JP2019043014A - 複合吸音材 - Google Patents

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Abstract

【課題】低周波数〜中周波数の広い領域において、高い吸音性を有し、低目付でも吸音効果の高い、薄くて軽量な吸音材の提供。
【解決手段】平均繊維径0.3〜7μm、目付け1〜40g/mのメルトブロー極細繊維層を少なくとも1層含む不織布面材と、連続気泡樹脂発泡体層とを接合してなる複合吸音材であって、該複合吸音材の厚みが5〜50mm、目付けが50〜475g/m未満であり、かつ、JIS−1405に準拠する垂直入射の測定法において該不織布面材側から入射する音の周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzにおける該複合吸音材の吸音率がいずれも40%以上であることを特徴とする前記複合吸音材。
【選択図】なし

Description

本発明は、複合吸音材に関する。より詳しくは、本発明は、不織布面材と連続気泡樹脂発泡体層とを接合させた複合吸音材であって、低周波数〜中周波数、特に周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzの吸音性に優れ、薄く、軽量であり、形態安定性にも優れる、特に自動車、住宅、家電製品、建設機械等における吸音材として好適な複合吸音材に関する。
車両等が走行する際には、車両に搭載されるエンジン及び駆動系からの騒音、走行中のロードノイズ、風切り音などの、種々の騒音が発生する。これらの騒音が搭乗員に不快感を与えないように、エンジンフード、ダッシュパネル、天井材、ドアトリム、キャブフロア等の壁面には、騒音対策として吸音材が使用されている。
吸音材としては、不織布、樹脂発泡体などの多孔質材からなる吸音材、かかる吸音材と、通気性のある不織布、樹脂膜などの表皮層とを積層一体化した積層構造体が知られている。
以下の特許文献1には、嵩密度0.013〜0.05g/cmのメルトブロー極細繊維不織布を用いた防音シート材料が開示されている。しかしながら、この防音シート材料には、厚みの変形が生じ易く、取扱性に劣り、耐熱性が不足するなどの問題がある。
以下の特許文献2には、メルトブロー極細繊維層と合繊繊維層との積層不織布からなる表面材と、嵩密度0.005〜0.15g/cmの粗な構造をもつ合繊繊維不織布裏面材とからなる吸音材が開示されているが、裏面材の合繊繊維不織布を粗にすべく繊維径10〜30μmの繊維を使用しているため、低周波数領域の吸音性が悪い。
以下の特許文献3には、特許文献2と同様にメルトブロー極細繊維層と合繊繊維層との積層不織布からなる表面材と、嵩密度0.4〜0.8g/cmの比較的密な構造をもつ合繊繊維不織布裏面材とからなる吸音材が開示されているが、合繊繊維不織布裏面材が密な構造を有するため、通気性が悪化し、中周波数より高い領域の吸音性が悪い。
以下の特許文献4には、特許文献2、3と同様にメルトブロー極細繊維層と合繊繊維層との積層不織布からなる表面材と、嵩密度0.05〜0.5g/cmの合繊繊維不織布裏面材とからなる周波数の比較的広い範囲の音に対して高い吸音効果が得られる吸音材が開示されている。しかしながら、特許文献4に記載の吸音材では、周波数1000〜4000Hz音の吸音率を向上させようとすると吸音材の目付を475g/m以上、厚みを30mm以上とする必要がある。
このように、不織布の多孔質材やその積層構造体だけでは、車両用途で求められる取り扱い性、広い周波数範囲での吸音性、及び軽量化を両立することは実現できていない。
以下の特許文献5には、連続気泡樹脂発泡樹脂体としての軟質ウレタンフォームと、表皮に微細孔を有する合成樹脂層とからなる吸音材が開示されている。しかしながら、表皮の樹脂層は、吸音に寄与せず、極細繊維層ほどの緻密性は確保できていない。
以下の特許文献6には、連続気泡樹脂発泡樹脂体としてのメラミン系樹脂発泡体と、微細孔を有するフィルム層とからなる吸音材が開示されている。しかしながら、特許文献5と同様に、かかるフィルム層は吸音に寄与せず、極細繊維層ほどの緻密性は確保できていない。
特開平06−212546号公報 特許第4574262号公報 特開2010−128005号公報 特許第4919881号公報 特開2008−146001号公報 特開2010−196421号公報
