JPH11192084A - 血液中の酵素活性の安定化方法 - Google Patents

血液中の酵素活性の安定化方法

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JPH11192084A
JPH11192084A JP36761797A JP36761797A JPH11192084A JP H11192084 A JPH11192084 A JP H11192084A JP 36761797 A JP36761797 A JP 36761797A JP 36761797 A JP36761797 A JP 36761797A JP H11192084 A JPH11192084 A JP H11192084A
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blood
activity
enzyme
enzyme activity
reducing agent
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Manabu Yoshino
学 吉野
Michinobu Kamiyama
道信 神山
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Eiken Chemical Co Ltd
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Eiken Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明の目的は、血液試料中の酵素活性の安定
化に有る。特にリンパ球中に多く含まれる2’−5’オ
リゴアデニル酸合成酵素(2−5AS)の安定化を目的
とする。 【構成】本発明は、血液試料に還元剤を共存させること
によって達成される。還元剤としては2−メルカプトエ
タノール(2ME)が例示され、2MEを含有するHE
PES緩衝液を酵素活性安定化剤として使用する。 【効果】本発明は、均質化した血液試料中の酵素活性を
高度に安定化する。例えば、2−5AS活性を4℃保存
でも少なくとも7日間に亘って安定に維持する。この技
術は血球成分に由来する酵素の安定化に有用であり、病
態との関連をダイレクトに示す血球成分中の酵素活性を
安定化し、試料の保存を容易としたので血球中酵素の測
定系の発展に貢献すると考えられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、血液中の酵素活性の安
定化に関するもので、血球成分に含まれる酵素の安定化
に関する。特にリンパ球中に多く含まれる2’−5’オ
リゴアデニル酸合成酵素(以下2−5ASと略す)や赤
血球に多く含まれるアデノシンデアミナーゼ(ADA)
等の血球中に含まれる酵素の溶血させて均質化した血液
中での酵素活性の安定化に関する。
【0002】2−5ASは、リンパ球等においてインタ
ーフェロン(IFN)により誘導される酵素であり、B
型肝炎C型肝炎等のIFN治療の有効な患者ではその上
昇率も高いとされている。この2−5ASは、2本鎖R
NA(以下dsRNAと省略する)の存在下でアデノシ
ン3リン酸(以下ATPと省略する)を基質としてアデ
ニル酸を(2’−5’)ホスホジエステル結合で重合
し、2’−5’オリゴアデニル酸(以下2−5Aと省略
する)を産生する活性を持っている[1]。
【0003】
【化1】
【0004】2−5ASに合成された2−5Aの役割
は、ウイルスのmRNAのキャップ形成の阻止、細胞制
御、細胞の分化などに関係があり、2−5Aが細胞内に
誘導された場合には、タンパク質合成やウイルスの複製
が阻止される。以上の生体防御の機序を利用し、2−5
AS活性値を各種微生物(ウイルス、細菌、マイコプラ
ズマ等)の感染やインターフェロン治療効果の指標とで
きることが確認された。現在では既に放射免疫測定法
(以下RIAと省略する)を利用した2−5AS活性の
測定用キットも市販されている。
【0005】アデノシンデアミナーゼ(ADA)はプリ
ン体の分解と再利用に関る酵素で、アデノシンのアミノ
基を加水分解し、イノシンとアンモニアを精製する酵素
で、血清中のみならず赤血球やリンパ球にも存在するこ
とが知られている。また肝疾患、悪性腫瘍、白血病、痛
風等でADA活性が上昇することが知られている。
【0006】またその他にも血球成分に含まれる酵素と
しては、ラクテートデヒドロゲナーゼ、イソクエン酸デ
ヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、β−グル
クロニダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、アデニレ
ートキナーゼ、アルドラーゼ、ピルビン酸キナーゼ、酸
性ホスファターゼ、リゾチームなど、多数が知られてお
り、それぞれ病態との関連が研究されている。
【0007】
【従来技術の問題点】2−5ASやADAは本来細胞内
酵素であり、現在測定されている血清中のそれらの酵素
活性は血球成分や組織の破壊の過程で細胞から漏れ出た
酵素の活性を測定していると考えられている。特に2−
5ASは非常に不安定な酵素で、血清中の2−5AS活
性は、採血条件や保存条件の影響を大きく受けるとされ
ている。そのため、血液中のリンパ球を分離してその中
の2−5AS活性を測定する方が実際の臨床症状と相関
性が高いといわれている[2][3]。
【0008】確かに、血液中のリンパ球を単離し、直接
リンパ球内の2−5AS活性を測定する方がIFNなど
の影響、治療効果をすばやく捉えられると考えられる。
しかし、血液中のリンパ球を分離して酵素を抽出するに
は煩雑な操作とかなりの時間が必要となり、臨床検査と
して多数の検体を取り扱うには不適当である。それ故、
より簡便な測定法として、溶血させた血液試料中の2−
5AS活性の測定の検討が行われている[4][5]。
この方法は血液を凍結融解もしくは物理的刺激により溶
血させ、イーグルMEM培地で30倍に希釈し、その2
−5AS活性を市販の2−5AS活性測定RIAキット
で測定するものである。それによると血液試料中の2−
5AS活性は血清中の活性の50〜100倍高値を示
し、また特にIFN治療中の患者で非常に高い活性を示
し、IFN治療のマーカーとしての有用性が示唆されて
いる。
【0009】しかしながら全血血液中の2−5ASの活
性は、血清中よりも安定ではあるが、それでも、冷所2
4時間保存で約80%、冷所48時間保存で50〜70
%に低下し、実際の臨床検査の場で使用するには安定性
が不足している。そのため上記文献では全血血液は使用
時まで−80℃で保存し、使用時に凍結融解により溶血
し血液試料を調製し、調製した血液試料中の2−5AS
活性を測定している。なお以下にイーグルMEM培地の
組成を次に示す。これは還元剤や緩衝成分を含むもので
はない。
【0010】イーグルMEM培地組成:(単位:mg/L) L-Arginine-HCl 126.0 L-Cystine-Na2 28.4 L-Glutamine 292.3 L-Histidine-HCl/H2O 41.9 L-Isoleucine 52.5 L-Leucine 52.5 L-Lysine/HCl 73.1 L-Methionine 14.9 L-Phenylalanine 33.0 L-Threonine 47.6 L-Tryptophan 10.2 L-Tyrosine 36.2 L-Valine 46.9 CaCl2 200.0 KCl 400.0 MgSO4 97.7 NaCl 6800.0 NaHCO3 2000.0 NaH2PO4/H2O 140.0 Choline Chloride 1.0 D-Ca Panthotenate 1.0 Folic Acid 1.0 i-Inositol 2.0 Nicotinamide 1.0 Pyridoxal/HCl 1.0 Riboflavin 0.1 Thiamin/HCl 1.0 Dextrose 1000.0 Phenol Red/Na 17.0
【0011】
【発明が解決しようとする課題】現在、血中2−5AS
活性測定は血清試料を用いる方法がほとんどであるが、
血球成分から漏出した一部分の酵素の活性を測定してい
るに過ぎず、また安定性に関しても血清試料は経時的に
急激に活性を失う。これに対し血球成分を破壊し均質化
して均一な溶液状態とした血液試料を用いることによ
り、より直接的に潜在する2−5AS酵素活性の絶対量
を測定することができるようになった。しかし血液試料
中の2−5AS活性の安定性に関しては、未だ不満があ
り、実際の臨床検査の場で用いるには安定性が不足して
いる。本発明の目的は、全血試料中の酵素活性の安定化
に有る。特に均質化した血液試料中の血球成分に含まれ
る酵素を通常の冷蔵庫等で保存可能とし、実際の臨床検
査の場で使用できるように安定化する技術を提供するこ
とが本発明の課題である。特に均質化した血液中の2−
