JP2019143104A - スチレン系樹脂組成物、スチレン系樹脂混合物、発泡シート、及び成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献3では、フェノール系酸化防止剤を樹脂に添加することにより、押出機等で熱履歴を加えても新たに発生するスチレン単量体を効果的に抑制することが開示されているが、分子量の低下抑制に改良の余地がある。
特許文献4では、フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤又はイオウ系酸化防止剤を樹脂に添加し、成形加工時の熱安定化により、スチレン単量体、二量体、三量体の増加が抑制されることが開示されている。しかし、分子量の低下抑制に関しては何ら開示されていない。
特許文献5では、フェノール系、リン系、又はこれらの併用物の抗酸化物を樹脂に添加することで、成形加工時のスチレン二量体、三量体の増加は抑制されることが開示されているが、樹脂の分子量の低下抑制に改良の余地がある。
[1]
スチレン系樹脂、フェノール系熱劣化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びリン系加工熱安定剤を含むスチレン系樹脂組成物であり、前記スチレン系樹脂100質量部に対して
前記フェノール系熱劣化防止剤を0.01〜0.40質量部、
前記フェノール系酸化防止剤と前記リン系加工熱安定剤とを合計で0.02〜0.40質量部含み、
前記フェノール系酸化防止剤と前記リン系加工熱安定剤との混合比率が4/1〜1/4であり、
スチレン単量体の含有量が150μg/g未満であり、
スチレン二量体と三量体との合計含有量が2000μg/g以下である
ことを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
[2]
前記スチレン単量体の含有量が100μg/g未満である、[1]に記載のスチレン系樹脂組成物。
[3]
重量平均分子量(Mw)が18万〜45万であり、且つ分子量100万以上の成分の割合が2〜12質量%であり、分子量5万以下の成分の割合が5〜16質量%である、[1]又は[2]に記載のスチレン系樹脂組成物。
[4]
重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する割合(Mw/Mn)が2.1〜4.8であり、Z平均分子量(Mz)の重量平均分子量(Mw)に対する割合(Mz/Mw)が1.6〜4.0である、[1]〜[3]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
[5]
前記フェノール系熱劣化防止剤が、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート及び/又は2,4−ジ−t−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレートである、[1]〜[4]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
[6]
前記フェノール系酸化防止剤がオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートであり、前記リン系加工熱安定剤がトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトである、[1]〜[5]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
[7]
スチレン系樹脂、フェノール系熱劣化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びリン系加工熱安定剤を含み、230℃での押出前の重量平均分子量(Mw)に対する押出後の重量平均分子量(Mw)の低下率が10%以下であることを特徴とする、スチレン系樹脂混合物。
[8]
[1]〜[6]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、発泡シート。
[9]
[8]に記載の発泡シートからなることを特徴とする、成形品。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂、フェノール系熱劣化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びリン系加工熱安定剤を含むスチレン系樹脂組成物であり、前記スチレン系樹脂100質量部に対して前記フェノール系熱劣化防止剤を0.01〜0.40質量部、前記フェノール系酸化防止剤と前記リン系加工熱安定剤とを合計で0.02〜0.40質量部含み、前記フェノール系酸化防止剤と前記リン系加工熱安定剤との混合比率が4/1〜1/4であり、スチレン単量体の含有量が150μg/g未満であり、スチレン二量体と三量体との合計含有量が2000μg/g以下であることを特徴とする。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン単量体、及びスチレン二量体と三量体の生成が効果的に抑制された、これらの含有量の少ない樹脂組成物であり、フェノール系熱劣化防止剤とフェノール系酸化防止剤とリン系加工熱安定剤を特定量で含むことが必須である。
フェノール系熱劣化防止剤は、スチレン系樹脂組成物の製造時の最終工程でポリマー溶液に添加することで、未反応のスチレン単量体と重合溶媒とを高温、高真空で脱揮、回収するときに、より酸素の少ない高真空下でスチレン単量体、及びスチレン二量体と三量体の生成を効果的に抑制する効果がある。また、押出機のように酸素が存在していても、より酸素の少ない高真空下には及ばないが、これらの生成を抑制する効果がある。しかし、スチレン系樹脂の分子量低下の抑制効果は酸素の多寡に関係なく低い。
一方、酸素が存在する場合のスチレン系樹脂組成物の押出加工時に、一次酸化防止剤であるフェノール系酸化防止剤と二次酸化防止剤であるリン系加工熱安定剤とを適切な組み合わせ及び量でスチレン系樹脂に添加すると、樹脂の分子量低下を効果的に抑制し、フェノール系熱劣化防止剤ほどではないが、スチレン単量体、及びスチレン二量体と三量体の生成を抑制する効果がある。
