JP6915301B2 - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、成形外観、低温耐衝撃性及び曲げ弾性率に優れた成形体を提供し得る熱可塑性エラストマー組成物と、この熱可塑性エラストマー組成物よりなる射出成形体、自動車内装材及びエアバッグ収納カバーに関する。
自動車用エアバッグシステムは自動車等の衝突の際に運転手や搭乗者を保護するシステムであり、衝突の際の衝撃を感知する衝突感知装置と、この衝突感知装置の衝突の感知に応じてエアバッグを膨張させるように作動するエアバッグ装置とを有する。エアバッグ装置は、ステアリングホイール、助手席前方のインストルメントパネル、運転席及び助手席のシート、フロント及びサイドピラー等に設置される。
エアバッグ装置におけるエアバッグ収納カバーには、低温から高温までの幅広い温度範囲において設計通りに開裂するように、その構造や材質において種々の提案がなされている。
オレフィン系熱可塑性エラストマーからなるエアバッグ収納カバーとしては例えば、特許文献1において、特定のポリプロピレン系重合体、エチレン・オクテン共重合体、スチレン・共役ジエンブロック共重合体、炭化水素系ゴム用軟化剤を有機過酸化物の存在下で動的熱処理してなる熱可塑性エラストマー組成物からなるものが開示されている。また、特許文献2おいてはプロピレン系樹脂、特定のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体を特定量含む熱可塑性エラストマー組成物からなるものが提案されている。
国際公開第2006/070179号 国際公開第2014/046139号
近年、自動車の高級化によるインストルメントパネルの柔軟化により、展開試験時にエアバッグ収納カバーとインストルメントパネルが変形する不具合や、エアバッグ展開出力向上による、低温域でのエアバッグ収納カバーの破損が懸念されている。また、製造工程削減のため、塗装レスのエアバッグカバー材が増えてきている。以上のことから、エアバッグ収納カバーについては、安全性の強化、設計の自由度、金属プレートやナイロン生布をインサート成形工程削減によるコストダウンの観点から、エアバッグ収納カバーとして要求される曲げ弾性率等の機械的特性を維持した上で、外観、低温耐衝撃性を改善することが望まれている。
しかしながら、従来のエアバッグ収納カバー向けの材料においては材料強度や低温耐衝撃性が、更には成形外観が不十分であった。
本発明が解決しようとする課題は、成形外観、低温耐衝撃性及び曲げ弾性率に優れた成形体を得ることができる熱可塑性エラストマー組成物と、この熱可塑性エラストマー組成物を用いた射出成形体、自動車内装材及びエアバッグ収納カバーを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、所定のエチレン単位含有量のポリプロピレンブロック共重合体と、エチレン・α−オレフィン共重合体とを、有機過酸化物及び架橋助剤の存在下に動的熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物により、成形外観、低温耐衝撃性及び曲げ弾性率に優れる成形体を得ることができることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の要旨は以下の[1]〜[9]に存する。
[1] 下記成分(A)及び成分(B)と、成分(C)及び成分(D)を含む混合物の動的熱処理物である熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):エチレン単位の含有量が5〜50質量%のポリプロピレンブロック共重合体
成分(B):エチレン・α−オレフィン共重合体
成分(C):有機過酸化物
成分(D):架橋助剤
[2] 成分(B)が飽和エチレン・α−オレフィン共重合体である、[1]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[3] 成分(B)を構成するα−オレフィンの炭素数が3〜8である、[1]又は[2]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[4] 成分(B)がエチレン・1−ブテン共重合体ゴムである、[3]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[5] 成分(A)を、前記混合物中のポリプロピレン系樹脂中に50〜100質量%含み、該ポリプロピレン系樹脂と成分(B)との合計100質量部に対して、成分(B)を10〜55質量部、成分(C)を0.01〜0.8質量部、成分(D)を0.01〜1.8質量部含む、[1]ないし[4]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[6] 射出成形用組成物である、[1]ないし[5]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[7] [1]ないし[6]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物の射出成形体。
[8] [1]ないし[6]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる自動車内装材。
