JP2019172061A - エアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物及びエアバッグ収納用カバー - Google Patents

エアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物及びエアバッグ収納用カバー Download PDF

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Abstract

【課題】低温耐衝撃性に優れ、且つ塗装等、表面加工特性に優れたエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物を提供する。【解決手段】下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を、成分(A)100質量部に対し、成分(B)10〜160質量部、成分(C)5〜35質量部含有するエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。成分(A):プロピレン単位含有量が85〜100質量%であるプロピレン系重合体成分(B):エチレン単位を主体とする重合体ブロックとエチレン・α−オレフィン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体成分(C):酸変性ポリオレフィン(c−1)のグラフト鎖に脂肪族ジオ−ル(c−2)がエステル結合により結合されているブロックポリマー【選択図】なし

Description

本発明は、エアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物及びエアバッグ収納用カバーに関し、より詳細には、低温耐衝撃性に優れ、且つ塗装等、表面加工特性に優れたエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物と、このエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物を成形してなるエアバッグ収納用カバーに関する。
自動車用エアバッグシステムは自動車等の衝突の際に運転手や搭乗者を保護するシステムであり、衝突の際の衝撃を感知する装置とエアバッグ装置とからなる。このエアバッグ装置は、ステアリングホイール、助手席前方のインストルメントパネル、運転席及び助手席のシート、フロント及びサイドピラー等に設置される。
エアバッグ装置におけるエアバッグ収納カバーは、エアバッグ膨脹時に、それを収納しているカバーの破壊による破片の飛散やカバー取り付け部の破壊によるカバーの飛散が懸念される。このため、カバーが異常な破壊をして飛散するのを防止することを目的として、その構造や材質において種々の提案がなされている。
エアバッグ収納カバー向けの材料としては例えば、特許文献1において、スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物、ゴム用可塑剤、オレフィン系樹脂及び添加剤からなるものが提案されている。また、特許文献2〜4おいてはプロピレン系樹脂、エチレン・α−オレフィン共重合体及びスチレン系エラストマーからなるものが提案されている。また、特許文献5には、多段階重合法により得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー、プロピレン系樹脂及びエチレン・α−オレフィン共重合体からなるものが提案されている。
特開平5−38996号公報 特開平10−265628号公報 特開2014−077128号公報 特開2015−193821号公報 特開2002−194098号公報
近年の自動車内装の高意匠性嗜好に相まってプラスチック製品への表面加工、例えば表面塗装などを施す手法が年々増加している。本来、エアバッグやその他内装部品に使用されている熱可塑性エラストマーはその強度や耐久性が高い反面、異樹脂との接着や塗料との親和性が乏しく、異樹脂との接着や塗装のためには例えばプラズマ処理やコロナ処理といった比較的過酷な条件での表面前処理が必要であった。
また、特許文献1〜5に記載されているような熱可塑性エラストマー組成物において満足できる表面加工特性に改善しようとした場合、低温衝撃性や成形性等エアバッグやその他内装部品に必要な特性を著しく損なうことが見出されている。
本発明は上記のような従来技術の問題を鑑みてなされたものである。即ち、本発明の課題は、低温耐衝撃性に優れ、且つ塗装等、表面加工特性に優れたエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物と、このエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物を成形してなるエアバッグ収納用カバーを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に、酸変性ポリオレフィンのグラフト鎖に脂肪族ジオ−ルがエステル結合により結合されている構造を有するブロックポリマーを配合することにより、低温耐衝撃性能を保持しながら、表面加工特性を向上させる上記課題を解決することができることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の要旨は以下の[1]〜[6]に存する。
[1] 下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含むエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物であって、成分(A)100質量部に対し、成分(B)を10〜160質量部、成分(C)を5〜35質量部含有する、エアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):プロピレン単位含有量が85〜100質量%であるプロピレン系重合体
