JP2019127530A - エアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物及びエアバッグ収納カバー - Google Patents

エアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物及びエアバッグ収納カバー Download PDF

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Abstract

【課題】低温耐衝撃性、引張特性、射出成形性等に優れ、且つアラミド繊維などから作られた強度補強用ファブリックへの接着性にも優れたエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物を提供する。【解決手段】下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含むエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。成分(A)100質量部に対し、成分(B)を10〜160質量部、成分(C)を1〜15質量部含有する。成分(A):プロピレン単位含有量が85〜100質量%であるプロピレン系重合体成分(B):エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)と、スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物(B−2)とのいずれか一方又は双方成分(C):変性ポリオレフィン【選択図】なし

Description

本発明は、低温耐衝撃性、引張特性、射出成形性等に優れ、且つアラミド繊維などから作られた強度補強用ファブリックへの接着性にも優れたエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物と、このエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバーに関する。
自動車用エアバッグシステムは自動車等の衝突の際に運転手や搭乗者を保護するシステムであり、衝突の際の衝撃を感知する装置と、この衝突感知装置の衝突の感知に応じてエアバッグを膨張させるように作動するエアバッグ装置とを有する。このエアバッグ装置は、ステアリングホイール、助手席前方のインストルメントパネル、運転席及び助手席のシート、フロント及びサイドピラー等に設置される。
エアバッグ装置におけるエアバッグ収納カバーについては、エアバッグ膨脹時に、設計通りに開裂するように、その構造や材質において種々提案がなされている。
従来、エアバッグ収納カバー向けの材料としては例えば、特許文献1〜2には、プロピレン系重合体を含むポリオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が提案されている。また特許文献3のように、スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物、ゴム用可塑剤、オレフィン系樹脂及び添加剤からなるものが提案されている。
一方で、特許文献4には、電子機器を収容する装置内部などの用途で、オレフィン系熱可塑性エラストマー100質量部と、(B)無水マレイン酸変成ポリプロピレン又は無水マレイン酸変性ポリブタジエン1〜20質量部とを含有するガスケット材料が提案されている。特許文献5には、ポリオレフィン樹脂とオレフィン系共重合体ゴムとからなるオレフィン系熱可塑性エラストマー100質量部、無水マレイン酸の付加量が1〜8質量%の無水マレイン酸変性低分子量ポリプロピレン2〜20質量部、及びゴム用粘着付与剤1〜20質量部からなるオレフィン系樹脂組成物が提案されており、この組成物によれば、自動車外装部品としてのバンパーサイドモール、泥よけ等の塗装において、既存塗装工程のうち、プライマー塗布工程を省いて、充分な塗膜密着強度を持った塗装品が得られることが記載されている。
特開2002−194098号公報 特開2016−186041号公報 特開平5−38996号公報 特開2004−52868号公報 特開平4−154850号公報
近年、エアバッグの展開出力向上に対応した低温域及び高温域における安全性の強化、設計の自由度等の観点から、高温強度と低温耐衝撃性がより改善された材料の開発が望まれると共に、エアバッグ収納カバーのデザインと成形の自由度拡大のための工夫が必要されている。
例えば、エアバッグ装置展開時の強い衝撃を吸収するために、最近では切断強度の高いアラミド繊維などから作られた強度補強用ファブリックを使用した熱可塑性エラストマー組成物のインサート成形で、得られるエアバッグ収納カバーの切断強度は飛躍的に向上し、展開時の安全性はより一層高められている。
この場合、熱可塑性エラストマー組成物とファブリックを構成する繊維との接着強度を十分に高め、展開時の強い衝撃によっても熱可塑性エラストマー組成物とファブリックとが剥離することを確実に防止することが重要である。
しかし、本発明者の詳細な検討によれば、前記特許文献1〜3に記載されているような従来のエアバッグ収納カバー向けの材料では、アラミド繊維製ファブリックとの接着強度が不十分であることが見出された。また、特許文献4〜5には、無水マレイン酸で変性したポリプロピレンを含む組成物が開示されているが、その用途はエアバッグ収納カバーとは全く異なる用途であり、またアラミド繊維製ファブリックとの接着強度についての記載はされていない。
本発明の解決すべき課題は、低温耐衝撃性、引張特性、射出成形性等に優れ、且つアラミド繊維などから作られた強度補強用ファブリックに対する接着性にも優れたエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物と、このエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバーを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に、変性ポリオレフィンを配合することにより、低温耐衝撃性能と引張特性を保持しながら、ファブリックとの接着性が飛躍的に向上し、上記課題を解決することができることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の要旨は以下の[1]〜[5]に存する。
[1] 下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含むエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物であって、成分(A)100質量部に対し、成分(B)を10〜160質量部、成分(C)を1〜15質量部含有する、エアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):プロピレン単位含有量が85〜100質量%であるプロピレン系重合体
成分(B):エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)と、スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物(B−2)とのいずれか一方又は双方
成分(C):変性ポリオレフィン
[2] 前記成分(A)のメルトフローレート(測定温度230℃、測定荷重21.18N)が1〜150g/10分である、[1]に記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
[3] 前記成分(B−1)のエチレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンの炭素数が3〜8である、[1]又は[2]に記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
