剤+培養培地)。0、24、48、72および96時間、周囲貯蔵した後にサンプルを調べた。(A)新鮮好中球(B)96時間対照好中球および(C)96時間Q−VD−OPh処理した好中球の側方散乱対CD45発現。(D)対照および処理されたサンプルを、経時的にモニタリングして、CD45発現の変化を測定し、各条件下で、(E)死滅数および(F)アポトーシス好中球を同定する。96時間の貯蔵後に(G)新鮮好中球、(H)対照好中球から、および(I)96時間の貯蔵後にQ−VD−OPh処理した好中球から、Wright−Giemsa染色したスメアから明視野画像を撮像した。 図9A〜B.好中球の、2つの条件下−高栄養対照条件(IMDM+20%FBS)およびIMDM+20%培地中Q−VD−OPhでの貯蔵を示す図である。(A)fMLPに対する遊走反応は、Q−VD−OPhを用いて処理されたサンプルにおいて保存され(72時間貯蔵後)、新鮮な単離された好中球の遊走反応とほとんど区別できない。しかし、対照条件下では、遊走活性の大幅な喪失があった。(B)この好中球機能の保存はまた、その遊走速度によっても観察され、これでは、Q−VD−OPh処理されたサンプルは、新鮮な単離された好中球に対して匹敵する速度を維持した。 温度の関数としての血小板活性化を示す図である。血小板を4〜37°Cの範囲の温度で20分間インキュベートし(時点1)、37°Cで1時間加熱する(時点2)か、または5mM EDTAと組み合わせ(EDTAあり)、その後、血小板活性化表面マーカーについての染色およびイメージングフローサイトメトリーを行った。PAC−1は、GPIIb/IIIaの活性型であり、CD62Pの発現は、血小板脱顆粒のマーカーである。血小板活性化は、細胞表面活性化マーカーを発現する血小板のパーセントを評価することによって決定した。本発明者らのデータは、血小板の低温誘導性活性化は、2種の表面タンパク質、CD62/p−セレクチンおよびGPIIa/IIIaと関連しており、血小板活性化の最大の変化は、37から22℃の間で起こることを示す。 種々の血小板凝集抑制剤の最適化/選択を示す図である。本発明者らは、チロフィバン、エプチフィバチド(Tocris)、クロピドグレル(Sigma)およびKF38789(Tocris)を含めたさまざまな血小板凝集抑制剤をさまざまな濃度で試験した。血小板を4または22℃で20分間インキュベートし、その後、血小板活性化表面マーカーについての染色およびイメージングフローサイトメトリーを使用する処理を行った。PAC−1およびCD62/p−セレクチンを含めた細胞表面マーカーを発現する血小板のパーセントを評価することによって血小板活性化を調べた。試験した血小板凝集抑制剤のうち、チロフィバンは、最も有望な結果を示し、低温処理された血小板は、0.01〜0.5μg/mLの範囲の投与量で最小限にしか活性化されなかった。 図12A〜I.非毒性血小板凝集抑制剤カクテルを示す図である。全血を、チロフィバン(0.1〜0.5μg/mL)とともにロッカー上で10分間インキュベートし、その後、貯蔵する。室温または4℃のいずれかでの貯蔵の間に、血液は揺り動かされない。貯蔵後、最大75分間揺り動かす間、血液にEDTA(2〜5mM)を添加する。PIがないことは、サンプルに血小板凝集抑制剤が添加されなかったことを示す。(A)血小板凝集抑制剤カクテルを伴う、または伴わない、0時間および72時間低温または室温貯蔵を比較する、血小板活性化表面マーカーPAC−1の発現を示す図である。(B)血小板凝集抑制剤カクテルを伴う、または伴わない、0時間および72時間低温または室温貯蔵を比較する、血小板活性化表面マーカーCD62Pの発現を示す図である。(C)血小板活性化パーセントを調べるための関連するゲートの開閉および血小板活性化パネルの代表的なフローサイトメトリー画像を示す図である。(D)本発明者らの血小板凝集抑制剤カクテルを適用した場合の血小板機能の完全阻害を示す血小板凝集測定トレースを示す図である。トロンビンをアゴニスト(1UNIT/500μl全血)として使用して、血小板活性化を誘導した。(E)白血球と相互作用する血小板を、イメージングフローサイトメトリーを使用して調べ、それによって、血小板−白血球相互作用は、CD41およびCD45二重陽性シグナルによって定義された。血小板凝集抑制剤カクテルは、逆の血小板−白血球相互作用を完了できる。 図12A〜I.非毒性血小板凝集抑制剤カクテルを示す図である。全血を、チロフィバン(0.1〜0.5μg/mL)とともにロッカー上で10分間インキュベートし、その後、貯蔵する。室温または4℃のいずれかでの貯蔵の間に、血液は揺り動かされない。貯蔵後、最大75分間揺り動かす間、血液にEDTA(2〜5mM)を添加する。PIがないことは、サンプルに血小板凝集抑制剤が添加されなかったことを示す。(A)血小板凝集抑制剤カクテルを伴う、または伴わない、0時間および72時間低温または室温貯蔵を比較する、血小板活性化表面マーカーPAC−1の発現を示す図である。(B)血小板凝集抑制剤カクテルを伴う、または伴わない、0時間および72時間低温または室温貯蔵を比較する、血小板活性化表面マーカーCD62Pの発現を示す図である。(C)血小板活性化パーセントを調べるための関連するゲートの開閉および血小板活性化パネルの代表的なフローサイトメトリー画像を示す図である。(D)本発明者らの血小板凝集抑制剤カクテルを適用した場合の血小板機能の完全阻害を示す血小板凝集測定トレースを示す図である。トロンビンをアゴニスト(1UNIT/500μl全血)として使用して、血小板活性化を誘導した。(E)白血球と相互作用する血小板を、イメージングフローサイトメトリーを使用して調べ、それによって、血小板−白血球相互作用は、CD41およびCD45二重陽性シグナルによって定義された。血小板凝集抑制剤カクテルは、逆の血小板−白血球相互作用を完了できる。 図12A〜I.非毒性血小板凝集抑制剤カクテルを示す図である。全血を、チロフィバン(0.1〜0.5μg/mL)とともにロッカー上で10分間インキュベートし、その後、貯蔵する。室温または4℃のいずれかでの貯蔵の間に、血液は揺り動かされない。貯蔵後、最大75分間揺り動かす間、血液にEDTA(2〜5mM)を添加する。PIがないことは、サンプルに血小板凝集抑制剤が添加されなかったことを示す。(A)血小板凝集抑制剤カクテルを伴う、または伴わない、0時間および72時間低温または室温貯蔵を比較する、血小板活性化表面マーカーPAC−1の発現を示す図である。(B)血小板凝集抑制剤カクテルを伴う、または伴わない、0時間および72時間低温または室温貯蔵を比較する、血小板活性化表面マーカーCD62Pの発現を示す図である。(C)血小板活性化パーセントを調べるための関連するゲートの開閉および血小板活性化パネルの代表的なフローサイトメトリー画像を示す図である。(D)本発明者らの血小板凝集抑制剤カクテルを適用した場合の血小板機能の完全阻害を示す血小板凝集測定トレースを示す図である。トロンビンをアゴニスト(1UNIT/500μl全血)として使用して、血小板活性化を誘導した。(E)白血球と相互作用する血小板を、イメージングフローサイトメトリーを使用して調べ、それによって、血小板−白血球相互作用は、CD41およびCD45二重陽性シグナルによって定義された。血小板凝集抑制剤カクテルは、逆の血小板−白血球相互作用を完了できる。 低温保存の間のRBC形態の保存を示す図である。ex vivo血液サンプルでは、棘状赤血球、別個の推定される形状を有するRBCが、一般に観察され、細胞ストレスの指標である。棘状赤血球カウントを、標準血液スメア、位相差イメージング(100×対物レンズを使用する)および実験条件あたり2つの画像(異なる視野から獲得された)にわたって100個のRBCをカウントすることを使用して得た。データは、血小板凝集抑制剤カクテル(貯蔵前に添加されたチロフィバン0.1〜0.5μg/mL;貯蔵後に添加されたEDTA 2〜5mM)と伴におよび伴わずに、0時間と、低温および室温72時間貯蔵を比較する。全血低温貯蔵は、RBCの最大80%の形態を最大72時間保存し得る。本発明者らの血小板凝集抑制剤カクテルの添加は、棘状赤血球形成に対して有害な効果を全く有さない。 低温貯蔵の間のWBC活性化を示す図である。イメージングフローサイトメトリーを使用し、CD66bおよびCD11aを含めた活性化の細胞表面マーカーを使用してWBC活性化パーセントを決定した。データは、血小板凝集抑制剤カクテル(貯蔵の10分前に添加されたチロフィバン0.1〜0.5μg/mL;貯蔵後に添加されたEDTA 2〜5mM)と伴におよび伴わずに、0時間と、低温および室温72時間貯蔵を比較する。影付きのデータ点は、健常なドナーから集められたデータを示すのに対し、中白の丸は、癌患者から集められたデータを示す。WBC活性化は、室温貯蔵に対して比較されるように低温貯蔵において低減される。本発明者らの血小板凝集抑制剤カクテルの添加は、WBCを活性化しない。これらの傾向は、健常ドナーおよび癌患者において観察される。 72時間の低温貯蔵の間のWBC生存力の保存を示す図である。低温貯蔵された対室温貯蔵されたWBCの生存力を、イメージングフローサイトメトリーによって生存(カルセインAMブルー)および死滅(カスパーゼ3/7)染色を使用して評価した。生存細胞は、カルセイン陽性およびカスパーゼ陰性細胞と定義され、死滅細胞は、カスパーゼ陽性細胞と定義される。顆粒球を、低CD45および高CD16発現に基づいてゲート開閉し、顆粒球は、高CD45発現を示した。データは、血小板凝集抑制剤カクテル(貯蔵の10分前に添加されたチロフィバン0.1〜0.5μg/mL;貯蔵後に添加されたEDTA 2〜5mM)と伴におよび伴わずに、0時間と、低温および室温72時間貯蔵を比較する。低温で貯蔵されたWBCの生存力は、室温貯蔵された血液よりも良好である。血小板凝集抑制剤カクテルの添加は、WBC生存力に対して効果はない。 低温貯蔵の間のLNCaP生存力を示す図である。低温貯蔵された対室温貯蔵された稀な癌細胞の生存力を、イメージングフローサイトメトリーによって生存(カルセインAMブルー)および死滅(カスパーゼ3/7)染色を使用して評価した。生存細胞は、カルセイン陽性およびカスパーゼ陰性細胞と定義され、死滅細胞は、カスパーゼ陽性細胞と定義される。