JP7245031B2 - スチレン系樹脂組成物、シート、及び成形品 - Google Patents
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Description
しかし、上記のような従来のスチレン系樹脂では、樹脂中のスチレンの単量体やスチレンの二量体、三量体の低減がまだ十分とは言えず、また、同時に色調、外観及び熱安定性に優れたものが求められている。
(1)
スチレン系樹脂を100質量部と、SiO2のAl2O3に対するモル割合(SiO2/Al2O3)が50~600である疎水性ゼオライトを0.02~0.40質量部と、熱安定剤を0.02~0.45質量部とを含有することを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
(2)
前記疎水性ゼオライトの結晶形がY型である、上記(1)に記載のスチレン系樹脂組成物。
(3)
前記疎水性ゼオライトの細孔径が5.0~11.0Åである、上記(1)又は(2)に記載のスチレン系樹脂組成物。
(4)
前記疎水性ゼオライトの平均粒子径が1~20μmである、上記(1)~(3)のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
(5)
前記疎水性ゼオライトが合成ゼオライトである、上記(1)~(4)のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
(6)
前記熱安定剤が、フェノール系熱劣化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、および、1分子内にフェノール系酸化防止剤とリン系加工熱安定剤を含む安定剤からなる群より選択される1種、又は2種以上の組合せである、上記(1)~(5)のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
(7)
前記熱安定剤が、フェノール系酸化防止剤およびリン系加工熱安定剤を含み、フェノール系酸化防止剤の含有量とリン系加工熱安定剤の含有量の比が1/4~4/1である、上記(6)に記載のスチレン系樹脂組成物
(8)
前記熱安定剤が、フェノール系熱劣化防止剤としての2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレートと、フェノール系酸化防止剤としてのオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートと、リン系加工熱安定剤としてのトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトとをいずれか1種以上含む、上記(1)~(6)のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物
(9)
スチレン単量体の含有量が120μg/g以下である、上記(1)~(8)のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
(10)
スチレン二量体と三量体との合計含有量が2000μg/g以下である、(1)~(9)のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
(12)
上記(1)~(10)のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、発泡シート。
(12)
上記(11)に記載の発泡シートからなることを特徴とする、成形品。
(13)
上記(1)~(10)のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、非発泡シート。
(14)
上記(13)に記載の非発泡シートからなることを特徴とする、成形品。
(15)
上記(1)~(10)のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂を100質量部と、スチレン系樹脂を100質量部と、SiO2のAl2O3に対するモル割合(SiO2/Al2O3)が50~600である疎水性ゼオライトを0.02~0.40質量部と、熱安定剤を0.02~0.45質量部とを含有することを特徴とする。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるゼオライトは、SiO2のAl2O3に対するモル割合(SiO2/Al2O3)が50~600である疎水性ゼオライトであり、SiO2/Al2O3は、好ましくは60~500、より好ましくは70~400である。SiO2/Al2O3を50以上にすることで、色調(YI)に非常に優れたものが得られ、SiO2/Al2O3を600以下にすることで、またスチレン系樹脂組成物中のスチレン単量体、スチレンの二量体、三量体の含有量を低減する効果に優れる。
なお、疎水性ゼオライトのSiO2とAl2O3のモル比の割合は、固体29Si NMR法で求めることができる。
なお、結晶形は、粉末X線-リートベルト法で求めることができる。
なお、疎水性ゼオライトの細孔径は、窒素ガス吸着法により求めることができる。
なお、疎水性ゼオライトの平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計を用いて求めることができる。
なお、スチレン系樹脂組成物中の疎水性ゼオライトの含有量は次の方法で求めることができる。スチレン系樹脂組成物を可溶な溶媒に溶解し、遠心分離機にてスチレン系樹脂組成物中の樹脂成分や熱安定剤が溶解した上澄み液層とゼオライトが沈降した層に分離する。上澄み液をデカンテーションで捨てる。残りの沈降層を500℃に加熱、吸着されている溶剤等の物質を除去、その残渣分からゼオライトの含有量を求める。
