JP2003059708A - ナノコンポジット磁石粉末および磁石の製造方法 - Google Patents

ナノコンポジット磁石粉末および磁石の製造方法

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JP2003059708A JP2001249938A JP2001249938A JP2003059708A JP 2003059708 A JP2003059708 A JP 2003059708A JP 2001249938 A JP2001249938 A JP 2001249938A JP 2001249938 A JP2001249938 A JP 2001249938A JP 2003059708 A JP2003059708 A JP 2003059708A
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heat treatment
magnetic phase
alloy
nanocomposite magnet
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Seiya Omori
靖也 大森
Satoru Hirozawa
哲 広沢
Hirokazu Kanekiyo
裕和 金清
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 新規な組織構造を持つ鉄基硼化物/R2Fe
14B系ナノコンポジットを提供し、保磁力や磁化を向上
させる。 【解決手段】 R2Fe14B系(Rは希土類元素、Fe
は鉄、Bはホウ素)化合物の硬磁性相と、鉄基硼化物の
軟磁性相とが同一組織内に混在するナノコンポジット磁
石を製造するに際して、急冷凝固合金に対する熱処理時
間を従来よりも長くすることによって、新しい組織を形
成する。その結果、硬磁性相の内部にFe微粒子が分散
する組織を得て磁石特性を優れたものとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Fe3Bなどの鉄
基硼化物の微結晶相とR2Fe14B系化合物の微結晶相
とが混在するナノコンポジット磁石に関する。この磁石
は、モータ、アクチュエータ、およびマグロール等に好
適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】鉄基硼化物/Nd2Fe14B系ナノコン
ポジット磁石は、Fe3Bなどの軟磁性相とNd2Fe14
Bなど硬磁性相が同一金属組織内に均一に分布し、交換
相互作用によって両者が磁気的に結合した永久磁石であ
る。これらの構成相は、ナノメートル(nm)オーダー
のサイズを持ち、複合化した組織(ナノコンポジット組
織)を構成していることから「ナノコンポジット磁石」
と呼ばれている。
【0003】ナノコンポジット磁石は、軟磁性相を含み
ながらも、硬磁性相との磁気的結合によって優れた磁石
特性(保磁力)を発揮することができる。また、Ndな
どの高価な希土類金属を含まない軟磁性相を含有するこ
とから、全体として希土類元素の含有量(濃度)が低く
抑えられる。このことは、磁石の原料コストを低減し、
磁石を安定的に供給するうえでも好都合である。
【0004】このようなナノコンポジット磁石は、溶融
した原料合金を急冷し、それによって非晶質相を含む急
冷凝固合金を形成した後、熱処理によって急冷凝固合金
中に微結晶を析出させるという方法を用いて製造され
る。
【0005】上記の急冷凝固合金は、メルトスピニング
技術やストリップキャスト法などの液体急冷技術を用い
て作製される。液体急冷技術は、回転する冷却ロールの
外周表面上に溶湯状原料合金短時間だけ接触させること
により、原料合金を急冷・凝固させるものである。この
方法による場合、冷却速度の制御は冷却ロールの回転周
速度や溶融金属の冷却ロールへの供給量を調節すること
によって行われる。
【0006】冷却ロール上で凝固し、冷却ロールから離
れた合金は、周速度方向に薄く延びた薄帯形状(リボ
ン)になる。この合金薄帯は破断機などによって破砕さ
れ、薄片化された後、粉砕装置によってより細かいサイ
ズに粉砕されて粉末化される。
【0007】このようにして得られた急冷凝固合金(粉
末)に対して、結晶化のための熱処理が行われる。この
熱処理によって、非晶質相から軟磁性相である鉄基硼化
物の微結晶と硬磁性相であるR2Fe14B相の微結晶が
同一金属組織内に生成され、両者は交換相互作用によっ
て磁気的に結合することになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ナノコンポジット磁石
の特性を向上させるには、製造工程の熱処理によってど
のような金属組織を形成するかが重要である。しかし、
この熱処理は制御性および再現性の観点で幾つかの問題
点を有していた。すなわち、非晶質原料合金の結晶化反
応で短時間に大きな熱が発生する結果、熱処理装置によ
る合金温度の制御が困難であるという問題があった。特
に、大量の原料合金粉末に対して熱処理を施そうとする
場合、その温度制御が不能状態に陥りやすかったため、
少量ずつの原料合金粉末に対してしか熱処理を施せなく
なり、処理レート(単位時間あたりの粉末処理量)が低
下してしまうという問題があった。このことは、磁石粉
末の量産化にとって大きな支障となっていた。
【0009】このような問題を解決するため、本発明者
らは、結晶化熱処理条件を最適化することにより、微細
かつ均質な金属組織を持った鉄基硼化物/Nd2Fe14
B系ナノコンポジット磁石の製造方法を発明し、特開2
