JPWO2005061701A1 - タンパク質のポリマー複合体の製造方法 - Google Patents

タンパク質のポリマー複合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

ポリマーが結合したタンパク質に、メルカプト基を有する化合物を反応させることにより、システイン残基のメルカプト基にエステル結合しているポリマーを脱離させることにより、タンパク質の機能を大きく低下させることなく、タンパク質のポリマー複合体を製造することができる。

Description

本発明は、タンパク質のシステイン残基のメルカプト基にエステル結合したポリマーの脱離方法、該方法を使用するタンパク質のポリマー複合体の製造方法に関する。詳しくは、ポリマーが結合したタンパク質にメルカプト基を有する化合物を反応させ、該タンパク質のシステイン残基のメルカプト基にエステル結合しているポリマーを脱離する工程を含む、タンパク質のポリマー複合体の製造方法に関する。
一般的に、タンパク質そのものを医薬に使用する場合、血中半減期が短い、抗原性が高い、貯蔵安定性が悪い、溶解性が低い等の問題がある。
上記の問題を解決するためには、タンパク質にポリエチレングリコール等のポリマーを結合させることにより、血中半減期を長くしたり、抗原性を減少させたり、貯蔵安定性を改善できることが知られている(特許文献1)。
メチオニナーゼ(L−メチオニンγ−リアーゼ)は、腫瘍細胞の増殖において必須であるメチオニンの量を減らし、健康な組織を害することなく、腫瘍細胞の増殖を選択的に抑制することができ、抗腫瘍効果を有することが知られている(特許文献2)。また、組換えメチオニナーゼ(特許文献3)、ポリエチレングリコールが結合したメチオニナーゼ(特許文献4)、アミノ酸置換により機能改変を施したメチオニナーゼも知られている。
米国特許第4,179,337号 特許第2930723号 特許第3375834号 特表2002−531050
一般に、ポリエチレングリコール等のポリマーが結合したタンパク質は、結合前のタンパク質に比較し機能が大きく低下していることが多く、医薬としての利用には適さない場合がある。こういった状況の下、タンパク質の機能を大きく低下させることなく、タンパク質のポリマー複合体を製造する方法が求められていた。
課題を解決するための手段
本発明者は、タンパク質の例としてメチオニナーゼを用いて、メチオニナーゼのポリマー複合体の製造法に関する検討を行い、(1)メチオニナーゼにポリエチレングリコールを結合させた場合に活性が大きく低下すること、(2)その活性低下はメチオニナーゼ中のシステイン残基のメルカプト基へのポリマーのエステル結合に起因すること、(3)該エステル結合はジチオスレイトール等で選択的に切断できること、(4)ポリエチレングリコールを結合させたメチオニナーゼをジチオスレイトール等で処理した後の活性は、ジチオスレイトール等で処理する前の活性よりも約1.5〜4倍高いこと、(5)その活性はオリジナルのメチオニナーゼが示す活性の約70%以上であることを見出した。同様に、パパインやトランスグルタミナーゼについても活性の上昇が見られた。
上記の知見に基づいて、本発明者は、以下の発明を完成した。
(1) ポリマーが結合したタンパク質にメルカプト基を有する化合物を反応させ、該タンパク質のシステイン残基のメルカプト基にエステル結合しているポリマーを脱離する工程を含む、タンパク質のポリマー複合体の製造方法。
(2) ポリマーが結合した該タンパク質が、システイン残基を有するタンパク質に活性化ポリマーを反応させて得られたものである、(1)記載の方法。
(3) 該ポリマーがポリアルキレンオキシドである、(1)記載の方法。
(4) 該ポリマーがポリエチレングリコールである、(3)記載の方法。
(5) 該メルカプト基を有する化合物が、ジチオスレイトール、ジチオエリスリトール、2−メルカプトエタノール、還元型グルタチオン又はN−アセチル−L−システインのいずれかである、(1)記載の方法。
(6) 該メルカプト基を有する化合物が、ジチオスレイトール又は2−メルカプトエタノールである、(1)記載の方法。
(7) 該タンパク質が酵素である(1)記載の方法。
(8) 該酵素がその活性発現に影響を与える部位にシステイン残基を含むものである、(7)記載の方法。
(9) 該酵素がメチオニナーゼ、パパインまたはトランスグルタミナーゼである(8)記載の方法。
(10) タンパク質1サブユニットあたり平均0.7〜1.3分子のポリマーを脱離するものである、(1)記載の方法。
(11) (1)〜(10)のいずれかに記載の方法で得られる、タンパク質のポリマー複合体。
(12) 該ポリマー複合体がメチオニナーゼ、パパインまたはトランスグルタミナーゼのポリエチレングリコール複合体である(1)記載の方法。
(13) (12)記載の方法で得られる、メチオニナーゼ、パパインまたはトランスグルタミナーゼのポリエチレングリコール複合体。
(14) 1サブユニットあたり平均3.1個以上の遊離のメルカプト基を有するものである、メチオニナーゼのポリマー複合体。
(15) (13)または(14)に記載のメチオニナーゼのポリマー複合体を含有する抗腫瘍剤。
(16) ポリマーが結合したタンパク質にメルカプト基を有する化合物を反応させることを特徴とする、該タンパク質のシステイン残基のメルカプト基にエステル結合したポリマーの脱離方法。
