JP2023117162A - 熱可塑性エラストマー組成物、射出成形品及びエアバッグ収納カバー - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物、射出成形品及びエアバッグ収納カバー Download PDF

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Abstract

【課題】低温耐衝撃性を維持しながら、意匠性に優れた成形品を可能とする熱可塑性エラストマー組成物を提供する。【解決手段】下記成分(A)~(C)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、キャピラリーレオメーター(JIS K7199)におけるダイスウェル比(試験温度210℃、せん断速度243/s)が1.10以上であり、該熱可塑性エラストマー組成物よりなる光沢測定用試験片についてISO 2813に従って入射角60°で測定した光沢度が50%以下であり、かつ該熱可塑性エラストマー組成物よりなる曲げ弾性率測定用試験片についてISO 178(2010年)に従って測定した曲げ弾性率が100~700MPaである、熱可塑性エラストマー組成物。成分(A):プロピレン系ブロック共重合体成分(B):α-オレフィンの炭素数が4以上であるエチレン・α-オレフィン共重合体成分(C):エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性エラストマー組成物と、この熱可塑性エラストマー組成物よりなる射出成形品及びエアバッグ収納カバーに関する。
自動車用エアバッグシステムは自動車等の衝突の際に運転手や搭乗者を保護するシステムであり、衝突の際の衝撃を感知する装置とエアバッグ装置からなる。このエアバッグ装置は、ステアリングホイール、助手席前方のインストルメントパネル、運転席及び助手席のシート、フロント及びサイドピラー等に設置される。
エアバッグ装置におけるエアバッグ収納カバーは、エアバッグ膨張時に設計通りに開裂するように、その構造や材質において種々提案がなされている。
オレフィン系熱可塑性エラストマーからなるエアバッグ収納カバーとしては、例えば、特許文献1に、特定のプロピレン系重合体と、特定のオレフィン系ブロック共重合体と、スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物を特定量含む組成物を、有機過酸化物の存在下で動的熱処理してなる熱可塑性エラストマー組成物からなるものが提案されている。
特開2016-186041号公報
近年、エアバッグ展開出力向上による低温域でのエアバッグ収納カバーの破損が懸念されるため、安全性の向上、設計の自由度等の観点から低温耐衝撃性に優れた材料が望まれる。また、エアバッグ収納カバーは、従来より塗装工程を経て製造されているが、塗装ラインの増設等、塗装工程によるコストの問題があり、より安価に製造するために、近年では無塗装で製造可能な材料が望まれている。そして、無塗装のエアバッグ収納カバーに対し、意匠性の観点から、低光沢かつフローマーク性が改善された成形品が望まれている。
本発明者らの詳細な検討によれば、前記特許文献1に記載されている熱可塑性エラストマー組成物においては、フローマーク性が悪く、外観が不十分であるという問題が見出された。
本発明はこのような従来技術の問題を鑑みてなされたものである。即ち、本発明の課題は、低温耐衝撃性を維持しながら、意匠性に優れた成形品を可能とする熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、プロピレン系ブロック共重合体とエチレン・α-オレフィン共重合体とエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体とを含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、キャピラリーレオメーター(JIS K7199)におけるダイスウェル比(試験温度210℃、せん断速度243/s)が1.10以上、入射角60゜で測定した光沢度が50%以下、曲げ弾性率100~700MPaの熱可塑性エラストマー組成物であれば、上記課題を解決し得ることを見出した。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]~[8]に存する。
[1] 下記成分(A)~(C)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、キャピラリーレオメーター(JIS K7199)におけるダイスウェル比(試験温度210℃、せん断速度243/s)が1.10以上であり、該熱可塑性エラストマー組成物よりなる光沢測定用試験片についてISO 2813に従って入射角60°で測定した光沢度が50%以下であり、かつ該熱可塑性エラストマー組成物よりなる曲げ弾性率測定用試験片についてISO 178(2010年)に従って測定した曲げ弾性率が100~700MPaである、熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):プロピレン系ブロック共重合体
成分(B):α-オレフィンの炭素数が4以上であるエチレン・α-オレフィン共重合体
成分(C):エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体
[2] 前記成分(B)のα-オレフィンの炭素数が4~8である、[1]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[3] 前記成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体がエチレン・α-オレフィンブロック共重合体である、[1]又は[2]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[4] 前記エチレン・α-オレフィンブロック共重合体がエチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを含むエチレン・α-オレフィンブロック共重合体である、[3]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[5] 前記エチレン・α-オレフィンブロック共重合体が110~125℃に結晶融解ピークを有し、かつその結晶融解熱量が20~60J/gである、[4]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[6] 前記成分(C)が油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体である、[1]~[5]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してなる射出成形品。
[8] [1]~[6]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を用いたエアバッグ収納カバー。
本発明によれば、低温耐衝撃性を維持しながら、意匠性に優れた成形品を可能とする熱可塑性エラストマー組成物を提供できる。
本発明の成形品よりなるエアバッグ収納カバーは、運転席用エアバッグ収納カバー、助手席用エアバッグ収納カバー、歩行者用エアバッグ収納カバー、ニー・エアバッグ収納カバー、サイド・エアバッグ収納カバー、カーテン・エアバッグ収納カバー等のいずれにも好適に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
本発明において「エアバッグ収納カバー」とは、エアバッグを収納する容器全般を意味するものであり、例えば、エアバッグが収納されている容器において、エアバッグが展開する際の開口部、又はこの開口部と一体となっている容器全体である。
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、下記成分(A)~(C)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、キャピラリーレオメーター(JIS K7199)におけるダイスウェル比(試験温度210℃、せん断速度243/s)(以下、単に「ダイスウェル比」と称す場合がある。)が1.10以上であり、該熱可塑性エラストマー組成物よりなる光沢測定用試験片についてISO 2810に従って入射角60°で測定した光沢度(以下、単に「光沢度」と称す場合がある。)が50%以下であり、かつ該熱可塑性エラストマー組成物よりなる曲げ弾性率測定用試験片についてISO 178(2010年)に従って測定した曲げ弾性率(以下、単に「曲げ弾性率」と称す場合がある。)が100~700MPaである熱可塑性エラストマー組成物である。
成分(A):プロピレン系ブロック共重合体
成分(B):α-オレフィンの炭素数が4以上であるエチレン・α-オレフィン共重合体
成分(C):エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ダイスウェル比、光沢度及び曲げ弾性率を上記規定範囲とするために、好ましくは、上記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する組成物を下記成分(D)と成分(E)の存在下で動的熱処理して製造される。
成分(D):有機過酸化物
成分(E):架橋助剤
<ダイスウェル比>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、ダイスウェル比の値が1.10以上である場合に、良好なフローマーク性を与える傾向があることがわかった。本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、ダイスウェルが1.10以上であると、射出成形時の金型内での流動先端が安定となり、フローマーク性が改善すると考えられる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物のダイスウェル比は1.13以上であることが好ましく、1.15以上であることがより好ましい。熱可塑性エラストマー組成物のダイスウェル比の上限値に制限は無いが、通常は2.00以下である。
本発明において、キャピラリーレオメーター(JIS K7199)におけるダイスウェル比は、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1D(JIS K7199)を使用して、下記条件で試料の押出工程中に測定した値であり、下記計算式(I)により算出される。
試験温度:210℃
L/D:10(D=1mm)
せん断速度:243/s
St=Dm/Dt (I)
St,Dm,Dtは以下を示す。
St:ダイスウェル比
Dm:ダイの出口の下10mmの位置において、試験温度で測定した押出し試料の直径(mm)
Dt:試験温度で測定したキャピラリーダイの直径(mm)