[4] 前記成分(B−2)のスチレン・共役ジェンブロック共重合体及び/又はその水素添加物の重量平均分子量(Mw)が50,000〜500,000である、[1]乃至[3]のいずれかに記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
[5] [1]乃至[4]のいずれかに記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバー。
本発明のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物は、低温耐衝撃性、引張特性等に優れ、且つアラミド繊維製ファブリック等の強度補強用ファブリックへの接着性にも優れる上に、エアバッグ収納カバーに成形するための射出成形性等にも優れる。
このため、本発明のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物の射出成形体として、低温から高温までの幅広い温度領域で展開性能に優れると共に、強度補強用ファブリックとの一体成形性にも優れたエアバッグ収納カバーを提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
[エアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物]
本発明のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物(以下、「本発明の熱可塑性エラストマー組成物」と称す場合がある。)は、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含む熱可塑性エラストマーであって、成分(A)100質量部に対し、成分(B)を10〜160質量部、成分(C)を1〜15質量部含有することを特徴とする。
成分(A):プロピレン単位含有量が85〜100質量%であるプロピレン系重合体
成分(B):エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)と、スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物(B−2)とのいずれか一方又は双方
成分(C):変性ポリオレフィン
<成分(A)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)として、プロピレン単位含有量が85〜100質量%のプロピレン系重合体を含む。なお、ここで、プロピレン単位含有量とは、プロピレン系重合体を構成する全構造単位のうち、プロピレンに由来してプロピレン系重合体に導入された構造単位の含有量をいう。後述の「α−オレフィン単位」、「エチレン単位」についても同様である。
本発明の熱可塑性エラストマーが、このような成分(A)を含むことにより、射出成形性、押出成形性が向上し、得られる成形体の強度、剛性、外観等を良好なものとすることができる。
成分(A)のプロピレン系重合体としては、プロピレン単位含有量が85〜100質量%であれば、プロピレンの単独重合体(ポリプロピレン)であってもよいし、プロピレン単位に加え、エチレン単位、エチレン及びプロピレン以外のα−オレフィン単位を含有するプロピレン・(エチレン及び/又はα−オレフィン)共重合体であってもよい。プロピレン・(エチレン及び/又はα−オレフィン)共重合体は、また、プロピレン系ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。また、エチレン及びα−オレフィン以外の単量体単位を含有するものであってもよい。
成分(A)がα−オレフィン単位を有するプロピレン系共重合体である場合、エチレン及びプロピレン以外のα−オレフィン単位としては、炭素数4〜20のα−オレフィンを挙げることができる。炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等が挙げられる。プロピレン以外のα−オレフィンとしては、好ましくは炭素数4〜10のα−オレフィンであり、より好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
成分(A)のプロピレン系重合体としては、より具体的には、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・エチレン・1−オクテン共重合体等のエチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種の単量体とプロピレンとの共重合体が挙げられる。
また、成分(A)は、プロピレン単位含有量が90〜100質量%であるプロピレン系重合体成分(A1)と、エチレン・プロピレン共重合体成分(A2)からなるプロピレン系重合体であってもよく、このようなプロピレン系重合体としては、好ましくは第1工程でプロピレン単位含有量が90〜100質量%であるプロピレン系重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体等を例示することができる。即ち、このようなプロピレン系重合体としては、成分(A1)に該当するプロピレン系重合体と、成分(A2)に該当するエチレン・プロピレン共重合体とを混合してなるものであってもよいが、成分(A)としては、第1工程で成分(A1)に該当するプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程で成分(A2)に該当するエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体であることが、低温耐衝撃性及び高温強度の観点から好ましい。
これらの中でも特に、成分(A)としては、低温耐衝撃性及び高温強度の観点から、ポリプロピレン、或いは第1工程でプロピレン単位含有量が90〜100質量%であるプロピレン系重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体であることが好ましい。
成分(A)のプロピレン系重合体のプロピレン単位含有量は、成分(A)全体に対し、好ましくは85〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%である。成分(A)のプロピレン単位の含有量が前記下限値以上であることにより、耐熱性及び剛性が良好となる傾向にある。なお、成分(A)中のプロピレン単位含有量やエチレン単位含有量、α−オレフィン単位含有量は、赤外分光法により求めることができる。
成分(A)が、プロピレン単位含有量が90〜100質量%であるプロピレン系重合体成分(A1)と、エチレン・プロピレン共重合体成分(A2)からなるプロピレン系重合体、好ましくは第1工程でプロピレン単位含有量が90〜100質量%であるプロピレン系重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体である場合、成分(A)は、成分(A1)と成分(A2)との合計量に対し、成分(A1)を60〜95質量%含有することが好ましい。成分(A)中の成分(A1)の含有量が上記下限よりも少ないと力学強度、剛性が低下する傾向があり、上記上限よりも多いと成分(A2)を含むことによる耐衝撃性の向上効果を十分に得ることができなくなる。成分(A)中の成分(A1)の含有量は、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上で、より好ましくは93質量%以下である。
成分(A)における成分(A1)及び成分(A2)の各成分の含有量は、昇温溶出分別法(TREF)により成分(A1)および成分(A2)を分離し、赤外分光法により成分(A1)および(A2)のプロピレン単位含有量及びエチレン単位含有量を分析することで求めることができる。
なお、成分(A2)のエチレン・プロピレン共重合体のエチレン単位含有量は、前述の成分(A)の好ましいプロピレン単位含有量を満たす程度であればよいが、通常20〜80質量%程度である。
