JP2019138376A - 免震機構 - Google Patents
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なお、特許文献1には、摺動子と傾斜面との摩擦係数μと、傾斜面の傾斜角度θとの関係を、tanθ=(0.2〜0.4)μ程度とすることで残留変位を抑制できることが開示されている。
また、摺動子が傾斜面を摺動する際に、摺動面に引っ掛かったり滑ったりを繰り返すスティックスリップ現象が発生し、高周波成分を有する加速度が発生するという問題もある。
また、すべり免震支承が設けられた構造物の上層階および下層階には、すべり免震支承の上側の上部構造に起因して生じる高周波(高次モード)成分により、中間階に比べて大きな加速度が生じるという問題もある。
これにより、摺動子が傾斜面(下部摺動面、上部摺動面)の傾斜角度が切り替わる箇所を通過する際に衝撃が生じたり、スティックスリップ現象の衝撃が生じたりした場合でも、積層ゴムが変形することにより衝撃を吸収できるため、摺動子に生じる加速度を低減させることができる。
また、傾斜滑り支承のみの免震機構と比べて、積層ゴムの変形によって免震機構の上部の構造に起因する高周波成分を低減させることができるため、構造物の上階層や下階層に生じる加速度を低減させることができる。
そして、下部摺動部と上部摺動部との水平方向の相対変位量の最大値は、積層ゴムの厚さ寸法の2倍以下に設定され、積層ゴムは、水平方向の変形量が積層ゴムの厚さ寸法の2倍以下の場合には弾性変形し塑性変形しないことにより、積層ゴムに確実に減衰性能が付与されるため、加速度の低減効果を高めることができる。
このような構成とすることにより、摺動子が傾斜面の傾斜角度が切り替わる箇所を通過する際に生じる加速度、スティックスリップ現象の衝撃によって生じる加速度、および、構造物の上階層や下階層に生じる中層階よりも大きな加速度をより低減させることができる。傾斜角度θとは、下部摺動面および上部摺動面の傾斜角度を示している。
このような構成とすることにより、積層ゴムを下部摺動部および上部摺動部に確実に固定することができる。また、積層ゴムの上下方向から見た形状を下部摺動部および上部摺動部よりも大きくすることができるため、下部摺動部および上部摺動部の形状にかかわらず積層ゴムの形状を設定することができる。
図1および図2に示す本実施形態による免震機構1は、下部構造体11(図3および図4参照)と上部構造体12(図3および図4参照)との間の免震層13(図3および図4参照)に設けられている。本実施形態では、免震機構1は、免震層13に複数設けられているものとする。免震層13に設けられた複数の免震機構1は、それぞれ同じ形態としている。
免震機構1は、下部構造体11の上部に固定された下部案内部2と、上部構造体12の底部に固定された上部案内部3と、下部案内部2と上部案内部3との間に配置された摺動子4と、を有している。
本体部22は、長尺の略直方体となるブロック状に形成され、一の水平方向に延びる向きに配置されている。一の水平方向をX方向とし、一の水平方向に直交する他の水平方向をY方向とする。本体部22の上面は、X方向に沿ってX方向の略中央部が下側に凸となる略V字形状の傾斜面に形成されている。この本体部22の上面が下部摺動面21となっている。下部摺動面21の略中央部の屈曲している部分を下部屈曲部211とする。また、下部摺動面21のうち、下部屈曲部211からX方向の一方側を第1下部摺動面212とし、下部屈曲部211からX方向の他方側を第2下部摺動面213とする。
第1下部摺動面212および第2下部摺動面213には、摺動子4との摩擦を低減させるようにステンレスやメッキ鋼板あるいはテフロン(登録商標)などの滑り材がそれぞれ設けられている。
図4に示すように、本体部22の両側面(Y方向の両側の端面)221,221は、それぞれY方向を向く略垂直面となるように形成されている。
