JP2019082219A - 免震装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造、輸送、施工の各工程のコスト増大を抑制できるとともに、大地震発生時の大変形に追従できる高い免震性能を有するすべり支承型の免震装置を提供する。【解決手段】免震装置は、上部構造物と下部構造物の間に配置されて上部構造物を免震支承する免震装置であって、上部構造物と下部構造物の一方の構造物に固定されるすべり板と、すべり板に摺動可能に当接するすべり材を有し上部構造物と下部構造物の他方に固定されるすべり支承本体と、を備える。すべり板は、中央の第1領域と、第1領域を囲繞する第2領域と、を有する。第2領域は、樹脂材料で形成され、第1領域と同等以下の摩擦係数を有している。【選択図】図3

Description

本発明は、ビルディング、戸建て住宅、橋梁等の建造物や機械装置の免震構造に用いられる免震装置に関し、特に、すべり支承を利用した免震装置のすべり板に関する。
従来、地震発生時に、短周期の激しい地震動を長周期化することにより、建造物等に伝わる地震力(衝撃)を低減する免震装置が知られている。免震装置は、建造物等(以下、「上部構造物」と称する)と基礎(以下、「下部構造物」と称する)との間に介在し、免震層を構成する。免震装置は、上部構造物を支持するとともに、地震発生時に上部構造物を長周期でゆっくりと変位させるアイソレーターを備えている。アイソレーターとしては、例えば、積層ゴム、すべり支承、転がり支承、積層ゴムとすべり支承を組み合わせた弾性すべり支承などがある。
一般に、アイソレーターにすべり支承を適用した免震装置(以下、「すべり支承型免震装置」と称する)は、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)等の低摩擦材料からなるすべり材を有するすべり支承本体と、表面処理(例えば、研磨及び/又はコーティング)が施されたステンレス鋼板からなるすべり板を備える(例えば、特許文献1)。支承本体とすべり板は、すべり材がすべり板に摺動可能に当接するように配置される。例えば、上部構造物の下面に支承本体が配置され、下部構造物にすべり板が配置される。
すべり支承型免震装置を設置した場合、地震発生時に、上部構造物は、すべり材を介してすべり板上を摺動し、水平方向に変形しつつ、すべり材がすべり板上を摺動するときの摩擦力によって地震力を吸収する。これにより、上部構造物に地震動が作用したときの揺れの加速度(いわゆる応答加速度)は、地震動の加速度の数分の一になるので、上部構造物を地震から保護することができる。
近年、地震観測記録の蓄積、長周期地震動や断層直下地震などの研究が進むにつれ、建物設計において従来よりも大きな地震動を想定する必要性が生じている。地震動の入力レベルの増大は、免震層の応答変形(振幅)の増大に繋がるため、大地震発生時の大変形に対応するためには、免震層に配置される免震装置の変形性能やすべり性能(上部構造物の可動範囲)を向上する必要がある。
すべり支承型免震装置においては、すべり板のサイズを拡大し、すべり支承本体の可動範囲(すべり領域)を拡大することで、大地震に対応することができる。
また、特許文献1には、すべり板のすべり面を複数の領域に区画し、中央から順に、1番目の領域は発生頻度の高い強風に対してすべりが発生しない摩擦係数(μ1)とし、2番目の領域は摩擦係数をμ1よりも低いμ2に設定して免震効果を向上し(積極的に滑らせる)、3番目の領域はμ2よりも摩擦係数を上げて地震エネルギーを吸収しつつ応答変形を抑制する(すべり板からはずれないようにする)ことが開示されている。さらに、特許文献1には、3番目の領域の外側に、より高い摩擦係数(μ4)を有する4番目の領域を、樹脂モルタル等の塗り床仕上げ、又はエポキシ系樹脂のセルフレベリング床仕上げにより形成することが開示されている(図8参照)。
特開2005−249103号公報
しかしながら、ステンレス鋼板からなるすべり板は重量物であるため、すべり板の大型化は、製造、輸送、施工の各工程におけるコストの増大を招くという課題がある。現状、すべり板の道路輸送を考慮した場合、許容できるすべり板のサイズは、3000mm×3000mm程度である。
また、特許文献1に開示の免震装置では、すべり板の第3領域の摩擦係数が内側の第2領域の摩擦係数よりも大きいため、すべり支承本体が第3領域まで達すると、上部構造物に作用する地震力は少なからず増加することとなる。そのため、上部構造物に過大な地震力が加わることになり、大地震時の安全性を確保できない虞がある。
本発明の目的は、新築、耐震改修のいずれにも適用可能で、製造、輸送、施工の各工程のコスト増大を抑制できるとともに、大地震発生時の大変形に追従できる高い免震性能を有するすべり支承型の免震装置を提供することである。
本発明に係る免震装置は、