本実施形態の熱安定剤としては、特に限定しないが、例えば、フェノール系熱劣化防止剤、フェノール系酸化防止剤やリン系加工熱安定剤、および、1分子内にフェノール系酸化防止剤とリン系加工安定剤を含む安定剤、等を用いることができ、これらの熱安定剤は単体、又は2種類以上の組合せで、任意の混合比率等で使用できる。また同一種別(例えば、フェノール系熱劣化防止剤)の中でも、1種類以上の組み合わせ使用することができる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるフェノール系熱劣化防止剤としては、例えば、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-(3’,5’-ジ-t-アミル-2’-ヒドロキシ-α-メチルベンジル)フェニルアクリレート、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-メチル-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,5-ジ-t-ブチル-6-(3’-5’-ジ-t-ブチル-2’-ヒドロキシメチルベンジル)-フェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。飛散性と汎用性の観点からは、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレートが好ましい。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジt-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェール)、3,9ビス[2-{3-(t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキザ[5,5]ウンデカン、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェール)等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。汎用性の観点からは、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるリン系加工安定剤としては、例えば、トリスノニルフェニルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルフォスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルフォスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルフォスファイト)、トリス(ミックスド,モノ及びジノニルフェニル)フォスファイト、4,4’-イソプロピリデンジフェノールアルキル(C12~C15)フォスファイト、ジフェニルイソオクチルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、フェニルジイソデシルフォスファイト、トリスイソデシルフォスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。耐加水分解性の観点からは、トリス(2,4ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトが好ましい。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれる1分子内にフェノール系酸化防止剤とリン系加工安定剤を含む安定剤としては、例えば、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3.2]-ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
なお、スチレン系樹脂組成物中のフェノール系酸化防止剤とリン酸系加工安定剤の含有量は、ガスクロマトグラフィーを用いて測定できる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるスチレン系樹脂は、スチレン系単量体単位を含む。スチレン系単量体としては、スチレンの他に、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系誘導体が挙げられる。中でも特に、スチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる
また、本発明の効果を損なわない範囲で有れば、スチレン系樹脂は、上記のスチレン系単量体と、スチレン系単量体と共重合可能な別の単量体と、を含む共重合体であってもよく、好ましくは、スチレン系単量体を60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%含む共重合体である。
スチレン系単量体と共重合可能な別の単量体としては、1,3-ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレート等のアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、或いはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレート等の各種単量体が挙げられ、これらの単量体を1種単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。また、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の2官能性単量体を併用してもよい。
さらに、上記スチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体であるポリスチレンと1,3-ブタジエンとを含有するハイインパクトポリスチレン等のゴム質を含有するものであってもよい。
なお、スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
反応器の形状は、特に制限はないが、完全混合型反応器、層流型反応器、及び循環型反応器を適宜組み合わせて使用することができる。
重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4ービス(t-ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、中でも、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