001−155913号公報に開示している。
【0010】このように熱処理条件によって磁石特性が
大きく変動する鉄基硼化物/Nd2Fe14B系ナノコン
ポジット磁石については、従来から、結晶化熱処理時間
が所定の範囲を超えて長くなると、各構成相の粗大化が
進行するため、磁石特性が徐々に劣化するとの技術常識
が存在していた。そのため、熱処理時間などの条件を狭
い範囲内に設定する必要があり、また、得られた磁気特
性も必ずしも充分ではないという問題があった。
【0011】本発明はかかる諸点に鑑みてなされたもの
であり、その主な目的は、従来とは異なる熱処理条件の
もとで作製される、新規な結晶組織構造を備えた鉄基硼
化物/Nd2Fe14B系ナノコンポジットを提供するこ
とにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によるナノコンポ
ジット磁石は、R2Fe14B系(Rは希土類元素、Fe
は鉄、Bはホウ素)化合物の硬磁性相と、鉄基硼化物の
軟磁性相とが同一組織内に混在するナノコンポジット磁
石であって、内部にFe微粒子が分散している硬磁性相
を含有する。
【0013】好ましい実施形態において、前記硬磁性相
の内部に分散しているFe微粒子の短軸方向サイズの平
均値は、0.5nm以上10nm以下である請求項1に
記載のナノコンポジット磁石。
【0014】好ましい実施形態では、組成式がFe
100-x-yxy、Fe100-x-y-zxyCoz、Fe
100-x-y-uxyu、またはFe100-x-y-z-uxy
zuで表され、RはPrおよびNdの一方または両方
の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタン系
列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%未満
含有し、MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、N
i、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、
Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された
一種以上の元素であり、組成比x、y、zおよびuが、
2≦x≦6、16≦y≦20、0.2≦z≦7、および
0.01≦u≦7を満足する。
【0015】本発明によるボンド磁石は、上記のナノコ
ンポジット磁石の粉末を含有することを特徴とする。
【0016】本発明によるナノコンポジット磁石の製造
方法は、R2Fe14B系(Rは希土類元素、Feは鉄、
Bはホウ素)化合物の硬磁性相と、鉄基硼化物の軟磁性
相とが同一組織内に混在するナノコンポジット磁石の製
造方法であって、原料合金の溶湯を急冷することによ
り、急冷凝固合金を作製する工程と、前記急冷凝固合金
に対して熱処理を行うことにより、硬磁性相の内部にF
e微粒子を分散させる工程とを包含する。
【0017】好ましい実施形態では、前記硬磁性相の内
部に分散しているFe微粒子の短軸方向サイズの平均値
を0.5nm以上10nm以下にする。
【0018】本発明によるナノコンポジット磁石の製造
方法は、一般式がFe100-x-yx y、Fe100-x-y-z
xyCoz、Fe100-x-y-uxyu、またはFe
100-x-y-z -uxyCozuで表され、RはPrおよび
Ndの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、
残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素
を0%以上10%未満含有する希土類元素であり、Mは
Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、G
a、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、
AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元
素であり、組成比x、y、zおよびuが、2≦x≦6、
16≦y≦20、0.2≦z≦7、および0.01≦u
≦7を満足するナノコンポジット磁石用原料合金の溶湯
を用意する工程と、前記溶湯を冷却し、非晶質組織を含
む急冷凝固合金を作製する工程と、前記急冷凝固合金に
対して熱処理を施し、それによって、前記非晶質組織か
ら鉄基硼化物およびFe−R−B系化合物を結晶化させ
る熱処理工程と、を包含するナノコンポジット磁石の製
造方法であって、前記熱処理工程中に磁石の保磁力を熱
処理時間の経過に伴って上昇させ、保磁力が最初のピー
クを超えて低下した後、再び保磁力を上昇させる。
【0019】好ましい実施形態では、前記熱処理工程に
おいて、前記急冷凝固合金が示す最高の温度を620℃
以上800℃以下の範囲内に調節することを特徴とす
る。
【0020】本発明によるボンド磁石の製造方法は、上
記の製造方法を用いて作製されたナノコンポジット磁石
を用いてボンド磁石を作製することを特徴とする。
【0021】本発明のモータは、上記の製造方法によっ
て製造されたボンド磁石を備えていることを特徴とす
る。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明によるナノコンポジット磁
石は、R2Fe14B系(Rは希土類元素、Feは鉄、B
はホウ素)化合物の硬磁性相と、鉄基硼化物の軟磁性相
とが同一組織内に混在するナノコンポジット磁石であっ
て、内部にFe微粒子が分散する硬磁性相を含んでいる