5AS活性を安定性することを目的とする。
【0012】精製した酵素の安定化に還元剤やSH化合
物が有効であることが知られていた。例えばウリカーゼ
の安定化にアスコルビン酸等の還元剤を用いる方法
[6]、SH化合物で精製ウレアーゼを安定化する方法
[7][8]、SH化合物でLDH、MDH、HK、G
6PDHを含有する試薬を安定化する方法[9][1
0][11][12]が知られていた。しかし、これら
の方法は精製酵素の安定化法であり、またGOT、GP
T、グルコース測定用試薬の安定化法であり、還元剤
(SH化合物)やその他の成分で目的とする酵素や測定
用試薬の安定化を達成している。これらの報告中には全
血中の酵素活性の安定化に還元剤が有効であるとはまっ
たく記載されておらず、その示唆すらもない。
【0013】
【問題を解決するための手段】本発明の課題は、血液に
還元剤を共存させることによって達成される。ここで活
性を安定化すべき酵素とは、血球成分に由来するもの、
白血球または赤血球に由来するもの、特にリンパ球に由
来するものである。リンパ球に由来する酵素としては例
えば2−5ASが挙げられ、赤血球由来の酵素の例とし
ては、ADAが挙げられる。また血液中に共存させる還
元剤としては、例えば2−メルカプトエタノール(2M
E)、ジチオトレイトール(DTT)、システインが例
示され、その中でも2−メルカプトエタノール(2M
E)が本発明には好ましい。これらの還元剤は単独で用
いても、また複数を組み合わせても良い。その濃度は血
液に対して5〜100mMで用いることが好ましい。ま
た、本発明の還元剤は、均質化の有無に関わりなく全血
中の酵素活性を安定化するが、酵素活性の測定が均質化
された血液試料を検体として行われるので、血液は還元
剤を加えた均質化血液試料として測定時まで保存するの
が望ましい。
【0014】また本発明は、次の工程a)−d)を含む
血液中の2−5ASの活性測定方法を提供する。 a)採取した血液を還元剤を含む希釈液で希釈する工程 b)希釈した血液中の血球成分を破壊して均質化する工
程 c)2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素の基質を与え
て酵素反応を行う工程 d)酵素反応の結果生じる変化を観察する工程
【0015】本発明の測定方法において、まず血液は抗
凝固剤を含んだ採血管で採血される。抗凝固剤として
は、ヘパリン、EDTA(及びその塩)、クエン酸ナト
リウム、フッ化ナトリウム、シュウ酸ナトリウムなどの
一般的な抗凝固剤が使用可能であり、その中でもヘパリ
ンやEDTA−2Naが用いられる。次いで工程a)で
血液は希釈される。この時用いる採取した血液を希釈す
る希釈液は、ヒトの2−5ASがpH7.0〜8.0、
好ましくはpH7.5〜7.8で最大の活性を示すとさ
れているので、この範囲のpHを与える緩衝液が好まし
い。具体的には、還元剤を含んだ1〜100mM、好ま
しくは5〜30mMのHEPES(2-[4-(2-hydroxyethy
l)-1-piperazyl] ethansulfonic acid)緩衝液を示すこ
とができる。また希釈の倍数は10倍程度が適当であ
る。
【0016】ついで工程b)において希釈した血液中の
血球成分を破壊して均質化する。血球成分の破壊均質化
は、凍結融解、溶血剤の添加、超音波破砕、あるいは機
械的刺激による溶血といった一般的な手段により達成さ
れる。溶血剤としてはサポニン、Nonidet−P4
0等の界面活性剤等を含ませて低浸透圧とした溶血剤を
使用する。またピペット等で強く撹拌したり、超音波に
よる機械的刺激で溶血しても良い。しかし、界面活性剤
によっては酵素反応を阻害するものもあり、血球成分中
の酵素によっては機械的な刺激に弱いものも存在するの
で、活性を安定化すべき酵素によって、溶血方法は選択
される。凍結融解による溶血方法は一般的であり、酵素
に対するダメージが少ない方法の一つと考えられてい
る。本発明において溶血方法は、凍結融解を2回または
3回繰り返すことが好ましい。凍結は例えばドライアイ
ス−アルコール混液で−80℃程度に急速冷却・凍結
し、溶解は20〜40℃程度の温浴で急速融解すると速
やかに均質化される。この方法によって均質化された還
元剤を含む血液試料は冷蔵庫程度の冷所における保存で
も十分安定である。なおこの操作によってリンパ球のみ
ならず赤血球も破壊され着色するが、最終的な酵素反応
生成物の測定に着色やヘモグロビンによる酵素的な触媒
