本明細書に記載される発明は、初めて、レクチン様酸化低密度リポタンパク質受容体−1(LOX1)がCSCに過剰発現し、CSCにおける機能的に関連性のある治療標的であることを実証する。諸報告で幾つかの癌におけるLOX1発現の可能性が言及されているが、癌、癌転移の治療、特にCSCの阻害に向けた新規の予期せぬ方法をもたらすような、任意のCSC表現型に至るまでLOX1の発現及び機能を同定した報告はない。本明細書に開示される特定の態様及び非限定的な実施形態に示されるとおり、LOX1活性を標的化して阻害する本新規方法は、CSC表現型を有する細胞を含み及びそれを呈する癌に対して有用且つ有効である。一部の例示的な実施形態において、本明細書に開示される方法及び薬剤は、例えば、膵癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、胃癌、肺癌、頭頸部癌、及び乳癌を含めた、LOX1を発現するCSC細胞を含む癌のターゲティングに使用し得る。従って、本開示は、癌に罹患している患者の様々な癌の阻害及び/又は治療並びにクオリティ・オブ・ライフの向上に用いることのできる、CSCを阻害する方法及び薬剤を含む新規ターゲティング戦略を提供する。
LOX1は、ジスルフィド結合したII型膜貫通タンパク質である。LOX1は、初めは酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)の主要な受容体として同定された(Kume et al.,1997)。この受容体は、短いN末端細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、ネックドメイン及びC型レクチンドメイン(CTLD)からなり、CTLDの構造は解かれている(Ohki et al.,(2005))。加えて、LOX1はネックドメインでタンパク質分解によって切断され、可溶性LOX1(sLOX1)を放出し得る。LOX1はクラスEスカベンジャー受容体であり、oxLDL、C反応性タンパク質(CRP)、ホスファチジルセリン、終末糖化産物(AGE)、スモールデンスリポタンパク質(sdLDL)、酸化HDL、N4−オキソノナノイルリジン(ONL)、熱ショックタンパク質(hsp)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、血小板、白血球及びアポトーシス細胞を含めた複数のリガンドに結合する。これらのリガンドの多く、特にoxLDLは、アテローム性動脈硬化症に関連付けられている。RhoA/Rac1、一酸化窒素、p38MAPK、プロテインキナーゼB及びC、ERK1/2、及びNFκBを含めて、複数のシグナル伝達経路がLOX1活性化に関連付けられている。例えば、Taye et.al.,Eur J Clin Invest.43(7):740−5(2013)を参照のこと。
前臨床エビデンスによれば、LOX1は、血管機能不全、プラーク進展、破裂及び血栓症、アテローム性動脈硬化症及び炎症状態の促進に関係している。例えば、Ulrich−Merzenich et al.,(2013)を参照のこと。例えば、LOX1ノックアウトマウスではアテローム性大動脈硬化症が軽減され、且つ血管壁コラーゲン沈着が減少しており(Mehta et al.,(2007))、一方、LOX1の過剰発現によりアテローム性動脈硬化プラークの形成が増加し(Inoue et al.,(2005);及びWhite et al.,(2011))、ここでLOX1発現は不安定プラークの肩に観察され、マクロファージ集積、アポトーシス、及びMMP−9発現が付随した(Li et al.,(2010))。中和LOX1抗体によってアセチルコリン誘導性冠細動脈拡張が回復し(Xu et al.,(2007))、ラットにおけるバルーン傷害後の内膜肥厚が減少した(Hinagata et al.,(2006))。ヒトにおけるLOX1発現は構成的でないが、炎症促進性刺激によって動的に誘導することが可能である。アテローム性動脈硬化プラークでは、LOX1は内皮細胞、平滑筋細胞及びマクロファージに発現する。興味深いことに、血清中sLOX1が急性冠症候群(ACS)患者におけるプラークの不安定性及び破裂の診断指標となること(Nakamura et al.,(2010));ACSの再発又は死亡の予測指標となること(Kume et al.,1997)が提案されており;及び複合病変数の増加に関連付けられている(Zhao et al.,(2011))。
上記に加えて、LOX1は、前立腺癌などの幾つかの癌型において発現が増加することが示されている(Fangning Wan et al.(2015))。また、高いタンパク質発現レベルが、高い体重指数と併せて、扁平上皮非小細胞肺癌における予後不良の予測となり得ることも報告されている(Long et al.,(2015))。LOX1はまた、NF−kBの活性化を通じた正常乳房上皮細胞株(MCF10A)の腫瘍原性細胞株への変換に関与することも報告されており、細胞増殖及び遊走における何らかの関与が推測される(Khaidakov M et al.,(2011)及びHirsh HA et al.(2010))。これらの報告は、幾つかの癌でLOX1が役割を果たし得る可能性について考察しているが、本明細書に提供される開示は、LOX1がCSC生物学において役割を果たしていることの初めてのエビデンスであると考えられる。
本開示は、CSCに対する新規標的としてのLOX1の同定についての説明及び概要を含む。本明細書において言及されるとき、関連性のあるCSC標的としてのLOX1の決定は、膵癌から得られた患者由来異種移植片(PDX)モデルの表現型選択及び分析を取り入れた例示的な例によって考察される。PDXモデルにおいて腫瘍スフェアの生成によってCSCをエンリッチし、及び実施例で考察するスクリーニング過程を通じ、LOX1の阻害薬を利用してCSCを阻害する(例えば、増殖を阻害し、分化を誘導し、CSCアポトーシスを誘導し、又は他の方法でCSC増殖を死滅させ若しくはその進行を遅らせる)ことができる。
従って、LOX1はCSCの成長及び活性において役割を果たし、これはCSC生物学にとって完全に新規である。本開示は、CSC、例えば膵癌モデルに由来するCSCなどがLOX1を発現し、次にはLOX1がCSC自己複製及び増殖に影響を及ぼし得ることを実証する例示的な実施形態を提供する。LOX1活性をLOX1阻害薬、例えばモノクローナル抗体などで中和することを含む戦略は、CSC阻害に有意な効果をもたらすことができ、LOX1を標的化して腫瘍中のCSCを減少させる療法の多大な可能性を裏付ける。
本開示の更に詳細な説明を続ける前に、本開示は具体的な組成物又は方法ステップに限定されず、従って異なり得ることが理解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」には、文脈上特に明確に指示されない限り複数の指示対象が含まれることに留意しなければならない。更に、これらの用語並びに用語「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書では同義的に使用することができる。
更に、「及び/又は」は、2つの指定される特徴又は構成要素の各々の、他方を伴う又は伴わない具体的な開示と解釈されなければならない。従って、用語「及び/又は」は、「A及び/又はB」などの表現で用いられるとき、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、用語「及び/又は」は、「A、B、及び/又はC」などの表現で用いられるとき、以下の態様:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)の各々を包含することが意図される。
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei−Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressが、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
単位、接頭語、及び記号は、その国際単位系(SI)で認められている形式で示される。数値範囲は、その範囲を定義する数を含む。特に指示されない限り、アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシ方向に記載する。本明細書に提供される見出しは、本明細書を全体として参照することにより有され得る本開示の様々な態様の限定ではない。従って、以下に直ちに定義する用語は、本明細書を全体として参照することによってより完全に定義される。
態様が「〜を含む(comprising)」という言葉を伴い記載される場合は常に、「〜からなる(consisting of)」及び/又は「〜から本質的になる(consisting essentially of)」の用語で記載される他の点では類似の態様もまた提供される。
用語「約」及び「近似的に」は、本発明との関連において、当業者が問題の特徴の技術的効果がなおも確保されると理解するであろう精度の幅を指す。この用語は、典型的には、指示される数値からの約±10%、又は約±5%の偏差を包含する。
2つの配列間のパーセント同一性の決定は、好ましくは、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873−5877の数学的アルゴリズムを用いて達成される。かかるアルゴリズムは、例えば、NCBIのウェブサイトで利用可能なAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−410のBLASTn及びBLASTpプログラムに組み込まれている。パーセント同一性の決定は、好ましくはBLASTn及びBLASTpプログラムの標準パラメータで実施される。
アミノ酸は、本明細書では、IUPAC−IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨するその一般的に知られる三文字記号又は一文字記号によって参照され得る。同様に、ヌクレオチドは、その一般的に認められた一文字コードによって参照され得る。
用語「LOX1」及び「レクチン様酸化低密度リポタンパク質受容体1」は、本明細書では同義的に使用され、LOX1及び/又はLOX1の生物学的に活性な断片を指す。3つのhLOX1アイソフォームのcDNA及びアミノ酸配列が、GenBank受託番号:NP_002534.1、NP_001166103.1、及びNP_001166104.1(これらの各々は、本明細書において全体として参照により援用される)にて提供される。
用語「阻害する」、「遮断する」、「低減する」、及び「抑制する」は、本明細書では同義的に使用され、活性の完全な遮断を含めた、生物学的活性の統計的に有意な任意の低下を指す。例えば、「阻害」は、LOX1生物学的活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%の低下を指し得る。従って、例えば、細胞表面LOX1を発現する細胞(例えば、CSC)における且つLOX1リガンド(例えば、oxLDL、CRP及びAGE)の存在下でのLOX1媒介性シグナル伝達経路に対する効果を記述するために用語「阻害」又は「抑制」が適用されるとき、これらの用語は、LOX1結合タンパク質、例えば抗LOX1抗体が、細胞におけるLOX1媒介性の誘導シグナル伝達を統計的に有意なレベルで(例えば、0.05以下のp値で)低下させる能力を指す。更なる態様において、LOX1媒介生物学的活性の阻害又は遮断はプログラム細胞死(即ちアポトーシス)をもたらす。更なる実施形態において、LOX1媒介生物学的活性の阻害又は遮断は細胞(例えばCSC)の分化をもたらす。
本明細書で同義的に使用されるとおりの用語「抗体」又は「免疫グロブリン」には、全抗体及びその任意の抗原結合断片又は単鎖が含まれる。典型的な抗体は、ジスルフィド結合によって相互に接続された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖とを含む。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではVHと省略する)と重鎖定常領域とを含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略する)と軽鎖定常領域とを含む。軽鎖定常領域は1つのドメインClを含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FW)と呼ばれるより保存された領域が間に散在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性(hypervariablity)領域に更に細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順番、即ち、FW1、CDR1、FW2、CDR2、FW3、CDR3、FW4に並んだ3つのCDRと4つのFWとを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンが免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含めた宿主組織又は因子に結合するのを媒介することができる。本開示の例示的抗体には、典型的な抗体、scFv、及びそれらの組み合わせ(例えばscFvが典型的な抗体の重鎖及び/又は軽鎖のいずれかのN末端に(例えばペプチド結合を介するか、又は化学的リンカーを介して)共有結合的に連結しているか、又は典型的な抗体の重鎖及び/又は軽鎖にインターカレートしている)が含まれる。
用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位によってタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、又は前述の組み合わせなどの標的を認識してそれに特異的に結合する免疫グロブリン分子を指し得る。用語「抗体」には、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、又はその抗体断片が含まれる。
用語「抗体」は、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片など)、単鎖Fv(scFv)突然変異体、少なくとも2つのインタクトな抗体から作成される二重特異性抗体などの多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子を、その抗体が所望の生物学的活性を呈する限りにおいて包含する。抗体は、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと称されるそれらの重鎖定常ドメインのアイデンティティに基づき、5つの主要な免疫グロブリンクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、又はそのサブクラス(アイソタイプ)(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のいずれかであり得る。異なる免疫グロブリンクラスは異なる周知のサブユニット構造及び三次元配置を有する。抗体はネイキッドであっても、又は毒素、放射性同位元素等の他の分子とコンジュゲートしていてもよい。
用語「生殖細胞系列化」は、抗体中の特定の位置にあるアミノ酸を、生殖細胞系列に見られるのと同じ位置に存在するそれらのアミノ酸に復帰突然変異させることを意味する。
用語「抗原結合抗体断片」又は「LOX1結合抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分を指し、且つインタクトな抗体の相補性決定可変領域を指す。抗体断片の例としては、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、線状抗体、一本鎖抗体(例えば、ScFv)、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。本開示は、LOX1結合抗体断片であって、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ダイアボディ、又は一本鎖抗体分子である抗体断片を更に提供する。
「モノクローナル抗体」は、単一の抗原決定基又はエピトープの高度に特異的な認識及び結合に関与する均一な抗体集団を指す。これはポリクローナル抗体と対照的であり、ポリクローナル抗体は典型的には、種々の抗原決定基に対する種々の抗体を含む。用語「モノクローナル抗体」は、インタクトな及び完全長のモノクローナル抗体、並びに抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単鎖(scFv)突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子の両方を包含する。更に、「モノクローナル抗体」は、限定はされないが、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、及びトランスジェニック動物によることを含め、幾つもの方法で作製されたかかる抗体を指す。
用語「ヒト化抗体」は、最小限の非ヒト(例えばマウス)配列を含むように操作された、非ヒト(例えばマウス)免疫グロブリンに由来する抗体を指す。典型的には、ヒト化抗体は、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、又はハムスター)のCDRの残基によって相補性決定領域(CDR)の残基が置き換えられているヒト免疫グロブリンである(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988))。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FW)残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種の抗体の対応する残基に置き換えられる。
ヒト化抗体は、Fvフレームワーク領域内及び/又は置き換えられた非ヒト残基の範囲内のいずれかにおける更なる残基の置換によって更に修飾することにより、抗体の特異性、親和性、及び/又は能力を精緻化し、最適化することができる。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに対応するCDR領域の全て又は実質的に全てを含有する少なくとも1つ、典型的には2つ又は3つの可変ドメインの実質的に全てを含む一方で、FR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、典型的にはヒト免疫グロブリンのものである免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)の少なくとも一部分も含み得る。ヒト化抗体の作成に用いられる方法の例は、米国特許第5,225,539号明細書又は同第5,639,641号明細書に記載されている。
抗体の「可変領域」は、単独の、或いは組み合わせでの、抗体軽鎖の可変領域又は抗体重鎖の可変領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域は、各々、超可変領域としても知られる3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FW)からなる。各鎖のCDRはFW領域によって且つ他方の鎖のCDRと近接して一体に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するには少なくとも2つの技法がある:(1)異種間配列多様性に基づく手法(即ち、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,国立衛生研究所(National Institutes of Health),Bethesda Md.));及び(2)抗原抗体複合体の結晶学的調査に基づく手法(Al−lazikani et al.,J.Molec.Biol.273:927−948(1997))。加えて、当該技術分野では、CDRの決定にこれらの2つの手法の組み合わせが時に用いられることもある。
