本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の苗移植機100の左側面を示している。図中には、苗移植機100の前後方向及び上下方向を矢印で示している。
図1は、玉葱などの野菜苗を圃場に植付けるための苗移植機100を示す。苗移植機100は、乗用型の苗移植機である。苗移植機100は、複数条(本実施形態では二条)の苗移植作業を同時に実行できるように構成されている。苗移植機100は、牽引車として機能する走行機体1と、その走行機体1の後方(図1の右方向)に配置された苗供給装置2と、その苗供給装置2の後方に配置された苗植付け装置3とを備える。
走行機体1は、下部体11と、その下部体11の上方に設けられた上部体12とで構成されている。下部体11は、ミッションケース13とリヤアクスルケース14との間に連結フレーム15を介在させて形成されている。連結フレーム15は、断面四角形状のパイプ材により形成され、前後方向に直線状に延在している。連結フレーム15には、原動機としてのエンジン16がブラケットを介して搭載されている。エンジン16には、ミッションケース13が連動連結されている。ミッションケース13には、リヤアクスルケース14とフロントアクスルケース17が連動連結されている。
走行機体1を支持する走行車輪は、左右一対の前輪20,20と左右一対の後輪22,22とで構成されている。前輪20,20は、フロントアクスルケース17の端部に前車軸21を介して取り付けられている。フロントアクスルケース17は、ミッションケース13の側壁部から外側へ向けて延設された軸ケース18の外側の端部から下方に向けて延設されている。後輪22,22は、リヤアクスルケース14の左右方向の端部に後車軸23を介して取り付けられている。前輪は昇降揺動自在に設けられており、それによって走行路面が凹凸形状であっても追従することができる。
上部体12の前方部には、ハンドルコラムの周囲を被覆するカバー体24と、そのハンドルコラムを介して支持されたハンドル25とが設けられている。上部体12の中央部には、オペレータが着席する運転席26が設けられている。オペレータは、運転席26にて苗移植機100を運転して圃場内を移動しながら、苗供給装置2及び苗植付け装置3を駆動させて、圃場に苗を植付ける苗移植作業を実行できる。ハンドル25の左右両側には、予備の苗トレイを載置するための予備苗台28が設けられている。上部体12の後方部には、オペレータが予備苗台28から苗供給装置2に苗トレイを移送するためのスペース27が形成されている。空の苗トレイは予備苗台28に収納される。
苗供給装置2は、昇降機構4を介して走行機体1に取り付けられている。昇降機構4は、前後方向に伸延するトップリンク片31と、左右一対のロワリンク片32と、後端部連結片33と、単動式の昇降シリンダ34とを有する。昇降機構4は、走行機体1の後方に設けられた昇降機構支持体19に上下回動自在に取り付けられている。圧油の供給により昇降シリンダ34を短縮させると、後端部連結片33が上昇し、それに伴って苗供給装置2及び苗植付け装置3が上昇する。一方、圧油の排出により昇降シリンダ34を伸長させると、苗供給装置2及び苗植付け装置3が自重によって下降する。
苗供給装置2の下方には、昇降センサローラ35が配置されている。昇降センサローラ35は、圃場の畝面の凹凸に沿って昇降動作する。この昇降センサローラ35の昇降動作に連動して昇降シリンダ34の油圧回路が切り替えられ、移植深さ(植付け深さ)が一定に維持されるように昇降機構4を作動させる。昇降センサローラ35の後方であって、後述する移植用カップ50の後方には、移植直後の苗に覆土するための覆土輪36が配置されている。
図1,2に示すように、苗供給装置2は、ポット苗Nをマトリックス状に配置した苗トレイ41が載置される苗載台42を備える。苗トレイ41には、前後方向と左右方向とのマトリックス状に苗ポット部41aが設けられている。苗ポット部41aの各々には、移植すべきポット苗N(図1では図示せず)が収められている。苗載台42は、横送り機構によって左右方向に往復動可能に構成されている。また、苗載台42は、縦送り機構によって、横送りの終端位置で苗トレイ41を1ピッチ(苗ポット部41aの1つ分の長さ)ずつ間欠的に後下方へ移動可能に構成されている。
