JP2019192617A - フロー電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】性能低下を低減することができるフロー電池を提供する。【解決手段】実施形態に係るフロー電池1は、反応部10と、発生部9と、捕集部20とを備える。反応部は、正極2および負極3と、電解液6とを有する。電解液は、正極および負極に接触する。発生部は、電解液に気体を供給して気泡8を発生させる。捕集部は、電解液の液面6aよりも上方に配置され、液面から逸出した電解液成分を捕集する。【選択図】図1
Description
開示の実施形態は、フロー電池に関する。
従来、正極と負極との間に、テトラヒドロキシ亜鉛酸イオン([Zn(OH)4]2−)を含有する電解液を循環させるフロー電池が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
また、亜鉛種などの活物質を含む負極を、選択的イオン伝導性を有するイオン伝導層で覆うことでデンドライトの成長を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
Y. Ito. et al.: Zinc morphology in zinc-nickel flow assisted batteries and impact on performance, journal of Power Sources, Vol. 196, pp. 2340-2345, 2011
しかしながら、上記に記載のフロー電池では、電解液の流動に起因して電池性能が低下する懸念があった。
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、性能低下を低減することができるフロー電池を提供することを目的とする。
実施形態の一態様に係るフロー電池は、反応部と、発生部と、捕集部とを備える。反応部は、正極および負極と、電解液とを有する。電解液は、前記正極および前記負極に接触する。発生部は、前記電解液に気体を供給して気泡を発生させる。捕集部は、前記電解液の液面よりも上方に配置され、前記液面から逸出した電解液成分を捕集する。
実施形態の一態様のフロー電池によれば、性能低下を低減することができる。
以下、添付図面を参照して、本願の開示するフロー電池の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図1に示すフロー電池1は、筐体17に収容された反応部10および発生部9と、供給部14と、捕集部20を備える。反応部10は、正極2と、負極3と、隔膜4,5と、電解液6と、粉末7とを備える。フロー電池1は、発生部9で発生した気泡8を電解液6中で浮上させることにより反応部10内に収容された電解液6を流動させる装置である。発生部9は、流動装置の一例である。
図1は、第1の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図1に示すフロー電池1は、筐体17に収容された反応部10および発生部9と、供給部14と、捕集部20を備える。反応部10は、正極2と、負極3と、隔膜4,5と、電解液6と、粉末7とを備える。フロー電池1は、発生部9で発生した気泡8を電解液6中で浮上させることにより反応部10内に収容された電解液6を流動させる装置である。発生部9は、流動装置の一例である。
なお、説明を分かりやすくするために、図1には、鉛直上向きを正方向とし、鉛直下向きを負方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。また、図1に示すフロー電池1と同様の構成については同じ符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
正極2は、例えば、ニッケル化合物、マンガン化合物またはコバルト化合物を正極活物質として含有する導電性の部材である。ニッケル化合物は、例えば、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、コバルト化合物含有水酸化ニッケル等が使用できる。マンガン化合物は、例えば、二酸化マンガン等が使用できる。コバルト化合物は、例えば、水酸化コバルト、オキシ水酸化コバルト等が使用できる。また、正極2は、黒鉛、カーボンブラック、導電性樹脂等を含んでもよい。電解液6が分解される酸化還元電位の観点からは、正極2はニッケル化合物を含有してもよい。また、正極2は、ニッケル金属、コバルト金属またはマンガン金属、あるいはそれらの合金であってもよい。
負極3は、負極活物質を金属として含む。負極3は、例えば、ステンレスや銅などの金属板や、ステンレスや銅板の表面をニッケルやスズ、亜鉛でメッキ処理したものを使用することができる。また、メッキ処理された表面が一部酸化されたものを負極3として使用してもよい。
