JP2018206889A - 有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、照明装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、照明装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高輝度で外部量子効率が高く、寿命の長い逆構造の有機EL素子を提供する。【解決手段】基板上に、陰極と発光層と陽極とがこの順に設けられ、発光層が、ゲスト材料とホスト材料を含み、ホスト材料が一般式(1)で表わされる化合物である有機EL素子。環Aは、隣接環と任意の位置で縮合する式(1a)で表される芳香環。環Bは、隣接環と任意の位置で縮合する式(1b−1)(1b−2)(1b−3)のいずれかで表される環構造。式(1)中のnは1以上4以下の整数。【選択図】なし

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、エレクトロルミネッセンス(電界発光)を「EL」と記す場合がある。)、表示装置、照明装置に関する。
有機EL素子は、薄く、柔軟でフレキシブルである。また、有機EL素子を用いた表示装置は、現在主流となっている液晶表示装置およびプラズマ表示装置と比較して、高輝度で高精細な表示が可能である。また、有機EL素子を用いた表示装置は、液晶表示装置と比べて視野角が広い。これらのことから、有機EL素子は、テレビや携帯電話のディスプレイ等としての利用の拡大や、照明装置としての利用が期待されている。
有機EL素子は、陰極と陽極との間に、発光層を含む複数の層が積層された構造を有する。従来、有機EL素子の各層に適した材料について、研究開発が行われている。
発光層の材料としては、燐光性化合物を用いることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。通常、発光層の材料として燐光性化合物を用いる場合、ホスト材料中にゲスト材料として燐光性化合物を分散させて用いる。例えば、有機材料であるCBPや金属錯体であるBepp2に、燐光性化合物であるIr(ppy)を分散させた発光層を有する有機EL素子がある(例えば、非特許文献2および非特許文献3参照)。
また、下記一般式(11)で示される化合物からなる有機発光材料を含む発光層を有する有機発光素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
Figure 2018206889
(ここで、環Aは隣接環と任意の位置で縮合する式(11a)で表される芳香環を表し、環Bは隣接環と任意の位置で縮合する式(11b)で表される複素環を表す。式(11)、(11b)中のArは、独立に芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示す。式(11)、(11a)中のRは、独立に水素、又は炭素数1−10のアルキル基、炭素数1−10のアルコキシ基、炭素数1−10のアルキルチオ基、炭素数1−10のアルキルアミノ基、炭素数2−10のアシル基、炭素数7−20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6−30の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは未置換の炭素数3−30の芳香族6員複素環基からなる群れから選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよい。nは1以上4以下の整数を示す。)
有機EL素子としては、有機EL素子を構成する各層が全て有機物からなるものの他、有機EL素子を構成する層の一部が無機物からなる有機無機ハイブリッド型のもの(Hybrid Organic Inorganic LED:HOILED)が研究されている。
有機無機ハイブリッド型の有機EL素子において、発光層に燐光性化合物を用いたものとしては、ポリビニルカルバゾールポリマーにドーパントとしてイリジウム化合物を添加したものを金属酸化物層の上に積層した構造を有するもの(例えば、非特許文献4参照)や、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)とイリジウム化合物とを含む発光層を有するもの(例えば、非特許文献5参照)がある。
また、有機EL素子としては、基板と発光層との間に陽極が配置された順構造のものと、基板と発光層との間に陰極が配置された逆構造のものとがある。逆構造の有機EL素子では、基板上に発光層を形成する前に、電子注入層を形成できる。したがって、例えば、スパッタ法を用いて無機酸化物等の電子注入層を形成しても発光層が損傷を受けることがなく、上記ハイブリッド型の有機EL素子を作製する場合に好ましい。
特許第5124785号公報
ウ シク ジェオン(Woo Sik Jeon)外5名「オーガニック エレクトロニクス(Organic Electronics)」、第10巻、2009年、p240−246 タエ ジン パク(Tae Jin Park)外7名「アプライド フィジクス レターズ(Applied Physics Letters)」、第92巻、2008年、p113308 ウ シク ジェオン(Woo Sik Jeon)外6名「アプライド フィジクス レターズ(Applied Physics Letters)」、第92巻、2008年、p113311 ヘンク J.ボリンク(Henk J.Bolink)外3名「アドバンスト マテリアルズ(Advanced Materials)」、2010年、第22巻、p2198−2201 ヘンク J.ボリンク(Henk J.Bolink)外2名「ケミストリー オブ マテリアルズ(Chemistry of Materials)」、2009年、第21巻、p439−441
しかしながら、従来の逆構造の有機EL素子は、陰極から発光層への電子注入性が不十分であるため、輝度および外部量子効率が低く、寿命の短いものであった。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、高輝度で外部量子効率が高く、寿命の長い逆構造の有機EL素子、この有機EL素子を備えた表示装置および照明装置を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。その結果、基板と発光層との間に陰極が配置された逆構造の有機EL素子において、発光層を、ゲスト材料と、下記一般式(1)で示される化合物からなるホスト材料とを含むものとすればよいことを見出し、本発明を想到した。
すなわち、本発明は、以下の発明に関わる。
〔1〕 基板上に、陰極と発光層と陽極とがこの順に設けられ、
前記発光層が、ゲスト材料とホスト材料を含み、
前記ホスト材料が下記一般式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2018206889
(式(1)中の環Aは、隣接環と任意の位置で縮合する式(1a)で表される芳香環を表す。式(1)中の環Bは、隣接環と任意の位置で縮合する式(1b−1)(1b−2)(1b−3)のいずれかで表される環構造を表す。式(1)中のArは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示す。式(1)(1a)(1b−1)中のRは、独立に水素、又は炭素数1−10のアルキル基、炭素数1−10のアルコキシ基、炭素数1−10のアルキルチオ基、炭素数1−10のアルキルアミノ基、炭素数2−10のアシル基、炭素数7−20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6−30の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは未置換の炭素数3−30の芳香族6員複素環基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよい。式(1)中のnは1以上4以下の整数を示す。)
〔2〕 前記ゲスト材料が、燐光性化合物であることを特徴とする〔1〕に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔3〕 前記式(1)中のnが1であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔4〕 前記式(1)中のArが芳香族複素環基であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔5〕 前記式(1)中のArが下記一般式(2)で示される芳香族複素環基であることを特徴とする〔4〕に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
