JP2019059927A - フィルム、ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents

フィルム、ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、透明性に優れ、屈曲耐性を向上しながら、表面硬度の低下が抑制されたフィルムを提供することを主目的とする。【解決手段】JIS K7127に準拠した引張試験により得られる応力−ひずみ曲線の降伏点におけるひずみが8%以上であり、引張弾性率が1.8GPa以上であり、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が85%以上であり、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、5以下である、フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、フィルム、ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関するものである。
薄い板ガラスは、硬度、耐熱性等に優れている反面、曲げにくく、落とすと割れやすく、加工性に問題があり、また、プラスチック製品と比較して重いといった欠点があった。このため、近年、樹脂基材や樹脂フィルム等の樹脂製品が、加工性、軽量化の観点でガラス製品と置き換わりつつあり、ガラス代替製品となる樹脂製品の研究が行われてきている。
例えば、液晶や有機EL等のディスプレイや、タッチパネル等のエレクトロニクスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、更には、フレキシブル化が要求されるようになってきた。これらのデバイスには従来、薄い板ガラス上に様々な電子素子、例えば、薄型トランジスタや透明電極等が形成されているが、この薄い板ガラスを樹脂フィルムに変えることにより、パネル自体の耐衝撃性の強化、フレキシブル化、薄型化や軽量化が図れる。
一般にポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸無水物と芳香族ジアミンとの縮合反応により得られたポリアミド酸を脱水閉環反応させて得られる高耐熱性の樹脂である。しかしながら、一般にポリイミドは黄色或いは褐色に着色を示すことから、ディスプレイ用途や光学用途など透明性が要求される分野に用いることは困難であった。そこで、透明性を向上したポリイミドを、ディスプレイ部材へ適用することが検討されている。例えば、特許文献1には、高耐熱性、高透明性、低吸水性のポリイミド樹脂として、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物およびこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル含有化合物と、特定の式で表される、少なくとも一つのフェニレン基とイソプロピリデン基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種のイミノ形成化合物とを反応させてなるポリイミドが開示されており、フラットパネルディスプレイや携帯電話機器等の基板材料に好適であると記載されている。
さらに、特許文献2には、芳香族ジアンヒドリドおよび芳香族ジアミンに由来する単位構造を含み、引裂強度改善用添加剤、またはヘキサフルオロ基、スルホン基およびオキシ基よりなる群から選ばれる官能基を有するモノマーに由来する単位構造をさらに含む、透明ポリイミドフィルムが開示されている。特許文献3には、透明性及び耐熱性が優れたポリイミドフィルムとして、損失弾性率を保存弾性率で分けた値であるtanδ曲線におけるピークの最頂点が特定の範囲内にあるポリイミドフィルムが開示されている。
また、特許文献4には、フレキシブルデバイスの基板に用いられるポリイミドフィルムとして、無色透明であり、無機膜との間に発生する残留応力が低く、機械的物性及び熱物性に優れたポリイミドフィルムを得ることを目的として、特定のフッ素系芳香族ジアミンと、ケイ素原子数が3〜200個のシロキサン骨格を有するシリコーン化合物とをモノマー成分として用いたポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドフィルムが開示されている。特許文献4には、前記ポリイミド前駆体を用いて無機膜(SiN膜)付きポリイミドフィルムを形成したところ、折り曲げを10回繰り返し行った折り曲げ試験後にクラックも剥離も観察されないか(○)、クラックが観察された(△)と記載されている。
また、特許文献5には、低屈折率でかつ耐折性が高いポリイミドとして、ケイ素原子数が2〜21個のシリコーンジアミンをジアミン原料重量の10重量%以上含むことが記載されている。
特開2006−199945号公報 特表2014−501301号公報 特表2012−503701号公報 国際公開2014/098235号公報 特開2008−64905号公報
ガラス代替製品となる樹脂製品には、そもそも優れた透明性が求められる。
画面が折り畳めるモバイル機器は、持ち運ぶ際には折り畳んだ状態とし、使用する際には折り畳みを開いた状態とする。そのため、モバイル機器に搭載されるフレキシブルディスプレイには、繰り返し屈曲させても表示不良が発生しないことが求められ、フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材には、繰り返し屈曲させたときの屈曲耐性(以下、動的屈曲耐性という場合がある)が求められる。更に、画面が折り畳めるモバイル機器は、折り畳んだ状態で持ち運ばれることが多いため、モバイル機器に搭載されるフレキシブルディスプレイには、長時間折り曲げられた状態が続いても、平坦に戻した時に元通りになることが求められ、フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材にも、長時間折り曲げられた状態が続いた後の復元性(以下、静的屈曲耐性という場合がある)が求められる。
一方で、フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材には、繰り返しの屈曲に耐えることだけでなく、表面の傷付防止の機能、また、その下部に位置するタッチセンサーやディスプレイパネルの破損を防ぐことも求められる。
樹脂フィルムの屈曲耐性と表面硬度とは、後に詳述するように相反する特性であると考えられるが、屈曲耐性と保護フィルムとして十分な表面硬度とを両立した樹脂フィルムが求められている。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、透明性に優れ、屈曲耐性を向上しながら、表面硬度の低下が抑制されたフィルム乃至樹脂フィルムを提供することを主目的とする。
また、本発明は、前記フィルム乃至樹脂フィルムを有する積層体、及び、前記フィルム乃至樹脂フィルム又は前記積層体であるディスプレイ用部材、並びに、前記フィルム乃至樹脂フィルム又は前記積層体を備えるタッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することを目的とする。
本発明のフィルムは、15mm×40mmの試験片を、JIS K7127に準拠し、引張速度10mm/分、チャック間距離20mmとして25℃で測定する引張試験により得られる応力−ひずみ曲線において、降伏点におけるひずみが8%以上であり、
前記引張試験における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、5以下である。
本発明のポリイミドフィルムは、15mm×40mmの試験片を、JIS K7127に準拠し、引張速度10mm/分、チャック間距離20mmとして25℃で測定する引張試験により得られる応力−ひずみ曲線において、降伏点におけるひずみが8%以上であり、
前記引張試験における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、5以下である。
本発明のポリイミドフィルムは、温度25℃で、ISO14577に準拠し、ナノインデンテーション法を用いて測定した、フィルム表面のヤング率が、2.3GPa以上であることが、表面硬度に優れる点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有することが、光透過性と、屈曲耐性及び表面硬度との点から好ましい。
(一般式(1)において、Rは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、複数のRは各々同一であっても異なっていても良く、Rはジアミン残基である2価の基を表し、複数のRは各々同一であっても異なっていても良く、複数のRの少なくとも一部が芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基を含む。nは繰り返し単位数を表す。)
本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、Rは、ケイ素原子を有しないジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン骨格を有するジアミン残基を含むか、或いは、Rは、ジアミン残基である2価の基を表し、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが、屈曲耐性と表面硬度の点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のRが、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物残基、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物残基、ピロメリット酸二無水物残基、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であることが、光透過性と、屈曲耐性及び表面硬度との点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、Rは、ケイ素原子を有しないジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン骨格を有するジアミン残基を含むか、或いは、Rは、ケイ素原子を有しないジアミン残基、及び、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが、屈曲耐性及び表面硬度を向上する点から好ましい。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のRにおける、前記芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基が、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−[(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2,2−ジイル)ビス(4,1−フェニレンオキシ)]ジアニリン残基、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン残基、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが、光透過性と、屈曲耐性及び表面硬度との点から好ましい。
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
本発明の積層体は、前記本発明のフィルム又はポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体である。
本発明のディスプレイ用部材は、前記本発明のフィルム又はポリイミドフィルム、或いは、前記本発明の積層体を含む。
本発明のディスプレイ用部材は、フレキシブルディスプレイ用とすることができる。
また、本発明は、前記本発明のフィルム若しくはポリイミドフィルム又は前記本発明の積層体と、
前記フィルム若しくはポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有するタッチパネル部材を提供する。
また、本発明は、前記本発明のフィルム若しくはポリイミドフィルム又は前記本発明の積層体と、
前記フィルム若しくはポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する液晶表示装置を提供する。
また、本発明は、前記本発明のフィルム若しくはポリイミドフィルム又は前記本発明の積層体と、
前記フィルム若しくはポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供する。
本発明によれば、透明性に優れ、屈曲耐性を向上しながら、表面硬度の低下が抑制されたフィルム乃至樹脂フィルムを提供することができる。
また、本発明は、前記フィルム乃至樹脂フィルムを有する積層体、及び前記フィルム乃至樹脂フィルム又は前記積層体であるディスプレイ部材、並びに、前記フィルム乃至樹脂フィルム又は前記積層体を備えるタッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することができる。
フィルムの屈曲における最大応力を説明するための図である。 ポリイミドフィルムの応力−ひずみ曲線の一例である。 図2のポリイミドフィルムの応力−ひずみ曲線のひずみとdy/dx(平均変化率)のグラフである。 静的屈曲試験の方法を説明するための図である。 本発明のタッチパネル部材の一例の一方の面の概略平面図である。 図5に示すタッチパネル部材のもう一方の面の概略平面図である。 図5及び図6に示すタッチパネル部材のA−A’断面図である。 本発明の積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。 本発明の積層体を備える導電性部材の別の一例を示す概略平面図である。 本発明のタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図である。 本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の液晶表示装置の別の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の別の一例を示す概略断面図である。
I.フィルム
本発明のフィルムは、15mm×40mmの試験片を、JIS K7127に準拠し、引張速度10mm/分、チャック間距離20mmとして25℃で測定する引張試験により得られる応力−ひずみ曲線において、降伏点におけるひずみが8%以上であり、
前記引張試験における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、5以下である。
本発明によれば、25℃で測定する引張試験により得られる応力−ひずみ曲線において、降伏点におけるひずみが8%以上であり、前記引張試験における前記特定の引張弾性率、前記特定の全光線透過率、及び前記特定の黄色度を有するフィルムとしたことにより、透明性に優れ、屈曲耐性を向上しながら、表面硬度の低下が抑制されたフィルムを提供することができる。
なお、本発明においてフィルムとは、厚みが1μm〜200μm程度の薄膜状乃至平板状の材料をいい、シートと呼ばれる物を含み、また、長尺状であっても良い。
本発明のフィルムとしては、樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムの材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、トリアセチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリ塩化ビニル、AS樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、MBS樹脂、及びこれらの少なくとも1種を含む共重合体等が挙げられる。本発明の範囲の物性値を満たせば、材料種は特に限定されるものではないが、有機系材料、シリコーン系材料、それらの共重合体、混合物が好ましく、中でもフィルムのガラス転移温度が150℃以上であるものが好適に用いられる。さらに、本発明において、フィルム材料としてポリイミドやポリアミドを用いたポリイミドフィルムやポリアミドフィルムが、特に好適に用いられる。
以下、ポリイミドフィルムを例にとって、本発明のフィルムの作用、特性等について詳細に説明する。本発明のフィルムの作用、特性等は、後述する本発明のポリイミドフィルムと同様であって良い。
II.ポリイミドフィルム
本発明のポリイミドフィルムは、15mm×40mmの試験片を、JIS K7127に準拠し、引張速度10mm/分、チャック間距離20mmとして25℃で測定する引張試験により得られる応力−ひずみ曲線において、降伏点におけるひずみが8%以上であり、
前記引張試験における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、5以下である。
本発明によれば、25℃で測定する引張試験により得られる応力−ひずみ曲線において、降伏点におけるひずみが8%以上であり、前記引張試験における前記特定の引張弾性率、前記特定の全光線透過率、及び前記特定の黄色度を有するポリイミドフィルムとしたことにより、透明性に優れ、屈曲耐性を向上しながら、表面硬度の低下が抑制された樹脂フィルムを提供することができる。
本発明者らは、樹脂の中でもポリイミドに着目した。ポリイミドは、その化学構造に由来し耐熱性などの耐久性に優れることが知られている。また、ポリイミドフィルムは、内部の分子鎖の配置が一定の秩序構造を形成することが知られており、そのおかげで、室温において、平坦状態、折り曲げ状態を一定の周期で繰り返した場合の復元性において良好な結果を示すと考えられる。
しかしながら、従来の透明ポリイミドを用いた樹脂フィルムでは、平坦状態、折り曲げ状態を一定の周期で繰り返す試験で破断しやすかったり、折り癖がつき、平坦に戻り難く、屈曲耐性に劣るという問題があった。屈曲状態が長時間維持されることで屈曲部外周に引張りの応力が継続的に印加されることによるフィルムの塑性変形がおきており、それにより、屈曲の力を外しても復元しにくくなっていると推察される。
折り曲げた際にフィルム屈曲部外周にかかる引張り応力は、フィルムが厚ければ厚いほど、屈曲部の屈曲半径が小さいほど大きくなると考えられている。
そのため塑性変形しやすいフィルムは、屈曲試験の過程で変形しやすく、その変形はフレキシブルディスプレイパネルの部材として本発明の材料を用いた時に視認性を悪化させる。
より詳細には、以下のように推察される。
フィルムの屈曲は、屈曲外周部には張力、屈曲内周部には圧縮力がかかり、図1に示すようなフィルムの屈曲において、応力最大となる部位(応力最大部)での最大応力(σ)は下記式(1)で示される。
E :弾性率
y :中立軸(曲がる時の中心となる軸)からの距離の最大値(図1の場合、膜厚dの半分)
φ:曲率(試験幅)
d:フィルムの膜厚
前記最大応力(σ)は、前記式(1)に示されるように、フィルムの弾性率と膜厚に比例し、曲率から膜厚を引いた値に反比例する。従って、フィルムの弾性率を大きくすると屈曲時にフィルムにかかる応力も大きくなり、変形の原因となる。樹脂フィルムにおいても、弾性率を大きくすると、屈曲状態後の復元性が悪化し、屈曲耐性が不十分になる傾向がある。一方で、樹脂フィルムの弾性率を大きくすることにより、表面硬度を向上する傾向がある。実際、後述する比較例4で示されるように、弾性率が大きいポリイミドフィルムは、表面硬度は良好なものの、屈曲耐性が悪化している。このように、樹脂フィルムの屈曲耐性と表面硬度とは、相反する特性であると考えられる。
フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材には、繰り返しの屈曲に耐えることだけでなく、表面の傷付防止の機能、また、その下部に位置するタッチセンサーやディスプレイパネルの破損を防ぐことも求められる。表面材が、例えばガラスなどの様に弾性率が高い材質であるほど、ディスプレイの表面からの衝撃に対して、その衝撃を面方向に拡散させ、局所的な衝撃を緩和することができ、結果としてディスプレイパネルの破損を防ぐことができる。これと同様のことがフレキシブルディスプレイにも言え、ディスプレイパネルを保護する機能としては、表面材の弾性率が高い方が有利に働く。一方、弾性率が低い場合は、表面材自体が変形をすることによって、衝撃を緩和できる場合もあるが、変形によって生じたくぼみなどが固定化され、ディスプレイ表面の平滑性が大きく低下し外観が損なわれやすい。
例えば、特許文献4に記載されたポリイミドフィルムでは、ケイ素原子を3つ以上含むシリコーン成分を導入することで、氷点下以下にガラス転移温度を有し、無機膜との間に発生する残留応力が低減したと記載されている。しかし、後述する比較例5で示されるように、ケイ素原子を3つ以上含むシリコーン成分を導入したポリイミドフィルムは、低いガラス転移温度を有するため、室温では弾性率が不足し、表面硬度が低く、傷付きやすかったり、発光パネルや回路へ衝撃を伝えてしまい、保護フィルムとしての機能が不足するという問題があった。
また、特許文献5に記載されたポリイミドフィルムでは、耐折性が高いと記載されている。しかし、後述する比較例6で示されるように、特許文献5の実施例に相当するシリコーンジアミン(ケイ素原子を9〜10個程度含有)を導入したポリイミドフィルムは、室温では弾性率が不足し、表面硬度が低く、傷付きやすく、保護フィルムとしての機能が不足し、更に透明性に劣るという問題があった。
以上のことから、透明性に優れながら、屈曲耐性と保護フィルムとして十分な表面硬度とを両立した樹脂フィルムが求められていた。しかし、上述したように、樹脂フィルムの屈曲耐性と表面硬度とは相反する特性であると考えられ、屈曲耐性を向上しながら、表面硬度を維持することは困難であった。
それに対して、本発明者らは、前記引張試験により得られる応力−ひずみ曲線において、降伏点におけるひずみ(%)の値に着目し、応力−ひずみ曲線の降伏点におけるひずみが8%以上であるポリイミドフィルムは、屈曲耐性が向上したものになる傾向を見出した。この理由は定かではないが、以下のように推測している。
前記応力−ひずみ曲線は、引張試験において得られる引張応力とひずみの関係曲線であり、ひずみ(%)を横軸に、引張応力(MPa)を縦軸にとって描かれる。応力−ひずみ曲線における降伏点までの領域は、弾性変形領域とみなせ、応力−ひずみ曲線における降伏点以降の領域は、塑性変形領域とみなせる。降伏点におけるひずみ(%)が所定値よりも大きいと、弾性変形領域が所定よりも広くなって、曲がっても元に戻り易い性質を有すると推定される。すなわち、応力−ひずみ曲線で得られる降伏点のひずみ量は言いかえるならば、弾性変形可能な変形量とも表現でき、応力が印加される前の形状に復元可能な変形量と考えることができる。そのため、降伏点におけるひずみ(%)が所定値よりも大きいと、後述する実施例での屈曲試験の結果により示されるように、フィルムの折り曲げを繰り返し行った後の復元性が向上したフィルムになるのではないかと推定される。
なお、後述の実施例と比較例で、同じ分子構造を有するポリイミド前駆体を用いてポリイミドフィルムを製造した場合であっても、製造方法が異なりフィルムの状態が異なると、応力−ひずみ曲線において、降伏点におけるひずみ(%)の値は異なり、それに伴って屈曲耐性が大きく異なることが示されている。このことは、ポリイミドフィルムの屈曲耐性は、ポリイミドの組成のみに依存するわけではないこと、また、降伏点におけるひずみ(%)の値は、屈曲耐性に関連したポリイミドフィルムの状態を表すことを示していると考えられる。
前記引張試験により得られる応力−ひずみ曲線の降伏点におけるひずみ(%)に加えて、更に、前記引張試験において、前記特定の引張弾性率を有することを組み合わせてポリイミドフィルムを選択することから、屈曲耐性と保護フィルムとして十分な表面硬度とを両立したフィルムとすることができると推定される。
また、更に、前記特定の全光線透過率、及び前記特定の黄色度を有するポリイミドフィルムとしたことにより、透明性に優れ、屈曲耐性を向上しながら、表面硬度の低下が抑制された樹脂フィルムを提供することができると推定される。