点に特徴を有している。
【0023】透過電子顕微鏡写真観察によると、R2
14B相の内部に存在しているFe微粒子の形状は完全
な球状ではなく、長軸サイズ/短軸サイズ比(アスペク
ト比)が1を超える形状を有している。透過電子顕微鏡
写真観察によると、Fe微粒子の短軸方向サイズの平均
値は、0.5nm以上10nm以下である。
【0024】本発明によれば、従来の鉄基硼化物/R2
Fe14B系ナノコンポジット磁石と比較して同等または
それ以上の保磁力が得られる。一般に、ナノコンポジッ
ト磁石の保磁力は、硬磁性相と軟磁性相との間に生じる
交換相互作用と異方性エネルギの比に強く依存するが、
硬磁性相中に微細な軟磁性相が分散した状態にあると
き、最も高い保磁力が実現する。本発明によれば、一部
の硬磁性相中にFe微粒子が分散し、その点で保磁力が
従来構造のナノコンポジット磁石よりも向上している。
【0025】また本発明によれば、従来の鉄基硼化物/
2Fe14B系ナノコンポジット磁石よりも高い磁化お
よび高いキュリー点を得ることも可能である。これは、
本発明では、従来の鉄基硼化物/R2Fe14B系ナノコ
ンポジット磁石に比較してNd2Fe233の量が少な
く、その代わり、Nd2Fe233に比べて磁化およびキ
ュリー点が高いNd2Fe14Bやα−Feの量が増加す
るためである。
【0026】本発明のナノコンポジット磁石は、適切な
組成を有する原料合金の溶湯を急冷することにより、急
冷凝固合金を作製した後、この急冷凝固合金に対する適
切な熱処理を行うことにより得られる。
【0027】原料合金としては、一般式がFe100-x-y
xy、Fe100-x-y-zxyCoz、Fe100-x-y-ux
yu、またはFe100-x-y-z-uxyCozuで表さ
れる希土類合金を用いることが好ましい。なお、BはC
(炭素)によって置換されていてもよく、また、Feの
一部は遷移金属元素によって置換されててもよい。
【0028】ここで、RはPrおよびNdの一方または
両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他のランタ
ン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以上10%
未満含有する希土類元素であり、MはAl、Si、T
i、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、Nb、
Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgか
らなる群から選択された一種以上の元素である。上記一
般式中の組成比x、y、zおよびuは、2≦x≦6、1
6≦y≦20、0.2≦z≦7、および0.01≦u≦
7を満足する。
【0029】従来、このような組成を有する原料合金の
溶湯を急冷して作製した急冷凝固合金を熱処理によって
結晶化させると、図1に示すようなカーブを描いて保磁
力が増加すると考えられていた。このため、結晶化のた
めの熱処理時間は保磁力が大きく低下しない時間範囲内
に設定され、熱処理工程は保磁力が大きく低下する前に
終了させられる。しかし、本発明者は、保磁力の熱処理
時間依存性が図2に示すようなカーブではなく、実際は
図2に示すようなカーブを描くことを見出し、本発明を
想到するにいたった。
【0030】以下、図2および図3A〜3Fを参照しな
がら、本発明の特徴を詳しく説明する。
【0031】まず、図2を参照する。図2は、縦軸が保
磁力HcJで横軸は熱処理の経過時間(対数表示)を示し
ている。保磁力HcJは、図2に示すように、熱処理時間
の経過に伴って上昇し、第1のピークを超えて低下した
後、再び上昇を始め、第2のピークを迎える。保磁力の
変化は、熱処理の進行に伴って組織が変化することを意
味しており、保磁力HcJが第1のピークを超えて低下し
た後、再び上昇するのは、今まで知られていなかった組
織構造の変化に起因している。
【0032】以下、熱処理の経過に伴って磁石の組織が
どのように変化するかを説明する。
【0033】図3Aおよび図3Bは、図2のグラフにお
ける第1ステージ(Stage1)から第2ステージ(Stage
2)への組織構造の変化を模式的に示している。第1ス
テージにおいては非晶質であった組織は、図3Bに示す
ように第2ステージにおいてFe3Bで示される鉄基硼
化物が析出した状態に変化している。
【0034】次に図3Cを参照する。熱処理の進行に伴
い、Fe3Bの表面にNd2Fe23 3が析出し始める。
更に熱処理が進行すると、図3Dに示すように、今度は
Nd2Fe14Bが非晶質相から析出し、成長する。この
ような組織の変化に従って保磁力HcJは図2に示すよう
に第1ピークに達する。この後、保磁力HcJは低下する
が、この保磁力低下は、Nd2Fe233の再融解によっ
て軟磁性相と硬磁性相との間の交換相互作用力と異方性
エネルギとのバランスが崩れることによって生じるもの
と考えられる(図3E)。Nd2Fe233の再融解が進
行し、図2に示すグラフの第5ステージにいたると、再
び、保磁力の増大が開始する。この保磁力の増大は、図
3Fに示すように、Nd2Fe233の分解によって微細
Fe相が内部に分散したNd2Fe14B相が形成される
ために生じると考えられる。このような組織が完成する
と、保磁力は第2のピークを示すようになる(図2のグ
ラフの第6ステージ)。このような保磁力の再上昇は、
前述したように、硬磁性相中に微細な軟磁性相が分散し
た相が形成され、その部分の保磁力が増加するためであ
る。熱処理を更に進めると、結晶組織が粗大化し、磁化
