JP2018132123A - 免震機構 - Google Patents
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しかしながら、原位置の近傍では、すべり面の球面の勾配がほとんどないため復元力が小さく、ある程度の残留変位が生じることがある。また、FPSは、比較的軸力が小さい小規模な建物に採用されているが、所望の大きさのすべり面を形成するために、摺動子の上下に大きな球面板が必要となり設置面積が大きくなる特徴がある。
このため、摺動子に積層ゴムが設けられていない従来の免震機構と比べると、摺動子が上部摺動面および下部摺動面に対して摺動し始める際の免震機構の剛性変化が緩和され、摺動子が上部摺動面および下部摺動面に対して動き出す際の摩擦抵抗力の増大を抑制することができる。
また、下部構造体と上部構造体との水平方向の相対変位が微小な場合は、摺動子が上部摺動面および下部摺動面に対して摺動しないため、残留変位が生じること防止することができる。
図1および図2に示すように、本実施形態による免震機構1は、下部構造体11(図2参照)と上部構造体12(図2参照)との間の免震層13に複数設けられている。免震層13に設けられた複数の免震機構1は、それぞれ同じ形態としている。
免震機構1は、下部構造体11の上部に固定された下部案内部2と、上部構造体12の底部に固定された上部案内部3と、下部案内部2と上部案内部3との間に配置された摺動子4と、を有している。
本体部22は、長尺の略直方体となるブロック状に形成され、一の水平方向に延びる向きに配置されている。一の水平方向をX方向とし、一の水平方向に直交する他の水平方向をY方向とする。本体部22の上面は、X方向に沿ってX方向の略中央部が下側に凸となる略V字形状の傾斜面に形成されている。この本体部22の上面が下部摺動面21となっている。下部摺動面21の略中央部の屈曲している部分を下部屈曲部211とする。また、下部摺動面21のうち、下部屈曲部211からX方向の一方側を第1下部摺動面212とし、下部屈曲部211からX方向の他方側を第2下部摺動面213とする。
第1下部摺動面212および第2下部摺動面213は、それぞれ平面となる傾斜面に形成されている。第1下部摺動面212および第2下部摺動面213の水平面に対する傾斜角は、互いに同じ値(傾斜角θ)に設定されている。
第1下部摺動面212および第2下部摺動面213には、摺動子4との摩擦を低減させるようにステンレスやメッキ鋼板あるいはテフロン(登録商標)などの滑り材がそれぞれ設けられている。
本体部22のY方向の両側の端面221,221は、それぞれY方向を向く略垂直面となるように形成されている。
本体部32は、長尺の略直方体となるブロック状に形成され、Y方向に延びる向きに配置されている。本体部32の下面は、Y方向に沿ってY方向の略中央部が上側に凸となる略逆V字形状の傾斜面に形成されている。この本体部32の下面が上部摺動面31となっている。上部摺動面31の略中央部の屈曲している部分を上部屈曲部311とする。また、上部摺動面31のうち、上部屈曲部311からY方向の一方側を第1上部摺動面312とし、上部屈曲部311からY方向の他方側を第2上部摺動面313とする。
第1上部摺動面312および第2上部摺動面313は、それぞれ平面となる傾斜面に形成されている。第1上部摺動面312および第2上部摺動面313の水平面に対する傾斜角は、互いに同じ値(傾斜角θ)に設定されている。この傾斜角θは、第1下部摺動面212および第2下部摺動面213の水平面に対する傾斜角θと同じ値となっている。
第1上部摺動面312および第2上部摺動面313には、摺動子4との摩擦を低減させるようにステンレスやメッキ鋼板あるいはテフロン(登録商標)などの滑り材がそれぞれ設けられている。
本体部32のX方向の両側の端面321,321は、それぞれX方向を向く略垂直面となるように形成されている。
一対の下部ガイド部46,46は、互いにY方向に間隔をあけて配置されている。一対の下部ガイド部46,46の間隔は、下部案内部2の本体部22のY方向の寸法よりもやや大きく形成されている。一対の下部ガイド部46,46における互いにY方向に対向する内側面461,461は、鉛直面に形成されている。
下部摺動部42の下面のうちの一対の下部ガイド部46,46の間の領域に下部当接面41が形成されている。
