JP2021123601A - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温強度に優れた熱可塑性エラストマー組成物を提供する。【解決手段】少なくとも下記成分(A)及び成分(B)を含む熱可塑性エラストマー組成物であって、ISO 37−1Aを参照して引張速度500mm/min、85℃雰囲気下にて測定した引張破壊強さが7MPa以上である熱可塑性エラストマー組成物。下記成分(A)、成分(B)、成分(d)及び成分(e)を含む混合物を動的熱処理する工程を含む該熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。成分(A):エチレン単位の含有率が0〜50質量%未満のプロピレン系重合体成分(B):エチレン・α−オレフィン共重合体成分(d):有機過酸化物成分(e):架橋助剤【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法と、この熱可塑性エラストマー組成物よりなる射出成形品及びエアバッグ収納カバーに関する。
自動車用エアバッグシステムは自動車等の衝突の際に運転手や搭乗者を保護するシステムであり、衝突の際の衝撃を感知する装置とエアバッグ装置からなる。このエアバッグ装置は、ステアリングホイール、助手席前方のインストルメントパネル、運転席及び助手席のシート、フロント及びサイドピラー等に設置される。
エアバッグ装置におけるエアバッグ収納カバーについては、エアバッグ膨張時に、設計通りに開裂するように、その構造や材質において種々提案がなされている。
オレフィン系熱可塑性エラストマーからなるエアバッグ収納カバーとしては例えば、特許文献1において、特定のプロピレン系重合体、エチレン・オクテン共重合体、スチレン・共役ジエンブロック共重合体、炭化水素系ゴム用軟化剤を有機過酸化物の存在下で動的熱処理してなる熱可塑性エラストマー組成物からなるものが開示されている。
また、特許文献2においては、プロピレン系樹脂、特定のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体を特定量含む熱可塑性エラストマー組成物からなるものが開示されている。
特許文献3においては、低温耐衝撃性、高温強度、離型性、射出成形性等に優れた熱可塑性エラストマー組成物として、共重合体成分の異なる2種類の特定のプロピレン系重合体、特定のエチレン・α−オレフィン共重合体、スチレン・共役ジエンブロック共重合体を特定量で含む熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。
特許文献4においては、プロピレン系重合体、特定のエチレン・α−オレフィン系ブロック共重合体、スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物を有機過酸化物の存在下で動的熱処理してなる熱可塑性エラストマー組成物からなるものが開示されている。
国際公開第2006/070179号 国際公開第2014/046139号 特開2019−38925号公報 特開2016−186041号公報
近年、安全性の観点からエアバッグの大型化がすすむ一方で、エアバッグ装置については美観の観点から小型化が求められている。そのため、エアバッグ展開時にエアバッグ収納カバーにかかる相対的な出力が強まり、夏場や比較的暑い地域における自動車の車内温度を想定した高温環境下でのエアバッグ収納カバーの変形や、エアバッグ収納カバーの留め具固定部の強度不足による破損をより確実に防止することが求められている。
本発明者の詳細な検討によれば、高温環境下でエアバッグ収納カバーが正常に展開するためには、エアバッグ収納カバーを構成する樹脂組成物の85℃雰囲気下にて測定した引張破壊強さの値を制御することにより高温強度を高めることが重要であるが、前記特許文献1〜4に記載されているエアバッグ収納カバー向けの材料には十分な高温強度が備わっていなかった。例えば、特許文献3には、ISO 37−1Aを参照した85℃での引張破壊強さが0.35MPa以上であることが好ましいとの記載があり、実施例において、この引張破壊強さが4.1〜5.5MPaのものが記載されているが、本発明で規定する7MPa以上の引張破壊強さは実現されていない。
本発明の目的は、上記の従来品における課題を解決し、高温強度に著しく優れる熱可塑性エラストマー組成物及びそれよりなるエアバッグ収納カバーを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、特定のプロピレン系重合体と特定のオレフィン系ブロック共重合体と、必要に応じて更にスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物を含み、85℃雰囲気下での引張破壊強さが7MPa以上である熱可塑性エラストマー組成物とすることで、上記課題を解決し得ることを見出した。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[12]に存する。
[1] 少なくとも下記成分(A)及び成分(B)を含む熱可塑性エラストマー組成物であって、ISO 37−1Aを参照して引張速度500mm/min、85℃雰囲気下にて測定した引張破壊強さが7MPa以上である熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):エチレン単位の含有率が0〜50質量%未満のプロピレン系重合体
成分(B):エチレン・α−オレフィン共重合体
[2] 前記成分(B)のα−オレフィンの炭素数が4〜8である、[1]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[3] 前記成分(B)が、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体及び/又はエチレン・α−オレフィンブロック共重合体である、[1]又は[2]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[4] 前記成分(B)がエチレン・α−オレフィンブロック共重合体であって、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α−オレフィン共重合体ブロックとを含むエチレン・α−オレフィンブロック共重合体である、[3]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[5] 前記エチレン・α−オレフィンブロック共重合体が110〜125℃に結晶融解ピークを有し、かつその結晶融解熱量が20〜60J/gである、[3]又は[4]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[6] 前記α−オレフィンがオクテンである、[2]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[7] 前記成分(A)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が0.1〜200g/10分である、[1]〜[6]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[8] 更に下記成分(C)を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
成分(C):スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物
[9] 前記成分(C)の重量平均分子量(Mw)が50,000〜500,000である、[8]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[10] 下記成分(A)、成分(B)、成分(d)及び成分(e)を含む混合物を動的熱処理する工程を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
成分(A):エチレン単位の含有率が0〜50質量%未満のプロピレン系重合体
成分(B):成分(B):エチレン・α−オレフィン共重合体
成分(d):有機過酸化物
成分(e):架橋助剤
[11] [1]〜[9]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む射出成形品。
