<第1の実施形態>
第1の実施形態の車両1は、例えば、不図示の内燃機関を駆動源とする自動車、すなわち内燃機関自動車であってもよいし、不図示の電動機を駆動源とする自動車、すなわち電気自動車や燃料電池自動車等であってもよいし、それらの双方を駆動源とするハイブリッド自動車であってもよいし、他の駆動源を備えた自動車であってもよい。また、車両1は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関や電動機を駆動するのに必要な種々の装置、例えばシステムや部品等を搭載することができる。また、車両1における車輪3の駆動に関わる装置の方式や、数、レイアウト等は、種々に設定することができる。
図1は、第1の実施形態の車両の車室の一部が透視された状態が示された例示的な斜視図である。車両1は、例えば、四輪自動車であり、左右二つの前輪3Fと、左右二つの後輪3Rとを有する。これら四つの車輪3は、いずれも転舵可能に構成され得る。なお、図1では、左側の前輪3Fおよび左側の後輪3Rを図示している。
車体2は、不図示の乗員が乗車する車室2aを構成している。車室2a内には、乗員としての運転者が着座する座席2bに臨む状態で、操舵部4、加速操作部5、制動操作部6、および変速操作部7等が設けられている。
操舵部4は、例えば、ダッシュボード8から突出したステアリングホイールであり、加速操作部5は、例えば、運転者の足下に位置されたアクセルペダルであり、制動操作部6は、例えば、運転者の足下に位置されたブレーキペダルであり、変速操作部7は、例えば、センターコンソールから突出したシフトレバーである。なお、操舵部4、加速操作部5、制動操作部6、および変速操作部7は、これらだけに限定されない。
また、車室2a内には、表示画面9を有するモニタ装置10が設けられている。モニタ装置10は、例えば、ダッシュボード8の車幅方向の中央部に設けられている。表示画面9は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)またはOELD(Organic Electroluminescent Display)等である。運転者は、表示画面9に表示される画像を視認することができる。
なお、モニタ装置10は、タッチパネル、スイッチ、ダイヤル、ジョイスティック、または押しボタン等の、不図示の操作入力部を有することができる。また、モニタ装置10は、ナビゲーションシステムまたはオーディオシステムと兼用され得る。
座席2bには、運転者の身体に機械的な振動刺激を与える複数の振動装置20が設けられている。図2および図3は、第1の実施形態にかかる複数の振動装置20の配置例を示す図である。図2は、運転者が着座した状態の座席2bの側面図である。図3は、座席2bの斜視図である。これらの図に例示されるように、ここでは、複数の振動装置20は、6つの振動装置20La、20Lb、20Lc、20Ra、20Rb、20Rcを含む。
振動装置20Laは、座席2bの背もたれ部2cの、乗員の左側の体幹側面に振動刺激を付与できる位置に埋め込まれている。振動装置20Raは、座席2bの背もたれ部2cの、乗員の右側の体幹側面に振動刺激を付与できる位置に埋め込まれている。ここでいう体幹側面とは、例えば広背筋の腱の位置である。
振動装置20Lbは、座席2bの背もたれ部2cの、乗員の左側の臀部側面に振動刺激を付与できる位置に埋め込まれている。振動装置20Rbは、座席2bの背もたれ部2cの、乗員の右側の臀部側面に振動刺激を付与できる位置に埋め込まれている。ここでいう臀部側面とは、例えば中臀筋の腱の位置である。
振動装置20Lcは、座席2bの座部2dの、乗員の左側の大腿外側面に振動刺激を付与できる位置に埋め込まれている。振動装置20Rcは、座席2bの座部2dの、乗員の右側の大腿外側面に振動刺激を付与できる位置に埋め込まれている。
なお、6つの振動装置20は、必ずしも座席2bに埋め込まれていなくてもよい。6つの振動装置20のうちの一部または全部は、座席2bを覆うシートカバー、または、座席2bと運転者との間に介在して配置されるクッションに具備されて提供され得る。また、座席2bに設けられる振動装置20の数は、6つに限定されない。また、各振動装置20の配置位置は、上記の例に限定されない。
これらの振動装置20のそれぞれは、第1の実施形態の運転支援装置としてのECU(Electronic Control Unit)21によって制御される。
70〜110Hzの範囲の周波数の振動刺激が被験者の筋肉の腱に与えられると、あたかもその筋肉を伸張しているかのような運動錯覚を被験者の脳内に誘起せしめることができる。これは、筋肉が伸張したときに信号を発する受容体である筋紡錘が、上述の範囲の周波数の振動刺激によって強制的に興奮せしめられ、信号を発してしまうことによる、とされている。
運動錯覚は、被験者が、実際に運動を行っていなくても、その運動を行っているように脳が錯覚することである。運動錯覚中には、補足運動野の活動性が高まる。補足運動野の活動性を高めることで、脳の覚醒度に関わる脳幹網様体への入力の増加を引き起こし、その結果、脳を覚醒状態にすることができると考えられる。
図4は、本願発明の発明者らの実験によって得られた、補足運動野の神経活動値と、覚醒状態の持続時間と、の関係を示すグラフである。この実験では、本願発明の発明者らは、被験者の主観的な眠気レベルを申告させ、眠い旨の申告時に、被験者の中臀筋の腱に対して100Hzの周波数の振動刺激を付与した。本願発明の発明者らは、振動刺激の付与後、補足運動野の神経活動値(電流密度)を測定するとともに、眠くない旨の申告が継続した時間、即ち覚醒状態の持続時間を計測した。本図に示されるように、補足運動野の神経活動値が高まるにつれて、覚醒状態の持続時間が増加することが確認された。