前記した従来技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、低周波数〜中周波数の広い領域、具体的には、1000〜4000Hzの周波数領域において、高い吸音性を有し、低目付でも吸音効果が高く、薄く、軽量であり、さらに形態安定性に優れる吸音材を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、特定の不織布面材と特定の連続気泡樹脂発泡層とを組み合わせた複合吸音材とすれば、低周波数〜中周波数の広い領域において、高い吸音性が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]平均繊維径0.3〜7μm、目付け1〜40g/mのメルトブロー極細繊維層を少なくとも1層含む不織布面材と、連続気泡樹脂発泡体層とを接合してなる複合吸音材であって、該複合吸音材の厚みが5〜50mm、目付けが50〜475g/m未満であり、かつ、JIS−1405に準拠する垂直入射の測定法において該不織布面材側から入射する音の周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzにおける該複合吸音材の吸音率がいずれも40%以上であることを特徴とする前記複合吸音材。
[2]前記不織布面材が、平均繊維径0.3〜7μm、目付け1〜40g/mのメルトブロー極細繊維層(M)と平均繊維径10〜30μmの連続長繊維層(S)とが熱圧着により一体化されたSM型又はSMS型の積層構造を有する積層不織布であり、該積層不織布の目付けが20〜250g/m、通気度が100cc/cm/sec以下である、前記[1]に記載の複合吸音材。
[3]前記不織布面材を構成する不織布層が2層以上ある場合、前記連続気泡樹脂発泡体層と接する前記不織布面材の層が、該不織布面材の他層を構成する繊維の融点よりも30℃以上低い融点を有する繊維を含む、前記[1]又は[2]に記載の複合吸音材。
[4]前記連続気泡樹脂発泡体層の厚みが5〜50mm未満であり、嵩密度が0.01〜0.1g/cmである、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の複合吸音材。
本発明に係る複合吸音材は、1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzの低周波数〜中周波数領域において、高い吸音性を有しながらも、薄く、軽量であり、さらに形態安定性に優れるため、特に自動車、住宅、家電製品、建設機械等の吸音材として好適である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の複合吸音材は、平均繊維径0.3〜7μm、目付け1〜40g/mのメルトブロー極細繊維層を少なくとも1層含む不織布面材と、連続気泡樹脂発泡体層とを接合してなる複合吸音材であって、該複合吸音材の厚みが5〜50mm、目付けが50〜475g/m未満であり、かつ、JIS−1405に準拠する垂直入射の測定法において該不織布面材側から入射する音の周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzにおける該複合吸音材の吸音率がいずれも40%以上であることを特徴とする。
好ましい不織布面材は、平均繊維径0.3〜7μm、目付け1〜40g/mのメルトブロー極細繊維層(M)と平均繊維径10〜30μmの連続長繊維層(S)とが熱圧着により一体化されたSM型又はSMS型の積層構造を有する積層不織布であり、該積層不織布の目付けが20〜250g/m、通気度が100cc/cm/sec以下である。
本実施形態の複合吸音材の第一の特徴は、不織布面材が、極少量の通気性を有し、繊維構造的には小さな繊維空隙を有する緻密な構造であり、進入する音の波長が細孔中の摩擦抵抗で小さくなり、音が繊維空隙に進入するため、吸音特性が低周波領域にスライドし、低周波領域の吸音性が向上することである。つまり、本実施形態の不織布面材は、極細繊維層を少なくとも1層含むため、音の振動エネルギーを熱エネルギーに変換し、吸音適性領域が低周波領域にスライドする効果を有する。
本実施形態の複合吸音材の第二の特徴は、特定の嵩密度とした微細な骨格を持つ連続気泡樹脂発泡体を上記不織布面材とともに用いることで、不織布面材を透過した音が反射せずに、連続気泡樹脂発泡体内に容易に侵入すること、そして音が侵入する際、連続気泡樹脂発泡体の微細な骨格との摩擦や骨格の振動により、音が熱エネルギーに効率的に変換されることである。本実施形態の連続気泡樹脂発泡樹脂体の嵩密度は、好ましくは0.01〜0.1g/cmである。
