以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る車両用電子キーシステムの概略的な構成の一例を示す図である。図1に示すように車両用電子キーシステムは、車両Vに搭載されている車載システム100と、車両Vのユーザに携帯される携帯機200と、を備える。携帯機200は、車載システム100と対応付けられてあって、車両Vに対する固有のキーとしての機能を備えている。
本実施形態では一例として車両Vを、動力源としてエンジンのみを備えるエンジン車とするが、これに限らない。車両Vは、動力源としてエンジンとモータを備える、いわゆるハイブリッド車であってもよいし、モータのみを動力源として備える電気自動車であってもよい。また、車両Vは自動運転機能を備える車両であっても良い。
車載システム100と携帯機200はそれぞれ、互いに所定の周波数帯の電波を用いた無線通信を実施することで車載システム100が携帯機200を認証し、所定の車両制御を実施するシステム(いわゆるスマートエントリーシステム)を実現するための構成を有している。車載システム100が実施可能な車両制御とは、車両ドアの開施錠や、エンジンの始動などである。以降では便宜上、スマートエントリーシステムが提供する機能をスマート機能とも称する。
車載システム100が携帯機200を認証する処理とは、車載システム100にとって無線通信を実施している通信端末(以降、通信対象)が、当該車載システム100と対応付けられている正規の携帯機200であることを確認する処理である。認証が成功したということは、正規の携帯機200であると判定したことに相当する。
車載システム100による携帯機200の認証は、チャレンジ−レスポンス方式によって実施されればよい。認証処理の詳細は別途後述する。なお、認証処理の準備として、携帯機200と車載システム100のそれぞれには、認証処理に用いられる共通の暗号鍵が保存されている。また、携帯機200には固有の識別番号(以降、携帯機ID)が割り当てられており、車載システム100には、当該携帯機IDが登録されている。携帯機IDが前述の暗号鍵として利用することができる。なお、車載システム100にも固有の識別番号(以降、車両ID)が割り当てられており、携帯機200には当該車両IDが登録されている。
また、より好ましい態様として、車載システム100と携帯機200はそれぞれ、リモートキーレスエントリー(以降、RKE:Remote Keyless Entry)システムを実現するための構成を有している。RKEシステムとは、携帯機200がユーザによって操作されたボタンに応じたコマンド信号を車載システム100に送信するとともに、車載システム100が携帯機200から送信されたコマンド信号に応じた車両制御を実行するシステムである。例えば、車載システム100は、携帯機200から送信されてきたコマンド信号に基づいて、車両ドアの施錠状態を制御(つまり、施錠/開錠)する。前提として、携帯機200には、ユーザによって操作される少なくとも1つのボタン又はボタンに相当する構成(以降、操作部)が設けられている。
<車載システム100の構成>
ここでは車載システム100の構成について述べる。車載システム100は、図2に示すように認証ECU110、LFアンテナ120、タッチセンサ130、スタートボタン140、施錠ボタン150、ボディECU160、及びエンジンECU170を備える。
認証ECU110は、上述したスマートエントリーシステムを実現するための種々の処理を実行するECU(ECU:Electronic Control Unit)である。認証ECU110が車両用装置に相当する。認証ECU110には、動作モードとして、通常モードと警戒モードの2種類の動作モードが用意されている。
通常モードは、携帯機200の認証が成功したことに基づいて所定の車両制御を実施する動作モードである。警戒モードは、ここでは携帯機200の認証が成功した場合であっても車両制御を実行しない動作モードである。なお、他の態様として、警戒モードは、無線通信による認証処理そのものを停止する動作モードとしてもよい。認証処理が実行されなければ、認証成功に基づく車両制御も実行されなくなるためである。通常モードから警戒モードに移行する条件や、警戒モードから通常モードに移行する条件については別途後述する。
認証ECU110は、LFアンテナ120と電気的に接続されている。また、認証ECU110は、タッチセンサ130、スタートボタン140、施錠ボタン150、ボディECU160、及びエンジンECU170のそれぞれと、専用の信号線又は車両内に構築されている通信ネットワークを介して、相互通信可能に接続されている。
認証ECU110は、より細かい構成要素として、車両側制御部111、UHFアンテナ112、UHF送受信部113、及び、LF送信部114を備える。車両側制御部111は、CPU、RAM、ROM、I/O、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備えた、通常のコンピュータとして構成されている。ROMには、通常のコンピュータを車両側制御部111として機能させるためのプログラム(以降、車両用プログラム)等が格納されている。なお、認証ECU110は、CPUの代わりに、GPUやMPUを用いて実現されていても良い。さらにCPUやGPU、MPUを組み合わせて実現されていてもよい。
車両側制御部111は、携帯機200に送信するデータを生成してLF送信部114やUHF送受信部113に出力するとともに、UHF送受信部113が受信したデータを取得する。車両側制御部111は、CPUが車両用プログラムを実行することによって、スマートエントリーシステムを実現するための車両側の処理を実行する。この車両側制御部111についての詳細は別途後する。
UHFアンテナ112は、UHF(Radio Frequency)帯に属する所定の周波数の電波を受信するためのアンテナである。ここでのUHF帯は300MHz〜3GHzを指す。UHFアンテナ112は、携帯機200と双方向無線通信するためのアンテナである。ここでは一例としてUHFアンテナ112は、315MHzの電波を送受信するためのアンテナとして構成されているものとする。なお、UHFアンテナ112の動作周波数は、携帯機200との無線通信に使用する周波数として予め設計された周波数に設定されていればよい。携帯機200との無線通信に使用する周波数は、その他、920MHzや、2.4GHzなどであってもよい。
UHFアンテナ112は、受信した電波を電気信号に変換してUHF送受信部113に提供する。また、UHFアンテナ112はUHF送受信部113から入力された電気信号をUHF帯の電波に変換して空間へ放射する。なお、認証ECU110はUHFアンテナ112として、送信用のUHFアンテナ112と、受信用のUHFアンテナ112とを別々に備えていてもよい。また、1つのアンテナを用いて送信と受信の両方を実施するように構成されていても良い。加えて、受信ダイバーシティのために、UHFアンテナ112は複数設けられていても良い。
UHF送受信部113は、車両側制御部111から入力されたデータに対して符号化、デジタル変調、デジタルアナログ変換等といった所定の処理を施すことで、搬送波信号に変換する。そして、その搬送波信号をUHFアンテナ112に出力し、電波として放射させる。UHF送受信部113によるUHF信号の送信電力は、送信信号が少なくとも10m以上伝搬する電力レベルに設定されている。ここでの送信信号の伝搬距離とは、他の通信装置(例えば携帯機200)が復号可能な信号強度を保った状態で伝搬する距離である。復号可能な信号強度とは、データ通信可能な信号強度に相当する。送信信号の伝搬距離は送信電力を調整することで調整することができる。ここでは一例としてUHF送受信部113は、見通し内での送信信号の伝搬距離が25m程度となるように構成されている。
また、UHF送受信部113は、UHFアンテナ112から入力される信号に対して、アナログデジタル変換や、復調、復号などといった、所定の処理を施すことで、受信信号に含まれるデータを抽出する。そして、その抽出したデータを車両側制御部111に提供する。UHF送受信部113は車両側送受信部に相当する。
さらに、UHF送受信部113は、UHFアンテナ112で受信した信号の強度(いわゆるRSSI:Received Signal Strength Indication)を逐次検出するRSSI回路C1を備える。RSSI回路C1は、多様な回路構成で実現することができる。
UHF送受信部113は、携帯機200からの信号を受信した場合に、その受信信号に対してRSSI回路C1が検出した受信強度を車両側制御部111に提供する。このような構成は、換言すれば、RSSI回路C1が検出した受信強度のうち、携帯機200から送信された信号についての受信強度を、車両側制御部111に提供する構成に相当する。
受信信号の送信元が携帯機200であるか否かは多様な方法で判定することができる。例えば、携帯機200が特定の信号パターンを含む信号を送信するように構成されている場合には、受信信号に当該信号パターンが含まれているか否かによって、受信信号の送信元が携帯機200であるか否かを識別することができる。また、携帯機200が携帯機IDを含む信号を送信するように構成されている場合には、受信信号の所定の位置に携帯機IDが含まれているか否かによって受信信号の送信元が携帯機200であるか否かを識別することができる。その他、受信信号を復調又は復号してなるビット列が、携帯機200が送信しうる信号のフォーマットに則しているか否か、復調又は復号が正常に実施できた否かなど、種々の判定方法を援用可能である。
