JP2017507328A - 室温での全血の安定化 - Google Patents

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Abstract

本開示は、ex vivoの全血試料における有核細胞の安定化に関し、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において分析物を安定化させるための液体組成物である添加剤によって達成され、該組成物は水溶液であり、該溶液は抗凝血剤、リン酸塩、細胞代謝可能糖、アデニン、および抗酸化剤を含み、ここで該抗酸化剤は、ミトコンドリア標的抗酸化剤、好ましくはSkQ1、MitoQ、SS−31、およびその混合物からなる群より選択されるミトコンドリア標的抗酸化剤である。特定の態様において、液体組成物は、プロテアーゼ阻害剤をさらに含む。さらに、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、DNA、RNAおよびタンパク質より選択される分析物を安定化させるための組成物の好適な使用、ならびに前記使用を実施するための組成物を含むキットを提供する。さらに、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞を安定化させるための特定の方法を提供する。

Description

本開示は、全血試料中に存在するインタクト(intact)な生存細胞、特に有核細胞の安定化に有用な組成物、使用、キットおよび方法に関する。本開示は、ex vivoの全血試料における有核細胞の安定化に関し、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において分析物を安定化させるための液体組成物である添加剤によって達成され、該組成物は水溶液であり、該溶液は抗凝血剤、リン酸塩、細胞代謝可能糖、アデニン、および抗酸化剤を含み、ここで該抗酸化剤は、ミトコンドリア標的抗酸化剤、好ましくはSkQ1、MitoQ、SS−31、およびその混合物からなる群より選択されるミトコンドリア標的抗酸化剤を含む。特定の態様において、液体組成物は、プロテアーゼ阻害剤をさらに含む。さらに、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、DNA、RNAおよびタンパク質より選択される分析物を安定化させるための組成物の好適な使用、ならびに前記使用を実施するための組成物を含むキットを提供する。さらに、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞を安定化させるための特定の方法を提供する。
背景
全血は、医学において、診断分析のため、最も頻繁に収集される試料材料の1つである。しかし、全血のサンプリングおよび分析は、通常、別個の事象である。サンプリング工程後、インタクトな細胞、特にインタクトな有核細胞の長期に渡る安定化に関して、大きな技術的困難が存在する。当該技術分野には、サンプリングおよび分析の間の時間間隔を橋渡しするため、全血試料における有核細胞の生物学的状態を保存する特別な願望がある。Olson WCら(Journal of Translational Medicine 9 (2011) 26)、Tannerら(Clin. Lab. Haem. 24 (2002) 337−341)、Baechlerら(Genes and Immunity 5 (2004) 347−353)、およびElliottら(International Journal of Epidemiology 37 (2008) 234−244)を参照されたい。「生物学的状態の保存」または「安定化」は、細胞を、損なわれておらず、そして生存した状態で維持しながら、サンプリング時点で生存細胞中に存在する生体分子の組成およびレベルに関する変化が最小限である条件を提供すると理解される。これに関する関心対象の特定の生体分子は、DNA、RNAおよびタンパク質である。
US 2010−0003748およびWO 2004/106494は、生存細胞を保存する方法を開示する。細胞DNAの安定化は、US 2008−0268514において、以前取り組まれてきている。US 2011−0111410は、血液試料内のインタクトな細胞におけるRNAの安定化を開示する。Macfarlane DE & Dahle CE(Journal of Clinical Laboratory Analysis 11 (1997) 132−139)は、室温で2週間保管された血液からのRNAの単離を報告する。全血試料におけるmRNAの安定化は、Rainen Lら(Clinical Chemistry 48 (2001) 1883−1890)に開示される。タンパク質レベルの、特に免疫学的特徴付けの目的のための細胞の安定化は、WO 2003/018757およびUS 5,459,073に開示される。
Baker CJら(J. of Surgical Res. 86 (1999) 145−149)は、水溶性アルファ−トコフェロール類似体が4℃で保管された細胞の生存能を改善することを報告する。US 7,645,425およびUS 7,309,468は、全血の安定化のための、特定のプロテイナーゼ阻害剤の使用を報告する。これに関して、多くのプロテイナーゼ阻害剤は毒性であり、そして細胞生存能を減少させることが注目される。
Marthandan S.ら Free Radical Research 45 (2011) 351−358は、健康な個人由来の単離ヒト末梢血単核細胞に対する化合物MitoQの影響に関して報告する。WO 1997/016967は、酸化ストレス誘導性血液構成要素損傷を減少させるための、特定の抗酸化剤の使用を開示する。
いくつかの細胞保存添加剤が当該技術分野に知られるが、室温で2〜3日間に渡って、有核細胞を含む全血試料を安定化させるためには、なお技術的な困難があるままである。ある時間間隔の後のインタクトな有核細胞の単離を可能にする手段が特に必要であり、ここで細胞は好ましくは生存している。より具体的には、時間間隔後の細胞の分析が、全血をサンプリングした時点での細胞の生物学的状態を緊密に反映するように、細胞における生体分子の組成およびレベルのいかなる変化も最小限であることが望ましい。
本明細書に報告する第一の側面は、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、分析物を安定化させるための液体組成物であって、該組成物が水溶液であり、該溶液が抗凝血剤、リン酸塩、細胞代謝可能糖、アデニン、および抗酸化剤を含み、ここで該抗酸化剤が、ミトコンドリア標的抗酸化剤、好ましくはSkQ1、MitoQ、SS−31、およびその混合物からなる群より選択されるミトコンドリア標的抗酸化剤を含む、前記液体組成物である。
本明細書に報告する第二の側面は、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、DNA、RNAおよびタンパク質より選択される分析物を安定化させるための、本明細書に開示するような組成物の使用である。
本明細書に報告する第三の側面は、本明細書の開示にしたがった、液体組成物を封入する採血容器を含む部分のキットであって、パッケージング材料、ラベル、および使用説明書シートをさらに含む、前記キットである。
本明細書に報告する第四の側面は、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞を安定化させるための方法であって、(a)ex vivoの全血試料を提供し;(b)本明細書の開示にしたがった組成物と、工程(a)の試料を接触させ、そして混合し;(c)工程(b)で得た混合物をインキュベーションし、それによって、ex vivo全血試料のインタクトな有核細胞を安定化させる工程を含む、前記方法である。