手動運転時においては、運転者は、実際に運転操作を開始する前に、運転操作の身体動作および姿勢維持のために、脳内で運動計画を立案する。その際、補足運動野が賦活している。運転操作が多い市街地では眠気が起こりにくいのに対して、高速道路など運転操作が単調になる状況では眠気が起こりやすくなる要因の1つに、この脳内での運動計画の立案の機会の減少によって補足運動野の賦活が減少することが挙げられる。自動運転時には、運転者は、運転操作が不要となるため、運動計画を立案する必要がなくなる。その結果、運転者は、覚醒状態を維持できなくなる可能性がある。
第1の実施形態の運転支援装置としてのECU21は、自動運転時に運転者が眠くなり難くするために、車両1の挙動にあわせて刺激を出力する。具体的には、ECU21は、自動運転時に車両1に右左折などの特定の動作(以降、対象動作と表記)を実行せしめる際に、上述した範囲の周波数の振動刺激、即ち、運動錯覚を誘起する周波数の振動刺激を、対象動作に対応した身体部位に与える。対象動作に対応した身体部位とは、対象動作を手動運転で実現する場合の運転操作時に動員される身体部位である。
ECU21は、対象動作に対応した身体部位を動員したことを運転者に錯覚させることで、運転者に、対象動作を手動運転で実現する場合の身体の運動イメージを想起させる。運転者は、対象動作が実行される前に、対応する運動イメージを想起することで、運動計画の立案を実行する。特定の周波数の振動刺激によって補足運動野が賦活されるだけでなく、運動計画が立案されることによって補足運動野の賦活がさらに強化され、覚醒状態を維持する効果が強化される。
なお、単に強い振動刺激を運転者の身体に与えるなど、単純な外的刺激によって、運転者を覚醒させることは可能である。しかしながら、そのような方法では、運転者は、単に外的刺激に反応して一時的に覚醒するにすぎず、覚醒状態は長続きしない。これに対し、第1の実施形態の運転支援装置は、運転者に、運動イメージを想起させたり、運動計画を立案させたりするなど、運転者の脳(特に補足運動野)に高度な活動を実行せしめることができる。換言すると、運転者の脳に「考えさせる」ことができる。よって、単純な外的刺激によって運転者を覚醒させる場合に比べ、覚醒状態の維持時間を長くすることが可能である。
また、第1の実施形態の運転支援装置では、振動刺激に応じて運動計画が立案された後に、対応する対象動作が行われる。これによって、振動刺激と対象動作との関連付けが運転者の脳内で強まり、振動刺激に対する脳内の神経活動の反応が安定化される。即ち、覚醒状態を長く維持する効果を安定的に実現することが可能となる。
対象動作と振動刺激が与えられる身体部位との対応関係については以降の説明で詳述する。
図5は、第1の実施形態の運転支援システムの構成の例示的なブロック図である。運転支援システム100は、モニタ装置10および6つの振動装置20のほかに、ECU21、操舵システム22、ブレーキシステム23、変速システム24、駆動源制御システム25、および車内ネットワーク26を備える。ECU21、操舵システム22、ブレーキシステム23、変速システム24、および駆動源制御システム25は、車内ネットワーク26に電気的に接続されている。車内ネットワーク26は、例えば、CAN(Controller Area Network)として構成されている。
操舵システム22は、運転者が操舵部4に与えるトルクを検出し、トルクの検出値をECU21に送る。また、操舵システム22は、ECU21等によって電気的に制御されて、車輪3を転舵する。操舵システム22は、例えば、電動パワーステアリングシステム、SBW(Steer By Wire)システム等である。操舵システム22は、一つの車輪3を転舵してもよいし、複数の車輪3を転舵してもよい。
ブレーキシステム23は、制動操作部6の可動部の位置を検出し、検出値をECU21に送る。また、ブレーキシステム23は、ECU21等によって電気的に制御されて、不図示のアクチュエータを介して、車輪3ひいては車両1に制動力を与える。ブレーキシステム23は、例えば、ブレーキのロックを抑制するABS(Anti-lock Brake System)、コーナリング時の車両1の横滑りを抑制する横滑り防止装置(ESC:Electronic Stability Control)、ブレーキ力を増強させる(ブレーキアシストを実行する)電動ブレーキシステム、BBW(Brake By Wire)等である。
変速システム24は、変速操作部7の可動部の位置を検出する。変速システム24は、変速操作部7の可動部としての、レバー、アーム、またはボタン等の位置を検出することができる。変速システム24は、検出値をECU21に送る。また、変速システム24は、ECU21等によって電気的に制御されて、不図示の変速機構の変速比を切り替える。
駆動源制御システム25は、加速操作部5の可動部の位置を検出し、検出値をECU21に送る。また、駆動源制御システム25は、ECU21等によって電気的に制御されて、駆動源の出力を増減させる。
ECU21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)21a、ROM(Read Only Memory)21b、RAM(Random Access Memory)21c、および、SSD(Solid State Drive)21d等を有している。CPU21aは、プログラムを実行することができる演算装置である。ROM21b、RAM21c、および、SSD21dは、プログラムおよびデータを記憶することができる記憶装置である。即ち、ECU21は、コンピュータと同様のハードウェア構成を備えている。