活性による影響の無い限り問題となることはない。
【0017】なお、上述の均質化した血液試料の作成は
工程a)b)の順番を逆とした工程 a’)採取した血液中の血球成分を破壊して均質化する
工程 b’)均質化した血液を還元剤を含む希釈液で希釈する
工程 によっても達成される。要するに均質化し希釈された血
液試料中に還元剤が含まれていることが重要であるの
で、工程a)b)及びa’)b’)の順番は問わず、ど
ちらの工程を選択しても作成された血液試料は冷所保存
で充分安定となる。また上述の工程では還元剤を含んだ
希釈液を用いているが、還元剤を単独で用い、均質化し
希釈した血液試料中に別途加えても良い。
【0018】次いで、工程c)において2−5ASの基
質ATPを与えて酵素反応を行う。2−5ASは酵素活
性の発現に当たってMg2+のような2価の金属イオンを
要求する。したがって工程c)を行うためには、2−5
ASの活性を十分に維持するためにこれら2価の金属イ
オンを供給しておく必要がある。Mg2+は酢酸マグネシ
ウムのような塩として添加すると良い。またその使用濃
度は、反応液中で0.5〜50mM、好ましくは3〜1
0mM程度を例示することができる。
【0019】また2−5ASによる酵素反応は、20−
50℃の温和な温度条件の下で行うことが好ましい。特
に好ましい温度は30−40℃である。また2−5AS
はSH酵素であるため、2MEやDTTのようなSH保
護剤の共存下で反応を行うと良い。これらの保護剤は本
発明の安定化剤として試料中に既に加えられているが、
酵素反応時にさらに添加することによって、酵素反応時
の失活を抑えることができる。さらに酵素反応時の失活
を抑えるために、10〜50%程度のグリセロールの添
加が有効であることが知られている。また2−5ASの
酵素活性を十分に発現させるために適当な塩濃度を与え
るのが好ましい。たとえば塩としてK塩やNa塩を用い
る場合、反応液中で20〜100mM、好ましくは30
〜60mMの塩濃度が好適である。
【0020】次いで、工程d)酵素反応の結果生じる変
化を観察する工程に移る。つまり、工程c)において生
成する2−5A、ピロリン酸(PPi)、あるいは消費
されるATP等を測定し、血液試料中の2−5ASの活
性を決定する工程である。工程c)で2−5ASの酵素
反応に必要な条件を与えれば、2−5ASに触媒される
反応は酵素活性に律速され、その反応生成物の量は酵素
活性に左右される。このような好適な条件を与えれば反
応生成物(または消費される物質)の量を指標として酵
素活性を決定することができ、これらの反応生成物の量
や濃度はそのまま酵素活性の指標とする事ができる。予
め2−5AS酵素の蛋白量と酵素反応生成物の生成速度
について検定した標準を用いれば、この標準を基に酵素
活性単位として捉えることも可能である。酵素活性の指
標となる反応生成物としては、2−5A、そしてピロリ
ン酸を挙げることができる。各生成物の測定方法を以下
に具体的に述べる。
【0021】2−5Aの測定法:2−5Aは、酵素、発
光物質、蛍光物質、RIといった公知の標識技術を利用
した免疫測定法によって測定することができる。特に
125I標識を用いたRIA法[13]は高い感度を簡単
な操作で達成することができるので、本発明における好
ましい態様として挙げられる。この他に32Pによる標識
抗原を用いる方法[14][15]も公知であるが、感
度や半減期を考慮すると125Iの方が有利である。また
本出願人も従来のRIA法を改良した2−5A測定法を
開発し、既に特許出願している[16]。
【0022】ピロリン酸の測定法:ATPを重合して2
−5Aとする時に副産物として生成するのがピロリン酸
(PPi)である。したがってピロリン酸は定量的に生
成し、酵素活性の指標とすることが可能である。ピロリ
ン酸の測定にはさまざまな方法が知られているが、高い
感度の期待できる生物発光反応に基づく測定法が有利で
ある。このような測定法として、細胞培養物の2−5A
活性をピロリン酸の酵素的な測定系の応用により、吸光
度測定した報告が有る[17]。反応原理は次の反応式
によって示すとおりである。このような酵素的な反応を
ピロリン酸の測定法として本発明に応用することができ
る。酵素的な反応ではRI標識物質を使わないで測定系
を構成できるので、設備面では有利であるが、RIAに
匹敵する感度を達成するには発光増強剤などとの組み合
わせが必要な場合も有る。
【0023】
【化2】
【0024】ATPの測定法:ATPは2−5AS活性
