JP2019089877A - 合成樹脂微多孔フィルム、蓄電デバイス用セパレータ及び蓄電デバイス - Google Patents

合成樹脂微多孔フィルム、蓄電デバイス用セパレータ及び蓄電デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、リチウムイオンなどのイオンの透過性に優れており、高性能のリチウムイオン電池、キャパシタ、コンデンサなどの蓄電デバイスを構成することができ、高出力用途に用いてもデンドライトによる正極と負極の短絡や放電容量の急激な低下が生じにくい合成樹脂微多孔フィルムを提供する。【解決手段】 本発明の合成樹脂微多孔フィルムは、合成樹脂及び微小孔部を含有し且つ一軸延伸されており、バブルポイント法によって測定された、バブルポイント細孔直径rBP及び平均流量直径rAVEが式(1)を満たす。合成樹脂微多孔フィルムは、イオンの透過性に優れており、高性能の蓄電デバイスを構成することができ、高出力用途に用いてもデンドライトによる正極と負極の短絡や放電容量の急激な低下が生じにくい。【選択図】 なし

Description

本発明は、合成樹脂微多孔フィルム、蓄電デバイス用セパレータ及び蓄電デバイスに関する。
従来からリチウムイオン電池、キャパシタ、コンデンサなどの蓄電デバイスが用いられている。例えば、リチウムイオン電池は、一般的に正極と、負極と、セパレータとを電解液中に配設することによって構成されている。正極は、アルミニウム箔の表面にコバルト酸リチウム又はマンガン酸リチウムが塗布されてなる。負極は、銅箔の表面にカーボンが塗布されてなる。そして、セパレータは、正極と負極とを仕切るように配設され、正極と負極との短絡を防止している。
リチウムイオン電池の充電時には、正極からリチウムイオンが放出されて負極内に進入する。一方、リチウムイオン電池の放電時には、負極からリチウムイオンが放出されて正極に移動する。このような充放電がリチウムイオン電池では繰り返される。従って、リチウムイオン電池に用いられているセパレータには、リチウムイオンが良好に透過できることが必要とされる。
リチウムイオン電池の充放電を繰り返すと、負極端面にリチウムのデンドライト(樹枝状結晶)が発生する。このデンドライトは、セパレータを突き破って正極と負極との微小な短絡(デンドライトショート)を生じる。
近年、自動車用のリチウムイオン電池のような大型電池は高出力化が進んでおり、リチウムイオンがセパレータを通過する際の低抵抗化が求められている。そのため、セパレータには高い透気性を有していることが必要とされている。更に、大型のリチウムイオン電池の場合には、長寿命、長期安全性の保障も重要となる。
特許文献1には、ポリプロピレン樹脂とβ晶核剤とを含む多孔性ポリプロピレンフィルムであって、幅方向の寸法が5%熱収縮する温度が130〜200℃であり、透気抵抗が50〜500秒/100mlであり、空孔率が35〜70%であり、かつ、下記関係式を満たしている多孔性ポリプロピレンフィルムが開示されている。
G+15×ε≦1,200
WO2012/105661
しかしながら、特許文献1の多孔性ポリプロピレンフィルムは、透気性が低く、リチウムイオンの透過性が不十分である。そのため、このようなポリプロピレン微多孔性フィルムは、高出力を要するリチウムイオン電池に用いることは困難である。
また、セパレータに孔が均一に形成されていない場合、リチウムイオンの透過性も不均一となる。そのため、セパレータ中でリチウムイオンの透過性が高い部位と低い部位とが生じる。このようなセパレータでは、リチウムイオンの透過性が高い部位にデンドライトが発生して微小な短絡が起こり易くなり、長寿命や長期安全性が充分ではないという問題点を有する。
本発明は、リチウムイオンなどのイオンの透過性に優れており、高性能のリチウムイオン電池、キャパシタ、コンデンサなどの蓄電デバイスを構成することができ、高出力用途に用いてもデンドライトによる正極と負極の短絡や放電容量の急激な低下が生じにくい合成樹脂微多孔フィルムを提供する。
[合成樹脂微多孔フィルム]
本発明の合成樹脂微多孔フィルムは、
合成樹脂及び微小孔部を含有し且つ一軸延伸されており、バブルポイント法によって測定された、バブルポイント細孔直径rBP及び平均流量直径rAVEが式(1)を満たす。
100×(rBP−rAVE)/rAVE<40・・・式(1)
合成樹脂微多孔フィルムは合成樹脂を含んでいる。合成樹脂としては、オレフィン系樹脂が好ましく、エチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂が好ましく、プロピレン系樹脂がより好ましい。
合成樹脂中におけるオレフィン系樹脂の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。
プロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。延伸法によって合成樹脂微多孔フィルムが製造される場合には、ホモポリプロピレンが好ましい。プロピレン系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。又、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。プロピレン系樹脂中におけるプロピレン成分の含有量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
なお、プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンなどが挙げられ、エチレンが好ましい。
エチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高密度ポリエチレン、及びエチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。また、エチレン系樹脂微多孔フィルムは、エチレン系樹脂を含んでいれば、他のオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。エチレン系樹脂中におけるエチレン成分の含有量は、好ましくは50質量%を超え、より好ましくは80質量%以上である。
オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、3万〜50万が好ましく、5万〜48万がより好ましい。プロピレン系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、25万〜50万が好ましく、28万〜48万がより好ましい。エチレン系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、3万〜25万が好ましく、5万〜20万がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、透気性に優れた合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
オレフィン系樹脂の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、特に限定されないが、5〜30が好ましく、7.5〜25がより好ましい。プロピレン系樹脂の分子量分布は、特に限定されないが、7.5〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。エチレン系樹脂の分子量分布は、特に限定されないが、5.0〜30が好ましく、8.0〜25がより好ましい。分子量分布が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、透気性に優れた合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
ここで、オレフィン系樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、オレフィン系樹脂6〜7mgを採取し、採取したオレフィン系樹脂を試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含んでいるo−DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてオレフィン系樹脂濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転数25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてオレフィン系樹脂をo−DCB溶液に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってオレフィン系樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量を測定することができる。
オレフィン系樹脂における重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o−DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500〜8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
オレフィン系樹脂の融点は、特に限定されないが、130〜170℃が好ましく、133〜165℃がより好ましい。プロピレン系樹脂の融点は、特に限定されないが、160〜170℃が好ましく、160〜165℃がより好ましい。エチレン系樹脂の融点は、特に限定されないが、130〜140℃が好ましく、133〜139℃がより好ましい。融点が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、透気性に優れた合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
なお、本発明において、オレフィン系樹脂の融点は、示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツル社 装置名「DSC220C」など)を用い、下記手順に従って測定することができる。先ず、オレフィン系樹脂10mgを25℃から昇温速度10℃/分にて250℃まで加熱し、250℃にて3分間に亘って保持する。次に、オレフィン系樹脂を250℃から降温速度10℃/分にて25℃まで冷却して25℃にて3分間に亘って保持する。続いて、オレフィン系樹脂を25℃から昇温速度10℃/分にて250℃まで再加熱し、この再加熱工程における吸熱ピークの頂点の温度を、オレフィン系樹脂の融点とする。
合成樹脂微多孔フィルムは、微小孔部を含んでいる。微小孔部は、フィルムの厚み方向に貫通していることが好ましく、これにより合成樹脂微多孔フィルムに優れた透気性を付与することができる。このような合成樹脂微多孔フィルムはその厚み方向にリチウムイオンなどのイオンを透過させることが可能となる。なお、合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向とは、合成樹脂微多孔フィルムの主面に対して直交する方向をいう。合成樹脂微多孔フィルムの主面とは、合成樹脂微多孔フィルムの表面のうち、最も面積の大きい面をいう。