以下、本発明に係るポリイミドフィルムについて詳細に説明する。
本発明に係るポリイミドフィルムは、ポリイミドを含有し、前記特定の特性を有するものである。本発明の効果が損なわれない限り、更にその他の成分を含有していても良いし、他の構成を有していてもよい。
1.応力−ひずみ曲線の降伏点
本発明のポリイミドフィルムは、25℃で測定する引張試験により得られる応力−ひずみ曲線において、降伏点におけるひずみが8%以上である。当該降伏点におけるひずみは、屈曲耐性を向上する点から、8.5%以上であることが好ましく、9.3%以上であることがより好ましく、9.5%以上であることがより更に好ましい。
降伏点におけるひずみの上限値は限定されるものではないが、降伏点におけるひずみは通常、90%以下であって良い。
引張弾性率が大きいほど変形させるために必要な力が大きくなることから、大きく変形しやすいのは引張弾性率が小さい材料となる。本発明における引張弾性率の下限は1.8Gpaであり、一方で、引張強度が大きい樹脂フィルムの引張強度は概ね200N/mm程度である。引張弾性率の異なるフィルムについて、引張強度200N/mmに達するひずみ量を算出し、引張弾性率と200N/mmでの歪み量の関係を求め、引張弾性率1.8GPaのフィルムのひずみ量を算出すると、本発明の引張弾性率の下限1.8Gpaのフィルムはひずみ量が概ね90%と見積もることができる。このことから、おおよそ90%が上限と考えられる。
前記引張試験は、引張り試験機(例えば島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用い、幅15mm×長さ40mm(引張方向40mm×引張方向と直交する方向15mm)の試験片をポリイミドフィルムから切り出して、当該試験片を、JIS K7127に準拠し、引張速度10mm/分、チャック間距離20mmとして25℃で測定する。試験片をフィルムから切り出す際には、フィルムの膜厚が均一な部分を切り出すようにすることが好ましく、例えばフィルムの中央部付近から切り出すことが好ましい。フィルムの膜厚が均一である目安としては、例えば、切り出したフィルムの四隅と中央の計5点の膜厚を、デジタルリニアゲージ(株式会社尾崎製作所製、型式PDN12 デジタルゲージ)を用いて測定し、5点の平均膜厚と各点の膜厚の差が、平均膜厚の6%以内であることが挙げられる。
応力−ひずみ曲線は、引張試験において得られる引張応力とひずみの関係を、チャック間距離、すなわち試験長20mmに対し、10mm/分で引張試験を行う際、伸び量を試験長で除したひずみ(%)を横軸に、引張応力(MPa)を縦軸にとって描く。ポリイミドフィルムの応力−ひずみ曲線の降伏点は、例えば図2に示されるように、明瞭に分かり難い場合がある。そのため、本発明のポリイミドフィルムの応力−ひずみ曲線の降伏点におけるひずみ(%)は、具体的には以下のように求めることができる。
応力−ひずみ曲線において、ひずみが0.16%の地点からサンプリングを開始し、その後は0.21%増加する毎にサンプリングする(これをdxと定義)。つまりdxは、その一つ前にサンプリングされた値との差分(変化量)であり、初期値のみ0.16%、その後は0.21%となる。一方、dyはひずみに応じた引張応力の値において、その一つ前にサンプリングされた値との差分(変化量)である。dx、dyをそれぞれ算出したのち、横軸をひずみ%、縦軸をdy/dx(平均変化率)としてグラフ化する(例えば、図2の応力−ひずみ曲線の場合、図3に示されるグラフとなる)。ひずみ%とdy/dx(平均変化率)のグラフは、図3に示されるように、基本的には右肩下がりのグラフとなるが、dy/dx(平均変化率)の最大値が得られる点を超えて、最初に現れるdy/dxの変曲点を降伏点と定義する。なお、前記変曲点が見られないものについては、dy/dxが初めて0となる点を降伏点とする。
降伏点におけるひずみ(%)は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第1位に丸めた値とする。
2.引張弾性率
本発明のポリイミドフィルムは、15mm×40mmの試験片をJIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして測定する25℃における引張弾性率が、1.8GPa以上である。このように、25℃(室温)での引張弾性率が高いことから、保護フィルムとして十分な表面硬度を室温でも維持することができ、表面材乃至基材として用いることができる。前記引張弾性率は、2.0GPa以上であることが好ましく、2.1GPa以上であることがより好ましく、2.3GPa以上であることが更に好ましい。一方で、前記引張弾性率は、屈曲耐性を向上させる点から、5.2GPa以下であることが好ましい。屈曲耐性を向上させる点から、前記引張弾性率は4.0GPa以下であっても良く、3.5GPa以下であっても良く、2.9GPa以下であっても良い。
前記引張弾性率は、前記応力−ひずみ曲線の降伏点における引張試験と同様にして測定することができる。
3.全光線透過率
本発明のポリイミドフィルムは、前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上である。このように透過率が高いことから、透明性が良好になり、ガラス代替材料となり得る。本発明のポリイミドフィルムの前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、更に88%以上であることが好ましく、より更に89%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。なお、ある厚みの全光線透過率の測定値から、異なる厚みの全光線透過率は、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができ、それを利用することができる。
具体的には、ランベルトベールの法則によれば、透過率Tは、
Log10(1/T)=kcb
(k=物質固有の定数、c=濃度、b=光路長)で表される。
フィルムの透過率の場合、膜厚が変化しても密度が一定であると仮定するとcも定数となるので、上記式は、定数fを用いて
Log10(1/T)=fb
(f=kc)と表すことができる。ここで、ある膜厚の時の透過率がわかれば、各物質の固有の定数fを求めることができる。従って、T=1/10f・b の式を用いて、fに固有の定数、bに目標の膜厚を代入すれば、所望の膜厚の時の透過率を求めることができる。
4.黄色度
また、本発明のポリイミドフィルムは、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、5以下である。このように黄色度が低いことから、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料となり得る。前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)は、4.5以下であることが好ましく、4以下であることが更に好ましく、3.5以下であることがより更に好ましい。
なお、黄色度(YI値)は、前記JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出することができる。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
なお、ある厚みの黄色度の測定値から、異なる厚みの黄色度は、ある特定の膜厚のサンプルの250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料として好適に用いることができる点から、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)を膜厚(μm)で除した値(YI値/膜厚(μm))が0.10以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、0.03以下であることがより更に好ましい。
なお、本発明において、前記黄色度(YI値)を膜厚(μm)で除した値(YI値/膜厚(μm))は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第2位に丸めた値とする。
5.ポリイミド
本発明において、ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものである。テトラカルボン酸成分とジアミン成分の重合によって前駆体であるポリアミド酸を得た後、この前駆体をイミド化することが好ましい。従って、本発明で用いられるポリイミドは、主鎖にテトラカルボン酸残基とジアミン残基とを含むものである。なお、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシ基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表す。また、ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
本発明で特定される、前記応力−ひずみ曲線の降伏点におけるひずみ(%)、前記引張弾性率、前記全光線透過率、及び前記黄色度が得られる限り、製膜は、ポリイミド前駆体の状態で成形しそのあと、熱処理によってポリイミドとする熱イミド化法で行っても良いし、ポリイミド前駆体を化学イミド化によってポリイミドとした後、ポリイミド溶液の状態で成形し溶媒を除去することで行っても良いし、また、それら熱イミド化と化学イミド化とを併用した方法で製造することもできる。
本発明で用いられるポリイミドにおいて、テトラカルボン酸残基になる、テトラカルボン酸成分としては、例えば、芳香族環を有するテトラカルボン酸成分が、ポリイミドフィルムの表面硬度を向上する点から好ましい。
芳香族環を有するテトラカルボン酸成分としては、芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4’−オキシジフタル酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、本発明に用いるテトラカルボン酸成分としては、ポリイミドフィルムの光透過性の点から、脂肪族環を有するテトラカルボン酸成分も好ましい。
脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
なお、上述したテトラカルボン酸成分は、単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
ジアミン成分としては、例えば、芳香族環を有するジアミンが、ポリイミドフィルムの耐久性と、表面硬度の点から好ましい。
また、本発明に用いるジアミン成分としては、ポリイミドフィルムの光透過性の点から、脂肪族環を有するジアミンも好ましい。
また、本発明に係るポリイミドフィルムは、中でも、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基と、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基とを含むポリイミドを含有することが好ましい。主成分として芳香族環又は脂肪族環を含んだ分子骨格の間に、主鎖にケイ素原子を有する柔軟な分子骨格を導入することによって、ポリイミドは、屈曲耐性と表面硬度とを両立しやすくなる上、配向性が抑制され易く、複屈折率が低減されたものとなりやすい。
芳香族環を有するジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン等、及び、前記ジアミンの芳香族環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンを使用することができる。
脂肪族環を有するジアミンとしては、例えば、trans−シクロヘキサンジアミン、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等が挙げられる。
主鎖にケイ素原子を有するジアミンとしては、例えば、下記一般式(A)で表されるジアミンが挙げられる。
(一般式(A)において、Lはそれぞれ独立して、直接結合又は−O−結合であり、R10はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の1価の炭化水素基を表す。R11はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基を表す。kは0〜200の数である。複数あるL、R10及びR11は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
10で表される1価の炭化水素基としては、炭素数1以上20以下のアルキル基、アリール基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状と環状の組合せであっても良い。
炭素数1以上20以下のアルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。前記環状のアルキル基としては、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基であることが好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6以上12以下のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、R10で表される1価の炭化水素基としては、アラルキル基であっても良く、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭化水素基としては、例えば後述する2価の炭化水素基と前記1価の炭化水素基とをエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、本発明の効果が損なわれない範囲で特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
10で表される1価の炭化水素基としては、屈曲耐性の向上と表面硬度の両立性の点から、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数6以上10以下のアリール基であることが好ましい。炭素数1以上3以下のアルキル基としては、メチル基であることがより好ましく、前記炭素数6以上10以下のアリール基としては、フェニル基であることがより好ましい。
11で表される2価の炭化水素基としては、炭素数1以上20以下のアルキレン基、アリーレン基、及びこれらの組み合わせの基が挙げられる。アルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐状と環状の組合せであっても良い。
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、各種プロピレン基、各種ブチレン基、シクロヘキシレン基等の直鎖状又は分岐状アルキレン基と環状アルキレン基との組合せの基などを挙げることができる。
前記アリーレン基としては、炭素数6〜12のアリーレン基であることが好ましく、アリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、更に後述する芳香族環に対する置換基を有していても良い。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い2価の炭化水素基としては、前記2価の炭化水素基同士をエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
11で表される2価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、前記R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基と同様であって良い。
11で表される2価の炭化水素基としては、屈曲耐性の向上と表面硬度の両立性の点から、炭素数1以上6以下のアルキレン基、又は炭素数6以上10以下のアリーレン基であることが好ましく、更に、炭素数2以上4以下のアルキレン基であることがより好ましい。
中でも、保護フィルムとして十分な表面硬度を維持しつつ、屈曲耐性を向上したものを実現する観点から、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基は、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であることが好ましく、中でも主鎖にケイ素原子を2個有するジアミン残基であることが好ましい。芳香族環又は脂肪族環を含んだ剛直な分子骨格の間に、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有する短い柔軟な分子骨格を特定量導入したポリイミドは、芳香族環又は脂肪族環を含んだ分子骨格由来の弾性率を維持しつつ、前記弾性変形領域が比較的大きいポリイミドフィルムが得られやすく、表面硬度と屈曲耐性を両立させやすいと考えられる。
主鎖にケイ素原子を1個有するジアミンとしては、例えば、下記一般式(A−1)で表されるジアミンが挙げられる。また、主鎖にケイ素原子を2個有するジアミンとしては、例えば、下記一般式(A−2)で表されるジアミンが挙げられる。
(一般式(A−1)及び一般式(A−2)において、Lはそれぞれ独立して、直接結合又は−O−結合であり、R10はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の1価の炭化水素基を表す。R11はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基を表す。複数あるL、R10及びR11は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
屈曲耐性の向上と表面硬度の両立性の点から、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基の分子量は、1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることがより更に好ましく、300以下であることが特に好ましい。
主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基は単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
また、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミンが、ケイ素原子を2個有するジアミンであることが、得られるポリイミドの光透過性の点、及び屈曲耐性及び表面硬度の点から好ましく、更に、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(5−アミノペンチル)テトラメチルジシロキサン等が、これら化合物の入手容易性や得られるポリイミドの光透過性と表面硬度の両立の観点から好ましい。
主鎖にケイ素原子を有するジアミンを用いる場合、ジアミンの総量のうち、主鎖にケイ素原子を有するジアミンの割合は、特に限定はされないが、得られるポリイミドフィルムの屈曲耐性を向上する点から、1モル%以上であることが好ましく、2.5モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることがより更に好ましい。また、得られるポリイミドフィルムの屈曲耐性及び表面硬度の点から、50モル%以下であることが好ましく、45モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。
また、得られるポリイミドの表面硬度が向上する点から、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の総量を100モル%としたときに、芳香族環を有するテトラカルボン酸及び芳香族環を有するジアミンの合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
本発明においては、前記ポリイミドが、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、更に、これらの構造に加えて、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基を含むことが好ましい。
本発明においては、前記ポリイミドが、芳香族環を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環を有するジアミン残基から選ばれる少なくとも一種を含むことにより、分子骨格が剛直となり耐久性が高まり、表面硬度が向上するが、剛直な芳香族環骨格は吸収波長が長波長に伸びる傾向があり、可視光領域の透過率が低下する傾向がある。
ポリイミドに(i)フッ素原子を含むと、ポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から光透過性が向上する。更に、ポリイミドに(i)フッ素原子を含むと、吸湿性が抑制されるため、吸湿性が高い場合に塑性変形領域が広がるという傾向を抑制でき、高湿度環境下での屈曲耐性を良好にできる。
ポリイミドに(ii)脂肪族環を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
中でも、フッ素原子を含むポリイミドであることが、光透過性を向上し、且つ、表面硬度、及び屈曲耐性を向上する点から好ましく用いられる。
フッ素原子の含有割合は、ポリイミド表面をX線光電子分光法により測定したフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上であることが好ましく、更に0.05以上であることが好ましい。一方でフッ素原子の含有割合が高すぎるとポリイミド本来の耐熱性などが低下する恐れがあることから、前記フッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が1以下であることが好ましく、更に0.8以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
また、得られるポリイミドの表面硬度と光透過性の点、及び屈曲耐性の点から、テトラカルボン酸、及びケイ素原子を有しないジアミンの少なくとも1つが、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましく、更に、テトラカルボン酸、及びケイ素原子を有しないジアミンの両方が、芳香族環とフッ素原子とを含むことが好ましい。
得られるポリイミドの表面硬度と光透過性の点、及び屈曲耐性の点から、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の総量を100モル%としたときに、芳香族環及びフッ素原子を有するテトラカルボン酸及び芳香族環及びフッ素原子を有するジアミンの総量が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
また、テトラカルボン酸成分及びジアミン成分にそれぞれ含まれる、炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であることが、得られるポリイミドの光透過性を向上し、且つ、表面硬度を向上する点、及び屈曲耐性の点から好ましく用いられる。炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、更に、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