なお、本実施形態では一例としてUHF送受信部113が、受信信号の送信元が携帯機200であるか否かを識別する機能を備えるものとするが、これに限らない。受信信号の送信元が携帯機200であるか否かを識別する機能は車両側制御部111に設けられていても良い。その場合、UHF送受信部113は受信信号を復調してなる受信データを、受信強度と対応付けて車両側制御部111に提供するように構成されていれば良い。便宜上、UHF送受信部113が受信した携帯機200からの信号の受信強度のことを、車両側強度とも記載する。なお、RSSI回路C1はUHF送受信部113の外部に設けられていても良い。
LF送信部114は、車両側制御部111から入力されたデータに対して符号化、デジタル変調、デジタルアナログ変換等といった所定の処理を施すことで、搬送波信号に変換する。そして、その搬送波信号をLFアンテナ120に出力し、電波として放射させる。
LFアンテナ120は、認証ECU110(より具体的にはLF送信部114)から入力された搬送波信号を、LF(Low Frequency)帯に属する所定の周波数の電波に変換して空間へ放射するアンテナである。ここでのLF帯とは300kHz以下の周波数帯を指し、20kHz〜30kHzなどの周波数も含むものとする。ここでは一例としてLFアンテナ120の動作周波数は、125kHzに設定されている。もちろん、LFアンテナ120の動作周波数は適宜設計されればよく、例えば134kHzなどであってもよい。また、LFアンテナ120の動作周波数は、30kHz以下(例えば28kHz)に設定されていても良い。
LFアンテナ120は車載システム100全体として、車室内及び車両近傍領域に、所望のLF応答エリアを形成するように複数配置されている。LF応答エリアとは、車載システム100から送信されたLF帯の信号(以降、LF信号)に対して、携帯機200が応答信号を返送する範囲に相当する。例えばLF応答エリアは、車載システム100が送信するLF信号が、所定の信号強度を保って伝搬する範囲とすることができる。
LF応答エリアの内側と外側の境界線を定義するLF信号の信号強度は、例えば携帯機200が復号可能な強度とすることができる。また、LF応答エリアの内側と外側の境界線を定義するLF信号の信号強度は、復号可能な信号レベルの下限値(つまり復号限界値)よりも大きい値のうち、設計者によって適宜設計されたエリア判定閾値とすることもできる。そのような態様においては、携帯機200は、車載システム100からの信号を復号可能な受信強度で受信した場合であっても、その受信強度がエリア判定閾値以下となっている場合にはLF応答エリア外に存在すると判定し、応答を返さないものとする。
車載システム100全体としてのLF応答エリアとは、各LFアンテナ120が形成するLF応答エリアを組み合わせた(換言すれば統合してなる)範囲である。各LFアンテナ120が形成するLF応答エリアの大きさや形状は適宜設計されればよい。各LFアンテナ120が形成するLF応答エリアの大きさは、車両VからのLF信号の送信電力や、携帯機200での受信感度などによって調整可能である。
なお、車両近傍とは車両から例えば5m以内となる領域である。車両近傍はより好ましくはドアハンドルから1〜2m以内とすることが好ましい。LFアンテナ120は例えば運転席用のドアハンドル付近や、助手席用のドアハンドル付近、トランクのドアハンドル付近、車室内などに配置されている。本実施形態の車載システム100は、LFアンテナ120として、車室内用のLFアンテナ120と、車室外用のLFアンテナ120とを備えるものとする。車室内用のLFアンテナ120は、車室内(好ましくはその全域)をLF応答エリアとするLFアンテナ120であり、車室外用のLFアンテナ120とは、車室外の所定領域(例えばドア付近)をLF応答エリアとするLFアンテナ120である。
タッチセンサ130は、車両Vの各ドアハンドルに装備されて、ユーザがそのドアハンドルを触れていることを検出する。各タッチセンサ130の検出結果は、認証ECU110に逐次出力される。スタートボタン140は、ユーザがエンジンを始動させるためのプッシュスイッチである。スタートボタン140は、ユーザによってプッシュ操作がされると、その旨を示す制御信号を車両側制御部111に出力する。施錠ボタン150は、ユーザが車両Vのドアを施錠するためのボタンである。施錠ボタン150は、車両Vの各ドアハンドルに設けられればよい。施錠ボタン150は、ユーザによって押下されると、その旨を示す制御信号を、認証ECU110に出力する。
ボディECU160は、車両に搭載された種々のアクチュエータを制御するECUである。例えばボディECU160は、認証ECU110からの指示に基づき、車両に設けられたドアの施開錠を制御するための駆動信号を各車両ドアに設けられたドアロックモータに出力し、各ドアの施開錠を行う。また、ボディECU160は、車両に設けられた各ドアの開閉状態や、各ドアの施錠/開錠状態などを示す情報を取得する。なお、ドアの開閉状態は、カーテシスイッチによって検出されれば良い。
エンジンECU170は、エンジンの動作を制御するECUである。例えばエンジンECU170は、認証ECU110からエンジンの始動を指示する始動指示信号を取得すると、エンジンを始動させる。
<車両側制御部111の機能について>
車両側制御部111は、CPUが上述の車両用プログラムを実行することで実現する機能ブロックとして、図3に示すように車両情報取得部F1、車両状態判定部F2、認証処理部F3、モード制御部F4、車両制御部F5、及びRKE処理部F6を備える。また、車両側制御部111は、車両側強度取得部F7、保存処理部F8、第1変化量算出部F9、第2変化量算出部F10、及び整合性判定部F11を備える。車両側制御部111が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。
また車両側制御部111は、データの保存領域としての車両側強度記憶部M1と、携帯機側強度記憶部M2とを備える。車両側強度記憶部M1は、後述する車両側強度を記憶する構成であり、携帯機側強度記憶部M2は、後述する携帯機側強度を記憶する構成である。車両側強度記憶部M1は、書き換え可能な記憶媒体を用いて実現されている。例えば、車両側強度記憶部M1はRAMを用いて実現されている。携帯機側強度記憶部M2も同様に、RAM等の書き換え可能な記憶媒体を用いて実現されている。車両側強度記憶部M1が第1強度記憶部に相当し、携帯機側強度記憶部M2が第2強度記憶部に相当する。
車両情報取得部F1は、タッチセンサ130などの車両に搭載されたセンサやECUから、車両Vの状態を示す種々の情報(つまり車両情報)を取得する。車両情報としては、例えば、ドアハンドルにユーザが触れているか否か、ドアの開閉状態、ブレーキペダルが踏み込まれているか否か、スタートボタン140が押下されているか否か、各ドアの施錠状態などが該当する。
ドアハンドルにユーザが触れているか否かは、タッチセンサ130から取得することができ、スタートボタン140が押下されているか否かはスタートボタン140から出力される信号から判定できる。ドアの開閉状態や、各ドアの施錠/開錠状態などは、例えばボディECU160から取得できる。なお、ドアの開閉状態は、カーテシスイッチによって検出されれば良い。ブレーキペダルが踏み込まれているか否かは、ユーザがブレーキペダルを踏み込みこんでいる量を検出するブレーキペダルセンサによって検出されればよい。車両情報に含まれる情報は、上述したものに限らない。図示しないシフトポジションセンサが検出するシフトポジションや、パーキングブレーキの作動状態等も車両情報に含まれる。
車両状態判定部F2は、車両情報取得部F1が取得する車両情報に基づいて、車両Vの状態を判定する構成である。車両状態判定部F2は、より細かい機能ブロックとして、駐車判定部F2Aを備える。駐車判定部F2Aは、車両情報取得部F1が取得する車両情報に基づいて、車両Vが駐車されたか否かを判定する。例えば駐車判定部F2Aは、エンジンがオフであり、全てのドアが閉じられている状態において、全ドアが施錠された場合に、駐車されたと判定する。もちろん、駐車されているか否かの判定アルゴリズムとしては多様なアルゴリズムを採用することができる。
認証処理部F3は、LF送信部114及びUHF送受信部113と協働し、携帯機200との無線通信による認証処理を実施する。認証処理部F3が認証処理を実施する条件は、認証処理が成功した場合に実施する車両制御の内容に合わせて適宜設計されれば良い。認証処理部F3は、大きくは、携帯機200が車室外に存在する状態を想定して実施する車室外認証処理と、携帯機200が車室内に存在することを確認するための車室内認証の、2種類の異なる場面を想定した認証処理を実施する。
車室外認証には、例えば、駐車されている車両にユーザが搭乗するための認証(以降、搭乗用認証)や、車両Vを施錠するための認証(以降、施錠用認証)などが含まれる。搭乗用認証は、車両ドアのロックを開錠/開錠準備状態に設定するための認証に相当する。開錠準備状態は、ユーザがドアのタッチセンサ130に触れるだけでドアを開錠することができる状態である。また、車室内認証には、例えば、スタートボタン140のプッシュ操作に基づいてエンジンを始動させるための認証(以降、始動用認証)が含まれる。
例えば認証処理部F3は、車両Vが駐車されている場合、搭乗用認証を実施するための準備処理として、LF送信部114と協働し、車室外用のLFアンテナ120から携帯機200に対してLF応答要求信号を所定の周期(例えば200ミリ秒)で送信する。認証処理部F3は、LF応答要求信号に対する携帯機200からの応答信号を受信することによって、携帯機200である可能性がある通信端末が、車両周辺に存在することを認識(換言すれば検出)する。なお、携帯機200から車載システム100への応答には、UHF帯の電波が用いられる。つまり、携帯機200が返送する応答信号はUHF帯の無線信号である。
