JP2018204072A - 結晶化熱処理炉および溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理方法 - Google Patents

結晶化熱処理炉および溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 量産性に優れ、溶湯急冷凝固合金の均一微細な鉄基ナノ結晶組織を得ることができる微細結晶化熱処理炉を提供する。【解決手段】 石英、セラミックス、インコネル、鉄およびステンレスのいずれかからなり水平方向に対して3度以上20度以下の傾斜角で傾斜するように配置された内径10mm以上300mm以下の炉心管を備え、前記炉心管は、供給された溶湯急冷凝固合金粉末が内部を搬送されるように、振動可能且つ回転可能とされ、搬送方向上流側および下流側に、それぞれ加熱ゾーンおよび冷却ゾーンを備えており、前記炉心管の全体に10Hz以上200Hz以下の振動を与え、さらに前記炉心管を5rpm以上200rpm以下で回転させることで、前記炉心管内における溶湯急冷凝固合金粉末の通過速度が5mm/秒以上150mm/秒以下になることを特徴とする結晶化熱処理炉である。【選択図】 図1

Description

本発明は、結晶化熱処理炉および溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理方法に関し、より詳しくは、鉄基ナノ結晶型磁性材料を製造するための鉄基溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理に用いる結晶化熱処理炉、および、これを用いた溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理方法に関する。
近年、ナノメートルオーダのサイズを有する微細なNd-Fe-B、Sm-Fe-Nなどの硬磁性相とFe-Bやα-Feなどの軟磁性相とが同一金属組織内に存在するナノコンポジット型永久磁石(以下、「ナノコンポジット磁石」と称する)が提案されている。このナノコンポジット型永久磁石は、ナノメートルオーダの結晶粒であるが故に静磁気相互作用に加え、交換相互作用により各結晶粒が磁気的に結合して、優れた磁石特性を発現することがマイクロマグネティクスを応用した計算機シミュレーション等にて明らかにされ、次世代の高性能永久磁石材料として注目されている。
DC小型モータや各種センサなどの電子工業製品分野では、残留磁束密度Brの高い磁石が要求されている。この要求に応じてナノコンポジット磁石の残留磁束密度を向上させるには、ナノコンポジット磁石に含まれる2.2Tと高い飽和磁化Jsを有するα-Fe相の存在比率を高めることが有効である。Nd2Fe14B相の飽和磁化Jsが1.6TであることからNd2Fe14B単相で磁石が構成された場合よりも、α-Feが同一組織内に混在している方が高い磁化が期待される。
等方性鉄基希土類系ナノコンポジット磁石合金においては、Nd2Fe14B相とα-Fe相あるいはFe-B相が同一金属組織内にナノメータオーダーの結晶粒径で混在していることで各結晶粒間に働く交換相互作用によりあたかも一体の磁石の様に振る舞うことが特徴として挙げられる。
加えて、電子部品として使用されるインダクタやリアクトルといった各種受動素子やトランス向けに鉄損が低く飽和磁束密度Bsが高い材料が市場から求められており、透磁率が高く、鉄損が低い軟磁性材料として鉄基アモルファス材料や、同じく鉄基のナノ結晶材料といった鉄(Fe)、硼素(B)、ケイ素(Si)を主原料とする溶湯急冷凝固により作製される厚み17μmから22μm程度のFe-Si-B系急冷凝固合金薄帯が従来のケイ素鋼板に代わる高性能高効率軟磁性材料として大型トランス等に巻鉄心として使用され需要が年々拡大している。
特許文献1では、アモルファス組織からなる液体急冷凝固合金のナノ結晶化熱処理工程において、結晶化熱処理炉の設定温度と合金表面温度との温度差を50℃以内とした上、結晶化温度近傍の昇温速度を5℃/min以下にて結晶化温度近傍の温度に保持する期間を設け結晶化が始まった後あるいは結晶化完了後に昇温し一定温度に保持あるいは保持なしで冷却することが可能な結晶化温度以上、結晶化温度+100℃未満の温度に保持する期間を設け結晶化が始まった後に炉に投入する単位時間あたりのパワ−を減少させるあるいは炉に投入するパワ−を0とする期間を設ける機能を有した結晶化熱処理方法並びに熱処理炉が記載されているが、本方法では結晶粒成長を抑制するために結晶化熱処理が完了するまでの時間が長くなると共に昇温速度、並びに保持温度の制御に高い精度を求められるため、安価で処理能力の高いナノ結晶化熱処理を実現することが難しい。