本体部32は、長尺の略直方体となるブロック状に形成され、Y方向に延びる向きに配置されている。本体部32の下面は、Y方向に沿ってY方向の略中央部が上側に凸となる略逆V字形状の傾斜面に形成されている。この本体部32の下面が上部摺動面31となっている。上部摺動面31の略中央部の屈曲している部分を上部屈曲部311とする。また、上部摺動面31のうち、上部屈曲部311からY方向の一方側を第1上部摺動面312とし、上部屈曲部311からY方向の他方側を第2上部摺動面313とする。
第1上部摺動面312および第2上部摺動面313には、摺動子4との摩擦を低減させるようにステンレスやメッキ鋼板あるいはテフロン(登録商標)などの滑り材がそれぞれ設けられている。
図3に示すように、本体部32の両側面(X方向の両側の端面)321,321は、それぞれX方向を向く略垂直面となるように形成されている。
一対の下部ガイド部46,46は、互いにY方向に間隔をあけて配置されている。一対の下部ガイド部46,46の間隔は、下部案内部2の本体部22のY方向の寸法よりもやや大きく形成されている。一対の下部ガイド部46,46における互いにY方向に対向する内側面461,461は、鉛直面に形成されている。
下部摺動部42の下面のうちの一対の下部ガイド部46,46の間の領域に下部当接面41が形成されている。
また、下部当接面41のうち、下部屈曲部411よりもX方向の一方側を第1下部当接面412とし、下部屈曲部411よりもX方向の他方側を第2下部当接面413とする。
第1下部当接面412および第2下部当接面413には、それぞれテフロン(登録商標)などの滑り材414がそれぞれ設けられている。
下部摺動部42の上面は略水平面に形成され、積層ゴム45が接続されている。
一対の上部ガイド部47,47は、互いにX方向に間隔をあけて配置されている。一対の上部ガイド部47,47の間隔は、上部案内部3の本体部22のX方向の寸法よりもやや大きく形成されている。一対の上部ガイド部47,47における互いにX方向に対向する内側面471,471は、鉛直面に形成されている。
上部摺動部44の下面のうちの一対の上部ガイド部47,47の間の領域に上部当接面43が形成されている。
また、上部当接面43のうち、上部屈曲部431よりもY方向の一方側を第1上部当接面432とし、上部屈曲部431よりもY方向の他方側を第2上部当接面433とする。
第1上部当接面432および第2上部当接面433には、それぞれテフロン(登録商標)などの滑り材434がそれぞれ設けられている。
上部摺動部44の下面は略水平面に形成され、積層ゴム45が接続されている。
下部摺動部42の上面と上部摺動部44の下面とは、略同じ正方形に形成され、積層ゴムを介して上下方向に重なっている。下部摺動部42の上面の縁部と上部摺動部44の下面の縁部とは、上下方向に重なっている。
積層ゴム45は、上下方向から見た形状が下部摺動部42の上面および上部摺動部44の下面よりも大きい正方形に形成され、下部摺動部42の上面と上部摺動部44の下面との間に配置された状態で、縁部45aが下部摺動部42の縁部42aおよび上部摺動部44の縁部44aよりも外側に突出している。
積層ゴム45は、下部摺動部42の上面および上部摺動部44の下面それぞれに固定されているとともに、下部摺動部42および上部摺動部44に固定された支持具48に支持されている。
下側支持具481は、四方枠状に形成され、下部摺動部42の側面の上縁部に沿って配置されている。下側支持具481は、下部摺動部42の側面に当接して固定される下側固定板部481aと、積層ゴム45の下面の縁部近傍に当接して積層ゴム45を支持する下側支持板部481bと、を有している。
積層ゴム45の縁部近傍は、下側支持板部481bと上側支持板部482bとに上下方向から挟持されている。
そして、弾性変形したゴム部分の復元力(弾性すべり復元力)により下部摺動部42と上部摺動部44とが原位置に復元されるように構成されている。
下部摺動部42と上部摺動部44との水平方向の相対変位量の最大値は、積層ゴム45の厚さ寸法の2倍以下となるように設定され、本実施形態では4〜8cmとしている。積層ゴム45は、水平方向の変位量が積層ゴム45の厚さ寸法の2倍(200%)以下の場合には、塑性変形せずに弾性変形するように設計されている。