の発現に伴って定量的に消費される物質である。したが
って2−5ASによる酵素反応の前後でATP濃度を測
定して差を求めれば、原理的には2−5AS活性の指標
とすることができる。ATPは一般的な蛍光法で測定し
ても良いが、2−5AS活性測定には高感度が要求され
るので、ルミノール等を用いる化学発光法や、ルシフェ
ラーゼ等を用いる生物発光法で測定するのが好ましい。
【0025】また、本発明は還元剤を含む血液試料中の
2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素活性安定化剤を提
供する。例えば還元剤として2MEを適当な緩衝液、例
えばHEPESに溶解し、安定化剤として使用すること
ができる。実際には、2MEとHEPES緩衝液を要時
に混合し、2−5AS酵素活性安定化剤とする。また先
に2ME−HEPES液を用意しておいて採取した血液
に加えてもよい。更に一歩進めて採血管に、抗凝固剤と
ともに入れておき、採血後直ちに均質化処理を行う2−
5AS活性測定用採血管としてもよい。
【0026】より具体的には、2−メルカプトエタノー
ルを5〜100mM、酢酸マグネシウムを0.5〜50
mM、塩化カリウムを20〜100mM、グリセロール
を10〜50%含有する1〜100mMのHEPES緩
衝液(pH7〜8)よりなる処方の血液試料中の2−5
AS酵素活性安定化剤とする。必要に応じてアジ化ナト
リウムのような防腐剤を加えても良い。
【0027】さらに具体的には本発明の2−5AS酵素
活性安定化方法を利用した、2−5AS活性測定は次の
ような手順で行われる。 《血液の採取》EDTA−2Na、ヘパリンなど一般的
な抗凝固剤含有採血管などを使用して、血液を採取す
る。 《血液試料の調製》採取血液を十分に抗凝固剤と混和し
た後、酵素活性安定化剤900μl(10mM 2M
E、3mM 酢酸マグネシウム、50mM KCl、25
% グリセリンを含む10mM HEPES緩衝液)があ
らかじめ分注してある試験管に血液100μlを添加
し、十分に混和する。−80℃の超低温漕中、またはド
ライアイスをメタノールに加えた急速冷媒中で凍結さ
せ、十分に凍結した後、水浴中で溶解する。この凍結融
解を2〜3回繰り返し、血球を破砕し、均質化された試
料、つまり血液試料が調製される。本発明の酵素活性安
定化剤により、血液は10倍に希釈された状態で調製さ
れ、均質化血液試料となる。なお、当酵素活性測定時に
用いる測定系は希釈直線性に優れたものであるので、更
なる希釈が必要な高値試料は生理食塩水など適当な希釈
溶媒を用いて測定時に適宜希釈を行えばよい。 《2−5A合成酵素活性測定方法》上記のように調製し
た血液試料50μl、酵素活性賦活剤poly(I)p
oly(C)溶液試薬200μl、基質ATP溶液20
0μlを一つの試験管内で混和し、37度の温浴中で3
0分間反応を遂行させる。この反応で、試料中の当酵素
の触媒活性により基質ATPが重合し、2−5Aが生成
する。酵素反応終了後、125I標識2−5A溶液200
μl、抗2−5A抗血清溶液試薬200μlを混和し、
37℃の温浴中で1時間反応させる。反応終了後、遠心
分離によってB/F分離を行い、上清中の未反応分画を
吸引除去する。以上のような操作手順によって得られた
各反応チューブの放射線量をガンマカウンターで測定す
る。この測定操作によって生成された2−5Aの量を標
準曲線から算定する。
【0028】
【作用】本発明における還元剤の正確な作用機序は不明
である。しかし、本来細胞内酵素である2−5ASは、
血清中に単独で存在するよりも、血球成分とともに存在
する均質化した血液試料中の方が安定性は高い。しかし
それでも空気中の酸素といった酸化成分による酸化を受
けて失活するものと考えられ、2ME等の還元剤はその
酸化反応を防止するものと推定される。
【0029】
【発明の効果】現在、血清試料を用いて測定されている
血中2−5AS活性は、血球成分から漏出した一部分の
酵素の活性を測定しているに過ぎず、また安定性に関し
ても血清試料は経時的に急激に活性を失う。これに対し
全血血液の血球成分を破壊し均質化して均一な溶液状態
とした血液試料は、より直接的に潜在する2−5AS酵
素活性の絶対量を測定することができる。しかし全血試
料は、実際の臨床検査の場では−80℃で保存されてい
るが、それでも安定性が不足しており、−80℃で保存
しても酵素活性は経時的に低下する。それ故、2−5A
S活性を安定化する方法が望まれていた。本発明は、全
