JP2019149356A - 電極材料、電極材料の製造方法、電極、及びリチウムイオン電池 - Google Patents
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Abstract
Description
リチウムイオン電池は、従来の鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池などの二次電池に比べて、軽量かつ小型で高エネルギーを有しており、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータなどの携帯用電子機器の電源として用いられているが、近年、電気自動車、ハイブリッド自動車、電動工具などの高出力電源としても検討されている。これらの高出力電源として用いられる電池の電極活物質には、高速の充放電特性が求められている。また、発電負荷の平滑化や、定置用電源、バックアップ電源などの大型電池への応用も検討されており、長期の安全性、信頼性と共に資源量の問題が無いことも重要視されている。
しかしながら、多量の導電性物質を用いた複合化は電極密度の低下を招くために、電池の密度低下、即ち単位容積当たりの容量低下を引き起こしてしまう。この問題を解決する方法として、電子導電性物質である炭素前駆体として、有機物溶液を用いた炭素被覆法が見出された。有機物溶液と電極活物質粒子を混合後、乾燥し、非酸化性雰囲気下で熱処理することで、有機物を炭化させる本手法は、必要最低限の電子導電性物質を、電極活物質粒子表面に、極めて効率良く被覆させることが可能であり、電極密度を大きく低下させることなく、導電性の向上を図ることができる。
ところが、炭素源である有機物の炭化温度は一般に高温であるため、これらの電極材料の製造の際に、活物質粒子同士が接触し、高温炭化時に一部が焼結、粒子成長してしまい、微細な粒子が得られない等の問題があった。特に、より高結晶性の(高導電性の)炭素被覆を得るためには炭化温度が高い方が好ましいのに対し、活物質粒子同士の焼結、粒子成長を抑制するためには高温に暴露させないことが重要であり、両者はトレードオフの関係であった。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
[1]一般式LiFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwPO4(但し、AはCo、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種、0≦w≦0.02、0.05≦x≦0.35、0.01≦y≦0.10、0.0001≦z≦0.001)で表され、結晶構造が斜方晶であり、空間群がPnmaである電極活物質の一次粒子及び該一次粒子の集合体である二次粒子と、前記電極活物質の一次粒子及び該一次粒子の集合体である二次粒子を被覆する炭素質被膜とを有する炭素質被覆電極活物質を含み、前記炭素質被覆電極活物質の一次粒子の平均粒子径が30nm以上200nm以下、X線回折測定における(020)面の半値幅から求めた結晶子径が30nm以上200nm以下であり、前記炭素質被覆電極活物質の二次粒子の平均粒子径が0.5μm以上60μm以下であり、前記炭素質被覆電極活物質のBET法により求めた比表面積が7m2/g以上30m2/g以下、炭素含有量が0.5質量%以上3.5質量%以下である電極材料。
[2]前記一般式LiFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwPO4の格子体積V1と、前記LiFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwPO4から化学的にFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwを酸化しLiを脱離させたFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwPO4の格子体積V2の変化率(V1−V2)/V1が0.06以上0.09以下である上記[1]に記載の電極材料。
[3]ラマン分光測定により得られたラマンスペクトルのDバンド及びGバンドのピーク強度比(ID/IG)が1.10以上1.55以下であり、
DBP吸油量及びNMP吸油量の比(DBP/NMP)が1.3以下である上記[1]又は[2]に記載の電極材料。
[4]前記炭素質被覆電極活物質を50MPaの圧力で成形した圧粉体の抵抗率が1MΩ・cm以下である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の電極材料。
[5]炭素源となる有機物(A)と、高吸水性高分子(B)と、電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)とを含む混合物スラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥、造粒する第一工程と、前記第一工程で得られた造粒物を加湿して、固形物を得る第二工程と、前記第二工程で得られた固形物を非酸化性雰囲気下、600℃以上1000℃以下で熱処理する第三工程とを有する上記[1]〜[4]のいずれかに記載の電極材料の製造方法。