上記した成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する熱可塑性エラストマー組成物のダイスウェル比を1.10以上とするためには、例えば、以下のような工夫を行うことが好ましい。
製法の観点では、成分(A)の一部、成分(B)、成分(C)、後述の成分(D)及び成分(E)、必要に応じて更に後述の成分(F)及び成分(G)の混合物を動的に熱処理して部分架橋させた後に、成分(A)の残部を加えるのが好適である。このようにすることで、後添加された成分(A)がラジカルによる分子鎖の切断を受けにくくなり、組成物としての引張強さを高く維持することができ、ダイスウェル比を1.10以上に制御できる。なお、前記した成分(A)の一部、成分(A)の残部は、後述する成分(A)に該当するものであれば、1種又は2種以上であってよく、成分(A)の一部と成分(A)の残部とが、同一でも異なっていてもよい。
また、動的に熱処理して部分架橋させた後で添加する成分としては、成分(A)の他に、成分(B)、成分(C)、成分(F)及び成分(G)によってもダイスウェル比を大きくすることが可能と考えられる。よって、成分(B)、成分(C)、成分(F)、成分(G)についても、これらのうちの1種又は2種以上を、動的熱処理による部分架橋前にその一部を添加混合し、残部を動的熱処理による部分架橋後に添加するようにしてもよい。
<光沢度>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の入射角60°で測定した光沢度は50%以下である。光沢度が上記上限値以下であれば、塗装せずとも所望の意匠性を得ることができる。光沢度の上限は40%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましい。
なお、本発明における光沢度は、熱可塑性エラストマー組成物から、インラインスクリュウタイプ射出成形機により、射出速度30mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、光沢測定用試験片(厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシート)を成形し、ISO 2813に従って、入射角60°で測定した値である。
本発明において、熱可塑性エラストマー組成物の光沢度を上記上限値以下とするには、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含有する組成物を後述の成分(D)と成分(E)の存在下で動的熱処理するのが好適である。
<曲げ弾性率>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の曲げ弾性率は100~700MPaである。
本発明において、曲げ弾性率は低温耐衝撃性と相関があり、曲げ弾性率を上記範囲とすることで、成形品の形状保持性を維持した上で優れた低温耐衝撃性を実現することができる。曲げ弾性率の上限は低温衝撃性の観点から、600MPa以下が好ましく、500MPa以下がより好ましい。曲げ弾性率の下限は成形品の形状保持性の観点から、150MPa以上が好ましく、200MPa以上がより好ましい。
なお、本発明における曲げ弾性率は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物から、インラインスクリュウタイプ射出成形機により、射出速度30mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、ISO 3167(2002年)準拠の多目的評価用試験片A(長さ180mmのダンベル)を成形し、ダンベルの末端を切り落として作成した曲げ弾性率測定用試験片(厚さ4mm×幅10mm×長さ80mm)を用いて、東洋精機社製ペントグラフB-2によりISO 178(2010年)従って、2mm/minの速度で測定した値である。
本発明において、熱可塑性エラストマー組成物の曲げ弾性率を上記範囲とするには、材料として成分(A)、成分(B)及び成分(C)を使用し、後掲の好適範囲に配合するのが好ましい。
<成分(A)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)として、プロピレン系ブロック共重合体を含有する。成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体のプロピレン単位の含有率は、成分(A)全体に対し、通常50質量%以上であり、好ましくは70~99質量%である。成分(A)のプロピレン単位の含有率が上記下限値以上であることにより、耐熱性及び剛性が良好となる傾向にある。成分(A)のプロピレン単位の含有率が上記上限値以下であることにより、低温耐衝撃性が良好となる傾向がある。このプロピレン単位の含有率は、組成の異なるプロピレン系重合体の2種以上を混合して成分(A)を構成する場合、成分(A)全体としてプロピレン単位の含有率が上記数値範囲内であればよい。
なお、成分(A)中のプロピレン単位の含有率及び後述のα-オレフィン単位の含有率、後述の成分(B)のエチレン単位の含有率及びα-オレフィン単位の含有率は、それぞれ赤外分光法により求めることができる。
成分(A)は、成分(A)全体に対しプロピレン単位を前述の好適な含有率で含むと共に、プロピレン単位以外のエチレン単位、プロピレン以外のα-オレフィン(以下、「他のα-オレフィン」と称す場合がある。)単位、エチレン及びα-オレフィン以外の単量体単位等を含有するものである。成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体としては、例えば、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・他のα-オレフィンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・他のα-オレフィンブロック共重合体、又はその他のプロピレン系ブロック共重合体が挙げられる。
成分(A)中のプロピレン単位以外のエチレン単位、他のα-オレフィン単位、その他の単量体単位の合計の含有率は、1~30質量%であることが好ましい。
成分(A)がプロピレン・他のα-オレフィンブロック共重合体である場合、プロピレン以外のα-オレフィン単位としては、炭素数4~20のα-オレフィン単位を挙げることができる。炭素数4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン、2,2,4-トリメチル-1-ペンテン等が挙げられる。プロピレン以外のα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数4~10のα-オレフィンであり、より好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンである。
これらの他のα-オレフィン単位は、成分(A)中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
成分(A)のプロピレン系ブロックブロック共重合体としては、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・1-ブテンブロック共重合体、プロピレン・1-ヘキセンブロック共重合体、プロピレン・1-オクテンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・1-ヘキセンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・1-オクテンブロック共重合体、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレンブロック共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体を例示することができる。
好ましくは、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種の単量体とプロピレンとのブロック共重合体、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体である。これらの中でも特に、成分(A)としては、低温耐衝撃性及び高温強度の観点から、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体であることが好ましい。
成分(A)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)は、限定されないが、通常0.1g/10分以上であり、成形体の外観の観点から、好ましくは10g/10分以上であり、より好ましくは20g/10分以上であり、更に好ましくは30g/10分以上である。また、成分(A)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)は、通常200g/10分以下であり、引張り強度の観点から、好ましくは150g/10分以下であり、より好ましくは100g/10分以下である。成分(A)のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133(2011年)に従って、230℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
成分(A)は、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が0.1~200g/10分の範囲内であるものを複数用いてもよい。
成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた重合法を挙げることができる。該重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。
また、成分(A)は市販のものを用いてもよい。成分(A)の市販品としては、例えば、プライムポリマー社製「PrimPolypro(登録商標)」、住友化学社製「住友ノーブレン(登録商標)」、サンアロマー社製「ポリプロピレンブロックコポリマー」、日本ポリプロ社製「ノバテック(登録商標)PP」、LyondellBasell社製「Moplen(登録商標)」、LyondellBasell社製「ADFLEX(登録商標)」、LyondellBasll社製「Hifax(登録商標)」、ExxonMobil社製「ExxonMobilPP」、FormosaPlastics社製「Formolene(登録商標)」、Borealis社製「BorealisPP」、LGChemical社製「SEETECPP」、A.Schulman社製「ASIPOLYPROPYLENE」、INEOSOlefins&Polymers社製「INEOSPP」、Braskem社製「BraskemPP」、HanwhaTOTALPETROCHEMICALS社製「HanwhaTotal」、Sabic社製「Sabic(登録商標)PP」、TOTALPETROCHEMICALS社製「TOTALPETROCHEMICALSPolypropylene」、SK社製「YUPLENE(登録商標)」が挙げられる。