負極3は、正極2を挟んで互いに向かい合うように配置された負極3aおよび負極3bを含む。正極2および負極3は、負極3aと、正極2と、負極3bとが予め定められた間隔でY軸方向に沿って順に並ぶように配置されている。このように隣り合う正極2と負極3との間隔をそれぞれ設けることにより、正極2と負極3との間における電解液6および気泡8の流通経路が確保される。
隔膜4,5は、正極2の厚み方向、すなわちY軸方向の両側を挟むように配置される。隔膜4,5は、電解液6に含まれるイオンの移動を許容する材料で構成される。具体的には、隔膜4,5の材料として、例えば、隔膜4,5が水酸化物イオン伝導性を有するように、陰イオン伝導性材料が挙げられる。陰イオン伝導性材料としては、例えば、有機ヒドロゲルのような三次元構造を有するゲル状の陰イオン伝導性材料、または固体高分子型陰イオン伝導性材料などが挙げられる。固体高分子型陰イオン伝導性材料は、例えば、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族より選択された少なくとも一種類の元素を含有する、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、硫酸化合物およびリン酸化合物からなる群より選択された少なくとも一つの化合物とを含む。
隔膜4,5は、好ましくは、水酸化物イオンよりも大きいイオン半径を備えた[Zn(OH)4]2−等の金属イオン錯体の透過を抑制するように緻密な材料で構成されると共に所定の厚さを有する。緻密な材料としては、例えば、アルキメデス法で算出された90%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上の相対密度を有する材料が挙げられる。所定の厚さは、例えば、10μm〜1000μm、より好ましくは50μm〜500μmである。
この場合には、充電の際に、負極3a,3bにおいて析出する亜鉛がデンドライト(針状結晶)として成長し、隔膜4,5を貫通することを低減することができる。その結果、互いに向かい合う負極3と正極2との間の導通を低減することができる。
電解液6は、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である。電解液6中の亜鉛種は、[Zn(OH)4]2−として電解液6中に溶存している。電解液6は、例えば、K+やOH−を含むアルカリ水溶液に亜鉛種を飽和させたものを使用することができる。なお、電解液6は、後述する粉末7とともに調製すれば、充電容量を大きくできる。ここで、アルカリ水溶液としては、例えば、6.7moldm−3の水酸化カリウム水溶液を使用することができる。また、1dm−3の水酸化カリウム水溶液に対し、0.5molの割合でZnOを添加し、必要に応じて後述する粉末7を追加することにより電解液6を調製することができる。さらに、酸素発生抑制を目的に、水酸化リチウムや水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属化合物を添加してもよい。
粉末7は、亜鉛を含む。具体的には、粉末7は、例えば粉末状に加工または生成された酸化亜鉛、水酸化亜鉛等である。粉末7は、アルカリ水溶液中には容易に溶解するが、亜鉛種の飽和した電解液6中には溶解せずに分散または浮遊し、一部が沈降した状態で電解液6中に混在する。電解液6が長時間静置されていた場合、ほとんどの粉末7が、電解液6の中で沈降した状態になることもあるが、電解液6に対流等を生じさせれば、沈降していた粉末7の一部は、電解液6に分散または浮遊した状態になる。つまり、粉末7は、電解液6中に移動可能に存在している。なお、ここで移動可能とは、粉末7が、周囲の他の粉末7の間にできた局所的な空間の中のみを移動できることではなく、電解液6の中を別の位置に粉末7が移動することにより、当初の位置以外の電解液6に粉末7が晒されるようになっていることを表す。さらに、移動可能の範疇には、正極2を挟む隔膜4,5および負極3の両方の近傍まで粉末7が移動できるようになっていることや、反応部10内に存在する電解液6中の、ほぼどこにでも粉末7が移動できるようになっていることが含まれる。電解液6中に溶存する亜鉛種である[Zn(OH)4]2−が消費されると、電解液6中に混在する粉末7は、粉末7および電解液6が互いに平衡状態を維持するように電解液6中に溶存する亜鉛種が飽和するまで溶解する。
気泡8は、例えば正極2、負極3および電解液6に対して不活性な気体で構成される。このような気体としては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、またはアルゴンガスなどが挙げられる。電解液6に不活性な気体の気泡8を発生させることにより、電解液6の変性を低減することができる。また、例えば、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である電解液6の劣化を低減し、電解液6のイオン伝導度を高く維持することができる。なお、気体は空気を含有してもよい。
