以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る被検出ユニットの動作を検出する検出システム100の構成例を示す。本実施形態において、被検出ユニットが回転体10である例を説明する。この場合、検出システム100は、回転体10の回転角度、回転速度、回転方向、および回転数等の回転動作を検出する。検出システム100は、回転体10および磁石の間に磁気抵抗素子を有する検出装置110を配置し、磁気抵抗素子の抵抗の変化に基づき、回転体10の回転動作を検出する。なお、本実施形態において、磁気抵抗素子は、磁気センサの一例である。検出システム100は、回転体10と、磁場発生部20と、検出装置110と、を備える。
回転体10は、凸部および/または凹部を有し、回転軸を中心に回転する。回転体10は、例えば、回転軸に対して略直交する断面形状が円形である。また、回転体10の当該断面形状は、一部が円形であってもよい。回転体10は、検出装置110側に相対移動方向に沿って交互に配列された凹部および凸部を有してよい。回転体10は、例えば、歯車である。図1は、回転体10が円盤状の形状を有し、当該円盤の円周における回転の移動方向に沿って凹部および凸部が交互に配列された例を示す。
磁場発生部20は、予め定められた略一定の磁場を発生させる。磁場発生部20は、例えば、磁石を有し、N極またはS極が回転体10の方向を向くように配置される。磁場発生部20は、検出装置110において、回転体10とは反対側に設けられる。磁場発生部20は、回転体10が有する凸部および/または凹部に対して、発生させた磁場が届く程度に、回転体10に近接して配置される。磁場発生部20は、一例として、フェライト、サマリウムコバルト、およびネオジム等の材料を含む永久磁石である。
検出装置110は、回転体10に対向して設けられる。検出装置110は、回転体10および磁場発生部20の間に設けられ、回転体10が有する凸部および/または凹部に対向する。検出装置110は、磁場発生部20から発生し、回転体10の凸部および/または凹部で変化する磁束密度を検出する。検出装置110は、回転体10の回転に応じて変化する磁束密度に基づき、回転体10の回転動作を検出する。このような検出システム100の詳細について、次に説明する。
図2は、本実施形態に係る検出システム100のより詳細な構成例を示す。図2の検出システム100において、図1に示された検出システム100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。図2において、回転体10の移動方向の例を矢印で示す。図2は、検出システム100が、電源40を更に備える例を示す。
電源40は、第1電位の一方の端子と、第2電位の他方の端子を有し、第1電位および第2電位の電位差を電源電圧として、検出装置110に供給する。図2は、第1電位が第2電位よりも高電位の例を示す。第2電位は、接地電位(グラウンド電位)でよい。
また、図2は、回転体10の歯車の一部である、第1の歯12および第2の歯14を示す。また、図2は、検出装置110が、第1感磁部210、第1端子250、第2感磁部310、および第2端子350を備える例を示す。
第1感磁部210および第2感磁部310は、回転体10の相対移動に伴う磁束密度の変化を検出する。なお、図1および図2の検出システム100は、磁場発生部20および検出装置110が固定され、回転体10が回転する例を示す。即ち、回転体10の相対移動は、回転体10の円周方向の移動である。第1感磁部210および第2感磁部310は、回転体10の回転角度、回転速度および回転数を検出してよい。また、第1感磁部210および第2感磁部310を用いて、回転体10の回転方向を検出してよい。
第1端子250および第2端子350は、検出結果を出力する。第1感磁部210および第2感磁部310は、電源40から電源電圧を受け取る。第1感磁部210は、第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214を有する。第1磁気抵抗素子212は、第1端子250および電源40の第1電位の間に接続される。第3磁気抵抗素子214は、第1端子250および電源40の第2電位の間に接続される。
第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214は、回転体10の移動方向に配列され、電源40に接続される。即ち、第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214は、第1電位および第2電位の間に電気的に直列に接続される。この場合、第1端子250は、第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214によって電源電圧を分圧した電圧を出力することになる。
第2感磁部310は、第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314を有する。第2磁気抵抗素子312は、第2端子350および電源40の第1電位の間に接続される。第4磁気抵抗素子314は、第2端子350および電源40の第2電位の間に接続される。
第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314は、回転体10の移動方向に配列され、電源40に接続される。即ち、第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314は、第1電位および第2電位の間に電気的に直列に接続される。この場合、第2端子350は、第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314によって電源電圧を分圧した電圧を出力することになる。
ここで、第2磁気抵抗素子312は、回転体10の移動方向において第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214の間に配置される。また、第3磁気抵抗素子214は、回転体10の移動方向において第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314の間に配置される。
第1磁気抵抗素子212、第2磁気抵抗素子312、第3磁気抵抗素子214、および第4磁気抵抗素子314といった磁気抵抗素子は、磁場発生部20から回転体10の相対移動に伴う磁束密度に応じて抵抗値を変化させる。例えば、磁気抵抗素子は、入力する磁場の磁束密度の大きさが増加すると、抵抗値も増加する。磁気抵抗素子は、半導体磁気抵抗素子を感磁領域に含んでよい。半導体磁気抵抗素子は、一例として、III−V族化合物半導体材料を含む。
第1磁気抵抗素子212、第2磁気抵抗素子312、第3磁気抵抗素子214、および第4磁気抵抗素子314は、回転体10の凸部および/または凹部の周期に応じて、配列されてよい。例えば、図2に示すように、第3磁気抵抗素子214が回転体10の凸部である第1の歯12に対向した場合、第1磁気抵抗素子212が第1の歯12および第2の歯14の間に対向するように、第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214は配置される。なお、第1の歯12および第2の歯14の間は、回転体10の凹部または2つの凸部の中間部である。
磁場発生部20が回転体10に対向するので、図2において、第1の歯12および磁場発生部20の間の距離が、回転体10および磁場発生部20の最小距離となりうる。即ち、第1の歯12の軸方向に垂直な歯先の歯面と、磁場発生部20との間の領域は、磁束密度の変化のうち最大値となる領域である。ここで、歯先の歯面を歯先面とする。したがって、図2の例のように、当該領域に第3磁気抵抗素子214が位置することにより、第3磁気抵抗素子214の抵抗値は、入力する磁束密度に応じて抵抗値が変化する範囲において最大値となる。
また、回転体10の凹部および磁場発生部20の間の距離は、回転体10および磁場発生部20の間の距離が大きくなる。即ち、回転体10の凹部と、磁場発生部20との間の領域は、磁束密度の変化のうち最小値となりうる領域となる。即ち、当該領域に第1磁気抵抗素子212が位置することにより、第1磁気抵抗素子212の抵抗値は、入力する磁束密度に応じて抵抗値が変化する範囲において最小値となる。したがって、図2の例に示すような回転体10の位置においては、検出装置110は、電源電圧を分圧した電圧の変化範囲における最大値を、第1端子250から出力する。
同様に、第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314は、回転体10の周期的に配列された凸部および/または凹部の周期に応じて、回転体10の移動方向に沿って配列される。図2において、第2磁気抵抗素子312は、回転体10の凸部および凹部の間に位置する。また、第4磁気抵抗素子314も、回転体10の凸部および凹部の間に位置する。