成分(B):エチレン単位を主体とする重合体ブロックとエチレン・α−オレフィン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体
成分(C):酸変性ポリオレフィン(c−1)のグラフト鎖に脂肪族ジオ−ル(c−2)がエステル結合により結合されているブロックポリマー
[2] 前記成分(A)のメルトフローレート(測定温度230℃、測定荷重21.18N)が1〜150g/10分である、[1]に記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
[3] 前記成分(B)のエチレン・α−オレフィン共重合体のブロックにおけるα−オレフィンの炭素数が3〜8である、[1]又は[2]に記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
[4] 前記成分(C)のブロックポリマーの数平均分子量が2000〜30000である、[1]乃至[3]のいずれかに記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
[5] [1]乃至[4]のいずれかに記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物を成形してなるエアバッグ収納用カバー。
[6] 明細書に記載の方法で測定した濡れ張力が35dye以上である、[5]に記載のエアバッグ収納用カバー。
本発明のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物は低温耐衝撃性能に優れると共に、表面加工特性にも優れたものである。
このため、本発明のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物を用いて、低温から高温までの幅広い温度領域で展開性能に優れた性能を有すると共に表面加飾性に優れたエアバッグ収納カバ−を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
[エアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物]
本発明のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物(以下、「本発明の熱可塑性エラストマー組成物」と称す場合がある)は、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含み、成分(A)100質量部に対し、成分(B)を10〜160質量部、成分(C)を5〜35質量部含有することを特徴とする。
成分(A):プロピレン単位含有量が85〜100質量%であるプロピレン系重合体
成分(B):エチレン単位を主体とする重合体ブロックとエチレン・α−オレフィン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体
成分(C):酸変性ポリオレフィン(c−1)のグラフト鎖に脂肪族ジオ−ル(c−2)がエステル結合により結合されているブロックポリマー
<成分(A)>
成分(A)は、プロピレン単位の含有量が85〜100質量%のプロピレン系重合体である。本発明の熱可塑性エラストマー組成物が、このような成分(A)を含むことにより、射出成形性、押出成形性が向上し、得られる成形体の強度、剛性、外観等を良好なものとすることができる。
成分(A)のプロピレン系重合体としては、プロピレンの単独重合体(ポリプロピレン)であってもよいし、プロピレン単位に加え、エチレン単位、エチレン及びプロピレン以外のα−オレフィン単位を含有するプロピレン・(エチレン及び/又はα−オレフィン)共重合体であってもよいし、また、プロピレン系ブロック共重合体であってもよい。また、エチレン及びα−オレフィン以外の単量体単位を含有するものであってもよい。
成分(A)がα−オレフィン単位を有するプロピレン系共重合体である場合、エチレン及びプロピレン以外のα−オレフィン単位としては、炭素数4〜20のα−オレフィンを挙げることができる。炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等が挙げられる。プロピレン以外のα−オレフィンとしては、好ましくは炭素数4〜10のα−オレフィンであり、より好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
成分(A)のプロピレン系重合体としては、より具体的には、プロピレン単独重合体(ポリプロピレン)、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・エチレン・1−オクテン共重合体等のエチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種の単量体とプロピレンとの共重合体が挙げられる。また、プロピレン単位含有量が90〜100質量%であるプロピレン系重合体成分(A1)と、エチレン・プロピレン共重合体成分(A2)からなるプロピレン系重合体、好ましくは第1工程でプロピレン単位含有量が90〜100質量%であるプロピレン系重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体等を例示することができる。これらの中でも特に、成分(A)としては、低温耐衝撃性及び高温強度の観点から、ポリプロピレン、或いは第1工程でプロピレン単位含有量が90〜100質量%であるプロピレン系重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体であることが好ましい。