[9] [1]ないし[6]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバー。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物よりなる本発明の射出成形体、自動車内装材、及びエアバッグ収納カバーは、成形外観、低温耐衝撃性及び曲げ弾性率に優れたものである。このため、本発明のエアバッグ収納カバーは、耐久性に優れ、高出力エアバッグにも好適に使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、下記成分(A)及び成分(B)と、成分(C)及び成分(D)を含む混合物の動的熱処理物であり、少なくとも成分(A)と成分(B)とを、成分(C)及び成分(D)の存在下に動的熱処理して得られる。
成分(A):エチレン単位の含有量が5〜50質量%のポリプロピレンブロック共重合体
成分(B):エチレン・α−オレフィン共重合体
成分(C):有機過酸化物
成分(D):架橋助剤
本発明の熱可塑性エラストマー組成物よりなるエアバッグ収納カバーは、以下のメカニズムにより、熱可塑性エラストマー組成物本来の曲げ弾性率を維持した上で、低温耐衝撃性に優れ、成形外観も良好であるという特長を有する。
成分(A)のポリプロピレンブロック共重合体に含まれる高濃度のエチレン成分は重合工程で共重合されたため、非常に細かく分散されており、動的熱処理において、成分(B)のエチレン・α−オレフィン共重合体のエチレン成分と相溶性が高く、エチレン・α−オレフィン共重合体と絡み合いながら、成分(C)の有機過酸化物の分子切断効果及び成分(D)の架橋助剤の結合効果により、高い分散効果でポリプロピレンマトリックス及びゴムドメインの微細かつ均一な海島構造が形成される。
ただし、成分(B)のエチレン・α−オレフィン共重合体が不飽和エチレン・α−オレフィン共重合体を主とすると、動的熱処理により得られる架橋組成物が、反応性の強い二重結合を持つため、不均一な架橋により、分散性が悪く、成形外観及び低温耐衝撃性が悪化する傾向があるため、成分(B)として飽和エチレン・α−オレフィン共重合体を用いることが好ましく、飽和エチレン・α−オレフィン共重合体を用いることで、均一な分散を得ることができ、成形外観及び低温耐衝撃性に優れた成形体を得ることができる。特に、エチレン・1−ブテン共重合体ゴムを用いることでコモノマー分岐鎖が短く、より均一な分散が得られ、さらに低温耐衝撃性と成形外観を向上させることができる。
<成分(A)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(A)は、エチレン単位の含有量が5〜50質量%のポリプロピレンブロック共重合体である。このポリプロピレンブロック共重合体は、特に、プロピレン単位の含有量が90〜100質量%であるプロピレン系重合体成分(A1)と、エチレン単位の含有量が30〜70質量%であるエチレン・プロピレン共重合体成分(A2)とからなり、成分(A1)と成分(A2)との合計量に対し、成分(A1)を30〜80質量%含有することで、ポリプロピレンブロック共重合体中のエチレン単位の含有量が5〜50質量%であるものが好ましい。ここで、成分(A1)におけるプロピレン単位の含有量は成分(A1)を構成する全モノマーの合計量を100質量%としたときの値であり、また、成分(A2)におけるエチレン単位の含有量は成分(A2)を構成する全モノマーの合計量を100質量%としたときの値である。
成分(A)において、プロピレン系重合体成分(A1)はプロピレン単位の含有量が好ましくは90〜100質量%であれば、プロピレン単独重合体であっても、プロピレン・α−オレフィン共重合体であってもよい。成分(A)において、プロピレン系重合体成分(A1)は剛性、耐熱性に寄与する。
成分(A1)は具体的には、プロピレン単独重合体又はプロピレンとエチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合体である
ことが好ましい。成分(A1)がプロピレンとエチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合体である場合、プロピレンと共重合するモノマーとしては特に、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。なお、これらの炭素数4〜10のα−オレフィンは1種のみを用いても、2種以上を用いてもよい。
また、成分(A)において、エチレン・プロピレン共重合体成分(A2)はエチレン単位の含有量が好ましくは30〜70質量%であるエチレン・プロピレン共重合体であり、エチレン単位の含有量がこの範囲であれば、更にプロピレン以外のα−オレフィンや非共役ジエンが共重合されたものであってもよい。成分(A)において、プロピレン系重合体成分(A2)は低温耐衝撃性に寄与する。なお、エチレン・プロピレン共重合体成分(A2)のエチレン単位の含有量はより好ましくは35〜65質量%である。
成分(A2)において、共重合されていてもよいプロピレン以外のα−オレフィンとしては、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。また、成分(A2)において、共重合されていてもよい非共役ジエンとしては、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;シクロへキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン等の環状非共役ジエン等が挙げられる。
成分(A)において、成分(A1)の含有量は、成分(A1)と成分(A2)との合計量に対し、30〜80質量%であることが好ましい。成分(A1)の含有量が30質量%以上であることにより、剛性が上昇し耐熱性を保持することとなり、成分(A1)の含有量が80質量%以下であることにより、低温耐衝撃性を保持することとなる。剛性、耐熱性の効果をより高める観点から、成分(A1)の含有量は、35質量%以上であることがより好ましい。一方、低温耐衝撃性の効果をより高める観点から、成分(A1)の含有量は70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