下部摺動部42は、下部案内部2の上側に配置されると、下部当接面41が下部案内部2の下部摺動面21と当接し、一対の下部ガイド部46,46が下部案内部2の本体部22のY方向の両側方に配置される。一対の下部ガイド部46,46それぞれの内側面461,461は、本体部22のY方向の両側の端面221,221と対向している。本実施形態では、一対の下部ガイド部46,46それぞれの内側面461,461に滑り材462,462が設けられていて、滑り材462,462が本体部22の端面221,221と当接している。
また、下部当接面41のうち、下部屈曲部411よりもX方向の一方側を第1下部当接面412とし、下部屈曲部411よりもX方向の他方側を第2下部当接面413とする。
第1下部当接面412および第2下部当接面413には、それぞれテフロン(登録商標)などの滑り材がそれぞれ設けられている。
下部摺動部42の上面は略水平面に形成され、積層ゴム45が接続されている。
一対の上部ガイド部47,47は、互いにX方向に間隔をあけて配置されている。一対の上部ガイド部47,47の間隔は、上部案内部3の本体部22のX方向の寸法よりもやや大きく形成されている。一対の上部ガイド部47,47における互いにX方向に対向する内側面471,471は、鉛直面に形成されている。
上部摺動部44の下面のうちの一対の上部ガイド部47,47の間の領域に上部当接面43が形成されている。
上部摺動部44は、上部案内部3の下側に配置されると、上部当接面43が上部案内部3の下部摺動面21と当接し、一対の上部ガイド部47,47が上部案内部3の本体部32のX方向の両側方に配置される。一対の上部ガイド部47,47それぞれの内側面471,471は、本体部32のX方向の両側の端面321,321と対向している。本実施形態では、一対の上部ガイド部47,47それぞれの内側面471,471に滑り材472,472が設けられていて、滑り材472,472が本体部32の端面321,321と当接している。
また、上部当接面43のうち、上部屈曲部431よりもY方向の一方側を第1上部当接面432とし、上部屈曲部431よりもY方向の他方側を第2上部当接面433とする。
第1上部当接面432および第2上部当接面433には、それぞれテフロン(登録商標)などの滑り材がそれぞれ設けられている。
上部摺動部44の上面は略水平面に形成され、積層ゴム45が接続されている。
積層ゴム45は、下部摺動部42と上部摺動部44とが水平方向に相対変位すると、下部摺動部42と上部摺動部44との相対変位に追従してゴム部分451が弾性変形する。そして、弾性変形したゴム部分451の復元力(弾性すべり復元力)により下部摺動部42と上部摺動部44とが原位置に復元されるように構成されている。
上部案内部3に作用する鉛直荷重をWとすると、傾斜復元力(水平力)Fは水平面に対する傾斜角θをとしてF=Wtanθと表される。
積層ゴム45の初期剛性kは、積層ゴム45のせん断剛性G、積層ゴム45のゴム部分451の水平断面積A、積層ゴム45のゴム部分451の厚さ寸法(総厚)tから下式(3)のように求められる。
ちなみに、積層ゴム45を用いていない従来の免震機構(傾斜すべり支承)の復元力特性を図6に示す。図5と図6とを比べると、従来の免震機構の復元力特性では、弾性勾配が∞となる点が本実施形態による免震機構1の復元力特性と異なっている。
摩擦係数μ=0.01〜0.1のすべり支承は、免震部材として一般的に適用されている。例えばtanθ=0.02(傾斜角:1/50)は、θ=1.1°に相当する。摩擦係数μであるすべり面の勾配は、tanθ≧μであれば残留変位を完全に除去できるが、この0.1〜0.4倍であってもほぼ残留変形をなくせることができる。本実施形態による免震機構1では、これと全く同じ効果を重力を用いてばねなしで実現している。
上述した本実施形態に係る免震機構1では、摺動子4が下部案内部2の下部摺動面21および上部案内部3の上部摺動面31を摺動する前に、摺動子4に組込まれた積層ゴム45が変形するため、積層ゴム45が設けられていない免震機構と比べ初期剛性kは小さくなる。これにより、摺動子4が下部案内部2の下部摺動面21および上部案内部3の上部摺動面31を摺動し始める際の剛性変化が緩和されるので、摩擦抵抗力の増大も緩和され応答加速度を抑制できる。
