JP2019043234A - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】ウェット性能を維持しつつ四輪自動車の旋回性能を向上させるのに役立つ空気入りラジアルタイヤを提供する。【解決手段】ラジアル構造のカーカス6と、ベルト層7と、トレッド部とを含む乗用車用の空気入りラジアルタイヤ1である。トレッド部2は、外側トレッド端To及び内側トレッド端Tiを有する。トレッド部2は、複数本の主溝10によって、複数の周方向陸部15に区分されている。周方向陸部15は、内側ショルダー陸部16と内側ミドル陸部17とを含む。内側ショルダー陸部16には、複数の内側ショルダーラグ溝21が設けられている。内側ミドル陸部17には、複数の内側ミドルラグ溝22が設けられている。内側ショルダーラグ溝21の本数は、内側ミドルラグ溝22の本数よりも大である。【選択図】図2

Description

本発明は、乗用車用の空気入りラジアルタイヤに関し、詳しくは、ウェット性能を維持しつつ四輪自動車の旋回性能を向上させるのに役立つ空気入りラジアルタイヤに関する。
図12には、前輪に操舵機構を有する一般的な四輪自動車の旋回動作の時系列的な変化を示す。先ず、状態Aのように、直進走行中にドライバーによってハンドルが操作されると、前輪のタイヤbにスリップ角が与えられ、前輪のタイヤbがコーナリングフォースを発生する(状態B)。ここで、「スリップ角」は、車体cの進行方向とタイヤbとのなす角度である。また、「コーナリングフォース」は、四輪自動車aが旋回する時にタイヤbの接地面に発生する摩擦力のうち、進行方向に対して横向きに作用する力の成分であり、特にスリップ角が1度のときのコーナリングフォースをコーナリングパワーと呼ぶ場合がある。
前輪のタイヤbで生じたコーナリングフォースは、ヨーを伴った車体cの旋回運動をもたらす。この旋回運動は、後輪のタイヤbにスリップ角を与えるので、後輪のタイヤbもコーナリングフォースを発生する(状態C)。そして、車両の重心点CG回りに関し、前輪タイヤbのコーナリングフォースに基づくモーメントと、後輪タイヤbのコーナリングフォースに基づくモーメントとが実質的に釣り合った場合(状態D)、車体cは、ヨー加速度がほぼゼロで斜めに移動する定常状態(以下、このような走行状態を「公転走行状態」と呼ぶ場合がある)となる。
発明者らは、四輪自動車の旋回性能の向上のためには、旋回操舵後に、車体をできるだけ早く公転走行状態へと移行させることが重要であるとの認識の下で、タイヤに関して、種々の研究を重ねた。
一般に、タイヤが車両に装着された状態において、タイヤが発生するコーナリングパワーは、等価コーナリングパワー(以下、「等価CP」)と呼ばれる。この等価CPは、台上試験等で計測されたタイヤ単体のコーナリングパワー(以下、「台上CP」という。)と、下記の式(1)の関係がある。
等価CP = 台上CP × CP増幅率 …(1)
等価CPは、いわゆるロールステア、コンプライアンスステア等の影響を含めたコーナリングパワーであり、車両のロール特性及びサスペンション特性等をタイヤに取り込んだと仮定した場合のコーナリングパワーである。これらの特性は、CP増幅率で代表される。
図13は、一般的な空気入りラジアルタイヤの台上CPとそれに作用する荷重との関係を示すグラフである。通常、台上CPは、荷重の増加とともに増加してピークを迎えた後、徐々に減少することがわかる。また、このグラフには、旋回中のFFの四輪自動車に装着されたタイヤの大凡の荷重域も示されている。先ず、FFの四輪自動車では、前輪タイヤは、後輪タイヤよりも大きな荷重が作用する傾向がある。また、前輪及び後輪それぞれにおいて、旋回外側のタイヤには、旋回内側のタイヤよりも大きな荷重が作用する傾向がある。そのため、前輪側のタイヤと後輪側のタイヤとの間には、旋回時に生じる平均的な台上CPの値Ff及びFrに関し、比較的大きな差が生じる。
各タイヤへの上述の荷重分布を前提とした場合、車両の旋回動作中に、できるだけ早く公転走行状態に移行させて旋回性能を向上させるためには、前輪のタイヤの等価CPを相対的に下げる一方、後輪のタイヤの等価CPを相対的に高めること、即ち、両者の等価CPを近づけるか、又は、これらが早期に近づくように改善することが有効と考えられる。
発明者らは、前輪のタイヤの等価CPを相対的に下げるために、これまであまり着目されていなかったセルフアライニングトルク(以下、単に「SAT」ということがある。)に着目した。
ここで、SATについて、簡単に述べる。図14には、進行方向Yに対してスリップ角αで旋回中のタイヤbの接地面を、路面側から見た図が示されている。図14に示されるように、接地面Pのトレッドゴムは弾性変形し、横方向のCFが発生する。CFの作用点G(ハッチングされた接地面の図心に相当)が、タイヤの接地面中心Pcよりも後方にある場合、タイヤには、その接地面中心Pcの回りに、スリップ角αを小さくする方向のモーメントであるSATが働く。つまり、SATは、タイヤの接地面中心Pcの回りにスリップ角を小さくする方向に働く。なお、接地面中心PcとCFの作用点Gとの進行方向Yに沿った距離NTは、ニューマチックトレールと定義される。
また、発明者らの種々の実験の結果、上記式(1)のCP増幅率は、SATの逆数にほぼ比例することが判明している。このため、SATの大きいタイヤは、結果的に、等価CPを相対的に下げることになる。
一方、後輪は、操舵機構がなく、SATの影響がないので、タイヤとして、台上CPそのものを高めることで、その等価CPを高めることができる。
以上から明らかなように、四輪自動車、とりわけ前輪により多くの荷重が作用するFFの四輪自動車おいて、旋回走行中に、速やかに公転走行状態に移行させるために、タイヤには、大きなSATを発生させる特性が求められる。
発明者らは、SATとタイヤのトレッドパターンとの関係に関して、さらに研究したところ、タイヤのトレッド部の中でSATへの寄与が最も大きいのはショルダー部であることが判明した。そして、発明者らは、旋回時に車両の内側に位置する内側ショルダー陸部及び内側ミドル陸部の構成を改善することが、SATを高める上で特に有効であるとの知見を得た。
