JP4568186B2 - デント剛性予測方法 - Google Patents
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Description
これまでは車両の開発の後半において、例えば試作車両が完成した段階で、試作車両の外板(板部材)の測定点に負荷を実際に掛けて、測定点の負荷方向での外板(板部材)の変位を実際に測定することにより、デント剛性を求めていた。
これにより、車両の開発の前半(例えば設計図面が完成した段階)において、デント剛性を予測する方法として、設計図面の情報からデント剛性を予測する方法が考えられており、板部材の測定点の曲率、板部材の測定点の板厚及び板部材の材質により、所定の関係式を求めて、測定点の負荷方向での変位を算定する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
これにより、設計図面の情報からデント剛性を予測する方法において、板部材の測定点の曲率、板部材の測定点の板厚及び板部材の材質だけでは、板部材の剛性を表す因子が不足していることが考えられる。
本発明はデント剛性予想方法として、設計図面の情報からデント剛性を予測する場合、デント剛性が適切に求められるようにすることを目的としている。
(構成)
本発明の第1特徴は、デント剛性予測方法において次のように構成することにある。
測定点に負荷を掛けた際に測定点の周囲に定義される応力影響領域の面積を、タワミ面積として算定する。板部材の測定点の曲率と、板部材の測定点の板厚と、板部材の材質とタワミ面積とにより、所定の関係式に基づいて測定点の負荷方向での変位を算定する。
例えば乗用車等の車両のドアやエンジンフード等の金属製の外板(板部材)では、板部材の測定点に負荷を実際に掛けた場合、測定点の負荷方向での変位は小さいが、測定点の周囲の比較的広い領域が負荷方向に変位するような部分があったり、測定点の負荷方向での変位は大きいが、測定点の周囲の比較的狭い領域が負荷方向に変位するような部分があったりと言うように、板部材の部分によって測定点の周囲の板部材の変形状態に差があることを、本発明の出願人は発見した。このような変形状態に差があることについて、本発明の出願人はCAE解析によっても確認した。
これにより、本発明の出願人は測定点の周囲の板部材の変形状態が、板部材の剛性を表す因子として有効なものになることを予想した。
これにより、本発明の第1特徴によると、設計図面から板部材の測定点の曲率、板部材の測定点の板厚、板部材の材質、タワミ面積を取り出すことにより、所定の関係式に基づいて測定点の負荷方向での変位(デント剛性)を、設計図面の段階で適切に算定することができる。
本発明の第1特徴によると、板部材の測定点の曲率、板部材の測定点の板厚及び板部材の材質に加えて、測定点に負荷を掛けた際に測定点の周囲に定義される応力影響領域の面積をタワミ面積として加味することにより、設計図面の情報からデント剛性を適切に求めることができるデント剛性予想方法が得られた。
これにより、開発の前半においてデント剛性を適切に求めることができ、デント剛性を適切に評価することができるようになって、デント剛性の評価が遅れることによる開発の遅れを未然に防止することができるようになる。
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴のデント剛性予測方法において次のように構成することにある。
応力影響領域を応力の変化度合いの特異点に基づいて定義する。
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、応力の変化度合いの特異点(例えば応力の変化度合いが急変するような点)により、タワミ面積を定義している。
これにより、本発明の第2特徴によると、測定点に負荷を掛けた際に、測定点から周囲に応力影響領域が広がっていく場合、応力の変化度合いの特異点(測定点の周囲に存在する)において、応力の伝播が遮断され、応力影響領域が終わると考えられるので、応力の変化度合いの特異点に基づいてタワミ面積(応力影響領域)を明確に定義することができる。
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、応力の変化度合いの特異点に基づいてタワミ面積(応力影響領域)を明確に定義することができるようになり、設計図面の情報からデント剛性を適切に求めることができるようになって、デント剛性予想方法の算定精度を高めることができた。
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴のデント剛性予測方法において次のように構成することにある。
