JP2019173050A - 溶銑の脱珪処理方法 - Google Patents

溶銑の脱珪処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019173050A
JP2019173050A JP2018059304A JP2018059304A JP2019173050A JP 2019173050 A JP2019173050 A JP 2019173050A JP 2018059304 A JP2018059304 A JP 2018059304A JP 2018059304 A JP2018059304 A JP 2018059304A JP 2019173050 A JP2019173050 A JP 2019173050A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
desiliconization
hot metal
gaseous oxygen
blowing
calculated
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018059304A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6897613B2 (ja
Inventor
高橋 浩一
Koichi Takahashi
浩一 高橋
岳彦 高橋
Takehiko Takahashi
岳彦 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2018059304A priority Critical patent/JP6897613B2/ja
Publication of JP2019173050A publication Critical patent/JP2019173050A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6897613B2 publication Critical patent/JP6897613B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)
  • Furnace Charging Or Discharging (AREA)

Abstract

【課題】 溶銑の脱珪処理において、気体酸素などの吹き込み条件の変化に応じて、脱珪量及びSiO生成量の推定を適切に行い、脱珪スラグの組成のばらつきを低減する。
【解決手段】 溶銑搬送容器内の溶銑7に、浸漬ランス1の吐出ノズル5を介して気体酸素を吹き込むか、または、気体酸素及び精錬剤の粉体を吹き込んで溶銑を脱珪処理する際に、見掛けの脱珪反応速度定数Kを、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度F、浸漬ランスの吐出ノズルの浸漬深さH、気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Qのうちの1つ以上を変数として含む関数式として求め、求めた関数式を用いて見掛けの脱珪反応速度定数Kを算出し、算出した見掛けの脱珪反応速度定数Kを用いて脱珪処理後の溶銑中珪素濃度Xを算出し、算出した脱珪処理後の溶銑中珪素濃度Xと脱珪処理前の溶銑中珪素濃度Xとの差から脱珪量を算出し、算出した脱珪量に基づいてCaO系媒溶剤の使用量を決定する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、溶銑搬送容器に収容された溶銑に、浸漬ランスの吐出ノズルを介して気体酸素を吹き込むか、または、気体酸素及び精錬剤の粉体を吹き込み、溶銑中の珪素を酸化して除去する溶銑の脱珪処理方法に関する。
近年、鋼材の高級化に伴う燐含有量低下対策、或いは製鋼プロセスの合理化を目的として、溶銑の脱燐処理が、転炉または溶銑鍋若しくは混銑車(「トピードカー」ともいう)などにおいて広く行われている。また、この脱燐処理を効率的に行うために、脱燐処理の前に予め溶銑中の珪素を除去する脱珪処理も行われている。溶銑中の燐及び珪素は酸化反応によって除去されるので、溶銑の脱燐処理及び脱珪処理は、溶銑に気体酸素や酸化鉄などの酸素源を供給し、酸素源によって溶銑中の燐或いは珪素を酸化除去させている。その際に、生成するスラグの組成を調整するために、生石灰や転炉スラグなどのCaO含有物もCaO系媒溶剤として添加されている。尚、本明細書では、脱珪反応の酸素源として添加される酸化鉄含有物質及びスラグの組成調整用として添加されるCaO系媒溶剤を、精錬剤と定義する。
脱珪剤または脱燐剤として溶銑中に添加される酸素源として、酸化鉄を添加した場合には、珪素や燐と酸化鉄中の酸素とが反応する前に、必ず、酸化鉄が酸素と鉄とに分解する分解反応が起こる。この分解反応は吸熱反応であるために、溶銑の顕熱を奪うことになり、その結果、溶銑温度が低下する。一方で、脱珪処理及び脱燐処理を施した溶銑は、その後に転炉などの精錬炉にて脱炭処理を行い、転炉では溶銑温度が高ければ高いほど安価な鉄スクラップ(冷材)を使用することができ、鋼材主原料の安価化を図ることができる。したがって、溶銑処理での脱珪剤及び脱燐剤としては、酸化鉄の使用比率を下げ、気体酸素の使用比率を上げる試みが行なわれてきた。
溶銑の脱燐処理及び脱珪処理において、溶銑に気体酸素を供給する方法は、大きく分けて2種類に分類される。1つの方法は、溶銑とは非接触の上吹きランスなどから気体酸素を溶銑浴面に向けて吹き付ける方法(「上吹き送酸法」と呼ぶ)である。他の方法は、溶銑中に浸漬させたガス吹き込み用の浸漬ランスや反応容器の底部などに設けた羽口から、溶銑中に気体酸素を直接吹き込む方法(「吹き込み送酸法」と呼ぶ)である。
それぞれの方法には、それぞれの特徴があり、吹き込み送酸法の場合には、気体酸素の添加効率が高い、攪拌力が向上するなどの利点がある一方、浸漬ランスの浸漬部の熱負荷が大きく(例えば一方向のみの熱負荷を受ける羽口などと比べても消耗が激しい)、耐用回数が限られるなどの問題がある。これに対して、上吹き送酸法の場合には、上吹きランスへの熱負荷が小さく、長期間に亘って使用できるという利点はあるが、気体酸素の添加効率が低い、攪拌力が得られないなどの問題がある。
気体酸素を供給する際に、上吹き送酸法とするか、吹き込み送酸法とするかは、上記の特徴を考慮して決められるが、例えば、混銑車のような溶銑搬送容器に収容された溶銑に対して気体酸素を供給する場合には、処理容器の形状から上吹き送酸法では反応効率が悪く、吹き込み送酸法を採用せざるを得ないこともある。これは、混銑車の場合には、その容器形状から攪拌・混合されにくく、それに加えて溶銑の収容量に対して開口部が少なく、上吹き送酸法では所望する反応効率が得られないからである。
気体酸素の反応効率が低いと酸素原単位が高くなるだけでなく、処理時間が長くなることで溶銑の処理容器内での滞留時間が長くなり、溶銑温度も低下するので望ましくない。したがって、溶銑搬送容器内での吹き込み送酸法による気体酸素の添加法に関して、浸漬ランスの開発や添加条件についての種々の提案がなされている。