本発明の方法により、ポリマーが結合したタンパク質のシステイン残基のメルカプト基にエステル結合したポリマーを脱離することができる。また、本発明を使用することにより、タンパク質の機能を大きく低下させることなく、タンパク質のポリマー複合体を製造することができる。本発明を使用して得られるタンパク質のポリマー複合体は、血中半減期が長く、抗原性が低減されており、貯蔵安定性も改善されているのみならず、薬理活性も高く、医薬品として有用である。
MALDI-TOF/MSを用いたジチオスレイトール(DTT)未処理PEG-rMETaseおよびDTT処理PEG-rMETaseのサブユニットレベルでの分子質量の測定結果を示す図である。 DTT処理PEG-rMETase(○)またはDTT未処理PEG-rMETase(□)をマウス尾静脈に注射した後の血漿中メチオニン濃度の経時変化を示す図である。 ピリドキサールりん酸(PLP)溶液を含有したポンプをマウス皮下に移植し、DTT処理PEG-rMETase(●)またはDTT未処理PEG-rMETase(■)を投与した後の血漿中メチオニン濃度の経時変化を示す図である。
本発明は、ポリマーが結合したタンパク質に、メルカプト基を有する化合物を反応させることにより行うことができる。
本発明に用いられるタンパク質は、メルカプト基を有するタンパク質を意味し、例えば、そのアミノ酸配列中にシステイン残基を含むタンパク質を意味する。このとき、タンパク質の大きさとしては、アミノ酸残基数が10以上のものが好ましく、分子量としては1,000以上のものが好ましい。そのようなタンパク質としては、例えば、メチオニナーゼ、パパイン、キモパパイン、カテプシン、トランスグルタミナーゼ、プロテアーゼ、ケラチン、ヘモグロビン、アルブミン、メタロチオネイン等が挙げられる。なお、本発明に用いられるタンパク質は、天然物から単離精製したものでもよく、遺伝子組換技術により作成されたものでもよい。
また、タンパク質としては酵素が好ましく、特にその活性発現に影響を与える部位にシステイン残基を含む酵素が好ましい。活性発現に影響を与える部位とは、酵素タンパク質において基質の特異的結合・配置に関与する部位及び触媒作用を発現する部位のみならず、例えばアロステリックな部位をいう。このような酵素としては、例えば、メチオニナーゼ、パパイン、キモパパイン、カテプシン、トランスグルタミナーゼ等が挙げられる。
本発明の方法に用いるポリマーが結合したタンパク質は、例えば、システイン残基を有するタンパク質に活性化ポリマーを反応させることにより得ることができる。
活性化ポリマーは、タンパク質中のアミノ基やメルカプト基にポリマーを結合させるために使用される。活性化ポリマーは、市販の物を使用してもよいし、市販のポリマーを活性化して調整してもよい。例えば、活性エステルに誘導されたポリマー等が使用できる。ポリマーにカルボキシル基がある場合は、該カルボキシル基を活性エステルにすればよい。また、ポリマーにカルボキシル基がない場合であっても、カルボキシル基を有するリンカーを結合させ、該カルボキシル基を活性エステルにすればよい。リンカーとしては、通常使用されるものであればよく、好ましくは、炭素数1〜20、さらに好ましくは炭素数2〜5ぐらいのリンカーが使用される。
例えば、メトキシポリエチレングリコール等はUnion Carbide Corporationから入手できる。ポリマーの活性化は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)等を用いて行うことができる。例えば、メトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルプロピオネート(MSPA)、メトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(MEGC)等が挙げられる。
Figure 2005061701
(上記式中、nは任意の整数。好ましくは、50〜1000の整数。)
ポリマーとは、同一もしくは何種類かの分子(単量体)が結合して鎖状となった高分子化合物をさし、特に水溶性であることが望ましい。たとえば、タンパク質修飾用ポリマーなどが挙げられる。具体的には、デキストラン、ポリ(N―ビニル)ピロリドン、ポリアルキレンオキシド、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオレフィンアルコール、ポリアクリルモルファン等が例示されが、特にポリアルキレンオキシドが好ましい。
ポリアルキレンオキシドとしては、α置換ポリアルキレンオキシド誘導体、ポリエチレングリコールホモポリマー、ポリプロピレングリコールホモポリマー、アルコキシポリエチレンオキシド、ビス−ポリエチレンオキシド、ポリ(アルキレンオキシド)のコポリマー、またはポリ(アルキレンオキシド)若しくはその活性化誘導体のブロックコポリマー等が挙げられる。特に、アルコキシポリエチレンオキシドが好ましい。
アルコキシポリアルキレンオキシドとしては、アルコキシポリエチレングリコール(例えば、メトキシポリエチレングリコール等)、アルコキシポリエチレンオキシド、アルコキシポリプロピレンオキシドが挙げられる。特に、メトキシポリエチレングリコールが好ましい。