[12] [1]〜[9]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を含むエアバッグ収納カバー。
本発明によれば、高温強度に著しく優れた熱可塑性エラストマー組成物を提供することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物よりなるエアバッグ収納カバーによれば、その著しく優れた高温強度により、高温環境下におけるエアバッグ展開時に生じるエアバッグ収納カバーの変形や、エアバッグ収納カバーの留め具固定部の破損等、高温での材料強度の低下に由来する問題を抑止することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
本発明において「エアバッグ収納カバー」とは、エアバッグを収納する容器全般を意味するものであり、例えば、エアバッグが収納されている容器において、エアバッグが展開する際の開口部、又はこの開口部と一体となっている容器全体である。
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、少なくとも下記成分(A)及び成分(B)を含む熱可塑性エラストマー組成物であって、ISO 37−1Aを参照して引張速度500mm/min、85℃雰囲気下にて測定した引張破壊強さが7MPa以上の熱可塑性エラストマー組成物である。
成分(A):エチレン単位の含有率が0〜50質量%未満のプロピレン系重合体
成分(B):エチレン・α−オレフィン共重合体
<引張破壊強さ>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ISO 37−1Aを参照して引張速度500mm/min、85℃雰囲気下にて測定した引張破壊強さが7MPa以上の値を有する。上記条件で測定した引張破壊強さが7MPa以上であると、高温でのエアバッグ展開時に生じるエアバッグ収納カバーの変形や、エアバッグ収納カバーの留め具固定部の破損等、高温での材料強度の低下に由来する問題を抑止できる十分な高温強度が得られる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の引張破壊強さは、様々な形状のエアバッグ収納カバーに適合させるため、8MPa以上であることが好ましく、9MPa以上であることがより好ましい。
引張速度500mm/min、85℃雰囲気下にて測定した引張破壊強さはISO 37−1Aを参照して測定できる。引張破壊強さの具体的な測定方法は、後掲の実施例の項に示す通りである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の引張破壊強さは、使用する樹脂、製造条件等で制御できる。例えば、成分(A)、成分(B)、後述の任意成分である成分(C)を、架橋剤としての成分(d)、架橋助剤としての成分(e)を用いて動的熱処理して架橋する(以下、「動的架橋」と称す場合がある。)ことで、所望の引張破壊強さの熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
成分(d)の有機過酸化物を用いて動的架橋する場合、成分(d)の−O−O−結合が開裂して生ずる遊離ラジカルがポリマーから水素原子を引き抜きポリマーラジカルが生じる。ここで、ポリマーがポリプロピレンのような崩壊型ポリマーの場合、水素原子の引き抜きによって生じたポリマーラジカルにより分子鎖が切れて分解し(ポリマーラジカル開裂反応)、著しく高温強度が低下する。これに対して、ポリマーが架橋型ポリマーの場合、ポリマーラジカル同士が再結合し−C−C−結合を形成することで架橋が進行する。
また、成分(e)の架橋助剤を併用すると、成分(d)を使用して生じたポリマーラジカル同士の再結合を促進することができることに加え、崩壊型ポリマーのポリマーラジカル開裂反応を抑制することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物では、成分(A)が前記崩壊型ポリマーの性質を有し、成分(B)や成分(C)が前記架橋型ポリマーの性質を有するので、動的架橋処理時に成分(A)の分解を抑えながら成分(B)や成分(C)を効率的に架橋させるよう成分(A)〜(C)の性質に応じて成分(d)と成分(e)の使用量や使用条件を制御する。これにより安定的に存在する成分(A)のマトリックスに、高い架橋密度を持ち微細且つ均一な成分(B)や成分(C)のゴムドメインが存在する海島構造を形成することができ、所望の高温強度を有する熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
<成分(A)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、成分(A)は、エチレン単位の含有率が0〜50質量%未満、即ち、エチレン単位を含まないか、或いはエチレン単位含有率が50質量%未満のプロピレン系重合体である。組成の異なるプロピレン系重合体を2種以上混合して成分(A)を構成する場合であっても、成分(A)全体としてエチレン単位の含有率がこの数値範囲内であればよい。このプロピレン系重合体は、特に、エチレン単位の含有率が5質量%以上50質量%未満であるものが好ましく、以下に示すプロピレン単位の好適含有率から、エチレン単位の含有率は5〜40質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることが更に好ましい。エチレン単位の含有率が5質量%以上であれば低温耐衝撃性が良好となる傾向がある。
成分(A)のプロピレン単位の含有率は、成分(A)全体に対し、通常50質量%以上であり、好ましくは70〜100質量%である。成分(A)のプロピレン単位の含有率が上記下限値以上であることにより、耐熱性及び剛性が良好となる傾向にある。このプロピレン単位の含有率についても、組成の異なるプロピレン系重合体の2種以上混合して成分(A)を構成する場合、成分(A)全体としてプロピレン単位の含有率が上記数値範囲内であればよい。
なお、成分(A)中のエチレン単位含有率、プロピレン単位含有率、及び後述のα−オレフィン単位の含有率、後述の成分(B)のエチレン単位の含有率及びα−オレフィン単位の含有率は、それぞれ赤外分光法により求めることができる。
成分(A)は、エチレン単位の含有率が0〜50質量%未満であるプロピレン系重合体であれば、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレン単位に加え、エチレン単位、プロピレン以外のα−オレフィン単位、エチレン及びα−オレフィン以外の単量体単位等を含有する、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体、又はその他のプロピレン系共重合体であってもよい。また、成分(A)は、プロピレン系ランダム共重合体であってもよく、プロピレン系ブロック共重合体であってもよい。
成分(A)中のプロピレン単位以外のエチレン単位、α−オレフィン単位、その他の単量体単位の合計の含有率は、20質量%以下であることが好ましい。
成分(A)がプロピレン・α−オレフィン共重合体である場合、プロピレン以外のα−オレフィン単位としては、炭素数4〜20のα−オレフィン単位を挙げることができる。炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等が挙げられる。プロピレン以外のα−オレフィンとしては、好ましくは炭素数4〜10のα−オレフィンであり、より好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
これらのα−オレフィン単位は、成分(A)中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
成分(A)のプロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・エチレン・1−オクテン共重合体、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体を例示することができる。