認証処理部F3は、LF応答要求信号に対する応答信号を受信した場合、携帯機200を認証するための信号(つまり認証用信号)をLF送信部114に送信させる。認証用信号には、チャレンジコードが含まれている。チャレンジコードは、携帯機200を認証するためのコードである。チャレンジコードは、乱数表など用いて生成された乱数とすればよい。別途後述するように携帯機200はチャレンジコードを受信した場合、予め登録されている暗号鍵で当該チャレンジコードを暗号化し、その暗号化したコード(以降、レスポンスコード)を含む信号(以降、レスポンス信号)を返送する。つまり、認証用信号は、携帯機200に対してレスポンス信号の返送を要求する信号として機能する。
また、認証処理部F3は、認証用信号を送信するとともに、自分自身が保持する暗号鍵を用いてチャレンジコードを暗号化したコード(以降、照合用コード)を生成する。そして、返送されてきたレスポンスコードが、照合用コードと一致する場合に、通信相手が正規の携帯機200であると判定する(つまり認証成功と判定する)。
なお、本実施形態では一例としてLF応答要求信号に対する応答信号を受信した場合に、認証用信号を送信する態様とするが、これに限らない。認証用信号をLF応答要求信号として定期送信してもよい。換言すれば、LF応答要求信号にチャレンジコードを含ませることで、LF応答要求信号を認証用信号として機能させても良い。認証用信号の送信からコードの照合までが認証処理に相当する。
以上では、搭乗用認証処理の実行条件及び認証処理の具体的な流れの一例を開示したが、搭乗用認証処理の実行条件は上記に限らず、多様な条件を設定することができる。また、認証処理の具体的な手順も多様なものを採用することができる。始動用の認証処理や、施錠用の認証処理を実行する条件も適宜設計されれば良い。
例えば始動用認証処理は、スタートボタン140の押下されたことに基づいて実施されればよい。施錠用認証処理は、施錠ボタン150が押下されたことに基づいて実施されればよい。つまり、認証処理部F3は、スタートボタン140が押下された時や、及び、施錠ボタン150が押下された時など、所定のイベントが発生したときに認証処理を実行する。ユーザによる施錠ボタン150の押下などのイベントの発生は、車両状態判定部F2によって検出されればよい。
なお、始動用認証等の車室内認証を実施するためのチャレンジコード等は、車室内用のLFアンテナ120から送信するように設定されている。これにより、ユーザが車室内に存在しない場合に、車室内認証処理が成功する恐れを低減することができる。また、施錠用認証等の車室外認証を実施するためのチャレンジコード等は、車室外用のLFアンテナ120から送信するように設定されている。これにより、ユーザが車両周辺に存在しない場合に、車室外認証処理が成功する恐れを低減できる。
モード制御部F4は、後述する整合性判定部F11の判定結果等に基づいて、認証ECU110の動作モードを切り替える構成である。モード制御部F4は、後述するモード制御処理の一環として、UHF送受信部113と協働し、携帯機200に対して応答信号の返送を要求するUHF帯の無線信号(以降、UHF応答要求信号)を所定の送信周期(以降、第1送信周期)で定期送信する。モード制御部F4は、UHF応答要求信号を第1送信周期で定期送信するためのサブ機能として、第1送信タイマを備える。
第1送信タイマは、前回UHF応答要求信号を送信からの経過時間を計測するタイマである。第1送信タイマは、UHF応答要求信号を送信したことをトリガとしてカウントを開始し、カウント値が第1送信周期に相当する値となった場合に満了状態となる。ただし、タイマ満了となるまでに所定の停止条件が充足された場合には、満了を待たずに停止される。例えば、携帯機200からの応答信号を受信できない場合や、後述するサンプリングカウンタNの値が、所定のサンプリング打切回数Mを超過した場合に、終了条件が充足したとみなして、第1送信タイマを停止する。
モード制御部F4は、第1送信タイマが満了となる度にUHF応答要求信号を送信する。第1送信周期の具体的な値は適宜設計されればよく、ここでは5秒に設定されている。もちろん、第1送信周期は、2秒や、3秒、4秒、6秒などであってもよい。なお、本実施形態では一例として第1送信タイマは、0を初期値とするカウントアップ形式でUHF応答要求信号を送信してからの経過時間を計測するものとするが、これに限らない。カウントダウン形式でUHF応答要求信号を送信してからの経過時間を計測するものであってもよい。
また、モード制御部F4は、モード制御処理の一環としてUHF送受信部113と協働して、監視開始信号を送信する。監視開始信号はUHF応答要求信号の一種である。さらに、モード制御部F4は、通常モードから警戒モードに設定した場合、UHF送受信部113と協働し、携帯機200に対して認証ECU110の動作モードが警戒モードとなったことを示す信号(以降、警戒モード通知)を送信する。
なお、モード制御部F4は、車両が施錠された場合や、イグニッション電源がオンとなった場合などに動作モードを通常モードに設定するものとする。その他、モード制御部F4の作動については別途後述する。
車両制御部F5は、認証ECU110が通常モードで動作している状態において、認証処理部F3による認証処理が成功したことに基づいて、その認証が成功した時点での車両Vの状態やユーザ操作に応じて予め設定されている車両制御を実施する構成である。
例えば車両制御部F5は、認証ECU110の動作モードが通常モードであり、且つ、車両Vのドアが施錠されている状態での認証処理(つまり搭乗用認証処理)が成功した場合、車両Vのドアロック機構を開錠準備状態に設定する。開錠準備状態とは、ユーザがドアのタッチセンサ130に触れるだけでドアを開錠することができる状態である。そして、タッチセンサ130からユーザによってタッチされていることを示す信号が入力された場合に、ボディECU160と協働してドアの鍵を開錠する。
また、車両制御部F5は、認証ECU110の動作モードが通常モードであり、且つ、エンジンが停止している状態において、始動用認証が成功した場合、エンジンECU170と連携してエンジンを始動させる。認証ECU110の動作モードが通常モードであって且つ施錠用認証が成功した場合には、ボディECU160と協働して車両Vの全ドアを施錠する。その他、車両制御部F5が実施する車両制御の内容は、認証処理が成功したときの場面(換言すれば車両Vの状態)に合わせて適宜設計される。換言すれば、認証処理部F3が認証処理を実行する条件は、車両制御部F5が実行する車両制御の内容に応じて設計されている。
RKE処理部F6は、上述のRKEシステムを実現するための車両側の処理を実施する。具体的には、携帯機200から送信されたコマンド信号の内容を解析し、当該コマンド信号に対応する車両制御を、ボディECU160等と協働して実施する。コマンド信号に対応する車両制御とは、例えば、ドアの施開錠や、照明の点灯、車両に搭載されている空調システムの始動などである。
車両側強度取得部F7は、UHF送受信部113から車両側強度を逐次取得する構成である。取得時刻が異なる複数の車両側強度は、例えば、最新のデータが先頭となるように時系列順にソートされて車両側強度記憶部M1に保存されれば良い。車両側強度記憶部M1に格納されてから一定時間経過したデータは順次削除されていけばよい。データの保管期間は、例えば後述する第1送信周期を5倍〜10倍した時間とすればよい。保存処理部F8や、第1変化量算出部F9、第2変化量算出部F10、整合性判定部F11についての詳細は別途後述する。
<携帯機200の構成>
次に、携帯機200の構成について述べる。携帯機200は、図4に示すように、LF通信モジュール210、UHF通信モジュール220、発光部230、動きセンサ240、ボタン250、及び携帯機側制御部260を備える。携帯機側制御部260と、LF通信モジュール210、UHF通信モジュール220、発光部230、及び動きセンサ240のそれぞれとは通信可能に接続されている。
LF通信モジュール210は、車載システム100から送信されるLF信号を受信するための構成である。LF通信モジュール210は、LFアンテナ211と、LF受信部212とを用いて実現される。LFアンテナ211は、LF帯(ここでは125kHz)の電波を受信するためのアンテナである。LFアンテナ211は、LF受信部212と接続されており、受信した電波を電気信号に変換してLF受信部212に出力する。
LF受信部212は、LFアンテナ211から入力される電気信号に対して、アナログデジタル変換や、復調、復号などといった、所定の受信処理を実施する。LF受信部212は、受信信号に含まれるデータを抽出して携帯機側制御部260に提供する。LF受信部212は例えば上記の処理の一部又は全部を実施する集積回路(つまりIC)を用いて実現されている。
UHF通信モジュール220は、携帯機200が車載システム100とUHF帯の電波を用いて通信するための構成である。UHF通信モジュール220は、UHFアンテナ221、UHF送信部222、及びUHF受信部223を用いて実現される。
UHFアンテナ221は、UHF帯(ここでは315MHz)の電波を送受信するためのアンテナである。UHFアンテナ221は、UHF送信部222及びUHF受信部223のそれぞれと電気的に接続されており、UHF送信部222から入力された電気信号を電波に変換して放射する。また、UHFアンテナ221は、受信した電波を電気信号に変換してUHF受信部223に提供する。