血血液を適当な緩衝液中で均質化した血液試料中に還元
剤を共存させることにより、血液試料中の酵素活性を安
定化した。具体的には、2MEを含むHEPES緩衝液
中で全血血液を均質化することにより、2−5AS活性
を4℃保存でも少なくとも7日間にわたって安定に維持
することを可能とした。また高価なディープフリーザー
の使用も不要とした。この技術は血球成分に由来する酵
素の安定化に有用であり、病態との関連をダイレクトに
示す血球成分中の酵素活性を安定化し、試料の保存を容
易としたので血球中酵素の測定系の発展に貢献すると考
えられる。
【0030】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明す
るが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明
において2−5AS活性測定は、酵素反応により生成し
た2−5Aを二抗体RIA法で測る方法を採用した[1
6]。測定操作フローを図1に示した。また得られた検
量線を図2に示した。2−5AS酵素活性は生成した2
−5Aの濃度(pmol/dl)で表わされる。
【0031】参考例 −20℃で凍結保存した全血血液
の安定性 −20℃で1週間凍結保存した全血血液中の2−5AS
活性の安定性を、−80℃で一週間保存した全血血液中
の2−5AS活性と比較。 操作:ヘパリン採血した血液を−20℃及び−80℃で
7日間凍結保存し、酵素活性測定直前に融解し、均質化
した血液試料の活性を測定した。試料の希釈は生理食塩
水で行った。結果を表1に示す。表1に示すように、2
−5ASは不安定な酵素であり、−20℃で凍結保存し
ても全血血液中の2−5ASは、−80℃保存の血液と
比較して、血液によっては40%以上失活した。
【0032】
【表1】
【0033】実施例1 血液試料の調製法(希釈溶媒の
選択) 血液試料の調製に用いる希釈溶媒の選択を行った。ヘパ
リン採血した血液を、20mM HEPES、生理食塩
水、精製水、MEM、及び10mM 2MEを含む10
mM HEPES(HEPES+2ME)で10倍希釈
し、凍結融解1回で均質化した血液試料を測定し、測定
値を比較した。結果を表2にしめす。
【0034】
【表2】
【0035】HEPES+2ME緩衝液系が最も良い結
果を与えた。またHEPESは2−5AS活性測定に用
いる緩衝液でもあるので、希釈溶媒としてはHEPES
を選択し、HEPES+還元剤を、今後の血液試料の調
製に使用することとした。またHEPES+還元剤を、
2−5AS活性賦活剤であるpoly(I)poly
(C)試薬や基質であるATP溶液の溶解にも用いるこ
ととした。なお、MEM希釈試料はフィブリンの形成が
見られ、MEMは血液希釈用溶媒には不適当であった。
【0036】実施例2 血液試料の調製法(凍結融解の
回数の選択) 全血血液を均質化するのに最適な凍結融解の回数の選択
を行った。ヘパリン採血した全血血液を10mM HE
PES+10mM 2MEで10倍希釈し、均質化する
際の凍結融解の回数を1〜4回に変えて試料を調製し、
2−5AS活性を測定し、測定値を比較した。結果を表
3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】表3より、凍結融解2回または3回で測定
値が最大となる。操作の容易性を考えて凍結融解2回を
選択し、今後の均質化に使用した。
【0039】実施例3 血液試料の調製法(希釈と凍結
融解の順序の選択) ヘパリン採血した血液を、10mM HEPES+10
mM 2MEで希釈し、凍結融解2回の血液試料の2−
5AS活性を測定した。希釈/凍結融解の操作順序を変
えて測定値を比較した。結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】どちらの操作でも測定値に差がないので、
凍結融解操作のやりやすさから、操作B:希釈後凍結融
解を選択した。
【0042】実施例4 血液試料の調製法(抗凝固剤の
選択) EDTA採血及びヘパリン採血した全血試料を10mM
HEPES+10mM 2MEで希釈後、凍結融解を2
回行い、均質化した血液試料を測定した。結果を表5に
示す。どちらの抗凝固剤を用いても測定値に差は見られ
なかった。
【0043】
【表5】
【0044】実施例5 血液試料の保存安定性 ヘパリン採血した全血血液を、10mM 2ME、3m
M 酢酸マグネシウム、50mM KCl、25% グリ
セリンを含む10mM HEPES緩衝液(pH7.