一方、混銑車などの溶銑搬送容器内で脱珪処理を行う場合には、溶銑搬送容器の耐火物の保護のために、発生したスラグ(脱珪処理で発生するスラグを「脱珪スラグ」という)の組成を制御することも重要である。溶銑搬送容器に使われる耐火物の主成分はAlであり、脱珪スラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO))が低すぎる場合には、耐火物の急激な損耗を招くことがある。また、脱珪スラグは、スラグの粘性が高いために、気体酸素の吹き込み中にフォーミングが発生しやすく、溶銑搬送容器外へのスラグ流出の危険性が高い。したがって、生石灰や転炉スラグなどをCaO系媒溶剤として投入し、脱珪スラグの塩基度を上昇させる必要がある。
脱珪処理における脱珪スラグのフォーミングの抑止方法について、特許文献1は脱珪スラグの塩基度の適性範囲を示している。具体的には、特許文献1は、スラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO))を0.8未満として溶銑中の珪素濃度を0.20質量%以上とする第1工程と、第1工程で生成したスラグを分離除去した後、溶銑に脱珪剤を添加して、脱珪処理後のスラグの塩基度を0.8以上2.0以下として溶銑中の珪素濃度を0.20質量%未満とする第2工程と、からなる脱珪処理方法を提案している。
しかし、過度にCaO含有物を投入することは、CaO系媒溶剤の原単位の上昇に繋がり、溶銑温度が低下するだけでなく、脱珪スラグ中に残存する未溶解のCaO(「フリーCaO」ともいう)が多くなり、脱珪スラグを土工用などに再利用する場合にスラグが膨張するリスクが高まり、脱珪スラグのエージング処理コストも上昇することから、望ましくない。したがって、脱珪スラグの塩基度を適正な範囲に保つことが重要である。
脱珪スラグの塩基度を適正な値に保つためには、脱珪処理にて生成するSiO量、即ち脱珪量を正確に把握する必要がある。溶銑中の珪素の酸素による酸化反応は、下記の(5)式で示される。
Si+O=SiO・・・(5)
(5)式の脱珪反応において、添加した酸素が十分に反応する時間があり、且つ溶銑中の攪拌が十分であって、溶銑中の珪素濃度の場所による濃度分布が常に発生しない場合には、脱珪効率は溶銑の珪素濃度及び溶銑の温度によって熱力学的に決定される。但し、実際には、溶銑は炭素を含有しており、(5)式で示す脱珪反応は、下記の(6)式で示す炭素の酸化反応との競合反応であるので、添加した酸素の全てが溶銑中の珪素との反応に使用されるわけではなく、溶銑の珪素濃度及び溶銑の温度だけでは、脱珪効率を精度良く求めることができない。
2C+O=2CO・・・(6)
炭素及び珪素の酸化反応の競合反応を熱力学的に考える場合は、(5)式及び(6)式から得られる下記の(7)式の平衡反応を考えればよい。
2C+SiO=Si+2CO・・・(7)
平衡に達する十分な時間及び攪拌力がある場合には、脱珪効率は上記の平衡反応を考慮することで、熱力学的に推定することが可能である。
しかしながら、実際の溶銑搬送容器での脱珪処理での脱珪効率は、気体酸素を使用した脱珪処理の場合、熱力学を用いて理論的に得られる脱珪効率とは異なり、また、気体酸素の吹き込み条件によっても大きく異なる場合がある。これは、溶銑の攪拌が気体酸素及び精錬剤の吹き込みによって生じる際に、溶銑中の珪素の脱珪反応サイトへの供給速度が、気体酸素などの吹き込み条件によって大きく異なるためと考えられる。
ここで、吹き込み条件とは、攪拌に寄与する因子であり、吹き込まれる気体酸素の流量(Nm/(min×t))、及び、前述した浸漬ランスの吐出ノズルの浸漬深さ(m)である。また、同じ浸漬ランスから精錬剤の粉体を気体酸素と同時に吹き込む場合には、精錬剤の粉体の吹込速度(kg/min)も吹き込み条件に該当する。
一方、鋼を製造する総処理コストを低減するうえで、溶銑搬送容器で行う脱珪処理では、一定時間内により早く、より多くの溶銑を処理できることが望ましい。したがって、処理時間を短縮するために、高い脱珪効率を常に得ることが重要である。
このためには、気体酸素の吹き込み条件としては、気体酸素の流量をより大きく、且つ、浸漬ランスの吐出ノズルの浸漬深さ(以下、単に「吐出ノズルの浸漬深さ」とも記す)をより深くすることが望ましいが、気体酸素の流量または吐出ノズルの浸漬深さをむやみに大きくした場合には、スプラッシュによる溶銑搬送容器外への溶銑の飛散が大きくなり、鉄の歩留まりの悪化や、大量に飛散した場合には周辺設備を溶損させるトラブルを引き起こす懸念がある。
更に、溶銑の飛散は前述した炭素との反応で発生するCOガスの発生速度にも依存し、一定の気体酸素流量及び吐出ノズルの浸漬深さで操業した場合でも、脱珪処理後半の脱珪効率が低下する際に、COガスの発生が増加するとともに、スプラッシュが増加する懸念がある。これを回避するためには、スプラッシュの状況を確認しながら、脱珪処理中に吹き込み条件をリアルタイムに変化させる必要もある。
また、混銑車などにおける脱珪処理では、生成したCOガスが大気によって燃焼し、生じた高温の燃焼ガスに曝されて、炉口近傍の耐火物が損傷を受ける問題もある。つまり、混銑車の耐火物の状態に応じて気体酸素などの吹き込み条件を制限せざるを得ない場合もある。
吹き込み条件を上記のような理由で変化させると、その変化に伴い、脱珪効率も変化するので、脱珪量の推定がより難しくなり、副産物としての脱珪スラグの組成制御も難しくなる。したがって、脱珪スラグの塩基度を適正な値に保つためには、吹き込み条件の変化を考慮した脱珪量の推定が不可欠である。
特開2000−73113号公報
特許文献1のように、脱珪スラグの塩基度の適正範囲を指定している先行技術は数多く存在するものの、ばらつきの大きい脱珪量の推定方法については、明記されておらず、スラグ塩基度を目標範囲内に狙っても、実際にはその範囲に収まっていることが少なく、結果として、脱珪スラグの低塩基度による耐火物の急激な損耗やCaO含有物の過剰投入となっていることが実情である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、溶銑搬送容器に収容された溶銑に、浸漬ランスの吐出ノズルを介して気体酸素を吹き込むか、または、気体酸素及び精錬剤の粉体を吹き込み、溶銑中の珪素を酸化して除去する溶銑の脱珪処理方法において、気体酸素などの吹き込み条件の変化に応じて、脱珪量の推定及びSiO生成量の推定を適切に行い、これによって脱珪スラグの組成のばらつきを低減することを可能とする、溶銑の脱珪処理方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]溶銑搬送容器に収容された溶銑に、浸漬ランスの吐出ノズルを介して気体酸素を吹き込むか、または、気体酸素及び精錬剤の粉体を吹き込み、溶銑中の珪素を酸化して除去する溶銑の脱珪処理方法であって、
予め、下記(1)式で定義される見掛けの脱珪反応速度定数K(1/min)を、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度F(kg/(min×t))、浸漬ランスの吐出ノズルの溶銑への浸漬深さH(m)及び気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Q(Nm/(min×t))のうちの1つ以上を変数として含む関数式として求め、
求めた前記関数式を用いて前記見掛けの脱珪反応速度定数Kを算出し、
