JP2018056051A - リチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電池用正極材料 - Google Patents
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Abstract
Description
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解液およびセパレータを備える。正極を構成する電極材料としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)やマンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)等のリチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有するリチウム含有金属酸化物が用いられ、電池の高容量化、長寿命化、安全性の向上、低コスト化など、様々な観点から改良が検討されている。
一方、リン酸鉄リチウムはLiイオンの拡散性、電子伝導性が低いため、酸化物系正極材料よりも入出力特性が劣る。この特性差は電池の作動温度が低温になるとより顕著となるため、リン酸鉄リチウムは、低温領域で高い入出力特性が必要とされるハイブリッド自動車などの車載用途には不向きであると考えられてきた。
一方、前記微細化したLiMPO4は比表面積が大きいため、電極合材スラリーの増粘や多量のバインダーが必要となるため、炭素質被膜で被覆された一次粒子を造粒し二次粒子の形態とすることで電極合材スラリーの性状を改善することが一般的である。
このように、充放電特性の改善には電極材料のみならず、電極を構成する電極合材層の導電性の改善も必須である。
[2]前記正極合材層の体積抵抗値が5Ω・cm以下であることを特徴とする上記[1]に記載のリチウムイオン二次電池。
[3]前記正極合材層のプレス後の電極密度が1.4g/cm3以上であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載のリチウムイオン二次電池。
[4]前記正極合材層が、炭素質被膜で被覆された下記一般式(1)で表される正極活物質の一次粒子が複数個凝集した凝集粒子からなる正極材料を含むことを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
LixAyDzPO4 (1)
(但し、AはCo、Mn、Ni、Fe、CuおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種、DはMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、ScおよびYからなる群より選択される少なくとも1種、0.9<x<1.1、0<y≦1、0≦z<1、0.9<y+z<1.1である。)
[5]炭素質被膜で被覆された下記一般式(1)で表される正極活物質の一次粒子が複数個凝集した凝集粒子からなるリチウムイオン二次電池用正極材料であって、厚み30μmのアルミニウム集電体上に、前記正極材料と導電助剤と結着剤とを重量比(正極材料:導電助剤:結着剤)=90:5:5で含む正極合材層を印加総圧5t/250mmでプレスした場合に、前記正極合材層と前記アルミニウム集電体との界面抵抗値が1Ω・cm2以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極材料。
LixAyDzPO4 (1)
(但し、AはCo、Mn、Ni、Fe、CuおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種、DはMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、ScおよびYからなる群より選択される少なくとも1種、0.9<x<1.1、0<y≦1、0≦z<1、0.9<y+z<1.1である。)
[6]厚み30μmのアルミニウム集電体上に、正極材料と導電助剤と結着剤とを重量比(正極材料:導電助剤:結着剤)=90:5:5で含む正極合材層を印加総圧5t/250mmでプレスした場合に、前記正極合材層の体積抵抗値が5Ω・cm以下であることを特徴とする上記[5]に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