成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
<成分(B)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(B)として、α-オレフィンの炭素数が4以上であるエチレン・α-オレフィン共重合体を含有する。成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレン単位の含有率とα-オレフィン単位の含有率との合計を100質量%としたときに、エチレン単位の含有率が50~80質量%、α-オレフィン単位の含有率が20~50質量%であることが好ましい。エチレン単位の含有率が上記範囲内であると、他の成分との親和性が良好となって熱可塑性エラストマー組成物の微分散性が向上する傾向にある。
なお、成分(B)の各構成単位の含有率は、赤外分光法により求めることができる。
成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンは限定されないが、具体的には、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンが挙げられる。これらのα-オレフィン単位は、成分(B)中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。これらの中でも、α-オレフィンとしては炭素数が4~8であるものが好ましく、1-オクテンがより好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体がα-オレフィン単位として1-オクテン単位を含むことで引張強さが良好となる。
成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体としては、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体、エチレン・α-オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、これらの中でもエチレン・α-オレフィンブロック共重合体、特にエチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを含むエチレン・α-オレフィンブロック共重合体が好ましい。
エチレン・α-オレフィンブロック共重合体は、結晶性を有するエチレンからなる重合体ブロックを有することに加え、α-オレフィンを含むブロックによる非晶性を有する。成分(B)がこのような構造を有することにより、得られるエアバッグ収納カバーに高温強度及び低温耐衝撃性の効果が付与されやすくなる。
また、エチレンからなる重合体ブロックが、後述の成分(D)の有機過酸化物の存在下で動的熱処理されることにより光沢度が低くなり、外観も改善されるものと考えられる。
成分(B)のエチレン・α-オレフィンブロック共重合体は、110~125℃に結晶融解ピークを有し、かつその結晶融解熱量が20~60J/gであることが好ましい。ここで、成分(B)において、110~125℃に結晶融解ピークを有し、その結晶融解ピークから算出される結晶融解熱量が20~60J/gであることは、成分(B)が、結晶性のエチレンからなる重合体ブロックを有することを表す指標である。成分(B)の結晶融解熱量は、高温強度の観点から、より好ましくは30J/g以上である。また、成分(B)の結晶融解熱量は、低温耐衝撃性の観点から、より好ましくは50J/g以下である。
成分(B)のエチレン・α-オレフィンブロック共重合体のα-オレフィンを含むブロックによる非晶性は、ガラス転移温度により表すことができ、成分(B)のDSC法によるガラス転移温度は好ましくは-80℃以上であり、より好ましくは-75℃以上であり、一方、好ましくは-50℃以下であり、より好ましくは-60℃以下である。
成分(B)の結晶融解ピーク温度、結晶融解熱量、及びガラス転移温度のそれぞれの値は示差走査熱量測定法(DSC法)により求めることができる。結晶融解ピーク温度は、示差走査熱量計(DSC)によって得られる融解ピークのトップ温度であり、結晶融解熱量は、示差走査熱量計により得られる融解ピークの面積から求めることができる。また、ガラス転移温度は、示差走査熱量計によって得られるベースラインと変曲点での接線の交点である。
これらの値を求める際の具体的な測定条件は次の通りである。
即ち、サンプル量10mgを採り、DSCを用い、25℃から200℃まで100℃/分の昇温速度で融解させ、200℃で1分間保持した後、-130℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、-130℃で10分間保持した後、10℃/分の昇温速度で200℃まで測定して求める。
成分(B)のエチレン・α-オレフィンブロック共重合体におけるエチレンからなる重合体ブロックは、エチレン単位を主体とするものであるが、エチレンに加え他の単量体単位を有していてもよい。ここで「主体とする」とは、全体の50質量%以上、特に60~100質量%を占めることをさす。他の単量体単位としてはプロピレン単位、1-ブテン単位、2-メチルプロピレン単位、1-ペンテン単位、3-メチル-1-ブテン単位、1-ヘキセン単位、4-メチル-1-ペンテン単位、1-オクテン単位を例示することができる。好ましくは、プロピレン単位、1-ブテン単位、1-ヘキセン単位、1-オクテン単位等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数3~8のα-オレフィン単位である。成分(B)におけるエチレンからなる重合体ブロックは、α-オレフィンの1種のみがエチレンと共重合したものであっても、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。
なお、エチレンからなる重合体ブロックがプロピレン単位を含む場合、成分(B)のエチレン・α-オレフィンブロック共重合体全体におけるプロピレン単位の含有率は5質量%以下であることが高温強度の観点から好ましい。
成分(B)のエチレン・α-オレフィンブロック共重合体におけるα-オレフィンを含むブロックは、α-オレフィン単位として1-ブテン単位、2-メチルプロピレン単位、1-ペンテン単位、3-メチル-1-ブテン単位、1-ヘキセン単位、4-メチル-1-ペンテン単位、1-オクテン単位を構成単位として有するものが例示され、好ましくは、1-ブテン単位、1-ヘキセン単位、1-オクテン単位等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数4~8のα-オレフィン単位である。成分(B)におけるα-オレフィンを含むブロックはα-オレフィン単位に加え、エチレン単位を含むことが低温耐衝撃性の観点から好ましい。この場合、α-オレフィンを含むブロックは、α-オレフィンの1種のみがエチレンと共重合したものでも、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。
成分(B)のエチレン・α-オレフィンブロック共重合体におけるα-オレフィンを含むブロックは、上記したα-オレフィン単位やエチレン単位に加え、非共役ジエンに基づく単量体単位(非共役ジエン単位)等の他の単量体単位を有していてもよい。該非共役ジエン単位としては、1,4-ヘキサジエン単位、1,6-オクタジエン単位、2-メチル-1,5-ヘキサジエン単位、6-メチル-1,5-ヘプタジエン単位、7-メチル-1,6-オクタジエン単位のような鎖状非共役ジエン単位;シクロへキサジエン単位、ジシクロペンタジエン単位、メチルテトラヒドロインデン単位、5-ビニルノルボルネン単位、5-エチリデン-2-ノルボルネン単位、5-メチレン-2-ノルボルネン単位、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン単位、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン単位のような環状非共役ジエン単位が挙げられる。これらの中でも好ましくは、ジシクロペンタジエン単位、5-エチリデン-2-ノルボルネン単位である。
成分(B)のエチレン・α-オレフィンブロック共重合体が非共役ジエン単位等の他の単量体単位を有する場合、その含有率は成分(B)全体に対して、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(B)のエチレン・α-オレフィンブロック共重合体としては、例えば、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを有するエチレン・α-オレフィンブロック共重合体が挙げられ、具体的には、エチレンからなる重合体ブロックと、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体のエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを含むブロック共重合体を例示することができる。
これらの中でも、成分(B)は、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・1-オクテン共重合体ブロックとを含むエチレン・1-オクテンブロック共重合体であることが引張強さの観点から好ましい。
成分(B)のメルトフローレート(190℃、荷重21.18N)は限定されないが、通常10g/10分以下であり、強度の観点から、好ましくは8.0g/10分以下であり、より好ましくは5.0g/10分以下であり、更に好ましくは3.0g/10分以下である。また、成分(B)のメルトフローレート(190℃、荷重21.18N)は、通常0.01g/10分以上であり、流動性の観点から、好ましくは0.05g/10分以上であり、より好ましくは0.10g/10分以上である。成分(B)のメルトフローレートは、ASTM D1238に従い、190℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
成分(B)の密度は低温耐衝撃性の観点から、好ましくは0.880g/cm以下であり、より好ましくは0.870g/cm以下である。一方、その下限については特に制限されないが、通常0.850g/cm以上である。成分(B)の密度はASTM D792により測定することができる。
成分(B)のエチレン・α-オレフィンブロック共重合体は、特表2007-529617号公報、特表2008-537563号公報、特表2008-543978号公報に開示された方法に従って合成することができる。例えば、第1のオレフィン重合触媒と、同等の重合条件下で第1のオレフィン重合触媒によって調製されるポリマーとは化学的性質又は物理的性質が異なるポリマーを調製可能な第2のオレフィン重合触媒と、鎖シャトリング剤と、を組み合わせて得られる混合物又は反応生成物を含む組成物を準備し、上記エチレンとα-オレフィンとを、付荷重合条件下で、該組成物と接触させる工程を経て製造することができる。