LNCaP細胞を、EpCAM細胞表面マーカーを使用してゲート開閉した。データは、血小板凝集抑制剤カクテル(貯蔵の10分前に添加されたチロフィバン0.1〜0.5μg/mL;貯蔵後に添加されたEDTA 2〜5mM)と伴におよび伴わずに、0時間と、低温および室温72時間貯蔵を比較する。PIがないことは、サンプルに血小板凝集抑制剤が添加されなかったことを示す。影付きのデータ点は、健常なドナーから集められたデータを示すのに対し、中白の丸は、癌患者から集められたデータを示す。低温で貯蔵された稀な細胞の生存力は、室温貯蔵された血液よりも良好である可能性がある。血小板凝集抑制剤カクテルの添加は、稀な細胞の生存力に対して効果を有さない。これらの傾向は、健常ドナーおよび癌患者において観察される。 図17A〜F.CTC−iChipによる低温貯蔵された血液の処理を示す図である。血小板凝集抑制剤は、新鮮な血液および低体温温度(4℃)のもとで3日間貯蔵された血液両方のCTC−iChip処理を可能にした。ここで、使用された血小板凝集抑制剤(PI)は、0.5μg/mLのチロフィバンまたは1μg/mLのチロフィバン+エプチフィバチド20μg/mL(貯蔵前に添加された)のいずれかであった。EDTA(2〜5mM)を、iChip処理の15分前に血液サンプルに添加した。(A)血小板凝集抑制剤の非存在下での、重度の閉塞を表す画像。画像は、CTC−iChipの濾過アレイの第1段階におけるVybrant DyeCycle Green(Life Technologies)によるDNAの蛍光染色を示す。スケールバーは、100μmを表す。(B)標的容量(5〜6mL)のパーセンテージとしてのCTC−iChipによって処理された総血液容量を示すプロット。データは、血小板凝集抑制剤カクテルと伴のおよび伴わない、新鮮なおよび貯蔵された血液を比較する。(C)血小板凝集抑制剤カクテルと伴のおよび伴わない、新鮮なおよび貯蔵された血液を比較する、CTC−iChipによって処理された全血の血液スループットまたは流速(mL/hr)を示す図である。(D)実際に処理された容量に基づいて算出された、iChip選別後に添加された循環腫瘍細胞(CTC)の回収率を示す図である。回収パーセンテージは、処理された血液容量にのみ基づいており、これは、(B)において示されるチップ閉塞の事象では大幅に低減された。したがって、CTCの絶対回収率はかなり低く、回収パーセンテージ×処理された容量によって算出され得る。(E)CTC−iChipによる、白血球の対数変換した枯渇倍数を示す図である。枯渇が高いほど、濃縮されたCTC集団がより純粋となる。4対数の枯渇は、10000倍の枯渇に変換でき、これは、5×106個の白血球/mLの血液を含有する通常の血液サンプルは、濃縮CTC生成物中に500個の白血球/1mLの処理された血液しか残さないことを意味する。(F)CTC生成物への赤血球(RBC)/血液1μLの持ち込みを示す図である。 iChip選別後のCTCの培養物を示す図である。血液中に循環腫瘍細胞を添加し(2000〜5000個細胞/mL)、CTC−iChipによって濃縮した。iChipから集めたCTC生成物をプレーティングし、培養した。Bright−Gloルシフェラーゼアッセイ系を使用して発光量によって細胞成長を定量した。発光シグナルを、iChip処理の直後に培養を開始した日である0日目のシグナルに対して正規化した。iChip処理を全く伴わない陽性対照を含めた。 iChip選別後の単一細胞PCR(左)およびマスサイトメトリーを示す図である。(左)血液中にLNCaP細胞を添加し(2000個細胞/mL)、iChipによって単離し、単一細胞転写プロファイリングのために顕微操作した(参考文献30、Ozkumur 2013 Sci Transl Med)。示されるデータは、前立腺癌に特異的な遺伝子の平均発現を表す。各貯蔵条件において、4個の細胞を無作為に選択し、プロファイリングした。(右)LNCaP細胞を用いる同一実験から得た濃縮されたiChip生成物のマスサイトメトリー。上皮細胞接着分子(EpCAM)の発現は、室温と比較して低温貯蔵においてより良好に保存された。
全血の保存を改善することは、広範囲の臨床的および科学的適用への機会を開く。生存可能な状態での保存は、輸血および組織再生などの適用のためだけでなく、固定の際に激しく損なわれ得る高品質分子材料を必要とする診断試験のためにも重要である(19)。いくつかの方法が本明細書に記載され、それらの各々は、多数の臨床適用のために全血サンプルを保存するために単一でまたは組み合わせて使用され得る。例示的適用として、それだけには限らないが、サイトカインおよびイムノアッセイのためのT−細胞または好中球などの白血球サブタイプの濃縮、移植のための臍帯血または末梢血からの前駆体細胞の単離、診断のための母体血からの胎児細胞の単離ならびに癌検出および療法のための循環腫瘍細胞の選別が挙げられる。
方法1.流体相中で血液サンプルの安定化
精製された血液成分のために設計される保存溶液における進展にもかかわらず、全血の保存における進歩は、比較的制限されており、血液沈殿の基本的な問題に対処する試みはなされてこなかった。本明細書において示されるように、血液沈殿および関連する細胞分解は、物理的安定化によって最小化され得る。
血液沈降は、単純な物理学の点で理解され得る。種々の流体における単一球沈殿について、球の重量は、浮力とストークの抗力によってバランスが保たれており、沈殿速度
[式中、
ρは、球の密度であり、ρは、流体の密度であり、μは、流体の粘度であり、gは、重力であり、Rは、球の半径である]を示す。したがって、沈殿速度は、密度の差(球と流体間)および半径の二乗に比例し、流体粘度に反比例する。この方程式は、赤血球凝集(Rの増大)が赤血球沈殿速度(ESR)を増大する理由を説明する。
本発明者らは、血液の懸濁された貯蔵を達成するために、その中性電荷および高親水性のために高度に生体適合性である多糖フィコールを選択した。デキストランおよびポリエチレングリコール、例えば、デキストラン40kDaポリマーなどの同様の生理化学的特性を有するポリマーも使用され得る。本発明者らは、室温で3日にわたる血液沈殿の防止におけるフィコールポリマーの能力をまず試験し、関連機序を調査した。次いで、本発明者らは、この処置が、通例の血液細胞濃縮法ならびに貯蔵中の血液細胞の形態、生存力および種々の生物学的プロセスに対する物理的安定化の効果に影響を及ぼすか否かを研究した。
血液へのフィコールポリマーの導入は、簡単であり、白血球濃縮のための一般的なアッセイと適合する。物理的安定化は、赤血球凝集、棘状赤血球形成を阻害し、白血球生存力を維持し、好中球のNETosisを防止した。
生物物理学的安定化の利益
RBC凝集の阻害は、処理および細胞保存の両方の点で血液サンプルにいくつかの利益を付与する。第1に、最重要に、血液沈殿が、ほとんど完全に防がれ、これは、連続混合の必要性を排除し、したがって、血液の反復される連続サンプリングを必要とする貯蔵および輸送ならびに実験室アッセイを促進し得る。さらに、このアプローチは、低せん断粘度を低下させることによって血液のレオロジー特性を改善する(図2A)。全血では、RBC凝集物を最初に分散させ、特徴的なせん断流動化(shear-thinning)挙動を引き起こすにはさらなるストレスが必要である(20、27)。F70の添加によって、低せん断範囲で血液サンプルがより容易に流れることが可能となり(図2A)、これは、特に、微小流体適用において関連する。実際、臨床設定において血液灌流を改善するために小ポリマーが利用されてきた(28、29)。
その単純性にもかかわらず、物理的安定化が、種々の種類の血液細胞の保存を劇的に改善した。すべての血液細胞の総容量の99%を構成する赤血球は、F70の存在下でその両凹形態を保持していた。この結果は、大きさベースの細胞選別(例えば、濾過)または決定論的横置換法などの細胞の水力学的特性に頼る微小流体プロセスなどの適用に恩恵をもたらすはずである(30)。白血球、特に、脆弱好中球は、優れた完全性およびアポトーシスの減少を示した。さらに、NET形成の阻害は、血液貯蔵において重要な意味を有する。活性化された好中球は、好中球酵素と混合されたクロマチン繊維を放出して、NETを形成することが知られている(31)。NETは、感染に対する防御となるが、血栓形成(32)および自己免疫反応(33)も促進し得る。さらに、輸血のための貯蔵されたRBCユニットにおけるNETの放出(17)は、輸血関連急性肺損傷を引き起こすと示唆されている(34)。本発明者らは、DNA、好中球エラスターゼおよびミエロペルオキシダーゼなどのNET成分の存在は、全血中のその他の細胞に付随的損傷を誘導し、全血液サンプルの分解を加速すると仮定する。したがって、すべての血液細胞の保存は、対象の細胞が非血液学的なものである適用においてでさえ重要である。例えば、稀な循環腫瘍細胞(10個の血液細胞中に1個)の選別および解析は、癌の臨床管理のための非侵襲性液体生検として大きな可能性を有する(35)。血液学的細胞の分解は、稀な循環腫瘍細胞に付随的損傷を引き起こすだけでなく、血液細胞の規定された生物学的および物理的特性に頼る細胞選別技術に負に影響を及ぼす。
本発明者らのプロトコールの容易な実施およびフィコールポリマーの有効性は、既存の手順およびアッセイを改善する機会を提供し得る。例えば、免疫学的アッセイは、検体輸送に相当するように24時間遅延して実施されることもある。細胞保存に先立つ最大48時間の臍帯血の短期間貯蔵も、一般的に実施される。これらの時間枠内で、顆粒球(90%超が好中球である)の分解は、T−細胞アッセイに負に影響を及ぼすとわかっている(36、37)。フィコールの、特に短い時間枠内で好中球完全性を維持する能力(図5)は、同様の適用における直接使用を見出し得る。
要約すると、少なくとも5%、10%または15%フィコール70を使用して細胞性分解を最小化し、細胞傷害性分解生成物の放出を制限して、均一な懸濁液中で血液を安定化することによって、本発明者らは、血液沈殿および再混合の悪循環を防止し、それによって、サンプル貯蔵および輸送の基本的な機械的問題を対処した。
方法2.最適化された保存料製剤
第2の方法では、任意選択で、カスパーゼ阻害剤を含む最適化された保存料製剤が開発された。この製剤は、臨床サンプルに、また周囲(例えば、20〜25℃)温度で維持されるべきすべてのサンプルに特に適している。
