JP2017058326A - 腫瘍細胞の検出方法 - Google Patents
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安定化剤をさらに含んだ、腫瘍細胞を含む溶液から、比重分離を利用して当該腫瘍細胞を含む画分を分離回収する工程と、
前記工程で得られた腫瘍細胞を含む画分から、当該腫瘍細胞内で発現するタンパク質を利用して当該腫瘍細胞を検出する工程と、
を含む腫瘍細胞の検出方法である。
(1)安定化剤をさらに含んだ、腫瘍細胞を含む溶液から、比重分離を利用して当該腫瘍細胞を含む画分を分離回収する工程
(2)(1)で得られた画分を、親水性高分子を結合したタンパク質および/または糖を含む溶液に添加する工程
(3)(2)で得られた溶液を遠心分離することで、腫瘍細胞を含むペレットを回収する工程
(4)(3)で得られたペレットの懸濁液から、当該腫瘍細胞内で発現するタンパク質を利用して当該腫瘍細胞を検出する工程
また本発明の第四の態様は、安定化剤が、ホルムアルデヒドドナー化合物である、前記第一から第三の態様のいずれかに記載の方法である。
(1)がんの疑いのある患者から血液を採取する。なお血液を採取する際、クエン酸、ヘパリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの抗凝固剤を添加してもよい。また必要に応じ、採取した血液を生理食塩水などで希釈してもよい。
(2)(1)で採取した血液(または希釈した血液)に、ホルムアルデヒドドナー化合物を含ませる。ホルムアルデヒドドナー化合物としてイミダゾリジニル尿素を用いる場合は、後述の密度勾配遠心に供する溶液(希釈血液試料)中の濃度として0.01%(w/v)から10%(w/v)となるよう含ませればよく、0.25%(w/v)から4%(w/v)となるよう含ませると好ましく、0.3%(w/v)から1.5%(w/v)となるよう含ませるとさらに好ましく、0.5%(w/v)から1%(w/v)となるよう含ませるとさらにより好ましい。
(3)ホルムアルデヒドドナー化合物を含ませた溶液(希釈血液試料)から、密度勾配遠心を用いて、CTCを含む画分を分離する。密度勾配遠心法は細胞をその比重に基づき分離する方法であり、密度勾配を形成した媒体(密度勾配溶液)上に希釈血液試料を重層した後、遠心分離を行ない、目的とするCTCを含む層(上層)を回収することで、不要な細胞を除去したCTCを含む画分を得る。なお密度勾配遠心を行なう前に、血液または希釈血液に、不要な細胞である赤血球、白血球と結合可能な結合剤(例えば、RosetteSep(StemCell Technologies社製))を添加するとよい。前記結合剤は、赤血球、白血球、および/またはこれら細胞の表面抗原と結合することで細胞凝集体を形成し、これら細胞の密度を大きくすることができるため、密度勾配遠心によるCTCの分離を容易にする。
(4)(3)で得られたCTCを含む画分に塩化アンモニウム溶液を添加し、当該画分に残存する赤血球を溶血させる。当該操作により、分離回収したCTCの観察が良好になる。
(5)溶血処理後の溶液を遠心分離することで血液成分を除去し、CTCをペレット状にした後、適切な溶液を用いてCTCを懸濁させる。なおCTCを懸濁させる溶液に、親水性高分子を結合したタンパク質(例えば、ポリエチレングリコールを結合したBSA)を含ませてもよい。親水性高分子を結合したタンパク質の濃度は、懸濁液でのタンパク質の終濃度として、0.01%(w/v)から25%(w/v)の間であればよく、0.02%(w/v)から5%(w/v)の間であれば好ましく、0.05%(w/v)から2%(w/v)の間であればより好ましい。
(6)(5)で調製したCTCを含む懸濁液を再度遠心分離し、CTCを含むペレットを回収する。なお必要に応じ、前記回収したペレットを親水性高分子を結合したタンパク質を含む溶液に再度懸濁させ、遠心分離する工程を追加してもよい。
(7)(6)で得られたCTCを、例えばWO2011/149032号に記載の装置を用いて、保持部へ保持させた後、当該CTCに対し保存および膜透過処理を施す。保存処理剤としては、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドドナー化合物、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド類や、メタノール、エタノールなどのアルコール類や、重金属を含む溶液が例示できる。細胞膜透過処理剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類や、サポニンなどの界面活性剤が例示できる。
(8)抗体による非特異的な反応を防ぐため、保存および膜透過処理後のCTCを保持した保持部に対しタンパク質によるブロッキング処理を施した後、蛍光基が修飾されたCTCが発現するタンパク質に対する抗体や、細胞核を蛍光染色させる試薬を添加し、洗浄後、蛍光顕微鏡などで細胞の蛍光像を観察することで、CTCを検出する。CTCが発現するタンパク質に対する抗体としては、抗サイトケラチン抗体や抗ビメンチン抗体などを用いることができる。またノイズである白血球を検出することを目的に、抗CD45抗体といった白血球を特異的に認識する抗体を用いてもよい。細胞核を蛍光染色させる試薬としては、4’,6−diamidino−2−phenylindole(DAPI)やHoechst 33342(商品名)などを用いることができる。