反転が伝搬しやすくなる(すなわち、逆磁区が生成・成
長しやすくなる)ことにより、保磁力は再び低下するこ
とになる。また、熱処理時間を極度に長くすると、系全
体が熱平衡相であるα−FeとNd1.1Fe44に分解
してゆき、Nd2Fe14Bが存在しなくなるため、保磁
力はゼロに近い値にまで低下してしまう。
【0035】以下、図面を参照しながら、本発明の実施
形態における急冷合金の製造工程および結晶化熱処理工
程を説明する。
【0036】[急冷合金の製造工程]本実施形態では、
例えば図4(a)および(b)に示す装置を用いて原料
合金を製造する。酸化しやすい希土類元素を含む原料合
金の酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気中で合金製造工
程を実行する。不活性ガスとしては、ヘリウムまたはア
ルゴン等の希ガスを用いることが好ましい。窒素は希土
類元素と反応しやすいため、不活性ガスとして用いるこ
とは好ましくない。
【0037】図4の装置は、真空または不活性ガス雰囲
気を保持し、その圧力を調整することが可能な原料合金
の溶解室1および急冷室2を備えている。
【0038】溶解室1は、所望の磁石合金組成になるよ
うに配合された原料20を高温にて溶解する溶解炉3
と、底部に出湯ノズル5を有する貯湯容器4と、大気の
進入を抑制しつつ配合原料を溶解炉3内に供給するため
の配合原料供給装置8とを備えている。貯湯容器4は原
料合金の溶湯21を貯え、その出湯温度を所定のレベル
に維持できる加熱装置(不図示)を有している。
【0039】急冷室2は、出湯ノズル5から出た溶湯2
1を急冷凝固するための回転冷却ロール7と、これによ
って急冷凝固された原料合金を急冷室2内で破砕する破
断機10とを備えている。この装置によれば、溶解、出
湯、急冷凝固、破断等を連続かつ平行して実行すること
ができる。このような装置は、例えば特開平8−277
403号公報に詳しく記載されている。
【0040】この装置においては、溶解室1および急冷
室2内の雰囲気およびその圧力が所定の範囲に制御され
る。そのために、雰囲気ガス供給口1b、2b、8b、
および9bとガス排気口1a、2a、8a、および9a
とが装置の適切な箇所に設けられている。
【0041】溶解炉3は傾動可能であり、ロート6を介
して溶湯21を貯湯容器4内に適宜注ぎ込む。溶湯21
は貯湯容器4内において不図示の加熱装置によって加熱
される。
【0042】貯湯容器4の出湯ノズル5は、溶解室1と
急冷室2との隔壁に配置され、貯湯容器4内の溶湯21
を下方に位置する冷却ロール7の表面に流下させる。出
湯ノズル5のオリフィス径は、例えば0.5〜2.0m
mである。溶湯21の粘性が大きい場合、溶湯21は出
湯ノズル5内を流れにくくなるが、溶解室1と急冷室2
との間に適当な大きさの圧力差を形成することによっ
て、溶湯21の出湯をスムーズに実行するこができる。
【0043】冷却ロール7の表面は例えばクロムめっき
層で覆われており、冷却ロール7の直径は例えば300
〜500mmである。冷却ロール7内に設けた水冷装置
の水冷能力は、単位時間あたりの凝固潜熱と出湯量とに
応じて算出し、調節される。
【0044】本装置によれば、例えば合計20kgの原
料合金を20〜40分間で急冷凝固させることができ
る。こうして形成した合金は、破断前においては、厚
さ:70〜150μm、幅:1.5〜6mmの合金薄帯
(合金リボン)22であるが、破断装置10によって長
さ2〜150mm程度の合金薄片23に破砕されたの
ち、回収機構部9によって回収される。図示している装
置例では、回収機構部9に圧縮機11を備え付けてお
り、それによって薄片23を圧縮することができる。
【0045】次に、図4の装置を用いた原料合金の製造
方法を説明する。
【0046】まず、上述した組成を有する原料合金の溶
湯21を作製し、溶解室1の貯湯容器4に貯える。
【0047】次に、溶湯21を出湯ノズル5から水冷ロ
ール7上に出湯し、水冷ロール7との接触によって急冷
し、凝固させる。
【0048】本実施形態では、溶湯21の冷却凝固に際
して、冷却速度を5×104〜5×106K/秒とする。
合金の溶湯21が冷却ロール7によって冷却される時間
は、回転する冷却ロール7の外周表面ら合金が接触して
から離れるまでの時間に相当し、本実施形態の場合は
0.5〜2ミリ秒である。
【0049】急冷凝固合金の作製方法は、上記の方法に
限定されず、他の急冷法、例えばストリップキャスト法
などを用いても、上述の冷却速度、および、ロールと急
冷合金との接触時間を満たすことができる。
【0050】なお、急冷室2内の絶対圧力は、2〜30
kPaの範囲内に設定することが好ましく、3〜10k
Paの範囲内に設定することが更に好ましい。このよう
な減圧状態で溶湯21を冷却ローラ7上に流下すれば、
溶湯21とローラ7の表面との間に雰囲気ガスがまき込
まれるおそれがなくなり、溶湯21の冷却速度を従来よ
り低くしても、冷却状態が均一化され、表面形状の優れ
た合金薄帯22が得られるからである。これに対して、
常圧雰囲気中において、本実施形態のように遅い周速度
で回転する冷却ローラ上に溶湯21を流下すると、合金
薄帯22の表面形状が劣化してしまうおそれがある。
【0051】また、本実施形態のように、急冷凝固工程
に引き続いて破砕装置による凝固合金の破砕工程を速や
かに実行すれば、長い合金リボンとして冷却ロールから
吐き出された急冷合金を比較的に狭い空間内でコンパク
トに回収することができる。急冷凝固装置と破砕装置と
を別構成にすると、いったん急冷合金を長い薄帯とし
て、かさばった状態で収納する必要が生じる。