重合開始剤は、スチレン系単量体に対して0.005~0.1質量%使用することが好ましい。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物には、所望に応じて、通常用いられている添加剤、例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、染料、顔料、各種充填剤等を添加することができる。また、他の樹脂、例えば、一般のポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合エラストマー、部分的にまたは完全に水素添加されたスチレン-ブタジエン共重合エラストマー、ポリフェニレンエーテル等を配合することもできる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物における添加剤の含有量は、3質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましく1質量%以下である。また、他の樹脂の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましく10質量%以下である。
以下、スチレン系樹脂組成物の特性について記載する。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物に含まれるスチレン単量体の含有量は、好ましく120μg/g以下であり、より好ましくは100μg/g以下、更に好ましくは80μg/g以下である。120μg/g以下にすることにより臭気の点で大幅に改善される。また、成形品である食品包装容器から容器内容物等へのスチレン単量体の移行の点でも、スチレン単量体はより少ない方が好ましい。
スチレン系樹脂組成物中のスチレン単量体の含有量を120μg/g以下とするためには、例えば、重合溶液中の樹脂固形分の濃度を60~90質量%にすることで、ポリマー成分を増やし、スチレン単量体量を低減する方法や、脱揮時の温度を200~260℃、圧力を20kPa以下にすることで、スチレン単量体を除去しやすくする方法等がある。また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物が含有する所定のゼオライトが、スチレン単量体の含有量を当該範囲にするために寄与する。
なお本開示で、スチレン単量体の含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
スチレン二量体と三量体を例示すると、二量体としては、1,3-ジフェニルプロパン、2,4-ジフェニルー1ブテン、1,2-ジフェニルシクロブタン、1-フェニルテトラリンが挙げられ、三量体としては、2,4,6-トリフェニルー1-ヘキセン、1-フェニルー4-(1’-フェニルエチル)テトラリン等が挙げられる。
スチレン系樹脂組成物中のスチレンの二量体及び三量体の合計含有量を2000μg/g以下とするためには、例えば、スチレン系樹脂の重合時に生成する量を減らすために、反応温度を80~140℃と低くする方法や、重合開始剤を100~2000質量ppm添加し、多くの開始剤ラジカルを発生させる方法がある。また、熱や溶融樹脂のせん断により発生する量を減らすために、未反応モノマーや溶媒を真空脱揮する際の圧力を20kPa以下と低くする方法等がある。また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物が含有する所定のゼオライトが、スチレンの二量体及び三量体の合計含有量を当該範囲にするために寄与する。
なお本開示で、スチレンの二量体と三量体との合計含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
本実施形態で、スチレン系樹脂組成物中のスチレン単量体、スチレン二量体と三量体を所定量以下にして、且つスチレン系樹脂組成物のYIを9以下とするためには、スチレン系樹脂組成物が含有する所定のゼオライトと熱安定剤が寄与する。
本実施形態のシートは、上記の本発明に係る実施形態のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする。シートは、非発泡及び発泡のいずれであってもよい。
発泡シートの厚みは、成形性と容器強度の観点から、0.7~3.0mmであることが好ましい。発泡シートの厚みは、ダイスの構造等の設備構造や樹脂の処理流量、及びシートの引取速度等の運転条件により、調整することができる。
なお、発泡シートの発泡倍率は、発泡シートの密度(ρf)及びスチレン系樹脂組成物の密度(ρ)を用いて、次式より算出される値である。
発泡倍率=ρ/ρf
非発泡シートの厚みは、成形性と容器強度の観点から、0.1~2mmであることが好ましい。
非発泡シートは通常の低倍率のロール延伸のみで形成してもよいが、特にロールで1.3倍から7倍程度延伸した後、テンターで1.3倍から7倍程度延伸してもよい。
本実施形態の成形品は、上記の本発明に係る実施形態のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする。また、本実施形態の成形品は、上記の本発明に係る実施形態のスチレン系樹脂組成物を含む非発泡シートや発泡シートから、二次成形加工により得ることができ、当該成形品は種々の形態を有することができる。本実施形態の成形品は、食料品トレー、弁当箱、即席麺容器、及びカップ等に広く用いることができる。
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物は、特に限定されないが例えばスチレン系樹脂と疎水性ゼオライトと熱安定剤と任意の添加剤等とを溶融混合することで製造することができ、具体的には、単軸や二軸の押出機で溶融混合し、ストランド状に溶融押出し、次いで、ペレタイズすることでペレット状の樹脂組成物として製造することができる。また、シート(非発泡(ソリッド)シートや発泡シート)および成形品は、特に限定されないが例えば、シート押出機や射出成形機を用いることで製造することができる。また、シートおよび成形品は、スチレン系樹脂と疎水性ゼオライトと任意の添加剤等とをシート押出機や射出成形機のホッパーに投入して溶融混合後、直接製造することもできる。さらに、成形品は、非発泡シートや発泡シートを用いて製造することもでき、非発泡シートである場合には、例えば真空成形や圧空成形等により成形して製造することができ、また、発泡シートである場合には、例えば真空成形により成形して製造することができる。