特開2012−017001号公報 特開2009−162482号公報
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ウェット性能を維持しつつ四輪自動車の旋回性能を向上させるのに役立つ空気入りラジアルタイヤを提供することを主たる目的としている。
本発明は、ラジアル構造のカーカスと、前記カーカスの外側に配された少なくとも2枚のベルトプライからなるベルト層と、車両への装着の向きが指定されたトレッドパターンが形成されたトレッド部とを含む乗用車用の空気入りラジアルタイヤであって、前記トレッド部は、車両装着時にそれぞれ車両の外側及び車両の内側に位置する外側トレッド端及び内側トレッド端を有し、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝によって、複数の周方向陸部に区分されており、前記周方向陸部は、前記内側トレッド端を含む内側ショルダー陸部と、前記内側ショルダー陸部に隣接する内側ミドル陸部とを含み、前記内側ショルダー陸部には、前記内側トレッド端からタイヤ軸方向内側にのび、かつ、前記内側ショルダー陸部内で途切れる複数の内側ショルダーラグ溝が設けられており、前記内側ミドル陸部には、前記内側トレッド端側のエッジから前記外側トレッド端側にのび、かつ、前記内側ミドル陸部内で途切れる複数の内側ミドルラグ溝が設けられており、前記内側ショルダーラグ溝の本数は、前記内側ミドルラグ溝の本数よりも大である。
本発明の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記内側ミドルラグ溝の本数は、前記内側ショルダーラグ溝の本数の0.70〜0.80倍であるのが望ましい。
本発明の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記内側ショルダーラグ溝のタイヤ軸方向の長さは、前記内側ショルダー陸部のタイヤ軸方向の幅の0.70〜0.80倍であるのが望ましい。
本発明の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記内側ショルダーラグ溝は、タイヤ軸方向に対して30〜50度の角度で配されているのが望ましい。
本発明の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記内側ショルダーラグ溝は、タイヤ軸方向内側に向かって深さが漸減しているのが望ましい。
本発明の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記内側ショルダー陸部には、前記内側ショルダーラグ溝に連なることなくのびる複数の内側ショルダーサイプが設けられているのが望ましい。
本発明の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記内側ショルダーサイプは、前記内側ショルダー陸部内で途切れるタイヤ軸方向の内端を有するのが望ましい。
本発明の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記内側ショルダーサイプは、前記内側ショルダー陸部内で途切れるタイヤ軸方向の外端を有するのが望ましい。
本発明の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記内側ミドルラグ溝は、タイヤ軸方向に沿ってのびているのが望ましい。
本発明の空気入りラジアルタイヤにおいて、前記トレッド部は、4本又は5本の前記周方向陸部に区分されているのが望ましい。
本発明の空気入りラジアルタイヤは、下記の走行条件において、下記式(1)を満足するのが望ましい。
装着リム:正規リム
タイヤ内圧:正規内圧
タイヤに負荷する荷重:正規荷重の70%
速度:10km/h
スリップ角:0.7度
キャンバー角:−(マイナス)1.0度
SAT ≧ 0.18×L×CF …(1)
ここで、"SAT"はセルフアライニングトルク(N・m)、"L"はトレッド部のタイヤ周方向の接地最大長(m)、"CF"は、コーナリングフォース(N)である。
本発明の空気入りラジアルタイヤの内側ショルダー陸部には、内側トレッド端からタイヤ軸方向内側にのび、かつ、内側ショルダー陸部内で途切れる複数の内側ショルダーラグ溝が設けられている。内側ミドル陸部には、内側トレッド端側のエッジから外側トレッド端側にのび、かつ、内側ミドル陸部内で途切れる複数の内側ミドルラグ溝が設けられている。このような内側ショルダーラグ溝及び内側ミドルラグ溝は、それぞれ、外側トレッド端及び主溝に排水することができるため、ウェット性能を高めるのに役立つ。また、上記各ラグ溝の配置は、各陸部の内側トレッド端側の剛性を緩和し、ひいてはSATを高めるのに役立つ。
本発明の空気入りラジアルタイヤの内側ショルダーラグ溝の本数は、内側ミドルラグ溝の本数よりも大である。これにより、内側ショルダー陸部のタイヤ周方向の剛性を低下させることができ、ひいては大きなSATが得られる。従って、本発明の空気入りラジアルタイヤを四輪に装着した四輪自動車は、旋回走行中、速やかに公転走行状態に移行させて優れた旋回性能を提供することができる。