テトラカルボン酸成分及びジアミン成分にそれぞれ含まれる、炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合には、大気中における加熱工程を経ても、例えば200℃以上で延伸を行っても、光学特性、特に全光線透過率や黄色度YI値の変化が少ない点、及び屈曲耐性の低下を抑制する点から好ましい。炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合には、酸素との反応性が低いため、得られるポリイミドの化学構造が変化し難く、酸化によるポリイミドフィルムの劣化が抑制されることが推定される。ポリイミドフィルムはその高い耐熱性を利用し、加熱を伴う加工工程が必要なデバイスなどに用いられる場合が多いが、テトラカルボン酸成分及びジアミン成分にそれぞれ含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合には、これら後工程を透明性維持のために不活性雰囲気下で実施する必要が生じないので、設備コストや雰囲気制御にかかる費用を抑制できるというメリットがある。
ここで、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミドの分解物を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。例えば、サンプルを、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解し、得られた分解物を、高速液体クロマトグラフィーで分離し、当該分離した各ピークの定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計及びNMR等を用いて行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することでポリイミドに含まれる全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合を求めることができる。
本発明に係るポリイミドフィルムは、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有することが好ましい。
(一般式(1)において、Rは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、複数のRは各々同一であっても異なっていても良く、Rはジアミン残基である2価の基を表し、複数のRは各々同一であっても異なっていても良く、複数のRの少なくとも一部が芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基を含む。nは繰り返し単位数を表す。)
は芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、複数のRは各々同一であっても異なっていても良い。
における芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物、及び、脂肪族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、前記と同様のものを用いることができる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
中でも、得られるポリイミドにおける光透過性の点、及び屈曲耐性及び表面硬度の点から、前記一般式(1)中のRが、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物残基、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物残基、ピロメリット酸二無水物残基、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であることが好ましい。
特に光透過性が良い点から、テトラカルボン酸成分は、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
テトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及び、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも一種のような、得られるポリイミドに対し剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸群(グループA)と、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物からなる群から選択される少なくとも一種のような光透過性を向上するのに適したテトラカルボン酸群(グループB)とを混合して用いることも好ましい。この場合、前記剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸群(グループA)と、光透過性を向上するのに適したテトラカルボン酸群(グループB)との含有比率は、光透過性を向上するのに適したテトラカルボン酸群(グループB)1モルに対して、前記剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸群(グループA)が0.05モル以上9モル以下であることが好ましく、更に0.1モル以上5モル以下であることが好ましく、より更に0.3モル以上4モル以下であることが好ましい。
中でも、前記グループBとしては、フッ素原子を含む、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、及び3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物の少なくとも一種を用いることが、得られるポリイミドにおける光透過性の向上の点から好ましい。
前記一般式(1)においてRは、ジアミン残基である2価の基を表し、複数のRは各々同一であっても異なっていても良く、複数のRの少なくとも一部が芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基を含むものであれば特に制限はない。2価のジアミン残基としては、前記と同様のものを用いることができる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
に含まれる芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基としても、それぞれ、前記と同様のものを用いることができる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
中でも、光透過性と屈曲耐性の点及び表面硬度の点、低吸湿性の観点から、前記一般式(1)中のRにおける芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基が、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−[(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2,2−ジイル)ビス(4,1−フェニレンオキシ)]ジアニリン残基、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン残基、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましい。下記一般式(2)で表される2価の基としては、R及びRがパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
また、屈曲耐性を向上する好ましい1つの実施態様としては、複数のRの一部として主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基が含まれることが挙げられる。Rとして好ましく使用することができる主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基は、上述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
前記一般式(1)のRとして主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基を含む場合には、前記一般式(1)のRにおいて、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが、屈曲耐性と表面硬度を両立させる点から好ましい。前記一般式(1)のRは、屈曲耐性を向上する点から、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基が、Rの総量の3.5モル%以上であることが好ましく、更に5モル%以上であることが好ましい。また、光学歪みを低減する点からは、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基が、Rの総量の10モル%超過であっても良く、15モル%以上であっても良い。一方、前記一般式(1)のRは、表面硬度と光透過性を向上する点から、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基が、Rの総量の45モル%以下であることが好ましく、更に40モル%以下であることが好ましい。
なお、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることを満たせば、前記一般式(1)のRに、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基及びケイ素原子を有さず芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基とは異なる他のジアミン残基を含むことを妨げるものではない。当該他のジアミン残基は、Rの総量の10モル%以下であることが好ましく、更に5モル%以下であることが好ましく、より更に3モル%以下であることが好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。当該他のジアミン残基としては、例えば、ケイ素原子を有さず、且つ芳香族環又は脂肪族環を有しないジアミン残基等が挙げられる。
中でも、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、Rの総量(100モル%)のうち、前記主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基のモル%(xモル%)の残り(100%−x%)である50モル%以上99モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが好ましい。
中でも、前記一般式(1)のRにおいて、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが、屈曲耐性と表面硬度を両立させる点から好ましい。
また、中でも、Rは、ケイ素原子を有しないジアミン残基、及び、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが、屈曲耐性と表面硬度を両立させる点から好ましい。
前記一般式(1)のRは、屈曲耐性を向上する点から、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基が、Rの総量の3.5モル%以上であることが好ましく、更に5モル%以上であることがより好ましい。また、光学歪みを低減する点からは、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基が、Rの総量の10モル%超過であっても良く、15モル%以上であっても良い。一方、前記一般式(1)のRは、表面硬度と光透過性を向上する点から、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基が、Rの総量の45モル%以下であることが好ましく、更に40モル%以下であることが好ましい。
中でも、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、Rの総量(100モル%)のうち、前記主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基のモル%(xモル%)の残り(100%−x%)である50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基であることが好ましい。
また、本発明で用いられるポリイミドは、屈曲耐性及び表面硬度の点から、ポリイミド中のケイ素原子の含有割合(質量%)が0.7質量%以上6.5質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以上5.5質量%以下であることがより好ましく、0.7質量%以上4.2質量%以下であることがより更に好ましい。
ここで、ポリイミド中のケイ素原子の含有割合(質量%)は、ポリイミドが2種以上の場合は2種以上の全ポリイミド中のケイ素原子の含有割合(質量%)をいい、ポリイミド製造時には仕込みの分子量から求めることができる。また、ポリイミド中のケイ素原子の含有割合(質量%)は、上記と同様に得られたポリイミドの分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF−SIMSを用いて求めることができる。
また、屈曲耐性と表面硬度を両立する点及び光透過性の点から、別の好ましい1つの実施態様としては、前記一般式(1)において、Rは、ケイ素原子を有しないジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン骨格を有するジアミン残基を含む場合が挙げられる。主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン骨格を有するジアミン残基としては、芳香族環同士をヘキサフルオロイソプロピリデン基で連結した構造を含むことが好ましい。
前記一般式(1)のRに、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基を含有しない場合、前記一般式(1)のRが、ケイ素原子を有しないジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、当該ケイ素原子を有しないジアミン残基は、中でも、光透過性と屈曲耐性の点及び表面硬度の点、低吸湿性の観点から、主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン骨格を有し、且つ、炭素原子に対するフッ素原子の割合(個数%)が30%以上であるジアミン残基を含むことがより好ましく、芳香族環同士をヘキサフルオロイソプロピリデン基で連結した構造、及び、芳香族環同士をオキシ基で連結した構造を含み、且つ、炭素原子に対するフッ素原子の割合(個数%)が30%以上であるジアミン残基を含むことがより更に好ましい。
前記一般式(1)のRが、ケイ素原子を有しないジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表す場合に、主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン骨格を有するジアミン残基としては、光透過性と屈曲耐性の点及び表面硬度の点から、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−[(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2,2−ジイル)ビス(4,1−フェニレンオキシ)]ジアニリン残基、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン残基、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン残基、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、及び2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンからなる群から選択される1種以上が好ましい。前記主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン骨格を有するジアミン残基は、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−[(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2,2−ジイル)ビス(4,1−フェニレンオキシ)]ジアニリン残基、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン残基、及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン残基からなる群から選択される1種以上のジアミン残基であることがより好ましく、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−[(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2,2−ジイル)ビス(4,1−フェニレンオキシ)]ジアニリン残基であることが、光透過性と屈曲耐性の点及び表面硬度の点、低吸湿性の観点からより更に好ましい。
前記一般式(1)のRが、ケイ素原子を有しないジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表す場合、光透過性と屈曲耐性の点及び表面硬度の点から、前記Rにおいて、主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン骨格を有するジアミン残基を、ケイ素原子を有しないジアミン残基の合計100モル%中、70モル%以上含むことが好ましく、80モル%以上含むことがより好ましく、90モル%以上含むことがより更に好ましい。
ポリイミド中の各繰り返し単位の含有割合、各テトラカルボン酸残基や各ジアミン残基の含有割合(モル%)は、ポリイミド製造時には仕込みの分子量から求めることができる。また、ポリイミド中の各テトラカルボン酸残基や各ジアミン残基の含有割合(モル%)は、上記と同様に、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解して得られたポリイミドの分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF−SIMSを用いて求めることができる。
前記一般式(1)で表される構造において、nは繰り返し単位数を表し、1以上であり、通常2以上である。
ポリイミドにおける繰り返し単位数nは、適宜選択されれば良く、特に限定されない。
平均繰り返し単位数は、通常10〜2000であり、更に15〜1000であることが好ましい。
本発明に用いられるポリイミドは、1種又は2種以上含有することができる。
また、本発明に用いられるポリイミドは、本発明の効果が損なわれない限り、ポリアミド構造など、その一部にポリイミドとは異なる構造を有していても良い。
本発明に用いられるポリイミドは、前記一般式(1)で表される構造が、ポリイミドの全繰り返し単位数の95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがより更に好ましい。
前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造としては、例えば、芳香族環又は脂肪族環を有しないテトラカルボン酸残基等が含まれる場合や、ポリアミド構造が挙げられる。
含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
本発明に用いられるポリイミドは、数平均分子量、または重量平均分子量の少なくともいずれかが、フィルムとした際の強度の点から、10000以上であることが好ましく、更に20000以上であることが好ましい。また、ポリイミドは、屈曲耐性を向上する点から、重量平均分子量が、70000以上であることが好ましく、更に80000以上であることが好ましく、より更に85000以上であることが好ましく、特に95000以上であることが好ましい。一方、平均分子量が大きすぎると、高粘度となり、ろ過などの作業性が低下の恐れがある点から、10000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
なお、本発明に用いられるポリイミドの数平均分子量は、後述するポリイミド前駆体の数平均分子量と同様にして測定することができる。また、本発明に用いられるポリイミドの重量平均分子量は、後述する実施例に記載したポリイミドの重量平均分子量の測定方法を用いることができる。
本発明に用いられるポリイミドは、150℃以上400℃以下の温度領域にガラス転移温度を有することが好ましい。前記ガラス転移温度が150℃以上であることにより、耐熱性に優れ、更に、200℃以上であることが好ましい。また、ガラス転移温度が400℃以下であることにより、ベーク温度を低減することができ、更に、380℃以下であることが好ましい。
また、本発明に用いられるポリイミドは、−150℃以上0℃以下の温度領域にtanδ曲線のピークを有しないことが好ましく、これにより、ポリイミドフィルムの室温での表面硬度を向上することができる。また、本発明に用いられるポリイミドは、0℃超過150℃未満の温度領域に更にtanδ曲線のピークを有していても良い。
本発明に用いられるポリイミドのガラス転移温度は、後述するポリイミドフィルムのガラス転移温度と同様にして測定することができる。
6.ポリイミドフィルムの添加剤
本発明のポリイミドフィルムは、前記ポリイミドの他に、必要に応じて更に添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、ポリイミドフィルムの光学的歪みを低減するための無機粒子、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられる。
7.ポリイミドフィルムの特性
本発明のポリイミドフィルムは、前記特定の応力−ひずみ曲線の降伏点におけるひずみ(%)、引張弾性率、全光線透過率、及び黄色度を有する。本発明のポリイミドフィルムは、更に後述する特性を有することが好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、150℃以上400℃以下の温度領域にガラス転移温度を有することが好ましい。前記ガラス転移温度を有する温度領域は、耐熱性に優れる点から、200℃以上であることが好ましく、ベーク温度を低減することができる点から、380℃以下であることが好ましい。
なお、前記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定によって得られる温度−tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))曲線のピーク温度から求められるものである。ポリイミドフィルムのガラス転移温度は、tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの温度をいう。
動的粘弾性測定としては、例えば、動的粘弾性測定装置 RSA III(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))によって、測定範囲を−150℃〜400℃として、周波数1Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。また、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして測定することができる。
本発明において、tanδ曲線のピークとは、極大値である変曲点を有し、且つ、ピークの谷と谷の間であるピーク幅が3℃以上であるものをいい、ノイズ等測定由来の細かい上下変動については、前記ピークと解釈しない。
また、本発明のポリイミドフィルムは、−150℃以上0℃以下の温度領域にtanδ曲線のピークを有しないことが好ましい。主鎖に長いシロキサン結合を有するジアミン残基を有する場合にはこのように低い温度領域にtanδ曲線のピークを有する傾向があり、主鎖にケイ素原子を1個又は2個と短い結合を有するジアミン残基を有する場合、このように低い温度領域に通常、tanδ曲線のピークを有しない。−150℃以上0℃以下の温度領域にtanδ曲線のピークを有するような、主鎖に長いシロキサン結合を有するジアミン残基を有するポリイミドフィルムに比べて、−150℃以上0℃以下の温度領域にtanδ曲線のピークを有しないポリイミドフィルムは、室温での引張弾性率の低下が抑制され、保護フィルムとして十分な表面硬度を維持することができる。