5)よりなる2−5AS酵素活性安定化剤で希釈し、凍
結融解を2回行い、均質化した血液試料を4℃で7日間
保存し、安定性を調べた。結果を表6に示す。
【0045】
【表6】
【0046】表6に示されるように、本発明の酵素活性
安定化剤で希釈・均質化された血液試料は冷所で7日保
存後であっても、その酵素活性を良好に保持しており、
安定であった。
【0047】REFERENCES: [1]免疫薬理、1、80−88、1983 [2]Biomedicine & Pharmaco
therapy, 37, 176−180, 198
3 [3]Hepatology, 8, 366−37
0, 1988 [4]臨床検査、39、1461−1464、1995 [5]臨床病理、42(補冊)、96、1994 [6]特公昭46−29785号 [7]特公昭61−17464号 [8]特公昭60−27516号 [9]特公平1−42679号 [10]特公平1−42680号 [11]特公平1−55880号 [12]特公平2−44520号 [13]Progress in clinical
and biological research.
Vol.202,1985,‘ The 2−5A S
ystem − Molecular and cli
nical aspects of the inte
rferon−regulated pathway
’ p97−104 [14] Nature 288(13),189−1
92,1982 [15] J. Biol.Chem.,259
(3),1727−1730,1984 [16]特開平9−107993号 [17]Anal.Biochem.207,90−9
3,1992
【図面の簡単な説明】
【図1】2−5AS活性測定法フロー
【図2】2−5AS活性標準曲線

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】還元剤を共存させることによって血液中の
    酵素活性を安定化する方法
  2. 【請求項2】活性を安定化すべき酵素が、血球成分に由
    来するものである請求項1の酵素活性を安定化する方法
  3. 【請求項3】活性を安定化すべき酵素が、白血球または
    赤血球に由来するものである請求項1の酵素活性を安定
    化する方法
  4. 【請求項4】活性を安定化すべき酵素が、リンパ球に由
    来するものである請求項1の酵素活性を安定化する方法
  5. 【請求項5】活性を安定化すべき酵素が、2’−5’オ
    リゴアデニル酸合成酵素である請求項1の酵素活性を安
    定化する方法
  6. 【請求項6】活性を安定化すべき酵素が、アデノシンデ
    アミナーゼである請求項1の酵素活性を安定化する方法
  7. 【請求項7】還元剤が、SH化合物である請求項1の酵
    素活性を安定化する方法
  8. 【請求項8】還元剤が、2−メルカプトエタノール、ジ
    チオトレイトール、システインよりなる群より選ばれる
    ひとつまたは複数の還元剤である請求項1記載の酵素活
    性を安定化する方法
  9. 【請求項9】還元剤が、2−メルカプトエタノールであ
    る請求項1の酵素活性を安定化する方法
  10. 【請求項10】還元剤を血液に対して5〜100mMで
    用いる請求項1の酵素活性を安定化する方法
  11. 【請求項11】血液が血球成分を破壊して均質化された
    状態にあることを特徴とする請求項1の酵素活性を安定
    化する方法
  12. 【請求項12】次の工程a)−d)を含む血液中の2’
    −5’オリゴアデニル酸合成酵素活性測定方法 a)採取した血液を還元剤を含む希釈液で希釈する工程 b)希釈した血液中の血球成分を破壊して均質化する工
    程 c)2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素の基質を与え
    て酵素反応を行う工程 d)酵素反応の結果生じる変化を観察する工程
  13. 【請求項13】次の工程a’)−d)を含む血液中の
    2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素活性測定方法 a’)採取した血液中の血球成分を破壊して均質化する
    工程 b’)均質化した血液を還元剤を含む希釈液で希釈する
    工程 c)2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素の基質を与え
    て酵素反応を行う工程 d)酵素反応の結果生じる変化を観察する工程
  14. 【請求項14】血球成分の破壊を、凍結融解により達成
    する請求項13もしくは請求項14の2’−5’オリゴ
    アデニル酸合成酵素活性測定方法
  15. 【請求項15】必要に応じて工程b)もしくは工程
    b’)後の均質化試料を冷所で保存する請求項13もし
    くは請求項14の2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素
    活性測定方法
  16. 【請求項16】還元剤を含有することを特徴とする血液
    試料中の2’−5’オリゴアデニル酸合成酵素活性安定
    化剤
  17. 【請求項17】少なくとも2−メルカプトエタノールを
    5〜100mM、酢酸マグネシウムを0.5〜50m
    M、塩化カリウムを20〜100mM、グリセロールを
    10〜50%含有する、1〜100mMのHEPES緩
    衝液(pH7〜8)よりなる血液試料中の2’−5’オ
    リゴアデニル酸合成酵素活性安定化剤
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