成分(A)のプロピレン系重合体のプロピレン単位含有量は、成分(A)全体に対し、85〜100質量%、好ましくは90〜100質量%である。成分(A)のプロピレン単位の含有量が前記下限値以上であることにより、耐熱性及び剛性が良好となる傾向にある。なお、成分(A)中のプロピレン単位含有量は、赤外分光法により求めることができる。
成分(A)が、プロピレン単位含有量が90〜100質量%であるプロピレン系重合体成分(A1)と、エチレン・プロピレン共重合体成分(A2)からなるプロピレン系重合体、好ましくは第1工程でプロピレン単位含有量が90〜100質量%であるプロピレン系重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体である場合、成分(A)は、成分(A1)と成分(A2)との合計量に対し、成分(A1)を60〜95質量%含有することが好ましい。成分(A)中の成分(A1)の含有量が上記下限よりも少ないと力学強度、剛性が低下する傾向があり、上記上限よりも多いと成分(A2)を含むことによる耐衝撃性の向上効果を十分に得ることができなくなる。成分(A)中の成分(A1)の含有量は、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上で、より好ましくは99質量%以下である。
なお、成分(A2)のエチレン・プロピレン共重合体のエチレン単位の含有量は、前述の成分(A)の好ましいプロピレン単位含有量を満たす程度であればよいが、通常20〜80質量%程度である。
成分(A)のメルトフローレート(MFR)(測定温度230℃、測定荷重21.18N)は、限定されないが、通常1g/分以上であり、成形体の外観の観点から、好ましくは10g/10分以上であり、より好ましくは20g/10分以上であり、更に好ましくは30g/10分以上である。また、成分(A)のMFRは、通常、150g/10分以下であり、引張り強度の観点から、好ましくは100g/10分以下であり、更に好ましくは80g/10分以下である。成分(A)のメルトフローレートは、JIS K7210(1999年)に従って、測定温度230℃、測定荷重21.18Nの条件で測定される。
成分(A)としては、前述のプロピレン系重合体の1種を単独で用いてもよく、単量体組成や物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよいが、2種以上を混合して用いる場合、混合物としての成分(A)が前述のプロピレン単位含有量及びMFRを満たすことが好ましい。
成分(A)のプロピレン系重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた重合法を挙げることができる。該重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。
また、成分(A)は市販の該当品を用いることも可能である。具体的には、下記に挙げる製造者等から調達可能であり、適宜選択することができる。入手可能な市販品としては、プライムポリマー社のPrim Polypro(登録商標)、住友化学社の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー社のポリプロピレンブロックコポリマー、日本ポリプロ社のノバテック(登録商標)PP、LyondellBasell社のMoplen(登録商標)、ExxonMobil社のExxonMobil PP、Formosa Plastics社のFormolene(登録商標)、Borealis社のBorealis PP、LG Chemical社のSEETEC PP、A.Schulman社のASI POLYPROPYLENE、INEOS Olefins&Polymers社のINEOS PP、Braskem社のBraskem PP、SAMSUNG TOTAL PETROCHEMICALS社のSumsung Total、Sabic社のSabic(登録商標)PP、TOTAL PETROCHEMICALS社のTOTAL PETROCHEMICALS Polypropylene、SK社のYUPLENE(登録商標)等がある。
<成分(B)>
成分(B)は、エチレン単位を主体とする重合体ブロックとエチレン・α−オレフィン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体である。本発明の熱可塑性エラストマー組成物がこのような成分(B)を含むことにより、高温強度、低温耐衝撃性に優れたものとすることができる。
成分(B)におけるエチレン単位を主体とする重合体ブロックは、エチレン単位を主体として50質量%以上含むものであるが、エチレン単位に加え他の単量体単位を有していてもよい。他の単量体単位としては1−プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等を例示することができる。好ましくは、1−プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数3〜8のα−オレフィン単位が挙げられる。成分(B)におけるエチレン単位を主体とする重合体ブロックは、α−オレフィンの1種のみがエチレンと共重合したものであっても、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。また、成分(B)におけるエチレン単位を主体とする重合体ブロックは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