例えば、積層ゴム45の厚さ寸法が2cmの場合は、下部摺動部42と上部摺動部44との水平方向の相対変位量の最大値が4cmとなり、積層ゴム45の水平方向の変位量が0〜4cmの場合には、塑性変形せずに弾性変形するように設計されている。
摺動子4の平面寸法は、面積が4×長期支持荷重/(摩擦材の基準面圧)程度となるように設定されている。
これにより、下部構造体11と上部構造体12とが水平方向に相対変位しても、上部構造体12が水平に維持される。
上部案内部3に作用する鉛直荷重をWとすると、傾斜復元力(水平力)Fは水平面に対する傾斜角度θをとしてF=Wtanθと表される。
上述した本実施形態による免震機構1では、地震が生じ、下部構造体11と上部構造体12とが水平方向に相対変位すると、まず、摺動子4は上部摺動面および下部摺動面21に対して摺動せずに、積層ゴム45のみが変形する。ここから更に下部構造体11と上部構造体12とが水平方向に相対変位して、積層ゴム45の原位置に対する水平変位が所定の水平変位設定値を超えると、摺動子4が上部摺動面および下部摺動面21に対して摺動し始める。
これにより、摺動子4が傾斜面の傾斜角度が切り替わる箇所を通過する際に衝撃が生じたり、スティックスリップ現象の衝撃が生じたりした場合でも、積層ゴム45が変形することにより衝撃を吸収できるため、摺動子4に生じる加速度を低減させることができる。
そして、下部摺動部42と上部摺動部44との水平方向の相対変位量の最大値が、積層ゴム45の厚さ寸法の2倍以下に設定され、積層ゴム45は、水平方向の変形量が厚さ寸法の2倍以下の場合には弾性変形し塑性変形しないことにより、積層ゴム45に確実に減衰性能が付与されるため、加速度の低減効果を高めることができる。
図8に示すように、解析対象となる構造物は、3階建RC造の建物で、平面形状が28m×21mの長方形となっている。免震層13は、地盤と1階の間に介在している。免震層13には、7mピッチで免震支承が設置されている。
m1=1199200(kg)
m4=m3=m2=719500(kg)
k1=k2=k3=3.25e9(N/m)
W=(m1+m2+m3+m4)×9.8=32905460(N)
LRB(鉛プラグ入り積層ゴム):せん断剛性G=0.39(N/mm2)
傾斜すべり支承:摩擦係数μ=0.05、傾斜角度θ=1.5°(理論加速度:0.76m/s2)、積層ゴムのせん断剛性krb={W×(0.05+tan1.5°)}/摺動子4の積層ゴムに設定する最大変位量Δmax
傾斜弾性すべり支承:摩擦係数μ=0.05、傾斜角度θ=1.5°(理論加速度:0.76m/s2)、積層ゴムのせん断剛性krb={W×(0.05+tan1.5°)}/摺動子4の積層ゴムに設定する最大変位量Δmax
計算用地震波には、以下の表のケース1〜7の加振波形を採用する。
最大応答変位の比較、最大応答加速度の比較の図には、免震装置をLRBとした結果および傾斜滑り支承とした結果も記載している。また、応答加速度の比較の図には、免震層13の上部構造体12を剛体でモデル化した理論値を表記している。
図16〜図22に、加振波形のケース1〜7毎の積層ゴムの最大変位量Δmaxが4cm、減衰定数h(0%〜5%)の場合の各階の応答変位および応答加速度を示し、図23〜図29には、加振波形のケース1〜7毎の最大変位量Δmaxが8cm、減衰定数h(0%〜5%)の場合の各階の応答変位および応答加速度を示す。
また、図30(a)〜(g)に、加振波形のケース1〜7毎の積層ゴムの減衰定数h(0%〜5%)の場合の免震層の最大変位量と残留変位との比較を示す。
傾斜すべり支承の残留変位は、傾斜すべり支承と同等に約0となることがわかる。傾斜弾性支承の積層ゴムの減衰による上部構造物の計算結果(応答変位と応答加速度)には、あまり違いが無かったが、残留変位の差異が大きいことがわかる。
減衰定数0〜5%の計算結果(応答変位、応答加速度、残留変位)より、無減衰とせずh≧1%の減衰を付与すればいずれの応答結果も略同じとなることがわかる。
