JP2022147137A - 熱可塑性エラストマー組成物、成形体およびエアバッグ収納カバー - Google Patents
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Abstract
【課題】高温強度、低温耐衝撃性、および離型性に優れた熱可塑性エラストマー組成物と該熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体およびエアバッグ収納カバーを提供する。【解決手段】少なくとも下記成分(A)~(C)を含有し、かつ、成分(B)の質量/成分(A)の質量が0.6以上である、熱可塑性エラストマー組成物。成分(A):プロピレン系重合体成分(B):エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体成分(C):高密度ポリエチレン【選択図】なし
Description
本発明は、高温強度、低温耐衝撃性、および離型性に優れた熱可塑性エラストマー組成物と、この熱可塑性エラストマー組成物を用いた成形体およびエアバッグ収納カバーに関する。
自動車用エアバッグシステムは自動車等の衝突の際に運転手や搭乗者を保護するシステムであり、衝突の際の衝撃を感知する装置とエアバッグ装置とからなる。このエアバッグ装置は、ステアリングホイール、助手席前方のインストルメントパネル、運転席および助手席のシート、フロントおよびサイドピラー等に設置される。
エアバッグ装置におけるエアバッグ収納カバーは、エアバッグ膨脹時に、それを収納しているカバーの破壊による破片の飛散やカバー取り付け部の破壊によるカバーの飛散が懸念される。このため、カバーが異常な破壊をして飛散するのを防止することを目的として、その構造や材質において種々の提案がなされている。
従来、エアバッグ収納カバー向けの材料としては、例えば特許文献1に、プロピレン系樹脂、エチレン・α-オレフィン共重合体、相溶化剤、高密度ポリエチレンを有機過酸化物の存在下で動的熱処理することによって得られる熱可塑性エラストマーが提案されている。また、特許文献2~3には、プロピレン系樹脂、高密度ポリエチレンおよびエチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体からなるものが提案されている。また、特許文献4には、プロピレン系樹脂、エチレン・α-オレフィン共重合体、低密度ポリエチレンからなる熱可塑性エラストマーからなるエアバッグ収納カバーが提案されている。
近年、エアバッグ展開出力向上による低温域および高温域でのエアバッグ収納カバーの破損が懸念されるため、安全性の強化、設計の自由度等の観点から高温強度、低温耐衝撃性を高めた材料としての熱可塑性エラストマー組成物の開発が望まれている。また、エアバッグ収納カバーの成形時には離型の不具合を防ぐ必要があり、離型性に優れた材料であることが望まれる。
しかしながら、本発明者らの詳細な検討によれば、前記特許文献1~4に記載されているような従来のエアバッグ収納カバー向けの材料においては、高温強度や低温耐衝撃性、離型性が不十分であることが見出された。
本発明は上記のような従来技術の問題を鑑みてなされたものである。
即ち、本発明の課題は、高温強度、低温耐衝撃性、および離型性に優れた熱可塑性エラストマー組成物と該熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体およびエアバッグ収納カバーを提供することにある。
即ち、本発明の課題は、高温強度、低温耐衝撃性、および離型性に優れた熱可塑性エラストマー組成物と該熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体およびエアバッグ収納カバーを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、プロピレン系重合体と、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体とを特定の配合比率で含み、かつ高密度ポリエチレンを含む熱可塑性エラストマー組成物が、高温強度、低温耐衝撃性、および離型性に優れることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は以下の[1]~[9]に存する。
すなわち、本発明の要旨は以下の[1]~[9]に存する。
[1] 少なくとも下記成分(A)~(C)を含有し、かつ、成分(B)の質量/成分(A)の質量が0.6以上である、熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体
成分(C):高密度ポリエチレン
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体
成分(C):高密度ポリエチレン
[2] 前記熱可塑性エラストマー組成物における成分(A)~(C)の含有量が、成分(A)の含有量>成分(B)の含有量>成分(C)の含有量である、[1]の熱可塑性エラストマー組成物。
[3] 前記成分(B)が、110~125℃に結晶融解ピークを有し、かつその結晶融解熱量が20~60J/gである、[1]又は[2]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[4] 前記成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックのα-オレフィンの炭素数が4~8である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[5] 前記成分(B)が、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・1-オクテン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体である、[1]乃至[4]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[6] 前記成分(A)が、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体である、[1]乃至[5]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[7] 前記成分(A)のメルトフローレート(測定温度230℃、測定荷重21.18N)が10~150g/10分である、[1]乃至[6]のいずれかに記載の可塑性エラストマー組成物。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してなる成形体。
[9] [1]~[7]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバー。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、高温強度、低温耐衝撃性、および離型性に優れたものである。このため、本発明の熱可塑性エラストマー組成物によれば、高温強度、低温耐衝撃性、および離型性に優れたエアバッグ収納カバーが提供される。
本発明のエアバッグ収納カバーは、運転席用エアバッグ収納カバー、助手席用エアバッグ収納カバー、歩行者用エアバッグ収納カバー、ニー・エアバッグ収納カバー、サイド・エアバッグ収納カバー、カーテン・エアバッグ収納カバー等のいずれにも好適に用いることができる。
本発明のエアバッグ収納カバーは、運転席用エアバッグ収納カバー、助手席用エアバッグ収納カバー、歩行者用エアバッグ収納カバー、ニー・エアバッグ収納カバー、サイド・エアバッグ収納カバー、カーテン・エアバッグ収納カバー等のいずれにも好適に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本発明において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、下記成分(A)~(C)を含有し、かつ、成分(B)の質量/成分(A)の質量が0.6以上である、熱可塑性エラストマー組成物である。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体
成分(C):高密度ポリエチレン
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、下記成分(A)~(C)を含有し、かつ、成分(B)の質量/成分(A)の質量が0.6以上である、熱可塑性エラストマー組成物である。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体
成分(C):高密度ポリエチレン