したがって、第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314の磁束密度は、第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214の磁束密度の中間の磁束密度となる。例えば、第1磁気抵抗素子212、第2磁気抵抗素子312、第3磁気抵抗素子214、および第4磁気抵抗素子314の順に、回転体10の移動方向において等間隔に配置された場合、第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314の抵抗値は、それぞれ、抵抗値の変化範囲の略中間の値となる。
なお、第1磁気抵抗素子212、第2磁気抵抗素子312、第3磁気抵抗素子214、および第4磁気抵抗素子314は、ゼロ磁場に対する略同一の初期抵抗値と、磁束密度に対して略同一の抵抗の変化率とを有する磁気抵抗素子とする。これにより、図2の例に示すような回転体10の位置においては、検出装置110は、電源電圧の略中間値を、第2端子350から出力する。このような検出装置110に対して、図2に示す矢印の移動方向に回転体10が移動するので、各磁気抵抗素子に入力する磁束密度は、回転体10の凸部および/または凹部の位置に応じて増減し、第1端子250および第2端子350から出力される電圧も増減する。
図3は、図2に示す回転体10が移動方向に移動した場合の、検出システム100の構成例を示す。図3の検出システム100において、図2に示された検出システム100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。図3は、第2磁気抵抗素子312が凹部に対向し、第4磁気抵抗素子314が凸部である第1の歯12に対向する位置まで、回転体10が移動した例を示す。
即ち、第2磁気抵抗素子312の抵抗値は最小値となり、第4磁気抵抗素子314の抵抗値は最大値となる。したがって、図3の例に示すような回転体10の位置においては、検出装置110は、電源電圧を分圧した電圧の変化範囲における最大値を、第2端子350から出力する。即ち、検出装置110は、図2の例において第1端子250から出力した電圧と略同一の電圧を、図3の例において第2端子350から出力する。
また、図3において、第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214は、回転体10の凸部および凹部の間にそれぞれ位置する。即ち、第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214の抵抗値は、それぞれ、抵抗値の変化範囲の略中間の値となる。したがって、図3の例に示すような回転体10の位置においては、検出装置110は、電源電圧の略中間値を、第1端子250から出力する。
図4は、図3に示す回転体10が移動方向に移動した場合の、検出システム100の構成例を示す。図4の検出システム100において、図2および図3に示された検出システム100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。図4は、第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314が回転体10の凸部および凹部の間にそれぞれ位置するまで、回転体10が移動した例を示す。
即ち、第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314の抵抗値は、それぞれ、抵抗値の変化範囲の略中間の値となる。したがって、図4の例に示すような回転体10の位置においては、検出装置110は、電源電圧の略中間値を、第2端子350から出力する。即ち、検出装置110は、図3の例において第1端子250から出力した電圧と略同一の電圧を、図4の例において第2端子350から出力する。
また、図4において、第1磁気抵抗素子212は、凸部である第2の歯14に対向し、第3磁気抵抗素子214は、凹部に対向する。即ち、第1磁気抵抗素子212の抵抗値は最大値となり、第3磁気抵抗素子214の抵抗値は最小値となる。したがって、図4の例に示すような回転体10の位置においては、検出装置110は、電源電圧を分圧した電圧の変化範囲における最小値を、第2端子350から出力する。
図5は、検出装置110が出力する検出信号の一例を示す。図5の横軸は時間tを示し、縦軸は検出信号の電圧値Vを示す。図5は、第1端子250および第2端子350から出力される検出信号電圧をそれぞれプロットした例を示す。例えば、時刻t1は、回転体10の検出装置110に対する位置が図2に示す配置する時点の例である。この場合、第1端子250は、電圧変化の最大値である電圧V1が出力され、第2端子350は、電圧変化の中間値である電圧V2を出力する。
次に、時刻t2は、回転体10の検出装置110に対する位置が図2から図3に示す配置に移動した時点の例である。この場合、第1端子250は、電圧変化の中間値である電圧V2が出力され、第2端子350は、電圧変化の最大値である電圧V1が出力される。次に、時刻t3は、回転体10の検出装置110に対する位置が図3から図4に示す配置に移動した時点の例である。この場合、第1端子250は、電圧変化の最小値である電圧V3が出力され、第2端子350は、電圧変化の中間値である電圧V2を出力する。
このように、回転体10が回転軸を中心に等速円運動をした場合、第1端子250および第2端子350からそれぞれ出力される検出信号は、余弦波信号および正弦波信号となる。したがって、検出装置110は、第1端子250および第2端子350が出力する検出信号の電圧から逆正接を求めることにより、隣接する歯の間の回転角度(電気角)を検出することができる。また、検出装置110は、第1端子250および/または第2端子350が出力する検出信号の周期から、回転体10の回転速度を検出することができる。また、検出装置110は、例えば、正弦波信号のピーク値等の検出回数から、回転体10の回転数を検出することができる。また、回転体10の回転が等速運動ではなくても、回転して歯の位置が移動することにより、検出信号は変化する。したがって、当該検出信号の変化によって、検出装置110は、回転体10が相対的に移動したことを検出することができる。
また、図2から図4に示すように、回転体10の回転により、新たな歯車の歯に最初に対向する磁気抵抗素子は、第1磁気抵抗素子212となるので、第1端子250の検出信号は、第2端子350の検出信号よりも位相が進むことになる。なお、回転体10の回転方向が逆向きとなった場合、回転体10の回転により、新たな歯車の歯に最初に対向する磁気抵抗素子は、第4磁気抵抗素子314となる。したがって、逆回転の場合、第1端子250の検出信号は、第2端子350の検出信号よりも位相が遅れることになる。したがって、検出装置110は、第1端子250および第2端子350の検出信号の位相比較によって、回転体10の回転方向を検出することができる。
図6は、検出装置110の構成例を示す。図6は、回転体10の移動方向をX軸とし、当該移動方向と直交する方向をY軸とする。検出装置110は、基板30を有し、当該基板30上のXY平面と略平行な面に感磁領域等が形成される。基板30は、例えば、半導体、ガラス、およびセラミック等で形成された基板である。基板30は、第1電位端子202、第2電位端子204、第1磁気抵抗素子212、第3磁気抵抗素子214、第1端子250、第2磁気抵抗素子312、第4磁気抵抗素子314、および第2端子350が、表面に形成される。
第1電位端子202は、電源40の一方の端子に接続され、第1電位が供給される。第2電位端子204は、電源40の他方の端子に接続され、第2電位が供給される。また、第1端子250は検出信号VAを出力し、第2端子350は検出信号VAとは位相が異なる検出信号VBを出力する。
図6において、矢印で示した方向が、回転体10の移動方向である。第1磁気抵抗素子212、第2磁気抵抗素子312、第3磁気抵抗素子214、および第4磁気抵抗素子314は、基板30の回転体10に対向すべき面に設けられる。第1磁気抵抗素子212、第2磁気抵抗素子312、第3磁気抵抗素子214、および第4磁気抵抗素子314は、回転体10の移動方向と直交する幅方向(Y方向)において、感磁領域が設けられる範囲が少なくとも一部重なるように形成される。
図6は、第1磁気抵抗素子212、第2磁気抵抗素子312、第3磁気抵抗素子214、および第4磁気抵抗素子314が、それぞれ4つの感磁領域を含む例を示す。ここで、感磁領域のそれぞれは、幅方向に延伸する略長方形の形状で示した。図6は、各抵抗素子が含むそれぞれの感磁領域が、回転体10の移動方向において、略等間隔に配列された例を示す。一例として、図6は、それぞれの感磁領域が、回転体10の移動方向に平行移動した位置に配置された例を示す。この場合、第1磁気抵抗素子212、第2磁気抵抗素子312、第3磁気抵抗素子214、および第4磁気抵抗素子314は、幅方向において、感磁領域が設けられる範囲が全部重なることになる。