[7]前記正極材料の累積粒度分布における累積百分率90%の粒子径(D90)が15μm以下であり、厚み30μmのアルミニウム集電体上に、正極材料と導電助剤と結着剤とを重量比(正極材料:導電助剤:結着剤)=90:5:5で含む正極合材層を印加総圧5t/250mmでプレスした場合に、前記正極合材層と前記アルミニウム集電体との界面抵抗値及び前記D90の比(界面抵抗値/D90)が0.1以下、前記正極合材層の体積抵抗値及び前記D90の比(体積抵抗値/D90)が0.10以上0.60以下であることを特徴とする上記[5]または[6]に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
[8]前記正極材料の比表面積が10m2/g以上25m2/g以下、N−メチル−2−ピロリドンを用いた吸油量が50ml/100g以下であることを特徴とする上記[5]〜[7]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
[9]厚み30μmのアルミニウム集電体上に、正極材料と導電助剤と結着剤とを重量比(正極材料:導電助剤:結着剤)=90:5:5で含む正極合材層を印加総圧5t/250mmでプレスした場合に、前記正極合材層のプレス後の電極密度が1.4g/cm3以上であることを特徴とする上記[5]〜[8]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、電解質とを有する。該正極は、アルミニウム集電体と、該アルミニウム集電体上に形成された正極合材層とを備え、該正極合材層と該アルミニウム集電体との界面抵抗値が1Ω・cm2以下であることを特徴とする。
ここで、界面抵抗値とは、2つの層が接触する界面での抵抗値を意味し、本発明では、正極合材層とアルミニウム集電体との界面での抵抗値のことである。
正極合材層とアルミニウム集電体との界面抵抗値が1Ω・cm2より大きいと電子伝導性が低下するおそれがある。正極合材層とアルミニウム集電体との界面抵抗値は、電子伝導性を高める観点から、好ましくは0.8Ω・cm2以下、より好ましくは0.5Ω・cm2以下、更に好ましくは0.1Ω・cm2以下である。
なお、上記界面抵抗値は、実施例に記載の方法により測定することができる。
LixAyDzPO4 (1)
(但し、AはCo、Mn、Ni、Fe、CuおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種、DはMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、ScおよびYからなる群より選択される少なくとも1種、0.9<x<1.1、0<y≦1、0≦z<1、0.9<y+z<1.1である。)
Dについては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Alが好ましい。正極活物質がこれらの元素を含む場合、高い放電電位、高い安全性を実現可能な正極合材層とすることができる。また、資源量が豊富であるため、選択する材料として好ましい。
なお、上記体積抵抗値は、実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、上記電極密度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
上記一次粒子の平均一次粒子径が10nm以上であると、正極活物質の一次粒子の比表面積が増えることで必要になる炭素の質量の増加を抑制し、正極材料単位質量当たりの充放電容量が低減することを抑制できる。また、正極活物質の一次粒子の表面を炭素質被膜で均一に被覆しやすくなる。その結果、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を用いたリチウムイオン二次電池は、高速充放電における放電容量が大きくなり、十分な充放電性能を実現することができる。一方、上記一次粒子の平均一次粒子径が400nm以下であると、正極活物質の一次粒子の内部におけるリチウムイオン拡散抵抗や電子の移動抵抗が大きくなることを抑制できる。その結果、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を用いたリチウムイオン二次電池は、高速充放電における放電容量を大きくすることができる。
炭素質被膜の厚みは、0.5nm以上5.0nm以下であることが好ましく、1.0nm以上3.0nm以下であることがより好ましい。
炭素質被膜の厚みが0.5nm以上であると、炭素質被膜の厚みが薄くなり過ぎず、所望の抵抗値を有する膜を形成することができる。その結果、導電性が向上し、正極材料としての導電性を確保することができる。一方、炭素質被膜の厚みが5.0nm以下であると、電池活性、例えば、正極材料の単位質量あたりの電池容量が低下することを抑制できる。
また、一次粒子に対する炭素質被膜の被覆率は60%以上であることが好ましく、特に80%以上が好ましい。炭素質被膜の被覆率が60%以上であることで、炭素質被膜の被覆効果が十分に得られる。