また、本発明のポリイミドフィルムにおいては、表面硬度に優れる点から、下記測定法で測定されるヤング率が2.3Gpa以上であることが好ましく、2.4Gpa以上であることがより好ましい。
ヤング率は、温度25℃で、ISO14577に準拠し、ナノインデンテーション法を用いて測定する。具体的には、測定装置は(株)フィッシャー・インストルメンツ社製、PICODENTOR HM500を用い、測定圧子としてビッカース圧子を用いる。ポリイミドフィルム表面の任意の点を8ヶ所測定して数平均して求めた値をヤング率とする。なお、測定条件は、最大押込み深さ:1000nm、加重時間:20秒、クリープ時間:5秒とする。
本発明のポリイミドフィルムにおいて、鉛筆硬度は2B以上であることが好ましく、B以上であることがより好ましく、HB以上であることがより更に好ましい。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、屈曲耐性の点から、前記特定の応力−ひずみ曲線の降伏点におけるひずみ(%)、前記引張弾性率を求める引張試験において、当該試験で測定される伸び率(引張伸度)が5%以上であることが好ましく、7%以上であることが更に好ましく、8%以上であることがより更に好ましい。一方で、塑性変形の点からは、前記伸び率(引張伸度)が120%以下であることが好ましく、70%以下であることが更に好ましい。
前記伸び率(%)=100×(L−Lo)/Lo
Lo:試験長20mm、L:破断時の試験長
本発明のポリイミドフィルムにおいては、屈曲耐性に優れる点から、下記動的屈曲試験方法に従って、動的屈曲試験を行った場合に、試験片の内角が140°以上であることが好ましく、145°以上であることがより好ましく、150°以上であることがより更に好ましい。
[動的屈曲試験方法]
20mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX−FS)にテープで固定する。また、試験片を長辺の半分の位置で折り曲げ、折り畳まれた状態の試験片の長辺の両端部間の距離が6mmとなり、試験片の折り曲げ部分の曲率半径が3mmとなるように折り畳まれた状態を設定する。その後、60±2℃で93±2%相対湿度(RH)の環境下で、平坦に開いた状態から前記折り畳まれた状態にすることを1回の屈曲として、1分間に90回の屈曲回数で、20万回屈曲を繰り返す。
その後、試験片を取り外し、得られた試験片の一方の端部を固定し、20万回屈曲を繰り返してから30分後の試験片の内角を測定する。
本発明のポリイミドフィルムにおいては、屈曲耐性に優れる点から、下記静的屈曲試験方法に従って、静的屈曲試験を行った場合に、当該試験で測定される内角が155°以上であることが好ましく、160°以上であることがより好ましく、170°以上であることがより更に好ましい。なお図4は、静的屈曲試験の方法を説明するための図である。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片1を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片2(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片1の両端部と金属片2との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板3a及び3b(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片4a及び4bを挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、室温23±2℃、50±5%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。
本発明のポリイミドフィルムのヘイズ値は、光透過性の点から、10以下であることが好ましく、8以下であることが更に好ましく、5以下であることがより更に好ましい。当該ヘイズ値は、ポリイミドフィルムの厚みが5μm以上100μm以下において達成できることが好ましい。
前記ヘイズ値は、JIS K−7136に準拠した方法で測定することができ、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定することができる。
また、本発明のポリイミドフィルムは、前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は0.040以下であることが好ましく、更に0.020以下であることが好ましい。このような複屈折率を有する場合、本発明のポリイミドフィルムは光学的歪みが低減したものである。そのため、本発明のポリイミドフィルムをディスプレイ用部材として用いた場合には、ディスプレイの表示品質の低下を抑制することができる。前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、より小さい方が好ましく、0.015以下であることが好ましく、更に0.010以下であることが好ましく、より更に0.008未満であることが好ましい。
なお、本発明のポリイミドフィルムの前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、以下のように求めることができる。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA−WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定する。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出する。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定する。
ポリイミドフィルムの厚み方向の複屈折率は、式:Rth/dに代入して求めることができる。前記dは、ポリイミドフィルムの膜厚(nm)を表す。
なお、厚み方向位相差値は、フィルムの面内方向における遅相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、及びフィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたときに、Rth[nm]={(nx+ny)/2−nz}×dと表すことができる。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のケイ素原子(Si)の原子%は0.1以上10以下が好ましく、0.2以上5以下がさらに好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
また好ましい一形態としては、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上1以下であることが好ましく、更に0.05以上0.8以下であることが好ましい。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)と窒素原子数(N)の比率(F/N)が、0.1以上20以下であることが好ましく、更に0.5以上15以下であることが好ましい。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)とケイ素原子数(Si)の比率(F/Si)が、1以上50以下であることが好ましく、更に3以上30以下であることが好ましい。
また、本発明のポリイミドフィルムにおいては、下記密着性試験方法に従って、密着性試験を行った場合に、塗膜の剥がれが生じないことが、ポリイミドフィルムとハードコート層との密着性の点及びポリイミドフィルムに隣接してハードコート層を積層した積層体の表面硬度の点から好ましい。
[密着性試験方法]
ペンタエリスリトールトリアクリレートの40質量%メチルイソブチルケトン溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレート100質量部に対して10質量部の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを添加して調製した密着性評価用樹脂組成物を、10cm×10cmに切り出したポリイミドフィルムの試験片上に塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cmの露光量で照射し硬化させることにより、10μm膜厚の硬化膜を形成する。当該硬化膜について、JIS K 5600−5−6に準拠したクロスカット試験を行い、テープによる剥離操作を繰り返し5回実施した後、塗膜の剥がれの有無を観察する。
8.ポリイミドフィルムの構成
本発明のポリイミドフィルムの厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、1μm以上であることが好ましく、更に5μm以上であることが好ましく、より更に10μm以上であることが好ましい。一方、200μm以下であることが好ましく、更に150μm以下であることが好ましく、より更に100μm以下であることが好ましく、より更に90μm以下であることが好ましい。
厚みが薄いと強度が低下し、厚みが厚いと屈曲時の内径と外径の差が大きくなり、フィルムへの負荷が大きくなることから屈曲耐性が低下する恐れがある。
また、本発明のポリイミドフィルムには、例えば、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等の表面処理が施されていてもよい。
9.ポリイミドフィルムの製造方法
本発明のポリイミドフィルムの製造方法としては、前記本発明のポリイミドフィルムを製造できる方法であれば特に制限はない。
<第1の製造方法>
本発明のポリイミドフィルムの製造方法としては、例えば、第1の製造方法として、
ポリイミド前駆体であるポリアミド酸と、有機溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程という)と、
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程(以下、イミド化工程という)と、を含むポリイミドフィルムの製造方法が挙げられる。
前記第1の製造方法においては、更に、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する工程(以下、延伸工程という)を有していてもよい。
以下、各工程について詳細に説明する。
(1)ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程
前記第1の製造方法において調製するポリイミド前駆体樹脂組成物は、ポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含有し、必要に応じて添加剤等を含有していてもよい。前記ポリイミド前駆体としては、前述のテトラカルボン酸成分と、前述のジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸が挙げられ、例えば、下記一般式(1’)で表されるポリイミド前駆体が挙げられる。前記一般式(1’)で表されるポリイミド前駆体は、前記一般式(1’)のRにおけるテトラカルボン酸残基となるテトラカルボン酸成分と、前記一般式(1’)のRにおけるジアミン残基となるジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸である。
(一般式(1’)において、R、R及びnは、前記一般式(1)と同様である。)
ここで、前記一般式(1’)のR、R及びnは、前記ポリイミドにおいて説明した前記一般式(1)のR、R及びnと同様のものを用いることができる。
前記一般式(1’)で表されるポリイミド前駆体は、数平均分子量、または重量平均分子量の少なくともいずれかが、フィルムとした際の強度の点から、10000以上であることが好ましく、更に20000以上であることが好ましい。また、前記一般式(1’)で表されるポリイミド前駆体は、屈曲耐性を向上する点から、重量平均分子量が、70000以上であることが好ましく、更に80000以上であることが好ましく、より更に85000以上であることが好ましく、特に95000以上であることが好ましい。一方、平均分子量が大きすぎると、高粘度となり、ろ過などの作業性が低下の恐れがある点から、10000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、NMR(例えば、BRUKER製、AVANCEIII)により求めることができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液をガラス板に塗布して100℃で5分乾燥後、固形分10mgをジメチルスルホキシド−d6溶媒7.5mlに溶解し、NMR測定を行い、芳香族環に結合している水素原子のピーク強度比から数平均分子量を算出することができる。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
前記ポリイミド前駆体溶液は、上述のテトラカルボン酸二無水物と、上述のジアミンとを、溶剤中で反応させて得られる。ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の合成に用いる溶剤としては、上述のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解可能であれば特に制限はなく、例えば非プロトン性極性溶剤または水溶性アルコール系溶剤等を用い得る。本発明においては、中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等を用いることが好ましい。中でも、前記ポリイミド前駆体溶液(ポリアミド酸溶液)をそのままポリイミド前駆体樹脂組成物の調製に用いる場合に、ポリイミド前駆体樹脂組成物が後述する無機粒子を含有する場合は、無機粒子の溶解を抑制する点から、窒素原子を含む有機溶剤を用いることが好ましく、中でも、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンもしくはこれらの組み合わせを用いることが好ましい。なお、有機溶剤とは、炭素原子を含む溶剤である。
また、前記ポリイミド前駆体溶液が、少なくとも2種のジアミンを組み合わせて調製される場合、少なくとも2種のジアミンの混合溶液に酸二無水物を添加し、ポリアミド酸を合成してもよいし、少なくとも2種のジアミン成分を適切なモル比で段階を踏んで反応液に添加し、ある程度、各原料が高分子鎖へ組み込まれるシーケンスをコントロールしてもよい。
たとえば、主鎖にケイ素原子を有するジアミンが溶解された反応液に、主鎖にケイ素原子を有するジアミンの0.5等量のモル比の酸二無水物を投入し反応させることで、酸二無水物の両端に主鎖にケイ素原子を有するジアミンが反応したアミド酸を合成し、そこへ、残りのジアミンを全部、又は一部投入し、酸二無水物を加えてポリアミド酸を重合しても良い。この方法で重合すると、主鎖にケイ素原子を有するジアミンが1つの酸二無水物を介して、連結した形でポリアミド酸の中に導入される。
このような方法でポリアミド酸を重合することは、主鎖にケイ素原子を有するアミド酸の位置関係がある程度特定され、表面硬度を維持しつつ屈曲耐性の優れた膜を得易い点から好ましい。
前記ポリイミド前駆体溶液(ポリアミド酸溶液)中のジアミンのモル数をa、テトラカルボン酸二無水物のモル数をbとしたとき、b/aを0.9以上1.1以下とすることが好ましく、0.95以上1.05以下とすることがより好ましく、0.97以上1.03以下とすることがさらに好ましく、0.99以上1.01以下とすることが特に好ましい。このような範囲とすることにより得られるポリアミド酸の分子量(重合度)を適度に調整することができる。
重合反応の手順は、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
また、合成反応により得られたポリイミド前駆体溶液をそのまま用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良いし、ポリイミド前駆体溶液の溶剤を乾燥させ、別の溶剤に溶解して用いても良い。
前記ポリイミド前駆体溶液の25℃での粘度は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、500cps以上200000cps以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で測定することができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、ポリイミドフィルムの光学的歪みを低減するための無機粒子、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられ、前述のポリイミドフィルムにおいて説明したものと同様のものを用いることができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物に用いられる有機溶剤は、前記ポリイミド前駆体が溶解可能であれば特に制限はない。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等を用いることができるが、中でも、前述した理由により窒素原子を含む有機溶剤を用いることが好ましい。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中の前記ポリイミド前駆体の含有量は、均一な塗膜及びハンドリング可能な強度を有するポリイミドフィルムを形成する点から、樹脂組成物の固形分中に50質量%以上であることが好ましく、更に60質量%以上であることが好ましく、上限は含有成分により適宜調整されればよい。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中の有機溶剤は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、樹脂組成物中に40質量%以上であることが好ましく、更に50質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
また、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物は、含有水分量が1000ppm以下であることが、ポリイミド前駆体樹脂組成物の保存安定性が良好になり、生産性を向上することができる点から好ましい。ポリイミド前駆体樹脂組成物中に水分を多く含むと、ポリイミド前駆体が分解しやすくなる恐れがある。
なお、ポリイミド前駆体樹脂組成物の含有水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば、三菱化学株式会社製、微量水分測定装置CA−200型)を用いて求めることができる。
前述のように含有水分量1000ppm以下とするには、使用する有機溶剤を脱水したり、水分量が管理されたものを用いた上で、湿度5%以下の環境下で取り扱うことが好ましい。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物の固形分15重量%濃度の25℃での粘度は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、500cps以上100000cps以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体樹脂組成物の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定することができる。
(2)ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程において、用いられる支持体としては、表面が平滑で耐熱性および耐溶剤性のある材料であれば特に制限はない。例えばガラス板などの無機材料、表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
前記塗布手段は目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えばダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータ等の公知のものを用いることができる。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布した後は、塗膜がタックフリーとなるまで、150℃以下の温度、好ましくは30℃以上120℃以下で前記塗膜中の溶剤を乾燥する。溶剤の乾燥温度を150℃以下とすることにより、ポリアミド酸のイミド化を抑制することができる。
乾燥時間は、ポリイミド前駆体樹脂塗膜の膜厚や、溶剤の種類、乾燥温度等に応じて適宜調整されれば良いが、通常1分〜60分、好ましくは2分〜30分とすることが好ましい。上限値を超える場合には、ポリイミドフィルムの作製効率の面から好ましくない。一方、下限値を下回る場合には、急激な溶剤の乾燥によって、得られるポリイミドフィルムの外観等に影響を与える恐れがある。
溶剤の乾燥方法は、上記温度で溶剤の乾燥が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、乾燥炉、ホットプレート、赤外線加熱等を用いることが可能である。
光学特性の高度な管理が必要な場合、溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
(3)イミド化工程
前記第1の製造方法においては、加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する。
当該製造方法において、延伸工程を有する場合、イミド化工程は、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程後の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体及び延伸工程後の膜中に存在するポリイミド前駆体の両方に対して行っても良い。
イミド化の温度は、ポリイミド前駆体の構造に合わせて適宜選択されれば良い。
通常、昇温開始温度を30℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、昇温終了温度は250℃以上とすることが好ましい。
昇温速度は、得られるポリイミドフィルムの膜厚によって適宜選択することが好ましく、ポリイミドフィルムの膜厚が厚い場合には、昇温速度を遅くすることが好ましい。
ポリイミドフィルムの製造効率の点から、5℃/分以上とすることが好ましく、10℃/分以上とすることが更に好ましい。一方、昇温速度の上限は、通常50℃/分とされ、好ましくは40℃/分以下、さらに好ましくは30℃/分以下である。上記昇温速度とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化をコントロールでき、光透過性が向上する点から好ましい。
昇温は、連続的でも段階的でもよいが、連続的とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化のコントロールの面から好ましい。また、上述の全温度範囲において、昇温速度を一定としてもよく、また途中で変化させてもよい。
イミド化の昇温時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が500ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
ただし、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合は、光学特性に対する酸素の影響が少なく、不活性ガス雰囲気を用いなくても光透過性の高いポリイミドが得られる。