成分(A)のメルトフローレート(測定温度230℃、測定荷重21.18N)は、限定されないが、通常0.1g/分以上であり、成形体の外観の観点から、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは10g/10分以上であり、更に好ましくは20g/10分以上であり、特に好ましくは30g/10分以上である。また、成分(A)のメルトフローレート(測定温度230℃、測定荷重21.18N)は、通常、200g/10分以下であり、引張り強度の観点から、好ましくは150g/10分以下であり、更に好ましくは100g/10分以下である。成分(A)のメルトフローレートは、ISO 1133に従って、測定温度230℃、測定荷重21.2Nの条件で測定される。
成分(A)としては、前述のプロピレン系重合体の1種を単独で用いてもよく、単量体組成や物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよいが、2種以上を混合して用いる場合、混合物としての成分(A)が前述のプロピレン単位含有量及びメルトフローレートを満たすことが好ましい。
成分(A)のプロピレン系重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた重合法を挙げることができる。該重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。
また、成分(A)は市販の該当品を用いることも可能である。具体的には、下記に挙げる製造者等から調達可能であり、適宜選択することができる。入手可能な市販品としては、プライムポリマー社のPrim Polypro(登録商標)、住友化学社の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー社のポリプロピレンブロックコポリマー、日本ポリプロ社のノバテック(登録商標)PP、LyondellBasell社のMoplen(登録商標)、ExxonMobil社のExxonMobil PP、Formosa Plastics社のFormolene(登録商標)、Borealis社のBorealis PP、LG Chemical社のSEETEC PP、A.Schulman社のASI POLYPROPYLENE、INEOS Olefins&Polymers社のINEOS PP、Braskem社のBraskem PP、SAMSUNG TOTAL PETROCHEMICALS社のSumsung Total、Sabic社のSabic(登録商標)PP、TOTAL PETROCHEMICALS社のTOTAL PETROCHEMICALS Polypropylene、SK社のYUPLENE(登録商標)等がある。
<成分(B)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれる成分(B)は、以下の成分(B−1)及び/又は成分(B−2)からなる。
成分(B−1):エチレン・α−オレフィン共重合体
成分(B−2):スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物
成分(B)としては、成分(B−1)の1種のみを用いてもよく、単量体組成や物性等の異なる成分(B−1)2種以上を混合して用いてもよく、成分(B−2)の1種のみを用いてもよく、単量体組成や物性等の異なる成分(B−2)の2種以上を混合して用いてもよい。また、成分(B−1)の1種又は2種以上と、成分(B−2)の1種又は2種以上を混合して用いてもよい。成分(B−1)を用いた場合には耐候性と低温耐衝撃性能を向上する効果があり、成分(B−2)を用いた場合には引張特性と耐低温耐衝撃性能を向上する効果があり、成分(B−1)と成分(B−2)を適切な割合で併用した場合には低温耐衝撃性能、引張特性と耐候性のバランスを取ることが可能になる。
〈成分(B−1)〉
成分(B−1)は、エチレン・α−オレフィン共重合体であることにより、低温耐衝撃性の向上に寄与する。
成分(B−1)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレン単位に加え、α−オレフィンとして1−プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等を構成単位として有するものを例示することができる。好ましくは、1−プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数3〜8のα−オレフィンである。成分(B−1)のエチレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンは1種のみがエチレンと共重合したものであっても、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。
成分(B−1)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレン単位及びα−オレフィン単位に加え、非共役ジエンに基づく単量体単位(非共役ジエン単位)等の他の単量体単位を有していてもよい。該非共役ジエンとしては、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンのような鎖状非共役ジエン;シクロへキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネンのような環状非共役ジエン等が挙げられる。好ましくは、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンである。
成分(B−1)のエチレン単位の含有量は、エチレン単位の含有量とα−オレフィン単位の含有量との合計量に対し、50質量%以上90質量%以下であることが好ましい。成分(B−1)のエチレン単位の含有量は、成分(B−1)のブロッキングによる融着防止のためには多い方が好ましく、本発明の熱可塑性エラストマーを成形したときの低温耐衝撃性の観点では少ない方が好ましい。成分(B−1)のエチレン単位の含有量は、より好ましくは55質量%以上である。また、エチレン単位の含有量は、より好ましくは80質量%以下である。なお、成分(B−1)におけるエチレン単位の含有量及びα−オレフィン単位の含有量は、それぞれ赤外分光法により求めることができる。
また、成分(B−1)が非共役ジエン単位等の他の単量体単位を有する場合、その含有量は成分(B−1)全体に対して、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。非共役ジエン単位の含有量についても、赤外分光法により求めることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(B−1)として具体的には、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・1−オクテン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体を例示することができる。
成分(B−1)は、エチレンとα−オレフィンのランダム共重合体でもよいし、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α−オレフィン共重合体のブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体でもよい。