算出した見掛けの脱珪反応速度定数Kを用いて、下記(2)式によって気体酸素の溶銑1トンあたりの総吹込量VO2(Nm/t)及び気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Q(Nm/(min×t))に対応する、脱珪処理後の溶銑中珪素濃度X(質量%)を算出し、
算出した脱珪処理後の溶銑中珪素濃度X(質量%)と脱珪処理前の溶銑中珪素濃度X(質量%)との差から脱珪量を算出し、
算出した脱珪量に対応する生成SiO量と、脱珪処理後の脱珪スラグの目標塩基度とを用いて、脱珪処理において用いるCaO系媒溶剤の使用量を決定することを特徴とする、溶銑の脱珪処理方法。
K=ln(X/X)×Q/VO2 ・・・(1)
=X×exp(−K×VO2/Q) ・・・(2)
ここで、Kは、見掛けの脱珪反応速度定数(1/min)、Xは、脱珪処理前の溶銑中珪素濃度(質量%)、Xは、脱珪処理後の溶銑中珪素濃度(質量%)、Qは、脱珪処理における気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度(Nm/(min×t))、VO2は、脱珪処理における気体酸素の溶銑1トンあたりの総吹込量(Nm/t)、ln(・・)は、自然対数関数、exp(・・)は、自然対数を底とする指数関数を表す。
[2]前記見掛けの脱珪反応速度定数Kを表す前記関数式を、気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Q、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度F及び前記浸漬ランスの吐出ノズルの浸漬深さHを用いて算出される溶銑の攪拌動力密度ε(W/t)の関数として求めることを特徴とする、上記[1]に記載の溶銑の脱珪処理方法。
[3]前記見掛けの脱珪反応速度定数Kが、下記(3)式で示される、前記攪拌動力密度εの関数であることを特徴とする、上記[2]に記載の溶銑の脱珪処理方法。
K=A×ε・・・(3)
ここで、Aは0.003〜0.012の定数、Bは0.15〜0.30の定数である。
[4]前記攪拌動力密度εを下記(4)式によって算出することを特徴とする、上記[2]または上記[3]に記載の溶銑の脱珪処理方法。
ε=6.2×Q×Tl×ln(1+0.0000967×ρl×H)
+0.00000375×ρg×Q3×Ml 2/{n2×d4×(1+0.0000967×ρl×H)2}
+0.00000375×F×Q2×Ml 2/{n2×d4×(1+0.0000967×ρl×H)2} ・・・(4)
ここで、Qは、脱珪処理における気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度(Nm/(min×t))、Tは、溶銑の温度(K)、ρは、溶銑の密度(kg/m)、Hは、浸漬ランスの吐出ノズルの浸漬深さ(m)、ρは、標準状態の気体酸素の密度(kg/m)、Mは、溶銑の質量(t)、nは、浸漬ランスの吐出ノズルの孔数(−)、dは、浸漬ランスの吐出ノズルの孔径(m)、Fは、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度(kg/(min×t))、ln(・・)は自然対数関数を表す。
本発明によれば、見掛けの脱珪反応速度定数Kを、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度F、浸漬ランスの吐出ノズルの溶銑への浸漬深さH及び気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Qのうちの1つ以上を変数として含む関数式として求めるので、気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Q、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度F、浸漬ランスの吐出ノズルの浸漬深さHの1種または2種以上を処理条件によって変化させた場合でも、脱珪量の推定が可能となり、これにより、脱珪処理において、脱珪スラグの塩基度調整用のCaO系媒溶剤の使用量を適正化でき、脱珪スラグの組成のバラつきを低減することが可能となる。
溶銑に浸漬させた浸漬ランスから気体酸素を吹き込んで混銑車に収容された溶銑を脱珪処理する状況を示す概略図である。 浸漬ランスの下端部の概略断面図である。 浸漬ランスの吐出ノズルからの吐出方向を示す概略平面図で、図3(A)は、2孔浸漬ランスを用いた場合を示し、図3(B)は、4孔浸漬ランスを用いた場合を示す。 攪拌動力密度εと見掛けの脱珪反応速度定数Kとの関係を示すグラフである。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明者らは、溶銑搬送容器に収容された溶銑に、浸漬ランスの吐出ノズルを介して気体酸素を吹き込むか、または、気体酸素及び精錬剤の粉体を吹き込み、溶銑中の珪素を酸化して除去する溶銑の脱珪処理において、処理条件が種々変更して、脱珪酸素効率が変化した場合においても、脱珪量及びSiO生成量を精度良く予測することにより、脱珪スラグの塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO))を精度良く目標値に調整することを可能とする脱珪処理方法の開発を目的として、反応容器として混銑車を対象とし、実機混銑車における溶銑の脱珪処理を種々の条件下で実施し、調査・検討を行った。
ここで、溶銑搬送容器とは混銑車や溶銑鍋であり、脱珪酸素効率とは、溶銑に吹き込んだ気体酸素と、溶銑に吹き込んだ精錬剤に含まれる酸化鉄中の酸素と、の合計の酸素量に対する、溶銑の脱珪量の実績から化学量論的に必要とされる酸素量の比率である。
混銑車などの溶銑搬送容器内で、酸素含有ガスを用いて脱珪処理する場合には、溶銑内に浸漬ランスを直接浸漬させる吹き込み送酸法によって、酸素含有ガスを溶銑中に供給することが望ましく、浸漬ランスとしては耐火物製の浸漬ランスを使用するのが望ましい。ここで、酸素含有ガスとは、気体酸素を含有するガスであり、気体酸素そのものや、気体酸素と不活性ガスとの混合ガス、空気、酸素富化空気などである。脱珪処理では、通常、酸素含有ガスとして気体酸素(工業用純酸素ガス)を使用しており、以下、酸素含有ガスとして気体酸素を使用した例で説明する。
図1に、溶銑に浸漬させた浸漬ランスから、酸素含有ガスとして気体酸素を吹き込んで混銑車に収容された溶銑を脱珪処理する概略図を示し、図2に、浸漬ランスの下端部の概略断面図を示す。
混銑車6に収容された溶銑7を脱珪処理するにあたり、浸漬ランス1を混銑車6の開口部12から略鉛直に溶銑7に浸漬させる。浸漬ランス1は、例えば浸漬ランス1の下端部側面に逆T字状に分岐した複数の吐出ノズル5を有する、内管2及び外管3からなる二重管構造の浸漬ランス1を使用する。
浸漬ランス1は、粉状精錬剤供給配管9、酸素含有ガス供給配管10、炭化水素系ガス供給配管11と連結しており、酸素含有ガス供給配管10から供給される気体酸素が、吐出ノズル5の内管2を介して溶銑7に吹き込まれ、炭化水素系ガス供給配管11から供給されるプロパンガスなどの炭化水素系ガスが、内管2と外管3との間隙から溶銑7に吹き込まれる。炭化水素系ガスは、分解吸熱を利用して、気体酸素を吹き込む内管2の先端を外周側から冷却して保護するための冷却用ガスであり、プロパンガス以外の他の炭化水素系ガスでも代用できる。