好ましくは、プロピレン単独重合体、エチレン及び炭素数4〜10のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種の単量体とプロピレンとの共重合体、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体である。これらの中でも特に、成分(A)としては、低温耐衝撃性及び高温強度の観点から、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体であることが好ましい。
成分(A)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)は、限定されないが、通常0.1g/10分以上であり、成形体の外観の観点から、好ましくは10g/10分以上であり、より好ましくは20g/10分以上であり、更に好ましくは30g/10分以上である。また、成分(A)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)は、通常200g/10分以下であり、引張り強度の観点から、好ましくは150g/10分以下であり、より好ましくは100g/10分以下である。成分(A)のメルトフローレートは、JIS K7210(1999年)に従って、230℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
成分(A)は、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が0.1〜200g/10分の範囲内であればこれらを複数用いても良い。
成分(A)のプロピレン系重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた重合法を挙げることができる。該重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。
また、成分(A)は市販のものを用いてもよい。成分(A)の市販品としては、例えば、プライムポリマー社のPrimPolypro(登録商標)、住友化学社の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー社のポリプロピレンブロックコポリマー、日本ポリプロ社のノバテック(登録商標)PP、LyondellBasell社のMoplen(登録商標)、LyondellBasell社のADFLEX(登録商標)、LyondellBasll社のHifax(登録商標)、ExxonMobil社のExxonMobilPP、FormosaPlastics社のFormolene(登録商標)、Borealis社のBorealisPP、LGChemical社のSEETECPP、A.Schulman社のASIPOLYPROPYLENE、INEOSOlefins&Polymers社のINEOSPP、Braskem社のBraskemPP、SAMSUNGTOTALPETROCHEMICALS社のSumsungTotal、Sabic社のSabic(登録商標)PP、TOTALPETROCHEMICALS社のTOTALPETROCHEMICALSPolypropylene、SK社のYUPLENE(登録商標)が挙げられる。
成分(A)のプロピレン系重合体は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
<成分(B)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物おいて、成分(B)は、エチレン・α−オレフィン共重合体である。エチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンは限定されないが、具体的には、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンが挙げられる。これらのα−オレフィン単位は、成分(B)中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。これらの中でも、α−オレフィンとしては炭素数が4〜8であるものが好ましく、1−オクテンがより好ましい。
成分(B)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレン単位の含有率とα−オレフィン単位の含有率との合計を100質量%としたときに、エチレン単位の含有率が50〜80質量%、α−オレフィン単位の含有率が20〜50質量%であることが好ましい。エチレン単位の含有率が上記範囲内であると、他の成分との親和性が良好となって熱可塑性エラストマー組成物の微分散性が向上する傾向にある。
成分(B)のエチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、これらの中でもエチレン・α−オレフィンブロック共重合体が好ましい。
エチレン・α−オレフィンブロック共重合体は、結晶性を有するエチレンからなる重合体ブロックを有することに加え、α−オレフィンを含むブロックによる非晶性を有する。成分(B)がこのような構造を有することにより、得られるエアバッグ収納カバーに高温強度及び低温耐衝撃性の効果が付与されやすくなる。
また、エチレンからなる重合体ブロックが、成分(d)の有機過酸化物の存在下で動的架橋されることにより光沢度が低くなり、外観も改善されるものと考えられる。
成分(B)のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体は、110〜125℃に結晶融解ピークを有し、かつその結晶融解熱量が20〜60J/gであることが好ましい。ここで、成分(B)において、110〜125℃に結晶融解ピークを有し、その結晶融解ピークから算出される結晶融解熱量が20〜60J/gであることは、成分(B)が、結晶性のエチレンからなる重合体ブロックを有することを表す指標である。成分(B)の結晶融解熱量は、高温強度の観点から、より好ましくは30J/g以上である。また、成分(B)の結晶融解熱量は、低温耐衝撃性の観点から、より好ましくは50J/g以下である。
成分(B)のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体のα−オレフィンを含むブロックによる非晶性は、ガラス転移温度により表すことができ、成分(B)のDSC法によるガラス転移温度は好ましくは−80℃以上であり、より好ましくは−75℃以上であり、一方、好ましくは−50℃以下であり、より好ましくは−60℃以下である。
成分(B)の結晶融解ピーク、結晶融解熱量、及びガラス転移温度のそれぞれの値は示差走査熱量測定法(DSC法)により求めることができる。結晶融解ピーク温度は、示差走査熱量計(DSC)によって得られる融解ピークのトップ温度であり、結晶融解熱量は、示差走査熱量計により得られる融解ピークの面積から求めることができる。また、ガラス転移温度は、示差走査熱量計によって得られるベースラインと変曲点での接線の交点である。これらの値を求める際の具体的な測定条件は次のようにして求められる。即ち、サンプル量10mgを採り、DSCを用い、25℃から200℃まで100℃/分の昇温速度で融解させ、200℃で1分間保持した後、−130℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、−130℃で10分間保持した後、10℃/分の昇温速度で200℃まで測定して求められる値である。
成分(B)のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体におけるエチレンからなる重合体ブロックは、エチレン単位を主体とするものであるが、エチレンに加え他の単量体単位を有していてもよい。ここで「主体とする」とは、全体の50質量%以上、特に60〜100質量%を占めることをさす。他の単量体単位としてはプロピレン単位、1−ブテン単位、2−メチルプロピレン単位、1−ペンテン単位、3−メチル−1−ブテン単位、1−ヘキセン単位、4−メチル−1−ペンテン単位、1−オクテン単位を例示することができる。好ましくは、プロピレン単位、1−ブテン単位、1−ヘキセン単位、1−オクテン単位等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数3〜8のα−オレフィン単位である。成分(B)におけるエチレンからなる重合体ブロックは、α−オレフィンの1種のみがエチレンと共重合したものであっても、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。