Kabat付番方式は、概して、可変ドメインの残基(およそ軽鎖の残基1〜107及び重鎖の残基1〜113)を参照するときに使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,5th Ed.公衆衛生局(Public Health Service),国立衛生研究所(National Institutes of Health),Bethesda,Md.(1991)(本明細書において参照により援用される))。Kabatにあるようなアミノ酸位置の付番は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.公衆衛生局(Public Health Service),国立衛生研究所(National Institutes of Health),Bethesda,Md.(1991)における抗体編集物の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用される付番方式を指す。この付番方式を使用すると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFW又はCDRの短縮、又はそこへの挿入に対応するより少ない又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後ろに単一のアミノ酸挿入(Kabatによるときの残基52a)及び重鎖FW残基82の後ろに挿入残基(例えば、Kabatによるときの残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。
所与の抗体について、Kabatの残基付番は、相同性領域において抗体の配列を「標準」Kabat付番配列とアラインメントすることにより決定し得る。代わりにChothiaは、構造ループの位置を参照する(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。Kabat付番規則を用いて付番したとき、Chothia CDR−H1ループの末端はループの長さに応じてH32〜H34の間で変わる(これは、Kabat付番スキームがH35A及びH35Bに挿入を置くためである;35Aも35Bも存在しない場合、このループは32で終わる;35Aのみが存在する場合、このループは33で終わる;35A及び35Bの両方が存在する場合、このループは34で終わる)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの間の妥協案に相当し、Oxford MolecularのAbM抗体モデル化ソフトウェアに用いられている。
IMGT(ImMunoGeneTics)もまた、CDRを含めた免疫グロブリン可変領域用の付番方式を提供している。例えば、Lefranc,M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.27:55−77(2003)(本明細書において参照により援用される)を参照のこと。IMGT付番方式は、5,000個を超える配列のアラインメント、構造データ、及び超可変ループの特徴付けに基づいたもので、あらゆる種の可変領域及びCDR領域の容易な比較が可能である。IMGT付番スキーマによれば、VH−CDR1は26〜35位にあり、VH−CDR2は51〜57位にあり、VH−CDR3は93〜102位にあり、VL−CDR1は27〜32位にあり、VL−CDR2は50〜52位にあり、及びVL−CDR3は89〜97位にある。
本明細書全体を通じて用いられるとおり、記載されるVH CDR配列は古典的Kabat付番位置に対応し、即ちKabat VH−CDR1は31〜35位にあり、VH−CDR2は50〜65位にあり、及びVH−CDR3は95〜102位にある。VL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3もまた古典的Kabat付番位置、即ち、それぞれ24〜34位、50〜56位及び89〜97位に対応する。
用語「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体、又は当該技術分野において公知の任意の技法を用いて作製された、ヒトによって産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義には、インタクトな又は完全長の抗体、その断片、及び/又は少なくとも1つのヒト重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチドを含む抗体、例えばマウス軽鎖及びヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体などが含まれる。
用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2つ以上の種に由来する抗体を指す。典型的には、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する1つの哺乳動物種(例えば、マウス、ラット等)に由来する抗体の可変領域に対応し、一方、定常領域が、当該の種における免疫応答の誘導を回避するため、別の種(通常はヒト)に由来する抗体の配列と相同である。
用語「TM」又は「TM突然変異体」は、その突然変異を有する抗体のエフェクター機能(例えば、ADCC)の低下をもたらすIgG1定常領域における突然変異を指す。TM突然変異体は、IgG1の重鎖に導入された、エフェクターヌルヒトIgG1をもたらす3つの突然変異L234F/L235E/P331Sの組み合わせ(EU付番 Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,米国公衆衛生局(Public Health Service),国立衛生研究所(National Institutes of Health),Washington,D.C.)を含む。
用語「YTE」又は「YTE突然変異体」は、ヒトFcRnとの結合の増加をもたらし、且つその突然変異を有する抗体の血清中半減期を改善するIgG1 Fcにおける突然変異を指す。YTE突然変異体は、IgG1の重鎖に導入された、3つの突然変異M252Y/S254T/T256Eの組み合わせ(EU付番 Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,米国公衆衛生局(Public Health Service),国立衛生研究所(National Institutes of Health),Washington,D.C.)を含む。米国特許第7,658,921号明細書(参照により本明細書に援用される)を参照のこと。YTE突然変異体は、野生型バージョンの同じ抗体と比較したとき抗体の血清中半減期が約4倍増加することが示されている(Dall’Acqua et al.,J.Biol.Chem.281:23514−24(2006))。米国特許第7,083,784号明細書(参照により全体として本明細書に援用される)も参照のこと。
用語「LOX1結合タンパク質」、「抗LOX1抗体」、又は「LOX1に特異的に結合する抗体」は、抗体がLOX1の標的化において治療剤又は診断試薬として有用となるような十分な親和性でLOX1に結合する能力を有する抗LOX1抗体などのLOX1結合タンパク質を指す。無関係の非LOX1タンパク質に対する抗LOX1抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、BIACORE(登録商標)(分析物として組換えLOX1を使用し且つリガンドとして抗体を使用するか、又はその逆)、結合平衡除外アッセイ(KINEXA(登録商標))、又は当該技術分野において公知の他の結合アッセイによって計測するとき、LOX1に対するこの抗体の結合の約10%未満である。特定の態様において、LOX1結合タンパク質は、解離定数(KD)が≦1nM、≦0.5nM、≦0.1nM、≦10pM、又は≦1pMであるか、又は一部の例では、KDが約150pM〜約600pM又は約400pM〜約600pMの完全長抗体又はLOX1結合抗体断片である。特定の態様において、LOX1結合タンパク質は、解離定数(KD)が≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦10pM、≦1pM、又は≦0.1pMであるか、又は一部の例では、KDが約150pM〜約600pMの完全長抗体又はLOX1結合抗体断片である。
「アンタゴニスト」又は「遮断」LOX1結合タンパク質は、LOX1の生物学的活性を阻害し又は低下させるものである。一部の態様において、アンタゴニストLOX1結合タンパク質は、LOX1がoxLDL、AGE、及び/又はCRPに結合する能力を阻害する。一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、LOX1がoxHDL、HSP60、白血球及び/又は活性化血小板に結合する能力を阻害する。特定の態様において、LOX1結合タンパク質は、LOX1の生物学的活性を実質的に又は完全に阻害する。望ましくは、LOX1生物学的活性は10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、又は更には100%低下する。詳細な態様では、LOX1結合タンパク質は、完全長抗体又はLOX1結合抗体断片などの抗LOX1抗体である。更なる態様において、抗LOX1抗体はLOX1の生物学的活性を10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、又は更には100%阻害し又は低下させる。
「結合親和性」は、概して、分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合性相互作用の総和の強度を指す。特に指示がない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、概して解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含めた、当該技術分野において公知の一般的な方法によって計測することができる。低親和性抗体は、概して抗原との結合が遅く、容易に解離する傾向があり、一方、高親和性抗体は、概して抗原と速やかに結合し、結合したまま長く留まる傾向がある。結合親和性を計測する種々の方法が当該技術分野において公知であり、本開示の目的上、そのいずれを用いてもよい。
「効力」は、通常は、特に指定されない限りnM又はpM単位のIC50値として表される。IC50は抗体分子の阻害濃度中央値である。機能アッセイでは、IC50は、生物学的反応をその最大値の50%低下させる濃度である。リガンド結合試験では、IC50は、受容体結合を最大特異的結合レベルの50%低下させる濃度である。IC50は当該技術分野において公知の手段によって計算することができる。
参照抗体と比較したときの本明細書に開示されるLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗体)の効力の向上倍数は、少なくとも約2倍、少なくとも約4倍、少なくとも約6倍、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、少なくとも約110倍、少なくとも約120倍、少なくとも約130倍、少なくとも約140倍、少なくとも約150倍、少なくとも約160倍、少なくとも約170倍、又は少なくとも約180倍又はそれ以上であり得る。
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」又は「ADCC」は、分泌Igが特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合して、それらの細胞傷害性エフェクター細胞による抗原担持標的細胞への特異的結合及び続く細胞毒による標的細胞の死滅が可能となる形態の細胞傷害性を指す。標的細胞の表面に対する特異的高親和性IgG抗体は細胞傷害性細胞を「武装」するものであり、かかる死滅に絶対的に必要である。標的細胞の溶解は細胞外であって、直接的な細胞間接触に必要であり、補体は関与しない。抗体に加えて、抗原担持標的細胞に特異的に結合する能力を有するFc領域を含む他のタンパク質、具体的にはFc融合タンパク質は、細胞媒介性細胞傷害性を達成可能であると考えられる。簡単にするため、Fc融合タンパク質の活性によって生じる細胞媒介性細胞傷害性は、本明細書ではADCC活性とも称される。
「単離されている」LOX1結合タンパク質(例えば、その抗原結合断片、変異体、及び誘導体を含めたLOX1抗体)、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物は、天然には見られない形態のポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物である。単離ポリペプチド(例えば、完全長抗体及びLOX1結合抗体断片を含めた抗LOX1抗体)、ポリヌクレオチド、ベクター、ポリヌクレオチド類、ベクター類、細胞又は組成物には、もはや天然に見られる形態ではなくなる程度まで精製されているものが含まれる。一部の態様において、単離されている抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、又は組成物は、実質的に純粋である。
「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」は、診断、予後判定、又は治療が所望される任意の対象、特に哺乳類対象が意図される。哺乳類対象には、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、クマなどを含めた、ヒト、家畜、農業動物、競技動物、及び動物園動物が含まれる。
A.方法
本開示は、LOX1阻害薬を取り入れた方法に関する幾つもの態様及び実施形態を提供する。本明細書で考察するとおり、これらの態様及び実施形態は、疾患の治療方法、予防方法、進行を阻害し及び/又は遅延させる方法、再燃及び/又は再発リスクの低減方法;特定の細胞集団を標的化し及び/又は死滅させる方法;分化を誘導し及び/又はCSCの自己複製能及び拡大能を低下させる方法;病期を判定することを含め、特定の細胞集団及び/又は疾患を検出し、診断し、及び/又は定量化する方法、及び疾患のモニタリング及び/又は予後判定方法を含めた、疾患に関する様々な方法を包含する。
実施形態において、本開示は、癌幹細胞(CSC)の増殖を阻害する方法を提供し、この方法は、CSCの増殖を阻害し及び/又は生存を低下させるのに有効な量のLOX1阻害薬にCSCを接触させるステップを含む。実施形態において、本方法は、LOX1に選択的なLOX1阻害薬の有効量を投与するステップを含む。一部の実施形態において、阻害薬は、LOX1生化学的カスケードを選択的に阻害する。用語「選択的」は、用語「阻害薬」又は「阻害する」に関連して使用されるとき、標的(例えばLOX1)に対する阻害活性が他の生体分子に対する阻害活性と比べて増加した化合物(例えば、本明細書に記載されるとおりの小分子又は生物学的分子)に関する。一実施形態において、本方法は、追加の抗癌剤と併用した治療有効量のLOX1阻害薬の投与を含む。
実施形態において、本開示は、以前療法を受けたことのある及び治療を必要としている対象の治療抵抗性癌を治療する方法に関し、この方法は、治療抵抗性癌に存在する癌幹細胞(CSC)を阻害し又は死滅させ及び/又はCSCにおける分化を誘導するのに有効な量のLOX1阻害薬を対象に投与するステップを含む。一実施形態において、以前の療法は、放射線照射、手術、免疫療法、化学療法、及び/又はチロシンキナーゼ阻害薬である。
更なる実施形態において、本開示は、以前療法を受けたことのある及び治療を必要としている対象の治療抵抗性癌を治療する方法に関し、この方法は、治療抵抗性癌を治療するのに有効な量のLOX1阻害薬を対象に投与するステップを含む。一実施形態において、以前の療法は、放射線照射、手術、免疫療法、化学療法、及び/又はチロシンキナーゼ阻害薬である。
他の実施形態において、本開示は、癌幹細胞(CSC)を含む癌を治療する方法に関し、この方法は、癌におけるCSCを標的化して阻害し又は死滅させ及び/又はCSCにおける分化を誘導するのに有効な量のLOX1阻害薬を治療を必要としている対象に投与するステップを含む。一実施形態において、本方法は、追加の抗癌剤と併用した治療有効量のLOX1阻害薬の投与を含む。
他の実施形態において、本開示は、癌幹細胞(CSC)を含む癌を治療する方法に関し、この方法は、癌を治療するのに有効な量のLOX1阻害薬を治療を必要としている対象に投与するステップを含む。一実施形態において、本方法は、追加の抗癌剤と併用した治療有効量のLOX1阻害薬の投与を含む。
更なる実施形態において、本開示は、再発癌又は再燃癌を有する対象の癌を治療する方法に関し、この方法は、癌におけるCSCを阻害し又は死滅させ及び/又はCSCにおける分化を誘導するのに有効な量のLOX1阻害薬を対象に投与するステップを含む。一実施形態において、本方法は、追加の抗癌剤と併用した治療有効量のLOX1阻害薬の投与を含む。
更なる実施形態において、本開示は、再発癌又は再燃癌を有する対象の癌を治療する方法に関し、この方法は、癌を治療するのに有効な量のLOX1阻害薬を対象に投与するステップを含む。一実施形態において、本方法は、追加の抗癌剤と併用した治療有効量のLOX1阻害薬の投与を含む。
本開示の他の実施形態は、癌の再発又は再燃を予防する方法に関し、この方法は、癌の再発又は再燃を予防するのに有効な量のLOX1阻害薬を癌の再発又は再燃の予防を必要としている対象に投与するステップを含む。一実施形態において、本方法は、追加の抗癌剤と併用した治療有効量のLOX1阻害薬の投与を含む。
更なる実施形態において、本開示は、癌を有する対象の癌の再燃リスクを低下させる方法に関し、この方法は、癌におけるCSCを阻害し又は死滅させ及び/又はCSCにおける分化を誘導し、それによって対象の癌の再燃リスクを低下させるのに有効な量のLOX1阻害薬を対象に投与するステップを含む。一実施形態において、本方法は、追加の抗癌剤と併用した治療有効量のLOX1阻害薬の投与を含む。
他の実施形態において、本開示は、癌幹細胞(CSC)を除去する方法に関し、この方法は、CSCを除去するのに有効な量のLOX1阻害薬にCSCを接触させるステップを含む。一実施形態において、本方法は、追加の抗癌剤と併用した治療有効量のLOX1阻害薬の投与を含む。
一部の実施形態において、本開示は、癌細胞集団中の癌幹細胞(CSC)の数を選択的に減少させる方法に関し、この方法は、癌細胞集団におけるCSCを阻害し又は死滅させ及び/又はCSCにおける分化を誘導するのに有効な量のLOX1阻害薬に癌細胞集団を接触させるステップを含む。従って、阻害薬は、CSCの更なる増殖を妨げるのに十分な量で治療を必要としている対象に投与されてもよく、及び/又は幾つものCSCに接触させてもよい。一部の実施形態において、阻害薬は、CSC集団に細胞死(アポトーシス)を誘導することによりCSCの数を減少させるのに有効な量で投与されてもよい。更に他の実施形態において、阻害薬は、CSC集団に細胞分化を誘導することによりCSCの数を減少させるのに有効な量で投与されてもよい。従って、一部の実施形態において、1つ又は複数の阻害薬は、必ずしもCSCにアポトーシスを誘導しないこともある量であるが、CSCが対象又は腫瘍形成組織において自己複製しCSC細胞集団を拡大する能力をCSCの分化を誘導することにより低下させ又は調節解除するのに有効な量で提供される。阻害薬はまた、CSCニッチがもはやCSC及び/又は腫瘍組織再生を維持することができないようにCSC「ニッチ」を乱すのに有効な量で提供されてもよい。一実施形態において、本方法は、追加の抗癌剤と併用した治療有効量のLOX1阻害薬の投与を含む。