UHF送信部222は、携帯機側制御部260から入力されたベースバンド信号に対して符号化、変調、デジタルアナログ変換等といった所定の処理を施すことで、ベースバンド信号を搬送波信号に変換する。そして、その生成した搬送波信号を、UHFアンテナ221に出力し、UHF帯の電波として放射させる。UHF送信部222は例えば上記の処理の一部又は全部を実施する集積回路(つまりIC)を用いて実現されている。
なお、UHF送信部222は、UHFアンテナ221からの送信信号が少なくとも10m以上伝搬するように構成されている。ここでの送信信号の伝搬距離とは、他の通信装置(例えば車載システム100)が復号可能な信号強度を保った状態で伝搬する距離である。ここでは一例としてUHF送信部222は、見通し内での送信信号の伝搬距離が25m程度となるように送信電力等は設定されている。UHF送信部222は携帯機側送信部に相当する。
UHF受信部223は、UHFアンテナ221から入力される信号に対して、アナログデジタル変換や、復調、復号などといった、所定の受信処理を施すことで、受信信号に含まれるデータを抽出する。そして、その抽出したデータを携帯機側制御部260に提供する。なお、UHFアンテナ221とUHF受信部223との間には、UHF受信部223が備える機能の一部を代替するアナログ回路や、増幅器、ノイズフィルタ回路等が設けられていても良い。UHF受信部223は携帯機側受信部に相当する。
さらに、UHF受信部223は、UHFアンテナ221で受信した信号の強度を逐次検出するRSSI回路C2を備える。RSSI回路C2は、多様な回路構成で実現することができる。UHF受信部223は、車載システム100からの信号を受信した場合に、その受信信号に対してRSSI回路C2が検出した受信強度を携帯機側制御部260に提供する。このような構成は、換言すれば、RSSI回路C2が検出した受信強度のうち、車載システム100から送信された信号についての受信強度を、携帯機側制御部260に提供する構成に相当する。
受信信号の送信元が車載システム100であるか否かは多様な方法で判定することができる。例えば、車載システム100が特定の信号パターンを含む信号を送信するように構成されている場合には、受信信号に当該信号パターンが含まれているか否かによって、受信信号の送信元が車載システム100であるか否かを識別することができる。また、車載システム100が車両IDを含む信号を送信するように構成されている場合には、受信信号に車両IDが含まれているか否かによって受信信号の送信元が車載システム100であるか否かを識別することができる。その他、受信信号を復調又は復号してなるビット列が予め設定されているフォーマットに則しているか否かなど、種々の判定方法を援用可能である。
なお、本実施形態では一例としてUHF受信部223が、受信信号の送信元が車載システム100であるか否かを識別する機能を備えるものとするが、これに限らない。受信信号の送信元が車載システム100であるか否かを識別する機能は携帯機側制御部260に設けられていても良い。その場合、UHF受信部223は受信信号を復調してなる受信データを、受信強度と対応付けて携帯機側制御部260に提供するように構成されていれば良い。便宜上、UHF受信部223が受信した車載システム100からの信号の受信強度のことを、携帯機側強度とも記載する。なお、RSSI回路C2はUHF受信部223の外部に設けられていても良い。
発光部230は、携帯機側制御部260からの指示に基づいて発光する装置である。携帯機側制御部260は、後述するように認証ECU110が警戒モードで動作している場合に発光部230を発光させる。つまり、発光部230は、認証ECU110が警戒モードで動作していることをユーザに通知するインジケータとして構成されている。
なお、本実施形態では一例として、認証ECU110の動作モードをユーザに通知するための構成(以降、報知装置)として発光部230を採用しているが、これに限らない。報知装置としては、ディスプレイや、スピーカ、バイブレータ等を採用することができる。スピーカにはブザーも含まれる。また、複数種類のデバイスを報知装置として備えていてもよい。
動きセンサ240は、携帯機200(ひいてはユーザ)が動いていることを検知するためのセンサである。ユーザが動いている場合、携帯機200にはユーザの動きに由来する加速度が作用する。動きセンサ240は、例えば、加速度センサを用いて実現されればよい。動きセンサ240としての加速度センサとしては、例えば互いに直交する3つの軸方向毎の加速度を検出する3軸加速度センサを採用することができる。もちろん、動きセンサ240としての加速度センサは2軸加速度センサであってもよいし、1軸加速度センサであってもよい。動きセンサ240の出力信号は、携帯機側制御部260に逐次入力される。
なお、動きセンサ240は、ジャイロセンサや地磁気センサであってもよい。ユーザの動きに伴って生じる物理的な状態量の変化を検出するものであればよい。また、動きセンサ240はユーザの歩行等の相対的に微弱な振動によって固定接点に対する可動接点の接触状態が変化する(換言すれば振動する)ように構成されたスイッチ素子であってもよい。そのようなスイッチ素子の出力は、ユーザが携帯機200を携帯して歩行している場合、端子が接触したり離れたりを繰り返すため、パルス状の信号を出力する。一方、携帯機200が机の上や棚等といった安定した場所に置かれている場合には、端子間の接触状態は、接触/非接触の何れか一方で安定するため、パルス状の信号は出力されない。すなわち、上記のスイッチ素子も動きセンサ240として使用することができる。
ボタン250は、RKEシステムとして実装されている機能をユーザが利用するためのボタンである。携帯機200はそれぞれ異なる機能が割り当てられた複数のボタン250を備えることができる。例えば携帯機200は、全ドアを開錠するためのボタン250、及び、全ドアを施錠するためのボタン250を備える。種々のボタン250は、ユーザによって押下された場合に、そのボタン250が押下されたことを示す制御信号を携帯機側制御部260に出力する。携帯機側制御部260は、ボタン250としてのボタンから入力される制御信号によって、ドアの施錠/開錠といった施錠状態を制御するためのユーザ操作が実行されたことを検出するとともに、その指示内容を特定できる。
携帯機側制御部260は、コンピュータを主体として構成されている。すなわち、携帯機側制御部260は、図示しないCPU、RAM、ROM、I/O、クロック発振器等を用いて実現されている。ROMには通常のコンピュータを、携帯機側制御部260として機能させるためのプログラム(以降、携帯機用プログラム)が格納されている。携帯機側制御部260は、CPUがROMに格納されている携帯機用プログラムを実行することによって、スマートエントリーシステム等を実現する。ROMには上記プログラムの他、チャンレンジコードからレスポンスコードを生成するために用いられる暗号鍵等が格納されている。なお、携帯機側制御部260は、CPUの代わりに、GPUやMPU、ICを用いて実現されていても良い。さらには、CPUやGPU、MPU、ICを組み合わせて実現されていてもよい。携帯機側制御部260の詳細な機能については次に説明する。
<携帯機側制御部260の機能について>
携帯機側制御部260は、上述の携帯機用プログラムを実行することで実現する機能ブロックとして、図5に示すように、携帯機側強度取得部G1、送信信号生成部G2、及び報知処理部G3を備える。なお、携帯機側制御部260が備える機能ブロックの一部又は全部は、1つ又は複数のICチップなどを用いてハードウェアとして実現されていても良い。
携帯機側強度取得部G1は、RSSI回路C2が検出した携帯機側強度を逐次取得する。取得時刻が異なる複数の携帯機側強度は、例えば、最新のデータが先頭となるように時系列順にソートされてRAMに保存されれば良い。RAMに格納されてから一定時間経過したデータは順次削除されていけばよい。
送信信号生成部G2は、車載システム100に送信する信号を生成し、UHF通信モジュール220に出力する構成である。送信信号生成部G2が応答信号生成部に相当する。例えば送信信号生成部G2は、LF通信モジュール210が車載システム100からのLF応答要求信号を受信した場合には、当該受信信号に対する応答として送信するべき所定の信号を生成する。より具体的にはLF通信モジュール210がチャレンジ信号を受信した場合には、携帯機IDを用いて生成したレスポンスコードを含むレスポンス信号を生成する。
また、送信信号生成部G2は、ボタン250からユーザによって押下されたことを示す制御信号が入力された場合には、その制御信号を出力したボタン250に対応する車両制御を実行するように指示するコマンド信号を生成する。例えば、全ドアを開錠するためのボタン250が押下された場合には、全ドアを開錠するように指示するコマンド信号(以降、開錠コマンド信号)を生成する。また、全ドアを施錠するためのボタン250が押下された場合には、全ドアを施錠するように指示するコマンド信号を生成する。
さらに、送信信号生成部G2は、UHF通信モジュール220がUHF応答要求信号を受信した場合には、応答信号として、強度報告信号を生成する。ここでのUHF応答要求信号には前述の通り、監視開始信号も含まれる。強度報告信号は、携帯機側強度取得部G1によって取得されている、当該強度報告信号の生成のトリガとなったUHF応答要求信号の受信強度(つまり携帯機側強度)を示す信号である。強度報告信号が示す携帯機側強度は、別の観点によれば、RAMに保存されている最新の携帯機側強度に相当する。送信信号生成部G2は、UHF応答要求信号を受信する度に、そのUHF応答要求信号の受信強度を示す強度報告信号を生成する。