本発明の熱可塑性エラストマー組成物はエアバッグ収納カバーの原料として用いた場合、従来の熱可塑性エラストマー組成物を用いた場合に比べて、高温強度、低温耐衝撃性、および離型性に優れるという効果を奏する。
この効果が発現する理由は明確ではないが、次のようなことが推測される。
成分(B)に含まれるエチレンからなる重合体ブロックと成分(C)の高密度ポリエチレンが良好な相溶性を示すため、熱可塑性エラストマー組成物における成分(B)と成分(C)の分散性がよくなる。そのためミクロで考えた時の各成分の界面が不明瞭となり、高温強度、低温耐衝撃性などの機械物性を向上させていると考えられる。また、成分(C)の高密度ポリエチレンにより形成されるドメインにより、成形時の成形表面が適度に荒れるため、離型性が向上すると考えられる。
また成分(B)の質量/成分(A)の質量を0.6以上とすることは、ガラス転移温度の低い成分(B)を規定量以上配合することを意味しており、このような配合とすることで、高温強度や離型性を損なうことなく、低温耐衝撃性をより向上させることができる。
この効果が発現する理由は明確ではないが、次のようなことが推測される。
成分(B)に含まれるエチレンからなる重合体ブロックと成分(C)の高密度ポリエチレンが良好な相溶性を示すため、熱可塑性エラストマー組成物における成分(B)と成分(C)の分散性がよくなる。そのためミクロで考えた時の各成分の界面が不明瞭となり、高温強度、低温耐衝撃性などの機械物性を向上させていると考えられる。また、成分(C)の高密度ポリエチレンにより形成されるドメインにより、成形時の成形表面が適度に荒れるため、離型性が向上すると考えられる。
また成分(B)の質量/成分(A)の質量を0.6以上とすることは、ガラス転移温度の低い成分(B)を規定量以上配合することを意味しており、このような配合とすることで、高温強度や離型性を損なうことなく、低温耐衝撃性をより向上させることができる。
なお、本発明において「エアバッグ収納カバー」とは、エアバッグを収納する容器全般を意味するものであり、例えば、エアバッグが収納されている容器において、エアバッグが展開する際の開口部、又はこの開口部と一体となっている容器全体である。
<成分(A)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(A)は、プロピレン系重合体であり、プロピレン単位を主成分とするものである。成分(A)のプロピレン系重合体のプロピレン単位の含有率は、好ましくは85~100質量%であり、より好ましくは90~100質量%である。成分(A)のプロピレン単位の含有率が前記下限値以上であることにより、耐熱性および剛性が良好となる傾向にある。なお、成分(A)中のプロピレン単位の含有率は、赤外分光法により求めることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(A)は、プロピレン系重合体であり、プロピレン単位を主成分とするものである。成分(A)のプロピレン系重合体のプロピレン単位の含有率は、好ましくは85~100質量%であり、より好ましくは90~100質量%である。成分(A)のプロピレン単位の含有率が前記下限値以上であることにより、耐熱性および剛性が良好となる傾向にある。なお、成分(A)中のプロピレン単位の含有率は、赤外分光法により求めることができる。
成分(A)は、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレン単位に加え、エチレン単位、プロピレン以外のα-オレフィン単位、エチレンおよびα-オレフィン以外の単量体単位等を好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下含有するプロピレン系共重合体であってもよい。プロピレン系共重合体は、プロピレン系ランダム共重合体であってもよいし、また、プロピレン系ブロック共重合体であってもよい。
プロピレン以外のα-オレフィン単位としては、炭素数4~20のα-オレフィンを挙げることができる。炭素数4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン、2,2,4-トリメチル-1-ペンテン等が挙げられ、好ましくは、炭素数4~10のα-オレフィンであり、より好ましくは、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンである。
プロピレン・α-オレフィン共重合体には、これらのα-オレフィン単位の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
プロピレン・α-オレフィン共重合体には、これらのα-オレフィン単位の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
成分(A)のプロピレン系重合体の具体例としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・エチレン・1-オクテン共重合体、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体等を例示することができる。好ましくは、プロピレン単独重合体、エチレンおよび炭素数4~10のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種の単量体とプロピレンとの共重合体、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体である。これらの中でも特に、成分(A)としては、低温耐衝撃性および高温強度の観点から、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体であることが好ましい。
成分(A)のメルトフローレート(MFR)は、限定されないが、通常0.1g/分以上であり、成形体の外観の観点から、好ましくは10g/10分以上であり、より好ましくは20g/10分以上であり、更に好ましくは25g/10分以上である。また、成分(A)のメルトフローレートは、通常200g/10分以下であり、引張り強度の観点から、好ましくは150g/10分以下であり、より好ましくは100g/10分以下である。成分(A)のメルトフローレートは、JIS K7210(1999年)に従って、測定温度230℃、測定荷重21.18Nの条件で測定される。
成分(A)のプロピレン系重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた多段重合法を挙げることができる。該多段重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(A)は市販の該当品を用いることも可能である。成分(A)のプロピレン系重合体としては下記に挙げる製造者から調達可能であり、適宜選択することができる。入手可能な市販品としては、例えば、プライムポリマー社のPrim Polypro(登録商標)、住友化学社の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー社のポリプロピレンブロックコポリマー、日本ポリプロ社のノバテック(登録商標)PP、LyondellBasell社のMoplen(登録商標)、ExxonMobil社のExxonMobil PP、Formosa Plastics社のFormolene(登録商標)、Borealis社のBorealis PP、LG Chemical社のSEETEC PP、A.Schulman社のASI POLYPROPYLENE、INEOS Olefins&Polymers社のINEOS PP、Braskem社のBraskem PP、SAMSUNG TOTAL PETROCHEMICALS社のSumsung Total、Sabic社のSabic(登録商標)PP、TOTAL PETROCHEMICALS社のTOTAL PETROCHEMICALS Polypropylene、SK社のYUPLENE(登録商標)がある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)のプロピレン系重合体の1種のみを含むものであってもよく、単量体組成や物性等の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。
<成分(B)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(B)は、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(B)は、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体である。