48時間室温で保管した後の血液試料内にスパイク処理したMDA−MB−468細胞の検出。抗CK5/8抗原で免疫染色することによって検出されるMDA−MB−468細胞の割合を示す。実施例1に記載するようなアッセイによる標的細胞回収の平均率を示す「箱髭プロット」。第一の図示するボックス−EDTA:抗凝血剤としてのEDTA中で保管された血液試料において検出されるMDA−MB−468細胞。第二のボックス−EDTA+Sivelestat:抗凝血剤としてのEDTAおよび安定化剤としてのSivelestat中で保管された血液試料において検出されるMDA−MB−468細胞。第三のボックス−EDTA+Pefabloc(登録商標)SC:抗凝血剤としてのEDTAおよび安定化剤としてのPefabloc(登録商標)SC中で保管された血液試料において検出されるMDA−MB−468細胞。第四のボックス−EDTA+SKQ1:抗凝血剤としてのEDTAおよび安定化剤としてのSKQ1中で保管された血液試料において検出されるMDA−MB−468細胞。第五のボックス−EDTA+MitoQ:抗凝血剤としてのEDTAおよび安定化剤としてのMitoQ中で保管された血液試料において検出されるMDA−MB−468細胞。第六のボックス−EDTA+グルタチオン:抗凝血剤としてのEDTAおよび安定化剤としてのグルタチオン中で保管された血液試料において検出されるMDA−MB−468細胞。 48時間室温で保管した後の、血液試料内にスパイク処理したMDA−MB−468細胞の検出。蛍光抗CK5/8抗体で免疫検出することによって検出されるMDA−MB−468細胞の割合を示す。実施例2に記載するアッセイによる標的細胞回収の平均の割合を示す「箱髭プロット」。第一の図示するボックス−EDTA:抗凝血剤としてのEDTA中で保管された血液試料において検出されるMDA−MB−468細胞。第二のボックス−CPDA:クエン酸塩/クエン酸、リン酸塩、デキストロースおよびアデニン中で保管された血液試料において検出されるMDA−MB−468細胞。第三のボックス−CPDA+SS−31:クエン酸塩、リン酸塩、デキストロース、アデニンおよびSS+31中で保管された血液試料において検出されるMDA−MB−468細胞。第四のボックス−CPDA+グルタチオン:クエン酸塩、リン酸塩、デキストロース、アデニンおよびグルタチオン中で保管された血液試料において検出されるMDA−MB−468細胞。 DNA収量に対する保管の影響。試料を、実施例3に示すように、EDTA、またはグルタチオン、SkQ1およびPefabloc(登録商標)SCを補充したEDTA(「安定化剤3」)中に保管した。 実施例5に記載するように、EDTA中または安定化剤中のいずれかで、2人の血液ドナーから血液を収集した。試料に、MDA−MB−468細胞をスパイク処理した。直ちに、そして72時間室温でインキュベーションした後に、MDA−MB−468細胞を単離し、そして核酸を抽出した。図に示す核酸パラメータセットをRT−PCRまたはPCR(テンプレートに応じる)によって増幅した;内因性参照としてGCK DNAを用いて、それぞれの核酸レベルの変化を計算した。「安定化剤72h」は、実施例5に記載するような安定化剤5と72時間インキュベーションした試料を指す。 2人の異なるドナー由来の血液を、EDTAまたは安定化剤のいずれかで安定化した。MDA−MB−468細胞を血液試料にスパイク処理した。試料を室温で48時間保管した。赤血球溶解、およびCD326(EpCAM)微小粒子を用いた免疫磁気単離によって、MDA−MB−468細胞を濃縮した(実施例7を参照されたい)。100時間よりも長く、細胞を培養した。白抜きの菱形:標本1、EDTA安定化;黒塗りの菱形:安定化剤5を含む標本1。白抜きの正方形:標本2、EDTA安定化;黒塗りの正方形:安定化剤5を含む標本2。白抜きの円:標本1、EDTA安定化;黒塗りの円:安定化剤5を含む標本1。白抜きの三角形:標本2、EDTA安定化;黒塗りの三角形:安定化剤5を含む標本2。
本開示の目的のため、特定の用語を、本明細書において、以下のように定義する。本開示の定義および引用参考文献の定義が対立する場合は、本開示が支配する。
本明細書において、用語「含む」は、最終結果に影響を及ぼさない他の工程および他の構成要素を利用してもよいことを意味する。用語「含む」は、表現「からなる」および「本質的にからなる」を含む。単数形の識別語、例えば「the」、「a」、または「an」の使用は、単一の構成要素の使用にのみ限定することを意図せず、多数の構成要素を含むことも可能である。例えば、別に言及しない限り、表現「化合物(a compound)」は、「1またはそれより多い化合物」の意味を有する。本明細書において、「複数」は、1より多いを意味すると理解される。例えば、複数は、少なくとも2、3、4、5、またはそれより多くを指す。特に言及しない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書において、用語「または」は包括的であると理解される。用語「および/または」は、列挙する要素の1またはすべて、あるいは列挙する要素の任意の2またはそれより多くの組み合わせを意味する。範囲は、本明細書において、その範囲内の各々およびすべての値を記載するための簡潔表現として用いられる(例えば1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等が含まれる)。範囲内のいかなる値も、その範囲の末端として選択可能である。特に言及しない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書において、用語「約」は、当該技術分野の正常な許容範囲の範囲内と理解され、例えば平均の2標準偏差以内と理解される。異なって示されない場合、「約」は、言及する値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内と理解される。別に文脈から明らかでない限り、本明細書に提供するすべての数値は、用語「約」によって修飾可能である。
本明細書において、用語「室温」は、別に明記しない限り、典型的な実験室の周囲温度を意味し、これは通常、約18℃〜25℃である。特定の態様において、室温は、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、および25℃からなる群より選択される温度である。本明細書において、「精製された」または「単離された」化合物は、形成された混合物から分離されている化合物を意味する。細胞に関して、「精製された」または「単離された」細胞は、細胞混合物から濃縮されたかまたは分離された1またはそれより多い細胞または細胞群を意味する。限定されない例として、試料中に存在する赤血球を溶解し、そしてインタクトな有核細胞を、遠心分離によって分離し、上清を廃棄し、そしてペレットになった細胞を生理学的緩衝液中または細胞培地中に再懸濁することによって、全血のex vivo試料における細胞混合物から、有核細胞を単離することも可能である。
本明細書に開示するのは、「組成物」であり、該用語は、複数の成分を組み合わせそして混合した産物を示すと理解される。「液体」組成物は、凝集の液体状態で存在する組成物である。特に、本明細書に開示するような液体組成物は、水性組成物であり、溶媒としての水、および水に溶解された複数の水溶性化合物を含む溶液である。「分析物」は、一般的に、物質、特に細胞構成要素であり、限定されるわけではないが、物質の定性的または定量的検出のためのプロセスなどの分析プロセスの標的である。本開示の目的のための特定の分析物は、DNA、RNAおよびタンパク質より選択され、後者は、オリゴペプチド、ポリペプチド、およびその翻訳後修飾誘導体を含む。
核酸を精製し、そして分析するための多数のプロセスが知られる。分析分野において、特定のDNAまたはRNA配列の定性的および/または定量的検出に特に焦点が置かれる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および関心対象のDNA配列の隣接部にハイブリダイズする特異的プライマーを用いて、前記配列を増幅可能であり、そして増幅された配列を検出可能である。こうした検出は、通常、標識プローブとのハイブリダイゼーション反応として実行される。いわゆるリアルタイムPCRは、標的配列が増幅される間に、この検出工程が行われることを可能にする。RNA配列の特異的検出のため、RNAは逆翻訳されて(reverse−translated)cDNAを形成する必要があり;次いで、PCRに基づくDNA増幅技術を用いて、標的RNA配列を反映するcDNAを増幅し、そして検出することも可能である。