成分(B)のエチレン・α-オレフィンブロック共重合体の重合には、好ましくは連続溶液重合法が適用される。連続溶液重合法では、触媒成分、鎖シャトリング剤、モノマー類、並びに場合により溶媒、補助剤、捕捉剤及び重合助剤が反応ゾーンに連続的に供給され、ポリマー生成物はそこから連続的に取り出される。この際、エチレン・α-オレフィンブロック共重合体の各ブロックの長さは、前記触媒の比率および種類、鎖シャトリング剤の比率および種類、重合温度等を制御することによって変化させることができる。
成分(B)は市販のものを用いてもよい。成分(B)の市販品としては、例えば、ダウ・ケミカル社製「Engage(登録商標)-XLT」シリーズや「INFUSE(登録商標)」シリーズ、SK社製「Solumer(登録商標)」シリーズ、三井化学社製「タフマー(登録商標)」シリーズが挙げられる。
成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
<成分(C)>
成分(C)のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体は、共重合成分としてエチレンとプロピレンと非共役ジエンとを含有する共重合体ゴムである。エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムには、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤との混合物(以下、「油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム」と称することもある。)である油展タイプのものと、炭化水素系ゴム用軟化剤を含まない非油展タイプのものがある。すなわち、本発明において、成分(C)のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムは、油展タイプと非油展タイプのいずれでも使用可能であり、非油展タイプのもの又は油展タイプのものの1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよく、油展タイプの1種又は2種以上と非油展タイプの1種又は2種以上とを任意の組み合わせ及び比率で用いることもできる。
なお、ここで、成分(C)が油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムである場合、この油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムに含まれる炭化水素系ゴム用軟化剤は、成分(G)としての炭化水素系ゴム用軟化剤に含まれるものである。
成分(C)中の非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロへキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロオクタジエン、1,6-オクタジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ビニリデンノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)等のエチリデンノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB)等のメチレンノルボルネン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、動的架橋時の架橋剤による架橋性等の観点から、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニリデンノルボルネンが好ましく、より好ましくはジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ビニリデンノルボルネンである。なお、非共役ジエンは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムの具体例としては、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・1,4-ヘキサジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体ゴム等のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、動的架橋時の架橋剤による架橋性やブルームアウト抑制等の観点から、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)が好ましい。
なお、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムは、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることがきる。
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム中のエチレン単位の含有率は、特に限定されないが、50~90質量%が好ましく、55~85質量%がより好ましく、60~80質量%が更に好ましい。エチレン単位の含有率が上記好ましい範囲内であると、機械的強度やゴム弾性に優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られ易い傾向にある。
また、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム中のプロピレン単位の含有率は、特に限定されないが、9.5~49.5質量%が好ましく、14~44質量%がより好ましく、18~38質量%が更に好ましい。プロピレン単位の含有率が上記好ましい範囲内であると、機械的強度、適度な柔軟性、ゴム弾性に優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られ易い傾向にある。
更に、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム中の非共役ジエン単位の含有率は、特に限定されないが、0.5~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、2~10質量%が更に好ましい。非共役ジエン単位の含有率が上記好ましい範囲内であると、架橋性や成形性の調整が容易となり、機械的強度や低温耐衝撃性に優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られ易い傾向にある。
なお、成分(C)の各構成単位の含有率は、赤外分光法により求めることができる。
本発明において、成分(C)としては、特に、エチレン単位の含有率が55~75質量%であり、プロピレン単位の含有率が15~40質量%であり、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、及びビニリデンノルボルネンよりなる群から選択される少なくとも1種の非共役ジエン単位の含有率が1~10質量%のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムが好ましい。
なお、成分(C)の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた重合方法が適用できる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体等の錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法で製造することができる。
本発明において用いる成分(C)のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムのうち、非油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム、即ち、油展されていないエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム)のムーニー粘度(ML1+4、125℃)は、通常45以上であり、好ましくは50以上である。非油展エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体のムーニー粘度(ML1+4、125℃)は、より好ましくは50~400、更に好ましくは50~300である。
一方、油展エチレン・プロピレン・共役ジエン共重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4、125℃)は、特に限定されないが、好ましくは30~100、より好ましくは35~80である。
成分(C)のムーニー粘度が上記下限値以上であると低温耐衝撃性が良好となり、また、上記上限値以下であると成形性の観点から好ましい。
本発明において、成分(C)の油展前エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体と油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体のムーニー粘度(ML1+4、125℃)の関係は、特開平1-103639号公報に記載されているように下記式で表される。
計算式:log(ML/ML)=0.0066(ΔPHR)
ML:油展前エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムのムーニー粘度
ML:油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムのムーニー粘度
ΔPHR:エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム100質量部当たりの油展量
また、成分(C)のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムの密度は、特に限定されないが、0.850g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは0.855g/cm以上であり、一方、0.900g/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.890g/cm以下である。成分(C)のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムの密度が上記好ましい数範囲内であると、加工性、成形性、柔軟性等に優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られ易い傾向にある。なお、かかる密度は、JIS K7112:1999に基づいて測定することができる。