発生部9は、反応部10の下方に配置されている。発生部9は、後述する供給部14から供給された気体を一時的に貯留するよう内部が中空となっている。また、反応部10の内底10eは、発生部9の中空部分を覆うように配置されており、発生部9の天板を兼ねている。
また、内底10eは、X軸方向およびY軸方向に沿って並ぶ複数の吐出口9aを有している。発生部9は、供給部14から供給された気体を吐出口9aから吐出することにより、電解液6中に気泡8を発生させる。吐出口9aは、例えば0.05mm以上0.5mm以下の直径を有する。吐出口9aの直径をこのように規定することにより、吐出口9aから発生部9の内部の中空部分に電解液6や粉末7が進入する不具合を低減することができる。また、吐出口9aから吐出される気体に対し、気泡8を発生させるのに適した圧力損失を与えることができる。
また、吐出口9aのX軸方向に沿った間隔(ピッチ)は、例えば、2.5mm以上50mm以下であり、さらに10mm以下にしてもよい。ただし、吐出口9aは、発生した気泡8を負極3と正極2(隔膜4,5)との間に適切に流動させることができるように配置されるものであれば、大きさや間隔に制限はない。
発生部9の吐出口9aから電解液6中に供給された気体により発生した気泡8は、所定の間隔で配置された電極間、より具体的には、負極3aと隔膜4との間、隔膜5と負極3bとの間において、それぞれ電解液6中を浮上する。電解液6中を気泡8として浮上した気体は、電解液6の液面6aで消滅し、上板18と電解液6の液面6aとの間に気体層13を構成する。
ここで、発生部9および反応部10を有する筐体17および上板18は、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニルなど、耐アルカリ性および絶縁性を有する樹脂材料で構成される。筐体17および上板18は、好ましくは互いに同じ材料で構成されるが、異なる材料で構成されてもよい。また、発生部9は、反応部10の内部に配置されてもよい。
供給部14は、配管16を介して反応部10の内部に設けられた気体層13から回収された気体を、配管15を介して発生部9に供給する。配管16は、一端が上板18を貫通する排出口19に接続され、他端が供給部14に接続されている。配管16は、気体層13から反応部10の外部に気体を排出する排出流路の一例である。
供給部14は、例えば気体を移送可能なポンプ(気体ポンプ)、コンプレッサまたはブロワである。供給部14の気密性を高くすれば、気体や電解液6に由来する水蒸気を外部に漏出させることによるフロー電池1の発電性能の低下が起きにくい。
ここで、フロー電池1における電極反応について、正極活物質として水酸化ニッケルを適用したニッケル亜鉛電池を例に挙げて説明する。充電時における正極2および負極3での反応式はそれぞれ、以下のとおりである。
正極:Ni(OH)2 + OH− → NiOOH + H2O + e−
負極:[Zn(OH)4]2− + 2e− → Zn +4OH−
負極:[Zn(OH)4]2− + 2e− → Zn +4OH−
一般的には、この反応に伴って負極3で生成したデンドライトが正極2側へ成長し、正極2と負極3とが導通する懸念がある。反応式から明らかなように、負極3では、充電により亜鉛が析出するのに伴い、負極3の近傍における[Zn(OH)4]2−の濃度が低下する。そして、析出した亜鉛の近傍で[Zn(OH)4]2−の濃度が低下する現象が、デンドライトとして成長する一因である。すなわち、充電時に消費される電解液6中の[Zn(OH)4]2−を補給することにより、電解液6中の亜鉛種である[Zn(OH)4]2−の濃度が飽和状態に保持される。これにより、デンドライトの成長が低減され、正極2と負極3とが導通する可能性が低減される。
フロー電池1では、発生部9の吐出口9aから電解液6中に気体を供給して気泡8を発生させる。気泡8は、隔膜4または隔膜5と負極3との間においてそれぞれ反応部10の下方から上方に向かって電解液6中を浮上する。また、電極間における上記した気泡8の浮上に伴い、電解液6には上昇液流が発生し、負極3aと隔膜4との間、隔膜5と負極3bとの間では反応部10の内底10e側から上方に向かって電解液6が流動する。そして、電解液6の上昇液流に伴い、主に反応部10の内壁10aと負極3aとの間、および内壁10bと負極3bとの間で下降液流が発生し、電解液6が反応部10の内部を上方から下方に向かって流動する。これにより、充電によって電解液6中の[Zn(OH)4]2−が消費されると、これに追従するように粉末7中の亜鉛が溶解することで[Zn(OH)4]2−が電解液6中に補給される。このため、電解液6中の[Zn(OH)4]2−の濃度を飽和状態に保つことができ、デンドライトの成長に伴う正極2と負極3との導通を低減することができる。