Figure 2018206889
(式(2)中、Xは独立にN、C−H又はC−Ar1を示し、少なくとも1つはNである。Ar1は独立に芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示す。XがC−Ar1を含む場合、Ar1とXを含む環とで一辺を共有する縮合環を形成してもよい。)
〔6〕 前記式(1)および前記式(1a)中のRが水素であり、前記式(1b−1)中のRがメチル基であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔7〕 前記陰極と前記発光層との間に金属酸化物からなる電子注入層を有することを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔8〕 〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする表示装置。
〔9〕 〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする照明装置。
本発明の有機EL素子は、基板上に、陰極と発光層と陽極とがこの順に設けられた逆構造のものであり、発光層が、ゲスト材料と一般式(1)で表わされる化合物であるホスト材料とを含む。このため、本発明の有機EL素子は、陰極から発光層への電子注入性が良好であり、高輝度で外部量子効率が高く、長寿命である。
本発明の表示装置および照明装置は、本発明の有機EL素子を含むものであり、有機EL素子が高輝度で外部量子効率が高く、長寿命であるため優れた性能を有する。
本実施形態の有機EL素子の一例を説明するための断面模式図である。 比較例の有機EL素子を説明するための断面模式図である。 ホスト材料に使用したHost−CおよびHost−Oにおける経過時間と発光強度との関係を示したグラフである。 逆構造の有機EL素子における電圧と輝度との関係を示したグラフである。 逆構造の有機EL素子における電流密度と外部量子効率との関係を示したグラフである。 順構造の有機EL素子における電圧と輝度との関係を示したグラフである。 順構造の有機EL素子における電流密度と外部量子効率との関係を示したグラフである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者は、上記課題を解決するために、基板上に、陰極と発光層と陽極とがこの順に設けられた逆構造の有機EL素子の発光層に用いるホスト材料に着目し、鋭意検討した。その結果、逆構造の有機EL素子では、発光層にゲスト材料とともに含まれるホスト材料の正孔輸送性に寄与するドナー性が強すぎると、陰極から発光層への電子注入性が十分に得られないことが分かった。これは、ホスト材料のドナー性が強すぎると、ホスト材料の最高占有軌道(HOMO)および最低非占有軌道(LUMO)のエネルギー準位が浅くなるためである。
そこで、本発明者は、ホスト材料のHOMOおよびLUMOのエネルギー準位に着目して鋭意検討を重ねた。その結果、ホスト材料として、HOMOおよびLUMOのエネルギー準位が深い一般式(1)で示される化合物を用いることで、陰極から発光層への電子注入性が良好となり、高輝度で外部量子効率が高く、長寿命の逆構造の有機EL素子が得られることを確認し、本発明を想到した。
以下、本発明の有機EL素子、表示装置、照明装置について、図面を用いて詳細に説明する。
[有機EL素子]
図1は、本実施形態の有機EL素子の一例を説明するための断面模式図である。図1に示す本実施形態の有機EL素子10は、基板1上に、陰極2と発光層6と陽極9とがこの順に設けられた逆構造の有機EL素子10である。
本実施形態の有機EL素子10は、陰極2と陽極9との間に、電子注入層3と、バッファ層4と、電子輸送層5と、発光層6と、正孔輸送層7と、正孔注入層8とがこの順に積層された積層構造を有する。本実施形態の有機EL素子10は、電子注入層3として無機材料である金属酸化物膜が設けられた逆構造の有機−無機ハイブリッド有機EL素子である。
図1に示す有機EL素子10は、基板1と反対側に光を取り出すトップエミッション型であってもよいし、基板2側に光を取り出すボトムエミッション型であってもよい。
「基板」
基板1の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
図1に示す有機EL素子10がトップエミッション型である場合、基板1の材料として、透明材料だけでなく不透明材料も用いることができる。具体的には、図1に示す有機EL素子10がトップエミッション型である場合、基板1として、例えば、アルミナ等のセラミックス材料からなる基板、ステンレス鋼などの金属からなる基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料からなる基板等も用いることができる。
基板1の平均厚さは、0.1〜30mmであることが好ましく、より好ましくは、0.1〜10mmである。基板1の平均厚さは、デジタルマルチメーターおよび/またはノギスにより測定できる。
「陰極」
陰極2としては、ITO(インジウム酸化錫)、IZO(インジウム酸化亜鉛)、FTO(フッ素酸化錫)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物等からなる膜を用いることができる。上記の中でも、陰極2として、ITO膜、IZO膜、FTO膜のいずれかを用いることが好ましい。
有機EL素子10がトップエミッション型である場合、陰極2の材料として、透明材料だけでなく、金属などからなる不透明材料も用いることができ、反射性の材料を用いてもよい。
陰極2の平均厚さは、特に制限されないが、10〜500nmであることが好ましく、より好ましくは、100〜200nmである。陰極2の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
「電子注入層」
電子注入層3は、陰極2と発光層6との間に設けられている。電子注入層3は、金属酸化物からなるものであることが好ましい。電子注入層3の用いられる金属酸化物としては、特に制限されないが、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO)、酸化二オブ(Nb)、酸化鉄(Fe)、酸化錫(SnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化ジルコニウム(ZrO)等の1種又は2種以上を用いることができる。
図1に示す有機EL素子10は、逆構造の有機EL素子10であるので、基板1上に発光層6を形成する前に、電子注入層3を形成できる。したがって、例えば、スパッタ法を用いて電子注入層3を形成しても、電子注入層3よりも後に形成される発光層6を含む各層が損傷を受けることがなく、好ましい。
電子注入層3の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは、2〜100nmである。電子注入層3の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
本実施形態の有機EL素子10においては、陰極2から発光層6への電子注入性を向上させるために、アルカリ金属からなる電子注入層3を設けてもよい。アルカリ金属からなる電子注入層3は、電子注入性に優れる。しかし、アルカリ金属は、酸化しやすい材料であるため、大気中の酸素や水分などに触れると容易に変質する。本実施形態の有機EL素子10では、アルカリ金属からなる電子注入層3を設けなくても、良好な電子注入性が得られる。このため、本実施形態では、有機EL素子10の材料として、アルカリ金属を使用しないことが好ましい。アルカリ金属を含まない有機EL素子とすることで、アルカリ金属を含む有機EL素子と比較して、大気安定性が良好で寿命の長いものとなる。
「バッファ層」
バッファ層4は、電子注入層3と発光層6との間に設けられている。バッファ層4の材料としては、電子輸送性を有する化合物全般を用いることができる。バッファ層4の材料としては、ポリエチレンイミン等、電子注入を促進可能な材料であることが好ましい。
バッファ層4の材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9−ジオクチルフルオレンのようなポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物や、ホウ素含有化合物等が挙げられる。バッファ層4の材料として、上記の材料から選ばれる1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
バッファ層4は、還元剤を含むものであってもよい。バッファ層4に含まれる還元剤は、n−ドーパントとして働く。このため、バッファ層4が還元剤を含む場合、陰極2から発光層6への電子の供給が充分に行われ、有機EL素子10の発光効率がより一層向上する。