一部の実施形態において、本開示は、腫瘍成長を低下させ又は阻害する方法を提供し、この方法は、腫瘍成長を低下させ又は阻害するのに有効な量のLOX1阻害薬に腫瘍を接触させるステップを含む。関連する態様において、本開示は、患者の腫瘍成長を低下させ又は阻害する方法を提供し、この方法は、腫瘍成長を低下させ又は阻害するのに有効な量のLOX1阻害薬を患者に投与するステップを含む。一実施形態において、本方法は、追加の抗癌剤と併用した治療有効量のLOX1阻害薬の投与を含む。
更なる実施形態において、本開示は、腫瘍のサイズを低下させる方法を提供し、この方法は、腫瘍サイズを低下させるのに有効な量のLOX1阻害薬に腫瘍を接触させるステップを含む。関連する態様において、本開示は、患者の腫瘍のサイズを低下させる方法に関し、この方法は、腫瘍サイズを低下させるのに有効な量のLOX1阻害薬を患者に投与するステップを含む。一実施形態において、本方法は、追加の抗癌剤と併用した治療有効量のLOX1阻害薬の投与を含む。
一部の実施形態において、本開示は、腫瘍の侵襲性又は転移を阻害し、低下させ、又は予防する方法を提供し、この方法は、腫瘍の侵襲性又は転移を予防し、低下させ、又は阻害するのに有効な量のLOX1阻害薬に腫瘍を接触させるステップを含む。関連する態様において、本開示は、患者の腫瘍の侵襲性又は転移を阻害し、低下させ、又は予防する方法を提供し、この方法は、腫瘍の侵襲性又は転移を予防し、低下させ、又は阻害するのに有効な量のLOX1阻害薬を患者に投与するステップを含む。一実施形態において、本方法は、追加の抗癌剤と併用した治療有効量のLOX1阻害薬の投与を含む。
本開示によって提供される実施形態において、本方法は、LOX1を発現する腫瘍及び/又はCSC、又はCSC集団に関する。更なる実施形態において、腫瘍及び/又はCSC、又はCSC集団はスフェア形成CSCを含み得る。
上記の態様の様々な実施形態において、本方法は、対象を腫瘍疾患及び/又は癌疾患に関して治療することに関する。一部の実施形態において、癌は、消化器癌又は胃腸管癌(例えば、肛門癌;胆管癌;肝外胆管癌;虫垂癌;カルチノイド腫瘍、消化管癌;結腸癌;小児結腸直腸癌を含む結腸直腸癌;小児食道癌を含む食道癌;胆嚢癌;小児胃癌を含む胃癌(gastric cancer)(胃癌(stomach cancer));成人(原発性)肝細胞癌及び小児肝細胞癌を含む肝細胞癌(例えば、肝細胞癌腫);小児膵癌を含む膵癌;肉腫、横紋筋肉腫;膵島細胞膵癌;直腸癌;及び小腸癌);肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)及び小細胞肺癌(SCLC));頭頸部癌(例えば、口唇・口腔癌;小児口腔癌を含む口腔癌;下咽頭癌;小児喉頭癌を含む喉頭癌;原発不明の頸部転移性扁平上皮癌;口腔癌;鼻腔・副鼻腔癌;小児鼻咽腔癌を含む鼻咽腔癌;中咽頭癌;副甲状腺癌;咽頭癌;小児唾液腺癌を含む唾液腺癌;咽喉癌;及び甲状腺癌);及び乳癌から選択される。
上記で考察したとおり、概して「対象」には、ヒト及び非ヒト動物、特に哺乳類が含まれる。対象の治療方法に関する態様の特定の実施形態において、対象の非限定的な例としては、ヒト対象、例えば、障害、例えば癌などの本明細書に記載される障害を有するヒト患者、又は正常な対象が挙げられる。一部の実施形態において、「非ヒト」動物又は対象には、全ての脊椎動物、例えば、非哺乳類(ニワトリ、両生類、爬虫類など)及び哺乳類、例えば、非ヒト霊長類、家畜化された及び/又は農業に有用な動物(ヒツジ、イヌ、ネコ、雌ウシ、ブタ等)、及びげっ歯類(マウス、ラット、ハムスター、モルモット等)が含まれる。本明細書に開示される方法の特定の実施形態において、対象はヒト患者である。
「治療」又は「治療する」は、療法的治療及び予防的若しくは防御的手段の両方を指す。治療を必要としている対象には、既に障害を有する対象並びに障害に罹り易い対象又は障害を予防すべき対象が含まれる。治療を必要としている対象には、既に障害を有する対象並びに障害に罹り易い対象又は障害を予防すべき対象が含まれる。従って、疾患又は治療を必要としている対象に関連して使用されるとき、これらの用語には、限定はされないが、未治療の対象と比較したときの疾患の進行の停止又は遅延、疾患の寛解、症状の予防、疾患及び/又は症状の重症度の低減、又は疾患の長さの短縮が含まれる。実施形態において、本治療方法は治療下の特定の疾患の1つ以上の臨床徴候を抑えることができる。LOX1を発現するCSC、並びに活性化LOX1カスケードを有するCSCに関連する疾患又は病態の治療方法に関する特定の実施形態は、LOX1を阻害する化合物、並びにその医薬組成物の治療有効量の投与を含む。実施形態において、本治療方法は、LOX1を発現するCSCに関連する癌及びCSCに関連する疾患及び/又は症状の更なる進行を防ぎ、疾患を消失させ、疾患及び/又は症状の更なる進行を遅延させ又は低減し、又は疾患及び/又は臨床症状を好転させる任意の方法に関し得る。
一部の実施形態において、本方法は、癌の進行を阻止し又は遅延させるのに十分な治療有効量の薬剤を含み得る。更なる実施形態において、治療有効量とは、対象のCSCを含めた癌細胞の数を減少させる(即ち、癌細胞を死滅させ、及び/又は癌細胞の増殖を阻害し、及び/又はCSCの分化を誘導する)のに十分な量である。対象の癌細胞の増殖及び癌の進行(例えば、腫瘍サイズ、細胞数、生化学的マーカー、二次徴候等)をモニタする方法は本明細書で考察され、当該技術分野において一般に公知の技法もまた含み得る。
本明細書で考察するとおり、一部の実施形態は、放射線照射、手術、免疫療法、又は他の化学療法と併せてLOX1阻害薬を投与するステップを含む治療方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、追加の抗癌剤と併用した治療有効量のLOX1阻害薬の投与を含む。多種多様な抗癌剤(即ち抗新生物剤)が当該技術分野において公知であり、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗薬、天然抗新生物剤、ホルモン性抗新生物剤、血管新生阻害薬、分化誘導試薬、化学療法薬、チロシンキナーゼ阻害薬、RNA阻害薬、抗体又は免疫療法剤、遺伝子療法剤、小分子酵素阻害薬、生物学的反応修飾物質、抗転移剤が挙げられる。当該技術分野において一般に公知の化学療法剤を含めたかかる活性化合物の一部の非限定的な例としては、例えば、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、Doxil(登録商標)、シタラビン、デキサメタゾン、イリノテカン(Camptosar(登録商標))、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標))、アルブミン結合パクリタキセル(Abraxane(登録商標))、テモゾロミド、アドリアマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara−C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン(cytoxin)、タキソイド類(例えば、パクリタキセル)、トキソテール(toxotere)、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カミノマイシン(caminomycin)、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン類、メルファラン及び腫瘍に対するホルモン作用を調節し又は阻害するように作用するタモキシフェン及びオナプリストンなどの他の関連するナイトロジェンマスタード及びホルモン剤が挙げられる。
化学療法薬には多くの副作用があり、その1つが心臓毒性(心毒性とも称される)である。詳細には、化学療法薬は、心筋細胞死及び心不全につながり得る心臓損傷を引き起こすことが示されている。一実施形態において、本開示は、化学療法を必要としている患者の化学療法関連心毒性を阻害し、低下させ、又は予防する方法を提供し、この方法は、化学療法関連心毒性を阻害し、低下させ、又は予防するのに有効な量のLOX1阻害薬を患者に投与するステップを含む。別の実施形態において、本開示は、化学療法を必要としている患者の心毒性を逆転させる方法を提供し、この方法は、化学療法関連心毒性を逆転させるのに有効な量のLOX1阻害薬を患者に投与するステップを含む。一実施形態において、化学療法はドキソルビシンなどのアントラサイクリンである。
「投与」又は「投与する」は、本明細書で使用されるとき、所望の効果を実現するため任意の適切な経路によって1つ又は複数の化合物を供給し、接触させ、及び/又は送達することを指す。投与には、限定はされないが、経口、舌下、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内又は脳内注射)、経皮、局所、頬側、直腸、腟内、経鼻、眼内、吸入を介する、及びインプラントが含まれ得る。
「共投与される」は、本明細書で使用されるとき、複数の化合物又は薬剤の同時の又は逐次的な投与を指す。第1の化合物又は薬剤が第2の化合物又は薬剤の投与の前に、それと同時に、又はその後に投与されてもよい。
「接触させる」は、「細胞を接触させる」のように本明細書で使用されるとき、細胞をインビトロ、エキソビボ、又はインビボ(即ち、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、及びイヌを含めた哺乳類などの対象の体内)で直接又は間接的に接触させることを指す。細胞を接触させること(これにはまた、阻害薬化合物と細胞を「反応させる」こと又はそれに細胞を「曝露する」ことも含まれ得る)は、化合物又は薬剤を対象に一般的に投与する結果又は細胞若しくは組織が入った容器又は細胞若しくは組織が入った流体に阻害薬を添加又は適用する結果として起こり得る。従って、細胞を阻害薬に接触させるとは、細胞(例えば、対象の局所領域又は全身(例えば、リンパ、循環等)にあるCSC細胞)を含む対象、組織、又は対象若しくは組織の領域への阻害薬の投与を指してもよく、標的細胞に物理的に接触しないこともあり得る。接触には、細胞、組織、哺乳類、対象、患者、又はヒトへの投与が包含される。更に、細胞を接触させることには、細胞培養物に薬剤を加えることが含まれる。他の好適な方法としては、本明細書で考察するとおりの又はその他当該技術分野において公知の適切な投与手順及び経路を用いて細胞、組織、哺乳類、対象、又は患者に薬剤を導入又は投与することが含まれ得る。
本開示はまた、治療用組成物及び医薬組成物を含めた、組成物におけるLOX1阻害薬、又は2つ以上のLOX1阻害薬の組み合わせの1つ以上の使用にも関する。実施形態において、本使用及び組成物は、本明細書に開示される様々な方法を提供するのに有効な量の1つ又は複数の阻害薬を含む。実施形態において、この1つ以上の使用は、本明細書に記載される腫瘍型、癌幹細胞、及び/又は癌の1つ以上を治療する(例えば、死滅させ、除去し、阻害し、細胞増殖の進行及び/又は進行速度を低下させ、細胞(CSC)の自己複製能及び/又は拡大能を低下させ、病状の進行及び/又は進行速度を低下させる)ための医薬の製造への使用に関する。
検出方法
一部の態様及び実施形態において、本明細書に開示される方法は、癌幹細胞(CSC)の検出、同定、及び/又は定量化に有用な1つ以上の方法を提供し、及び/又はそれを含む。一部の実施形態において、本方法は、CSCを含む生体試料中のLOX1を検出し、同定し、及び/又はその量を定量化することを含む。一部の実施形態において、本方法は、癌細胞を含む試料中の癌幹細胞(CSC)の存在の診断、予測、定量化、同定、及び/又は検出を提供し、本方法は、
LOX1核酸配列又はLOX1アミノ酸配列に結合する薬剤に試料を接触させるステップ;
薬剤とLOX1核酸配列又はLOX1アミノ酸配列との間の結合の存在又は非存在を検出するステップ;及び/又は
薬剤とLOX1核酸配列又はLOX1アミノ酸配列との間の結合の検出に基づき試料中のCSCの存在を同定するステップ、
のうちの1つ以上を含み得る。
これらの方法において、ステップは単独で用いられても、又は任意の一連の互いとの又は当該技術分野において一般に公知の他の技法との組み合わせで用いられてもよい。この態様の一部の実施形態において、本方法は、
試料中のLOX1核酸配列又はLOX1アミノ酸配列の量を定量化するステップ;
LOX1核酸配列又はLOX1アミノ酸配列の量をLOX1核酸又はLOX1アミノ酸の基準レベルと比較するステップ;及び/又は
検出された量が基準レベルよりも多い場合に試料中のCSCの存在を同定するステップ、
のうちの1つ以上を更に含み得る。
一部の態様及び実施形態において、本明細書に開示される方法は、LOX1陽性癌幹細胞(CSC)の検出、同定、及び/又は定量化に有用な1つ以上の方法を提供し、及び/又はそれを含む。一部の実施形態において、本方法は、CSCを含む生体試料中のLOX1陽性CSCを検出し、同定し、及び/又はその量を定量化することを含む。一部の実施形態において、本方法は、癌細胞を含む試料中のLOX1陽性癌幹細胞(CSC)の存在の診断、予測、定量化、同定、及び/又は検出を提供し、本方法は、
LOX1核酸配列又はLOX1アミノ酸配列に結合する薬剤に試料を接触させるステップ;
薬剤とLOX1核酸配列又はLOX1アミノ酸配列との間の結合の存在又は非存在を検出するステップ;及び/又は
薬剤とLOX1核酸配列又はLOX1アミノ酸配列との間の結合の検出に基づき試料中のLOX1陽性CSCの存在を同定する工程、
のうちの1つ以上を含み得る。
更に別の実施形態において、本方法は、検出可能部分を含む薬剤を含み得る。一部の実施形態において、本薬剤は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でLOX1核酸配列の少なくとも一部分にハイブリダイズする核酸配列を含み得る。一部の実施形態において、本薬剤は、LOX1アミノ酸配列の少なくとも一部分に特異的に結合する抗体を含み得る。
上記の態様の様々な実施形態において、本方法は、LOX1を発現する腫瘍及び/又はCSC、又はCSC集団に関する。更なる実施形態において、腫瘍及び/又はCSC、又はCSC集団はスフェア形成CSCを含み得る。
試料中のCSCの検出、同定、及び/又は定量化に有用な本明細書に記載される方法に加えて、これらの態様及び実施形態はまた、当業者に利用可能な任意の方法及び技法も含み得る。非限定的な例として、CSCは、特定のCSCで発現する又はそれに特異的な細胞表面マーカーに基づくフローサイトメトリー;色素排除法によるサイドポピュレーション(SP)表現型の検出(例えば、Moserle,L.,et al.,Cancer Res.(2008)68;5658−5668に開示されるとおり、ヘキスト33342);無血清培地中の浮遊スフェアとしての成長/増殖能力(例えば、本明細書並びにRyback,A.P.,et al.,Biochim.Biophys.Acta(2011)1813;683−694に開示される);及び特定の酵素活性、例えばアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性など、並びにポリコームヘテロクロマチンマーカー、H3K27me3レベル、及びzeste 2のポリコーム群タンパク質エンハンサー(EZH2)を含めたポリコームマーカーレベルの決定を含む技法を用いて同定、検出、及び単離されてもよい。
一部の実施形態において、例えば、様々な系統(例えば、造血、乳腺、内皮、間葉、神経)の癌前駆細胞においてアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)の発現及び活性の上昇が報告されており、本明細書における様々な態様及び実施形態に関連して技法及び市販のキット(例えば、ALDEFLUOR(商標)、Stemcell Technologies)を使用し得る。同様に、現在、CSCの同定用にユニバーサルに発現する細胞表面マーカーはないが、複数の表面マーカーが、例えば、ALDH、CD13、CD15、CD24、CD44、CD90、CD117、CD133、CD166、CD326を含め、CSC及び関連する腫瘍型に関連付けられている(例えば、Xia,P.,Curr Stem Cell Res Ther.(2014)Mar;9(2):102−11;Shimamura,M.,et al.,Endocr.J.,(2014)61(5):481−90;Tirino,V.,et al.,FASEB J.,(2013)Jan;27(1):13−24を参照のこと)。
一部の実施形態において、試料中のCSCを検出又は同定する1つ以上のユニバーサルな表面マーカーがないため、検出、同定、及び/又は定量化する方法は、本明細書に開示されるような又はその他当該技術分野において公知のスフェア培養及び成長アッセイを含む細胞培養技法を含む。
B.阻害薬
本明細書に記載される方法、使用、及び組成物は、LOX1の活性及び/又は発現を阻害し、下方制御し、又は消失させる能力を有する薬剤、又は1つ以上のかかる阻害薬剤の任意の組み合わせに関連する実施形態を含む。その薬剤が阻害機能を有する(例えば、LOX1の発現及び/又は活性を阻害する)限り、阻害薬剤は任意の化合物クラスから選択することができる。例えば、阻害薬は、LOX1を阻害するポリペプチド、LOX1を阻害する小分子、LOX1を阻害するポリヌクレオチド、LOX1を阻害するアプタマー、LOX1を阻害する抗体、又はLOX1を阻害するアンチセンス分子若しくはsiRNA分子からなる群から選択され得る。従って、阻害薬とは、本明細書で使用されるとき、LOX1の発現及び/又は機能を低下させ、阻害し、下方制御し、又は消失させる任意の化合物、又はLOX1の発現又は機能を中和し、低下させ、又は阻害するのに好適な薬剤を指す。本明細書に記載される阻害薬は、例えばLOX1への結合を含め、任意の機構によって作用を及ぼし得る。結合すると、阻害薬は例えばLOX1と受容体又はリガンドとの相互作用を阻害し得るため、LOX1が受容体を活性化させることができなくなり、又はリガンドによって活性化されることができなくなる。他の実施形態において、LOX1の活性の阻害能を有する1つ又は複数の薬剤は走化活性を阻害してもよく、タンパク質を隔離してバイオアベイラビリティを低下させてもよく、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
一部の実施形態において、阻害薬は、LOX1への結合能を有するポリペプチド又は小分子であってもよく、当該技術分野においてルーチンの任意の技法(例えば、小規模化合物又はポリペプチドライブラリのスクリーニング)によって同定され得る。「小分子」は、本明細書で使用されるとき、概して、低分子量の小さい有機化合物を指す。小分子は、天然に存在することが知られていない合成化合物であっても、又は例えば細胞、植物、真菌、動物などの天然の供給源から単離された、若しくはそれに存在することが知られている天然に存在する化合物であってもよい。一部の実施形態において、小分子は分子量が5000ダルトン未満、4000ダルトン未満、3000ダルトン未満、2000ダルトン未満、1000ダルトン未満、又は約800ダルトン未満であり得る。かかる実施形態において、小分子は典型的には分子量が約100ダルトンより大きい。
