JP2019090657A - パネル部品の耐デント性予測方法 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、耐デント性は、塑性変形のしにくさに影響されるため、基本的には鋼板のハイテン化(降伏強度の上昇)により解決されてきた。例えば、従来軟鋼板が使用されていた部位に、TS340MPa級のハイテンを適用し、焼付け硬化性を持つBH鋼板等を使用するなどによって対応していた。
耐デント性予測およびそれを考慮した部品設計方法の例としては、以下に挙げるものがある。
特許文献2に記載の方法は、フードの張り剛性およびデント性をCAEで定量的に予測する方法に関するものである。しかし、デント性についてはデント荷重負荷時の最大主ひずみ量で合否判断をしている。そのため、特許文献2に記載の方法では、材料の降伏強度やプレス成形で導入される塑性ひずみ量は考慮されておらず、デントの凹み量を導き出すことは困難である。
特許文献4に記載の方法は、パネル面と補強部品を考慮し、荷重負荷によるパネルの弾性たわみ面積とパネル曲率、材料降伏強度、板厚からデント性を求めるものである。ただしこの方法では、プレス成形により導入される塑性ひずみによる流動応力上昇は考慮されていないため、定量的なデント量の予測は難しい。
このとき、パネル材質については、プレス成形後の塑性ひずみ量から、パネル部品の降伏強度YP’を予測し、その降伏強度YP’を部品のFEMモデルに反映することが必要である。
YP’=A・e2+B・e+C ・・・(1)
但し、A、B、Cは、予め設定した定数からなる係数である。
この結果、自動車その他の製品の部品設計段階で、パネル部品の最適な材料や板厚選定や、補強部品やマスチックシーラーの最適配置検討あるいは耐デント性を高めるためのプレス成形方法までを、製品を試作することなく、FEM解析で検討することが可能となる。
このことはまた、製品を試作してから耐デント性能不足が判明し、材料や板厚変更が必要となったり、部品を追加したりするなどの試行錯誤を行うことなく、車両その他の製品開発をスムーズに進めることに繋がる。
なお、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。また、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
以下の説明では、自動車用外板部品(アウターパネル)、特にドアパネルやフードパネルなど耐デント性が重要視される金属製のパネル部品を想定して説明する。なお、一般に、このような車両用のアウターパネルは、表面に沿った少なくとも一方向に向けて、外側に凸のなだらかな湾曲を有している場合が多い。
本実施形態のパネル部品の設計方法は、図1に示すように、降伏強度予測部10、耐デント性予測部20及び耐デント性用改善設計処理部30を備える。なお、これらの処理の一部若しくは全部をコンピュータでのプログラム処理で実施しても良い。
降伏強度予測部10は、対象とするパネル部品の降伏強度を予測する処理を行う。
降伏強度予測部10は、係数設定部10A、設定閾値決定部10B及び降伏強度演算部10Cを備える。
係数設定部10Aは、下記(1)式における、係数A、B、Cを求める処理を行う。
YP’=A・e2+B・e+C ・・・(1)
ここで、パネル部品に使用される材料からなるJIS5号試験片を用いて、引張試験にて、降伏強度と予ひずみとの関係を求めてみたところ、その関係は、2次関数の関係となっていた。係数設定部10Aでは、この知見に基づき、対象とするパネル部品と同じ鋼種及び板厚からJIS5号試験片を作製し、予ひずみ量を2,4,6,8,10%の5水準で変化させて、それぞれの降伏強度YP’を測定する。係数設定部10Aでは、その測定結果によって得られた降伏強度YP’と予ひずみeとの関係を、(1)式の2次関数に近似して、係数A、B、Cを求める。
そして、この鋼種では、降伏強度YP’と予ひずみeとの関係では、例えば下記(2)式に近似させることが可能である。
YP’=−14500e2+2200e+270 ・・・(2)
この(2)式から、この鋼種では、係数A=−14500、係数B=2200、係数C=270となる。
係数設定部10Aでは、例えば、(1)式からなる降伏強度YP’の予測式を立てるため、まずは予ひずみ量を変化させた引張試験により、降伏強度YP’のデータを採取して係数A,B,Cを求めている。この処理は、材料(鋼種)ごとに採取する必要があるが、降伏強度YP’のレベルに応じ、比例増分させた降伏強度YP’−ひずみeのカーブを作成しても構わない。また、厚さについても、例えば代表する厚さのデータを取得しておき、そのデータから、目的の厚さの係数A、B、Cを推定すればよい。
設定閾値決定部10Bは、(1)式のひずみ量として、最大主ひずみと最小主ひずみのどちらを採用するか決定するための設定閾値を求める。
ここで、TS270MPa級のBH鋼板(板厚0.60mmt)からなる材料を使用した自動車用のフード(ボンネット)部品の表面に沿って、複数の評価位置を設定した。このパネル部品1として、図3のような、長手方向に沿って、外側に凸のなだらかな湾曲を有している場合とした。そして、各評価位置において、デント測定と成形ひずみ量(最大、最小主ひずみ)を測定した。最大主ひずみ量、最小主ひずみ量は、スクライブドサークルにて測定した。デント測定については、鋼製の圧子を使用した公知のデント試験を行い、目視にて、デント発生と認められた荷重をデント発生荷重とした。
ここで、発明者の検討によれば、各評価位置での「最大主ひずみと最小主ひずみ」において、最小主ひずみが大きいほど最大主ひずみが大きくなるというような相関関係は無い。そして、最小主ひずみが同じ値の場合であっても、最大主ひずみが設定閾値未満であれば、その最小主ひずみを使用することで、精度良くデント発生荷重を見積もることが出来るが、最大主ひずみが設定閾値以上の場合には、最小主ひずみを変数eに使用しても精度が悪くなることを確認している。