本実施形態では、スチレン系樹脂に、特定量のフェノール系熱劣化防止剤と、特定量及び特定割合のフェノール系酸化防止剤とリン系加工熱安定剤とを組み合せで混合することにより、スチレン単量体、及びスチレン二量体と三量体の生成を極めて効果的に抑制し、且つ熱分解によるスチレン系樹脂の分子量低下を効果的に抑制することを可能としている。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるスチレン系樹脂を構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、α−メチルスチレン、α−メチルp−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t−ブチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン及びインデン等が挙げられる。特に、スチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、一種もしくは二種以上使用することができる。更には、これらのスチレン系単量体と共重合可能な別の単量体が本発明の効果を損なわない程度であれば少量含有されていても良く、共重合可能な別の単量体として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ブチル、及びメタクリル酸メチル等のアクリル系単量体並びに無水マレイン酸等が挙げられる。
本実施形態のスチレン系樹脂の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等の公知のスチレン重合方法が挙げられる。
反応器の形状は、特に制限はないが、完全混合型反応器、層流型反応器、及び循環型反応器を適宜組み合わせて使用することができる。
重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルぺルオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4ービス(t−ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、中でも、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
重合開始剤は、スチレン系単量体に対して0.01〜0.08質量%使用することが好ましい。
連鎖移動剤は、スチレン系単量体に対して0〜0.5質量%使用することが好ましい。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるフェノール系熱劣化防止剤としては、例えば、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチル−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,5−ジ−t−ブチル−6−(3’−5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシメチルベンジル)−フェニルアクリレート等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。飛散性の観点からは、2,4−ジ−t−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレートが特に好ましい。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェール)、3,9ビス[2−{3−(t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキザ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェール)等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。汎用性の観点からは、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるリン系加工安定剤としては、例えば、トリスノニルフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルフォスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルフォスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルフォスファイト)、トリス(ミックスド,モノ及びジノニルフェニル)フォスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールアルキル(C12〜C15)フォスファイト、ジフェニルイソオクチルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、フェニルジイソデシルフォスファイト、トリスイソデシルフォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。耐加水分解性の観点からは、トリス(2,4ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好ましい。
スチレン系樹脂組成物中のスチレン単量体の含有量を150μg/g未満とするためには、例えば、重合溶液中の樹脂固形分の濃度を60〜90質量%にすることで、ポリマー成分を増やし、スチレン単量体量を低減する方法や、脱揮時の温度を200〜260℃、圧力を20kPa以下にすることで、スチレン単量体を除去しやすくする方法等がある。
なお本開示で、スチレン系単量体の含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
スチレン二量体と三量体を例示すると、二量体としては、1,3−ジフェニルプロパン、2,4−ジフェニルー1ブテン、1,2−ジフェニルシクロブタン、1−フェニルテトラリンが挙げられ、三量体としては、2,4,6−トリフェニルー1−ヘキセン、1−フェニルー4−(1’−フェニルエチル)テトラリン等が挙げられる。
スチレン系樹脂組成物中のスチレンの二量体及び三量体の合計含有量を2000μg/gとするためには、例えば、スチレン系樹脂の重合時に生成する量を減らすために、反応温度を80〜140℃と低くする方法や、重合開始剤を100〜2000質量ppm添加し、多くの開始剤ラジカルを発生させる方法がある。また、熱や溶融樹脂のせん断により発生する量を減らすために、未反応モノマーや溶媒を真空脱揮する際の圧力を20kPa以下と低くする方法等がある。
なお本開示で、スチレンの二量体と三量体との合計含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