また、フロー電池1では、電解液6中に亜鉛を含む粉末7を混在させている。これにより、充電によって電解液6中の[Zn(OH)4]2−が消費されると、これに追従するように粉末7中の亜鉛が溶解することで[Zn(OH)4]2−が電解液6中に補給される。このため、電解液6中の[Zn(OH)4]2−の濃度を飽和状態に保つことができ、デンドライトの成長に伴う正極2と負極3との導通の可能性を低減することができる。
なお、粉末7としては、酸化亜鉛および水酸化亜鉛以外に、金属亜鉛、亜鉛酸カルシウム、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛などが挙げられ、酸化亜鉛および水酸化亜鉛が好ましい。
また、負極3では、放電によりZnが消費され、[Zn(OH)4]2−を生成するが、電解液6はすでに飽和状態であるため、電解液6中では、過剰となった[Zn(OH)4]2−からZnOが析出する。このとき負極3で消費される亜鉛は、充電時に負極3の表面に析出した亜鉛である。このため、元来亜鉛種を含有する負極を用いて充放電を繰り返す場合とは異なり、負極3の表面形状が変化するいわゆるシェイプチェンジが生じない。これにより、フロー電池1によれば、負極3の経時劣化を低減することができる。なお、電解液6の状態によっては、過剰となった[Zn(OH)4]2−から析出するのは、Zn(OH)2や、ZnOとZn(OH)2とが混合したものになる。
上記したように、発生部9の吐出口9aから電解液6中に供給された気体により発生し、電解液6中を浮上した気泡8は、電解液6の液面6aで消滅する。そして、排出口19に接続された配管16は、気泡8の消滅とともに電解液6の液面6a上に形成される気体層13から反応部10の外部に気体を排出するように形成されている。ただし、フロー電池1では気泡8の浮上により筐体17内を流動している電解液成分の一部が液面6aから逸出することがある。ここで、「液面6aから逸出する」には、例えば筐体17に収容された電解液6および粉末7を含む電解液成分が液面6aの上方に飛散することや、電解液6から水分が蒸発すること、さらに電解液6中を浮上した気泡8が液面6aで消滅せずに泡沫状に滞留することが含まれる。また、「電解液成分」には、電解液6を構成する電解質および水の他、電解液6中に混在されることで電解液6と一体となって移動する粉末7が含まれてもよい。
電解液成分のうち、電解液6が液面6aから逸出すると、反応部10の内部における電解液6の液量が減少することで電池容量が低下する。また、液面6aから電解液6中の水分が蒸発により逸出すると、電解液6中の電解質濃度が変動し、フロー電池1として不安定な挙動を示す場合がある。また、液面6a上に滞留する泡沫状の気泡8が反応部10の外部にまで到達し、さらに配管16から排出される気体とともに供給部14にまで到達すると、腐食その他の不具合が生じる可能性も生じる。捕集部20は、液面6aから逸出した電解液成分を捕集することにより、フロー電池1の性能低下を低減する。
図1に示すように、捕集部20は、電解液6の液面6aよりも上方に配置される。第1の実施形態に係るフロー電池1では、捕集部20は、液面6aの上方に配置された筐体17の内周面17aおよび上板18の底面18eに設けられている。内周面17aには、撥水層21が配置され、気体層13に面する底面18eには、撥水層22が配置されている。
撥水層21,22はいずれも、液面6aの下方に配置された筐体17の内周面17aよりも高い撥水性を有する。このため、液面6aから逸出して撥水層21,22の表面に付着した電解液成分は、液滴となって内周面17aおよび底面18eから脱落し、電解液6中に落下する。また、液面6aの上方に滞留した泡沫状の気泡8は、電解液成分と気体とに分離されて消滅し、電解液成分は電解液6中に落下する。第1の実施形態に係るフロー電池1によれば、電池反応に供される電解液成分の総量および濃度を所定範囲に維持することで性能低下を低減することができる。
なお、撥水層21,22は、例えばシリコン系、エポキシ系、フッ素系などの耐アルカリ性および絶縁性を有する材料を筐体17および上板18の所定の位置に塗布し、乾燥させることで形成される。また、例えばフッ素系のガスを用いたプラズマ処理などの表面改質を行うことにより、撥水性を付与してもよい。また、撥水層21,22は、内周面17aおよび底面18eのうち気体層13と向かい合う部分の全体に配置されてもよく、一部であってもよい。また、撥水層21,22がそれぞれ形成された内周面17aおよび底面18eは、同様の撥水性を有してもよく、また異なってもよい。また、内周面17aおよび底面18eのうち、一方にのみ撥水層を有してもよい。
