JP2019040782A - 厚膜抵抗体組成物及びそれを含む厚膜抵抗ペースト - Google Patents

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Abstract

【課題】 厚膜抵抗体の抵抗値をパルストリミング法で効率的に調整できる厚膜抵抗体組成物を提供する。【解決手段】 ガラスフリットとルテニウム化合物粉末を含む抵抗体組成物であって、前記ガラスフリットが、軟化点が550℃以上、650℃以下であるガラスフリットLMと、前記ガラスフリットLMの軟化点より200℃以上、350℃以下の範囲で高温の軟化点を示すガラスフリットHMを含み、前記ガラスフリットLMと前記ガラスフリットHMの合計量に対し前記ガラスフリットLMを15質量%以上、50質量%以下含有し、前記ルテニウム化合物粉末の比表面積粒径が30nm以上、100nm以下であることを特徴とする厚膜抵抗体組成物。【選択図】 図1

Description

本願発明は、チップ抵抗や厚膜抵抗基板、厚膜抵抗体ヒーターなどを作製する際に使用する厚膜抵抗体組成物に関する。
一般的にチップ抵抗器や厚膜抵抗体、厚膜抵抗体ヒーターなどは、たとえば基板にアルミナ基板を用い、電極に厚膜電極、抵抗には厚膜抵抗又は薄膜抵抗を用いている。これら抵抗器はその用途や特性によってさまざまな種類があり、装置の小型化に伴い抵抗器関連部品の小型化も急速に進んでいる。
さらに、チップ抵抗器の特性も、たとえば耐サージ、トリマブル品、高精度品など種々の製品が存在している。
チップ抵抗器の抵抗値の調整はレーザー光によって厚膜抵抗体の一部を切除するレーザートリミングによる方法が一般的である。しかし、レーザートリミングによる抵抗値の調整では、厚膜抵抗体の表面に切除跡が残る。そこで、切除跡を残さない厚膜抵抗体の抵抗値の調整方法として、レーザー光の照射により厚膜抵抗体の特性変化を起こさせることにより抵抗値を下げる方法や、パルス電圧を厚膜抵抗体に加えて抵抗値を下げる方法などがある。
これらのレーザー光によって特性変化を起こさせる方法や、パルス電圧を厚膜抵抗体に加えて抵抗値を下げる方法は、厚膜抵抗体の外観に物理的な破壊を与えない程度のエネルギーのレーザー光やパルス電圧を加えることで抵抗値が低くなることを利用した調整方法である。
その中で、高電圧パルスを厚膜抵抗体に加えて抵抗値を下げる方法は、パルストリミング法として知られている。特許文献1および2には、パルストリミング法に関する技術が開示されている。
今後更なる部品の小型化などによりこのような物理的な破壊を伴わない抵抗値の調整方法が今以上に必要になると考えられている。
特開2002−067366号公報 特開2002−127483号公報
ところで、厚膜抵抗体組成物の組成によっては、得られる厚膜抵抗体にパルストリミング法で抵抗値調整を試みても、抵抗値の調整、すなわち抵抗値の変化が十分ではない場合がある。
このような状況に鑑み、本発明の課題は、厚膜抵抗体の抵抗値をパルストリミング法で効率的に調整できる厚膜抵抗体組成物を提供するものである。
上記の課題を解決するため、導電材料に二酸化ルテニウム粉末とガラスフリット有機ビヒクルと混合されてなる抵抗体ペーストであって、耐サージ特性を満たすために軟化点がペーストの焼成温度より高いガラスフリットとパルス電圧を加えた時に適切な抵抗変化量の厚膜抵抗体を得るために、その軟化点がペーストの焼成温度より低いガラスフリットと比表面積粒径が30nm以上100nm以下のルテニウム化合物粉末の比率を適切に調整することで耐サージ、耐パルス特性を併せ持つ抵抗体ペーストを提供することが可能であることを見出し、本願発明者らは本発明の完成に至ったものである。