標的タンパク質の特異的検出は、典型的には標的に結合可能な特異的結合剤を利用して達成される。したがって、イムノアッセイ検出法は、このアプローチの限定されない例である。
本開示は特に、最長72時間(0〜72時間)、特に48〜72時間の期間に渡って、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞における、DNA、RNAおよびタンパク質から選択される分析物を安定化させることに関し、該期間は、全血をサンプリングし、そして本明細書に開示するような安定化組成物と全血を接触させた時点から計測される。好適には、血液サンプリングおよび安定化組成物と血液の接触の間の時間は、30秒未満である。
用語「安定化」には、血液試料の有核細胞の細胞膜を損なわれないままに維持し、そして有核細胞において細胞タンパク質および細胞DNAならびに細胞RNA、そして特にサンプリング時点の遺伝子発現状態を反映する細胞mRNAの組成を保存しそして維持する、特定の意味が含まれ;さらに、「安定化」は、有核細胞が壊死またはアポトーシスを経る傾向が実質的に減少しており、そして発現されるタンパク質のパターンが、大部分、不変のままである環境を提供することを含む。用語「安定化」には、生存細胞機能を補助し、細胞の中毒および細胞死を回避し、有核細胞を休止であるが生存している状態に維持することがさらに含まれる。
別に明確に言及しない限り、表現「クエン酸塩/クエン酸」は、クエン酸三ナトリウムおよびクエン酸の混合物を指す。単一の抗凝血剤としてのEDTAを含む血液への言及は、血液1mlあたり約1.8mgのEDTA濃度を有する全血を意味する。
本明細書に開示するような第一の側面は、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、分析物を安定化させるための液体組成物であって、該組成物が水溶液であり、該溶液が抗凝血剤、リン酸塩、細胞代謝可能糖、アデニン、および抗酸化剤を含み、ここで該抗酸化剤が、ミトコンドリア標的抗酸化剤、好ましくはSkQ1、MitoQ、SS−31、およびその混合物からなる群より選択されるミトコンドリア標的抗酸化剤を含む、前記液体組成物である。特に、分析物は、全血試料のインタクトな有核細胞のDNA、RNAおよびタンパク質より選択される。
用語「全血」は、本明細書に開示するすべての側面および態様において、脊椎動物から、特に哺乳動物から、より具体的には霊長類から、さらにより具体的にはヒトから、採血プロセス以外のいかなるさらなる処理も伴わずに、直接収集された血液を指す。採血プロセス自体は、本開示に記載する手技、使用および/または方法のいずれの部分でもないと理解される。むしろ、本開示は、「ex vivo」の全血、すなわち採血された生物の外の、そしてこうした生物から分離されている全血の試料の提供に基づく手技、使用および方法に関する。ex vivoの全血は、全血の測定された量と理解される「試料」として提供される。
血液および/または血漿の凝固を阻害する添加剤は、分析しようとする細胞が、分析プロセス前に凝血によって負に影響を受けないことを確実にするために重要である。抗凝血は、カルシウムイオンの結合によって(EDTA、クエン酸塩)、またはトロンビン活性の阻害によって(ヘパリン、ヒルジン)起こる。したがって、ex vivo全血試料の凝血を防止するため、本明細書のすべての側面および態様に開示されるような組成物は、抗凝血剤、特にEDTA、クエン酸塩、ヘパリン、ヒルジン、ワーファリン、およびその混合物からなる群より選択される抗凝血剤を含む。同時に完全性、すなわち溶解の非存在および有核細胞の生存能も許容する抗凝血添加物が当該技術分野に知られる。特定の態様において、本明細書に開示するようなすべての側面において、クエン酸ナトリウム/クエン酸が、それぞれ、11.7mMおよび2.1mMの最終濃度まで、全血試料に添加される。
本明細書に開示するような組成物中のリン酸塩は、存在する場合、単独で、あるいはEDTAおよび/またはクエン酸塩と組み合わせて、生理学的pHでの全血試料の緩衝を達成する。本明細書に開示するようなすべての側面の特定の態様において、リン酸塩はNaHPOであり、さらにより特定の態様において、2.1mMの最終濃度まで全血試料に添加される。さらなる添加剤は、細胞完全性および生存能を補助するための、アデニンおよび細胞代謝可能糖である。本明細書に開示するようなすべての側面のさらなる特定の態様において、アデニンは0.24mMの最終濃度まで全血試料に添加される。
特に、ex vivoの全血試料の有核細胞を安定化させるため、有効量の抗酸化剤の存在が必須であることが、本開示の著者らによって見出された。抗酸化剤の観察される有益な効果は、活性酸素種が、試料における細胞不安定性のありうる原因であることを指摘する。活性酸素種は、典型的には、NADPHオキシダーゼ、キサンチン・オキシダーゼ、ミトコンドリア電子伝達系、および機能障害性内皮一酸化窒素シンターゼによって生成される。細胞抗酸化剤防御系、例えばスーパーオキシド・ジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオン・ペルオキシダーゼ、ヘム・オキシゲナーゼ、パラオキソナーゼの能力が超過している場合、これは酸化性ストレスを生じ、細胞死を促進しうる。したがって、酸化性ストレスを防止するための手段には大きな関心が持たれる。
特に、ミトコンドリアは、ミトコンドリア電子伝達系複合体IおよびIIIで、かなりの量のO を産生する。複合体Iは、ミトコンドリア・マトリックス内にO を放出し、そして低ADP条件下での複合体IIからの電子逆流のため、O の主な産生者と見なされる。マトリックスに局在するミトコンドリア・スーパーオキシド・ジスムターゼ2(SOD2)は、O をHに不均化(dismutate)し、これは続いて、グルタチオン・ペルオキシダーゼまたはカタラーゼによって水に還元される。したがって、SOD2の重要性は、O の解毒にあり、ONOO(ペルオキシナイトライト)の生成および/またはミトコンドリア電子伝達系タンパク質およびミトコンドリアDNAの酸化的損傷を防止し、これらはそうでなければミトコンドリア機能を損ないうる。複合体IIIはまた、ミトコンドリア膜間空間にO を放出し、ここでこれは、スーパーオキシド・ジスムターゼの別のアイソザイムであるSOD1によって不均化される。ミトコンドリア自体は、活性酸素種に感受性であることが知られる。酸化的損傷は、その活性を低下させ、そしてさらに活性酸素種の産生を増加させさえしうる。その増進されたレベルは、ミトコンドリアDNAに損傷を与え、そしてミトコンドリア・アポトーシス因子の放出を刺激することが知られる。
重要なことに、本明細書に開示するすべての側面および態様における組成物は、ミトコンドリア標的抗酸化剤を含む。「抗酸化剤」は、一般的な意味で、酸化、または酸素、活性酸素種、および過酸化物によって促進される反応を阻害することが可能な分子である。これには、フリーラジカルの反応を阻害し、そして/または終結させることが可能な特性が含まれる。抗酸化剤は、典型的には、電子供与体として酸化反応に関与することが可能であり、したがってそれ自体酸化される、還元剤である。本明細書に開示するような理解にしたがった抗酸化剤は、細胞構成要素と競合する基質酸化標的として作用し、これは抗酸化剤の非存在下で酸化されて、そしてそれによって酸化的損傷によって損なわれるであろう。