バッファ層4に含まれる還元剤としては、電子供与性の化合物であれば特に制限されない。バッファ層4に含まれる還元剤としては、具体的には、1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1,3−ジメチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、(4−(1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)フェニル)ジメチルアミン(N−DMBI)、1,3,5−トリメチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]イミダゾール化合物;3−メチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チアゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]チアゾール化合物;3−メチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾ[d]オキサゾール等の2,3−ジヒドロベンゾ[d]オキサゾール化合物;ロイコクリスタルバイオレット(=トリス(4−ジメチルアミノフェニル)メタン)、ロイコマラカイトグリーン(=ビス(4−ジメチルアミノフェニル)フェニルメタン)、トリフェニルメタン等のトリフェニルメタン化合物;2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチル(ハンチュエステル)等のジヒドロピリジン化合物等の1種又は2種以上を用いることができる。この中でも、2,3−ジヒドロベンゾ[d]イミダゾール化合物や、ジヒドロピリジン化合物が好ましい。特に、バッファ層4に含まれる還元剤として、(4−(1,3−ジメチル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)フェニル)ジメチルアミン(N−DMBI)、または2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸ジエチル(ハンチュエステル)を用いることが好ましい。
バッファ層4に含まれる還元剤の含有量は、バッファ4層を形成する有機化合物100質量%に対して、0.1〜15質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、更に好ましくは1〜5質量%である。バッファ層4に含まれる還元剤の含有量が0.1〜15質量%であると、有機EL素子10の発光効率がより一層高くなる。
バッファ層4の平均厚さは、5〜100nmであることが好ましい。バッファ層4の平均厚さが5nm以上であると、電子注入層3の表面に存在する凹凸が、バッファ層4が設けられていることにより、十分に平滑化される。その結果、電子注入層3の表面に存在する凹凸に起因するリーク電流が抑制され、バッファ層4を形成することによる効果が充分に発揮される。バッファ層4の平均厚さが100nm以下であると、バッファ層4が厚すぎることによる有機EL素子10の駆動電圧の上昇を抑制でき、好ましい。
バッファ層4の平均厚さは、5〜100nmであることが好ましく、より好ましくは10〜60nmである。
バッファ層4の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定できる。
「電子輸送層」
電子輸送層5の材料としては、例えば、トリス−1,3,5−(3’−(ピリジン−3’’−イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)のようなピリジン誘導体、(2−(3−(9−カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ))のようなキノリン誘導体、2−フェニル−4,6−ビス(3,5−ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)のようなピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)のようなフェナントロリン誘導体、2,4−ビス(4−ビフェニル)−6−(4’−(2−ピリジニル)−4−ビフェニル)−[1,3,5]トリアジン(MPT)のようなトリアジン誘導体、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、2,2’,2’’−(1,3,5−ベントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBI)のようなイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ピリジン]ベリリウム(Bepp2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ))、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)などに代表される各種金属錯体、2,5−ビス(6’−(2’,2’’−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体、ホウ素含有化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも電子輸送層5の材料として、Bepp2、Alqのような金属錯体、TmPyPhBのようなピリジン誘導体を用いることが好ましい。
図1に示す有機EL素子10のように、独立した層として電子輸送層5が形成されている場合、電子輸送層5の平均厚さは、10〜150nmであることが好ましく、より好ましくは40〜100nmである。
電子輸送層5の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定できる。
「発光層」
発光層6は、ホスト材料とゲスト材料とを含む。
ホスト材料は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。ホスト材料は、下記一般式(1)で表わされる発光性化合物であり、低分子化合物である。
なお、本発明において低分子化合物とは、高分子化合物(重合体)ではない化合物を意味し、分子量が低い化合物を必ずしも意味するものではない。
ゲスト材料は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。ゲスト材料は、低分子化合物であることが好ましい。ホスト材料とゲスト材料の両方が低分子化合物である場合、輝度、外部量子効率、寿命の全ての特性がより良好な逆構造の有機EL素子10となる。
発光層6は、ゲスト材料が燐光性化合物である場合、ゲスト材料がホスト材料中に分散したものであることが好ましい。この場合、ホスト材料は、ゲスト材料との間でエネルギーや電子を移動させてゲスト材料を励起状態にする役割を有する。このため、ホスト材料の励起エネルギーは、ゲスト材料の励起エネルギーよりも大きいことが好ましい。
(ホスト材料)
ホスト材料は、下記一般式(1)で表わされる化合物である。
Figure 2018206889
(式(1)中の環Aは、隣接環と任意の位置で縮合する式(1a)で表される芳香環を表す。式(1)中の環Bは、隣接環と任意の位置で縮合する式(1b−1)(1b−2)(1b−3)のいずれかで表される環構造を表す。式(1)中のArは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示す。式(1)(1a)(1b−1)中のRは、独立に水素、又は炭素数1−10のアルキル基、炭素数1−10のアルコキシ基、炭素数1−10のアルキルチオ基、炭素数1−10のアルキルアミノ基、炭素数2−10のアシル基、炭素数7−20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6−30の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは未置換の炭素数3−30の芳香族6員複素環基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよい。式(1)中のnは1以上4以下の整数を示す。)
一般式(1)で示される化合物は、カルバゾール環構造を含む骨格を有し、カルバゾール環構造に含まれる窒素を有する複素環にArが結合した構造を有する。一般式(1)で示される化合物のカルバゾール環構造を含む骨格は、正孔輸送性に寄与するドナー性を有する。また、一般式(1)で示される化合物中のArは、電子輸送性に寄与するアクセプター性の置換基である。