本発明の第1の発明は、ガラスフリットとルテニウム化合物粉末を含む抵抗体組成物であって、そのガラスフリットが、軟化点が550℃以上、650℃以下であるガラスフリットLMと、そのガラスフリットLMの軟化点より200℃以上、350℃以下の範囲で高温の軟化点を示すガラスフリットHMを含み、ガラスフリットLMとガラスフリットHMの合計量に対し、ガラスフリットLMを15質量%以上、50質量%以下含有し、ルテニウム化合物粉末の比表面積粒径が30nm以上、100nm以下であることを特徴とする厚膜抵抗体組成物である。
本発明の第2の発明は、第1の発明におけるルテニウム化合物粉末を、15質量%以上、35質量%以下含むことを特徴とする厚膜抵抗体組成物である。
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明におけるルテニウム化合物粉末が、二酸化ルテニウム粉末であることを特徴とする厚膜抵抗体組成物である。
本発明の第4の発明は、第1から第3の発明におけるガラスフリットの50%体積累計粒度が、20μm以下であることを特徴とする厚膜抵抗体組成物である。
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明における厚膜抵抗体組成物と、有機溶剤に樹脂を溶解したビヒクルを含むことを特徴とする厚膜抵抗ペーストである。
本発明によれば、従来の厚膜抵抗体組成物より大きい抵抗変化量を得ることが可能であり、パルスにより抵抗値を調整する際に抵抗変化幅が大きい抵抗体を容易に得ることが出来、調整作業の改善に大きく寄与し、工業上顕著な効果を奏するものである。
実施例6における印加電力と抵抗値変化率との関係を示す図である。
本発明に係る厚膜抵抗体組成物は、ガラスフリットとルテニウム化合物粉末を含む抵抗体組成物であって、そのガラスフリットの構成が、550℃以上、650℃以下の軟化点を示すガラスフリットLMと、そのガラスフリットLMの軟化点より200℃以上、350℃以下の範囲で高温の軟化点を示すガラスフリットHMを含み、ガラスフリットLMとガラスフリットHMの合計量に対し、ガラスフリットLMを15質量%以上、50質量%以下含有するガラスフリットである。さらに、ルテニウム化合物粉末は、その比表面積粒径が30nm以上、100nm以下であることを特徴とし、またルテニウム化合物粉末としては「二酸化ルテニウム粉末」が望ましい。
上記厚膜抵抗体組成物を用い、厚膜抵抗体組成物と後述の有機ビヒクルとを混練して厚膜抵抗ペーストを得ることができる。
この得られた厚膜抵抗体ペーストを、アルミナ基板等のセラミックス基板の表面に印刷するなどして厚膜抵抗体組成物を含有する印刷膜を形成し焼成して厚膜抵抗体を得ることができる。
以下、各構成要素について説明する。
[ガラスフリット]
本発明に係る厚膜抵抗体組成物に用いるガラスフリットは、軟化点が550℃以上、650℃以下である軟化点が低い方のガラスフリットLMと、そのガラスフリットLMの軟化点より200℃以上、350℃以下の範囲で高温の軟化点を示すガラスフリットHMの2種類のガラスフリットで構成されている。
ここで、ガラスフリットの軟化点は、ガラスフリットを示差熱分析法(TG−DTA)にて大気中で毎分10℃昇温、加熱し、得られた示差熱曲線の最も低温側の示差熱曲線の減少が発現する温度よりも高温側の次の示差熱曲線が減少するピークの温度とした。なお、本発明で用いるガラスフリットの軟化点は、ガラスフリットの成分組成により調整することが可能である。
厚膜抵抗体は、厚膜抵抗体組成物を焼成して得られる。厚膜抵抗体を得る際の焼成温度は後述の通り800℃から900℃であり、軟化点が低い方のガラスフリットLMは、焼成の過程で溶融し、ガラスフリットHMは、ガラスフリットLMほどではないが軟化する。そして、厚膜抵抗体組成物を焼成する過程で、ガラスフリットLMが溶融したマトリックス中に、ガラスフリットHMが点在する厚膜抵抗体のガラスマトリックス(LH)が形成される。
このマトリックスの中に、そのマトリックスを形成したガラスフリットLMの軟化点より高い軟化点を有するガラスフリットHMが点在するガラスマトリックス(LH)を形成する為に、ガラスフリットLMの軟化点は、550℃以上、650℃以下であることが必要である。