【0052】破断装置によって破砕された合金薄片を公
知の機械的粉砕装置によって更に粉砕すれば、熱処理工
程やその後の成形工程に適した大きさの合金粉末を作製
することができる。本実施形態では、パワーミル装置で
約850μm以下となるまで合金の粗粉砕を行った後、
ピンディスクミル装置によって粒度が約150μm以下
となるまで粉砕する。
【0053】[結晶化熱処理工程]以下に、図5を参照
しながら、上記原料合金粉末に対して行う熱処理方法を
説明する。
【0054】図5は、フープベルトを用いた粉末熱処理
炉装置を示している。この装置は、本体28によって回
転可能に支持された回転ロール24および25と、それ
らの回転ロール24および25の回転によって一方向に
所定速度で駆動されるフープベルト26とを備えてい
る。原料合金の粉末はフープベルト26上の原料フィー
ド位置Aに供給され、図中左方に運搬される。フープベ
ルト26上に供給された粉末は、摺切板27によって均
され、それによって粉末の高さが一定レベル以下(例え
ば高さ2〜4mm)に調整される。その後、粉末は金属
チューブに囲まれた加熱ゾーンに入り、そこで微結晶化
のための熱処理を受ける。加熱ゾーン(例えば長さ11
00mm)内には、例えば3ゾーンに分けて不図示のヒ
ータが配置されている(1ゾーンの長さは例えば300
mm)。粉末は加熱ゾーン内を移動しながら、熱処理を
受けることになる。加熱ゾーンの後段には、例えば長さ
800mmの冷却ゾーンCが存在し、粉末は水冷された
金属筒内を通過することによって冷却される。冷却され
た粉末は、回転ローラ25の左下方で不図示の回収装置
によって回収される。
【0055】この熱処理装置によれば、与えられた加熱
ゾーンの長さに対して、フープベルト26の移動速度を
調整することによって熱処理工程を制御することができ
る。
【0056】図6は回転するチューブを用いた粉末熱処
理炉装置を示している。この装置は、本体31により回
転可能に支持された回転チューブ32とを備えており、
本体31の片端をジャッキ33によって上昇させること
によって回転チューブ32に傾斜を与えることができ
る。回転チューブ32は、例えばステンレス鋼等の耐熱
金属によって形成されており、その長さは3000mm
のものが使用され得る。また、回転チューブ32には歯
車が設けられており、この歯車は金属チェーンを介して
不図示の動力モータに結合されている。動力モータが回
転すると、その回転力が金属チェーンを介して歯車に伝
達され、それによって回転チューブ32が回転すること
になる。
【0057】原料合金の粉末は、原料フィーダ34から
回転チューブ32の内部へ供給され、傾斜配置された回
転チューブ32内を図中右方向に運搬される。原料合金
粉末は、チューブ32の回転にしたがって自重によりチ
ューブ内壁を滑り、回転チューブ32の他端に設けられ
た排出口35に向かう。回転チューブ32の外周壁の一
部は不図示のヒータによって囲まれ、加熱ゾーンを形成
している。加熱ゾーン(例えば長さ1500mm)で
は、例えば3ゾーンに分けて不図示のヒータが配置され
ている。粉末は加熱ゾーン内を移動しながら、熱処理を
受けことになる。
【0058】加熱ゾーンの後段部分には、例えば長さ5
00mmの冷却ゾーンが設けられていてもよい。冷却ゾ
ーンを設ける代わりに、回転チューブ32の一部を大気
中に剥き出しになるようにしていてもよい。粉末は、回
転チューブ32内において加熱ゾーンを通りすぎた後、
加熱ゾーンの後段部分おいて冷却される。冷却された粉
末は、右下方で不図示の回収槽により回収される。
【0059】この熱処理装置によれば、加熱ゾーンの長
さ、回転チューブの径、合金粉末の安息角に対する回転
チューブの傾き、回転チューブの単位時間当たりの回転
数などを変化させることによって、合金粉末のチューブ
内移動速度を調整することができる。合金粉末のチュー
ブ内移動速度を調整すれば、熱処理工程を制御すること
ができる。
【0060】熱処理炉の制御としては、例えば、昇温レ
ート100〜150℃/分にて熱処理温度550〜70
0℃にまで上昇させ、その状態を10〜60分程度のあ
いだ保持すればよい。その結果、粉末は結晶化発熱によ
り、10〜50℃/秒の速さで昇温する。なお、この点
の詳細は特開2001−155913号公報に記載され
ている。その後、合金温度を降温レート100〜150
℃/分にて室温レベルまで低下させることが好ましい。
【0061】なお、熱処理の処理粉末量を増大させるに
は、例えば図5の装置の場合、フープベルト26の幅を
広くし、フープベルト26の単位長さ当たりの粉末供給
量を大きくする一方、加熱ゾーンの長さを長くし、回転
ローラ24および25の回転周速度を早くすればよい。
本発明による合金粉末によれば、熱処理に際して急激に
大きな結晶化反応熱が生成されないため、熱処理工程に
おける合金粉末の温度制御が容易である。その結果、粉
末供給量を増加しても、安定した磁気特性を持つ磁石粉
末を作製できる。
【0062】上記熱処理装置による熱処理を受けた原料
粉末は、前述したように微結晶化し、ナノコンポジット
磁石としての特性を発揮できるようになる。
【0063】熱処理工程における急冷凝固合金の最高到
達温度は、硬磁性相であるR2Fe1 4B相の析出に影響
する。最高到達温度が620℃未満の場合は、R2Fe
14B相が析出せず、固有保磁力が発現しない。最高到達
温度が800℃を超える場合、軟磁性相である鉄基硼化
物の結晶粒が過度に成長するため、R2Fe14B相との
交換相互作用が弱まり、0.5T以上の残留磁束密度が
得られない。このため、最高到達温度は、620℃以上
800℃以下であることが好ましい。また、特に優れた
