JP2019182893A - シリカ質コーティング組成物、光透過部材及びシリカ質コーティング層の形成方法 - Google Patents
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さらには、基材として光透過基材を用いてシリカ質微粒子を分散させたシリカ質コーティング膜を形成した場合には、当該光透過基材における所望の透過対象光の光波長域において、元の光透過基材と同等の透明性を確保することができるものではなかった。
さらには、基材として光透過基材を用いた場合に、透過対象光の光波長域において元の光透過基材と同等の透明性を確保することが可能なシリカ質コーティング組成物、コーティング部材及びシリカ質コーティング層の形成方法を提供することを目的としている。
図1は、実施形態のシリカ質コーティング層を備えたガラス部材の概要構成説明図である。
ここで、ガラス部材は、基材、より詳細には、光透過基材として機能している。
図1において、理解の容易のため、各層の厚さは、実際の比率とは異なっている。
コーティング部材10は、光透過基材としてのガラス基板11と、シリカ質微粒子12が均一に分散されたシリカ質コーティング層13と、を備えている。
まず、平均粒子径について説明する。
シリカ質微粒子12の平均粒子径としては、透過対象光が可視光である場合、2nm〜200nmの範囲が好ましい。
シリカ質微粒子12の平均粒子径が2nm未満である場合には、シリカ質微粒子の製造が困難であり、凝集により均一に分散させることが困難となるからである。
シリカ質コーティング層13中のシリカ質微粒子12の(体積)占有率を3vol%以上80vol%以下とするのが好ましい。
シリカ質微粒子12及びシリカ質コーティング層13の双方の炭素含有率は、0.05wt%以上5wt%以下とするのが好ましい。
シリカ質コーティング層13の膜厚は、2nm以上100μm以下とするのが好ましい。
シリカ質コーティング層13の膜厚が2nm未満の場合は、膜厚の制御が困難となるためだからである。
これは、10nm未満の場合は微粒子径よりも膜厚が小さくなるため膜表面の平滑性が劣り、30μmを超えた場合は本出願のようなウエット法、すなわち溶液を基材に塗布、乾燥して製膜する方法の場合、均質な膜厚を得にくいためである。
ヘーズ率の上昇率が0.7%以下であれば、シリカ質コーティング層13中におけるシリカ質微粒子12の分散性が十分であり、ディスプレー用フィルムなどの高い透明性が要求される用途等において所望の性能を発揮できるからである。
図2は、ガラス基板上にシリカ質コーティング層が形成されたコーティング部材の製造フローチャートである。
まず、所定の平均粒子径(2nm〜200nm)を有し、所定の炭素含有量(0.05wt%以上5wt%以下)のシリカ質微粒子12を所定量秤量する(ステップS11)。
次にシリカ質微粒子濃縮液をフィルターで濾過する(ステップS17)。
これにより確実にシリカ質微粒子濃縮液に含まれるシリカ質微粒子12の平均粒子径を所望の範囲とすることができる。
0.05wt%未満の場合は、原料の精製が容易でなく製造コストの増大が懸念され、5wt%を超える場合は前述したように、最終的に得られるシリカ質膜の電気絶縁性、機械的強度、耐熱性などの低下が懸念されるためである。
図3は、実施例及び比較例の説明図である。
まず実施例のコーティング部材の形成方法について説明する。以下の説明においては、理解の容易のため、上述した図2におけるステップ番号を記載する。
本実施例においては、図3に示すように、シリカ質微粒子12として、平均粒子径20nm、炭素含有量3wt%のフュームドシリカを秤量し、用意した(ステップS11)。
これと並行して、1wt%の水素化ポリシラザン(シリカ質コーティング材)を秤量し(ステップS12)、キシレン溶液に溶かして、20wt%含むキシレン溶液100gを調製する。
そして、シリカ微粒子混合液を蒸留装置(エバポレータは50度、10torrの条件)にセットし、全量が100gとなるまで溶剤を蒸発させる(ステップS14)。
次にシリカ微粒子濃縮液をポアサイズ200nmのテフロン製フィルターで濾過する(ステップS17)。
次に比較例のコーティング部材の形成方法について説明する。
本比較例においては、図3に示すように、シリカ質微粒子12を溶媒としてのエタノール水に溶解して分散させ、平均粒子径20nmのシリカ質微粒子12を20wt%含むエタノール水分散液5gを調製する。これと並行して炭素含有量が1wt%の水素化ポリシラザンを溶媒としてのキシレンに溶解し、水素化ポリシラザン20wt%含むキシレン溶液100gを調製する。
シリカ微粒子濃縮液5gを50mm角、厚さ0.7mmのパイレックスガラス基板に滴下し、スピンコーターのコーティング条件を1,000rpm,50秒として塗布する。
そして、乾燥後のシリカ微粒子濃縮液が塗布されたパイレックスガラス基板に再び濾過後のシリカ微粒子濃縮液5gを滴下し、第1回目のコーティングと同条件である1,000rpm, 50秒として塗布する。
乾燥後のパイレックスガラス基板を300度のオーブンで1時間加熱した後、オーブン無いに放置し、室温までゆっくりと冷却してパイレックスガラス基板上にシリカ質コーティング層が形成された比較例のコーティング部材とした。