「ミトコンドリア標的」抗酸化剤は、典型的には細胞外に適用される抗酸化剤であり、細胞のミトコンドリア区画において、特定の酸化プロセスが起こることを阻害するため、細胞膜を横断可能であり、そしてミトコンドリア膜と相互作用可能である。こうした細胞浸透性抗酸化剤に関する特定の例は、とりわけ、SkQ1、MitoQ、SS−31である。SkQ1はまた、10−(6’−プラストキノニル)デシルトリフェニルホスホニウムを含む塩としても知られ、とりわけ、神経防御特性に関して知られる。標的細胞に細胞外適用される際、SkQ1はミトコンドリアにおける活性酸素種によって引き起こされる酸化ストレスを阻害することが示されてきている。MitoQはミトキノール(還元型)およびミトキノン(酸化型)の混合物であり、これらは、(10−(2,5−ジヒドロキシ−3,4−ジメトキシ−6−メチルフェニル)デシル)トリフェニルホスホニウムおよび(10−(4,5−ジメトキシ−2−メチル−3,6−ジオキソシクロヘキサ−1,4−ジエニル)デシル)トリフェニルホスホニウムとしても知られる。MitoQは、ユビキノール部分を含み、該部分は脂肪族炭素鎖を通じて親油性トリフェニルホスホニウムカチオンに共有結合する。細胞外適用されたMitoQの抗酸化反応は、主に、リン脂質二重層内で起こる。SS−31(d−Arg−Dmt−Lys−Phe−NH2;Dmt=2’,6’−ジメチルチロシン)は、細胞内フリーラジカルを減少させるいくつかの細胞浸透性抗酸化ペプチドのファミリーのメンバーである。ファミリー中の他のメンバー同様、SS−31ペプチドは、ミトコンドリアを標的とし、そしてミトコンドリア浸透性遷移、膨張、およびチトクロームc放出に対してミトコンドリアを保護し、そしてt−ブチルヒドロペルオキシド誘導性アポトーシスを防止することが知られる。
いくつかの他のミトコンドリア標的抗酸化剤が当該技術分野に知られ、特に心臓血管および神経変性疾患の分野における臨床適用由来のものが知られる。原理的に、これらはまた、本開示の教示を実施するため、代替安定化化合物として好適に使用可能な化合物として適切である。
本明細書に開示するようなすべての側面の特定の態様において、ミトコンドリア標的抗酸化剤はSkQ1である。さらにより特定の態様において、SkQ1を、5〜500nMの最終濃度まで、好適には50〜250nMの最終濃度まで、特に約100nMの最終濃度まで、全血試料に添加する。本明細書に開示するようなすべての側面のさらにさらなる特定の態様において、ミトコンドリア標的抗酸化剤はSS−31である。さらにより特定の態様において、SS−31を、0.1〜50μMの最終濃度まで、好適には0.5〜10μMの最終濃度まで、特に約1μMの最終濃度まで、全血試料に添加する。
本明細書に開示する抗酸化剤は、水溶液中で適用されるため、本開示のすべての側面および態様を実施するために選択される抗酸化剤は、好適には、水溶性であるか、または例えば限定されるわけではないが、表面活性剤、界面活性剤および乳化剤を含むヘルパー物質を用いて、水に可溶化されている。
本明細書に開示するようなすべての側面の特定の態様において、抗酸化剤は、第一および第二の抗酸化剤の混合物であり、ここで第一の抗酸化剤はミトコンドリア標的抗酸化剤であり、そして第二の抗酸化剤はミトコンドリア標的抗酸化剤以外の抗酸化剤である。この群は、還元活性を持つ水溶性分子を含み、ここで、該分子は、ミトコンドリア区画外の酸化を経ることが可能である。第二の抗酸化剤は、さらなる特定の態様において、SkQ1、MitoQ、およびSS−31以外の抗酸化剤である。好適には、本明細書に開示するようなすべての側面のさらにより特定の態様において、第二の抗酸化剤は、グルタチオン、アセチルサリチル酸、N−アセチル−5−アミノサリチル酸、N−アセチルシステイン、6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸(Trolox)およびその混合物からなる群より選択される。
全血試料の有核細胞のさらなる安定化は、本明細書に開示するようなすべての側面および態様において、液体組成物におけるプロテアーゼ阻害剤の存在によって提供される。これに関して、特定の態様には、セリンプロテアーゼの阻害剤が含まれる。これに関して、より特定の態様には、ヒト好中球エラスターゼの阻害剤が含まれる。特定の利点は、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、分析物を安定化させるための液体組成物の特定の態様によって提供され、該液体組成物には、Sivelestat、AEBSF、およびその混合物より選択されるプロテアーゼ阻害剤が含まれる。「Sivelestat」または「ONO−5046」として市販されている化合物はまた、N−{2−[({4−[(2,2−ジメチルプロパノイル)オキシ]フェニル}スルホニル)アミノ]ベンゾイル}グリシンとしても知られ、選択的好中球エラスターゼ阻害剤である。AEBSFは、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリドの略称であり、AEBSFは水溶性であり、そして不可逆的セリンプロテアーゼ阻害剤である。塩酸塩は、Pefabloc(登録商標)SCとして商業的に入手可能である。本明細書に開示するようなすべての側面の特定の態様において、そして特定の利点を伴い、Pefabloc(登録商標)SCを全血試料に添加して、0.05〜1mM、より具体的には0.1〜0.5mM、そしてさらにより具体的には0.2〜0.3mM、特に約0.25mMの最終濃度を生じる。
Pefabloc(登録商標)SCは、239.5ダルトンの分子量を持つ水溶性セリンプロテアーゼ阻害剤であり、当該技術分野に4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)としても知られる。該化合物は、キモトリプシン、カリクレイン、プラスミン、トロンビン、およびトリプシンのようなプロテアーゼを阻害することが可能である。
全血試料の有核細胞を安定化させるため、試料に細胞代謝可能糖を補充することが好適であることもまた見出された。本明細書に開示するようなすべての側面の特定の態様において、糖はグルコースおよびフルクトースより選択される。さらにより特定の態様において、グルコースは15〜25mMの最終濃度まで、好適には19〜21mMの最終濃度まで、特に約20mMの最終濃度まで添加される。
本明細書に開示するようなさらなる側面は、本明細書に開示するようなex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、分析物を安定化させるための液体組成物を含む部分のキットであって、該組成物が水溶液であり、該溶液が抗凝血剤、リン酸塩、細胞代謝可能糖、アデニン、および抗酸化剤を含み、該抗酸化剤がミトコンドリア標的抗酸化剤を含み、該液体組成物が採血容器中に封入されており、該キットがパッケージング材料、ラベル、および使用説明書シートをさらに含む、前記キットである。
本明細書に開示するようなすべての側面および態様において、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、分析物を安定化させるための液体組成物は、好適には、採血容器中に含有されている。その例は、当該技術分野に「バキュテナー」として知られる。バキュテナーは、密閉具および試験管内の真空が備えられた、無菌ガラスまたはプラスチック試験管として提供される血液収集試験管であり、被験体静脈から全血試料などの液体をあらかじめ決定された体積で抜き取ることが容易である。本開示にしたがったバキュテナー試験管は、分析試験前に、全血試料を安定化させ、そして保存するため、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、分析物を安定化させるための液体組成物を含有する。安全操作密閉具を伴いまたは伴わず、多様なラベリングオプションおよび密閉具を伴うとともに、ある範囲の採血体積の試験管が入手可能である。