本発明の空気入りラジアルタイヤの一実施形態の横断面図である。 図1のタイヤのトレッド部の展開図である。 車両が左旋回しているときの前輪タイヤに作用するSATを示す説明図である。 (a)及び(b)は、陸部の剛性の測定方法の説明図である。 図2の内側ショルダー陸部及び内側ミドル陸部の拡大図である。 (a)は、図5のB−B線断面図であり、(b)は、図5のC−C線断面図である。 図2の外側ショルダー陸部の拡大図である。 図7のD−D線断面図である。 図2の外側ミドル陸部の拡大図である。 図9のE−E線断面図である。 本発明の他の実施形態の空気入りラジアルタイヤの内側ショルダー陸部の拡大図である。 四輪乗用車の旋回動作を示す説明図である。 一般的な空気入りラジアルタイヤの台上CPとそれに作用する荷重との関係を示すグラフである。 車両の旋回時の前輪のタイヤの接地面を示す説明図である。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りラジアルタイヤ1(以下、単に「タイヤ」ということがある。)のタイヤ回転軸を含む横断面図である。図2は、図1のタイヤ1のトレッド部2の展開図である。図1は、図2のA−A線断面図に相当する。本実施形態のタイヤ1は、乗用車用の空気入りラジアルタイヤとして構成されている。本実施形態のタイヤ1は、静止状態において、前輪に作用する垂直荷重が後輪に作用する垂直荷重よりも大きい乗用車用として好適であり、とりわけFFの乗用車用として好適に用いられる。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、ラジアル構造のカーカス6及びベルト層7を具えている。
カーカス6は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る。カーカス6は、例えば、1枚のカーカスプライ6Aで形成されている。カーカスプライ6Aは、例えば、タイヤ周方向に対して75〜90度の角度で傾けて配列された有機繊維からなるカーカスコードで構成されている。
ベルト層7は、少なくとも2枚のベルトプライ7A、7Bで構成されている。ベルトプライ7A、7Bは、例えば、タイヤ周方向に対して10〜45度の角度で配列されたスチールコードで構成されている。ベルトプライ7Aは、例えば、隣り合うベルトプライ7Bのスチールコードと逆向きに傾斜するスチールコードで構成されている。ベルト層7の外側に、バンド層等のさらなる補強層が配されても良い。
図2に示されるように、トレッド部2には、車両への装着の向きが指定されたトレッドパターンが形成されている。トレッド部2のトレッドパターンは、タイヤ赤道Cに関して、非対称形状で形成されている。タイヤ1の車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部3等に、文字又は記号で表示される。
トレッド部2は、外側トレッド端To及び内側トレッド端Tiを有している。外側トレッド端Toは、車両装着時に車両の外側(図2では右側)に位置する。内側トレッド端Tiは、車両装着時に車両の内側(図2では左側)に位置する。
各トレッド端To、Tiは、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。正規状態において、外側トレッド端Toと内側トレッド端Tiとの間のタイヤ軸方向の距離は、トレッド幅TWと定義される。
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、JATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
本実施形態のトレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝10によって、4本又は5本の周方向陸部に区分されている。主溝10は、内側ショルダー主溝11及び外側ショルダー主溝12を含んでいる。本実施形態の主溝10は、さらに、クラウン主溝13を含んでいる。
内側ショルダー主溝11は、例えば、複数本の主溝10の内、最も内側トレッド端Ti側に設けられている。内側ショルダー主溝11は、タイヤ赤道Cよりも内側トレッド端Ti側に設けられている。
外側ショルダー主溝12は、例えば、複数本の主溝10の内、最も外側トレッド端To側に設けられている。外側ショルダー主溝12は、タイヤ赤道Cよりも外側トレッド端To側に設けられている。
クラウン主溝13は、内側ショルダー主溝11と外側ショルダー主溝12との間に設けられている。クラウン主溝10は、例えば、タイヤ赤道C上に1本設けられている。他の態様では、クラウン主溝13は、例えば、タイヤ赤道Cのタイヤ軸方向の各側に1本ずつ設けられても良い。
本実施形態において、主溝10は、例えば、タイヤ周方向に沿って直線状にのびている。他の態様では、主溝10は、例えば、波状やジグザグ状にのびても良い。主溝の溝幅(内側ショルダー主溝11の溝幅W1、外側ショルダー主溝12の溝幅W2、及び、クラウン主溝13の溝幅W3)は、慣例に従って任意に定めることができる。トレッド部2のパターン剛性を維持しながら十分な排水性能を提供するために、前記各溝幅W1、W2及びW3は、例えば、トレッド幅TWの2.5%〜5.0%程度が望ましい。各主溝11乃至13の溝深さは、乗用車用ラジアルタイヤの場合、例えば、5〜10mm程度であるのが望ましい。
本実施形態のトレッド部2には、周方向陸部15として、内側ショルダー陸部16と、内側ミドル陸部17と、外側ショルダー陸部18と外側ミドル陸部19とが含まれている。内側ショルダー陸部16は、内側トレッド端Tiを含んでいる。内側ミドル陸部17は、内側ショルダー陸部16に内側ショルダー主溝11を介して隣接している。外側ショルダー陸部18は、外側トレッド端Tiを含んでいる。外側ミドル陸部19は、外側ショルダー陸部18に外側ショルダー主溝12を介して隣接している。
内側ショルダー陸部16には、内側トレッド端Tiからタイヤ軸方向内側にのび、かつ、内側ショルダー陸部16内で途切れる複数の内側ショルダーラグ溝21が設けられている。内側ミドル陸部17には、内側トレッド端Ti側のエッジから外側トレッド端To側にのび、かつ、内側ミドル陸部17内で途切れる複数の内側ミドルラグ溝22が設けられている。このような内側ショルダーラグ溝21及び内側ミドルラグ溝22は、それぞれ、外側トレッド端To及び主溝に排水することができるため、ウェット性能を高めるのに役立つ。
本発明では、内側ショルダーラグ溝21の本数N1は、内側ミドルラグ溝22の本数N2よりも大であることを特徴事項の一つとする。
