JP2019040782A - 厚膜抵抗体組成物及びそれを含む厚膜抵抗ペースト - Google Patents
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Abstract
Description
チップ抵抗器の抵抗値の調整はレーザー光によって厚膜抵抗体の一部を切除するレーザートリミングによる方法が一般的である。しかし、レーザートリミングによる抵抗値の調整では、厚膜抵抗体の表面に切除跡が残る。そこで、切除跡を残さない厚膜抵抗体の抵抗値の調整方法として、レーザー光の照射により厚膜抵抗体の特性変化を起こさせることにより抵抗値を下げる方法や、パルス電圧を厚膜抵抗体に加えて抵抗値を下げる方法などがある。
その中で、高電圧パルスを厚膜抵抗体に加えて抵抗値を下げる方法は、パルストリミング法として知られている。特許文献1および2には、パルストリミング法に関する技術が開示されている。
今後更なる部品の小型化などによりこのような物理的な破壊を伴わない抵抗値の調整方法が今以上に必要になると考えられている。
このような状況に鑑み、本発明の課題は、厚膜抵抗体の抵抗値をパルストリミング法で効率的に調整できる厚膜抵抗体組成物を提供するものである。
この得られた厚膜抵抗体ペーストを、アルミナ基板等のセラミックス基板の表面に印刷するなどして厚膜抵抗体組成物を含有する印刷膜を形成し焼成して厚膜抵抗体を得ることができる。
以下、各構成要素について説明する。
本発明に係る厚膜抵抗体組成物に用いるガラスフリットは、軟化点が550℃以上、650℃以下である軟化点が低い方のガラスフリットLMと、そのガラスフリットLMの軟化点より200℃以上、350℃以下の範囲で高温の軟化点を示すガラスフリットHMの2種類のガラスフリットで構成されている。
ここで、ガラスフリットの軟化点は、ガラスフリットを示差熱分析法(TG−DTA)にて大気中で毎分10℃昇温、加熱し、得られた示差熱曲線の最も低温側の示差熱曲線の減少が発現する温度よりも高温側の次の示差熱曲線が減少するピークの温度とした。なお、本発明で用いるガラスフリットの軟化点は、ガラスフリットの成分組成により調整することが可能である。
また、このようなガラスマトリックス(LH)を形成することは、パルストリミングでの抵抗値調整と、最終的に得られる厚膜抵抗体に瞬間的に高い電力を印加した場合の耐久性である耐サージ性に影響する。すなわち、軟化点が低い方のガラスフリットLMの軟化点が550℃未満では、得られる厚膜抵抗体の耐サージ性が劣化する。一方、ガラスフリットLMの軟化点が650℃を超えると、軟化点が高い方のガラスフリットHMとの配合割合によっては、パルストリミング等でのガラスマトリックス(LH)の軟化が不十分で、パルストリミングでの抵抗値調整の幅が狭くなる場合がある。
このパルストリミング法ではパルス電圧のエネルギーにより厚膜抵抗体を構成するガラスマトリックスが再溶融または再軟化し抵抗値の変化につながっていると考えられ、パルス電圧の印加により厚膜抵抗体を構成するガラスマトリックスの溶融し易さが抵抗域による抵抗値変化率の大小に関係していると考えられる。
ガラスフリットLMを全ガラスフリット中で50質量%を超えて使用した場合は、耐サージに対して弱くなり、パルストリミングで抵抗値調整の後の安定性などが悪化する。耐サージ性の劣化は、厚膜抵抗体を構成するガラスマトリックス(LH)の軟化の影響である。厚膜抵抗体の耐サージ性向上を目的として、ガラスマトリックス(LH)の軟化を調整する為に、厚膜抵抗体組成物には、マトリックスよりも高い軟化点を示すガラスフリットHMが必要になる。
すなわち、軟化点が高い方のガラスフリットHMは、50質量%以上含有される。一方、全ガラスフリット中のガラスフリットLMの含有率が、15質量%未満では、ガラスフリットHMが多すぎて、パルストリミングでの抵抗値調整の幅が小さくなる。
次に、厚膜抵抗体組成物におけるルテニウム化合物粉末は、導電性成分として機能する。
このルテニウム化合物粉末には、二酸化ルテニウム粉末、ルテニウム酸鉛粉末やルテニウム酸ストロンチウム粉末のようなルテニウム複合酸化物粉末を用いることができる。
ルテニウム化合物粉末の各粒子の形状は特に限定しないが球形、楕円形、板状、針状などであってもよい。
厚膜抵抗体組成物では、ガラスフリットとルテニウム化合物粉末の配合割合で得られる厚膜抵抗体の抵抗値を調整している。厚膜抵抗体組成物に含まれるルテニウム化合物粉末の含有率が15質量%未満では、抵抗値が高くなりすぎる。一方、厚膜抵抗体組成物に含まれるルテニウム化合物粉末の含有率が35質量%を超えると、厚膜抵抗体の焼結面が緻密にならないので、厚膜抵抗体の機械強度が確保できない。
パルストリミング法を用いた抵抗値調整では、厚膜抵抗体に対してパルス電圧を印加することで、そのガラスマトリックス(LH)の再溶融や再軟化により、ルテニウム化合物粒子の存在する位置が変わり、ルテニウム化合物粒子の距離が縮まる等して導電ネットワークの再構築が行われると考えられる。このようなパルストリミング性を考慮して、ルテニウム化合物粉末の比表面積粒径を選択する。
一方、ルテニウム化合物粉末の比表面積粒径が100nmを超えると、厚膜抵抗体の表面粗さが大きくなる場合があり、発熱抵抗体には適さない場合がある。
本発明に係る厚膜抵抗体組成物は、軟化点の異なる2種類のガラスフリット、即ち軟化点が低い方のガラスフリットLMと、それより軟化点が高いガラスフリットHMを含み、さらにルテニウム化合物を含有する。また、厚膜抵抗体組成物には、厚膜抵抗体の電気特性の一つである抵抗温度係数を調整するなどの効果がある公知のTiO2粉末等を添加することもできる。