[6]前記高吸水性高分子(B)は自重の10倍以上の水を吸収する高分子である上記[5]に記載の電極材料の製造方法。
[7]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の電極材料を用いてなる電極。
[8]上記[7]に記載の電極からなる正極を備えたリチウムイオン電池。
本実施形態の電極材料は、一般式LiFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwPO4(但し、AはCo、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種、0≦w≦0.02、0.05≦x≦0.35、0.01≦y≦0.10、0.0001≦z≦0.001)で表され、結晶構造が斜方晶であり、空間群がPnmaである電極活物質の一次粒子及び該一次粒子の集合体である二次粒子と、前記電極活物質の一次粒子及び該一次粒子の集合体である二次粒子を被覆する炭素質被膜とを有する炭素質被覆電極活物質を含み、前記炭素質被覆電極活物質の一次粒子の平均粒子径が30nm以上200nm以下、X線回折測定における(020)面の半値幅から求めた結晶子径が30nm以上200nm以下であり、前記炭素質被覆電極活物質の二次粒子の平均粒子径が0.5μm以上60μm以下であり、前記炭素質被覆電極活物質のBET法により求めた比表面積が7m2/g以上30m2/g以下、炭素含有量が0.5質量%以上3.5質量%以下であることを特徴とする。
ここで、Aについては、Co、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種である。
また、xは0.05以上0.35以下であり、好ましくは0.05以上0.25以下である。yは0.01以上0.10以下であり、好ましくは0.01以上0.05以下である。zは0.0001以上0.001以下である。wは0以上0.02以下である。
例えば、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、A源およびP源を、水を主成分とする溶媒と混合して得られた原料スラリーαを、150℃以上250℃以下の範囲の温度に加熱することで、加圧下にて、LiFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwPO4粒子を合成することができる。
これらLi源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源は、均一に混合する点を考慮すると、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源をそれぞれ、一旦、水溶液の状態とした後、混合することが好ましい。この原料スラリーαにおけるLi源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源のモル濃度は、高純度であり、結晶性が高くかつ非常に微細なLiFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwPO4粒子を得る必要があることから、0.8mol/L以上3.5mol/L以下であることが好ましい。
なお、リン酸リチウム(Li3PO4)は、Li源およびP源としても用いることができる。
また、Ga源としては、例えば、塩化物、硫酸化物、硝酸化物、酢酸化物、水酸化物等のガリウム化合物が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
酸化剤としては、例えば、テトラフルオロホウ酸ニトロシル(NOBF4)が好適に用いられる。
酸化剤の添加量は、脱離するLi量に対して1.1倍等量とする。
Li脱離処理後に、ろ過による固液分離を行い、アセトンで洗浄した後、真空乾燥機内で25℃以上かつ70℃以下の範囲の温度にて、1時間以上かつ48時間以下乾燥させる。
以上の処理により、LiFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwPO4から化学的にLiが脱離し、FexMn1−w−x−y−zMgyCazAwPO4を得ることができる。
なお、上記結晶子径は、X線回折装置(例えば、RINT2000、RIGAKU製)により測定し、得られる粉末X線回折図形の(020)面の回折ピークの半値幅、及び回折角(2θ)を用い、シェラーの式により算出することができる。
上記一次粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)観察により測定した200個以上の粒子の粒子径を個数平均することで求めることができる。