成分(B)のエチレン・α−オレフィン共重合体のブロックは、エチレン単位に加え、α−オレフィンとして1−プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等を構成単位として有するものを例示することができる。好ましくは、エチレンと、1−プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体である。成分(B)におけるエチレン・α−オレフィン共重合体のブロックのα−オレフィンは1種のみがエチレンと共重合したものであっても、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。また、成分(B)におけるエチレン・α−オレフィン共重合体のブロックは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
成分(B)におけるエチレン・α−オレフィン共重合体のブロックは、エチレン単位及び炭素数3〜8のα−オレフィン単位に加え、非共役ジエンに基づく単量体単位(非共役ジエン単位)等の他の単量体単位の1種又は2種以上を有していてもよい。該非共役ジエンとしては、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンのような鎖状非共役ジエン;シクロへキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネンのような環状非共役ジエン等が挙げられる。好ましくは、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンである。
成分(B)のエチレン単位の含有量は、エチレン単位の含有量とα−オレフィン単位の含有量との合計量に対し、50質量%以上80質量%以下であることが好ましい。成分(B)のエチレン単位の含有量は、成分(B)のブロッキングによる融着防止のためには多い方が好ましく、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形したときの低温耐衝撃性の観点では少ない方が好ましい。成分(B)のエチレン単位の含有量は、より好ましくは55質量%以上であり、更に好ましくは60質量%以上である。また、成分(B)のエチレン単位の含有量は、より好ましくは75質量%以下である。
また、成分(B)が非共役ジエン単位等の他の単量体単位を有する場合、その含有量は成分(B)全体に対して、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。
なお、成分(B)におけるエチレン単位の含有量及び炭素数3〜8のα−オレフィン単位や非共役ジエン単位等の含有量は、それぞれ赤外分光法により求めることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(B)として具体的には、エチレンからなる重合体ブロックと、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・1−オクテン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体ブロックとを含むブロック共重合体を例示することができる。これらは1種で用いられてもよく、2種以上組み合わせ用いられてもよい。これらの中でも、成分(B)は、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・1−オクテン共重合体のブロックとを含むブロック共重合体、すなわち成分(B)は、エチレンからなる重合体とエチレン・1−オクテン共重合体のブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体であることが最も好ましい。
成分(B)は結晶性を有するエチレン単位を主体とする重合体ブロックを有することに加え、エチレン・α−オレフィン共重合体のブロックによる非晶性を有する。この非晶性はガラス転移温度により表すことができ、DSC法によるガラス転移温度が好ましくは−90℃以上であり、より好ましくは−85℃以上であり、一方、好ましくは−50℃以下であり、より好ましくは−60℃以下である。
成分(B)のメルトフローレート(MFR)(測定温度190℃、測定荷重21.18N)は限定されないが、通常10g/10分以下であり、強度の観点から、好ましくは8.0g/10分以下であり、より好ましくは5.0g/10分以下であり、更に好ましくは3.0g/10分以下である。また、成分(B)のMFRは、通常0.01g/10分以上であり、流動性の観点から、好ましくは0.05g/10分以上であり、更に好ましくは0.10g/10分以上である。成分(B)のMFRは、ASTM D1238に従い、測定温度190℃、測定荷重21.18Nの条件で測定される。
成分(B)の密度は低温耐衝撃性の観点から、好ましくは0.880g/cm以下であり、より好ましくは0.870g/cm以下である。一方、その下限については特に制限されないが、通常0.85g/cm以上である。
成分(B)についても1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、2種以上を混合して用いる場合、混合物としての成分(B)のMFR等の物性が上記好適範囲を満たすことが好ましい。
成分(B)の製造方法としては、特表2007−529617号公報、特表2008−537563号公報、特表2008−543978号公報に開示された方法にしたがって合成する方法が挙げられる。例えば、第1のオレフィン重合触媒と、同等の重合条件下で第1のオレフィン重合触媒によって調製されるポリマーとは化学的性質又は物理的性質が異なるポリマーを調製可能な第2のオレフィン重合触媒と、鎖シャトリング剤と、を組み合わせて得られる混合物又は反応生成物を含む組成物を準備し、上記エチレンとα−オレフィンとを、付加重合条件下で、該組成物と接触させる工程を経て製造することができる。