小分子又はポリペプチドがLOX1との結合能を有するかどうかは、任意のルーチンの技法又はアッセイ、並びに本明細書に記載される技法及びアッセイによって決定し得る。例えば、技法には、酵母2ハイブリッドアッセイ又は生化学アッセイ、例えば、プルダウンアッセイ、免疫共沈降アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、定量的放射性リガンド結合アッセイ、プラズモン共鳴アッセイ又は当該技術分野においてルーチンで用いられる任意の他の方法などが含まれ得る。典型的には、プルダウン又はプラズモン共鳴アッセイを用いる場合、タンパク質のうちの少なくとも1つをアフィニティータグ、例えば、HISタグ、GSTタグ又は当該技術分野で一般的に用いられる他の検出可能部分に融合するか又は他の方法で連結させることが有用である。試験するポリペプチド又は任意の他の化合物がLOX1の活性の阻害能を有するかどうかは、膜結合型ポリペプチドの活性を計測することにより決定し得る。好適には、ポリペプチドはLOX1の活性の阻害能を有する。
実施形態において、阻害薬は、LOX1に対して特異性を有するDNA、RNA又はペプチドアプタマーを指す「アプタマー」であってもよい。ポリヌクレオチドアプタマーは約10〜約300ヌクレオチド長の範囲に含まれる。典型的には、アプタマーは約30〜約100ヌクレオチド長の範囲であり、一部の実施形態では約10〜60ヌクレオチド長の範囲であり得る。アプタマーは、合成、組換え、及び精製方法を含め、任意の公知の方法によって調製することができ、単独で、又はLOX1に特異的な他のアプタマーと組み合わせて使用し得る。
本明細書において言及される方法の一部の詳細な実施形態において、阻害薬は、LOX1に特異的に結合する抗体であってもよい。一部の実施形態において、抗体はモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、又は多特異性抗血清であってもよい。かかる実施形態において、抗体にはまた、上記で考察したとおりの、例えば、一本鎖抗体、ダイアボディ、ミニボディ、単鎖Fv断片(sc(Fv))、sc(Fv)2抗体、Fab断片、又はF(ab’)2断片などを含めた抗体変異体又は断片も(その変異体又は断片がLOX1に対する特異的結合特性を保持している限り)含まれる。
例示的LOX1結合タンパク質を以下の表1に提供し、これらは国際特許出願第PCT/EP2015/072644号明細書(参照により全体として本明細書に援用される)に記載される。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号4の参照VH配列と比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を有するVH配列を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は配列番号4のVHを含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号33の参照VL配列と比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を有するVL配列を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は配列番号33のVLを含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を有するVH−CDR1、配列番号2、5〜12又は13のアミノ酸配列を有するVH−CDR2、及び配列番号3、14〜17又は18のアミノ酸配列を有するVH−CDR3を含むVHから選択されるVH;及び配列番号30のアミノ酸配列を有するVL−CDR1、配列番号31のアミノ酸配列を有するVL−CDR2、及び配列番号32、34、又は35のアミノ酸配列を有するVL−CDR3を含むVLから選択される軽鎖VLを含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
本方法はまた、本明細書に開示される参照VH及びVL LOX1結合タンパク質と比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を各々有するVH及びVL配列を含む単離LOX1結合タンパク質に関する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号4、19〜28、又は29を含むVH、及び配列番号33、36、又は37を含むVLを有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は一組の相補性決定領域(CDR):重鎖可変領域(VH)−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、及び軽鎖可変領域(VL)−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで一組のCDRは、(a)VH−CDR1が配列番号1のアミノ酸配列を有し;(b)VH−CDR2が配列番号5のアミノ酸配列を有し;(c)VH−CDR3が配列番号14のアミノ酸配列を有し;(d)VL−CDR1が配列番号30のアミノ酸配列を有し;(e)VL−CDR2が配列番号31のアミノ酸配列を有し;及び(f)VL−CDR3が配列番号32のアミノ酸配列を有する一組の参照CDRと同一であるか、又はそれと比べて合計18個以下の(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18個の)アミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、一組のCDR:VH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、VL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで:(a)VH−CDR1は配列番号1のアミノ酸配列を有し;(b)VH−CDR2は配列番号2のアミノ酸配列を有し;(c)VH−CDR3は配列番号3のアミノ酸配列を有し;(d)VL−CDR1は配列番号30のアミノ酸配列を有し;(e)VL−CDR2は配列番号31のアミノ酸配列を有し;及び(f)VL−CDR3は配列番号32のアミノ酸配列を有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
本方法はまた、本明細書に開示される参照VH配列と少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)及び/又は本明細書に開示される参照VL配列(例えば、表1に開示されるVH及びVL配列)と少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む単離LOX1結合タンパク質に関する。更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号4と少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有するVH及び/又は配列番号33と少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有するVLを含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、(a)配列番号4のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(b)配列番号29のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(c)配列番号41のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号58のアミノ酸配列を有するVL;及び(d)配列番号54のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号70のアミノ酸配列を有するVLからなる群から選択されるVH及びVLと少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)及び少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、(a)配列番号19のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(b)配列番号20のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(c)配列番号21のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(d)配列番号22のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(e)配列番号23のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(f)配列番号24のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(g)配列番号25のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(h)配列番号26のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号33のアミノ酸配列を有するVL;(i)配列番号27のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号37のアミノ酸配列を有するVL;(j)配列番号28のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号37のアミノ酸配列を有するVL;(k)配列番号48のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号65のアミノ酸配列を有するVL;(l)配列番号49のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号66のアミノ酸配列を有するVL;(m)配列番号50のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号67のアミノ酸配列を有するVL;(n)配列番号51のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号65のアミノ酸配列を有するVL;(o)配列番号54のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号68のアミノ酸配列を有するVL;(p)配列番号52のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号67のアミノ酸配列を有するVL;(q)配列番号54のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号69のアミノ酸配列を有するVL;(r)配列番号53のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号58のアミノ酸配列を有するVL;及び(s)配列番号41のアミノ酸配列を有するVH及び配列番号58のアミノ酸配列を有するVLからなる群から選択されるVH及びVLと少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有するVH及び少なくとも90、95、97、98又は99%の配列同一性を有するVLを含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、本明細書の方法は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH−CDR3を含む単離LOX1結合タンパク質を含み得る。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号2のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号5〜12又は13のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号3、14〜17又は18のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号2のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号3、14〜17又は18のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号2、5〜12又は13のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号3、14〜17又は18のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号2、5〜12又は13のアミノ酸配列を有するVH−CDR2及び配列番号1のアミノ酸配列を有するVH−CDR1を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号32のアミノ酸配列を有するVLH−CDR3を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号32のアミノ酸配列を有するVL−CDR3及び配列番号31のアミノ酸配列を有するVL−CDR2を含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号32のアミノ酸配列を有するVL−CDR3、アミノ酸配列配列番号31を有するVL−CDR2及び配列番号30のアミノ酸配列を有するVL−CDR1を含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号32、34、又は35のアミノ酸配列を有するVL−CDR3、アミノ酸配列配列番号31を有するVL−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号32、34、又は35のアミノ酸配列を有するVL−CDR3、アミノ酸配列配列番号31を有するVL−CDR2及び配列番号30のアミノ酸配列を有するVL−CDR1を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号1と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR1、配列番号2、5〜12又は13と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR2、又は配列番号3、14〜17又は18と同一であるか、又はそれに対して合計1、2、3、4個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR3など、1、2、又は3個のVH−CDRを含む。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号30と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVL−CDR1、配列番号31と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVL−CDR2、又は配列番号32、34、又は35と同一であるか、又はそれに対して合計1、2、3、4個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR3など、1、2、又は3個のVL−CDRを含む。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号41の参照VH配列と比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を有するVH配列を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号41のVHを含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号58の参照VL配列と比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入を有するVL配列を含む。本開示はまた、LOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質を作製及び使用する方法も提供する。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は配列番号58のVLを含む。本開示はまた、LOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質を作製及び使用する方法も提供する。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号38のアミノ酸配列を有するVH−CDR1、配列番号39、42又は43のアミノ酸配列を有するVH−CDR2、及び配列番号40、44〜46又は47のアミノ酸配列を有するVH−CDR3を含むVHから選択されるVH;及び配列番号55又は59のアミノ酸配列を有するVL−CDR1、配列番号56又は60のアミノ酸配列を有するVL−CDR2、及び配列番号57、61〜63、又は64のアミノ酸配列を有するVL−CDR3を含むVLから選択される軽鎖VLを含む。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号41、48〜53、又は54の配列を含むVH、及び配列番号58、65〜69、又は70の配列を含むVLを有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は一組の相補性決定領域(CDR):重鎖可変領域(VH)−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、軽鎖可変領域(VL)−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで一組のCDRは、(a)VH−CDR1が配列番号38のアミノ酸配列を有し;(b)VH−CDR2が配列番号39のアミノ酸配列を有し;(c)VH−CDR3が配列番号44のアミノ酸配列を有し;(d)VL−CDR1が配列番号55のアミノ酸配列を有し;(e)VL−CDR2が配列番号60のアミノ酸配列を有し;及び(f)VL−CDR3が配列番号61のアミノ酸配列を有する一組の参照CDRと同一であるか、又はそれと比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は一組の相補性決定領域(CDR):重鎖可変領域(VH)−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、軽鎖可変領域(VL)−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで一組のCDRは、(a)VH−CDR1が配列番号38のアミノ酸配列を有し、(b)VH−CDR2が配列番号39のアミノ酸配列を有し;(c)VH−CDR3が配列番号40のアミノ酸配列を有し;(d)VL−CDR1が配列番号55のアミノ酸配列を有し;(e)VL−CDR2が配列番号56のアミノ酸配列を有し;及び(f)VL−CDR3が配列番号57のアミノ酸配列を有する一組の参照CDRと同一であるか、又はそれと比べて合計1、2、3、4、5、6、7、8個以下のアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、一組のCDR:VH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、VL−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで:(a)VH−CDR1は配列番号38のアミノ酸配列を有し;(b)VH−CDR2は配列番号39のアミノ酸配列を有し;(c)VH−CDR3は配列番号40のアミノ酸配列を有し;(d)VL−CDR1は配列番号55のアミノ酸配列を有し;(e)VL−CDR2は配列番号56のアミノ酸配列を有し;及び(f)VL−CDR3は配列番号57のアミノ酸配列を有する。