前述の通り、成分(C)として油展タイプのエチレン・プロピレン・共役ジエン共重合体ゴムを用いることもできる。油展エチレン・プロピレン・共役ジエン共重合体ゴムにおいて、炭化水素系ゴム用軟化剤は、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムを軟化させ、柔軟性と弾性を増加させるとともに、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性や流動性を向上させる等の目的のために使用される。
油展エチレン・プロピレン・共役ジエン共重合体ゴムに用いる炭化水素系ゴム用軟化剤としては、例えば鉱物油系ゴム用軟化剤、合成樹脂系ゴム用軟化剤等が挙げられ、これらの中でも、他の成分との親和性等の観点から、鉱物油系ゴム用軟化剤が好ましい。鉱物油系ゴム用軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子に対し、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50%以上のものはパラフィン系オイル、ナフテン系炭化水素の炭素の割合が30~45%のものはナフテン系オイル、芳香族系炭化水素の炭素の割合が35%以上のものは芳香族系オイルと呼ばれている。これらの中でも、成分(C)の油展エチレン・プロピレン・共役ジエン共重合体ゴムの炭化水素系ゴム用軟化剤としては、パラフィン系ゴム用軟化剤(パラフィン系オイル)が好ましい。なお、炭化水素系ゴム用軟化剤は、1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
成分(C)の油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムに用いるパラフィン系オイルとしては、特に限定されないが、40℃の動粘度が通常20cSt(センチストークス)以上、好ましくは50cSt以上であり、通常800cSt以下、好ましくは600cSt以下のものである。また、流動点は通常-40℃以上、好ましくは-30℃以上で、0℃以下のものが好適に用いられる。更に、引火点(COC)は、通常200℃以上、好ましくは250℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下のものが好適に用いられる。
成分(C)として油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムを用いる際の、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤との含有比率は、特に限定されないが、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム100質量部に対し、炭化水素系ゴム用軟化剤の含有量が、通常10質量部以上であり、好ましくは20質量部以上であり、一方、通常200質量部以下であり、好ましくは160質量部以下であり、より好ましくは120質量部以下である。
油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムを調製する方法(油展方法)は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。油展方法としては、例えば、ミキシングロールやバンバリーミキサーを用い、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤を機械的に混練して油展する方法、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムに所定量の炭化水素系ゴム用軟化剤を添加し、その後スチームストリッピング等の方法により脱溶媒する方法、クラム状のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムと炭化水素系ゴム用軟化剤の混合物をヘンシェルミキサー等で撹拌して含浸させる方法等が挙げられる。高分子量の油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムを調製する観点からは、成分(C)のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムの重合反応溶液又は懸濁液中に、所定量の炭化水素系ゴム用軟化剤を添加した後、溶媒を除去する方法が好ましい。
なお、成分(C)のエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴムとしては、各種グレードのものが国内外のメーカーから数多く市販されており、その市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、JSR社製のJSR EPR、三井化学社製の三井EPT、住友化学社製のエスプレン(登録商標)、ARLANXEO社製のKeltan(登録商標)、DOW CHEMICAL社製のNORDEL(登録商標)、KUMHO POLYCHEM社製のKEPが挙げられる。
<成分(D)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前述の通り、好ましくは成分(D)の有機過酸化物を用いて製造される。成分(D)の有機過酸化物は動的熱処理において架橋剤として作用する。この動的熱処理により、本発明の熱可塑性エラストマー組成物よりなるエアバッグ収納カバー等の成形品の光沢度を下げることができ、外観が特に良好となる。
成分(D)の有機過酸化物としては、芳香族系有機過酸化物及び脂肪族系有機過酸化物のいずれも使用することが可能である。具体的には、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類;t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)-3-ヘキシン等のパーオキシエステル類;アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p-クロロベンゾイルパーオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類が挙げられる。これらの中でも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<成分(E)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前述の通り、好ましくは、上記成分(D)と共に、成分(E)の架橋助剤を用いて製造される。成分(E)は、動的熱処理において架橋助剤として作用する。
成分(E)の架橋助剤としては、例えば、硫黄、p-キノンジオキシム、p-ジニトロソベンゼン、1,3-ジフェニルグアニジン等の過酸化物用助剤;ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<成分(F)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(F)としてスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物を含んでもよい。
成分(F)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物における好適な共役ジエンはブタジエン、イソプレン又はこれらの混合物である。成分(F)としては、例えば、スチレン・ブタジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物が挙げられる。スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物としては、部分的に水素添加されたスチレン・ブタジエン・ブチレン・スチレン共重合体(SBBS)、実質的に完全に水素添加されたものであるスチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)等が挙げられる。また、成分(F)としては、スチレン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物であるスチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)、スチレン・ブタジエン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。
スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその部分水素添加物、完全水素添加物のスチレン単位の含有率は特に制限されないが、強度と耐熱性の観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上である。また、スチレン単位の含有率は、柔軟性と耐衝撃性の観点から、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以下である。
成分(F)における共役ジエンはNMR法で分析した1,2-ミクロ構造が好ましくは60モル%以下、より好ましくは45モル%以下の範囲のものである。1,2-ミクロ構造が上記上限値以下であることが成形性と柔軟性の観点から好ましく、また、動的熱処理による架橋反応を過度に進行させない観点からも好ましい。成分(F)においても架橋反応を利用する観点からは成分(F)がスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物である場合、その水素添加率は95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることが更に好ましい。
成分(F)における共役ジエンがイソプレンとブタジエンの混合物の場合の質量比(イソプレン/ブタジエン)は、一般に99/1~1/99、好ましくは90/10~30/70、より好ましくは80/20~40/60である。
成分(F)の重量平均分子量(Mw)は離型性の観点から、好ましくは50,000以上であり、より好ましくは80,000以上であり、更に好ましくは100,000以上である。また、成分(E)の重量平均分子量(Mw)は流動性と分散性の観点から、500,000以下が好ましく、より好ましくは450,000以下であり、更に好ましくは400,000以下であり、特に好ましくは350,000以下である。
成分(F)の重量平均分子量(Mw)はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC法)により測定されるものであり、例えば、下記条件により測定することができる。
機器:東ソー株式会社製「HLC-8220GPC(R)」
カラム:東ソー株式会社製「TSKgelSuperHM-M(6.0mmI.D×15cm×2+G)」
検出器:示差屈折率検出器(RI/内蔵)
溶媒:クロロホルム
温度:40℃
流速:0.25mL/分
注入量:0.1質量%×20μL
較正試料:単分散ポリスチレン
較正法:ポリスチレン換算
較正曲線近似式:3次式(双曲線)
排除限界設定時間:12分