ポリマーは、約200〜約50,000ドルトンの平均分子量を有するポリマーを使用することができる。好ましくは、約1,000〜約20,000ドルトンの平均分子量を有するポリマー、さらには、約2,000〜約10,000ドルトンの平均分子量を有するポリマー、最も好ましくは、約4,000〜約6,000ドルトンの平均分子量を有するポリマーである。
ポリマーの形状としては直鎖状でも分岐状でもまた櫛状でも構わない。
使用する活性化ポリマーの量は、使用するタンパク質の種類・量により異なるので適宜、調整する必要がある。なぜなら、タンパク質中のアミノ基やメルカプト基の数等により影響を受けるからである。例えば、タンパク質がメチオニナーゼの場合、4つのサブユニットからなる4量体であり、各サブユニットは10個のアミノ基(N末端アミノ基も含む)と4個のメルカプト基を有する。メチオニナーゼに対し、30モル等量の活性化ポリマーを使用した場合、各サブユニット当たり4〜6個程度のポリマーが結合する。また、60モル等量の活性化ポリマーを使用した場合、各サブユニット当たり7〜10個程度のポリマーが結合する。
タンパク質のポリマー複合体とは、ポリマーが結合したタンパク質にメルカプト基を有する化合物を反応させ、該タンパク質のシステイン残基のメルカプト基にエステル結合しているポリマーが脱離された、タンパク質のポリマー複合体を意味する。
なお、タンパク質のポリマー複合体においては、該タンパク質に存在するすべてのシステイン残基のメルカプト基にエステル結合しているポリマーが脱離している必要はなく、一部の該ポリマーが脱離したものも含まれる。好ましくは、少なくとも1サブユニットあたり平均0.7〜1.3分子のポリマーが脱離したものが好ましい。
本発明の方法によりタンパク質のポリマー複合体を製造するには、まず、ポリマー(例えば、アルキルポリエチレングリコール)をタンパク質に結合させる。次に、ポリマーが結合したタンパク質に、メルカプト基を有する化合物を反応させ、タンパク質のシステイン残基のメルカプト基にエステル結合しているポリマーを脱離させることにより、目的とするタンパク質のポリマー複合体を得ることができる。
具体的には、以下のようにして製造することができる。まずポリマーをタンパク質に結合させるには、ポリマーにカルボキシル化剤を反応させ、カルボキシル基をポリマーに導入する。そのカルボキシル基が導入されたポリマーにカルボキシル基活性化剤を反応させ、ポリマーの活性エステル体を製造する。最後に、該活性エステル体にタンパク質を反応させることにより、ポリマーが結合したタンパク質を得ることができる。例えば、特表昭62−501449、特開平10−87815等を参考にしてもよい。
なお、タンパク質に結合するポリマー分子の数は、活性基、例えば、タンパク質分子上に存在する反応基、例えばアミノ基、メルカプト基の数により変動する。また、タンパク質とポリマーを反応させる時の条件、例えば温度、pH、タンパク質濃度等によっても変動する。ここで得られるポリマーが結合したタンパク質は、ポリマーが結合していないタンパク質に比べて、半減期が長く、抗原性が少ないというメリットを有するが、活性については一般的に弱くなる場合が多い。
上記のようにして得られたポリマーが結合したタンパク質に、メルカプト基を有する化合物を反応させ、タンパク質のシステイン残基のメルカプト基にエステル結合したポリマーを脱離させることにより、タンパク質のポリマー複合体を製造することができる。
メルカプト基を有する化合物は、遊離のメルカプト基を有する化合物であればよく、特に低分子化合物が好ましい。例えば、ジチオスレイトール、還元型グルタチオン、N−アセチル−L−システイン、2−メルカプトエタノール、ジチオエリスリトール、等が挙げられ、特に、ジチオスレイトール、2−メルカプトエタノールが好ましい。
使用するメルカプト基を有する化合物の量は、反応溶液の重量に対して0.01〜10重量%程度が好ましい。
メチオニナーゼ(methioninase)は、基質メチオニンを分解する酵素であり、抗腫瘍活性を有することが知られている(例えば、Kreis W. and Hession C., Cancer Res., 33, 1862-1865 (1973), Kreis W. and Hession C., Cancer Res., 33, 1866-1869 (1973) )。メチオニナーゼは4つのサブユニットからなるホモテトラマー構造であり、各サブユニットの分子量は約43 kDaである。また、そのアミノ酸配列は、例えば配列番号1により示され、配列中には10個のアミノ基(N末端アミノ基も含む)と4個のメルカプト基を有している。
以下に、本発明の具体例として、メチオニナーゼのメトキシポリエチレングリコールによるポリマー複合体の製造方法を挙げる。まず、メトキシポリエチレングリコールのメチオニナーゼへの結合方法を説明する。約1,000〜約20,000、好ましくは約2,000〜約10,000、そして最も好ましくは約4,000〜約6,000ドルトンの平均分子量を有するメトキシポリエチレングリコールを、無水コハク酸、好ましくは無水グルタル酸を用いて、コハク酸化またはグルタル酸化する。続いて、好ましくはN−ヒドロキシスクシンイミドを用いて、活性化メトキシポリエチレングリコールを得る。最後に、活性化メトキシポリエチレングリコールをメチオニナーゼと反応させる。
