JP2019099784A - カルボキシメチル化セルロースの製造方法 - Google Patents
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Description
(1)セルロースをマーセル化剤で処理して、マーセル化セルロースを得る工程、及び
マーセル化セルロースをカルボキシメチル化剤と反応させて、カルボキシメチル化セルロースを得る工程、
を含み、マーセル化セルロースを得る工程を、水を主とする溶媒下で行い、カルボキシメチル化セルロースを得る工程を、水と有機溶媒との混合溶媒下で行う、カルボキシメチル化セルロースの製造方法。
(2)マーセル化セルロースを得る工程における水を主とする溶媒が、水を50質量%より高い割合で含む溶媒である、(1)に記載の方法。
(3)マーセル化セルロースを得る工程における水を主とする溶媒が、水である、(2)に記載の方法。
(4)カルボキシメチル化剤の有効利用率が、15%以上である、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
(5)マーセル化剤が、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、またはこれらの2種以上の組み合せである、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の方法。
(6)カルボキシメチル化剤が、モノクロロ酢酸またはモノクロロ酢酸ナトリウムである、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法。
(7)カルボキシメチル化セルロースを得る工程における混合溶媒が、有機溶媒を、20〜99質量%含む溶媒である、(1)〜(6)のいずれか1つに記載の方法。
(8)有機溶媒が、イソプロパノール、メタノール、エタノール、アセトン、またはこれらの2種以上の組み合せである、(1)〜(7)のいずれか1つに記載の方法。
(9)カルボキシメチル化セルロースにおける無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が、0.50未満である、(1)〜(8)のいずれか1つに記載の方法。
(10)カルボキシメチル化セルロースのセルロースI型の結晶化度が50%以上である、(1)〜(9)のいずれか記載の方法。
(11)(1)〜(10)のいずれか1つに記載の方法で得られたカルボキシメチル化セルロースを解繊することを含む、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの製造方法。
本発明においてセルロースとは、D−グルコピラノース(単に「グルコース残基」、「無水グルコース」ともいう。)がβ−1,4結合で連なった構造の多糖を意味する。セルロースは、一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。本発明では、これらのセルロースのいずれも、マーセル化セルロースの原料として用いることができる。
微細セルロースとしては、上記天然セルロースや再生セルロースをはじめとする、セルロース系素材を、解重合処理(例えば、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等)して得られるものや、前記セルロース系素材を、機械的に処理して得られるものが例示される。
原料として前述のセルロースを用い、マーセル化剤(アルカリ)を添加することによりマーセル化セルロース(アルカリセルロースともいう。)を得る。本発明では、このマーセル化反応における溶媒に水を主として用い、次のカルボキシメチル化の際に有機溶媒と水との混合溶媒を使用することにより、解繊した際に非常に高い透明度を有するセルロースナノファイバー分散体とすることができるカルボキシメチル化セルロースを経済的に得ることができる。
マーセル化セルロースに対し、カルボキシメチル化剤(エーテル化剤ともいう。)を添加することにより、カルボキシメチル化セルロースを得る。本発明では、このカルボキシメチル化反応における溶媒として、水と有機溶媒との混合溶媒を用いる。マーセル化の際は水を主とする溶媒として用い、カルボキシメチル化の際には水と有機溶媒との混合溶媒を用いることにより、解繊した際に非常に高い透明度を有するセルロースナノファイバー分散体とすることができるカルボキシメチル化セルロースを経済的に得ることができる。
に)、解繊した際に高い透明度を有するセルロースナノファイバー分散体を得ることができるカルボキシメチル化セルロースを製造することができる。カルボキシメチル化剤の有効利用率の上限は特に限定されないが、現実的には80%程度が上限となる。なお、カルボキシメチル化剤の有効利用率は、AMと略すことがある。
AM=(DS×セルロースのモル数)/ カルボキシメチル化剤のモル数
DS: カルボキシメチル置換度(測定方法は後述する)
セルロースのモル数:パルプ質量(100℃で60分間乾燥した際の乾燥質量)/162
(162はセルロースのグルコース単位当たりの分子量)。
本発明で製造されるカルボキシメチル化セルロースは、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものが好ましい。すなわち、カルボキシメチル化セルロースの水分散体を電子顕微鏡で観察すると、繊維状の物質を観察することができ、カルボキシメチル化セルロースをX線回折で測定した際にセルロースI型結晶のピークを観測することができるものが好ましい。
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振盪して、カルボキシメチル化セルロースの塩(CMC)をH−CMC(水素型カルボキシメチル化セルロース)に変換する。その絶乾H−CMCを1.5〜2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLでH−CMCを湿潤し、0.1N−NaOHを100mL加え、室温で3時間振盪する。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N−H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定し、次式によってカルボキシメチル置換度(DS値)を算出する。
A=[(100×F’−0.1N−H2SO4(mL)×F)×0.1]/(H−CMCの絶乾質量(g))
カルボキシメチル置換度=0.162×A/(1−0.058×A)
F’:0.1N−H2SO4のファクター
F:0.1N−NaOHのファクター。
試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD−6000、島津製作所製)を用いて測定する。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10゜〜30゜の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6゜の002面の回折強度と2θ=18.5゜のアモルファス部分の回折強度から次式により算出する。
Xc=セルロースのI型の結晶化度(%)
I002c:2θ=22.6゜、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5゜、アモルファス部分の回折強度。
本発明の方法により得たカルボキシメチル化セルロースを解繊することにより、ナノスケールの繊維径を有するセルロースナノファイバーへと変換することができる。本発明の方法により得られるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、従来の水媒法または溶媒法で得られたカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーに比べて、経済的に製造でき、また、水分散体の状態で、高い透明度を有する。
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
(実施例1)
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水130部と、水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥質量で100部仕込んだ。30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に撹拌しつつイソプロパノール(IPA)230部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、50%である。反応終了後、中和、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度0.31、セルロースI型の結晶化度67%のカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル化剤の有効利用率は、37%であった。なお、カルボキシメチル置換度及びセルロースI型の結晶化度の測定方法、ならびにカルボキシメチル化剤の有効利用率の算出方法は、上述の通りである。
セルロースナノファイバー分散体(固形分1%(w/v)、分散媒:水)の透明度(660nm光の透過率)は、UV−VIS分光光度計UV−1800(島津製作所社)を用いて測定した。
セルロースナノファイバー分散体(固形分1%(w/v)、分散媒:水)を16時間放置した後、撹拌機を用いて3000rpmで1分間撹拌し、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、No.4ローター/回転数60rpmまたは6rpmで3分後の粘度を測定した。
IPAの添加量を変えることによりカルボキシメチル化反応時の反応液中のIPAの濃度を90%とした以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.47、セルロースI型の結晶化度は63%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は56%であった。
(実施例3)