いくつかのカスパーゼ阻害剤は、当技術分野で公知であり、汎カスパーゼ阻害剤として、Q−VD−OPh((3S)−5−(2,6−ジフルオロフェノキシ)−3−[[(2S)−3−メチル−2−(キノリン−2−カルボニルアミノ)ブタノイル]アミノ]−4−オキソペンタン酸)、Z−VAD−FMK(メチル(3S)−5−フルオロ−3−[[(2S)−2−[[(2S)−3−メチル−2−(フェニルメトキシカルボニルアミノ)ブタノイル]アミノ]プロパノイル]アミノ]−4−オキソペンタノエート)、Q−VD(OMe)−OPh((S)−メチル5−(2,6−ジフルオロフェノキシ)−3−((S)−3−メチル−2−(キノリン−2−カルボキサミド)ブタンアミド)−4−オキソペンタノエート)、またはBoc−D−fmk(メチル5−フルオロ−3−[(2−メチルプロパン−2−イル)オキシカルボニルアミノ]−4−オキソペンタノエート)が挙げられる。いくつかの実施形態では、カスパーゼ阻害剤は、Q−VD−OPh、強力な抗アポトーシス性特性を有する、スペクトルが広いカスパーゼ阻害剤である。
保存料製剤は、例えば、以下に示されるCS−18であり得、例えば、2〜10μM、例えば、約5μM、24〜48mM HEPES、0.11〜0.44mMアデニン、2.25〜6.75mMマンニトール、0.39〜1.54mM N−アセチル−L−システイン、0〜13.5mMデキストロースおよび0〜17mM NaClのQ−VD−OPhが挙げることができる。好ましい製剤として、48mM HEPES、0.44mMアデニン、6.75mMマンニトール、0.77mM N−アセチル−L−システインおよび8.5mM NaClがある。
方法3.血小板凝集抑制を伴う低温貯蔵
第3の方法では、サンプルに血小板凝集抑制剤を添加し、その後、サンプルを冷却し、低温、例えば、2〜25℃で維持する。血小板凝集抑制剤は、血小板を、それだけには限らないが、抗体ベースの細胞濃縮および微小流体血液細胞選別を含めた単離技術を干渉する活性化および凝集から防ぐ。シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、アセチルサリチル酸およびトリフルサル(Disgren));アデノシン二リン酸(ADP)受容体阻害剤(例えば、クロピドグレル(Plavix)、プラスグレル(Effient)、チカグレロル(Brilinta)またはチクロピジン(Ticlid));ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、シロスタゾール(Pletal));プロテアーゼ活性化受容体−1(PAR−1)アンタゴニスト(例えば、ボラパクサール(Zontivity));糖タンパク質IIB/IIIA阻害剤(例えば、アブシキマブ(ReoPro)、エプチフィバチド(Integrilin)、ロキシフィバン(roxifiban)、オルボフィバン(orbofiban)またはチロフィバン(Aggrastat));アデノシン再取り込み阻害剤(例えば、ジピリダモール(Persantine));トロンボキサン阻害剤(例えば、トロンボキサンシンターゼ阻害剤またはテルトロバン(Terutroban)などのトロンボキサン受容体アンタゴニスト);またはP−セレクチン媒介性細胞間接着の阻害剤(例えば、KF38789(3−[7−(2,4−ジメトキシフェニル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,4−チアゼピン−5−イル]−4−ヒドロキシ−6−メチル−2H−ピラン−2−オン))を含めた、いくつかの血小板凝集抑制剤は、当技術分野で公知である。好ましい実施形態では、血小板凝集抑制剤は、糖タンパク質IIB/IIIA阻害剤、例えば、チロフィバン、ロキシフィバン(roxifiban)、オルボフィバン(orbofiban)、エプチフィバチドまたはアブシキマブである。いくつかの実施形態では、0.01〜100μg/ml、例えば、0.01〜1μg/ml、例えば、0.01〜0.5μg/mLの範囲の投与量を得るために、血小板凝集抑制剤の十分な量がサンプルに添加される。
実施例
本発明を、以下の実施例においてさらに記載するが、これらは、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を制限しない。
全血保存における物理的安定化の役割
全血サンプルの保存を改善する試みにおいて、本発明者らは、この流体組織の貯蔵における基本的であるが、見落とされた態様、すなわち、血液沈殿に対処した。血液沈殿は、機械的ストレスを誘導するだけでなく、血液細胞を圧縮し、活性化された、分解性白血球によって引き起こされる付随的損傷を加速する。本発明者らは、ポリマーフィコール70kDaは、主に、赤血球凝集を抑制することによって、72時間にわたって血液サンプルを安定化し、血液沈殿を防ぐことを見出した。このアプローチは、赤血球溶解および免疫磁気精製を含めた一般的な白血球濃縮技術と適合した。棘状赤血球形成および白血球生存力およびアポトーシスを含めた尺度において沈殿した血液を比較した場合に、物理的安定化は、細胞の優れた保存と関連していた。注目すべきことに、好中球の完全性は保存され、好中球エラスターゼ−好中球細胞外トラップのマーカーの放出が大幅に低減した。この研究は、血液沈殿は、生体材料を使用して防がれ得、さまざまな診断技術において意味を有することを最初に示した。
材料および方法
以下の材料および方法を実施例1において使用した。
血液サンプルおよびフィコールの添加
血液サンプルは、健常なボランティアから入手するか、またはResearch Blood Components(Brighton、MA)から購入した。すべての血液サンプルは、クエン酸デキストロース−A(ACD−A)チューブ(BD Vacutainer;8.5mL)中に入れ、4時間以内に使用した。
全血(WB)を、何らかの改変を行わずに使用した。フィコール70kDa(GE Healthcare)ポリマーを血液中に導入するために、フィコール(20%、40%および60%w/v)の濃縮された保存溶液を、10mM HEPES(Life Technologies)を補充したRPMI 1640培地(フェノールレッド;Life Technologiesを含まない)に溶解し、濾過滅菌し、1:3の容量比で全血に添加した。例えば、5%F70を有する血液を調製するために、1部の20%フィコールを3部のWBに添加し、使用前に10〜15分間混合した(HulaMixer;Life Technologies)。0%F70サンプルについては、1部のRPMIを3部のWBに添加し、結果として、75%血液容量画分が得られた。血液サンプルを、室温で、乱されない、滅菌の気密性チューブ中に貯蔵した。
赤血球沈殿速度アッセイ
赤血球沈殿速度(ESR)アッセイは、標準化されたWestergren方法(Dispette 2;Fisherbrand)の寸法に一致するピペットを使用して、1.3mLの全血またはフィコール血液を用いて実施した。ESRをミリリットルで、24、48および72時間に記録した。
レオロジー
スチール二重壁同心円筒構造を有するTA Instruments Discovery HR−3血流計を使用して、クエット流動測定を実施した。各実験に8.5mLのサンプルを使用した。10年あたり5点で、0.1/s〜1000/sの範囲のせん断速度でデータ点を獲得した。
血液細胞の形態評価
棘状赤血球の数え上げのために、サンプルを穏やかに混合し、その後、液滴(約10μL)をガラススライドに移し、スメアを引き、EVOS FL Cell Imaging System(Life Technologies)を使用して、位相差顕微鏡を使用して40×で撮像した。サンプルあたり約100個の無作為のRBCをカウントし、棘状赤血球をその明確な棘形成によって同定した。
標準手順に従って、Wright−Giemsa染色を実施した。手短には、サンプルの液滴(約10μL)を、ガラススライド上にスメアを引き、風乾し、100%メタノール中で固定化し、Wright−Giemsa染色剤(Sigma)中に30秒間浸漬し、その後、脱イオン水ですすいだ。Nikon Eclipse 90i顕微鏡でNikon 100×Apo VC 100×/1.40オイル対物レンズを使用して、Nikon DS−Ri1カラーカメラ(12ビット;1280×1024解像度)を用いて画像を獲得した。
白血球濃縮および収率定量
赤血球溶解を、赤血球溶解溶液(Miltenyi Biotec)を使用して実施した。溶解後、細胞を300×gで遠心沈殿させ、10mL RoboSepバッファー(Miltenyi Biotec)で洗浄し、再度遠心沈殿させた、600μLのRoboSepバッファーに再懸濁し、Beckman Z2コールターカウンターを使用してカウントした。好中球濃縮を、EasySepヒト好中球濃縮キット(Stemcell Technologies)を、製造業者のプロトコールに従って使用して実施した。手短には、枯渇抗体カクテルを、濃縮された白血球(RBC溶解によって得られた)と混合し、続いて、磁性粒子とともにインキュベートした。次いで、標識不含好中球が別のコニカルチューブ中に流れるので、EasySep磁石を使用して不要な細胞を固定化した。濃縮された好中球を再度遠心沈殿させ、1mLの、0.3%BSAおよび10mM HEPESを含有するRPMI培地に再懸濁し、カウントし、イメージングフローサイトメトリーについて染色した。
表面マーカーのイメージングフローサイトメトリーおよび細胞生存力