成分(B)は110~125℃に結晶融解ピークを有し、かつその結晶融解熱量が20~60J/gであることが好ましい。ここで、成分(B)において、110~125℃の結晶融解ピークにおける結晶融解熱量が20~60J/gであることは、成分(B)が、結晶性のエチレンからなる重合体ブロックを有することを表す指標である。また、成分(B)は、エチレンからなる重合体ブロックに基づく結晶性に加え、エチレン・α-オレフィン共重合体ブロックに基づく非晶性を有する。成分(B)がこのような構造を有することにより、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に高温強度および低温耐衝撃性の効果が付与される。成分(B)の結晶融解熱量は、高温強度の観点からより好ましくは30J/g以上である。また、成分(B)の結晶融解熱量は、低温耐衝撃性の観点からより好ましくは50J/g以下である。
成分(B)におけるエチレンからなる重合体ブロックは、エチレンを主体とするものであるが、エチレンに加え他の単量体単位を有していてもよい。他の単量体単位としては1-プロピレン、1-ブテン、2-メチルプロピレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等を例示することができる。好ましくは、1-プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数3~8のα-オレフィンである。成分(B)におけるエチレンからなる重合体ブロックは、α-オレフィンの1種のみがエチレンと共重合したものであっても、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。
成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックは、エチレン単位に加え、α-オレフィンとして1-プロピレン、1-ブテン、2-メチルプロピレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等を構成単位として有するものを例示することができる。好ましくは、1-プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数4~8のα-オレフィンである。成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックは、α-オレフィンの1種のみがエチレンと共重合したものであっても、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。
また、成分(B)におけるエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックは、エチレン単位および炭素数3~8のα-オレフィン単位に加え、非共役ジエンに基づく単量体単位(非共役ジエン単位)等の他の単量体単位を有していてもよい。該非共役ジエンとしては、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエンのような鎖状非共役ジエン;シクロへキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネンのような環状非共役ジエン等が挙げられる。好ましくは、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエンである。
成分(B)のエチレン単位の含有率は、エチレン単位の含有率とα-オレフィン単位の含有率との合計に対し、50質量%以上80質量%以下であることが好ましい。成分(B)のエチレン単位の含有率は、成分(B)のブロッキングによる融着防止のためには多い方が好ましく、本発明の熱可塑性エラストマーを成形したときの低温耐衝撃性の観点では少ない方が好ましい。成分(B)のエチレン単位の含有率は、より好ましくは55質量%以上であり、更に好ましくは60質量%以上である。また、エチレン単位の含有率は、より好ましくは75質量%以下である。なお、成分(B)におけるエチレン単位の含有率および炭素数4~8のα-オレフィン単位の含有率は、それぞれ赤外分光法により求めることができる。
また、成分(B)におけるエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックが、非共役ジエン単位等の他の単量体単位を有する場合、その含有率は成分(B)全体に対して、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。非共役ジエン単位の含有率についても、赤外分光法により求めることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(B)として具体的には、エチレンからなる重合体ブロックと、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを含むブロック共重合体を例
示することができる。
エチレンからなる重合体ブロック、エチレン・α-オレフィン共重合体ブロックはそれぞれ1種で用いられてもよく、2種以上組み合わせ用いられてもよい。
これらの中でも、成分(B)は、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・1-オクテン共重合体ブロックとを含むブロック共重合体、すなわち成分(B)は、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・1-オクテン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体であることが最も好ましい。
示することができる。
エチレンからなる重合体ブロック、エチレン・α-オレフィン共重合体ブロックはそれぞれ1種で用いられてもよく、2種以上組み合わせ用いられてもよい。
これらの中でも、成分(B)は、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・1-オクテン共重合体ブロックとを含むブロック共重合体、すなわち成分(B)は、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・1-オクテン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体であることが最も好ましい。
成分(B)は結晶性を有するエチレンからなる重合体ブロックを有することに加え、通常エチレン・α-オレフィン共重合体ブロックによる非晶性を有する。この非晶性はガラス転移温度により表すことができ、成分(B)のDSC法によるガラス転移温度は好ましくは-80℃以上であり、より好ましくは-75℃以上であり、一方、好ましくは-50℃以下であり、より好ましくは-60℃以下である。
成分(B)のメルトフローレート(MFR)は限定されないが、通常10g/10分以下であり、強度の観点から、好ましくは8.0g/10分以下であり、より好ましくは5.0g/10分以下であり、更に好ましくは3.0g/10分以下である。また、成分(B)のメルトフローレートは、通常0.01g/10分以上であり、流動性の観点から、好ましくは0.05g/10分以上であり、より好ましくは0.10g/10分以上である。成分(B)のメルトフローレートは、ASTM D1238に従い、測定温度190℃、測定荷重21.18Nの条件で測定される。
成分(B)の密度は低温耐衝撃性の観点から、好ましくは0.88g/cm3以下である。一方、その下限については特に制限されないが、通常0.85g/cm3以上である。成分(B)の密度は、ISO 1183-A法に従い、測定温度23℃で測定された値である。
成分(B)の製造方法としては、特表2007-529617号公報、特表2008-537563号公報、特表2008-543978号公報に開示された方法に従って合成することができる。例えば、第1のオレフィン重合触媒と、同等の重合条件下で第1のオレフィン重合触媒によって調製されるポリマーとは化学的性質又は物理的性質が異なるポリマーを調製可能な第2のオレフィン重合触媒と、鎖シャトリング剤と、を組み合わせて得られる混合物又は反応生成物を含む組成物を準備し、上記エチレンとα-オレフィンとを、付加重合条件下で、該組成物と接触させる工程を経て製造することができる。
成分(B)の重合には、好ましくは連続溶液重合法が適用される。連続溶液重合法は、触媒成分、鎖シャトリング剤、モノマー類、ならびに場合により溶媒、補助剤、捕捉剤および重合助剤が反応ゾーンに連続的に供給され、ポリマー生成物はそこから連続的に取り出される。また、ブロックの長さは、前記触媒の比率および種類、鎖シャトリング剤の比率および種類、重合温度等を制御することによって変化させることができる。