不織布面材に少なくとも1層含まれるメルトブロー極細繊維層(M)を構成する繊維の平均繊維径は0.3〜7μm、好ましくは0.4〜5μm、さらに好ましくは、0.6〜2μmである。メルトブロー法で0.3μm未満の繊維径に紡糸するためには過酷な条件が必要となるため安定した繊維が得られない。他方、繊維径が7μmを超えると平均繊維径10〜30μmの連続長繊維層(S)を構成する繊維の平均繊維径に近くなり、連続長繊維層の隙間に微細繊維として入り込んで該隙間を埋める作用が奏されないため、緻密な構造が得られない。
不織布面材と、比較的密度が小さく、空隙の多い連続気泡樹脂発泡体層との複合においては、音源側に配置される不織布面材は、連続気泡樹脂発泡体層よりも緻密であることが要求されるが、過剰な全面熱圧着等で密度を高めることで緻密にする方法では、熱融着により繊維の表面積が低下し、音と繊維との間の摩擦による熱エネルギーへの変換効率が低下してしまう。それゆえ、不織布面材の緻密化は、より細い繊維により構成されるものとすることが望ましい。
不織布面材に少なくとも1層含まれるメルトブロー極細繊維層の目付は、低目付で充分な吸音性を得る観点から、1〜40g/mであり、好ましくは2〜25g/m、より好ましくは3〜20g/mである。
メルトブロー極細繊維層(M)及び連続長繊維層(S)の繊維素材としては、溶融紡糸法で繊維化できる熱可塑性合成樹脂が用いられる。熱可塑性合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートにフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールの1種又は2種以上の化合物を共重合した芳香族ポリエステル共重合体、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、D−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、これらのブレンド体から成る生分解性の脂肪族ポリエステルなどのポリエステル、共重合ポリアミド、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられる。熱可塑性合成樹脂としては、特に耐熱性、耐水性などに優れるポリエステル、ポリフェニレンサルファイドが好ましい。
PET又はその共重合体の場合には、メルトブロー極細繊維の溶液粘度(ηsp/c)は0.2〜0.8であることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.6である。また、PETのメルトブロー微細繊維は、他の合繊に比較して結晶化が遅く、低結晶の流動性のある状態で連続長繊維層の隙間に侵入できるため、連続長繊維層の繊維間隙を埋めて緻密な構造を形成することができる。
本実施形態の複合吸音材を構成する不織布面材の連続長繊維層の調製においては、延伸により充分な強力を発現させるため、紡糸速度等を適切な設定することが好ましい。例えば、PETの場合には、紡糸速度3000m/min以上で延伸紡糸することが好ましい。連続長繊維層(ウェブ)は、スパンボンド法により、摩擦帯電やコロナ帯電などにより糸条を均一に分散させて調製することが好ましい。このような方法によれば、未結合状態のウェブを形成しやすく、かつ、経済性に優れるものとなる。また、連続長繊維ウェブは単層でも複数を重ねた層でもよい。
連続長繊維層を構成する繊維の平均繊維径は、カバーリング性、強度、紡糸安定性等の点から、10〜30μmが好ましく、より好ましくは12〜25μmである。
連続長繊維層とメルトブロー極細繊維層の繊維断面の形状は、特に限定はないが、強度の観点からは、丸断面が好ましく、繊維の表面積の増加、微細空隙の形成の観点からは、偏平糸などの異型断面糸が好ましい。
不織布面材における連続気泡樹脂発泡体層と接する層は、不織布面材の他層を構成する繊維の融点よりも30℃以上低い融点を有する繊維を含むことが好ましい。