上記の縦送り機構は、動力伝達系を介して駆動される駆動軸に取り付けられた大径スプロケット43と、従動軸に取り付けられた小径チェンスプロケット44と、それらに巻掛けられた左右一対の搬送チェン45とを含む。搬送チェン45に搭載された苗トレイ41は、この縦送り機構により図2の矢印C方向に沿って後下方へと搬送される。苗トレイ41は、可撓性を有する材料(例えば、軟質合成樹脂材)によって形成されているので、搬送チェン45に搭載されて搬送される際に、大径スプロケット43の外周に沿って湾曲可能である。
図1に示すように、苗供給装置2には、左右方向に延在する動力取入れ軸37を介した伝達経路を経て動力が伝達される。苗植付け装置3についても、これと同様である。動力取入れ軸37は、一対の後輪22,22の間で前後方向に延びた伝動シャフト38を含む伝動機構を介してミッションケース13に連動連結されている。当該伝動機構の中途部に配設されたクラッチケースには、植付けクラッチを備えたクラッチ機構や株間調整機構などが内蔵されている(いずれも図示せず)。
図2に示すように、苗植付け装置3は、移植すべきポット苗Nを保持して圃場に移植するための移植用カップ50を有する移植機構5と、苗載台42の苗トレイ41からポット苗Nを苗取出爪61で取出して移植用カップ50に移送する受継ぎ機構6とを備える。後述するように、本実施形態では、左右方向の四箇所に移植機構5が設けられており、それに対応して受継ぎ機構6も左右方向の四箇所に設けられている。
受継ぎ機構6は、苗ポット部41aに収まっているポット苗Nを取り出し、そのポット苗Nを上方から移植機構5の移植用カップ50へ向けて落下させる苗取出爪61を有する。苗取出爪61は、先細り形状をなす左右一対の棒状部材で形成されている。この左右一対の棒状部材は、バネ(図示せず)によって常時閉じる方向に付勢されているが、カム板62の作用により、回動角度の一区間で付勢力に抗して開くように構成されている。苗取出爪61は、L字状に折り曲げられてリング状に形成された押出し部材60の先端部に挿通されている。
苗取出爪61は、ガイド軸65を有する苗取出しアーム66に取り付けられている。ガイド軸65は、ガイド板67に形成されたガイド溝63に摺動自在に嵌合されている。動力伝達系を介して駆動されるロータリケース(図示せず)の回転により、苗取出爪61は、苗ポット部41aの内部に先端部を侵入させてポット苗Nを挟持する姿勢を経て、ポット苗Nを突き刺した状態で移植用カップ50の上方に戻る、という軌跡64を辿る。押出し部材60は、移植用カップ50の上方で苗取出爪61に突き刺さっているポット苗Nを押し出して落下させる。落下したポット苗Nは移植用カップ50で受け止められ、移植用カップ50に対する苗供給が行われる。
上述した走行機体1や苗供給装置2、苗植付け装置3の受継ぎ機構6は、通常の苗移植機と同様に構成することが可能であり、従来公知の形状や材質、機構などは何れも本発明に採用することができる。
既述の通り、本実施形態では、二条の苗移植作業を同時に実行できるように構成されている。また、図3のように、苗植付け装置3では左右方向の四箇所に移植機構5が設けられており、単一条に対して二組の移植機構5,5及び受継ぎ機構6,6が左右方向に並設されている。左右に並設された二組の移植機構5,5及び受継ぎ機構6,6に対して、一つの苗載台42が備え付けられている。一つの苗載台42には一つの苗トレイ41(図3では図示せず)が載せられ、その一つの苗トレイ41から二つの受継ぎ機構6,6が苗を取り出す。図4は、左側に位置する植付け条に対して並設された移植機構5,5を後方から見た背面図である。図4では図示していないが、これらの移植機構5,5の上方には、それぞれ受継ぎ機構6,6が配置されている(図2,3参照)。
この苗移植機100では、左右に並設された二組の移植機構5,5及び受継ぎ機構6,6において、その少なくとも一方側の移植機構5が複数の移植用カップ50を有する。本実施形態では、図4のように、一方側(図4では左側)の移植機構5が二個の移植用カップ50を有しており、他方側(図4では右側)の移植機構5が一個の移植用カップ50を有している例を示す。便宜上、前者を移植機構5W、後者を移植機構5Sとして区別する。図3のように、右側に位置する植付け条に対して並設された移植機構5,5は、これを左右対称に配置したものである。