イメージングフローサイトメトリーを、40×対物レンズ、6つのイメージングチャネルならびに405nm、488nmおよび642レーザーを備えたImageStream Mark IIイメージングフローサイトメーター(Amnis Corporation)を使用して実施した。細胞生存力およびCD45発現の解析のために、RBC溶解後、濃縮された白血球をHEPES緩衝生理食塩水中、0.1%BSAに再懸濁し、適用可能な場合には、以下の抗体および染色剤を用いて染色した:DRAQ5(1μM;Cell Signaling Technologies)、Sytox Blue(1μM;Life Technologies)、CellEventカスパーゼ−3/7緑色検出試薬(0.75μM;Life Technologies)、FITCコンジュゲートCD45抗体(1:500;クローン5B1;Miltenyi Biotec)、PEコンジュゲートCD66b抗体(1:125;クローンG10F5;Stemcell Technologies)およびPE−Cy7コンジュゲートCD16抗体(1:200または1:333;クローン3G8;BD Biosciences)。単細胞を核マーカーDRAQ5を使用してゲート開閉した。好中球をCD66bおよびCD16の二重陽性によって同定した。濃縮後、好中球活性化の解析のために、DRAQ5(1μM;Cell Signaling Technologies)、VioBlueコンジュゲートCD45抗体(1:100;クローン5B1;Miltenyi Biotec)、Alexa Fluor 488コンジュゲートCD11b抗体(1:500;クローンICRF44;Stemcell Technologies)、PEコンジュゲートCD66b抗体(1:125;クローンG10F5;Stemcell Technologies)およびPE−Cy7コンジュゲートCD16抗体(1:333;クローン3G8;BD Biosciences)を用いて細胞を染色した。
NETの可視化のための免疫蛍光染色および顕微鏡観察
ポリ−L−リシンコーティングされたガラススライド上の血液スメアを、100%メタノールで固定化し、風乾し、4%パラホルムアルデヒドを用いて固定化し、室温で4時間ブロッキングし、透過処理した(2%ヤギ血清+0.1%Triton X−100)。次いで、スライドを、0.3%ウシ血清アルブミン中で抗好中球エラスターゼウサギpAb(25μg/mL;Calbiochem)および抗H2A−H2B−DNAマウスmAb(クローン PL2−6;1μg/mL)とともに4℃で終夜インキュベートした。次いで、スライドを、Alexa Fluor 488コンジュゲートヤギ抗ウサギIgGおよびAlexa Fluor 555コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(両方とも1:500;Life Technologies)とともに室温で45分間インキュベートし、PBSですすぎ、DAPI(Vector Laboratories)を含むVECTASHIELD封入剤を使用してマウントした。Nikon Eclipse 90i顕微鏡でNikon S Plan Fluor ELWD 60x/0.70対物レンズを使用してQImaging Retiga 2000Rカメラを用いて画像を獲得した。
好中球エラスターゼの定量
血液サンプルを穏やかに混合し、血漿中へのNET内容物の放出のために37℃に4時間加温し、PBSを用いて25%の最終血液容量画分に希釈し、その後、2000×gで5分間遠心分離した。次いで、上清を注意深く、新しい遠心分離管に移し、さらなる処理のために−80℃で貯蔵した。好中球エラスターゼのレベルを、好中球エラスターゼ活性アッセイキット(Cayman Chemical Company)を、製造業者のプロトコールに従って使用し、SpectraMax M5分光計(Molecular Devices)を使用して定量した。NETosisの陽性対照として、新鮮全血に酢酸ミリスチン酸ホルボール(100nM)を添加し、その後、インキュベートした。
統計解析
数値データが、平均±標準偏差として報告されている。ペアワイズ比較は、マン・ホイットニーの検定を使用した。本発明者らは、密度の比較のために、1元配置分散分析法を使用し、直線傾向についてのポストテストを続けた。本発明者らは、WBおよびF70条件を経時的に比較するために、2元配置分散分析法と、それに続いて、ペアワイズ比較のためのボンフェローニポストテストを使用した。すべての統計分析をPrism 5(GraphPad)を用いて実施した。
実施例1.1 血液の生物物理学的安定化
本発明者らは、Westergren方法において使用された標準化されたピペットを用いてESRを定量化した(図1A)。フィコールの非存在下では、全血は迅速に沈殿し、24時間で62.6±26.5mmに達し、さらに、48および72時間で、それぞれ、78.9±20.0および84.9±15.6mmに達した(図1B)。フィコール70kDa(F70)を血液中に導入するために、本発明者らは、F70の濃縮された保存溶液(RPMI培地に溶解した)を血液サンプルに1:3の比で混合し、その結果、最終の示されたF70濃度(w/v)が得られた。5%、10%および15%F70の添加は、すべての測定された時点でESRを大幅に低減した(図1B;24、48および72時間のWBと比較してp<0.0001)。印象的に、10%および15%F70は、72時間にわたって沈殿をほぼ完全に防いだ(ESRは、それぞれ7.3±3.1mmおよび4±1.6mmであった;図1B)。本発明者らは、安定化効果は、添加された培地ではなく、F70によるものであったことを確認するために、全血を、RPMIを用いて同一比で希釈することによってESRが変化しないことを見出した(0%F70、図1B;すべての時点でWBと比較してp>0.05)。
本発明者らは、フィコールポリマーが全血を安定化した方法を理解するために、血液沈殿に関連しているそのレオロジー特性、すなわち、粘度、密度および細胞凝集を特性決定した。本発明者らは、0.1/s〜1000/sの範囲のせん断速度で、血液サンプルでクエット粘度測定をまず実施した。全血は、せん断流動化挙動を示し、粘度が、0.1/sのせん断速度での51.9±18.9cPから1000/sのせん断速度での4.1±0.4cPに低下した(図2A)。15%F70の添加は、血液サンプルの低せん断粘度を増大し(WBと比較して、せん断速度≦0.398/sでp<0.01)、せん断流動化プロフィールを保持した(図2A)。対照的に、5%および10%F70は、全血の粘度を大幅に変更しなかった(図2A)。驚くべきことに、これらの両F70濃度は、低せん断範囲において15%F70よりも低い粘度を示した(15%F70に対して5%について、せん断速度≦0.631/sでp<0.05;15%F70に対して10%について、せん断速度≦0.251/sでp<0.01)。WB、5%F70、10%F70および15%F70の密度は、それぞれ、1.047±0.009g/mL、1.051±0.007g/mL、1.063±0.006g/mLおよび1.071±0.006g/mLであった(図2B;p<0.0001、直線傾向についてのポストテストを用いる1元配置分散分析法)。
密度のその増大は、最小限であり(15%F70について、わずか2.3%)、粘度の変化は有意でない(5%および10%F70について)ことは、フィコールが、RBC凝集を防止することによって全血を安定化することを示唆した。沈殿速度vに基づいたESR値の推定は、沈殿が、RBCが単細胞として沈殿する限り、全血においてでさえ最小限である(10mm未満)ことを実証した(図2D)。沈殿速度は、粒子半径の二乗につれて増減するので、RBC凝集は、ESRの増大に最も大きく貢献する(図2D)。本発明者らは、全血中のRBCが数分内に迅速に凝集するのに対し、F70の添加は凝集を大きく抑制することを実験によって確認した(図2C)。注目すべきことに、10%および15%F70は、凝集を完全に防ぎ(図2C)、これら2種の実験条件における推定ESRと実測ESR値の間の一致を十分に説明する。
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らはまた、安定化の機序を調査した。全血における血液沈殿は、大きな血漿タンパク質の存在下で自発的RBC凝集によって駆動され、それらの中では、フィブリノゲン(約340kDa;水力学的半径約11nm)が最も大規模に研究されている(20、21)。RBC凝集に関与する分子力は、大きな水力学的半径(≫4nm)の高分子が、RBC表面付近から優先的に排除され、それによって、浸透圧力(すなわち、枯渇力)を誘導し、これが、RBCの凝集をもたらすとする(22、23)枯渇相互作用機序によって説明され得る(22)。この力は、両タンパク質および非タンパク質ポリマーによって生じ得、白血球濃縮のためにRBC沈降を加速するためによく使用される大きなヒドロキシエチルデンプン(130kDa超)およびフィコール400kDa(半径=10nm)の凝集効果を説明する。しかし、小ポリマーが、代わりに、枯渇層において、この限局空間に浸透するその能力のために浸透圧力を低減することによって(23、26)RBC凝集を抑制することはあまり理解されていない(24、25)。この枯渇モデルも、フィコールポリマーを用いる本発明者らの実験知見と一致するか否かを理解するために、本発明者らは、NeuおよびMeiselmanによる理論的定式化(22)に従って、70kDa(半径=5.1nm)または400kDaフィコール(半径=10nm)の存在下でRBC間の相互作用エネルギーを計算した。本明細書において、本発明者らは、浸透特性の計算にフィコール分子の球状の形態を考慮して、RBC表面上の負に帯電した糖衣ならびにポリマー排除によって誘導される枯渇力による静電反発力を考慮した。本発明者らは、より大きなフィコール400kDaは、十分に厚い枯渇層をもたらして(図2E)、総相互作用エネルギーを負の値(すなわち、引力;図2F)に低減することを見出した。対照的に、フィコール70kDaの存在下で相互作用エネルギーは、一般に、非負値であった。本発明者らはまた、フィコール400kDa(5%)は、RBC凝集につながることを実験によって確認した(図2G)。
実施例1.2 赤血球保存
本発明者らは、全血サンプルの物理的安定化が、赤血球の保存を改善するか否かを調べるために処理した。RBC老化の特有の特徴は、両凹円板形態の喪失および棘状赤血球と呼ばれる棘形成の出現を特徴とする(図3A)。本発明者らは、沈殿した全血またはフィコール安定化された血液における貯蔵の結果としての棘状赤血球のパーセンテージを定量化した(図3B)。全血における棘状赤血球レベルは、0時間での6.6±11.6%から、それぞれ、24、48および72時間での52.2±25.4%、63.2±25.9%および78.8±21.1%へ増大した。5%、10%または15%F70の添加は、貯蔵後の棘状赤血球レベルを有意に低減した(図3B;それぞれ、24、48および72時間でのWBに対して5%F70についてp<0.05、<0.01、<0.001;それぞれ、24、48および72時間でのWBに対して10%または15%F70について、p<0.001)。RPMIのみの添加(0%F70)は、予測されたように棘状赤血球形成に対して全く効果がなかった(すべての時点でp>0.05)。