次に、フロー電池1における電極間の接続について説明する。図2は、第1の実施形態に係るフロー電池の電極間の接続の一例について説明する図である。
図2に示すように、負極3aおよび負極3bは並列接続されている。このように負極3を並列に接続することにより、正極2および負極3の総数が異なる場合であってもフロー電池1の各電極間を適切に接続し、使用することができる。
また、上記したように、フロー電池1は正極2を挟んで互いに向かい合うように配置された負極3a,3bを備える。このように1つの正極2に対して2つの負極3a,3bが対応したフロー電池1では、正極2と負極3とが1:1で対応するフロー電池と比較して負極1つ当たりの電流密度が低下する。このため、第1の実施形態に係るフロー電池1によれば、負極3a,3bでのデンドライトの生成がさらに低減されるため、負極3a,3bと正極2との導通をさらに低減することができる。
なお、図1に示すフロー電池1では、合計3枚の電極が、負極3および正極2が交互に配置されるように構成されたが、これに限らず、5枚以上の電極を交互に配置するようにしてもよく、正極2および負極3をそれぞれ1枚ずつ配置させてもよい。また、図1に示すフロー電池1では、両端がともに負極3となるように構成されたが、これに限らず、両端がともに正極2となるように構成してもよい。さらに、一方の端部が正極2、他方の端部が負極3となるように同枚数の負極3および正極2をそれぞれ交互に配置してもよい。
<第2の実施形態>
図3は、第2の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図3に示すフロー電池1は、図1に示す撥水層21,22に代えて、撥水層23を備えることを除き、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様の構成を有している。撥水層23は、捕集部20の一例である。
図3は、第2の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図3に示すフロー電池1は、図1に示す撥水層21,22に代えて、撥水層23を備えることを除き、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様の構成を有している。撥水層23は、捕集部20の一例である。
撥水層23は、配管16の内周面のうち、排出口19に接続された一端寄りに配置されている。具体的には、撥水層23は、配管16のうち、排出口19から上方に向かって延びる第1部分31、供給部14に向かって下方に延びる第3部分33、および第1部分31と第3部分33との間を接続する第2部分32のうち、第1部分31および排出口19と向かい合う第2部分32の一部に配置されている。
撥水層23が形成された配管16の内周面は、液面6aの下方に配置された筐体17の内周面17aよりも高い撥水性を有する。このため、液面6aから逸出して撥水層23に付着した電解液成分または水分は、液滴となって脱落し、排出口19から反応部10の内部に回収されて電解液6中に落下する。また、液面6aの上方に滞留し、撥水層23が形成された配管16の内周面にまで到達した泡沫状の気泡8は、電解液成分と気体とに分離されて消滅し、電解液成分は電解液6中に落下する。第2の実施形態に係るフロー電池1によれば、電池反応に供される電解液成分の総量および濃度を所定範囲に維持することで性能低下を低減することができる。
また、配管16の内周面に撥水層23が形成されることにより、反応部10の外部にまで到達した電解液成分を捕集する。このため、第2の実施形態に係るフロー電池1によれば、例えば強アルカリ性を有する電解液成分が配管16を伝って供給部14にまで到達することに伴う腐食その他の不具合を低減することができる。
なお、撥水層23は、例えば図1に示す撥水層21,22と同様の手法により形成することができる。また、撥水層23が形成された配管16の内周面は、図1に示す撥水層21,22がそれぞれ形成された内周面17aおよび底面18eと同様の撥水性を有してもよく、また異なってもよい。
<第3の実施形態>
図4A、図4Bは、第3の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図4A、図4Bに示すフロー電池1は、上板18の形状が異なることを除き、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様の構成を有している。
図4A、図4Bは、第3の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図4A、図4Bに示すフロー電池1は、上板18の形状が異なることを除き、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様の構成を有している。