次に、メトキシポリエチレングリコールが結合したメチオニナーゼをメルカプト基を有する化合物で処理する工程を説明する。メトキシポリエチレングリコールが結合したメチオニナーゼ1分子に対し、約1〜200モル等量のメルカプト基を有する化合物を、摂氏4〜50度、好ましくは10〜40度で反応させる。この時、反応溶媒としては、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイドなどを使用することも可能である。反応時間は、10分〜4時間、好ましくは30分〜2時間である。
得られた反応液から目的のメトキシポリエチレングリコールが結合したメチオニナーゼを単離精製するには、タンパク質を精製する通常の方法(例えば、モレキュラークローニング第3版、Cold Spring Harbor Laboratory、2001年)が用いられる。すなわち、沈殿、膜分離、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、結晶化などが用いられる。
メチオニナーゼに関し、ポリマーを結合させる前と後、メルカプト基を有する化合物で処理する前と後の比較を行った。
まず、ポリマーを結合させる前のメチオニナーゼのメルカプト基数を測定した。理論的には、1サブユニット当たり4個のメルカプト基が存在するが、実測値は、平均約3.7個/サブユニットであった。次に、ポリマーを結合させた後のメチオニナーゼのメルカプト基数を測定した。その結果、メルカプト基数は平均約2.7個/サブユニットであった。
次に、メルカプト基を有する化合物で処理した後のメチオニナーゼのメルカプト基数を測定した。その結果、メルカプト基数は平均約3.7個/サブユニットであった。
本方法により、タンパク質1サブユニットあたり平均約1分子(例えば、0.7〜1.3分子)のポリマーを脱離させることができる。これは、反応させる活性化ポリマーの量を、メチオニナーゼに対して30モル等量使用した場合も、60モル等量使用した場合もほぼ同じであった。これらの結果から、ポリマーを結合させると、メチオニナーゼの1サブユニット当たり4個存在するメルカプト基のうち、平均1個のメルカプト基がポリマーとエステル結合していたことがわかる。さらにポリマーが結合したメチオニナーゼをメルカプト基を有する化合物で処理すると、そのメルカプト基にエステル結合したポリマーが脱離することがわかった。このときメチオニナーゼのアミノ基にアミド結合しているポリマーは脱離しないことも確認した。
これらのことから、本発明の方法により得られるメチオニナーゼのポリマー複合体には、メルカプト基にポリマーは結合していないといえる。実際、本方法により得られるメチオニナーゼのポリマー複合体を、例えばEllman法(Ellman G.L.,, Arch. Biochem. Biophys., 82, 70-77 (1959))により測定すると、1サブユニットあたり平均2.8個以上、好ましくは平均3.1個以上、さらに好ましくは平均3.5個以上の遊離のメルカプト基を有する。
さらに、メチオニナーゼに関して、ポリマーを結合させる前と後、メルカプト基を有する化合物で処理する前と後の比較を行った。詳細は後述の実施例で説明するが、ポリエチレングリコールを結合させたメチオニナーゼをジチオスレイトール等で処理した後の活性は、ジチオスレイトール等で処理する前の活性よりも約1.5〜4倍高い。酵素の活性上昇は、例えばアミノ酸配列が配列番号2で示されるパパインのポリマー複合体、及び例えばアミノ酸配列が配列番号3で示されるトランスグルタミナーゼのポリマー複合体においても確認された。すなわち本方法は、メルカプト基を有する化合物を反応させる前のポリマーが結合したタンパク質に比べて、タンパク質の機能を向上させるものであると言える。ここでタンパク質の機能とは、酵素活性、レセプター活性等を意味する。
なおメチオニナーゼに関し、そのアミノ酸配列の116番目のシステイン残基が、活性との関係で重要であることが示唆されている(Inoue H., et. al. J. Biochem., 117, 1120-1125 (1995)、Nakayama T., et. al., Agric. Biol. Chem., 52, 177-183 (1988))。上記の結果をこの報告と共に考えると、メチオニナーゼの116番目のシステイン残基にエステル結合したポリマーが、メルカプト基を有する化合物で処理することにより、脱離した可能性が高いと言える。すなわち、本発明の方法により得られたメチオニナーゼのポリマー複合体は、116番目のアミノ酸が遊離のメルカプト基である、メチオニナーゼのポリマー複合体からなる組成物である可能性が高い。
本発明の方法により得られるメチオニナーゼのポリマー複合体は、腫瘍細胞の増殖を効果的に抑制することができ、結腸、乳房、前立線、卵巣、腎臓、咽頭、黒色腫、肉腫、肺、脳、胃、膀胱等の癌の治療および/または予防等に有用である。すなわち、本発明を使用して得られたメチオニナーゼのポリマー複合体を含有する抗腫瘍剤は、抗原性が低いのみならず、高い活性を保持しており、医薬として有用である。
本発明により得られたタンパク質のポリマー複合体を医薬として投与する場合、経口的、非経口的のいずれの方法でも投与することができる。経口投与は常法に従って錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤、液剤、シロップ剤、バッカル剤または舌下剤等の通常用いられる剤型に調製して投与すればよい。非経口投与は、例えば筋肉内投与、静脈内投与等の注射剤、坐剤、経皮吸収剤、吸入剤等、通常用いられるいずれの剤型でも好適に投与することができる。例えば、本発明の方法により得られるメチオニナーゼのポリマー複合体は、点滴静注等に使用することができる。