例えば、不織布面材と連続気泡樹脂発泡体層との間の接着性を良好に保つために、連続気泡樹脂発泡体層と接触する不織布面材の層を、低融点の繊維構成にすることもできる。低融点の繊維としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフイン繊維、ポリエチレンテレフタレートにフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオールの1種又は2種以上の化合物を共重合した芳香族ポリエステル共重合体、脂肪族エステルなどのポリエステル系繊維、共重合ポリアミドなどの合成繊維が挙げられる。これらの繊維は、単独でもよく、2種以上複合混繊してもよく、また、低融点と高融点繊維とを複合混繊してもよい。低融点の繊維としては、好ましくは、低融点成分を鞘部に有する、鞘芯構造の複合繊維が挙げられ、例えば、芯が高融点成分であるポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミドなどであり、鞘が低融点成分である低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレン、共重合ポリエステル、脂肪族エステルなどであるものである。
不織布面材の構成としては、メルトブロー極細繊維層(M)を少なくとも1層含むことが必要である。メルトブロー極細繊維層がないと、小さな繊維空隙を有する緻密な構造とすることができず、進入する音の波長が細孔中の摩擦抵抗で小さくなることでの吸音特性のコントロールができなくなる。不織布面材の構成としては、メルトブロー極細繊維層(M)1層でもよく、MM型、MMM型のように2層以上重ねてもよい。また、連続長繊維層(S)とともにSM型又はSMS型の積層構造としてもよい。目付低減の観点からは、M層又はMM層のようにメルトブロー極細繊維層のみで構成されている方がよく、強度、取り扱い性の観点からは、SM型又はSMS型のように連続長繊維層と積層されている構成がよい。
不織布面材を構成する各不織布層は、熱圧着で一体化されることが好ましく、例えば、公知のエンボスロールと平滑ロール間、又は平滑ロールと平滑ロール間で加熱、圧着して接合することが好ましい。加熱温度としては、例えば、熱圧着面に存在する繊維の融点より20〜150℃低い温度が好ましく、更に繊維の劣化やロール融着などの影響を緩和するために、上下ロール間の加熱温度に差を設けることもできる。熱圧着時の圧力は10〜1000kPa/cmが好ましく、より好ましくは50〜700kPa/cmである。熱圧着することにより、比較的緻密な積層不織布にすることができる。
不織布面材の目付けは、20〜250g/mであることが好ましく、より好ましくは50〜200g/mである。目付けが20g/m未満であると、不織布の均一性及び緻密性が低下し、小さな空隙が得られない。他方、目付けが250g/mを超えると、小さな空隙の緻密構造が得られるが、剛性が高くなり、裁断性、取扱性が低下し、さらにコスト高となる。
また、不織布面材の嵩密度は、0.1〜0.7g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.6g/cm、さらに好ましくは0.2〜0.55g/cmである。嵩密度が大きいと、繊維の充填密度が高くなり、小さな空隙の緻密構造となる。従って、嵩密度が0.1g/cm未満では、不織布の緻密性が低下し、音の減少する効果が低下する。他方、嵩密度が0.7g/cmを超えると、不織布の緻密性が高過ぎ、空隙が少なくなり、音の侵入が不十分となり、特に中周波数4000Hz付近の吸音率が低下し、また、加工性も低下する。
さらに、不織布面材の通気度は、100cc/cm/sec以下が好ましく、より好ましくは1〜50cc/cm/sec以下、さらに好ましくは0.5〜30cc/cm/secである。通気度が100cc/cm/secを超えると、進入する音の波長を小さくすることができず、音エネルギーの減少効果が得られない。
本実施形態の不織布面材は、吸音材の補強材として有効であると共に、これに、黒色などの印刷性、撥水性、難燃性などの表面機能を付与する加工を施すことができる。具体的には、染色、印刷などの着色加工、フッソ樹脂による撥水加工、燐系などの難燃剤による難燃加工が挙げられる。
連続気泡樹脂発泡体層の嵩密度は、0.01〜0.1g/cmが好ましく、より好ましくは0.02〜0.08g/cm、さらに好ましくは0.03〜0.05g/cmである。嵩密度が0.01g/cm未満であると吸音性が低下するため必要以上に厚みを厚くする必要がある。嵩密度が0.1g/cmを超えると、不織布面材を透過した音が連続気泡樹脂発泡体内に侵入しずらく、特に4000Hz以降の周波数の吸音率が低下し、また、耐摩耗性、加工性も低下する。