精錬剤の粉体を吹き込む場合は、不活性ガスを搬送用ガスとして粉状精錬剤供給配管9を介して精錬剤の粉体を搬送し、酸素含有ガス供給配管10から供給される気体酸素と浸漬ランス直上の合流部8で合流させ、気体酸素とともに吐出ノズル5(内管2)から吹き込む。使用する精錬剤としては、脱珪剤として機能する酸化鉄を含有する、鉄鉱石、ミルスケール、鉄鉱石の焼結鉱などの酸化鉄含有物質、及び、脱珪スラグの塩基度調整用のCaO系媒溶剤であり、CaO系媒溶剤としては、生石灰、石灰石、消石灰、ドロマイト、転炉スラグなどのCaO含有物が好適である。
浸漬ランス1の外周は耐火物被覆層4で被覆されており、耐火物被覆層4を構成する耐火物材料は、溶損やスポーリングに対して或る程度の耐用性を有する耐火物材料であれば、どのような組成であっても構わない。代表的な耐火物材料としては、SiOを10〜40質量%含有するAl−SiO系不定形耐火物、MgOを5〜30質量%含有するAl−MgO系不定形耐火物などを用いることができる。耐火物被覆層4の厚みは、ランス寿命を考慮すれば25mm以上程度が好ましい。また、内管2及び外管3は、ステンレス鋼鋼管や炭素鋼鋼管を用いることができる。
浸漬ランス1の下端近傍の側面に、内管2及び外管3からなる二重管構造の吐出ノズル5を2つ有する2孔浸漬ランスを用いる場合は、図3(A)に示すように、吐出ノズル5の吐出方向が混銑車6の長手方向とほぼ同一となるように、浸漬ランス1を浸漬させた。また、浸漬ランス1の下端近傍の側面に内管2及び外管3からなる二重管構造の吐出ノズル5を4つ有する4孔浸漬ランスを用いる場合は、図3(B)に示すように、吐出ノズル5の吐出方向を極力長手方向に近づけつつ、ランス寿命を短くしないようにするべく、吐出ノズル5同士の端間距離を確保するという技術思想のもと、X=60°、Y=120°の配置として浸漬ランス1を浸漬させた。
尚、図3(A)は、2孔浸漬ランスを用いた場合の吐出ノズル5からの吐出方向を上方から見た概略平面図、図3(B)は、4孔浸漬ランスを用いた場合の吐出ノズル5からの吐出方向を上方から見た概略平面図である。
いずれの場合においても、浸漬ランス1の吐出ノズル5の孔径は、供給する気体酸素の供給圧や気体酸素の目標流量を確保するために任意に決定してもよい。但し、気体酸素の流量に対して孔径が大きすぎると、吐出ノズル5から吐出した気体酸素の流速(m/s)が極端に低くなり、気体酸素が、吐出ノズル5の先端で吐出した直後に浮上しまうため、著しく気体酸素の反応効率が低下することが考えられる。
したがって、この対策として、吐出した気体酸素が吐出方向にジェット流を成して吐出する領域を形成するように、吐出ノズル5の孔径を設定することが望ましい。気体酸素の吐出方向は、溶銑鍋の場合にはどの方向でも構わないが、混銑車の場合には、吐出ノズル5から噴出した気体酸素や精錬剤が混銑車内の耐火物に当たって耐火物を溶損させることを防止するために、混銑車の長手方向に吐出させることが望ましい。
浸漬ランス1を溶銑内に浸漬させる際は、溶銑7が吐出ノズル5の内部に侵入しないようにするために、内管2、及び、内管2と外管3との間隙から、気体窒素などのパージガスを噴射しながら浸漬し、その後、溶銑内に浸漬ランス1を浸漬させたならば、浸漬ランス1の内管2から気体酸素を吹き込むとともに、内管2と外管3との間隙から炭化水素系ガスを吹き込むことで、浸漬ランス1の吐出ノズル5の部分を冷却して溶損を防止する。
脱珪処理前の溶銑の珪素濃度に応じて所定量の気体酸素を吹き込むとともに、発生したスラグ組成の調整のために、生石灰や転炉スラグなどのCaO含有物をCaO系媒溶剤として同時に添加する。添加するCaO系媒溶剤は、脱珪スラグとの滓化性を良くするために、粉体のものを使用することが望ましく、且つ、気体による吹き込み方法によって溶銑中に吹き込むことが望ましい。但し、CaO系媒溶剤を、混銑車6の開口部12から溶銑7に上置き添加してもよい。
CaO系媒溶剤を気体ともに吹き込む場合には、CaO系媒溶剤の粉体の粒度は、配管内の詰まり防止のために1mm以下のものを使用することが望ましい。また、CaO系媒溶剤は、気体酸素を吹き込んでいる浸漬ランス1から吹き込んでもよく、別の浸漬ランスから吹き込んでもよい。但し、気体酸素の吹き込みに用いる浸漬ランス1を介してCaO系媒溶剤の粉体を吹き込む方が、浸漬ランスの使用本数を減少させ、製造コストを削減できるので、1本の浸漬ランス1から同時に吹き込むことが望ましい。
溶銑搬送容器に収容された溶銑に、浸漬ランスの吐出ノズルを介して気体酸素を吹き込むか、または、気体酸素及び精錬剤の粉体を吹き込んで行う脱珪反応の反応効率は、脱珪処理前の溶銑の珪素濃度に依存することが知られている。したがって、脱珪反応速度式は一次以上の速度式であることが考えられる。溶銑中の珪素濃度をXとして脱珪反応を一次式で表すと、脱珪反応速度式は下記の(8)式となる。
−dX/dt=K×X・・・(8)
ここで、Kは見掛けの脱珪反応速度定数(1/min)である。
(8)式を積分すると、下記の(9)式が得られる。
ln(X/X)=K×t・・・(9)
ここで、Xは、脱珪処理前の溶銑中珪素濃度(質量%)、Xは、脱珪処理後の溶銑中珪素濃度(質量%)、tは、処理時間(min)である。
一方、処理時間tは、脱珪処理における気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Q(Nm/(min×t))と、脱珪処理における気体酸素の溶銑1トンあたりの総吹込量VO2(Nm/t)とを用いて、下記の(10)式で表される。
t=VO2/Q・・・(10)
(9)式及び(10)式から、下記の(11)式が得られる。
ln(X/X)=−K×VO2/Q・・・(11)
(11)式を書き換えると、見掛けの脱珪反応速度定数Kを定義する下記の(1)式が得られ、また、(11)式から下記の(2)式が導かれる。
K=ln(X/X)×Q/VO2・・・(1)
=X×exp(−K×VO2/Q)・・・(2)
ここで、ln(・・)は、自然対数関数、exp(・・)は、自然対数を底とする指数関数を表す。
(1)式及び(2)式から明らかなように、脱珪処理前の溶銑中珪素濃度Xと、脱珪処理後の溶銑中珪素濃度Xとの比は、見掛けの脱珪反応速度定数K、脱珪処理における気体酸素の溶銑1トンあたりの総吹込量VO2、脱珪処理における気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Qの3つの因子に依存することがわかる。但し、見掛けの脱珪反応速度定数Kは、溶銑中の物質移動の度合いを示す因子であり、溶銑中の攪拌力に依存することが予想される。
ここで、溶銑中に吹き込んだ気体酸素及び精錬剤の粉体は運動エネルギーを有しており、その運動エネルギーは、溶銑の攪拌力向上に寄与しており、脱珪反応にも影響すると考えられる。
流体中に吹き込んだ気体及び粉体による攪拌動力密度ε(W/t)については、これまでの研究において、下記の(12)式及び(4)式のように示されている。
(a)気体吹込のみの場合
ε=6.2×Q×Tl×ln(1+0.0000967×ρl×H)
+0.00000375×ρg×Q3×Ml 2/{n2×d4×(1+0.0000967×ρl×H)2}・・・(12)
(b)気体と粉体との同時吹込の場合
ε=6.2×Q×Tl×ln(1+0.0000967×ρl×H)
+0.00000375×ρg×Q3×Ml 2/{n2×d4×(1+0.0000967×ρl×H)2}