成分(F)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体の製造方法としては、例えば特公昭40-23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒を用いて不活性溶媒中でスチレン・共役ジエンブロック共重合体を合成する方法が挙げられる。また、スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物の製造方法としては、例えば、上記の方法でスチレン・共役ジエンブロック共重合体を合成し、次いで、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特開昭59-133203号公報、特開昭60-79005号公報に記載された方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加する方法が挙げられる。
成分(F)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物は市販のものを用いてもよい。スチレン・共役ジエンブロック共重合体の市販品としては、例えば、クレイトンポリマー社製「Kraton(登録商標)D」、LCY社製「Globalprene(登録商標)」が挙げられる。スチレン・共役ジエンブロック共重合体の部分水素添加物としては、例えば、旭化成株式会社製「タフテック(登録商標)P」が挙げられる。スチレン・共役ジエンブロック共重合体の完全水素添加物としては、例えば、クレイトンポリマー社製「Kraton(登録商標)G」、株式会社クラレ製「セプトン(登録商標)」、旭化成株式会社製「タフテック(登録商標)」が挙げられる。
成分(F)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
<成分(G)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形性を向上させる観点から成分(G)として炭化水素系ゴム用軟化剤を含有することが好ましい。
成分(G)の炭化水素系ゴム用軟化剤としては、鉱物油系軟化剤、合成樹脂系軟化剤等が挙げられるが、他の成分との親和性の観点から鉱物油系軟化剤が好ましい。鉱物油系軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子の50%以上がパラフィン系炭化水素であるものがパラフィン系オイル、全炭素原子の30~45%がナフテン系炭化水素であるものがナフテン系オイル、全炭素原子の35%以上が芳香族系炭化水素であるものが芳香族系オイルと各々呼ばれている。これらの中で、本発明においては、パラフィン系オイルを用いることが好ましい。
成分(G)の炭化水素系ゴム用軟化剤の40℃における動粘度(ASTMD 445/JIS K2283)は特に限定されないが、好ましくは20cSt以上、より好ましくは50cSt以上であり、また、好ましくは800cSt以下、より好ましくは600cSt以下である。また、炭化水素系ゴム用軟化剤の引火点(COC法)は、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上である。
成分(G)の炭化水素系ゴム用軟化剤は市販のものを用いてもよい。成分(G)の市販品としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー社製日石ポリブテン(登録商標)HVシリーズ、出光興産社製ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPWシリーズが挙げられ、これらの中から適宜選択して使用することができる。
成分(G)の炭化水素系ゴム用軟化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<配合割合>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の原料の配合割合について以下に説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中の成分(B)の含有量は、成分(A)の100質量部あたり、低温衝撃性の観点から通常40質量部以上であり、好ましくは50質量部以上であり、より好ましくは60質量部以上である。また、成形品の剛性、引張強度の観点から、通常200質量部以下であり、好ましくは150質量部以下であり、より好ましくは120質量部以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中の成分(C)の含有量は、成分(A)の100質量部あたり、低温衝撃性の観点から通常1質量部以上であり、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上である。また、成形品の剛性、引張強度の観点から、通常100質量部以下であり、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは50質量部以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に成分(D)を用いる場合、成分(D)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計を100質量部としたときに、低光沢性の観点から通常0.01質量部以上であり、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.10質量部以上である。一方、低温衝撃性、フローマーク性の観点から通常1.00質量部以下であり、好ましくは0.80質量部以下であり、より好ましくは0.60質量部以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が更に成分(F)や成分(G)を含有する場合には、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(F)、成分(G)の合計を100質量部として、上記した成分(D)の含有量を適用すればよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に成分(E)を用いる場合、成分(E)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計を100質量部としたときに、低光沢性の観点から通常0.01質量部以上であり、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.10質量部以上である。一方、フローマーク性の観点から通常1.00質量部以下であり、好ましくは0.80質量部以下であり、より好ましくは0.60質量部以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が更に成分(F)や成分(G)を含有する場合には、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(F)、成分(G)の合計を100質量部として、上記した成分(E)の含有量を適用すればよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が成分(F)を含有する場合、その含有量は、成分(A)の100質量部あたり、低温衝撃性の観点から通常1質量部以上であり、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上である。また、成形品の剛性、引張強度の観点から、通常100質量部以下であり、好ましくは80質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が成分(G)を含有する場合、その含有量は、成分(A)の100質量部あたり、低温衝撃性、流動性、フローマーク性の観点から通常1質量部以上であり、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上である。また、成形品の剛性、引張強度、オイルブリードの観点から、通常100質量部以下であり、好ましくは80質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下である。
<その他の成分>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の成分を配合することができる。
その他の成分としては、例えば、成分(A)、(B)、(C)、(F)以外の熱可塑性樹脂やエラストマー等の樹脂、酸化防止剤、充填材、熱安定剤、耐候助剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤等の各種添加物を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
成分(A)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリオレフィン樹脂(但し、成分(A)~成分(C)に該当するものを除く。)を挙げることができる。また、成分(B)、(C)及び(F)以外のエラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー(ただし、成分(F)に該当するものを除く。);ポリエステル系エラストマー;ポリブタジエンを挙げることができる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤を用いる場合、成分(A)、成分(B)、成分(C)、必要に応じて用いられる成分(F)及び成分(G)の合計100質量部に対して、通常0.01~3.0質量部の範囲で用いられる。
充填材としては、例えば、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、金属石鹸、二酸化チタン、カーボンブラックを挙げることができる。充填材を用いる場合、成分(A)、成分(B)、成分(C)、必要に応じて用いられる成分(F)及び成分(G)の合計100質量部に対して、通常0.1~50質量部で用いられる。
[熱可塑性エラストマー組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、好ましくは、成分(A)、成分(B)及び成分(C)、必要に応じて用いられる成分(F)、成分(G)及びその他の成分を所定量含有する組成物を成分(D)と成分(E)の存在下で動的熱処理して製造される。
本発明において「動的熱処理」とは成分(D)と成分(E)の存在下で溶融状態又は半溶融状態で混練することを意味する。この動的熱処理は、溶融混練によって行うのが好ましく、そのための混合混練装置としては、例えば非開放型バンバリーミキサー、ミキシングロール、ニーダー、二軸押出機が用いられる。これらの中でも二軸押出機を用いることが好ましい。