合成樹脂微多孔フィルムは、好ましくは延伸によって微小孔部が形成されている。合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向に沿った断面において、微小孔部の平均孔径が20〜100nmが好ましく、20〜70nmがより好ましく、30〜50nmが特に好ましい。
微小孔部の平均孔径は下記の要領で測定された値をいう。先ず、合成樹脂微多孔フィルムをその厚み方向及び延伸方向に沿って(合成樹脂微多孔フィルムの主面に対して直交し且つ延伸方向に沿った面に沿って)切断し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて拡大倍率1万倍で切断面の拡大写真を撮影する。なお、拡大写真の縦方向が厚み方向となるように調整し、厚み方向の中心部を撮影箇所とする。得られた拡大写真の全範囲を測定区画と定める。
合成樹脂微多孔フィルムの切断面のSEM写真は以下の要領で撮影される。先ず、合成樹脂微多孔フィルムを銅テープなどで切断しやすいように補強した後、クロスセクションポリッシャー(例えば、日本電子社から商品名「IB−19500CP」にて市販されているクロスセクションポリッシャー)を用いて切断する。次に、チャージアップによる画像の乱れを防ぐため、切断面に金属膜(例えば、金、白金、オスミウム、カーボンなどの金属膜)を蒸着させた後、SEM(例えば、日立社から商品名「S−4800S」にて市販されているSEM)を用いて、加速電圧1.0kVの条件で切断面を撮影する。上記要領にて測定することで、鮮明な拡大写真を撮影することが可能となるが、鮮明な拡大写真を得ることができれば、上述した方法に限定されるものではない。
次に、拡大写真中にあらわれた微小孔部を包囲し且つ長軸及び短軸が共に最短となる楕円を微小孔部ごとに描く。この楕円の長軸の長さと短軸の長さの相加平均値を微小孔部の孔径とする。測定区画内にある微小孔部の孔径の相加平均値を微小孔部の平均孔径とする。なお、測定区画内に全てが入っている微小孔部のみを測定対象とする。
合成樹脂微多孔フィルムの空孔率は、40〜70%が好ましく、50〜67%がより好ましく、53〜60%が特に好ましい。空孔率が上記範囲内である合成樹脂微多孔フィルムは、透気性に優れた合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
なお、合成樹脂微多孔フィルムの空孔率は下記の要領で測定することができる。先ず、合成樹脂微多孔フィルムを切断することにより縦10cm×横10cmの平面正方形状(面積100cm2)の試験片を得る。次に、試験片の重量W(g)を及び厚みT(cm)を測定し、下記により見掛け密度ρ(g/cm3)を算出する。なお、試験片の厚みは、ダイヤルゲージ(例えば、株式会社ミツトヨ製 シグナルABSデジマチックインジケータ)を用いて、試験片の厚みを15箇所測定し、その相加平均値とする。そして、この見掛け密度ρ(g/cm3)及び合成樹脂微多孔フィルムを構成している合成樹脂自体の密度ρ(g/cm3)を用いて下記に基づいて合成樹脂微多孔フィルムの空孔率(%)を算出することができる。
見掛け密度ρ(g/cm3)=W/(100×T)
空孔率[%]=100×[(ρ−ρ)/ρ
合成樹脂微多孔フィルムの厚みは、6μm以上、25μm以下が好ましく、9μm以上、20μm以下がより好ましく、12μm以上、18μm以下が特に好ましい。合成樹脂微多孔フィルムの厚みが6μm以上であると、異物が混入した時にあっても正負極の短絡を防止することができる。合成樹脂微多孔フィルムの厚みが25μm以下であると、蓄電デバイスのセパレータとして用いた時に、合成樹脂微多孔フィルムの総積層数を多くすることができ、単位体積当たりの電池容量を大きくすることができる。
なお、本発明において、合成樹脂微多孔フィルムの厚みの測定は、次の要領に従って行うことができる。すなわち、合成樹脂微多孔フィルムの任意の10箇所をダイヤルゲージを用いて測定し、その相加平均値を合成樹脂微多孔フィルムの厚みとする。
合成樹脂微多孔フィルムの透気抵抗は、20sec/100mL/16μm以上、100sec/100mL/16μm以下が好ましく、20sec/100mL/16μm以上、80sec/100mL/16μm以下がより好ましく、20sec/100mL/16μm以上、70sec/100mL/16μm以下が特に好ましい。合成樹脂微多孔フィルムの透気抵抗は、20sec/100mL/16μm以上、60sec/100mL/16μm以下が最も好ましい。透気抵抗が上記範囲内である合成樹脂微多孔フィルムによれば、イオン透過性に優れている合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
なお、合成樹脂微多孔フィルムの透気抵抗は下記の要領で測定された値をいう。温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下でJIS P8117に準拠して、合成樹脂微多孔フィルムの任意の10箇所における透気度を測定し、その相加平均値を合成樹脂微多孔フィルムの厚みで除し、厚み16μm当たりに規格化した値を透気抵抗(sec/100mL/16μm)とする。
発明者は、バブルポイント法によって測定されたバブルポイント細孔直径rBPと、バブルポイント法によって測定された平均流量直径rAVEとの関係を鋭意検討した。その結果、バブルポイントrBPと平均流量直径rAVEが下記式(1)の関係を満たしているとき、微小孔部が蛇行及び屈曲されるのをできるだけ抑制しつつ、合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向に向かって直線状に延びた状態に形成されており、合成樹脂微多孔フィルムに優れた透気性を付与することができることを見出した。