+0.00000375×F×Q2×Ml 2/{n2×d4×(1+0.0000967×ρl×H)2}・・・(4)
ここで、脱珪処理では気体酸素を吹き込むか、または、気体酸素及び精錬剤の粉体を吹き込んでいるので、(12)式及び(4)式を脱珪処理に適用すると、Qは、脱珪処理における気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度(Nm/(min×t))、Tは、溶銑の温度(K)、ρは、溶銑の密度(kg/m)、Hは、浸漬ランスの吐出ノズルの浸漬深さ(m)、ρは、標準状態の気体酸素の密度(kg/m)、Mは、溶銑の質量(t)、nは、浸漬ランスの吐出ノズルの孔数(−)、dは、浸漬ランスの吐出ノズルの孔径(m)、Fは、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度(kg/(min×t))、ln(・・)は自然対数関数を表す。尚、以下の計算では、T=1623K、ρ=6800kg/mの値を用いた。
(12)式に示すように、気体吹込のみの場合の攪拌動力密度εは、気体酸素の吹込速度Q、浸漬ランスの吐出ノズルの浸漬深さH、吐出ノズルの孔径d及び吐出ノズルの孔数nに依存して変化する。また、(4)式に示すように、気体と粉体との同時吹込の場合の攪拌動力密度εは、気体吹込のみの場合に比べて、右辺第3項に示される粉体の運動エネルギーが付与される分、攪拌動力が大きくなる。また更に、粉体の運動エネルギーは、気体酸素の吹込速度Qだけでなく、精錬剤の粉体の吹込速度F、浸漬ランスの吐出ノズルの孔径d及び吐出ノズルの孔数nによっても変化する。尚、(4)式において、粉体が吹き込まれない場合は、精錬剤の粉体の吹込速度Fはゼロとなり、(4)式は(12)式と同一になるので、一般的に、攪拌動力密度εを(4)式で表示してもよい。
ここで、吐出ノズルの孔径や吐出ノズルの浸漬深さが異なる複数の吐出ノズルを有する浸漬ランスを用いる場合には、個々の吐出ノズルに、その断面積に比例して気体酸素及び精錬剤の粉体が分配されると仮定して、個々の吐出ノズル毎に(4)式を用いて求めた攪拌動力密度を合計することで、全体の攪拌動力密度εを算出することができる。
本発明者らは、溶銑搬送容器内の溶銑中に、珪素の酸化剤としての気体酸素や精錬剤の粉体を吹き込んだ際に発生する攪拌動力は、脱珪反応中の溶銑中珪素の物質移動に影響すると考え、攪拌動力密度εと見掛けの脱珪反応速度定数Kとの間の関係を調査した。その結果、攪拌動力密度εと見掛けの脱珪反応速度定数Kとの間で、下記の(3)式のような関係があることを見出した。
K=A×ε・・・(3)
ここで、A及びBは定数である。
また、見掛けの脱珪反応速度定数Kは、溶銑の攪拌動力密度εだけに影響されるのでなく、脱珪反応サイトの数や大きさ、配置などが大きく異なる場合には、これらの条件によっても影響を受けることが考えられる。例えば、吐出ノズルの孔数nによっても変化する可能性がある。
そこで、更に、見掛けの脱珪反応速度定数Kは下記の(13)式のように表わされると仮定し、吐出ノズルの孔数n、吐出ノズルの孔径d、吐出ノズルの浸漬深さH及び精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度Fの条件を種々変更し、A´、B、Cを求める試験を実施した。
K=A´×ε×n・・・(13)
ここで、A´、B及びCは定数である。
試験では、浸漬ランスの吐出ノズルは、図3(A)に示した2孔浸漬ランスまたは図3(B)に示した4孔浸漬ランスとし、内管の内径は16〜25mm、精錬剤の粉体の吹込速度Fは0〜0.25kg/(min×t)の範囲で変更した。
図4に、これらの試験における(4)式から得られた溶銑の攪拌動力密度ε(W/t)と、見掛けの脱珪反応速度定数K(1/min)との関係を示す。また、試験結果に対して重回帰分析を行って求めたA´、B、Cの各定数を用いた(13)式の計算曲線を併せて示す。図4に示すように、各吐出ノズル孔数に対応する(13)式の各計算曲線は各試験結果の実績値の傾向を良く表しているといえる。尚、図4では、2孔浸漬ノズルの場合及び4孔浸漬ノズルの場合を区別して、(13)式の計算曲線を表示している。
図4に示した試験結果から、(13)式の各定数を求めた結果は下記(14)式のように表わされる。また、2孔浸漬ランスを用いた場合及び4孔浸漬ランスを用いた場合の(3)式に対応する見掛けの脱珪反応速度定数Kと攪拌動力密度εとの関係は、それぞれ下記(15)式、(16)式のように表わされる。
K=0.00595×ε0.211×n0.125・・・(14)
K=0.00648×ε0.211 (n=2)・・・(15)
K=0.00707×ε0.211 (n=4)・・・(16)
図4のデータの誤差を考慮すると、(3)式におけるεの指数の定数Bは0.15〜0.30程度の値と考えられる。また、これに対応して、(3)式における定数Aは0.003〜0.012程度の値であれば、図4に示した両者の関係を概ね良好に表すことができる。
これは、脱珪反応を一次反応の反応速度式で表した場合、攪拌動力密度εに依存して、(3)式のように見掛けの脱珪反応速度定数Kが変化することを意味している。したがって、操業条件に応じて、(4)式を用いて求めた攪拌動力密度εから、(3)式或いは(13)式を用いて見掛けの脱珪反応速度定数Kを推定することが可能である。また、(4)式の変数のうち精錬状況に応じて変更する可能性がある主要な操業条件は、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度F、浸漬ランスの吐出ノズルの溶銑への浸漬深さH及び気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Qの3つであり、操業の実態に応じてこれらのうちの1つ以上を変数として含む関数式によって見掛けの脱珪反応速度定数Kを推定することも有効である。
例えば、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度F(以下、単に「吹込速度F」とも記す)のみを変更し、他の条件は一定として操業を行う場合には、(4)式の右辺は実質的に吹込速度Fのみを変数とする一次式となるので、これを(3)式または(13)式の攪拌動力密度εに代入すると、見掛けの脱珪反応速度定数Kもまた吹込速度Fのみの関数となることがわかる。
つまり、見掛けの脱珪反応速度定数Kは、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度Fの一次式を、更に、べき乗した関数式で表わされるが、実用的には、脱珪反応速度の実績に基づいて、見掛けの脱珪反応速度定数Kを、吹込速度Fの一次または高次の関数や指数関数的に減衰する項を含む関数などを単独で用いるか、または、組み合せた他の関数で近似することもできる。
また、同様に、気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Qや浸漬ランスの吐出ノズルの溶銑への浸漬深さHを変数として含む場合にも、これらの変数の一次または高次の関数や指数関数的に減衰する項を含む関数などを単独で用いるか、または、組み合せた他の関数で近似することができ、この関数で用いる各定数は、脱珪反応速度の実績に基づいて重回帰分析などによって求めることができる。