なお、成分(B)のオレフィン系ブロック共重合体の合成方法において、その他の条件は特表2007-529617号公報、特表2008-537563号公報、特表2008-543978号公報に開示されている。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(B)は市販の該当品を用いることも可能である。成分(B)の市販の該当品としては、例えば、ダウ・ケミカル社製Engage(登録商標)-XLTシリーズやINFUSE(登録商標)シリーズが挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(B)のオレフィン系ブロック共重合体の1種のみを含むものであってもよく、単量体組成や物性等の異なるものの2種以上を含むものであってもよい。
<成分(C)>
成分(C)として使用される高密度ポリエチレンとしては、密度が0.94~0.97g/cm3、好ましくは0.95~0.97g/cm3の範囲であるものが好ましい。なお、本発明において、高密度ポリエチレンの密度は、JIS K6760に準拠して測定される値である。
成分(C)の密度が0.94g/cm3以上であると、得られる成形体の剛性、引張破壊伸びが良好となる傾向にある。一方、密度が0.97g/cm3以下であると、得られる成形体の靱性および外観が良好となる傾向がある。
成分(C)として使用される高密度ポリエチレンとしては、密度が0.94~0.97g/cm3、好ましくは0.95~0.97g/cm3の範囲であるものが好ましい。なお、本発明において、高密度ポリエチレンの密度は、JIS K6760に準拠して測定される値である。
成分(C)の密度が0.94g/cm3以上であると、得られる成形体の剛性、引張破壊伸びが良好となる傾向にある。一方、密度が0.97g/cm3以下であると、得られる成形体の靱性および外観が良好となる傾向がある。
成分(C)のASTM D1238に従い、測定温度190℃、測定荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01~5g/10分であり、より好ましくは0.05~1g/10分である。成分(C)のMFRを上記下限以上とすることで成形性と外観を良好にしやすい傾向にある。上記上限以下とすることで低温耐衝撃性を良好に維持しやすい傾向にある。
成分(C)の高密度ポリエチレンは、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンとプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコデセン等の炭素数3~20、好ましくは炭素数4~10のα-オレフィンの1種又は2種以上との共重合体であってもよい。
高密度ポリエチレンが中低圧法のプロセスにより、エチレンのホモポリマー、又はエチレンと若干量のα-オレフィンとの共重合体として製造されるものであって、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である場合、高密度ポリエチレン中のエチレン単位の含有率は80質量%以上、特に90質量%以上で、α-オレフィン単位の含有率は0.1~10質量%であることが、剛性と靱性のバランスの観点から好ましい。ここで、高密度ポリエチレン中のエチレン単位、α-オレフィン単位の含有率は、赤外分光法により求めることができる。
高密度ポリエチレンは、通常遷移金属化合物と有機金属化合物とからなる触媒を用いて、エチレンの単独重合またはエチレンとα-オレフィンとの共重合により得られる。
触媒の遷移金属化合物としてはチタン、バナジウム、クロム等の遷移金属の化合物の1種又は2種以上、またはこれらをシリカ、アルミナ、マグネシウム化合物等に担持または反応させたものが挙げられる。特にチタンの塩化物、ハロアルコラート、アルコラート等のチタン化合物をマグネシウムジアルコラート、塩化マグネシウム等のマグネシウム化合物に担持または反応させた固体触媒成分が好適に用いられる。
有機金属化合物としては、一般式AlRnX3-n(式中、Rは炭素数1~14の炭化水素基、Xはハロゲン原子、nは1~3の整数を示す。)で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。具体的には、トリエチルアルミニウム、トリn-プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライドが挙げられる。
成分(C)の高密度ポリエチレンとしては市販品を用いることもできる。成分(C)の市販品としては、例えば、日本ポリエチレン社のノバテック(登録商標)HD、旭化成ケミカルズ社のクレオレックス(登録商標)、サンテックーHD(登録商標)、プライムポリマー社のハイゼックス(登録商標)、エボリューH(登録商標)、サウディ石油化学社のQAMAR-HD(登録商標)が挙げられる。
高密度ポリエチレンとしては植物由来エチレンを含むバイオポリエチレンを用いることもできる。バイオポリエチレンとしては、一般に、密度が0.942g/cm3以上0.980g/cm3以下のものが使用でき、この密度は、好ましくは0.945~0.970g/cm3、より好ましくは0.948~0.965g/cm3である。なお、バイオポリエチレンの密度は、JIS K6922-2に準拠して測定したものである。
また、バイオポリエチレンは、MFR(JIS K6922-2に準拠、温度190℃、荷重21.18Nで測定)が、通常1~100g/10分、好ましくは5~80g/10分、より好ましくは10~50g/10分のものを使用することができる。
バイオポリエチレンの市販品としては、ブラスケム社(ブラジル)製のグリーンポリエチレンに属する植物由来の高密度ポリエチレンがある。
また、バイオポリエチレンは、MFR(JIS K6922-2に準拠、温度190℃、荷重21.18Nで測定)が、通常1~100g/10分、好ましくは5~80g/10分、より好ましくは10~50g/10分のものを使用することができる。
バイオポリエチレンの市販品としては、ブラスケム社(ブラジル)製のグリーンポリエチレンに属する植物由来の高密度ポリエチレンがある。
本発明において、成分(C)としての高密度ポリエチレンは1種のみを用いてもよく、物性や共重合成分の種類、エチレン単位含有率等の異なるものの2種以上を併用してもよい。
<配合割合>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性エラストマー組成物における成分(A)~(C)の含有割合が、成分(A)の含有量>成分(B)の含有量>成分(C)の含有量であることが好ましい。成分(A)~(C)の含有割合が上記関係を満たすように配合することで、曲げ弾性率を好適な範囲に制御した上で、低温耐衝撃性を付与した成形体を得ることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性エラストマー組成物における成分(A)~(C)の含有割合が、成分(A)の含有量>成分(B)の含有量>成分(C)の含有量であることが好ましい。成分(A)~(C)の含有割合が上記関係を満たすように配合することで、曲げ弾性率を好適な範囲に制御した上で、低温耐衝撃性を付与した成形体を得ることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)~(C)の合計100質量%中に、成分(A)を25~60質量%、成分(B)を20~55質量%、成分(C)を3~25質量%含有することが好ましく、より好ましくは、成分(A)を30~50質量%、成分(B)を25~50質量%、成分(C)を5~20質量%含有する。
成分(A)の含有率が上記下限以上であることにより耐熱性と成形性が良好となり、上記上限以下であることにより低温耐衝撃性が良好となる。
成分(B)の含有率が上記下限以上であることにより低温耐衝撃性が良好となり、上記上限以下であることにより剛性や機械強度が高くなる。
成分(C)の含有率が上記下限以上であることにより剛性と機械強度が向上し、上記上限以下であることにより低温耐衝撃性が良好となる。
成分(B)の含有率が上記下限以上であることにより低温耐衝撃性が良好となり、上記上限以下であることにより剛性や機械強度が高くなる。
成分(C)の含有率が上記下限以上であることにより剛性と機械強度が向上し、上記上限以下であることにより低温耐衝撃性が良好となる。
前述の通り、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、高温強度や離型性を損なうことなく、低温衝撃性をより向上させる観点から、成分(B)の質量/成分(A)の質量を0.6以上とすることを必須の構成要件とするが、この質量比は、高温強度や離型性を損なうことなく、低温衝撃性をより向上させる観点から0.7以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。一方、成分(A)の含有量>成分(B)の含有量の好適要件を満たす観点から、成分(B)の質量/成分(A)の質量の比は、1.0未満であることが好ましく、0.99以下であることがより好ましく、0.98以下であることが更に好ましい。