本発明で用いる成分(A)のポリプロピレンブロック共重合体は、好ましくは上記の成分(A1)及び成分(A2)で構成される、エチレン単位の含有量が5〜50質量%のものである。成分(A)のエチレン単位の含有量が5質量%以上であると、エチレン・α−共重合体の成分(B)との分散性が向上し、外観及び低温耐衝撃性に優れたものとなり、50質量%以下であると、剛性、耐熱性に優れたものとなる。この観点から、成分(A)のエチレン単位の含有量は6〜45質量%であることが好ましく、7〜40質量%であることが好ましい。また、20〜35質量%であることが更に好ましい。なお、成分(A)のプロピレン単位の含有量は、50〜95質量%であることが好ましく、60〜93質量%であることがより好ましい。また、65〜80質量%であることが更に好ましい。
成分(A)における成分(A1)及び成分(A2)の各成分の含有量は次のようにして求めることができる。即ち、昇温溶出分別法(TREF)により成分(A1)および成分(A2)を分離し、赤外分光法により成分(A1)および(A2)のプロピレン単位の含有量及びエチレン単位の含有量を求めればよい。これらの値から、成分(A)のエチレン単位の含有量、プロピレン単位の含有量も求めることができる。
成分(A)のメルトフローレート(MFR)は、限定されないが、通常0.1g/分以上であり、成形体の外観の観点から、好ましくは0.2g/10分以上であり、より好ましくは0.3g/10分以上であり、更に好ましくは0.4g/10分以上である。また、成分(A)のメルトフローレート(MFR)は、通常200g/10分以下であり、低温耐衝撃性の観点から、好ましくは150g/10分以下であり、更に好ましくは100g/10分以下である。成分(A)のMFRは、JIS K7210(1999年)に従って、測定温度230℃、測定荷重21.18N(2.16kgf)の条件で測定される。
成分(A)のポリプロピレンブロック共重合体の製造方法としては特に制限はないが、例えば、有機アルミニウム化合物と、チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子、電子供与性化合物等からなる固体成分とからなる触媒を用いた公知の多段重合法が用いられる。多段重合法の第1工程で成分(A1)を重合する。ここでは、例えば、気相重合法、溶液重合法等を用いることができる。続いて第2工程で成分(A2)を重合する。ここでは気相重合法等を用いることができる。このような多段重合法の例としては特表2004−536212号公報に記載されている製造方法を挙げることができる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(A)は市販の該当品を用いることも可能である。市販のポリプロピレンブロック共重合体のうち、成分(A)として用いることのできるものとしては例えば、LyondellBasell社製のHifax CA138A、Adflex Q300F等がある。
成分(A)としては、上記のポリプロピレンブロック共重合体の1種のみを用いてもよく、モノマー組成やMFR等の物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
<成分(B)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(B)は、エチレン・α−オレフィン共重合体である。
エチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、1−プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等を例示することができるが、前述の通り、コモノマー分岐鎖が短いものが均一分散性の観点から好ましく、従って、1−プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数3〜8のα−オレフィンが好ましく、特に1−ブテンが好ましい。即ち、成分(B)のエチレン・α−オレフィン共重合体はエチレン・1−ブテン共重合体ゴムであることが好ましい。成分(B)におけるα−オレフィンは1種のみがエチレンと共重合したものであっても、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。
なお、前述の通り、成分(B)が不飽和結合を有すると、動的熱処理で形成される架橋構造が不均一となることから、成分(B)は飽和エチレン・α−オレフィン共重合体であることが好ましい。即ち、成分(B)は、共重合成分として、ジエン成分を含まないことが好ましい。
成分(B)のエチレン・α−オレフィン共重合体のエチレン単位の含有量は、20質量%以上80質量%以下であることが好ましい。成分(B)のエチレン単位の含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形したときの低温衝撃性を向上させるためには多いほうが好ましく、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形したときの外観の観点では少ない方が好ましい。成分(B)のエチレン単位の含有量は、より好ましくは25〜75質量%であり、更に好ましくは30〜70質量%である。
なお、成分(B)におけるエチレン単位の含有量、1−ブテン等のα−オレフィン単位の含有量は、それぞれ赤外分光法により求めることができる。