成分(B−1)が、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α−オレフィン共重合体のブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体である場合、エチレンからなる重合体ブロックは、エチレンを主体とするものであるが、エチレンに加え他の単量体単位を有していてもよい。ここで「主体とする」とは、全体の50質量%以上、特に55〜80質量%を占めることをさす。他の単量体単位としては1−プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等を例示することができる。好ましくは、1−プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数3〜8のα−オレフィンである。成分(B−1)のエチレンに加え他の単量体単位を有する場合、他の単量体の1種のみがエチレンと共重合したものであっても、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。
一方、エチレン・α−オレフィン共重合体ブロックは、エチレン単位に加え、α−オレフィンとして1−プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等を構成単位として有するものを例示することができる。好ましくは、1−プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数3〜8のα−オレフィンである。成分(B−1)のエチレン・α−オレフィン共重合体ブロックにおけるα−オレフィンは1種のみがエチレンと共重合したものであっても、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。
このエチレン・α−オレフィン共重合体ブロックは、エチレン単位及びα−オレフィン単位に加え、非共役ジエンに基づく単量体単位(非共役ジエン単位)等の他の単量体単位を有していてもよい。該非共役ジエンとしては、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンのような鎖状非共役ジエン;シクロへキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネンのような環状非共役ジエン等が挙げられる。好ましくは、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンである。
成分(B−1)がエチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α−オレフィン共重合体のブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体である場合、具体的には、エチレンからなる重合体ブロックと、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・1−オクテン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体ブロックとを含むブロック共重合体を例示することができる。
これらの中でも、成分(B−1)は、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン−1−オクテン共重合体のブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体であることが最も好ましい。
エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α−オレフィン共重合体のブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体である成分(B−1)は結晶性を有するエチレンからなる重合体ブロックを有することに加え、エチレン・α−オレフィン共重合体のブロックによる非晶性を有する。この非晶性はガラス転移温度により表すことができ、成分(B−1)のDSC法によるガラス転移温度は好ましくは−90℃以上であり、より好ましくは−85℃以上であり、一方、好ましくは−45℃以下であり、より好ましくは−50℃以下である。
成分(B−1)のメルトフローレート(測定温度190℃、測定荷重21.18N)は限定されないが、通常10g/10分以下であり、強度の観点から、好ましくは8.0g/10分以下であり、より好ましくは5.0g/10分以下であり、更に好ましくは3.0g/10分以下である。また、成分(B−1)のメルトフローレート(測定温度190℃、測定荷重21.18N)は、通常、0.01g/10分以上であり、流動性の観点から、好ましくは0.05g/10分以上であり、更に好ましくは0.10g/10分以上である。成分(B−1)のメルトフローレートは、ISO 1133に従い、測定温度190℃、測定荷重21.18Nの条件で測定される。
成分(B−1)の密度は低温耐衝撃性の観点から、好ましくは0.880g/cm以下であり、より好ましくは0.870g/cm以下である。一方、その下限については特に制限されないが、通常0.850g/cm以上である。
成分(B−1)は、特表2007−529617号公報、特表2008−537563号公報、特表2008−543978号公報に開示された方法に従って合成することができる。例えば、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α−オレフィン共重合体のブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体である成分(B−1)は、第1のオレフィン重合触媒と、同等の重合条件下で第1のオレフィン重合触媒によって調製されるポリマーとは化学的性質又は物理的性質が異なるポリマーを調製可能な第2のオレフィン重合触媒と、鎖シャトリング剤と、を組み合わせて得られる混合物又は反応生成物を含む組成物を準備し、上記エチレンとα−オレフィンとを、付加重合条件下で、該組成物と接触させる工程を経て製造することができる。
成分(B−1)の重合には、好ましくは連続溶液重合法が適用される。連続溶液重合法は、触媒成分、鎖シャトリング剤、モノマー類、ならびに場合により溶媒、補助剤、捕捉剤および重合助剤が反応ゾーンに連続的に供給され、ポリマー生成物はそこから連続的に取り出される。また、ブロックの長さは、前記触媒の比率および種類、鎖シャトリング剤の比率および種類、重合温度等を制御することによって変化させることができる。
なお、成分(B−1)のオレフィン系ブロック共重合体の合成方法において、その他の条件は特表2007−529617号公報、特表2008−537563号公報、特表2008−543978号公報に開示されている。
成分(B−1)としては、市販の該当品を用いることもでき、例えばダウ・ケミカル社製Engage(登録商標)、Engage(登録商標)−XLTシリーズ、INFUSE(登録商標)シリーズやSK社製のSolumer(登録商標)等が挙げられる。
〈成分(B−2)〉
成分(B−2)はスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物であり、材料の引張破断強度と伸び率に寄与する。
成分(B−2)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物における好適な共役ジエンはブタジエン、イソプレン又はこれらの混合物である。例えば、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(以下、単に「S−B−S」と略記することがある。)及び/又はその水素添加物(以下、単に「水添S−B−S」と略記することがある。)であるスチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)、或いは、スチレン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物(以下、単に「水添S−I−S」と略記することがある。)であるスチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)、スチレン・ブタジエン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物(以下、単に「水添S−BI−S」と略記することがある)を挙げることができる。