即ち、合成樹脂微多孔フィルムは、バブルポイント法によって測定されたバブルポイント細孔直径rBPと、バブルポイント法によって測定された平均流量直径rAVEとが、下記式(1)を満たしている。
100×(rBP−rAVE)/rAVE<40・・・式(1)
合成樹脂微多孔フィルムは、下記式(2)を満たしていることが好ましい。
100×(rBP−rAVE)/rAVE<35・・・式(2)
合成樹脂微多孔フィルムは、下記式(3)を満たしていることが好ましい。
100×(rBP−rAVE)/rAVE<30・・・式(3)
上記式(1)を満たしていると、合成樹脂微多孔フィルム内の微小孔部が合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向に概ね揃った状態に形成されており、合成樹脂微多孔フィルムの透気性を向上させることができる。
そして、合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部を略均一に形成することができるので、リチウムイオンなどのイオンの透過性を均一にすることができ、デンドライトの発生を概ね抑制し、合成樹脂微多孔フィルムをセパレータとして用いた蓄電デバイスの長寿命及び長期安全性の向上を図ることができる。
更に、合成樹脂微多孔フィルムは一軸延伸されており、合成樹脂微多孔フィルムには一軸延伸時に加えられた延伸応力が残留応力として僅かに残っている。そのため、合成樹脂微多孔フィルムは、蓄電デバイス内が異常高温となった場合には、残留応力によって正極と負極とを短絡させない程度に僅かに変形し、合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向に延びる微小孔部を積極的に屈曲させることによってイオン透過性を低下させる。その結果、蓄電デバイス内の異常反応を抑制し、蓄電デバイス内の異常高温を緩和させて安全性を向上させることができる。
なお、合成樹脂微多孔フィルムのバブルポイントrBP及び平均流量直径rAVEは、下記の要領に基づいてバブルポイント法によって測定された値をいう。詳細には、バブルポイントrBP及び平均流量直径rAVEは、比表面積・細孔径分析装置を用い、下記手順にしたがって測定することができる。先ず、JIS K 3832(1990)に準拠したバブルポイント法、及び、ASTM E1294−89(1999)に準拠したハーフドライ法に基づき測定を行った。合成樹脂微多孔フィルムから一辺50mmの平面正六角形状の試験片を切り出す。ハーフドライ法による濡れ流量曲線を描くための試験片に含浸させる液体としてフッ素系不活性液体を用いる。液体を含浸させた試料を用いて比表面積・細孔径分析装置によってバブルポイントrBP及び平均流量直径rAVEを測定する。なお、比表面積・細孔径分析装置としては、例えば、Porous Materials,Inc.から商品名「Perm−Porometer(CFP−1200A)」にて市販されている装置などを用いることができる。ハーフドライ法による濡れ流量曲線を描くための試験片に含浸させるフッ素系不活性液体としては、例えば、3M社から商品名「フロリナートFC−40(表面張力16dynes/cm)」にて市販されている液体を用いることができる。
具体的には、比表面積・細孔径分析装置として、Porous Materials,Inc.から商品名「Perm−Porometer(CFP−1200A)」にて市販されている装置を用いた場合について説明する。先ず、合成樹脂微多孔フィルムから一辺50mmの平面正六角形状の試験片を切り出す。ハーフドライ法による濡れ流量曲線を描くための試験片に、3M社から商品名「フロリナートFC−40(表面張力16dynes/cm)」にて市販されている液体を全面的に含浸させる。Porous Materials,Inc.社推奨のOリング(内径:14mm、外径:26mm)をはめたチャンバー内に、空気が噛み込まないように試験片を設置した後、試験片上に上記と同一のOリングをはめたシリンダーを配設し、試験片をチャンバーとシリンダーとで挟み込んだ後、チャンバーキャップを締めて試験片を所定位置に配設する。測定モードは、ウェットアップ/ドライアップモードとし、ウェット試験及びドライ試験を同一の試験片で測定する。測定パラメータは、バブルフローを10cc/分、バブルタイムを200とした以外はデフォルト値とする。推定バブルポイント圧力は0(大気圧)とする。測定は、試験片を交換してバブルポイントrBP及び平均流量直径rAVEの測定をそれぞれ3回行なう。バブルポイントrBPの相加平均値を合成樹脂微多孔フィルムのバブルポイントrBPとする。平均流量直径rAVEの相加平均値を合成樹脂微多孔フィルムの平均流量直径rAVEとする。
バブルポイント細孔直径rBPは、0.01μm以上、0.1μm以下が好ましく、0.02μm以上、0.08μm以下がより好ましく、0.02μm以上、0.07μm以下が特に好ましい。バブルポイント細孔直径rBPが0.01μm以上であると、リチウムイオンなどのイオンの透過性が向上する。バブルポイント細孔直径rBPが0.1μm以下であると、デンドライトの発生を概ね抑制することができる。
合成樹脂微多孔フィルムは、上述の通り、優れた透気性を有しておりデンドライトの生成を概ね抑制することができる。従って、合成樹脂微多孔フィルムは、高出力を必要とする蓄電デバイス〔リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池、キャパシタ(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ)、コンデンサなど〕のセパレータとして好適に用いることができる。