第1磁気抵抗素子212、第2磁気抵抗素子312、第3磁気抵抗素子214、および第4磁気抵抗素子314は、基板30上に等間隔に並ぶ第1領域512、第2領域514、第3領域516、および第4領域518に、それぞれ形成される。第1領域512、第2領域514、第3領域516、および第4領域518の中心間隔は、回転体10の歯車の歯の円ピッチの1/4に、回転体10および検出装置110の間の距離に応じた係数を乗じた値に略等しい。ここで、例えば、歯車の歯の大きさをモジュールm=d/zとすると、歯車の円ピッチpはp=mπとなる。なお、dは基準ピッチ円直径、zは歯数とし、円ピッチpは、円周(πd)を歯数zで割って算出した結果である。
回転体10の移動方向において、複数の抵抗素子が歯車の円ピッチに対応して配列されるので、それぞれの抵抗素子は、歯車の回転中の対応する時点において、対応する歯先面に対向することができる。図6は、第1領域512に第1磁気抵抗素子212が、第2領域514に第2磁気抵抗素子312が、第3領域516に第3磁気抵抗素子214が、第4領域518に第4磁気抵抗素子314が、それぞれ形成された例を示す。
また、各磁気抵抗素子の感磁領域全体(感磁面)の中心位置の例を×印で示す。例えば、第1磁気抵抗素子212の感磁面の中心は位置522であり、第2磁気抵抗素子312の感磁面の中心は位置524であり、第3磁気抵抗素子214の感磁面の中心は位置526であり、第4磁気抵抗素子314の感磁面の中心は位置528である。そして、第1磁気抵抗素子212、第2磁気抵抗素子312、第3磁気抵抗素子214、および第4磁気抵抗素子314は、基板30上の回転体10の移動方向において、感磁面の中心位置が等間隔となるように配置される。
これにより、例えば、回転体10が回転している場合、第1の時点において、第1磁気抵抗素子212が歯車の第1の歯の歯先面に対向し、次の第2の時点において、第2磁気抵抗素子312が歯車の第1の歯の歯先面に対向することができる。このように、複数の磁気抵抗素子は、時間が進む毎に移動方向に配列した順序で、領域毎に、歯車の第1の歯の歯先面に対向することができる。同様に、複数の磁気抵抗素子は、時間が進む毎に移動方向に配列した順に、領域毎に、回転体10の凹部に対向することができる。これによって、検出装置110は、回転体10の移動を正確に検出して、検出結果を検出信号として出力することができる。
以上のように、検出システム100は、回転体10の回転動作を検出することができる。しかしながら、このような検出システム100は、小型であることが要求されることがある。また、被検出ユニットである回転体10がより小型となることがある。この場合、複数の磁気抵抗素子に対して磁場発生部20によって印加される磁場の大きさが、磁気抵抗素子の位置に応じて変化してしまうことがある。このような例について次に説明する。
図7は、小型化された検出システム100の構成例を示す。図7の検出システム100において、図2から図4に示された検出システム100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。図7は、回転体10の直径が図2から図4に示された検出システム100の回転体10の直径よりも小さくなった例を示す。
このように、小型の回転体10の動作を、検出装置110を用いて検出できることが望ましい。ここで、磁場発生部20が発生させる磁場は、磁束密度が検出装置110の感磁部領域において略一定の磁束密度となることが望ましい。しかしながら、磁場発生部20の外縁部は、中心部と比較して、磁束密度が小さくなることがある。例えば、磁場発生部20が直方体の永久磁石の場合、回転体10に向く長方形表面の中心部分から発生させる磁束密度が最も大きく、外縁部に近づくにつれて磁束密度が減少するような磁場が検出装置110に印加される。回転体10が小型化されることにより、このような傾向が強くなる。図7は、磁場発生部20が発生させる磁場の磁束密度が、回転体10の移動方向において分布を有する例を示す。
ここで、回転体10の移動方向において、検出装置110の中心部は、磁場発生部20の中心部と略一致することが望ましい。図7は、検出装置110の中心と磁場発生部20の中心とが、一点鎖線で示す位置で略一致する例を示す。この場合、回転体10の移動方向において、当該中心位置から第1磁気抵抗素子212までの距離よりも、当該中心位置から第3磁気抵抗素子214までの距離の方が短くなる。
したがって、検出装置110が回転体10から離間して、回転体10に基づく磁束密度の変化がない場合においても、磁場発生部20から第1磁気抵抗素子212および第2磁気抵抗素子312にそれぞれ入力する磁束密度の大きさが異なってしまうことになる。この場合、検出装置110が回転体10に近接しなくても、第1端子250から出力される電圧は、第1電位および第2電位の中間電圧とは異なる電圧となる。このように、検出装置110に磁場発生部20が発生させる磁場を印加し場合に発生する電圧と、第1電位および第2電位の中間電圧との差分を、オフセット電圧とする。
同様に、回転体10の移動方向において、当該中心位置から第4磁気抵抗素子314までの距離よりも、当該中心位置から第2磁気抵抗素子312までの距離の方が短くなる。したがって、第2端子350から出力される電圧は、第1電位および第2電位の中間電圧にオフセット電圧が加わった電圧となる。なお、第1端子250および第2端子350からそれぞれ出力される電位に含まれるオフセット電圧は、絶対値が略同一で、正負の符号が異なる。例えば、図5に示す第1端子250からの検出信号VAは、プラスのオフセットが重畳され、第2端子350からの検出信号VBは、マイナスのオフセットが重畳される。なお、磁場発生部20の磁石サイズを規定し、感磁部領域での磁束密度を平坦化することで、磁石と組み合わせたことによるこのようなオフセット電圧を低減できる(例えば、特許第4308084号等)。
回転体10が小型化されると、当該回転体10の曲率が大きくなるので、回転体10および検出装置110の平均距離は、磁気抵抗素子の位置に応じて大きく異なる傾向にある。図7には、点線で回転体10の基準ピッチ円16を示す。検出装置110および基準ピッチ円16の間の距離は、例えば、中心位置に近い位置における距離L1よりも中心位置から遠い位置における距離L2の方が大きくなる。したがって、磁場発生部20から回転体10に向く磁場の磁束密度は、回転体10に凹凸が無いと仮定した場合、中心位置に近い位置ほど大きくなる。このような、磁束密度の位置に応じた分布は、回転体10の曲率が大きくなるほど、また、磁場発生部20および回転体10の間の距離が近くなるほど、大きくなる。このような場合においては、磁場発生部20の磁石サイズの規定のみでは、オフセット電圧を低減することは難しい。
以上において、検出装置110に磁場発生部20が発生させる磁場を印加した場合に発生する電圧と、第1電位および第2電位の中間電圧との差分を、オフセット電圧とした。ここで、回転体10が検出装置110に近接し、移動した際の第1端子250および第2端子350からの検出信号は図5となるので、当該検出信号の時間的平均電圧と第1電位および第2電位の中間電圧との差分を、オフセット電圧と再定義することにする。したがって、第1端子250および第2端子350のオフセット電圧の絶対値は、磁場発生部20および回転体10の間の距離が近くなるほど、大きくなる傾向となる。ここで、第1端子250から出力される検出信号を第1信号とし、第2端子350から出力される検出信号を第2信号とする。第1信号および第2信号のオフセット電圧の傾向について、次に説明する。
図8は、検出装置110から出力される第1信号および第2信号のオフセット電圧の一例を示す。なお、図8は、歯車の歯数を64、モジュールを0.4、材質をS45Cとし、磁石材質をSmCoとしたシミュレーション結果の一例である。図8の横軸は、回転体10および検出装置110の間の距離をギャップとして示す。また、図8の縦軸は、オフセット電圧を示す。なお、図8のシミュレーションは、検出装置110が磁場発生部20および回転体10から離間し、磁場発生部20がないゼロ磁場の環境において、オフセット電圧の初期値が0Vであることを初期条件とした。
図8は、このような検出装置110に回転体10からは離間したまま、磁場発生部20を近傍に設けることにより、オフセット電圧が生じる例を示す。この場合のオフセット電圧は、横軸のギャップが∞の場合のオフセット電圧に対応する。ここで、第1信号のオフセット電圧は正側に発生し、第2信号のオフセット電圧は負側に発生する例を示す。
そして、検出装置110および回転体10の間の距離が近づくことにより、当該オフセット電圧の絶対値が大きくなることがわかる。このように、数十mVを超えるようなオフセット電圧が発生すると、検出装置110の回転動作の検出結果に誤差が発生することがある。また、ダイナミックレンジおよびS/N等を悪化させる原因になる場合もある。そこで、本実施形態に係る検出装置110は、このようなオフセット電圧の発生を低減あるいは抑制させる。
図9は、本実施形態に係る検出装置110の構成例を示す。図9の検出装置110において、図6に示された検出装置110の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。本実施形態に係る検出装置110は、回転体10の移動方向において、当該検出装置110の中心軸に近い位置の磁気抵抗素子を、中心軸から遠い位置の磁気抵抗素子と比較して、同一磁場に対する抵抗値を小さくする。