本発明により得られるタンパク質のポリマー複合体の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤等の各種医薬用添加剤とを必要に応じて混合し医薬製剤とすることができる。注射剤の場合には適当な担体と共に滅菌処理を行なって製剤とすればよい。
具体的には、賦形剤としては乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウムもしくは結晶セルロ−ス等、結合剤としてはメチルセルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−ス、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、ゼラチンもしくはポリビニルピロリドン等、崩壊剤としてはカルボキシメチルセルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−スナトリウム、デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末もしくはラウリル硫酸ナトリウム等、滑沢剤としてはタルク、ステアリン酸マグネシウムもしくはマクロゴ−ル等が挙げられる。坐剤の基剤としてはカカオ脂、マクロゴ−ルもしくはメチルセルロ−ス等を用いることができる。また、液剤もしくは乳濁性、懸濁性の注射剤として調製する場合には通常使用されている溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、等張剤等を適宜添加しても良く、経口投与の場合には嬌味剤、芳香剤等を加えても良い。
例えば、本発明の方法により得られるメチオニナーゼのポリマー複合体は、凍結乾燥して使用してもよい。
本発明により得られるタンパク質のポリマー複合体の医薬としての投与量は、患者の年齢、体重、疾病の種類や程度、投与経路等を考慮した上で設定することが望ましいが、成人に経口投与する場合、通常0.05〜200mg/kg/日であり、好ましくは0.1〜100mg/kg/日の範囲内である。非経口投与の場合には投与経路により大きく異なるが、通常0.005〜20mg/kg/日であり、好ましくは0.01〜10mg/kg/日の範囲内である。これを1日1回〜数回に分けて注射、もしくは点滴で投与すれば良い。なお、これらの投与量は、タンパク質の種類により異なる。従って、上記の投与量の範囲外であっても使用することができる。
以下に、タンパク質として組換えメチオニナーゼ(以下、rMETaseと記載することもある)を使って、本発明を説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
ジチオスレイトール(DTT)処理ポリエチレングリコール修飾組換えメチオニナーゼ(PEG-rMETase)の製造法
(1)rMETase
特願平 9-270676に準じて実施取得した。
(2) rMETase濃縮・調整工程
約170 gのrMETaseに120 mM ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH 9.0)を2倍量加え混合した。次に分画分子量10 kDa,1.8 m2の膜を用いて100 g/Lまで濃縮した。濃縮した150 g のrMETaseを、PEG修飾工程へ用いた。
(3)PEG修飾、DTT処理工程
150 gのrMETaseに活性化PEG(MEGC-50HS、日本油脂製) 275.4 gを3回(91.8 g×3)に分けて37℃恒温下で10〜15分毎に添加した。3回目の添加から10〜15分反応後に100 mM りん酸水素ニナトリウム溶液でpHを7.2に調整した。DTTを0.5%濃度になるように添加し、37℃恒温下で2時間撹拌し、反応を行い、15℃で一夜保存した。
(4) Diafiltration工程
得られた反応液を総量が36.0 Lとなるように50 mMりん酸ナトリウム緩衝液pH 7.2を加え混合した。42 Lの50 mMりん酸ナトリウム緩衝液pH 7.2を 0.7 L/minの流速で添加しながら分画分子量50 kDa,2.1 m2の膜を用いてDiafiltrationを行った。引き続き約3 Lになるまで濃縮を行った。2 Lの50 mMりん酸ナトリウム緩衝液pH 7.2を用いて膜内のタンパク質を回収し濃縮液と混合してDiafiltration処理液とした。
(5)イオン交換カラムクロマトグラフィー工程
50 mMりん酸ナトリウム緩衝液pH 7.2で平衡化されたDEAE Sepharose-FFカラム(φ140×65 mm,1 L)にDiafiltration処理液を50 cm/hの流速で送液し、pass through画分を取得した。溶出液に50 mMりん酸ナトリウム緩衝液pH 7.2を添加し12.0 Lに調整し、0.2μm,0.05 m2の膜でろ過して15℃で保存した。
(6) ゲル濾過工程