成分(B)のエチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は限定されないが、通常10g/10分未満であり、強度の観点から、好ましくは8g/10分以下であり、より好ましくは5g/10分以下であり、更に好ましくは3g/10分以下である。また、成分(B)のMFRは、通常0.01g/10分以上であり、流動性の観点から、好ましくは0.05g/10分以上であり、更に好ましくは0.10g/10分以上である。成分(B)のMFRは、JIS K7210(1999年)に従い、測定温度190℃、測定荷重21.18N(2.16kgf)の条件で測定される。
また、成分(B)の密度は低温耐衝撃性の観点から、0.88g/cm以下であり、好ましくは0.87g/cm以下である。一方、その下限については特に制限されないが、0.85g/cm以上である。成分(B)の密度は、JIS K6760に準拠して測定される値であるが、市販品についてはカタログ値を採用することもできる。
成分(B)のエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、オレフィン重合用触媒として、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体等の錯体系触媒を用いることができ、重合方法としてはスラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等が挙げられる。また、市販の該当品を用いることも可能である。市販の該当品としては例えば、三井化学社製のタフマー(登録商標)、ダウ・ケミカル社製のEngage(登録商標)等が挙げられる。
本発明において、成分(B)としてのエチレン・α−オレフィン共重合体は1種のみを用いてもよく、物性や共重合成分の種類、組成等の異なるものの2種以上を併用してもよい。
<成分(C)>
本発明で用いる成分(C)の有機過酸化物としては、芳香族系有機過酸化物及び脂肪族系有機過酸化物のいずれも使用することが可能である。具体的には、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類;t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類;アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類等が挙げられる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。これらの有機過酸化物は1種類のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<成分(D)>
本発明で用いる成分(D)の架橋助剤としては、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、トルイレンビスマレイミド等を有する化合物、p−キノンジオキシム、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物といった、ラジカル重合性の炭素間二重結合を有する化合物等と、成分(A)及び/又は成分(B)の炭素直鎖の部分と反応する官能基を有する化合物などを用いることができる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<成分(E)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、成分(A)には該当しないポリプロピレンブロック共重合体、即ち、エチレン単位の含有量が5質量%未満のポリプロピレンブロック共重合体を成分(E)として用いてもよく、成分(E)を用いることで、成形性や剛性を上げるという効果を得ることができる。
この成分(E)のポリプロピレンブロック共重合体は、エチレン単位の含有量が5質量%未満、好ましくは2〜4質量%であること以外は、成分(E)のポリプロピレンブロック共重合体と同様の構成であることが好ましく、プロピレン単位の含有量が90〜100質量%であるプロピレン系重合体成分(E1)と、エチレン単位の含有量が20〜80質量%であるエチレン・プロピレン共重合体成分(E2)とからなり、成分(E1)と成分(E2)との合計量に対し、成分(E1)を90〜98質量%含有するものが好ましい。ただし、成分(E1)におけるプロピレン単位の含有量は成分(E1)を構成する全モノマーの合計量を100質量%としたときの値であり、また、成分(E2)におけるエチレン単位の含有量は成分(E2)を構成する全モノマーの合計量を100質量%としたときの値である。
成分(E)において、プロピレン系重合体成分(E1)はプロピレン単位の含有量が90〜100質量%であれば、プロピレン単独重合体であっても、プロピレン・α−オレフィン共重合体であってもよい。成分(E)において、プロピレン系重合体成分(E1)は剛性、耐熱性に寄与する。
成分(E1)は具体的には、プロピレン単独重合体又はプロピレンとエチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合体である
ことが好ましい。成分(E1)がプロピレンとエチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合体である場合、プロピレンと共重合するモノマーとしては特に、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。なお、これらの炭素数4〜10のα−オレフィンは1種のみを用いても、2種以上を用いてもよい。