即ち、第3磁気抵抗素子214は、第1磁気抵抗素子212よりも同一磁場に対する抵抗値が小さく、第2磁気抵抗素子312は、第4磁気抵抗素子314よりも同一磁場に対する抵抗値が小さく形成される。この場合、第3磁気抵抗素子214は、第1磁気抵抗素子212の形状とは異なる形状に形成され、第2磁気抵抗素子312は、第4磁気抵抗素子314の形状とは異なる形状に形成されてよい。これに代えて、それぞれの磁気抵抗素子の厚さおよび/または材質を変えてもよい。
例えば、第3磁気抵抗素子214の少なくとも一部は、第1磁気抵抗素子212と比較して、回転体10の移動方向に対して直交する方向の長さが短い形状に形成される。図9は、第3磁気抵抗素子214が感磁領域214a、感磁領域214b、感磁領域214c、および感磁領域214dの4つの感磁領域を含み、感磁領域214aおよび感磁領域214dのY方向の長さを短くした例を示す。これにより、回転体10の移動方向において、感磁面の中心の位置526をほとんど変化させずに、第3磁気抵抗素子214の抵抗値を小さくすることができる。なお、感磁面の中心の位置526は、例えば、Y方向に相当する第3領域516の中心線EF上であれば、移動してもよい。
同様に、第2磁気抵抗素子312の少なくとも一部は、第4磁気抵抗素子314と比較して、回転体10の移動方向に対して直交する方向の長さが短い形状に形成される。図9は、第2磁気抵抗素子312が感磁領域312a、感磁領域312b、感磁領域312c、および感磁領域312dの4つの感磁領域を含み、感磁領域312aおよび感磁領域312dのY方向の長さを短くした例を示す。これにより、回転体10の移動方向において、感磁面の中心の位置524をほとんど変化させずに、第2磁気抵抗素子312の抵抗値を小さくすることができる。なお、感磁面の中心の位置524は、例えば、Y方向に相当する第2領域514の中心線CD上であれば、移動してもよい。
これにより、本実施形態に係る検出装置110は、磁気抵抗素子の抵抗値を調節しつつ、基板30上の回転体10の移動方向において、複数の磁気抵抗素子の感磁面の中心位置が等間隔となるように配置することができる。なお、第2磁気抵抗素子312および第3磁気抵抗素子214の抵抗値の調節は、図9の例に限定されることはない。感磁面の中心の位置が回転体10の移動方向に移動しなければよく、例えば、4つの感磁面の全てを短くしてもよい。また、例えば、各領域における中心軸側の感磁領域(一例として、感磁領域214bおよび感磁領域214c)を短くしてもよい。
なお、このような感磁領域を形成する場合、予め定められた複数の長さの感磁領域を基板30上にそれぞれ形成してよい。また、予め定められた略一定の長さの感磁領域を基板30上に形成した後に、形成された感磁領域の少なくとも一部をトリミングして長さを微調整してもよい。このような検出装置110のオフセット電圧について、次に説明する。
図10は、本実施形態に係る検出装置110から出力される第1信号および第2信号のオフセット電圧の一例を示す。図10は、図8と同様に、歯車の歯数を64、モジュールを0.4、材質をS45Cとし、磁石材質をSmCoとしたシミュレーション結果の一例である。図10の横軸は、磁場発生部20および回転体10の間の距離を示す。また、図10の縦軸は、オフセット電圧を示す。
なお、図10において、検出装置110が磁場発生部20および回転体10から離間したゼロ磁場の環境におけるオフセット電圧を、横軸に「ゼロ磁場」と示してプロットした。ここで、検出装置110に磁場が入力しないゼロ磁場の環境における、第1磁気抵抗素子212の抵抗値をR1、第2磁気抵抗素子312の抵抗値をR2、第3磁気抵抗素子214の抵抗値をR3、第4磁気抵抗素子314の抵抗値をR4とする。
本実施形態に係る検出装置110は、R1>R3およびR2<R4となるように、それぞれの磁気抵抗素子が形成される。これにより、ゼロ磁場における第1端子250の電圧VAおよび第2端子350の電圧VBは、次式のように、第1電位Vddおよび第2電位Vssの中間電圧とは異なる電圧となる。
(数1)
VA=(Vdd−Vss)・R3/(R1+R3)<(Vdd−Vss)/2
VB=(Vdd−Vss)・R4/(R2+R4)>(Vdd−Vss)/2
なお、第1磁気抵抗素子212および第4磁気抵抗素子314は、同一磁場に対する抵抗値が等しく形成されてよい。また、第2磁気抵抗素子312および第3磁気抵抗素子214は、同一磁場に対する抵抗値が等しく形成されてよい。即ち、検出装置110は、R1=R4およびR2=R3となるように、それぞれの磁気抵抗素子が形成されてよい。この場合、第1端子250の第1オフセット電圧VOS1および第2端子350のオフセット電圧VOS2は次式のように算出され、符号が異なり、絶対値が等しいオフセット電圧となることがわかる。ここで、第1電位Vddおよび第2電位Vssの中間電圧をVMとした。
(数2)
VOS1=VA−VM=VM・(R3−R1)/(R1+R3)<0
VOS2=VB−VM=VM・(R4−R2)/(R2+R4)=−VOS1>0
VM=(Vdd−Vss)/2
以上のように、検出装置110に磁場が入力しないゼロ磁場の環境において、第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214の間の第1端子250の電圧は、第1電位および第2電位の中間電圧とは第1オフセット電圧VOS1だけ異なる電位となる。ここで、R1>R3であるから、第1オフセット電圧VOS1は負側の電位となる。図10は、第1オフセット電圧VOS1が−20mV未満となる例を示す。
また、第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314の間の第2端子350の電圧は、第1電位および第2電位の中間電圧とは第2オフセット電圧VOS2だけ異なる電位となる。ここで、R4>R2であるから、第2オフセット電圧VOS2は正側の電位となる。図10は、第2オフセット電圧VOS2が+20mVを超える例を示す。
図10において、回転体10からは離間したまま、検出装置110の近傍に磁場発生部20が設けられた環境におけるオフセット電圧を、横軸に「∞」と示してプロットした。図7および図8でも説明したように、磁場発生部20は、第1感磁部210および第2感磁部310に対して、磁束密度が相対移動方向に漸増または漸減する磁界を印加する。
即ち、第1磁気抵抗素子212に入力する磁束密度は、第3磁気抵抗素子214に入力する磁束密度よりも小さい。したがって、第3磁気抵抗素子214は、第1磁気抵抗素子212と比較して、磁場発生部20によって増加する抵抗値が大きくなる。これにより、第1オフセット電圧VOS1は、正の電位側にシフトする。図10は、第1オフセット電圧VOS1が−13mV程度にシフトした例を示す。
また、第4磁気抵抗素子314に入力する磁束密度は、第2磁気抵抗素子312に入力する磁束密度よりも小さい。したがって、第2磁気抵抗素子312は、第4磁気抵抗素子314と比較して、磁場発生部20によって増加する抵抗値が大きくなる。これにより、第2オフセット電圧VOS2は、負の電位側にシフトする。図10は、第2オフセット電圧VOS2が+13mV程度にシフトした例を示す。
このように、本実施形態に係る検出装置110は、ゼロ磁場の初期オフセット電圧を予め発生させることにより、磁場発生部20の磁場が印加されることによって、第1オフセット電圧VOS1および第2オフセット電圧VOS2を0Vの電位の方向に変化させることができる。即ち、検出装置110は、磁場発生部20の磁場を印加すると、初期オフセットの絶対値を小さくする方向に変化させる。
図10において、回転体10および磁場発生部20を検出装置110の近傍に設け、検出システム100を構成した場合のオフセット電圧を、横軸に「0.15」から「0.85」と示した範囲にプロットした。図7および図8でも説明したように、回転体10の曲率が大きくなることにより、回転体10および磁場発生部20の間に発生する磁場の磁束密度は、検出装置110の位置に応じて分布を有する。
この場合においても、第1磁気抵抗素子212に入力する磁束密度は、第3磁気抵抗素子214に入力する磁束密度よりも小さくなる。したがって、第1オフセット電圧VOS1は、更に正の電位側にシフトする。図10は、回転体10および検出装置110の間の距離が0.45mmにした場合に、第1オフセット電圧VOS1が0mV程度にシフトした例を示す。
同様に、第4磁気抵抗素子314に入力する磁束密度は、第2磁気抵抗素子312に入力する磁束密度よりも小さくなる。したがって、第2オフセット電圧VOS2は、更に負の電位側にシフトする。図10は、回転体10および検出装置110の間の距離が0.45mmにした場合に、第2オフセット電圧VOS2が0mV程度にシフトした例を示す。