イミド化のための加熱方法は、上記温度で昇温が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、加熱炉、赤外線加熱、電磁誘導加熱等を用いることが可能である。
中でも、延伸工程前に、ポリイミド前駆体のイミド化率を50%以上とすることがより好ましい。延伸工程前にイミド化率を50%以上とすることにより、当該工程後に延伸を行い、その後さらに高い温度で一定時間加熱を行い、イミド化を行った場合であっても、フィルムの外観不良や白化が抑制される。中でもポリイミドフィルムの表面硬度が向上する点から、延伸工程前に、当該イミド化工程において、イミド化率を80%以上とすることが好ましく、90%以上、さらには100%まで反応を進行させることが好ましい。イミド化後に延伸することにより、剛直な高分子鎖が配向しやすいことから表面硬度が向上すると推定される。
なお、イミド化率の測定は、赤外測定(IR)によるスペクトルの分析等により行うことができる。
最終的なポリイミドフィルムを得るには、イミド化を90%以上、さらには95%以上、さらには100%まで反応を進行させることが好ましい。
イミド化を90%以上、さらには100%まで反応を進行させるには、昇温終了温度で一定時間保持することが好ましく、当該保持時間は、通常1分〜180分、更に、5分〜150分とすることが好ましい。
(4)延伸工程
前記第1の製造方法は、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する延伸工程を有していてもよい。当該延伸工程を有する場合は、中でも、イミド化後塗膜を延伸する工程を含むことが、ポリイミドフィルムの表面硬度が向上する点から好ましい。
前記第1の製造方法では、延伸を実施する前の初期の寸法を100%とした時に101%以上10000%以下延伸する工程を、80℃以上で加熱しながら行うことが好ましい。
延伸時の加熱温度は、ポリイミド乃至ポリイミド前駆体のガラス転移温度±50℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移温度±40℃の範囲内であることが好ましい。延伸温度が低すぎるとフィルムが変形せず充分に配向を誘起できない恐れがある。一方で、延伸温度が高すぎると延伸によって得られた配向が温度で緩和し、充分な配向が得られない恐れがある。
延伸工程は、イミド化工程と同時に行っても良い。イミド化率80%以上、更に90%以上、より更に95%以上、特に実質的に100%イミド化を行った後のイミド化後塗膜を延伸することが、ポリイミドフィルムの表面硬度を向上する点から好ましい。
ポリイミドフィルムの延伸倍率は、好ましくは101%以上10000%以下であり、さらに好ましくは101%以上500%以下である。上記範囲で延伸を行うことにより、得られるポリイミドフィルムの表面硬度をより向上することができる。
延伸時におけるポリイミドフィルムの固定方法は、特に制限はなく、延伸装置の種類等に合わせて選択される。また、延伸方法は特に制限はなく、例えばテンター等の搬送装置を有する延伸装置を用い、加熱炉を通しながら延伸することが可能である。ポリイミドフィルムは、一方向のみに延伸(縦延伸または横延伸)してもよく、また同時2軸延伸、もしくは逐次2軸延伸、斜め延伸等によって、二方向に延伸処理を行ってもよい。
<第2の製造方法>
また、本発明のポリイミドフィルムの製造方法としては、第2の製造方法として、
ポリイミドと、有機溶剤とを含むポリイミド樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド樹脂組成物を支持体に塗布して、溶剤を乾燥させてポリイミド樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド樹脂塗膜形成工程という)と、を含むポリイミドフィルムの製造方法が挙げられる。
前記ポリイミドが有機溶剤に良好に溶解する場合には、ポリイミド前駆体樹脂組成物ではなく、前記ポリイミドを有機溶剤に溶解させ、必要に応じて添加剤を含有させたポリイミド樹脂組成物も好適に用いることができる。
前記ポリイミドが25℃で有機溶剤に5質量%以上溶解するような溶剤溶解性を有する場合には、当該製造方法を好適に用いることができる。
ポリイミド樹脂組成物調製工程において、前記ポリイミドは、前記ポリイミドフィルムにおいて説明したものと同様のポリイミドの中から、前述した溶剤溶解性を有するポリイミドを選択して用いることができる。イミド化する方法としては、ポリイミド前駆体の脱水閉環反応について、加熱脱水の代わりに、化学イミド化剤を用いて行う化学イミド化を用いることが好ましい。化学イミド化を行う場合は、脱水触媒としてピリジンやβ―ピコリン酸等のアミン、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド、無水酢酸等の酸無水物等、公知の化合物を用いても良い。酸無水物としては無水酢酸に限らず、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等が挙げられるが特に限定されない。また、その際にピリジンやβ―ピコリン酸等の3級アミンを併用してもよい。ただし、これらアミン類は、フィルム中に残存すると光学特性、特に黄色度(YI値)を低下させるため、前駆体からポリイミドへと反応させた反応液をそのままキャストして製膜するのではなく、再沈殿などにより精製し、ポリイミド以外の成分をそれぞれ、ポリイミド全重量の100ppm以下まで除去してから製膜することが好ましい。
ポリイミド樹脂組成物調製工程において、ポリイミド前駆体の化学イミド化を行う反応液に用いられる有機溶剤としては、例えば、前記第1の製造方法における前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明したものと同様のものを用いることができる。ポリイミド樹脂組成物調製工程において、反応液から精製したポリイミドを再溶解させる際に用いられる有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−ノルマル−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、オルト−ジクロルベンゼン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ノルマル−ブチル、酢酸ノルマル−プロピル、酢酸ノルマル−ペンチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、1.4−ジオキサン、テトラクロルエチレン、トルエン、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノン、メチル−ノルマル−ブチルケトン、ジクロロメタン、ジクロロエタン及びこれらの混合溶剤等が挙げられ、中でも、ジクロロメタン、酢酸ノルマル−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びこれらの混合溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を好ましく用いることができる。
前記ポリイミド樹脂組成物は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、前記第1の製造方法における前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明したものと同様のものを用いることができる。
また、前記第2の製造方法において、前記ポリイミド樹脂組成物の含有水分量1000ppm以下とする方法としては、前記第1の製造方法における前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明した方法と同様の方法を用いることができる。
また、前記第2の製造方法におけるポリイミド樹脂塗膜形成工程において、支持体や、塗布方法は、前記第1の製造方法のポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程において説明したものと同様のものを用いることができる。
前記第2の製造方法におけるポリイミド樹脂塗膜形成工程において、乾燥温度としては、常圧下では80℃以上150℃以下とすることが好ましい。減圧下では10℃以上100℃以下の範囲とすることが好ましい。
また、前記第2の製造方法は、前記ポリイミド樹脂塗膜形成工程の後、残留する溶媒を揮発させる点から、ポリイミド樹脂塗膜を更に加熱する工程を有していてもよい。このような加熱工程を有すると、膜強度や、耐薬品性が向上する点から好ましい。
当該加熱工程は、前記第1の製造方法における加熱によるイミド化工程と同様にすることができる。
また、前記第2の製造方法は、前記ポリイミド樹脂塗膜形成工程の後、ポリイミド樹脂塗膜を延伸する延伸工程を有していてもよい。当該延伸工程は、前記第1の製造方法における延伸工程と同様にすることができる。
前記第2の製造方法は、ポリイミドフィルムの黄色度(YI値)を低減しやすい点から好ましい。前記第2の製造方法によれば、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度を、膜厚(μm)で除した値が、0.05以下であるポリイミドフィルムを好適に形成可能である。
10.ポリイミドフィルムの用途
本発明のポリイミドフィルムの用途は特に限定されるものではなく、従来薄い板ガラス等ガラス製品が用いられていた基材や表面材等の部材として用いることができる。本発明のポリイミドフィルムは、屈曲耐性が向上し、保護フィルムとして十分な表面硬度を有し、光学的歪みが低減したものであるため、中でも、曲面に対応できるディスプレイ用部材として好適に用いることができる。
本発明のポリイミドフィルムは、具体的には例えば、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等、フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材に好適に用いることができる。また、本発明のポリイミドフィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
III.積層体
本発明の積層体は、前述した本発明のフィルム又はポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体である。
本発明の積層体は、前述した本発明のフィルム又はポリイミドフィルムを用いたものであるため、透明性に優れ、屈曲耐性が向上したものであり、更にハードコート層を有するため、表面硬度がより向上したフィルム乃至樹脂フィルムである。
本発明の積層体において、ポリイミドフィルムが含有するポリイミドが、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基を含有する場合、ポリイミドフィルムとハードコート層との密着性が優れる点から好ましい。これは、前記特定のポリイミドフィルムとハードコート層とのミキシングに優れるためと推定される。
また、本発明の積層体において、ポリイミドフィルムが含有するポリイミドが、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基を含有する場合、光学的歪みが低減する点から好ましい。この場合、本発明の積層体をディスプレイ用表面材乃至基材等のディスプレイ用部材として用いた場合には、ディスプレイの表示品質の低下を抑制することができる。
1.フィルム又はポリイミドフィルム
本発明の積層体に用いられるフィルム又はポリイミドフィルムとしては、前述した本発明のフィルム又はポリイミドフィルムを用いることができるので、ここでの説明を省略する。
2.ハードコート層
本発明の積層体に用いられるハードコート層は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する。
(1)ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、炭素−炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記ラジカル重合性化合物が1分子中に有するラジカル重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、1分子中に2〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
前記ラジカル重合性化合物としては、具体的には、例えば、ジビニルベンゼンなどのビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(例えば、エトキシ化(エチレンオキサイド変性)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなど)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジアクリレート等のエポキシアクリレート類、ポリイソシナネートとヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートの反応によって得られるウレタンアクリレート等を挙げることができる。
(2)カチオン重合性化合物
カチオン重合性化合物とは、カチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が有するカチオン重合性基としては、カチオン重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なお、前記カチオン重合性化合物が2個以上のカチオン重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記カチオン重合性化合物が1分子中に有するカチオン重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、2つ以上であることが好ましく、更に3つ以上であることが好ましい。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましく、密着性の点及び光透過性と表面硬度の点から、エポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物がより好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高い、低毒性であり、得られたハードコート層をエポキシ基を有する化合物と組み合わせた際に塗膜中でのカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は、シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られる脂環族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマーなどの脂肪族エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、又はそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、及びノボラックエポキシ樹脂等でありビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記脂環族エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(UVR−6105、UVR−6107、UVR−6110)、ビス−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアディペート(UVR−6128)(以上、カッコ内は商品名で、ダウ・ケミカル製である。)が挙げられる。
また、上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−611、デナコールEX−612、デナコールEX−614、デナコールEX−614B、デナコールEX−622)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−512、デナコールEX−521)、ペンタエリスリトルポリグリシジルエーテル(デナコールEX−411)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−421)、グリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−313、デナコールEX−314)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(デナコールEX−321)、レソルチノールジグリシジルエーテル(デナコールEX−201)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−211)、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(デナコールEX−212)、ヒドロジビスフェノールAジグリシジルエーテル(デナコールEX−252)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−810、デナコールEX−811)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX―850、デナコールEX―851、デナコールEX―821)、プロピレングリコールグリシジルエーテル(デナコールEX−911)、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル(デナコールEX―941、デナコールEX−920)、アリルグリシジルエーテル(デナコールEX−111)、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(デナコールEX−121)、フェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−141)、フェノールグリシジルエーテル(デナコールEX−145)、ブチルフェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−146)、ジグリシジルフタレート(デナコールEX−721)、ヒドロキノンジグリシジルエーテル(デナコールEX−203)、ジグリシジルテレフタレート(デナコールEX−711)、グリシジルフタルイミド(デナコールEX−731)、ジブロモフェニルグリシジルエーテル(デナコールEX−147)、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−221) (以上、カッコ内は商品名で、ナガセケムテックス製である。)が挙げられる。
また、その他の市販品のエポキシ樹脂としては、商品名エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート828EL、エピコート828XA、エピコート834、エピコート801、エピコート801P、エピコート802、エピコート815、エピコート815XA、エピコート816A、エピコート819、エピコート834X90、エピコート1001B80、エピコート1001X70、エピコート1001X75、エピコート1001T75、エピコート806、エピコート806P、エピコート807、エピコート152、エピコート154、エピコート871、エピコート191P、エピコートYX310、エピコートDX255、エピコートYX8000、エピコートYX8034等(以上商品名、ジャパンエポキシレジン製)が挙げられる。
オキセタニル基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXT−101)、1,4−ビス−3−エチルオキセタン−3−イルメトキシメチルベンゼン(OXT−121)、ビス−1−エチル−3−オキセタニルメチルエーテル(OXT−221)、3−エチル−3−2−エチルへキシロキシメチルオキセタン(OXT−212)、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(OXT−211)(以上、カッコ内は商品名で東亜合成製である。)や、商品名エタナコールEHO、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP、エタナコールOXMA(以上商品名、宇部興産製)が挙げられる。
(3)重合開始剤
本発明に用いられるハードコート層が含有する前記ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物は、例えば、前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の少なくとも1種に、必要に応じて重合開始剤を添加して、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
前記重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
ラジカル重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。例えば、光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられ、更に具体的には、1,3−ジ(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・ジャパン(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア369、チバ・ジャパン(株)製)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)(商品名イルガキュア784、チバ・ジャパン(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記以外にも、市販品が使用でき、具体的には、チバ・ジャパン(株)製のイルガキュア907、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、DAROCUR TPO、DAROCUR1173、日本シイベルヘグナー(株)製のSpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、Esacure ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46、日本化薬(株)製のKAYACURE DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。
また、カチオン重合開始剤は、光照射及び加熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η−ベンゼン)(η−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示され、さらに具体的には、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ラジカル重合開始剤としても、カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示され、更に具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5トリアジン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(4)添加剤
本発明に用いられるハードコート層は、前記重合物の他に、必要に応じて、帯電防止剤、防眩剤、防汚剤、硬度を向上させるための無機又は有機微粒子、レべリング剤、各種増感剤等の添加剤を含有していてもよい。
なお、本開示に用いられるハードコート層に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物等は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、熱分解ガスクロマトグラフ装置(GC−MS)や、重合物の分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF−SIMS等の組み合わせを用いて分析することができる。