また、成分(E)において、エチレン・プロピレン共重合体成分(E2)は好ましくはエチレン単位の含有量が20〜80質量%であるエチレン・プロピレン共重合体であり、エチレン単位の含有量がこの範囲であれば、更にプロピレン以外のα−オレフィンや非共役ジエンが共重合されたものであってもよい。成分(E)において、プロピレン系重合体成分(E2)は低温耐衝撃性に寄与する。なお、成分(E2)のエチレン単位の含有量はより好ましくは30〜70質量%である。
成分(E2)において、共重合されていてもよいプロピレン以外のα−オレフィンとしては、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。また、成分(E2)において、共重合されていてもよい非共役ジエンとしては、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;シクロへキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン等の環状非共役ジエン等が挙げられる。
成分(E)において、成分(E1)の含有量は、成分(E1)と成分(E2)との合計量に対し、90〜98質量%であることが好ましい。成分(E1)の含有量が90質量%以上であることにより、剛性が上昇し耐熱性を保持することとなり、成分(E1)の含有量が98質量%以下であることにより、低温耐衝撃性を保持することとなる。剛性、耐熱性の効果をより高める観点から、成分(E1)の含有量は、92質量%以上であることが好ましい。一方、低温耐衝撃性の効果をより高める観点から、成分(E1)の含有量は97質量%以下であることが好ましく、96質量%以下であることがより好ましい。
なお、成分(E)における成分(E1)及び成分(E2)の各成分の含有量は、成分(A)の成分(A1)、成分(A2)におけると同様に求めることができる。
成分(E)のメルトフローレート(MFR)は、限定されないが、通常、0.1g/分以上であり、成形体の外観の観点から、好ましくは0.2g/10分以上であり、より好ましくは0.3g/10分以上であり、更に好ましくは0.4g/10分以上である。また、成分(E)のメルトフローレート(MFR)は、通常、200g/10分以下であり、低温耐衝撃性の観点から、好ましくは150g/10分以下であり、更に好ましくは100g/10分以下である。成分(E)のMFRは、JIS K7210(1999年)に従って、測定温度230℃、測定荷重21.18N(2.16kgf)の条件で測定される。
成分(E)についても、成分(A)と同様に製造することができる。
また、成分(E)は市販の該当品を用いることも可能である。市販のポリプロピレン系重合体のうち、成分(E)として用いることのできるものとしては、入手可能な市販品としては、プライムポリマー社のPrim Polypro(登録商標)、住友化学社の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー社のポリプロピレンブロックコポリマー、日本ポリプロ社のノバテック(登録商標)PP、LyondellBasell社のMoplen(登録商標)、ExxonMobil社のExxonMobil PP、Formosa Plastics社のFormolene(登録商標)、Borealis社のBorealis PP、LG Chemical社のSEETEC PP、A.Schulman社のASI POLYPROPYLENE、INEOS Olefins&Polymers社のINEOS PP、Braskem社のBraskem PP、SAMSUNG TOTAL PETROCHEMICALS社のSumsung Total、Sabic社のSabic(登録商標)PP、TOTAL PETROCHEMICALS社のTOTAL PETROCHEMICALS Polypropylene、SK社のYUPLENE(登録商標)等がある。
成分(E)としては、上記のポリプロピレンブロック共重合体の1種のみを用いてもよく、モノマー組成やMFR等の物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
<配合割合>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)〜(D)、並びに必要に応じて用いられる成分(E)及び後述のその他の成分の混合物を動的熱処理することにより製造される。
各成分の動的熱処理に供するこれらの混合物中の各成分の割合としては、成分(A)が混合物中の全ポリプロピレン系樹脂に対して50〜100質量%を占めるように用い、かつ、混合物中のポリプロピレン系樹脂と成分(B)との合計100質量部に対して、成分(B)を10〜55質量部、成分(C)を0.01〜0.8質量部、成分(D)を0.01〜1.8質量部用いることが好ましい。なお、その他の成分については、後述する。
成分(A)が動的熱処理に供する混合物中の全ポリプロピレン系樹脂に対して、50質量%以上であると、成分(A)を用いることによるエチレン・α−オレフィン共重合体の成分(B)との分散向上効果による外観及び低温衝撃特性を十分に得ることができる。この観点から、成分(A)は、混合物中の全ポリプロピレン系樹脂に対して55〜100質量%、特に60〜100質量%となるように用いることが好ましい。
成分(B)が、動的熱処理に供する混合物中の全ポリプロピレン系樹脂(通常、この全ポリプロピレン系樹脂とは、成分(A)と必要に応じて用いられる成分(E)との合計である。)と成分(B)との合計100質量部に対して10質量部以上であることにより、成分(B)を用いることによる外観及び低温耐衝撃性の向上効果を十分に得ることができ、55質量部以下であると、成分(A)の含有量を十分に確保して、曲げ弾性率に優れたものとすることができる。この観点から、成分(B)は、混合物中の全ポリプロピレン系樹脂と成分(B)との合計100質量部に対して15〜55質量部用いることが好ましい。