二軸押出機を用いた製造方法の好ましい態様としては、複数の原料供給口を有する二軸押出機のより上流側の原料供給口(ホッパー)(以下、「第1ホッパー」と称す場合がある。)から成分(A)の一部、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、必要に応じて用いられる成分(F)、成分(G)及びその他の成分を含む混合物をシリンダー内に供給しながら溶融混練し、成分(A)の残量を該第1ホッパーと別個のより下流側に位置する原料供給口(ホッパー)(以下、「第2ホッパー」と称す場合がある。)からシリンダー内に供給して更に熱処理し、部分的に架橋された熱可塑性エラストマーを製造する方法である。ここで、成分(A)の残量を供給する第2ホッパーは、最も上流の原料供給口(通常は第1ホッパー)から最も上流の混合物の出口までの長さをLとしたときにL/2より下流側に位置する原料供給口であることが好ましい。ただし、第2ホッパーの位置が過度に下流側であると、第2ホッパーから供給された成分(A)が十分に分散しないことから、第2ホッパーは、混合物の出口よりもL/10以上上流側に位置することが好ましい。
また、第2ホッパーから供給する原料は、成分(A)の残部の他に成分(B)、成分(C)、成分(F)、成分(G)の少なくとも一部とすることも可能である。
このように、成分(A)の一部、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、成分(F)及び成分(G)の混合物を動的に熱処理して部分架橋させた後に、成分(A)の残部を加えることにより、後で加えられる成分(A)がラジカルによる分子鎖の切断を受けにくいため、熱可塑性エラストマー組成物として引張強さが高くなるとともに、ダイスウェル比が向上する。
得られる組成物の機械的強度とダイスウェル比の改良の観点から、成分(A)の合計量を100質量部として、成分(A)の初期仕込量(第1ホッパーからの投入量)は90質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましく、70質量部以下であることがさらに好ましい。一方、製造時の生産安定性の観点から、成分(A)の初期仕込量(第1ホッパーからの投入量)は10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。成分(B)、成分(C)、成分(F)、成分(G)を分割供給する場合においても、上記成分(A)と同様の割合で分割供給することが好ましい。
動的熱処理を行う際の温度は、通常80~300℃、好ましくは100~250℃である。また、動的熱処理を行う時間は通常0.1~30分である。
二軸押出機により動的熱処理を行って本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合においては、二軸押出機のバレル半径R(mm)、スクリュー回転数N(rpm)及び吐出量Q(kg/時)の間に下記式(1)の関係を保ちながら押出することが好ましく、下記式(2)の関係を保ちながら押出することがより好ましい。
2.6<NQ/R<22.6 …(1)
3.0<NQ/R<20.0 …(2)
二軸押出機のバレル半径R(mm)、スクリュー回転数N(rpm)及び吐出量Q(kg/時)との間の前記関係が上記下限値より大きいことが熱可塑性エラストマー組成物を効率的に製造するために好ましい。一方、前記関係が上記上限値より小さいことが、剪断による発熱を抑え、外観不良の原因となる異物が発生しにくくなるために好ましい。
[成形品]
<成分方法>
本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物を成形することにより成形品が得られる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、通常の射出成形法又は、必要に応じて、ガスインジェクション成形法、射出圧縮成形法、ショートショット発泡成形法等の各種成形法を用いて成形品とすることができる。中でも射出成形により成形品を製造することが好ましく、射出成形を行う際の成形条件は以下の通りである。
成形品を射出成形する際の成形温度は一般に150~300℃であり、好ましくは160~280℃である。射出圧力は通常5~100MPaであり、好ましくは10~80MPaである。また、金型温度は通常0~80℃であり、好ましくは20~60℃である。
<用途>
このようにして得られた成形品は、例えば、エアバッグ収納カバーとして用いることができる。エアバッグ収納カバーとしては、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして好適に用いられる。
本発明のエアバッグ収納カバーは、運転席用エアバッグ収納カバー、助手席用エアバッグ収納カバー、歩行者用エアバッグ収納カバー、ニー・エアバッグ収納カバー、サイド・エアバッグ収納カバー、カーテン・エアバッグ収納カバー等のいずれにも好適に用いることができる。
[熱可塑性エラストマー組成物及び成形品の物性]
<MFR>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は成形性にも優れたものである。具体的にはISO 1133(2011年)に準拠した温度230℃、測定荷重21.18Nでのメルトフローレート(MFR)で通常0.5~50g/10分であり、1~40g/10分であることが好ましく、2~30g/10分であることがより好ましい。
<切断時引張強さ>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は引張強さにも優れたものである。具体的にはISO 37(2011年)に記載の1Aダンベルを用い、引張り速度500mm/min、23℃の雰囲気下にて測定した切断時引張強さが、通常10MPa以上であり、13MPa以上であることが好ましく、14MPa以上であることがより好ましい。
<切断時伸び>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は切断時伸びにも優れたものである。具体的にはISO 37(2011年)に記載の1Aダンベルを用い、引張り速度500mm/min、23℃の雰囲気下にて測定した切断時伸びが、通常500%以上であり、600%以上であることが好ましく、700%以上であることがより好ましい。
<低温耐衝撃性>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は低温耐衝撃性に優れたものである。本発明において、低温耐衝撃性は後掲の実施例に示す方法による-45℃でのアイゾット衝撃強さにより評価される。本発明においては、-45℃でのアイゾット衝撃強さの値が、50kJ/m以上であることが好ましく、60kJ/m以上であることがより好ましく、70kJ/m以上であることが更に好ましい。
<フローマーク性>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物より得られる成形品はフローマーク性に優れ、フローマークが殆ど認められないものである。
前述の通り、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ダイスウェル比の値が大きい場合に良好なフローマーク性を与える傾向がある。即ち、ダイスウェル比が1.10以上と大きいことにより、射出成形時の金型内での流動先端の安定性に寄与することによってフローマーク性が改善すると考えられる。
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限または下限の値と、下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[熱可塑性エラストマー組成物の製造原料]
<成分(A)>
A-1:
プロピレン系ブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られたもの)
日本ポリプロ社製ノバテック(登録商標)PP BC06NCA
MFR(ISO 1133(2011年)):60g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N)
プロピレン単位含有率:96質量%
エチレン単位含有率:4質量%
<成分(B)>
B-1:
エチレン・1-オクテンブロック共重合体(エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・1-オクテン共重合体のブロックとを有するブロック共重合体)
ダウ・ケミカル社製Engage(登録商標)XLT8677
結晶融解ピーク温度:119℃
結晶融解熱量:37J/g
MFR(ASTM D1238):0.5g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N)(カタログ値)
ガラス転移温度(DSC法):-67℃
密度(ASTM D792):0.870g/cm(カタログ値)
B-2:
エチレン・1-オクテンランダム共重合体
ダウ・ケミカル社製Engage(登録商標)8180
結晶融解ピーク温度:110~125℃にピークなし
結晶融解熱量:0
MFR(ASTM D1238):0.5g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N)(カタログ値)
密度(ASTM D792):0.863g/cm(カタログ値)
<成分(C)>
C-1:
非油展エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン三元共重合体ゴム
三井化学社製三井EPT3092PM
ムーニー粘度 ML(1+4)125℃(ASTM D1646):61(カタログ値)
エチレン単位含有率(ASTM D3900):65質量%(カタログ値)
5-エチリデン-2-ノルボルネン単位含有率(ASTM D6047):4.6質量%(カタログ値)
(C-2):
油展エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン三元共重合体ゴム(成分(C)100質量部と成分(G)40質量部の混合物)
三井化学社製三井EPT3072EPM
ムーニー粘度 ML(1+4)125℃(ASTM D1646):51(カタログ値)
エチレン単位含有率(ASTM D3900):64質量%(カタログ値)
5-エチリデン-2-ノルボルネン単位含有率(ASTM D6047):5.4質量%(カタログ値)
<成分(D)>
D-1:
化薬ヌーリオン社製トリゴノックス101-40C(2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物)
<成分(E)>
E-1:
三菱ケミカル社製アクリエステルTMP(トリメチロールプロパントリメタクリレート)
E-2:
和光純薬工業社製ジビニルベンゼン(ジビニルベンゼン55質量%とエチルビニルベンゼン45質量%の混合物)
<成分(F)>
F-1:
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体
クレイトンポリマーズ社製Kraton(登録商標)D1101J