CPU21aは、表示画面9で表示される画像に関連した画像処理、および車両1の制御等、各種の演算処理および制御を、所定のプログラムに基づいて実行することができる。例えば、CPU21aは、手動運転時には、操舵システム22、ブレーキシステム23、変速システム24、駆動源制御システム25等からの各種検出値を車内ネットワーク26を介して受信し、受信したこれらの検出値に基づいて操舵システム22、ブレーキシステム23、変速システム24、駆動源制御システム25等を制御する。
CPU21aは、さらに、ROM21bにインストールされ記憶された運転支援プログラム200を実行することによって、第1の実施形態の運転支援装置としての機能を実現する。即ち、ECU21は、第1の実施形態の運転支援装置の一例である。
RAM21cは、CPU21aでの演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。SSD21dは、書き換え可能な不揮発性の記憶装置であって、ECU21の電源がオフされた場合にあってもデータを記憶することができる。CPU21a、ROM21b、およびRAM21c等は、同一パッケージ内に集積され得る。また、ECU21は、CPU21aに替えて、DSP(Digital Signal Processor)等の他の論理演算プロセッサまたは論理回路等が用いられる構成であってもよい。また、SSD21dに替えてHDD(Hard Disk Drive)が設けられてもよいし、SSD21dまたはHDDは、ECU21とは別に設けられてもよい。
運転支援プログラム200は、ROM21bに替えてSSD21dにインストールされていてもよい。運転支援プログラム200は、コンピュータにインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)、またはフラッシュメモリ等の、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供され得る。
また、運転支援プログラム200は、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、運転支援プログラム200は、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布され得る。
図6は、第1の実施形態のECU21の機能的構成の一例を示すブロック図である。ECU21は、CPU21aが所定のプログラムを実行することによって、自動運転制御部300として機能する。
自動運転制御部300は、運転者の操作によって自動運転が指示された場合、操舵システム22、ブレーキシステム23、変速システム24、および駆動源制御システム25を制御することで、車両1を、運転者による各種操作部(操舵部4、加速操作部5、制動操作部6、および変速操作部7)の操作を要することなく走行させる。
例えば、自動運転制御部300は、ナビゲーションシステムなどによって設定された設定ルートに従って車両1を走行させる。設定ルート上の走行時には、自動運転制御部300は、車両1の周辺環境を示す周辺環境情報を不図示の撮像装置または測距装置によって略リアルタイムに取得し、周辺環境情報を自動運転の制御にフィードバックする。具体的には、例えば、自動運転制御部300は、周辺環境情報によって障害物を検知した場合、当該障害物を避けたり、車両1を停止したりする。また、自動運転制御部300は、周辺環境情報によって先行する車両を検知して、当該先行する車両との車間距離を維持するように、車両1を加減速する。また、自動運転制御部300は、設定ルート上の各車線を周辺環境情報によって識別する。自動運転制御部300は、右左折用の専用車線が存在する場合、または、高速道路のジャンクションを通過する場合、などにおいて、設定ルートに従って適切な車線を選択して、車両1を、選択した車線上を走行させる。
なお、自動運転制御部300は、必ずしも車両1の加減速および操舵の両方を自動で制御しなくてもよい。自動運転制御部300は、車両1の加減速および操舵のうちの一部だけを自動で制御してもよい。また、自動運転の制御の仕組みは、上述した例に限定されない。
ECU21は、さらに、CPU21aが運転支援プログラム200を実行することによって、運転支援部210として機能する。運転支援部210は、第1の実施形態の運転支援装置としての機能であって、記憶部211、取得部212、および出力部213を含む。
記憶部211は、ROM21b、RAM21c、またはSSD21dに確保された記憶領域である。記憶部211は、刺激情報214を保持する。
刺激情報214は、対象動作と、その対象動作が実行される場合に実行される刺激出力と、の対応を示す、予め作成された情報である。刺激情報214は、運転支援プログラム200に含まれて提供されても良いし、運転支援プログラム200とは別に提供されても良い。刺激出力は、第1の振動刺激出力、第2の振動刺激出力、および視覚刺激出力の3種類の処理を含む。
第1の振動刺激出力は、前述したように、筋肉の伸張を錯覚せしめる周波数の振動刺激を、対象動作に対応する身体部位に与えるものである。
第2の振動刺激出力は、対象動作が車両1を回頭する動作である場合に、運転者に進行方向を通知するためのものである。第2の振動刺激出力では、筋肉の伸張を錯覚せしめない周波数の振動刺激を運転者の回頭方向と同じ側の身体部位に与えることで、運転者に進行方向を通知する。