上板18は、排出口19の中心を頂点とする略三角形状の傾斜部18a〜18dを有する。傾斜部18aおよび傾斜部18bは、排出口19を挟んでY軸方向に対向するように配置されている。また、傾斜部18cおよび傾斜部18dは、排出口19を挟んでX軸方向に対向するように配置されている。上板18は、電解液6の液面6aに対して斜設された底面24を有する。底面24は、捕集部20の一例である。なお、図4Aでは、傾斜部18aおよび傾斜部18bに形成された底面24を図示している。
液面6aから逸出して底面24に付着した電解液成分または水分は、排出口19に到達するまでの間に液滴となって脱落し、電解液6中に落下する。また、底面24にまで到達した泡沫状の気泡8は、電解液成分と気体とに分離されて消滅し、電解液成分は落下して電解液6と一体化される。第3の実施形態に係るフロー電池1によれば、電池反応に供される電解液成分の総量および濃度を所定範囲に維持することで性能低下を低減することができる。
なお、XY平面に対する底面24の角度θ1は、例えば5°以上85°以下、特に30°以上60°以下とすることができる。このように底面24の角度θ1を規定することにより、例えば液面6aから逸出した電解液成分のより確実な捕集とフロー電池1のサイズとのバランスが適切に保持される。また、図4Aでは、傾斜部18a側に角度θ1を示しているが、傾斜部18b、18c、18dの角度についても、角度θ1と同様にできる。さらに、傾斜部18b、18c、18dのそれぞれの角度および角度θ1は、同じでもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
<第4の実施形態>
図5A、図5Bは、第4の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図5A、図5Bに示すフロー電池1は、上板18の底面18e側の形状が異なることを除き、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様の構成を有している。
図5A、図5Bは、第4の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図5A、図5Bに示すフロー電池1は、上板18の底面18e側の形状が異なることを除き、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様の構成を有している。
上板18は、底面18e側に複数の凸部25を有する。凸部25は、捕集部20の一例である。
液面6aから逸出して凸部25に付着した電解液成分または水分は、自重により頂部25aに到達するまでの間に液滴となって脱落し、電解液6中に落下する。第4の実施形態に係るフロー電池1によれば、液面6aから逸出した電解液成分または水分が少量の場合であっても電池反応に供される電解液成分の総量および濃度を所定範囲に維持することが可能となり、性能低下を低減することができる。
なお、凸部25の形状は、四角錐として図示したが、これに限らず、例えば三角錐その他の角錐、円錐または楕円錐などであってもよく、また針状であってもよい。
<第5の実施形態>
図6A、図6Bは、第5の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図6A、図6Bに示すフロー電池1は、液面6aと上板18との間に板状部材26を配置したことを除き、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様の構成を有している。板状部材26は、捕集部20の一例である。
図6A、図6Bは、第5の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図6A、図6Bに示すフロー電池1は、液面6aと上板18との間に板状部材26を配置したことを除き、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様の構成を有している。板状部材26は、捕集部20の一例である。
板状部材26は、第1板状部材26aと、第1板状部材26aの上方に配置された第2板状部材26bとを含む。第1板状部材26aは、液面6aの上方に配置された筐体17の内周面17a、より具体的には反応部10のY軸負方向側の内壁10aから内壁10aと向かい合う内壁10b側に延びるように液面6aに対して下方向に斜設されている。また、第2板状部材26bは、液面6aの上方に配置された筐体17の内周面17a、より具体的には反応部10のY軸正方向側の内壁10bから内壁10bと向かい合う内壁10a側に延びるように液面6aに対して下方向に斜設されている。
第1板状部材26a、第2板状部材26bをこのように配置することにより、液面6aの上方から排出口19に至るつづら折り状の流路が形成される。