<その他の成分>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、上記の成分(A)~成分(C)以外に本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、各種目的に応じて以下の添加剤、無機フィラー、有機フィラーや成分(A)~成分(C)以外の樹脂(以下、「その他の樹脂」と称する。)等の任意成分を配合することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、上記の成分(A)~成分(C)以外に本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、各種目的に応じて以下の添加剤、無機フィラー、有機フィラーや成分(A)~成分(C)以外の樹脂(以下、「その他の樹脂」と称する。)等の任意成分を配合することができる。
添加剤としては、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性剤、分子量調整剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種添加剤を挙げることができる。これらの添加剤は通常成分(A)~(C)の合計100質量部に対し、それぞれの添加剤を0.01~2質量部の範囲で配合して用いることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が含有し得るその他の樹脂としては、低密度ポリエチレン、ポリエステルエラストマー、ウレタンエラストマー、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、前記以外の各種エラストマー(ただし、成分(B)に該当するものを除く。)等が挙げられる。上記で挙げたその他の樹脂は1種のみを含有しても2種以上を含有してもよい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物がその他の樹脂を含有する場合、成分(A)~成分(C)を含有することによる本発明の効果をより有効に得る上で、その他の樹脂の含有量は、成分(A)~成分(C)とその他の樹脂の合計に対して20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
<架橋剤>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上述の成分を含有するとともに、部分的に架橋されたものであってもよい。この場合、架橋の方法は特に制限されないが、通常は、ゴム弾性、押出成形性の改良の観点から、架橋剤の存在下に動的に熱処理する(動的架橋する)ことが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上述の成分を含有するとともに、部分的に架橋されたものであってもよい。この場合、架橋の方法は特に制限されないが、通常は、ゴム弾性、押出成形性の改良の観点から、架橋剤の存在下に動的に熱処理する(動的架橋する)ことが好ましい。
ここで、動的に熱処理する(動的熱処理)とは、溶融状態又は半溶融状態で混練することを意味する。通常動的熱処理は、前記の各成分を均一に混合した後、架橋剤および必要に応じて用いられる架橋助剤の存在下に溶融混練することによって行なわれる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を部分的に架橋させるための架橋剤としては、有機過酸化物を用いることが好ましく、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン-3、ジクミルパーオキサイド等を挙げることができる。
これらの有機過酸化物により部分的に架橋させる際に用いられる架橋助剤としては、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、トルイレンビスマレイミド、p-キノンジオキシム、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等、ラジカル重合性の炭素間二重結合を有する化合物等と、成分(A)および/又は成分(B)の炭素直鎖の部分と反応する官能基を有する化合物を挙げることができる。
架橋剤の使用割合としては、成分(A)~(C)100質量部に対して、通常0.01~3質量部、好ましくは0.04~1質量部である。
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記成分(A)~(C)と、必要に応じて用いられるその他の成分を通常の押出機やバンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーブラベンダー等を用いて常法に従って混練して製造することができる。これらの製造方法の中でも、押出機、特に二軸押出機を用いることが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記成分(A)~(C)と、必要に応じて用いられるその他の成分を通常の押出機やバンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーブラベンダー等を用いて常法に従って混練して製造することができる。これらの製造方法の中でも、押出機、特に二軸押出機を用いることが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を押出機等で混練して製造する際には通常155~240℃、好ましくは180~220℃に加熱した状態で溶融混練する。この際、前述の架橋剤や架橋助剤を配合して動的に熱処理することにより、部分的に架橋させることができる。
<物性>
本発明の熱可塑性エラストマーは、前記成分(A)~(C)を含むことにより、高温強度、低温耐衝撃性、および離型性に優れるものである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、以下のような物性を有することが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマーは、前記成分(A)~(C)を含むことにより、高温強度、低温耐衝撃性、および離型性に優れるものである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、以下のような物性を有することが好ましい。
(アイゾット衝撃強度)
本発明において、JIS K7110(1999年)による-45℃、-50℃および-55℃におけるアイゾット衝撃強度を低温耐衝撃性の指標とする。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の成形体のアイゾット衝撃強度は、50kJ/m2以上であることが好ましく、70kJ/m2以上であることがより好ましく、90kJ/m2以上であることが更に好ましい。一方、本発明の熱可塑性エラストマー組成物のアイゾット衝撃強度の上限は特に制限されないが、通常150kJ/m2以下である。
本発明において、JIS K7110(1999年)による-45℃、-50℃および-55℃におけるアイゾット衝撃強度を低温耐衝撃性の指標とする。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の成形体のアイゾット衝撃強度は、50kJ/m2以上であることが好ましく、70kJ/m2以上であることがより好ましく、90kJ/m2以上であることが更に好ましい。一方、本発明の熱可塑性エラストマー組成物のアイゾット衝撃強度の上限は特に制限されないが、通常150kJ/m2以下である。
(MFR)
本発明において、JIS K7210(1999年)に準拠した温度230℃、測定荷重21.18Nでのメルトフローレート(MFR)を熱可塑性エラストマー組成物の射出成形性の指標とする。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、射出成形性に優れたものとするため、このメルトフローレートが1.0~10g/10分であることが好ましい。熱可塑性エラストマー組成物のMFRが1.0g/10分以上であると流動性が良好となる傾向にあり、また、10g/10以下であると成形時のバリ等を抑えやすいために好ましい。流動性の観点からは、熱可塑性エラストマー組成物のMFRはより好ましくは2.0g/10分以上であり、更に好ましくは2.5g/10分以上である。一方、射出成形時にバリ等を抑える観点からは、熱可塑性エラストマー組成物のMFRはより好ましくは9.0g/10分以下であり、更に好ましくは8.0g/10分以下であり、特に好ましくは7.0g/10分以下である。