測定点の周囲の板部材の部分において板部材の測定点の曲率とは異なる曲率の部分、及び板部材の裏面側に備えられた支持部材と板部材の裏面との接合点のうちの一方又は両方を、応力の変化度合いの特異点として含んでいる。
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第3特徴によると、測定点の周囲の板部材の部分において板部材の測定点の曲率とは異なる曲率の部分や、板部材の裏面側に備えられた支持部材と板部材の裏面との接合点は、応力の変化度合いの特異点となるのであり、これらは設計図面に明確な情報として記載されており、設計図面から明確に把握し易いので、これらによってタワミ面積を的確に算定することができる。
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、測定点の周囲の板部材の部分において板部材の測定点の曲率とは異なる曲率の部分や、板部材の裏面側に備えられた支持部材と板部材の裏面との接合点により、タワミ面積を的確に算定することができるようになり、設計図面の情報からデント剛性を適切に求めることができるようになって、デント剛性予想方法の算定精度を高めることができた。
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第2又は第3特徴のデント剛性予測方法において次のように構成することにある。
測定点から板部材に沿って外方に所定距離を設定して、応力の変化度合いの特異点が測定点から所定距離を越えて離れていると、所定距離の位置を応力の変化度合いの特異点とする。
本発明の第4特徴によると、本発明の第2又は第3特徴と同様に前項[I][II][III]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
例えば前項[II][III]に記載のような応力の変化度合いの特異点が測定点から大きく離れていると、タワミ面積が非常に大きな値として算定される可能性があり、非常に大きな値のタワミ面積により、デント剛性を適切に算定できないような状態になることが考えられる。
本発明の第4特徴によると、応力の変化度合いの特異点が測定点から所定距離を越えて離れていると、所定距離の位置を応力の変化度合いの特異点とするので、タワミ面積が必要以上に大きな値として算定されるようなことがない。
本発明の第4特徴によると、本発明の第2又は第3特徴と同様に前項[I][II][III]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、タワミ面積が必要以上に大きな値として算定されるようなことがなく、デント剛性を適切に算定できないような状態になることを避けることができて、デント剛性予想方法の算定精度を高めることができた。
(構成)
本発明の第5特徴は、本発明の第2〜第4特徴のデント剛性予測方法のうちのいずれか一つにおいて次のように構成することにある。
応力の変化度合いの特異点を3個以上設定して、応力の変化度合いの特異点を頂点とする多角形の板部材の領域を、タワミ面積として算定する。
本発明の第5特徴によると、本発明の第2〜第4特徴のうちのいずれか一つと同様に前項[I]〜[IV]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
前項[II]に記載のように応力の変化度合いの特異点によりタワミ面積を定義して、タワミ面積を算定する場合、例えばタワミ面積の形状が複数の曲線の組み合わせで形成されるものであると、タワミ面積の算定が難しいものになることがある。
本発明の第5特徴によると、本発明の第2〜第4特徴のうちのいずれか一つと同様に前項[I]〜[IV]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第5特徴によると、タワミ面積を容易に算定することができるようになり、設計図面の情報からデント剛性を適切に求めることができるようになって、デント剛性予想方法の算定精度を高めることができた。
(構成)
本発明の第6特徴は、本発明の第1特徴のデント剛性予測方法において次のように構成することにある。
板部材の裏面側に備えられた支持部材と板部材の裏面とが、測定点を囲むように接合されていると、測定点を囲むように接合された板部材の領域の面積をタワミ面積とする。
本発明の第6特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
板部材の裏面側に支持部材が備えられて、支持部材と板部材の裏面とが接合されている場合、測定点を囲むように接合されていることがある。このような状態において、測定点に負荷を掛けた際に、測定点から周囲に応力影響領域が広がっていく場合、接合された部分と外側の接合されていない部分との境界で応力の伝播が遮断され、応力影響領域が終わると考えられるので、測定点を囲むように接合された板部材の領域の面積を、タワミ面積(応力影響領域)として明確に定義することができる。