本発明で使用する有機ビヒクルは特定のものである必要はなく、厚膜抵抗ペーストを製造するのに一般に使用されるもので良い。乾燥及び焼成時の脱バインダーの際に揮発、分解して消失してしまうものが望ましい。下記の有機溶媒、たとえばエチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を用いることができる。
また、厚膜抵抗体組成物をビヒクルに分散させる為に、分散剤として、カルボキシル基やアミノ基を備えた高分子分散剤、ステアリン酸等の脂肪酸、レシチン等のリン脂質類を添加してもよい。
二酸化ルテニウム粉末、ガラスフリット、有機ビヒクル、有機溶媒は均一に分散させることが望ましい。方法についての限定はないが、公知の3本ロールによる分散方法が好適である。
得られた厚膜抵抗ペーストを、スクリーン印刷によりアルミナなどのセラミックス基板上に厚膜抵抗体のパターンを印刷し、乾燥と焼成を経て厚膜抵抗体を形成することができる。
ピーク温度800℃から900℃で焼成された厚膜抵抗体は、膜厚5μm〜20μmに調整されており、より好ましい膜厚は10μm〜15μmである。
なお、厚膜抵抗体の形成に先立ち、セラミックス基板の表面に厚膜抵抗体の端子となる電極を公知の厚膜技術で形成してもよい。
焼成して得られた厚膜抵抗体の抵抗値をパルストリミング法で調整する。
具体的には、1000V〜6000Vのパルス電圧を厚膜抵抗体に印加し、所定の抵抗値となるまで、パルス電圧を印加する。印加電圧は、厚膜抵抗体の抵抗値により適宜選択すればよい。パルス電圧1000V〜6000Vを逐次印加して印加前の抵抗値に対して印加後の抵抗値の変化率が−40%よりも少ない場合は、効率的な抵抗値調整は困難である。
本発明の実施例と比較例に使用したガラスフリットの組成を表1に示す。ガラスフリット(A)及び(B)は、軟化点が高い方のガラスフリットHMで、ガラスフリット(C)は、軟化点の低い方のガラスフリットLMである
ガラスフリット(A)は軟化点856℃で50%体積累計粒度(D50)が3.6μm、ガラスフリット(B)はガラスフリット(A)をボールミルで粉砕し50%体積累計粒度(D50)が1.4μm、ガラスフリット(C)は軟化点640℃で50%体積累計粒度(D50)が1.5μmであった。各ガラスフリットの50%体積累計粒度(D50)の測定は、マイクロトラックベル社製のマイクロトラック(登録商標)を使用して行った。
次に、表2および表3に示す割合の二酸化ルテニウム粉末とガラスフリットからなる厚膜抵抗体組成物100重量部に、表2および表3の重量部の有機ビヒクルと溶剤を加え、さらに必要に応じて溶剤のターピネオールを加えて3本ロールを使用してさらに混練し、実施例1から6と比較例1から7に係る厚膜抵抗ペーストを作製した。
さらに、実施例6の厚膜抵抗体5個に対し1Wから10Wまでの電力を印加し、初期抵抗値との変化率を算定し、耐サージ特性を確認した。
その結果を、表2に実施例の結果を示し、表3に比較例の結果を示す。
そのパルス電圧の印加前後の抵抗値から求めた抵抗値調整の幅(抵抗値変化率)の絶対値は34.2%で、本発明に係る実施例に比べ小さい結果である。
また、ガラスフリットに未粉砕の粒径の大きなガラスフリット(A)のみを使用した比較例2から6の抵抗値変化率は、わずかであったり(比較例2)、変化しなかったり(比較例3から5)、下がった比較例6でも−26.0%であり、本発明に係る実施例に比べ、その絶対値は小さく、抵抗値変化率が小さい結果である。
さらに、比較例7に示すように粉砕した軟化点856℃のガラスフリット(B)を単独で用いた場合は大きな抵抗値変化率は得られなかった。
印加電力に対してはマイナス領域に抵抗値変化率が変化することがなかった。マイナス領域に抵抗値変化率が変化する場合はガラスと導電フィラーなどが不均一であることによる影響が想定されるが、実施例6ではマイナス領域に抵抗値変化率が変化することはなく従来品と比べて遜色の無い結果であった。
Claims (5)
- ガラスフリットとルテニウム化合物粉末を含む厚膜抵抗体組成物であって、
前記ガラスフリットが、軟化点が550℃以上、650℃以下であるガラスフリットLMと、前記ガラスフリットLMの軟化点より200℃以上、350℃以下の範囲で高温の軟化点を示すガラスフリットHMを含み、
前記ガラスフリットLMと前記ガラスフリットHMの合計量に対し前記ガラスフリットLMを15質量%以上、50質量%以下含有し、
前記ルテニウム化合物粉末の比表面積粒径が30nm以上、100nm以下であることを特徴とする厚膜抵抗体組成物。 - 前記ルテニウム化合物粉末を、15質量%以上、35質量%以下、含むことを特徴とする請求項1に記載の厚膜抵抗体組成物。
- 前記ルテニウム化合物粉末が、二酸化ルテニウム粉末であることを特徴とする請求項1または2に記載の厚膜抵抗体組成物。
- 前記ガラスフリットの50%体積累計粒度が、20μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の厚膜抵抗体組成物。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載の厚膜抵抗体組成物と、有機溶剤に樹脂を溶解したビヒクルを含むことを特徴とする厚膜抵抗ペースト。
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