送信信号生成部G2が生成した種々の信号は、UHF通信モジュール220に出力されて、UHF帯の無線信号として送信される。なお、送信信号生成部G2が生成する信号の種類は上述したものに限らない。例えば、送信信号生成部G2は必要に応じて動きセンサ240の検出結果を示す動き報告信号を生成する。
報知処理部G3は、UHF通信モジュール220が警戒モード通知を受信したことに基づいて、発光部230を所定の発光パターンで発光させる。これにより、認証ECU110が警戒モードであることをユーザに報知する。なお、携帯機200が報知装置としてディスプレイを備える場合には、報知処理部G3はディスプレイに所定のアイコン画像やテキストを表示することによって、認証ECU110が警戒モードであることをユーザに報知してもよい。また、携帯機200が報知装置としてスピーカを備える場合には、警報音や音声メッセージをスピーカから出力させることで、認証ECU110が警戒モードであることをユーザに報知してもよい。バイブレータを所定の振動パターンで振動させることによってユーザに認証ECU110が警戒モードであることを報知しても良い。
<モード制御処理>
次に図6及び図7に示すフローチャートを用いて認証ECU110が実施するモード制御処理について説明する。モード制御処理は、認証ECU110の動作モードを通常モードから警戒モードに切り替えるための処理である。図6及び図7に示すフローチャートは、例えば駐車判定部F2Aによって車両Vが駐車されたと判定された場合に開始されればよい。なお、他の態様として、ユーザによって施錠ボタン150が押下された場合に開始してもよい。また、施錠用認証処理が成功したことに基づいて車両Vが施錠された場合に開始されてもよい。シフトポジションがパーキング位置に設定されたことに基づいて開始されてもよい。モード制御処理の開始トリガは適宜設計されればよい。本フロー開始時において認証ECU110の動作モードは、通常モードに設定されている。
まずステップS101では、以降の処理で用いる変数パラメータであるサンプリングカウンタNを0に設定し(つまり初期化して)、ステップS102に移る。サンプリングカウンタNは、UHF応答要求信号を何回送信したかを示すパラメータである。サンプリングカウンタは0以上の整数が設定される。
なお、認証ECU110はUHF応答要求信号を送信するとともに、携帯機200からの応答信号としての強度報告信号を受信することによって、携帯機側強度と車両側強度のそれぞれを取得することができる。よって、サンプリングカウンタNの設定値は、各装置での相手側装置からのUHF信号の受信強度を何回サンプリングしたかを示すパラメータとも言える。
ステップS102ではモード制御部F4がUHF送受信部113と協働して、監視開始信号を送信してステップS103を実行する。監視開始信号は、これから所定の第1送信周期で定期的にUHF応答要求信号を送信することを携帯機200に通知するUHF応答要求信号である。監視開始信号は、後述するステップS113で送信するUHF応答要求信号と同様の信号とすることができる。
ステップS103では第1送信タイマによるカウントをスタートさせて(換言すれば起動して)ステップS104を実行する。なお、ステップS103実行時、第1送信タイマのカウント値は所定の初期値からスタートされるものとする。本実施形態では第1送信タイマはカウントアップ形式のタイマであるため、初期値は0とすることができる。
ステップS104ではモード制御部F4が、UHF送受信部113と協働し、携帯機200からの強度報告信号を受信したか否かを判定する。携帯機200からの強度報告信号を受信した場合とは、具体的にはUHF送受信部113から強度報告信号に相当するデータが入力された場合に相当する。携帯機200からの強度報告信号を受信した場合にはステップS104を肯定判定してステップS105を実行する。
一方、UHF応答要求信号を送信してから所定の応答待機時間経過しても、強度報告信号を受信しなかった場合には、モード制御部F4は、携帯機200からの強度報告信号は受信できなかったと判定する。そのような場合、例えばモード制御部F4は、第1送信タイマの満了を待たずにUHF応答要求信号を再送する。応答待機時間は、第1送信周期よりも短い範囲において適宜設計されれば良い。また、携帯機200がUHF応答要求信号を受信してから強度報告信号を送信するまでに要する時間の想定値よりも十分に長い時間とすることが好ましい。例えば応答待機時間は1秒などとすればよい。
強度報告信号の受信しなかったことをトリガとするUHF応答要求信号の再送を実行する回数には、上限値(以降、再送上限回数)が設定されていることが好ましい。再送上限回数は例えば3回とすればよい。再送上限回数だけUHF応答要求信号を送信しても携帯機200からの応答が得られない場合には、ステップS120を実行するものとする。
なお、本実施形態では一例として、ステップS104において強度報告信号を受信できなかった場合には、再送上限回数までUHF応答要求信号を再送するものとするがこれに限らない。強度報告信号を受信できなかった場合にはステップS120を実行するように構成されていても良い。つまり再送上限回数は0回であってもよい。なお、他の態様として、携帯機200からの応答が得られない場合には、ステップS120を実行するのではなく、本フローを終了するように構成されていてもよい。
ステップS105では車両側強度取得部F7が、受信した強度報告信号自体についての受信強度(つまり車両側強度)を車両側強度記憶部M1に保存する。またステップS105では、保存処理部F8が、受信した強度報告信号に示されている携帯機側強度を車両側強度とは区別して携帯機側強度記憶部M2に保存する。保存処理部F8は、取得した携帯機側強度に対して取得時刻をメタデータとして付与して携帯機側強度記憶部M2に保存する。なお、携帯機側強度に付与されるメタデータは、時刻情報に代わって管理番号であってもよい。取得時刻が異なる複数の携帯機側強度は、例えば、最新のデータが先頭となるように時系列順にソートされて携帯機側強度記憶部M2に保存されれば良い。ステップS105での処理が完了するとステップS106を実行する。
ステップS106ではモード制御部F4が、サンプリングカウンタNの値を1つ増加させ(つまりインクリメントし)、ステップS107を実行する。ステップS107ではモード制御部F4が、サンプリングカウンタNが2以上であるか否かを判定する。N≧2である場合にはステップS108を肯定判定してステップS108を実行する。一方、N=1である場合にはステップS107を否定判定してステップS112を実行する。
ステップS108では第1変化量算出部F9が、車両側強度記憶部M1に保存されている車両側強度の時系列データに基づいて、第1強度変化量ΔP1を算出する。具体的には、今回受信した強度報告信号についての車両側強度(以降、最新車両側強度)から、前回受信した強度報告信号についての車両側強度(以降、前回車両側強度)を減算することで、第1強度変化量ΔP1を算出する。なお、第1強度変化量ΔP1は、最新車両側強度から前回車両側強度を減算した値を第1送信周期で除算した値としても良い。そのような算出方法によって求まる第1強度変化量ΔP1は、車両側強度の1秒当たりの強度の変化量を示すパラメータとして機能する。
また、ステップS108では第2変化量算出部F10が、携帯機側強度記憶部M2に保存されている携帯機側強度の時系列データに基づいて、第2強度変化量ΔP2を算出する。具体的には、今回受信した強度報告信号に示されていた携帯機側強度(以降、最新携帯機側強度)から、前回受信した強度報告信号に示されていた携帯機側強度(以降、前回携帯機側強度)を減算することで、第2強度変化量ΔP2を算出する。
なお、仮に第1変化量算出部F9が第1強度変化量ΔP1を1秒当たりの車両側強度の変化量として算出する場合には、第2変化量算出部F10も、第2強度変化量ΔP2を1秒当たりの携帯機側強度の変化量として算出するものとする。すなわち、第2強度変化量ΔP2を、最新携帯機側強度から前回携帯機側強度を減算した値を第1送信周期で除算することによって求める。ステップS108での処理が完了するとステップS110を実行する。
ステップS109では整合性判定部F11が、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2とを比較して、両者が整合しているか否かを判定する。なお、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2が整合しているか否かを判定することは、換言すれば、車両側強度と携帯機側強度の単位時間当りの変化の傾向が整合しているか否かを判定することに相当する。
例えば整合性判定部F11は、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2の差の絶対値(以降、乖離度)を算出する。そして、乖離度が所定の許容閾値Th以上となっている場合に、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2とが整合していないと判定する。また、乖離度が所定の許容閾値Th未満となっている場合には、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2が整合していると判定する。
ここで用いる許容閾値Thは、マルチパス等の影響による受信強度の揺らぎ幅よりも大きい値に設定されている。許容閾値Thが小さすぎると、マルチパス等のゆらぎによって認証ECU110が警戒モードとなってしまい、ユーザの利便性が損なわれるためである。一方で、許容閾値Thが大きすぎると、携帯機200からの応答信号が中継器によって増幅されている場合などであっても、認証ECU110が警戒モードになりにくくなってしまう。故に、許容閾値Thの値は、携帯機200からの応答信号が中継器によって増幅されている場合などの、通常のユースケースでは生じにくいレベルの乖離度が生じている場合には、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2は整合していないと判定する値に設定されていることが好ましい。許容閾値Thの具体的な値は、上記の技術的思想に基づいて実試験の結果に基づき設計されている。本実施形態では一例として許容閾値Thは適宜設計された一定の値に設定されている。