マーセル化反応時の溶媒を水90%、IPA10%とし、IPAの添加量を変えることによりカルボキシメチル反応時の混合溶媒中のIPA濃度を実施例1と同様に50%に調整した以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.28、セルロースI型の結晶化度は69%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は34%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
マーセル化反応時の溶媒を水70%、IPA30%とし、IPAの添加量を変えることによりカルボキシメチル化反応時の混合溶媒中のIPA濃度を実施例1と同様に50%に調整した以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.28、セルロースI型の結晶化度は64%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は34%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
マーセル化剤として水酸化ナトリウムに代えて水酸化リチウムを用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのリチウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.25、セルロースI型の結晶化度は62%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は30%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのリチウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
マーセル化剤として水酸化ナトリウムに代えて水酸化カリウムを用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのカリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.25、セルロースI型の結晶化度は61%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は30%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのカリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
カルボキシメチル化反応時に添加する有機溶媒をIPAからメタノールに変更した以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.29、セルロースI型の結晶化度は66%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は35%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
カルボキシメチル化反応時に添加する有機溶媒をIPAからエタノールに変更した以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.30、セルロースI型の結晶化度は67%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は36%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
カルボキシメチル化反応時に添加する有機溶媒をIPAからアセトンに変更した以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.26、セルロースI型の結晶化度は63%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は31%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
マーセル化反応時に水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものに代えて水酸化ナトリウム40部を水100部に溶解したものを用い、カルボキシメチル化反応時のカルボキシメチル化剤としてモノクロロ酢酸ナトリウム60部に代えてモノクロロ酢酸50部を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.31、セルロースI型の結晶化度は60%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は36%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
IPAの添加量を変えることによりカルボキシメチル化反応時の反応液中のIPAの濃度を30%とした以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.24、セルロースI型の結晶化度は73%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は29%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
IPAの添加量を変えることによりカルボキシメチル化反応時の反応液中のIPAの濃度を20%とした以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.20、セルロースI型の結晶化度は74%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は24%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
カルボキシメチル化反応時の溶媒を水100%とした以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.11、セルロースI型の結晶化度は72%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は13%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
マーセル化反応時の溶媒を水10%、IPA90%とし、カルボキシメチル化反応時にも同じ組成の溶媒を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.27、セルロースI型の結晶化度は64%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は32%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
マーセル化反応時に水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものに代えて水酸化ナトリウム45部を水100部に溶解したものを用い、カルボキシメチル化反応時のカルボキシメチル化剤としてモノクロロ酢酸ナトリウム60部に代えてモノクロロ酢酸ナトリウム150部を用いた以外は比較例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.28、セルロースI型の結晶化度は45%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は13%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
Claims (10)
- セルロースをマーセル化剤で処理して、マーセル化セルロースを得る工程、及び
マーセル化セルロースをカルボキシメチル化剤と反応させて、カルボキシメチル化セルロースを得る工程、
を含み、マーセル化セルロースを得る工程を、水を主とする溶媒下で行い、カルボキシメチル化セルロースを得る工程を、水と有機溶媒との混合溶媒下で行う、カルボキシメチル化セルロースの製造方法。 - マーセル化セルロースを得る工程における水を主とする溶媒が、水を50質量%より高い割合で含む溶媒である、請求項1に記載の方法。
- マーセル化セルロースを得る工程における水を主とする溶媒が、水である、請求項2に記載の方法。
- カルボキシメチル化剤の有効利用率が15%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- マーセル化剤が、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、またはこれらの2種以上の組み合せである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- カルボキシメチル化剤が、モノクロロ酢酸またはモノクロロ酢酸ナトリウムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- カルボキシメチル化セルロースを得る工程における混合溶媒が、有機溶媒を20〜99質量%含む溶媒である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 有機溶媒が、イソプロパノール、メタノール、エタノール、アセトン、またはこれらの2種以上の組み合せである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- カルボキシメチル化セルロースにおける無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が、0.50未満である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- カルボキシメチル化セルロースのセルロースI型の結晶化度が50%以上である、請求項1〜9のいずれか記載の方法。
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