磁気特性を発揮させるには、650℃以上770℃以下
であることが好ましい。
【0064】[磁石の製造方法]以下に、上記ナノコン
ポジット磁石合金粉末から磁石を製造する方法を説明す
る。
【0065】まず、前述のようにして得られたナノコン
ポジット磁石合金粉末にエポキシ樹脂からなるバインダ
ーと添加剤とを加え、混練することによってコンパウン
ドを作製する。次に、コンパウドの所望形状の成形空間
を持つ成形装置によってプレス成形した後、加熱硬化工
程、洗浄工程、コーティング工程、検査工程、着磁工程
を経て、最終的なボンド磁石を得ることができる。
【0066】成形加工は、上述の圧縮成形に限定される
わけではなく、公知の押出成形、射出成形、または圧延
成形によってもよい。磁石粉末は、採用する成形法の種
類に応じてブラスチック樹脂やゴムと混練されることに
なる。
【0067】なお、射出成形による場合、樹脂として広
く使用されているポリイミド(ナイロン)の他、PPS
のように高軟化点樹脂を使用することができる。これ
は、本発明の磁石粉末が低希土類合金から形成されてい
るため、酸化されにくく、比較的に高い温度で射出成形
を行っても磁石特性が劣化しないからである。
【0068】また、本発明の方法で製造された磁石は酸
化されにくいため、最終的な磁石表面を樹脂膜でコート
する必要もない。従って、例えば、複雑な形状のスロッ
トを持つ部品のスロット内に射出成形によって本発明の
磁石粉末および溶融樹脂を圧入し、それによって複雑な
形状の磁石を一体的に備えた部品を製造することも可能
である。
【0069】以下に、本発明の実施例を説明する。
【0070】[実施例] (実施例1)表1に示す組成を有する試料(No.1〜
No.4)の各々について、純度99.5%以上のB、
Fe、Cr、Ndの材料を用いて総量が30グラムとな
るように秤量し、石英るつぼ内に投入した。
【0071】
【表1】
【0072】表1において、例えば「R」と表示してい
る欄の「Nd4.5」は4.5原子%のNd(ネオジ
ム)を含有していることを示し、「Cr」と表示してい
る欄の「3」は3原子%のCrを添加したことを示して
いる。
【0073】溶湯作製に用いた石英るつぼは、底部に直
径0.8mmのオリフィスを有しているため、上記原料
は石英るつぼ内で溶解された後、合金溶湯となってオリ
フィスから下方に滴下することになる。原料の溶解は、
圧力が1.33kPaのアルゴン雰囲気下において高周
波加熱法を用いて行った。本実施例では、溶湯温度を1
500℃に設定した。
【0074】合金溶湯の湯面を26.7kPaのArガ
スで加圧することによって、オリフィスの下方0.7m
mの位置にある銅製ロールの外周面に対して溶湯を噴出
させた。ロールは、その外周面の温度が室温程度に維持
されるように内部が冷却されながら高速(ロール周速度
20m/s)で回転する。このため、オリフィスから滴
下した合金溶湯はロール周面に接触して熱を奪われつ
つ、周速度方向に飛ばされることになる。合金溶湯はオ
リフィスを介して連続的にロール周面上に滴下されるた
め、急冷によって凝固した合金は薄帯状に長く延びたリ
ボン(幅約1mm、厚さ:30μm〜50μm)の形態
を持つことになる。
【0075】本実施例で採用する回転ロール法(単ロー
ル法)の場合、冷却速度はロール周速度および単位時間
当たりの溶湯流下量によって規定される。この溶湯流下
量は、オリフィス径(断面積)と溶湯圧力とに依存す
る。本実施例の流下レートは約0.5〜1kg/分であ
った。
【0076】試料No.1〜4について、得られた急冷
凝固合金の組織をCuKαの特性X線により調べた。そ
の結果、上記各試料の組織は、いずれも、アモルファス
相であることを確認した。
【0077】次に、上記の急冷凝固合金を長さ10mm
〜20mmの短冊状にし、Arガス中で30℃/分で昇
温した後、表1に示す熱処理温度で8000秒間保持す
る等温熱処理を施した。
【0078】図7は、熱処理経過時間が60秒、300
秒、600秒、1800秒、3600秒、7200秒間
の各々の段階における固有保磁力を示す。図7の各曲線
は、以下の条件で処理された試料に関するものである。
【0079】「□」:Cr濃度0原子%、熱処理温度7
50℃(試料No.0) 「○」:Cr濃度3原子%、熱処理温度700℃(試料
No.1) 「△」:Cr濃度3原子%、熱処理温度750℃(試料
No.2) 「▽」:Cr濃度20原子%、熱処理温度700(試料
No.3) 「◇」:Cr濃度20原子%、熱処理温度750(試料
No.4)
【0080】また、X線回折および透過型電子顕微鏡を
用いてNo.0〜No.4の各試料の等温保持における
構成相の変化を調査した。その結果、等温保持の初期段
階においてアモルファス組織から軟磁性を有するFe3
Bの結晶化が始まり、次いで同じく軟磁性を示すNd2
Fe233が析出し、その後、硬磁性相であるNd2Fe
14B相がFe3BおよびNd2Fe233の界面から析出
することがわかった。これにより、図7における固有保
磁力の第1ピークが表れる。
【0081】その後に、Nd2Fe233の再溶解に伴っ
て軟磁性相と硬磁性相との間に働く交換相互作用の大き
さが変化し、固有保磁力が減少した。更に等温保持を続
けると、Nd2Fe233の再溶解後にα−FeとNd2
Fe14Bが析出し、図7における固有保磁力の第2ピー
クが表れた。その後は、結晶組織が粗大化し、Nd2
14Bが分解することにより、固有保磁力が低下してい
った。
【0082】透過型電子顕微鏡を用いた解析の結果、N
o.1〜No.4のいずれの試料も図7における固有保
磁力の第2ピーク付近における組織は、平均結晶粒径3