このように、連続気泡樹脂発泡体層と不織布面材とを組み合わせて、高い吸音性を有しながらも、薄く、軽量で、形態安定性に優れた吸音材とするためには、連続気泡樹脂発泡体層を特定の嵩密度とすることが望ましい。連続気泡樹脂発泡体の嵩密度は、不織布面材との組み合わせ前に公知の熱プレス機などで圧縮調整されていてもよく、自動車部材等に熱成型加工する際に不織布面材と一体成型することで圧縮調整されていてもよい。
連続気泡樹脂発泡体層の厚みは、5〜50mmが好ましく、より好ましくは10〜40mmである。連続気泡樹脂発泡体層の目付けは、10〜400g/mが好ましく、より好ましくは20〜300g/mである。厚みが5mm未満であり、かつ、目付けが10g/m未満であると、吸音性が不十分であり特に吸音低周波数の吸音率が低下する。他方、厚みが50mmを超え、目付けが400g/mを超えると、低周波数の吸音性は良くなるものの、吸音材のスペースが大きくなり、貼り合わせ加工性、取り扱い性、製品輸送性などが低下する。
連続気泡樹脂発泡体の素材としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられ、吸音性、柔軟性、軽量性等の観点から、軟質ウレタンフォームが好ましい。
本実施形態の複合吸音材は、前記した不織布面材(表面材)と粗な構造の連続気泡樹脂発泡体層(裏面材)とを接合一体化して得られる。表面材と裏面材の接合は、例えば、熱融着繊維を接合面に介在させ、熱処理する方法、ホットメルト系樹脂や接着剤を塗布した後、熱処理する方法、ホットメルト系樹脂をカーテンスプレー方式で塗布する方法などにより行うことができる。
接着剤を用いた接着方法においては、カーテンスプレー方式、ドット方式、スクリーン方式などにより、不織布面材にホットメルト系接着剤を2〜30g/mの割合で塗布し、不織布面材側から加熱して、塗布した接着剤を軟化、融解させて接着することができる。
不織布面材と連続気泡樹脂発泡体のとの間の接着力としては、0.1N/10mm以上が好ましく、より好ましくは0.2N/10mm〜5N/10mmである。接着力が0.1N/10mm未満であると、吸音材の裁断、輸送などの間に剥離するなどの問題が生じる。高い接着力を得るためには、不織布面材の接着面に低融点成分層を設けることが好ましく、更に、連続気泡樹脂発泡体にホットメルト系の接着剤を塗布することも好ましい。
本実施形態の複合吸音材の厚みは、5〜50mm、目付けは、50〜475g/m未満であり、好ましくは、厚みが7〜45mm、目付け60〜400g/mである。
本実施形態の複合吸音材の、JIS−1405に準拠する垂直入射の測定法において該不織布面材側から入射する音の周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzにおける吸音率は、いずれも40%以上であり、好ましくは50〜95%、より好ましくは60〜100%である。
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されると解釈させるべきではない。尚、各特性値は、下記の方法により測定した。
(1)目付け(g/m
JIS−1913に準拠した。
(2)平均繊維径(μm)
顕微鏡で500倍の拡大写真を取り、繊維10本の平均値で求めた。
(3)嵩密度(g/cm
(目付け)/(厚み)から算出し、単位容積あたりの重量を求めた。
(4)厚み(mm)
JIS−L−1913−B法に準拠した。荷重0.02kPaの圧力の厚みを3カ所以上測定し、その平均値を求めた。但し、不織布面材の厚みは、荷重20kPaで測定した。
(5)吸音率(%)
JIS−1405に準拠し、垂直の入射法の測定機を用いて周波数1000〜4000HZに亘りを測定した。
(6)通気性
JIS−L−1906に準拠したフラジュール法で測定した。
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)を紡糸口金から紡糸し、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブ(S1)を捕集ネット上に形成した。得られた連続長繊維ウェブ(目付け20.8g/m2、平均繊維径13μm)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルで、紡糸温度300℃、加熱空気320℃1000Nm3/hr条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付け8.4g/m2、平均繊維径1.7μm)を形成した。得られた極細繊維ウェブ上に、繊維ウェブ(S1)と同様にポリエチレンテレフタレートの連続長繊維ウェブ(S2)を形成した。次いで、得られた積層ウェブを、一対のエンボスロール/フラットロール温度230℃、線圧30N/mmで部分熱圧着し、目付け50g/m2、嵩密度0.22g/cm3、部分熱圧着面積率11%の不織布面材を得た。