10 mMりん酸ナトリウム緩衝液pH 8.0で平衡化されたSephacryl S200 HRカラム(φ600×600 mm,170 L)にイオン交換カラムクロマトグラフィー溶出液を11 cm/hの流速で送液した。活性画分を集めて30 kDa,1.2 m2の膜を用いて濃縮を行った。約1 Lの 10 mMりん酸ナトリウム緩衝液pH 8.0を用いて膜内のタンパク質を回収し、さらに10 mMりん酸ナトリウム緩衝液を添加しタンパク質濃度が約40 g/Lになるよう調整した。
(7)ピリドキサールりん酸(PLP)添加工程
濃縮液に1 mM濃度に調製したPLP溶液を濃縮液量の1/9量添加して混合後、滅菌済み0.22μm,0.02 m2の膜を用いて約200 mLずつ容量250 mLのボトルに分注し-80 ℃で保存した。
DTT処理が酵素活性に及ぼす影響(rMETase)
DTT処理を施していないPEG-rMETaseおよびrMETase、DTT処理を施したPEG-rMETaseおよびrMETaseの比活性を測定した。活性測定はTakakuraらの方法(Takakura T. et. al., Anal Biochem., 3 27, 233-240 (2004)に従って実施した。その結果、表1に示すようにPEG修飾により酵素活性は低下したが、DTT処理を施すことにより回復した。一方、rMETaseの酵素活性はDTT処理を施しても変化はなかった。
Figure 2005061701
次に、MEGC-50HSとは分子量の異なる活性化PEG(日本油脂製)を用いて反応モル比30で同様の実験を行った。その結果、表2に示すように活性化PEGの分子量が異なってもPEG修飾により酵素活性は低下したが、DTT処理を施すことにより回復した。
Figure 2005061701
さらにMEGC-50HSと異なるリンカーを含む他の活性化PEG(MSPA5000, NEKTAR製)と、異なる活性基を含む他の活性化PEG(MENP-50H, 日本油脂製)を用いて反応モル比30で同様の実験を行った。その結果、表3に示すように活性化PEGのリンカーおよび活性基が異なってもPEG修飾により酵素活性は低下したが、DTT処理を施すことにより回復した。
Figure 2005061701
メチオニナーゼ以外のタンパク質とMEGC-50HSとの反応におけるDTT処理の効果
(1)パパイン
メチオニナーゼの場合と同様にパパイン(和光純薬製)を用いてPEG修飾反応とDTT処理を行い、DTT処理前後の比活性を比較した。パパインの活性評価は0.1 mM L-システイン、2 mM EDTA・2Na、および1 mM N-α-ベンゾイル-DL-アルギニン-p-ニトロアニリド塩酸塩を含む50 mM トリス塩酸緩衝液中(pH 7.5)で反応を行い、37℃で1分間に生成するp-ニトロアニリンの量を410 nmでモニターし測定した。その結果、表4に示すようにPEG修飾によりパパインの酵素活性は低下したが、DTT処理を施すことにより回復した。
Figure 2005061701
(2)トランスグルタミナーゼ(TGase)
放線菌Streptomyces sp.を2.0%ポリペプトン、2.0%可溶性澱粉、0.2%リン酸水素ニカリウム、0.1%硫酸マグネシウム、0.1%酵母エキスよりなる培地(pH 7.0)を用いて30℃、3日間振とう培養した。遠心分離によって菌体を除去した後、25 mM ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH 8.5)で透析してTGaseの粗酵素液を取得した。この粗酵素液0.25mLにMEGC-50HSを4 mgを添加して25℃で1時間反応させた。反応液の最終濃度の0.1%でDTT処理して、比活性を比較した。なお、酵素活性はFolk J.E. and Chung S.I.(MethodsEnzymol., 113, 358-375 (1985))の方法に準じて測定した。その結果、表5に示すようにPEG修飾により低下した酵素活性はDTT処理を施すことにより回復した。
Figure 2005061701
(3)
以上のことからDTT処理による効果はメチオニナーゼに限定されたものではなく、その他のタンパク質や酵素、特にシステイン残基のメルカプト基が活性発現に重要な役割を果たすタンパク質や酵素に幅広く適用できると言える。
DTTは下に示すようにメルカプト基と水酸基を保有する。
Figure 2005061701
DTT処理による比活性上昇がメルカプト基と水酸基のいずれに起因するのか調べた。メルカプト基を保有する化合物(ジチオスレイトール、還元型グルタチオン、N-アセチル-L-システイン、2-メルカプトエタノール)、および水酸基を保有するアルコール(メタノール、エタノール、メトキシエタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール)について、従来の方法で得られたPEG-rMETaseと反応させ、比活性を比較した。その結果、表6に示すように、メルカプト基を保有する化合物と接触させた場合のみ比活性の回復が確認され、DTT処理による比活性上昇はメルカプト基に起因していることが示唆された。
Figure 2005061701
残存メルカプト基の定量
メチオニナーゼは1サブユニットあたり4個のメルカプト基を有している。PEG修飾反応及びDTT処理に伴うrMETase中に存在する遊離したメルカプト基数の推移を、ドデシル硫酸ナトリウム処理によりタンパク質を変性させた後Ellman法(Ellman G.L.,, Arch. Biochem. Biophys., 82, 70-77 (1959))を用いて定量した。