ここで、累積粒度分布とは、体積基準の累積粒度分布のことである。上記炭素質被覆電極活物質の一次粒子の累積粒度分布は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置等を用いて測定することができる。
なお、上記比表面積は、BET法により、比表面積計(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名:BELSORP−mini)を用いて測定することができる。
なお、上記炭素含有量は、炭素分析計(例えば、株式会社堀場製作所製、炭素硫黄分析装置EMIA−810W)を用いて測定することができる。
また、炭素質被膜の厚みが上記範囲内であると、電極材料を最密充填しやすくなるため、単位体積あたりの電極材料の充填量が多くなる。その結果、電極密度を高くすることができ、高容量のリチウムイオン電池が得られる。
なお、上記炭素質被膜の被覆率は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)、エネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive X−ray microanalyzer、EDX)等を用いて測定することができる。
炭素質被膜の密度が0.3g/cm3以上であれば、炭素質被膜が充分な電子伝導性を示す。一方、炭素質被膜の密度が1.5g/cm3以下であれば、炭素質被膜における層状構造からなる黒鉛の微結晶の含有量が少ないため、Liイオンが炭素質被膜中を拡散する際に黒鉛の微結晶による立体障害が生じない。これにより、電荷移動抵抗が高くなることがない。その結果、リチウムイオン電池の内部抵抗が上昇することがなく、リチウムイオン電池の高速充放電レートにおける電圧低下が生じない。
Dバンド及びGバンドのピーク強度比(ID/IG)が1.10以上であると、電極材料のイオン伝導性が向上し、リチウムイオン電池の入力特性が良好となる。また、Dバンド及びGバンドのピーク強度比(ID/IG)が1.55以下であると、電極材料の電子伝導性を十分に高めることができ、リチウムイオン電池の入力特性が良好となる。
なお、Gバンドは、ラマンスペクトルの1590cm−1付近に現れるピークであり、炭素質被膜の黒鉛構造に帰属されるピークである。一方、Dバンドは、ラマンスペクトルの1350cm−1付近に現れるピークであり、炭素質被膜の欠陥に起因するピークである。
DBP吸油量及びNMP吸油量の比(DBP/NMP)が1.3以下であると、電極材料のイオン伝導性が向上し、リチウムイオン電池の入力特性が良好となる。
なお、NMP吸油量は、あまに油の代わりにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた点を除いて、JIS K 5101−13−1「精製あまに油法」に準拠して電極材料を測定した値である。また、DBP吸油量は、あまに油の代わりにフタル酸ジブチル(DBP)を用いた点を除いて、JIS K 5101−13−1「精製あまに油法」に準拠して電極材料を測定した値である。
なお、上記圧粉体の抵抗率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の電極材料の製造方法は、炭素源となる有機物(A)と、高吸水性高分子(B)と、電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)とを含む混合物スラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥、造粒する第一工程と、前記第一工程で得られた造粒物を加湿して、固形物を得る第二工程と、前記第二工程で得られた固形物を非酸化性雰囲気下、600℃以上1000℃以下で熱処理する第三工程とを有することを特徴とする。
本工程は、炭素源となる有機物(A)と、高吸水性高分子(B)と、電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)とを含む混合物スラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥、造粒する工程である。
有機物(A)、電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)としては、それぞれ上記[電極材料]の項で説明したものを用いることができる。
また、本明細書において高吸水性高分子(B)とは、35℃、相対湿度100%で48時間放置した際に、少なくとも自重の数倍から数十倍の水を吸水して膨潤する性質を有する高分子材料のことを意味する。
本実施形態では、電極活物質の粒子成長、及び焼成を抑制する観点から、上記高吸水性高分子(B)は、自重の10倍以上の水を吸収する高分子であることが好ましく、自重の100倍以上の水を吸収する高分子であることがより好ましい。
スラリー濃度を上記範囲内とすることで、炭素質被覆電極活物質の二次粒子の平均粒子径を前述の範囲内とすることができる。