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、配列番号40のアミノ酸配列を有するVH−CDR3を含む単離LOX1結合タンパク質。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号40のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号39のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号40のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号42又は43のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号40、44〜46、又は47のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号39のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号40、44〜46、又は47のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号39、42、又は43のアミノ酸配列を有するVH−CDR2を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号40、44〜46、又は47のアミノ酸配列を有するVH−CDR3及び配列番号39、42、又は43のアミノ酸配列を有するVH−CDR2、及び配列番号38のアミノ酸配列を有するVH−CDR1を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、配列番号57のアミノ酸配列を有するVLH−CDR3を含む。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号57のアミノ酸配列を有するVL−CDR3及び配列番号56のアミノ酸配列を有するVL−CDR2を含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号57のアミノ酸配列を有するVL−CDR3、アミノ酸配列配列番号56を有するVL−CDR2及び配列番号55のアミノ酸配列を有するVL−CDR3を含む。他の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号57のアミノ酸配列を有するVL−CDR3、アミノ酸配列配列番号56又は60を有するVL−CDR2、及び配列番号55又は59のアミノ酸配列を有するVL−CDR1を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号38と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR1、配列番号39、42又は43と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR2、又は配列番号40、44〜46又は47と同一であるか、又はそれに対して合計1、2、3、4個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR3など、1、2、又は3個のVH−CDRを含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号55又は59と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVL−CDR1、配列番号56又は60と同一であるか、又はそれに対して合計1、2個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVL−CDR2、又は配列番号57、61〜63又は64と同一であるか、又はそれに対して合計1、2、3、4個以下のアミノ酸置換、欠失、又は挿入を有するVH−CDR3など、1、2、又は3個のVL−CDRを含む。本開示はまた、LOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質を作製及び使用する方法も提供する。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、一組のCDR:表1に記載されるとおりのVH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、VL−CDR1、VL−CDR3及びVL−CDR3を含む。本開示はまた、LOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質を作製及び使用する方法も提供する。
一部の更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、表1に記載されるとおりの重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、G F D P E D HX1 HX2 HX3 HX4 HX5 HX6 Q K F Q G(Gly Phe Asp Pro Glu Asp HX1 HX2 HX3 HX4 HX5 HX6 Gln Lys Phe Gln Gly)(式中、HX1はGly、Trp、Tyr、又はPheであり;HX2はGlu、Thr、Gln、Ser、Lys、又はAlaであり;HX3はThr、Tyr、Ile、又はAsnであり;HX4はIle、Ala、Arg、又はHisであり;HX5はTyr、Val、Thr、Leu、又はGlnであり、及びHX6はAla、Asp、Gly、Ser、又はHisである)のアミノ酸配列(配列番号71)を有するVH−CDR2を含む。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、HX7 HX8 G HX9 HX10 HX11 HX12 G V R G W D Y Y Y G M D V(HX7 HX8 Gly HX9 HX10 HX11 HX12 Gly Val Arg Gly Trp Asp Tyr Tyr Tyr Gly Met Asp Val Trp)(式中、HX7はPro、Ser、又はValであり;HX8はAsn、Thr、Trp、又はAspであり;HX9はGln、Arg、又はThrであり;HX10はGln又はHisであり;HX11はGly又はGlnであり;HX12はLys又はGlyである)のアミノ酸配列(配列番号72)を有するVH−CDR3を含む。
他の態様において、単離LOX1結合タンパク質は、Q S Y D S LX1 LX2 LX3 LX4 LX5 LX6(Gln Ser Tyr Asp Ser LX1 LX2 LX3 LX4 LX5 LX6)(式中、LX1はSer又はMetであり;LX2はLeu、Tyr、又はHisであり;LX3はSer又はArgであり;LX4はGly、Ala、又はアミノ酸無しであり;LX5はTrp又はPheであり;及びLX6はVal、Gly、又はAlaである)のアミノ酸配列(配列番号73)を有するVL−CDR3を含む。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は一組の相補性決定領域(CDR):重鎖可変領域(VH)−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、及び軽鎖可変領域(VL)−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで:(a)VH−CDR1はアミノ酸配列:E L S M H(配列番号1)を含み;(b)VH−CDR2はアミノ酸配列:G F D P E D HX1 HX2 HX3 HX4 HX5 HX6 Q K F Q G(式中、HX1は、G、W、Y及びFからなる群から選択され、HX2は、E、T、Q、K、A、及びSからなる群から選択され、HX3は、T、Y、I、及びNからなる群から選択され、HX4は、I、A、R及びHからなる群から選択され、HX5は、Y、V、T、L及びQからなる群から選択され、及びHX6は、A、D、G、S及びHからなる群から選択される)(配列番号71)を含み;(c)VH−CDR3はアミノ酸配列:HX7 HX8 G HX9 HX10 HX11 HX12 G V R G W D Y Y Y G M D V(式中、HX7は、P、S及びVからなる群から選択され、HX8は、N、W、D、及びTからなる群から選択され、HX9は、Q、R及びTからなる群から選択され、HX10は、Q及びHからなる群から選択され、HX11は、G及びQからなる群から選択され、及びHX12は、K及びGからなる群から選択される)(配列番号72)を含み;(d)VL−CDR1はアミノ酸配列:T G S S S N I G A G Y D V H(配列番号30)を含み;(e)VL−CDR2はアミノ酸配列:G N S N R P S(配列番号31)を含み;及び(f)VL−CDR3はアミノ酸配列:Q S Y D S LX1 LX2 LX3 LX4 LX5 LX6(式中、LX1は、M及びSからなる群から選択され、LX2は、L、Y及びHからなる群から選択され、LX3は、S及びRからなる群から選択され、LX4は、A及びGからなる群から選択されるか又は省略され(アミノ酸無し)、LX5は、W及びFからなる群から選択され、及びLX6は、V、G及びAからなる群から選択される)(配列番号73)を含む。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、G HX1 S HX2 HX3 HX4 HX5 HX6 HX7 HX8 HX9 HX10 D S V K G(Gly HX1 Ser HX2 HX3 HX4 HX5 HX6 HX7 HX8 HX9 HX10 Asp Ser Val Lys Gly)(式中、HX1はIle又はValであり;HX2はTrp又はLeuであり;HX3はAsn又はGlnであり;HX4はSer又はGluであり;HX5はGly、Leu、又はProであり;HX6はSer、Tyr、又はAspであり;HX7はIle、Thr、又はArgであり;HX8はGly又はTyrであり;HX9はTyr又はMetであり;及びHX10はAla又はAspである)のアミノ酸配列(配列番号74)を有するVH−CDR2を含む。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、E G HX11 W N Y D A HX12 D HX13(Glu Gly HX11 Trp Asn Tyr Asp Ala HX12 Asp HX13)(式中、HX11はAsn又はSerであり;HX12はPhe又はLeuであり;及びHX13はIle又はValである)のアミノ酸配列(配列番号75)を有するVH−CDR3を含む。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、T G T S LX1 D V G G Y N Y V S(Thr Gly Thr Ser LX1 Asp Val Gly Gly Tyr Asn Tyr Val Ser)(式中、LX1はSer又はAsnである)のアミノ酸配列(配列番号76)を有するVL−CDR1を含む。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、D V S LX2 R P S(Asp Val Ser X4 Arg Pro Ser)(式中、LX2はAsn又はLysである)のアミノ酸配列(配列番号77)を有するVL−CDR2を含む。
更なる態様において、単離LOX1結合タンパク質は、LX3 LX4 LX5 LX6 LX7 LX8 S T N W V(LX3 LX4 LX5 LX6 LX7 LX8 Ser Thr Asn Trp Val)(式中、LX3はSer、Leu、Met、又はAlaであり;LX4はSer、Gly、又はGlnであり;LX5はTyr、Arg、Ser、又はGlyであり;LX6はThr又はMetであり;LX7はSer、Trp、Gly、又はValであり;及びLX8はSer又はArgである)のアミノ酸配列(配列番号78)を有するVL−CDR3を含む。
一部の態様において、単離LOX1結合タンパク質は一組の相補性決定領域(CDR):重鎖可変領域(VH)−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、及び軽鎖可変領域(VL)−CDR1、VL−CDR2及びVL−CDR3を含み、ここで:(a)VH−CDR1はアミノ酸配列:D Y A M H(配列番号38)を含み;(b)VH−CDR2はアミノ酸配列:G HX1 S HX2 HX3 HX4 HX5 HX6 HX7 HX8 HX9 HX10 D S V K G(式中、HX1は、I及びVからなる群から選択され、HX2は、W及びLからなる群から選択され、HX3は、N及びQからなる群から選択され、HX4は、S及びEからなる群から選択され、HX5は、G、L及びPからなる群から選択され、HX6は、S、Y及びDからなる群から選択され、HX7は、I、T及びRからなる群から選択され、HX8は、G及びYからなる群から選択され、HX9は、M及びYからなる群から選択され、及びHX10は、A及びDからなる群から選択される)(配列番号74)を含み;(c)VH−CDR3はアミノ酸配列:E G HX11 W N Y D A HX12 D HX13(式中、HX11は、N及びSからなる群から選択され、HX12は、F及びLからなる群から選択され、及びHX13は、I及びVからなる群から選択される)(配列番号75)を含み;(d)VL−CDR1はアミノ酸配列:T G T S LX1 D V G G Y N Y V S(式中、LX1は、N及びSからなる群から選択される)(配列番号76)を含み;(e)VL−CDR2はアミノ酸配列:D V S LX2 R P S(式中、LX2は、N及びKからなる群から選択される)(配列番号77)を含み;及び(f)VL−CDR3はアミノ酸配列:LX3 LX4 LX5 LX6 LX7 LX8 S T N W V(式中、LX3は、L、M、A及びSからなる群から選択され、LX4は、S、Q及びGからなる群から選択され、LX5は、Y、S、G及びRからなる群から選択され、LX6は、T及びMからなる群から選択され、LX7は、S、W、G及びVからなる群から選択され、及びLX8は、S及びRからなる群から選択される)(配列番号78)を含む。
一部の態様において、本明細書に開示されるLOX1結合タンパク質の一組のCDRは、抗体フレームワーク領域又は当該技術分野において公知の他のタンパク質スキャフォールド内に提供される。例示的抗体フレームワーク領域としては、生殖細胞系列フレームワーク領域、例えば、重鎖の抗体フレームワーク領域についてVH1−24(DP−5)、JH6、VH3−09(DP−31)、及びJH3、並びに軽鎖の抗体フレームワーク領域についてVλ1e(DPL−8)、Vλ2a2(DPL−11)、及びJL3及び/又は当業者に周知の任意の好適なフレームワーク領域が挙げられる。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質は、生殖細胞系列フレームワークである重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)由来の1つ以上のフレームワーク領域を含有する。重鎖ドメインのフレームワーク領域は、VH1−24(DP−5)、JH6、VH3−09(DP−31)、JH3フレームワーク及び/又は当該技術分野において周知の任意の好適なフレームワーク領域若しくはタンパク質スキャフォールドから選択され得る。軽鎖のフレームワーク領域は、Vλ1e(DPL−8)、Vλ2a2(DPL−11)、及びJL3フレームワーク、及び/又は当該技術分野において周知の任意の好適なフレームワーク領域若しくはタンパク質スキャフォールドから選択され得る。1つ以上のCDRが本明細書に開示されるLOX1結合タンパク質(例えば、表1に示されるLOX1結合タンパク質)から選ばれ、好適なフレームワーク及び/又はタンパク質スキャフォールドに組み込まれてもよい。
更なる態様において、本開示は、それぞれ配列番号4及び配列番号33のVH及びVLを含む抗体と同じLOX1エピトープに結合する単離LOX1結合タンパク質を提供する。
他の態様において、本明細書に開示される方法は、配列番号4のVH配列と配列番号33のVL配列とを含む抗体とLOX1への結合に関して競合又は交差競合するLOX1結合タンパク質(例えば、抗体、例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)を含む。詳細な態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号4のVHと配列番号33のVLとを含む抗体がLOX1に結合するのを競合的に阻害することが可能である。
また、配列番号29のVHと配列番号33のVLとを含むLOX1結合タンパク質(例えばLOX1抗体又はその断片)よりも高い親和性でLOX1に結合することのできるLOX1抗体(例えば、完全長抗LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体、及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質を含む方法も提供される。本開示はまた、LOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質を作製及び使用する方法も提供する。
更なる態様において、本方法は、それぞれ配列番号41及び配列番号58のVH及びVLを含む抗体と同じLOX1エピトープに結合する単離LOX1結合タンパク質を含む。
他の態様において、本方法は、配列番号41のVH配列と配列番号58のVL配列とを含む抗体とLOX1への結合に関して競合又は交差競合するLOX1結合タンパク質(例えば、抗体、例えば、完全長LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)を含む。詳細な態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号41のVHと配列番号58のVLとを含む抗体がLOX1に結合するのを競合的に阻害することが可能である。
また、配列番号54のVH及び配列番号70のVLを含む完全長抗体よりも高い親和性でLOX1に結合することのできるLOX1抗体(例えば、完全長抗LOX1抗体及びLOX1結合抗体断片、並びにその変異体、及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質を含む方法も提供される。本開示はまた、このLOX1結合タンパク質をコードする核酸、これらの核酸を含有するベクター並びにこれらの核酸及びベクターで形質転換された宿主細胞、並びにLOX1結合タンパク質の作製及び使用方法も提供する。