視覚刺激出力は、対象動作を手動運転で実現する場合の運転操作時の身体動作を表す動画を表示画面9に表示するものである。運転操作時の身体動作を表す動画は、運転者の身体の一部または全部を模擬したモデル画像がアニメーション表示される。動画は、対応する動画データ215に記録されて記憶部211に保持されている。
なお、ここで説明する例では、複数の動作が、視覚刺激出力が実行される対象動作として設定される。記憶部211には、それぞれ異なる対象動作に対応する複数の動画データ215が保持される。
図7は、第1の実施形態の刺激情報214の一例を示す図である。本図の例によれば、対象動作は、右車線への車線変更、左車線への車線変更、右折、左折、所定加速度以上の加速、および、所定減速度以上の減速、を含む。これらの動作のうち、右車線への車線変更、左車線への車線変更、右折、および左折は、車両1を回頭する対象動作に該当する。
図7に例示されるように、右車線への車線変更の場合、第1の振動刺激出力として、振動装置20Lbによって、運転者の左側の臀部側面、即ち左側の中臀筋の腱に、100Hzの振動刺激が与えられる。手動運転によって右車線へ車両1を移動させる場合、運転者の身体が車両1の回頭方向とは逆側、即ち左側、に傾くことで、運転者の左側の中臀筋が伸張する。即ち、左側の中臀筋が動員される。運転者は、運転者の左側の中臀筋の腱に100Hzの周波数の振動刺激が与えられることによって、左側の中臀筋が伸張していると錯覚する。運転者は、手動運転で運転操作を行う場合と同じ筋肉が伸張しているように錯覚するので、手動運転での運転操作の運動イメージを想起することができる。
また、右車線への車線変更の場合、第2の振動刺激出力として、振動装置20Rbおよび振動装置20Rcによって、右側の臀部側面および大腿側面に、50Hzの振動刺激が与えられる。50Hzの振動刺激は、筋肉の伸張を錯覚せしめない周波数の振動刺激の一例である。
図8は、右車線への車線変更の場合に第1の実施形態の運転支援装置によって各身体部位に与えられる振動刺激の強度の推移の一例を示すグラフである。実線30は、左側の臀部側面に与えられる100Hzの振動刺激の強度の推移を示している。破線31は、右側の臀部側面に与えられる50Hzの振動刺激の強度の推移を示している。一点鎖線32は、右側の大腿側面に与えられる50Hzの振動刺激の強度の推移を示している。
図8に例示されるように、左側の臀部側面に与えられる100Hzの振動刺激の強度はI1で一定であり、右側の各身体部位に与えられる50Hzの振動刺激の強度は0〜I2の範囲で鋸歯状に変動せしめられる。ただし、I2はI1よりも大きい。また、右側の臀部側面に対する振動刺激よりも遅れて、右側の大腿側面に対する振動刺激が変動する。
運転者は、右側の臀部側面および大腿側面に、上記のように50Hzの振動刺激が強度を変動せしめながら与えられることによって、振動が左側臀部から右側臀部を通って右側大腿に移動するように感じる。その結果、運転者は、車両1の進行方向が右斜め前方向であることを連想することができる。即ち、運転者は、車両1の進行方向は右斜め前方向であることを通知される。運転者に車両1の進行方向を連想せしめることで、手動運転での運転操作の運動イメージをより強めることができる。
なお、上記した50Hzの振動刺激の強度の推移は、一例である。50Hzの振動刺激は、パルス波状、すなわち間欠的に強度が変動せしめられてもよい。また、50Hzの振動刺激は、三角波状に強度が変動せしめられてもよい。また、第2の振動刺激出力において用いられる周波数は、運動錯覚を誘起せしめない周波数であればよく、50Hzに限定されない。
また、上記の例では、50Hzの振動刺激の強度の最大値は、100Hzの振動刺激の強度よりも大きい。これにより、運転者は、50Hzの振動刺激をより強く感じることができるので、進行方向をより連想し易くなる。なお、50Hzの振動刺激の強度の最大値は、必ずしも100Hzの振動刺激の強度より大きくなくてもよい。
また、右車線への車線変更の場合、視覚刺激出力として、上半身を左側に傾ける身体動作を表す動画が表示画面9に表示される。
図9および図10は、右車線への車線変更の場合に第1の実施形態の運転支援装置によって表示される動画の一例を説明するための図である。まず、図9に示される画像90aが表示画面9に表示される。その後、表示画面9の表示内容は、図10に示される画像90bに遷移する。
画像90aは、走行中の道路を模擬する道路モデル画像91と、車線を区切る白線を模擬する白線モデル画像92と、座部2dを模擬する座部モデル画像93と、を含んでいる。そして、運転者の上半身を模擬する上半身モデル画像1000が、座部モデル画像93の配置位置の上方に左右に傾けることなく配置されている。
画像90bでは、上半身モデル画像1000が、座部モデル画像93の配置位置の上方に、左側に傾けて配置されている。
表示内容が画像90aから画像90bに遷移することで、運転者は、上半身モデル画像1000の動きを、上半身が左側に傾く動きとして認識することができる。手動運転で車両1を右車線へ移動させる際の運転操作時の身体の姿勢が、表示画面9に可視化されるので、手動運転での運転操作の運動イメージをより強めることができる。
なお、図9および図10を用いて説明した動画は、あくまでも一例である。例えば、後述する右折の場合と同様に、操舵部4であるステアリングホイールを右側に旋回させる身体動作を表す動画が表示されてもよい。また、画像90aと画像90bとが交互に表示されてもよい。
また、図9および図10の例では、画像90aおよび画像90bは、車両1の進行方向を概略的に示す矢印94を含んでいる。画像90aおよび画像90bは、矢印94を含んでいなくてもよい。