上述の通り、四輪自動車の旋回走行中、できるだけ早く車両を公転走行状態に移行させることで旋回性能を向上させるためには、大きなSATを発生させるのが有効である。発明者らは、タイヤの旋回中の接地面の圧力分布を詳細に分析したところ、旋回時に車両の内側に位置する内側ショルダー陸部及び内側ミドル陸部の構成を改善することが、SATを高める上で特に有効であるとの知見を得た。以下、この点について、図3に示されるように、車両が左旋回している場合を例に挙げて説明する。
進行方向に対してスリップ角がついた前輪タイヤは、路面とトレッド面との摩擦によって、反時計回りに周方向陸部が変形する。スリップ角がほぼ一定となったとき、変形した各周方向陸部は、元に戻ろうとし、図中の矢印にように、時計回りに反力、即ちSATを発生する。このSAT、即ち、トレッド部の接地面中心Pcの周りの時計方向のトルクを高めるためには、SATへの寄与が高い旋回外側のタイヤ(右側のタイヤ)の外側ショルダー陸部18の接地域の後方領域X1で大きな駆動方向の力を発生させることが有効である。このような力を発生させるためには、外側ショルダー陸部18及び外側ミドル陸部19のタイヤ周方向剛性を高めることが重要となる。
他方、内側ショルダー陸部16については、SATを高めるためには、SATへの寄与が高い旋回外側のタイヤ(右側のタイヤ)の内側ショルダー陸部16の接地域の前方領域X2で大きな制動方向の力を発生させることが有効である。このような制動方向の力を発生させるためには、内側ショルダー陸部16は、外側ショルダー陸部18とは逆に、タイヤ周方向剛性を低下させ、路面に対して柔軟に追従する接地性を向上させることが有効である。
従って、本発明のように、内側ショルダーラグ溝の本数N1が内側ミドルラグ溝22の本数N2よりも大であるタイヤ1は、内側ショルダー陸部16のタイヤ周方向の剛性を低下させることができ、ひいては大きなSATが得られる。従って、本発明のタイヤ1を四輪に装着した四輪自動車は、旋回走行中、速やかに公転走行状態に移行し、優れた旋回性能を提供することができる。
また、空気入りラジアルタイヤは、ショルダー陸部において、タイヤ軸方向外側に向かって外径が徐々に小さくなる。このため、前輪の旋回外側のタイヤにおいて、外側ショルダー陸部18は、タイヤのコーナリングフォースとは逆向きの力であるキャンバースラストを発生させる。内側ショルダー陸部16は、タイヤのコーナリングフォースと同じ向きのキャンバースラストを発生させる。このため、外側ショルダー陸部18は、タイヤ軸方向剛性に関して、内側ショルダー陸部16よりも大きく構成されているのが望ましい。これにより、外側ショルダー陸部18は、内側ショルダー陸部16よりも大きなキャンバースラストを発生させる。従って、外側ショルダー陸部18が発生するキャンバースラストは、前輪のタイヤのコーナリングフォースを減じるのに役立ち、ひいては旋回走行中の車両をさらに速やかに公転走行状態に移行させることができる。
好ましい態様では、SATをより大きく発生させながら偏摩耗の発生を防止するために、タイヤ周方向剛性に関し、外側ショルダー陸部18は、内側ショルダー陸部16の1.05〜1.40倍の剛性比σ1を有するのが望ましい。同様に、タイヤ軸方向剛性に関し、外側ショルダー陸部18は、内側ショルダー陸部16の1.05〜1.40倍の剛性比σ2を有するのが望ましい。
各陸部のタイヤ周方向剛性及びタイヤ軸方向剛性は、それぞれの方向に単位変形量を生じさせるのに必要な力で示される。具体的な測定方法としては、以下のものが挙げられる。図4(a)には、陸部の例として、内側ショルダー陸部16を示す。図4(a)に示されるように、タイヤ1から測定対象の内側ショルダー陸部16が2ピッチ以上のタイヤ周方向長さで切り出される。この際、主溝10の溝底10bを通ってトレッド部の接地面と平行な面PS1、及び、内側トレッド端Tiを通ってタイヤ半径方向に沿ってのびる面PS2で陸部試験片TPが切り出される(図4(b)に示す)。次に、この陸部試験片TPの接地面を平坦な試験面に例えば正規荷重で押し付けて接地状態を維持する。次に、試験面を、タイヤ周方向Y又はタイヤ軸方向Xに力Fで移動させ、各方向X又はYの陸部の変位が測定される。そして、前記力Fを陸部試験片TPの各方向の変位量でそれぞれ除して、各方向Y及びXの陸部剛性を求める。
好ましい態様では、タイヤ1は、例えば、台上試験(例えば、フラットベルト式のタイヤ試験機を用いた試験である。)において、下記の走行条件において、下記式(1)を満足するのが望ましい。
装着リム:正規リム
タイヤ内圧:正規内圧
タイヤに負荷する荷重:正規荷重の70%
速度:10km/h
スリップ角:0.7度
キャンバー角:−(マイナス)1.0度
SAT ≧ 0.18×L×CF …(1)
ここで、"SAT"はセルフアライニングトルク(N・m)、"L"はトレッド部のタイヤ周方向の接地最大長(m)、"CF"は、コーナリングフォース(N)である。また、キャンバー角の"マイナス"は、タイヤの上部が車両の中心側に向くような傾きを意味する。
上記測定条件は、四輪自動車で頻繁に発生する傾向がある旋回状態(横加速度0.2G程度)における前輪の状況に基づいている。発明者らは、四輪自動車に各種のセンサーを搭載して、上記旋回状態でのタイヤの状況(荷重、キャンバー角、スリップ角、及び、角度)を測定し、これを台上試験で近似させるものとして、上記走行条件を得た。従って、上記式(1)を満たすタイヤ1は、通常の旋回状態においてSATを確実かつ十分に大きく発生させることができる。即ち、旋回走行中の車両を、より速やかに公転走行状態に移行させることができる。
以下、上述の効果をさらに発揮させ得る本実施形態のさらに具体的な構成が説明される。
[内側ショルダー陸部の構成]
図5には、内側ショルダー陸部16及び内側ミドル陸部17の拡大図が示されている。図5に示されるように、内側ショルダー陸部16は、内側トレッド端Tiと内側ショルダー主溝11との間に形成されている。内側ショルダー陸部16は、例えば、トレッド幅TWの0.25〜0.35倍のタイヤ軸方向の幅W4を有している。