また、このようなガラスマトリックス(LH)を形成することは、パルストリミングでの抵抗値調整と、最終的に得られる厚膜抵抗体に瞬間的に高い電力を印加した場合の耐久性である耐サージ性に影響する。すなわち、軟化点が低い方のガラスフリットLMの軟化点が550℃未満では、得られる厚膜抵抗体の耐サージ性が劣化する。一方、ガラスフリットLMの軟化点が650℃を超えると、軟化点が高い方のガラスフリットHMとの配合割合によっては、パルストリミング等でのガラスマトリックス(LH)の軟化が不十分で、パルストリミングでの抵抗値調整の幅が狭くなる場合がある。
また、ガラスフリットHMは、ガラスフリットLMの軟化点よりも200℃以上、350℃以下の範囲で高温の軟化点が必要である。すなわち、軟化点が高い方のガラスフリットHMの軟化点は、ガラスフリットLMの軟化点に200℃から350℃加えた温度の軟化点である。ガラスフリットHMの軟化点がガラスフリットLMの軟化点より200℃未満しか高くない場合は、厚膜抵抗体のガラスマトリックス(LH)の温度に対して柔らかくなるので耐サージ性に劣る場合があり、ガラスフリットHMの軟化点がガラスフリットLMの軟化点よりも350℃を越えて高い場合は、パルストリミングでの抵抗値の調整幅が小さくなる場合がある。
本発明に係る厚膜抵抗体組成物でのガラスフリットLMとガラスフリットHMの両軟化点は、厚膜抵抗体のガラスマトリックス(LH)の軟化に影響するので、パルストリミング法での抵抗値の調整に影響することになる。そこで、厚膜抵抗体組成物では、ガラスフリットとルテニウム化合物粉末の配合割合を適正化することで得られる厚膜抵抗体の抵抗値を調整している。
抵抗値が高い厚膜抵抗体組成物は、ルテニウム化合物粉末の配合割合が減り、抵抗値が低い厚膜抵抗体組成物は、ルテニウム化合物粉末の配合割合が増える。この配合割合の結果として、パルストリミング法で抵抗値を調整する方法では、同じパルス電圧の印加の前後の抵抗値の変化量は抵抗値が3000Ωを超えるような高抵抗の方が大きくなりやすく、3000Ω以下の低抵抗では小さくなる傾向が見られる。
このパルストリミング法ではパルス電圧のエネルギーにより厚膜抵抗体を構成するガラスマトリックスが再溶融または再軟化し抵抗値の変化につながっていると考えられ、パルス電圧の印加により厚膜抵抗体を構成するガラスマトリックスの溶融し易さが抵抗域による抵抗値変化率の大小に関係していると考えられる。
また、高抵抗域の厚膜抵抗体に含まれるガラスの量は低抵抗域の配合割合より多いため、厚膜抵抗体を構成するガラスマトリックスの再溶融または再軟化が行われ易く、高抵抗域のパルストリミング法での抵抗値変化が大きくなる。一方、低抵抗域の厚膜抵抗体ではガラスの量が少なくかつ導電物質の配合比が高いため厚膜抵抗体を構成するガラスマトリックスの再溶融または再軟化が行われにくい為、パルストリミング法での抵抗値変化が小さくなる。
そこで、本発明では低抵抗域の厚膜抵抗体をパルストリミング法で抵抗値を調整しやすい厚膜抵抗体組成物とするためには、軟化点が低い方のガラスフリットLMと、軟化点が高い方のガラスフリットHMの合計量に対し、ガラスフリットLMを15質量%から50質量%を含む必要がある。
ガラスフリットLMを全ガラスフリット中で50質量%を超えて使用した場合は、耐サージに対して弱くなり、パルストリミングで抵抗値調整の後の安定性などが悪化する。耐サージ性の劣化は、厚膜抵抗体を構成するガラスマトリックス(LH)の軟化の影響である。厚膜抵抗体の耐サージ性向上を目的として、ガラスマトリックス(LH)の軟化を調整する為に、厚膜抵抗体組成物には、マトリックスよりも高い軟化点を示すガラスフリットHMが必要になる。
すなわち、軟化点が高い方のガラスフリットHMは、50質量%以上含有される。一方、全ガラスフリット中のガラスフリットLMの含有率が、15質量%未満では、ガラスフリットHMが多すぎて、パルストリミングでの抵抗値調整の幅が小さくなる。