成分(B−2)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物のスチレン含量(スチレン単位含有量)は特に制限されないが、強度と耐熱性の観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上である。また、スチレン含量は、柔軟性と耐衝撃性の観点から、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以下である。
成分(B−2)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物の共役ジエンはNMR法で分析した1,2−ミクロ構造が60モル%以下であることが好ましく、より好ましくは45モル%以下である。1,2−ミクロ構造が60モル%を超えるものは成形性と柔軟性が低下する傾向にある。
また、耐候性の観点から、成分(B−2)としてはスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物が好ましく、またその水素添加率は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
成分(B−2)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物における共役ジエンがイソプレンとブタジエンの混合物の場合、その重量比(イソプレン/ブタジエン)は、一般に99/1〜1/99、好ましくは90/10〜30/70、特に好ましくは80/20〜40/60である。
成分(B−2)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物の重量平均分子量(Mw)は離型性の観点から、好ましくは50,000以上であり、より好ましくは80,000以上であり、更に好ましくは100,000以上である。また、重量平均分子量(Mw)は流動性の観点から、500,000以下が好ましく、より好ましくは450,000以下であり、更に好ましくは400,000以下であり、特に好ましくは350,000以下である。
成分(B−2)の重量平均分子量(Mw)はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC法)により測定されるものであり、例えば、下記条件により測定することができる。
機器:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC(R)」
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel Super HM−M(6.0mm I.D×15cm×2+G)」
検出器:示差屈折率検出器(RI/内蔵)
溶媒:クロロホルム
温度:40℃
流速:0.25mL/分
注入量:0.1質量%×20μL
較正試料:単分散ポリスチレン
較正法:ポリスチレン換算
較正曲線近似式:3次式(双曲線)
排除限界設定時間:12分
成分(B−2)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体の製造方法としては、例えば、特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒を用いて不活性溶媒中でスチレン・共役ジエンブロック共重合体を合成すればよく、また、スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物においては前記のようにスチレン・共役ジエンブロック共重合体を合成し、次いで、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭60−79005号公報に記載された方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加する方法等を挙げることができる。また、水添S−BI−Sは、例えば特開平3−188114号公報に記載された方法により合成することができる。
成分(B−2)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物は、市販品として入手することも可能である。スチレン・共役ジエンブロック共重合体としては、例えば、クレイトンポリマー社製「クレイトン(登録商標)D」等が挙げられる。スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物としては、例えば、クレイトンポリマー社製「クレイトン(登録商標)G」、株式会社クラレ製「セプトン(登録商標)」、旭化成株式会社製「タフテック(登録商標)」等が挙げられる。
<成分(C)>
成分(C)の変性ポリオレフィンとしては、酸変性ポリオレフィン及び/又はヒドロキシ変性ポリオレフィンが挙げられ、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、アラミド繊維等から作られたファブリックへの接着強度向上に寄与する。
成分(C)としては、酸変性ポリオレフィンの1種又は2種以上を用いてもよく、ヒドロキシ変性ポリオレフィンの1種又は2種以上を用いてもよく、酸変性ポリオレフィンの1種又は2種以上とヒドロキシ変性ポリオレフィンの1種又は2種以上とを併用してもよい。
〈酸変性ポリオレフィン〉
酸変性ポリオレフィンとしては、特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。
酸変性ポリオレフィンは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体(EPDMなど)、エチレン・芳香族モノビニル化合物・共役ジエン共重合ゴムなどのポリオレフィンを、例えば、マレイン酸又は無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸及び/又はその無水物等の不飽和カルボン酸誘導体を用いてグラフト共重合して変性したものである。このグラフト共重合は、例えば上記ポリオレフィンを適当な溶媒中において、ベンゾイルパーオキシドなどのラジカル発生剤を用いて、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体と反応させることにより行われる。不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体は、ポリオレフィン用モノマーとのランダムもしくはブロック共重合によりポリマー鎖中に導入することもできる。
変性のため使用される不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基及び必要に応じてヒドロキシル基やアミノ基などの官能基が導入された重合性二重結合を有する化合物が挙げられる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、これらの酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩などがあり、その具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、メタクリル酸ナトリウムなどを挙げることができる。好ましくは無水マレイン酸である。