上部構造物と下部構造物の間に配置されて前記上部構造物を免震支承する免震装置であって、
前記上部構造物と前記下部構造物の一方の構造物に固定されるすべり板と、
前記すべり板に摺動可能に当接するすべり材を有し、前記上部構造物と前記下部構造物の他方に固定されるすべり支承本体と、を備え、
前記すべり板は、中央の第1領域と、前記第1領域を囲繞する第2領域と、を有し、
前記第2領域は、樹脂材料で形成され、前記第1領域と同等以下の摩擦係数を有していることを特徴とする。
本発明によれば、新築、耐震改修のいずれにも適用可能で、製造、輸送、施工の各工程のコスト増大を抑制できるとともに、大地震発生時の大変形に追従できる高い免震性能を有するすべり支承型の免震装置を提供することができる。
図1は、本発明の一実施の形態に係る免震装置を適用した免震建築物を模式的に示す図である。 図2は、免震装置の構成を示す斜視図である。 図3A、図3Bは、免震装置の構成を示す図である。 図4は、すべり支承本体の構成を示す図である。 図5A〜図5Cは、すべり板の施工工程の一例を示す図である。 図6A〜図6Dは、免震装置の動作を示す図である。 図7A〜図7Cは、免震装置の荷重と変位の関係を示す図である。 図8は、実施の形態に係るすべり板と従来技術のすべり板の摩擦係数を比較した図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る免震装置を適用した免震建築物Aを模式的に示す図である。
図1に示すように、免震建築物Aは、上部構造物としての建築物2、下部構造物としての基礎3との間に、免震層として免震システム1を有している。また、免震建築物Aの周囲には、地震動による最大変位を許容できる間隙をもって、擁壁31が設けられている。
免震システム1は、地震力が直接建築物2に伝わらないように、建築物2と基礎3とを絶縁する。また、免震システム1は、安定して建築物2を支える支持機能、地震エネルギーを吸収して建築物2の揺れを低減する減衰機能、及び建築物2の水平位置を元に戻す復元機能を有する。
免震システム1は、複数の第1の免震装置10及び第2の免震装置20を備える。第1の免震装置10は、本発明に係るすべり支承型免震装置である。第2の免震装置20は、すべり支承型以外の免震装置であり、例えば、積層ゴム支承体などの支持機能、減衰機能及び復元機能を有するものであってもよいし、オイルダンパー、鋼材ダンパー、鉛ダンパーなどの支持機能を有さないものであってもよい。
図2は、第1の免震装置10の構成を示す外観斜視図である。図3Aは、第1の免震装置10の平面図である。図3Bは、第1の免震装置10の断面図である。図4は、すべり支承本体100の構成を示す拡大断面図である。
図2、図3A、図3B及び図4に示すように、第1の免震装置10は、すべり支承本体100、及びすべり板200を備える弾性すべり支承である。第1の免震装置10は、支持機能及び減衰機能を有する。本実施の形態では、すべり支承本体100が建築物2(上部構造物)に固定され、すべり板200が基礎3(下部構造体)に固定される。
図4に示すように、すべり支承本体100は、積層ゴム体110、すべり材120、及びフランジ130を備える。
積層ゴム体110は、ゴム状弾性板111(本体ゴム)と中間鋼板112が交互に積層され、上下両端部に連結鋼板113、114が加硫接着された構造を有する。また、積層ゴム体110は、ゴム状弾性板111と中間鋼板112からなる積層体(符号略)の外周面を覆う、耐候性に優れた保護ゴム115を有する。積層ゴム体110は、四角柱状、多角柱状又は円柱状の柱状部材である。本実施の形態では、積層ゴム体110は、円柱形状を有している。
ゴム状弾性板111は、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、ゴムと合成樹脂との混合材料など、ゴムを主成分とする材料で形成される。
保護ゴム115は、積層体の外周面に接着剤を塗布して貼りつけて形成してもよいし、ゴム製の自己融着テープを巻いて形成してもよい。または、保護ゴム115は、ゴム状弾性板111と保護ゴム層115のゴム材を同時に加硫成型することで、ゴム状弾性板111と一体化してもよい。
すべり材120は、板状の部材であり、例えば、PTFE(polytetrafluoroethylene)などのフッ素樹脂等により形成される。すべり材120は、積層ゴム体110の下面(連結鋼板114)に、例えば、接着により固定される。すべり材120は、第1の免震装置10を設置したときに、すべり板200(すべり相手材)に当接する。
すべり材120は、すべり板200に当接して摺動する際に、摩擦係数が小さく、好適に摺動可能であれば、どのように形成されてもよい。例えば、すべり材120は、一枚の板材であってもよいし、複数の小さい板材で構成されてもよい。本実施の形態では、すべり材120は、円板形状の一枚板で構成されている。すべり材120の外径は、例えば、800mmである。