式(1)中のArは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示す。一般式(1)中のArは、芳香族複素環基であることが好ましい。式(1)中のArとして好ましい芳香族複素環基としては、例えば、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、スルホリル誘導体、シアノ誘導体などが挙げられる。具体的には、式(1)中のArとして好ましい芳香族複素環基として、下記一般式(21)〜(33)で示されるいずれかの化合物に由来する原子団からなる基が挙げられる。
Figure 2018206889
式(1)中のArは、一般式(2)で示される芳香族複素環基であることが好ましい。式(1)中のArが一般式(2)で示される芳香族複素環基である場合、ホスト材料の励起一重項エネルギー(S1)と励起三重項エネルギー(T1)との差が0〜0.2eVとなる。この化合物は、時間分解発光現象を観測することにより、T1からS1へ熱的に遷移したことに起因する遅延蛍光が観測される熱活性化遅延蛍光材料である。式(1)で表わされる化合物は、式(1)中のArが一般式(2)で示される芳香族複素環基である場合に熱活性化遅延蛍光材料となるのに十分なドナー性を有している。
Figure 2018206889
(式(2)中、Xは独立にN、C−H又はC−Ar1を示し、少なくとも1つはNである。Ar1は独立に芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示す。XがC−Ar1を含む場合、Ar1とXを含む環とで一辺を共有する縮合環を形成してもよい。)
式(2)中、Xは独立にN、C−H又はC−Ar1を示し、少なくとも1つはNである。式(2)中のXは、3つがNで2つがC−Ar1であって、NとNとの間にC−Ar1が配置されていることが好ましい。
また、式(2)中、Ar1は独立に芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示す。式(2)中のXのうち、3つがNで2つがC−Ar1であって、NとNとの間にC−Ar1が配置されている場合、2つのAr1はフェニル基であることが好ましい。
式(2)中、XがC−Ar1を含む場合、Ar1とXを含む環とで一辺を共有する縮合環を形成してもよい。XがC−Ar1を含み、Ar1とXを含む環とで一辺を共有する縮合環を形成している場合としては、例えば式(1)中のArが、キノリンに由来する原子団からなる基である場合などが挙げられる。
式(1)(1a)(1b−1)中のRは、独立に水素、又は炭素数1−10のアルキル基、炭素数1−10のアルコキシ基、炭素数1−10のアルキルチオ基、炭素数1−10のアルキルアミノ基、炭素数2−10のアシル基、炭素数7−20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6−30の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは未置換の炭素数3−30の芳香族6員複素環基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよい。
式(1)中のRは水素であることが好ましい。式(1)中のRが水素であると、容易に一般式(1)で示される化合物を合成できる。
式(1a)中のRは水素であることが好ましい。式(1a)中のRが水素であると、容易に一般式(1)で示される化合物を合成できる。
式(1b−1)中のRはメチル基であることが好ましい。式(1b−1)中のRがメチル基である場合、容易に一般式(1)で示される化合物を合成できる。
一般式(1)中のnは、1以上4以下の整数である。一般式(1)中のnが1以上であると、十分なドナー性が得られる。また、一般式(1)中のnが4以下であると、容易に一般式(1)で示される化合物を合成できる。特に、一般式(1)中のnが1である化合物は、容易に合成できるため、好ましい。
一般式(1)で示される化合物は、環Bが式(1b−2)で表される環構造であり、Arがジフェニルトリアジンに由来する原子団からなる基であり、式(1)(1a)中のRが全て水素であり、式(1)中のnが1である場合、例えば、下記一般式(41)〜(43)であることが好ましい。
一般式(1)で示される化合物は、環Bが式(1b−3)で表される環構造であり、Arがジフェニルトリアジンに由来する原子団からなる基であり、式(1)(1a)中のRが全て水素であり、式(1)中のnが1である場合、例えば、下記一般式(44)〜(46)であることが好ましい。
一般式(1)で示される化合物は、環Bが式(1b−1)で表される環構造であり、Arがジフェニルトリアジンに由来する原子団からなる基であり、式(1)(1a)中のRが全て水素であり、式(1)中のnが1である場合、例えば、下記一般式(47)〜(49)であることが好ましい。
Figure 2018206889
一般式(1)で示される化合物は、環Bが式(1b−2)で表される環構造であり、Arがトリフェニルトリアジンに由来する原子団からなる基であり、式(1)(1a)中のRが全て水素であり、式(1)中のnが1である場合、例えば、下記一般式(50)であることが好ましい。
Figure 2018206889
ホスト材料である一般式(1)で示される化合物では、環Aが隣接環と任意の位置で縮合する式(1a)で表される芳香環を表し、環Bが隣接環と任意の位置で縮合する式(1b−1)(1b−2)(1b−3)のいずれかで表される環構造を表す。このため、一般式(1)で示される化合物は、カルバゾール環構造を含む骨格に起因する適度なドナー性を有する。そして、一般式(1)で示される化合物は、ドナー性が強すぎないため、HOMOおよびLUMOのエネルギー準位が十分に深い。よって、ホスト材料として一般式(1)で示される化合物を用いた場合、陰極2から発光層6への電子注入性が良好となり、高輝度で外部量子効率が高く、長寿命の逆構造の有機EL素子10となる。
これに対し、例えば、カルバゾール環と1つまたは複数のインドール環構造とが連結して縮合した骨格を有する上述した一般式(11)で示される化合物は、ドナー性が強すぎるため、HOMOおよびLUMOのエネルギー準位が浅い。このため、一般式(11)で示される化合物をホスト材料として用いた逆構造の有機EL素子では、陰極から発光層への電子注入性が不足する。その結果、輝度、外部量子効率、寿命の各特性が不十分となる。
一般式(1)で示される化合物と、一般式(11)で示される化合物とのドナー性の強さの差は、一般式(11)で示される化合物の骨格に含まれるインドール環構造のドナー性が強いことによって生じる。一般式(1)で示される化合物では、一般式(11)で示される化合物におけるインドール環構造中の一つの窒素原子が、炭素、酸素もしくは硫黄に置換されていることにより、ドナー性が低減されている。
また、ホスト材料として一般式(1)で示される化合物を用いた場合、陰極2から発光層6への電子注入性が良好となるため、ゲスト材料としてバンドギャップの小さい赤色の燐光性化合物を用いても、赤色と比較してバンドギャップの大きい緑色および青色の燐光性化合物を用いても、輝度、外部量子効率、寿命の全ての特性が良好な逆構造の有機EL素子10となる。
また、式(1)中のArが一般式(2)で示される芳香族複素環基である化合物は、励起一重項エネルギー(S1)と励起三重項エネルギー(T1)との差が0〜0.2eVとなる熱活性化遅延蛍光材料である。熱活性化遅延蛍光材料であるホスト材料を含む発光層6を有する有機EL素子10では、ホスト材料のS1のエネルギーとT1のエネルギーとが十分に近いため、ホスト材料のT1が形成された場合には、熱エネルギーにより容易にS1に遷移(逆エネルギー移動)する。よって、ホスト材料のT1からS1を経由して、フェルスター機構によるエネルギー移動によりゲスト材料に効率よくエネルギー移動させることができる。その結果、より一層、高輝度で外部量子効率が高い有機EL素子10となる。
また、ホスト材料である化合物の分子にとって、励起状態は不安定で分解されやすい状態である。励起状態の寿命が短いほど、ホスト材料の分解による劣化を防止でき、有機EL素子10の寿命を長くできる。ホスト材料が熱活性化遅延蛍光材料である場合、ホスト材料のT1からS1に速やかにエネルギー移動させることにより、励起状態の寿命を短くできる。よって、励起状態でのホスト材料の分解による劣化が生じにくく、寿命の長い有機EL素子10となる。
特に、ホスト材料として熱活性化遅延蛍光材料を用い、ゲスト材料として燐光性化合物を用いた有機EL素子10では、ホスト材料が熱活性化遅延蛍光材料であることに起因する輝度、外部量子効率、寿命を向上させる効果が顕著となる。
(ゲスト材料)
ゲスト材料は、燐光性化合物であることが好ましい。ゲスト材料が燐光性化合物である場合、輝度、外部量子効率、寿命の各特性がより優れたものとなる。