内側ショルダーラグ溝21は、内側トレッド端Tiからタイヤ軸方向内側にのび、かつ、内側ショルダー陸部16内で途切れているため、内側トレッド端Ti付近の剛性を適度に低下させ、ひいてはSATを高めることができる。
内側ショルダーラグ溝21は、例えば、他の溝と連なることなく内側ショルダー陸部16内で途切れている。内側ショルダーラグ溝21は、例えば、タイヤ軸方向に対して30〜50度の角度θ1で配されているのが望ましい。本実施形態の内側ショルダーラグ溝21は、例えば、タイヤ軸方向に対して一定の角度で傾斜するように直線状にのびている。
内側ショルダーラグ溝21のタイヤ軸方向の長さL1は、例えば、内側ショルダー陸部16のタイヤ軸方向の幅W4の0.70〜0.80倍であるのが望ましい。内側ショルダーラグ溝21の溝幅W5は、例えば、内側ショルダー主溝11の溝幅W1の0.30〜0.45倍であるのが望ましい。本実施形態では、溝幅W5が一定とされているが、変化しても良い。内側ショルダーラグ溝21の長さL1及び溝幅W5を規定した場合、内側ショルダー陸部16のタイヤ周方向剛性及びタイヤ軸方向剛性を、さらに好ましい範囲で低下させながら、良好なウェット性能を提供することができる。
図6(a)には、内側ショルダーラグ溝21のB−B線断面図が示されている。図6に示されるように、内側ショルダーラグ溝21は、例えば、内側トレッド端Tiと内側ショルダー主溝11との間の領域において、内側ショルダー主溝11側に向かって溝深さが漸減している。上述のように、内側ショルダー陸部16の剛性を下げるべく多くの内側ショルダーラグ溝21を配置した場合、走行中のポンピングノイズが大きくなる傾向がある。しかし、本実施形態のように、内側ショルダーラグ溝21のタイヤ軸方向の内端側の溝容積を大幅に減少させることにより、そのようなポンピングノイズの音圧を低下させることができる。特に好ましい態様では、内側ショルダーラグ溝21の内端での深さd1は、内側ショルダーラグ溝21の内側トレッド端Tiでの深さd2の40%〜60%であるのが望ましい。なお、内端の深さd2は、内側ショルダーラグ溝21の内端から、そのタイヤ軸方向の長さL1の25%の長さL2をタイヤ軸方向の外側に隔てた位置で測定されるものとする。
図5に示されるように、内側ショルダー陸部16のタイヤ周方向剛性及びタイヤ軸方向剛性を、好ましい範囲に低下させるために、内側ショルダーラグ溝21の本数(合計本数)N1は、例えば、80〜100の範囲であるのが望ましい。
内側ショルダー陸部16は、内側ショルダー主溝11と各内側ショルダーラグ溝21との間の内側ショルダーリブ状部23と、タイヤ周方向で隣り合う内側ショルダーラグ溝21間に区分された内側ショルダーブロック片24とを含んでいる。
内側ショルダーリブ状部23は、例えば、溝が設けられておらず、タイヤ周方向に連続してのびている。このような内側ショルダーリブ状部23は、内側ショルダー陸部16タイヤ軸方向内側領域でのタイヤ周方向剛性を高め、ひいては大きな等価CPを得るのに役立つ。内側ショルダーリブ状部23のタイヤ軸方向の幅W6は、例えば、内側ショルダー陸部16の幅W4の0.20〜0.30倍であるのが望ましい。
内側ショルダーブロック片24は、タイヤ周方向長さSbiを有している。本実施形態の内側ショルダーブロック片24のタイヤ周方向長さSbiは、例えば、内側ショルダー陸部16のタイヤ1周長さの0.9%〜1.2%であるのが望ましい。より望ましい態様では、内側ショルダーブロック片24は、一定のタイヤ周方向長さSbiでタイヤ軸方向に斜めにのびている。
内側ショルダー陸部16は、例えば、75〜85%のランド比を有しているのが望ましい。本明細書において、「ランド比」とは、対象となる陸部に設けられた溝を全て埋めた仮想接地面の全面積Saに対する、実際の陸部の合計接地面積Sbの比Sb/Saとして定義される。
[ミドル陸部の構成]
図2に示されるように、本実施形態の内側ミドル陸部17及び外側ミドル陸部19は、それぞれ、トレッド幅TWの0.10〜0.20倍のタイヤ軸方向の幅W7及びW8を有する。本実施形態では、W7=W8とされているが、W7<W8とされても良い。
図3に示した発明者らの種々の実験の結果、さらに大きなSATを発生させるために、外側ミドル陸部19のタイヤ周方向剛性及びタイヤ軸方向剛性も、SATへの寄与が大きく、それらを内側ミドル陸部17よりも高めることで、上記とほぼ同様のメカニズムでSATを増加させることを知見した。
好ましい態様では、外側ミドル陸部19は、タイヤ周方向剛性及びタイヤ軸方向剛性に関し、内側ミドル陸部17と同じかそれよりも大きく形成されている。本実施形態では、外側ミドル陸部19は、タイヤ周方向剛性及びタイヤ軸方向剛性に関し、内側ミドル陸部17よりも大きく形成されている。この場合、典型的な態様では、外側ミドル陸部19は、例えば、内側ミドル陸部17よりも大きいランド比を有する。
好ましい態様では、SATをより大きく発生させながら偏摩耗の発生を防止するために、タイヤ周方向剛性に関し、外側ミドル陸部19は、内側ミドル陸部17の1.05〜1.40倍の剛性比σ3を有するのが望ましい。同様に、タイヤ軸方向剛性に関し、外側ミドル陸部19は、内側ミドル陸部17の1.05〜1.40倍の剛性比σ4を有するのが望ましい。以下に、上記のような剛性差を実現しうる具体的なパターンの構成が説明される。
[内側ミドル陸部の構成]
図5に示されるように、内側ミドル陸部17には、上述の内側ミドルラグ溝22が設けられている。内側ミドルラグ溝22は、内側ミドル陸部17に形成されるリブ状部と、内側ショルダーリブ状部23とを離れさせることができ、ひいてはSATを高めるのに役立つ。
内側ミドルラグ溝22は、例えば、他の溝と連なることなく内側ミドル陸部17内で途切れている。内側ミドルラグ溝22は、例えば、タイヤ軸方向に対して、内側ショルダーラグ溝21よりも小さい角度θ2(図示省略)でのびている。内側ミドルラグ溝22の前記角度θ2は、例えば、0〜10度が望ましく、本実施形態では、タイヤ軸方向に沿って直線状にのびている(角度θ2=0度)。このような内側ミドルラグ溝22は、内側ミドル陸部17のタイヤ軸方向の剛性を十分に維持し、とりわけタイヤ1が車両の後輪に装着されたとき、大きな等価CPを提供することができる。