一部の態様において、本明細書に記載の方法に組み込まれる抗LOX1抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、又はそれらの任意の組み合わせである。一部の態様において、抗LOX1抗体は、Fv断片、Fab断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、dsFv断片、scFv断片、又はsc(Fv)2断片である。
本開示は、種を超えてLOX1分子に結合することのできるLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの単離抗LOX1抗体)を含む方法を含む。一部の態様において、LOX1結合タンパク質はヒトLOX1(hLOX1)及びカニクイザルLOX1(cynoLOX1)に結合する。更なる態様において、LOX1結合タンパク質はヒトLOX1(hLOX1)及びウサギLOX1に結合する。更なる態様において、LOX1結合タンパク質は、hLOX1、cynoLOX1及びウサギLOX1に結合する。本明細書に提供される特定の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体)はLOX1(例えば、hLOX1、cynoLOX1及び/又はウサギLOX1)に特異的に結合し、且つCLEC−7A、CLEC−1A、CLEC−4L、CLEC−1B、SR−A1及び/又はSR−B3の1つ以上に結合しない。例えば、国際特許出願PCT/EP2015/072644号明細書を参照のこと。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、単離抗LOX1抗体又はその(or thereof))はヒトIgG1 TM突然変異重鎖を更に含み、ここで重鎖可変領域(VH)は、参照アミノ酸配列の配列番号4、19〜28又は29と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98% 99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、単離抗LOX1抗体又はその(or thereof))はヒトIgG1 TM突然変異重鎖を更に含み、ここで重鎖可変領域(VH)は、参照アミノ酸配列の配列番号41、48〜53又は54と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98% 99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
一部の態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)、及び任意選択で重鎖定常領域又はその断片に加えて、軽鎖定常領域又はその断片を含む。特定の態様において、軽鎖定常領域はκλ軽鎖定常領域、例えば、ヒトκ定常領域又はヒトλ定常領域である。ある具体的な態様において、軽鎖定常領域はヒトκ定常領域である。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)は、ヒトκ定常領域を含有する軽鎖可変領域(VL)を有し、例えばVLは、参照アミノ酸配列の配列番号33、36、又は37と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の配列同一性を有するVLアミノ酸配列を含む。特定の態様において、本開示は、ヒトIgG1 TM突然変異重鎖及びヒトκ軽鎖を更に含むLOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体又はその断片)を提供し、ここで重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は、それぞれ、配列番号4及び配列番号33;配列番号29及び配列番号33;配列番号41及び配列番号58;又は配列番号54及び配列番号70を含む。
更なる態様において、LOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)は、ヒトκ定常領域を更に含む軽鎖可変領域(VL)を有し、例えば軽鎖は、参照アミノ酸配列の配列番号58、65〜69又は70と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖アミノ酸配列を含み得る。特定の態様において、本開示は、ヒトIgG1 TM突然変異重鎖及びヒトκ軽鎖を更に含むLOX1結合タンパク質(例えば、抗LOX1抗体又はその断片)を提供し、ここで重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は、それぞれ、配列番号41及び配列番号58、配列番号48及び配列番号65、配列番号49及び配列番号66、配列番号50及び配列番号67、又は配列番号53及び配列番号58を含む。
一部の態様において、本開示は、抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などの単離LOX1結合タンパク質を含む方法に関し、ここでLOX1結合タンパク質は、以下からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する:(a)任意の好適なアッセイによって決定するとき、LOX1に対するoxLDL、C反応性タンパク質(CRP)及び/又は終末糖化産物(AGE)の結合を低減し、又は阻害する;(b)任意の好適なアッセイによって決定するとき、細胞表面LOX1を発現する内皮細胞のRhoA/Rac1、一酸化窒素(NO)、p38MAPK、プロテインキナーゼB及びC、ERK1/2、及び/又はNFκBシグナル伝達を低下させ、又は阻害する;(c)本明細書に開示されるアッセイを含めた任意の好適なアッセイによって決定するとき、細胞表面LOX1を発現する内皮細胞のカスパーゼ−8、カスパーゼ−9、及び/又はBAX活性を低下させ、又は阻害する;(d)任意の好適なアッセイによって決定するとき、一塩基変異多型K167Nを有するLOX1に結合する;(e)任意の好適なアッセイによって決定するとき、oxLDLインターナリゼーションを低減し、又は阻害する;(f)任意の好適なアッセイによって決定するとき、oxLDL誘導性LOX1シグナル伝達を低減し、又は阻害する;(g)BIACORE又はKinExAによって決定するとき約150pM〜約600pM(例えば約400pM)の解離定数(KD)でLOX1に結合する;(h)BIACOREによって決定するとき約1×105M−1s−1〜約6×106M−1s−1(例えば約5×105M−1s−1)のKon速度でLOX1に結合する;及び(i)BIACOREによって決定するとき約1×10−4s−1〜約3×10−4s−1(例えば約2.3×10−4s−1)のKoff速度でLOX1に結合する。
特定の実施形態において、上記に特定した特性に加えて、又はそれに代えて、LOX1結合タンパク質は、以下からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する:(a)CSCを死滅させる;(b)CSCを除去する;(c)CSCを阻害する;(d)CSC増殖の進行及び/又は進行速度を低下させる;(e)CSCに関連する病状の進行及び/又は進行速度を低下させる;(f)CSCの自己複製能及び拡大能を低下させる;及び/又は(g)CSC分化を誘導する。
特定の態様において、抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質は、LOX1、例えば、ヒトLOX1(hLOX1)及び/又はカニクイザルLOX1(cynoLOX1)、及びその抗原断片に対し、例えばKINEXA(登録商標)又はBIACORE(登録商標)によって計測するとき10−6M未満、又は10−7M未満、又は10−8M未満、又は10−9M未満、又は10−10M未満、又は10−11M未満、10−12M未満、10−13M未満、10−14M未満、又は10−15M未満の解離定数又はKDで特異的に結合することができる。一態様において、抗LOX1抗体はhLOX1及びcynoLOX1に対し、BIACORE(登録商標)によって計測するとき約1×10−8M〜約1×10−10M未満のKDで結合することができる。
別の態様において、抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質は、LOX1に対し、1×10−3s−1未満、又は2×10−3s−1未満のKoffで結合することができる。他の態様において、LOX1結合タンパク質はLOX1に対し、例えばKINEXA(登録商標)又はBIACORE(登録商標)によって計測するとき10−3s−1未満、5×10−3s−1未満、10−4s−1未満、5×10−4s−1未満、10−5s−1未満、5×10−5s−1未満、10−6s−1未満、5×10−6s−1未満、5×10−7s−1未満、10−8s−1未満、5×10−8s−1未満、10−9s−1未満、5×10−9s−1未満、又は10−10s−1未満のKoffで結合する。一態様において、抗LOX1抗体はhLOX1及びcynLOX1に対し、BIACORE(登録商標)によって計測するとき1〜10×10−4s−1のKoffで結合することができる。
別の態様において、抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質は、LOX1、例えばヒトLOX1(h LOX1)及び/又はカニクイザルLOX1に対し、例えばKINEXA(登録商標)又はBIACORE(登録商標)によって計測するとき少なくとも105M−1s−1、少なくとも5×105M−1s−1、少なくとも106M−1s−1、少なくとも5×106M−1s−1、少なくとも107M−1s−1、少なくとも5×107M−1s−1、又は少なくとも108M−1s−1、又は少なくとも109M−1s−1の会合速度定数又はkon速度で結合することができる。一態様において、抗LOX1抗体はhLOX1及びcynLOX1に対し、BIACORE(登録商標)によって計測するとき約1×105M−1s−1〜約20×105M−1s−1のkon速度で結合することができる。
上述のとおり、LOX1と結合するVH及び/又はVLアミノ酸配列を含有するLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)は、本明細書に示される配列(例えば、表1を参照)と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有し得る。一部の態様において、LOX1と結合する1つ又は複数のVH及び/又はVLアミノ酸配列は、本明細書に示される配列と比べて15個以下の(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の)アミノ酸付加、置換(例えば保存的置換)又は欠失を含む。一部の態様において、LOX1と結合する1つ又は複数のVH及び/又はVLアミノ酸配列は、本明細書に示される配列と比べて8個以下の(例えば、1、2、3、4、5、6、7又は8個の)アミノ酸付加、置換(例えば保存的置換)又は欠失を含む。更なる態様において、LOX1と結合するVH及び/又はVLアミノ酸配列は、本明細書に示される配列と比べて5個以下の(例えば、1、2、3、4又は5個の)アミノ酸付加、置換(例えば保存的置換)又は欠失を含む。あるVH領域又はVL領域と特定のパーセント類似性を有するか、又は1つ以上の置換、欠失及び/又は挿入(例えば保存的置換)を有するVH及びVL領域を含有するLOX1結合タンパク質(例えば抗LOX1抗体又はその断片)は、本明細書に記載されるVH及び/又はVL領域をコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的又はPCR媒介性突然変異誘発)と、続くLOX1との結合に関するコードされた改変抗体の試験、及び任意選択で、本明細書に記載される機能アッセイ又は保持機能を試験するため常法で改良し得る当該技術分野において公知のアッセイを用いた保持機能に関する試験によって得ることができる。
抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質のLOX1に対する親和性又はアビディティは、当該技術分野において公知の任意の好適な方法、例えば、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、又はラジオイムノアッセイ(RIA)、又は動態学(例えば、KINEXA(登録商標)又はBIACORE(登録商標)解析)を用いて実験的に決定することができる。直接結合アッセイ並びに競合的結合アッセイフォーマットは、容易に用いることができる。(例えば、Berzofsky et al.,“Antibody−Antigen Interactions,”In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press:New York,N.Y.(1984);Kuby,Immunology,W.H.Freeman and Company:New York,N.Y.(1992);及び本明細書に記載される方法を参照)。特定の抗体抗原相互作用についての計測される親和性は、異なる条件下(例えば、塩濃度、pH、温度)で計測された場合には変動し得る。従って、親和性及び他のLOX1結合パラメータ(例えば、KD又はKd、Kon、Koff)の計測は、LOX1結合タンパク質及びLOX1と、当該技術分野において公知のとおりの標準緩衝液との標準溶液で行われる。
本開示は、本明細書に記載されるとおりの(例えば、表1を参照)抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質を更に提供し、この抗体は異種薬剤にコンジュゲートされている。特定の態様において、薬剤は、抗菌剤、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、脂質、生物学的反応修飾物質、医薬品、リンホカイン、異種抗体又は抗体断片、検出可能標識、又はポリエチレングリコール(PEG)である。ヘテロコンジュゲートLOX1結合タンパク質は、国際特許出願第PCT/EP2015/072644号明細書(参照により全体として本明細書に援用される)に詳細に考察されるとおり調製することができる。
特定の態様では、LOX1結合タンパク質は抗LOX1抗体でない。タンパク質標的に高親和性で結合する非抗体ポリペプチドを同定及び作製する種々の方法が当該技術分野において公知である。例えば、Skerra,Curr.Opin.Biotech.18:295−304(2007)、Hosse et al.,Protein Science 15:14−27(2006)、Gill et al.,Curr.Opin.Biotechnol.17:653−658(2006)、Nygren,FEBS J.275:2668−76(2008)、及びSkerra,FEBS J.275:2677−83(2008)(これらの各々は、全体として参照により本明細書に援用される)を参照のこと。特定の態様では、ファージディスプレイ技術を用いてLOX1結合タンパク質を同定/作製することができる。特定の態様では、ポリペプチドは、アンキリン、プロテインA、リポカリン、フィブロネクチンドメイン、アンキリンコンセンサスリピートドメイン、及びチオレドキシンからなる群から選択されるタイプのタンパク質スキャフォールドを含む。
特定の態様において、本方法は、本明細書に開示される1つ以上のLOX1結合タンパク質(例えば、表1を参照)と同じエピトープに結合するLOX1阻害薬(例えば、完全長抗LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗体を含むLOX1結合タンパク質)を含み得る。用語「エピトープ」は、本明細書で使用されるとき、本開示の抗体との結合能を有する標的タンパク質決定基を指す。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性、並びに特定の電荷特性を有する。立体エピトープと非立体エピトープとは、変性溶媒の存在下で前者に対する結合は失われるが、後者に対する結合は失われない点で区別される。かかる抗体は、標準的な抗原結合又は活性アッセイにおいて、配列番号4のVH配列及び配列番号33のVL配列を含む抗体、及び/又は配列番号41のVH配列及び配列番号58のVL配列を含む抗体と交差競合する能力(例えば、その結合を統計的に有意な形で競合的に阻害する能力)に基づき同定することができる。
LOX1阻害薬を組み込む方法はまた、本明細書に開示される単離LOX1結合タンパク質(例えば、表1を参照)と同じエピトープに結合する抗LOX1抗体(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体)などのLOX1結合タンパク質も含む。
ある試験LOX1結合タンパク質が、例えば、配列番号4のVH配列及び配列番号33のVL配列を含む抗体及び/又は配列番号41のVH配列及び配列番号58のVL配列を含む抗体の結合を阻害する能力から、その試験LOX1結合タンパク質がLOX1との結合に関して当該の抗体と競合し得ることが実証される;かかるLOX1結合タンパク質は、非限定的な理論によれば、その競合相手のLOX1結合タンパク質(例えば、完全長抗LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗LOX1抗体)とLOX1上の同じ又は関連する(例えば、構造的に類似した、又は空間的に近接した)エピトープに結合することができる。一態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号4のVH配列及び配列番号33のVL配列を含む抗体とLOX1上の同じエピトープに結合する。別の態様において、LOX1結合タンパク質は、配列番号41のVH配列及び配列番号58のVL配列を含む抗体とLOX1上の同じエピトープに結合する。
一態様において、本開示は、LOX1との結合に関して配列番号4のVH配列及び配列番号33のVL配列を含む抗体と競合するLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗体)を提供する。別の態様において、本開示は、LOX1との結合に関して配列番号41のVH配列及び配列番号58のVL配列を含む抗体と競合するLOX1結合タンパク質(例えば、完全長LOX1抗体、LOX1結合抗体断片、並びにその変異体及び誘導体などの抗体)を提供する。
他の実施形態において、阻害薬は、LOX1 mRNAの少なくとも一部分に相補的なポリヌクレオチドを含むアンチセンス分子であってもよい。一部の実施形態において、このアンチセンス分子は、細胞のmRNAの翻訳を阻害する方法における使用に好適である。アンチセンス分子には、DNA、RNA、又はDNAとRNAとの両方、並びに化学的に修飾された核酸が含まれ得る。更に、一部の実施形態においてアンチセンス分子は一本鎖又は二本鎖であってもよい。アンチセンス分子は約10〜約500ヌクレオチドを含むことができ、一部の実施形態では、例えば、約11〜約200ヌクレオチド、約12〜約100ヌクレオチド、約13〜約75ヌクレオチド、約14〜約50ヌクレオチド、約15〜約40ヌクレオチド、約16〜約30ヌクレオチド、又は約17〜約25ヌクレオチドの範囲の、任意の長さを有し得る。当業者は、これらの範囲が例示的実施形態を表すことを理解するであろう。