特許文献2では、アモルファス組織を90体積%以上含む急冷凝固合金を作製した後、前記急冷凝固合金を1℃/秒以上、200℃/秒以下の昇温速度にて結晶化温度以上750℃以下の一定温度域に到達後、0.1秒以上10分以下の時間経過後、直ちに急冷する熱処理方法(以下、フラッシュアニール法と記す)を施すことによって平均結晶粒径50nm以下のα-Fe相からなるナノ結晶合金の熱処理方法が記載されているが、本方法を実現できる結晶化熱処理は数g程度のバッチ熱処理以外には赤外線ゴールドイメージ炉、流動槽熱処理炉といった処理能力の極めて低い熱処理炉しかなく、一方、処理能力の向上が期待できる一般的なロータリーキルンではせいぜい2℃/秒の昇温速度が装置上の限界であり、10℃/秒以上の昇温速度を確保しながら量産可能な処理能力を有し、かつ工程費用の大幅な上昇を招来しない価格で製作可能な結晶化熱処理炉は存在しない。
特開平7−320920 特願2017−067393
鉄基溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理に係り、最適な熱処理条件で結晶化することにより、50nm以下の均一ナノ結晶組織にすることでRE-Fe-B系合金であれば高磁束密度、高保磁力に加えて減磁極性の角形性に優れた良好なナノ結晶型永久磁石特性が得られ、Fe-Si-B系の軟磁性材料では高透磁率と高飽和磁束密度を両立可能な優れたナノ結晶軟磁性材料が得られることから各種の高性能DCブラシレスモータや磁気センタおよび各種受動素子等々向けに均一微細なナノ結晶組織を有する鉄基磁性材料が電子部品市場より強く望まれている。
鉄基溶湯急冷合金の結晶化熱処理は、数g以下のバッチ熱処理が実験室レベルでは一般的であり、先端を封じた石英管の先端内部に溶湯急冷凝固合金をセットし、真空もしくは不活性ガス雰囲気に石英管内をした後、結晶化温度+100℃前後に設定された熱処理炉に石英管を挿入することにより5℃/秒〜50℃/秒の高速昇温後に結晶化温度+100℃未満の一定温度に到達次第、直ちに降温するフラッシュアニールを実現することで、熱処理に伴う粗大粒成長を抑え、均一微細な平均結晶粒径20nm〜50nmのナノ結晶状態を得ることが可能であるが、本方法では処理量が少なく量産レベルまでスケールアップすることはできない。
量産レベルではロータリーキルンを採用される場合が多く、ロータリーキルンは2〜5度の傾斜角で炉心管を傾けた上、1〜4rpmで炉心管を回転することで炉心管内のワーク(溶湯急冷凝固合金粉末)を搬送し、加熱ゾーン並びに冷却ゾーン内を通過させることで連続的な結晶化熱処理を実現しており、炉心管径に因るが例えば内径300mm×長さ8mの炉心管を有するロータリーキルンでは200kg/時間の処理量能力を確保できる。但し、一定量のワークを安定して炉心管内移動させるためには炉心管の断面積に対して約10〜15%のワーク占有率を確保する必要があり、炉心管の熱容量に加えて多量のワークの熱容量により結晶化温度+100℃程度までワーク温度を上昇させるためには1mm/秒〜3mm/秒以下のワーク移動速度に限定され、昇温速度は0.5℃/秒〜5℃/秒未満と前記のフラッシュアニールを実現することができず、平均結晶粒径を15nm〜50nmとした場合でも未結晶状態から粗大粒成長を含む不均一なナノ結晶組織となり実験室レベルで得られる均一微細なナノ結晶組織を再現することができず、金属組織由来にて諸磁気特性が決まる鉄基ナノ結晶型磁性材料において保磁力Hc、残留磁束密度Br、減磁曲線の角形性等々の特性劣化を招来する。
そこで、本発明は、量産性に優れ、溶湯急冷凝固合金の均一微細な鉄基ナノ結晶組織を得ることができる微細結晶化熱処理炉および溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理方法の提供を目的とする。
本発明の結晶化熱処理炉は、石英、セラミックス、インコネル、鉄およびステンレスのいずれかからなり水平方向に対して3度以上20度以下の傾斜角で傾斜するように配置された内径10mm以上300mm以下の炉心管を備え、前記炉心管は、供給された溶湯急冷凝固合金粉末が内部を搬送されるように、振動可能且つ回転可能とされ、搬送方向上流側および下流側に、それぞれ加熱ゾーンおよび冷却ゾーンを備えており、前記炉心管の全体に10Hz以上200Hz以下の振動を与え、さらに前記炉心管を5rpm以上200rpm以下で回転させることで、前記炉心管内における溶湯急冷凝固合金粉末の通過速度が5mm/秒以上150mm/秒以下になることを特徴とする。
この結晶化熱処理炉は、前記加熱ゾーンの長さが200mm以上1500mm以下であり、前記冷却ゾーンの長さが500mm以上3000mm以下であることが好ましい。
本発明の溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理方法は、上記の結晶化熱処理炉を用いて溶湯急冷凝固合金粉末の結晶化熱処理を行うものであり、前記加熱ゾーンにおける溶湯急冷凝固合金の結晶化温度以上結晶化温度+100℃以下の目標昇温到達温度までの昇温速度を5℃/秒以上600℃/秒以下とし、前記目標昇温到達温度付近で0.01秒以上10秒以下の経過時間を経た後、前記冷却ゾーンにおいて2℃/秒以上200℃/秒以下の降温速度にて溶湯急冷凝固合金粉末を冷却して400℃以下にすることを特徴する。
この溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理方法は、溶湯急冷凝固合金粉末の単位時間当たりの結晶化熱処理量が5g/min以上2kg/min以下であることが好ましい。