成分(B)の重合には、好ましくは連続溶液重合法が適用される。連続溶液重合法は、触媒成分、鎖シャトリング剤、モノマー類、ならびに場合により溶媒、補助剤、捕捉剤および重合助剤が反応ゾーンに連続的に供給され、ポリマー生成物はそこから連続的に取り出される。また、ブロックの長さは、前記触媒の比率および種類、鎖シャトリング剤の比率および種類、重合温度等を制御することによって変化させることができる。
成分(B)のオレフィン系ブロック共重合体の合成方法において、その他の条件は特表2007−529617号公報、特表2008−537563号公報、特表2008−543978号公報に開示されている。
また、成分(B)の市販の該当品としては例えばダウ・ケミカル社製Engage(登録商標)、Engage(登録商標)−XLTシリーズやINFUSE(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
<成分(C)>
成分(C)は、酸変性ポリオレフィン(c−1)のグラフト鎖に脂肪族ジオ−ル(c−2)がエステル結合により結合されているブロックポリマーであり、このような成分(C)を上述の成分(A)と成分(B)とに対してある特定量配合することで、エアバッグ収納カバー用の熱可塑性エラストマー組成物として高い衝撃吸収能を保持しながら濡れ張力を向上させることが可能となり、塗装等、表面加工特性に優れたエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物とすることができる。
酸変性ポリオレフィン(c−1)は特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。該酸変性ポリオレフィンは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン化合物共重合体(EPDMなど)、エチレン−芳香族モノビニル化合物−共役ジエン化合物共重合ゴムなどのポリオレフィンを、例えば、マレイン酸又は無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその誘導体を用いてグラフト共重合し、変性したものである。このグラフト共重合は、例えば上記ポリオレフィンを適当な溶媒中において、ベンゾイルパーオキシドなどのラジカル発生剤を用いて、不飽和カルボン酸又はその誘導体と反応させることにより行われる。また、不飽和カルボン酸又はその誘導体の成分は、ポリオレフィン用モノマーとのランダムもしくはブロック共重合によりポリマー鎖中に導入することもできる。
変性のため使用される不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基及び必要に応じてヒドロキシル基やアミノ基などの官能基が導入された重合性二重結合を有する化合物が挙げられる。 また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、これらの酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩などがあり、その具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、メタクリル酸ナトリウムなどを挙げることができる。好ましくは無水マレイン酸である。
グラフト反応条件としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキシド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3などのパーオキシエステル類、ベンゾイルパーオキシドなどのジアシルパーオキシド類、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサンなどのヒドロパーオキシド類などの有機過酸化物を、前記ポリオレフィン100質量部に対して、0.001〜10質量部程度用いて、80〜300℃程度の温度で、溶融状態または溶液状態で反応させる方法が挙げられる。
該酸変性ポリオレフィンの酸変性量(グラフト率という場合がある。)は、特に限定されないが、好ましくは酸変性量が無水マレイン酸換算で、0.05〜10質量%、より好ましくは0.07〜5質量%である。
好ましい酸変性ポリオレフィン(c−1)としては、本発明の効果の大きさなどの点から、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
一方、脂肪族ジオール(c−2)には特に制限なく、従来公知のものを用いることができる。
例えば、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、1,2−、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオール、シクロドデカンジオール、ダイマージオール、水添ダイマージオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これら脂肪族ジオールの中でも濡れ張力の永続性という観点でポリエチレングリコールが好ましい。
成分(C)の数平均分子量は、成形性の観点から2000〜30000の範囲が好ましく、濡れ張力の観点から2500〜25000の範囲がより好ましく、耐衝撃性の観点から3000〜20000の範囲が特に好ましい。
ここで、成分(C)の数平均分子量は、試料をo−DCB(0.5mg/ml BHT添加)に135℃で溶解させ、2μm金属フィルターでろ過後、高温サイズ排除クロマトグラフィー(東ソー製HLC−8321GPC/HT)により測定された値である。