フランジ130は、積層ゴム体110の上面(連結鋼板113)に、例えば、ボルトにより接合される。フランジ130の平面形状は、矩形状、円板状、楕円状或いは多角形状等のどのような形状であってもよい。本実施の形態では、フランジ130は、円板形状を有している。
すべり板200は、図3A及び図3Bに示すように、すべり支承本体100の外形よりも大きい形状を有する。本実施の形態では、すべり板200は、正方形状を有している。
すべり板200は、中央の第1領域210と、第1領域210を囲繞する第2領域220を有する。第1領域210と第2領域220は、異なる材料で形成される。第1領域210と第2領域220は、同心状に形成される。第1の領域210及び第2の領域220は、補強板230上に形成される。補強板230によって、すべり板200の機械的強度が確保されるとともに、第2領域220を形成する前の第1領域210のみからなるすべり板200の輸送、施工時の変形を防止できる。補強板230は、すべり板200の第1領域210と溶接接合するために、第1領域210と同等又は若干大きい外形を有する。
第1領域210は、例えば、研磨及び/又はコーティング等の表面処理が施された金属板(例えば、ステンレス鋼板)で形成される。第1領域210は、すべり支承本体100の外径よりも大きい形状を有する。本実施の形態では、第1領域210は、正方形状に形成されている。第1領域210のサイズは、例えば、2000mm×2000mm(従来のすべり板と同等のサイズ)である。なお、第1領域210は、円形状に形成されてもよい。第1の領域210は、予め補強板230上に形成され、この状態で施工現場まで運搬される。
第2領域220は、エポキシ樹脂等の樹脂材料で形成され、第1領域210と同等以下の摩擦係数を有する。第2領域220は、第1領域210と同心の正方形状に形成されている。第2領域220のサイズは、例えば、5000mm×5000mmである。本実施の形態のすべり板200は、従来のすべり板に比較して、第2領域220の部分が拡大されている。第2の領域220は、例えば、現場施工により形成される。本実施の形態では、第2の領域220は、補強板230よりも大きく、基礎3上にも形成されている。
第2領域220を形成する樹脂材料は、流し込むだけで表面が高精度で平滑に形成される高いセルフレベリング性を有することが好ましい。これにより、第2領域220を現場施工で容易に形成することができる。
また、樹脂材料は、大変形時の繰り返しの摺動に耐えうる高い耐久性、耐熱性を有することが好ましい。これにより、大変形時に、すべり支承本体100(すべり材120)がすべり板200上を繰り返し摺動したときのすべり板200の変形を抑制することができるので、第1の免震装置10の信頼性が向上する。
高いセルフレベリング性、耐久性、耐熱性を有する樹脂材料としては、2液硬化型のエポキシ樹脂を適用できる。例えば、アルファ工業株式会社製のアルファテック150(商品名)又はアルファテック180(商品名)が好適である。アルファテック150又はアルファテック180を用いることにより、第2領域220の摩擦係数を、金属板からなる第1領域210の摩擦係数と同等以下にすることができる。
なお、ステンレス鋼板、アルファテック150、アルファテック180を用いて作製したすべり板に対して、鉛直方向に5〜40N/mmの荷重を加えた状態で、水平方向に5〜400mm/secの速度で加振を繰り返す実験により、アルファテック150及びアルファテック180の摩擦係数は、ステンレス鋼板の摩擦係数よりも小さいことが確認されている。
アルファテック150及びアルファテック180の物性値を表1及び表2に示す。表1は未硬化状態の性状を示し、表2は硬化状態の性状を示している。表2に示すように、アルファテック150のような一般的なエポキシ樹脂のガラス転移温度が50℃程度であるのに対して、アルファテック180のガラス転移温度は100℃であり、格段に高い。そのため、すべり支承本体100がすべり板200上を繰り返し摺動したときの摩擦に伴う発熱に対する耐性(耐熱性)も高くなる。したがって、すべり板200の第2領域220を形成する樹脂材料としては、アルファテック180の方が好適である。
Figure 2019082219
Figure 2019082219
第2領域220は、例えば、図5A〜図5Cに示す工程により形成される。すなわち、まず、補強板230上に配置された金属板(第1領域210)の周囲に、第2領域220に対応する型枠を設置する(図5A参照)。図5Aでは、基礎3の周囲に型枠F1を設置している。また、図5Aでは、第1領域210と第2領域220の間に間隙240を設けるために、金属板(第1領域210)の周囲にスペーサーF2を設置している。