本発明の第6特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第6特徴によると、測定点を囲むように接合された板部材の領域の面積によりタワミ面積(応力影響領域)を明確に定義することができるようになり、設計図面の情報からデント剛性を適切に求めることができるようになって、デント剛性予想方法の算定精度を高めることができた。
図1及び図2に示すように、ドア1の外板3におけるドアグリップ2の少し上側の部分に測定点P1を設定し、ドア1の外板3の測定点P1での縦曲率RT1(図1の紙面上下方向での曲率)及び横曲率RY1(図1の紙面左右方向での曲率)を、設計図面の情報から求める。この場合、図4に示すように、所定の板部材(所定の材質及び板厚)の測定点に負荷(荷重)を掛けた際、測定点での曲率が大きくなるほど(曲率半径が大きくなるほど)、デント剛性が高くなる(測定点の負荷方向での板部材の変位が小さくなる)と言う相関関係が事前に求められている。
図1及び図2に示すように、ドア1の外板3の測定点P1での板厚T1を、設計図面の情報から求める。この場合、図5に示すように、所定の板部材(所定の材質及び曲率)の測定点に負荷(荷重)を掛けた際、測定点での板厚が大きくなるほど、デント剛性が高くなる(測定点の負荷方向での板部材の変位が小さくなる)と言う相関関係が事前に求められている。
図1及び図2に示すように、ドア1の外板3に使用される材料を、設計図面の情報から求める。ドア1の外板3に使用される材料において、図6に示すように、応力・歪みグラフ(荷重・応力グラフ)が求められており、ドア1の外板3に使用される材料の上降伏点が、ドア1の外板3の測定点P1での到達YP値Y1として求められるのであり、ドア1の外板3に使用される材料に施す熱処理等の各種の処理により、上降伏点(到達YP値Y1)が高低に変化する。この場合、図7に示すように、所定の板部材(所定の曲率及び板厚)の測定点に負荷(荷重)を掛けた際、測定点の負荷方向での変位が事前に求められており、到達YP値T11,Y12,Y13が大きいほど、デント剛性が高くなる(測定点の負荷方向での板部材の変位が小さくなる)と言う相関関係が事前に求められている。
図1及び図3に示すように、ドア1の外板3におけるドアグリップ2の少し上側の部分に測定点P1を設定した場合、ドア1の外板3の測定点P1の下方に、ドアグリップ2を備えたドアグリップユニット4(ドア1の外板3とは別部材)が存在し、ドア1の外板3の測定点P1の上方に、ドア1の外板3のプレスライン5が存在している。ドア1の外板3の裏面側において、ドア1の外板3の測定点P1の後方(図1の紙面左方)及び前方(図1の紙面右方)に、ドア1の補強としての支持部材7,8が備えられており、支持部材7,8とドア1の外板3の裏面とがマスチック剤9,10によって接合されている。
この場合、支持部材7,8とドア1の外板3の裏面との接合点(マスチック剤9,10)において、接合点の中央(マスチック剤9,10の塗布範囲の中央)を特異点A3,A4として設定したり、ドア1の外板3の測定点P1に最も遠い部分を特異点A3,A4として設定することもできる。
前項[1]〜[4]に記載のようにして求めたドア1の外板3の測定点P1での縦曲率RT1及び横曲率RY1、ドア1の外板3の測定点P1での板厚T1、ドア1の外板3の測定点P1での到達YP値Y1、及びタワミ面積B1を説明変数(ドア1の外板3の剛性を表す因子)とし、測定点P1の負荷方向での変位H1を目的変数として、重回帰分析を行って、以下に示す関係式D1を得ることができた。
H1:測定点P1の負荷方向でのドア1の外板3の変位
RT1:ドア1の外板3の測定点P1での縦曲率
RY1:ドア1の外板3の測定点P1での横曲率
T1:ドア1の外板3の測定点P1での板厚
Y1:ドア1の外板3の測定点P1での到達YP値
C1,C2,C3,C4,C5:定数
「^」は階乗を意味する。
Logの底は「e」である。
この場合、ドア1の外板3の測定点P1に負荷を実際に掛けて求めたデント剛性(測定点P1の負荷方向でのドア1の外板3の変位H1)と、関係式D1とを比較すると、両者が充分に合致する結果が得られた(多重共線性(VIF)がなく、例えば重相関係数が0.92で自由度調整済み寄与率が0.82である)。
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、前項[4]及び図3に示すタワミ面積B1に代えて、図8に示すようにタワミ面積B1を算定するようにしてもよい。