連続気泡樹脂発泡体層として、厚さ30mm、目付け69g/m2、嵩密度0.023g/cm3の軟質ウレタンフォーム(アキレス株式会社製、品種:低通気フォーム 品番:PPK)を用い、前記不織布面材と接合した。接合は、不織布面材と連続気泡樹脂発泡体層とを共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を20g/mの割合で塗布し、加熱処理して行った。得られた複合吸音材の各種物性を以下の表1に示す。
[実施例2]
不織布面材の部分熱圧着面積率を15%、嵩密度0.28g/cm3に代えた以外は、実施例1と同様に複合吸音材を得た。得られた複合吸音材の各種物性を以下の表1に示す。
[実施例3]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)を紡糸口金から紡糸し、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブ(S1)を捕集ネット上に形成した。得られた連続長繊維ウェブ(目付け20.0g/m2、平均繊維径13μm)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルで、紡糸温度330℃、加熱空気370℃1300Nm3/hr条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付け40g.0/m2、平均繊維径0.8μm)を形成した。得られた極細繊維ウェブ上に、繊維ウェブ(S1)と同様にポリエチレンテレフタレートの連続長繊維ウェブ(S2)を形成した。得られた積層ウェブを、一対のエンボスロール/フラットロール温度230℃、線圧30N/mmで部分熱圧着し、目付け80g/m2、嵩密度0.29g/cm3、熱圧着面積率15%の不織布面材を得た。
連続気泡樹脂発泡体層として、厚さ30mm、目付け69g/m2、嵩密度0.023g/cm3の軟質ウレタンフォーム(アキレス株式会社製、品種:低通気フォーム 品番:PPK)を130℃の熱プレスによって、厚み15mm、嵩密度:0.46g/cm3に圧縮した物を用い、前記不織布面材と接合した。接合は、不織布面材と連続気泡樹脂発泡体層とを共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を20g/mの割合で塗布し。加熱処理して行った。得られた複合吸音材の各種物性を以下の表1に示す。
[実施例4]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)を紡糸口金から紡糸し、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブ(S1)を捕集ネット上に形成した。得られた連続長繊維ウェブ(目付け15.3g/m2、平均繊維径13μm)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルで、紡糸温度300℃、加熱空気320℃1000Nm3/hr条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付け9.4g/m2、平均繊維径1.7μm)を形成した。次いで、2成分紡糸口金を用いて、鞘成分が共重合ポリエステル樹脂(融点160℃)であり、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点263℃)である糸条を紡糸し、連続長繊維ウェブ(S2)(目付け15.3g/m2、平均繊維径13μm)を形成した。得られた積層ウェブを、一対のエンボスロール/フラットロール温度230/145℃、線圧30N/mmで部分熱圧着し、目付け40g/m2、嵩密度0.22g/cm3、熱圧着面積率11%の不織布面材を得た。
連続気泡樹脂発泡体として、厚さ30mm、目付け69g/m2、嵩密度:0.023g/cm3の軟質ウレタンフォーム(アキレス株式会社製、品種:低通気フォーム 品番:PPK)を用い、前記積層不織布面材と熱プレスにより接合した。接合の際、連続気泡樹脂発泡体層が、厚さ20mm、嵩密度0.046g/cm3となるように、150℃で熱プレスした。得られた複合吸音材の各種物性を以下の表1に示す。