また、溶湯急冷凝固合金粉末の組成は、組成式T loo-x-y-z-n QSiyREM(TはFe、CoおよびNiからなる群から選択された少なくとも1種の元素であって、Feを必ず含む遷移金属元素、QはB、Cからなる群から選択されBを必ず含む1種以上の元素、REは希土類元素、MはP、Al、Ti、V、Cr、Mn、Nb、Cu、Zn、Ga、Mo、Ag、Hf、Zr、Ta、W、Pt、Au及びPbからなる群から選択された1種以上の元素)で表現され、組成比率x、y、zおよびnが、それぞれ、5≦x<20原子%、0≦y<15原子%、0≦z<16原子%、0≦n<10原子%を満足することが好ましい。
前記溶湯急冷凝固合金粉末は、少なくとも5体積%以上のアモルファス相を含むことが好ましい。
前記溶湯急冷凝固合金粉末は、長尺が40mm以下であることが好ましい。
本発明によれば、量産性に優れ、溶湯急冷凝固合金の均一微細な鉄基ナノ結晶組織を得ることができる微細結晶化熱処理炉および溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理方法を提供することができる。
具体的には、炉心管内を搬送される溶湯急冷凝固合金粉末からなるワークが、炉心管内にてホッピング現象を起こし炉心管内壁とワークの摩擦力が大幅に軽減されるため、従来炉心管断面積の約10%〜15%を占有しないと均一な量のワークを流すことができなかったロータリーキルンにおいて、炉心管断面積の10%以下であっても一定量のワークを均一に炉心管内移動させることが可能となったと共に、ワークのホッピング現象により炉心管傾斜角並びに炉心管回転数を上げることで従来のロータリーキルンでは到達し得なかった5mm/秒以上150mm/秒以下の速度で炉心管内のワークを移動させることができ、ワークの昇温速度を5℃/秒以上600℃/秒以下まで大幅に向上できた。加えてワークの移動速度を5mm/秒以上150mm/秒以下にすることでワークの降温速度も2℃/秒以上200℃/秒以下と高速降温が可能となり、従来にない高速昇温と高速降温を量産性に優れる連続式の熱処理炉で実現できる。
さらに、炉心管内のおけるワークの移動速度を5mm/秒以上150mm/秒以下まで向上できたことで、炉心管内のワーク占有率を大幅に低減でき、炉心管内のワークの熱容量を下げられると共に、ワークのホッピング現象によりワーク同士の接触も大幅に低減され、あたかも溶湯急冷凝固合金粉の粉末夫々が個別に熱処理されるような状況となるため、実験室レベルの少量バッチ熱処理でも実現できなかった200℃/秒〜600℃/秒の超高速昇温を実現でき、溶湯急冷凝固合金を最高2秒足らずで結晶化温度+100℃程度まで昇温し、その後、400℃以下までの降温時間を合わせたナノ結晶化熱処理を3〜10秒で完了できる。
(a)は本発明による結晶化熱処理炉の装置構成図であり、(b)炉心管内部を移動する溶湯急冷凝固合金の状態を示す図である。 本発明の結晶化熱処理炉で実現可能なフラッシュアニールの概念図である。
従来の量産レベルの処理量で結晶化熱処理を実施可能なロータリーキルンは、一定量のワークを安定して炉心管内移動させるために炉心管の断面積に対して約10〜15%のワーク占有率を確保する必要があり、炉心管の熱容量に加えて多量のワークの熱容量により結晶化温度+100℃程度までワーク温度を上昇させるためには0.3mm/秒〜2mm/秒のワーク移動速度となり、昇温速度は0.5℃/秒〜5℃/秒未満と前記のフラッシュアニールを実現することができなかったが、内径10mm以上300mm以下の炉心管を3度以上20度以下の傾斜角を付けた上、10Hz以上200Hz以下の振動を炉心管全体に与え、さらに炉心管を5rpm以上200rpm以下で回転させることにより、炉心管が振動することでワークは炉心管内にてホッピング現象を起こし炉心管内壁とワークの摩擦力が大幅に軽減されるため、炉心管断面積の10%以下のワーク占有率であっても一定量のワークを均一に炉心管内移動させることが可能となったと共に、ワークのホッピング現象により炉心管傾斜角並びに炉心管回転数を上げることで5mm/秒以上150mm/秒以下の速度で炉心管内のワークを移動させることができ、ワークの昇温速度を5℃/秒以上600℃/秒以下まで大幅に向上できた。加えてワークの移動速度を5mm/秒以上150mm/秒以下にすることでワークの降温速度も2℃/秒以上200℃/秒以下と高速降温が可能となり、従来にない高速昇温と高速降温を連続式の熱処理炉で実現できることを知見し、量産レベルの処理能力を有する鉄基ナノ結晶合金の結晶化熱処理に最適な微細結晶化熱処理炉を完成した。
本発明による微細結晶化熱処理炉は、石英、各種セラミックス、インコネル、鉄およびステンレスのいずれかからなる内径10mm以上300mm以下の炉心管を3度以上20度以下の傾斜角を付けた上、10Hz以上200Hz以下の振動を炉心管全体に与え、さらに炉心管を5rpm以上200rpm以下で回転させることで、炉心管内におけるワーク(溶湯急冷凝固合金粉末)の通過速度を5mm/秒以上150mm/秒以下とすることを満足する。