燐光性化合物としては、例えば、下記式(61)または(62)で表される化合物を好適に用いることができる。
Figure 2018206889
式(61)中、点線の円弧は、窒素原子と3つの炭素原子とで構成された骨格部分の一部とともに環構造が形成されていることを表し、窒素原子を含んで形成される環構造は、複素環構造である。
X’、X’’は、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。X’、X’’は、結合して点線の円弧で表される2つの環構造の一部とともに新たな環構造を形成してもよい。X’、X’’は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
式(61)中、窒素原子と3つの炭素原子とで構成された骨格部分における点線は、点線で結ばれる2つの原子が単結合又は二重結合で結合していることを表す。
式(61)中、M’は、金属原子を表す。窒素原子からM’への矢印は、窒素原子がM’原子へ配位していることを表す。nは、金属原子M’の価数を表す。
式(62)中、点線の円弧は、窒素原子と3つの炭素原子とで構成された骨格部分の一部とともに環構造が形成されていることを表し、窒素原子を含んで形成される環構造は、複素環構造である。
X’、X’’は、水素原子、又は、環構造の置換基となる1価の置換基を表し、点線の円弧部分を形成する環構造に複数個結合していてもよい。X’、X’’は、結合して点線の円弧で表される2つの環構造の一部とともに新たな環構造を形成してもよい。X’、X’’は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
式(62)中、窒素原子と3つの炭素原子とで構成された骨格部分における点線は、点線で結ばれる2つの原子が単結合又は二重結合で結合していることを表す。
式(62)中、M’は、金属原子を表す。窒素原子からM’への矢印は、窒素原子がM’原子へ配位していることを表す。nは、金属原子M’の価数を表す。
式(62)中、XaとXbとを結ぶ実線の円弧は、XaとXbとが少なくとも1つの他の原子を介して結合していることを表し、XaとXbとともに環構造を形成していてもよい。Xa、Xbは、酸素原子、窒素原子、炭素原子のいずれかを表す。Xa、Xbは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。XbからM’への矢印は、XbがM’原子へ配位していることを表す。m’は、1〜3の数である。
上記式(61)及び式(62)における点線の円弧で表される環構造としては、炭素数2〜20の芳香環や複素環が挙げられる。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香族炭化水素環;ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾオキソール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、およびフェナントリジン環、チオフェン環、フラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環等の複素環が挙げられる。
上記式(61)及び式(62)において、X’、X’’で表される環構造の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアラルキル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルケニル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアリール基、アリールアミノ基、シアノ基、アミノ基、アシル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアラルキルアミノ基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、カルバゾール基等が挙げられる。
上記式(61)及び式(62)において、X’、X’’が結合して点線の円弧で表される2つの環構造の一部とともに新たな環構造を形成している場合、点線の円弧で表される2つの環構造と新たな環構造を合わせた環構造としては、例えば、下記(63−1)、(63−2)に示す構造が挙げられる。
Figure 2018206889
上記式(61)及び式(62)に示す化合物において、M’で表される金属原子としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金が挙げられる。
上記式(62)に示される化合物は、下記式(64−1)に示される構造または(64−2)に示される構造を有するものであることが好ましい。
Figure 2018206889
式(64−1)、(64−2)中、R〜Rは、水素原子又は1価の置換基を表す。R〜Rは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
式(64−2)において、R〜Rが1価の置換基の場合、環構造が複数の1価の置換基を有していてもよい。
式(64−1)、(64−2)中、窒素原子からM’への矢印は、窒素原子がM’原子へ配位していることを表す。式(64−1)中、酸素原子からM’への矢印は、酸素原子がM’原子へ配位していることを表す。
上記式(61)または式(62)で表される化合物の具体例としては、下記式(65−1)〜(65−5)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2018206889
Figure 2018206889
Figure 2018206889
Figure 2018206889
ゲスト材料として使用される燐光性化合物としては、上記燐光性化合物の中でも特に、式(65−1)で表されるイリジウム トリス(2−フェニルピリジン)(Ir(ppy)3)、式(65−2)で表されるイリジウム トリス(1−フェニルイソキノリン)(Ir(piq)3)、式(65−3)で表されるイリジウム ビス(2−メチルジベンゾ−[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトナート)(Ir(MDQ)2(acac))、式(65−4)で表されるイリジウム トリス[3−メチル−2−フェニルピリジン](Ir(mppy))から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。
ゲスト材料として使用される燐光性化合物は、Pt錯体である式(65−5)で示されるTLEC025を用いてもよい。
また、ゲスト材料として使用される燐光性化合物は、常温で燐光発光する材料であることが好ましい。
発光層6中の燐光性化合物の含有量は、発光層6を形成する材料100質量%に対して、0.5〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、更に好ましくは1〜6質量%である。燐光性化合物の含有量が0.5〜20質量%であると、有機EL素子10の発光特性がより良好となる。
ホスト材料が熱活性化遅延蛍光材料である場合、発光層6中におけるゲスト材料の含有量を0.5質量%〜10質量%とすることが好ましく、より好ましくは1〜6質量%である。
ホスト材料が熱活性化遅延蛍光材料である場合、エネルギー移動可能であるホスト分子とゲスト分子との距離が長いフェルスター機構を利用する。したがって、ホスト材料が熱活性化遅延蛍光材料である場合、エネルギー移動可能であるホスト分子とゲスト分子との距離が非常に短いデクスター機構によるエネルギー移動を利用する場合と比較して、ホスト分子とゲスト分子との距離を離すことができる。よって、ホスト材料が熱活性化遅延蛍光材料である場合、発光層6中におけるゲスト材料の混合比率を少なくして、高価な材料であるゲスト材料の使用量を減らすことができる。
ホスト材料が熱活性化遅延蛍光材料である場合、発光層6中におけるゲスト材料の含有量が0.5質量%以上であると、高い外部量子効率が得られる。ゲスト材料の含有量は、より一層外部量子効率を向上させるために1質量%以上であることがより好ましい。また、ゲスト材料の含有量を10質量%以下とすることで、十分な外部量子効率を確保しつつコストを低減できる。ゲスト材料の含有量は、より一層コストを低減するために、6質量%以下であることがより好ましい。