[比較例1]
実施例1、2で用いた厚さ30mm、目付け69g/m2、嵩密度0.023g/cm3の軟質ウレタンフォーム(アキレス株式会社製、品種:低通気フォーム 品番:PPK)単体での各種物性を以下の表1に示す。軟質ウレタンフォーム単体では、特に周波数1600Hz以下の吸音率が低かった。
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)を紡糸口金から紡糸し、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブ(S1)を捕集ネット上に形成した。得られた連続長繊維ウェブ(目付け27.0g/m2、平均繊維径14μm)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルで、紡糸温度300℃、加熱空気320℃1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付け16g/m2、平均繊維径2μm)を形成した。得られた極細繊維ウェブ上に、繊維ウェブ(S1)と同様にポリエチレンテレフタレートの連続長繊維ウエブ(S2)を形成した。得られた積層ウェブを、一対のエンボスロール/フラットロール温度230℃、線圧30N/mmで部分熱圧着し、目付け70g/m2、嵩密度0.20g/cm3、熱圧着面積率12%の不織布面材を得た。
ポリエステル短繊維(繊維径25μm、繊維長51mm)70%と、共重合ポリエステル繊維(融点135℃、繊維径18μm、繊維長51mm)30%とを用い、公知のカード法でウェブを形成し、ニードルパンチ(NP)加工で交絡し、目付け150g/m2、嵩密度0.012g/cm3、厚み13mmとしたものを得た。これを、不織布面材に、共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を20g/mの割合で塗布し、加熱処理で接合した。得られた複合吸音材の各種物性を、以下の表1に示す。比較例2の複合吸音材は、連続気泡樹脂発泡体に代えて短繊維NP加工不織布を用いたものであったため、特に周波数2000Hz以下の吸音率が低かった。
[比較例3]
不織布面材の連続長繊維ウェブ(S1、S2)の目付けを、それぞれ、21g/m2、極細繊維ウエブ(M)の目付けを8g/m2とし、部分熱圧着面積率を25%とし、短繊維NP加工不織布の目付けを450g/m2、嵩密度を0.018g/cm3、厚みを25mmとしたこと以外は、比較例2と同様に複合吸音材を得た。得られた複合吸音材の各種物性を以下の表1に示す。比較例3の複合吸音材は、比較例2に比較して、短繊維NP加工不織布の目付け、厚みが増加しているため吸音性は向上したものの、複合吸音体の重量が重く(目付けが大きく)軽量性に劣っていた。
[比較例4]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)を紡糸口金から紡糸し、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブ(S1)を捕集ネット上に形成した。得られた連続長繊維ウェブ(目付け20g/m2、平均繊維径13μm)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルで、紡糸温度300℃、加熱空気320℃1000Nm3/hr条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付け15g/m、平均繊維径2μm)を形成した。得られた極細繊維ウェブ上に、繊維ウェブ(S1)と同様にポリエチレンテレフタレートの連続長繊維ウェブ(S2)を形成した。得られた積層ウェブを、一対のエンボスロール/フラットロール、温度225℃/215℃、圧力300N/cm部分熱圧着し、目付け55g/m、嵩密度0.25g/cm、部分熱圧着面積率25%の不織布面材を得た。