液面6aから逸出して第1板状部材26aまたは第2板状部材26bに付着した電解液成分または水分は、液滴となって第1板状部材26aまたは第2板状部材26bの傾斜に沿って流動し、やがて電解液6中に落下する。このため、電池反応に供される電解液成分の総量および濃度を所定範囲に維持することで性能低下を低減することができる。
また、第1板状部材26aと内壁10aとの間を通り第2板状部材26bにまで到達した泡沫状の気泡8は、排出口19までは到達することなくとどまる。このため、電解液成分が配管16を伝って供給部14にまで到達することに伴う腐食その他の不具合を低減することができる。
なお、XY平面に対する第1板状部材26a、第2板状部材26bの角度θ2、θ3は、例えば5°以上45°以下、特に15°以上30°以下とすることができる。また、角度θ2、θ3は、互いに同じであってもよく、また異なってもよい。このように第1板状部材26a、第2板状部材26bの角度θ2、θ3を規定することにより、例えば液面6aから逸出した電解液成分のより確実な捕集とフロー電池1のサイズとのバランスが適切に保持される。
また、第5の実施形態に係るフロー電池1では、液面6aの上方から排出口19に至る流路長を長くするように排出口19を上板18のY軸正方向寄りに配置したが、これに限らず、例えば第1の実施形態に係るフロー電池1と同様に上板18の中央付近に排出口19を配置してもよい。
<第6の実施形態>
図7は、第6の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図7に示すフロー電池1は、配管16を冷却する冷却装置27を配置したことを除き、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様の構成を有している。冷却装置27は、捕集部20の一例である。
図7は、第6の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図7に示すフロー電池1は、配管16を冷却する冷却装置27を配置したことを除き、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様の構成を有している。冷却装置27は、捕集部20の一例である。
液面6aから逸出して配管16にまで到達した電解液成分は、冷却装置27により凝縮され、液滴となって電解液6中に落下する。第6の実施形態に係るフロー電池1によれば、蒸発により液面6aから逸出した水分を含む気体を冷却することで積極的に電解液成分を捕集することができるため、電池反応に供される電解液成分の総量および濃度を所定範囲に維持することが可能となり、性能低下を低減することができる。
なお、冷却装置27は、例えば、空冷、水冷などあらゆる手法により配管16を冷却するものであってもよい。また、図7では、1つの冷却装置27が配置された例について示したが、複数の冷却装置27を配置してもよい。
<第7の実施形態>
図8は、第7の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図8に示すフロー電池1は、配管16の途中にトラップ28を配置したことを除き、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様の構成を有している。トラップ28は、捕集部20の一例である。
図8は、第7の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図8に示すフロー電池1は、配管16の途中にトラップ28を配置したことを除き、第1の実施形態に係るフロー電池1と同様の構成を有している。トラップ28は、捕集部20の一例である。
配管16は、第1配管41と第2配管42とを有する。第1配管41は、トラップ28内に開口する端部41aを有し、一端が排出口19に接続されている。第2配管42は、トラップ28内に開口する端部42aを有し、一端が供給部14に接続されている。
液面6aから逸出して第1配管41に到達した水分は、トラップ28の内部で凝縮され、トラップ28中に凝縮水36として貯留される。また、トラップ28には、排出管29が接続されており、トラップ28中に貯留された凝縮水36は、第1配管41を経由して反応部10の内部に戻される。第7の実施形態に係るフロー電池1によれば、蒸発により液面6aから逸出した水分を含む気体から積極的に電解液成分を捕集することができるため、電池反応に供される電解液成分の総量および濃度を所定範囲に維持することが可能となり、性能低下を低減することができる。
そして第2配管42には、トラップ28での凝縮により乾燥した気体が送られることとなる。第2配管42への凝縮水36の混入を防止するために、第2配管42の端部42aは、排出管29の高さよりも高い位置に配置させるとよい。これにより、凝縮水36の液面36aは、端部42aよりも低い位置を維持することができる。