(1)DTT処理PEG-rMETase製造工程におけるメルカプト基数の推移
表7に示すように活性化PEG(MEGC-50HS)と反応させる前のrMETaseのメルカプト基数は3.7 SH/サブユニットあったが、PEG化反応で2.7 SH/サブユニットとなり1 SH/サブユニットの減少が認められた。次に0.5%DTTで処理後精製して取得したPEG-rMETaseの残存メルカプト基数は3.7 SH/サブユニットへ回復し、rMETaseのメルカプト基数と同等の値となった。一方、0.5%DTTで処理を行なわず精製して取得したPEG-METaseの残存メルカプト基数は3.0 SH/サブユニットであった。
(2)
これらの結果によりPEG化工程で平均して1サブユニットあたり1個のメルカプト基が活性化PEG(MEGC-50HS)と反応するが、DTT処理によりメルカプト基に結合したPEGは脱離したと考えることができる。また、DTT処理によってPEGが脱離したメルカプト基は酵素活性に重大な影響を与える部位であると推測された。
Figure 2005061701
モノヨード酢酸(MIA)を用いたシステイン残基(Cys)のメルカプト基修飾
rMETase、DTT処理PEG-rMETase、及びDTT未処理PEG-rMETaseをメルカプト基修飾剤として知られているMIAと反応させた後、さらにDTT処理を施した。結果を表8に示す。MIAでメルカプト基を修飾することでDTT未処理PEG-rMETase、DTT処理PEG-rMETaseのいずれも比活性は大きく低下した。その後、DTTを添加して反応させた結果、DTT未処理PEG-rMETaseのみ比活性の上昇が認められた。これは、DTT未処理PEG-rMETaseの場合メルカプト基がPEGによって予め修飾されていたため、MIAによるメルカプトプト基修飾を受けず、DTT処理を施すことによってメルカプト基からPEGが脱離し酵素の活性が上昇したものと思われる。
Figure 2005061701
実施例4及び5の結果より、以下のことがわかる。すなわち、rMETaseは活性化PEGと反応させることでその比活性は大きく低下するが、DTT処理を施すことで回復した。rMETaseの1サブユニット中に存在する4個のCysのうちN末端より116番目に存在するCysが活性発現に関与する重要因子であるとの報告(Inoue H., et. al. J. Biochem., 117, 1120-1125 (1995)、Nakayama T., et. al., Agric. Biol. Chem., 52, 177-183 (1988))もあることからPEGは、この活性発現に関与するCysを選択的に修飾し、またDTTは、そのCys結合PEGのみを脱離させていることが推測された。CysへのPEG修飾の可能性に関して検討した結果、DTT以外のメルカプト基含有化合物でも比活性の上昇が認められた。
rMETaseのメルカプト基数は3.7 SH/サブユニットであったが、PEG修飾反応で2.7 SH/サブユニットに低下した。その後、DTT処理を施すことによって3.7 SH/サブユニットに回復した。またMIAによりメルカプト基を修飾することで比活性は大きく低下したが、DTT処理を施すことによりDTT未処理PEG-rMETaseのみ比活性が上昇した。
以上の結果より、活性化PEG(MEGC-50HS)はrMETase中の活性発現に重要な役割を果たすメルカプト基(Cys)を修飾すると結論できる。
PEG-rMETaseの結合PEG数の定量(MALDI-TOF/MS)
DTT未処理PEG-rMETaseおよびDTT処理PEG-rMETaseのサブユニットレベルでの分子質量をMALDI-TOF/MSで分析した。その結果、図1に示すようにDTT未処理PEG-rMETaseに対してDTT処理PEG-rMETaseは分子量が約5 kDa低下していることが判った。PEGの分子量が約5 kDaであることからDTT処理により1 PEG/サブユニットが脱離したことが考えられた。
PEG-rMETaseの結合PEG数の定量(HPLC)
DTT未処理PEG-rMETase、DTT処理PEG-rMETaseの結合PEG数を測定した(Bullock J., et.al., Anal. Biochem.,, 254, 254-262 (1997))。アルカリ加水分解により遊離したPEGをPEG4120(Polymer Laboratories製)を標準としHPLCを用いて定量した。その結果、表9に示すようにDTT未処理PEG-rMETaseの結合PEG数は8.4 PEG/サブユニットであったのに対して、DTT処理PEG-rMETaseの結合PEG数は7.5 PEG/サブユニットであり、約1 PEG/サブユニットの低下が認められた。また、反応モル比30でPEG修飾したPEG-rMETaseの場合も同様に、DTT処理によって結合PEG数は約1 PEG/サブユニット低下していた。
Figure 2005061701
アミノ基修飾率の測定(蛍光検出法)
Fluorescamineを用いた蛍光検出法(Karr L.J., et.al.,Meth. Enzymol., 228, 377-390 (1994))によりDTT未処理PEG-rMETase、およびDTT処理PEG -rMETaseのアミノ基修飾率をrMETaseを対象として測定した。その結果、表10に示すようにDTT処理の有無に関わらずアミノ基修飾率はほぼ同等であった。従ってアミノ基に結合したPEGはDTT処理に伴う脱離は生じないことを確認した。