発光層6は、ゲスト材料と、式(1)で表わされる化合物であるホスト材料とを含むものであればよく、例えば、以下に示す低分子化合物などを含有していてもよい。低分子化合物としては、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、8−ヒドロキシキノリン亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィンプラチナム(II)のような各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物、フェナントレンのようなフェナントレン系化合物、クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物、ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物、コロネンのようなコロネン系化合物、アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物、ピレンのようなピレン系化合物、4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物、アクリジンのようなアクリジン系化合物、スチルベンのようなスチルベン系化合物、4,4’−ビス[9−ジカルバゾリル]−2,2’−ビフェニル(CBP)、4、4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)のようなカルバゾール系化合物、2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物、ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物、ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物、2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物、ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物、ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物、クマリンのようなクマリン系化合物、ペリノンのようなペリノン系化合物、オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アルダジン系化合物、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物、キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物、2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物、フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、さらには特開2009−155325号公報および特願2010−28273号に記載のホウ素化合物材料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
ゲスト材料と、ホスト材料である式(1)で表わされる化合物とを除く低分子化合物の発光層6中における含有量は、発光層6を形成する材料100質量%に対して、0.5〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましく、更に好ましくは1〜6質量%である。低分子化合物の含有量が0.5〜20質量%であると、有機EL素子10の発光特性がより良好となる。
発光層6の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましく、より好ましくは20〜100nmである。
発光層6の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定できる。
「正孔輸送層」
正孔輸送層7の材料としては、正孔輸送層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いることができ、これらを混合して用いてもよい。具体的には、正孔輸送層7の材料として、HTEB−04(商品名;関東化学株式会社製)、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、オキサゾールのような置き鎖ゾール系化合物、トリフェニルメタン、4,4‘,4’‘−トリス[フェニル(m−トリル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)のようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7,−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フルオレンのようなフルオレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、正孔輸送層7の材料として、HTEB−4、α−NPDが好ましい。
図1に示す有機EL素子10のように、独立した層として正孔輸送層7が形成されている場合、正孔輸送層7の平均厚さは、10〜150nmであることが好ましく、より好ましくは40〜100nmである。
電子輸送層5の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定できる。
「正孔注入層」
正孔注入層8としては、特に制限されないが、酸化バナジウム(V)、酸化モリブテン(MoO)、酸化ルテニウム(RuO)等金属酸化物の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とすることが好ましい。正孔注入層8が酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とする場合、正孔注入層8が陽極9から正孔を注入して発光層6又は正孔輸送層7へ輸送する正孔注入層8としての機能がより優れたものとなる。また、酸化バナジウム又は酸化モリブテンは、それ自体の正孔輸送性が高いため、陽極9から発光層6又は正孔輸送層7への正孔の注入効率が低下するのを好適に防止できる。正孔注入層8は、酸化バナジウム及び/又は酸化モリブテンからなるものであることがより好ましい。
また、正孔注入層8として、正孔注入が促進可能なアクセプター材料である1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN)、アクセプター材料である2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノ−キノジメタン(F4−TCNQ)、アクセプター材料であるHexafluorotetracyanonaphthoquinodimethane(F6−TNAP)等も用いることができる。
正孔注入層8の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは5〜50nmである。正孔注入層8の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
「陽極」
陽極9としては、Au、Pt、Ag、Cu、Alまたはこれらを含む合金等からなる金属膜を用いることができる。この中でも、陽極9としては、Au膜、Ag膜、Al膜のいずれかを用いることが好ましい。
陽極9の平均厚さは、特に限定されないが、10〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは30〜150nmである。また、陽極9の材料として、不透過な材料を用いる場合でも、例えば平均厚さを10〜30nm程度にすることで、トップエミッション型及び透明型の陽極9として使用することができる。
陽極9の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
本実施形態の有機EL素子10は、基板1上に、陰極2と、電子注入層3と、バッファ層4と、電子輸送層5と、発光層6と、正孔輸送層7と、正孔注入層8と、陽極9とをこの順に形成することにより製造できる。陰極2、電子注入層3、バッファ層4、電子輸送層5、発光層6、正孔輸送層7、正孔注入層8、陽極9の各層の形成方法は、特に限定されず、各層に用いられる材料の特性に合わせて、従来公知の種々の形成方法を適宜用いて形成できる。
有機EL素子10に含まれる上記各層の形成方法として、具体的には、気相成膜法であるプラズマCVD、熱CVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射法、そして液相成膜法である電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、ゾル・ゲル法、MOD法、スプレー熱分解法、微粒子分散液を用いたドクターブレード法、スピンコート法、インクジェット法、スクリーンプリンティング法等の印刷技術等を用いることができる。