グラフト反応条件としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキシド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3などのパーオキシエステル類、ベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキシド類、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサンなどのヒドロパーオキシド類などの有機過酸化物を、前記ポリオレフィン100質量部に対して、0.001〜10質量部程度用いて、80〜300℃程度の温度で、溶融状態又は溶液状態で反応させる方法が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンの酸変性量(グラフト量という場合がある)は、特に限定されないが、好ましくは酸変性量が無水マレイン酸換算で、0.05〜10質量%、より好ましくは0.07〜5質量%である。本発明のグラフト量は公知の方法で測定することが可能であり、例えば、特開2011−074398号公報に記載の方法で測定することが可能である。
本発明における効果の大きさなどの点から、好ましい酸変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
〈ヒドロキシ変性ポリオレフィン〉
ヒドロキシ変性ポリオレフィンは、ヒドロキシル基を含有する変性ポリオレフィンである。
変性ポリオレフィンは、ヒドロキシル基を適当な部位に有していればよく、例えば、主鎖の末端や側鎖のいずれの箇所に有していてもよい。
ヒドロキシ変性ポリオレフィンを構成するポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、4−メチルペンテン−1、ヘキセン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセンなどのα−オレフィンの単独又は共重合体、前記α−オレフィンと共重合性単量体との共重合体などが例示できる。
好ましいヒドロキシ変性ポリオレフィンには、ヒドロキシ変性ポリエチレン(ポリエチレンとしては、例えば、低密度、中密度又は高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる);ヒドロキシ変性ポリプロピレン(ポリプロピレンとしては、例えば、アイソタクチックポリプロピレンなどのポリプロピレンホモポリマー、プロピレンとα−オレフィン(例えば、エチレン、ブテン、ヘキサンなどが挙げられる。)とのランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体など);ヒドロキシ変性ポリ(4−メチルペンテン−1)などが例示できる。
ポリオレフィンにヒドロキシル基を導入するための単量体としては、ヒドロキシル基を有する単量体、例えば、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
ヒドロキシル基を有する単量体による変性量は、ポリオレフィンに対して通常0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。
ヒドロキシ変性ポリオレフィンの平均分子量は特に限定されない。該ヒドロキシ変性ポリオレフィンは、例えば低分子量系の場合、共役ジエンモノマーをアニオン重合などの公知の方法により重合させ、それを加水分解して得たポリマーを水素添加する方法で得ることができる。
〈メルトフローレート〉
成分(C)のメルトフローレート(測定温度180℃、測定荷重21.18N)は、限定されないが、通常0.1g/10分以上、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1.0g/10分以上であり、また、通常1000g/10分以下、好ましくは800g/10分以下、より好ましくは700g/10分以下、さらに好ましくは600g/10分以下である。成分(C)のメルトフローレートは、JIS K7210に従って、測定温度180℃、測定荷重21.18Nの条件で測定される。
成分(C)としては、酸変性ポリオレフィン又はヒドロキシ変性ポリオレフィンの1種を単独で用いてもよく、ポリオレフィン組成や変性剤、変性量の異なるものの2種以上を混合して用いてもよいが、2種以上を混合して用いる場合、混合物としての成分(C)が上記メルトフローレートを満たすことが好ましい。
<配合割合>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の原料の配合割合について以下に説明する。なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は成分(A)〜成分(C)を必須成分として含むものであるが、以下に説明する各成分の配合割合は仕込み量を意味するものである。
成分(A)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計量に対し、得られる成形体の強度、剛性、外観等の観点から10質量%以上であり、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。また、成形加工性の観点から、85質量%以下であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。
成分(B)の含有量は、成分(A)の100質量部に対し、低温衝撃性能と柔軟性の観点から10質量部以上であり、好ましくは50質量部以上であり、より好ましくは60質量部以上である。一方、剛性と成形性の観点から160質量部以下であり、好ましくは140質量部以下であり、より好ましくは120質量部以下である。なお、成分(B)として、成分(B−1)と成分(B−2)を併用する場合、これらの合計100質量部に対して、成分(B−1)を30〜70質量部、成分(B−2)70〜30質量部用いることが、耐低温衝撃性能と引張特性向上の観点から好ましい。
成分(C)の含有量は、成分(A)の100質量部に対し、アラミド繊維等から作られたファブリックとの接着強度の観点から1質量部以上であり、好ましくは6質量部以上であり、より好ましくは8質量部以上である。一方、低温衝撃性能の観点から20質量部以下であり、好ましくは15質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下である。
<その他の任意成分>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、上記の成分以外に本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、各種目的に応じて以下の添加剤、充填材(無機フィラー、有機フィラー)や成分(A)〜成分(C)以外の樹脂(以下、「その他の樹脂」と称する)等の任意成分を配合することができる。
添加剤としては、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防雲剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性剤、分子量調整剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種添加剤を挙げることができる。これらの添加剤は通常、成分(A)〜成分(C)の合計100質量部に対し、それぞれの添加剤を0.01〜2質量部の範囲で配合して用いることができる。
添加剤のうち、酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤を用いる場合、成分(A)〜成分(C)の合計100質量部に対して、通常0.01〜3.0質量部の範囲で用いられる。
滑剤としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、シリコーンオイル等が挙げられる。滑剤を用いる場合、成分(A)〜成分(C)の合計100質量部に対して通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
充填材としては、例えば、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、金属石鹸、二酸化チタン、カーボンブラック等を挙げることができる。充填材を用いる場合、成分(A)〜成分(C)の合計100質量部に対して、通常0.1〜50質量部の範囲で用いられる。