一方側の移植機構5Wが有する複数(本実施形態では二個)の移植用カップ50,50の植付け位置と、他方側の移植機構5Sが有する移植用カップ50の植付け位置とは単一条に一致している。左右に並設された移植機構5,5(即ち、移植機構5Wと移植機構5S)が有する移植用カップ50,50,50は、図4のように植付け条に対して左右対称に傾斜させて配置され、それらの植付け位置が単一条に一致するように構成されている。移植機構5Wが有する移植用カップ50,50の回動静軌跡Twと、移植機構5Sが有する移植用カップ50の回動静軌跡Tsとは、後方から見て略V字状をなす。即ち、回動静軌跡Twは、上死点では回動静軌跡Tsと離れており、下死点では回動静軌跡Tsと一致している。回動静軌跡Tw,Tsについては後述する。
図5(a)は、図4に示した移植用カップ50,50の先端部の形状を示す概略図である。本実施形態では、上述のように移植用カップ50,50を鉛直方向に対して傾けているので、それらの先端部が圃場面に対して斜めに押し込まれ、その結果、苗が傾いて植え付けられる恐れがある。この問題を解消するために、図5(b)のように移植用カップ50の先端部を鉛直方向に向けて曲げた形状にすることが考えられる。この場合、移植用カップ50の先端部は、後方から見た軌跡Tw,Tsに対して傾斜するように設けられる。この構成によれば、移植用カップ50の先端部を圃場面に対して略垂直に押し込めることにより、移植した苗を直立させて良好な育成が見込める。
図3,4に示すように、移植機構5Wは、回転中心軸80を中心に回転する第1ロータリケース81と、第1ロータリケース81の回転直径方向の両先端部の側面に設けられた回転支軸83,83を中心に回転する一対の第2ロータリケース82,82と、第2ロータリケース82,82の各々に支持された一対の移植用カップ50,50とを備える。第2ロータリケース82は回転支軸83と一体的に回転(自転)し、且つ、回転中心軸80を中心にして回動(公転)する。移植用カップ50は、リンク機構85を介して相対回動支持中心軸84に接続されている。相対回動支持中心軸84は、回転支軸83に対して偏位した位置に配置され、第2ロータリケース82に対して回転可能に設けられている。第1ロータリケース81の回転位相の如何に拘らず、一対の移植用カップ50,50が常時下向きとなるように姿勢制御し、第1ロータリケース81が一回転する間に、一対の移植用カップ50,50が単一条に沿った二箇所に苗を植付けるようにするための伝動機構が、第1及び第2ロータリケース81,82の内部に設けられている。
移植用カップ50は、下向きに窄まる略円錐状部材を前後方向に半割りした一対のカップ体50a,50b(図3参照)により形成されている。一対のカップ体50a,50bは、図示しないバネによって常時閉じる方向に付勢されている。第2ロータリケース82の側面にはカム体(図示せず)が設けられており、移植用カップ50が圃場面に接近したときに、一対のカップ体50a,50bの下端側をバネの付勢力に抗して開放するようにリンク機構85と連係されている。これにより、移植用カップ50の下端部が圃場面に突入した直後に、一対のカップ体50a,50bの下端側が開き、保持されていたポット苗が圃場に移植され、移植用カップ50の下端部が圃場面から抜き出た後に、移植された苗よりも上方で一対のカップ体50a,50bの下端側が閉じる、という移植用カップ50の開閉動作が行われる。このことは、移植機構5Sが有する移植用カップ50においても同じである。