図8に示すように、ドア1の補強として比較的幅広の支持部材(図示せず)がドア1の外板3の裏面側に備えられ、マスチック剤11が比較的広い範囲に亘って塗布されて、ドア1の外板3の測定点P1を囲むように、支持部材とドア1の外板3の裏面とがマスチック剤11により比較的広い範囲に亘って接合されている。この場合、マスチック剤11の塗布面積を、タワミ面積B1として算定する。
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]では、ドア1の外板3におけるドアグリップ2の少し上側の部分のデント剛性を、設計図面(図示せず)の情報から求める方法(デント剛性予測方法)(関係式D1)が示されているが、乗用車のエンジンフード(図示せず)やハッチバック型式の乗用車のバックドアにおいても、前項[5]に記載の関係式D1と同じ関係式が得られる(但し定数C1,C2,C3,C4,C5の値は異なる)。
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]に記載のように、ドア1の開き操作を行う際にドア1の外板3におけるドアグリップ2の少し上側の部分を親指で押す状態において、測定点P1の負荷方向でのドア1の外板3の変位H1を求めると、これに基づいて以下の関係式D2により、ドア1の外板3におけるドアグリップ2の少し上側の部分を手のひらで押す状態でのデント剛性を求めることができる。
Z1:判別値
H1:測定点P1の負荷方向でのドア1の外板3の変位
RT1:ドア1の外板3の測定点P1での縦曲率
RY1:ドア1の外板3の測定点P1での横曲率
T1:ドア1の外板3の測定点P1での板厚
Y1:ドア1の外板3の測定点P1での到達YP値
C11,C12,C13,C14,C15:定数
前述の[発明の実施の第3別形態]では、ドア1の外板3におけるドアグリップ2の少し上側の部分を手のひらで押す状態でのデント剛性を、設計図面(図示せず)の情報から求める方法(デント剛性予測方法)(関係式D2)が示されているが、乗用車のエンジンフード(図示せず)やハッチバック型式の乗用車のバックドアにおいても、関係式D2と同じ関係式が得られる(但し定数C11,C12,C13,C14,C15の値は異なる)。
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]〜[発明の実施の第4別形態]において、以下のように構成してもよい。
関係式D1,D2を得る場合に重回帰分析ばかりではなく、ニュウラルネットワークや各種の統計的手法を用いて、関係式D1,D2を得るようにしてもよい。
本発明は乗用車等の車両の外板ばかりではなく、家電製品の外板、金属製のドアの外板やパネル等の金属製の板部材等にも適用できる。
A1,A2,A3,A4 応力の変化度合いの特異点
B1 タワミ面積
D1 所定の関係式
H1 測定点の負荷方向での板部材の変位
P1 測定点
RT1,RY1 板部材の測定点の曲率
T1 板部材の測定点の板厚
Y1 板部材の材質
Claims (6)
- 金属製の板部材の測定点に負荷を掛けた際に、測定点の負荷方向での板部材の変位を算定するデント剛性予測方法において、
測定点に負荷を掛けた際に測定点の周囲に定義される応力影響領域の面積を、タワミ面積として算定し、
板部材の測定点の曲率と、板部材の測定点の板厚と、板部材の材質と、前記タワミ面積とにより、所定の関係式に基づいて、測定点の負荷方向での変位を算定するデント剛性予測方法。 - 前記応力影響領域が、応力の変化度合いの特異点に基づいて定義される請求項1に記載のデント剛性予測方法。
- 測定点の周囲の板部材の部分において板部材の測定点の曲率とは異なる曲率の部分、及び板部材の裏面側に備えられた支持部材と板部材の裏面との接合点のうちの一方又は両方を、前記応力の変化度合いの特異点として含んでいる請求項2に記載のデント剛性予測方法。
- 測定点から板部材に沿って外方に所定距離を設定して、前記応力の変化度合いの特異点が測定点から前記所定距離を越えて離れていると、前記所定距離の位置を応力の変化度合いの特異点とする請求項2又は3に記載のデント剛性予測方法。
- 前記応力の変化度合いの特異点を3個以上設定して、前記応力の変化度合いの特異点を頂点とする多角形の板部材の領域を、前記タワミ面積として算定する請求項2〜4のうちのいずれか一つに記載のデント剛性予測方法。
- 板部材の裏面側に備えられた支持部材と板部材の裏面とが、測定点を囲むように接合されていると、測定点を囲むように接合された板部材の領域の面積を、前記タワミ面積とする請求項1に記載のデント剛性予測方法。
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