実施例1.3 白血球濃縮方法との適合性
血液細胞が関与する多数のアッセイは、所望の集団を高純度で単離する濃縮ステップを必要とする。本発明者らは、F70安定化された血液が、白血球濃縮のための一般的な技術と適合するか否かを調べた。本発明者らは、F70が、RBCの通例の低張溶解に影響を及ぼさず、全血サンプルと同等の白血球収率をもたらすことを見出した(WBの46.7±1.8%対10%F70の43.9±1.9%、各n=3、p=0.2)。フローサイトメトリー解析は、白血球マーカー、CD45の発現に関して変更がないことを示し(相対蛍光、WBの54±13×10対10%F70の56±21×10、各n=6、p=1.0)、一般的な表面抗原ベースの濃縮技術との適合性を示唆した。本発明者らは、全血と同等の、好中球濃縮のための免疫磁気ネガティブ選択アッセイおよび得られた収率(WBの30.7%±8.2%対10%F70の29.2%±10.5%、各n=4、p=0.89)ならびに純度(WBの99.0%±1.0%対10%F70の99.0%±0.8%、各n=4、p=1.0)をさらに試験した。重要なことに、フィコールを用いる処理は、好中球を活性化しなかった(CD11b相対蛍光、WBの123±36×10対10%F70の123±15×10、各n=4、p=0.89)。
実施例1.4 白血球保存
物理的安定化が白血球保存を改善したか否かを試験するために、本発明者らは、Wright−Giemsa染色された血液スメアで白血球の形態を観察し、フローサイトメトリーを使用して細胞生存力をアッセイした。好中球およびそのそれぞれの多葉性核形態は、全血において72時間の貯蔵後に崩壊の明確な兆候を示した。比較において、好中球形態は、フィコール安定化された血液においてより良好に保存された(図4A)。細胞死と関連する事象を研究するために、本発明者らは、膜が損なわれた(Sytox Blue)ならびにアポトーシス(カスパーゼ−3/7活性について陽性)細胞を同定する染色剤を使用するイメージングフローサイトメトリーを実施した。全血において72時間貯蔵した後、白血球の28.2%±10.2%が、Sytoxについて陽性に染まり(図4B)、32.5%±13.1%がカスパーゼ活性について陽性であった(図4C)。対照的に、10%F70を用いて安定化された血液中の白血球は、最小限にしか損傷を受けなかった(12.1%±3.5%膜損傷;WBと比較してp=0.0009;図4B)およびかなり少ないアポトーシスであった(13.2%±3.3%カスパーゼ陽性;WBと比較してp=0.0286;図4C)。これらの保存の恩恵は、脆弱好中球で特に明らかであった。全血では、好中球の41.8%±15.9%が膜が損傷しており(図4B)、48.3%±19.9%がカスパーゼ陽性であった(図4C);これらの値を、フィコール安定化された血液における、それぞれ、13.4%±4.5%(p<0.0001;図4B)および15.6%±4.5%(p=0.0286;図4C)と比較した。Sytox陽性細胞の93%超がまた、カスパーゼ活性について陽性に染まり、細胞の大部分がアポトーシスによって死滅したことを示唆する。
最近、好中球細胞外トラップ(NET)は、白血球除去されなかった(leukoreduced)貯蔵された赤血球ユニットにおいて見出された(17)。好中球の明白な分解が、本発明者らにNET形成を調査させた。本発明者らは、貯蔵されたサンプルから得られた血液スメアで、大きな領域に広がることが多い、高度に分散された核材料を観察し(図4D)、これは、NETの形成を示唆する。好中球特異的マーカー好中球エラスターゼならびにヒストン−DNA複合体を用いる免疫蛍光染色(図5B)によって、貯蔵された血液サンプル中のNETの存在が確認された(図4E)(18)。本発明者らは、NETosisの程度を定量化するために、貯蔵後の好中球エラスターゼの血漿レベルをELISAを用いて測定した。本発明者らは、72時間で10%F70と比較してWB中のエラスターゼにおいて2.2倍の差を見出した(63.6±21.1mU/mL対29±11.2mU/mL;p=0.0023;図4F)。
周囲条件下での全血における赤血球および白血球安定化
CPDおよびAS−1などの現在の赤血球保存料は、血液収集の24時間以内の白血球除去と、それに続く、4℃での赤血球の貯蔵を必要とする。さらに、本発明者らの知る限り、これらの溶液は、より迅速に分解する傾向がある(転移性乳癌患者サンプルを用いる本発明者らの実験に基づいて)患者サンプルに対して検証されていない。現在市販されている全血保存料(CellSaveなど)は、固定液を利用して、細胞膜およびタンパク質を安定化する。固定は、細胞死をもたらし、RNA抽出を複雑にする。したがって、本実施例は、全血患者サンプルにおいて生存可能な赤血球を安定化するための、全血において生存可能な白血球を保存するための保存料の開発を説明する。両方法を、サンプル輸送を容易にするために、周囲条件下でサンプルを安定化するように最適化した。
材料および方法
以下の材料および方法を、実施例2において使用した。
周囲条件下で健常ドナー全血において赤血球を保存するための製剤の開発。健常ドナー全血由来の赤血球を安定化するために、CS−オリジナル**(元のカクテル溶液)と呼ばれる最初の製剤を開発した(表1)。CSは、水中で調製し、ACD抗凝固剤チューブ中に回収された血液に、17:3の血液:保存料の比で添加した。表1に記載された濃度は、血液中の保存料成分の最終濃度であった。保存料の添加後、血液ガス(5%O2、5%CO2)を用いてサンプルにガスを供給し、密閉する。次いで、サンプルを、21°Cで所望の時間量(24〜96時間)の間貯蔵した。貯蔵期間後、血液にアデノシンの20mM溶液を、最終濃度が2mMであるように添加する。次いで、血液を37℃で4時間インキュベートし、赤血球の形状の再生を促進するように間欠的に混合した。次いで、棘状赤血球の数を定量化するために、サンプルを光学的に調べた(非定型または損傷を受けた赤血球)。
患者赤血球安定化のための保存料製剤のタグチ最適化。転移性乳癌患者の血液中の赤血球を安定化するためにCSオリジナルを最適化した。表1は、実験の設計のためのタグチ方法に従う、改変L18直交アレイの構築を示す。HEPES保存溶液(1M)を、重炭酸ナトリウムを使用してpH7.4に調整する。各製剤を、貯蔵後の4時間アデノシン再生ステップを含めて上記のように調べた。
周囲条件下で貯蔵された全血における白血球分解の試験
末梢健常ドナー血液を、ACD抗凝固剤チューブ中に集めた。血液を2つの1mLアリコートにわけ、0時間および72時間での白血球を調べた。72時間サンプルに、15mLのファルコンチューブに血液を添加し、5%O/5%CO/90%Nを用いて脱気し、続いて、周囲条件下、暗所キャビネット中の気密性容器中で貯蔵した。残りの1mLのサンプルを、フローサイトメトリーを使用して処理して、側方散乱対CD45強度を確立した。この試験は、種々の白血球集団(好中球、リンパ球など)を識別するために、フローサイトメトリーにおいて頻繁に使用される。
アポトーシスおよび壊死阻害剤の好中球保存料としての評価。ヒト好中球濃縮キット(StemCell Technologies;Vancouver、British Columbia、Canada)から推奨されるプロトコールおよび試薬を使用して、健常ドナー全血からのネガティブ選択によって好中球を単離した。コールターカウンターZ1(Beckman Coulter;Brea、California)を使用して直径8〜30μmの粒子をカウントすることによって収率を調べた。好中球は、IMDM±20%FBS中で貯蔵し、未処理(対照)であるか、または1.25μL/mLのDMSO(Sigma−Aldrich;St.Louis、Missouri)、5μMのQ−VD−OPh(Apex Bio;Houston、Texas)、50μMのネクロスタチン−1(Cayman Chemical;Ann Arbor、Michigan)または50μMのBoc−D−FMK Apex Bio;Houston、Texas)を用いて処理した。単離の直後ならびに21℃で24、48、72および96時間の貯蔵後に、対応するサンプルを処理した。サンプルを、R−フィコエリトリンコンジュゲートアネキシン V、SYTOX Green、Hoechst 33342(すべてLife Technologies;Carlsbad、California)およびアロフィコシアニンコンジュゲートCD45(Huntington Valley)を用いて染色し、ImageStream Mk.IIイメージングフローサイトメーター(Amnis Corporation;Seattle、Washington)を使用して撮像した。
実施例2.1 患者赤血球安定化のための保存料製剤のタグチ最適化
健常ドナー全血中の赤血球を安定化するように設計されたCS−オリジナル製剤は、迅速に分解する、転移性乳癌患者サンプルに対して試験した場合には、効果的ではなかった。したがって、CS製剤の最適化を導くように改変タグチ表(上記の表1)を構築した。今日までに最も有望な製剤は、タグチ表からの条件18であった。
図6は、この製剤が、対照およびCS−オリジナルサンプルと比較して、アデノシン処理後に赤血球を再生する優れた能力を提供すること示す(n=5、76時間のアデノシン処理サンプルがプロットされている)。
したがって、CS−オリジナル製剤は、健常ドナーサンプル(全血として周囲条件下で貯蔵された)に由来する赤血球を安定化するのに十分であったが、より迅速に分解し得る患者サンプルを安定化するためには理想的ではない。しかし、貯蔵後再生ステップ(4時間のアデノシンと伴のインキュベーション)と組み合わせた、実験の設計のための改変タグチ方法を使用して、製剤を最適化し、その結果、72時間貯蔵されたサンプルの優れた保護が得られた(図6に示される条件18)。