見掛けの脱珪反応速度定数Kを、上記のようにして推定することにより、(2)式を用いて、脱珪処理前の珪素濃度X、気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Q及び気体酸素の溶銑1トンあたりの総吹込量VO2から、脱珪処理後の溶銑中珪素濃度Xを精度良く推定できるようになる。したがって、脱珪処理前の溶銑中珪素濃度Xと、推定される脱珪処理後の溶銑中珪素濃度Xとの差から、脱珪処理におけるSiOの生成量を精度良く推定できるので、目標とするスラグ塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO))が得られるように、脱珪処理におけるCaO原単位を決定し、CaO含有物をCaO系媒溶剤として添加することで、脱珪スラグの塩基度をより正確に制御することが可能となる。
また、脱珪処理中に操業条件を変更することで、見掛けの脱珪反応速度定数Kが変化する場合には、その変更時点における溶銑の珪素濃度Xを、上記した脱珪処理後の溶銑中珪素濃度Xを推定する場合と同様にして推定するとともに、新たに変更時点における溶銑の珪素濃度Xを起点として、変更後の操業条件に基づいて算出した見掛けの脱珪反応速度定数Kを用いて、その後の珪素濃度を計算する。これにより、脱珪処理後の溶銑中珪素濃度Xを精度良く推定できる。
つまり、操業条件の変更時点において脱珪処理におけるSiO生成量を推定し直してCaO原単位を再計算し、その後のCaO系媒溶剤の添加量を調整することで、脱珪スラグの塩基度を正確に制御することができる。
上記説明のように、本発明に係る溶銑の脱珪処理方法は、溶銑搬送容器に収容された溶銑に、浸漬ランスの吐出ノズルを介して気体酸素を吹き込むか、または、気体酸素及び精錬剤の粉体を吹き込み、溶銑中の珪素を酸化して除去する際に、予め、上記(1)式で定義される見掛けの脱珪反応速度定数Kを、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度F、浸漬ランスの吐出ノズルの溶銑への浸漬深さH及び気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Qのうちの1つ以上を変数として含む関数式として求め、求めた関数式を用いて見掛けの脱珪反応速度定数Kを算出し、算出した見掛けの脱珪反応速度定数Kを用いて、上記(2)式によって気体酸素の溶銑1トンあたりの総吹込量VO2及び気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Qに対応する、脱珪処理後の溶銑中珪素濃度Xを算出し、算出した脱珪処理後の溶銑中珪素濃度Xと脱珪処理前の溶銑中珪素濃度Xとの差から脱珪量を算出し、算出した脱珪量に対応する生成SiO量と、脱珪処理後の脱珪スラグの目標塩基度とを用いて、脱珪処理において用いるCaO系媒溶剤の使用量を決定することを主要な構成とする。
ここで、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度F、浸漬ランスの吐出ノズルの溶銑への浸漬深さH、気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Q、気体酸素の溶銑1トンあたりの総吹込量VO2は、当該脱珪処理で予定する値または実績値を用い、脱珪処理前の溶銑中珪素濃度Xは、溶銑の分析値に基づく実績値を用いる。
以上説明したように、本発明によれば、気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Q、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度F、浸漬ランスの吐出ノズルの浸漬深さHの1種または2種以上を処理条件によって変化させた場合でも、脱珪量の推定が可能となり、これにより脱珪処理におけるCaO系媒溶剤の使用量を適正化でき、脱珪スラグの組成のバラつきを低減することが可能となる。
予め鉄スクラップを装入した混銑車で、高炉から出銑された溶銑を受銑し、混銑車に収容された300トンの溶銑に、吐出ノズルの孔径が0.025mである逆T字型の2重管構造の2孔浸漬ランスを、図3(A)に示すように、吐出ノズルの方向が混銑車の長手方向と同じ方向となるように浸漬させ、吐出ノズルの浸漬深さを0.3〜0.5mとして25〜35Nm/min(0.083〜0.117Nm/(min×t))の気体酸素を吹き込み、脱珪処理試験を行なった。
脱珪処理前の溶銑の珪素濃度は0.25〜0.50質量%、溶銑温度は約1350℃であり、気体酸素の原単位として2.5Nm/tを上限として、溶銑中珪素濃度を0.20質量%以下まで低下させることを目標に脱珪処理を実施した。
脱珪処理後の脱珪スラグの目標塩基度を1.0〜1.3の範囲とし、混銑車の耐火物の状態に応じて、損傷の程度が大きい場合ほどスラグ塩基度を高くするように調整した。脱珪処理における精錬剤としては、脱珪スラグの塩基度調整用のCaO系媒溶剤を使用し、CaO系媒溶剤としては生石灰を用いた。生石灰は、粒径1mm以下の粉状の生石灰を約40kg/minの吹込速度で気体酸素とともに浸漬ランスから吹き込む方法と、小塊状の生石灰を混銑車の開口部から断続的に投入する方法とを単独で用いるかまたは併用して添加した。
その際、比較例では、脱珪酸素効率(吹き込んだ気体酸素のうち脱珪反応に消費された割合)を45%と仮定して見積もったSiO生成量に、目標スラグ塩基度を乗じて生石灰の添加量を決定した。
本発明例では、操業条件に応じて(4)式によって攪拌動力密度εを求め、求めた攪拌動力密度εから、予め図4の試験結果から求めた(14)式または(15)式を用いて見掛けの脱珪反応速度定数Kを算出した。算出した見掛けの脱珪反応速度定数Kを用いて、(2)式によって脱珪処理後の溶銑中珪素濃度Xを求め、求めた脱珪処理後の溶銑中珪素濃度Xと脱珪処理前の溶銑中珪素濃度Xとの差から脱珪量を求め、求められる脱珪量に対応するSiO生成量に目標スラグ塩基度を乗じて、生石灰の添加量を決定した。
表1に、各5チャージずつ実施した比較例及び本発明例における結果を、主な処理条件とともに示す。
表1中の「Si濃度」は溶銑中の珪素濃度を示し、「終点推定Si濃度」は、上記したSiO生成量の見積りと同様に、比較例では脱珪酸素効率を45%と仮定して算出した値であり、本発明例では操業条件に応じて算出した見掛けの脱珪反応速度定数Kを用いて(2)式から算出した値である。
また、脱珪処理後の脱珪スラグの組成を分析し、スラグ塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO))の実績値を求め、スラグ塩基度の実測値と目標値との差が0.10未満の場合を的中(○)、目標値との差が0.10以上の場合を外れ(×)と判定した。
従来の、脱珪酸素効率を一定と仮定して、SiO生成量を見積もった比較例では、実績のスラグ塩基度にばらつきが大きく、5チャージのうちの3チャージが目標範囲外であった。これに対して、本発明例では、脱珪量の推定精度が向上したことから、5チャージの全てが目標範囲内のスラグ塩基度であった。
1 浸漬ランス
2 内管
3 外管
4 耐火物被覆層
5 吐出ノズル
6 混銑車
7 溶銑
8 合流部
9 粉状精錬剤供給配管
10 酸素含有ガス供給配管
11 炭化水素系ガス供給配管
12 開口部