また、本実施形態による免震機構1では、復元用のゴム支承を設けないことにより、大地震時に免震層13が短周期化することはなく、応答加速度を抑制できる。更に、傾斜復元力を風荷重より大きく設定しておくことで、風に対するストッパーが不要となる。
例えば、上記の実施形態では、免震機構1は、免震層13に複数設けられているが、1つのみ設けられていてもよい。
また、上記の実施形態では、免震層13に設けられた複数の免震機構1,1…は、それぞれ同じ形態であるが、異なる形態としてもよい。例えば、水平変位設定値δBの異なる本実施形態と同様の2種類の免震機構(傾斜弾性滑り支承A,B)と、摺動子に本実施形態のような積層ゴム45が設けられていない従来の免震機構(傾斜すべり支承)とを混在させるようにしてもよい。
例えば、微小地震では傾斜すべり支承も傾斜弾性すべり支承もすべらずに、免震層13の変位は0のままとなる。小地震では傾斜すべり支承はすべり、傾斜弾性すべり支承A,Bは積層ゴムだけ変形する。中地震では傾斜すべり支承と傾斜弾性すべり支承Aがすべり、傾斜弾性すべり支承Bはゴム部分だけ変形する。大地震では全ての支承(傾斜すべり支承および傾斜弾性すべり支承A,B)がすべり、免震層の変位が増加する。
2 下部案内部
3 上部案内部
4 摺動子
11 下部構造体
12 上部構造体
13 免震層
21 下部摺動面
31 上部摺動面
41 下部当接面
42 下部摺動部
43 上部当接面
44 上部摺動部
45 積層ゴム
Claims (2)
- 水平方向に相対変位可能な下部構造体と上部構造体との間に設けられる免震機構において、
前記下部構造体の上部に設けられ、一の水平方向に沿って下側に凸となるV字形状に傾斜した平面状の下部摺動面を有する下部案内部と、
前記上部構造体の底部に設けられ、前記一の水平方向に直交する他の水平方向に沿って上側に凸となる逆V字形状に傾斜した平面状の上部摺動面を有する上部案内部と、
前記下部摺動面と前記上部摺動面との間に配置され、前記下部摺動面に沿って前記下部案内部と前記一の水平方向に相対変位可能であるともに、前記上部摺動面に沿って前記上部案内部と前記他の水平方向に相対変位可能な摺動子と、を有し、
前記摺動子は、前記下部摺動面を摺動可能な下部摺動部と、前記下部摺動部の上側に配置されて前記上部摺動面を摺動可能な上部摺動部と、前記下部摺動部と前記上部摺動部との間に配置され前記下部摺動部と前記上部摺動部とを水平方向に相対移動可能に支持する積層ゴムと、を有し、
前記下部構造体と前記上部構造体とが水平方向に相対変位すると、該相対変位に追従して前記積層ゴムが水平方向に変形し、前記積層ゴムの原位置に対する水平変位が所定の水平変位設定値δBを超えた後に、前記摺動子が前記下部摺動面および前記上部摺動面の少なくとも一方で摺動することを特徴とする免震機構。 - 前記下部摺動面の水平面に対する傾斜角と、前記上部摺動面の水平面に対する傾斜角とは、それぞれ同じ傾斜角θであり、
前記下部摺動面と前記下部摺動部との摩擦係数と、前記上部摺動面と前記上部摺動部との摩擦係数とは、それぞれ同じ摩擦係数μであり、
前記積層ゴムにおけるゴム部分の初期剛性kは、前記積層ゴムのせん断剛性G、前記積層ゴムの水平断面積A、および前記ゴム部分の厚さ寸法tから下式(1)によって計算され、
前記積層ゴムの水平変位設定値δBは、前記摺動子が前記下部摺動面および前記上部摺動面の少なくとも一方に対して摺動を開始する際の水平せん断力QB、前記上部案内部に作用する鉛直荷重W、前記傾斜角θ、前記摩擦係数μ、前記積層ゴムの最大せん断ひずみγmax、および前記ゴム部分の厚さ寸法tから下式(2)によって計算されることを特徴とする請求項1に記載の免震機構。
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JP2017026072A JP2018132123A (ja) | 2017-02-15 | 2017-02-15 | 免震機構 |
Applications Claiming Priority (1)
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2017
- 2017-02-15 JP JP2017026072A patent/JP2018132123A/ja active Pending
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