血液収集プロセスにおいて、まず、半透明のプラスチックホルダー中に保持されている皮下針で静脈を穿通する。針は両頭であり、第二のより短い針は、安全のため、ホルダーによって覆われている。バキュテナー試験管がホルダー内に押し込まれると、ゴムのキャップが第二の針によって貫通され、そして血液体積および試験管中の真空の間の圧の相違が、針を通じて、そして試験管内に、血液を流し込む。次いで、充填された試験管を取り除き、そして別のものを挿入して、そして同じ方式で充填してもよい。なお幾分かの吸引が残っており、撤回に際して疼痛を引き起こす可能性もあるため、針の撤回前に試験管を取り除くことが重要である。収集試験管が針から取り除かれたら、試験管内部の全血試料は被験体の身体から離れ、したがって、ex vivo全血試料となる。したがって、本明細書に開示するようなすべての側面の別の特定の態様は、(a)本明細書に開示するようなex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、分析物を安定化させるための液体組成物、および(b)ある量の全血、すなわちex vivoの全血の測定されたおよび/またはあらかじめ決定された量である試料の混合物を封入する。
本明細書に開示する別の側面は、本明細書に開示するようなex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、分析物を安定化させるための液体組成物の使用であって、該組成物が水溶液であり、該溶液が抗凝血剤、リン酸塩、細胞代謝可能糖、アデニン、および抗酸化剤を含み、該抗酸化剤がミトコンドリア標的抗酸化剤を含み、該使用がex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、DNA、RNAおよびタンパク質より選択される分析物を安定化させることを目的とする、前記使用である。
したがって、本明細書に開示する別の側面は、ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞を安定化させるための方法であって、(a)ex vivoの全血試料を提供し;(b)本明細書に開示するようなex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、分析物を安定化させるための液体組成物と、工程(a)の試料を接触させ、そして混合し、該組成物が水溶液であり、該溶液が抗凝血剤、リン酸塩、細胞代謝可能糖、アデニン、および抗酸化剤を含み、該抗酸化剤がミトコンドリア標的抗酸化剤を含み;(c)工程(b)で得た混合物をインキュベーションし、それによって、ex vivo全血試料のインタクトな有核細胞を安定化させる工程を含む、前記方法である。本明細書に開示するようなすべての側面の特定の態様において、本明細書に開示するような液体組成物と接触し、そして混合された全血試料を、延長された時間間隔に渡って室温でインキュベーションすることも可能であり、それによって、全血試料中に存在する有核細胞、ならびに細胞中の分析物、特にDNA、RNA、およびタンパク質は安定化されている。特定の態様において、工程(b)で得た混合物をインキュベーションする工程は、その後、検出しようとする分析物に応じて、0時間〜12時間、0時間〜24時間、0時間〜36時間、0時間〜48時間、0時間〜60時間、および0時間〜72時間、またはさらにより長期間からなる群より選択される時間間隔に渡って、室温で実行することも可能である。
本明細書に開示するようなすべての側面の態様において、安定化のための標的細胞は、全血のex vivo試料中に存在する有核細胞である。特に、有核細胞は、造血細胞系譜の有核細胞または非造血細胞系譜の有核細胞である。特に、造血細胞系譜の有核細胞は、巨核球、血小板、有核赤血球、マスト細胞、骨髄芽球、好塩基球、好中球、好酸球、単球、マクロファージ、大型顆粒リンパ球、小型リンパ球、Tリンパ球、Bリンパ球、形質細胞、および樹状細胞、または前記細胞タイプいずれかの前駆体からなる細胞タイプの群より選択される。別の特定の態様において、有核細胞は、造血細胞系譜の有核癌細胞である。
本明細書に開示するようなすべての側面のさらなる態様において、安定化のための標的細胞は、全血のex vivo試料中に存在する有核細胞であり、該有核細胞は、2またはそれより多い細胞分裂を経て、それによって娘細胞を形成することが可能である。特定の態様において、有核細胞は、in vivoだけでなく、培地中で、ex vivoでも、細胞分裂を経ることが可能である。したがって、本開示、その側面および態様は、ex vivoの全血試料のインタクトな有核標的細胞の生存能を補助し、そして/または維持するための液体組成物を提供し、該組成物が水溶液であり、該溶液が抗凝血剤、リン酸塩、細胞代謝可能糖、アデニン、および抗酸化剤を含み、該抗酸化剤がミトコンドリア標的抗酸化剤、好ましくはSkQ1、MitoQ、SS−31、およびその混合物からなる群より選択されるミトコンドリア標的抗酸化剤を含み、ここでインタクトな有核標的細胞は、1またはそれより多い細胞分裂を経ることが可能である。より具体的には、有核標的細胞は、培地中で1またはそれより多い細胞分裂を経ることが可能である。
これに関して、当業者は、哺乳動物細胞、特にヒト細胞、より具体的にはヒト起源の癌細胞の生存能および細胞分裂を補助する、異なる培地を熟知している。特定の態様において、培地は、本文書に開示するような全血のex vivoでのインタクトな有核標的細胞の生存能を補助し、そして/または維持するための組成物の非存在下で、細胞生存能および細胞分裂を補助する。
一方、休止状態であるにも関わらず、有核標的細胞の生存能は、開示するような安定化液体組成物と混合されたex vivo全血試料において維持される。他方、そして驚くべきことに、休止状態にある有核標的細胞は、安定化された血液試料から単離可能であり、そして培養に投入可能であり、それによって、安定化剤からひとたび取り除かれたならば、有核細胞は生理学的に再び活性となる。言い換えると、安定化組成物を含む全血試料から有核標的細胞を取り除くと、細胞分裂に必要な生物学的機能さえ含めて、休止状態が逆転される。したがって、当業者はここで、全血試料から有核標的細胞を単離するための改善された手段を与えられ、ここで特定の態様において、標的細胞は、ex vivoで細胞分裂を経ることが可能であり、そしてより具体的には、標的細胞は癌細胞、例えば限定されるわけではないが、循環腫瘍細胞である。
さらに、本明細書に開示するようなすべての側面のさらなる態様において、全血のex vivo試料中に存在する有核標的細胞を単離し、そして培養する方法であって、(a)ex vivoの全血試料を提供し;(b)液体組成物と、工程(a)の試料を接触させ、そして混合し、該組成物が水溶液であり、該溶液が抗凝血剤、リン酸塩、細胞代謝可能糖、アデニン、および抗酸化剤を含み、該抗酸化剤がミトコンドリア標的抗酸化剤、好ましくはSkQ1、MitoQ、SS−31、およびその混合物からなる群より選択されるミトコンドリア標的抗酸化剤を含み;(c)工程(b)で得た混合物をインキュベーションし、それによって、ex vivo全血試料のインタクトな有核細胞を安定化させ;工程(c)のインキュベーションした混合物から有核細胞を分離し、そして分離した有核細胞と培地を接触させ;そして(d)培地中で有核細胞をインキュベーションする工程を含む、前記方法を提供する。特定の態様において、液体組成物は、任意の側面および態様において、本明細書に開示するようなex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、分析物を安定化するための液体組成物より選択される。
ヒトの身体全体に広がった転移性腫瘍を伴う癌は、原発性腫瘍を伴う癌よりも取り除きまたは治療することがより困難である。転移性疾患を持つ患者において、循環腫瘍細胞(CTC)が静脈血中に見出されうる。これらの循環腫瘍細胞は、転移性癌増殖の潜在的な種である。これらの細胞を検出することが、癌ケアにおいて特に望ましい。したがって、本明細書に開示する教示、側面および態様は、この目的のためのさらなる手段を提供する。
したがって、本明細書に開示するようなすべての側面のさらにさらなる態様において、安定化のための標的細胞は、全血のex vivo試料中に存在する有核癌細胞である。特に、安定化のための標的細胞は、全血のex vivo試料中に存在する有核細胞であって、全血試料を得る個人が、安定化(および検出)前に癌に罹患している、前記有核細胞である。特定の態様において、標的細胞は、非造血細胞系譜の有核細胞、特に非造血細胞系譜の癌細胞である。特に、癌細胞は循環腫瘍細胞、特に固形腫瘍から循環内に剥落した細胞であり、循環にはリンパおよび血液が含まれる。