[合成樹脂微多孔フィルムの製造方法]
合成樹脂微多孔フィルムの製造方法を説明する。
合成樹脂微多孔フィルムは、下記工程、
合成樹脂を押出機に供給して溶融混練し、上記押出機の先端に取り付けたTダイから押出すことにより合成樹脂フィルムを得る押出工程と、
上記押出工程で得られた上記合成樹脂フィルムをその表面温度が(合成樹脂の融点−30℃)〜(合成樹脂樹脂の融点−1℃)となるようにして1分以上養生する養生工程と、
上記養生工程後の上記合成樹脂フィルムを歪み速度10〜250%/分且つ延伸倍率1.5〜2.8倍にて一軸延伸する延伸工程と、
上記延伸工程後の上記合成樹脂フィルムをアニールするアニーリング工程と、を含む方法によって製造することができる。以下、合成樹脂微多孔フィルムの製造方法について、順を追って説明する。
(押出工程)
先ず、合成樹脂を押出機に供給して溶融混練し、押出機の先端に取り付けたTダイから押出すことにより合成樹脂フィルムを得る押出工程を行う。
合成樹脂を押出機にて溶融混練する際の合成樹脂の温度は、(合成樹脂の融点+20℃)〜(合成樹脂の融点+100℃)が好ましく、(合成樹脂の融点+25℃)〜(合成樹脂の融点+80℃)がより好ましい。合成樹脂の温度が上記範囲内であると、合成樹脂の配向性が向上し、合成樹脂のラメラを高度に形成することができる。
合成樹脂を押出機からフィルム状に押出す際におけるドロー比は、50〜300が好ましく、55〜280がより好ましく、65〜250が特に好ましく、68〜250が最も好ましい。ドロー比が50以上であると、合成樹脂を充分に分子配向させて、合成樹脂のラメラを充分に生成させることができる。ドロー比が、300以下であると、合成樹脂フィルムの製膜安定性が向上し、合成樹脂フィルムの厚み精度及び幅精度を向上させることができる。
なお、ドロー比とは、TダイのリップのクリアランスをTダイから押出された合成樹脂フィルムの厚みで除した値をいう。Tダイのリップのクリアランスの測定は、JIS B7524に準拠したすきまゲージ(例えば、株式会社永井ゲージ製作所製 JISすきまゲージ)を用いてTダイのリップのクリアランスを10箇所以上測定し、その相加平均値を求めることにより行うことができる。また、Tダイから押出された合成樹脂フィルムの厚みは、ダイヤルゲージ(例えば、株式会社ミツトヨ製 シグナルABSデジマチックインジケータ)を用いてTダイから押出された合成樹脂フィルムの厚みを10箇所以上測定し、その相加平均値を求めることにより行うことができる。
合成樹脂フィルムの製膜速度は、10〜300m/分が好ましく、15〜250m/分がより好ましく、15〜30m/分が特に好ましい。合成樹脂フィルムの製膜速度が10m/分以上であると、合成樹脂を充分に分子配向させて、合成樹脂のラメラを充分に生成させることができる。また、合成樹脂フィルムの製膜速度が300m/分以下であると、合成樹脂フィルムの製膜安定性が向上し、合成樹脂フィルムの厚み精度及び幅精度を向上させることができる。
Tダイから押出された合成樹脂フィルムをその表面温度が(合成樹脂の融点−100℃)以下となるまで冷却することが好ましい。これにより、合成樹脂が結晶化してラメラを生成することを促進させることができる。溶融混練した合成樹脂を押出すことにより、合成樹脂フィルムを構成している合成樹脂分子を予め配向させた上で、合成樹脂フィルムを冷却することにより、合成樹脂が配向している部分においてラメラの生成を促進させることができる。
冷却された合成樹脂フィルムの表面温度は、合成樹脂の融点よりも100℃低い温度以下が好ましく、合成樹脂の融点よりも140〜110℃低い温度がより好ましく、合成樹脂の融点よりも135〜120℃低い温度が特に好ましい。冷却された合成樹脂フィルムの表面温度が合成樹脂の融点よりも100℃低い温度以下であると、合成樹脂フィルムを構成している合成樹脂のラメラを十分に生成することができる。
(養生工程)
次に、上述した押出工程により得られた合成樹脂フィルムを養生する。この合成樹脂フィルムの養生工程は、押出工程において合成樹脂フィルム中に生成させたラメラを成長させるために行う。このことにより、合成樹脂フィルムの押出方向に結晶化部分(ラメラ)と非結晶部分とが交互に配列してなる積層ラメラ構造を形成させることができ、後述する合成樹脂フィルムの延伸工程において、ラメラ内ではなく、ラメラ間において亀裂を発生させ、この亀裂を起点として微小な貫通孔(微小孔部)を形成することができる。
合成樹脂フィルムの養生温度は、(合成樹脂の融点−30℃)〜(合成樹脂の融点−1℃)が好ましく、(合成樹脂の融点−25℃)〜(合成樹脂の融点−5℃)がより好ましい。合成樹脂フィルムの養生温度が(合成樹脂の融点−30℃)以上であると、合成樹脂の分子を十分に配向させてラメラを十分に成長させることができる。また、合成樹脂フィルムの養生温度が(合成樹脂の融点−1℃)以下であると、合成樹脂の分子を十分に配向させてラメラを十分に成長させることができる。なお、合成樹脂フィルムの養生温度とは、合成樹脂フィルムの表面温度をいう。
合成樹脂フィルムの養生時間は、1分以上が好ましく、3分以上がより好ましく、5分以上が特に好ましく、10分以上が最も好ましい。合成樹脂フィルムを1分以上養生させることにより、合成樹脂フィルムのラメラを十分に且つ均一に成長させることができる。また、養生時間が長すぎると、合成樹脂フィルムが熱劣化する虞れがある。したがって、養生時間は、30分以下が好ましく、20分以下がより好ましい。
(延伸工程)
次に、養生工程後の合成樹脂フィルムを一軸延伸する延伸工程を行う。延伸工程では、合成樹脂フィルムを好ましくは押出方向にのみ一軸延伸する。