炭素量が0.5質量%以上であると、正極材料としての導電性を確保することができ、リチウムイオン二次電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が大きくなり、十分な充放電レート性能を実現することができる。一方、炭素量が5.0質量%以下であると、炭素量が多くなり過ぎず、リチウムイオン二次電池用正極材料の単位質量あたりのリチウムイオン二次電池の電池容量が必要以上に低下することを抑制できる。
なお、上記比表面積は、BET法により、比表面積計(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名:BELSORP−mini)を用いて測定することができる。
なお、上記NMP吸油量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の正極の製造方法は、本実施形態の正極材料を用い、アルミニウム集電体の一主面に正極合材層を形成できれば特に制限されない。
まず、正極材料の製造方法について説明する。
本実施形態の正極材料の製造方法は、例えば、正極活物質及び正極活物質前駆体の製造工程と、正極活物質及び正極活物質前駆体からなる群から選択される少なくとも1種の正極活物質原料と、水とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、前記工程で得られたスラリー中に凝集保持剤を加え、造粒物を得る造粒工程と、前記工程で得られた造粒物に、炭素質被膜前駆体である有機化合物を乾式混合し、得られた混合物を非酸化性雰囲気下にて焼成する焼成工程とを有する。
前記一般式(1)で表される正極活物質及び正極活物質前駆体の製造工程としては、固相法、液相法、気相法等の従来の方法を用いることができる。このような方法で得られたLixAyDzPO4としては、例えば、粒子状のもの(以下、「LixAyMzPO4粒子」と言うことがある。)が挙げられる。
LixAyDzPO4粒子は、例えば、Li源と、A源と、P源と、水と、必要に応じてD源と、を混合して得られるスラリー状の混合物を水熱合成して得られる。水熱合成によれば、LixAyDzPO4は、水中に沈殿物として生成する。得られた沈殿物は、LixAyDzPO4の前駆体であってもよい。この場合、LixAyDzPO4の前駆体を焼成することで、目的のLixAyDzPO4粒子が得られる。
この水熱合成には耐圧密閉容器を用いることが好ましい。
本工程では、前記工程で得られた正極活物質原料を、水に分散させて均一なスラリーを調製する。正極活物質原料を水に分散させる際には、分散剤を加えることもできる。正極活物質原料を水に分散させる方法としては、特に限定されず、例えば、遊星ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、アトライタ等の媒体粒子を高速で攪拌する媒体攪拌型分散装置を用いる方法が好ましい。
なお、スラリーの分散条件は、例えば、スラリー中の正極活物質原料の濃度、撹拌速度、撹拌時間等により調整することができる。
本工程では、スラリー中の正極活物質原料から造粒物を製造する。造粒物は、本発明の効果を発揮する観点から、中実粒子であることが好ましい。また、造粒物が崩壊しないよう、必要最小限の凝集保持剤を混合することが好ましい。ここで、凝集保持剤とは、一次粒子の凝集を補助するとともに、該一次粒子が凝集した二次粒子の形状を保持する化合物を意味する。
有機酸を選定した理由は、後述の焼成工程で不純物として残存せずに炭素質被膜の一部として炭化される方が好ましいためである。ただし、有機酸は残炭しにくいため、それだけで炭素質被膜とすることは困難であり、さらに良好な炭素質被膜を形成しにくいことから多量に入れることは好ましくない。また、後述する焼成工程において有機化合物の炭化を促進するための炭化触媒を用いてもよい。
ここで、噴霧の際の条件、例えば、スラリー中の正極活物質原料の濃度、噴霧圧力、速度、更に、噴霧後の乾燥させる際の条件、例えば、昇温速度、最高保持温度、保持時間等を適宜調整することにより、上述した凝集粒子の平均二次粒子径が上記範囲内にある乾燥物が得られる。
例えば、雰囲気温度がスラリー中の溶媒の沸点に近くなればなる程、噴霧された液滴の乾燥に時間がかかるので、この乾燥に要する時間の間に、得られる乾燥物は十分に収縮することとなる。これにより、スラリー中の溶媒の沸点近傍の雰囲気温度にて噴霧・乾燥した乾燥物は、中実構造をとりやすくなる。
本工程では、前記工程で得られた造粒物を非酸化性雰囲気下にて焼成する。
まず、焼成前に、該造粒物に、炭素質被膜前駆体である有機化合物を乾式混合する。