成分(B)のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体におけるα−オレフィンを含むブロックは、α−オレフィン単位としてプロピレン単位、1−ブテン単位、2−メチルプロピレン単位、1−ペンテン単位、3−メチル−1−ブテン単位、1−ヘキセン単位、4−メチル−1−ペンテン単位、1−オクテン単位を構成単位として有するものが例示され、好ましくは、プロピレン単位、1−ブテン単位、1−ヘキセン単位、1−オクテン単位等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数4〜8のα−オレフィン単位である。成分(B)におけるα−オレフィンを含むブロックはα−オレフィン単位に加え、エチレン単位を含んでいてもよく、α−オレフィンの1種のみがエチレンと共重合したものでも、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。
成分(B)のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体におけるα−オレフィンを含むブロックは、炭素数3〜8のα−オレフィン単位やエチレン単位に加え、非共役ジエンに基づく単量体単位(非共役ジエン単位)等の他の単量体単位を有していてもよい。該非共役ジエン単位としては、1,4−ヘキサジエン単位、1,6−オクタジエン単位、2−メチル−1,5−ヘキサジエン単位、6−メチル−1,5−ヘプタジエン単位、7−メチル−1,6−オクタジエン単位のような鎖状非共役ジエン単位;シクロへキサジエン単位、ジシクロペンタジエン単位、メチルテトラヒドロインデン単位、5−ビニルノルボルネン単位、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位、5−メチレン−2−ノルボルネン単位、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン単位、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン単位のような環状非共役ジエン単位が挙げられるが、これらの中でも好ましくは、5−エチリデン−2−ノルボルネン単位、ジシクロペンタジエン単位である。
成分(B)のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体が非共役ジエン単位等の他の単量体単位を有する場合、その含有率は成分(B)全体に対して、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。成分(B)の非共役ジエン単位の含有率についても赤外分光法により求めることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に用いる成分(B)のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体としては、例えば、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α−オレフィン共重合体ブロックとを有するエチレン・α−オレフィンブロック共重合体が挙げられ、具体的には、エチレンからなる重合体ブロックと、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・1−オクテン共重合体のエチレン・α−オレフィン共重合体ブロックとを含むブロック共重合体を例示することができる。
これらの中でも、成分(B)は、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・1−オクテン共重合体ブロックとを含むエチレン・α−オレフィンブロック共重合体であることが好ましい。
成分(B)のメルトフローレート(190℃、荷重21.18N)は限定されないが、通常10g/10分以下であり、強度の観点から、好ましくは8.0g/10分以下であり、より好ましくは5.0g/10分以下であり、更に好ましくは3.0g/10分以下である。また、成分(B)のメルトフローレート(190℃、荷重21.18N)は、通常0.01g/10分以上であり、流動性の観点から、好ましくは0.05g/10分以上であり、より好ましくは0.10g/10分以上である。成分(B)のメルトフローレートは、JIS K7210(1999年)に従い、190℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
成分(B)の密度は低温耐衝撃性の観点から、好ましくは0.880g/cm以下であり、より好ましくは0.870g/cm以下である。一方、その下限については特に制限されないが、通常0.850g/cm以上である。成分(B)の密度は(ISO 1183−A法(測定温度:23℃))により測定することができる。
成分(B)のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体は、特表2007−529617号公報、特表2008−537563号公報、特表2008−543978号公報に開示された方法に従って合成することができる。例えば、第1のオレフィン重合触媒と、同等の重合条件下で第1のオレフィン重合触媒によって調製されるポリマーとは化学的性質又は物理的性質が異なるポリマーを調製可能な第2のオレフィン重合触媒と、鎖シャトリング剤と、を組み合わせて得られる混合物又は反応生成物を含む組成物を準備し、上記エチレンとα−オレフィンとを、付加重合条件下で、該組成物と接触させる工程を経て製造することができる。
成分(B)のエチレン・α−オレフィンブロック共重合体の重合には、好ましくは連続溶液重合法が適用される。連続溶液重合法では、触媒成分、鎖シャトリング剤、モノマー類、並びに場合により溶媒、補助剤、捕捉剤及び重合助剤が反応ゾーンに連続的に供給され、ポリマー生成物はそこから連続的に取り出される。この際、エチレン・α−オレフィンブロック共重合体の各ブロックの長さは、前記触媒の比率および種類、鎖シャトリング剤の比率および種類、重合温度等を制御することによって変化させることができる。
成分(B)は市販のものを用いてもよい。成分(B)の市販品としては、例えば、ダウ・ケミカル社製Engage(登録商標)−XLTシリーズやINFUSE(登録商標)シリーズ、SK社製Solumer(登録商標)シリーズが挙げられる。
成分(B)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
<成分(C)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(C)としてスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物を含んでもよい。
成分(C)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物における好適な共役ジエンはブタジエン、イソプレン又はこれらの混合物である。成分(C)としては、例えば、スチレン・ブタジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物が挙げられる。スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物としては、部分的に水素添加されたスチレン・ブタジエン・ブチレン・スチレン共重合体(SBBS)、実質的に完全に水素添加されたものであるスチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)等が挙げられる。また、成分(C)としては、スチレン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物であるスチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)、スチレン・ブタジエン・イソプレンブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。
スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその部分水素添加物、完全水素添加物のスチレン単位の含有率は特に制限されないが、強度と耐熱性の観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上である。また、スチレン単位の含有率は、柔軟性と耐衝撃性の観点から、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以下である。
成分(C)における共役ジエンはNMR法で分析した1,2−ミクロ構造が好ましくは60モル%以下、より好ましくは45モル%以下の範囲のものである。1,2−ミクロ構造が上記上限値以下であることが成形性と柔軟性の観点から好ましく、また、動的熱処理による架橋反応を過度に進行させない観点からも好ましい。成分(C)においても架橋反応を利用する観点からは成分(C)がスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物である場合、その水素添加率は95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることが更に好ましい。
成分(C)における共役ジエンがイソプレンとブタジエンの混合物の場合の質量比(イソプレン/ブタジエン)は、一般に99/1〜1/99、好ましくは90/10〜30/70、より好ましくは80/20〜40/60である。
成分(C)の重量平均分子量(Mw)は離型性の観点から、好ましくは50,000以上であり、より好ましくは80,000以上であり、更に好ましくは100,000以上である。また、成分(C)の重量平均分子量(Mw)は流動性と分散性の観点から、500,000以下が好ましく、より好ましくは450,000以下であり、更に好ましくは400,000以下であり、特に好ましくは350,000以下である。
成分(C)の重量平均分子量(Mw)はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC法)により測定されるものであり、例えば、下記条件により測定することができる。
機器:東ソー株式会社製「HLC−8220GPC(R)」
カラム:東ソー株式会社製「TSKgelSuperHM−M(6.0mmI.D×15cm×2+G)」
検出器:示差屈折率検出器(RI/内蔵)
溶媒:クロロホルム
温度:40℃
流速:0.25mL/分
注入量:0.1重量%×20μL
較正試料:単分散ポリスチレン
較正法:ポリスチレン換算
較正曲線近似式:3次式(双曲線)
排除限界設定時間:12分
成分(C)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体の製造方法としては、例えば特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒を用いて不活性溶媒中でスチレン・共役ジエンブロック共重合体を合成する方法が挙げられる。また、スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物の製造方法としては、例えば、上記の方法でスチレン・共役ジエンブロック共重合体を合成し、次いで、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭60−79005号公報に記載された方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加する方法が挙げられる。
成分(C)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物は市販のものを用いてもよい。スチレン・共役ジエンブロック共重合体の市販品としては、例えば、クレイトンポリマー社製「クレイトン(登録商標)D」、LCY社製「Globalprene(登録商標)」が挙げられる。スチレン・共役ジエンブロック共重合体の部分水素添加物としては、例えば、旭化成株式会社製「タフテック(登録商標)P」が挙げられる。スチレン・共役ジエンブロック共重合体の完全水素添加物としては、例えば、クレイトンポリマー社製「クレイトン(登録商標)G」、株式会社クラレ製「セプトン(登録商標)」、旭化成株式会社製「タフテック(登録商標)」が挙げられる。
成分(C)のスチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
<成分(d)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法において、成分(d)の有機過酸化物は動的熱処理において架橋剤として作用する。この動的熱処理により、本発明の熱可塑性エラストマー組成物よりなるエアバッグ収納カバー等の成形品の耐熱性、外観、離型性が特に良好となる。
成分(d)の有機過酸化物としては、芳香族系有機過酸化物及び脂肪族系有機過酸化物のいずれも使用することが可能である。具体的には、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類;t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類;アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド等のヒドロパーオキシド類が挙げられる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<成分(e)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法において、前記成分(d)と共に成分(e)の架橋助剤の存在下で動的熱処理を行うことが好ましい。
成分(e)の架橋助剤としては、例えば、硫黄、p−キノンジオキシム、p−ジニトロソベンゼン、1,3−ジフェニルグアニジン等の過酸化物用助剤;ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<成分(F)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形性を向上させる観点から成分(F)として炭化水素系ゴム用軟化剤を含有することが好ましい。
成分(F)の炭化水素系ゴム用軟化剤としては、鉱物油系軟化剤、合成樹脂系軟化剤等が挙げられるが、他の成分との親和性の観点から鉱物油系軟化剤が好ましい。鉱物油系軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子の50%以上がパラフィン系炭化水素であるものがパラフィン系オイル、全炭素原子の30〜45%がナフテン系炭化水素であるものがナフテン系オイル、全炭素原子の35%以上が芳香族系炭化水素であるものが芳香族系オイルと各々呼ばれている。これらの中で、本発明においては、パラフィン系オイルを用いることが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
成分(F)の炭化水素系ゴム用軟化剤の40℃における動粘度(ASTMD 445/JIS K2283)は特に限定されないが、好ましくは20cSt以上、より好ましくは50cSt以上であり、また、好ましくは800cSt以下、より好ましくは600cSt以下である。また、炭化水素系ゴム用軟化剤の引火点(COC法)は、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上である。