なお、他の態様として整合性判定部F11は、車両側強度に応じて許容閾値Thを動的に決定するように構成されていてもよい。例えば、許容閾値Thは、第1強度変化量ΔP1の絶対値に所定の重み係数αを乗じた値とすることができる。重み係数αは例えば0.05や0.1、0.2、0.4、0.5などとすることができる。重み係数αを0.05に設定した構成は、第1強度変化量ΔP1の絶対値を0.05倍した値を許容閾値Thとして採用する構成に相当する。
第1強度変化量ΔP1の絶対値をα倍した値を許容閾値Thとして適用する構成においては、整合性判定部F11は、乖離度が第1強度変化量ΔP1の絶対値のα倍未満である場合に、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2の変化の傾向が整合していると判定する。また、乖離度が第1強度変化量ΔP1の絶対値のα倍以上である場合に、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2が整合していないと判定する。
ところで、第1強度変化量ΔP1の絶対値をα倍した値を許容閾値Thとして適用する構成では、第1強度変化量ΔP1の絶対値が相対的に小さい場合、許容閾値Th自体も非常に小さい値となることが想定される。当然、許容閾値Thが非常に小さいと、微小な乖離度で、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2の変化の傾向が整合していないと判定してしまうおそれがある。
そこで、図8に示すように許容閾値Thには下限値が設けられていることが好ましい。図8は、第1強度変化量ΔP1の絶対値が所定の切替閾値dP1以上である場合には、第1強度変化量ΔP1をα倍した値を許容閾値Thとして採用する一方、第1強度変化量ΔP1の絶対値が切替閾値dP1未満である場合には切替閾値dP1をα倍した値を許容閾値Thとして採用する態様を示すグラフである。切替閾値dP1の具体的な値は適宜設計されれば良い。
なお、以上では第1強度変化量ΔP1をα倍した値を許容閾値Thとして採用する構成を開示したが、これに限らない。また、許容閾値Thは図9に示すように、第1強度変化量ΔP1が小さくなるにつれて所定の下限値βに収束するように曲線的に設計されていても良い。第1強度変化量ΔP1に対応する許容閾値Thは、マップや関数として予め設定しておくことができる。
ステップS109での判定処理の結果、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2が整合していると判定した場合には、ステップS110を実行する。一方、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2が整合していないと判定した場合には、ステップS114を実行する。
ステップS110ではモード制御部F4が、予め設定されている滞在型警戒条件を充足しているか否かを判定する。滞在型警戒条件は、ユーザが車両VのUHF通信エリア内に、相対的に長い時間滞在していることに基づいて認証ECU110の動作モードを警戒モードに設定する条件である。UHF通信エリアとは、認証ECU110がUHF帯の電波を用いて携帯機200と無線通信可能な範囲であって、ここでは車両Vから25m以内に設定されている。
これまでのリレーアタックの発生状況を鑑みると、ユーザが車両を降車後、まだUHF通信エリア内に滞在している(換言すれば車両からまだ十分に離れていない)状況においてリレーアタックを受けることが多い傾向がある。滞在型警戒条件の導入は、上記の知見に着眼して創出した構成である。
ここでは一例として、第1強度変化量ΔP1及び第2強度変化量ΔP2がともにk回連続して0とみなせるレベル(以降、ゼロレベル)で推移している場合には、滞在型警戒条件が充足されたと判定する。第1強度変化量ΔP1及び第2強度変化量ΔP2がともにk回連続してゼロレベルとなっている場合とは、車両に対するユーザの相対位置が変化していない、つまりユーザが車両周辺で立ち止まっている状況を意味するためである。第1強度変化量ΔP1及び第2強度変化量ΔP2がゼロレベルであるとみなすための閾値は適宜設計されればよい。
なお、kは適宜設計される自然数であって、例えばk=5である。もちろん他の態様として、kの設定値は、4、8、10などとすることもできる。ゼロレベルとする範囲は、受信強度の変化がないとみなせる範囲であって、具体的な上限値や下限値は適宜設計されればよい。なお、第1強度変化量ΔP1及び第2強度変化量ΔP2がともにk回連続してゼロレベルで推移している場合とは、換言すれば、直近k回分の第1強度変化量ΔP1及び第2強度変化量ΔP2が何れもゼロレベルとなっている場合に相当する。
なお、滞在型警戒条件が充足されたと判定する場合は、上記の例に限らず、多様な条件を設定可能である。例えば他の態様として、第1強度変化量ΔP1及び第2強度変化量ΔP2がともにk回連続してゼロレベルとなっており、且つ、動きセンサ240がユーザの動きを検出している場合に、滞在型警戒条件が充足されたと判定するように構成されていても良い。
動きセンサ240がユーザの動きを検出しているか否かを示すデータは、例えば、第1強度変化量ΔP1及び第2強度変化量ΔP2がともにk回連続してゼロレベルとなっているという第1の条件が充足されたタイミングで携帯機200に対して動きセンサ240の検出結果を報告するように指示する動き報告指示信号を送信することで取得すればよい。そのような構成では携帯機200は、認証ECU110からの動き報告指示信号を受信した場合、動きセンサ240の検出結果を示す応答信号(つまり動き報告信号)を生成して返送するように構成されているものとする。
なお、携帯機200が、UHF応答要求信号に対する応答信号として、携帯機側強度と動きセンサ240の検出結果の両方を含む信号を返送するように構成されていても良い。そのような態様によっても、認証ECU110は動きセンサ240がユーザの動きを検出しているか否かを判定できる。動きセンサ240の検出結果は、ユーザが動いているか否かの1ビットで表現されればよい。
また、滞在型警戒条件が充足されたと判定する場合は、上記の例に限らない。第1強度変化量ΔP1及び第2強度変化量ΔP2の両方がk回以上連続してゼロレベルとなっている状態において、後述するようにサンプリングカウンタNがサンプリング打切回数Mを超過した場合に、滞在型警戒条件が充足されたと判定するように構成されていても良い。
ステップS110において滞在型警戒条件が充足されている場合、モード制御部F4はステップS110を肯定判定し、ステップS114を実行する。一方、滞在型警戒条件が充足されていない場合にはステップS110を否定判定してステップS111を実行する。
ステップS111ではサンプリングカウンタNがサンプリング打切回数Mを超過しているか否かを判定する。サンプリングカウンタNがサンプリング打切回数Mを超過している場合にはステップS112を肯定判定して図7に示すステップS120を実行する。サンプリングカウンタNがサンプリング打切回数Mを超過していない場合にはステップS111を否定判定してステップS112を実行する。サンプリング打切回数Mは、例えば18とすることができる。そのような構成によれば、第1送信周期が5秒であることを踏まえると、認証ECU110は5×18=90秒間、携帯機200の動きを見て警戒モードとすべきか否かを判定することとなる。
一般的にユーザは、車両Vのまわりに特段の用事がない場合には、降車してから90秒も経過すれば車両Vから十分に離れた地点まで移動していることが想定される。車両Vから十分に離れた地点とは、UHF帯の電波での通信が実施できない地点である。故に、ユーザの動きを監視する時間としては90秒で十分であると考えられる。なお、サンプリング打切回数Mは適宜設計されればよく、具体的な数値は18に限定されない。例えばサンプリング打切回数は20や30であってもよい。また、第1送信周期の長さと合わせて適宜されることが好ましい。少なくとも第1送信周期とサンプリング打切回数を乗じた値が30秒以上となるように各パラメータは設計されていることが好ましい。便宜上、第1送信周期で応答要求信号を定期送信する時間を監視継続時間と称する。監視継続時間は、前述の通り、第1送信周期とサンプリング打切回数を乗じた値に相当する。
ステップS112ではモード制御部F4が、第1送信タイマが満了となっているか否かを判定する。第1送信タイマが満了していない場合にはステップS112を否定判定し、第1送信タイマが満了するまでステップS112を実行する。すなわち、第1送信タイマが満了となるまで待機状態となる。第1送信タイマが満了となるとステップS112を肯定判定してステップS113を実行する。ステップS113ではモード制御部F4が、UHF送受信部113と協働してUHF応答要求信号を送信し、ステップS103を実行する。
ステップS114ではモード制御部F4が、認証ECU110の動作モードを警戒モードに設定してステップS115を実行する。ステップS115ではモード制御部F4が、UHF送受信部113と協働して、携帯機200に対して警戒モード通知を送信して本フローを終了する。なお、携帯機200は警戒モード通知を受信した場合、報知処理部G3が発光部230を発光させることにより、ユーザに認証ECU110が警戒モードとなったことを通知する。