本明細書に開示するようなすべての側面の特定の態様において、循環腫瘍細胞は、上皮、結合組織、骨、軟骨、筋肉、および神経細胞からなる群より選択される細胞の固形腫瘍より選択される。循環腫瘍細胞は、本開示が本明細書において、ある期間に渡って、好ましくは室温で、全血において癌細胞を安定化させることによって、全血において検出可能にすることを目的とする、特定の有核細胞である。
以下の実施例、図、および配列表は、本発明の理解を補助するために提供され、本発明の真の範囲は、付随する請求項に示される。本明細書に提供するような開示および教示の精神から逸脱することなく、示す方法において、修飾を行うことも可能であることが理解される。
実施例1
細胞タンパク質の保存
MDA−MB−468、ヒト乳癌細胞株の懸濁細胞を、健康な個人から得た血液試料内にスパイク処理して、1ml血液あたり100,000のスパイク処理細胞を生じた。試料を直ちにまたは室温で48時間保管した後のいずれかでプロセシングした。試料1は、抗凝血剤としてEDTAのみを含有し、そして添加剤はなく、試料2〜6には、それぞれ、Sivelestat(10μg/ml)、Pefabloc(登録商標)SC(1mM)、SkQ1(100nM)、MitoQ(100nM)およびグルタチオン(3mM)を補充した。
赤血球溶解によって有核細胞を濃縮した。50μlアリコットの各試料を、200μlの溶解緩衝液(100mM NHCl、5mM Hepes、0.5mM KHCO、0.1mM EDTA)と混合し、そして室温で10分間インキュベーションした。200xgで15分間遠心分離した後、上清を取り除き、そしてペレットを250μlの溶解緩衝液中に再懸濁した。200xgで15分間遠心分離した後、上清を取り除き、そして1,000μlのPBS、0.3mM EDTAに再懸濁した。細胞を200xg、15分間の遠心分離によって沈降させた。ペレットをPBS、0.3mM EDTAに再懸濁し、そして試料の体積を500μlに調整した。
各試料に関して、50μlの細胞懸濁物をガラススライド上にスポット処理し、そして風乾した。スライドを氷冷アセトン中で10分間固定し、PBSで2回洗浄し、そしてPBS中で1:50希釈した抗サイトケラチンK5/K8−FITC標識抗体(サイトケラチン=CK)を含有する標識混合物に浸した。暗所で30分間インキュベーションした後、上清を取り除いた。DAPI含有マウンティング培地を添加し、スポットをカバースリップで覆い、そして20分間さらにインキュベーションした後、Zeiss Axio Observer顕微鏡上で分析した。ZeissのAssay Builderソフトウェアを用いて、有核細胞およびCK5/8陽性細胞の総数を分析した。結果を図1に示す。Sivelestat(好中球エラスターゼ阻害剤)およびPefabloc(登録商標)SC(セリンプロテアーゼ阻害剤)のようなプロテアーゼ阻害剤を含有する試料は、添加剤を含まない対照試料よりもより高いシグナルを示した。ミトコンドリアを標的とする抗酸化剤、SkQ1およびMitoQでは、特に陽性の効果が観察された。抗酸化剤グルタチオンではさらに陽性の効果が観察された。
図1は、室温で48時間保管した後の、血液試料内にスパイク処理したMDA−MB−468細胞の検出を例示する。抗CK5/8抗原で免疫染色することによって検出されるMDA−MB−468細胞の割合を示す。
実施例2
細胞タンパク質の保存
MDA−MB−468細胞を、健康な個人から得た血液試料内にスパイク処理して、100,000スパイク処理細胞/ml血液の濃度を生じた。試料を直ちにまたは室温で48時間保管した後のいずれかでプロセシングした。試料1は、単独の抗凝血剤としてEDTAを含有し、そしてさらなる添加剤を含有せず、試料2〜4は、安定化剤として、クエン酸塩(11.7mM)/クエン酸(2.1mM)、NaHPO(2.1mM)、デキストロース(20.1mM;デキストロース=D−グルコース)、アデニン(0.24mM)を含有した。試料3にはさらに、ミトコンドリア標的抗酸化剤SS−31(1μM)が、試料4にはグルタチオン(0.75mM)が補充された。実施例1に記載するように、赤血球溶解によって有核細胞を濃縮し、そしてプロセシングした。
結果を図2に示す。実施例1の結果に加えて、抗酸化剤はまた、クエン酸抗凝血処理血液においても陽性効果を示した。図2は、室温で48時間保管した後の、血液試料内にスパイク処理したMDA−MB−468細胞の検出を例示する。蛍光抗CK5/8抗体で免疫検出することによって検出されるMDA−MB−468細胞の割合を示す。
実施例3
DNAの保存
EDTA、または安定化剤3とも称されるグルタチオン(325mM)、SKQ1(100μM)、およびPefabloc(登録商標)SC(100mM)と混合したEDTA中の3人の健康な個人由来の血液試料に、血液1mlあたり、200,000スパイク処理細胞の最終濃度で、Karpas 422細胞をスパイク処理した。試料を周囲温度で保管した。Karpas細胞は、t(14;18)およびt(4;11)染色体転座の両方を所持する、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)細胞株である。t(14;18)転座は、正常な、すなわちt(14;18)転座不含血液細胞から生じたDNAから、Karpas細胞から生じたDNAを区別するマーカーとして選択された。
試料をセットアップした直後、そして48時間の室温でのインキュベーション後、赤血球溶解によって、有核細胞を濃縮した。350μl試料のアリコットを、1,000μlの溶解緩衝液(80mM NHCl、10mM Hepes緩衝液、0.1mM EDTA)と混合し、そして室温で10分間インキュベーションした。300xgで15分間遠心分離した後、上清を取り除き、そしてペレットを1,000μlの溶解緩衝液中に再懸濁した。300xgで15分間遠心分離した後、上清を取り除き、そしてペレットを1,000μlのPBS中に再懸濁した。細胞を300xg、15分間の遠心分離によって沈降させた。ペレットをPBSに再懸濁し、そして製造者によって推奨されるプロトコルにしたがって、High Pureテンプレート調製キット(Roche Applied Science、カタログ番号11 796 828 001)でDNAを単離した。DNAをHighPureカラムから、100μl溶出緩衝液で溶出させた。
各試料由来の5μl DNAのアリコットを20μl PCR反応において、3つ組で用いた。95℃10分間の最初の変性、50周期の95℃10秒間、60℃60秒間で、LightCycler 480装置中、Lightcycler 480 Probes Master(Roche Applied Science、カタログ番号04707494001)で増幅を行った。用いたプライマーおよびプローブ配列は以下の通りであった:t(14/18)順方向プライマー acctgaggagacggtgac(配列番号1); t(14/18)逆方向プライマー tggggttttgacctttagaga(配列番号2); t(14/18)−FAM検出プローブ 6FAM−ctctgggtgggtctgtgttgaaaca−−BHQ2(配列は配列番号3である)。
室温で48時間、試料を保管したことによって引き起こされる通過点(crossing point)(用語定義に関しては実施例4を参照されたい)の相違を図3に示す。試験した両条件において、DNAの有意な分解はなかった。しかし、安定化剤3の存在下で、試料間変動の減少が観察され、そしてまたアッセイ内変動の減少も観察された。
実施例4
RNAの保存