本発明において、JIS K7210(1999年)に準拠した温度230℃、測定荷重21.18Nでのメルトフローレート(MFR)を熱可塑性エラストマー組成物の射出成形性の指標とする。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、射出成形性に優れたものとするため、このメルトフローレートが1.0~10g/10分であることが好ましい。熱可塑性エラストマー組成物のMFRが1.0g/10分以上であると流動性が良好となる傾向にあり、また、10g/10以下であると成形時のバリ等を抑えやすいために好ましい。流動性の観点からは、熱可塑性エラストマー組成物のMFRはより好ましくは2.0g/10分以上であり、更に好ましくは2.5g/10分以上である。一方、射出成形時にバリ等を抑える観点からは、熱可塑性エラストマー組成物のMFRはより好ましくは9.0g/10分以下であり、更に好ましくは8.0g/10分以下であり、特に好ましくは7.0g/10分以下である。
(常温引張破壊伸び)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、材料強度の観点から、JIS K6251に準拠した23℃での引張破壊伸びが300%以上であることが好ましく、350%以上であることがより好ましい。23℃での引張破壊伸びが、上記下限未満のものを用いた場合には、材料伸びが劣るためにエアバッグ収納カバーの展開性が低下する傾向がある。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の引張破断伸びの上限は特に制限されないが、通常1500%以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、材料強度の観点から、JIS K6251に準拠した23℃での引張破壊伸びが300%以上であることが好ましく、350%以上であることがより好ましい。23℃での引張破壊伸びが、上記下限未満のものを用いた場合には、材料伸びが劣るためにエアバッグ収納カバーの展開性が低下する傾向がある。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の引張破断伸びの上限は特に制限されないが、通常1500%以下である。
(高温引張破壊強度)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、材料強度の観点から、JIS K6251に準拠した85℃での引張破壊強度が4MPa以上であることが好ましく、4.5MPa以上であることがより好ましい。85℃での引張破壊強度が、上記下限未満のものを用いた場合には、材料強度が劣るためにエアバッグ収納カバーの展開性が低下する傾向がある。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の引張破壊強度の上限は特に制限されないが、通常6MPa以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、材料強度の観点から、JIS K6251に準拠した85℃での引張破壊強度が4MPa以上であることが好ましく、4.5MPa以上であることがより好ましい。85℃での引張破壊強度が、上記下限未満のものを用いた場合には、材料強度が劣るためにエアバッグ収納カバーの展開性が低下する傾向がある。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の引張破壊強度の上限は特に制限されないが、通常6MPa以下である。
(曲げ弾性率)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K7203に準拠して測定した曲げ弾性率が600MPa以下、特に200~550MPaであることが好ましい。熱可塑性エラストマー組成物の曲げ弾性率が上記上限よりも大きいと、低温耐衝撃性が低下する傾向にあり、上記下限よりも小さいと、剛性が不足する傾向がある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K7203に準拠して測定した曲げ弾性率が600MPa以下、特に200~550MPaであることが好ましい。熱可塑性エラストマー組成物の曲げ弾性率が上記上限よりも大きいと、低温耐衝撃性が低下する傾向にあり、上記下限よりも小さいと、剛性が不足する傾向がある。
<熱可塑性エラストマー組成物の成形体>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いて、一般に、通常の射出成形法、又は、必要に応じて、ガスインジェクション成形法、射出圧縮成形法、ショートショット発泡成形法等の各種成形法を用いて成形体とすることによりエアバッグ収納カバーとして用いることができる。特に、本発明の熱可塑性エラストマーを射出成形することにより成形体とすることが好ましく、射出成形を行う際の成形条件は以下の通りである。
熱可塑性エラストマー組成物を射出成形する際の成形温度は通常150~300℃であり、好ましくは180~280℃である。射出圧力は通常5~100MPaであり、好ましくは10~80MPaである。また、金型温度は通常0~80℃であり、好ましくは20~60℃である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いて、一般に、通常の射出成形法、又は、必要に応じて、ガスインジェクション成形法、射出圧縮成形法、ショートショット発泡成形法等の各種成形法を用いて成形体とすることによりエアバッグ収納カバーとして用いることができる。特に、本発明の熱可塑性エラストマーを射出成形することにより成形体とすることが好ましく、射出成形を行う際の成形条件は以下の通りである。
熱可塑性エラストマー組成物を射出成形する際の成形温度は通常150~300℃であり、好ましくは180~280℃である。射出圧力は通常5~100MPaであり、好ましくは10~80MPaである。また、金型温度は通常0~80℃であり、好ましくは20~60℃である。
<用途>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は高温強度、低温耐衝撃性、および離型性に優れ、エアバッグ収納カバーの成形材料として好適に用いられる。特に、このエアバッグ収納カバーの中でも、例えば、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開によって乗員を保護するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして好適である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は高温強度、低温耐衝撃性、および離型性に優れ、エアバッグ収納カバーの成形材料として好適に用いられる。特に、このエアバッグ収納カバーの中でも、例えば、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開によって乗員を保護するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして好適である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、その優れた高温強度、低温耐衝撃性、および離型性より、エアバッグ収納カバー以外の各種用途にも好適に用いることができる。例えば、インストルメントパネル、センターパネル、センターコンソールボックス、ドアトリム、ピラー、アシストグリップ、ハンドル等の自動車内装部品、マッドガード・クロメット等の自動車外装部品、家電部品、建材、家具等として有用である。
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限または下限の値と、下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
<原料>
[成分(A)]
A-1:日本ポリプロ社製 ノバテック(登録商標)PP BC03B
プロピレン系ブロック共重合体
第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られたもの
MFR(JIS K7210(1999年)):30g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf))
プロピレン単独重合体ブロックの含有率:84質量%
エチレン・プロピレン共重合体ブロックの含有率:16質量%
エチレン・プロピレン共重合体ブロックにおけるエチレン単位含有率:55質量%
[成分(A)]