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
[炉心管材質]
本発明による結晶化熱処理炉に用いる炉心管の材質は、透明石英、不透明石英、鉄及び各種炭素鋼を含む鉄合金、ステンレス鋼、インコネル他、アルミナ等々の各種セラミック材が適用可能であるが、サーマルショック並びに耐酸化性に優れる点で透明石英、不透明石英、ステンレス鋼、インコネルが好ましい。さらにワークの炉心管内の移動の状況が確認可能なことに加え、炉心管自体の熱容量を小さくできる点を考慮して透明石英が最も好ましい。
[炉心管形状]
炉心管のワークの熱処理量を増やすためには内径が大きいほど良いが、内径10mm以下では処理量が5g/min未満となるため内径10mm以上が良い。また、内径300mm以上では処理量が2kg/minを超え、均一なナノ結晶組織化に必要なワークの昇温速度5℃/秒以上600℃/秒を確保できないため内径300mm以下が良い。好ましくは、内径12mm以上200mm以下が良く、さらに内径22mm以上150mm以下が、炉心管の機械的強度の点、並びに結晶化熱処理炉の大きさを考慮すると好ましい。
炉心管の長さは、搬送方向上流側の加熱ゾーンの長さと、搬送方向下流側の冷却ゾーンの長さとを加えた長さで決まるが、加熱ゾーンの均熱帯長は昇温速度に影響し、冷却ゾーン等は空冷、水冷方針で夫々異なるものの降温速度に影響する。実操業を想定すると5℃/秒以上600℃/秒の昇温速度を確保するには、加熱ゾーンの長さは200mm〜1500mmが良く、2℃/秒以上200℃/秒以下降温速度を確保するには500mm〜3000mmが良いことから、炉心管長は、700mm以上4500mm以下が良い。好ましくは、1000mm以上4000mm以下が良く。より好ましくは1000mm以上3000mm以下が装置構成上、熱処理炉の製作費並びに処理能力を考慮した上で最もバランスが良い。
加えて、本発明の好ましい実施形態としては、炉心管内のワークのホッピング現象およびそれに伴うワーク高速移動(5mm/秒以上150mm/秒以下)の妨げになることから、一般的なロータリーキルンに採用されているワークを一定速度で送るための炉心管内壁のスパイラル加工、並びにワーク撹拌用のかき揚げ板の炉心管内壁への取り付け加工は実施しない。
[炉心管傾斜角]
本発明の好ましい実施形態では、水平方向に対する炉心管の傾斜角度を3度以上20度以下とする。傾斜角度が3度未満の場合は、ワークの炉心管内通過速度が5mm/秒未満となり均一なナノ結晶組織に必要な昇温速度5℃/秒以上を確保できないため炉心管の傾斜角度は3度以上が良い。また、20度を超えるとワークを均一な速度で炉心管内を移動させることができず、不均一な熱処理となるため20度以下が良い。好ましくは5度以上20度以下が良く、より好ましくは7度以上18度以下が良い。
[炉心管振動]
本発明では炉心管内のワークがホッピング運動することで、炉心管内壁との摩擦力を低減すると共に、ワーク同士の密着を低減し、高速昇温並びに高速降温を実現しているが、炉心管の振動周波数が10Hz未満になるとワークのホッピング現象が起こらず、200Hzを超えるとワークの炉心管内移動速度が5mm/秒未満となるため、炉心管の振動周波数は10Hz以上200Hz以下とする。好ましくは20Hz以上170Hz以下が良く、より好ましくは30Hz以上150Hz以下が良い。
[炉心管回転数]
本発明では、炉心管傾斜角度並びに炉心管振動に加え炉心管を5rpm以上200rpm以下で回転することで、5mm/秒以上150mm/秒以下の炉心管内ワーク通過速度を確保しているが、5rpm未満では5mm/秒以上のワーク通過速度が得られず、
200rpmを超えるとワークが炉心管内で滑り、ワークの撹拌能力がなくなるため、炉心管回転数は5rpm以上200rpm以下が良く、好ましくは10rpm以上180rpm以下が良く、より好ましくは20rpm以上170rpm以下が良い。
[炉心管通過速度]
炉心管内のワーク通過速度が5mm/秒未満では5℃/秒以上の昇温速度を確保できず、150mm/秒を超えると十分なナノ結晶化が終わる前に降温に入るため不均一なナノ結晶組織となるため、炉心管内のワーク通過速度は5mm/秒以上150mm/秒以下が良い。より好ましくは10mm/秒以上130mm/秒以下が良く、さらに好ましくは15mm/秒以上120mm/秒以下が良い。
[昇温速度]
加熱ゾーンにおけるワークの結晶化熱処理時の昇温速度が5℃/秒未満の場合、過剰粒成長により均一なナノ結晶合金組織が得られず、RE-Fe-B系永久磁石合金では固有保磁力HcJ、残留磁束密度Brの低下を招き、Fe-Si-B系軟磁性合金では軟磁性材料として使用可能な保磁力レベルが150A/m以下とならない。また、昇温速度が600℃/秒を超える場合は、結晶粒成長が間に合わず十分なナノ結晶組織とならず、5℃/秒未満の場合と同じく磁気特性の低下を招来するため、ワークの目標昇温到達温度までの昇温速度は5℃/秒以上600℃/秒以下が良く、好ましくは10℃/秒以上500℃/秒以下が良く、さらに好ましくは20℃/秒以上400℃/秒以下が良い。
[保持時間]