このように、本実施形態に係る検出装置110は、磁場発生部20の磁場が印加された場合に発生するオフセット電圧よりも、絶対値が大きい初期オフセット電圧を予め発生させる。これにより、検出装置110が回転体10に近接して、磁場発生部20から回転体10の間に発生する磁場を検出した場合、すなわち、第1磁気抵抗素子212に入力する磁束密度に対する、第3磁気抵抗素子214に入力する磁束密度の割合が増加し、第4磁気抵抗素子314に入力する磁束密度に対する、第2磁気抵抗素子312に入力する磁束密度の割合が増加する場合、第1オフセット電圧VOS1および第2オフセット電圧VOS2は、ゼロ磁場におけるオフセット電圧と比較して、0Vの電位の方向に変化させることができる。即ち、検出装置110は、磁場発生部20の磁場を印加すると、初期オフセットの絶対値を更に小さくする方向に変化させる。
即ち、本実施形態に係る当該検出システム100は、検出装置110の磁気抵抗素子の抵抗値を調節することで、検出信号のオフセット電圧を低減あるいは抑制することができ、精度よく回転体10の回転動作を検出することができる。検出システム100は、一例として、回転体10および検出装置110の間の距離を0.45mmにすることで、オフセット電圧を略0Vに低減することができることを示した。これに代えて、回転体10および検出装置110の間の距離を任意の異なる値でオフセット電圧を略0Vとなるように、各パラメータを調節しても構わない。
以上の本実施形態に係る検出装置110は、磁気抵抗素子の抵抗値を予め定められた値となるように形成して、初期オフセット電圧を発生させることを説明した。これに加えて、検出装置110は、形成された複数の磁気抵抗素子の電気的な接続等を切り換えることにより、磁気抵抗素子の抵抗値を調節してもよい。即ち、第1磁気抵抗素子212、第2磁気抵抗素子312、第3磁気抵抗素子214、および第4磁気抵抗素子314のうち少なくとも1つの磁気抵抗素子は、同一磁場に対する磁気抵抗が可変の素子でよい。
これにより、検出装置110は、当該検出装置110の製造後に初期オフセット電圧を微調整することができる。また、検出装置110は、検出システム100を構成して、実際にオフセット電圧を低減させた結果を確認してから、更にオフセット電圧を調節することもできる。
以上の本実施形態に係る検出装置110は、検出システム100に複数設けられてもよい。例えば、第1電位および第2電位が互いに逆に印加される2つの検出装置110が、検出システム100に設けられてよい。これにより、検出システム100は、差動信号として出力することができる。このような2つの検出装置110について次に説明する。
図11は、本実施形態に係る検出装置110の変形例を示す。図11は、図9に示す検出装置110が、回転体10の移動方向に対して直交する方向に2つ並列に配列された例を示す。即ち、図11に示す検出装置110は、第1磁気抵抗素子212、第2磁気抵抗素子312、第3磁気抵抗素子214、および第4磁気抵抗素子314に加えて、第5磁気抵抗素子222、第6磁気抵抗素子322、第7磁気抵抗素子224、および第8磁気抵抗素子324を有する。
第1磁気抵抗素子212および第5磁気抵抗素子222は、同一磁場に対する抵抗値が略同一で、回転体10の移動方向において、感磁領域が設けられる範囲がY方向に全部重なるように形成されてよい。第2磁気抵抗素子312および第6磁気抵抗素子322と、第3磁気抵抗素子214および第7磁気抵抗素子224と、第4磁気抵抗素子314および第8磁気抵抗素子324も、それぞれ、同一磁場に対する抵抗値が略同一で、感磁領域が設けられる範囲がY方向に全部重なるように形成されてよい。
また、第5磁気抵抗素子222および第7磁気抵抗素子224の間に、第3信号を出力する第3端子260が設けられ、第6磁気抵抗素子322および第8磁気抵抗素子324の間に、第4信号を出力する第4端子360が設けられる。そして、第1電位および第3端子260の間に第7磁気抵抗素子224が設けられ、第1電位および第4端子360の間に第8磁気抵抗素子324が設けられる。同様に、第2電位および第3端子260の間に第5磁気抵抗素子222が設けられ、第2電位および第4端子360の間に第6磁気抵抗素子322が設けられる。
これにより、第3端子260は、第1端子250から出力される第1信号とは逆相の第3信号を出力することができる。また、第4端子360は、第2端子350から出力される第2信号とは逆相の第4信号を出力することができる。したがって、本変形例の検出装置110を用いて検出システム100を構成することにより、当該検出システム100は、検出信号を差動信号として出力することができる。
図12は、図11に示す変形例の検出装置110に対応する増幅回路530の一例を示す。図12は、第1端子250および第3端子260から出力される差動信号を入力する増幅回路530の例を示す。検出システム100は、このような増幅回路530を備えてよい。図12は、増幅回路530が、入力する差動信号をシングルエンド信号に変換する例を示す。
即ち、増幅回路530は、2入力1出力の増幅回路であり、一例として、オペアンプ等を含む増幅回路である。増幅回路530は、一方の入力端子に第1端子250からの正側の検出信号VA+が入力し、他方の入力端子に第2端子350からの負側の検出信号VA−が入力する。増幅回路530は、検出信号VA+および検出信号VA−に重畳する同相ノイズを低減させつつ、180度位相が異なる信号成分を増幅することができる。
同様に、検出システム100は、変形例の検出装置110の第2端子350および第4端子360の組が出力する差動信号をシングルエンド出力にする増幅回路を更に有してよい。即ち、検出システム100は、変形例の検出装置110が出力する2つの差動信号にそれぞれ対応する2つの増幅回路を有し、2つの検出信号の信号強度の増幅と同相ノイズの低減を実現できる。これにより、検出システム100は、回転体10の回転動作をより正確に検出することができる。
図13は、第2実施形態による、小型化された検出システム100の構成例を示す。第2実施形態による検出システム100は、図1から10を用いて説明した実施形態による検出システム100における回転体10に代えて、回転体11を被検出ユニットに用いる。図13の検出システム100において、図7に示された検出システム100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、相違点を除き、重複する説明を省略する。
第2実施形態による検出システム100は、回転体11と、磁場発生部20と、検出装置110と、を備える。回転体11は、円盤の内周において回転の移動方向に沿って凹部および凸部が交互に配列された歯車である。
磁場発生部20は、一例として、磁場発生部20が直方体の永久磁石の場合であって、被検出ユニットが図7に示した外側に歯のある小型の回転体10の場合には、回転体10に向く長方形表面の中心部分から発生させる磁束密度が最も大きく、外縁部に近づくにつれて磁束密度が減少するような磁場を検出装置110に印加する傾向がある。以降の説明において、当該傾向を第1傾向と呼ぶ場合がある。
一方で、磁場発生部20は、一例として、磁場発生部20が直方体の永久磁石の場合であって、被検出ユニットが第2実施形態の回転体11のように内側に歯のある歯車の場合には、磁場発生部20の中心部分よりも外縁部の方が歯車との距離が小さいことによって上記の第1傾向が打ち消される方向に働き、回転体11に向く長方形表面の全体に亘って略一様な磁束密度を有する磁場を検出装置110に印加する傾向がある。更に、回転体11のように歯車が小型化されると、磁場発生部20は、第1傾向が打ち消されるだけでなく、逆の傾向、すなわち、回転体11に向く長方形表面の外縁部から発生させる磁束密度が最も大きく、中心部分に近づくにつれて磁束密度が減少するような磁場を検出装置110に印加する傾向に転じることがある。以降の説明において、当該傾向を第2傾向と呼ぶ場合がある。
第2傾向について、より具体的には、回転体11が小型化されると、当該回転体11の曲率が大きくなるので、回転体11および検出装置110の平均距離は、磁気抵抗素子の位置に応じて大きく異なる傾向にある。図13には、点線で回転体11の基準ピッチ円16を示す。検出装置110および基準ピッチ円16の間の距離は、例えば、中心位置に近い位置における距離L1よりも中心位置から遠い位置における距離L2の方が小さくなる。したがって、磁場発生部20から回転体11に向く磁場の磁束密度は、回転体11に凹凸が無いと仮定した場合、中心位置から遠い位置ほど大きくなる。このような、磁束密度の位置に応じた分布は、回転体11の曲率が大きくなるほど、また、磁場発生部20および回転体11の間の距離が近くなるほど、大きくなる。図13は、磁場発生部20が発生させる磁場の磁束密度が、回転体11の移動方向において分布を有する例を示す。