そして、型枠F1内に樹脂材料を流し込み充填する(図5B参照)。このとき、金属板(第1領域210)の表面と、樹脂材料(第2領域220)の表面が面一となるように、樹脂材料の充填量が調整される。樹脂材料は、高いセルフレベリング性を有するので、型枠F1内に均一に拡がり、表面は高精度で平滑となる。また、現場施工の際に、型枠F1内に流し込んだ樹脂材料の表面を平滑な平板で養生することで、強制的に平滑な面を形成することもできる。
樹脂材料が硬化した後、型枠F1及びスペーサーF2を除去する(図5C参照)。さらに、第2領域220の周縁部に面取り加工を施す。面取り寸法は、例えば5mm以下である。以上の工程により、補強板230及び基礎3の上に、第1領域210を囲繞するように第2領域220が形成される。
図5Cに示すように、第1領域210と第2領域220との境界には、間隙240が設けられることが好ましい。間隙240の幅は、例えば、2〜8mmであることが好ましい。図5Aに示すように、第2領域220を形成する際、第1領域210を形成する金属板をスペーサーF2で養生することにより、容易に所定幅の間隙240を形成することができる。これにより、第2領域220が熱膨張しても、第1領域210と第2領域220の境界部分が膨出することはなく、すべり面の平滑性を維持することができる。また、間隙240があることで、第2領域220の面取り作業も容易になる。なお、前記境界に段差がなければ間隔240はなくてもよい。
また、図5Cに示すように、第1領域210及び第2領域220の境界における周縁部には、面取り加工が施されていることが好ましい。これにより、大変形時に、すべり支承本体100が繰り返し摺動したときに、すべり材120のすべり面が、すべり板200における第1領域210と第2領域220の境界部分のエッジにより損傷するのを防止することができるので、第1の免震装置10の信頼性が向上する。樹脂材料を型枠F1、F2に流し込んで第2領域220を形成する場合、表面張力によって型枠F2と接する縁部に盛り上がり(図5Cの想像線)が生じるが、面取り加工により、この盛り上がりも除去される。なお、第1領域210と第2領域220との境界に間隙240を設けた場合、第2領域220の周縁部を容易に面取りすることができる。
図6A〜図6Dは、第1の免震装置10の動作を示す図である。図6Aは、通常時の状態を示す。図6Bは、中小変形時の状態(積層ゴム体110のみが変形した状態)を示す。図6Cは、大変形時の状態を示す。図6Dは、図6Cからさらに変形が進んで、第1の免震装置10が第2領域220まで摺動した状態を示す。
通常時は、図6Aに示すように、すべり支承本体100は、すべり板200の第1領域210に位置している。建築物2に水平方向の地震力が加わると、まず、すべり支承本体100の積層ゴム体110が水平方向にせん断変形する(図6B参照)。そして、摩擦限界を超えるとすべりが生じて、すべり支承本体100は、すべり板200の第1領域210上を摺動し(図6C参照)、さらに変形が進むと、すべり板200の第2領域220上を摺動する(図6D参照)。なお、すべり支承本体100は、第2の免震装置20(図1参照)の復元力により、減衰しつつ元の位置に戻る。
第1の免震装置10では、すべり板200が従来に比較して格段に大きく、広いすべり領域が確保されているので、従来は想定していない巨大地震が発生し、すべり支承本体100の応答変位が大きくなっても対応することができる。
図7A〜図7Cは、免震システム1を模擬した免震モデルをもとに免震システム1の水平履歴特性をシミュレーションした結果を示す図である。図7Aは、第1の免震装置10の水平履歴特性のシミュレーション結果、図7Bは、第2の免震装置20(積層ゴム支承体)の水平履歴特性のシミュレーション結果、図7Cは、免震システム1の水平履歴特性のシミュレーション結果(図7Aと図7Bの合成)を示す。図7B及び図7Cが実際の試験に基づくシミュレーション結果であり、図7Aは、図7Bと図7Cの差分である。なお、図7A、図7Cでは、第2領域220の摩擦係数が第1領域210の摩擦係数よりも小さい場合を実線で示し、摩擦係数が同じである場合を破線で示している。
具体的には、第1の免震装置1が、1800mm×1800mmの第1領域210(ステンレス綱板)及び4800mm×4800mmの第2領域220を有するすべり板200と、支承径(すべり材120の外径)が800mmのすべり支承本体100を備える場合について、1/10の縮小試験体を用いた免震モデルに、鉛直方向に所定の荷重を加えた状態で、水平方向に所定の加振を繰り返す試験を行った。
図7A、図7Cに示すように、すべり支承本体100の水平変形が第2領域220である場合の水平荷重は、すべり支承本体100の水平変形が第1領域210である場合と同等以下となった。すなわち、すべり板200の第2領域220においても、有効に免震性能が発揮されていることが確認された。特に、第2領域220の摩擦係数を第1領域210の摩擦係数よりも小さくすることで、水平荷重の増加を抑制でき、免震性能が向上することを確認できた。