重量平均分子量(Mw):160,000
スチレン単位含有率:31質量%(カタログ値)
共役ジエン単位含有率:69質量%(カタログ値)
共役ジエン成分の1,2-ミクロ構造:12モル%
水素添加率:0%
<成分(G)>
G-1:
パラフィン系オイル
出光興産製ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW90
40℃の動粘度:95.54cSt
流動点:-15℃
引火点:272℃
[熱可塑性エラストマー組成物の評価方法]
1) メルトフローレート(MFR)
ISO 1133(2011年)に準拠し、230℃、荷重21.18Nで測定した。
2) 切断時引張強さ・切断時伸び
インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE100DU」)により、射出速度30mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、熱可塑性エラストマー組成物から引張試験用の試験片(厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシート)を成形した後、ISO 37(2011年)準拠(1Aダンベル)で打ち抜いた。この打ち抜き試験片について、島津製作所製オートグラフ精密万能試験機「AGS-H」により、切断時引張強さ(単位:MPa)と切断時伸び(単位:%)を引張り速度500mm/min、23℃の雰囲気下にて測定した。
3) 曲げ弾性率
インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE100DU」)により、射出速度30mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、熱可塑性エラストマー組成物からISO 3167(2002年)準拠の多目的評価用試験片A(長さ180mmのダンベル)を成形し、ダンベルの末端を切り落として曲げ弾性率測定用試験片(厚さ4mm×幅10mm×長さ80mm)を作成した。東洋精機社製ペントグラフB-2により、ISO 178(2010年)従って、2mm/minの速度で曲げ弾性率を測定した。
4) ダイスウェル比
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1D(JIS K7199)を使用して、下記条件で熱可塑性エラストマー組成物の押出工程中に測定した。
試験温度:210℃
L/D:10(D=1mm)
せん断速度:243/s
ダイスウェル比は下記計算式(I)により算出した。
St=Dm/Dt (I)
St,Dm,Dtは以下を示す。
St:ダイスウェル比
Dm:ダイの出口の下10mmの位置において、試験温度で測定した押出し試料の直径(mm)
Dt:試験温度で測定したキャピラリーダイの直径(mm)
5) 光沢度
インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE100DU」)により、射出速度30mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、熱可塑性エラストマー組成物から光沢測定用試験片(厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシート)を成形し、ISO 2813に従って、入射角60°で測定した。
6) 低温耐衝撃性(アイゾッド衝撃強さ)
熱可塑性エラストマー組成物を、インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE100DU」)により、射出速度30mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、アイゾット衝撃強さ用の試験片として、厚さ4mm×幅10mm×長さ80mmに成形した。その後、ダンベルにノッチを入れ(ノッチの寸法と評価方法はISO 180(2013年)に準拠)、-45℃の条件で測定した。
7) フローマーク性
フローマーク性は、インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE100DU」)により、射出速度30mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、熱可塑性エラストマー組成物から光沢測定用試験片(厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシート)を成形し、その外観を目視観察し、下記基準で判定した。
判定基準
1:フローマークが目立ち、外観が非常に悪い。
2:フローマークが目立ち、外観が悪い。
3:フローマークが確認される。
4:フローマークが少し確認される。
5:フローマークが確認されない。
[実施例1]
成分(A-1)の一部:20質量部、成分(B-1):45質量部、成分(C-1):5質量部、成分(D-1):0.40質量部及び成分(E-1):0.40質量部と、成分(A-1)、成分(B-1)、成分(C-1)、成分(D-1)及び成分(E-1)の合計100質量部に対して酸化防止剤(BASFジャパン社製商品名イルガノックス(登録商標)1010)0.1質量部、及び黒色顔料(カーボン濃度40質量%品)2質量部をヘンシェルミキサーにて1分間ブレンドし、同方向二軸押出機(神戸製鋼製「TEX30α」、L/D=45、シリンダブロック数:13)へ第1の供給口より14kg/hrの速度で投入し、180~210℃の範囲で昇温させ、溶融混練を行い、同時に押出機シリンダーの途中に設けられた第2の供給口から、残りの成分(A-1):30質量部を6kg/hrの速度で供給して混練を行った後、ペレット化して熱可塑性エラストマー組成物を製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の評価結果を表-1に示す。
なお、第1の供給口は、同方向二軸押出機の最も上流側のシリンダブロックに設けられており、第2の供給口は、上流から9番目のシリンダブロックに設けられている。
[実施例2~5、比較例1~9]
表-1,2に示す原料配合とした以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、実施例1と同様に評価した。評価結果を表-1,2に示す。
表-1,2中、「A-1(※1)」は第1の供給口から投入した成分(A-1)量であり、「A-1(※2)」は第2の供給口から投入した成分(A-1)量である。また、原料配合の欄の「-」はその成分を用いていないことを示す。
Figure 2023117162000001
Figure 2023117162000002
[考察]
表1,2より、以下のことが分かる。
成分(A)~(C)を含み、ダイスウェル比、光沢度及び曲げ弾性率が本発明の規定範囲内である実施例1~5の熱可塑性エラストマー組成物は、光沢度が低く、且つフローマーク性にも良好で意匠性に優れたものである。また、低温耐衝撃性においても優れている。
これに対して、比較例1,2は、ダイスウェル比は大きいが、光沢度が高く意匠性に劣る。
比較例3~6及び8~9は、ダイスウェル比が1.10未満であり、フローマークが確認され、意匠性が劣る。
比較例7は、ダイスウェル比は1.10以上で、フローマーク性は優れているが、光沢度が高く意匠性に劣る。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は低温耐衝撃性を維持しながら、意匠性にも優れるため、各種用途に好適に用いることができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は例えば、エアバッグ収納カバー、インストルメントパネル、センターパネル、センターコンソールボックス、ドアトリム、ピラー、アシストグリップ、ハンドル等の自動車内装部品、マッドガード・グロメット等の自動車外装部品、家電部品、建材、家具として有用である。これらの中でも本発明の熱可塑性エラストマー組成物はエアバッグ収納カバーとして特に有用であり、エアバッグ収納カバーの中でも、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開によって乗員を保護するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして好適である。

Claims (8)

  1. 下記成分(A)~(C)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、
    キャピラリーレオメーター(JIS K7199)におけるダイスウェル比(試験温度210℃、せん断速度243/s)が1.10以上であり、
    該熱可塑性エラストマー組成物よりなる光沢測定用試験片についてISO 2813に従って入射角60°で測定した光沢度が50%以下であり、かつ
    該熱可塑性エラストマー組成物よりなる曲げ弾性率測定用試験片についてISO 178(2010年)に従って測定した曲げ弾性率が100~700MPaである、熱可塑性エラストマー組成物。
    成分(A):プロピレン系ブロック共重合体
    成分(B):α-オレフィンの炭素数が4以上であるエチレン・α-オレフィン共重合体
    成分(C):エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体
  2. 前記成分(B)のα-オレフィンの炭素数が4~8である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 前記成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体がエチレン・α-オレフィンブロック共重合体である、請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 前記エチレン・α-オレフィンブロック共重合体がエチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α-オレフィン共重合体ブロックとを含むエチレン・α-オレフィンブロック共重合体である、請求項3に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 前記エチレン・α-オレフィンブロック共重合体が110~125℃に結晶融解ピークを有し、かつその結晶融解熱量が20~60J/gである、請求項4に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 前記成分(C)が油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してなる射出成形品。
  8. 請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を用いたエアバッグ収納カバー。
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