成分(A)〜成分(C)以外の樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリオレフィン樹脂(だだし、成分(A)〜成分(C)に該当するものを除く。)、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂や前記以外の各種エラストマーなどが挙げられる。上記で挙げたその他の樹脂は1種のみを含有しても2種以上を含有してもよい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物がこれらのその他の樹脂を含有する場合、成分(A)〜成分(C)を含むことによる前述の効果を有効に得る上で、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、全樹脂成分中の成分(A)〜(C)の合計量が60質量%以上となるように、即ち、全樹脂成分中のその他の樹脂の割合が40質量%以下となるように、その他の樹脂を含むことが好ましい。
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び必要に応じて用いられるその他の任意成分を動的熱処理して製造される。
本発明において「動的熱処理」とは溶融状態又は半溶融状態で混練することを意味する。この動的熱処理は、溶融混練によって行うのが好ましく、そのための混合混練装置としては、例えば非開放型バンバリーミキサー、ミキシングロール、ニーダー、二軸押出機等が用いられる。これらの中でも二軸押出機を用いることが好ましい。この二軸押出機を用いた製造方法の好ましい態様としては、複数の原料供給口を有する二軸押出機の原料供給口(ホッパー)に各成分を供給して動的熱処理を行うものである。
動的熱処理を行う際の温度は、通常80〜300℃、好ましくは100〜250℃である。また、動的熱処理を行う時間は通常0.1〜30分である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を二軸押出機により動的熱処理を行う場合においては、二軸押出機のバレル半径R(mm)、スクリュー回転数N(rpm)及び吐出量Q(kg/時)の間に下記式(1)の関係を保ちながら押出することが好ましく、下記式(2)の関係を保ちながら押出することがより好ましい。
2.6<NQ/R<22.6 (1)
3.0<NQ/R<20.0 (2)
二軸押出機のバレル半径R(mm)、スクリュー回転数N(rpm)及び吐出量Q(kg/時)との間の前記関係が上記下限値より大きいことが熱可塑性エラストマー組成物を効率的に製造するために好ましい。一方、前記関係が上記上限値より小さいことが、剪断による発熱を抑え、外観不良の原因となる異物が発生しにくくなるために好ましい。
<熱可塑性エラストマー組成物のメルトフローレート>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ISO 1133に準拠した測定温度230℃、測定荷重21.18Nでのメルトフローレート(MFR)が0.1〜150g/10分であることが好ましい。MFRが0.1g/10分より小さいと流動性に乏しく射出成形や押出成形に不適となり、また、150g/10分より大きいと射出成形時にバリ、フローマークのような成形品の外観不良等の原因となり、また押出成形時に成形品が著しく変形する可能性がある。流動性の観点からは、MFRはより好ましくは0.5g/10分以上である。一方、成形時にバリやフローマーク、ヒケ等を抑える観点からは、MFRはより好ましくは100g/10分以下であり、更に好ましくは50g/10分以下であり、特に好ましくは30g/10分以下である。
なお、本発明の熱可塑性エラストマーのMFRは流動性の高い成分である成分(A)を多くすると高くなる傾向にあり、また、流動性の低い成分(B)を多くするほど低くなる傾向にある。
<成形法>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて公知の方法により成形して各種の成形体として使用することができる。成形法としては、熱可塑性エラストマーに通常用いられている成形法、例えば、射出成形法、押出成形法、中空成形法、圧縮成形法等が挙げられる。また、その後に積層成形、熱成形等の二次加工を行なってもよい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は単体で成形体としてもよく、他の材料と組み合わせ、積層体等としてもよい。
[エアバッグ収納カバー]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いて、一般に、通常の射出成形法、又は、必要に応じて、ガスインジェクション成形法、射出圧縮成形法、ショートショット発泡成形法等の各種成形法を用いて成形体とすることによりエアバッグ収納カバーとして用いることができる。特に、エアバッグ収納カバーを射出成形する際の成形条件は以下の通りである。
エアバッグ収納カバーを射出成形する際の成形温度は通常150〜300℃であり、好ましくは180〜280℃である。射出圧力は通常5〜100MPaであり、好ましくは10〜80MPaである。また、金型温度は通常0〜80℃であり、好ましくは20〜60℃である
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られたエアバッグ収納カバーは、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開によって乗員を保護するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして用いられる。また、本発明のエアバッグ収納カバーは、運転席用エアバッグ収納カバー、助手席用エアバッグ収納カバー、歩行者用エアバッグ収納カバー、ニー・エアバッグ収納カバー、サイド・エアバッグ収納カバー、カーテン・エアバッグ収納カバー等のいずれにも好適に用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[使用原料]
<成分(A)>
プロピレン系重合体(日本ポリプロ社製 ノバテック(登録商標)PP BC03B、エチレン・プロピレンブロック共重合体、プロピレン単位含有量:91質量%、MFR(ISO 1133(230℃、21.18N)):30g/10分)
<成分(B)>
(B−1):オレフィン系共重合体(ダウ・ケミカル社製 Engage(登録商標)EG8150、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン単位含有量:63質量%、ガラス転移温度:−52℃、MFR(ISO 1133(190℃、21.18N)):0.5g/10分、密度:0.86g/cm、ムーニ―粘度ML1+4(121℃):33)
(B−2):スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(クレイトンポリマーズ社製 クレイトン(登録商標)G1651HU、重量平均分子量(Mw):264,000、スチレン含量:33質量%、共役ジエン成分の1,2−ミクロ構造:30モル%、水素添加率:99%以上)
<成分(C)>
(C−1):以下の方法で製造した酸変性ポリプロピレン(溶液変性)
クロロベンゼン6Lに、プロピレン単独重合体(密度:0.90g/cm、MFR(ISO 1133(230℃、21.18N)):0.6g/10分)のパウダー5kg、無水マレイン酸500gを130℃で溶解させた。次いで、この溶液にジクミルペルオキシドのクロロベンゼン溶液(200g/400L)を加えた。さらに130℃で8時間反応を続け、次いで40℃まで冷却し、樹脂を析出させた。析出させた樹脂をろ過し、さらにアセトンで繰り返し洗浄し、90℃で減圧乾燥してグラフト率2.5質量%の酸変性ポリプロピレンを得た。