3.積層体の構成
本発明の積層体は、前記フィルム又はポリイミドフィルムと、前記ハードコート層とを有するものであれば特に限定はされず、前記フィルム又はポリイミドフィルムの一方の面側に前記ハードコート層が積層されたものであってもよいし、前記フィルム又はポリイミドフィルムの両面に前記ハードコート層が積層されたものであってもよい。また、本発明の積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記フィルム又はポリイミドフィルム及び前記ハードコート層の他に、例えば、前記フィルム又はポリイミドフィルムと前記ハードコート層との密着性を向上させるためのプライマー層等の他の層を有するものであってもよく、前記フィルム又はポリイミドフィルムと前記ハードコート層とがプライマー層等の他の層を介して積層されたものであっても良い。また、本発明の積層体は、前記フィルム又はポリイミドフィルムと、前記ハードコート層とが隣接して位置するものであってもよい。また、本発明の積層体はさらに、耐衝撃層、指紋付着防止層、接着乃至粘着層等を有していても良い。
本発明の積層体の全体厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、強度の点から、10μm以上であることが好ましく、更に40μm以上であることが好ましい。一方、屈曲耐性の点から、300μm以下であることが好ましく、更に250μm以下であることが好ましい。
また、本発明の積層体において、各ハードコート層の厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、2μm以上80μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、カール防止の観点からポリイミドフィルムの両面にハードコート層を形成しても良い。
4.積層体の特性
本発明の積層体は、ハードコート層側表面の鉛筆硬度がH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがより更に好ましい。
本発明の積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度の測定方法において、荷重を9.8Nとする以外は同様にして測定することができる。
本発明の積層体は、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、更に88%以上であることが好ましく、より更に90%以上であることが好ましい。このように透過率が高いことから、透明性が良好になり、ガラス代替材料となり得る。
本発明の積層体の前記全光線透過率は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
本発明の積層体は、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがより更に好ましく、5以下であることが特に好ましい。
また、本発明の積層体は、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料として好適に用いることができる点から、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)を膜厚(μm)で割った値(YI値/膜厚(μm))が0.10以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましく、0.03以下であることがより更に好ましい。
本発明の積層体の前記黄色度(YI値)は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして測定することができる。
本発明の積層体のヘイズ値は、光透過性の点から、10以下であることが好ましく、8以下であることが更に好ましく、5以下であることがより更に好ましい。
本発明の積層体のヘイズ値は、前記ポリイミドフィルムのヘイズ値と同様にして測定することができる。
本発明の積層体の波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、0.040以下であることが好ましく、0.020以下であることが好ましく、0.015以下であることが好ましく、更に0.010以下であることが好ましく、より更に0.008未満であることが好ましい。
本発明の積層体の前記複屈折率は、前記ポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率と同様にして測定することができる。
5.積層体の用途
本発明の積層体の用途は特に限定されるものではなく、例えば、前述した本発明のポリイミドフィルムの用途と同様の用途に用いることができる。
6.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法としては、例えば、
前記本発明のフィルム又はポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
前記ハードコート層形成用組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有し、必要に応じて更に重合開始剤、溶剤及び添加剤等を含有していてもよい。
ここで、前記ハードコート層形成用組成物が含有するラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、重合開始剤及び添加剤については、前記ハードコート層において説明したものと同様のものを用いることができ、溶剤は、公知の溶剤から適宜選択して用いることができる。
フィルム又はポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、前記ハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する方法としては、例えば、フィルム又はポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、前記ハードコート層形成用組成物を、公知の塗布手段により塗布する方法が挙げられる。
前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布する手段と同様のものが挙げられる。
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗膜は必要に応じて乾燥することにより溶剤を除去する。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥又は加熱乾燥、更にはこれらの乾燥を組み合わせる方法等が挙げられる。また、常圧で乾燥させる場合は、30℃以上110℃以下で乾燥させることが好ましい。
前記ハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布、必要に応じて乾燥させた塗膜に対し、当該硬化性樹脂組成物に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の重合性基に応じて、光照射及び加熱の少なくともいずれかにより塗膜を硬化させることにより、フィルム又はポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を形成することができる。
光照射には、主に、紫外線、可視光、電子線、電離放射線等が使用される。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用する。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cm程度である。
加熱をする場合は、通常40℃以上120℃以下の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
IV.ディスプレイ用部材
本発明のディスプレイ用部材は、前述した本発明のフィルム又はポリイミドフィルム、或いは、本発明の積層体を含む。
本発明のディスプレイ用部材としては、例えば、ディスプレイ用表面材やディスプレイ用基材等が挙げられる。
本発明のディスプレイ用部材は、前述した本発明のフィルム又はポリイミドフィルム、或いは、本発明の積層体であってよい。
本発明のディスプレイ用部材は、例えばディスプレイ用表面材として、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いられる。本発明のディスプレイ用部材は、前述した本発明のフィルム又はポリイミドフィルム及び本発明の積層体と同様に、透明性に優れ、屈曲耐性が向上し、保護フィルムとして十分な表面硬度を有するため、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができる。
本発明のディスプレイ用部材は、公知の各種ディスプレイに用いることができ、特に限定はされないが、例えば、前記本発明のポリイミドフィルムの用途で説明したディスプレイ等に用いることができる。
なお、本発明のディスプレイ用部材が前記本発明の積層体である場合、当該積層体をディスプレイの表面に配置した後に最表面となる面は、ポリイミドフィルム側の表面であってもよいし、ハードコート層側の表面であってもよい。中でも、ハードコート層側の表面が、より表側の面となるように本発明のディスプレイ用部材を配置することが好ましい。また、本発明のディスプレイ用部材は、最表面に指紋付着防止層を有するものであっても良い。
また、本発明のディスプレイ用部材をディスプレイの表面に配置する方法としては、特に限定はされないが、例えば、接着層を介する方法等が挙げられる。前記接着層としては、ディスプレイ用部材の接着に用いることができる従来公知の接着層を用いることができる。
V.タッチパネル部材
本発明のタッチパネル部材は、前述した本発明のフィルム若しくは前述した本発明のポリイミドフィルム又は前述した本発明の積層体と、
前記フィルム若しくは前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有する。
本発明のタッチパネル部材は、前述した本発明のフィルム若しくは前述した本発明のポリイミドフィルム又は積層体を備えるものであることから、透明性に優れ、屈曲耐性を向上しながら、表面硬度の低下が抑制されたものであるため、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができ、また光学特性に優れる。
本発明のタッチパネル部材に用いられる本発明の積層体は、ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本発明のタッチパネル部材は、特に限定はされないが、前記透明電極が、前記積層体の一方の面側に接して積層されてなるものであることが好ましい。
本発明のタッチパネル部材は、例えば、各種ディスプレイの表面に位置するように配置して用いることができる。また、各種ディスプレイの表面に、本発明のタッチパネル部材と、表面材としての本発明のポリイミドフィルム又は積層体とを、この順に配置して用いることもできる。
以下、本発明のタッチパネル部材について、前述した本発明の積層体を用いた例で説明するが、前述した本発明の積層体の代わりに、前述した本発明のフィルム若しくはポリイミドフィルムも同様に用いることができる。
図5は、本発明のタッチパネル部材の一例の一方の面の概略平面図であり、図6は、図5に示すタッチパネル部材のもう一方の面の概略平面図であり、図7は、図5及び図6に示すタッチパネル部材のA−A’断面図である。図5、図6及び図7に示すタッチパネル部材20は、本発明の積層体10と、積層体10の一方の面に接して配置された第一の透明電極4と、積層体10のもう一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを備える。第一の透明電極4においては、x軸方向に伸長するように延在する短冊状の電極片である複数の第一の導電部41が、所定の間隔を空けて配置されている。第一の導電部41には、その長手方向の端部のいずれか一方において、当該第一の導電部41と電気的に接続される第一の取出し線7が接続されている。積層体10の端縁21まで延設された第一の取出し線7の端部には、外部回路と電気的に接続するための第一の端子71を設けることがよい。第一の導電部41と第一の取出し線7とは、一般には、タッチパネルの使用者が視認可能なアクティブエリア22の外側に位置する、非アクティブエリア23内において接続される。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、例えば図5に示すように、接続部24を介在させた接続構造を採用することができる。接続部24は、具体的には、第一の導電部41の長手方向端部から、非アクティブエリア23内の所定の位置まで導電性材料の層を延設することにより形成することができる。さらに、当該接続部24上に、第一の取出し線7の少なくとも一部を重ねることにより、第一の導電部41と第一の取出し線7との接続構造を形成することができる。
第一の導電部41と第一の取出し線7との接続は、図5に示すような、接続部24を形成する構造には限定されない。例えば、図示は省略するが、第一の導電部41の長手方向端部を非アクティブエリア23まで伸長させ、非アクティブエリア23内において、当該非アクティブエリア23まで伸長させた第一の導電部41の端部に、第一の取出し線7を乗り上げさせることによって、両者を電気的に接続させてもよい。
なお、図5では、第一の導電部41の長手方向端部のいずれか一方と、第一の取出し線7とを接続する形態を示したが、本発明においては、1つの第一の導電部41の長手方向の両端に、それぞれ、第一の取出し線7を電気的に接続する形態としてもよい。
図6に示すように、タッチパネル部材20は、積層体10のもう一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを備える。第二の透明電極5においては、y軸方向に伸長するように延在する複数の短冊状の電極片である第二の導電部51が、x軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。
第二の導電部51には、その長手方向端部の一方において、当該第二の導電部51と電気的に接続される第二の取出し線8が接続されている。
第二の取出し線8は、積層体10の端縁のうち、前述した第一の取出し線7が延設された端縁21における、第一の端子71と重ならない位置まで延設されている。
積層体10の端縁21まで延設された第二の取出し線8の端部には、外部回路と電気的に接続するための第二の端子81を設けることがよい。
第二の導電部51と第二の取出し線8との電気的な接続は、第一の取出し線7と第一の導電部41との電気的な接続と同様の形態を適用することができる。
なお、図5及び図6に示すような、第1取出し線7を長尺配線とし、第2取出し線8を短尺配線とするパターンは、本発明のタッチパネル部材の一実施形態に過ぎず、例えば、第一の取出し線7を短尺配線とし、第二の取出し線8を長尺配線とするパターンとすることも可能である。また、第一の取出し線7の伸長方向及び第二の取出し線8の伸長方向も、図5及び図6に示す方向に限られず、任意に設計することが可能である。
本発明のタッチパネル部材が備える導電部は、タッチパネル部材において透明電極を構成するものを適宜選択して適用することができ、導電部のパターンは、図5及び図6に示すものに限定されない。例えば、静電容量方式によって、指などの接触または接触に近い状態による電気容量の変化を検知可能な透明電極のパターンを適宜選択して適用することができる。
前記導電部の材料としては、光透過性の材料であることが好ましく、例えば、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化インジウム、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)等を主たる構成成分とする酸化インジウム系透明電極材料、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等を主たる構成成分とする透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性高分子化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、第一の導電部41及び第二の導電部51は、互いに同種の導電性材料を用いて形成してもよいし、異種の材料を用いて形成してもよい。特に同種の導電性材料を用いて第一の導電部41及び第2導電部51を形成すると、タッチパネル部材の反りや歪みの発生をより効果的に抑制できる観点で好ましい。
前記導電部の厚みは、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により導電部を形成する場合には、一般的には、10nm〜500nm程度に形成することができる。
本発明のタッチパネル部材が備える取出し線を構成する導電材料は、光透過性の有無を問わない。一般的には、取出し線は、高い導電性を有する銀や銅などの金属材料を用いて形成することができる。具体的には、金属単体、金属の複合体、金属と金属化合物の複合体、金属合金を挙げることができる。金属単体としては、銀、銅、金、クロム、プラチナ、アルミニウムの単体などを例示することができる。金属の複合体としては、MAM(モリブデン、アルミニウム、モリブデンの3層構造体)等を例示することができる。金属と金属化合物の複合体としては、酸化クロムとクロムの積層体等を例示することができる。金属合金としては、銀合金や銅合金が汎用される。また、金属合金としては、APC(銀、パラジウム及び銅の合金)等を例示することができる。また、前記取出し線には、前述した金属材料に、適宜樹脂成分が混在していてもよい。
本発明のタッチパネル部材において、取出し線の端部に設けられる端子は、例えば、前記取出し線と同じ材料を用いて形成することができる。
前記取出し線の厚み、及び幅寸法は、特に限定されないが、例えばフォトリソグラフィ手法により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは10nm〜1000nm程度に形成され、幅寸法は5μm〜200μm程度に形成される。一方、スクリーン印刷などの印刷により取出し線を形成する場合には、一般的には、厚みは5μm〜20μm程度に形成され、幅寸法は20μm〜300μm程度に形成される。
本発明のタッチパネル部材は、図5〜図7に示す形態には限られず、例えば、第一の透明電極と、第二の透明電極とが、それぞれ別個の積層体の上に積層されて構成されるものであってもよい。
図8及び図9は、各々本発明の積層体を備える導電性部材の一例を示す概略平面図である。図8に示す第一の導電性部材201は、本発明の積層体10と、当該積層体10の一方の面に接して配置された第一の透明電極4とを有し、当該第一の透明電極4は、複数の第一の導電部41を有する。図9に示す第二の導電性部材202は、本発明の積層体10’と、当該積層体10’の一方の面に接して配置された第二の透明電極5とを有し、当該第二の透明電極5は、複数の第二の導電部51を有する。
図10は、本発明のタッチパネル部材の別の一例を示す概略断面図であり、図10に示すタッチパネル部材20’は、図8に示す第一の導電性部材201と、図9に示す第二の導電性部材202とを備える。タッチパネル部材20’においては、第一の導電性部材201の第一の透明電極4を有しない面と、第二の導電性部材202の透明電極5を有する面とが、接着層6を介して貼り合わせられている。なお、本発明において、例えば、本発明の積層体と本発明のタッチパネル部材とを接着するための接着層、本発明のタッチパネル部材同士を接着するための接着層、本発明のタッチパネル部材と表示装置等とを接着するための接着層としては、光学部材に用いられている従来公知の接着層を適宜選択して用いることができる。本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材において、透明電極、取出し線及び端子の構成及び材料は、前述した本発明のタッチパネル部材に用いられる透明電極、取出し線及び端子と各々同様とすることができる。
VI.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のフィルム若しくは前述した本発明のポリイミドフィルム又は前述した本発明の積層体と、前記フィルム若しくは前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部とを有する。
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のフィルム若しくは前述した本発明のポリイミドフィルム又は前述した本発明の積層体を備えるものであることから、透明性に優れ、屈曲耐性を向上しながら、表面硬度の低下が抑制されたものであるため、フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができ、光学特性に優れる。
本発明の液晶表示装置に用いられる本発明の積層体は、ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本発明の液晶表示装置が有する対向基板は、本発明のフィルム若しくはポリイミドフィルム又は積層体を備えるものであっても良い。
以下、本発明の液晶表示装置について、前述した本発明の積層体を用いた例で説明するが、前述した本発明の積層体の代わりに、前述した本発明のフィルム若しくはポリイミドフィルムも同様に用いることができる。
図11は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略断面図である。図11に示す液晶表示装置100は、本発明の積層体10と、本発明の積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備え、もう一方の面に第二の透明電極5を備えるタッチパネル部材20と、液晶表示部30とを有する。液晶表示装置100において、積層体10は表面材として用いられており、積層体10とタッチパネル部材20とは、接着層6を介して貼り合わせられている。
本発明の液晶表示装置に用いられる液晶表示部は、対向配置された基板の間に形成された液晶層を有するものであり、従来公知の液晶表示装置に用いられている構成を採用することができる。
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができ、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。
本発明の液晶表示装置に用いられる対向基板としては、液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本発明のポリイミドフィルム又は積層体を備えるものを用いても良い。
液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
本発明の液晶表示装置において、対向配置された基板の間には、さらに複数色の着色層や、画素を画定する遮光部を有していてもよい。また、液晶表示部は、対向配置された基板の外側において、タッチパネル部材が位置する側とは反対側の位置に、発光素子や蛍光体を有するバックライト部を有していてもよい。また、対向配置された基板の外表面には、それぞれ偏光板を有していてもよい。
図12は、本発明の液晶表示装置の別の一例を示す概略断面図である。図12に示す液晶表示装置200は、本発明の積層体10と、本発明の積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備える第一の導電性部材201と、本発明の積層体10”の一方の面に第二の透明電極5を備える第二の導電性部材202とを有するタッチパネル部材20’と、液晶表示部30とを有する。液晶表示装置200において、積層体10と第一の導電性部材201、及び第一の導電性部材201と第二の導電性部材202とは、各々接着層6を介して貼り合わせられている。タッチパネル部材20’の構成は、例えば、図10に示すタッチパネル部材20’の構成と同様にすることができる。本発明の液晶表示装置に用いられる導電性部材としては、本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材と同様のものを用いることができる。