検出装置110は、第1感磁部210に含まれる第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214と、第1端子250と、第2感磁部310に含まれる第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314と、第2端子350とを有する。ここで、回転体11の移動方向において、検出装置110の中心部は、磁場発生部20の中心部と略一致することが望ましい。図13は、検出装置110の中心と磁場発生部20の中心とが、一点鎖線で示す位置で略一致する例を示す。この場合、回転体11の移動方向において、当該中心位置から第1磁気抵抗素子212までの距離よりも、当該中心位置から第3磁気抵抗素子214までの距離の方が短くなる。したがって、第1端子250から出力される電圧は、第1電位および第2電位の中間電圧にオフセット電圧が加わった電圧となる。
同様に、回転体11の移動方向において、当該中心位置から第4磁気抵抗素子314までの距離よりも、当該中心位置から第2磁気抵抗素子312までの距離の方が短くなる。したがって、第2端子350から出力される電圧は、第1電位および第2電位の中間電圧にオフセット電圧が加わった電圧となる。なお、第1端子250および第2端子350からそれぞれ出力される電位に含まれるオフセット電圧は、絶対値が略同一で、正負の符号が異なる。例えば、図5に示す第1端子250からの検出信号VAは、プラスのオフセットが重畳され、第2端子350からの検出信号VBは、マイナスのオフセットが重畳される。
図14は、第2実施形態による、検出装置110から出力される第1信号および第2信号のオフセット電圧の一例を示す。なお、図14は、歯車の歯数を36、モジュールを0.4、材質をS45Cとし、磁石材質をSmCoとしたシミュレーション結果の一例である。図14の横軸は、回転体11および検出装置110の間の距離をギャップとして示す。当該距離は、一例として回転体11および検出装置110の間の平均距離であってもよく、検出装置110における代表点、例えば検出装置110の中心点と回転体11の基準ピッチ円16との間の距離であってもよい。また、図14の縦軸は、オフセット電圧を示す。なお、図14のシミュレーションは、検出装置110が磁場発生部20および回転体11から離間し、磁場発生部20がないゼロ磁場の環境において、オフセット電圧の初期値が0Vであることを初期条件とした。
図14は、このような検出装置110に対して、検出装置110が回転体11から離間したまま、磁場発生部20を近傍に設けることにより、オフセット電圧が生じる例を示す。この場合のオフセット電圧は、横軸のギャップが∞の場合のオフセット電圧に対応する。ここで、第1信号のオフセット電圧は、ギャップが大きい場合は上記の第1傾向により正側に発生し、ギャップが小さい場合は上記の第2傾向により負側に発生する。第2信号のオフセット電圧は、ギャップが大きい場合は上記の第1傾向により負側に発生し、ギャップが小さい場合は上記の第2傾向により正側に発生する例を示す。
磁場発生部20は、回転体11と検出装置110との間のギャップが∞の場合には、回転体11に向く長方形表面の中心部分から発生させる磁束密度が最も大きく、外縁部に近づくにつれて磁束密度が減少するような磁場を検出装置110に印加する第1傾向にあるが、検出装置110および回転体11の間の距離が近づくことにより、当該オフセット電圧の絶対値は減少していく。しかし、さらに近づくと極性が反転し、絶対値が増加していくことがわかる。数十mVを超えるようなオフセット電圧が発生すると、検出装置110の回転動作の検出結果に誤差が発生することがある。また、ダイナミックレンジおよびS/N等を悪化させる原因になる場合もある。そこで、第2実施形態による検出装置110は、このようなオフセット電圧の発生を低減あるいは抑制させる。
図15は、第2実施形態による、検出装置110の構成例を示す。図15の検出装置110において、図6および図9に示された検出装置110の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。
第2実施形態による検出装置110は、同一磁場に対する抵抗値に関して、検出装置110の第1磁気抵抗素子212の抵抗値に対する第3磁気抵抗素子214の抵抗値の大小関係、および、第4磁気抵抗素子314の抵抗値に対する第2磁気抵抗素子312の抵抗値の大小関係が、図1から10の実施形態と逆である。より具体的には、図1から10の実施形態では、第3磁気抵抗素子214は第1磁気抵抗素子212よりも同一磁場に対する抵抗値が小さく、且つ、第2磁気抵抗素子312は第4磁気抵抗素子314よりも同一磁場に対する抵抗値が小さい、という大小関係である。その一方で、第2実施形態では、第3磁気抵抗素子214は第1磁気抵抗素子212よりも同一磁場に対する抵抗値が大きく、且つ、第2磁気抵抗素子312は第4磁気抵抗素子314よりも同一磁場に対する抵抗値が大きい、という大小関係である。更に具体的には、第2実施形態による検出装置110は、回転体11の移動方向において、当該検出装置110の中心軸から遠い位置の磁気抵抗素子を、中心軸に近い位置の磁気抵抗素子と比較して、同一磁場に対する抵抗値を小さくする。
即ち、第1磁気抵抗素子212は、第3磁気抵抗素子214よりも同一磁場に対する抵抗値が小さく、第4磁気抵抗素子314は、第2磁気抵抗素子312よりも同一磁場に対する抵抗値が小さく形成される。この場合、第3磁気抵抗素子214は、第1磁気抵抗素子212の形状とは異なる形状に形成され、第2磁気抵抗素子312は、第4磁気抵抗素子314の形状とは異なる形状に形成されてよい。これに代えて、それぞれの磁気抵抗素子の厚さおよび/または材質を変えてもよい。
例えば、第1磁気抵抗素子212の少なくとも一部は、第3磁気抵抗素子214と比較して、回転体11の移動方向に対して直交する方向の長さが短い形状に形成される。図16は、第1磁気抵抗素子212が感磁領域212a、感磁領域212b、感磁領域212c、および感磁領域212dの4つの感磁領域を含み、感磁領域212aおよび感磁領域212dのY方向の長さを短くした例を示す。これにより、回転体11の移動方向において、感磁面の中心の位置522をほとんど変化させずに、第1磁気抵抗素子212の抵抗値を小さくすることができる。なお、感磁面の中心の位置522は、例えば、Y方向に相当する第1領域512の中心線AB上であれば、移動してもよい。
同様に、第4磁気抵抗素子314の少なくとも一部は、第2磁気抵抗素子312と比較して、回転体11の移動方向に対して直交する方向の長さが短い形状に形成される。図15は、第4磁気抵抗素子314が感磁領域314a、感磁領域314b、感磁領域314c、および感磁領域314dの4つの感磁領域を含み、感磁領域314aおよび感磁領域314dのY方向の長さを短くした例を示す。これにより、回転体11の移動方向において、感磁面の中心の位置528をほとんど変化させずに、第4磁気抵抗素子314の抵抗値を小さくすることができる。なお、感磁面の中心の位置528は、例えば、Y方向に相当する第4領域518の中心線GH上であれば、移動してもよい。
これにより、第2実施形態による検出装置110は、磁気抵抗素子の抵抗値を調節しつつ、基板30上の回転体11の移動方向において、複数の磁気抵抗素子の感磁面の中心位置が等間隔となるように配置することができる。なお、第1磁気抵抗素子212および第4磁気抵抗素子314の抵抗値の調節は、図15の例に限定されることはない。感磁面の中心の位置が回転体11の移動方向に移動しなければよく、例えば、4つの感磁面の全てを短くしてもよい。また、例えば、各領域における中心軸側の感磁領域(一例として、感磁領域314bおよび感磁領域314c)を短くしてもよい。
なお、このような感磁領域を形成する場合、予め定められた複数の長さの感磁領域を基板30上にそれぞれ形成してよい。また、予め定められた略一定の長さの感磁領域を基板30上に形成した後に、形成された感磁領域の少なくとも一部をトリミングして長さを微調整してもよい。
図16は、第2実施形態による、検出装置110から出力される第1信号および第2信号のオフセット電圧の一例を示す。図16は、図14と同様に、歯車の歯数を36、モジュールを0.4、材質をS45Cとし、磁石材質をSmCoとしたシミュレーション結果の一例である。図16の横軸は、磁場発生部20および回転体11の間の距離を示す。また、図16の縦軸は、オフセット電圧を示す。
なお、図16において、図10と同様に、検出装置110が磁場発生部20および回転体11から離間したゼロ磁場の環境におけるオフセット電圧を、横軸に「ゼロ磁場」と示してプロットした。ここで、検出装置110に磁場が入力しないゼロ磁場の環境における、第1磁気抵抗素子212の抵抗値をR1、第2磁気抵抗素子312の抵抗値をR2、第3磁気抵抗素子214の抵抗値をR3、第4磁気抵抗素子314の抵抗値をR4とする。
第2実施形態による検出装置110は、R1<R3およびR2>R4となるように、それぞれの磁気抵抗素子が形成される。これにより、ゼロ磁場における第1端子250の電圧VAおよび第2端子350の電圧VBは、次式のように、第1電位Vddおよび第2電位Vssの中間電圧とは異なる電圧となる。
(数3)
VA=(Vdd−Vss)・R3/(R1+R3)>(Vdd−Vss)/2
VB=(Vdd−Vss)・R4/(R2+R4)<(Vdd−Vss)/2