なお本開示で、スチレン系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
なお本開示で、スチレン系樹脂組成物の分子量5万以下の成分の割合及び分子量100万以上の成分の割合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
なお本開示で、スチレン系樹脂組成物の数平均分子量(Mn)及びZ平均分子量(Mz)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
重合溶媒としては、エチルベンゼン及び/又はトルエンが好ましく、樹脂原料中の重合溶媒の含有量は2〜35質量%であることが好ましい。高分子量成分を得るには重合溶媒を少なく、低分子量成分を得るには重合溶媒を多くする。
低分子量成分を生成するには重合溶媒以外にα−スチレンダイマー等の連鎖移動剤も併用することができる。スチレン転化率は最終反応器の出口で65〜75%であることが好ましい。
反応温度は、高分子量成分を得るには110℃以下で重合することが好ましく、また低分子量成分を得るには120℃〜160℃で重合することが好ましい。
反応器の形状は、特に制限はないが、完全混合型反応器、層流型反応器、及び循環型反応器を適宜組み合わせて使用できる。
また、高分子量成分を効率的に得るには、四官能の重合開始剤や分岐剤を使用する。一方、熱重合又は単官能、二官能の重合開始剤を使用することで、低分子量成分を効率的に得ることができる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、例えば、上述のスチレン系樹脂を重合する際に、フェノール系熱劣化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びリン系加工熱安定剤、必要に応じて重合開始剤及び連鎖移動剤等の添加剤等を添加する方法により得ることができる。また、上述のスチレン系単量体を上述の製造方法で重合して得られるスチレン系樹脂、フェノール系熱劣化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びリン系加工熱安定剤を含むスチレン系樹脂混合物と、必要に応じて重合開始剤及び連鎖移動剤等の添加剤等とを、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等の公知の混練機を用いて溶融混練する方法で得ることもできる。
なお本開示で、230℃での押出は、具体的には、後述の[実施例]の項で説明する条件により行うことができる。また、押出前後でのスチレン系樹脂混合物の重量平均分子量(Mw)の低下率(%)は、後述の[実施例]の項で説明する手順により求めることができる。
本実施形態の発泡シートは、本実施形態のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする。
本実施形態の発泡シートは、例えば、フィルムを更にラミネートすること等によって多層化してもよい。フィルムの種類としては、一般のポリスチレンに使用されるものを用いることができる。
なお、発泡シートの発泡体密度は、ISO10350に基づいて後述の[実施例]の項で説明する方法により、測定することができる。
なお、発泡シートの発泡倍率は、発泡体密度(ρf)及びスチレン系樹脂組成物の密度(ρ)を用いて、次式より算出される値である。
発泡倍率=ρ/ρf
本実施形態の発泡シートの製造方法は、通常知られている方法を用いて行うことができる。例えば、限定されないが、本実施形態のスチレン系樹脂組成物、発泡剤、及び発泡核剤を押出機で溶融混練して押し出す方法が挙げられる。
本実施形態の発泡シートを製造する装置としては、公知の押出発泡シート製造装置が好適である。すなわち、単軸押出機や二軸押出機等の公知の溶融混錬装置を単独であるいは2機以上直列にして用いることができるが、押出機を2機以上直列に用いることが好ましい。具体的には、例えば、1機目の押出機で加熱溶融した樹脂組成物に対して発泡剤及び発泡核剤を圧入して混合し、2機目の押出機で冷却により樹脂温度を120〜180℃に調整した後、サーキュラーダイスより空気中に発泡シートを押し出す方法が好ましい。
本実施形態の成形品は、本実施形態のスチレン系樹脂組成物を含むソリッドシートや発泡シートから、二次成形加工により種々の形態に作製することができる。本実施形態の成形品は、食料品トレー、弁当箱、即席麺容器、及びカップ等に広く用いることができる。
測定及び評価方法を以下に記す。
スチレン系樹脂及びスチレン系樹脂組成物について、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、分子量100万以上の成分の割合(質量%)、分子量5万以下の成分の割合(質量%)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定した。
装置:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM−H
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ−H
測定溶媒:テトラヒドロフラン
試料濃度:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解
注入量:10μL
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検出:UV検出器
検量線の作成は東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F−850、F−450、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000)を用いた。
なお、230℃での押出前後におけるスチレン系樹脂混合物の重量平均分子量(Mw)の低下率(%)は、スチレン系樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)の、スチレン系樹脂組成物に使用したスチレン系樹脂(PS−1〜PS−4)の重量平均分子量(Mw)に対する低下率として求めた。
スチレン系樹脂及びスチレン系樹脂組成物における、スチレンの単量体、二量体、及び三量体の含有量(質量%)を、下記の条件や手順で、測定した。