本工程は、第一工程で得られた造粒物(混合物)を加湿して、固形物を得る工程である。
第一工程で得られた造粒物を加湿すると、該造粒物中の高吸水性高分子(B)が膨潤するため、電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)の粒子間隙が拡大し、該電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)の粒子間で物質移動が抑制される。これにより、後述する熱処理の際に、高温で加熱しても該粒子の成長、及び焼結が起こりにくくなり、電極活物質の結晶子径、及び炭素質被覆電極活物質の一次粒子の平均粒子径をそれぞれ前述の範囲内とすることができる。
本工程は、第二工程で得られた固形物を非酸化性雰囲気下、600℃以上1000℃以下で熱処理する工程である。
非酸化性雰囲気としては、窒素(N2)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気が好ましく、より酸化を抑えたい場合には水素(H2)等の還元性ガスを数体積%程度含む還元性雰囲気が好ましい。また、熱処理時に非酸化性雰囲気中に蒸発した有機分を除去する目的で、酸素(O2)等の支燃性または可燃性ガスを不活性雰囲気中に導入してもよい。
熱処理温度が600℃未満では、有機物の炭化が不十分となり、電子伝導性を高めることができないおそれがあり、1000℃超過では、活物質の分解が生じたり、粒子成長を抑制できないおそれがある。
また、昇温速度は、好ましくは10℃/分以上、より好ましくは20℃/分以上で行う。10℃/分以上とすることで、第二工程で膨潤した高吸水性高分子の乾燥収縮が抑制され、電極活物質の粒子成長、及び焼結を起こしにくくすることができる。
本実施形態の電極は、上述の電極材料を用いてなる。
本実施形態の電極を作製するには、上述の電極材料と、バインダー樹脂からなる結着剤と、溶媒とを混合して、電極形成用塗料又は電極形成用ペーストを調製する。この際、必要に応じてカーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛等の導電助剤を添加してもよい。
結着剤、すなわちバインダー樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、フッ素ゴム等が好適に用いられる。
電極材料とバインダー樹脂との配合比は、特に限定されないが、例えば、電極材料100質量部に対してバインダー樹脂を1質量部〜30質量部、好ましくは3質量部〜20質量部とする。
例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等を挙げることができる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
次いで、塗膜を加圧圧着し、乾燥して、金属箔の一方の面に電極材料層を有する集電体(電極)を作製する。
このようにして、直流抵抗を低下させ、より高電位であり、放電容量を高めることができる電極を作製することができる。
本実施形態のリチウムイオン電池は、上述の電極からなる正極を備える。
このリチウムイオン電池は、上述の電極材料を用いて電極を作製することにより、電極の内部抵抗を小さくすることができる。したがって、電池の内部抵抗を低く抑えることができ、その結果、電圧が著しく低下するおそれもなく、高速の充放電を行うことができるリチウムイオン電池を提供することができる。
本実施形態のリチウムイオン電池では、負極、電解液、セパレーター等は特に限定されない。例えば、負極としては、金属Li、炭素材料、Li合金、Li4Ti5O12等の負極材料を用いることができる。また、電解液とセパレーターの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
本実施形態のリチウムイオン電池は、本実施形態の電極からなる正極を備えるため、より高電位であり、高い放電容量を有する。
例えば、本実施例では、導電助剤としてアセチレンブラックを用いているが、カーボンブラック、グラファイト、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛などの炭素材料を用いてもよい。また、対極にLi4Ti5O12を用いた電池で評価しているが、当然ながら天然黒鉛、人造黒鉛、コークスのような炭素材料、Li金属やLi合金等の負極材料を用いてもよい。また、非水電解液(非水電解質溶液)として1mol/LのLiPF6を含む炭酸エチレンと炭酸ジエチルを体積%で1:1に混合したものを用いているが、LiPF6の代わりにLiBF4やLiClO4、炭酸エチレンの代わりにプロピレンカーボネートやジエチルカーボネートを用いてもよい。また電解液とセパレーターの代わりに固体電解質を用いてもよい。
以下のようにして、LiFe0.1898Mn0.80Mg0.01Ca0.0002PO4を合成した。