循環腫瘍細胞を含有する乳癌患者由来の血液試料を、「安定化剤4」と称されるクエン酸塩(11.7mM)/クエン酸(2.1mM)、NaHPO(2.1mM)、デキストロース(20.1mM)、アデニン(0.24mM)およびSkQ1(100nM)中、またはCellSave(Veridex Cell Save Preservativeチューブ、カタログ番号7900005)中のいずれかで収集した。試料#59、#60、#62、#63、#58を室温で48時間保管し、試料#55、#56および#57を室温で72時間保管した。赤血球溶解によって有核細胞を濃縮した。350μl血液試料のアリコットを、1,000μlの溶解緩衝液(80mM NHCl、10mM Hepes、0.1mM EDTA)と混合し、室温で10分間インキュベーションし、300xgで15分間遠心分離し、1,000μlの溶解緩衝液で洗浄し、300xgで15分間遠心分離した。ペレットを200μlのPBS中に溶解し、そしてこれらの細胞から、Roche Applied Sciences、カタログ番号11828665001のHigh Pure RNA単離キットでRNAを単離した。56μlの溶出緩衝液でカラムから溶出させた。Transcriptor第一鎖cDNA合成キット(Roche Applied Sciences、カタログ番号04897030001)を用いて、反応体積20μl中で、単離RNA由来の2μlアリコットを逆転写した。LightCycler 480装置中、LightCycler 480 Probes Masterを用いて、5μl cDNAのアリコットを増幅した。用いたプライマーおよびプローブを表1に記載する。
表1:
§には5’FAM標識、および3’−BHQ2標識が含まれる。
$には5’FAM標識、および3’−TAMRA標識が含まれる。
RT(=逆転写)−PCRを含むリアルタイムPCRは、DNA増幅の線形性を用いて、試料中の既知の配列の絶対または相対量を決定する。反応において、蛍光レポーターを用いることによって、PCRの各周期で、DNA生成を監視する。DNAが増幅の対数線形期にある場合、蛍光の量はバックグラウンドを超えて増加する。蛍光がバックグラウンドに対して測定可能になる増幅周期は、閾値周期または「通過点」と呼ばれる。
結果を表2a〜2dに示す。各セクション(2a〜2d)において、最初の行は、試料番号および室温でのそれぞれの保管時間を示す。第二行は、安定化剤試薬のタイプを明記する。RT−PCRを2つ組で行い、「試験A」および「試験B」と示した。表中の数字は、リアルタイムRT−PCR後に得られた通過点である。「neg」は陰性結果を示す。
表2a
表2b
表2c
表2d
上に示すRNA分子は、特定のタイプの循環腫瘍細胞に特異的であることが知られる。したがって、E−カドヘリン、EpCam、Muc1、サイクリン、CAVおよびCK18をコードするRNAは、驚くべきことに、安定化剤4で保存される試料において検出可能なままであった。白血球中でやはり発現されるcMyc RNAは、安定化剤試薬CellSaveでもまた検出可能であったが、通過点に強いシフトを伴った。これは、それぞれのRNAレベルが、数桁減少したことを示した。
対照として用いたハウスキーピング遺伝子RNA、PPIA、TBP、ベータ2mおよびGAPDHは、すべての試料において検出可能であった。しかし、CellSaveで安定化された試料は、非常に高い通過点を示し、そしてしたがって非常に低いRNAレベルであった。
本実施例は、48時間または72時間保管した血液試料において、RNAが、安定化剤4試薬中で保存可能であることを示す。
実施例5
72時間の試料保管後に単離された細胞由来のRNAの定量化
MDA−MB−468細胞を、2人の健康な個人から得た血液試料内に、14.4x10細胞/mlでスパイク処理した。各ドナーから4つの試料を調製した。試料1および2は、抗凝血剤としてEDTAのみを含有し、そして添加剤は含有せず、試料3および4は、安定化剤として、クエン酸塩(11.7mM)、クエン酸(2.1mM)、NaHPO(2.1mM)、デキストロース(20.1mM)、アデニン(0.24mM),Pefabloc(登録商標)SC(0.25mM)、SS−31(1μM)およびアセチルサリチル酸(1mM)で安定化された(「安定化剤5」)。これらの試料由来のアリコットをセットアップ後、直ちにプロセシングし、他のアリコットを室温で72時間保管した後にプロセシングした。製造者によって推奨されるプロトコルにしたがって、試料材料1,000μlアリコットを用い、Adnagen、カタログ番号T1−508のBreastSelectBeadsで捕捉することによって、MDA−MB−468細胞を血液から単離した。
ビーズ捕捉精製細胞を1,000μl PBS中に再懸濁した。200μlアリコットを用いて、プログラム「DNA LV Blood_20_200」および溶出体積100μlを用い、MagNA Pure LC DNA単離キット−大容量、カタログ番号03310505001を用いて、RNAを単離した。
70μl体積の反応において、Transcriptor第一鎖cDNA合成キット、カタログ番号04897030001を用いてRNAをcDNAに転写し、各反応は12.5μlの単離核酸を含有した。5μlのcDNA試料を含有する20μl反応において、LightCycler 480装置において、LightCycler 480 Probes Masterで、PCRを行った。最初の変性は、95℃10分間であり、95℃10秒間の変性および58℃1分間のアニーリング/伸長の50周期を行った。検出形式:二色加水分解プローブUPL(Universal Probe Library、Roche Diagnostics GmbH、ドイツ・マンハイム)プローブは以下に示す通り。表3は、分析したRNA/DNA標的のためのプライマー/プローブを記載する。
試験するRNA標的の発現レベルの変化を定量化するため、LivakおよびSchmittgenの相対定量化法を用いた(Livak K.J.およびSchmittgen T.D., Methods 2001, 25(4) 402−408)。得たRNA値の規準化のための参照を提供するため、総核酸調製物中に存在するDNAから、GCK標的を増幅した。
図4は、EDTA中で保管された血液から単離した細胞由来のRNAレベルの強い減少を示す。細胞を安定化剤5中で保管した血液から単離した場合、RNAに対して非常に小さい影響しか観察されなかった。発現パターンは、保管中にわずかにしか影響を受けなかった。
表3:
§には5’FAM標識、および3’−BHQ2標識が含まれる。
$には5’FAM標識、および3’−TAMRA標識が含まれる。
実施例6
48時間の試料保管後の生存細胞の単離
MDA−MB−468細胞を、健康な個人から得た血液試料にスパイク処理して、300,000スパイク処理細胞/ml血液の最終濃度を生じた。試料を直ちに、または室温で48時間保管した後にプロセシングした。試料1は、抗凝血剤としてEDTAのみを含有し、そしてさらなる添加剤は含有せず、試料2は、安定化剤として、クエン酸塩(11.7mM)/クエン酸(2.1mM)、NaHPO(2.1mM)、デキストロース(20.1mM)、アデニン(0.24mM),Pefabloc(登録商標)SC(0.25mM)、SS−31(1μM)およびアセチルサリチル酸(1mM)を含有した(「安定化剤5」、実施例5を参照されたい)。
試料セットアップ後、直ちに、そして48時間後、有核細胞を赤血球溶解によって濃縮した。4mlの溶解緩衝液(80mM NHCl、10mM Hepes緩衝液、0.1mM EDTA)と1ml血液のアリコットを混合し、そして室温で10分間インキュベーションした。200xgで15分間遠心分離した後、上清を取り除き、そしてペレットを2mlのPBS/3mM EDTA中に再懸濁した。細胞を200xg、15分間の遠心分離によって沈降させた。上清を取り除き、そして細胞ペレットを、2mM EDTAおよび0.5%BSAを補充した300μlのPBS中に再懸濁した。
製造者によって推奨されるプロトコルを利用して、MiltenyiのCD326(EpCAM)微小粒子(カタログ番号130−061−101)、MSカラムおよびMACS分離装置系(Miltenyカタログ番号130−042−201、130−042−102)を用いて、これらの試料からMDA−MB−468細胞を単離した。
濃縮細胞を300μlのRPMI培地中に懸濁した。
トリパンブルー排除法を用いて、細胞の生存能を試験した。10μlの各試料を10μlのトリパンブルー(Sigma−Aldrich T8154)と混合した。色素を排除するMDA−MB−468細胞の数をNeubauerチャンバー中で計数した。血液試料内にスパイク処理した細胞数を100%として用いて、生存細胞収率を計算した。