Claims (4)

  1. 溶銑搬送容器に収容された溶銑に、浸漬ランスの吐出ノズルを介して気体酸素を吹き込むか、または、気体酸素及び精錬剤の粉体を吹き込み、溶銑中の珪素を酸化して除去する溶銑の脱珪処理方法であって、
    予め、下記(1)式で定義される見掛けの脱珪反応速度定数K(1/min)を、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度F(kg/(min×t))、浸漬ランスの吐出ノズルの溶銑への浸漬深さH(m)及び気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Q(Nm/(min×t))のうちの1つ以上を変数として含む関数式として求め、
    求めた前記関数式を用いて前記見掛けの脱珪反応速度定数Kを算出し、
    算出した見掛けの脱珪反応速度定数Kを用いて、下記(2)式によって気体酸素の溶銑1トンあたりの総吹込量VO2(Nm/t)及び気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Q(Nm/(min×t))に対応する、脱珪処理後の溶銑中珪素濃度X(質量%)を算出し、
    算出した脱珪処理後の溶銑中珪素濃度X(質量%)と脱珪処理前の溶銑中珪素濃度X(質量%)との差から脱珪量を算出し、
    算出した脱珪量に対応する生成SiO量と、脱珪処理後の脱珪スラグの目標塩基度とを用いて、脱珪処理において用いるCaO系媒溶剤の使用量を決定することを特徴とする、溶銑の脱珪処理方法。
    K=ln(X/X)×Q/VO2 ・・・(1)
    =X×exp(−K×VO2/Q) ・・・(2)
    ここで、Kは、見掛けの脱珪反応速度定数(1/min)、Xは、脱珪処理前の溶銑中珪素濃度(質量%)、Xは、脱珪処理後の溶銑中珪素濃度(質量%)、Qは、脱珪処理における気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度(Nm/(min×t))、VO2は、脱珪処理における気体酸素の溶銑1トンあたりの総吹込量(Nm/t)、ln(・・)は、自然対数関数、exp(・・)は、自然対数を底とする指数関数を表す。
  2. 前記見掛けの脱珪反応速度定数Kを表す前記関数式を、気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度Q、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度F及び前記浸漬ランスの吐出ノズルの浸漬深さHを用いて算出される溶銑の攪拌動力密度ε(W/t)の関数として求めることを特徴とする、請求項1に記載の溶銑の脱珪処理方法。
  3. 前記見掛けの脱珪反応速度定数Kが、下記(3)式で示される、前記攪拌動力密度εの関数であることを特徴とする、請求項2に記載の溶銑の脱珪処理方法。
    K=A×ε ・・・(3)
    ここで、Aは0.003〜0.012の定数、Bは0.15〜0.30の定数である。
  4. 前記攪拌動力密度εを下記(4)式によって算出することを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の溶銑の脱珪処理方法。
    ε=6.2×Q×Tl×ln(1+0.0000967×ρl×H)
    +0.00000375×ρg×Q3×Ml 2/{n2×d4×(1+0.0000967×ρl×H)2}
    +0.00000375×F×Q2×Ml 2/{n2×d4×(1+0.0000967×ρl×H)2} ・・・(4)
    ここで、Qは、脱珪処理における気体酸素の溶銑1トンあたりの吹込速度(Nm/(min×t))、Tは、溶銑の温度(K)、ρは、溶銑の密度(kg/m)、Hは、浸漬ランスの吐出ノズルの浸漬深さ(m)、ρは、標準状態の気体酸素の密度(kg/m)、Mは、溶銑の質量(t)、nは、浸漬ランスの吐出ノズルの孔数(−)、dは、浸漬ランスの吐出ノズルの孔径(m)、Fは、精錬剤の粉体の溶銑1トンあたりの吹込速度(kg/(min×t))、ln(・・)は自然対数関数を表す。
JP2018059304A 2018-03-27 2018-03-27 溶銑の脱珪処理方法 Active JP6897613B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018059304A JP6897613B2 (ja) 2018-03-27 2018-03-27 溶銑の脱珪処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018059304A JP6897613B2 (ja) 2018-03-27 2018-03-27 溶銑の脱珪処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019173050A true JP2019173050A (ja) 2019-10-10
JP6897613B2 JP6897613B2 (ja) 2021-06-30