このように、本実施の形態に係る第1の免震装置10(免震装置)は、建築物2(上部構造物)と基礎3(下部構造物)の間に配置されて建築物2を免震支承するすべり支承免震装置である。第1の免震装置10は、基礎3に固定されるすべり板200と、すべり板200に摺動可能に当接するすべり材120を有し、建築物2に固定されるすべり支承本体100と、を備える。すべり板200は、中央の第1領域210と、第1領域210を囲繞する第2領域220と、を有する。第2領域220は、樹脂材料で形成され、第1領域210と同等以下の摩擦係数を有している。
図8に示すように、特許文献1に開示の従来技術では、すべり板におけるエポキシ樹脂等で形成される樹脂領域の摩擦係数が、ステンレス鋼板等で形成される金属領域の摩擦係数よりも大きくなるように設定されている。つまり、特許文献1では、設計対象外の大変形に伴う過大変位を抑制するために、摩擦係数が大きい樹脂材料が用いられている。これに対して、本実施の形態では、樹脂領域(第2領域220)の摩擦係数が金属領域(第1領域210)の摩擦係数と同等以下になっている。つまり、本実施の形態の第1の免震装置10は、ステンレス鋼板等の金属板と同等以下である摩擦係数を有する樹脂材料を有効利用して、すべり領域の拡大を図ったものであり、過大変位を抑制するために樹脂材料を利用している特許文献1に開示の免震装置とは異なる。
第1の免震装置10によれば、すべり板200において、第2領域220は、第1領域210と同等以下の摩擦係数を有するので、すべり支承本体100が第1領域210と第2領域220の境界を通り過ぎるときに摩擦係数の上昇に伴い水平力が増加することはなく、第1の免震装置10と建築物2や基礎3の接合部に過大な力が加われることを防止できる。したがって、建築物2に作用する地震力の抑制効果を安定して維持することができ、良好な免震性能が発揮される。
また、第2領域220は、樹脂材料によって形成されているので、現場施工により容易に形成することができる。したがって、輸送コストが増大することなく大サイズのすべり板200を実現できるとともに、すべり板200の寸法設計の自由度が向上する。また、既設のすべり支承型免震装置に対しても、すべり板の領域、すなわち、すべり支承本体の可動範囲を容易に拡大することができるので、既存建造物の改修工事により、免震層の大変形に対応できる免震構造を実現することができる。
このように、第1の免震装置10によれば、製造、輸送、施工の各工程のコスト増大を抑制することができるとともに、大地震発生時の大変形に追従できる高い免震性能を実現することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、第1の免震装置10において、すべり支承本体100が基礎3(下部構造物)に固定され、すべり板200が建築物2(上部構造物)に固定されてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 免震システム(免震層)
2 建築物(上部構造物)
3 基礎(下部構造物)
10 第1の免震装置(免震装置)
20 第2の免震装置
100 すべり支承本体
110 積層ゴム体
120 すべり材
130 フランジ
200 すべり板
210 第1領域
220 第2領域
230 補強板

Claims (5)

  1. 上部構造物と下部構造物の間に配置されて前記上部構造物を免震支承する免震装置であって、
    前記上部構造物と前記下部構造物の一方の構造物に固定されるすべり板と、
    前記すべり板に摺動可能に当接するすべり材を有し、前記上部構造物と前記下部構造物の他方に固定されるすべり支承本体と、を備え、
    前記すべり板は、中央の第1領域と、前記第1領域を囲繞する第2領域と、を有し、
    前記第2領域は、樹脂材料で形成され、前記第1領域と同等以下の摩擦係数を有していることを特徴とする免震装置。
  2. 前記第1領域は、ステンレス鋼板により形成されることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
  3. 前記樹脂材料は、2液硬化型のエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の免震装置。
  4. 前記第1領域と第2領域との境界に、間隙が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の免震装置。
  5. 前記第1領域及び第2領域の前記境界における周縁部には、面取り加工が施されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の免震装置。
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