一般にガラスフリットの化学組成は、金属酸化物を含有していることが多く、その中でもPbO、SiO、B、BaO、CaO、Alなどを含有していることが多い。その中で、本発明に係る厚膜抵抗体組成物で使用できるガラスフリットの化学組成は、ホウケイ酸鉛系ガラス、ホウケイ酸バリウム系ガラス、ホウケイ酸カルシウム系ガラス、ホウケイ酸亜鉛系ガラス等のガラス系で、軟化点を示し、調整可能な組成であればよい。
軟化点が低い方のガラスフリットLMを得るには、酸化物換算でPbO、BaO、CaO、ZnO、BやNaO等のアルカリ金属酸化物の配合割合を増やせばよく、軟化点が高い方のガラスフリットHMを得るには、SiOの配合割合を増やせばよい。さらに、各ガラスフリットの構成成分の配合割合で、ガラスフリットの焼成物の熱膨張係数が変化するので、使用する基板との最適化を適宜調整する。
また、ガラスフリットは、厚膜抵抗体を基板に密着させる結着材としても機能する。その為、厚膜抵抗体組成物を焼成する際に、基板とガラスフリットが結着する必要がある。その為、ガラスフリットの組成は、アルミナなどのセラミックス基板と結着できる組成である必要がある。ホウケイ酸鉛系ガラス、ホウケイ酸バリウム系ガラス、ホウケイ酸カルシウム系ガラス、ホウケイ酸亜鉛系ガラスであれば、アルミナ基板とは、厚膜抵抗体組成物を焼成する過程で結着できる。特に本発明の厚膜抵抗体組成物では、基板との結着性は、軟化点が低い方のガラスフリットLMの溶融性の影響が大きい。
軟化点が高い方のガラスフリットHMも軟化点が低い方のガラスフリットLMもの厚膜抵抗体組成物に含まれるガラスフリットの50%体積累計粒度(D50)は、0.5〜20μmが好適であるが、より好ましくは0.5〜15μm、さらに好ましくは0.5〜6μmであり、粉体の凝集状態などを見極めながら選択するのが望ましい。なお、50%体積累計粒度(D50)は、体積累計粒度分布のメジアン値で、50%体積累計粒度はレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置のマイクロトラック(登録商標)で測定できる。
ガラスフリットの50%体積累計粒度が20μmを超えると、厚膜抵抗体の表面粗さが粗くなり、厚膜抵抗体ヒーターを形成した場合には、熱伝達が十分にできない場合がある。一方、50%体積累計粒度が0.5μm未満では、ガラスフリットに過度な粉砕処理が必要となるので、ガラスフリットの生産性が低くなり、不純物等の混入も増える恐れがある。
[ルテニウム化合物粉末]
次に、厚膜抵抗体組成物におけるルテニウム化合物粉末は、導電性成分として機能する。
このルテニウム化合物粉末には、二酸化ルテニウム粉末、ルテニウム酸鉛粉末やルテニウム酸ストロンチウム粉末のようなルテニウム複合酸化物粉末を用いることができる。
ルテニウム化合物粉末の各粒子の形状は特に限定しないが球形、楕円形、板状、針状などであってもよい。
ルテニウム化合物粉末は、厚膜抵抗体組成物に15質量%以上、35質量%以下含まれることが望ましく、さらに望ましくは、20質量%以上35質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以上35質量%以下である。
厚膜抵抗体組成物では、ガラスフリットとルテニウム化合物粉末の配合割合で得られる厚膜抵抗体の抵抗値を調整している。厚膜抵抗体組成物に含まれるルテニウム化合物粉末の含有率が15質量%未満では、抵抗値が高くなりすぎる。一方、厚膜抵抗体組成物に含まれるルテニウム化合物粉末の含有率が35質量%を超えると、厚膜抵抗体の焼結面が緻密にならないので、厚膜抵抗体の機械強度が確保できない。
また、本発明に係る厚膜抵抗体組成物から得られる厚膜抵抗体では、上記ガラスマトリックス(LH)中に、ルテニウム化合物粉末が分散されてルテニウム化合物粒子として存在して導電ネットワークを形成している。