有機化合物としては、正極活物質の表面に炭素質被膜を形成できる化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、セルロース、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、マルトース、スクロース、ラクトース、グリコーゲン、ペクチン、アルギン酸、グルコマンナン、キチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、アガロース、ポリエーテル、2価アルコール、3価アルコール等が挙げられる。但し、上述の造粒工程で用いられる有機酸に含まれるものは除かれる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本実施形態の正極の製造方法としては、例えば、本実施形態の正極活物質を含む正極材料と、バインダー樹脂からなる結着剤と、溶媒とを混合して、正極材料ペーストを調製する。本実施形態における正極材料ペーストには、必要に応じて、カーボンブラック等の導電助剤や無機リン酸塩粒子を添加してもよい。
結着剤、すなわち、バインダー樹脂として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、フッ素ゴム等が好適に用いられる。
結着剤の配合量が1質量部以上であると、正極合材層とアルミニウム集電体との間の結着性を十分に高くすることができる。これにより、正極合材層の圧延形成時等において正極合材層の割れや脱落が生じることを抑制することができる。また、リチウムイオン二次電池の充放電過程において、正極合材層がアルミニウム集電体から剥離し、電池容量及び充放電レートが低下することを抑制することができる。一方、結着剤の配合量が30質量部以下であると、リチウムイオン二次電池用正極材料の内部抵抗が低下し、高速充放電レートにおける電池容量が低下することを抑制できる。
導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、気相成長炭素繊維(VGCF;Vapor Grown Carbon Fiber)及びカーボンナノチューブ等の繊維状炭素からなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。
本実施形態の正極活物質を含む正極材料ペーストに用いられる溶媒は、結着剤の性質に応じて適宜選択される。溶媒を適宜選択することにより、正極材料ペーストを、集電体等の被塗布物に対して塗布し易くすることができる。
溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール及びジアセトンアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート及びγ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン及びシクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類;並びに、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
正極材料ペーストにおける溶媒の含有率が上記の範囲内であると、正極形成性に優れ、かつ電池特性に優れた正極材料ペーストを得ることができる。
その後、塗膜を加圧圧着し、乾燥して、アルミニウム集電体の一主面に正極合材層を有する正極を作製する。
負極としては、例えば、金属Li、天然黒鉛、ハードカーボン等の炭素材料、Li合金及びLi4Ti5O12、Si(Li4.4Si)等の負極材料を含むものが挙げられる。
電解質は、特に制限されないが、非水電解質であることが好ましく、例えば、炭酸エチレン(エチレンカーボネート;EC)と、炭酸エチルメチル(エチルメチルカーボネート;EMC)とを、体積比で1:1となるように混合し、得られた混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を、例えば、濃度1モル/dm3となるように溶解したものが挙げられる。
本実施形態の正極と本実施形態の負極とは、セパレータを介して対向させることができる。セパレータとして、例えば、多孔質プロピレンを用いることができる。
また、非水電解質とセパレータの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
(実施例1)
Li源およびP源としてのリン酸リチウム(Li3PO4)と、Fe源としての硫酸鉄(II)(FeSO4)を、モル比でLi:Fe:P=3:1:1となるように混合した。さらに、調製用蒸留水を混合して、600mlの原料スラリーを調製した。