VII.有機エレクトロルミネッセンス表示装置
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明のフィルム若しくは前述した本発明のポリイミドフィルム又は前述した本発明の積層体と、前記フィルム若しくは前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部とを有する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明のフィルム若しくは前述した本発明のポリイミドフィルム又は前述した本発明の積層体を備えるものであることから、透明性に優れ、屈曲耐性を向上しながら、表面硬度の低下が抑制されたものであるため、
フレキシブルディスプレイ用として特に好適に用いることができ、光学特性に優れる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる本発明の積層体は、ポリイミドフィルムの両面に隣接して、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を有するものであることが好ましい。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、前述した本発明のタッチパネル部材を備えるものであっても良い。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置が有する対向基板は、本発明のフィルム若しくはポリイミドフィルム又は積層体を備えるものであっても良い。
図13は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の一例を示す概略断面図である。図13に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置300は、本発明の積層体10と、本発明の積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備え、もう一方の面に第二の透明電極5を備えるタッチパネル部材20と、有機エレクトロルミネッセンス表示部40とを有する。有機エレクトロルミネッセンス表示装置300において、積層体10は表面材として用いられており、積層体10とタッチパネル部材20とは、接着層6を介して貼り合わせられている。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)に用いられる有機エレクトロルミネッセンス表示部(有機EL表示部)は、対向配置された基板の間に形成された有機エレクトロルミネッセンス層(有機EL層)を有するものであり、従来公知の有機EL表示装置に用いられている構成を採用することができる。
有機EL表示部は、さらに、支持基板と、有機EL層並びに有機EL層を挟持する陽極層及び陰極層を含む有機EL素子と、有機EL素子を封止する封止基材と、を有していてもよい。前記有機EL層としては、少なくとも有機EL発光層を有するものであれば良いが、例えば、上記陽極層側から、正孔注入層、正孔輸送層、有機EL発光層、電子輸送層および電子注入層がこの順で積層した構造を有するものを有するものを用いることができる。
本発明の有機EL表示装置は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。本発明の有機EL表示装置に用いられる対向基板としては、有機EL表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができ、本発明の積層体を備えるものを用いても良い。
図14は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の別の一例を示す概略断面図である。図14に示す有機エレクトロルミネッセンス表示装置400は、本発明の積層体10と、本発明の積層体10’の一方の面に第一の透明電極4を備える第一の導電性部材201と、本発明の積層体10”の一方の面に第二の透明電極5を備える第二の導電性部材202とを有するタッチパネル部材20’と、有機エレクトロルミネッセンス表示部40とを有する。有機エレクトロルミネッセンス表示装置400において、積層体10と第一の導電性部材201、第一の導電性部材201と第二の導電性部材202とは、各々接着層6を介して貼り合わせられている。タッチパネル部材20’の構成は、例えば、図10に示すタッチパネル部材20’の構成と同様にすることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に用いられる導電性部材としては、本発明のタッチパネル部材に用いられる導電性部材と同様のものを用いることができる。
[評価方法]
以下、特に断りがない場合は、25℃で測定又は評価を行った。
<ポリイミド前駆体の重量平均分子量>
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、40℃の条件で測定を行った。ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<ポリイミド前駆体溶液の粘度>
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
<ポリイミドの重量平均分子量>
ポリイミド粉体15mgを、15000mgのN−メチルピロリドン(NMP)に浸漬し、ウォーターバスで60℃に加熱しながら、スターラーを用いて回転速度200rpmで、目視で溶解を確認するまで3〜60時間撹拌することにより、0.1重量%の濃度のNMP溶液を得た。その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、検出器:示差屈折率(RID)検出器、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804を2本直列に接続)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、カラム温度37℃、検出器温度37℃の条件で測定を行った。ポリイミドの重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<ポリイミド溶液の粘度>
ポリイミド溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
<ポリイミドのケイ素原子含有割合(質量%)>
ポリイミドのケイ素原子含有割合(質量%)は、仕込みの分子量から算出した。
例えば、合成例2のポリイミドのように、酸二無水物成分として4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)1モルに対して、ジアミン成分として2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)0.9モルと1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)0.1モルを用いた場合、以下のように算出することができる。
ポリイミド繰り返し単位1モル分の分子量は、
6FDA由来:(C)12.01×19+(F)19.00×6+(O)16.00×4+(H)1.01×6=412.25
TFMB由来:{(C)12.01×14+(F)19.00×6+(N)14.01×2+(H)1.01×6}×0.9=284.60
AprTMOS由来:{(C)12.01×10+(O)16.00×1+(N)14.01×2+(Si)28.09×2+(H)1.01×24}×0.1=24.45
から、412.25+284.60+24.45=721.30と算出される。
ポリイミド繰り返し単位1モル中のケイ素原子含有割合(質量%)は、
(28.09×2×0.1)/721.30×100=0.8(質量%)と求められる。
なお、合成例10の両末端アミン変性ジフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22−1660B−3、側鎖フェニルタイプ、数平均分子量4400)については、−(CH−を介してアミノ基がシリコーンに結合していると仮定して、数平均分子量4400からジフェニルシロキサンの繰り返し単位数が平均19.7であると算出し、1分子中に平均21.7個のケイ素原子が含まれているものとして算出した。
また、合成例11のシリコーンジアミン(信越シリコーン社製:KF−8010、数平均分子量860)については、−(CH−を介してアミノ基がシリコーンに結合していると仮定して、数平均分子量860からジメチルシロキサンの繰り返し単位数が平均8.2であると算出し、1分子中に平均10.2個のケイ素原子が含まれているものとして算出した。
<全光線透過率>
JIS K7361−1に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
また、例えば、厚み100μmでの全光線透過率は、ランベルトベールの法則により換算することができる。
具体的には、ランベルトベールの法則によれば、透過率Tは、
Log10(1/T)=kcb
(k=物質固有の定数、c=濃度、b=光路長)で表される。
フィルムの透過率の場合、膜厚が変化しても密度が一定であると仮定するとcも定数となるので、上記式は、定数fを用いて
Log10(1/T)=fb
(f=kc)と表すことができる。ここで、ある膜厚の時の透過率がわかれば、各物質の固有の定数fを求めることができる。従って、T=1/10f・b の式を用いて、fに固有の定数、bに目標の膜厚を代入すれば、所望の膜厚の時の透過率を求めることができる。
<YI値(黄色度)>
YI値は、JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出した。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
また、例えば、厚み100μmでのYI値は、ある特定の膜厚のサンプルの250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
<膜厚測定法>
10cm×10cmの大きさに切り出したポリイミドフィルムの試験片の四隅と中央の計5点の膜厚を、デジタルリニアゲージ(株式会社尾崎製作所製、型式PDN12 デジタルゲージ)を用いて測定し、測定値の平均をポリイミドフィルムの膜厚とした。
<引張試験>
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS K7127に準拠し、引張り速度を10mm/分、チャック間距離を20mmとして、25℃における引張試験を行い、引張試験により得られる応力−ひずみ曲線において降伏点におけるひずみ(%)と、引張弾性率と、伸び率を測定した。引張り試験機は(島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用いた。
前記試験片は、フィルムの中央部付近から切り出した。切り出したフィルムの四隅と中央の計5点の膜厚を、前記膜厚の測定方法で測定し、5点の平均膜厚と各点の膜厚の差が、平均膜厚の6%以内である試験片を用いた。
<動的屈曲試験>
20mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX−FS)にテープで固定した。また、試験片を長辺の半分の位置で折り曲げ、折り畳まれた状態の試験片の長辺の両端部間の距離が6mmとなり、試験片の折り曲げ部分の曲率半径が3mmとなるように折り畳まれた状態を設定した。その後、60±2℃で93±2%相対湿度(RH)の環境下で、平坦に開いた状態から前記折り畳まれた状態にすることを1回の屈曲として、1分間に90回の屈曲回数で、20万回屈曲を繰り返した。
その後、試験片を取り外してから30分後に、得られた試験片の一方の端部を固定し、試験片の内角を測定した。
なお、当該動的屈曲試験によってフィルムが影響を受けずに完全に元に戻った場合は、前記内角は180°となる。
<静的屈曲試験>
図4に示すように、15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片1を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片2(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片1の両端部と金属片2との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)3a及び3bで挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定した。その際に、金属片2とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片4a及び4bを挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定した。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、室温23±2℃、50±5%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放した。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定した。
なお、当該静的屈曲試験によってフィルムが影響を受けずに完全に元に戻った場合は、前記内角は180°となる。
<鉛筆硬度>
鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用い、東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行った。
<ヤング率>
15mm×15mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片の表面のヤング率を、温度25℃で、ISO14577に準拠し、ナノインデンテーション法を用いて測定した。具体的には、測定装置は(株)フィッシャー・インストルメンツ社製、PICODENTOR HM500を用い、測定圧子としてビッカース圧子を用いた。試験片表面について、任意の点を8ヶ所測定して数平均して求めた値をヤング率とした。なお、測定条件は、最大押込み深さ:1000nm、加重時間:20秒、クリープ時間:5秒とした。
<外観総合判定>
前記黄色度の結果と、前記動的屈曲試験の結果と、前記静的屈曲試験の結果とにより、フィルムの外観を総合的に判定した。
前記静的屈曲試験の試験片の内角(戻り角度)が180度であれば、前記静的屈曲試験後の試験片を平坦に開いた時に折り癖が観測されない。一方で、前記静的屈曲試験の試験片の内角が小さくなる程、前記静的屈曲試験後の試験片を平坦に開いた時に外観変化として折り癖が強く観測される。そのため、フィルムの屈曲後の外観変化として折り癖の強さを前記静的屈曲試験の結果により評価した。なお、折り癖は、試験片を平坦に開いて両端部をテープで固定して試験片表面に蛍光灯等の光を当てた時に、筋状の反射として観測することができる。
(評価基準)
AA : 黄色度が5以下で、且つ、動的屈曲試験で破断せず、試験片の内角が140°以上であり、静的屈曲試験で試験片の内角が180°である。
A : 黄色度が5以下で、且つ、動的屈曲試験で破断せず、試験片の内角が140°以上であり、静的屈曲試験で試験片の内角が170°以上180°未満である。
B : 黄色度が5以下で、且つ、動的屈曲試験で破断せず、試験片の内角が140°以上であり、静的屈曲試験で試験片の内角が155°以上170°未満である。
C : 下記(c1)と下記(c2)の少なくとも一方に該当する
(c1)黄色度が5超過
(c2)動的屈曲試験で破断するか、試験片の内角が140°未満であり、静的屈曲試験で試験片の内角が155°未満である。
(合成例1)
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド2903g、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)16.0g(0.07mol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)14.6g(0.03mol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで30分撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)400g(1.25mol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)565g(1.27mol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体溶液1(固形分25重量%)を合成した。ポリイミド前駆体1に用いられたTFMBとAprTMOSとのモル比(TFMB:AprTMOS)は95:5であった。ポリイミド前駆体溶液1(固形分25重量%)の25℃における粘度は95300cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体1の重量平均分子量は183000であった。
(合成例2)
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド302.0g、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)2.49g(10mmol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)2.22g(5mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで4時間撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)28.8g(90mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)42.0g(94.5mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体溶液2(固形分20重量%)を合成した。ポリイミド前駆体1に用いられたTFMBとAprTMOSとのモル比は90:10であった。ポリイミド前駆体溶液2(固形分20重量%)の25℃における粘度は40150cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体2の重量平均分子量は253000であった。
(合成例3)
前記合成例2の手順で、表1に記載の原料、固形分濃度になるように反応を実施し、ポリイミド前駆体溶液3とした。
(合成例4)
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド267.9g、及び、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−[(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2,2−ジイル)ビス(4,1−フェニレンオキシ)]ジアニリン(HFFAPP)40.1g(61.3mmol)を入れ、HFFAPPを溶解させた溶液の液温が30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)27.0g(60.8mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体10が溶解したポリイミド前駆体溶液4(固形分20重量%)を合成した。ポリイミド前駆体溶液4(固形分20重量%)の25℃における粘度は5560cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体4の重量平均分子量は310000であった。
(合成例5)
500mLのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド(200g)、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)(1.27g、5.11mmol)を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(1.14g、2.56mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで1時間撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(31.1g、97.1mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(43.9g、98.7mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体5’が溶解したポリイミド前駆体溶液5’(固形分28重量%)を合成した。上記溶液を室温に下げ、脱水されたジメチルアセトアミド(109g)を加え均一になるまで撹拌した。次に触媒であるピリジン(32.1g、405mmol)と無水酢酸(41.4g、405mmol)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液を5Lのセパラブルフラスコに移し、酢酸ブチル(313g)を加え均一になるまで撹拌した。次にメタノール(696g)を徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りのみられる溶液にメタノール(1620g)を一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、5回メタノールで洗浄し、ポリイミド5(69.6g)を得た。GPCによって測定したポリイミドの重量平均分子量は192000であった。
(合成例6)
500mLのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド(200g)、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)(1.27g、5.11mmol)を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(1.14g、2.56mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで1時間撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(31.1g、97.1mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(44.0g、99.2mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体6’が溶解したポリイミド前駆体溶液6’(固形分28重量%)を合成した。上記溶液を室温に下げ、脱水されたジメチルアセトアミド(110g)を加え均一になるまで撹拌した。次に触媒であるピリジン(32.2g、407mmol)と無水酢酸(41.5g、407mmol)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液を5Lのセパラブルフラスコに移し、酢酸ブチル(314g)を加え均一になるまで撹拌した。次にメタノール(698g)を徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りのみられる溶液にメタノール(1630g)を一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、5回メタノールで洗浄し、ポリイミド6(69.8g)を得た。GPCによって測定したポリイミドの重量平均分子量は237000であった。