成分(C)が、動的熱処理に供する混合物中の全ポリプロピレン系樹脂(通常、この全ポリプロピレン系樹脂とは、成分(A)と必要に応じて用いられる成分(E)との合計である。)と成分(B)との合計100質量部に対して0.01質量部以上であることにより、成分(C)を用いることによる架橋構造の形成で外観及び低温耐衝撃性の向上効果を十分に得ることができ、0.8質量部以下であると、架橋反応を十分に制御することができる。この観点から、成分(C)は、混合物中の全ポリプロピレン系樹脂と成分(B)との合計100質量部に対して0.02〜0.5質量部、特に0.03〜0.3質量部用いることが好ましい。
成分(D)が、動的熱処理に供する混合物中の全ポリプロピレン系樹脂(通常、この全ポリプロピレン系樹脂とは、成分(A)と必要に応じて用いられる成分(E)との合計である。)と成分(B)との合計100質量部に対して0.01質量部以上であることにより、成分(D)を用いることによる架橋構造の形成で低温耐衝撃性、曲げ弾性率の向上効果を十分に得ることができ、1.8質量部以下であると、架橋反応を十分に制御することができる。この観点から、成分(D)は、混合物中の全ポリプロピレン系樹脂と成分(B)との合計100質量部に対して0.02〜1.5質量部、特に0.05〜1.0質量部用いることが好ましい。
<その他の成分>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、上記の成分(A)〜(E)以外に、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、各種目的に応じて以下の添加剤や成分(A)、(B)、(E)以外の樹脂やエラストマー(以下、「その他の樹脂」と称する。)等の任意成分を配合することができる。
任意成分としては、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防雲剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性剤、分子量調整剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種添加剤を挙げることができる。これらの添加剤の配合量は、要求特性等に応じて適宜設定される。例えば、酸化防止剤は成分(A)、(B)或いは成分(A)、(B)、(E)の合計量100質量部あたり、0.01〜5質量部の範囲で用いられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が含有し得るその他の樹脂としては、成分(A)、(B)、(E)以外のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、前記以外の各種エラストマー等が挙げられる。上記で挙げたその他の樹脂は1種のみを含有しても2種以上を含有してもよい。なお、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いる場合には、更に炭化水素系ゴム用軟化剤を用いることが好ましい。
ただし、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が上記のその他の樹脂やエラストマーを含有する場合、その含有量は、成分(A)〜(D)を必須成分とする本発明の熱可塑性エラストマー組成物の効果を有効に得る上で、外観、低温耐衝撃性、剛性、機械強度の観点で成分(A)、(B)、或いは成分(A)、(B)、(E)の合計100質量部に対して10質量部以下であることが好ましい。
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記成分(A)〜(D)、或いは成分(A)〜(E)と、必要に応じて用いられるその他の成分を所定の割合で含有する原料混合物を動的熱処理して得られるものである。
本発明において「動的熱処理」とは成分(C)及び成分(D)の存在下で溶融状態又は半溶融状態で混練することを意味する。この動的熱処理は、溶融混練によって行うのが好ましく、そのための混合混練装置としては、例えば非開放型バンバリーミキサー、ミキシングロール、ニーダー、二軸押出機等が用いられる。これらの中でも二軸押出機を用いることが好ましい。この二軸押出機を用いた製造方法の好ましい態様としては、複数の原料供給口を有する二軸押出機の原料供給口(ホッパー)に各成分を供給して動的熱処理を行うものである。
動的熱処理を行う際の温度は、通常80〜300℃、好ましくは100〜250℃である。また、動的熱処理を行う時間は通常0.1〜30分である。
<物性>
本発明の熱可塑性エラストマーは、前記成分(A)、(B)、或いは成分(A)、(B)、(E)を成分(C)及び成分(D)の存在下に動的熱処理してなることにより、成形外観、低温耐衝撃性、曲げ弾性率等に優れるものである。
(シャルピー衝撃強度)
本発明において、JIS K7111に準拠した温度−40℃でのノッチ付きシャルピー衝撃試験の破壊形式を低温耐衝撃性の指標とする。
C:完全破壊 (試験片が二つ以上の破片に破壊するもの)
H:ヒンジ破壊 (折れ曲がり強さが低いヒンジ状の薄い表層だけが,一体になって離れない試験片となった不完全破壊)
P:部分破壊(ヒンジ破壊の定義に合わない,不完全破壊)
N:未破壊
本発明の熱可塑性エラストマー組成物のシャルピー衝撃試験の破壊形式は、好ましくはH以上であり、より好ましくはP以上であり、更に好ましくはNBである。