左車線への車線変更の場合、右車線への車線変更の場合とは左右逆の刺激が与えられる。具体的には、第1の振動刺激出力として、振動装置20Rbによって、右側の臀部側面に100Hzの振動刺激が与えられる。右側の臀部側面に与えられる振動刺激の強度は、I1である。また、第2の振動刺激出力として、振動装置20Lbおよび振動装置20Lcによって、左側の臀部側面および大腿側面に、50Hzの振動刺激が与えられる。左側の臀部側面および大腿側面に与えられる50Hzの振動刺激の強度は、0〜I2の範囲で鋸歯状に変動せしめられ、左側の臀部側面に対する振動刺激よりも遅れて、左側の大腿側面に対する振動刺激が変動する。また、視覚刺激出力として、右側に上半身を傾ける身体動作を表す動画が、表示画面9に表示される。
右折の場合、第1の振動刺激出力として、振動装置20Laによって、運転者の左側の体幹側面、即ち左側の広背筋の腱に、100Hzの振動刺激が与えられる。手動運転によって車両1を右折させる場合、運転者は、操舵部4であるステアリングホイールを右側に大きく旋回させる。その際、左側の広背筋が動員され、伸張する。運転者は、左側の広背筋の腱に100Hzの振動刺激が与えられることによって、左側の広背筋が伸張していると錯覚する。運転者は、手動運転で運転操作を行う場合と同じ筋肉が伸張しているように錯覚するので、手動運転での運転操作の運動イメージを想起することができる。
また、右折の場合、第2の振動刺激出力として、振動装置20Raによって、運転者の右側の体幹側面に、50Hzの振動刺激が与えられる。右側の体幹側面に与えられる50Hzの振動刺激の強度は、例えば、図8に示される破線31によって示されるように、0〜I2の範囲で鋸歯状に変動せしめられる。ただし、左側の体幹側面に与えられる100Hzの振動刺激の強度はI1で一定である。このように50Hzの振動刺激が与えられることによって、運転者は、振動が左側の体幹側面から右側の体幹側面に移動するように感じることができ、その結果、車両1の進行方向が右方向であることを連想することができる。運転者に車両1の進行方向を連想せしめることで、手動運転での運転操作の運動イメージをより強めることができる。
また、右折の場合、視覚刺激出力として、ステアリングホイールを右側に旋回させる身体動作を表す動画が表示画面9に表示される。
図11および図12は、右折の場合に第1の実施形態の運転支援装置によって表示される動画の例を示す図である。まず、図11に示される画像90cが表示画面9に表示される。その後、表示画面9のの表示内容が、図12に示される画像90dに遷移する。
画像90cは、道路モデル画像91と、座部モデル画像93と、操舵部4であるステアリングホイールを示すステアリングホイールモデル画像95と、を含んでいる。また、上半身モデル画像1000は、運転者の上肢を示す上肢モデル画像1001を含んでいる。画像90cでは、上肢モデル画像1001は、左右対称に表示されており、そのことを以てステアリングホイールを舵角がゼロである状態でハンドルを把持している様態を示している。
画像90dでは、上肢モデル画像1001は、ステアリングホイールを右方向に約60度ほど旋回させた状態でハンドルを把持している様態を示している。
表示内容が画像90cから画像90dに遷移することで、運転者は、上肢モデル画像1001の動きを、ステアリングホイールを右側に大きく旋回させる動きとして認識することができる。手動運転で車両1を右折させる際の運転操作時の身体動作が、表示によって可視化されるので、手動運転での運転操作の運動イメージをより強めることができる。
なお、図11および図12を用いて説明した動画は、あくまでも一例である。例えば、前述した右車線への車線移動の場合と同様に、身体が左側に傾く姿勢を表す動画が表示されてもよい。また、画像90cと画像90dとが交互に表示されてもよい。なお、画像90cおよび画像90dは、車両1の進行方向を概略的に示す矢印96を含んでいる。画像90cおよび画像90dは、矢印96を含んでいなくてもよい。
左折の場合、右折の場合とは左右逆の刺激が与えられる。具体的には、第1の振動刺激出力として、振動装置20Raによって、右側の体幹側面に100Hzの振動刺激が与えられる。右側の体幹側面に与えられる振動刺激の強度は、I1である。また、第2の振動刺激出力として、振動装置20Laによって、左側の体幹側面に、50Hzの振動刺激が与えられる。左側の体幹側面に与えられる50Hzの振動刺激の強度は、0〜I2の範囲で鋸歯状に変動せしめられる。また、視覚刺激出力として、ステアリングホイールを左側に旋回させる身体動作を表す動画が、表示画面9に表示される。
所定加速度以上での加速の場合、第1の振動刺激出力として、振動装置20La、20Raによって、体幹の左右側面、即ち左右の広背筋の腱に、100Hzの振動刺激が与えられる。手動運転によって車両1を加速させる場合、運転者の上半身は、背もたれ部2cに押し付けられる。その際、左右の広背筋が伸張する。即ち、左右の広背筋が動員される。運転者は、左右の広背筋の腱に100Hzの振動刺激が与えられることによって、運転者は、左右の広背筋が伸張していると錯覚する。運転者は、手動運転で運転操作を行う場合と同じ筋肉が伸張しているように錯覚するので、手動運転での運転操作の運動イメージを想起することができる。
所定加速度以上での加速の場合、第2の振動刺激出力は実行されない。
また、所定加速度以上での加速の場合、視覚刺激出力として、加速操作部5としてのアクセルペダルを踏み込む身体動作を表す動画が表示画面9に表示される。