延伸工程における合成樹脂フィルムの延伸方法としては、合成樹脂フィルムを一軸延伸することができれば、特に限定されず、例えば、合成樹脂フィルムを一軸延伸装置を用いて所定温度にて一軸延伸する方法などが挙げられる。合成樹脂フィルムの延伸は、複数回分割して行う逐次延伸が好ましい。逐次延伸をすることによって、得られる合成樹脂微多孔フィルムの空孔率を低く抑えながら透気抵抗を向上させることができる。
合成樹脂フィルムの延伸時における歪み速度は、10〜250%/分が好ましく、30〜245%/分がより好ましく、35〜240%/分が特に好ましい。合成樹脂フィルムの延伸時における歪み速度を上記範囲内に調整することによって、ラメラ間において不規則に亀裂が発生するのではなく、合成樹脂フィルムの延伸方向に所定間隔毎に配列し且つ合成樹脂フィルムの厚み方向に延びる仮想直線上にあるラメラ間において規則的に亀裂が発生する。従って、合成樹脂微多孔フィルムには、概ね厚み方向に延びる支持部(層状の結晶部分)が形成されると共に微小孔部ができるだけ厚み方向に連続した直線状に形成される。合成樹脂フィルムの延伸時における歪み速度とは、下記式に基づいて算出された値をいう。なお、延伸倍率λ[%]、ライン搬送速度V[m/分]及び延伸区間路長F[m]に基づいて算出される、単位時間当たりの変形歪みε[%/分]をいう。ライン搬送速度Vとは、延伸区間の入口での合成樹脂フィルムの搬送速度をいう。延伸区間路長Fとは、延伸区間の入口から出口までの搬送距離をいう。
歪み速度ε=λ×V/F
延伸工程において、合成樹脂フィルムの表面温度は、(合成樹脂の融点−100℃)〜(合成樹脂の融点−5℃)が好ましく、(合成樹脂の融点−30℃)〜(合成樹脂の融点−10℃)がより好ましい。上記表面温度が上記範囲内にあると、合成樹脂フィルムを破断させることなく、ラメラ間の非結晶部において円滑に亀裂を発生させて微小孔部を生成することができる。
延伸工程において、合成樹脂フィルムの延伸倍率は、1.5〜3.0倍が好ましく、2.0〜2.9倍がより好ましく、2.3〜2.8倍が特に好ましい。上記延伸倍率が上記範囲内であると、合成樹脂フィルムに微小孔部を均一に形成することができる。
なお、合成樹脂フィルムの延伸倍率とは、延伸後の合成樹脂フィルムの長さを延伸前の合成樹脂フィルムの長さで除した値をいう。
(アニーリング工程)
次に、延伸工程後の合成樹脂フィルムにアニール処理を施すアニーリング工程を行う。このアニーリング工程は、上述した延伸工程において加えられた延伸によって合成樹脂フィルムに生じた残存歪みを緩和して、得られる合成樹脂微多孔フィルムに加熱による熱収縮が生じることを抑えるために行われる。
アニーリング工程における合成樹脂フィルムの表面温度は、(合成樹脂の融点−40℃)〜(合成樹脂の融点−5℃)が好ましい。上記表面温度が(合成樹脂の融点−40℃)以上であると、合成樹脂フィルム中に、異常高温時に正負極の短絡が生じないように収縮する程度の残留応力を残し、異常高温時に僅かに収縮させて微小孔部を屈曲させ、イオンなどの透過性を抑制して異常高温を効果的に抑制することができる。また、上記表面温度が(合成樹脂の融点−5℃)以下であると、延伸工程で形成された微小孔部の閉塞を防止することができる。
アニーリング工程における合成樹脂フィルムの収縮率は、30%以下が好ましい。上記収縮率が30%以下であると、合成樹脂フィルム中に、異常高温時に正負極の短絡が生じないように収縮する程度の残留応力を残し、異常高温時に僅かに収縮させて微小孔部を屈曲させ、イオンなどの透過性を抑制して異常高温を効果的に抑制することができ、又は、微小孔部の形状を保持することができる。
なお、合成樹脂フィルムの収縮率とは、アニーリング工程時における延伸方向における合成樹脂フィルムの収縮長さを、延伸工程後の延伸方向における合成樹脂フィルムの長さで除して100を乗じた値をいう。
上記延伸工程及びこの延伸工程に続くアニーリング工程は、複数回繰り返し行なわれてもよい。複数回行なわれる延伸工程及びアニーリング工程の条件は、上述で記載された条件と同様の条件で行なわれればよい。
本発明の合成樹脂微多孔フィルムは、リチウムイオンなどのイオンの透過性に優れており、高性能のリチウムイオン電池、キャパシタ、コンデンサなどの蓄電デバイスを構成することができ、高出力用途に用いてもデンドライトによる正極と負極の短絡や放電容量の急激な低下が生じにくい。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1〜4、比較例1、2]
(押出工程)
表1に示した重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、分子量分布(Mw/Mn)及び融点を有するホモポリプロピレンを押出機に供給して表1に示した樹脂温度にて溶融混練し、押出機の先端に取り付けられたTダイからフィルム状に押出した。しかる後、フィルムを表面温度が30℃となるまで冷却して、厚みが18μmで且つ幅が200mmの長尺状のホモポリプロピレンフィルムを得た。なお、製膜速度、押出量及びドロー比は表1に示した通りであった。
(養生工程)
次に、ホモポリプロピレンフィルムをその表面温度が表1に示した養生温度となるようにして表1に示した時間(養生時間)の間、養生した。
(第1延伸工程)
次に、養生を施したホモポリプロピレンフィルムをその表面温度が表1に示した温度となるようにして表1に示した歪み速度にて表1に示した延伸倍率に押出方向にのみ一軸延伸装置を用いて一軸延伸した。
(第1アニーリング工程)