次いで、この原料スラリーを耐圧密閉容器に収容し、180℃にて2時間、水熱合成した後、室温(25℃)になるまで冷却して、容器内に沈殿しているケーキ状の正極活物質粒子を得た。この正極活物質粒子を蒸留水で複数回、十分に水洗した後、正極活物質粒子濃度が60質量%となるように、正極活物質粒子と蒸留水を混合し、懸濁スラリーを調製した。
この懸濁スラリーを直径0.1mmのジルコニアボールと共にサンドミルへ投入し、懸濁スラリー中の正極活物質粒子の累積粒度分布における累積百分率90%の粒子径(D90)の、累積体積百分率10%の粒子径(D10)に対する比(D90/D10)が2となるように、サンドミルの処理時間を調整して分散処理を行った。
次いで、分散処理を施したスラリーに予め30質量%に調整したクエン酸水溶液を、正極活物質粒子に対しクエン酸固形分換算で1.0質量%混合し、さらにスラリー中の正極活物質粒子濃度が50質量%となるよう蒸留水を混合した後、180℃の大気雰囲気中に噴霧、乾燥し、正極活物質粒子の造粒乾燥物を得た。
次いで、得られた乾燥物にポリビニルアルコール粉末を正極活物質粒子に対し3.5質量%乾式混合し、不活性雰囲気下、750℃にて1時間熱処理を行うことにより、正極活物質粒子への炭素担持を行い、実施例1のリチウムイオン二次電池用正極材料を作製した。
サンドミルにより分散処理を施したスラリーに予め30質量%に調整したクエン酸水溶液を、正極活物質粒子に対しクエン酸固形分換算で1.0質量%混合し、さらにスラリー中の正極活物質粒子濃度が25質量%となるよう蒸留水を混合した以外は、実施例1と同様にして実施例2のリチウムイオン二次電池用正極材料を作製した。
正極活物質粒子濃度が60質量%となるように調整した懸濁スラリーを、直径1mmのジルコニアボールと共にサンドミルへ投入し、懸濁スラリー中の正極活物質粒子において、比(D90/D10)が25となるように、ボールミルの処理時間を調整して分散処理を行った以外は、実施例1と同様にして実施例3のリチウムイオン二次電池用正極材料を作製した。
サンドミルにより分散処理を施したスラリーに予め30質量%に調整したクエン酸水溶液を、正極活物質粒子に対しクエン酸固形分換算で1.0質量%混合し、さらにスラリー中の正極活物質粒子濃度が25質量%となるよう蒸留水を混合した以外は、実施例3と同様にして実施例4のリチウムイオン二次電池用正極材料を作製した。
サンドミルにより分散処理を施したスラリーに予め30質量%に調整したクエン酸水溶液を、正極活物質粒子に対しクエン酸固形分換算で1.0質量%混合し、さらにスラリー中の正極活物質粒子濃度が50質量%となるよう蒸留水を混合した後、180℃の大気雰囲気中に噴霧、乾燥し、正極活物質粒子の造粒乾燥物を得た。
次いで、得られた乾燥物にグルコース粉末を正極活物質粒子に対し4.7質量%乾式混合した以外は、実施例1と同様にして、実施例5のリチウムイオン二次電池用正極材料を作製した。
サンドミルにより分散処理を施したスラリーに予め30質量%に調整したクエン酸水溶液を、正極活物質粒子に対しクエン酸固形分換算で1.0質量%混合し、さらにスラリー中の正極活物質粒子濃度が25質量%となるよう蒸留水を混合した以外は、実施例5と同様にして実施例6のリチウムイオン二次電池用正極材料を作製した。
サンドミルにより分散処理を施したスラリーに、予め15質量%に調整したポリビニルアルコール水溶液を、正極活物質粒子に対しポリビニルアルコール固形分換算で3.5質量%混合し、スラリー中の正極活物質粒子濃度が50質量%となるよう蒸留水を混合した後、180℃雰囲気中に噴霧、乾燥した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のリチウムイオン二次電池用正極材料を作製した。
サンドミルにより分散処理を施したスラリーに、予め15質量%に調整したポリビニルアルコール水溶液を、正極活物質粒子に対しポリビニルアルコール固形分換算で3.5質量%混合し、スラリー中の正極活物質粒子濃度が25質量%となるよう蒸留水を混合した以外は、比較例1と同様にして、比較例2のリチウムイオン二次電池用正極材料を作製した。
水熱合成で得られたケーキ状の正極活物質粒子を蒸留水で複数回、十分に水洗した後、正極活物質粒子濃度が60質量%となるように正極活物質粒子と蒸留水を混合し、懸濁スラリーを調製した。次いで、この懸濁スラリーに分散処理を施さないこと、クエン酸水溶液を混合しないこと以外は、実施例1と同様にして比較例3のリチウムイオン二次電池用正極材料を作製した。
水熱合成で得られたケーキ状の正極活物質粒子を蒸留水で複数回、十分に水洗した後、正極活物質粒子濃度が60質量%となるように正極活物質粒子と蒸留水を混合し、懸濁スラリーを調製した。次いで、この懸濁スラリーに分散処理を施さないこと、クエン酸水溶液を混合しないこと以外は、実施例6と同様にして比較例4のリチウムイオン二次電池用正極材料を作製した。