所定減速度以上の減速の場合、第1の振動刺激出力として、振動装置20Lb、20Rbによって、運転者の臀部の左右側面、即ち左右の中臀筋の腱に、100Hzの振動刺激が与えられる。手動運転によって車両1を減速させる場合、運転者の上半身が多少前のめりとなる。その際、左右の中臀筋が伸張する。即ち、左右の中臀筋が動員される。運転者は、左右の中臀筋の腱に100Hzの振動刺激が与えられることによって、左右の中臀筋が伸張していると錯覚する。運転者は、手動運転で運転操作を行う場合と同じ筋肉が伸張しているように錯覚するので、手動運転での運転操作の運動イメージを想起することができる。
所定減速度以上の減速の場合、第2の振動刺激出力は実行されない。
また、所定減速度以上での減速の場合、視覚刺激出力として、制動操作部6としてのブレーキペダルを踏み込む身体動作を表す動画が表示画面9に表示される。
なお、図7の刺激情報214を用いて例示された各対象動作は、あくまでも一例である。任意の動作が対象動作として追加され得る。また、図7の刺激情報214を用いて例示された動作のうちの一部または全部は、変更または削除され得る。
例えば、右左折の動作のみが対象動作として見なされてもよいし、車線変更の動作のみが対象動作として見なされてもよい。
また、所定加速度以上の加速の動作が対象動作として見なされる例を説明したが、加速度の大きさにかかわらず加速の動作が対象動作として見なされてもよい。同様に、減速度の大きさにかかわらず減速の動作が対象動作として見なされてもよい。
また、図7の刺激情報214によって各対象動作に対応付けられた刺激出力は、一例である。第1の振動刺激出力は、対象動作を手動運転で実現する場合の運転操作時に動員される運転者の身体部位に、筋肉の伸張を錯覚せしめる特定の周波数の振動刺激が与えられる限り、任意の変更が可能である。また、第2の振動刺激出力は、車両1の回頭方向と同じ側の身体部位に、筋肉の伸張を錯覚せしめない周波数の振動刺激が与えられる限り、任意の変更が可能である。また、視覚刺激出力は、出力内容が運転操作の身体動作を表す限り、任意の変更が可能である。例えば、視覚刺激出力として、運転操作の身体動作を表す静止画が出力され得る。
図6に説明を戻す。取得部212は、自動運転制御部300から、対象動作の実行予定を取得する。対象動作の実行予定とは、図7の例に従えば、右車線への車線変更の実行予定、左車線への車線変更の実行予定、右折の実行予定、左折の実行予定、所定加速度以上の加速の実行予定、または、所定減速度以上の減速の実行予定である。
自動運転制御部300は、設定ルートおよび周辺環境情報に基づいて、まず、車両1の予定動作を演算し、その後、予定動作を実行する。取得部212は、自動運転制御部300から予定動作を逐次取得して、取得した予定動作が対象動作に該当するか否かを判断することで、対象動作の実行予定を取得する。
なお、対象動作の実行予定の取得方法は、上述の方法に限定されない。例えば、自動運転制御部300は、予定動作が対象動作に該当するか否かを判断し、予定動作が対象動作に該当する場合、その予定動作を取得部212に通知してもよい。
取得部212は、対象動作の実行予定を取得すると、刺激情報214を参照することによって、その対象動作に対応する刺激出力を特定する。そして、取得部212は、特定した刺激出力を出力部213に通知する。
出力部213は、特定された刺激出力を、対象動作が実行される前のタイミングで実行する。例えば、出力部213は、対象動作が車両1を回頭する動作の場合、操舵システム22が回頭制御を行う所定時間前に、刺激出力を実行する。
刺激出力の実行タイミングと対象動作の実行タイミングとの間の間隔は、例えば、1〜2秒程度である。つまり、対象動作の実行タイミングよりも1〜2秒前に、出力部213は、刺激出力を実行する。運転者は、刺激出力が実行されてから対象動作が実行されるまでの間に、対応する運動イメージを想起したり運動計画を立案したりすることができる。
なお、双方のタイミングの間隔は、上記に限定されない。また、双方のタイミングの間隔は、固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。また、刺激出力の期間が例えば30秒などある程度の長さを持ち、対象動作の実行タイミングよりも1〜2秒前などに刺激出力が開始されることで、刺激出力の実行中に対象動作が実行されてもよい。
図13は、第1の実施形態の運転支援装置としてのECU21の動作を示すフローチャートである。
取得部212は、自動運転制御部300が自動運転を実行中であるか否かを判定する(S101)。自動運転制御部300が自動運転を実行中である場合(S101、Yes)、取得部212は、予定動作を自動運転制御部300から取得する(S102)。そして、取得部212は、取得した予定動作が対象動作に該当するか否かを判定する(S103)。取得部212は、例えば、刺激情報214を参照することによって、予定動作が対象動作に該当するか否かを判定することができる。
予定動作が対象動作に該当する場合(S103、Yes)、取得部212は、刺激情報214を参照することによって、その対象動作に対応する刺激出力、即ち、第1の振動刺激出力、第2の振動刺激出力、および視覚刺激出力を特定する(S104)。取得部212は、特定した刺激出力を出力部213に通知する。なお、加速または減速の場合のように、第2の振動刺激出力が設定されていない場合があってもよい。
出力部213は、特定された刺激出力を実行する(S105)。
S105の処理では、出力部213は、対応する振動装置20を用いることによって、第1の振動刺激出力および第2の振動刺激出力を実行する。出力部213は、例えば、対応する振動装置20に振動刺激を開始する信号と周波数を指定する信号とを送信する。振動刺激を開始する信号と周波数を指定する信号とを受信した振動装置20は、指定された周波数での振動を開始する。