Family

ID=68169441

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018059304A Active JP6897613B2 (ja) 2018-03-27 2018-03-27 溶銑の脱珪処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6897613B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JP6897613B2 (ja) 2021-06-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4735169B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP6011728B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP4715384B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法及び脱燐処理用上吹きランス
JP5867520B2 (ja) 溶銑の予備処理方法
JP5928094B2 (ja) 溶融鉄の精錬方法
JP6897613B2 (ja) 溶銑の脱珪処理方法
JP2007254889A (ja) 精錬用酸素ガス吹き込みランス及び溶銑の脱珪処理方法
JP6038012B2 (ja) 脱りん効率及び鉄歩留りに優れた溶銑の脱りん方法
JP2020125541A (ja) 転炉精錬方法
JP2018035376A (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP5915568B2 (ja) 転炉型精錬炉における溶銑の精錬方法
JP7052585B2 (ja) 溶鋼の脱燐処理方法
JP2009299126A (ja) 溶銑の脱硫方法
JP4419594B2 (ja) 溶銑の精錬方法
JP3333339B2 (ja) 脱炭滓をリサイクルする転炉製鋼法
JP6760237B2 (ja) 溶銑の脱珪処理方法
JP7420322B1 (ja) 溶鋼の脱窒方法
JP4025713B2 (ja) 溶銑の脱燐精錬方法
JP6954253B2 (ja) 溶銑予備処理方法
JP2010095785A (ja) 溶銑の脱燐方法
JP3668172B2 (ja) 溶銑の精錬方法
JP3733013B2 (ja) 溶銑脱りん方法
JP3825733B2 (ja) 溶銑の精錬方法
JP2004115910A (ja) 溶銑の精錬方法
JP2005146335A (ja) 溶銑の脱りん方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20180502

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20180509

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20190327

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191025

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200828

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20201013

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201211

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210511

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210524

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6897613

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250