パルストリミング法を用いた抵抗値調整では、厚膜抵抗体に対してパルス電圧を印加することで、そのガラスマトリックス(LH)の再溶融や再軟化により、ルテニウム化合物粒子の存在する位置が変わり、ルテニウム化合物粒子の距離が縮まる等して導電ネットワークの再構築が行われると考えられる。このようなパルストリミング性を考慮して、ルテニウム化合物粉末の比表面積粒径を選択する。
より具体的に説明すると、ルテニウム化合物粉末の平均粒径は、比表面積粒径で30nm以上、100nm以下である。ルテニウム化合物粉末の比表面積粒径が30nm未満では、厚膜抵抗体をパルストリミングした場合の抵抗値変化率が少ない場合があり、抵抗値の調整が困難である。その理由は不明であるが、ルテニウム化合物粉末の比表面積粒径が30nm未満では、パルス電圧を印加させた厚膜抵抗体のガラスマトリックスの再溶融による導電ネットワークの再構築の規模が少なかったと思われる。
一方、ルテニウム化合物粉末の比表面積粒径が100nmを超えると、厚膜抵抗体の表面粗さが大きくなる場合があり、発熱抵抗体には適さない場合がある。
比表面積粒径は、下記(1)式で求めることができる。また、ルテニウム化合物粉末の比表面積は、BET法で測定することができる。
Figure 2019040782
ここで、Dはルテニウム化合物粉末の比表面積粒径[nm]で、ρはルテニウム化合物粉末の密度[g/cm]、Sはルテニウム化合物粉末の比表面積[m/g]である。ルテニウム化合物粉末に二酸化ルテニウム粉末を用いるならば、ρは、7.05[g/cm]とすることができる。
ルテニウム化合物には、二酸化ルテニウムを用いることが望ましい。二酸化ルテニウムは、ルテニウム酸鉛などのルテニウム複合酸化物よりも比抵抗が小さく、低抵抗域の厚膜抵抗体の抵抗値50Ω〜3000Ωの領域を実現するのに適しているからである。厚膜抵抗体で発熱抵抗とする場合は、パルストリミング性や得られる厚膜抵抗体の消費電力を考慮して厚膜抵抗体の抵抗値を50Ω〜1000Ωとすることが望ましい。
[厚膜抵抗体組成物]
本発明に係る厚膜抵抗体組成物は、軟化点の異なる2種類のガラスフリット、即ち軟化点が低い方のガラスフリットLMと、それより軟化点が高いガラスフリットHMを含み、さらにルテニウム化合物を含有する。また、厚膜抵抗体組成物には、厚膜抵抗体の電気特性の一つである抵抗温度係数を調整するなどの効果がある公知のTiO粉末等を添加することもできる。
[有機ビヒクル]
本発明で使用する有機ビヒクルは特定のものである必要はなく、厚膜抵抗ペーストを製造するのに一般に使用されるもので良い。乾燥及び焼成時の脱バインダーの際に揮発、分解して消失してしまうものが望ましい。下記の有機溶媒、たとえばエチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を用いることができる。
これらの樹脂をターピネオール等のテルペンアルコール類、リモネン等のテルペン類、ブチルカルビトールアセテートやブチルセロソルブアセテート等のエーテル類等の有機溶剤に溶かしたものを有機ビヒクルとして使用することができる。厚膜抵抗ペーストの粘度調整の為、ターピネオール等の有機溶剤をさらに添加してもよい。
また、厚膜抵抗体組成物をビヒクルに分散させる為に、分散剤として、カルボキシル基やアミノ基を備えた高分子分散剤、ステアリン酸等の脂肪酸、レシチン等のリン脂質類を添加してもよい。
[厚膜抵抗ペーストの製造方法]
二酸化ルテニウム粉末、ガラスフリット、有機ビヒクル、有機溶媒は均一に分散させることが望ましい。方法についての限定はないが、公知の3本ロールによる分散方法が好適である。
[厚膜抵抗体の形成方法]
得られた厚膜抵抗ペーストを、スクリーン印刷によりアルミナなどのセラミックス基板上に厚膜抵抗体のパターンを印刷し、乾燥と焼成を経て厚膜抵抗体を形成することができる。