また、S105の処理において、出力部213は、記憶部211に保持されている複数の動画データ215のうちから、対応する動画データ215を読み出して、読み出した動画データ215を表示画面9に出力する。
S105の処理によって刺激出力が実行された後、自動運転制御部300によって、対象動作が実行される(S106)。
自動運転制御部300が自動運転を実行中でない場合(S101、No)、または、取得した予定動作が対象動作に該当しない場合(S103、No)、または、S106の処理の後、S101の処理が再び実行される。
以上述べたように、第1の実施形態の運転支援装置としてのECU21は、取得部212および出力部213として機能する。取得部212は、自動運転の実行中に車両1の対象動作の実行予定を取得する。出力部213は、対象動作の実行予定が取得された場合、第1の振動刺激出力を実行する。第1の振動刺激出力は、対象動作を手動運転で実現する場合の運転操作時に動員される運転者の身体部位に、座席2bに配設された振動装置20によって、運動錯覚を誘起せしめる特定の周波数の振動刺激を与えることである。
この構成により、第1の実施形態の運転支援装置としてのECU21は、運転者に、手動運転で運転操作を行う運動イメージを想起せしめ、運動計画を脳内で立案せしめることができる。第1の実施形態の運転支援装置としてのECU21は、運転者の脳に働きかけて、運転者の脳に高度な活動を実行せしめることができるので、1回の刺激出力で覚醒状態を長く維持することができる。よって、運転者の覚醒度の低下を効率的に抑制することが可能である。
また、出力部213は、対象動作が実行されるよりも前のタイミングで第1の振動刺激出力を実行する。
この構成により、振動刺激と対象動作との関連付けが運転者の脳内で強まり、振動刺激に対する脳内の神経活動の反応が安定化される。よって、1回の刺激出力で覚醒状態を長く維持する効果を安定的に実現することが可能となる。
また、出力部213が対象動作の実行前に第1の振動刺激の出力が実行されることで、運転者は、対象動作の実行を事前にイメージすることができる。これにより、車酔いの発生を抑制したり、自動運転の制御に対する違和感を低減したり、乗り心地を向上したりすることができる。
なお、出力部213は、必ずしも対象動作が実行されるよりも前のタイミングで第1の振動刺激出力を実行しなくてもよい。出力部213は、対象動作が実行されると同時に第1の振動刺激出力を実行してもよい。
また、車線変更の場合、出力部213は、車両1の回頭方向とは逆側の臀部側面に、筋肉の伸張を錯覚せしめる周波数の振動刺激を与える。右左折の場合、出力部213は、車両1の回頭方向とは逆側の体幹側面に、筋肉の伸張を錯覚せしめる周波数の振動刺激を与える。
このように、対象動作が車両1が回頭する動作である場合、出力部213は、車両1の回頭方向とは逆側の身体部位に、筋肉の伸張を錯覚せしめる周波数の振動刺激を与える。この構成により、手動運転で対象動作を実現する場合の身体動作の運動イメージを運転者に想起せしめることができる。
また、車線変更の場合、出力部213は、車両1の回頭方向と同じ側の臀部側面および大腿側面に、筋肉の伸張を錯覚せしめない周波数の振動刺激を、強度を変動させながら与える。右左折の場合、出力部213は、車両1の回頭方向と同じ側の体幹側面に、筋肉の伸張を錯覚せしめない周波数の振動刺激を、強度を変動させながら与える。
このように、車両1が回頭する動作の場合、出力部213は、車両1の回頭方向と同じ側の身体部位に、筋肉の伸張を錯覚せしめない周波数の振動刺激を与える。この構成により、運転者は、車両1の進行方向を連想せしめられることによって、車両1の進行方向が通知される。その結果、運動イメージをより強めることができる。
また、車両1の回頭方向とは逆側の身体部位に与えられる、筋肉の伸張を錯覚せしめる周波数の強度は、車両1の回頭方向と同じ側の身体部位に与えられる、筋肉の伸張を錯覚せしめない周波数の振動刺激の強度の最大値よりも小さい。これにより、運転者は、車両1の回頭方向と同じ側の身体部位に与えられる振動刺激をより強く感じることができるので、進行方向をより連想し易くなる。
また、出力部213は、第1の振動刺激出力の際に、対象動作を手動運転で実現する際の運転操作の身体動作を示す画像を表示画面9に表示する。
この構成により、対象動作を手動運転で実現する際の運転操作の身体動作が表示画面9に可視化されるので、運動イメージをより強めることができる。
なお、運転者に運動錯覚を誘起せしめる周波数は、筋肉の伸張を錯覚せしめる周波数であり、例えば70ヘルツから110ヘルツまでの範囲の周波数である。
<第2の実施形態>
高速道路の走行時などにおいては、対象動作の実行頻度が低下する場合がある。そのような場合、運転者に対する刺激出力の機会が減少することで、覚醒状態を持続的に維持することができない虞がある。そこで、第2の実施形態の運転支援装置は、対象動作が実行されない期間が一定時間継続した場合、車両1に強制的に何らかの対象動作を実行させることで、刺激出力の実行機会を創出する。
図14は、第2の実施形態のECU21の機能的構成の一例を示すブロック図である。第1の実施形態と異なる要素には、第1の実施形態と異なる符号を付す。第1の実施形態と同じ要素については、説明を省略する。
ECU21は、自動運転制御部300および運転支援部210aとして機能する。運転支援部210aは、第2の実施形態の運転支援装置としての機能であって、記憶部211、取得部212a、出力部213a、および計測部216を備える。