なお、第2磁気抵抗素子214および第3磁気抵抗素子312は、同一磁場に対する抵抗値が等しく形成されてよい。また、第1磁気抵抗素子212および第4磁気抵抗素子314は、同一磁場に対する抵抗値が等しく形成されてよい。即ち、検出装置110は、R1=R4およびR2=R3となるように、それぞれの磁気抵抗素子が形成されてよい。この場合、第1端子250の第1オフセット電圧VOS1および第2端子350のオフセット電圧VOS2は次式のように算出され、符号が異なり、絶対値が等しいオフセット電圧となることがわかる。ここで、第1電位Vddおよび第2電位Vssの中間電圧をVMとした。
(数4)
VOS1=VA−VM=VM・(R3−R1)/(R1+R3)>0
VOS2=VB−VM=VM・(R4−R2)/(R2+R4)=−VOS1<0
VM=(Vdd−Vss)/2
以上のように、検出装置110に磁場が入力しないゼロ磁場の環境において、第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214の間の第1端子250の電圧は、第1電位および第2電位の中間電圧とは第1オフセット電圧VOS1だけ異なる電位となる。ここで、R1<R3であるから、第1オフセット電圧VOS1は正側の電位となる。
また、第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314の間の第2端子350の電圧は、第1電位および第2電位の中間電圧とは第2オフセット電圧VOS2だけ異なる電位となる。ここで、R4<R2であるから、第2オフセット電圧VOS2は負側の電位となる。
図16において、図10と同様に、回転体10からは離間したまま、検出装置110の近傍に磁場発生部20が設けられた環境におけるオフセット電圧を、横軸に「∞」と示してプロットした。図13および図14でも説明したように、磁場発生部20は、回転体11と検出装置110との間のギャップが∞の場合には、回転体11に向く磁場発生部20の長方形表面の中心部分から発生させる磁束密度が最も大きく、外縁部に近づくにつれて磁束密度が減少するような磁場を検出装置110に印加する第1傾向にあるが、回転体11と検出装置110との間のギャップが小さくなるに連れて、磁場発生部20の長方形表面の外縁部から発生させる磁束密度が最も大きく、中心部分に近づくにつれて磁束密度が減少するような磁場を検出装置110に印加する第2傾向に転じる。
即ち、回転体11と検出装置110との間のギャップが∞の場合には、第1磁気抵抗素子212に入力する磁束密度は、第3磁気抵抗素子214に入力する磁束密度よりも小さく、したがって、第3磁気抵抗素子214は、第1磁気抵抗素子212と比較して、同一磁場に対する抵抗値が大きく形成されていて且つ磁場発生部20によって増加する抵抗値が大きいため、ゼロ磁場に比べて第1オフセット電圧VOS1が一時的に正の電位側にシフトする。しかしながら、回転体11と検出装置110との間のギャップが小さくなるに連れて、第1磁気抵抗素子212に入力する磁束密度は、第3磁気抵抗素子214に入力する磁束密度よりも大きくなり、したがって、第3磁気抵抗素子214は、第1磁気抵抗素子212と比較して、磁場発生部20によって増加する抵抗値が小さくなる。これにより、第1オフセット電圧VOS1は、負の電位側にシフトする。
また、回転体11と検出装置110との間のギャップが∞の場合には、第4磁気抵抗素子314に入力する磁束密度は、第2磁気抵抗素子312に入力する磁束密度よりも小さく、したがって、第2磁気抵抗素子312は、第4磁気抵抗素子314と比較して、同一磁場に対する抵抗値が大きく形成されていて且つ磁場発生部20によって増加する抵抗値が大きいため、ゼロ磁場に比べて第2オフセット電圧VOS2が一時的に負の電位側にシフトする。しかしながら、回転体11と検出装置110との間のギャップが小さくなるに連れて、第4磁気抵抗素子314に入力する磁束密度は、第2磁気抵抗素子312に入力する磁束密度よりも大きくなり、したがって、第2磁気抵抗素子312は、第4磁気抵抗素子314と比較して、磁場発生部20によって増加する抵抗値が小さくなる。これにより、第2オフセット電圧VOS2は、正の電位側にシフトする。
このように、第2実施形態による検出装置110は、ゼロ磁場の初期オフセット電圧を予め発生させることにより、磁場発生部20の磁場が印加されることによって、第1オフセット電圧VOS1および第2オフセット電圧VOS2を、回転体11を離した状態では一時的に0Vの電位の方向とは反対方向に変化させるが、回転体11と検出装置110との間のギャップを小さくさせるに連れて、0Vの電位の方向に変化させることができる。即ち、検出装置110は、磁場発生部20の磁場を印加して回転体11との距離を小さくすると、初期オフセットの絶対値を小さくする方向に変化させる。
図16において、回転体11および磁場発生部20を検出装置110の近傍に設け、検出システム100を構成した場合のオフセット電圧を、横軸に「0.05」から「0.85」と示した範囲にプロットした。図13および図14でも説明したように、回転体11の曲率が大きくなることにより、回転体11および磁場発生部20の間に発生する磁場の磁束密度は、検出装置110の位置に応じて分布を有する。
この場合、第1磁気抵抗素子212に入力する磁束密度は、第3磁気抵抗素子214に入力する磁束密度よりも大きくなる。したがって、第1オフセット電圧VOS1は、負の電位側にシフトする。図16は、回転体11および検出装置110の間の距離が0.45mmにした場合に、第1オフセット電圧VOS1が0mV程度にシフトした例を示す。
同様に、第4磁気抵抗素子314に入力する磁束密度は、第2磁気抵抗素子312に入力する磁束密度よりも大きくなる。したがって、第2オフセット電圧VOS2は、正の電位側にシフトする。図16は、回転体11および検出装置110の間の距離が0.45mmにした場合に、第2オフセット電圧VOS2が0mV程度にシフトした例を示す。
このように、第2実施形態による検出装置110は、初期オフセット電圧を予め発生させる。これにより、検出装置110が回転体11に近接して、磁場発生部20から回転体11の間に発生する磁場を検出した場合、すなわち、第1磁気抵抗素子212に入力する磁束密度に対する、第3磁気抵抗素子214に入力する磁束密度の割合が減少し、第4磁気抵抗素子314に入力する磁束密度に対する、第2磁気抵抗素子312に入力する磁束密度の割合が減少する場合、第1オフセット電圧VOS1および第2オフセット電圧VOS2は、ゼロ磁場におけるオフセット電圧と比較して、0Vの電位の方向に変化させることができる。
即ち、第2実施形態による当該検出システム100は、検出装置110の磁気抵抗素子の抵抗値を調節することで、検出信号のオフセット電圧を低減あるいは抑制することができ、精度よく回転体11の回転動作を検出することができる。検出システム100は、一例として、回転体11および検出装置110の間の距離を0.45mmにすることで、オフセット電圧を略0Vに低減することができることを示した。これに代えて、回転体11および検出装置110の間の距離を任意の異なる値でオフセット電圧を略0Vとなるように、各パラメータを調節しても構わない。
以上の複数の実施形態に係る検出装置110では、同一磁場に対する抵抗値に関して、前記第1磁気抵抗素子の抵抗値に対する前記第3磁気抵抗素子の抵抗値の大小関係は、前記第4磁気抵抗素子の抵抗値に対する前記第2磁気抵抗素子の抵抗値の大小関係と同じである。
第1実施形態においては、第3磁気抵抗素子214が、第1磁気抵抗素子212よりも同一磁場に対する抵抗値が小さく、第2磁気抵抗素子312が、第4磁気抵抗素子314よりも同一磁場に対する抵抗値が小さい関係を満たすことを目的として、第3磁気抵抗素子214および第2磁気抵抗素子312のそれぞれの少なくとも一部を、第1磁気抵抗素子212および第4磁気抵抗素子314のそれぞれと比較して、回転体11の移動方向に対して直交する方向の長さが短い形状に形成するものとして説明した。これに代えて又は加えて、例えば、第3磁気抵抗素子214の少なくとも一部は、第1磁気抵抗素子212と比較して、膜厚が厚く形成されてもよい。第3磁気抵抗素子214が感磁領域214a、感磁領域214b、感磁領域214c、および感磁領域214dの4つの感磁領域を含み、感磁領域214aおよび感磁領域214dの膜厚を厚くすればよい。これにより、回転体10の移動方向において、感磁面の中心の位置526をほとんど変化させずに、第3磁気抵抗素子214の抵抗値を小さくすることができる。なお、感磁面の中心の位置526は、例えば、Y方向に相当する第3領域516の中心線EF上であれば、移動してもよい。
同様に、第2磁気抵抗素子312の少なくとも一部は、第4磁気抵抗素子314と比較して、膜厚が厚く形成されてもよい。第2磁気抵抗素子312が感磁領域312a、感磁領域312b、感磁領域312c、および感磁領域312dの4つの感磁領域を含み、感磁領域312aおよび感磁領域312dの膜厚を厚くすればよい。これにより、回転体10の移動方向において、感磁面の中心の位置524をほとんど変化させずに、第2磁気抵抗素子312の抵抗値を小さくすることができる。なお、感磁面の中心の位置524は、例えば、Y方向に相当する第2領域514の中心線CD上であれば、移動してもよい。