(合成例7)
500mLのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド(150g)、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)(1.63g、6.57mmol)を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(1.46g、3.29mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで1時間撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(40.0g、125mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(54.5g、123mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体7’が溶解したポリイミド前駆体溶液7’(固形分40重量%)を合成した。上記溶液を室温に下げ、脱水されたジメチルアセトアミド(240g)を加え均一になるまで撹拌した。次に触媒であるピリジン(39.8g、504mmol)と無水酢酸(51.4g、504mmol)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液を5Lのセパラブルフラスコに移し、酢酸ブチル(396g)を加え均一になるまで撹拌した。次にメタノール(877g)を徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りのみられる溶液にメタノール(2050g)を一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、5回メタノールで洗浄し、ポリイミド7(87.8g)を得た。GPCによって測定したポリイミドの重量平均分子量は69000であった。
(合成例8)
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド3081g、及び、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)322g(1.00mol)を入れ、TFMBを溶解させた溶液の液温が30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)443g(1.00mol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体8が溶解したポリイミド前駆体溶液8(固形分20重量%)を合成した。ポリイミド前駆体溶液8(固形分20重量%)の25℃における粘度は383cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体9の重量平均分子量は81000であった。
(合成例9)
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド169.5g、及び、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)32.0g(100mmol)を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、ピロメリット酸2無水物(PMDA)21.7g(99.5mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体溶液9(固形分20重量%)を合成した。ポリイミド前駆体溶液9の25℃における粘度は23400cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体9の重量平均分子量は83000であった。
(合成例10)
オイルバスを備えた撹拌棒付き3Lセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、両末端アミン変性ジフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X22−1660B−3(数平均分子量4400))12.25g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を3432g加え、続いて6FDA222.12g(0.5モル)加えて、室温で30分撹拌した。その後、2,2’‐ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を152.99g(0.478モル)投入して溶解したことを確認した後、室温で3時間撹拌した後、80℃に昇温し、4時間撹拌した後、オイルバスを外して室温に戻し、ポリイミド前駆体溶液10を得た。ポリイミド前駆体溶液10の固形分濃度、25℃における粘度、GPCによって測定したポリイミド前駆体10の重量平均分子量をそれぞれ表1に示す。
(合成例11)
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルホルムアミド(144.0g)及び2,2−ビス―[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)(31.2g、60mmol)を加え、完全に溶解するまで攪拌した。この溶液を0℃に冷却し、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(39.9g、90mmol)を徐々に投入し、溶解するまで撹拌した。次に変性シリコーンオイルKF−8010(商品名、信越シリコーン製、分子量860)を(24.9g、30mmol)加えて4時間攪拌し、ポリアミド酸溶液を得た。次に、上記ポリアミド酸溶液に、触媒であるβピコリン(8.4g、90mmol)と、無水酢酸(55.2g、540mmol)を添加し、100℃のオイルバス中で1時間攪拌してポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液を大量のイソプロピルアルコール(IPA)中に滴下し、ポリイミドを沈殿析出させた。濾過抽出によって得られたポリイミドはIPA中で撹拌洗浄させた。再び濾過を行った後、ポリイミドを80℃、減圧下にて充分に乾燥し、ポリイミド11を得た。GPCによって測定したポリイミド11の重量平均分子量は199000であった。
以下において、表中の略称はそれぞれ以下のとおりである。
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
AprTMOS:1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
HFFAPP:3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−[(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2,2−ジイル)ビス(4,1−フェニレンオキシ)]ジアニリン(和歌山精化工業株式会社製)
PMDA:ピロメリット酸無水物
X22−1660B−3:両末端アミン変性ジフェニルシリコーンオイル(信越シリコーン製、X22−1660B−3(数平均分子量4400))
HFBAPP:2,2−ビス―[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン
KF−8010:両末端アミン変性ジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン製、KF−8010、分子量860)
なお、表1の固形分濃度は、ポリイミド5〜7についてもポリイミド前駆体溶液の固形分濃度を表す。分子量は、ポリイミド前駆体1〜4及び8〜10ではポリイミド前駆体の分子量、ポリイミド5〜7及び11ではポリイミドの分子量を表す。粘度は、ポリイミド前駆体1〜4及び8〜10ではポリイミド前駆体溶液の粘度、ポリイミド5〜7では実施例11と同様にポリイミド溶液を調製した際の粘度、ポリイミド11は比較例6と同様にポリイミド溶液を調製した際の粘度を表す。
(実施例1〜10、比較例1、3〜5)
ポリイミド前駆体溶液1〜4、9〜11を用い、下記(1)〜(3)の手順を行うことで、表2に記載の厚みのポリイミドフィルムをそれぞれ作製した。
(1)各ポリイミド前駆体溶液をガラス上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(2)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、表2に記載のキュア温度まで昇温し、表2に記載のキュア温度で1時間保持後、室温まで冷却した。
(3)ガラスより剥離し、各ポリイミドフィルムを得た。
(実施例11)
ポリイミド5を酢酸ブチルとPGMEAの混合溶媒(8:2、体積比)に溶かし、固形分25質量%のポリイミド溶液5を作製した。ポリイミド溶液5(固形分25重量%)の25℃における粘度は16612cpsであった。
上述のように得られたポリイミド溶液5を用いて、下記(i)〜(iii)の手順を行うことで、表2に記載の厚みのポリイミドフィルムを作製した。
(i)ポリイミド溶液5をガラス上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(ii)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、300℃まで昇温し、300℃で1時間保持後、室温まで冷却した。
(iii)ガラスより剥離し、ポリイミドフィルムを得た。
(実施例12、比較例2)
実施例11において、合成例5のポリイミド5を、合成例6〜7のポリイミド6〜7に変更した以外は、実施例11と同様にして、ポリイミドフィルムを得た。
(比較例6)
合成例11で得られたポリイミド11をジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、固形分33.3質量%のポリイミド溶液11を作製した。ポリイミド溶液11を用いて、下記(i)〜(ii)の手順を行うことで、表2に記載の厚みのポリイミドフィルムを作製した。
(i)ポリイミド溶液11をガラス上に塗布し、80℃の循環オーブンで15分乾燥した後、250℃で5分乾燥した。
(ii)ガラスより剥離し、ポリイミドフィルムを得た。
比較例7としては、市販品のポリイミドフィルム(商品名:ユーピレックス−S、宇部興産製;BPDA(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物)−PPD(p−フェニレンジアミン))を用いた。
得られた各ポリイミドフィルムについて、前記評価方法を用いて評価した。評価結果を表2に示す。
表2より、本発明のポリイミドフィルムに相当する実施例1〜12のポリイミドフィルムは、透明性に優れ、屈曲耐性を向上しながら、表面硬度の低下が抑制された樹脂フィルムであることが示された。
それに対して、比較例1〜5のポリイミドフィルムは、応力−ひずみ曲線の降伏点におけるひずみが8%未満であり、動的屈曲耐性が劣っていた。また、比較例4〜5のポリイミドフィルムは、黄色度も劣っており、比較例5のポリイミドフィルムは更に鉛筆硬度が劣っており、表面が傷つきやすかった。
比較例6のポリイミドフィルムは、降伏点におけるひずみが8%以上で引張弾性率が1.8GPa未満であり、屈曲耐性は良好であったものの、鉛筆硬度が劣っており、表面が傷つきやすかった。比較例6のポリイミドフィルムは更に黄色度が劣っていた。
比較例7の市販品ポリイミドフィルムは、光透過性や黄色度が大きく劣っており、屈曲耐性も実施例に比べて劣るものであった。比較例7のポリイミドフィルムは、フッ素原子を含まず、吸湿性が高い分子構造を有するため、降伏点が大きくても屈曲耐性が劣っていたと推定される。
(合成例12)
1Lのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド(466g)、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)(1.31g)を溶解させた溶液を入れ、液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(1.17g)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで30分撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(65.9g)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(91.7g)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体12’が溶解したポリイミド前駆体溶液12’(固形分25質量%)を合成した。
窒素雰囲気下で、5Lのセパラブルフラスコに、室温に下げた上記ポリイミド前駆体溶液12’(400g)を加えた。そこへ、脱水されたジメチルアセトアミド(109g)を加え均一になるまで撹拌した。次に触媒であるピリジン(41.4g)と無水酢酸(53.4g)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液に酢酸ブチル(406g)を加え均一になるまで撹拌し、次にメタノール(902g)を徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りが見られる溶液にメタノール(2105g)を一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、5回メタノールで洗浄し、ポリイミド12(91g)を得た。GPCによって測定したポリイミドの重量平均分子量は201269であった。
(合成例13〜14)
合成例12のポリイミド12を合成した手順で、表3に記載のジアミン比率になるように調整して反応を実施し、ポリイミド13及び14を得た。得られたポリイミドの重量平均分子量を表3に示す。
なお、表3の固形分濃度は、実施例13〜18と同様にポリイミド溶液を調製した際の固形分濃度を表す。分子量はポリイミドの分子量を表す。粘度は、実施例13〜18と同様にポリイミド溶液を調製した際の粘度を表す。
(実施例13)
ポリイミド12を溶剤(ジクロロメタン)に溶かし、固形分14質量%のポリイミド溶液12を作製した。ポリイミド溶液12(固形分14質量%)の25℃における粘度は4290cpsであった。
上述のように得られたポリイミド溶液12を用いて、下記(i)〜(iii)の手順を行うことで、50μm±5μmの厚みのポリイミドフィルムを作製した。
(i)ポリイミド溶液12をガラス板上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(ii)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、200℃まで昇温し、200℃で1時間保持後、室温まで冷却した。
(iii)ガラス板より剥離し、ポリイミドフィルムを得た。
(実施例14〜18)
実施例13において、合成例12のポリイミド12を、表4に示すように、合成例13又は14のポリイミド13又は14に変更し、前記(ii)の工程における昇温温度及び1時間保持する温度(キュア温度)を表4に示すように変更した以外は、実施例13と同様にして、ポリイミドフィルムを得た。
得られた各ポリイミドフィルムについて、前記評価方法を用いて評価した。評価結果を表4に示す。
(実施例19〜36:積層体の製造)
ペンタエリスリトールトリアクリレートの40質量%メチルイソブチルケトン溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレート100質量部に対して10質量部の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF製、イルガキュア184)を添加して、ハードコート層用樹脂組成物を調製した。
実施例1〜18の各ポリイミドフィルム上に前記ハードコート層用樹脂組成物を塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cmの露光量で照射し硬化させ、10μm膜厚の硬化膜を形成し、積層体を製造した。
中でもポリイミドフィルム中にケイ素原子を含む場合に、ハードコート層との密着性が良好であった。

Claims (14)

  1. 15mm×40mmの試験片を、JIS K7127に準拠し、引張速度10mm/分、チャック間距離20mmとして25℃で測定する引張試験により得られる応力−ひずみ曲線において、降伏点におけるひずみが8%以上であり、
    前記引張試験における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
    JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、5以下である、フィルム。
  2. 15mm×40mmの試験片を、JIS K7127に準拠し、引張速度10mm/分、チャック間距離20mmとして25℃で測定する引張試験により得られる応力−ひずみ曲線において、降伏点におけるひずみが8%以上であり、
    前記引張試験における引張弾性率が1.8GPa以上であり、
    JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、5以下である、ポリイミドフィルム。
  3. 温度25℃で、ISO14577に準拠し、ナノインデンテーション法を用いて測定した、フィルム表面のヤング率が、2.3GPa以上である、請求項2に記載のポリイミドフィルム。
  4. 下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有する、請求項2又は3に記載のポリイミドフィルム。
    (一般式(1)において、Rは芳香族環又は脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、複数のRは各々同一であっても異なっていても良く、Rはジアミン残基である2価の基を表し、複数のRは各々同一であっても異なっていても良く、複数のRの少なくとも一部が芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基を含む。nは繰り返し単位数を表す。)
  5. 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、
    は、ケイ素原子を有しないジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン骨格を有するジアミン残基を含むか、或いは、
    は、ジアミン残基である2価の基を表し、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である、請求項4に記載のポリイミドフィルム。
  6. 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のRが、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物残基、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物残基、ピロメリット酸二無水物残基、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基である、請求項4又は5に記載のポリイミドフィルム。
  7. 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、
    は、ケイ素原子を有しないジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン骨格を有するジアミン残基を含むか、或いは、
    は、ケイ素原子を有しないジアミン残基、及び、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、Rの総量の2.5モル%以上50モル%以下が、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基であり、Rの総量の50モル%以上97.5モル%以下が、ケイ素原子を有さず、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基である、請求項4乃至6のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
  8. 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のRにおける、前記芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基が、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans−1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン残基、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−[(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2,2−ジイル)ビス(4,1−フェニレンオキシ)]ジアニリン残基、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン残基、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基である、請求項4乃至7のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
    (一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
  9. 請求項1に記載のフィルム又は請求項2乃至8のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体。
  10. 請求項1に記載のフィルム若しくは請求項2乃至8のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム、又は、請求項9に記載の積層体を含むディスプレイ用部材。
  11. フレキシブルディスプレイに用いられる、請求項10に記載のディスプレイ用部材。
  12. 請求項1に記載のフィルム若しくは請求項2乃至8のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム、又は請求項9に記載の積層体と、
    前記フィルム若しくは前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、複数の導電部からなる透明電極と、
    前記導電部の端部の少なくとも一方側において電気的に接続される複数の取り出し線と、を有するタッチパネル部材。
  13. 請求項1に記載のフィルム若しくは請求項2乃至8のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム、又は請求項9に記載の積層体と、
    前記フィルム若しくは前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に液晶層を有してなる液晶表示部と、を有する液晶表示装置。
  14. 請求項1に記載のフィルム若しくは請求項2乃至8のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム、又は請求項9に記載の積層体と、
    前記フィルム若しくは前記ポリイミドフィルム又は前記積層体の一方の面側に配置された、対向基板間に有機エレクトロルミネッセンス層を有してなる有機エレクトロルミネッセンス表示部と、を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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