(1)一方の末端がメトキシ基であり、もう一方の末端がN−ヒドロオキシスクシンイミドエステル基である、分子量5000のポリエチレングリコール(mPEG−NHS)と、ウシ血清アルブミン(BSA)(300mg、0.3mmol)とを、炭酸水素ナトリウム緩衝液(0.1M、15mL)に溶解させ、当該溶液を室温で3時間撹拌することでポリエチレングリコールを結合したBSA(PEG−BSA)を調製した。なお調製する際、mPEG−NHSとBSAとのモル比(mPEG−NHS/BSA)を2となるようにした。調製後、分画分子量10000の透析膜を用いて、純水への溶液置換を3日間行なった。
(2)ヒト非小細胞肺がん細胞(PC9)を、5%CO2環境下、10%FBSを含むD−MEM/Ham’s F−12培地を用いて37℃で24時間から96時間培養後、0.25%トリプシン/1mM EDTAを用いて培地から細胞を剥離した。剥離したPC9細胞を目的とする細胞とした。
(3)イミダゾリジニル尿素2gと、分子量6000のPEG2gと、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)100mgと、塩化ナトリウム600mgとを、超純水100mLに溶解させることで、PC9細胞を安定化させるための安定化剤を調製した。
(4)(2)で剥離したPC9細胞約105個を懸濁させた500μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に、(3)で調製した安定化剤500μLを添加した後、室温で3時間放置することで、保存処理したPC9細胞懸濁液を調製した。
(5)(4)で調製した保存処理したPC9細胞懸濁液を300×gで5分間、室温にて遠心分離した。
(6)上清を除去後、0.9%(w/v)塩化アンモニウムと0.1%(w/v)炭酸水素カリウムとを含む溶液1mLを添加し、10分間静置した。
(7)(6)で調製したPC9細胞懸濁液を300×gで10分間、室温にて遠心分離後、上清を除去し、PC9細胞を含むペレットを(1)で調製したPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液1mLで再懸濁した。
(8)(7)で得られたPC9細胞懸濁液を300×gで5分間、室温にて遠心分離した。
(9)上清を除去後、(1)で調製したPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液で再懸濁した。
(10)(9)で調製したPC9細胞懸濁液を細胞診断チップに導入し、交流電圧を3分間印加することで前記チップが有する保持部にPC9細胞を保持させた。本実施例で用いた細胞診断チップは、直径30μmで深さ30μmの微細孔からなる微細孔を複数有した絶縁体と前記絶縁体と下部電極基板の間に設置した遮光性のクロム膜とからなる保持部を、厚さ1mmのスペーサーと下部電極基板とで挟んだ構造であり、前記スペーサーを上部電極基板と下部電極基板とで挟んだ構造である。
(11)(10)の条件で交流電圧を印加しながら、0.01(w/v)%のポリ−L−リジンを含む300mMマンニトール水溶液を導入し、2分間静置後、前記交流電圧の印加を停止し、前記水溶液を吸引除去した。
(12)50%(v/v)エタノールと1%(w/v)ホルムアルデヒドを含む水溶液(以下、細胞膜透過試薬)を導入し、10分間静置することで、細胞膜を透過させ、保持部に導入した細胞を標本化した。
(13)細胞膜透過試薬を吸引除去し、PBSを導入することで、残留した細胞膜透過試薬を洗浄した。
(14)細胞膜内外のタンパク質と特異的に結合可能な蛍光標識された抗体と、細胞核を標識する蛍光試薬を含む水溶液(以下、標識試薬)を導入し、10分間静置した。なお前記抗体として、白血球表面に発現しているCD45に対する抗体と、上皮系細胞の細胞質内で発現しているサイトケラチンに対する抗体を用いている。
(15)標識試薬を吸引除去し、PBSを導入することで、残留した標識試薬を除去した。
(16)(15)で標識した細胞を含む細胞診断チップを蛍光顕微鏡のステージ上に載置した後、蛍光顕微鏡による蛍光観察を行なった。細胞核の標識試薬由来の蛍光が確認され、かつCD45抗体由来の蛍光が確認されない細胞をPC9細胞とし、当該PC9細胞へのサイトケラチン抗体の結合度合いを、蛍光輝度分布を基に評価した。
実施例1(4)の懸濁液調製工程において、実施例1(2)で剥離したPC9細胞に懸濁させる溶液として、PC9細胞を安定化させるための安定化剤である、1%(w/v)ホルムアルデヒドを含むPBS1mLを用い、室温での放置時間を10分間とした他は、実施例1と同様な方法で、PC9細胞へのサイトケラチン抗体の結合度合いを、蛍光輝度分布を基に評価した。