実施例2.2 周囲条件下で貯蔵された白血球では、大規模なCD45バイオマーカー分解が観察される。
全血を集め、周囲条件下で最大72時間貯蔵して、バイオマーカー発現に対する貯蔵の効果を調べた。図7は、CS−オリジナル中、周囲条件下で貯蔵された白血球が、新鮮に調べられた白血球と比較して、CD45発現の大幅な低減を起こすことを示す。
Q−VD−OPh、強力な抗アポトーシス特性を有する、スペクトルが広いカスパーゼ阻害剤(Caserta et al., Apoptosis 2003; 8: 345-352を参照のこと)は、周囲条件下で貯蔵された好中球を成功裏に安定化した。好中球は、ex vivoで迅速に変質することが知られていたので、本発明者らは、この細胞の集団は、図7において観察された蛍光シフトに広く関与しているのではないかと考えた。結果として、本発明者らは、全血ではなく、培養培地(IMDM+20%FBS)中で貯蔵された、単離された好中球を調べるように実験を単純化した。この単純化によって、可能性あるアポトーシス/壊死阻害剤のより徹底的な、迅速な評価が可能となった。アポトーシス阻害剤Q−VD−OPhおよびBoc−D−fmkは、そのカスパーゼ阻害活性のスペクトルが広いことに基づいて選択した。Q−VD−OPhは、これまでに、低濃度(5μM)で有効な強力なアポトーシス阻害剤として報告されている。図8A〜Iが示すように、Q−VD−OPhが、極めて感受性の好中球集団内でアポトーシス阻害で高度に有効であり、また、周囲貯蔵条件下で生存力を約24時間から96時間に延長するように作用した(HBSSまたはIMDMのみを用いる実験が、好中球のより迅速な分解をもたらし、24時間超安定であったので、対照条件自体もまた、好中球に対して安定化効果を有することは注目に値する)。さらに、Q−VD−OPhは、CD45バイオマーカー発現を効果的に保存した。具体的には、図8Cに示されるように、96時間の周囲貯蔵後に、好中球は、収集直後に調べられたものとほぼ区別できない。あるいは、対照条件下で貯蔵された同一ドナーに由来する好中球は、96時間で大幅な分解を受けていた(図8B)。
実施例2.3 Q−VD−OPhは、好中球機能を保存する。
図8中のデータは、Q−VD−OPhは、周囲条件下で貯蔵された好中球の生存力およびCD45バイオマーカー発現を保存可能であったことを実証するが、これらの細胞が依然として機能的であるか否かは示さなかった。これらの条件下で貯蔵された好中球が、依然としてfMLP勾配に向かって遊走可能であるか否かを調べるために、本発明者らは、この目的のためにこれまでに開発された微小流体デバイスを利用した。手短には、fMLP、好中球化学誘引物質は、2つの外側チャンバーに添加される。外側チャンバーは、一連のチャンネルによって内側チャンバーに接続され、勾配を作製する。次いで、内側チャンバーが、好中球で満たされた。新鮮に単離された好中球を直ちに評価して、0時間遊走反応を確立し、次いで、比較のために72および96時間の周囲貯蔵後に保存された好中球を調べた。図9Aは、Q−VD−OPh処理されたサンプルの遊走反応は、新鮮に単離された好中球のものと同等であったが、対照は、機能の大幅な低減を示したことを示す。図9Bはまた、好中球が、勾配に向かって遊走する速度が、新鮮な好中球と同一であることを実証する。このデータは、Q−VD−OPhが好中球機能を保存することを示す。
したがって、Q−VD−OPh処理された好中球は、72〜96時間の間周囲貯蔵条件下で安定であった。さらに、生存力およびCD45バイオマーカー発現は、最大96時間の間安定化されたが、これは、未処理好中球に比べ大幅な改善であった。
CTCの単離のための全血の低温保存
実施例は、全血の安定化のための新規戦略の開発を説明する。これらの方法は、例えば、CTC−iChipとして知られる微小流体デバイスを使用して、循環腫瘍細胞(CTC)の単離に使用することが意図されるサンプルにおいて使用され得る。患者サンプルの解析の成功は、現在、ex vivoでの患者血液の急速な変質の結果として、新鮮に集められた血液を必要とする。結果として、全血の安定化は、患者サンプルが、効果的なCTC単離に対応している集中された施設への輸送の間、保存されることを可能にするであろう。
材料および方法
実施例3では、以下の材料および方法を使用した。
サンプル収集
全血を、Massachusetts General Hospital内で健常な対象から集めるか、またはResearch Blood Components(Brighton、MA)から購入した。対象は、血小板機能を達成すると知られているもの(例えば、静脈切開術に先立つ48時間内の非ステロイド性抗炎症薬またはアスピリン)を含めた薬物療法を受けていなかった。対象は、集中的な運動を控えるよう頼まれ(静脈切開術に先立つ少なくとも4時間)、非喫煙者であった。血小板凝集測定のための血液収集は、もっぱら19〜21ゲージのニードルを使用したが、すべての血液を、19〜23ゲージニードルを使用してクエン酸デキストロース−A(ACD−A)チューブ(BD Vacutainer;8.5mL)中に入れた。すべての血液は、収集の3〜4時間内に使用された。検体は、血小板凝集測定のためには揺り動かさずに室温で(20〜25℃)で維持したが、すべてのその他の検体は、揺り動かされた。
血小板凝集抑制剤およびEDTAを用いる血液サンプルの処理
使用される血小板凝集抑制剤として、チロフィバン(Sigma)、エプチフィバチド(Tocris)、クロピドグレル(Sigma)、KF38789(Tocris)が挙げられる。血小板凝集抑制剤(例えば、チロフィバン、エプチフィバチドなど)を用いる処理に関わるすべての実験条件において、これらの化合物を血液サンプルに添加し、穏やかに揺り動かすことによって10分間混合し、その後、サンプルをその他のアッセイまたは貯蔵のために処理した。EDTAの添加は、特に断りのない限り、アッセイの15分前に起こった(すなわち、サンプル貯蔵の間は、EDTAは存在しなかった)。
血液スメア
末梢血スメアを、標準手順に従って楔技術を使用して手作業で調製した。血液をピペットでスライド上にとり(約6μl)、第2のスライドを使用して(30〜45°の角度で)均一にスメアを引き、風乾した。血液スメアを、メタノール(100%)を用いて固定化し、Giemsa−Wright染色剤(Sigma)を用いて30秒間染色し、蒸留水に迅速に移し、その後、風乾した。スライドをPermountを用いてマウントし、その後、Nikon Eclipse 90i顕微鏡、Nikon 100× Apo VC 100x/1.40オイル対物レンズおよびNikon DS−Ri1カラーカメラ(12ビット;1280×1024解像度)を使用して撮像した。サンプルあたり約100個の無作為なRBCをカウントし、棘状赤血球(明らかな棘のような突出物に基づいて)または健常なRBCのいずれかとして分類した。
イメージングフローサイトメトリー
血小板活性化および細胞生存力を、40×対物レンズおよび405、488、642nmレーザーを備えたImage Stream Mark IIイメージングフローサイトメーター(Amnis Corporation)を使用して調べた。血小板活性化パネルについては、1μlの全血を、PBSおよび以下のような蛍光標識された抗体と組み合わせた;Pacific BlueコンジュゲートCD41(1:150;クローンHIP8;BioLegend)、FITCコンジュゲートPAC−1(1:10;クローンPAC−1(RUO (GMP));BD Pharmingen)、PEコンジュゲートCD62P(1:100;クローンAK−4;BD Pharmingen)、APCコンジュゲートCD63(1:10;クローンH5C6;Biolegend)、PE/Cy7コンジュゲートCD45(1:100;クローンHI30;Abcam)。白血球生存力パネルについては、6μlの全血を、194μlのRPMI(Hepesを含有する)および以下のような蛍光標識された抗体/生存力染色剤と組み合わせた;カルセインブルーAM(10μM;Life Technologies)、CellEvent(商標)カスパーゼ−3/7緑色(5μM;Life Technologies)、PEコンジュゲートCD66b(1:125、クローンg10f5、Stemcell Technologies)、PE−cf594コンジュゲートCD45(1:400、クローンHI30、BD Pharmingen)。全血中の稀な細胞の生存力の検出のために、アンドロゲン感受性前立腺腺癌細胞(LNCaP)またはYuら(2014)に記載されるような乳癌患者に由来する株を、全血中に300,000個細胞/mLで添加した。イメージングフローサイトメトリーのための稀な細胞の処理は、以下を除いて、白血球生存力について上記で記載されたものと同一手順をたどった;PEコンジュゲートEpCAM(1:250、クローンVU1D9、Cell Signaling Technology)。WBC活性化パネルについては、6μlの全血を、194μlのHepesおよび以下のような蛍光標識された抗体と組み合わせた;Pacific BlueコンジュゲートCD41(1:100;クローンHIP8;BioLegend)、Alexa Fluor 488コンジュゲートCD11b(1:500;クローンICFR44;Stemcell Technology)、PEコンジュゲートCD11a(1:20;クローン38;Abd Serotec)、PE−cf594コンジュゲートCD45(1:800;クローンHI30、BD Pharmingen)、DRAQ5(1:1000;Life Technologies)。
凝集測定
凍結乾燥したコラーゲン(可溶性仔ウシ皮膚)、トロンビンおよびリストセチンは、Chrono−Log Corporation(Havertown、PA)から入手し、滅菌蒸留水を使用して復元した。凝集実験は、2チャンネルChrono−Log 700 Series Whole Blood/Optical Lumi−Aggregometerで電気インピーダンスを使用して全血で実施し、AGGRO/LINK8ソフトウェアを使用して解析した。全血を37℃で5分間インキュベートし、1200rpmの撹拌子速度でアゴニストを添加した後、各サンプルを10分間流した。コラーゲン、リストセチンおよびトロンビンのアゴニスト濃度は、それぞれ、2μg/mL、1mg/mL、1ユニット/mLとした。集めたデータは、最大凝集(%)、凝集曲線の傾斜、6分での曲線下面積ならびにアゴニストの添加と凝集の開始の間の経過時間(誘導期)を含んでいた。