・試料調製:スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物2.0gをメチルエチルケトン20mLに溶解後、更に標準物質入りのメタノール5mLを加え溶解した。スチレン系樹脂組成物を析出・静置後、上澄み液を採取し、測定液とした。
・測定条件
機器:Agilent社製ガスクロマトグラフィー GC6850
カラム:HP−1 30m、膜厚0.25μm、0.32mmφ
カラム温度:40℃で1分保持→20℃/分で320℃まで昇温→320℃で10分保持
注入口温度:250℃
検出器温度:280℃
キャリアガス:窒素
なお、スチレン系樹脂組成物の製造時(押出時)におけるスチレン単量体の発生量は、スチレン系樹脂組成物のスチレン単量体の含有量から、スチレン系樹脂組成物の製造に使用したスチレン系樹脂(PS−1〜PS−4)のスチレン単量体の含有量を引いた差とした。また、スチレン系樹脂組成物の製造時(押出時)におけるスチレン二量体と三量体との発生量の合計は、スチレン系樹脂組成物のスチレン二量体と三量体との合計含有量から、スチレン系樹脂組成物の製造に使用したスチレン系樹脂(PS−1〜PS−4)のスチレン二量体と三量体との合計含有量を引いた差とした。
スチレン系樹脂のメルトマスフローレート(g/10分)は、ISO1133に準拠し、200℃、49Nの荷重の条件にて測定した。
スチレン系樹脂組成物を直径50mm、高さ100mmのガラスの円筒容器に30g入れ、金属キャップで密閉、60℃で3時間、恒温槽で加熱後、キャップを外し、以下の基準で臭気の有無を判定した。
◎:臭気が感じられない。
○:臭気が微かに感じられる。
×:臭気がはっきり感じられる。
後述の[スチレン系樹脂組成物の作製]でスチレン系樹脂組成物を二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)で6時間連続的に押出し、ストランド出口のダイス周りにおける析出物の有無を以下の基準により判定した。
◎:析出物がない。
○:析出物が微かにある。
×:析出物がある。
フィルムインパクトテスター(東洋精機社製、A121807502)を用いて、発泡シートのインパクト強度(Kgf・cm)を測定した。
発泡シートの発泡倍率(倍)は、発泡体密度(ρf)及びスチレン系樹脂組成物の密度(ρ)を用いて、次式より算出した。
発泡倍率=ρ/ρf
なお、発泡シートの発泡体密度は、ISO10350に基づいて測定した。測定装置としては、島津製作所製の比重計(SGM−220−60測定器)を使用した。
スチレン単量体:スチレン
重合開始剤−1:1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製、パーヘキサC)
重合開始剤−2:2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルぺルオキシシクロヘキシル)プロパン(日油株式会社製、パーテトラA)
分岐剤:ジビニルベンゼン
連鎖移動剤:α−メチルスチレンダイマー(日油株式会社製)
重合溶媒:エチルベンゼン
フェノール系熱劣化防止剤A:2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート(住友化学工業株式会社製、SUMILIZER GS)
フェノール系熱劣化防止剤B:2−t−ブチル−6(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学工業株式会社製、SUMILIZER GM)
フェノール系酸化防止剤C:テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン(BASFジャパン株式会社製、IRGANOX 1010)
フェノール系酸化防止剤D:n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製、IRGANOX 1076)
リン系加工安定剤E:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(BASFジャパン株式会社製、IRGAFOS 168)
リン系加工安定剤F:2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−エチルヘキシロキシ)−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン(株式会社ADEKA製、アデカスタブ HP−10)
発泡核剤:タルク
発泡剤:液化ブタン
スチレン系樹脂の重合は、第1反応器と第2反応器を並列に配置し、それぞれの反応器の出口を合流させた後、第3反応器入口に接続、更に第3反応器の後に第4反応器に直列に接続して重合工程を構成した。第1反応器は完全混合型で容量は5.4リットル、第2、第3、第4反応器は攪拌機付き層流型で、容量は各1.5リットルである。表1に記載の組成で原料溶液を作製し、作製した原料溶液を、第1反応器及び第2反応器に表1に記載の流量にて並列に連続的に供給した。
なお、第2、第3、第4反応器は、表1に示す温度で流れの方向に沿って入口部分から出口部分に温度勾配を付け、3ゾーンで温度制御を行った。第1反応器及び第4反応器出口の重合溶液中の樹脂固形分の濃度を測定した。表1に測定結果を示す。
続いて、第4反応器出口より連続的に取り出した重合溶液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、表1に記載の樹脂温度となるよう予熱器の温度を調整し、表1に記載の圧力に調整することで、未反応のスチレン単量体及びエチルベンゼンを分離した後、ダイスよりストランド状に押し出して冷却した後、切断してペレット化した。
[スチレン系樹脂組成物の作製]
実施例、比較例のスチレン系樹脂組成物の作製は、表2に記載のスチレン系樹脂組成物の組成に基づいて、スチレン系樹脂(種類PS−1〜PS−4)、フェノール系熱劣化防止剤(種類A、B)、フェノール系酸化防止剤(種類C、D)、リン系加工熱安定剤(種類E、F)を混合してスチレン系樹脂混合物を調製した後、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)を用いて表2に記載の樹脂温度(230℃又は250℃)で、吐出量5kg/hr、回転数100rpmでストランド状に押出し、冷却後、ペレット化した。なお、押出時、樹脂を投入したホッパーに窒素フローを行った。
重量平均分子量(Mw)等のスチレン系樹脂混合物及びスチレン系樹脂組成物の物性を表2に示す。