Li源としてLiOH、Fe源としてFeSO4、Mn源としてMnSO4、Mg源としてMgSO4、Ca源としてCa(OH)2、P源としてNH4H2PO4を用い、これらを物質量比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=2.5:0.1898:0.80:0.01:0.0002:1となるように水と混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。その後、この原料スラリーαについて、185℃にて16時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。反応後、耐熱容器内の雰囲気が室温(25℃)になるまで冷却して、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。この沈殿物を蒸留水で複数回、十分に水洗し、乾燥しないように含水率40%に保持し、ケーキ状物質とした。このケーキ状物質を若干量採取し、70℃で2時間真空乾燥させて得られた粉末をX線回折で測定したところ、斜方晶、空間群Pnmaの単相LiFe0.1898Mn0.80Mg0.01Ca0.0002PO4が形成されていることが確認された。
Cо源として、CоSO4を用い、物質量比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:Cо:P=2.5:0.2948:0.67:0.03:0.0002:0.005:1として混合スラリーを作製したこと以外は製造例1と同様にして、斜方晶、空間群Pnmaの単相LiFe0.2948Mn0.67Mg0.03Ca0.0002Co0.005PO4を得た。
製造例1で得られたLiFe0.1898Mn0.80Mg0.01Ca0.0002PO4(電極活物質)19gと、炭化触媒として、LiFePO4 1g相当の炭酸Li−酢酸鉄(II)−リン酸(Li:Fe:P=1:1:1)混合溶液とを用い、炭素源としてポリビニルアルコール(PVA)1.1g、高吸水性高分子としてポリアクリル酸ナトリウム0.05gを用い総量で100gとなるように水に混合し、5mmφのジルコニアボール150gとともにボールミルで粉砕混合して、スラリー(混合物)を得た。
次いで、得られたスラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥、造粒した。その後、得られた造粒物を高湿度環境(30℃、相対湿度100%RH)で1時間静置し、ポリアクリル酸ナトリウム(高吸水性高分子)を膨潤させた後、窒素(N2)雰囲気下、昇温速度20℃/分で昇温し、温度770℃で4時間、熱処理を行い、炭素質被覆電極活物質を含む電極材料を得た。
高吸水性高分子として、ポリアクリル酸ナトリウムの代わりにポリアルギン酸ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様にして炭素質被覆電極活物質を含む電極材料を得た。
製造例2で得られたLiFe0.2948Mn0.67Mg0.03Ca0.0002Co0.005PO4(電極活物質)19gを活物質として用いた以外は実施例1と同様にして、炭素質被覆電極活物質を含む電極材料を得た。
高吸水性高分子としてポリアクリル酸ナトリウムの代わりにポリアルギン酸ナトリウムを用いた以外は実施例3と同様にして炭素質被覆電極活物質を含む電極材料を得た。
実施例1と同様にして得られた造粒物を、100cm2の矩形容器に均一に広げた後、該造粒物に重量の1%相当の水を霧吹きでかけることで、高吸水性高分子を膨潤させた。次いで、窒素(N2)雰囲気下、昇温速度20℃/分で昇温し、温度770℃で4時間、熱処理を行い、炭素質被覆電極活物質を含む電極材料を得た。
高吸水性高分子を添加しなかった以外は実施例1と同様にして比較例1の電極材料を得た。
実施例1の工程と同様にスラリーを乾燥造粒した後、得られた造粒体中の高吸水性高分子を膨潤させないように、該スラリーをスプレードライヤーで乾燥した直後に、窒素(N2)雰囲気下、昇温速度20℃/分で昇温し、温度770℃で4時間、熱処理を行い、比較例2の電極材料を得た。
熱処理時の昇温速度を1.5℃/分に変更した以外は実施例1と同様にして比較例3の電極材料を得た。
高吸水性高分子を添加しなかった以外は実施例3と同様にして比較例4の電極材料を得た。
実施例及び比較例で得られた電極材料と、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、電極材料:AB:PVdF=90:5:5の重量比で、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に混合し、正極材料ペーストとした。得られたペーストを、厚さ30μmのアルミニウム箔上に塗布、乾燥後、所定の密度となるように圧着して電極板とした。
得られた電極板を3×3cm2(塗布面)+タブしろの板状に打ち抜き、タブを溶接して試験電極を作製した。