なお、図7では、排出管29の端部が第1配管41に接続された例について示したが、これに限らず、例えば上板18または筐体17に設けた貫通口(不図示)に接続されてもよい。
また、トラップ28に捕集された凝縮水36は、すべて反応部10の内部に戻されてもよく、一部の凝縮水36が戻されるようにしてもよい。また、トラップ28の内部に予め電解液6と同じ成分を有する液体または脱イオン水が収容されていてもよい。また、トラップ28の形状は図示したものに限らず、例えば2ヶ所以上に凝縮水36を貯留する構成としてもよい。
また、図8では、1つのトラップ28が配置された例について示したが、複数のトラップ28を配置してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、各実施形態に係る2以上の捕集部20を適宜組み合わせて適用してもよい。
また、上記した各実施形態では、電解液6中に粉末7が混在されているとして説明したが、これに限らず、粉末7を有しなくてもよい。かかる場合、負極3が含有する負極活物質を増量するとよい。
なお、供給部14は、常時動作させてもよいが、電力消費を低減する観点から、放電時には充電時よりも気体または電解液6の供給レートを低下させてもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
1 フロー電池
2 正極
3,3a,3b 負極
4,5 隔膜
6 電解液
7 粉末
8 気泡
9 発生部
9a 吐出口
10 反応部
13 気体層
14 供給部
17 筐体
18 上板
19 排出口
20 捕集部
2 正極
3,3a,3b 負極
4,5 隔膜
6 電解液
7 粉末
8 気泡
9 発生部
9a 吐出口
10 反応部
13 気体層
14 供給部
17 筐体
18 上板
19 排出口
20 捕集部
Claims (10)
- 正極および負極と、前記正極および前記負極に接触する電解液とを有する反応部と、
前記電解液に気体を供給して気泡を発生させる発生部と、
前記電解液の液面よりも上方に配置され、前記液面から逸出した電解液成分を捕集する捕集部と
を備えることを特徴とするフロー電池。 - 前記正極、前記負極および前記電解液を収容する筐体と、
前記筐体の上部を覆う上板と、
一端が前記液面よりも上方に配置された排出口に接続され、前記反応部の外部に前記気体を排出する排出流路と
を備え、
前記捕集部は、前記上板、前記液面の上方に配置された前記筐体および前記排出流路のうち、一つ以上を含むように配置されることを特徴とする請求項1に記載のフロー電池。 - 前記捕集部は、前記上板の底面、前記液面の上方に配置された前記筐体の内周面、および前記一端寄りに配置された前記排出流路の内周面のうち、前記液面の下方に配置された前記筐体の内周面よりも高い撥水性を有する部分を含むことを特徴とする請求項2に記載のフロー電池。
- 前記上板の底面は、前記液面に対して斜設されていることを特徴とする請求項2または3に記載のフロー電池。
- 前記上板の底面は、複数の凸部を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載のフロー電池。
- 前記捕集部は、前記液面の上方に配置された前記筐体の内周面から前記液面に対して斜設するように延びる1または複数の板状部材を配置したつづら折り状の流路を含むことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載のフロー電池。
- 前記捕集部は、前記気体中に含まれる水分を分離するトラップを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のフロー電池。
- 前記捕集部は、前記気体を冷却する冷却装置を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のフロー電池。
- 前記電解液は、亜鉛成分を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のフロー電池。
- 前記電解液中を移動可能に混在する粉末をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載のフロー電池。
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-
2018
- 2018-04-27 JP JP2018087692A patent/JP2019192617A/ja active Pending
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