ポリエステル短繊維(繊維径17μm、繊維長51mm)60%と共重合ポリエステル短繊維(融点135℃、繊維径20μm、繊維長38mm)40%とを用いて、公知のカード法でウェブを形成し、ニードルパンチ加工で交絡し、目付け1000g/m、嵩密度0.04g/cm、厚み25mmの短繊維NP加工不織布を得た。不織布面材にポリアミド系ホットメルト接着剤(融点130℃)を20g/mの割合で塗布した後、20mmスペーサーを用いた熱板プレス機で、不織布面材側から温度160℃に加熱して、不織布面材と得られた短繊維NP加工不織布とを接着し、目付け1075g/m、嵩密度0.538g/cm、厚みが20mmの複合吸音材を得た。得られた複合吸音材の各種物性を以下の表1に示す。比較例4の複合吸音材は、比較例2、3に比較して、基材である短繊維NP加工不織布の目付又は厚みが増加しているため、1000Hz付近の低周波の吸音性は向上したものの、周波数2500Hz以上での吸音率が低かった。
[比較例5]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)を紡糸口金から紡糸し、スパンボンド法により、紡糸温度300℃で繊維ウェブ(S1)を捕集ネット上に形成した。得られた連続長繊維ウェブ(目付け40g/m2、平均繊維径12μm)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルで、紡糸温度300℃、加熱空気320℃1000Nm3/hr条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付け20g/m2、平均繊維径2μm)を形成した。次いで、2成分紡糸口金を用いて、鞘成分が共重合ポリエステル樹脂(融点160℃)であり、芯成分がポリエチレンテレフタレート(融点263℃)である糸条を紡糸し、連続長繊維ウェブ(S2)(目付け40g/m2、平均繊維径16μm)を形成した。得られた積層ウェブを、一対のエンボスロール/フラットロール温度230/145℃、線圧30N/mmで部分熱圧着し、目付け100g/m2、嵩密度0.25g/cm3、部分熱圧着面積率20%の不織布面材を得た。
ポリエステル短繊維(繊維径25μm、繊維長51mm)70%と、共重合ポリエステル繊維(融点135℃、繊維径15μm、繊維長51mm)30%を用いて公知のカード法によりウェブを形成し、ニードルパンチ加工で交絡し、目付け375g/m2、嵩密度0.013g/cm3、厚み30mmの短繊維NP加工不織布を得た。メッシュ状のコンベアベルトに挟み、温度150℃の雰囲気下で加熱、加圧の熱処理で接合し、目付け475g/m2、嵩密度が0.158g/cm3、厚みが30mmの複合吸音材を得た。得られた複合吸音材の各種物性を以下の表1に示す。比較例5の複合吸音材は、広い吸音性能を示すものの、吸音材としての重量は重かった(目付けが高かった)。
Figure 2019043014
本発明に係る複合吸音材は、1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzの低周波数〜中周波数領域において、高い吸音性を有しながらも、薄く、軽量で、形態安定性に優れているため、特に自動車部材、建築材料、家電製品、建設機械等の吸音材として好適に利用可能である。

Claims (4)

  1. 平均繊維径0.3〜7μm、目付け1〜40g/mのメルトブロー極細繊維層を少なくとも1層含む不織布面材と、連続気泡樹脂発泡体層とを接合してなる複合吸音材であって、該複合吸音材の厚みが5〜50mm、目付けが50〜475g/m未満であり、かつ、JIS−1405に準拠する垂直入射の測定法において該不織布面材側から入射する音の周波数1000Hz、1600Hz、2000Hz、2500Hz、3150Hz、及び4000Hzにおける該複合吸音材の吸音率がいずれも40%以上であることを特徴とする前記複合吸音材。
  2. 前記不織布面材が、平均繊維径0.3〜7μm、目付け1〜40g/mのメルトブロー極細繊維層(M)と平均繊維径10〜30μmの連続長繊維層(S)とが熱圧着により一体化されたSM型又はSMS型の積層構造を有する積層不織布であり、該積層不織布の目付けが20〜250g/m、通気度が100cc/cm/sec以下である、請求項1に記載の複合吸音材。
  3. 前記不織布面材を構成する不織布層が2層以上ある場合、前記連続気泡樹脂発泡体層と接する前記不織布面材の層が、該不織布面材の他層を構成する繊維の融点よりも30℃以上低い融点を有する繊維を含む、請求項1又は2に記載の複合吸音材。
  4. 前記連続気泡樹脂発泡体層の厚みが5〜50mm未満であり、嵩密度が0.01〜0.1g/cmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合吸音材。
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