移植機構5Sは、回転中心軸90を中心に回転する第1ロータリケース91と、第1ロータリケース91の回転直径方向の一先端部の側面に設けられた回転支軸93を中心に回転する第2ロータリケース92と、第2ロータリケース92に支持された移植用カップ50とを備える。第2ロータリケース92は回転支軸93と一体的に回転(自転)し、且つ、回転中心軸90を中心にして回動(公転)する。移植用カップ50は、リンク機構95を介して相対回動支持中心軸94に接続されている。相対回動支持中心軸94は、回転支軸93に対して偏位した位置に配置され、第2ロータリケース92に対して回転可能に設けられている。第1ロータリケース91の回転位相の如何に拘らず、移植用カップ50が常時下向きとなるように姿勢制御し、第1ロータリケース91が一回転する間に、移植用カップ50が単一条に沿った一箇所に苗を植付けるようにするための伝動機構が、第1及び第2ロータリケース91,92の内部に設けられている。
図3に示すように、移植機構5の入力軸となる伝動軸70には、スプロケット71,72に巻掛けられた伝動チェン73、及び、スプロケット74,75に巻掛けられた伝動チェン76を介して、動力取入れ軸37より動力が伝達される。入力部77は、中折れ自在且つ軸方向に伸縮自在の伝動シャフト78を介して出力部79に連動連結されている。1連の移植用カップ50を備えた移植機構5Sに動力を伝達する出力部79は、伝動軸70上に配置されている。2連の移植用カップ50を備えた移植機構5Wに動力を伝達する出力部79は、伝動軸70上に配置された間欠動作機構110に連結されている。回転中心軸80,90は、それぞれ入力部77から左右方向に突出した出力軸である。上述した通り、第1ロータリケース81,91は、それぞれ回転中心軸80,90を中心にして回転する。
図6に示すように、本実施形態では、回転中心軸80の軸方向の左側方から見て、移植機構5Wの移植用カップ50,50の回動静軌跡Twが上下方向に長い楕円形状をなす。回動静軌跡Twは、図6において移植用カップ50,50の下端部が辿る軌跡として示しているが、移植用カップ50,50を支持する相対回動支持中心軸84,84の回動静軌跡もこれに合同の軌跡を描く。回動静軌跡Mwは、第1ロータリケース81に対する第2ロータリケース82の回動静軌跡であり、より正確には回転支軸83の回動静軌跡である。回動静軌跡は、苗移植機100(の走行機体1)が前進していない状態での回動軌跡を指す。また、図7に示すように、本実施形態では、回転中心軸90の軸方向の左側方から見て、移植機構5Sの移植用カップ50の回動静軌跡Tsが上下方向に長い楕円形状をなす。図6と同様に、第1ロータリケース91に対する第2ロータリケース92の回動静軌跡Msを重ねて示している。移植用カップ50の回動静軌跡は、このような上下方向に長い楕円形状に限定されず、他の形状でもよい。第1及び第2ロータリケース81,82の内部の伝動機構は、前掲した特許文献1,2などに開示されており、それに倣って第1及び第2ロータリケース91,92の内部の伝動機構も構成できるため、詳しい説明は省略する。
図6に示した位置P1,P2、及び、図7に示した位置P3,P4は、それぞれ株間を広げるときなどに移植用カップ50の回動を一時停止するときの位置を示す。移植機構5Wにおいては、移植用カップ50が圃場面に接近して引き摺られる事態を避けるうえで、このように互いに実質的に同じ高さとなる位置P1,P2で一対の移植用カップ50,50を一時停止することが好ましい。回動静軌跡Twを辿る移植用カップ50への苗供給は、位置P2から上死点を通って位置P1に至る範囲において、好ましくは上死点の近傍において、苗取出爪61(図6,7では図示せず)が落下させたポット苗を移植用カップ50が受け取ることにより行われる。回動静軌跡Tsを辿る1連の移植用カップ50への苗供給は、回動静軌跡Twを辿る2連の移植用カップ50への苗供給と同時に行われる。
苗移植機100は、他方側の移植機構5Sが有する移植用カップ50の植付け位置が、一方側の移植機構5Wが有する複数の移植用カップ50,50における植付けピッチの間に配置されるように構成されている。本実施形態では、移植機構5Wが二個の移植用カップ50,50を有し、移植機構5Sが一個の移植用カップ50を有するため、移植機構5Wが有する二個の移植用カップ50,50による苗移植作業は、植付け株間に対して一株置きに行われ、その間に移植機構5Sが有する一個の移植用カップ50による苗移植作業が行われる。