一方、対極には同様にLi4Ti5O12を塗布した塗布電極を用いた。セパレーターとしては、多孔質ポリプロピレン膜を採用した。また、非水電解液(非水電解質溶液)として1mol/Lのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)溶液を用いた。なお、このLiPF6溶液に用いられる溶媒としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルを体積%で1:1に混合し、添加剤として炭酸ビニレン2%を加えたものを用いた。
そして、以上のようにして作製した試験電極、対極および非水電解液を用いて、ラミネート型のセルを作製し、実施例および比較例の電池とした。
実施例及び比較例で得られた電極材料、及び該電極材料が含む成分について物性を評価した。評価方法は、以下の通りである。
電極活物質の格子体積変化は以下の様に測定した。
まず、X線回折測定(X線回折装置:商品名:X’Pert PRO MPS、PANalytical社製、線源:CuKa)により、電極活物質材料の結晶格子定数(a, b, c)を求め、格子体積(V1=a×b×c)を算出した。
次に、以下の様にして、電極活物質材料から化学的にLiを脱離した後、同様にX線回折測定により、Li脱離後の電極活物質材料の結晶格子定数(a’, b’, c’)を求め、格子体積(V2=a’×b’×c’)を算出した。結果を表1に示す。
アセトニトリル中に酸化剤としてNOBF4を添加した溶液に、実施例及び比較例の電極活物質材料を混合し、15時間撹拌することにより、化学的Li脱離を行った。
NOBF4の添加量は、脱離するLi量に対して1.1倍等量とした。
Li脱離処理後に、ろ過による固液分離を行い、アセトンで洗浄した後、真空乾燥機内で50℃にて24時間乾燥させてサンプルとした。
電極活物質の結晶子径は、X線回折測定(前述)により測定した粉末X線回折図形の(020)面の回折ピークの半値幅、及び回折角(2θ)を用い、シェラーの式により算出した。結果を表2に示す。
炭素質被覆電極活物質の一次粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)観察により測定した200個以上の一次粒子の粒子径を個数平均することで求めた。結果を表2に示す。
ポリビニルピロリドン0.1%を水に溶解した分散媒に電極材料を懸濁させて、レーザー回折式粒度分析装置(株式会社堀場製作所製、LA−920)を用いて測定した。結果を表2に示す。
炭素分析計(株式会社堀場製作所製、炭素硫黄分析装置EMIA−810W)を用いて、炭素質被覆電極活物質の炭素含有量(質量%)を測定した。結果を表2に示す。
比表面積計(マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名:BELSORP−mini)を用いて、炭素質被覆電極活物質の比表面積を、窒素(N2)吸着によるBET法により測定した。結果を表2に示す。
電極材料を金型に投入して50MPaの圧力にて成形し、試料を作製した。低抵抗率計(三菱化学株式会社製、商品名:Loresta−GP)を用いて、25℃にて四端子法により、試料の粉体抵抗値(Ω・cm)を測定した。結果を表2に示す。
ラマン分光装置(株式会社堀場製作所製、LabRab HR evolution UV-VIS-NIR)を用いて、電極材料のラマンスペクトルを測定した。
この測定により得られたラマンスペクトルについてガウス関数とローレンツ関数の畳込みでフィッティング処理を行い(解析ソフト:LabSpec6、関数名:GaussLor(株式会社堀場製作所製))、得られたDバンドのピーク強度(ID)及びGバンドのピーク強度(IG)からDバンド及びGバンドのピーク強度比(ID/IG)を算出した。結果を表2に示す。
あまに油の代わりにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いた点を除いて、JIS K 5101−13−1「精製あまに油法」に準拠して、電極材料のNMP吸油量を測定した。結果を表2に示す。
あまに油の代わりにフタル酸ジブチル(DBP)を用いた点を除いて、JIS K 5101−13−1「精製あまに油法」に準拠して、電極材料のDBP吸油量を測定した。結果を表2に示す。
上記(9)で測定したNMP吸油量及び上記(10)で測定したDBP吸油量から比(DBP/NMP)を算出した。
実施例及び比較例で得られたリチウムイオン電池を用いて放電容量と充放電の直流抵抗(DCR)を測定した。なお、結果を表2に示す。
環境温度0℃にて、実施例及び比較例の電池で、カットオフ電圧を1.2−3V(vsLi4Ti5O12)とし、充電電流を1C、放電電流を3Cとして定電流充放電により放電容量を測定した。