本発明に係るナノ結晶熱処理において、良好な磁気特性を発現可能な均一なナノ結晶合金金属組織を得るためには、結晶化熱処理温度に到達後、直ちに急冷することが好ましい。詳述すれば、ワークの温度が上記の目標昇温到達温度に到達後、急冷に至るまでにワークを目標昇温到達温度付近に保持する時間は、実質0.01秒以上あれば十分であり、10秒を超えて保持すると均一微細な金属組織が損なわれ各種磁気特性の低下を招来するため好ましくない。そこで、保持時間は0.01秒以上10秒以下が良く。好ましくは0.01秒以上7秒以下が良く。さらに好ましくは0.01秒以上5秒以下が良い。保持時間は、加熱ゾーンと冷却ゾーンとの間に適宜の長さの保持ゾーンを設定することで、調整可能である。
[降温速度]
本発明に係る結晶化熱処理では、2℃/秒以上200℃/秒以下の降温速度にて溶湯急冷凝固合金粉末を400℃以下まで冷却することが良い。2℃/秒未満ではナノ結晶組織の粗大化が進行し、200℃/秒を超えると合金が酸化する可能性があるため、2℃/秒以上200℃/秒以下の降温速度が良い。より好ましくは5℃/秒以上200℃/秒以下が良く、さらに好ましくは5℃/秒以上150℃/秒以下の降温速度が良い。
[処理速度]
本発明では、ワークの単位時間当たりの結晶化熱処理量が5g/min未満の場合、量産レベルの結晶化熱処理が実現できず、2kg/minを超えると均一微細なナノ結晶組織を得るために必要な5℃/秒の昇温速度が確保できないため、5g/min以上2kg/min以下が良い。より好ましくは15g/min以上2kg/min以下が良く、さらに好ましくは15g/min以上1.5kg/min以下が良い。
[熱処理雰囲気]
上記結晶化熱処理の雰囲気は、溶湯急冷凝固合金の酸化を防止するため、アルゴンガスや窒素などの不活性ガス流気中が好ましいが、大気中での結晶化熱処理も許容される。
[急冷凝固合金組成]
本発明に係る溶湯急冷凝固合金粉末の組成は組成式T loo-x-y-z-n QSiyREM (TはFe、CoおよびNiからなる群から選択された少なくとも1種の元素であって、Feを必ず含む遷移金属元素、QはB、Cからなる群から選択されBを必ず含む1種以上の元素、REは希土類元素、MはP、Al、Ti、V、Cr、Mn、Nb、Cu、Zn、Ga、Mo、Ag、Hf、Zr、Ta、W、Pt、Au及びPbからなる群から選択された1種以上の元素)で表現され、組成比率x、y、zおよびnが、それぞれ、5≦x<20原子%、0≦y<15原子%、0≦z<16原子%、0≦n<10原子%を満足する。
Feを必須元素として含む遷移金属Tは、上述の元素の含有残余を占める。Feの一部をFeと同じく強磁性元素であるCo及びNiの一種または二種で置換しても、所望の硬磁気特性を得ることができる。ただし、Feに対する置換量が30%を超えると、磁束密度の大幅な低下を招来するため、置換量は0%〜30%の範囲に限定される。
Q(=B+C)の組成比率xが5原子%未満になると、アモルファス生成能が大きく低下するため、溶湯急冷凝固の際にα-Feが析出するため軟磁性組成の場合、透磁率が低下し高性能の軟磁性材料が得られない。また、希土類元素含む硬磁性組成の場合、残留磁束密度Brが低下し高性能の硬磁性材料が得られない。軟磁性組成の場合、組成比率xが20原子%を超えるとFeの成分比率が低下することから磁束密度の低下を招来するため高性能な軟磁性材料を得ることが困難になる。また、希土類元素を含む硬磁性材料の場合、組成比率xが10原子%を超えると、硬磁性特性を担うRE2Fe14B相の存在比率が低下するため硬磁気特性の低下を招来する。このため、軟磁性組成の場合、組成比率xは5原子%以上20原子%以下の範囲とし、組成比率xは7原子%以上19原子%以下であることが好ましく、8原子%以上19原子%以下であることが更に好ましい。加えて希土類元素を含む硬磁性組成の場合、組成比率xは5原子%以上10原子%以下の範囲とし、組成比率xは5.5原子%以上10原子%以下であることが好ましく、5.5原子%以上9原子%以下であることが更に好ましい。
QにおけるBに対するCの置換率が増すと合金溶湯の融点が低くなり急冷凝固の際に用いる耐火物の損耗量が減るため急冷凝固に係る工程費用が低下できるが、Bに対するCの置換率が50%を超えるとアモルファス生成能が大きく低下するため好ましくなく、置換率は0%〜50%に限定する。好ましくは0%〜30%が良く、さらに好ましくは0%〜20%が良い。
本発明においてSiは、FeおよびBと同時添加することでアモルファス生成能を向上すると共に鉄基硼素系急冷凝固合金の透磁率を高める元素として有効であるが、Siの添加量yが15原子%を超えると飽和磁束密度Bsが大幅に低下するためyは15原子%以下とする。また、希土類元素REを含まない軟磁性を示す鉄基硼素系急冷凝固合金の場合、yは透磁率の向上の観点から2原子%以上15原子%以下が好ましい。さらに好ましくは2.5原子%以上12原子%以下が良い。