(1)実施例1(2)で剥離したPC9細胞約105個に、10%FBSを含むD−MEM/Ham’s F−12培地1mL、または0.9%(w/v)塩化アンモニウムと0.1%(w/v)炭酸水素カリウムと含む溶液1mLを添加した後、室温で10分間放置することで、PC9細胞懸濁液を調製した。
(2)(1)で調製した細胞懸濁液を300×gで10分間、室温にて遠心分離後、上清を除去し、PC9細胞を含むペレットを実施例1(1)で調製したPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液1mLで再懸濁した。
(3)実施例1(7)から(16)と同様な方法で、PC9細胞へのサイトケラチン抗体の結合度合いを、蛍光輝度分布を基に評価した。
(1)実施例1(2)で剥離したPC9細胞約105個を懸濁させた500μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に、実施例1(3)で調製した安定化剤500μLを添加した後、室温で10分間または96時間放置することで、保存処理したPC9細胞懸濁液を調製した。
(2)(1)で調製した保存処理したPC9細胞懸濁液を300×gで5分間、室温にて遠心分離し、上清を除去した。
(3)インフォームドコンセントを得た健常人から血液をEDTA−2K採血管(VP−DK050K、テルモ社製)に3mL採血後、前記採血管に3mLの生理食塩水、75μLの白血球・血小板結合剤(RosetteSep、StemCell Technologies社製)、および(2)で保存処理をした約105個のPC9細胞を添加することで、希釈血液試料を調製した。
(4)調製した希釈血液試料を、密度1.091g/mLの密度勾配溶液に重層し、2000×gで10分間、室温にて遠心した。
(5)遠心後の上清を回収後、0.9%(w/v)塩化アンモニウムと0.1%(w/v)炭酸水素カリウムと含む溶血液で30mLまでメスアップし、300×gで10分間、室温にて遠心分離した。当該操作により上清に混入した赤血球が破壊され、分離回収したPC9細胞の観察が良好になる。
(5)上清を除去後、PC9細胞を含むペレットを、実施例1(1)に記載の方法で調製したPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液30mLで再懸濁した。当該操作は、血液成分を除去し、目的とするPC9細胞を濃縮するための操作である。
(6)再懸濁液を300×gで5分間、室温にて遠心分離後、上清を除去し、PC9細胞を含むペレットをPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液30mLで再懸濁した。
(7)(6)で得られたPC9細胞懸濁液を300×gで5分間、室温にて遠心分離し、上清を除去した。
(8)(7)で上清を除去したPC9細胞を、実施例1(9)から(16)と同様な方法で、PC9細胞へのサイトケラチン抗体の結合度合いを、蛍光輝度分布を基に評価した。
実施例4(3)で血液に添加するPC9細胞として、実施例1(2)で剥離した保存処理をしていないPC9細胞約105個を用いた他は、実施例4と同様な方法でPC9細胞へのサイトケラチン抗体の結合度合いを、蛍光輝度分布を基に評価した。
Claims (7)
- 腫瘍細胞を含む溶液から当該腫瘍細胞内で発現するタンパク質を利用して当該腫瘍細胞を検出する方法であって、前記腫瘍細胞を含む溶液に安定化剤をさらに含ませる、前記方法。
- 安定化剤をさらに含んだ、腫瘍細胞を含む溶液から、比重分離を利用して当該腫瘍細胞を含む画分を分離回収する工程と、
前記工程で得られた腫瘍細胞を含む画分から、当該腫瘍細胞内で発現するタンパク質を利用して当該腫瘍細胞を検出する工程と、
を含む腫瘍細胞の検出方法。 - 以下の(1)から(4)の工程を含む、腫瘍細胞の検出方法。
(1)安定化剤をさらに含んだ、腫瘍細胞を含む溶液から、比重分離を利用して当該腫瘍細胞を含む画分を分離回収する工程
(2)(1)で得られた画分を、親水性高分子を結合したタンパク質および/または糖を含む溶液に添加する工程
(3)(2)で得られた溶液を遠心分離することで、腫瘍細胞を含むペレットを回収する工程
(4)(3)で得られたペレットの懸濁液から、当該腫瘍細胞内で発現するタンパク質を利用して当該腫瘍細胞を検出する工程 - 安定化剤が、ホルムアルデヒドドナー化合物である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
- ホルムアルデヒドドナー化合物が、イミダゾリジニル尿素である、請求項4に記載の方法。
- 腫瘍細胞内で発現するタンパク質を利用して当該腫瘍細胞を検出する工程を、当該腫瘍細胞内で発現するタンパク質に対する標識化抗体を用いて行なう、請求項5記載の方法。
- 腫瘍細胞内で発現するタンパク質がサイトケラチンである、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
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