これにより、磁気抵抗素子の抵抗値を調節しつつ、基板30上の回転体10の移動方向において、複数の磁気抵抗素子の感磁面の中心位置が等間隔となるように配置することができる。なお、第2磁気抵抗素子312および第3磁気抵抗素子214の抵抗値の調節は、この例に限定されることはない。感磁面の中心の位置が回転体10の移動方向に移動しなければよく、例えば、4つの感磁面の全ての膜厚を厚くしてもよい。また、例えば、各領域における中心軸側の感磁領域(一例として、感磁領域214bおよび感磁領域214c)を厚くしてもよい。
第2実施形態においては、第1磁気抵抗素子212が、第3磁気抵抗素子214よりも同一磁場に対する抵抗値が小さく、第4磁気抵抗素子314が、第2磁気抵抗素子312よりも同一磁場に対する抵抗値が小さい関係を満たすことを目的として、第1磁気抵抗素子212および第4磁気抵抗素子314のそれぞれの少なくとも一部を、第3磁気抵抗素子214および第2磁気抵抗素子312のそれぞれと比較して、回転体11の移動方向に対して直交する方向の長さが短い形状に形成するものとして説明した。これに代えて又は加えて、例えば、第1磁気抵抗素子212の少なくとも一部は、第3磁気抵抗素子214と比較して、膜厚が厚く形成されてもよい。第1磁気抵抗素子212が感磁領域212a、感磁領域212b、感磁領域212c、および感磁領域212dの4つの感磁領域を含み、感磁領域212aおよび感磁領域212dの膜厚を厚くすればよい。これにより、回転体11の移動方向において、感磁面の中心の位置522をほとんど変化させずに、第1磁気抵抗素子212の抵抗値を小さくすることができる。なお、感磁面の中心の位置522は、例えば、Y方向に相当する第1領域512の中心線AB上であれば、移動してもよい。
同様に、第4磁気抵抗素子314の少なくとも一部は、第2磁気抵抗素子312と比較して、膜厚が厚く形成されてもよい。第4磁気抵抗素子314が感磁領域314a、感磁領域314b、感磁領域314c、および感磁領域314dの4つの感磁領域を含み、感磁領域314aおよび感磁領域314dの膜厚を厚くすればよい。これにより、回転体11の移動方向において、感磁面の中心の位置528をほとんど変化させずに、第4磁気抵抗素子314の抵抗値を小さくすることができる。なお、感磁面の中心の位置528は、例えば、Y方向に相当する第4領域518の中心線GH上であれば、移動してもよい。
これにより、磁気抵抗素子の抵抗値を調節しつつ、基板30上の回転体11の移動方向において、複数の磁気抵抗素子の感磁面の中心位置が等間隔となるように配置することができる。なお、第4磁気抵抗素子314および第1磁気抵抗素子212の抵抗値の調節は、この例に限定されることはない。感磁面の中心の位置が回転体11の移動方向に移動しなければよく、例えば、4つの感磁面の全ての膜厚を厚くしてもよい。また、例えば、各領域における中心軸側の感磁領域(一例として、感磁領域212bおよび感磁領域212c)を厚くしてもよい。
なお、互いに膜厚が異なる複数の感磁領域を形成する場合、予め定められた複数の厚さの感磁領域を基板30上にそれぞれ形成してよい。また、予め定められた略一定の厚さの感磁領域を基板30上に形成した後に、形成された感磁領域の少なくとも一部をトリミングして抵抗値を微調整してもよい。
以上の複数の実施形態に係る検出装置110において、初期オフセット電圧の調整は、磁気抵抗素子の抵抗値による調整に限定するものではない。検出装置110は、例えば、磁気抵抗素子に直列または並列に抵抗を接続して、初期オフセット電圧を調整してもよい。この場合、例えば、第1感磁部210は、回転体10の移動方向に配列される第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214と、第1磁気抵抗素子212に電気的に接続される第1抵抗とを有してよい。同様に、第2感磁部310は、回転体10の移動方向に配列される第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314と、第4磁気抵抗素子314に電気的に接続される第2抵抗とを有してよい。
そして、第1抵抗、第1磁気抵抗素子212、および第3磁気抵抗素子214は、第1電位および第2電位の間に電気的に直列に接続され、第2磁気抵抗素子312、第4磁気抵抗素子314、および第2抵抗は、第1電位および第2電位の間に電気的に直列に接続されてもよい。更に、同一磁場に対する抵抗値に関して、第1抵抗および第1磁気抵抗素子212の合成抵抗値に対する第3磁気抵抗素子214の抵抗値の大小関係は、第2抵抗および第4磁気抵抗素子314の合成抵抗値に対する第2磁気抵抗素子312の抵抗値の大小関係と同じであってもよい。
例えば、第1抵抗および第1磁気抵抗素子212の合成抵抗は、第3磁気抵抗素子214よりも同一磁場に対する抵抗値が大きく形成され、且つ、第2抵抗および第4磁気抵抗素子314の合成抵抗は、第2磁気抵抗素子312よりも同一磁場に対する抵抗値が大きく形成される。また、例えば、第1抵抗および第1磁気抵抗素子212の合成抵抗は、第3磁気抵抗素子214よりも同一磁場に対する抵抗値が小さく形成され、且つ、第2抵抗および第4磁気抵抗素子314の合成抵抗は、第2磁気抵抗素子312よりも同一磁場に対する抵抗値が小さく形成される。
なお、第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214は、同一磁場に対する抵抗値が等しく形成されてよい。これにより、第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214の間の電圧は、第1抵抗の抵抗値に応じた初期オフセット電圧を発生させることができる。また、第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314は、同一磁場に対する抵抗値が等しく形成されてよい。これにより、第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314の間の電圧は、第2抵抗の抵抗値に応じた初期オフセット電圧を発生させることができる。
なお、第1磁気抵抗素子212、第2磁気抵抗素子312、第3磁気抵抗素子214、および第4磁気抵抗素子314は、同一磁場に対する抵抗値が等しく形成されてもよい。以上により、第1磁気抵抗素子212および第3磁気抵抗素子214の間の電圧は、第1抵抗の抵抗値に応じた初期オフセット電圧を発生させることができ、第2磁気抵抗素子312および第4磁気抵抗素子314の間の電圧は、第2抵抗の抵抗値に応じた初期オフセット電圧を発生させることができる。したがって、検出装置110は、磁気抵抗素子の抵抗値の調節なしに、初期オフセット電圧を発生することもできる。また、検出装置110は、磁気抵抗素子の抵抗値の調節と、抵抗の追加による調整とを組み合わせて、初期オフセット電圧を発生させてもよい。
以上の複数の実施形態に係る検出装置110は、基板30上に形成される感磁領域の形状を、回転体10、11の移動方向に対して垂直方向に延伸する長方形として説明したが、これに限定されることはない。感磁領域の形状は、三角形、正方形、台形、多角形、円形、および楕円形等でよい。また、それぞれの磁気抵抗素子が当該感磁領域を4つずつ有する例を説明したが、これに限定されることはない。それぞれの磁気抵抗素子は、1または複数の感磁領域を有してよい。
また、以上の複数の実施形態に係る検出システム100は、被検出ユニットとして、歯車である回転体10、11を備えることを説明したが、これに限定されることはない。回転体10、11は、検出システム100に設けられた検出対象である被検出ユニットの一例である。被検出ユニットは、検出装置110側に移動方向に沿って交互に配列された凹部および/または凸部を有し、検出装置110が当該凹部および/または凸部と対向して設けられ、感磁部に入力する磁磁束密度が変化するように構成できる部材であればよい。
被検出ユニットは、平歯車、はすば歯車、やまば歯車、かさ歯車、内歯車、冠歯車、ねじ歯車、ウォームギヤ、スプロケット、および、ラックまたはピニオン等でよい。また、被検出ユニットは、単に、円盤状の板部に凸部および/または凹部が形成された部材でよい。また、被検出ユニットは、検出装置110との移動方向に沿って検出装置110側に対向する複数の貫通孔が配列された板部を有してもよい。
なお、以上の複数の実施形態において、被検出ユニットが回転動作することを説明したが、これに限定されることはない。被検出ユニットがラック等である場合、一方向に凸部および/または凹部が移動してよい。また、被検出ユニットが固定され、検出装置110が移動してもよい。この場合、検出装置110は被検出ユニットが相対移動するものとして、動作してよい。即ち、以上の複数の実施形態において、回転体10、11の「移動」の表現に代えて、回転体10、11の「相対移動」と表現してよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。