一部の実施形態において、阻害薬は、LOX1の発現を低下させ又は阻害するsiRNA分子を含み得る。siRNA分子は、一部の実施形態では、LOX1 mRNAにハイブリダイズ可能な配列を含み、且つタンパク質の発現を低下させ又は阻害するRNA干渉又は別のアンチセンス機構を誘導する一本鎖又は二本鎖siRNA分子であり得る。siRNA分子は、そのsiRNA分子がRNA干渉を誘導してLOX1タンパク質の発現の低下又は阻害を生じさせることを可能にする任意の配列であってよい。siRNA分子は、一部の実施形態では、10〜100、12〜80、14〜60、16〜50、17〜40の長さを有し得る。好適にはsiRNAは、18〜30ヌクレオチド、特定の実施形態では約18〜約26ヌクレオチドの範囲の長さを有する。
阻害性核酸分子を含む実施形態において、かかる阻害薬はストリンジェントな結合条件下で標的LOX1核酸配列に結合することができる。用語「ストリンジェントな条件」、「ストリンジェントな結合条件」、又は「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、ポリヌクレオチドが他の配列よりも検出可能に高い程度(例えば、バックグラウンドの少なくとも2倍)で標的配列にハイブリダイズする条件を指す。ストリンジェントな条件の一つの非限定的な例としては、50%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS中37℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC中60℃〜65℃での洗浄が行われるものが挙げられる。
LOX1のポリヌクレオチド配列を所与とすれば、当該技術分野の標準的な技法を用いて阻害性核酸分子をモチーフを使用して設計し、阻害活性に有効であると予想され得る領域に標的化させることができる。
それに代えて又は加えて、LOX1の活性を決定するのに適した、且つ当業者に利用可能な任意の更なる方法が用いられ得る。上記で考察したとおり、本明細書に記載される様々な態様及び実施形態において有用な阻害薬は、対照と比較したときLOX1の活性を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%阻害し得る。詳細な実施形態において、阻害薬は、LOX1の活性を少なくとも50%、少なくとも60%又は少なくとも70%阻害するのに有効である。他の実施形態において、阻害薬は、LOX1の活性を少なくとも85%〜約100%、少なくとも90%〜約100%、少なくとも95%〜約100%、又は約100%阻害し得る。
実施形態において、阻害薬は、腫瘍疾患及び/又は癌の治療又は予防に好適な1つ以上の更なる活性薬剤を含む組成物中に組み合わせてもよい。当該技術分野において一般に公知の化学療法剤を含めたかかる活性化合物の一部の非限定的な例、例えば、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、Doxil(登録商標)、シタラビン、デキサメタゾン、イリノテカン(Camptosar(登録商標))、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標))、アルブミン結合パクリタキセル(Abraxane(登録商標))、テモゾロミド、アドリアマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara−C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン(cytoxin)、タキソイド類(例えば、パクリタキセル)、トキソテール(toxotere)、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カミノマイシン(caminomycin)、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン類、メルファラン及び腫瘍に対するホルモン作用を調節し又は阻害するように作用するタモキシフェン及びオナプリストンなどの他の関連するナイトロジェンマスタード及びホルモン剤。
C.医薬組成物及び製剤
一部の態様において、本開示は医薬組成物を提供する。かかる医薬組成物は、LOX1阻害薬、又は2つ以上のLOX1阻害薬の任意の組み合わせを含む組成物であってもよい。かかる医薬組成物はまた、薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物であってもよい。特定の態様において、本開示の医薬組成物は医薬として用いられる。
特定の態様において、本明細書に開示される阻害薬は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定剤と共に医薬組成物として製剤化され得る。特定の態様において、かかる医薬組成物は、当該技術分野において公知の方法を用いた任意の1つ以上の投与経路によるヒト又は非ヒト動物への投与に好適である。当業者は理解するであろうとおり、投与の経路及び/又は方法は所望される結果に応じて異なり得る。用語「薬学的に許容可能な担体」は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げない1つ以上の非毒性物質を意味する。薬学的に許容可能な担体は、所望の又は必要な投与方法、溶解度及び/又は安定性に好適なものを選択することができる。
生体内投与に用いられる場合、本開示の製剤は無菌でなければならない。本開示の製剤は、滅菌ろ過、放射線照射等を含め、様々な滅菌方法によって滅菌され得る。一態様において、製剤は予め滅菌された0.22ミクロンフィルタでろ過滅菌される。注射用の無菌組成物は、“Remington:The Science & Practice of Pharmacy”,21sted.,Lippincott Williams & Wilkins,(2005)に記載されるとおりの従来の薬学実践に従い製剤化することができる。
この態様の実施形態において、治療用組成物は、経口、経鼻、肺内、局所(頬側及び舌下を含む)、直腸、腟内及び/又は非経口投与など、詳細な投与経路用に製剤化することができる。語句「非経口投与」及び「非経口的に投与される」は、本明細書で使用されるとき、経腸及び局所投与以外の、通常は注射による投与方法を指し、限定なしに、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射及び注入が挙げられる。局所又は経皮投与に好適な本開示の製剤には、散剤、噴霧剤、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤が含まれる。阻害薬及び他の活性分は無菌条件下で薬学的に許容可能な担体と混合され、及び必要となり得る任意の保存剤、緩衝剤、又は噴射剤と混合され得る(米国特許第7,378,110号明細書;同第7,258,873号明細書;同第7,135,180号明細書;米国特許出願公開第2004−0042972号明細書;及び同第2004−0042971号明細書)。
製剤は、好都合には単位投薬量形態で提供されてもよく、薬学の技術分野において公知の任意の方法により調製され得る。本開示の医薬組成物中における活性成分の実際の投薬量レベルは、患者にとって有毒でない、特定の患者、組成物、及び投与方法に所望される治療応答を実現するのに有効な活性成分の量(例えば「治療有効量」)が達成されるように様々であり得る。選択される投薬量レベルは、用いられる詳細な組成物の活性、投与経路、投与時間、用いられる詳細な化合物の排泄速度、治療継続期間、用いられる詳細な組成物と併用して用いられる他の薬物、化合物及び/又は物質、治療下の患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康及び前病歴、及び医学分野で周知の同様の要因を含め、種々の薬物動態学的要因に依存し得る。
本開示は、同様に、診断及び研究用途に好適な製剤もまた作製し得ることを企図する。かかる製剤中の活性薬剤の濃度並びに賦形剤の存在又は非存在は、詳細な適用及び使用目的に基づき選択することができる。
D.キット
本開示の別の態様は、キットに関する。一態様において、キットは、上記に記載したとおりの阻害薬、試薬、組成物、又は医薬組成物のいずれか、及び適切な使用又は投与を指示する説明書又はラベルを含む。任意選択で、キットはまた、1つ以上の容器及び/又はシリンジ又は送達若しくは使用を促進する他の装置も含み得る。本開示は、研究アッセイ、診断アッセイを実行するための、及び/又は治療有効量を投与するための構成要素の全部又は任意の一部がキットに含まれ得ることを企図する。同様に、キットは、例えばコンジュゲートの形成に好適な条件下で本開示の阻害薬と治療用又は診断用部分との間に共有結合を形成することによる、コンジュゲートの作製に関する説明書を含み得る。更なる例として、本開示の治療方法に用いられるキットは、1つ又は複数のLOX1阻害薬の医薬製剤を含有する溶液、又は1つ以上の阻害薬の凍結乾燥製剤、及びそれを必要としている患者への組成物の投与及び/又は凍結乾燥製品の再構成に関する説明書を含み得る。
本開示はまた、完成品の包装されラベルが付された医薬製品も包含する。この製品は、適切なベッセル又は容器、例えばガラスバイアル又はハーメチックに密閉される他の容器内にある適切な単位投薬形態を含む。非経口投与に好適な投薬形態の場合、活性成分は無菌であり、且つ粒子状物質不含溶液としての投与に好適である。特定の態様において、製剤はヒト又は動物への静脈内注入など、静脈内投与に好適である。
ある具体的な態様において、本開示の製剤は単回投与バイアルに滅菌液として製剤化される。例示的容器としては、限定はされないが、バイアル、ボトル、プレフィルドシリンジ、IVバッグ、ブリスターパック(1つ以上の丸薬を含む)が挙げられる。任意選択で、かかる容器には、医薬品又は生物学的製剤の製造、使用又は販売を規制する行政当局によって規定された形式の通知を関連付けることができ、この通知は、ヒトの診断及び/又は投与に関する製造、使用又は販売の当局による認可を反映するものである。
任意の医薬製品と同様に、包装材料及び容器は、保管及び輸送中の製品の安定性を保護するように設計される。更に、本開示の製品は、使用説明書又はその他の、問題の疾患又は障害を適切に予防又は治療する方法を医師、技師又は患者に助言する情報資料を含む。換言すれば、本製品は、限定はされないが、実際の用量、モニタリング手順等を含む投与レジメン、及び他のモニタリング情報を指示又は提案する説明手段を含む。
診断アッセイ用のキットは、本明細書に開示されるとおりのLOX1阻害薬を含有する溶液、又はそれに代えて又は加えて、LOX1の存在の検出用試薬を含み得る。様々な試薬を当該技術分野において公知の及び本明細書に記載される方法により標識してもよく、限定はされないが、小分子蛍光タグなどの標識、ビオチン、GFP又は他の蛍光タンパク質などのタンパク質、又はhis又はmycなどのエピトープ配列が挙げられる。同様に、LOX1の検出に使用する一次抗体がキットに含まれてもよい。一次抗体は、LOX1上の配列に対するものか、又はLOX1を標識し得る標識、タグ、又はエピトープに対するものであり得る。次には一次抗体が検出用に標識されてもよく、又はシグナルの更なる増幅が望ましい場合には、同様にキットに含まれ得る二次抗体によって一次抗体が検出されてもよい。
研究用途のキットもまた企図される。かかるキットは、例えば、診断又は治療用途が意図されるキットに類似しているが、キット及びその使用が研究目的にのみ制限されることを明記するラベルを更に含み得る。
標識、コンジュゲート及び部分
本開示は、診断及び他のアッセイのため標識にコンジュゲートされ得る試薬を含む方法、組成物、及びキットに関し、ここで1つ以上の標的分子は、かかる1つ又は複数の標識された試薬によって結合及び検出され得る。標識としては、限定なしに、発色団、フルオロフォア、蛍光タンパク質、リン光色素、タンデム色素、粒子、ハプテン、酵素及び放射性同位元素が挙げられる。
特定の態様において、試薬はフルオロフォアにコンジュゲートされる。1つ又は複数の試薬に付加されるフルオロフォアの選択により、コンジュゲートされた分子の吸収及び蛍光発光特性が決まることになる。使用し得るフルオロフォア標識の物理的特性としては、限定はされないが、スペクトル特性(吸収、発光及びストークスシフト)、蛍光強度、寿命、分極及び光退色速度、又はこれらの組み合わせが挙げられる。これらの物理的特性は全て、あるフルオロフォアを別のフルオロフォアと区別するのに用いることができ、それによって多重化分析が可能となる。蛍光標識の他の好適な特性としては、例えば1つ又は複数の標的の標識が細胞又は生物(例えば、生きている動物)で実施される場合に、細胞透過性及び低毒性を挙げることができる。
特定の態様において、酵素が標識であり、試薬にコンジュゲートされる。酵素は、検出可能シグナルの増幅を達成してアッセイ感度の増加をもたらすことができるため、好適な標識であり得る。酵素それ自体は検出可能な反応を生じないが、それが適切な基質と接触したときに基質を分解する働きをし、変換された基質が蛍光、比色又は発光シグナルを生じることになる。標識試薬上の1つの酵素が複数の基質の検出可能シグナルへの変換をもたらすことができるため、酵素は検出可能シグナルを増幅する。酵素基質は、好ましい計測可能な産物、例えば比色、蛍光又は化学発光が得られるように選択される。かかる基質は当該技術分野において広範に用いられており、当業者に周知であり、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのオキシドレダクターゼと3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)などの基質;酸性ホスファターゼ、アルカリ性ホスファターゼなどのホスファターゼ酵素と5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)などの基質;β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ又はβ−グルコシダーゼなどのグリコシダーゼと5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルβ−D−ガラクトピラノシド(X−gal)などの基質が挙げられ;更なる酵素としては、それに対する好適な基質が公知のコリンエステラーゼ及びペプチダーゼなどのヒドロラーゼ、グルコースオキシダーゼ及びシトクロムオキシダーゼなどのオキシダーゼ、及びレダクターゼが挙げられる。
一部のアッセイには、化学発光を生じる酵素及びそれらの適切な基質が好適である。それらとしては、限定はされないが、天然及び組換え形態のルシフェラーゼ及びエクオリンが挙げられる。安定ジオキセタン、ルミノール、イソルミノール及びアクリジニウムエステル類を含有するものなど、ホスファターゼ、グリコシダーゼ及びオキシダーゼに対する化学発光生成基質が更に有用である。
別の態様において、ビオチンなどのハプテンもまた標識として利用される。ビオチンは、酵素系で検出可能シグナルを更に増幅する働きをすることができ、且つ単離目的のアフィニティークロマトグラフィーに使用されるタグとして働くことができるため、有用である。検出目的では、アビジン−HRPなど、ビオチンに親和性を有する酵素コンジュゲートが使用される。続いてペルオキシダーゼ基質を加えると、検出可能シグナルが生成される。
ハプテンにはまた、ホルモン、天然に存在する及び合成の薬物、汚染物質、アレルゲン、作用分子、成長因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、アミノ酸、ペプチド、化学的中間体、ヌクレオチドなども含まれる。
特定の態様において、蛍光タンパク質が標識として1つ又は複数の試薬にコンジュゲートされてもよい。蛍光タンパク質の例としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びフィコビリタンパク質及びこれらの誘導体が挙げられる。蛍光タンパク質、特にフィコビリタンパク質は、タンデム色素で標識された標識試薬を作成するのに特に有用である。これらのタンデム色素には、より大きいストークスシフトを達成するため蛍光タンパク質及びフルオロフォアが含まれ、ここでは発光スペクトルが蛍光タンパク質の吸収スペクトルの波長から更にシフトする。
特定の態様において、標識は放射性同位元素である。好適な放射性物質の例としては、限定はされないが、ヨウ素(121I、123I、125I、131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(111In、112In、113mIn、115mIn)、テクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(135Xe)、フッ素(18F)、153SM、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re,142Pr、105Rh及び97Ruが挙げられる。
一部の態様において、薬物又は毒素が1つ又は複数の試薬にコンジュゲートされる。例えば、試薬が細胞傷害性薬物にコンジュゲートされてもよい。この例では、試薬がLOX1、又はLOX1とリガンド又は受容体との間の複合体に結合してもよく、次に細胞に細胞傷害性薬物が送達される。一部の実施形態において、試薬コンジュゲートは細胞にインターナライズされることができ、これにより細胞傷害性薬物が細胞に放出される。当該技術分野において公知の任意の細胞傷害性薬物をコンジュゲートし得る。一部の抗体コンジュゲートはFDAによって既に承認されており、又は/及び現在臨床試験が行われているところである。
上記に開示される態様及び実施形態の一部についての更なる説明を提供するため、以下の実施例を示す。これらの実施例は、いかなる形であれ、本開示の範囲又は添付の特許請求の範囲の広さを限定するものと解釈されてはならない。
実施例1:癌幹細胞エンリッチ細胞集団の作成
3つの患者由来異種移植片(PDX)膵腫瘍を癌幹細胞(CSC)の供給源としてスクリーニングに使用した。臨床で見られる患者集団をより良く代表するように後期転移性腫瘍を使用した。摘出した腫瘍を2mm3片に刻み、200単位/mLコラゲナーゼIV(Worthington Biologics)を含有するDMEM/F12培地中で、組織が完全に解離するまで10〜15分毎に機械的に破壊して解離した。次に細胞をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で2回洗浄し、40ミクロンセルストレーナに通過させた。解離した腫瘍細胞を超低付着性6ウェルプレートの間葉系幹細胞培地(MSCGM、Lonza)にプレーティングすることによりCSCをエンリッチした。細胞を4日間培養した後回収し、Accutaseを使用して解離して、Cryostar 5培地に凍結した。細胞懸濁液を合わせてパニング及びスクリーニングに必要な8000万細胞を得た。
膵臓PDX由来癌幹細胞のエンリッチメント。CSCをエンリッチするため、Jackson Laboratoriesから購入した3つの異なるモデルからの膵臓PDX腫瘍(図1A)を単細胞に解離し、非付着無血清培養条件でプレーティングした。この結果、先にCSCについてのエンリッチメントが示された腫瘍スフェアが形成された(図1B)。CSCのエンリッチメントは遺伝子EZH2、BMI1、SOX2、及びNanog(これらは幹細胞生物学において重要な役割を果たすことが知られている)、並びに膵臓CSCの特徴付けに用いることのできる表面マーカーであるCD24及びCD44のqPCRによって決定した。図1Cは、プレーティング後4日目に収集したスフェアを全腫瘍細胞と比較したとき全ての幹細胞性遺伝子の遺伝子発現が40〜300倍増加していることを示す。次にスフェアを単細胞に解離して、設計されたアンキリンリピートタンパク質「DARPin」ライブラリ(Molecular Partners)を用いた表現型選択に使用した(実施例2を参照)。