Figure 2005061701
DTT処理を施した結果、PEG-rMETaseは1サブユニットあたりメルカプト基数は約1 SH基の増加、約1 PEG分子に相当する分子質量の減少、および約1 PEG分子に相当する結合PEG数の低下が認められた。しかしながらアミノ基修飾率は不変であった。これらのことより、DTT処理を行うことでメルカプト基に修飾したサブユニットあたり平均1分子のPEGを脱離することができたと結論できる。
以上のことからPEG修飾工程において、PEGはメチオニナーゼの活性発現に重要な役割を果たすCysと不安定なチオエステル結合を形成して比活性を低下させるが、DTT処理を施すことにより交換反応が起こり、メルカプト基の回復したPEG-rMETaseが生じると考えられる。
反応モル比60で調製されたDTT処理PEG-rMETaseとDTT未処理PEG-rMETaseを同一タンパク質量(140 mg/kg)マウス尾静脈に注射した(各群3匹)。経時的に採血し、血漿中のメチオニン濃度を測定した(Jones B.N. and Gilligan J.P., J. Chromatogr. 266, 471-482 (1983))。結果を図2に示す。DTT処理PEG-rMETase(○)はDTT未処理PEG-rMETase(□)と比較して血漿中のメチオニン濃度を長期間低レベルに維持し、DTT処理の効果をin vivoで確認することができた。さらに、PLP溶液を含有したポンプをマウス皮下に移植して同様の実験を行った場合の結果を図3に示す。DTT処理PEG-rMETase(●)はDTT未処理PEG-rMETase(■)と比較して血漿中のメチオニン濃度を長期間低レベルに維持することができた。DTT処理を施すことにより、治療に必要な投与量の低減が可能と想定された。
反応モル比60で調製されたDTT処理PEG-rMETaseとrMETaseの抗原性を比較した。マウスにDTT処理PEG-rMETaseまたはrMETaseを0.1 mg/匹の用量で1週間に1回、合計12回腹腔内投与し、最終投与後2週間目に採血し血清を得た(各群10匹)。抗原性は酵素免疫測定法を用いて測定した。rMETaseをポリスチレン製プレートのウェルに固定化し、ブロッキング、洗浄した。希釈した血清をウェルに添加、洗浄した後、パーオキシダーゼ標識したマウス抗IgM抗体または抗IgG抗体を添加した。DTT処理PEG-rMETaseまたはrMETaseを投与していないマウス血清をコントロールとして用い、力価を測定した。各血清希釈倍率における個体数を表11に示した。DTT処理PEG-rMETaseの抗原性はrMETaseよりも大幅に低下していた。
Figure 2005061701

Claims (16)

  1. ポリマーが結合したタンパク質にメルカプト基を有する化合物を反応させ、該タンパク質のシステイン残基のメルカプト基にエステル結合しているポリマーを脱離する工程を含む、タンパク質のポリマー複合体の製造方法。
  2. ポリマーが結合した該タンパク質が、システイン残基を有するタンパク質に活性化ポリマーを反応させて得られたものである、請求項1記載の方法。
  3. 該ポリマーがポリアルキレンオキシドである、請求項1記載の方法。
  4. 該ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項3記載の方法。
  5. 該メルカプト基を有する化合物が、ジチオスレイトール、ジチオエリスリトール、2−メルカプトエタノール、還元型グルタチオン又はN−アセチル−L−システインのいずれかである、請求項1記載の方法。
  6. 該メルカプト基を有する化合物が、ジチオスレイトール又は2−メルカプトエタノールである、請求項1記載の方法。
  7. 該タンパク質が酵素である請求項1記載の方法。
  8. 該酵素がその活性発現に影響を与える部位ににシステイン残基を含むものである、請求項7記載の方法。
  9. 該酵素がメチオニナーゼ、パパインまたはトランスグルタミナーゼである請求項8記載の方法。
  10. タンパク質1サブユニットあたり平均0.7〜1.3分子のポリマーを脱離するものである、請求項1記載の方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の方法で得られる、タンパク質のポリマー複合体。
  12. 該ポリマー複合体がメチオニナーゼ、パパインまたはトランスグルタミナーゼのポリエチレングリコール複合体である請求項1記載の方法。
  13. 請求項12記載の方法で得られる、メチオニナーゼ、パパインまたはトランスグルタミナーゼのポリエチレングリコール複合体。
  14. 1サブユニットあたり平均3.1個以上の遊離のメルカプト基を有するものである、メチオニナーゼのポリマー複合体。
  15. 請求項13または14に記載のメチオニナーゼのポリマー複合体を含有する抗腫瘍剤。
  16. ポリマーが結合したタンパク質にメルカプト基を有する化合物を反応させることを特徴とする、該タンパク質のシステイン残基のメルカプト基にエステル結合したポリマーの脱離方法。
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