本実施形態の有機EL素子10は、基板1上に、陰極2と発光層6と陽極9とがこの順に設けられた逆構造のものであり、発光層6が、ゲスト材料と一般式(1)で表わされる化合物であるホスト材料とを含む。このため、本実施形態の有機EL素子10は、陰極2から発光層6への電子注入性が良好であり、高輝度で外部量子効率が高く、長寿命である。したがって、本実施形態の有機EL素子10は、表示装置および照明装置の材料として好適に用いることができる。
「他の例」
本発明の有機EL素子は、上述した実施形態において説明した有機EL素子に限定されるものではない。
具体的には、上述した実施形態においては、基板1上に、陰極2と、電子注入層3と、バッファ層4と、電子輸送層5と、発光層6と、正孔輸送層7と、正孔注入層8と、陽極9とがこの順に形成された有機EL素子10を例に挙げて説明したが、電子注入層3、バッファ層4、電子輸送層5、正孔輸送層7、正孔注入層8は、必要に応じて形成すればよく、設けられていなくてもよい。
例えば、電子輸送層5を設けず、基板1上に、陰極2と、電子注入層3と、バッファ層4と、発光層6と、正孔輸送層7と、正孔注入層8と、陽極9とがこの順に形成された有機EL素子としてもよい。
また、正孔輸送層7と電子輸送層5とを設けず、基板1上に、陰極2と、電子注入層3と、バッファ層4と、発光層6と、正孔注入層8と、陽極9とがこの順に形成された有機EL素子としてもよい。
また、陰極2、電子注入層3、バッファ層4、電子輸送層5、発光層6、正孔輸送層7、正孔注入層8、陽極9の各層は、1層で形成されているものであってもよいし、2層以上からなるものであってもよい。
また、図1に示す有機EL素子10は、陰極2、電子注入層3、バッファ層4、電子輸送層5、発光層6、正孔輸送層7、正孔注入層8、陽極9の各層の間に、さらに他の層を有するものであってもよい。
[表示装置]
本実施形態の表示装置は、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む。
本実施形態の表示装置は、高輝度で外部量子効率が高く、長寿命の有機EL素子を含むため優れた性能を有する。
[照明装置]
本実施形態の照明装置は、本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む。
本実施形態の照明装置は、高輝度で外部量子効率が高く、長寿命の有機EL素子を含むため優れた性能を有する。
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、有機EL素子を構成する各層の厚さは、触針式段差計(製品名「アルファステップIQ」、KLAテンコール社製)を用いて測定した。
「実施例1」
以下に示す[1]〜[5]の工程を行うことにより、図1に示す逆構造の有機EL素子10を得た。
[1]ITO電極(陰極2)付きの平均厚さ0.7mmの市販されている透明ガラスからなる基板1を用意した。ITO電極としては、幅3mmにパターニングされている厚み100nmのものを用いた。
この基板1に対し、以下に示す方法により、洗浄を行った。すなわち、基板1をアセトン中とイソプロパノール中でそれぞれ10分間超音波洗浄した。次に、基板1をイソプロパノール中で5分間煮沸して取り出し、窒素ブローにより乾燥させた。その後、UV(紫外線)オゾン洗浄を20分間行った。
[2]洗浄後の基板1を、亜鉛金属ターゲットを持つミラトロンスパッタ装置の基板ホルダーに固定した。そして、スパッタ装置内を約1×10−4Paに減圧し、アルゴンと酸素を導入した状態でスパッタ法により、陰極2上に電子注入層3である膜厚2nmの酸化亜鉛層を作成した。電子注入層3を形成する際には、電極取り出しのため、メタルマスクを用いて陰極2上の一部に電子注入層3が形成されないようにした。
次に、電子注入層3の形成された基板1に対し、上記[1]に記載の方法と同様の方法により、洗浄を行った。
[3]ポリエチレンイミン(P−1000:日本触媒社製)の0.5重量%エタノール溶液を作成した。洗浄後の電子注入層3の形成された基板1を、スピンコーターにセットし、上記のポリエチレンイミン溶液を滴下し、毎分2000回転で60秒間回転させて電子注入層3上に塗布した。ポリエチレンイミン溶液を塗布した基板1を、大気中120℃で5分間ホットプレートを用いて焼成することにより、電子注入層3上にポリエチレンイミンからなる厚み10nmのバッファ層4を形成した。
[4]バッファ層4までの各層を形成した基板を、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。また、電子輸送層5、発光層6、正孔輸送層7、正孔注入層8、陽極9の各層に使用する以下に示す材料を、それぞれアルミナルツボに入れて蒸着源にセットした。
(各層の材料)
電子輸送層5:下記式で表されるBepp2
発光層6(ホスト材料)下記式で表されるHost−C
発光層6(ゲスト材料)上記式(65−4)で表されるIr(mppy)
正孔輸送層7:HTEB−04;商品名;関東化学株式会社製)
正孔注入層8:HAT−CN
陽極9:Al
Figure 2018206889
Figure 2018206889
[5]真空蒸着装置内を約1×10−5Paに減圧し、Bepp2を蒸着し、厚み5nmの電子輸送層5を成膜した。
次に、さらにHost−Cからなるホスト材料とIr(mppy)からなるゲスト材料とを共蒸着し、厚み25nmの発光層6を成膜した。ゲスト材料の含有量は、発光層6全体に対して3質量%となるようにした。
次に、HTEB−04を蒸着し、厚み40nmの正孔輸送層7を成膜した。
次に、HAT−CNを蒸着し、厚み10nmの正孔注入層8を成膜した。
次に、Alを膜厚100nmになるように蒸着し、陽極9を形成した。
以上の工程により、実施例1の逆構造の有機EL素子10を得た。
なお、陽極9を蒸着する時、ステンレス製の蒸着マスクを用いて蒸着面が幅3mmの帯状になるようにした。このことにより、有機EL素子10の発光面積を9mmとした。
「実施例2」
発光層6のホスト材料として、上記式で表されるHost−Oを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の逆構造の有機EL素子10を得た。
「比較例1」
発光層6のホスト材料として、上記式で表されるHost−Nを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の逆構造の有機EL素子10を得た。
「比較例2」
以下に示す[1]〜[4]の工程を行うことにより、図2に示す順構造の有機EL素子30を得た。
[1]実施例1の逆構造の有機EL素子10と同様にして[1]の工程を行ない、ITO電極(陽極12)付きの洗浄後の基板11を得た。
[2]洗浄後の基板11を、スピンコーターにセットし、Clevious HIL−1.3N(ヘレウス社製)溶液を滴下し、毎分2000回転で60秒間回転させて陽極12上に塗布した。Clevious HIL−1.3N溶液を塗布した基板1を、大気中120℃で1時間ホットプレートを用いて焼成することにより、陽極12上にClevious HILからなる厚み30nmの正孔注入層13を形成した。
[3]正孔注入層13までの各層を形成した基板を、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。また、正孔輸送層14、発光層15、電子輸送層16、電子注入層17、陰極18の各層に使用する以下に示す材料を、それぞれアルミナルツボに入れて蒸着源にセットした。
(各層の材料)
正孔輸送層14:HTEB−04;商品名;関東化学株式会社製)
発光層15(ホスト材料)上記式で表されるHost−C
発光層15(ゲスト材料)上記式(65−4)で表されるIr(mppy)
電子輸送層16:2,2’,2’’−(1,3,5−ベントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBI)
電子注入層17:フッ素化リチウム
陰極18:Al
[4]真空蒸着装置内を約1×10−5Paに減圧し、HTEB−04を蒸着し、厚み40nmの正孔輸送層14を成膜した。
次に、さらにHost−Cからなるホスト材料とIr(mppy)からなるゲスト材料とを共蒸着し、厚み25nmの発光層15を成膜した。ゲスト材料の含有量は、発光層6全体に対して3質量%となるようにした。
次に、TPBIを蒸着し、厚み35nmの電子輸送層16を成膜した。
次に、フッ素化リチウムを蒸着し、厚み1nmの電子注入層17を成膜した。
次に、Alを膜厚100nmになるように蒸着し、陰極18を形成した。
以上の工程により、実施例2の順構造の有機EL素子20を得た。
なお、陰極18を蒸着する時、ステンレス製の蒸着マスクを用いて蒸着面が幅3mmの帯状になるようにした。このことにより、有機EL素子20の発光面積を9mmとした。
「比較例3」
発光層15のホスト材料として、上記式で表されるHost−Oを用いたこと以外は、比較例2と同様にして、比較例3の順構造の有機EL素子20を得た。
「比較例4」