以下の方法により、得られた正極材料について評価を行った。結果を表1に示す。
レーザー式回折粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−950V2)を用いて測定した。
比表面積計(マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名:BELSORP−mini)を用いて、正極材料の比表面積を、窒素(N2)吸着によるBET法により測定した。
N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用いた吸油量は、JIS K5101−13−1(精製あまに油法)に則った手法にて、あまに油をNMPに代えて測定した。
得られた正極材料と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)とを、質量比が90:5:5となるように混合し、さらに溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を加えて流動性を付与し、スラリーを作製した。
次いで、このスラリーを厚み30μmのアルミニウム(Al)箔(集電体)上に塗布し、乾燥した。その後、塗布幅40mmの短冊状に切り抜き、ロールプレス機にて印加総圧5t/250mmで加圧し、各実施例及び比較例の正極を作製した。
以下の方法により、得られた正極について評価を行った。結果を表1に示す。
前記印加総圧5t/250mmで加圧した正極を、コイン型打ち抜き機でφ15.9mmに打ち抜いた。
打ち抜いた正極の厚みを5点測定し、その平均値から集電体の厚みを引いた値を正極の厚みとし、正極体積を算出した。同様に電極と集電体の質量の差より正極の質量を算出し、正極体積で割ることでプレス後の電極密度とした。
電極抵抗測定器(日置電機株式会社製、商品名:XF057−012)を用いて、印加電流値:1mA、電圧レンジ:0.2V、測定スピード:Normalの条件で測定した。なお、電圧レンジは抵抗値がオーバーロードしない範囲で任意に調整した。
電極抵抗測定器(日置電機株式会社製、商品名:XF057−012)を用いて、印加電流値:1mA、電圧レンジ:0.2V、測定スピード:Normalの条件で測定した。なお、電圧レンジは抵抗値がオーバーロードしない範囲で任意に調整した。
(5)で得られた界面抵抗値と(1)で得られたD90から、比(界面抵抗値/D90)を求めた。また、(6)で得られた体積抵抗値とD90から、比(体積抵抗値/D90)を求めた。
上記で得られたリチウムイオン二次電池の正極と、市販の天然黒鉛からなる負極を所定のサイズに打ち抜き、各々に集電タブを溶接し、多孔質ポリプロピレン膜からなるセパレータを介してアルミラミネートフィルム内に配置した。前記に濃度1モル/dm3 LiPF6/EC:DEC=50:50(vol%)の電解液を注入、封止し、電池特性評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
以下の方法により、得られたリチウムイオン二次電池について評価を行った。結果を表1に示す。
リチウムイオン二次電池の充放電試験を、室温(25℃)にて、カットオフ電圧2.5V〜3.7V、充放電レート0.1Cの定電流(10時間充電した後、10時間放電)下にて3回繰り返し実施し、3回目の放電容量を初期放電容量とした。
初期放電容量を測定した後、リチウムイオン二次電池の充放電試験を、室温(25℃)にて、カットオフ電圧2.5V〜3.7V、0.2Cで充電を行い(5時間充電)、3Cで放電し(20分放電)、放電容量を測定した。
3Cの放電容量と0.1Cの放電容量(初期放電容量)との比を負荷特性とし、下記の式(1)により負荷特性(放電容量比)を算出した。
放電容量比(%)=(3C放電容量/0.1C放電容量)×100・・・(1)
直流抵抗は、環境温度0℃にて充電レート0.1Cの定電流で充電深度を50%(SOC50%)に調整したリチウムイオン二次電池を用いて測定した。室温(25℃)にて、SOC50%に調整したリチウムイオン二次電池に、1C、3C、5Cおよび10Cレートの電流を、充電側、放電側に交互に各10秒間通電し、各レートの10秒後における電流値を横軸に、電圧値を縦軸にプロットし、最小二乗法による近似直線の傾きを「充電側=入力DCR」、「放電側=出力DCR」とした。なお、各電流での通電方向変更時と通電電流の変更時にそれぞれ10分の休止時間を設けた。