0nm以下のNd2Fe14B、α−FeおよびFe3Bか
ら構成されていた。また、α−Feは、Nd2Fe233
の再溶解後、Nd2Fe14Bと共析変態したように析出
したものであることを観察した。図8は、この段階にお
ける試料No.0の透過型電子顕微鏡写真を示してい
る。
【0083】なお、本実施例では、保磁力向上に効果的
な添加元素としてCrを添加しているが、Crに代え
て、あるいは、Crとともに他の金属元素を添加しても
よい。
【0084】[組成限定理由]最後に、合金組成の限定
理由を説明する。
【0085】希土類元素Rは、硬磁性相であるR2Fe
14Bに必須の元素である。本発明でのRは、Prおよび
Ndの一方または両方の元素を90原子%以上含有し、
残部が他のランタン系列元素またはYの一種以上の元素
を0%以上10%未満含有する。PrおよびNdのいず
れか一方の元素は、一軸結晶磁気異方性を持つR2Fe
14Bを生成するために不可欠である。PrおよびNd以
外の希土類元素は、適宜任意に選択される。Rの組成比
は、2原子%を下回ると保磁力発生の効果が少なすぎる
ので好ましくない。一方、Rの組成比が6原子%を超え
ると、Fe3B相およびNd2Fe14B相が生成されず、
α−Fe相が主相となってしまうため、保磁力が著しく
低下してしまうことになる。以上のことから、Rの組成
比xについては、2≦x≦6であることが好ましい。
【0086】Bは、軟磁性相であるFe3Bおよび硬磁
性相であるR2Fe14Bの両方にとって必須の元素であ
る。Bの組成比yが16〜20原子%の範囲から外れる
と所要の保磁力が発揮されないため、Bの組成比yにつ
いては16≦y≦20であることが好ましい。Bがこの
組成範囲を外れると、融点が上昇し、溶解温度および貯
湯容器の保温温度を高める必要が生じ、また、非晶質生
成能も低下するので所望の急冷合金組織が得られにくく
なる。
【0087】Coは、キュリー温度を向上させることに
よって磁気特性の温度変化依存性を減少させ、その結
果、磁気特性を安定化させるという機能を持つ。また、
合金溶湯の粘性を改善するという機能もあり、溶湯流下
レートの安定化にも寄与する。Coの添加割合が0.0
2原子%を下回ると上記機能が充分に発揮されず、7原
子%を超えると磁化特性が低下し始める。Coの添加
は、これらの機能を発揮させたい場合に行えば良く、本
発明の効果を得る上でCoの添加が不可欠であるわけで
はない。Coを添加する場合は、上述の理由から、その
組成比zについて0.2≦z≦7が成立することが好ま
しい。
【0088】Mは、保磁力をできるだけ増加させたい場
合などに添加する。Mの添加割合が0.01原子%を下
回ると、添加による保磁力増加の効果が充分に観察され
ず、Mの添加割合が7原子%を超えると、磁化が低下す
る。従って、Mを添加する場合は、その組成比uについ
て、0.1≦z≦7が成立することが好ましい。Mの中
で、Crは保磁力増加の他に耐食性向上の効果も発揮す
る。また、Cu、Au、Agは結晶化熱処理工程での適
正温度範囲を拡大する効果もある。
【0089】
【発明の効果】本発明によれば、従来よりも長い結晶化
熱処理を行うとにより、新規な組織構造(R−Fe−B
型硬磁性相の内部にFe粒子が分散した構造)を作製
し、鉄基硼化物/R2Fe14B系ナノコンポジットの保
磁力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鉄基硼化物/R2Fe14B系ナノコンポジット
磁石において、保磁力と熱処理時間との間の従来知られ
ていた関係を示すグラフである。
【図2】鉄基硼化物/R2Fe14B系ナノコンポジット
磁石において、保磁力と熱処理時間との間の新しく見出
された関係を示すグラフである。
【図3A】急冷凝固合金に対する結晶化熱処理の第1ス
テージにおける組織構成を模式的に示す図である。
【図3B】急冷凝固合金に対する結晶化熱処理の第2ス
テージにおける組織構成を模式的に示す図である。
【図3C】急冷凝固合金に対する結晶化熱処理の第3ス
テージにおける組織構成を模式的に示す図である。
【図3D】急冷凝固合金に対する結晶化熱処理の第4ス
テージにおける組織構成を模式的に示す図である。
【図3E】急冷凝固合金に対する結晶化熱処理の第5ス
テージにおける組織構成を模式的に示す図である。
【図3F】急冷凝固合金に対する結晶化熱処理の第6ス
テージにおける組織構成を模式的に示す図である。
【図4】(a)は、本発明によるナノコンポジット磁石
用原料合金を製造する方法に用いるメルトスピニング装
置の全体構成例を示す断面図であり、(b)は急冷凝固
が行われる部分の拡大図である。
【図5】本発明によるナノコンポジット磁石を製造する
方法に用いる熱処理装置の例を示す断面図である。
【図6】本発明によるナノコンポジット磁石を製造する
方法に用いる熱処理装置の他の例を示す断面図である。
【図7】実施例における保磁力の熱処理時間依存性を示
すグラフである。
【図8】実施例のTEM写真である。
【符号の説明】
1b、2b、8b、および9b 雰囲気ガス供給口 1a、2a、8a、および9a ガス排気口 1 溶解室 2 急冷室 3 溶解炉 4 貯湯容器 5 出湯ノズル 6 ロート 7 回転冷却ロール 10 破断機10 11 圧縮機 21 溶湯 22 合金薄帯 23 合金薄片 28 本体 24 回転ロール 25 回転ロール 26 フープベルト 27 摺切板 31 粉末焼成炉装置本体 32 回転チューブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金清 裕和 大阪府三島郡島本町江川2丁目15番17号 住友特殊金属株式会社山崎製作所内 Fターム(参考) 4E004 DB02 NB07 NC10 TA03 4K017 AA04 BA06 BB12 CA03 DA04 EA07 EC02 EE01 4K018 AA27 BA18 BB07 BB08 BB10 BC01 BD01 GA04 KA46 5E040 AA04 AA19 BB03 CA01 NN01 NN06