焼成条件は、大気中でピーク温度800℃から900℃で、そのピーク温度の保持時間が5分間から60分間とすることでき、また室温からピーク温度までの昇温時間を5分間から60分間とし、ピーク温度保持終了後、室温まで冷却される。焼成の過程の昇温の際に、厚膜抵抗ペーストの印刷膜に残留する有機溶剤や樹脂成分を除去する脱バインダー処理が行われる。
ピーク温度800℃から900℃で焼成された厚膜抵抗体は、膜厚5μm〜20μmに調整されており、より好ましい膜厚は10μm〜15μmである。
さらに厚膜抵抗体は、その表面を600℃程度の焼成温度で焼成できるガラスペーストで被覆し、そのガラスペーストを焼成して厚膜抵抗体の保護膜とすることで保護膜付きの厚膜抵抗器とすることができる。このように厚膜抵抗体の表面をガラスペーストから形成された保護膜を配することで、厚膜抵抗器の表面を平滑にすることができる。
なお、厚膜抵抗体の形成に先立ち、セラミックス基板の表面に厚膜抵抗体の端子となる電極を公知の厚膜技術で形成してもよい。
[厚膜抵抗体のパルストリミング]
焼成して得られた厚膜抵抗体の抵抗値をパルストリミング法で調整する。
具体的には、1000V〜6000Vのパルス電圧を厚膜抵抗体に印加し、所定の抵抗値となるまで、パルス電圧を印加する。印加電圧は、厚膜抵抗体の抵抗値により適宜選択すればよい。パルス電圧1000V〜6000Vを逐次印加して印加前の抵抗値に対して印加後の抵抗値の変化率が−40%よりも少ない場合は、効率的な抵抗値調整は困難である。
以下に実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例と比較例に使用したガラスフリットの組成を表1に示す。ガラスフリット(A)及び(B)は、軟化点が高い方のガラスフリットHMで、ガラスフリット(C)は、軟化点の低い方のガラスフリットLMである
ガラスフリット(A)は軟化点856℃で50%体積累計粒度(D50)が3.6μm、ガラスフリット(B)はガラスフリット(A)をボールミルで粉砕し50%体積累計粒度(D50)が1.4μm、ガラスフリット(C)は軟化点640℃で50%体積累計粒度(D50)が1.5μmであった。各ガラスフリットの50%体積累計粒度(D50)の測定は、マイクロトラックベル社製のマイクロトラック(登録商標)を使用して行った。
ルテニウム化合物粉末には、二酸化ルテニウムを用い、BET法で測定した比表面積粒径が24nm(比表面積35m/g)の二酸化ルテニウム粉末(A)と、比表面積粒径が40nm(比表面積21.5m/g)の二酸化ルテニウム粉末(B)と、比表面積粒径が73nm(比表面積11.6m/g)の二酸化ルテニウム粉末(C)を使用した。
Figure 2019040782
ターピネオールの組成は75質量%に対して、エチルセルロース25質量%を添加し、エアーモーターで撹拌しながら60℃まで加熱、分散し、有機ビヒクルを作製した。
次に、表2および表3に示す割合の二酸化ルテニウム粉末とガラスフリットからなる厚膜抵抗体組成物100重量部に、表2および表3の重量部の有機ビヒクルと溶剤を加え、さらに必要に応じて溶剤のターピネオールを加えて3本ロールを使用してさらに混練し、実施例1から6と比較例1から7に係る厚膜抵抗ペーストを作製した。
作製した厚膜抵抗ペーストを用い、厚膜法で銀電極を設けた1インチのアルミナ基板に各実施例と各比較例に係る厚膜抵抗ペーストを印刷し、大気中120℃で乾燥の後、ピーク温度とその保持時間が、810℃、9分間の条件によりベルト炉で焼成して厚膜抵抗体を得た。ベルト炉での昇温、ピーク温度保持、降温に要した全時間は、合計で30分とした。厚膜抵抗体の大きさは長さ(電極間距離)0.3mm幅0.3mmであり、膜厚はほぼ12μmに調整した。なお、銀電極は、銀電極ペーストをアルミナ基板に印刷、120℃で5分間乾燥、ピーク温度850℃で9分間焼成して設けた。ベルト炉の入り口から出口までの時間は30分とした。