図8は、苗移植作業における移植用カップ50の動作を説明する図であり、回動静軌跡Twに対する一対の移植用カップ50,50の位置と、回動静軌跡Tsに対する移植用カップ50の位置とを、それぞれ(a)〜(i)のアルファベット順に示している。図8の(a)〜(c)、(e)〜(g)及び(i)は、株間を調整するために移植用カップ50を一時停止させた状態に相当する。図9は、苗移植作業における移植用カップ50、苗取出爪61及び苗載台42の駆動に関するタイミングチャートであり、図8の(a)乃至(i)に相当するタイミングを鎖線で表している。
図9において、チャート内の網かけ部分は駆動が行われている状態を示す。移植用カップ50の動作において、網かけ部分は、上記植付けクラッチがオンとなって移植機構5に動力が伝達されている状態となる。網かけの厚みが小さい部分は、駆動が行われているものの、外見上は停止している状態を示す。移植用カップ50x,50yの動作において、網かけの厚みが小さい部分は、移植機構5Wに動力が伝達されているが移植用カップ50x,50yの回転が停止している状態となる。チャート内の網かけが無い部分は、駆動が行われていない状態を示す。移植用カップ50の動作において、網かけが無い部分は、上記株間調整機構によって一時停止している状態となる。
このような移植機構5Wの間欠的な動作は、間欠動作機構110によって実現される。間欠動作機構110は、図10のように、駆動軸である伝動軸70に固着された第1ギヤ120と、それに噛み合う第2ギヤ130とを備える。第2ギヤ130は、出力部79の入力軸135に固着されている。第1ギヤ120は、半周分だけに歯121が形成された欠歯ギヤであり、残りの半周分は歯無し部122として形成されている。第2ギヤ130は、歯131の先端部を半周ごとに切欠いた(したがって周方向の二箇所で切欠いた)切欠き部132を有する。このため、図10(a)のように第1ギヤ120と第2ギヤ130とが噛み合っていないときは、第1ギヤ120が回転しても第2ギヤ130は回転しない。このため、移動機構5Wの駆動が行われても外見上は停止し、移植用カップ50x,50yの回転が停止した状態となる。一方、図10(b)のように第1ギヤ120と第2ギヤ130とが噛み合っているときは、第1ギヤ120の回転に伴って第2ギヤ130が回転し、それに連動して移植用カップ50x,50yが回転する。苗載台42の横送りの間欠動作も、これと同様の機構によって実現される。
図8では、説明の便宜上、三つの移植用カップ50,50,50の各々を丸印(二重丸、黒丸、一重丸)で表すとともに、互いに異なる符合(即ち、50x,50y,50z)を用いて、それらを区別できるようにしている。また、図8では、左右方向から見た回動静軌跡Twと回動静軌跡Tsとを、それらが重ならないように横並びで記載しているが、実際には、図3,4から看取されるように、左右方向から見た回動静軌跡Twは回動静軌跡Tsと重なる位置に配置されている。図6,7と同様に、図8においても左側が前方となり、右側が後方となる。
図8に示すように、(a)では、回動静軌跡Twを辿る一対の移植用カップ50,50、即ち移植機構5W(図8では図示せず)が有する二個の移植用カップ50x,50yが、それぞれ一時停止している。また、回動静軌跡Tsを辿る移植用カップ50、即ち移植機構5S(図8では図示せず)が有する一個の移植用カップ50zも一時停止している。これらの停止位置は、それぞれ図6,7で示した位置P1,P2,P3に相当する。図8(a)において、移植用カップ50xと移植用カップ50zにはポット苗が供給されており、移植用カップ50yは圃場に苗を移植した後で空の状態である。
図8(a)を出発点として説明する。まずは、図8(b)のように移植用カップ50zを駆動し、その移植用カップ50zが保持していたポット苗を圃場に移植する。矢印Noutは、圃場に対するポット苗の移植を意味する。移植後の移植用カップ50zは、図8(c)のように移植用カップ50yと同じ位相まで回動し、後述する期間D1にて一時停止する。この移植用カップ50zの停止位置は、図7で示した位置P4に相当する。この(a)から(c)に至るまでの間、移植用カップ50x,50yは駆動せず、移植用カップ50zが駆動する。図9に示した期間D1では、移植用カップ50z(及び移植用カップ50x,50y)が一時停止しており、この長さに応じて株間を調整できる。苗取出爪61,61による苗トレイ41からのポット苗の取出しは、苗載台42の横送りが停止している期間D2に行われる。矢印Pickは、苗トレイ41からのポット苗の取出しを意味する。