・スチレン系樹脂
スチレン単量体:スチレン
重合開始剤:1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製、パーヘキサC)
重合溶媒:エチルベンゼン
疎水性ゼオライトA:東ソー社製、ハイシリカゼオライトHSZシリーズ385HUA
疎水性ゼオライトB:東ソー社製、ハイシリカゼオライトHSZシリーズ980HOA
疎水性ゼオライトC:ユニオン昭和社製、USKY-790
疎水性ゼオライトD:東ソー社製、ハイシリカゼオライトHSZシリーズ390HUA
疎水性ゼオライトE:東ソー社製、ハイシリカゼオライトHSZシリーズ360HUA
熱安定剤A:2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート(住友化学社製、スミライザーGS)
熱安定剤B:オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製、Irganox1076)
熱安定剤C:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルフォスファイト)(BASF社製、Irgafos168)
熱安定剤D:6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3.2]-ジオキサホスフェピン(住友化学社製、スミライザーGP)
発泡剤:イソブタン70質量%/ノルマルブタン30質量%の混合物
第1反応器と第2反応器を並列に配置し、それぞれの反応器の出口を合流させた後、第3反応器入口に接続、更に第3反応器の後に第4反応器に直列に接続して重合工程を構成した。第1反応器は完全混合型で容量は5.4リットル、第2、第3、第4反応器は攪拌機付き層流型で、容量は各1.5リットルである。表1に記載の組成で原料溶液を作製し、作製した原料溶液を、第1反応器及び第2反応器に表1に記載の流量にて並列に連続的に供給した。
なお、第2、第3、第4反応器は、攪拌機付きであり、表1に示す温度で流れの方向に沿って入口部分から出口部分に温度勾配を付け、3ゾーンで温度制御を行った。第1反応器及び第4反応器出口の重合溶液中の樹脂固形分の濃度を測定した。表1に測定結果を示す。
続いて、第4反応器出口より連続的に取り出した重合溶液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、表1に記載の樹脂温度となるよう予熱器の温度を調整し、表1に記載の圧力に調整することで、未反応のスチレン単量体及びエチルベンゼンを分離した後、ダイスよりストランド状に押し出して冷却した後、切断してペレット化した。
測定方法と評価方法を以下に記す。
スチレン系樹脂及び発泡シートについて、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定した。
装置:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM-H
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ-H
測定溶媒:テトラヒドロフラン
試料濃度:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解
注入量:10μL
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検出:UV検出器
検量線の作成は東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F-850、F-450、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000)を用いた。
スチレン系樹脂、スチレン系樹脂組成物、シート、及び成形品における、スチレンの単量体、二量体、及び三量体の含有量(質量%)を、下記の条件や手順で、測定した。
・試料調製:スチレン系樹脂、スチレン系樹脂組成物、シート、又は成形品2.0gをメチルエチルケトン20mLに溶解後、更に標準物質入りのメタノール5mLを加え溶解した。スチレン系樹脂組成物を析出・静置後、上澄み液を採取し、測定液とした。
・測定条件
機器:Agilent社製ガスクロマトグラフィー GC6850
カラム:HP-1 30m、膜厚0.25μm、0.32mmφ
カラム温度:40℃で1分保持→20℃/分で320℃まで昇温→320℃で10分保持
注入口温度:250℃
検出器温度:280℃
キャリアガス:窒素
なお、スチレン系樹脂組成物の製造時におけるスチレン単量体の含有量の増減は、スチレン系樹脂組成物のスチレン単量体の含有量から、スチレン系樹脂組成物の製造に使用したスチレン系樹脂(PS1)のスチレン単量体の含有量を引いた差とした。また、スチレン系樹脂組成物の製造時におけるスチレン二量体と三量体との合計含有量の増減は、スチレン系樹脂組成物のスチレン二量体と三量体との合計含有量から、スチレン系樹脂組成物の製造に使用したスチレン系樹脂(PS1)のスチレン二量体と三量体との合計含有量を引いた差とした。
また、発泡シートの製造時におけるスチレン単量体の含有量の増減は、発泡シートのスチレン単量体の含有量から、発泡シートの製造に使用したスチレン系樹脂組成物のスチレン単量体の含有量を引いた差とした。また、発泡シートの製造時におけるスチレン二量体と三量体との合計含有量の増減は、発泡シートのスチレン二量体と三量体との合計含有量から、発泡シートの製造に使用したスチレン系樹脂組成物のスチレン二量体と三量体との合計含有量を引いた差とした。
スチレン系樹脂のメルトマスフローレート(g/10分)は、ISO1133に準拠し、200℃、49Nの荷重の条件にて測定した。