設定閾値決定部10Bは、使用する最大主ひずみ、最小主ひずみを、実プレス成形したパネルにおいてスクライブドサークルなどで測定した値を用いて算出して、上記のように評価して設定閾値としての上記RVの値を決定すれば良い。
以上のように、設定閾値は、(1)式に基づき求めることができる。なお、設定閾値は、鋼種毎に予め求めておいて使用すればよい。
降伏強度演算部10Cは、各評価位置における、耐デント性評価のための降伏強度を演算する。
降伏強度演算部10Cは、係数設定部10Aが求めた係数A,B,Cと、設定閾値決定部10Bが決定した設定閾値とを入力する。そして、降伏強度演算部10Cは、降伏強度YP’とひずみ量eとの関係を予測する(1)式に基づき、パネル部品1の成形時の最大主ひずみが予め設定した設定閾値未満の評価位置に対し、ひずみ量eとしてその評価位置での最小主ひずみを採用して、(1)式に基づき、評価位置の降伏強度YP’を求める。
より正確にパネル部品1の設計を行う場合には、降伏強度演算部10Cは、更に、パネル部品1の成形時の最大主ひずみが設定閾値以上の評価位置に対し、ひずみ量eとしてその評価位置での最大主ひずみを採用して、(1)式に基づき、評価位置の降伏強度YP’を求める。
耐デント性予測部20は、降伏強度予測部10が求めた、各評価位置に対する降伏強度に基づき、公知の耐デント性評価のためのFEM解析処理方法によって、各評価位置でのデント凹み量を予測する。FEM解析には、通常の耐デント性評価で使用される公知のFEM解析を採用すればよい。
この際に、耐デント性予測部20は、降伏強度演算部10Cが演算した各評価位置での降伏強度YP’を、FEM解析の材料モデルに反映して、各評価位置でのデント凹み量を予測する。
耐デント性用改善設計処理部30では、耐デント性予測部20が求めた、各評価位置での予測したデント凹み量が、予め設定した許容閾値以下となるように、パネル部品1の部品構造、材料、及び板厚の少なくとも一つを選定し直す。そして、選定し直したデータに基づき、FEM解析のモデルのパラメータを変更する。
上記のようにして、パネル部品の設計を行う。
その後、例えば実際の製品を試作して、耐デント性評価などの、試作品を使用した評価を実施する。
本発明者は、(1)式のeを、最大主ひずみが設定閾値未満の場合は最小主ひずみ値で、設定閾値以上の場合は最大主ひずみ値でそれぞれ使用することにより、デント発生荷重において実験値とCAEの整合が良いという知見を得た。
これに基づき、本実施形態では、実際に実部品を試作することなく、各評価位置の最大主ひずみと最小主ひずみを利用して(1)式に基づき、対象とするパネル部品1における各評価位置での降伏強度YP’を簡易且つ精度良く求めることができる。
それにより、デント凹み量の算出およびデントが発生する荷重も算出可能であるため、あらゆる評価基準への対応が可能である。
そのため、試作してから耐デント性能不足が判明し、材料や板厚変更が必要となったり、部品を追加したりするなどの試行錯誤をすることなく、実車開発をスムーズに進めることが可能となる。
そして、各評価位置において、スクライブドサークルにて、最大主ひずみ量、最小主ひずみ量を測定した。また、鋼製の圧子を使用し、デント試験も行った。目視にて、デント発生と認められた荷重をデント発生荷重(実験値)とした。
ここで、部位10での最大主ひずみの値をRVの値とした。
表1に、20箇所の評価位置(部位)のうちのNO.1,4,6,8,9,10,12の結果を示す。
一方、比較例にあるように、比較例1のようにRV未満の場合に最大主ひずみ値で、また比較例2のようにRV以上の場合に最小主ひずみ量でeを見積もった場合は、荷重偏差が大きくなって整合がつかず、予測精度は確保できないことが分かった。
10 降伏強度予測部
10A 係数設定部
10B 設定閾値決定部
10C 降伏強度演算部
20 耐デント性予測部
30 耐デント性用改善設計処理部
YP’ 降伏強度
e ひずみ
RV 設定閾値の値
Claims (5)
- プレス成形で成形されるパネル部品の耐デント性予測方法であって、
降伏強度YP’とひずみ量eとの関係を(1)式で近似し、
上記パネル部品の成形時の最大主ひずみが予め設定した設定閾値未満の評価位置に対し、(1)式のひずみ量eとしてその評価位置での最小主ひずみを採用して、(1)式に基づき、上記評価位置での降伏強度YP’を求め、その求めた降伏強度YP’によって耐デント性を予測することを特徴とするパネル部品の耐デント性予測方法。
但し、
YP’=A・e2+B・e+C ・・・(1)
ここで、A、B、Cは、予め設定した定数からなる係数である。 - 上記パネル部品の成形時の最大主ひずみが上記設定閾値以上の評価位置に対し、(1)式のひずみ量eとして最大主ひずみを採用して、(1)式に基づき、上記評価位置での降伏強度YP’を求めることを特徴とする請求項1に記載したパネル部品の耐デント性予測方法。
- 対象とするパネル部品と同等の材質及び厚さからなる試験片に対する引張試験によって求めた、降伏強度YP’と予歪eとの関係から、(1)式の係数を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したパネル部品の耐デント性予測方法。
- 上記(1)式に基づき上記設定閾値を設定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載したパネル部品の耐デント性予測方法。
- 求めた降伏強度YP’を、FEM解析の材料モデルに反映し、FEM解析にて各評価位置でのデント凹み量を予測することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載したパネル部品の耐デント性予測方法。
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