ステップS120ではモード制御部F4が、第2送信タイマを起動させる。第2送信タイマは、所定の第2送信周期を計測するタイマである。第2送信周期は例えば5分に設定されている。もちろん、第2送信周期は10分や、15分であってもよい。第2送信周期は、監視継続時間(ここでは90秒)よりも長い時間に設定されていればよい。
ステップS121ではモード制御部F4が、第2送信タイマが満了となったか否かを判定する。第2送信タイマが満了していない場合にはステップS121を否定判定し、第2送信タイマが満了するまでステップS121を逐次実行する。すなわち、第2送信タイマが満了となるまで待機状態となる。第2送信タイマが満了となるとステップS121を肯定判定してステップS122を実行する。ステップS122ではモード制御部F4が、UHF送受信部113と協働して監視開始信号を送信し、ステップS123を実行する。
ステップS123ではモード制御部F4が、第1送信タイマを起動するとともに、サンプリングカウンタNを初期化してステップS124を実行する。ステップS124ではモード制御部F4が、UHF送受信部113と協働し、携帯機200からの強度報告信号を受信したか否かを判定する。携帯機200からの強度報告信号を受信した場合にはステップS124を肯定判定して図6のステップS105を実行する。このような構成は、UHF応答要求信号を第2送信周期で定期的に送信する処理を実行している状態において、応答信号を受信した場合には、UHF応答要求信号の送信間隔を第1送信周期に戻す構成に相当する。
一方、ステップS122にてUHF応答要求信号を送信してから応答待機時間経過しても、強度報告信号を受信しなかった場合には、モード制御部F4は、携帯機200からの強度報告信号は受信できなかったと判定する。そのような場合にはステップS120が実行される。
<実施形態の作用、効果の説明>
上記の車両用電子キーシステムでは、認証ECU110及び携帯機200のそれぞれでの受信強度の経時的な変化度合いが整合しているか否かを判定する。そして、各装置での相手からの信号の受信強度の変化度合いが整合していない場合、車両Vを警戒モードに設定する。このような実施形態の構成による効果についてここでは図10〜図15を用いて説明する。
図10は、ユーザが車両Vを駐車後に車両Vから離れていく過程において、携帯機200からの応答信号が中継されていない場合の、認証ECU110及び携帯機200のそれぞれでの相手からの信号の受信強度の経時的な推移を概念的に示す図である。図10の縦軸は受信強度を示しており、横軸は時刻を表している。横軸に付与しているt10〜t19は、認証ECU110及び携帯機200がUHF帯の信号を互いに送受信したタイミングを示している。認証ECU110及び携帯機200がUHF帯の信号を互いに送受信したタイミングとは、UHF応答信号の送受信及び応答信号としての強度報告信号の送受信が実施されたタイミングに相当する。時刻t10、t11、…、t19の間隔は、基本的には第1送信周期である。
ユーザが車両Vを駐車後に車両Vから離れていく過程において、携帯機200からの応答信号が中継されていない場合には、図10に示すように携帯機側強度も車両側強度も時間の経過(換言すればユーザの移動)に伴って、徐々に減少していく。なお、各装置での受信感度や送信電力が同じとは限らないため、携帯機側強度と車両側強度の推移レベル自体は図10に示すように異なりうる。
図11は、図10に示す受信強度の時系列データに対応する第1強度変化量ΔP1と、第2強度変化量ΔP2を示すグラフであり、図12は、図11に示す第1強度変化量ΔP1と、第2強度変化量ΔP2の差の絶対値(すなわち乖離度)を算出した結果を示すグラフである。図11及び図10に示すように、携帯機200から認証ECU110宛の信号が中継されていない場合には、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2は同じ挙動で推移し、乖離度も概ね0付近で推移する。
一方、図13は、ユーザが車両Vを駐車後に車両Vから離れていく過程において、携帯機200からの応答信号が中継され始めた場合の、認証ECU110及び携帯機200のそれぞれでの相手からの信号の受信強度の経時的な推移を概念的に示す図である。図13の縦軸や横軸は、図13の縦軸は受信強度を示しており、横軸は時刻を表している。横軸に付与しているt20〜t29は、認証ECU110及び携帯機200がUHF帯の信号を互いに送受信したタイミングを示している。時刻t20、t21、…、t29の間隔は、第1送信周期と概ね一致する。時刻t24は、携帯機200から認証ECU110に向けて送信された応答信号が中継され始めた時点を表している。
図10を用いて先に述べた通り、仮にユーザが車両Vを駐車後に車両Vから離れていく過程(以降、離脱過程)において、携帯機200からの応答信号が中継されてなかった場合には、携帯機側強度は時間の経過(換言すればユーザの移動)に伴って徐々に減少していく。しかしながら、離脱過程において第3者が中継器を動作させることにより、携帯機200からの応答信号が中継され始めると、図13の時刻t24に示すように、車両側強度が急激に増加する。
その結果、図14、図15に示すように、時刻t24での第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2に大きな差が生じ、乖離度が相対的に大きい有意な値をとる。故に、許容閾値Thを図12及び図15に概念的に示される挙動に応じた値に設定しておくことにより、乖離度が許容閾値Thを超過し、認証ECU110は警戒モードに設定される。
なお、図14は、図13に示す受信強度の時系列データに対応する第1強度変化量ΔP1と、第2強度変化量ΔP2を示すグラフであり、図15は、図14に示す第1強度変化量ΔP1と、第2強度変化量ΔP2の差の絶対値(すなわち乖離度)を算出した結果を示すグラフである。
また、携帯機200からの信号が中継されている場合、車両側強度や第1強度変化量ΔP1は、車両Vと携帯機200との位置関係ではなく、車両Vと中継器との位置関係に応じて変化するパラメータとなる。一方、携帯機側強度や第2強度変化量ΔP2は、車両Vと携帯機200との位置関係に応じて定まる。故に、上記の構成によれば携帯機200から車両V宛の信号が中継されている場合には、中継器がオンとなって中継され始めた時点だけでなく、それ以降においても第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2との不整合が発生し、警戒モードに設定されうる。
つまり、携帯機200が送信した信号が中継器によって中継されている場合には、それが第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2の不整合として現れるため、認証ECU110が警戒モードに設定される。警戒モードに設定されれば、車両制御が実行されないため、車両Vが不正に使用される可能性を抑制することができる。また、上記の構成によれば、車両Vと携帯機200を持つユーザとが遠ざかっていても、近付いていても、動きが無くても、警戒モードとすべきか否かを判定できる。よって、ユーザの動きによらずに、車両Vが不正に使用される可能性を抑制することができる。
また、上記構成では、監視継続時間経過後は、第1送信周期でのUHF応答要求信号の送受信を停止する。そのため、車載システム100での消費電流を低減できる。また、携帯機200からの応答信号を受信できない状態が所定の再送上限回数続いた場合にも、第1送信周期での定期的なUHF応答要求信号の送信を終了する。よって、車載システム100での消費電流をより一層低減できる。
加えて、第1送信周期での定期的なUHF応答要求信号の送信を停止後は、第1送信周期よりも長い第2送信周期でUHF応答要求信号を定期的に送信し、応答信号を取得できた場合に第1送信周期でのUHF信号の送受信を再開する。このような態様によれば、監視継続時間経過後もユーザが車両VのUHF通信エリア内に滞在している限りは、警戒モードとすべきか否かの判定が逐次実行されるため、車両Vが不正に使用される可能性を一層抑制できる。
また、滞在型警戒条件が充足された場合にも警戒モードに設定する。この構成を備えることにより、ユーザが車両VのUHF通信エリア内に滞在している場合に、車両Vが不正に使用される恐れをより一層低減できる。
また、認証ECU110は、警戒モードに遷移した場合には携帯機200に対して警戒モード通知が送信し、携帯機200は発光部230の発光によってユーザに対して車両V(具体的には認証ECU110)が警戒モードであることを報知する。このような構成によれば、ユーザは、リレーアタックされる恐れがあること、又は、リレーアタックされる恐れがあったことを認識することができる。
また、認証ECU110が警戒モードとなっている場合には、無線通信による携帯機200の認証に基づく車両制御が実行されないため、車両Vのドアを開錠するためには、ユーザは普段とは違う操作を実施する必要がある。認証ECU110が警戒モードであることをユーザに通知することにより、車両Vに搭乗するために所定の開錠操作を実施する必要があることをユーザに認識させることができる。
加えて、認証ECU110が警戒モードであることをユーザに通知することにより、スマート機能が作動しない理由が、車両Vが故障しているのではなく、不正な使用を防ぐためであることを認識させることができる。それに伴い、車両Vに搭乗するために所定の開錠操作を実施する必要があることに対してユーザに納得感を提供することができる。なお、車両Vに搭乗するために所定の開錠操作とは、メカニカルキー(いわゆるエマージェンシーキー)を用いた開錠や、ドアを開錠するためのボタン250の押下操作などである。