実施例、比較例のスチレン系樹脂組成物を用いて、直径150mmのサーキュラーダイスを備えた押出発泡機を用い、上記のスチレン系樹脂組成物100質量部に対して、発泡核剤としてタルクを0.5質量部、及び発泡剤として液化ブタンを4質量部、添加してなる混合物を押出し発泡成形して、発泡シートを製造した。樹脂溶融ゾーンの温度を200〜230℃、ロータリークーラー温度を130〜170℃、ダイス温度を150℃にそれぞれ調整した。押出発泡直後の発泡体を冷却マンドレルで冷却し、円周上の1点でカッターにより切断した後、シート厚み約2mmの発泡シートを得た。発泡シートの物性を表2に示す。
実施例1〜実施例9のスチレン系樹脂組成物は、フェノール系熱劣化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びリン系加工熱安定剤を所定量添加したことにより、熱安定性に優れ、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の発生量が少なく、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の含有量が少ないものが得られた。また、スチレン系樹脂混合物の重量平均分子量の低下が少なく、発泡シートのインパクト強度に優れる。
比較例1は、フェノール系熱劣化防止剤とフェノール系酸化防止剤とリン系加工熱安定剤の含有量が少なく、熱安定性に劣り、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の発生量が多く、臭気に劣った。また、スチレン系樹脂混合物の重量平均分子量の低下も大きく、発泡シートのインパクト強度も劣った。
比較例2は、フェノール系熱劣化防止剤のみ所定量添加し、フェノール系酸化防止剤とリン系加工熱安定剤は添加しなかった。スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の発生量が少なく臭気は良好であったが、スチレン系樹脂混合物の重量平均分子量の低下が大きく、発泡シートのインパクト強度に劣った。
比較例3は、フェノール系酸化防止剤のみ所定量添加し、フェノール系熱劣化防止剤とリン系加工熱安定剤は添加しなかった。スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の発生量が多く、臭気に劣った。
比較例4は、リン系加工熱安定剤のみ添加し、フェノール系熱劣化防止剤とフェノール系酸化防止剤は添加しなかった。スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の発生量が多く、臭気に劣った。
比較例5は、フェノール系酸化防止剤とリン系加工熱安定剤を所定量添加し、フェノール系熱劣化防止剤は添加しなかった。スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の発生量が多く、臭気に劣った。
比較例6は、フェノール系熱劣化防止剤とフェノール系酸化防止剤を所定量添加し、リン系加工熱安定剤は添加しなかった。スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の発生量が多く、臭気に劣った。
比較例7は、フェノール系熱劣化防止剤とリン系加工熱安定剤を所定量添加し、フェノール系酸化防止剤は添加しなかった。スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の発生量が多く、臭気に劣った。また、樹脂組成物中のスチレン二量体と三量体の含有量が多いため、ダイスでの析出物が見られた。
Claims (9)
- スチレン系樹脂、フェノール系熱劣化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びリン系加工熱安定剤を含むスチレン系樹脂組成物であり、前記スチレン系樹脂100質量部に対して
前記フェノール系熱劣化防止剤を0.01〜0.40質量部、
前記フェノール系酸化防止剤と前記リン系加工熱安定剤とを合計で0.02〜0.40質量部含み、
前記フェノール系酸化防止剤と前記リン系加工熱安定剤との混合比率が4/1〜1/4であり、
スチレン単量体の含有量が150μg/g未満であり、
スチレン二量体と三量体との合計含有量が2000μg/g以下である
ことを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。 - 前記スチレン単量体の含有量が100μg/g未満である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 重量平均分子量(Mw)が18万〜45万であり、且つ分子量100万以上の成分の割合が2〜12質量%であり、分子量5万以下の成分の割合が5〜16質量%である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する割合(Mw/Mn)が2.1〜4.8であり、Z平均分子量(Mz)の重量平均分子量(Mw)に対する割合(Mz/Mw)が1.6〜4.0である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記フェノール系熱劣化防止剤が、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート及び/又は2,4−ジ−t−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレートである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記フェノール系酸化防止剤がオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートであり、前記リン系加工熱安定剤がトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- スチレン系樹脂、フェノール系熱劣化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びリン系加工熱安定剤を含み、230℃での押出前の重量平均分子量(Mw)に対する押出後の重量平均分子量(Mw)の低下率が10%以下であることを特徴とする、スチレン系樹脂混合物。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、発泡シート。
- 請求項8に記載の発泡シートからなることを特徴とする、成形品。
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