添加された循環腫瘍細胞の微小流体単離
血小板凝集抑制剤を用いる血液サンプルの処理および貯蔵条件。
培養された腫瘍細胞株(VCaP、LNCaPまたは乳癌患者に由来するCTC株)を、血液1ミリリットルあたり2000〜3000個細胞で健常ドナー血液サンプル中に添加した。その後、血液サンプルを適当な容量にわけ、血小板凝集抑制剤チロフィバン(0.5または1μg/mL)またはエプチフィバチド(20μg/mL)を用いて処理し、その後、それらを直ちに貯蔵するか、微小流体処理に進めた。サンプルを室温または4℃下で貯蔵し、光から保護し、揺り動かさなかった。血小板凝集抑制剤カクテルは、微小流体処理の15分前に血液サンプルに添加されたEDTA(2〜5mM)を含んでいた。実験条件あたり、5〜6mLの血液サンプルを処理した。
CTC−iChipを使用する微小流体選別
添加された腫瘍細胞の単離は、先に公開されたCTC−iChip(Ozkumur et al. 2013. Sci. Transl. Med. 5(179):179ra471; Karabacak et al. 2014. Nat. Protoc. 9(3):694-710)を使用し、スループットおよび純度をさらに増強するわずかな改変を用いて実施した。手短には、添加された全血を、ビオチン化CD45、CD66bおよびCD16抗体とともにインキュベートし、続いて、ストレプトアビジンが結合しているDynabeads(Invitrogen)を添加し、その後、CTC−iChipにおける処理のために加圧シリンジ中に入れた。iChipでは、血液は、大きな凝集物を除去する濾過アレイをまず通過し、次いで、大きさに基づいて血漿、血小板および赤血球を除去する水力学的選別段階に到達する。次いで、濃縮された有核細胞を単一ラインに整列させ、その結果、ダイナビーズによって標的とされる白血球が、磁気泳動法によって効率的に枯渇された。最後に、濃縮された腫瘍細胞は、残存する血小板および赤血球を除去する第2の水力学的選別アレイを経た。次いで、残りの高度に濃縮された腫瘍細胞を、生成物出口において、1%Pluronicを含有するPBSバッファー中に集めた。添加された細胞および白血球の持ち込みを、公開されたプロトコールに従って計数した(Karabacak et al. 2014. Nat. Protoc. 9(3):694-710)。
iChip処理後の循環腫瘍細胞株のin vitro培養
ルシフェラーゼで標識された乳房CTC株を、細胞成長の定量化のために使用した(Yu et al. 2014. Science. 345(6193):216-20)。3000CTC/血液1mLで血液サンプルに添加し、6mLの血液をiChipによって処理した。次いで、濃縮されたCTC生成物を遠心沈殿させ、2mLのCTC培養培地(Yuら2014年)に再懸濁し、低接着24ウェルプレート中で、ウェルあたり500μLで培養した(合計4ウェル)。アッセイ当日、ウェルから得た400μLの細胞および生存可能な細胞の数を、Bright−Gloルシフェラーゼアッセイ系(Promega)を製造業者のプロトコールに従って使用して決定した。SpectraMax M5 Microplate Reader(Molecular Devices)を使用して発光シグナルを測定した。陽性対照として、同一CTC株から得た細胞を、直接培養し、同一方法を用い、血液における任意の添加処理またはiChip選別を行わずにアッセイした。これらの細胞を、500μLの培地中4500個細胞に調整し、同一プレートで培養した。
RNA抽出およびRNA品質評価
標準プロトコールを使用するRBCの選択的溶解後に、WBCから全RNAを抽出した。手短には、1容量の血液を、5容量のELバッファー(QIAGEN)と組み合わせ、氷上で15分間インキュベートし、ボルテックス処理し、遠心分離し(400×g、10分、4℃)、上清を除去した。WBCを250μlのPBS(1mLの出発血液あたり)に再懸濁し、750μlのTRIzol(登録商標)LS試薬と組み合わせた。室温で5分間インキュベートした後、200μlのクロロホルムを添加し、室温で間欠的にインキュベートしながら激しくボルテックス処理した。サンプルを、12,000×gで15分間(4℃)遠心分離し、水性層を除去し、その後、100%イソプロパノールを用いて沈殿させた。最後に、サンプルを12,000×gで10分間(4℃)遠心分離し、ペレットを75%エタノールを用いて洗浄し、風乾し、TEバッファーに再懸濁した。分光光度計で260nmでの吸光度を読み取り、RNA純度の指標として260/280nmでの吸光度の比(A260/280比=1.8〜2)を使用することによって、RNA濃度を決定した。RNA品質およびRIN値を、BioanalyzerおよびRNA Picoキット(Agilent Technologies)を標準プロトコールのように使用して決定した。
実施例3.1 温度の関数としての血小板活性化
低温貯蔵と血小板活性化の間の関係を理解するために、血小板を種々の温度で試験した。これらの実験をまた、全血成分が最大限保存されつつ血小板活性化が最小化され得る、貯蔵のための最良の温度を同定するために実施した。
図10に提示されるデータは、血小板の低温誘導性活性化(PAC−1活性化%によって裏付けられるような、左のグラフ)が、2種の表面タンパク質、CD62/p−セレクチンおよびGPIIa/IIIaと関連していることおよび血小板活性化の最大変化が37から22℃の間で起こることを示す。
実施例3.2 種々の血小板凝集抑制剤の最適化/選択
上記で同定された表面マーカー、CD62/p−セレクチンおよびGPIIa/IIIaが、CTC−iChipのマイクロチャネルを塞ぐ血小板凝集において重要な役割を果たすと仮定した。CD62/p−セレクチンは、脱顆粒−周囲の血小板の動員および活性化につながるプロセスと関連しており、阻害は、近くの血小板へのシグナル伝達を妨げ、シグナル増幅を最小化するであろうと示唆する。さらに、活性化されたGPIIb/IIIaおよびCD62/p−セレクチンは、血小板−血小板、血小板−白血球および血小板−CTC相互作用を媒介し、微小流体デバイス自体と相互作用し、不適切な細胞選別、閉塞および流動速度をもたらす。結果として、本発明者らは、チロフィバン(Sigma)、エプチフィバチド(Tocris)、クロピドグレル(Sigma)、KF38789(Tocris)を含めたさまざまな血小板凝集抑制剤を試験した。
図11に提示されるデータは、血小板凝集抑制剤の増大する投与量が、それ自体として血小板活性化を引き起こし得ることおよび血小板凝集抑制剤の増大する投与量が、血小板−白血球相互作用の量を増大し得ることを示した。さらに、血小板凝集抑制剤の投与量反応および活性化は、温度依存性であった。試験された血小板凝集抑制剤のうち、チロフィバンは、最も有望な結果を示し、低温処理された血小板は、0.01〜0.5μg/mLの範囲の投与量で最小限にしか活性化されなかった。
実施例3.3 非毒性血小板凝集抑制剤カクテル
本発明者らは、最適化された血小板凝集抑制剤カクテル(0.1〜0.5μg/mLおよび2〜5mMのEDTAを含有する)の、全血の72時間の低温または室温貯蔵後の活性化マーカーの発現および血小板の機能に対する効果を測定した。データは図12A〜Iに提示されている。PAC−1発現(GPIIa/IIIaの活性形態)は、低温貯蔵された血液において増強され、これは、本発明者らの血小板凝集抑制剤カクテルを用いて元に戻すことができた(12A、12C)。CD62P発現は、貯蔵の間に増強されたが、血小板凝集抑制剤カクテルは、細胞表面発現を元に戻さなかった(12B、12C)。CD62P細胞表面発現は元に戻らなかったが、血小板凝集抑制剤カクテルは、血小板−白血球相互作用を、特に、顆粒球集団について完全に元に戻すことができ、血小板凝集抑制剤カクテルは、血小板凝集/機能を完全に阻害した(12D〜I)。
実施例3.4 低温保存の間のRBC形態の保存
血液収集の数時間以内に、血液中で、棘状赤血球として知られる、球形の棘形成した赤血球が観察される。棘状赤血球は、ex vivo血液サンプルにおいてよく観察され、細胞ストレスの指標である。棘状赤血球は、効率的な迅速な選別を可能にするための細胞の特定の大きさ、形状および可動性に依存する微小流体適用の主要な障害となる。赤血球が、血液容量の99%を構成するので、これらの構造的変化は、これらの球形棘状赤血球は、水力学的細胞選別プラットホームにおける有核細胞のように偏っているので、CTC単離における微小流体プロセスを大きく干渉する。
図13に示されるように、最大72時間の全血の低温対室温貯蔵を比較すると、低温貯蔵は、RBCの最大80%の形態を保存し得る。また、血小板凝集抑制剤カクテル(チロフィバンおよびEDTA)の添加は、棘状赤血球形成に対して有害な効果を全く有さない。
実施例3.5 低温貯蔵の間のWBC活性化
血小板活性化に対する低温貯蔵の効果を考えると、本発明者らは、また、WBCの活性化に対する低温貯蔵の効果を測定した。データは、WBC活性化は、室温貯蔵と比較して低温貯蔵では低下することを示した。さらに、血小板凝集抑制剤カクテル(チロフィバンおよびEDTA)の添加は、WBCを活性化しなかった。これらの傾向は、健常ドナーおよび癌患者の両方において観察された。図14を参照のこと。
実施例3.6 72時間の低温貯蔵の間のWBC生存力の保存
本発明者らは、イメージングフローサイトメトリーを使用し、生存(カルセインブルー)および死滅(カスパーゼ3/7)染色剤を使用して、低温対室温貯蔵されたWBCの生存力を測定した。図15に提示される結果は、低温で貯蔵されたWBCの生存力は、室温貯蔵された血液よりも良好であることを示した。血小板凝集抑制剤カクテルの添加は、WBC生存力に対して全く効果がなかった。
実施例3.7 72時間の低温貯蔵の間のWBC RNA完全性の保存