成分(C)は1種のみを用いてもよく、酸変性ポリオレフィン(c−1)や脂肪族ジオール(c−2)の異なるものの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<配合割合>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の成分(A)〜成分(C)の含有量について以下に説明する。なお、以下の成分(A)〜成分(C)の含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造する際の各成分の仕込み量を意味するものである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の成分(B)の含有量は、成分(A)の100質量部に対し、低温衝撃性能と柔軟性の観点から10質量部以上であり、好ましくは50質量部以上であり、より好ましくは80質量部以上である。一方、剛性と成形性の観点から160質量部以下であり、好ましくは150質量部以下であり、より好ましくは140質量部以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の成分(C)の含有量は、成分(A)の100質量部に対し、塗装等の表面加飾性能付与の観点から5質量部以上であり、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは15質量部以上である。一方、低温衝撃性能の観点から35質量部以下であり、好ましくは32質量部以下であり、より好ましくは25質量部以下である。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の成分(A)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量%中に、強度の観点から好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは35質量%以上である。また、耐衝撃性の観点から、好ましくは85質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、特に好ましくは75質量%以下である。
<その他の任意成分>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、上記の成分(A)〜成分(C)以外に本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、各種目的に応じて以下の添加剤、充填材(無機フィラー、有機フィラー)や成分(A)〜成分(C)以外の樹脂(以下、「その他の樹脂」と称する。)等の任意成分を配合することができる。
任意成分としては、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防雲剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性剤、分子量調整剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種添加物を挙げることができる。これらの添加剤は通常、成分(A)〜成分(C)の合計100質量部に対し、それぞれの添加剤を0.01〜2.0質量部の範囲で配合して用いることができる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤を用いる場合、成分(A)〜成分(C)の合計100質量部に対して、通常0.01〜1.0質量部の範囲で用いられる。
滑剤としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、シリコーンオイル等が挙げられる。滑剤を用いる場合、成分(A)〜成分(C)の合計100質量部に対して通常0.01〜1.0質量部の範囲で用いられる。
充填材のうち、無機フィラーとしては、例えば、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、金属石鹸、二酸化チタン、カーボンブラック等を挙げることができる。充填材を用いる場合、成分(A)〜成分(C)の合計100質量部に対して、通常0.1〜50質量部の範囲で用いられる。
成分(A)〜成分(C)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン・ 共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリオレフィン樹脂(だだし、成分(A),(B)に該当するものを除く。)、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、前記以外の各種エラストマーなどが挙げられる。上記で挙げたその他の樹脂は1種のみを含有しても2種以上を含有してもよい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物がこれらのその他の樹脂を含有する場合、成分(A)〜成分(C)を含むことによる前述の効果を有効に得る上で、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、樹脂成分中の成分(A)〜成分(C)の合計の含有量が60質量%以上となるように、その他の樹脂の含有量が40質量%以下となるように含有することが好ましい。
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、必要に応じてその他の成分を混合し、好ましくは動的熱処理して製造される。