次に、図8(d)のように移植用カップ50x,50yを駆動し、回動静軌跡Twの下死点を移植用カップ50xが通る際に、その移植用カップ50xが保持していたポット苗を圃場に移植するとともに、回動静軌跡Twの上死点を通る移植用カップ50yに苗取出爪61がポット苗を供給する。更に、移植用カップ50x,50yと同期させて移植用カップ50zも駆動し、移植用カップ50yと同時に移植用カップ50zにもポット苗を供給する。左右に並設された受継ぎ機構6,6が有する苗取出爪61,61は、互いに同時にポット苗を落下させる。矢印Ninは、移植用カップ50に対する苗取出爪61によるポット苗の供給を意味し、矢印Dropは、苗取出爪61によるポット苗の移植用カップ50への落下を意味する。ポット苗を受け取る位置は、上死点から前後に少し外れていてもよく、本実施形態では、回動静軌跡Twの上死点を少し過ぎた地点でポット苗を受け取るようにしている。移植後の移植用カップ50x、及び、苗供給後の移植用カップ50y,50zは、それぞれ図8(e)のように所定の位相まで回動し、期間D1にて一時停止する。ポット苗を受け取った移植用カップ50y,50zを一時停止させることで、ポット苗が安定して移植用カップ50へ納められる。
続いて、図8(f)のように移植用カップ50zを駆動し、その移植用カップ50zが保持していたポット苗を圃場に移植した後、図8(g)のように移植用カップ50xと同じ位相まで回動して一時停止する。その後、図8(h)のように移植用カップ50x,50y,50zを駆動し、移植用カップ50yが保持していたポット苗を圃場に移植するとともに、移植用カップ50x,50zにポット苗を供給し、図8(i)のように所定の位相まで回動して一時停止する。この(f)〜(i)の動作過程は、移植用カップ50xと移植用カップ50yとの位置関係が反対であることを除いて、上述した(b)〜(e)動作の過程と同じである。(i)は(a)と同じ状態であり、以降は上述した動作が繰り返される。
このようにして、左右に配置された複数の移植用カップ50x,50y,50zによって単一条への植付けが行われる。移植機構5Wが有する移植用カップ50x,50yの駆動は一株置きに停止し、移植用カップ50zの植付け位置は、その移植用カップ50x,50zにおける植付けピッチの間に配置される。このため、その植付けピッチの略半分の株間で植付けることができ、短株間での高速苗移植作業が可能になる。本実施形態では、左右に並設された移植機構5,5の各々の動作速度が従来通りであっても、その作業量を1.5倍増にできる。
本実施形態では、既述の通り、単一条に植付けを行うために左右に並設された二組の移植機構5,5及び受継ぎ機構6,6に対して、一つの苗載台42が備え付けられている。したがって、一方側に配置された受継ぎ機構6が有する苗取出爪61と、他方側に配置された受継ぎ機構6が有する苗取出爪61とが、互いに同じ苗トレイ41からポット苗を取出す。図8,9で示したように、一サイクルでのポット苗の消費量は左右の移植機構5,5で同じ(左右で二株ずつ)であり、苗トレイ41内のポット苗を半分ずつ均等に消費できることから、このような苗載台42の共用が可能となる。これにより、従来の苗移植機と同様のレイアウトが可能となり、苗載台42への苗トレイ41の供給が容易になるなど、オペレータにとって使い勝手に優れたものになる。
右側に位置する植付け条に対して並設された移植機構5,5は、左側に位置する植付け条に対して並設された移植機構5,5を平面視で左右対称に配置したこと以外は同じ構成を有するため、重複した説明を省略する。
本実施形態では、二条植えタイプの苗移植機を例示したが、これに限られず、一条植えタイプの苗移植機、または三条以上の複数条植えタイプの苗移植機であっても構わない。
本実施形態では、乗用型の苗移植機の例を示したが、これに限られず、歩行型の苗移植機であってもよい。
本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。