CSCスフェア対全腫瘍細胞のqPCR。プレーティング時、各解離したPDXモデルの300,000細胞を「全腫瘍」集団として使用するため急速凍結した。4日間のインキュベーション後、800rpmで遠心することによりスフェアを回収した。次にAccutaseを使用してスフェアを解離し、HBSSで2回洗浄した。次に30万個のCSCスフェア細胞を全腫瘍との比較用に急速凍結した。凍結ペレットから製造者の指示に従いRNeasy Plus miniキット(Qiagen)を使用してRNAを調製した。RNAをNanodropを使用して定量化した。10ngのRNAを含む反応物においてSuperscript II(Life Technologies)を使用してRNAを逆転写した。得られたcDNAを製造者の指示に従いTaqman PreAmpマスターミックスキットを使用して増幅した。予備増幅後、反応物を1:20希釈し、5μLをTaqman qPCR反応(Life Technologies)に使用してFast DxリアルタイムPCR機にかけた。
実施例2:癌幹細胞への結合が増強された結合剤の同定
ファージディスプレイ細胞パニングを実施して、エンリッチ膵臓CSC集団に結合するDARPinを同定した。Molecular Partnersからライセンス提供されたDARPinライブラリで、3つのPDXモデルから形成されたスフェア細胞に対するアフィニティ選択を行った(Lloyd C et al Modelling the human immune response:performance of a 1011 human antibody repertoire against a broad panel of therapeutically relevant antigens Protein Eng Des Sel 2009)。
膵臓CSCへの結合がエンリッチされたDARPinの同定。概略的なスクリーニングキャンペーンの概要を図2に示す。初めに、本発明者らが抗体の単離を所望しない組換えタンパク質に対してDARpinライブラリを選択的に除外した。除外後、膵臓PDXスフェアエンリッチCSCをパニングに使用した。選択後、トリプシン、続いてTEAを用いてDARPinを溶出した。溶出したDARPinを、膵臓PDXモデルPA−0165から選別されたCSC(CD24+CD44+EpCAM+細胞)及び正常膵上皮細胞の両方への結合に関して評価した。STEM0268は、蛍光定量的マイクロボリュームアッセイ技術(FMAT)によって決定するとき、PA−0165腫瘍からフローサイトメトリー選別によってエンリッチされたCSCに結合したが、正常膵上皮細胞には結合しなかった(図3A)。図3Aの挿入図は細胞の明視野像を示す。DARPin(10ug/mL)はまた、蛍光支援細胞選別(FACS)を用いて他の正常上皮細胞株(気管支、結腸及び腎臓)への結合についてもスクリーニングした。STEM0268は、腎上皮細胞への僅かな結合を示したが、気管支及び結腸上皮細胞には結合しなかった(図3B)。結合についてFACS分析によって更に調べ、ここではSTEM0268がPA−0165及びPA−0143 PDXモデルの両方への結合を示し(それぞれ図4A及び図4B)、及び標準的な組織培養条件下で成長した細胞と比較したとき、HPAC細胞株から生成されたスフェアへの結合の有意な増加を示した(図4C)。
DARPinの膵腫瘍細胞、正常上皮細胞及びCSCへの結合。膵癌細胞株はATCCから購入した。正常膵上皮細胞はCell Systemsから購入し、製造者の指示に従い維持した。腎上皮細胞、ヘパトサイト、及び結腸上皮細胞は全てScienCell Research Laboratoriesから購入し、製造者の指示に従い維持した。心筋細胞及びヒト気管支上皮細胞は両方ともにPromoCellから購入し、製造者の指示に従い培養した。初めに細胞株を0.05%トリプシンで剥がし、又は膵臓PDX腫瘍塊を上記の記載と同じプロトコルに従い解離した。1×HBSS、2%ウシ血清アルブミン、及び0.5mM EDTAからなるフローサイトメトリー緩衝液で細胞を洗浄した。再懸濁した細胞をカウントし、96ウェルU底プレートのウェルにウェル当たり200,000細胞以下の密度で移した。次に細胞を2ug/mLのDARPinクローンと共に4℃で1時間インキュベートした。細胞をフローサイトメトリー緩衝液で洗浄し、再懸濁した細胞をAPC−ヤギ抗ヒトFc断片特異的二次抗体によって暗所下4℃で30分間染色した。生死判別染色用にDAPIを含有するフローサイトメトリー緩衝液で細胞を洗浄して再懸濁した。試料をLSRIIフローサイトメーターで読み取り、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。
CSCに対するDARPin活性のスクリーニング。選択に使用した膵臓PDXモデルのうちの1つ(PA−0143)を使用して、好ましい結合パターンを示すDARPinをそのスフェア形成阻害能に関してスクリーニングした。簡潔に言えば、腫瘍細胞を解離した後、50ug/mL DARPinを含むMSCGMが入った96ウェル超低付着性プレートにプレーティングした。DARPinは全てトリプリケートで試験した。4日後、プレートを読み取り、未処理及び対照DARPin処理ウェルの平均値から少なくとも1標準偏差(SD)の阻害活性を示すものとして阻害性分子を同定した。CSCにおけるEZH2の発現に基づく第2のアッセイもまた実施した。本発明者らは、以前膵癌において、そのEZH2高発現及びリジン27上のヒストン3のトリメチル化に基づきCSCを同定し得ることを示している(Van Vlerken L et al.2013 EZH2 is required for breast and pancreatic cancer stem cell maintenance and can be used as a functional cancer stem cell reporter Stem Cells Transl Med 2(1):43−52)。HPAC細胞を使用して、以前記載したとおりEZH2アッセイを、50μg/mL DARPinを組み込んで実施した。未処理及び対照ウェルの平均値から少なくとも1SDを阻害するDARPinを陽性ヒットと見なした。
実施例3:癌幹細胞の阻害薬
STEM0268は癌幹細胞を阻害する。STEM0268がCSCを阻害することが可能かどうかを決定するため、本発明者らは、それが膵臓PDXモデルの腫瘍スフェア形成を阻害する能力を試験した。簡潔に言えば、200単位/mLのコラゲナーゼIVを使用して細胞を解離し、プレーティングし、洗浄し、カウントし、及び30,000細胞/mLでMSCGM(Lonza)中に再懸濁して、超低付着性6ウェルプレートにプレーティングした。適切なウェルに50μg/mLで抗体を加えた。4日間のインキュベーション後、スフェアを回収し、同じように解離及び再プレーティングして二次スフェアを生成させ、CSCの自己複製能を評価した。STEM0268は未処理又は対照DARPin−Fcモデルと比較したときPA−0143で27%の阻害を示し(図5A)、及びPA−0165モデルで25%の阻害を示した(図5B)。STEM0268がEZH2high細胞の数(本発明者らは以前、これがHPAC細胞株における膵臓CSCを特徴付けることを実証している(Van Vlerken L et al.2013))を減少させる能力もまた計測した。図5Cに示すとおり、STEM0268はDARPin−Fc対照と比較したときEZH2high細胞を43%減少させる(P<0.005)。これらの実験の両方でサリノマイシン(1μM)が陽性対照として働いた(Gupta PB et al.2009)。これらの実験は、まとめると、STEM0268が膵臓PDXモデルのCSCを阻害し得ることを実証している。
実施例4:癌幹細胞の阻害標的としてのLOX1の同定
DARPin標的の同定。STEM0268の標的を同定するため、本発明者らは、以前記載されたとおり(Yao et al)、タンパク質過剰発現HEK293細胞のライブラリをスクリーニングした。簡潔に言えば、4319個の哺乳類発現ベクター(各々がユニークな膜タンパク質をコードする)で構成されるプラスミドライブラリを個々にHEK293T細胞にトランスフェクトした。STEM0268タンパク質を培養培地に希釈し、AlexaFluor647コンジュゲート抗ヒトIgG Fc二次抗体と混合して、トランスフェクト細胞に加えた。細胞をタンパク質と共に37℃で一晩インキュベートし、次に共焦点顕微鏡法によって結合を計測した。次に顕微鏡的陽性ヒットをFACSによってスクリーニングした。図6Aは、LOX1を過剰発現する細胞へのSTEM0268のFACS結合を示す。Fcガンマ受容体2b(Fcgr2b)をDARPin−Fcへの結合の陽性対照として使用した。他の非標的タンパク質(S1PR2及びBMPR1A)へのSTEM0268のFACs結合の例が示される。STEM0268の標的についてのこの同定を確かめるため、フラグタグ付加組換えヒトLOX1(rhLOX1)を使用してELISAを実施した。STEM0268は実にrhLOX1に結合した(図6B)。対照DARPin−Fcはいずれも結合せず、及び抗FLAG抗体はまたフラグタグ付加rhLOX1の検出能も有した。STEM0268がLOX1に結合する能力は、Octet分析によって更に確認された(図6C)。
LX5140110は癌幹細胞を阻害する。LOX1阻害薬がCSCスフェア形成を阻害する能力を更に確かめるため、配列番号33を含むVLと配列番号4を含むVHとを含むLOX1特異的モノクローナル抗体(mAb)、LX5140110(例えば表1を参照)を、その膵臓PDXモデルにおけるスフェア形成の阻害能に関してSTEM0268と比較した。LX5140110はPA−0165及びPA−0143モデルの両方でSTEM0268と同程度にスフェア形成を阻害した(図7A)。加えて、LX5140110は、複数の膵臓細胞株(図7B)及び結腸直腸細胞株(図7C)のCSCを阻害する能力を有した。
PA−0143によるインビボ試験を実施して、LX5140110がインビボでCSCを阻害する能力を決定した。PA−0143 PDX腫瘍は、腫瘍断片を6〜8週齢NSGマウス(NOD.Cg−Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ)にトロカール移植することによって継代して成長させ、約300mm3になった時点でマウスを無作為化し、30mg/kgの対照IgG1 mAb又はLX5140110のいずれかを週2回、2週間にわたって皮下注射することにより治療した(図8A)。LX51401110単独は、媒体治療及び同様に30mg/kgで投与した対照非特異的IgG1の両方と比較してPA−0143モデルの腫瘍成長を僅かに低下させたが(P<0.001、チューキーの比較検定)、LOX1は腫瘍のごく一部を占めるに過ぎないCSCで主に発現すると思われるため、これは予想どおりであった。最終回の抗体投与の24時間後、一部のマウスから腫瘍を摘出し、CSCの割合について分析した。LX5140110は媒体対照と比較したときCSCの有意な減少を示した(図8B)。
LX5140110と化学療法との併用は抗腫瘍細胞有効性の改善をもたらす。化学療法及び更には一部の標的療法で腫瘍量の低下にも関わらずCSCがエンリッチされ得ることを考えると、これらの薬剤と併用してCSC特異的標的療法を用いる併用手法は癌患者の治療に魅力的な手法となる。LX5140110はCSCを特異的に標的化するため、本発明者らは、現行の膵癌に対する標準治療化学療法であるゲムシタビンとLX5140110との併用効果に取り組むことにした。初めにゲムシタビンがPan02.13を阻害する能力を試験した。Pan02.13細胞を組織培養被覆平底プレート(n=10)に100ng/mLゲムシタビン有り及び無しの標準的な組織培養条件下でプレーティングした。100ng/mLで細胞数の有意な減少があった(図9A、P<0.001 スチューデントの両側t検定)。CSCに対する治療の効果を決定するため、Pan02.13を標準的な組織培養条件で50μg/mLのLX5140110又は対照抗体のいずれかにより及び100ng/mLのゲムシタビン(GEM)有り又は無しで4日間処理し、次にCSCの割合についてフローサイトメトリーで分析した。CSC(EpCAM+CD24+CD44+)の割合は各処理条件につき決定した。初めに細胞をスキャッタ及びDAPIを用いて単一生細胞についてゲーティングした。蛍光マイナスワン(FMO)対照をゲーティングに利用し、EpCAM+集団をCD44及びCD24発現について分析した。生細胞のCSC頻度を図9Bに報告する。これらの条件下及び時点で、LX5140110はCSCの僅かな減少を示した。既報告のとおり、ゲムシタビンではCSCがエンリッチされ、このエンリッチメントは非特異的IgG1を含めることによる影響を受けなかった。しかしながら、LX5140110による処理はこの増加を阻害したのみならず、CSCの割合もまたベースラインレベルから僅かに低下させた(0.62%対ゲムシタビン無しの対照IgG1の0.81%)。
LOX1を阻害すると化学療法誘発性心筋細胞損傷を低減することができる。化学療法と抗CSC標的療法との併用は臨床で有用であるものと見込まれるが、多くの化学療法が抗腫瘍活性に加えて意図せぬ有害な副作用を有することが知られている。かかる副作用の一つは、心筋細胞死及び心不全につながり得る心臓損傷である。LOX1は、ドキソルビシン媒介心筋細胞損傷において主要な役割を果たすことが示されている(Spallarossa et al.,Biochemical and Biophysical Research Communications(2005)335 188−196、Yokoyama et al.,(2016)PLoS ONE 11(5):e0154994.doi:10.1371/journal.pone.0154994を参照)。初めに、本発明者らは、ヒト大動脈内皮細胞(HAEC)及び胚性幹細胞由来心筋細胞においてドキソルビシン(doxorobucin)処理に応答したLOX1の発現を調べた。酸化LDL(Ox−LDL)はLOX1の従来のリガンドであり、ラット心筋細胞におけるOx−LDLに応答したLOX1の増加がこれまでの報告によって示されているため(Spallarossa et al.,(2005))、これを対照として加えた。40,000細胞を96ウェルプレートにプレーティングし、培地単独又は5μMドキソルビシンを含有する培地で24時間処理した。次に細胞を剥がし取り、プロテアーゼ阻害薬を含有する1×RIPA緩衝液によって氷上で1時間溶解させた。各試料にローディング緩衝液を加え、続いて90℃で10分間加熱した。4〜12%ビス−トリスグラジエントゲルに各レーンにつき12マイクロリットルの試料をロードした。ゲルをMOPS緩衝液中200Vで40分間泳動させた。iBlotを使用してタンパク質をニトロセルロース膜に転写した。この膜をカゼイン溶液で一晩ブロックした。LX5140110をカゼインブロッキング緩衝液中1μg/mlで膜に加え、室温で1時間インキュベートした。膜をTBST緩衝液で3回、各5分間洗浄した。HRPにコンジュゲートした抗ヒトFc抗体をカゼインブロッキング緩衝液中1:5000希釈で加え、室温で1時間インキュベートした。膜をTBSTで2回、各10分間洗浄した後、最後にTBS緩衝液で15分間洗浄した。Supersignal ELISA Pico化学発光基質を1分間加えた。膜をフィルムに露光して現像した。図10Aに示すとおり、Ox−LDL及びDOX処理ヒト大動脈内皮細胞の両方で(これらは化学療法剤が心臓で最初に遭遇するものである)LOX1タンパク質が上方制御された。興味深いことに、本発明者らはまた、5μM DOXで処理した心筋細胞においてもLOX1発現の増加を検出した(図10B)。
次に、本発明者らは、LOX1の阻害がドキソルビシン媒介心筋細胞損傷を阻止することができるかどうかを決定しようと試みた。Cytivia(商標)心筋細胞をGE Healthcareから購入し、製造者の指示に従い、但しウシフィブロネクチンをヒトフィブロネクチンに置き換えてプレーティングした。細胞を4日間付着させた後、培地を交換した。5〜7日目、培地を除去し、細胞を指示濃度のLX5140110と共に4時間プレインキュベートした後、5μΜドキソルビシン(DOX)を添加した。DOXの添加後、細胞を更に24時間インキュベートした。インキュベーション後、培地を除去し、DAPI(1:4000希釈の1mg/mL)、TOTO−3(培地1mL当たり1uLの色素溶液)、及び5μM Fluo−4で細胞を染色した。細胞を37℃で1時間インキュベートし、次にGE IN Cell AnalyzerのImageでイメージングした。DAPI及びTOTO−3色素を除く細胞数を取得することにより生存率を決定し、一方でFluo−4を用いてカルシウム濃度を決定した。心筋細胞はエンドトキシン誘発性心機能不全においてカルシウム負荷の増加を示すことが知られている(Thompson et al.,Pediatric Research(2000)47:669−676)。図11Aに示すとおり、カルシウム濃度は、5μM DOXと共にインキュベートした心筋細胞で、心筋細胞機能障害を示す未処理対照と比較したとき約2.5倍増加した。(重要なことに、LX5140110はDOX処理の結果としてカルシウムの蓄積を阻害可能であった。更に、DOXは心筋細胞の生存率の低下をもたらし(図11B)、これは、この場合もまたLOX1阻害薬LX5140110によって逆転した。
考察
上記の実施例のデータは、冠動脈及び循環の健康におけるその既知の役割に加えた、LOX1のこれまで確認されたことのない予想外の機能を実証している。詳細には、本明細書に提供される研究は、癌に関連してLOX1がCSC機能において特異的な役割を有することを実証し、これはこれまでに報告されたことのない知見に相当する。例示的な実施例の幾つかにおいて、それらの結果は、膵癌及び結腸直腸癌モデルにおいてLOX1がCSCに過剰発現し、且つPDXモデルへのLOX1阻害薬(DARPin及びmAb)の外因性投与によってCSCの直接的な阻害がもたらされたとおり、CSC活性において機能的役割を有することを示している。更に、上記の実施例のデータは、LOX1阻害薬が化学療法によって誘発されるCSCの増加を阻害し、これらを併用した使用が魅力的な臨床パラダイムとなり得ることを示している。加えて、本発明者らは、上記の実施例において、LOX1阻害薬がまた、化学療法の薬物で治療される患者にとって重大な問題である、化学療法によって誘発される心臓損傷も保護し得るというエビデンスを提供する。
多数の前臨床的及び臨床的エビデンスからは、癌治療におけるCSCの重要な機能が指摘され、従ってこの腫瘍細胞集団を標的化する治療には高い価値があり得る。本明細書に記載される研究は、CSC維持におけるLOX1の新規の重要な役割を指摘するだけに留まらず、LOX1の中和がCSC機能を阻害する有用な戦略であり得ること、及びLOX1の遮断によるCSCの阻害によって患者生命を改善するユニーク且つ有効な療法が実現し得ることを示唆している。
参照による援用
本明細書で言及される全ての刊行物及び特許は、各個別の刊行物又は特許が具体的且つ個別的に参照によって援用されることが示されたものとして本明細書によって全体として参照により援用される。
本開示の具体的な態様を考察したが、上記の明細書は例示であり、限定ではない。当業者には、本明細書及び以下の特許請求の範囲を考察すれば、本開示の多くの変形例が明らかになるであろう。本開示の完全な範囲は特許請求の範囲をその均等物の完全な範囲と共に、及び明細書をかかる変形例と共に参照することにより決定されるべきである。
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