内側ミドルラグ溝22のタイヤ軸方向の長さL3は、例えば、内側ミドル陸部17の前記幅W7の0.45〜0.55倍であるのが望ましい。内側ミドルラグ溝22の溝幅W9は、例えば、内側ショルダーラグ溝21の溝幅W5(図5に示す)と同じで構成されているが、異なるものでも良い。図6(b)には、図5の内側ミドルラグ溝22のC−C線断面図が示されている。図6(b)に示されるように、内側ミドルラグ溝22の深さd4は、例えば、クラウン主溝13の溝深さd3の0.20〜0.90倍程度が望ましい。
図5に示されるように、内側ミドルラグ溝22の本数N2は、内側ショルダーラグ溝21の本数N1の好ましくは0.65倍以上、より好ましくは0.70倍以上であり、好ましくは0.85倍以下、より好ましくは0.80倍以下である。これにより、ウェット性能を維持しつつSATを高めることができる。
内側ミドル陸部17は、例えば、クラウン主溝13と各内側ミドルラグ溝22との間の内側ミドルリブ状部26と、タイヤ周方向で隣り合う内側ミドルラグ溝22間に区分された内側ミドルブロック片27とを含んでいる。
内側ミドルリブ状部26は、例えば、溝が設けられておらず、タイヤ周方向に連続してのびている。このような内側ミドルリブ状部26は、内側ミドル陸部17のタイヤ赤道C側の剛性を高め、ひいてはSATを高めることができる。
内側ミドルブロック片27は、タイヤ周方向長さMbiを有している。内側ミドルブロック片27のタイヤ周方向長さMbiは、上述のように溝本数N2が設定されることで、例えば、内側ミドル陸部17のタイヤ1周長さの0.9%〜1.5%程度とされる。
内側ミドル陸部17は、例えば、75〜85%のランド比を有しているのが望ましい。このような内側ミドル陸部17は、ウェット性能と操縦安定性とをバランス良く高めることができる。
[外側ショルダー陸部の構成]
図7には、外側ショルダー陸部18の拡大図が示されている。図7に示されるように、外側ショルダー陸部18は、外側トレッド端Toと外側ショルダー主溝12と間に形成されている。外側ショルダー陸部18は、例えば、トレッド幅TWの0.25〜0.35倍のタイヤ軸方向の幅W10を有している。望ましい態様として、本実施形態の外側ショルダー陸部18は、内側ショルダー陸部16(図5に示す)と同一の幅で構成されている。
外側ショルダー陸部18には、例えば、複数の外側ショルダーラグ溝28が設けられている。各外側ショルダーラグ溝28は、例えば、外側トレッド端Toからタイヤ軸方向内側にのび、かつ、外側ショルダー陸部18内で途切れている。望ましい態様では、外側ショルダーラグ溝28は、他の溝と連通することなく、外側ショルダー陸部18内で途切れている。本実施形態では、各外側ショルダーラグ溝28が同一の形状を有しているが、このような態様に限定されるものではない。
外側ショルダーラグ溝28は、例えば、タイヤ軸方向に対して内側ショルダーラグ溝21(図5に示され、以下、同様である。)よりも小さい角度θ3(図示省略)でのびている。前記角度θ3は、例えば、0〜10度が望ましい。本実施形態では、外側ショルダーラグ溝28がタイヤ軸方向に沿って直線状にのびており、角度θ3=0度である。外側ショルダーラグ溝28は、とりわけ外側ショルダー陸部18のタイヤ軸方向剛性を内側ショルダー陸部16よりも効果的に大きくし、ひいてはSATを大きくできる。
外側ショルダーラグ溝28のタイヤ軸方向の長さL4は、内側ショルダーラグ溝21のタイヤ軸方向の長さL1(図5に示す)よりも小さいのが望ましい。例えば、外側ショルダーラグ溝28の前記長さL4は、内側ショルダーラグ溝21の前記長さL1の0.90〜0.98倍であるのが望ましい。このような外側ショルダーラグ溝28は、外側ショルダー陸部18のタイヤ周方向の剛性も相対的に高め、ひいてはSATを高めることができる。
外側ショルダーラグ溝28の溝幅W11は、例えば、外側ショルダー主溝12の溝幅W2の0.30〜0.50倍であるのが望ましい。本実施形態では、前記溝幅W11は、一定とされているが、溝の長手方向に変化しても良い。
図8には、外側ショルダーラグ溝28のD−D線断面図が示されている。図8に示されるように、外側ショルダーラグ溝28は、例えば、外側トレッド端Toからタイヤ軸方向内側に向かって溝深さが漸減している。このような外側ショルダーラグ溝28は、走行中のポンピングノイズを低減させるのに役立つ。上述の効果をさらに高めるために、外側ショルダーラグ溝28の内端での深さd5は、外側ショルダーラグ溝28の外側トレッド端Toでの深さd6の40%〜60%と溝容積を大きく変化させることが望ましい。なお、内端の深さd5は、外側ショルダーラグ溝28の内端から、そのタイヤ軸方向の長さL4の25%の長さL5をタイヤ軸方向の外側に隔てた位置で測定されるものとする。
図7に示されるように、外側ショルダー陸部18に設けられた外側ショルダーラグ溝28の本数(合計本数)N3は、例えば、内側ショルダーラグ溝21の本数N1よりも小であることが望ましい。外側ショルダーラグ溝28の本数N3は、55〜75の範囲であり、かつ、前記本数N1の0.5〜0.7倍の範囲であるのが望ましい。内側ショルダーラグ溝21の本数N1と外側ショルダーラグ溝28の本数N3とに差を設けることにより、外側ショルダー陸部18のタイヤ周方向剛性及びタイヤ軸方向剛性を、内側ショルダー陸部16に比して相対的に高めることができ、ひいては高いSATが得られる。
外側ショルダー陸部18は、例えば、外側ショルダー主溝12と各外側ショルダーラグ溝28との間の外側ショルダーリブ状部29と、タイヤ周方向で隣り合う外側ショルダーラグ溝28間に区分された外側ショルダーブロック片30とを含んでいる。