しかる後、ホモポリプロピレンフィルムを熱風炉に供給し、ホモポリプロピレンフィルムをその表面温度が表1に示した温度となるように且つホモポリプロピレンフィルムに張力が加わらないようにして1分間に亘って走行させて、ホモポリプロピレンフィルムにアニールを施して長尺状の合成樹脂微多孔フィルムを得た。合成樹脂微多孔フィルムの厚みは16μmであった。なお、アニーリング工程におけるホモポリプロピレンフィルムの収縮率は表1に示した値とした。
[実施例5]
(押出工程及び養生工程)
実施例1と同様の要領でホモポリプロピレンフィルムを製造した。
(第1延伸工程)
次に、養生を施したホモポリプロピレンフィルムをその表面温度が表1に示した温度となるようにして表1に示した歪み速度にて表1に示した延伸倍率に押出方向にのみ一軸延伸装置を用いて一軸延伸した。
(第1アニーリング工程)
しかる後、ホモポリプロピレンフィルムを熱風炉に供給し、ホモポリプロピレンフィルムをその表面温度が表1に示した温度となるように且つホモポリプロピレンフィルムに張力が加わらないようにして1分間に亘って走行させて、ホモポリプロピレンフィルムにアニールを施した。ホモポリプロピレンフィルムの厚みは17μmであった。なお、第一アニーリング工程におけるホモポリプロピレンフィルムの収縮率は表1に示した値とした。
(第2延伸工程)
次に、第一アニーリングを経たホモポリプロピレンフィルムをその表面温度が表1に示した温度となるようにして表1に示した歪み速度にて表1に示した延伸倍率に押出方向にのみ一軸延伸装置を用いて一軸延伸した。
(第2アニーリング工程)
しかる後、ホモポリプロピレンフィルムを熱風炉に供給し、ホモポリプロピレンフィルムをその表面温度が表1に示した温度となるように且つホモポリプロピレンフィルムに張力が加わらないようにして1分間に亘って走行させて、ホモポリプロピレンフィルムにアニールを施して長尺状の合成樹脂微多孔フィルムを得た。合成樹脂微多孔フィルムの厚みは16μmであった。なお、第二アニーリング工程におけるホモポリプロピレンフィルムの収縮率は表1に示した値とした。
[評価]
得られた合成樹脂微多孔フィルムについて、透気抵抗、空孔率、厚み、バブルポイント細孔直径rBP及び平均流量直径rAVEを上記要領で測定し、その結果を表1に示した。
得られた合成樹脂微多孔フィルムについて、直流抵抗、絶縁破壊電圧及び耐デンドライト性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
(直流抵抗)
下記要領で正極及び負極を作成し、小型電池を作製した。得られた小型電池について直流抵抗の測定を行った。
<正極の作製方法>
Li2CO3と、Ni0.5Co0.2Mn0.3(OH)2で表される共沈水酸化物とをLiと遷移金属全体のモル比が1.08:1になるように石川式らいかい乳鉢にて混合した後、空気雰囲気中にて950℃で20時間熱処理した後に粉砕することにより、正極活物質として、平均二次粒子径が約12μmのLi1.04Ni0.5Co0.2Mn0.32を得た。
上記のように得られた正極活物質と、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製、HS−100)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製 商品名「#7208」)とを91:4.5:4.5(質量%)の割合で混合し、この混合物をN−メチル−2−ピロリドンに投入混合してスラリー状の溶液を作製した。このスラリー状の溶液をアルミニウム箔(東海東洋アルミ販売社製、厚さ:20μm)にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。スラリー状の溶液の塗布量は、1.6g/cm3であった。アルミニウム箔をプレスして切断し、正極を作製した。
<負極の作製方法>
チタン酸リチウム(石原産業社製 商品名「XA−105」と、メジアン径:6.7μm)と、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製 商品名「HS−100」)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン((株)クレハ製、#7208)とを90:2:8(質量量%)の比率で混合した。この混合物をN−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。このスラリー状の溶液をアルミニウム箔(東海東洋アルミ販売社製、厚さ:20μm)にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。スラリー状の溶液の塗布量は、2.0g/cm3であった。アルミニウム箔をプレスして切断して負極を作製した。
<直流抵抗の測定>
正極を直径14mmの円形状に、負極を直径15mmの円形状に打ち抜いた。小型電池は、正極及び負極との間に合成樹脂微多孔フィルムを介在させた状態で合成樹脂微多孔フィルムに電解液を含浸させることで構成した。
電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比3:7混合溶媒に、1Mになるように六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた電解液を使用した。
小型電池の充電は、予め設定した上限電圧まで電流密度0.20mA/cm2で充電した。放電は、予め設定した下限電圧まで、電流密度0.20mA/cm2で放電した。上限電圧は2.7V、下限電圧は2.0Vであった。1サイクル目に得られた放電容量を電池の初期容量とした。その後、初期容量の30%まで充電した後、60mA(I1)で10秒間放電したときの電圧(E1)、144mA(I2)で10秒間放電したときの電圧(E2)をそれぞれ測定した。