成分(F)の炭化水素系ゴム用軟化剤は市販のものを用いてもよい。成分(F)の市販品としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー社製日石ポリブテン(登録商標)HVシリーズ、出光興産社製ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPWシリーズが挙げられ、これらの中から適宜選択して使用することができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<配合割合>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の原料の配合割合について以下に説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中の成分(A)の含有率は、成分(A)と成分(B)の合計に対し、柔軟性の観点から通常10質量%以上であり、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。また、成形加工性の観点から、通常90質量%以下であり、好ましくは85質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中の成分(B)の含有率は、成分(A)と成分(B)の合計量に対し、成形加工性の観点から10質量%以上であり、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。また、柔軟性の観点から通常90質量%以下であり、好ましくは85質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が成分(C)を含有する場合、その含有量は、成分(A)と成分(B)の合計を100質量部としたときに、外観、離型性等の観点から通常1質量部以上であり、好ましくは5質量部以上であり、より好ましくは9質量部以上である。一方、柔軟性と耐候性の観点から通常30質量部以下であり、好ましくは25質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法において、動的熱処理に供する原料混合物中の成分(d)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対し、架橋反応を十分に進行させるため、好ましくは0.15質量部以上であり、より好ましくは0.18質量部以上であり、更に好ましくは0.2質量部以上である。一方、架橋反応と流動性を制御する観点及び低温耐衝撃性の観点から、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは4質量部以下であり、更に好ましくは3質量部以下である。
また、成分(e)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対し、架橋反応をより効率的に進行させるため、好ましくは0.15質量部以上であり、より好ましくは0.18質量部以上であり、更に好ましくは0.2質量部以上である。一方、架橋反応と流動性を制御する観点及び低温耐衝撃性の観点から、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは8質量部以下であり、更に好ましくは5質量部以下であり、特に好ましくは3質量部以下である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が成分(F)を含有する場合、その含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対し、柔軟性の観点から、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上であり、更に好ましくは5質量部以上である。一方、低温耐衝撃性の観点から、好ましくは200質量部以下であり、より好ましくは150質量部以下であり、更に好ましくは120質量部以下であり、特に好ましくは100質量部以下である。
<その他の成分>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の成分を配合することができる。
その他の成分としては、例えば、成分(A)〜(C)以外の熱可塑性樹脂やエラストマー等の樹脂、酸化防止剤、充填材、熱安定剤、耐候助剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤等の各種添加物を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
成分(A)〜(C)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリオレフィン樹脂(だだし、成分(A)又は成分(B)に該当するものを除く。)を挙げることができる。また、成分(A)〜(C)以外のエラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー(ただし、成分(C)に該当するものを除く。);ポリエステル系エラストマー;ポリブタジエンを挙げることができる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤を用いる場合、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、通常0.01〜3.0質量部の範囲で用いられる。
充填材としては、例えば、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、金属石鹸、二酸化チタン、カーボンブラックを挙げることができる。充填材を用いる場合、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、通常0.1〜50質量部で用いられる。
[熱可塑性エラストマー組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、好ましくは、成分(A)と成分(B)、必要に応じて用いられる成分(C)、成分(F)及びその他の成分等を所定量含有する組成物を成分(d)と成分(e)の存在下で動的熱処理して製造される。
本発明において「動的熱処理」とは成分(d)と成分(e)の存在下で溶融状態又は半溶融状態で混練することを意味する。この動的熱処理は、溶融混練によって行うのが好ましく、そのための混合混練装置としては、例えば非開放型バンバリーミキサー、ミキシングロール、ニーダー、二軸押出機が用いられる。これらの中でも二軸押出機を用いることが好ましい。この二軸押出機を用いた製造方法の好ましい態様としては、複数の原料供給口を有する二軸押出機の原料供給口(ホッパー)に各成分を供給して動的熱処理を行うものである。
動的熱処理を行う際の温度は、通常80〜300℃、好ましくは100〜250℃である。また、動的熱処理を行う時間は通常0.1〜30分である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を二軸押出機により動的熱処理を行う場合においては、二軸押出機のバレル半径R(mm)、スクリュー回転数N(rpm)及び吐出量Q(kg/時)の間に下記式(1)の関係を保ちながら押出することが好ましく、下記式(2)の関係を保ちながら押出することがより好ましい。
2.6<NQ/R<22.6 …(1)
3.0<NQ/R<20.0 …(2)
二軸押出機のバレル半径R(mm)、スクリュー回転数N(rpm)及び吐出量Q(kg/時)との間の前記関係が上記下限値より大きいことが熱可塑性エラストマー組成物を効率的に製造するために好ましい。一方、前記関係が上記上限値より小さいことが、剪断による発熱を抑え、外観不良の原因となる異物が発生しにくくなるために好ましい。
[熱可塑性エラストマー組成物の物性]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の温度−40℃と−45℃のアイゾット衝撃強さが50kJ/m以上であることで、低温耐衝撃性を良好に制御でき、エアバッグ収納カバーの成形材料として好適に用いることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物のアイゾット衝撃強さは、60kJ/m以上であることがより好ましく、70kJ/m以上であることが更に好ましい。
ここで、温度−40℃と−45℃のアイゾット衝撃強さは、本発明の熱可塑性エラストマー組成物をインラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180」)により、射出圧力100MPa、射出速度27mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、アイゾット衝撃強さ用の試験片として、厚さ4mm×幅10mm×長さ80mmに成形した射出成形品を用い、ダンベルにノッチを入れ(ノッチの寸法と評価方法はISO 180(2000年)に準拠)、温度−40℃と−45℃のそれぞれで測定される。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の曲げ弾性率の値が、100〜400MPaであることで、エアバッグ収納カバーの成形材料として好適に用いることができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の曲げ弾性率は120〜380MPaであることが好ましい。