スチレン系樹脂組成物を直径50mm、高さ100mmのガラスの円筒容器に30g入れ、金属キャップで密閉、70℃で3時間、恒温槽で加熱後、キャップを外し、以下の基準で臭気の有無を判定した。
◎:臭気が感じられない。
○:臭気が微かに感じられる。
×:臭気がはっきり感じられる。
[発泡シートの製造]の製造で得た約15倍の発泡シートの色調を目視で判定した。
着色無し :着色が殆どなくほぼ白色
着色有り :着色が微かにある
スチレン系樹脂組成物のダイス出口での析出物の発生の有無は、後述の[非発泡(ソリッド)シートの製造]において、30mmφの単軸シート押出機でスチレン系樹脂組成物を連続的に3時間押出し、ダイス出口における析出物の有無を以下の基準で判定した。
◎:析出物がない。
○:析出物が微かにある。
×:析出物がある。
成形品の外観は、後述の[成形品の製造]で得られた成形品の表面の外観を、以下の基準で判定した。
◎:肌荒れがない。
○:肌荒れが微かにある。
△:肌荒れがある。
本発明の成形品の色調YIの測定は、先の[スチレン系樹脂組成物の製造]で得た樹脂組成物を圧縮成形機で、190℃、6分加熱後、直径30mm、厚さ2.5mmの圧縮成形品を作製し、反射法でASTM D 1925に準拠して測定した。
[スチレン系樹脂組成物の製造]
実施例及び比較例のスチレン系樹脂組成物の製造は、表2に記載のスチレン系樹脂組成物の組成に基づいて、スチレン系樹脂(種類:PS1)と疎水性ゼオライト(種類:A~I)と熱安定剤(種類:A~D)とを混合した後、20mmφの二軸押出機(ナカタニ機械社製、AS-20-2二軸押出機)を用いて表2に記載の樹脂温度で、吐出量1kg/hr、回転数100rpmでストランド状に押出し、冷却後、ペレット化した。
得られたスチレン系樹脂組成物の物性を表2に示す。
実施例及び比較例の発泡シートの製造は、直径150mmφのサーキュラーダイを備えた押出発泡装置を用いて、上記で得たスチレン系樹脂組成物100質量部に対し、発泡剤としてイソブタン70質量%/ノルマルブタン30質量%の混合物3.0質量部、発泡核剤としてタルク0.2質量部を添加してなる混合物を押出し発泡成形して、厚さ約2mm、発泡倍率約15倍の発泡シートを製造した。樹脂溶融ゾーンの温度を200~230℃、ロータリークーラー温度を130~170℃、ダイス温度を150℃にそれぞれ調整した。
得られた発泡シートの物性を表2に示す。
実施例及び比較例の非発泡シートの製造は、上記で得たスチレン系樹脂組成物を用いて、30mmφの単軸シート押出機で、樹脂温度230℃で、Tダイからシートを押出した。
得られた非発泡シートの物性を表2に示す。
実施例及び比較例の成形品の製造は、上記で得たスチレン系樹脂組成物を用いて、射出成形機で、樹脂温度220℃で、縦80mm、横50mm、厚さ2mmの成形品を作製した。 得られた成形品の物性を表2に示す。
実施例1~実施例9のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(PS1)に特定の性状(結晶形、SiO2/Al2O3、細孔径、平均粒子径)を有する疎水性ゼオライトと特定の熱安定剤を所定量添加し、溶融混合して得られたスチレン系組成物であり、スチレン単量体の含有量、スチレン二量体と三量体の合計含有量が極めて少なく、臭気性に優れ、更には色調と外観に優れる。これは、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体が、上記特定の疎水性ゼオライトに吸着されること及び疎水性ゼオライトの触媒効果により分解されて飛散すること等によると考えられる。更にはこれらのスチレン系樹脂組成物から製造した発泡シート、非発泡(ソリッド)シートや成形品のスチレン単量体の含有量、スチレン二量体と三量体の合計含有量も極めて少なく、加工時のこれらの増加が少ない。また、スチレン系樹脂組成物から製造した発泡シートの分子量(数平均分子量:Mn、重量平均分子量:Mw、Z平均分子量:Mz)は、元の原料であるスチレン系樹脂(PS1)からの低下が小さい。
比較例1のスチレン系樹脂組成物は、実施例1の疎水性ゼオライトの添加量を0.04から0.02質量部に、及び熱安定剤Bと安定剤Cを添加しなかった以外は実施例1と同様に得た。実施例1に比し、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体との合計含有量が多く、臭気性に劣った。また、スチレン系樹脂組成物から製造した発泡シート、非発泡シート、及び射出成形品は、スチレン系樹脂組成物と同様に、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の合計含有量が多かった。また、発泡シートの分子量は、実施例1に比し、低下が大きかった。
比較例2のスチレン系樹脂組成物は、実施例1の疎水性ゼオライトを添加せずに、安定剤Bの添加量を0.05質量部から0.03質量部に、安定剤Cの添加量を0.05質量部から0.03質量部に変更した以外は実施例1と同様に得た。実施例1に比し、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体との合計含有量が多く、臭気性に劣った。また、スチレン系樹脂組成物から製造した発泡シート、非発泡シート、及び射出成形品は、スチレン系樹脂組成物と同様に、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の合計含有量が多かった。また、発泡シートの分子量は、実施例1に比し、低下が大きかった。
比較例3のスチレン系樹脂組成物は、実施例5の疎水性ゼオライトの種類をA(385HUA)、SiO2のAl2O3のモル割合を96からゼオライトの種類をD(390HUA)、SiO2のAl2O3のモル割合を810に変更した以外は実施例5と同様に得た。実施例5に比し、圧縮成形品のYI値が小さく、色調に優れたが、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体との合計含有量が多く、臭気性に劣った。また、スチレン系樹脂組成物から製造した発泡シート、非発泡シート、及び射出成形品は、スチレン系樹脂組成物と同様に、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の合計含有量が多かった。また、発泡シートの分子量は、実施例5に比し、低下が大きかった。