外側ショルダーリブ状部29は、例えば、溝が設けられておらず、タイヤ周方向に連続してのびている。このような外側ショルダーリブ状部29は、外側ショルダー陸部18のタイヤ周方向剛性を効果的に高めることができる。
外側ショルダーリブ状部29は、例えば、内側ショルダーリブ状部23(図5に示す)よりも大きいタイヤ軸方向の幅W12を有しているのが望ましい。外側ショルダーリブ状部29の前記幅W12は、例えば、内側ショルダーリブ状部23の幅W6の1.10〜1.20倍であるのが望ましい。これにより、外側ショルダー陸部18が内側ショルダー陸部16よりも相対的に高い剛性を有し、ひいては高いSATを発生させることができる。
外側ショルダーブロック片30は、タイヤ周方向長さSboを有している。本実施形態では、外側ショルダーブロック片30のタイヤ周方向長さSboは、内側ショルダーブロック片24のタイヤ周方向長さSbiよりも大きく形成されている。好ましい態様では、内側ショルダーブロック片24と外側ショルダーブロック片30とのタイヤ周方向長さの比Sbi/Sboは、例えば、0.6〜0.9の範囲とされる。これにより、高いSATが得られ、ひいては優れた旋回性能が得られる。
同様の観点から、外側ショルダー陸部18は、例えば、内側ショルダー陸部16よりも大きいランド比を有するのが望ましい。外側ショルダー陸部18のランド比は、例えば、内側ショルダー陸部16のランド比の1.05〜1.10倍の範囲にあるのが望ましい。
[外側ミドル陸部の構成]
図9には、外側ミドル陸部19の拡大図が示されている。図9に示されるように、外側ミドル陸部19には、例えば、複数の外側ミドルラグ溝32が設けられている。各外側ミドルラグ溝32は、例えば、外側ミドル陸部19の内側トレッド端Ti側のエッジから外側トレッド端Toに向かってのび、かつ、外側ミドル陸部19内で途切れている。望ましい態様では、外側ミドルラグ溝32は、他の溝に連通することなく、外側ミドル陸部19内で途切れている。
外側ミドルラグ溝32は、例えば、タイヤ軸方向に対して内側ショルダーラグ溝21よりも小さい角度θ3(図示省略)でのびている。外側ミドルラグ溝32の前記角度θ3は、例えば、0〜10度が望ましく、本実施形態では、外側ミドルラグ溝32がタイヤ軸方向に沿って直線状にのびている(角度θ3=0度)。
各外側ミドルラグ溝32は、例えば、内側ミドルラグ溝22よりも小さいタイヤ軸方向の長さL6を有しているのが望ましい。外側ミドルラグ溝32の前記長さL6は、例えば、内側ミドルラグ溝22の長さL3の0.70〜0.80倍であるのが望ましい。図10には、外側ミドルラグ溝32のE−E線断面図が示されている。図10に示されるように、外側ミドルラグ溝32の溝深さd7は、例えば、内側ミドルラグ溝22の溝深さd4(図6(b)に示す)よりも小さいのが望ましい。
図9に示されるように、外側ミドル陸部19に設けられた外側ミドルラグ溝32の本数(合計本数)N4は、例えば、内側ミドルラグ溝22の前記本数N2よりも小であるのが望ましく、とりわけ、前記本数N2の0.5〜0.7倍の範囲であるのが望ましい。このような外側ミドルラグ溝32は、外側ミドル陸部19の剛性を相対的に高め、高いSATを提供することができる。
外側ミドル陸部19は、例えば、外側ショルダー主溝12と各外側ミドルラグ溝32との間の外側ミドルリブ状部33と、タイヤ周方向で隣り合う外側ミドルラグ溝32間に区分された外側ミドルブロック片34とを含んでいる。
外側ミドルリブ状部33は、例えば、溝が設けられておらず、タイヤ周方向に連続してのびているのが望ましい。このような外側ミドルリブ状部33は、高い剛性を有し、ひいては高いSATを提供することができる。同様の観点から、外側ミドルリブ状部33は、例えば、内側ミドルリブ状部26よりも大きいタイヤ軸方向の幅W14を有しているのが望ましい。
外側ミドルブロック片34は、タイヤ周方向長さMboを有している。望ましい態様では、上述のように溝本数N4が設定されることで、外側ミドルブロック片34のタイヤ周方向長さMboは、内側ミドルブロック片27のタイヤ周方向長さMbiよりも大きく形成されるのが望ましい。特に好ましい態様では、内側ミドルブロック片27と外側ミドルブロック片34とのタイヤ周方向長さの比Mbi/Mboは、好ましくは0.7〜0.9の範囲とされる。これにより、内側ミドル陸部17と外側ミドル陸部19との剛性バランスがさらに高められる。
[他の実施形態]
図11には、本発明の他の実施形態のタイヤ1の内側ショルダー陸部16の拡大図が示されている。図11において、上述の実施形態と共通する要素には、同一の符号が付されており、ここでの説明は省略されている。
この実施形態の内側ショルダー陸部16には、内側ショルダーラグ溝21に連なることなくのびる複数の内側ショルダーサイプ35が設けられている。このような内側ショルダーサイプ35は、内側ショルダー陸部16の剛性を適度に低下させ、ひいてはSATを高めることができる。また、内側ショルダーサイプ35は、内側ショルダー陸部16が接地面と接触するときの打音を低下させ、優れたノイズ性能を発揮し得る。なお、本明細書において、「サイプ」とは、幅が0.8mm以下の切れ込みとして定義され、これよりも大きい幅を有する「溝」とは区別される。
内側ショルダーサイプ35は、内側ショルダー陸部16内で途切れるタイヤ軸方向の内端35iを有しているのが望ましい。また、内側ショルダーサイプ35は、内側ショルダー陸部16内で途切れるタイヤ軸方向の外端35oを有しているのが望ましい。望ましい態様では、内側ショルダーサイプ35は、他のサイプや溝に連通することなく、内側ショルダー陸部16内で途切れている。このような内側ショルダーサイプ35は、内側ショルダー陸部16の偏摩耗を抑制しつつ、上述の効果を得ることができる。
耐偏摩耗性能と旋回性能とをバランス良く高めるために、内側ショルダーサイプ35のタイヤ軸方向の長さL7は、例えば、内側ショルダー陸部16の幅W4の0.65〜0.80倍であるのが望ましい。
以上、本発明の一実施形態の空気入りラジアルタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