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 R2Fe14B系(Rは希土類元素、Fe
    は鉄、Bはホウ素)化合物の硬磁性相と、鉄基硼化物の
    軟磁性相とが同一組織内に混在するナノコンポジット磁
    石であって、 内部にFe微粒子が分散している硬磁性相を含有するナ
    ノコンポジット磁石。
  2. 【請求項2】 前記硬磁性相の内部に分散しているFe
    微粒子の短軸方向サイズの平均値は、0.5nm以上1
    0nm以下である請求項1に記載のナノコンポジット磁
    石。
  3. 【請求項3】 組成式がFe100-x-yxy、Fe
    100-x-y-zxyCoz、Fe100-x-y-uxyu、また
    はFe100-x-y-z-uxyCozuで表され、 RはPrおよびNdの一方または両方の元素を90原子
    %以上含有し、残部が他のランタン系列元素またはYの
    一種以上の元素を0%以上10%未満含有し、 MはAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、
    Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、P
    b、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上
    の元素であり、 組成比x、y、zおよびuが、 2≦x≦6、 16≦y≦20、 0.2≦z≦7、および0.01≦u≦7を満足する請
    求項1または2に記載のナノコンポジット磁石。
  4. 【請求項4】 請求項1から3のいずれかに記載のナノ
    コンポジット磁石の粉末を含有するボンド磁石。
  5. 【請求項5】 R2Fe14B系(Rは希土類元素、Fe
    は鉄、Bはホウ素)化合物の硬磁性相と、鉄基硼化物の
    軟磁性相とが同一組織内に混在するナノコンポジット磁
    石の製造方法であって、 原料合金の溶湯を急冷することにより、急冷凝固合金を
    作製する工程と、 前記急冷凝固合金に対して熱処理を行うことにより、硬
    磁性相の内部にFe微粒子を分散させる工程と、を包含
    するナノコンポジット磁石の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記硬磁性相の内部に分散しているFe
    微粒子の短軸方向サイズの平均値を0.5nm以上10
    nm以下にする請求項5に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 一般式がFe100-x-yxy、Fe
    100-x-y-zxyCoz、Fe100-x-y-uxyu、また
    はFe100-x-y-z-uxyCozuで表されるナノコン
    ポジット磁石用合金であって、RはPrおよびNdの一
    方または両方の元素を90原子%以上含有し、残部が他
    のランタン系列元素またはYの一種以上の元素を0%以
    上10%未満含有する希土類元素であり、MはAl、S
    i、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Ga、Zr、
    Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、Auおよび
    Agからなる群から選択された一種以上の元素であり、
    組成比x、y、zおよびuが、2≦x≦6、16≦y≦
    20、0.2≦z≦7、および0.01≦u≦7を満足
    するナノコンポジット磁石用原料合金の溶湯を用意する
    工程と、 前記溶湯を冷却し、非晶質組織を含む急冷凝固合金を作
    製する工程と、 前記急冷凝固合金に対して熱処理を施し、それによっ
    て、前記非晶質組織から鉄基硼化物およびFe−R−B
    系化合物を結晶化させる熱処理工程と、を包含するナノ
    コンポジット磁石の製造方法であって、 前記熱処理工程中に磁石の保磁力を熱処理時間の経過に
    伴って上昇させ、保磁力が最初のピークを超えて低下し
    た後、再び保磁力を上昇させることを特徴とする、ナノ
    コンポジット磁石の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記熱処理工程において、前記急冷凝固
    合金が示す最高の温度を620℃以上800℃以下の範
    囲内に調節することを特徴とする請求項7に記載のナノ
    コンポジット磁石の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項5から8のいずれかに記載の製造
    方法を用いて作製されたナノコンポジット磁石を用いて
    ボンド磁石を作製することを特徴とするボンド磁石の製
    造方法。
  10. 【請求項10】 請求項9に記載の製造方法によって製
    造されたボンド磁石を備えたモータ。
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