A-1:日本ポリプロ社製 ノバテック(登録商標)PP BC03B
プロピレン系ブロック共重合体
第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られたもの
MFR(JIS K7210(1999年)):30g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf))
プロピレン単独重合体ブロックの含有率:84質量%
エチレン・プロピレン共重合体ブロックの含有率:16質量%
エチレン・プロピレン共重合体ブロックにおけるエチレン単位含有率:55質量%
[成分(B)]
B-1:ダウ・ケミカル社製 Engage(登録商標)XLT8677
エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・1-オクテン共重合体のブロックとを有するブロック共重合体
結晶融解ピーク温度:119℃
結晶融解熱量:37J/g
MFR(ASTM D1238):0.5g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N(2.16kgf)(カタログ値)
ガラス転移温度(DSC法):-67℃
密度:(ISO 1183-A法):0.872g/cm3(測定温度:23℃)
B-1:ダウ・ケミカル社製 Engage(登録商標)XLT8677
エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・1-オクテン共重合体のブロックとを有するブロック共重合体
結晶融解ピーク温度:119℃
結晶融解熱量:37J/g
MFR(ASTM D1238):0.5g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N(2.16kgf)(カタログ値)
ガラス転移温度(DSC法):-67℃
密度:(ISO 1183-A法):0.872g/cm3(測定温度:23℃)
[成分(C)]
C-1:日本ポリエチレン社製 ノバテック(登録商標)HD HB330
高密度ポリエチレン系樹脂
密度(JIS K6760):0.953g/cm3
MFR(ASTM D1238):0.35g/10分(測定条件:190℃、荷重21.2N(2.16kgf))
C-1:日本ポリエチレン社製 ノバテック(登録商標)HD HB330
高密度ポリエチレン系樹脂
密度(JIS K6760):0.953g/cm3
MFR(ASTM D1238):0.35g/10分(測定条件:190℃、荷重21.2N(2.16kgf))
[成分(D)]
D-1:ダウ・ケミカル社製 Engage(登録商標)8180
エチレン・1-オクテンランダム共重合体
結晶融解ピーク:110~125℃にピークなし
結晶融解熱量:0
MFR(ASTM D1238):0.5g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N(2.16kgf))(カタログ値)
密度:0.863g/cm3
D-1:ダウ・ケミカル社製 Engage(登録商標)8180
エチレン・1-オクテンランダム共重合体
結晶融解ピーク:110~125℃にピークなし
結晶融解熱量:0
MFR(ASTM D1238):0.5g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N(2.16kgf))(カタログ値)
密度:0.863g/cm3
[成分(E)]
E-1:三井化学社製 タフマー(登録商標)A1050S
エチレン・1-ブテンランダム共重合体
密度:0.86g/cm3
MFR:1.2g/10分(測定条件:190℃、荷重21.2N)
ムーニー粘度ML1+4(100℃):40
E-1:三井化学社製 タフマー(登録商標)A1050S
エチレン・1-ブテンランダム共重合体
密度:0.86g/cm3
MFR:1.2g/10分(測定条件:190℃、荷重21.2N)
ムーニー粘度ML1+4(100℃):40
[成分(F)]
F-1:三井化学社製 タフマー(登録商標)XM7090
プロピレン・1-ブテンランダム共重合体
MFR(ASTM D1238):7g/10分
F-1:三井化学社製 タフマー(登録商標)XM7090
プロピレン・1-ブテンランダム共重合体
MFR(ASTM D1238):7g/10分
[成分(G)]
G-1:Sabic社製 LLDPE M200024
低密度ポリエチレン樹脂
MFR(ASTM D1238):20g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N(2.16kgf))(カタログ値)
密度:0.924g/cm3(カタログ値)
G-1:Sabic社製 LLDPE M200024
低密度ポリエチレン樹脂
MFR(ASTM D1238):20g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N(2.16kgf))(カタログ値)
密度:0.924g/cm3(カタログ値)
[成分(H)]
H-1:化薬アクゾ株式会社製 カヤヘキサAD40C
2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物
H-1:化薬アクゾ株式会社製 カヤヘキサAD40C
2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物
<評価方法>
1)射出成形性:メルトフローレート
JIS K7210(1999年)に従って、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定した。
1)射出成形性:メルトフローレート
JIS K7210(1999年)に従って、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定した。
以下の2)~6)の評価では、各例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを用いて、インラインスクリュウタイプ射出成形機(東芝機械社製「IS130」)により、射出圧力50MPa、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて各試験の試験用シートに射出成形したものを用いた。
2)低温耐衝撃性:アイゾット衝撃強度
上記射出成形により、ノッチの付いた厚さ4mm×幅12.7mm×長さ64mmのアイゾット衝撃強度測定用試験片に成形し、JIS K7110(1999年)に従って、温度-45℃、-50℃、-55℃で測定した。また、アイゾット衝撃試験で非破壊のものを「NB」、破壊寸前で皮一枚残っているものを「H」、破壊されたものを「C」とした。アイゾット衝撃強度の値が大きいものほど、また、非破壊「NB」のものほど低温耐衝撃性に優れるものと評価した。
上記射出成形により、ノッチの付いた厚さ4mm×幅12.7mm×長さ64mmのアイゾット衝撃強度測定用試験片に成形し、JIS K7110(1999年)に従って、温度-45℃、-50℃、-55℃で測定した。また、アイゾット衝撃試験で非破壊のものを「NB」、破壊寸前で皮一枚残っているものを「H」、破壊されたものを「C」とした。アイゾット衝撃強度の値が大きいものほど、また、非破壊「NB」のものほど低温耐衝撃性に優れるものと評価した。
3)曲げ弾性率(単位:MPa)
JIS K7203に従って、スパン間64mm、曲げ速度1mm/分の条件下で測定した。
JIS K7203に従って、スパン間64mm、曲げ速度1mm/分の条件下で測定した。
4)引張破壊伸び(23℃):引張破壊試験(JIS-3号ダンベル、引張速度500mm/min)(単位:%)
JIS K6251に準拠(JIS-3号ダンベル)して引張試験用の試験片(厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシート)を打ち抜いた。この打ち抜き試験片について、JIS K6251に従って、引張破壊伸びを23℃の雰囲気下にて測定した。引張破壊伸びの値が大きいほど優れるものと評価した。
JIS K6251に準拠(JIS-3号ダンベル)して引張試験用の試験片(厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシート)を打ち抜いた。この打ち抜き試験片について、JIS K6251に従って、引張破壊伸びを23℃の雰囲気下にて測定した。引張破壊伸びの値が大きいほど優れるものと評価した。
5)引張破壊強度(85℃):引張破壊試験(JIS-3号ダンベル、引張速度500mm/min(単位:MPa)
JIS K6251に準拠(JIS-3号ダンベル)して引張試験用の試験片(厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシート)を打ち抜いた。この打ち抜き試験片について、JIS K6251に従って、引張破壊強度を85℃の雰囲気下にて測定した。引張破壊強度の値が大きいほど高温強度に優れるものと評価した。