例えば、上記の実施形態では、積層ゴム45は、上下方向から見た形状が下部摺動部42の上面および上部摺動部44の下面よりも大きい正方形に形成され、下部摺動部42の上面と上部摺動部44の下面との間に配置された状態で、縁部45aが下部摺動部42の上面の縁部42aおよび上部摺動部44の下面の縁部44aよりも外側に突出している。そして、積層ゴム45の縁部45aは、下部摺動部42および上部摺動部44に固定された支持具48で上下方向から挟持されている。これに対し、積層ゴム45は、上下方向から見た形状が下部摺動部および上部摺動部44よりも外側に突出していなくてもよいし、下部摺動部および上部摺動部44への固定手段も適宜設定されてよい。
また、上記の実施形態では、積層ゴム45の厚さ寸法を2cmから4cmとしているが、積層ゴム45の厚さ寸法は適宜設定されてよい。
2 下部案内部
3 上部案内部
4 摺動子
11 下部構造体
12 上部構造体
13 免震層
21 下部摺動面
31 上部摺動面
41 下部当接面
42 下部摺動部
43 上部当接面
44 上部摺動部
45 積層ゴム
48 支持具
Claims (3)
- 水平方向に相対変位可能な下部構造体と上部構造体との間に設けられる免震機構において、
前記下部構造体の上部に設けられ、一の水平方向に沿って下側に凸となるV字形状に形成された下部摺動面を有する下部案内部と、
前記上部構造体の底部に設けられ、前記一の水平方向に直交する他の水平方向に沿って上側に凸となる逆V字形状に形成された上部摺動面を有する上部案内部と、
前記下部摺動面と前記上部摺動面との間に配置され、前記下部摺動面に沿って前記下部案内部と前記一の水平方向に相対変位可能であるともに、前記上部摺動面に沿って前記上部案内部と前記他の水平方向に相対変位可能な摺動子と、を有し、
前記摺動子は、前記下部摺動面を摺動可能な下部摺動部と、前記下部摺動部の上側に配置されて前記上部摺動面を摺動可能な上部摺動部と、前記下部摺動部と前記上部摺動部との間に配置され前記下部摺動部と前記上部摺動部とを水平方向に相対移動可能に支持する積層ゴムと、を有し、
前記下部構造体と前記上部構造体とが水平方向に相対変位すると、該相対変位に追従して前記積層ゴムが水平方向に変形し、前記積層ゴムの原位置に対する水平変位が所定の水平変位設定値を超えた後に、前記摺動子が前記下部摺動面および前記上部摺動面の少なくとも一方で摺動するように構成され、
前記下部摺動部と前記上部摺動部との水平方向の相対変位量の最大値は、前記積層ゴムの厚さ寸法の2倍以下に設定され、
前記積層ゴムは、水平方向の変形量が前記積層ゴムの厚さ寸法の2倍以下の場合には弾性変形し塑性変形しないことを特徴とする免震機構。 - 前記積層ゴムのせん断剛性Krbは、
前記積層ゴムのせん断剛性Krb=(前記上部構造体の自重W×摩擦係数μ+tan傾斜角度θ)/前記摺動子の前記積層ゴムに設定する最大変位量Δmax
で設定されていることを特徴とする請求項1に記載の免震機構。 - 前記積層ゴムは、上下方向から見て縁部が前記下部摺動部および前記上部摺動部よりも外側に突出し、前記縁部が前記下部摺動部および前記上部摺動部に固定された支持具で上下方向から挟持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の免震機構。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP7432902B1 (ja) | 2022-10-21 | 2024-02-19 | 嘉明 村山 | シミュレータ用駆動ユニット及びシミュレータ |
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- 2018-02-09 JP JP2018022201A patent/JP7042642B2/ja active Active
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