(曲げ弾性率)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K7203に準拠して測定した曲げ弾性率が600MPa以下、特に200〜550MPaであることが好ましい。熱可塑性エラストマー組成物の曲げ弾性率が上記上限よりも大きいと、低温耐衝撃性が低下する傾向にあり、上記下限よりも小さいと、剛性及び強度が不足する傾向がある。
<成形法>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて公知の方法により成形して各種の成形体として使用することができる。成形法としては、熱可塑性エラストマーに通常用いられている成形法、例えば、射出成形法、押出成形法、中空成形法、圧縮成形法や、以下のエアバッグ収納カバーの項で挙げる成形法等が挙げられる。また、その後に積層成形、熱成形等の二次加工を行なってもよい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は単体で成形体としてもよく、他の材料と組み合わせ、積層体等としてもよい。
[エアバッグ収納カバー]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いて、一般に、通常の射出成形法、又は、必要に応じて、ガスインジェクション成形法、射出圧縮成形法、ショートショット発泡成形法等の各種成形法を用いて成形体とすることによりエアバッグ収納カバーとして用いることができる。特に、エアバッグ収納カバーを射出成形する際の成形条件は以下の通りである。
エアバッグ収納カバーを射出成形する際の成形温度は通常150〜300℃であり、好ましくは180〜280℃である。射出圧力は通常5〜100MPaであり、好ましくは10〜80MPaである。また、金型温度は通常0〜80℃であり、好ましくは20〜60℃である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られた本発明のエアバッグ収納カバーは、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開によって乗員を保護するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして用いられる。
[自動車内装材]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いて、押出成形法や射出成形法により、インストルメントパネル、フロントピラートリム、ドアトリム、シフトレバー、各種コンソール類およびヘッドライニングにおける表皮材等の自動車内装材を成形することができる。
自動車内装材を押出成形する際の成形温度は、通常150〜250℃であり、好ましくは170〜220℃である。また、プレス成形する際の成形温度は通常150〜250℃であり、好ましくは190〜240℃である。
自動車内装材を射出成形する際の成形条件は、上記のエアバッグ収納カバーの射出成形条件と同等である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られた自動車内装材は、耐久性、耐低温衝撃性、外観といった要求特性を十分に満たすものである。
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限または下限の値と、下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[原料]
<成分(A)>
(a−1)LyondellBasell社製 ポリプロピレンブロック共重合体 Hifax CA138A:
エチレン単位の含有量:28質量%
MFR(:230℃、荷重21.18N):2.6g/10分
プロピレン系重合体成分(A1)(プロピレン単位の含有量:100質量%)
の含有量:42質量%
エチレン・プロピレン共重合体成分(A2)(エチレン単位の含有量:48質量
%、プロピレン単位の含有量:52質量%)の含有量:56質量%
融解温度:160℃
(a−2):ポリプロピレンブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られたもの)
エチレン単位の含有量:8質量%
MFR(230℃、荷重21.18N):2.5g/10分
<成分(B)>
(b−1):三井化学社製 タフマー(登録商標)A0550S
エチレン・1−ブテン共重合体ゴム
密度:0.86g/cm
MFR(190℃、荷重21.18N):0.5g/10分
ムーニー粘度ML1+4(100℃):65
(b−2):ダウ・ケミカル社製 Engage(登録商標)8150
エチレン・1−オクテン共重合体ゴム
エチレン単位の含有量:39質量%
密度:0.86g/cm
MFR(190℃、荷重21.18N):0.5g/10分
ムーニー粘度ML1+4(121℃):33
<成分(C)>
(c−1):化薬アクゾ社製 カヤヘキサ(登録商標)AD40C
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン
40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物
<成分(D)>
(d−1):ジビニルベンゼン60質量%とエチルビニルベンゼン40%の混合物
<成分(E)>
(e−1):ポリプロピレンブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られたもの)
エチレン単位の含有量:4質量%
MFR(230℃、荷重21.18N):60g/10分
[評価方法]
1)射出成形体外観