ここで、曲げ弾性率は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物をインラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180」)により、射出圧力100MPa、射出速度27mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、ISO 3167(2002年)準拠の多目的評価用試験片A(長さ180mmのダンベル)を成形し、ダンベルの末端を切り落として作成した曲げ弾性率測定用試験片(厚さ4mm×幅10mm×長さ80mm)を用い、島津製作所製オートグラフ精密万能試験機「AG−X」により、ISO 178(2010年)に従って、2mm/minの速度で測定される。
[エアバッグ収納カバーの製造方法]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を通常の射出成形法又は、必要に応じて、ガスインジェクション成形法、射出圧縮成形法、ショートショット発泡成形法等の各種成形法を用いて成形体とすることにより本発明のエアバッグ収納カバーを製造することができる。特に、本発明のエアバッグ収納カバーは射出成形により製造することが好ましく、射出成形を行う際の成形条件は以下の通りである。
エアバッグ収納カバーを射出成形する際の成形温度は一般に150〜300℃であり、好ましくは160〜280℃である。射出圧力は通常、5〜100MPaであり、好ましくは10〜80MPaである。また、金型温度は通常0〜80℃であり、好ましくは20〜60℃である。
このようにして得られたエアバッグ収納カバーは、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして好適に用いられる。
本発明のエアバッグ収納カバーは、運転席用エアバッグ収納カバー、助手席用エアバッグ収納カバー、歩行者用エアバッグ収納カバー、ニー・エアバッグ収納カバー、サイド・エアバッグ収納カバー、カーテン・エアバッグ収納カバー等のいずれにも好適に用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限または下限の値と、下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
<原料>
[成分(A)]
A−1:
プロピレン系ブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られたもの)
MFR(JIS K7210(1999年)):20g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf))
プロピレン系ブロック共重合体中、エチレン単位含有率:2.5質量%
(プロピレン単独重合体の含有率:79質量%、プロピレン・エチレン共重合体の含有率:21質量%、プロピレン・エチレン共重合体におけるエチレン単位含有率:12質量%)
A−2:
プロピレン系ブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られたもの)
MFR(JIS K7210(1999年)):35g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf))
プロピレン系ブロック共重合体中、エチレン単位含有率:0.4質量%
(プロピレン単独重合体の含有率:91質量%、プロピレン・エチレン共重合体の含有率:9質量%、プロピレン・エチレン共重合体におけるエチレン単位含有率:4質量%)
A−3:
プロピレン系ブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られたもの)
MFR(JIS K7210(1999年)):9g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf))
プロピレンブロック系共重合体中、エチレン単位含有率:1.2質量%
(プロピレン単独重合体の含有率:85質量%、プロピレン・エチレン共重合体の含有率:15質量%、プロピレン・エチレン共重合体におけるエチレン単位含有率:8.1質量%)
A−4:
プロピレン系ブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られたもの)
LyondellBasell社製ADFLEX(登録商標)Q300F
MFR(ISO 1133):0.65g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf)、カタログ値)
プロピレン・エチレンブロック共重合体中、エチレン単位含有率:34.8質量%
(プロピレン単独重合体の含有率:40質量%、エチレン・プロピレン共重合体の含有率:60質量%、エチレン・プロピレン共重合体におけるエチレン単位含有率:58質量%)
A−5:
プロピレンブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られたもの)
LyondellBasell社製HIFAX(登録商標)X1956A
MFR(ISO 1133):1.1g/10分(測定条件:230℃、荷重21.18N(2.16kgf)、カタログ値)
プロピレン・エチレンブロック共重合体中、エチレン単位含有率:9.9質量%
(プロピレン単独重合体の含有率:71質量%、プロピレン・エチレン共重合体の含有率:29質量%、プロピレン・エチレン共重合体におけるエチレン単位含有率:34質量%)
[成分(B)]
B−1:
エチレン・1−オクテンブロック共重合体(エチレンからなる重合体ブロックとオクテンを含むブロックを有する共重合体。前記オクテンを含むブロックはエチレン・1−オクテン共重合体のブロックである。)
ダウ・ケミカル社製Engage(登録商標)XLT8677
結晶融解ピーク温度:119℃
結晶融解熱量:37J/g
MFR(JIS K7210(1999年)):0.5g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N(2.16kgf))(カタログ値)
ガラス転移温度(DSC法):−67℃
密度(ISO 1183−A法(測定温度:23℃)):0.870g/cm
B−2:
エチレン・1−オクテンランダム共重合体
SK社製Solumer(登録商標)8605L
結晶融解ピーク温度:110〜125℃にピークなし
結晶融解熱量:0
MFR(ASTM D1238):0.6g/10分(測定条件:190℃、荷重21.18N(2.16kgf))(カタログ値)
密度(ISO 1183−A法(測定温度:23℃)):0.863g/cm
[成分(C)]
C−1:
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体
LCY社製Globalprene(登録商標)3411
重量平均分子量(Mw):240,000
スチレン単位の含有率:30質量%(カタログ値)
共役ジエン単位の含有率:70質量%(カタログ値)
共役ジエン成分の1,2−ミクロ構造:30モル%
[成分(d)]
d−1:
化薬アクゾ株式会社製カヤヘキサAD40C(2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物)
[成分(e)]
e−1:
和光純薬工業社製ジビニルベンゼン(ジビニルベンゼン55質量%とエチルビニルベンゼン45質量%の混合物)
[成分(F)]
F−1:
パラフィン系オイル
出光興産製ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW90
40℃の動粘度:95.54cSt
流動点:−15℃
引火点:272℃
<評価方法>
1) 高温強度(引張破壊試験)
インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180」)により、射出圧力100MPa、射出速度27mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、引張試験用の試験片(厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシート)を成形した後、JIS K6251(1993年)準拠(JIS−3号ダンベル)で打ち抜いた。この打ち抜き試験片について、島津製作所製オートグラフ精密万能試験機「AG−X」により、ISO 37−1Aを参照して、引張破壊強さ(単位:MPa)を引っ張り速度500mm/min、85℃の雰囲気下にて測定した。引張破壊強さの値が大きいほど高温強度に優れるものと評価した。
2) 低温耐衝撃性(アイゾッド衝撃強さ)
インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180」)により、射出圧力100MPa、射出速度27mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、アイゾット衝撃強さ用の試験片として、厚さ4mm×幅10mm×長さ80mmに成形した。その後、ダンベルにノッチを入れ(ノッチの寸法と評価方法はISO 180(2000年)に準拠)、温度−40℃と−45℃のそれぞれで測定した。アイゾット衝撃強さの値が大きいものほど、低温衝撃性に優れるものと評価される。
3) 曲げ弾性率
インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180」)により、射出圧力100MPa、射出速度27mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、ISO 3167(2002年)準拠の多目的評価用試験片A(長さ180mmのダンベル)を成形し、ダンベルの末端を切り落として曲げ弾性率測定用試験片(厚さ4mm×幅10mm×長さ80mm)を作成した。島津製作所製オートグラフ精密万能試験機「AG−X」により、ISO 178(2010年)従って、2mm/minの速度で曲げ弾性率を測定した。エアバッグ収納カバーとして使用するためには曲げ弾性率は100〜600MPaであることが好ましい。
[実施例1]
表1に示す配合とし、更に、(A−1)〜(A−5)、(B−1)〜(B−2)、(C−1)、(F−1)の合計100質量部に対して酸化防止剤(BASFジャパン社製商品名イルガノックス(登録商標)1010)0.075質量部、酸化防止剤(BASFジャパン社製商品名イルガフォス(登録商標)168)0.075質量部、耐候助剤(BASFジャパン社製商品名チヌビン(登録商標)XT855FF)0.2質量部及び黒色顔料(カーボン濃度40質量%品)1.5質量部をヘンシェルミキサーにて1分間ブレンドし、同方向2軸押出機(神戸製鋼製「TEX30α」、L/D=45、シリンダブロック数:13)へ20kg/hrの速度で投入し、180〜210℃の範囲で昇温させ、溶融混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットについて、前記1)〜3)の評価を行った。評価結果を表−1に示す。
[実施例2〜6、比較例1〜6]
表−1,2に示す配合にした以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットについて、実施例1と同様に評価した。評価結果を表−1,2に示す。
Figure 2021123601
Figure 2021123601
[考察]
表−1,2より、本発明に該当する実施例1−6は高温強度に著しく優れたものであることがわかる。また、低温衝撃性においても成分(d),(e)を用いておらず動的架橋処理を実施していない比較例1,4〜6や、成分(d)のみ、或いは成分(d),(e)を用いてもその配合量が少なく、十分な動的架橋処理を行っていない比較例2,3と比較して、向上していることがわかる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は高温強度に著しく優れ、特に高温環境下でも使用される各種用途に好適に用いることができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は例えば、エアバッグ収納カバー、インストルメントパネル、センターパネル、センターコンソールボックス、ドアトリム、ピラー、アシストグリップ、ハンドル等の自動車内装部品、マッドガード・グロメット等の自動車外装部品、家電部品、建材、家具として有用である。これらの中でも本発明の熱可塑性エラストマー組成物はエアバッグ収納カバーとして特に有用であり、このエアバッグ収納カバーの中でも、例えば、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開によって乗員を保護するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして好適である。

Claims (12)

  1. 少なくとも下記成分(A)及び成分(B)を含む熱可塑性エラストマー組成物であって、ISO 37−1Aを参照して引張速度500mm/min、85℃雰囲気下にて測定した引張破壊強さが7MPa以上である熱可塑性エラストマー組成物。
    成分(A):エチレン単位の含有率が0〜50質量%未満のプロピレン系重合体
    成分(B):エチレン・α−オレフィン共重合体
  2. 前記成分(B)のα−オレフィンの炭素数が4〜8である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 前記成分(B)が、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体及び/又はエチレン・α−オレフィンブロック共重合体である、請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 前記成分(B)がエチレン・α−オレフィンブロック共重合体であって、エチレンからなる重合体ブロックとエチレン・α−オレフィン共重合体ブロックとを含むエチレン・α−オレフィンブロック共重合体である、請求項3に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 前記エチレン・α−オレフィンブロック共重合体が110〜125℃に結晶融解ピークを有し、かつその結晶融解熱量が20〜60J/gである、請求項3又は4に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 前記α−オレフィンがオクテンである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. 前記成分(A)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が0.1〜200g/10分である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  8. 更に下記成分(C)を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
    成分(C):スチレン・共役ジエンブロック共重合体及び/又はその水素添加物
  9. 前記成分(C)の重量平均分子量(Mw)が50,000〜500,000である、請求項8に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  10. 下記成分(A)、成分(B)、成分(d)及び成分(e)を含む混合物を動的熱処理する工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
    成分(A):エチレン単位の含有率が0〜50質量%未満のプロピレン系重合体
    成分(B):成分(B):エチレン・α−オレフィン共重合体
    成分(d):有機過酸化物
    成分(e):架橋助剤
  11. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む射出成形品。
  12. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を含むエアバッグ収納カバー。
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