本発明においては、P、Al、Ti、V、Cr、Mn、Nb、Cu、Zn、Ga、Mo、Ag、Hf、Zr、Ta、W、Pt、Au及びPbからなる群から選択された1種以上の添加元素Mを加えてもよい。本添加元素により、アモルファス生成能の向上、急冷凝固金属組織の微細化等々の効果により、急冷凝固時の生産性の向上が得られるだけなく、希土類を含む硬磁性組成の場合、減磁曲線の角形性向上及び固有保磁力HcJの向上が実現できる。ただし、これらの元素Mの添加量が10原子%を超えると、磁化の低下を招くため、Mの組成比率nは0原子%以上10原子%以下に限定され、組成比率nは0原子%以上7原子%以下であることが好ましく、組成比率nは0原子%以上5原子%以下であることがさらに好ましい。
希土類元素を含む硬磁性を有する鉄基硼素系合金の場合、希土類元素REはLaおよびCeを実質的に含まない希土類金属の1種または2種以上とする。REの組成比率yが3原子%未満では硬磁性特性を担うRE2Fe14B相の存在比率が著しく低下するため、200kA/mを越える固有保磁力HcJが得られず、実用に供せる硬磁性材料(永久磁石)とならない。また、REの組成比率yが16原子%を越えると、RE2Fe14B相の粒界相全体を酸素に対して非常に活性なRE-rich相が占めるため急冷凝固合金を粉砕する際、発火・爆発の危険があると共に、粉末自体の耐食性が著しく低下するため酸化に伴う硬磁気特性の経時的な劣化が大きいためREの組成比率yは3原子%以上16原子%以下の範囲に限定するとする。組成比率yは4原子%以上15原子%以下であることが好ましく、6原子%以上14原子%以下であることがさらに好ましい。
[溶湯急冷凝固合金組織]
本発発明に係る結晶化熱処理前の前記溶湯急冷凝固合金は、その金属組織中に少なくとも5体積%以上のアモルファス相を含む。5体積%未満では結晶化熱処理において最適な磁気特性を発現し得る均一微細なナノ結晶合金組織を得ることができない。好ましくは10体積%以上のアモルファス相を含む方が良く、より好ましくは20体積%以上のアモルファス相を含む溶湯急冷凝固合金が良い。
[溶湯急冷凝固合金粉末形状]
本発発明に係る結晶化熱処理前の前記溶湯急冷凝固合金は、単ロール液体急冷法にて得られる連続したフープ(帯)状の溶湯急冷凝固合金を所望の大きさになるよう粉砕するが、粉砕後の溶湯急冷凝固合金は、厚み15μm〜100μm、短尺方向0.1mm〜10mm、長尺方向0.5mm〜50mm程度の板状形状となり、前記結晶化熱処理を施す際、粉砕後の溶湯急冷凝固合金粉末の長尺が40mm以上では、炉心管内おけるホッピング現象が起こり難くなるため、結晶化熱処理に際し、溶湯急冷凝固合金粉末の長尺は40mm以下が良く、好ましくは30mm以下が良く、より好ましくは20mm以下が良い。
以下、本発明の実施例を説明する。
(実施例)
Nd8Fe83B7Ti2原子%の合金組成となるよう、純度99.5%以上のNd、Ti、BおよびFeの各元素を配合した素原料100kgをアルミナ製坩堝へ挿入した後、高周波誘導加熱により溶解、合金溶湯を形成した後、低部に直径1.0mmのオリフィス1孔(オリフィス長7mm)を配したBN製出湯ノズルが接続されている内径200mm×高さ400mmのアルミナ製貯湯容器へ前記合金溶湯50kgを注いだ。なお、出湯ノズル直下にはΦ600mm×幅200mmのクロムジルコン銅からなる冷却ロールが配置されている。
その後、貯湯容器の周囲に設置された高周波加熱用コイルへ通電することで、前記合金溶湯50kgをさらに加熱し、溶湯温度が配合組成合金の融点より50℃以上高温に到達した後、出湯ノズル上部に配したアルミナ製溶湯ストッパーを引き抜き、出湯ノズル底部に配したBN製出湯ノズルから合金溶湯を出湯ノズル/ロール間距離0.4mmにて、絶対圧90kPaの減圧アルゴン雰囲気圧、ロール表面速度25m/秒で冷却ロールの表面上へ噴出する単ロール急冷法により、アモルファス組織を40%以上含む溶湯急冷凝固合金薄帯を作製した上、当該合金をフェザーミルにて平均厚み20μm、平均短尺長さ1mm、平均長尺長さ5mm程度の溶湯急冷凝固合金粉末とした。
得られた溶湯急冷凝固合金粉末を本発明による微細結晶化熱処理炉の原料ホッパーへ投入した上、表1に記載の切り出し速度で、同じく表1に記載の炉心管材質、炉心管内径、炉心管傾斜角度、炉心管振動周波数および炉心管回転数にて稼働し、溶湯急冷凝固合金粉末を表1に記載の最適温度(磁気特性が最大となる温度)に加熱した長さ300mmの加熱ゾーン、冷却ファンを設置した500mmの冷却ゾーンを通過させて結晶化熱処理を施した。
表2に溶湯急冷凝固合金粉末に昇温速度、保持時間並びに400℃までの降温速度を記載する。なお、結晶化熱処理後の溶湯急冷凝固合金粉末の構成相を粉末X線回折にて確認したところ、Nd2Fe14B相とα-Fe相にて構成されていた。
また、結晶化熱処理後の溶湯急冷凝固合金薄帯の微細金属組織を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、平均結晶粒径50nm以下のNd2Fe14Bおよびα-Feと判断される結晶相の存在を確認した。表2に各実施例おける平均結晶粒径を示す。
次いで結晶化熱処理後の溶湯急冷凝固合金を3.2MA/mのパルス通電着磁磁界にて着磁した後、振動式試料磁力計(VSM)を用いて1.2MA/mの静磁場を印加した上、残留磁束密度Br、固有保磁力HcJ、最大エネルギー積(BH)max並びに角形比Jr/Jsを測定した。測定結果を表2に示す。