上記の測定値を用いて、30℃における直流抵抗値(Rx)を以下の式により算出した。
Rx=|(E1−E2)/放電電流(I1−I2)|
(絶縁破壊電圧)
合成樹脂微多孔フィルムにおける絶縁破壊電圧は、絶縁破壊試験機(山崎産業社製 商品名「HAT−300−100RHO」)を用いて下記手順にしたがって測定した。具体的には、先ず、合成樹脂微多孔フィルムから一辺100mmの平面正方形状の試験片を切り出した。試験片に徐電処理を施した。試験片の上面中央部に形成された直径約25mmのマーク上に上部電極(SUS製)を接触させると共に、試験片の下面に下部電極(SUS製)を接触させて絶縁破壊電圧を測定した。測定条件は、雰囲気媒体が空気、試験温度が25℃、相対湿度が50%、昇温速度が100V/秒であった。試験片を3個用意し、各試験片の絶縁破壊電圧の相加平均値を合成樹脂微多孔フィルムの絶縁破壊電圧とした。
(耐デンドライト性)
次の条件で正極及び負極を作成した後、小型電池を作製した。得られた小型電池について耐デンドライト性の評価を行った。
<正極の作製方法>
Li2CO3と、Ni0.33Co0.33Mn0.33(OH)2で表される共沈水酸化物を、Liと遷移金属全体のモル比が1.08:1になるように石川式らいかい乳鉢にて混合した後、空気雰囲気中にて950℃で20時間熱処理した後に粉砕することによって、平均二次粒子径が約12μmのLi1.04Ni0.33Co0.33Mn0.332を得た。
上記のように得られた正極活物質と、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製 商品名「HS−100」)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製 商品名「#7208」)とを92:4:4(質量%)の割合で混合して混合物を作製した。混合物をN−メチル−2−ピロリドンに投入し混合して、スラリー状の溶液を作製した。スラリー状の溶液をアルミニウム箔(東海東洋アルミ販売社製、厚さ15μm)にドクターブレード法で塗布し乾燥した。スラリー状の溶液の塗布量は、2.9g/cm3であった。アルミニウム箔をプレスして正極を作製した。
<負極の作製方法>
負極活物質として天然黒鉛(平均粒径10μm)と、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製、HS−100)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製 商品名「#7208」)とを95.7:0.5:3.8(質量%)の比率で混合して混合物を作製した。混合物をN−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。このスラリー状の溶液を圧延銅箔(日本製箔(株)製、厚さ10μm)にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。スラリー状の溶液の塗布量は、1.5g/cm3であった。圧延銅箔をプレスして負極を作製した。
<耐デンドライト性の測定>
正極を直径14mm、負極を直径15mmの円形に打ち抜いて電極を準備した。小型電池は、正極及び負極間に合成樹脂微多孔フィルムを配設し、合成樹脂微多孔フィルムに電解液を加えることで構成した。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比3:7混合溶媒に、1Mになるように六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた電解液を使用した。小型電池の充電は、予め設定した上限電圧4.6Vまで電流密度0.2mA/cm2で充電した。上記の小型電池を60℃の送風オーブン中に入れ、6ヶ月間電圧変化を観察した。6カ月経過後、小型電池に正極と負極の短絡が生じていたか否かを確認した。
上述の要領で3個の小型電池について、正極と負極の短絡の有無を確認し、短絡の生じた電池の数に基づいて評価した。
A・・・0個であった。
B・・・1個であった。
C・・・2個又は3個であった。
Figure 2019089877
本発明の合成樹脂微多孔フィルムは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、及びマグネシウムイオンなどのイオンの透過性に優れており、デンドライトの生成を効果的に概ね抑制することができる。従って、合成樹脂微多孔フィルムは、蓄電用デバイスのセパレータとして好適に用いられる。

Claims (6)

  1. 合成樹脂及び微小孔部を含有し且つ一軸延伸されており、バブルポイント法によって測定された、バブルポイント細孔直径rBP及び平均流量直径rAVEが式(1)を満たす、合成樹脂微多孔フィルム。
    100×(rBP−rAVE)/rAVE<40・・・式(1)
  2. バルブポイント細孔直径rBPが0.01μm以上、0.1μm以下である、請求項1に記載の合成樹脂微多孔フィルム。
  3. 透気抵抗が20sec/100mL/16μm以上、100sec/100mL/16μm以下である、請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂微多孔フィルム。
  4. 合成樹脂がオレフィン系樹脂を含有している、請求項1から3の何れか1項に記載の合成樹脂微多孔フィルム。
  5. 請求項1から4の何れか1項に記載の合成樹脂微多孔フィルムを含む、蓄電デバイス用セパレータ。
  6. 請求項5に記載の蓄電デバイス用セパレータを含む、蓄電デバイス。
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