表4は、2人のドナー由来の血液試料で得た結果を示す。安定化剤5は、細胞のかなりの数を保存しうる。安定化剤としてEDTAのみを用いた場合、細胞生存能は、驚くほど有意な度合いまで、負に影響を受けた。
表4:
実施例7
安定化された血液から単離された細胞は培養可能である
実施例6に記載するように処理され、そして単離されたMDA−MB−468を、リアルタイム細胞分析装置(RTCA)MP(xCELLigence系)のため、E−Plate 96ウェル・デバイス(Roche Applied Science、カタログ番号06472451001、Roche Diagnostics GmbH、ドイツ・マンハイム)のウェル内に植え付けた。細胞の50μlアリコットを、50μlのRPMI培地を含有するウェル内に植え付けた。分析のため、デュプリケートを用いた。E−Plateを37℃で一晩、インキュベーター中でインキュベーションして、E−Plateの底部へのMDA−MB−468細胞の付着を可能にした。混入した血液由来細胞を除去するため、培地を取り除き、そして培養プレートに付着した細胞をPBSで3回洗浄した。ウェルあたり150μlの新鮮なRPMI培地を添加し、そしてE−Plateをリアルタイム細胞分析装置に移した。101時間に渡って、1時間に1回、細胞インデックスを測定した。
結果を図5に示す。本発明に記載する安定化剤中で48時間保管した血液から単離した細胞を用いて、細胞増殖を観察することも可能である。
EDTAのみで安定化した細胞と比較を行った。その結果、EDTAのみを用いて48時間保管した血液から単離した細胞は、それ以上培養可能ではない。

Claims (24)

  1. ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、分析物を安定化させるための液体組成物であって、該組成物が水溶液であり、該溶液が抗凝血剤、リン酸塩、細胞代謝可能糖、アデニン、および抗酸化剤を含み、ここで該抗酸化剤が、ミトコンドリア標的抗酸化剤、好ましくはSkQ1、MitoQ、SS−31、およびその混合物からなる群より選択されるミトコンドリア標的抗酸化剤を含む、前記液体組成物。
  2. プロテアーゼ阻害剤、好ましくはSivelestat、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF)、およびその混合物からなる群より選択されるプロテアーゼ阻害剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
  3. 抗酸化剤が、第一および第二の抗酸化剤の混合物であり、第一の抗酸化剤がミトコンドリア標的抗酸化剤であり、そして第二の抗酸化剤がミトコンドリア標的抗酸化剤以外の抗酸化剤である、請求項1および2のいずれか記載の組成物。
  4. 第二の抗酸化剤が、グルタチオン、アセチルサリチル酸、N−アセチル−5−アミノサリチル酸、N−アセチルシステイン、6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸(Trolox)およびその混合物からなる群より選択される、請求項3のいずれか記載の組成物。
  5. 第一のミトコンドリア標的抗酸化剤が、SkQ1、MitoQ、SS−31、およびその混合物からなる群より選択される、請求項3記載の組成物。
  6. 細胞代謝可能糖が、グルコースおよびフルクトースからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか記載の組成物。
  7. 採血容器中に封入されている、請求項1〜6のいずれか記載の組成物。
  8. ある量の全血をさらに含む、請求項1〜7のいずれか記載の組成物。
  9. 10nM〜200μM、好ましくは100nM〜100μM、より好ましくは200nM〜50μMの凝集体濃度で、1またはそれより多いミトコンドリア標的抗酸化剤を含む、請求項8記載の組成物。
  10. 50nM〜250nM、好ましくは100nMのSkQ1、250nM〜200μM、好ましくは100μMのSkQ1、50nM〜250nM、好ましくは100nMのMitoQ、および500nM〜10μM、好ましくは1μMのSS−31からなる群より選択される、測定された量のミトコンドリア標的抗酸化剤を含む、請求項9記載の組成物。
  11. 11.1mM〜12.3mMクエン酸三ナトリウム(約11.7mM)/2mM〜2.2mMクエン酸(約2.1mM)、2mM〜2.2mM NaHPO(約2.1mM)、19.1mM〜21.1mMグルコース(約20.1mM)、0.23mM〜0.25mMアデニン(約0.24mM)、0.24mM〜0.26mM AEBSF(約0.25mM)、990nM〜1.1μM SS−31(約1μM)およびアセチルサリチル酸990μM〜1.1mM(約1mM)を含む、請求項10記載の組成物。
  12. ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞において、DNA、RNAおよびタンパク質より選択される分析物を安定化させるための、請求項1〜7のいずれか記載の組成物の使用。
  13. パッケージング材料、ラベル、および使用説明書シートをさらに含む、請求項7記載の組成物を含む部分のキット。
  14. ex vivoの全血試料のインタクトな有核細胞を安定化させるための方法であって
    (a)ex vivoの全血試料を提供し;
    (b)請求項1〜6のいずれか記載の組成物と、工程(a)の試料を接触させ、そして混合し;
    (c)工程(b)で得た混合物をインキュベーションし、
    それによって、ex vivo全血試料のインタクトな有核細胞を安定化させる
    工程を含む、前記方法。
  15. 工程(b)で得た混合物が、請求項9〜11のいずれか記載の組成物である、請求項14記載の方法。
  16. 0時間〜12時間、0時間〜24時間、0時間〜36時間、0時間〜48時間、0時間〜60時間、および0時間〜72時間からなる群より選択される時間間隔で、室温で工程(c)を行う、請求項14および5のいずれか記載の方法。
  17. (d)工程(c)で得たインキュベーションした混合物から、インタクトな有核細胞を分離し;
    (e)分離した有核細胞を溶解し、そして溶解物中の有核細胞の分析物を検出する、ここで分析物は、DNA、RNA、およびタンパク質からなる群より選択される
    工程をさらに含む、請求項14〜16のいずれか記載の方法。
  18. 工程(b)の混合物において、ミトコンドリア標的抗酸化剤が、500nM〜10μM、好ましくは約1μMの濃度のSS−31である、請求項17記載の方法。
  19. 工程(b)の混合物が、200nM〜10mM、好ましくは1mMの濃度のアセチルサリチル酸、および50nM〜1mM、好ましくは250nMの濃度のAEBSFをさらに含む、請求項18記載の方法。
  20. 工程(b)の混合物において、ミトコンドリア標的抗酸化剤が、250nM〜200μM、好ましくは100μMの濃度のSkQ1である、請求項17記載の方法。
  21. 工程(b)の混合物が、100mM〜600mM、好ましくは325mMの濃度のグルタチオン、および10mM〜300mM、好ましくは100mMの濃度のAEBSFをさらに含む、請求項20記載の方法。
  22. 工程(b)の混合物において、ミトコンドリア標的抗酸化剤が、50nM〜250nM、好ましくは100nMのSkQ1である、請求項17記載の方法。
  23. (d)工程(c)で得たインキュベーションした混合物から、インタクトな有核細胞を分離し;
    (e)工程(d)の分離された有核細胞を培地と接触させ、そして生存細胞を培養する
    工程をさらに含む、請求項14〜16のいずれか記載の方法。
  24. 工程(e)の生存細胞が、培地中で1またはそれより多い細胞分裂を経る、請求項23記載の方法。
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