モード制御部F4は、メカニカルキー(いわゆるエマージェンシーキー)を用いた開錠や、ドアを開錠するためのボタン250の押下操作などといった、所定の開錠操作が実行された場合には、認証ECU110の動作モードを通常モードに設定する。ドアを開錠するためのボタン250の押下操作がなされたことは、開錠コマンド信号を受信したことによって検出することができる。
また、モード制御部F4は、生体情報を用いた認証や、パスワードの入力などによって、車両Vを使用しようとしている人物が正規のユーザであることを認証できた場合には、認証ECU110の動作モードを通常モードに設定してもよい。生体情報を用いた認証には、指紋認証や、静脈認証、虹彩認証、声紋認証の他、顔認識なども含まれるものとする。
また、車載システム100と携帯機200とが、近接場通信(Near Field Communication:NFC)によって認証を実施可能に構成されている場合には、近接場通信による認証が成功したことに基づいて、警戒モードを解除して通常モードに設定してもよい。ここでの近接場通信とは、通信可能な距離が数cmから数十cm程度以下となる通信方式を指す。
その他、上記の構成によれば、第1強度変化量ΔP1の算出等の整合性判定に係る演算処理は車載システム100で実施される。このような構成によれば、携帯機200は車載システム100からの信号の受信強度(つまり携帯機側強度)を一時的に記憶し、そのデータを車載システム100に返送する機能を備えていればよい。つまり、携帯機200が実施すべき演算処理の量を低減することができる。その結果、携帯機200での消費電力を低減し、電池切れ等が生じる恐れを低減することができる。また、本実施形態のように、受信強度そのものではなく受信強度の変化量を用いて整合性を判定する構成によれば、携帯機200や認証ECU110での送信電力や受信感度に関する個体差が判定精度及ぼす影響を低減することができる。
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。
なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
[変形例1]
上述した実施形態では第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2とが整合性しているか否かの判断結果を、認証ECU110の動作モードを通常モードから警戒モードに設定するために用いる態様を開示したが、これに限らない。例えば、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2とが整合性しているか否かの判断結果は、認証ECU110の動作モードを警戒モードから通常モードに設定するためにも用いることができる。ここでは、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2とが整合性しているか否かに基づいて、認証ECU110の動作モードを警戒モードから通常モードに設定する構成について、変形例1として開示する。
変形例1におけるモード制御部F4は、認証ECU110が警戒モードとなっている状態においても、ステップS101〜S111及びステップS120〜S124と同様の処理を実施し、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2の整合性を逐次判定する。そして、図16に示すように携帯機側強度(又は各受信強度)が所定の遠方レベルから所定の近傍レベルまで増加する過程において、図17、図18に示すように第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2との整合性が維持されていた場合(乖離度が許容閾値未満であり続けた場合)に、認証ECU110を警戒モードから通常モードに設定する。第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2とが整合性が維持された状態で、各受信強度が遠方レベルまで増加した場合には、正規のユーザが車両Vに接近中である可能性が高いためである。
なお、遠方レベルは、携帯機200が車両遠方に存在する場合に観測されうる受信強度であって、例えば携帯機200と車両Vとの距離が15m以上である場合の受信強度に相当するレベルとすればよい。図16中のPfは遠方レベルの上限値を示している。近傍レベルは、携帯機200が車両近傍に存在する場合に観測されうる受信強度であって、例えば携帯機200と車両Vとの距離が3m以内である場合の受信強度に相当するレベルとすればよい。図16中のPnは近傍レベルの下限値を示している。遠方レベルの上限値や近傍レベルの下限値等は実試験等の結果に基づき適宜設計されればよい。
図16〜図18は、第1強度変化量ΔP1と第2強度変化量ΔP2とが整合性が維持された状態で、各受信強度が遠方レベルから近傍レベルまで増加した場合の受信強度等の経時変化を概念的に示す図である。図16〜図18の横軸に付与しているt30〜t39は、認証ECU110及び携帯機200がUHF帯の信号を互いに送受信したタイミングを示している。
この変形例1の構成によれば、認証ECU110が警戒モードとなった場合であっても、ユーザが車両Vに接近する過程において、自動的に認証ECU110が通常モードに復帰する。故に、ユーザは、スマートエントリーシステムが提供する機能によって車両ドアを開錠し、車両Vを使用することができる。すなわち、ユーザは所定の開錠操作を実施することなく、いつも通りの手順で搭乗することができる。これにより、不正に車両Vが使用される恐れを低減しつつ、ユーザの利便性を損なう恐れも低減できる。
[変形例2]
上述した実施形態では、携帯機200は、応答信号として携帯機側強度をそのまま(換言すれば直接的に)示すデータを送信する態様を開示したが、これに限らない。例えば、携帯機側強度を、車両Vと携帯機200との距離に換算し、当該距離情報を示す信号を応答信号として返送してもよい。一般的に、車両Vと携帯機200との距離と受信強度との間は相関があるため、車両Vと携帯機200との距離を示す情報も、携帯機側強度の大きさを間接的に示す情報として機能する。つまり、車両Vと携帯機200との距離を示す情報は強度関連情報に相当する。
[変形例3]
上述した実施形態では、第1強度変化量ΔP1の算出等の整合性判定に係る演算処理はすべて車載システム100で実施するものとしたが、これに限らない。例えば、第2強度変化量ΔP2の算出は、携帯機200で実施されるように構成されていても良い。その場合、携帯側制御部260は、図19に示すように第2変化量算出部F10に相当する携帯機側変化量算出部G4や、携帯機側強度記憶部M2を備えるものとする。また、送信信号生成部G2は、第2強度変化量ΔP2を示す信号を応答信号として生成し、UHF送信部222と協働して認証ECU110に返送するものとする。
[変形例4]
車両制御部F5は、車両側強度に基づいて携帯機200の車両Vへの接近を検出するとともに、車両Vへの携帯機200の接近を検出した場合には、車室内/外の照明を点灯させる機能(以降、ウェルカム照明機能)を備えていてもよい。車両制御部F5がウェルカム照明機能を備える場合には、認証ECU110の動作モードに応じてウェルカム照明の色を変更するように構成されていることが好ましい。すなわち、認証ECU110は、ウェルカム照明の色によって認証ECU110の動作モードをユーザに報知するように構成されていても良い。
例えば認証ECU110が通常モードで動作している場合には、緑色や青色、白色といった所定の色の光を発する一方、警戒モードとなっている場合には、赤色や橙色といった、ユーザに危機感を与える色を発する。なお、ここでのウェルカム照明とは、携帯機200の接近に伴って点灯される照明を指す。
このような構成によれば、そのような態様によれば、ユーザは携帯機200を見なくとも、ウェルカム照明の色によって認証ECU110が警戒モードであることを認識することができる。認証ECU110が通常モードとなっている場合には、ユーザは携帯機200を操作することなく、車両Vに搭乗することができるため、車両Vに接近する過程において携帯機200を見るとは限らない。ウェルカム照明による報知を実施しない構成では、認証ECU110が警戒モードである状態においてユーザが携帯機200を見ずに車両Vに接近した場合、スマート機能が作動しないことによってユーザを戸惑わせてしまうことが懸念される。そのような懸念に対して、本変形例4の構成によれば、スマート機能が作動しないことによってユーザを戸惑わせてしまう恐れを低減することができる。
なお、車両Vに対する携帯機200の接近は、多様な方法で検出することができる。例えば車両側強度が所定の接近判定閾値未満となっている状態から、当該接近判定閾値以上となったことに基づいて、携帯機200が車両周辺に設定されている所定のウェルカムエリア内に進入した(つまり携帯機200の接近)を検出することができる。ウェルカムエリアは、車両周辺とみなす範囲であって、例えば車両Vから5m以内となる範囲とすることができる。接近判定用閾値は、ウェルカムエリアの大きさに応じて適宜設計されれば良い。
[変形例5]
上述した実施形態ではLF帯の電波を用いてチャレンジコードを送信する態様を開示したが、これに限らない。チャレンジコードの送信は、UHFアンテナ112から送信しても良い。つまり、車両用電子キーシステムは、LF帯の電波を用いずに無線通信による携帯機200の認証処理を実行するように構成されていても良い。故に、車載システム100や携帯機200におけるLF帯の電波を送受信するための構成は任意の要素である。