JIS K6251に準拠(JIS-3号ダンベル)して引張試験用の試験片(厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシート)を打ち抜いた。この打ち抜き試験片について、JIS K6251に従って、引張破壊強度を85℃の雰囲気下にて測定した。引張破壊強度の値が大きいほど高温強度に優れるものと評価した。
6)光沢度
厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmの射出成形シートについて、JIS Z8741に従って、入射角60°で測定した。光沢度の値が小さいものほど離型性に優れるものと評価した。
厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmの射出成形シートについて、JIS Z8741に従って、入射角60°で測定した。光沢度の値が小さいものほど離型性に優れるものと評価した。
<実施例/比較例>
[実施例1]
表-1に示すように、(A-1)48質量部、(B-1)47質量部、(C-1)5質量部、(A-1)、(B-1)、(C-1)の合計100質量部に対して、酸化防止剤(BASFジャパン社製 商品名イルガノックス(登録商標) 1010FF)0.1質量部、HALS(BASFジャパン社製 チヌビンXT855FF)0.1質量部、シリコンオイル(信越化学工業社製 KF96-100CS)0.2質量部、および黒色顔料(カーボン濃度40質量%品)1.5質量部をヘンシェルミキサーにて1分間ブレンドした。同方向二軸押出機(東芝機械社製「TEM-26SS」、L/D=48.5、シリンダブロック数:12)へ25kg/hの速度で前記ブレンド物を投入し、160~210℃の範囲で昇温させ溶融混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットについて、前記1)~6)の評価を行った。それらの評価結果を表-1に示す。
[実施例1]
表-1に示すように、(A-1)48質量部、(B-1)47質量部、(C-1)5質量部、(A-1)、(B-1)、(C-1)の合計100質量部に対して、酸化防止剤(BASFジャパン社製 商品名イルガノックス(登録商標) 1010FF)0.1質量部、HALS(BASFジャパン社製 チヌビンXT855FF)0.1質量部、シリコンオイル(信越化学工業社製 KF96-100CS)0.2質量部、および黒色顔料(カーボン濃度40質量%品)1.5質量部をヘンシェルミキサーにて1分間ブレンドした。同方向二軸押出機(東芝機械社製「TEM-26SS」、L/D=48.5、シリンダブロック数:12)へ25kg/hの速度で前記ブレンド物を投入し、160~210℃の範囲で昇温させ溶融混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットについて、前記1)~6)の評価を行った。それらの評価結果を表-1に示す。
[実施例2~4および比較例1~5]
表-1に示す配合にした以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た(ただし、成分(A)~成分(G)の合計100質量部に対し、酸化防止剤0.1質量部、HALS0.1質量部、黒色顔料1.5質量部をそれぞれ配合した。これらの配合量については表-1において記載を省略した。)。また、実施例1と同様に、前記1)~6)の評価を行った。それらの評価結果を表-1に示す。
表-1に示す配合にした以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た(ただし、成分(A)~成分(G)の合計100質量部に対し、酸化防止剤0.1質量部、HALS0.1質量部、黒色顔料1.5質量部をそれぞれ配合した。これらの配合量については表-1において記載を省略した。)。また、実施例1と同様に、前記1)~6)の評価を行った。それらの評価結果を表-1に示す。
[評価結果]
実施例1~4は、成分(A)~(C)を配合したことにより低温耐衝撃性が優れるのに加え、高温強度および離型性が良好であった。
一方、比較例1は成分(C)を配合せずに成分(A)、(B)のみを配合したものであるが離型性が悪かった。
比較例2は成分(B)を配合せずに、成分(A)、(C)、(E)、(F)、(H)を配合したものであるが、低温耐衝撃性、高温強度、離型性が悪かった。
比較例3は、成分(A)の使用量を多く、成分(B)の使用量を少なくしたものであるが、低温耐衝撃性が悪かった。
比較例4は成分(A)、成分(B)、成分(C)を配合したものであるが、成分(B)/成分(A)の比率が小さいものであり、低温耐衝撃性、離型性が悪かった。
比較例5は成分(B)を配合せずに、成分(A)、(C)、(D)、(E)、(G)を配合したものであるが、低温耐衝撃性、高温強度が悪かった。
実施例1~4は、成分(A)~(C)を配合したことにより低温耐衝撃性が優れるのに加え、高温強度および離型性が良好であった。
一方、比較例1は成分(C)を配合せずに成分(A)、(B)のみを配合したものであるが離型性が悪かった。
比較例2は成分(B)を配合せずに、成分(A)、(C)、(E)、(F)、(H)を配合したものであるが、低温耐衝撃性、高温強度、離型性が悪かった。
比較例3は、成分(A)の使用量を多く、成分(B)の使用量を少なくしたものであるが、低温耐衝撃性が悪かった。
比較例4は成分(A)、成分(B)、成分(C)を配合したものであるが、成分(B)/成分(A)の比率が小さいものであり、低温耐衝撃性、離型性が悪かった。
比較例5は成分(B)を配合せずに、成分(A)、(C)、(D)、(E)、(G)を配合したものであるが、低温耐衝撃性、高温強度が悪かった。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は高温強度、低温耐衝撃性、および離型性に優れ、例えば、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開によって乗員を保護するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーの成形材料として好適である。
Claims (9)
- 少なくとも下記成分(A)~(C)を含有し、かつ、成分(B)の質量/成分(A)の質量が0.6以上である、熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体
成分(C):高密度ポリエチレン - 前記熱可塑性エラストマー組成物における成分(A)~(C)の含有量が、成分(A)の含有量>成分(B)の含有量>成分(C)の含有量である、請求項1の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記成分(B)が、110~125℃に結晶融解ピークを有し、かつその結晶融解熱量が20~60J/gである、請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックのα-オレフィンの炭素数が4~8である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記成分(B)が、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・1-オクテン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記成分(A)が、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 前記成分(A)のメルトフローレート(測定温度230℃、測定荷重21.18N)が10~150g/10分である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の可塑性エラストマー組成物。
- 請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してなる成形体。
- 請求項1~7のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバー。
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JP2021048265A JP2022147137A (ja) | 2021-03-23 | 2021-03-23 | 熱可塑性エラストマー組成物、成形体およびエアバッグ収納カバー |
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