図4は、実施例のシリカ質コーティング層13が形成されたパイレックスガラス基板の断面SEM(Scanning Electron Microscope)画像である。
またシリカ質コーティング層内のシリカ質微粒子の(体積)占有率は約62vol%であった。
また薄膜の膜厚は4μmであった。
上記処理後、分光反射率透過率測定装置により測定した膜形成後のガラス部材のヘイズ率は、0.4%であり、塗布前のパイレックスガラス基板(ヘイズ率0.3%)に比べて0.1%増加しているだけであり、コーティング部材として透明性を保っていた。
また、実施例のコーティング部材は、図5に示すように、全光透過率、平行透過率及び拡散透過率の全てにおいて、塗布前のパイレックスガラス基板と同様の数値が得られた。
また、比較例のコーティング部材は、図5に示すように、全光透過率、平行透過率及び拡散透過率の全てにおいて、塗布前のパイレックスガラス基板よりも性能が低下していることがわかる。
11 ガラス基板(基材、光透過基材)
12 シリカ質微粒子
13 シリカ質コーティング層(シリカ質コーティング組成物)
14 マトリックス
Claims (14)
- シリカ質微粒子と、前記シリカ質微粒子を分散状態で保持するマトリックスと、を備えたシリカ質コーティング組成物であって、
前記シリカ質微粒子及び前記シリカ質コーティング組成物における炭素含有率が0.05wt%以上5wt%以下とされている、
シリカ質コーティング組成物。 - 前記シリカ質微粒子及び前記シリカ質コーティング組成物における炭素含有率が0.1wt%以上3wt%以下とされている、
請求項1記載のシリカ質コーティング組成物。 - 前記シリカ質微粒子の平均粒子径が透過対象光の波長以下とされている、
請求項⒈又は請求項2記載のシリカ質コーティング組成物。 - 前記透過対象光は、可視光であり、
前記平均粒子径は、2nm以上200nm以下である、
請求項3記載のシリカ質コーティング組成物。 - 前記マトリックスにおける炭素含有率は、0.1wt%以上8wt%以下である、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載のシリカ質コーティング組成物。 - 前記シリカ質コーティング組成物中のシリカ質微粒子の体積占有率は、3vol%以上80vol%以下である、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載のシリカ質コーティング組成物。 - 基材と、
前記基材上に積層されたシリカ質コーティング層と、を備え、
前記シリカ質コーティング層は、シリカ質微粒子と、前記シリカ質微粒子を分散状態で保持するマトリックスと、を有し、前記シリカ質微粒子及び前記シリカ質コーティング組成物における炭素含有率が0.05wt%以上5wt%以下とされている、
コーティング部材。 - 前記基材は、基板、シート状部材のいずれかである、
請求項7記載のコーティング部材。 - 前記基材は、光透過部材であり、
前記シリカ質微粒子は、平均粒子径が前記光透過部材の透過対象光の波長以下とされている、
請求項7記載のコーティング部材。 - 前記光透過部材単体のヘーズ率に対する前記シリカ質コーティング層が形成された前記光透過部材のヘーズ率の増加率が1%以下とされている、
請求項9記載のコーティング部材。 - 前記光透過部材単体のヘーズ率に対する前記シリカ質コーティング層が形成された前記光透過部材のヘーズ率の増加率が0.7%以下とされている、
請求項10記載のコーティング部材。 - 平均粒子径が透過対象光の波長以下とされ、炭素含有率が0.05wt%以上5wt%以下とされたシリカ質微粒子及び炭素含有量が0.1wt%以上8wt%以下のポリシロキサン、ポリシラザン、ポリシロキサザンのいずれかのシリカ質コーティング材を、それぞれ所定の溶媒で溶解した後に、前記シリカ質微粒子の溶液と前記シリカ質コーティング材の溶液とを混合して、混合溶液を作製する過程と、
前記混合溶液の固形分濃度を蒸留して、所定濃度に調整する過程と、
光透過基材に固形分濃度の調整後の前記混合溶液を塗布する過程と、
前記混合溶液が塗布された前記光透過基材を乾燥した後、50度以上の温度で加熱する過程と、
を備えたシリカ質コーティング層の形成方法。 - 前記シリカ質コーティング材を溶解するための溶媒は、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘキセン、オクタン等の飽和炭化水素類、ブチルエーテル、アミルエーテル、アニソール等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類から選ばれる単一または複数種類の溶媒から選択される、
請求項12記載のシリカ質コーティング層の形成方法。 - 前記シリカ質微粒子を溶解するための溶媒は、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘキセン、オクタン等の飽和炭化水素類、ブチルエーテル、アミルエーテル、アニソール等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類から選ばれる単一または複数種類の溶媒から選択される、
請求項12又は請求項13記載のシリカ質コーティング層の形成方法。
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