リチウムイオン電池について、環境温度0℃にて0.1Cの電流で5時間充電し、充電深度を調整した(充電率(SOC)50%)。SOC50%に調整した電池に、第1サイクルとして「1C充電を10秒→休止10分→1C放電を10秒→休止10分」、第2サイクルとして「3C充電を10秒→休止10分→3C放電を10秒→休止10分」、第3サイクルとして「5C充電を10秒→休止10分→5C放電を10秒→休止10分」、第4サイクルとして「10C充電を10秒→休止10分→10C放電を10秒→休止10分」を、この順で実施し、その際の各充電、放電時10秒後の電圧を測定した。各電流値を横軸に、10秒後の電圧を縦軸にプロットして近似直線を描き、近似直線における傾きをそれぞれ充電時の直流抵抗(充電DCR)、放電時の直流抵抗(放電DCR)とした。
実施例1〜5の電極材料は、高吸水性高分子の膨潤に伴う電極活物質の粒子間隙の拡張により、粒子間の物質移動が抑制され、高温での熱処理においても粒子の成長、焼結が抑制されたため、少量の炭素源添加(炭素量)でも、炭素質被膜の電子伝導性は十分に向上し、また、より高電位で放電容量が増加し、直流抵抗の低減が確認できた。
一方、比較例1及び4の電極材料は、高吸水性高分子を添加しないため、電極活物質の粒子間隙が拡張せずに、熱処理に伴う粒子の成長が起こり、その結果、放電容量が低下し、直流抵抗の増加が見られた。比較例2の電極材料は、高吸水性高分子を膨潤させていないため、電極活物質の粒子間隙が拡張せずに、熱処理に伴う粒子の成長が起こり、その結果、放電容量が低下し、直流抵抗の増加が見られた。比較例3の電極材料は、熱処理時の昇温速度が遅く、膨潤した高吸水性高分子が再び乾燥収縮してしまい、再度、電極活物質の粒子間隙が近接し、その後に高温炭化したことで、粒子の成長が起こり、その結果、放電容量が低下し、直流抵抗の増加が見られた。
Claims (8)
- 一般式LiFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwPO4(但し、AはCo、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種、0≦w≦0.02、0.05≦x≦0.35、0.01≦y≦0.10、0.0001≦z≦0.001)で表され、結晶構造が斜方晶であり、空間群がPnmaである電極活物質の一次粒子及び該一次粒子の集合体である二次粒子と、
前記電極活物質の一次粒子及び該一次粒子の集合体である二次粒子を被覆する炭素質被膜とを有する炭素質被覆電極活物質を含み、
前記炭素質被覆電極活物質の一次粒子の平均粒子径が30nm以上200nm以下、X線回折測定における(020)面の半値幅から求めた結晶子径が30nm以上200nm以下であり、
前記炭素質被覆電極活物質の二次粒子の平均粒子径が0.5μm以上60μm以下であり、
前記炭素質被覆電極活物質のBET法により求めた比表面積が7m2/g以上30m2/g以下、炭素含有量が0.5質量%以上3.5質量%以下である電極材料。 - 前記一般式LiFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwPO4の格子体積V1と、前記LiFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwPO4から化学的にFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwを酸化しLiを脱離させたFexMn1−w−x−y−zMgyCazAwPO4の格子体積V2の変化率(V1−V2)/V1が0.06以上0.09以下である請求項1に記載の電極材料。
- ラマン分光測定により得られたラマンスペクトルのDバンド及びGバンドのピーク強度比(ID/IG)が1.10以上1.55以下であり、
DBP吸油量及びNMP吸油量の比(DBP/NMP)が1.3以下である請求項1又は2に記載の電極材料。 - 前記炭素質被覆電極活物質を50MPaの圧力で成形した圧粉体の抵抗率が1MΩ・cm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極材料。
- 炭素源となる有機物(A)と、高吸水性高分子(B)と、電極活物質及び/又は電極活物質前駆体(C)とを含む混合物スラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥、造粒する第一工程と、
前記第一工程で得られた造粒物を加湿して、固形物を得る第二工程と、
前記第二工程で得られた固形物を非酸化性雰囲気下、600℃以上1000℃以下で熱処理する第三工程とを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極材料の製造方法。 - 前記高吸水性高分子(B)は自重の10倍以上の水を吸収する高分子である請求項5に記載の電極材料の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極材料を用いてなる電極。
- 請求項7に記載の電極からなる正極を備えたリチウムイオン電池。
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