比較例4のスチレン系樹脂組成物は、実施例5に熱安定剤Aを0.36質量部追加で添加した以外は実施例5と同様に得た。実施例5に比し、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体との合計含有量が少なく、臭気性に優れた。また、スチレン系樹脂組成物から製造した発泡シート、非発泡シート、及び射出成形品は、スチレン系樹脂組成物と同様に、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の合計含有量が少なかった。また、発泡シートの分子量は、実施例5に比し、低下が小さかった。しかし発泡シートの色調に劣り、また圧縮成形品のYI値も大きかった。
比較例5のスチレン系樹脂組成物は、実施例5の疎水性ゼオライトAの添加量を0.25質量部から0.45質量部に変更した以外は実施例5と同様に得た。実施例5に比し、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体との合計含有量が少なく、臭気性に優れた。また、スチレン系樹脂組成物から製造した発泡シート、非発泡シート、及び射出成形品は、スチレン系樹脂組成物と同様に、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の合計含有量が少なかった。また、発泡シートの分子量は、実施例5に比し、低下が小さかった。しかし発泡シートの色調に劣り、また圧縮成形品のYI値も大きかった。
比較例6のスチレン系樹脂組成物は、実施例5の疎水性ゼオライトの種類をA(385HUA)、SiO2のAl2O3のモル割合を96からゼオライトの種類をE(360HUA)、SiO2のAl2O3のモル割合を20に変更した以外は実施例5と同様に得た。実施例5に比し、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体との合計含有量が少なく、臭気性に優れた。また、スチレン系樹脂組成物から製造した発泡シート、非発泡シート、及び射出成形品は、スチレン系樹脂組成物と同様に、スチレン単量体、スチレン二量体と三量体の合計含有量が少なかった。また、発泡シートの分子量は、実施例5に比し、低下が殆ど変わらないか若干大きかったが、しかし発泡シートの色調に劣り、また圧縮成形品のYI値も大きかった。
Claims (15)
- スチレン系樹脂を100質量部と、SiO2のAl2O3に対するモル割合(SiO2/Al2O3)が50~600である疎水性ゼオライトを0.02~0.40質量部と、熱安定剤を0.02~0.45質量部とを含有することを特徴とする、スチレン系樹脂組成物。
- スチレン系樹脂を100質量部と、SiO2のAl2O3に対するモル割合(SiO2/Al2O3)が96~600である疎水性ゼオライトを0.02~0.40質量部と、
熱安定剤を0.1~0.45質量部と、を含有するスチレン系樹脂組成物であって、
スチレン単量体の含有量が120μg/g以下である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。 - 前記疎水性ゼオライトの結晶形がY型である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記疎水性ゼオライトの細孔径が5.0~11.0Åである、請求項1~3のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記疎水性ゼオライトの平均粒子径が1~20μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記疎水性ゼオライトが合成ゼオライトである、請求項1~5のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記熱安定剤が、フェノール系熱劣化防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、および、1分子内にフェノール系酸化防止剤とリン系加工熱安定剤を含む安定剤からなる群より選択される1種、又は2種以上の組合せである、請求項1~6のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記熱安定剤が、フェノール系熱劣化防止剤としての2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレートと、フェノール系酸化防止剤としてのオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートと、リン系加工熱安定剤としてのトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトとをいずれか1種以上含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記熱安定剤が、フェノール系酸化防止剤およびリン系加工熱安定剤を含み、フェノール系酸化防止剤の含有量とリン系加工熱安定剤の含有量の比が1/4~4/1である、請求項7又は8に記載のスチレン系樹脂組成物。
- スチレン二量体と三量体との合計含有量が2000μg/g以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 請求項1~10のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、発泡シート。
- 請求項11に記載の発泡シートからなることを特徴とする、成形品。
- 請求項1~10のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、非発泡シート。
- 請求項13に記載の非発泡シートからなることを特徴とする、成形品。
- 請求項1~10のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
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