記憶部211は、刺激情報214および動画データ215を保持する。
計測部216は、最後に何れかの対象動作が実行されてからの経過時間を計測するカウンタである。計測部216は、対象動作の実行後、カウント値をリセットしてカウントをリスタートする。
取得部212aおよび出力部213aは、第1の実施形態と同様の動作(即ち図13に示される動作)に加え、次に説明する動作を実行する。
取得部212aは、最後に何れかの対象動作が実行されてからの経過時間が所定のしきい値に至った場合、強制実行する対象動作を決定し、その対象動作に対応する刺激出力を特定する。以降、強制実行する対象動作を、第2の対象動作と表記する。経過時間と比較される上述のしきい値は、任意に設定可能である。
第2の対象動作の決定方法は、特定の方法に限定されない。例えば、取得部212aは、自動運転制御部300を介して走行ルートおよび周辺環境情報を取得して、取得したこれらの情報に基づいて、刺激情報214に記録されている6つの対象動作のうちの実行可能な対象動作を選択し、選択した対象動作を、第2の対象動作として決定する。例えば、高速道路の走行中において、右車線に他の車両が検知されていない場合、右車線への車線変更が実行可能である。その場合、取得部212aは、右車線への車線変更を、第2の対象動作として決定する。
出力部213aは、第2の対象動作に対応する刺激出力を実行するとともに、自動運転制御部300に指示を送って、第2の対象動作を実行させる。出力部213aは、第2の対象動作を強制的に実行させる前に、第2の対象動作に対応する刺激出力を実行する。
図15は、第2の実施形態の運転支援装置としてのECU21の動作を示すフローチャートである。
取得部212aは、計測部216のカウント値を参照することによって、最後に何れかの対象動作が実行されてからの経過時間が所定のしきい値に至ったか否かを判定する(S201)。経過時間がしきい値に至った場合(S201、Yes)、取得部212aは、第2の対象動作を決定する(S202)。
S202の処理に続いて、取得部212aは、刺激情報214を参照することによって、第2の対象動作に対応する刺激出力を特定する(S203)。取得部212aは、第2の対象動作と、第2の対象動作に対応する刺激出力とを出力部213aに通知する。
出力部213aは、第2の対象動作に対応する刺激出力を実行する(S204)。その後、出力部213aは、自動運転制御部300に指示を送ることによって、自動運転制御部300に、第2の対象動作を実行させる(S205)。
経過時間がしきい値に至っていない場合(S201、No)、またはS205の処理の後、S201の判定処理が再び実行される。
このように、第2の実施形態によれば、計測部216は、最後に対象動作が実行されてからの経過時間を計測する。経過時間が所定のしきい値を超えた場合、出力部213aは、第2の対象動作に対応する刺激出力を実行する。また、出力部213aは、自動運転制御部300に、第2の対象動作を実行せしめる。
この構成により、第2の実施形態の運転支援装置は、対象動作が実行されない期間が継続する場合であっても、刺激出力を実行する機会を創出するので、覚醒状態を継続的に維持することができる。
なお、以上の説明では、出力部213aは、第1の振動刺激出力、第2の振動刺激出力、および視覚刺激出力を実行する、として説明した。出力部213aは、第1の振動刺激出力を実行すればよく、必ずしも第1の振動刺激出力、第2の振動刺激出力、および視覚刺激出力の全てを実行しなくてもよい。
また、出力部213aは、第2の対象動作が実行される前に、対応する刺激出力を実行する、として説明した。出力部213aは、第2の対象動作が実行されると同時に対応する刺激出力を実行してもよい。
なお、第1の実施形態および第2の実施形態の説明では、運転支援装置としての機能(運転支援部210、210a)は、ECU21、即ち1つのコンピュータ、によって実現される、として説明した。運転支援装置としての機能に含まれる各機能構成部(記憶部211、取得部212、212a、出力部213、213a、および計測部216)は、複数のコンピュータに分散して実現され得る。
また、以上では、運転支援装置としての機能と、自動運転制御部300とは、同一のECU21によって実現される、として説明した。運転支援装置としての機能と、自動運転制御部300とは、それぞれ異なるコンピュータによって実現され得る。
また、以上では、運転支援装置としての機能は、CPU21aが運転支援プログラム200を実行することによって実現される、として説明した。運転支援装置としての機能の一部または全部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア回路によって実現され得る。
また、運転支援装置としての機能は、任意の携帯用の情報端末によって実現され得る。例えば、運転者は、予めスマートフォンに運転支援プログラム200をダウンロードしておく。そして、運転者は、スマートフォンを、車内ネットワーク26および各振動装置20に無線または有線で接続し、運転支援プログラム200を起動する。スマートフォンは、運転支援装置としての機能を開始し、ECU21から自動運転の予定動作を取得したり、各振動装置20に信号を送ることで各振動装置20を制御したりする。
このように、第1の実施形態および第2の実施形態の運転支援装置としての機能は、種々のハードウェアによって実現され得る。
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。