(比較例1)
Nd8Fe83B7Ti2原子%の合金組成となるよう、純度99.5%以上のNd、Ti、BおよびFeの各元素を配合した素原料100kgをアルミナ製坩堝へ挿入した後、高周波誘導加熱により溶解、合金溶湯を形成した後、低部に直径1.0mmのオリフィス1孔(オリフィス長7mm)を配したBN製出湯ノズルが接続されている内径200mm×高さ400mmのアルミナ製貯湯容器へ前記合金溶湯50kgを注いだ。なお、出湯ノズル直下にはΦ600mm×幅200mmのクロムジルコン銅からなる冷却ロールが配置されている。
その後、貯湯容器の周囲に設置された高周波加熱用コイルへ通電することで、前記合金溶湯50kgをさらに加熱し、溶湯温度が配合組成合金の融点より50℃以上高温に到達した後、出湯ノズル上部に配したアルミナ製溶湯ストッパーを引き抜き、出湯ノズル底部に配したBN製出湯ノズルから合金溶湯を出湯ノズル/ロール間距離0.4mmにて、絶対圧90kPaの減圧アルゴン雰囲気圧、ロール表面速度25m/秒で冷却ロールの表面上へ噴出する単ロール急冷法により、アモルファス組織を40%以上含む平均厚み20μm、平均幅1.5mm程度の溶湯急冷凝固合金薄帯を作製した。
得られた溶湯急冷凝固合金薄帯を長さ20mm程度に切断した後、数gをニオブ箔に包んだ後、先端を封じた内径13mmの透明石英管に先端に挿入した上、石英管内を1kPa以下まで油回転ポンプで排気し、その後、600℃〜700℃の範囲にて10℃刻みに設定温度を変えた管状炉へ石英管を入れ、1分間経過後、水槽内へ石英管を挿入し急冷した。最も高い永久磁石特性が得られた熱処理温度640℃における推定昇温速度、保持温度並びに降温速度を表2に比較例1(サンプルNo.7)として示す。
結晶化熱処理を行なった後、溶湯急冷凝固合金を粉末X線回折にて確認したところ、Nd2Fe14B相とα-Fe相にて構成されていた。
また、結晶化熱処理後の溶湯急冷凝固合金薄帯の微細金属組織を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、平均結晶粒径50nm以下のNd2Fe14Bおよびα-Feと判断される結晶相の存在を確認した。表2に比較例1(サンプルNo.7)の平均結晶粒径を示す。
次いで結晶化熱処理後の溶湯急冷凝固合金を3.2MA/mのパルス通電着磁磁界にて着磁した後、振動式試料磁力計(VSM)を用いて1.2MA/mの静磁場を印加した上、残留磁束密度Br、固有保磁力HcJ、最大エネルギー積(BH)max並びに角形比Jr/Jsを測定した。測定結果を比較例1(サンプルNo.7)として表2に示す。
(比較例2)
Nd8Fe83B7Ti2原子%の合金組成となるよう、純度99.5%以上のNd、Ti、BおよびFeの各元素を配合した素原料100kgをアルミナ製坩堝へ挿入した後、高周波誘導加熱により溶解、合金溶湯を形成した後、低部に直径1.0mmのオリフィス1孔(オリフィス長7mm)を配したBN製出湯ノズルが接続されている内径200mm×高さ400mmのアルミナ製貯湯容器へ前記合金溶湯50kgを注いだ。なお、出湯ノズル直下にはΦ600mm×幅200mmのクロムジルコン銅からなる冷却ロールが配置されている。
その後、貯湯容器の周囲に設置された高周波加熱用コイルへ通電することで、前記合金溶湯50kgをさらに加熱し、溶湯温度が配合組成合金の融点より50℃以上高温に到達した後、出湯ノズル上部に配したアルミナ製溶湯ストッパーを引き抜き、出湯ノズル底部に配したBN製出湯ノズルから合金溶湯を出湯ノズル/ロール間距離0.4mmにて、絶対圧90kPaの減圧アルゴン雰囲気圧、ロール表面速度25m/秒で冷却ロールの表面上へ噴出する単ロール急冷法により、アモルファス組織を40%以上含む溶湯急冷凝固合金薄帯を作製した上、当該合金をフェザーミルにて平均厚み20μm、平均短尺長さ1mm、平均長尺長さ5mm程度の溶湯急冷凝固合金粉末とした。
得られた溶湯急冷凝固合金粉末を本発明による微細結晶化熱処理炉の原料ホッパーへ投入した上、表1に記載の切り出し速度で、同じく表1に記載の炉心管材質、炉心管内径、炉心管傾斜角度および炉心管回転数にて稼働し、溶湯急冷凝固合金粉末を表1に記載の最適温度(磁気特性が最大となる温度)に加熱した長さ300mmの加熱ゾーン、冷却ファンを設置した500mmの冷却ゾーンを通過させて結晶化熱処理を施した。
表2に溶湯急冷凝固合金粉末に昇温速度、保持時間並びに400℃までの降温速度を記載する。なお、結晶化熱処理後の溶湯急冷凝固合金粉末の構成相を粉末X線回折にて確認したところ、Nd2Fe14B相とα-Fe相にて構成されていた。
また、結晶化熱処理後の溶湯急冷凝固合金薄帯の微細金属組織を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、平均結晶粒径70nm以下のNd2Fe14Bおよびα-Feと判断される結晶相の存在を確認した。表2に比較例2(サンプルNo.8、9、10、11)の平均結晶粒径を示す。