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、インラインスクリュウタイプ射出成形機(東芝機械社製「IS130」)により、射出圧力50MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃にて、厚さ3mm×幅100mm×長さ400mmのシートを成形し、得られた成形シートの外観を目視で確認し、フローマークがないものを○、フローマークがあるものを×とした。フローマークがないものを成形外観が優れるものと評価した。
2) 曲げ弾性率(単位:MPa)
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、インラインスクリュウタイプ射出成形機(東芝機械社製「IS130」)により、射出圧力50MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃にて、曲げ弾性率測定用の試験片(厚さ4mm×幅10mm×長さ90mmの試験片)に成形し、この試験片について、JIS K7203に準拠して、スパン間64mm、曲げ速度2mm/分にて曲げ弾性率を測定した。曲げ弾性率は200〜600MPaの範囲が好ましい。
3)低温耐衝撃性(シャルピー衝撃試験破壊状態)
得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いて、インラインスクリュウタイプ射出成形機(東芝機械社製「IS130」)により、射出圧力50MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃にて、シャルピー衝撃強度測定用の試験片(ノッチの付いた厚さ4mm×幅12.7mm×長さ64mmの試験片)を成形した。得られた試験片について、JIS K7111に従って、温度−40℃でシャルピー衝撃試験を行い、シャルピー衝撃試験の破壊形式を低温耐衝撃性の指標とした。
C:完全破壊 (試験片が2つ以上の破片に破壊するもの)
H:ヒンジ破壊 (折れ曲がり強さが低いヒンジ状の薄い表層だけが、一体になって離れない試験片となった不完全破壊)
P:部分破壊(ヒンジ破壊の定義に合わない、不完全破壊)
N:未破壊
本発明の熱可塑性エラストマー組成物のシャルピー衝撃試験の破壊形式は、好ましくはH以上であり、より好ましくはP以上である。
[実施例/比較例]
<実施例1>
(a−1)50質量部、(b−1)30質量部、(c−1)0.05質量部、(d−1)0.1質量部、(e−1)20質量部、酸化防止剤(BASFジャパン社製 商品名イルガノックス(登録商標)1010)0.1質量部をヘンシェルミキサーにて1分間ブレンドし、同方向二軸押出機(神戸製鋼製「TEX30α」、L/D=45、シリンダブロック数=13)へ20kg/hの速度で投入し、180〜210℃の範囲で昇温させて溶融混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットについて、前記1)〜3)の評価を行った。それらの評価結果を表1に示す。
<実施例2〜、参考例〜10及び比較例1〜5>
表1に示す樹脂成分配合とした以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得、実施例1と同様に、前記1)〜3)の評価を行った。それらの評価結果を表1に示す。
Figure 0006915301
表1より、成分(A)と成分(B)を、成分(C)と成分(D)の存在下で動的熱処理して得られる本発明の熱可塑性エラストマー組成物によれば、成形外観及び曲げ弾性率に優れ、低温耐衝撃性も良好な成形体を得ることができることが分かる。
これに対して、成分(A)を含まない比較例1では、成形外観が悪く、低温耐衝撃性も劣る。成分(A)のみを用いた比較例2や、成分(D)を用いていない比較例3では、成形外観、低温耐衝撃性が劣る。成分(C)を用いていない比較例4や、成分(C)と成分(D)を用いていない比較例5は、成形外観が悪い。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は成形外観、低温耐衝撃性及び曲げ弾性率等に優れ、エアバッグ収納カバー、自動車内装材等の成形材料として非常に有用である。

Claims (5)

  1. 下記成分(A)及び成分(B)と、成分(C)及び成分(D)を含む混合物の動的熱処理物である熱可塑性エラストマー組成物であって、成分(A)を、前記混合物中のポリプロピレン系樹脂中に50〜100質量%含み、該ポリプロピレン系樹脂と成分(B)との合計100質量部に対して、成分(B)を10〜55質量部、成分(C)を0.01〜0.8質量部、成分(D)を0.01〜1.8質量部含む熱可塑性エラストマー組成物。
    成分(A):エチレン単位の含有量が20〜50質量%のポリプロピレンブロック共重合体であって、プロピレン単位の含有量が90〜100質量%であるプロピレン系重合体成分(A1)と、エチレン単位の含有量が30〜70質量%であるエチレン・プロピレン共重合体成分(A2)とからなるポリプロピレンブロック共重合体
    成分(B):エチレン・1−ブテン共重合体ゴム
    成分(C):有機過酸化物
    成分(D):架橋助剤
  2. 射出成形用組成物である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物の射出成形体。
  4. 請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる自動車内装材。
  5. 請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバー。
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