本発明において「動的熱処理」とは溶融状態又は半溶融状態で混練することを意味する。この動的熱処理は、溶融混練によって行うのが好ましく、そのための混合混練装置としては、例えば非開放型バンバリーミキサー、ミキシングロール、ニーダー、二軸押出機等が用いられる。これらの中でも二軸押出機を用いることが好ましい。この二軸押出機を用いた製造方法の好ましい態様としては、複数の原料供給口を有する二軸押出機の原料供給口(ホッパー)に各成分を供給して動的熱処理を行うものである。
動的熱処理を行う際の温度は、通常80〜300℃、好ましくは100〜250℃である。また、動的熱処理を行う時間は通常0.1〜30分である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を二軸押出機により動的熱処理を行う場合においては、二軸押出機のバレル半径R(mm)、スクリュー回転数N(rpm)及び吐出量Q(kg/時)の間に下記式の関係を保ちながら押出することが好ましく、下記式(2)の関係を保ちながら押出することがより好ましい。
2.6<NQ/R<22.6 (1)
3.0<NQ/R<20.0 (2)
二軸押出機のバレル半径R(mm)、スクリュー回転数N(rpm)及び吐出量Q(kg/時)との間の前記関係が上記下限値より大きいことが熱可塑性エラストマー組成物を効率的に製造するために好ましい。一方、前記関係が上記上限値より小さいことが、剪断による発熱を抑え、外観不良の原因となる異物が発生しにくくなるために好ましい。
<メルトフローレート>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ISO 1133に準拠した測定温度230℃、測定荷重21.18Nでのメルトフローレート(MFR)が0.1〜150g/10分であることが好ましい。MFRが0.1g/10分より小さいと流動性に乏しく射出成形や押出成形に不適となり、また、150g/10分より大きいと射出成形時にバリ、フローマークのような成形品の外観不良等の原因となり、また押出成形時に成形品が著しく変形する可能性がある。流動性の観点からは、MFRはより好ましくは0.5g/10分以上である。一方、成形時にバリやフローマーク、ヒケ等を抑える観点からは、MFRはより好ましくは100g/10分以下であり、更に好ましくは50g/10分以下であり、特に好ましくは30g/10分以下である。
なお、本発明の熱可塑性エラストマーのMFRは流動性の高い成分である成分(A)を多くすると高くなる傾向にあり、また、流動性の低い成分(B)を多くするほど低くなる傾向にある。
<成形法>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて公知の方法により成形して各種の成形体として使用することができる。成形法としては、熱可塑性エラストマーに通常用いられている成形法、例えば、射出成形法、押出成形法、中空成形法、圧縮成形法等が挙げられる。また、その後に積層成形、熱成形等の二次加工を行なってもよい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は単体で成形体としてもよく、他の材料と組み合わせ、積層体等としてもよい。
[エアバッグ収納カバー]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いて、一般に、通常の射出成形法、又は、必要に応じて、ガスインジェクション成形法、射出圧縮成形法、ショートショット発泡成形法等の各種成形法を用いて成形体とすることによりエアバッグ収納カバーとして用いることができる。
なお、本発明において「エアバッグ収納カバー」とは、エアバッグを収納する容器全般を意味するものであり、例えば、エアバッグが収納されている容器において、エアバッグが展開する際の開口部、又はこの開口部と一体となっている容器全体である。
特に、本発明のエアバッグ収納カバーは射出成形により製造することが好ましく、射出成形を行う際の成形条件は以下の通りである。
エアバッグ収納カバーを射出成形する際の成形温度は一般に150〜300℃であり、好ましくは180〜280℃である。射出圧力は通常、5〜100MPaであり、好ましくは10〜80MPaである。また、金型温度は通常0〜80℃であり、好ましくは20〜60℃である。
この様にして得られたエアバッグ収納カバーは、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして好適に用いられる。また、本発明のエアバッグ収納カバーは、運転席用エアバッグ収納カバー、助手席用エアバッグ収納カバー、歩行者用エアバッグ収納カバー、ニー・エアバッグ収納カバー、サイド・エアバッグ収納カバー、カーテン・エアバッグ収納カバー等のいずれにも好適に用いることができる。
[濡れ張力]
本発明のエアバッグ収納用カバーは、表面加工特性の指標として、後述の実施例の項に記載の方法で測定される濡れ張力が35dye以上であることが好ましい。この濡れ張力が35dye以上であれば、塗装等の表面加工特性に優れ、好ましい。濡れ張力は大きい程好ましく、36dye以上であることがより好ましい。ただし、濡れ張力は、耐衝撃性の低下を抑制するという観点から通常73dye以下である。
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限または下限の値と、下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[原料]
成分(A):ポリプロピレンブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られたもの。)
MFR(JIS K7210(1999年)):30g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf))
ポリプロピレンブロック共重合体中、
プロピレン単独重合体の含有量:85質量%
エチレン・プロピレン共重合体の含有量:15質量%
エチレン・プロピレン共重合体におけるエチレン単位含有量:50質量%