得られた酸変性ポリプロピレンの密度は0.89g/cm、MFR(JIS K7210(180℃、21.18N))は500g/10分であった。
<酸化防止剤>
テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャリティケミカルズ社製 イルガノックス(登録商標)1010)
[評価方法]
<流動性:MFR>
得られた熱可塑性エラストマー組成物について、ISO 1133に準拠して測定温度230℃、測定荷重21.18Nでの条件で測定した。流動性の観点からMFRは0.5g/10分以上のものが好ましい。
<低温耐衝撃性:アイゾット衝撃強度>
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友重機械工業株式会社製「SE−180」)により、射出圧力70MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃にて、アイゾット衝撃強度測定用の試験片(ノッチ無し厚さ4mm×幅10mm×長さ80mmの試験片)に成形し、その後ノッチングマシンでノッチを入れ、試験片を作成した。得られた試験片について、ISO 180に従って、温度−40℃、−45℃におけるアイゾット衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。このアイゾット衝撃試験における同温度評価したアイゾット衝撃強度の値が高ければ、低温耐衝撃性が優れる。評価温度が違う場合、評価温度が低く、かつ評価結果が良ければ、低温耐衝撃性能が優れる。また破壊状態は、部分破壊、ヒンジ破壊、完全破壊の順番で低温衝撃性能が悪いものとなる。各表記の意味は下記の通りである。
HB:ヒンジ破壊:折れ曲がり剛さがなくなったヒンジ状の薄い表層だけが、一体になって離れない試験片となった不完全破壊。部分破壊より低温衝撃性が悪い。
P:部分破壊:ヒンジ破壊の定義に合わない、不完全破壊。ヒンジ破壊よりも低温衝撃性に優れる。
C:完全破壊:試験片が2つ以上の破片に破壊するもの。低温衝撃性能が最も悪い。
なお、表−1中、「80(P)」とはアイゾット衝撃強度が80kJ/mで部分破壊であることを表す。
また、「88(P)2/4」とは4本サンプルを評価し、2本のアイゾット衝撃強度が88kJ/mで部分破壊であることを表す。
<引張特性:引張破壊試験>
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友重機械工業株式会社製「SE−180」)により、射出圧力70MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃にて、引張試験用の試験片(厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシート)を成形した後、ISO 37に準拠(Type−1A号ダンベル)して打ち抜いた。この打ち抜き試験片について、ISO 37に従って、引張速度500mm/分で、切断時引張応力(単位:MPa)と切断時引張伸び率(単位:%)を23℃の雰囲気下にて測定した。
<曲げ弾性率>
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友重機械工業株式会社製「SE−180」)により、射出圧力70MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃にて、曲げ弾性率測定用の試験片(厚さ4mm×幅10mm×長さ80mmの試験片)を成形し、この試験片について、ISO 178に準拠して、スパン間64mm、曲げ速度2mm/分にて曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。曲げ弾性率は200〜400MPaの範囲が好ましい。
<アラミド繊維製ファブリックとの接着強度>
アラミド繊維製ファブリック(厚さ0.5mm)を金型内にインサートしてあらかじめ両面テープで固定し、インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友重機械工業株式会社製「SE−180」)により、得られた熱可塑性エラストマー組成物を、射出圧力60MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃にて射出して、100mm×100mm×3mmのシートを成形した。
得られたファブリックインサート成形品から25mm幅で、ファブリックとの接着長さ50mmの試験片を切り出し、SHIMAZU製のAUTOGRAPH 2000により、23℃試験環境の中引張速度100mm/minで引張テストを実施し、ファブリックと樹脂材の最大接着強度(単位:Kgf)を測定した。
[実施例1〜4、比較例1〜4]
表−1に示す配合組成で各成分をヘンシェルミキサーにて1分間ブレンドした。同方向二軸押出機(東芝機械社製「TEM−26SS」、L/D=48.5、シリンダブロック数:12)へ25kg/hの速度で混合原料を投入し、160〜210℃の範囲で昇温させ溶融混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットについて、前述の評価を行った。それらの評価結果を表−1に示す。
Figure 2019127530
表−1より、成分(C)を本発明の範囲で含む実施例1〜4の熱可塑性エラストマー組成物は、低温衝撃性能及び引張特性、ファブリックとの接着強度と低温衝撃性能のバランスにおいて、成分(A)と成分(B)を同配合とした比較例1〜4より優れることが分かる。
比較例1と比較例3は低温衝撃性能が優れているが、成分(C)を含まないことにより、ファブリックとの接着強度が非常に低くなっている。
比較例2と比較例4は成分(C)の配合量が多いにもかかわらず、ファブリックとの接着強度は実施例2及び実施例4により大きく向上できておらず、低温耐衝撃性能が大幅に低下していることから、成分(C)の配合量が多過ぎるのは好ましくないことが分かる。

Claims (5)

  1. 下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含むエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物であって、成分(A)100質量部に対し、成分(B)を10〜160質量部、成分(C)を1〜15質量部含有する、エアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
    成分(A):プロピレン単位含有量が85〜100質量%であるプロピレン系重合体
    成分(B):エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)と、スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物(B−2)とのいずれか一方又は双方
    成分(C):変性ポリオレフィン
  2. 前記成分(A)のメルトフローレート(測定温度230℃、測定荷重21.18N)が1〜150g/10分である、請求項1に記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 前記成分(B−1)のエチレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンの炭素数が3〜8である、請求項1又は2に記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 前記成分(B−2)のスチレン・共役ジェンブロック共重合体及び/又はその水素添加物の重量平均分子量(Mw)が50,000〜500,000である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバー。
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