表1の結果から、実施例1〜6と、比較例1〜4とを比較すると、実施例1〜6のリチウムイオン二次電池用正極は、正極合材層とアルミニウム集電体との界面抵抗値、及び正極合材層の体積抵抗値が低いことが確認できた。また、実施例1〜6のリチウムイオン二次電池は、直流抵抗値が低く、初期放電容量、及び負荷特性に優れていることが確認できた。
Claims (9)
- 正極と、負極と、電解質とを有するリチウムイオン二次電池であって、
前記正極が、アルミニウム集電体と、該アルミニウム集電体上に形成された正極合材層とを備え、前記正極合材層と前記アルミニウム集電体との界面抵抗値が1Ω・cm2以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。 - 前記正極合材層の体積抵抗値が5Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記正極合材層のプレス後の電極密度が1.4g/cm3以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
- 前記正極合材層が、炭素質被膜で被覆された下記一般式(1)で表される正極活物質の一次粒子が複数個凝集した凝集粒子からなる正極材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
LixAyDzPO4 (1)
(但し、AはCo、Mn、Ni、Fe、CuおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種、DはMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、ScおよびYからなる群より選択される少なくとも1種、0.9<x<1.1、0<y≦1、0≦z<1、0.9<y+z<1.1である。) - 炭素質被膜で被覆された下記一般式(1)で表される正極活物質の一次粒子が複数個凝集した凝集粒子からなるリチウムイオン二次電池用正極材料であって、
厚み30μmのアルミニウム集電体上に、前記正極材料と導電助剤と結着剤とを重量比(正極材料:導電助剤:結着剤)=90:5:5で含む正極合材層を印加総圧5t/250mmでプレスした場合に、
前記正極合材層と前記アルミニウム集電体との界面抵抗値が1Ω・cm2以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極材料。
LixAyDzPO4 (1)
(但し、AはCo、Mn、Ni、Fe、CuおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種、DはMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、ScおよびYからなる群より選択される少なくとも1種、0.9<x<1.1、0<y≦1、0≦z<1、0.9<y+z<1.1である。) - 厚み30μmのアルミニウム集電体上に、正極材料と導電助剤と結着剤とを重量比(正極材料:導電助剤:結着剤)=90:5:5で含む正極合材層を印加総圧5t/250mmでプレスした場合に、
前記正極合材層の体積抵抗値が5Ω・cm以下であることを特徴とする請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。 - 前記正極材料の累積粒度分布における累積百分率90%の粒子径(D90)が15μm以下であり、
厚み30μmのアルミニウム集電体上に、正極材料と導電助剤と結着剤とを重量比(正極材料:導電助剤:結着剤)=90:5:5で含む正極合材層を印加総圧5t/250mmでプレスした場合に、
前記正極合材層と前記アルミニウム集電体との界面抵抗値及び前記D90の比(界面抵抗値/D90)が0.1以下、前記正極合材層の体積抵抗値及び前記D90の比(体積抵抗値/D90)が0.10以上0.60以下であることを特徴とする請求項5または6に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。 - 前記正極材料の比表面積が10m2/g以上25m2/g以下、N−メチル−2−ピロリドンを用いた吸油量が50ml/100g以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
- 厚み30μmのアルミニウム集電体上に、正極材料と導電助剤と結着剤とを重量比(正極材料:導電助剤:結着剤)=90:5:5で含む正極合材層を印加総圧5t/250mmでプレスした場合に、
前記正極合材層のプレス後の電極密度が1.4g/cm3以上であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
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