融解温度:163℃
成分(B):エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・1−オクテン共重合体のブロックとを有するブロック共重合体
ダウ・ケミカル社製 Engage(登録商標)8150(エチレン・オクテン共重合体)
結晶融解ピーク:110℃〜125℃にピークなし
結晶融解熱量:0
MFR(ASTM D1238):0.5g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N(2.16kgf))(カタログ値)
密度:0.86g/cm
ガラス転移温度(DSC法):−60℃
成分(C):無水マレイン酸によりグラフト変性した変性ポリプロピレンのグラフト鎖にエステル結合を介してポリエチレングリコールを結合して得られるブロックポリマー
融点:120℃
数平均分子量:12000
[評価方法]
1)低温耐衝撃性:アイゾット衝撃強度(単位:kJ/m
インラインスクリュ−タイプ射出成形機(東芝機械社製「IS130」)により、射出圧力50MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃にて、アイゾット衝撃強度用の試験片:ノッチの付いた厚さ4mm×幅12.7mm×長さ64mmの試験片を成形した。この試験片について、JIS K7110(1999年)に従って、温度−40℃で測定した。アイゾット衝撃強度の値が大きいものほど、低温耐衝撃性に優れるものと評価した。また破壊形態を観察し、完全非破壊をNB、完全破壊をCBとした。
2)濡れ張力:
インラインスクリュ−タイプ射出成形機(東芝機械社製「IS130」)により、射出圧力50MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃にて、アイゾット衝撃強度用の試験片:ノッチの付いた厚さ3mm×幅120mm×長さ120mmの試験片を成形した。この試験片の上に試験用混合液(Wako社製 濡れ張力試験用混合液)を数滴滴下して、直ちに綿棒で液体を直径2cm程度の円状薄層にした。濡れ判定は2秒後の薄層状態で行った。薄層が2秒経過後も初期状態を保っている場合は濡れていることとし、さらに表面張力の高い混合液で試験を実施し、2秒以下で薄層が破れる場合はより表面張力の低い混合液で同様の試験を実施した。この試験を繰り返し実施し、最終的に2秒間濡らすことのできる表面張力の最も高い混合液の表面張力を濡れ張力とした。
[実施例1,2・比較例1,2]
成分(A)〜成分(C)を表−1に示す割合で用い、更に、酸化防止剤(BASFジャパン社製 商品名イルガノックス(登録商標)1010)0.1質量部及び黒色顔料(カーボン濃度40質量%品)1.5質量部をヘンシェルミキサーにて1分間ブレンドし、同方向二軸押出機(神戸製鋼社製「TEX30α」、L/D=45、シリンダブロック数:13)へ20kg/hの速度で投入し、180〜210℃の範囲に昇温して溶融混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットについて、前記1)、2)の評価を行った。それらの評価結果を表−1に示す。
Figure 2019172061
表−1より明らかなように、成分(C)が配合されていない比較例1では低温耐衝撃性に優れるものの濡れ張力が低い。また成分(C)を40質量部配合した比較例2では、濡れ張力が高いが低温耐衝撃性が著しく低下している。これに対して実施例1、2は、低温耐衝撃性と濡れ張力に優れる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、低温特性、表面加工特性などに優れているために、エアバッグ収納カバーの成形材料として非常に有用である。

Claims (6)

  1. 下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含むエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物であって、成分(A)100質量部に対し、成分(B)を10〜160質量部、成分(C)を5〜35質量部含有する、エアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
    成分(A):プロピレン単位含有量が85〜100質量%であるプロピレン系重合体
    成分(B):エチレン単位を主体とする重合体ブロックとエチレン・α−オレフィン共重合体ブロックとを含むオレフィン系ブロック共重合体
    成分(C):酸変性ポリオレフィン(c−1)のグラフト鎖に脂肪族ジオ−ル(c−2)がエステル結合により結合されているブロックポリマー
  2. 前記成分(A)のメルトフローレート(測定温度230℃、測定荷重21.18N)が1〜150g/10分である、請求項1に記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 前記成分(B)のエチレン・α−オレフィン共重合体のブロックにおけるα−オレフィンの炭素数が3〜8である、請求項1又は2に記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 前記成分(C)のブロックポリマーの数平均分子量が2000〜30000である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエアバッグ収納カバー用熱可塑性エラストマー組成物を成形してなるエアバッグ収納用カバー。
  6. 明細書に記載の方法で測定した濡れ張力が35dye以上である、請求項5に記載のエアバッグ収納用カバー。
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