発光層15のホスト材料として、上記式で表されるHost−Nを用いたこと以外は、比較例2と同様にして、比較例4の順構造の有機EL素子20を得た。
実施例1、2、比較例1〜4において使用したホスト材料(Host−N、Host−CおよびHost−O)のHOMOおよびLUMOのエネルギー準位を、Gaussian09[B3LYP 6-311g(d,p)]により計算して見積もった。その結果を表1に示す。
Figure 2018206889
表1に示すように、HOMOおよびLUMOのエネルギー準位は、Host−CおよびHost−Oよりも、Host−Nが低い(浅い)。これは、Host−Nの骨格に含まれるインドール環構造のドナー性よりも、Host−Nの骨格に含まれるインドール環構造中の一つの窒素原子が、炭素もしくは硫黄に置換されているHost−CおよびHost−Oの方が、ドナー性が低減されているためである。
(発光スペクトル強度の時間依存性)
Host−CおよびHost−Oについて、以下に示す方法により、発光スペクトル強度の時間依存性を測定した。
Host−Cからなる厚み50nmの薄膜と、Host−Oとからなる厚み50nmの薄膜とを、真空蒸着法により石英基板上にそれぞれ形成し、サンプルとした。各サンプルを封止し、浜松ホトニクス社製ストリークカメラ「C4334」を用いて過渡発光スペクトルを測定した。その結果を図3に示す。
図3は、ホスト材料に使用したHost−CおよびHost−Oにおける経過時間と発光強度との関係を示したグラフである。図3に示すように、Host−CおよびHost−Oのいずれにおいてもマイクロ秒オーダーの遅延蛍光が観測されており、両材料が熱活性化遅延蛍光材料であることが確認できた。
(有機EL素子の発光特性測定)
実施例1、2、比較例1〜4の有機EL素子を窒素雰囲気下で封止し、0V〜10Vまでの直流電圧を印加した時の電圧と輝度との関係、および電流密度と外部量子効率との関係を調べた。
ケースレー社製の「2400型ソースメーター」により、各有機EL素子への電圧印加と、電流測定を行った。また、コニカミノルタ社製の「LS−100」により、発光輝度を測定した。その結果を図4〜図7に示す。
(有機EL素子の寿命測定)
実施例1、2、比較例1〜4の有機EL素子を初期輝度1000cd/mで連続駆動し、輝度が半減するまでの寿命(輝度半減寿命)を測定した。その結果を表2に示す。
Figure 2018206889
図4は、実施例1、2、比較例1の逆構造の有機EL素子における電圧と輝度との関係を示したグラフである。
図4に示すように、ホスト材料としてHost−Cを用いた実施例1、Host−Oを用いた実施例2の有機EL素子は、ホスト材料としてHost−Nを用いた比較例1の有機EL素子と比較して、電圧が同じである場合に高い輝度が得られている。また、実施例2の有機EL素子は、実施例1の有機EL素子と比較して、電圧が同じである場合に高い輝度が得られている。
図5は、実施例1、2、比較例1の逆構造の有機EL素子における電流密度と外部量子効率との関係を示したグラフである。
図5に示すように、ホスト材料としてHost−Cを用いた実施例1、Host−Oを用いた実施例2の有機EL素子は、ホスト材料としてHost−Nを用いた比較例1の有機EL素子と比較して、外部量子効率が高い。また、実施例2の有機EL素子は、実施例1の有機EL素子と比較して、外部量子効率が高い。
また、表2に示すように、逆構造の有機EL素子では、ホスト材料としてHost−Oを用いた実施例2の有機EL素子の輝度半減寿命は、Host−Nを用いた比較例1の約6倍であった。Host−Cを用いた実施例1の有機EL素子についても、輝度半減寿命は、Host−Nを用いた比較例1の約3倍であった。
表2、図4および図5に示すように、逆構造の有機EL素子のホスト材料として、Host−NよりもHost−CおよびHost−Oを用いることが好ましいことが分かった。
図6は、比較例2〜4の順構造の有機EL素子における電圧と輝度との関係を示したグラフである。
図6に示すように、ホスト材料としてHost−Nを用いた比較例4、Host−Cを用いた比較例2、Host−Oを用いた比較例3の順に、電圧が同じである場合の輝度が低くなっている。
図7は、比較例2〜4の順構造の有機EL素子における電流密度と外部量子効率との関係を示したグラフである。
図7に示すように、ホスト材料としてHost−Nを用いた比較例4の低電流密度での外部量子効率が、Host−Cを用いた比較例2、Host−Oを用いた比較例3よりも高い。
また、表2に示すように、順構造の有機EL素子では、ホスト材料としてHost−Cを用いた比較例2およびHost−Oを用いた比較例3よりも、Host−Nを用いたを用いた比較例4の輝度半減寿命が長い。
表2、図6および図7に示すように、順構造の有機EL素子のホスト材料としては、Host−CおよびHost−OよりもHost−Nを用いることが好ましいという、逆構造の有機EL素子とは逆の結果となった。
以上の通り、Host−CおよびHost−Oは、逆構造の有機EL素子のホスト材料として好適である。しかし、Host−CおよびHost−Oは、順構造の有機EL素子のホスト材料には適していない。これは、Host−CおよびHost−OのHOMOおよびLUMOのエネルギー準位が深いため、陰極から発光層への電子注入性が良好となったことによるものである。
一方、Host−Nは順構造の有機EL素子のホスト材料としては好適であるものの、逆構造の有機EL素子のホスト材料には適していない。これは、Host−Nはドナー性が高くHOMOおよびLUMOのエネルギー準位が浅いためである。
1…基板、2…陰極、3…電子注入層、4…バッファ層、5…電子輸送層、6…発光層、7…正孔輸送層、8…正孔注入層、9…陽極、10…有機EL素子。

Claims (9)

  1. 基板上に、陰極と発光層と陽極とがこの順に設けられ、
    前記発光層が、ゲスト材料とホスト材料を含み、
    前記ホスト材料が下記一般式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2018206889
    (式(1)中の環Aは、隣接環と任意の位置で縮合する式(1a)で表される芳香環を表す。式(1)中の環Bは、隣接環と任意の位置で縮合する式(1b−1)(1b−2)(1b−3)のいずれかで表される環構造を表す。式(1)中のArは、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示す。式(1)(1a)(1b−1)中のRは、独立に水素、又は炭素数1−10のアルキル基、炭素数1−10のアルコキシ基、炭素数1−10のアルキルチオ基、炭素数1−10のアルキルアミノ基、炭素数2−10のアシル基、炭素数7−20のアラルキル基、置換若しくは未置換の炭素数6−30の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは未置換の炭素数3−30の芳香族6員複素環基からなる群から選択される1価の置換基であり、隣接する置換基が一体となって環を形成してもよい。式(1)中のnは1以上4以下の整数を示す。)
  2. 前記ゲスト材料が、燐光性化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記式(1)中のnが1であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記式(1)中のArが芳香族複素環基であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記式(1)中のArが下記一般式(2)で示される芳香族複素環基であることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2018206889
    (式(2)中、Xは独立にN、C−H又はC−Ar1を示し、少なくとも1つはNである。Ar1は独立に芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を示す。XがC−Ar1を含む場合、Ar1とXを含む環とで一辺を共有する縮合環を形成してもよい。)
  6. 前記式(1)および前記式(1a)中のRが水素であり、前記式(1b−1)中のRがメチル基であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 前記陰極と前記発光層との間に金属酸化物からなる電子注入層を有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする表示装置。
  9. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする照明装置。
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