図2の基本パターンを有するサイズ205/55R16のタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、内側ショルダーラグ溝の本数と内側ミドルラグ溝の本数とが同一であるタイヤが試作された。各テストタイヤについて、各種の試験が行われた。
[台上試験]
フラットベルト式のタイヤ試験機を使用して、下記の条件で、SAT、トレッド部のタイヤ周方向の接地最大長L及びCFが測定され、各テストタイヤが下記式(1)を満たすかどうかについて調査された。
装着リム:16×6.5JJ
タイヤ内圧:220kPa
速度:10km/h
スリップ角:0.7度
キャンバー角:−1.0度
タイヤの荷重:正規荷重の70%
SAT ≧ 0.18×L×CF …(1)
<旋回性能>
排気量2000ccのFF乗用車の四輪に、テストタイヤが装着され、ドライバー1名乗車で、ドライ路面上を旋回走行させ、そのときの旋回性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点である。数値が大きい程、旋回操舵中に車体が速やかに公転走行状態に移行したことを示す。
<ウェット性能>
上記テスト車両で、水深5mmかつ長さ20mの水たまりが設けられた半径100mのアスファルト路面を走行し、前輪の横加速度(横G)が計測された。結果は、速度50〜80km/hの平均横Gであり、比較例1の値を100とする指数で示されている。数値が大きい程、ウェット性能が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
テストの結果、実施例のタイヤは、ウェット性能を維持しつつ優れた旋回性能を発揮しているのが確認できた。
2 トレッド部
6 カーカス
7 ベルト層
10 主溝
15 周方向陸部
16 内側ショルダー陸部
17 内側ミドル陸部
21 内側ショルダーラグ溝
22 内側ミドルラグ溝

Claims (11)

  1. ラジアル構造のカーカスと、前記カーカスの外側に配された少なくとも2枚のベルトプライからなるベルト層と、車両への装着の向きが指定されたトレッドパターンが形成されたトレッド部とを含む乗用車用の空気入りラジアルタイヤであって、
    前記トレッド部は、車両装着時にそれぞれ車両の外側及び車両の内側に位置する外側トレッド端及び内側トレッド端を有し、
    前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝によって、複数の周方向陸部に区分されており、
    前記周方向陸部は、前記内側トレッド端を含む内側ショルダー陸部と、前記内側ショルダー陸部に隣接する内側ミドル陸部とを含み、
    前記内側ショルダー陸部には、前記内側トレッド端からタイヤ軸方向内側にのび、かつ、前記内側ショルダー陸部内で途切れる複数の内側ショルダーラグ溝が設けられており、
    前記内側ミドル陸部には、前記内側トレッド端側のエッジから前記外側トレッド端側にのび、かつ、前記内側ミドル陸部内で途切れる複数の内側ミドルラグ溝が設けられており、
    前記内側ショルダーラグ溝の本数は、前記内側ミドルラグ溝の本数よりも大である空気入りラジアルタイヤ。
  2. 前記内側ミドルラグ溝の本数は、前記内側ショルダーラグ溝の本数の0.70〜0.80倍である請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
  3. 前記内側ショルダーラグ溝のタイヤ軸方向の長さは、前記内側ショルダー陸部のタイヤ軸方向の幅の0.70〜0.80倍である請求項1又は2記載の空気入りラジアルタイヤ。
  4. 前記内側ショルダーラグ溝は、タイヤ軸方向に対して30〜50度の角度で配されている請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
  5. 前記内側ショルダーラグ溝は、タイヤ軸方向内側に向かって深さが漸減している請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
  6. 前記内側ショルダー陸部には、前記内側ショルダーラグ溝に連なることなくのびる複数の内側ショルダーサイプが設けられている請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
  7. 前記内側ショルダーサイプは、前記内側ショルダー陸部内で途切れるタイヤ軸方向の内端を有する請求項6記載の空気入りラジアルタイヤ。
  8. 前記内側ショルダーサイプは、前記内側ショルダー陸部内で途切れるタイヤ軸方向の外端を有する請求項6又は7記載の空気入りラジアルタイヤ。
  9. 前記内側ミドルラグ溝は、タイヤ軸方向に沿ってのびている請求項1乃至8のいずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
  10. 前記トレッド部は、4本又は5本の前記周方向陸部に区分されている請求項1乃至9のいずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
  11. 下記の走行条件において、下記式(1)を満足する請求項1乃至10のいずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
    装着リム:正規リム
    タイヤ内圧:正規内圧
    タイヤに負荷する荷重:正規荷重の70%
    速度:10km/h
    スリップ角:0.7度
    キャンバー角:−(マイナス)1.0度
    SAT ≧ 0.18×L×CF …(1)
    ここで、"SAT"はセルフアライニングトルク(N・m)、"L"はトレッド部のタイヤ周方向の接地最大長(m)、"CF"は、コーナリングフォース(N)である。
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