次いで結晶化熱処理後の溶湯急冷凝固合金を3.2MA/mのパルス通電着磁磁界にて着磁した後、振動式試料磁力計(VSM)を用いて1.2MA/mの静磁場を印加した上、残留磁束密度Br、固有保磁力HcJ、最大エネルギー積(BH)max並びに角形比Jr/Jsを測定した。測定結果を比較例2(サンプルNo.8、9、10、11)として表2に示す。
本発明の微細結晶化熱処理炉は、各種高性能DCブラシレスモータ並びに磁気センサ等に適用されるナノ結晶型RE-Fe-B等方性磁石およびナノ結晶Sm-Fe-N等方性磁石に加え、ケイ素鋼板と同等レベルの磁束を備え、かつ良好な軟磁気特性と優れた成形性を有し、例えば、各種受動素子、パワーコンディショナー、モータ用コア向けの圧粉磁心等に適用される。Fe-Si-B系ナノ結晶軟磁性材料向けの微細結晶化熱処理炉として利用される。
本発明の微細結晶化熱処理炉は、アモルファス相を含む鉄基溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理に適用され、優れた磁気特性の発現に貢献する均一微細なナノ結晶組織を得るのに必要な5℃/秒以上600℃/秒以下の昇温速度を有するフラッシュアニールを量産レベルの処理能力を確保しながら実施できることから、
高性能なナノ結晶磁性材料粉末を安価に市場へ提供することが可能であり、各種モータ、センサ、受動素子等々の電子部品市場での利用可能性が極めて高い。
l 原料ホッパー
2 原料供給フィーダ
3 炉心管
3a 炉心管拡大図
3b 炉心管断面拡大図
4 管状炉
5 冷却塔
6 回収ホッパー
7 振動子
8 炉心管回転用モータ
9 炉心管回転軸
10 装置架台
11 炉心管傾斜角度
12 冷却ファン風
13 溶湯急冷凝固合金粉末(ワーク)
14 ワークの移動方向
15 ワークのホッピング現象
16 昇温速度
17 保持温度
18 降温速度

Claims (7)

  1. 石英、セラミックス、インコネル、鉄およびステンレスのいずれかからなり水平方向に対して3度以上20度以下の傾斜角で傾斜するように配置された内径10mm以上300mm以下の炉心管を備え、
    前記炉心管は、供給された溶湯急冷凝固合金粉末が内部を搬送されるように、振動可能且つ回転可能とされ、搬送方向上流側および下流側に、それぞれ加熱ゾーンおよび冷却ゾーンを備えており、
    前記炉心管の全体に10Hz以上200Hz以下の振動を与え、さらに前記炉心管を5rpm以上200rpm以下で回転させることで、前記炉心管内における溶湯急冷凝固合金粉末の通過速度が5mm/秒以上150mm/秒以下になることを特徴とする結晶化熱処理炉。
  2. 前記加熱ゾーンの長さが200mm以上1500mm以下であり、前記冷却ゾーンの長さが500mm以上3000mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の結晶化熱処理炉。
  3. 請求項1または2に記載の結晶化熱処理炉を用いて、溶湯急冷凝固合金粉末の結晶化熱処理を行う溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理方法であって、
    前記加熱ゾーンにおける溶湯急冷凝固合金の結晶化温度以上結晶化温度+100℃以下の目標昇温到達温度までの昇温速度を5℃/秒以上600℃/秒以下とし、前記目標昇温到達温度付近で0.01秒以上10秒以下の経過時間を経た後、前記冷却ゾーンにおいて2℃/秒以上200℃/秒以下の降温速度にて溶湯急冷凝固合金粉末を冷却して400℃以下にすることを特徴する溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理方法。
  4. 溶湯急冷凝固合金粉末の単位時間当たりの結晶化熱処理量が5g/min以上2kg/min以下であることを特徴とする請求項3に記載の溶湯急冷合金の結晶化熱処理方法。
  5. 前記溶湯急冷凝固合金粉末の組成が、組成式T loo-x-y-z-n QSiyREM (TはFe、CoおよびNiからなる群から選択された少なくとも1種の元素であって、Feを必ず含む遷移金属元素、QはB、Cからなる群から選択されBを必ず含む1種以上の元素、REは希土類元素、MはP、Al、Ti、V、Cr、Mn、Nb、Cu、Zn、Ga、Mo、Ag、Hf、Zr、Ta、W、Pt、Au及びPbからなる群から選択された1種以上の元素)で表現され、組成比率x、y、zおよびnが、それぞれ、5≦x<20原子%、0≦y<15原子%、0≦z<16原子%、0≦n<10原子%を満足する請求項3または4に記載の溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理方法。
  6. 前記溶湯急冷凝固合金粉末は、少なくとも5体積%以上のアモルファス相を含むことを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理方法。
  7. 前記溶湯急冷凝固合金粉末の長尺方向長さが40mm以下である請求項3から6のいずれかに記載の溶湯急冷凝固合金の結晶化熱処理方法。
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