得られた厚膜抵抗体25個の抵抗値をデジタルマルチメーター(KEITHLEY社製、Model2001 Multimeter)で測定した。また、抵抗値変化率は厚膜抵抗体にパルス電圧1000V、1500V、2000V、2500V、3000Vの順で各電圧1秒の印加を行い、電圧印加前の抵抗値とパルス電圧3000Vまでの電圧印加後の抵抗値との差と電圧印加前の抵抗値から抵抗値変化率を計算した。実施例と比較例には抵抗値変化率の最大値を示す。
さらに、実施例6の厚膜抵抗体5個に対し1Wから10Wまでの電力を印加し、初期抵抗値との変化率を算定し、耐サージ特性を確認した。
その結果を、表2に実施例の結果を示し、表3に比較例の結果を示す。
Figure 2019040782
Figure 2019040782
実施例1〜3のように比表面積が11.6m/gの二酸化ルテニウム粉末(C)を使用した抵抗ペーストでは、抵抗値調整の幅(抵抗値変化率)の絶対値が50%以上となり大きな値が得られた。実施例4〜6については、比表面積が21.5m/gの二酸化ルテニウム粉末(B)を使用したが、この場合もいずれも抵抗値調整の幅(抵抗値変化率)の絶対値が50%以上となった。
比較例1は従来の組成での抵抗値変化率の結果を示すもので、組成は比表面積粒径24nm(比表面積35m/g)の二酸化ルテニウム粉末(A)とガラスフリット(A)をボールミルで粉砕したガラスフリット(B)と有機ビヒクルである。
そのパルス電圧の印加前後の抵抗値から求めた抵抗値調整の幅(抵抗値変化率)の絶対値は34.2%で、本発明に係る実施例に比べ小さい結果である。
また、ガラスフリットに未粉砕の粒径の大きなガラスフリット(A)のみを使用した比較例2から6の抵抗値変化率は、わずかであったり(比較例2)、変化しなかったり(比較例3から5)、下がった比較例6でも−26.0%であり、本発明に係る実施例に比べ、その絶対値は小さく、抵抗値変化率が小さい結果である。
さらに、比較例7に示すように粉砕した軟化点856℃のガラスフリット(B)を単独で用いた場合は大きな抵抗値変化率は得られなかった。
図1に、実施例6の場合における厚膜抵抗体のSST(Step Stress Test)時における印加電力と抵抗値変化率の関係を示す。
印加電力に対してはマイナス領域に抵抗値変化率が変化することがなかった。マイナス領域に抵抗値変化率が変化する場合はガラスと導電フィラーなどが不均一であることによる影響が想定されるが、実施例6ではマイナス領域に抵抗値変化率が変化することはなく従来品と比べて遜色の無い結果であった。

Claims (5)

  1. ガラスフリットとルテニウム化合物粉末を含む厚膜抵抗体組成物であって、
    前記ガラスフリットが、軟化点が550℃以上、650℃以下であるガラスフリットLMと、前記ガラスフリットLMの軟化点より200℃以上、350℃以下の範囲で高温の軟化点を示すガラスフリットHMを含み、
    前記ガラスフリットLMと前記ガラスフリットHMの合計量に対し前記ガラスフリットLMを15質量%以上、50質量%以下含有し、
    前記ルテニウム化合物粉末の比表面積粒径が30nm以上、100nm以下であることを特徴とする厚膜抵抗体組成物。
  2. 前記ルテニウム化合物粉末を、15質量%以上、35質量%以下、含むことを特徴とする請求項1に記載の厚膜抵抗体組成物。
  3. 前記ルテニウム化合物粉末が、二酸化ルテニウム粉末であることを特徴とする請求項1または2に記載の厚膜抵抗体組成物。
  4. 前記ガラスフリットの50%体積累計粒度が、20μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の厚膜抵抗体組成物。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の厚膜抵抗体組成物と、有機溶剤に樹脂を溶解したビヒクルを含むことを特徴とする厚膜抵抗ペースト。
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