低温でWBC生存力が増強されるが(実施例3.6、図15)、本発明者らはまた、貯蔵された血液のRNA完全性を測定した。RNAは、最も感受性の高い生体材料の1種であるので、本発明者らは、これを保存の頑強なマーカーと見た。結果は、48時間貯蔵でのRNA完全性は、室温および低温貯蔵された血液についてと同様であること、72時間貯蔵後には、低温貯蔵されたRNAは無傷のままであるが、室温貯蔵された血液は激しく分解されたことを示した。
実施例3.8 低温貯蔵の間のLNCaP生存力
本発明者らは、イメージングフローサイトメトリーを使用し、生存(カルセインブルー)および死滅(カスパーゼ3/7)染色剤を使用して、低温対室温貯蔵した稀な癌細胞の生存力を測定した。データは、低温で貯蔵した稀な細胞の生存力は、室温貯蔵された血液よりも良好である可能性があることを示した(図16を参照のこと)。血小板凝集抑制剤カクテルの添加は、稀な細胞の生存力に対して全く効果がない。これらの傾向は、健常ドナーおよび癌患者において観察された。
実施例3.9 CTC−iChipによる低温貯蔵した血液の処理
血小板凝集抑制剤は、新鮮血液および低体温温度4℃下で3日間貯蔵した血液両方のCTC−iChip処理を可能にした。本明細書において、使用した血小板凝集抑制剤(PI)は、0.5μg/mLのチロフィバンまたは1μg/mLのチロフィバン+エプチフィバチド20μg/mLのいずれかであった。EDTA(2〜5mM)を、iChip処理の15分前に血液サンプルに添加した。結果は以下を示した:
室温(RT)での72時間の貯蔵の結果としての、血小板凝集抑制剤の非存在下でのiChipの閉塞は、濾過アレイの第1段階における重度の閉塞につながった。図17Aの画像は、Vybrant DyeCycle緑色(Life Technologies)によるDNAの蛍光染色を示し、これは、閉塞物に細胞が捕捉されてしまっていることを示す。スケールバーは、100μmを表す。
iChipの閉塞は、処理され得る血液の量の劇的な減少につながった;図17Bを参照のこと。プロットは、処理された血液容量を、標的容量(5〜6mL)のパーセンテージとして示す。血小板凝集抑制剤およびEDTA存在下で、血液容量の約90%が、処理され得、残りの容量喪失は、サンプル移動およびチューブ中のデッドボリュームに起因し、微小流体チップでは標準である。
閉塞はまた、CTC−iChipの流動速度またはスループットを深刻に低減した(図17C)。
実際の処理容量に基づいて算出された、iChip選別後の添加した細胞の回収は、図17Dに示されている。血小板凝集抑制剤の非存在下または室温での貯蔵後に、添加した細胞の相当な画分が失われ、濃縮された生成物において回収可能でなかった。この回収パーセンテージは、単に処理された血液容量に基づいており、これは、(17B)に示されるチップ閉塞の事象では大きく低減されるということは、留意されたい。したがって、CTCの絶対回収量はかなり低く、回収パーセンテージ×処理された容量によって算出され得る。
iChipによる白血球の対数変換した枯渇倍数が、図17Eに示されている。枯渇が高いほど、濃縮されたCTC集団がより純粋となる。数字を大局的に見ると、4対数の枯渇は、10000倍の枯渇に変換でき、これは、5×10個の白血球/mLの血液を含有する通常の血液サンプルは、濃縮CTC生成物中に500個の白血球/1mLの処理された血液しか残さないことを意味する。血小板凝集抑制剤およびEDTAの使用は、血小板−白血球相互作用を防ぎ(図12)、それによって、白血球−枯渇抗体のアクセスを可能にすることによって枯渇を大きく改善すると推定される。室温で72時間貯蔵された血液はまた、おそらくは白血球分解の結果として低い枯渇に見舞われる(図15)。
図17Fは、CTC生成物への赤血球(RBC)/血液1μLの持ち込みを示す。室温貯蔵された血液サンプルは、RBC分解によってより高いRBCの持ち込みを示したと推定され、これは、形状を変更し、棘状赤血球を形成し(図13)、iChipの水力学的選別段階において効率的に除去することができなかった。
実施例3.10 iChip選別後のCTCの培養
細胞成長を、Bright−Gloルシフェラーゼアッセイ系を使用して発光量によって定量化した。発光シグナルを、iChip処理の直後に培養が開始された0日目のシグナルに対して正規化した。任意のiChip処理を伴わない陽性対照を含めた。
図18に示されるように、血小板凝集抑制剤の存在下で新鮮血液サンプル(0時間)から選別されたCTCは、陽性対照とほとんど同一の成長速度を示し、これは、微小流体処理ならびに血小板凝集抑制剤およびEDTAを用いる処理が、CTCにとって非毒性であったことを示唆する。添加した血液サンプルを4℃において72時間貯蔵した後、CTCは、選別され、増殖を再度開始するのにわずかな遅延があったものの、in vitroで再度培養され得る。室温で72時間貯蔵された血液サンプルから得られたCTCは、4℃で貯蔵されたCTCと比較して、選別後に増殖する能力の低減を示した。
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その他の実施形態
本発明を、その詳細な説明とともに記載してきたが、前記の記載は、例示するものであって、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を制限するものではないということは理解されなければならない。その他の態様、利点および改変は、以下の特許請求の範囲内にある。

Claims (18)

  1. 全血のサンプルを安定化する方法であって、
    対象から全血のサンプルを得るステップ、および前記サンプルにフィコール70を導入して、前記サンプルにおいて2〜20%(w/v)フィコール70を生ずるステップを含む方法。
  2. 全血のサンプルを安定化する方法であって、
    対象から全血のサンプルを得るステップ、ならびに前記サンプルにカスパーゼ阻害剤および任意選択で、保存料製剤を導入するステップを含む方法。
  3. 全血のサンプルを安定化する方法であって、
    対象から全血のサンプルを得るステップ、および前記サンプルに保存料製剤を導入するステップを含み、前記保存料製剤は、48mMのHEPES、0.44mMのアデニン、6.75mMのマンニトール、0.77mMのN−アセチル−L−システインおよび8.5mMのNaClを含む、方法。
  4. 全血のサンプルを安定化する方法であって、
    対象から全血のサンプルを得るステップ、および前記サンプルに血小板凝集抑制剤(PI)を導入するステップを含む方法。
  5. 全血のサンプルを安定化する方法であって、
    対象から全血のサンプルを得るステップ、ならびに前記サンプルに、
    前記サンプルにおいて2〜20%(w/v)フィコール70を生ずるためのフィコール70、
    カスパーゼ阻害剤、
    48mMのHEPES、0.44mMのアデニン、6.75mMのマンニトール、0.77mMのN−アセチル−L−システインおよび8.5mMのNaClを含む保存料製剤、および/または
    血小板凝集抑制剤(PI)
    のうちの1種または複数を導入するステップを含む方法。
  6. フィコール70が、前記サンプルにおいて少なくとも10%フィコール70を生ずるために添加される、請求項1または5に記載の方法。
  7. 前記カスパーゼ阻害剤が、Q−VD−OPh((3S)−5−(2,6−ジフルオロフェノキシ)−3−[[(2S)−3−メチル−2−(キノリン−2−カルボニルアミノ)ブタノイル]アミノ]−4−オキソペンタン酸)、Z−VAD−FMK(メチル(3S)−5−フルオロ−3−[[(2S)−2−[[(2S)−3−メチル−2−(フェニルメトキシカルボニルアミノ)ブタノイル]アミノ]プロパノイル]アミノ]−4−オキソペンタノエート)、Q−VD(OMe)−OPh((S)−メチル5−(2,6−ジフルオロフェノキシ)−3−((S)−3−メチル−2−(キノリン−2−カルボキサミド)ブタンアミド)−4−オキソペンタノエート)、またはBoc−D−fmk(メチル5−フルオロ−3−[(2−メチルプロパン−2−イル)オキシカルボニルアミノ]−4−オキソペンタノエート)である、請求項2または5に記載の方法。
  8. 前記サンプルに、2〜10μM、例えば、約5μMの最終濃度を達成するように十分なカスパーゼ阻害剤が添加される、請求項2または5に記載の方法。
  9. 前記保存料製剤が、24〜48mMのHEPES、0.11〜0.44mMのアデニン、2.25〜6.75mMのマンニトール、0.39〜1.54mMのN−アセチル−L−システイン、0〜13.5mMのデキストロースおよび0〜17mMのNalを含む、請求項2または5に記載の方法。
  10. 前記保存料製剤が、48mMのHEPES、0.44mMのアデニン、6.75mMのマンニトール、0.77mMのN−アセチル−L−システインおよび8.5mMのNaClを含む、請求項2、5または9に記載の方法。
  11. 前記血液が、20〜25℃で貯蔵のために安定化される、請求項3から8に記載の方法。
  12. 前記血液が、72〜96時間貯蔵される、請求項1から11に記載の方法。
  13. 前記PIが、チカグレロル、シロスタゾール、プラスグレル、ジピリダモール、プラスグレル、チロフィバン、エプチフィバチド、クロピドグレルまたはKF38789である、請求項4または5に記載の方法。
  14. 前記PIが、0.01〜100μg/mL、例えば、0.01〜1μg/ml、例えば、0.01〜0.5μg/mLの最終濃度を達成するように前記サンプルに添加される、請求項4、5または13に記載の方法。
  15. 前記血液が、2〜25℃で貯蔵のために安定化される、請求項4、5、13または14に記載の方法。
  16. 前記血液が、4℃で貯蔵のために安定化される、請求項15に記載の方法。
  17. 前記サンプルを4℃で維持するステップを含む、請求項4、5または13から16に記載の方法。
  18. 前記サンプルが、2〜25℃で少なくとも24、36、48、72または96時間維持または貯蔵される、請求項4、5または13〜16に記載の方法。
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